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特表2023-511291培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法
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  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図1a
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図1b
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  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図11
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図12
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図13
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図14
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図15
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図16
  • 特表-培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法 図17
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/06 20060101AFI20230310BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230310BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20230310BHJP
   C12M 1/32 20060101ALI20230310BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C12M3/06
C12P21/08
C12P21/00 C
C12M1/32
C12M1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543149
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021071364
(87)【国際公開番号】W WO2021143699
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/072216
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ウェイチャン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ミンユエ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC11
4B029DG06
4B029DG08
4B029HA06
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC06
4B064CC07
4B064CC09
4B064CC10
4B064CC15
4B064CC22
4B064CC24
4B064CD09
4B064CD13
4B064CE06
(57)【要約】
本開示は、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法に関する。より具体的には、本開示は、異なる濾過孔径を有する2セットのフィルターを使用して、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)細胞は通過させず、生体物質は通過させる濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルターであるフィルター1と、
(b)細胞と生体物質とは通過させず、流体的連通は維持する濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルターであるフィルター2と、
を含む、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置であって、
前記フィルター1と前記フィルター2とは、並行して前記細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている、前記装置。
【請求項2】
前記フィルター1と前記フィルター2とが、
(a)それぞれ直接的に、
(b)分岐パイプを介して、又は
(c)(a)と(b)との組み合わせにより、
前記細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルター1が約0.08μm~0.5μmの濾過孔径を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルター1が約0.1μm~0.4μmの濾過孔径を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルター1が約0.2μmの濾過孔径を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルター2が、50kD以下の分子量カットオフ(MWCO)を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
前記フィルター1の濾過速度を調節するための手段及び/又は前記フィルター2の濾過速度を調節するための手段を更に含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項8】
前記フィルター1と前記フィルター2とのいずれか一方又は両方が、交互接線流(ATF)フィルター又は接線流濾過(TFF)フィルターである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
前記フィルター1と前記フィルター2とのいずれか一方又は両方が、中空繊維フィルターである、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記フィルター1の数が1つ、2つ、3つ以上であり、及び/又は
前記フィルター2の数が1つ、2つ、3つ以上である、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
(a)基礎培地及び補給培地を用いて前記細胞を灌流的に培養するための装置と、
(b)請求項1~10のいずれか一項に記載の装置と、
を含む、生体物質を生産するためのシステム。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の装置によって収穫された物質から生体物質を連続的に捕捉するための装置を更に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
マイクロスパージャーを更に含む、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の装置によって実施される、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための方法。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか一項に記載のシステムによって実施される、生体物質生産方法。
【請求項16】
前記細胞が哺乳動物細胞を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳動物細胞が、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(ベイビーハムスター腎臓)細胞、又は骨髄腫細胞を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生体物質が、受容体、酵素、融合タンパク質、血液タンパク質、多機能タンパク質、ウイルス又は細菌タンパク質、及び免疫グロブリンからなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項19】
前記血液タンパク質が血液凝固カスケードに由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多機能タンパク質がエリスロポエチンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス又は細菌タンパク質がワクチンに使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫グロブリンが抗体又は多重特異性抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体がIgG又はIgMである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記多重特異性抗体が二重特異性抗体である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法に関する。より具体的には、本開示は、異なる濾過孔径を有する2セットのフィルターを使用して、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の灌流培養(TPC)及び強化灌流培養(IPC)は、細胞の生長及び生体物質の生産を維持するために、培養システムへの新鮮な培地(補給培地)の連続的な灌流を必要とする。しかし、通常に、収穫速度と灌流速度は等しいため、収穫液中の標的生成物濃度が低く、収穫量が多いため、下流の精製に負担を与えるばかりでなく、収穫細胞培養液を保管するために大型のタンクが必要になるため、機器と土地とのコストも増加する。更に、長期間で高流量的な収穫作業は、中空繊維フィルターの目詰まりを引き起こしやすいから、標的生成物が培養システムに滞留される問題があるが、それで中空繊維フィルターを交換することは、生産コスト、作業の複雑さ、及び汚染のリスクを増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明者らは、上記の先行技術の培養工程に存在する問題を解決するために、安定な生体物質と安定でない生体物質との両方の生産に適用できる、培養細胞が生産する生物物質を連続的に収穫するための新たな装置及び方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様において、
【0005】
(a)細胞は通過させず、生体物質は通過させる濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルターであるフィルター1と、
【0006】
(b)細胞と生体物質とは通過させず、流体的連通は維持する濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルターであるフィルター2と、
【0007】
を含む、培養細胞から生産される生体物質を連続的に収穫するための装置(以下、本明細書では“本開示の装置”とも呼ばれる)であって、前記フィルター1と前記フィルター2とは、並行して細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている、前記装置を提供する。
【0008】
本開示の装置の一実施形態において、フィルター1とフィルター2とは、(a)それぞれ直接的に、(b)分岐パイプを介して、又は(c)(a)と(b)との組み合わせにより、細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている。
【0009】
本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター1は、約0.08μm~0.5μm、好ましくは約0.1μm~0.4μm、より好ましくは約0.2μmの濾過孔径を有する。本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター2は、50kD以下の分子量カットオフ(MWCO)を有する。
【0010】
本開示の装置のいくつかの実施形態において、本開示の装置は、フィルター1の濾過速度を調節するための手段及び/又はフィルター2の濾過速度を調節するための手段を更に含む。
【0011】
本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター1とフィルター2とのいずれか一方又は両方が、交互接線流(ATF)フィルター又は接線流濾過(TFF)フィルターである。本開示の装置の更なる実施形態において、フィルター1とフィルター2とのいずれか一方又は両方が中空繊維フィルターである。
【0012】
本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター1の数は1つ、2つ、3つ以上であり、及び/又はフィルター2の数は1つ、2つ、3つ以上である。
【0013】
別の態様において、本開示は、以下の装置を含む、生体物質を生産するためのシステム(以下、本明細書では“本開示のシステム”とも呼ばれる)を提供する。
【0014】
(a)基礎培地及び補給培地を用いて細胞を灌流的に培養するための装置、及び
【0015】
(b)本開示の装置。
【0016】
本開示のシステムのいくつかの実施形態において、システムは、本開示の装置によって収穫された物質から生体物質を連続的に捕捉するための装置を更に含む。
【0017】
本開示のシステムのいくつかの実施形態において、システムは、マイクロスパージャーを更に含む。
【0018】
別の態様において、本開示は、本開示の装置によって実施される、培養細胞から生産される生体物質を連続的に収穫するための方法を提供する。更なる態様において、本開示は、本開示のシステムによって実施される、生体物質を生産するための方法を提供する。上記の両方の方法は、本明細書では、“本開示の方法”とも呼ばれる。
【0019】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞を含む。本開示の方法の一実施形態において、哺乳動物細胞は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(ベイビーハムスター腎臓)細胞、又は骨髄腫細胞を含む。
【0020】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、生体物質は、受容体、酵素、融合タンパク質、血液タンパク質、多機能タンパク質、ウイルス又は細菌タンパク質、及び免疫グロブリンからなる群から選択される。本開示の方法の一実施形態において、血液タンパク質は、血液凝固カスケードに由来する。本開示の方法の一実施形態において、多機能タンパク質はエリスロポエチンである。本開示の方法の一実施形態において、ウイルス又は細菌タンパク質がワクチンに使用される。本開示の方法の一実施形態において、免疫グロブリンは抗体又は多重特異性抗体である。本開示の方法の一実施形態において、抗体はIgG又はIgMである。本開示の方法の一実施形態において、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a図1aは、本開示の少なくとも1つの実施形態の培養システムの概略図である。
【0022】
図1b図1bは、本開示の少なくとも1つの実施形態の培養システムの概略図である。
【0023】
図2図2は、プロセス-1及びプロセス-2の生細胞密度(10/mL)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0024】
図3図3は、プロセス-1及びプロセス-2の細胞生存率(%)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0025】
図4図4は、プロセス-1及びプロセス-2の細胞平均直径(μm)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0026】
図5図5は、プロセス-1及びプロセス-2の培養物中のグルコース濃度(g/L)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0027】
図6図6は、プロセス-1及びプロセス-2の培養物中の乳酸濃度(g/L)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0028】
図7図7は、プロセス-1及びプロセス-2の収穫物中の組換えタンパク質力価(g/L)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0029】
図8図8は、プロセス-1及びプロセス-2の累積体積生産率(Pv)(g/L)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0030】
図9図9は、プロセス-1及びプロセス-2の組換えタンパク質力価保持率(titer retention rate)(%)を縦軸とし、プロセス時間(日)を横軸とするグラフである。
【0031】
図10図10は、プロセスAとプロセスBとにより達成されたピーク生細胞密度を比較したグラフである。
【0032】
図11図11は、プロセスAとプロセスBとにより達成された細胞生存率を比較したグラフである。
【0033】
図12図12は、プロセスAとプロセスBとにより達成された細胞平均直径を比較したグラフである。
【0034】
図13図13は、プロセスAとプロセスBとにより達成された培養物中のグルコース濃度を比較したグラフである。
【0035】
図14図14は、プロセスAとプロセスBとにより達成された培養物中の乳酸濃度を比較したグラフである。
【0036】
図15図15は、プロセスAとプロセスBとにより達成された収穫物中の組換えタンパク質力価を比較したグラフである。
【0037】
図16図16は、プロセスAとプロセスBとにより達成された累積体積生産率(Pv)を比較したグラフである。
【0038】
図17図17は、プロセスAとプロセスBとにより達成された組換えタンパク質力価保持率(titer retention rate)を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
I.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じな意味を有する。本明細書で参照されるすべての特許、出願、公開された出願及び他の刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。この部分に記載されている定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開された出願及び他の刊行物に記載されている定義と相異するか、矛盾する場合、この部分に記載されている定義を基準とする。
【0040】
本明細書で使用される場合、単数形“a”、“an”、及び“the”は、他に示されない限り、複数形も含む。例えば、“a”生体物質は、1つ又は複数の生体物質を含む。
【0041】
本明細書で使用される“バイオリアクター”は、細胞及び細胞培養培地を含む細胞培養物を含むことができるシステムである。いくつかの実施形態において、所望の細胞に対する他の細胞の汚染を防ぐために、エアフィルターなどの無菌バリアも採用する。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、混合、温度、pH、酸素濃度などの適切な培養条件を提供することによって、細胞に好適的な環境を維持している。
【0042】
“細胞培養”又は“培養”とは、多細胞生物又は組織の外部で細胞を生長及び増殖させることを意味する。“細胞培養物”は、細胞培養培地、細胞及び生体物質を含む液体を含み、この液体は、反応器中の細胞培養培地において生体物質を生産する細胞を培養するプロセスの結果である。哺乳動物細胞に適した培養条件は当技術分野で知られている。例えば、Animal cell culture: A Practical Approach, D. Rickwood, ed., Oxford University Press, New York(1992)を参照することができる。哺乳動物細胞は、懸濁状態で、又は固体基質に付着した状態で培養することができる。
【0043】
“細胞”とは、目的とする生体物質を生産する細胞、例えば、生成物をコードする遺伝子を発現することができる細胞を意味する。生成物をコードする遺伝子を発現することができる細胞は、例えば、細胞生成物をコードする遺伝子及び適切な選択マーカーをコードする遺伝子を含むプラスミドで細胞をトランスフェクトすることによって調製することができる。製品を生産するために使用することができる細胞は、原則として、当業者に知られているすべての生物学的製品を生産する能力を有する細胞である。細胞は、動物細胞、特に哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物細胞の例として、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(ベイビーハムスター腎臓)細胞、骨髄腫細胞、ヒト細胞、例えばHEK-293細胞、ヒトリンパ芽球様細胞、E1不死化HER細胞、マウス細胞、例えばNS0細胞が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、“細胞培養培地(cell culturing medium)”(“培養培地(culture medium)”又は“細胞培養培地(cell culture media)”とも呼ばれる)と言う用語は、細胞、例えば、動物又は哺乳動物細胞を生長させるために使用される任意の栄養液を指し、エネルギー源(通常はブドウ糖の形式の炭水化物);全部必須アミノ酸又は全部20種の天然アミノ酸中の1種又は複数種;通常に低濃度のビタミン及び/又は他の有機化合物;脂質又は遊離脂肪酸;微量元素、例えば、通常はマイクロモル程度の非常に低い濃度で需要される無機化合物又は天然に存在する元素から選ばれる少なくとも1つ又は複数の成分を提供する。
【0045】
“基礎細胞培養培地”は、一般的に細胞培養を開始するために使用される、細胞培養を支持するのに十分に完全である細胞培養培地を指す。基礎細胞培養培地として、市販の基礎培地を利用することができ、CD OptiCHO AGT(Invitrogen)、CD CHO AGT(Invitrogen)、Dynamis AGT Medium(Invitrogen)、SFM4CHO ADCF(Hyclone)、HyCell CHO Medium(Hyclone)、CDM4MAB(Hyclone)、DPM Hyclone ActiPro(Hyclone)、Advanced CHO Fed-batch Medium(Sigma)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
“補給細胞培養培地”又は“補給培地”は、指数的生長の期間(“生長段階”)の細胞の培養に通常に使用され、この段階の細胞培養をサポートするのに十分に完全である細胞培養培地を指す。増殖細胞培養培地は、宿主細胞株に組み込まれた選択可能なマーカーに耐性又は生存を与える1つ又は複数の選択剤を含み得る。このような選択剤には、ジェネティシン(G4118)、ネオマイシン、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、Zeocin、メチオニンスルホキシミン、メトトレキサート、グルタミンフリー細胞培養培地、グリシンが欠する細胞培養培地、ヒポキサンチン及びチミジン、又はチミジンのみが含まれるが、これらに限定されない。市販の補給培地を利用することができ、これらには、CHO CD Efficient FeedA(Invitrogen)、CHO CD Efficient FeedB(Invitrogen)、CHO CD Efficient FeedC(Invitrogen)、Sheff-CHO PLUS PF ACF(FM012)(Kerry)、CHO CD Efficient Feed A+(Invitrogen)、CHO CD Efficient Feed B+(Invitrogen)、CHO CD Efficient Feed C+(Invitrogen)、DPM-Cell Boost 7a(Hyclone)、DPM-Cell Boost 7b(Hyclone)、又はFAA01A(Hyclone)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
特定の実施形態において、細胞培養培地は、無血清であるか、及び/又は動物由来の製品又は成分を含まない。特定の実施形態において、細胞培養培地は化学的に確定され、すべての化学成分が知られている。当業者が日常的な技能を使用して知られ、実践されるように、市販の培地を利用することができ、必要に応じて又は所望に応じて、適切な濃度又は量の補助成分又は成分(任意成分を含む)を添加することができる。
【0048】
本開示の文脈において、“製品”、“生物学的物質”及び“生体物質”と言う用語は交換可能である。従って、細胞から生産され得る生成物(例えばコーディング(組換え)遺伝子の発現による生成物)は、例えば(組換え)タンパク質、特に受容体、酵素、融合タンパク質、血液凝固カスケード由来のタンパク質などの血液タンパク質、エリスロポイエチンなどの多機能タンパク質、ワクチンなどで使用するためのウイルス又は細菌タンパク質;抗体(例えばIgG又はIgM、二重特異性抗体などの多重特異性抗体など)などの免疫グロブリンなどである。細胞から生産されるものは、好ましくはタンパク質、より好ましくは抗体である。
【0049】
“抗体”と言う用語は、他に特定されない限り、任意のアイソタイプ又はサブクラスのグリコシル化及び非グリコシル化免疫グロブリン、又は完全な抗体と特異的に競合的結合するその抗原結合領域を含むものであり、他に特定されない限り、ヒト、ヒト化、キメラ、多重特異性、モノクローナル、ポリクローナル、及びオリゴマー抗体又はそれらの抗原結合フラグメントを含む。例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、Fd、dAb、マキシボディ、単鎖抗体分子、相補性決定領域(CDR)フラグメント、scFvなどの抗原結合フラグメント又は領域を有するタンパク質、免疫グロブリンの少なくとも一部を含むダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ及びポリペプチドも含まれ、前記免疫グロブリンは、標的ポリペプチドへの特異的抗原結合を付与するのに十分である。“抗体”と言う用語は、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体などの組換え手段によって調製、発現、作成又は単離されたものも含むが、これらに限定されない。
【0050】
抗体の例には、タンパク質のいずれか1つ又は組み合わせを認識するものが含まれるが、これらに限定されなく、上記のタンパク質及び/又は以下の抗原が含まれるが、これらに限定されない:CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD147、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-7、IL-4、IL-5、IL-8、IL-10、IL-2受容体、IL-4受容体、IL-6受容体、IL-13受容体、IL-18受容体サブユニット、FGL2、PDGF-β及びそれらの類似体(米国特許第5,272,064号及び第5,149,792号を参照)、VEGF、TGF、TGF-β2、TGF-β1、EGF受容体(米国特許第6,235,883号を参照)、VEGF受容体、肝細胞増殖因子、オステオプロテゲリンリガンド、インターフェロンγ、Bリンパ球刺激因子(BlyS、BAFF、THANK、TALL-1、zTNF4とも呼ばれ、DoandChen-Kiang(2002)、Cytokine Growth Factor Rev. 13(1):19-25を参照)、C5補体、IgE、腫瘍抗原CA125、腫瘍抗原MUC1、PEM抗原、LCG(肺癌と関連して発現する遺伝子産物)、HER-2、HER-3、腫瘍関連糖タンパク質TAG-72、SK-1抗原、結腸及び/又は膵臓癌患者の血清中に高レベルで存在する腫瘍関連エピトープ、乳癌、結腸癌、扁平上皮細胞癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、及び/又は腎臓癌の癌細胞、及び/又はメラノーマ、グリオーマ、又は神経芽細胞腫細胞(腫瘍の壊死性コア)に発現する癌関連エピトープまたはタンパク質、インテグリンα4β7、インテグリンVLA-4、B2インテグリン、TRAIL受容体1、2、3、及び4、RANK、RANKリガンド、TNF-α、接着分子VAP-1、上皮細胞接着分子(EpCAM)、細胞間接着分子-3(ICAM-3)、ロイコインテグリンアドヘシン、血小板糖タンパク質gp IIb/IIIa、心臓ミオシン重鎖、副甲状腺ホルモン、rNAPc2(第VIIa因子-組織因子の阻害剤)、MHC I、癌胚性抗原(CEA)、α-フェトプロテイン(AFP)、腫瘍壊死因子(TNF)、CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連抗原)、Fc-γ-1受容体、HLA-DR 10β、HLA-DR抗原、スクレロスチン、L-セレクチン、RSウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)、及びスタフリコッカスウレウス(Staphlycoccus aureus)。本開示の方法を使用して生産することができる既知の抗体の特定の例には、adalimumab、bevacizumab、infliximab、abciximab、alemtuzumab、bapineuzumab、basiliximab、belimumab、briakinumab、canakinumab、certolizumab pegol、cetuximab、conatumumab、denosumab、eculizumab、gemtuzumab ozogamicin、golimumab、ibritumomab tiuxetan、labetuzumab、mapatumumab、matuzumab、mepolizumab、motavizumab、muromonab-CD3、natalizumab、nimotuzumab、ofatumumab、omalizumab、oregovomab、palivizumab、panitumumab、pemtumomab、pertuzumab、ranibizumab、rituximab、rovelizumab、tocilizumab、tositumomab、trastuzumab、ustekinumab、vedolizomab、zalutumumab及びzanolimumabが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
いくつかの実施形態において、細胞から生産されるタンパク質又はワクチンなどの生成物は、医薬製剤の有効成分として使用されることができる。製品の非限定的な例には、抗hTNFα(アダリムマブ(HumiraTM))、VEGFを標的とする融合タンパク質(Aflibercept(EYLEATM))、エリスロポイエチンα(Epogen(登録商標))、リンパ芽球性インターフェロンα-n1(WellferonTM)、(組換え)凝固因子(NovoSevenTM)、エタネルセプト(EnbrelTM)、トラスツズマブ(HerceptinTM)、インフリキシマブ(RemicadeTM)、バシリキシマブ(SimulectTM)、ダクリズマブ(ZenapazTM)、(組換え)凝固因子IX(BenefixTM)、グルコセレブロシダーゼ(CerezymeTM)、インターフェロンβ1b(Betaseron(登録商標))、G-CSF(Neupogen(登録商標)Filgrastim)、インターフェロンα-2b(Infergen(登録商標))、組換えインスリン(Humulin(登録商標))、インターフェロンβ1a(Avonex(登録商標))、凝固因子VIII(KoGENate(登録商標))、テネクテプラーゼ(TNKaseTM)、(組換え)抗血友病因子(ReFactoTM)、TNFα受容体(Enbrel(登録商標))、濾胞刺激ホルモン(Gonal-F(登録商標))、Mab abcixmab(Synagis(登録商標)、ReoPro(登録商標))、Mab ritiximab(Rituxan(登録商標))、組織プラスミノーゲンアクチベーター(Activase(登録商標)、Actilyase(登録商標))、ヒト生長ホルモン(Protropin(登録商標)、Norditropin(登録商標)、GenoTropinTM)が含まれる。更に、“抗体構築物”と言う用語の定義には、一価、二価及び多価/多価構築物、従って、2つの抗原構造のみに特異的に結合する二重特異性構築物、並びに2つ以上(例えば、3、4、又はそれ以上)の抗原性構造に異なる結合ドメインを介して特異的に結合する多重特異性/多重特異性構築物が含まれる。更に、“抗体構築物”と言う用語の定義には、1つのポリペプチド鎖のみからなる分子、及び複数のポリペプチド鎖からなる分子が含まれ、これらの鎖は同一(ホモ二量体、ホモ三量体又はホモオリゴマー)又は不同である(ヘテロ二量体、ヘテロ三量体又はヘテロオリゴマー)ことができる。上記抗体及びその変異体又は誘導体の例は、Harlow and Lane, Antibodies a laboratory manual, CSHL Press (1988)及びUsing Antibodies: a laboratory manual, CSHL Press (1999), Kontermannand Dubel, Antibody Engineering, Springer, 2nd ed. 2010及びLittle, Recombinant Antibodies for Immunotherapy, Cambridge University Press 2009に記載されている。
【0052】
本明細書で使用される場合、“ポリペプチド”と言う用語は、モノマーであるアミノ酸がアミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結されて構成された分子を指す。“ポリペプチド”と言う用語は、2つ以上のアミノ酸により構成され、特定の産物長さに限定されない任意の鎖を指し。従って、“ポリペプチド”の定義には、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、“タンパク質”、“アミノ酸鎖”、又は2つ以上のアミノ酸の鎖を意味するのに使用される他の用語が含まれる。これらの用語のいずれかの代わりに、或いはこれらの用語のいずれかと交換可能に、“ポリペプチド”と言う用語を使用することができる。“ポリペプチド”と言う用語は、更に、ポリペプチドのグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は非天然アミノ酸による修飾などの発現後修飾を経た生成物も意味するが、これらに限定されない。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来するか、又は組換え技術によって生産され得るが、指定された核酸配列から翻訳されたものに限らない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の方法で生成することができる。本開示のポリペプチドは、約3以上、5以上、10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1,000以上、又は2,000以上のアミノ酸の長さを持ち得る。ポリペプチドは、定義された三次元構造を持ち得るが、必ずしもそのような構造を持っているわけではない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは”折り畳まれた”と呼ばれ、定義された三次元構造は有さないが、多数の異なるコンフォメーションを取ることができるポリペプチドは”折り畳まれていない”と呼ばれる。
【0053】
“マイクロスパージャー”と言う用語は、一般的に、バイオリアクタータンク内の細胞培養物に酸素及び/又は他の気体を提供するように構成されたスパージャーを指す。エアレーター又はマイクロスパージャーは、酸素又は他の気体の供給源に結合され得、そして気体を細胞培養物に導入することができ、それにより、気体が細胞培養物中で気泡になり、それによって細胞培養物を通気する。いくつかの例では、マイクロスパージャーをドリルドチューブスパージャーと組み合わせて使用することができる。
【0054】
本明細書に記載したように調製された生物製剤は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などの当技術分野で知られている技術によって精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、正味電荷、疎水性、親水性などの要因に部分的に依存し、当業者によりよく知られている。アフィニティークロマトグラフィー精製では、生体製剤が結合する抗体、リガンド、受容体、又は抗原が使用される。例えば、本開示の生体製剤(例えば、免疫複合体)のアフィニティークロマトグラフィー精製のために、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスを使用することができる。例えば、実施例に記載されているように、プロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを順番に使用して、生体製剤、例えば、免疫複合体を単離することができる。生体製剤(例えば、免疫複合体)の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、及び近似の方法を含む様々なよく知られた分析方法のいずれかによって決定することができる。
【0055】
本開示において、“収穫速度”と言う用語は、培養産物が、フィルター1(細胞は通過させず、生体物質は通過させる濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルター)を通過する速度を意味する。
【0056】
II.培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置及び方法
様々な実施形態において、培養細胞から生産された生体物質は、本開示の装置によって連続的に収穫される。一つのフィルターセット(例えば、フィルター1)が、細胞は通過させず、生体物質は通過させる濾過孔径を有し、他のフィルターセット(例えば、フィルター2)が、細胞と生体物質とは通過させず、流体的連通は維持する濾過孔径を有し、前記フィルター1と前記フィルター2とは、並行して前記細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている限り、任意の種類のフィルターを本開示の装置として使用することができる。本開示の装置の一実施形態において、フィルター1とフィルター2とは、(a)それぞれ直接的に、(b)分岐パイプを介して、又は(c)(a)と(b)との組み合わせにより前記細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている。本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター1は、約0.08μm~0.5μm、好ましくは約0.1μm~0.4μm、より好ましくは約0.2μmの濾過孔径を有する。本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター2は、50kD以下、45kD以下、40kD以下、35kD以下、30kD以下、25kD以下、20kD以下などの分子量カットオフ(MWCO)を有する。孔径で表わす孔サイズ(μm)と分子量カットオフで表わす孔サイズ(kD)との間の近似的な対応関係は次の通りである。
【表1】
【0057】
フィルター2の分流作用によって、フィルター1を通過する流量が低減することができ、従って、フィルター1の目詰まりのリスクを効果的に低減又は回避することができ、それにより、フィルター1の耐用年数を延ばすことができる。
【0058】
収穫物中の廃液の一部がフィルター2を介して除去されるので、収穫液の量を効果的に減らすことができ、それにより、装置の貯蔵容積及び貯蔵スペースを効果的に減らすことができる。
【0059】
収穫物中の廃液の一部がフィルター2を介して除去されるので、収穫された標的生物物質は効果的に濃縮され得、それは下流での精製の負担を効果的に低減し得る。
【0060】
細胞生存率を維持するのに有益ないくつかの小分子生体物質(PF68など)は、フィルター2によって培養系に保留することができるので、培養系における生細胞密度(VCD)を増加させることができ、それによって、培養期間を延長し、及びバッチ収量も向上することができる。
【0061】
本開示の装置のいくつかの実施形態において、本開示の装置は、更に、フィルター1の濾過速度を調節するための手段及び/又はフィルター2の濾過速度を調節するための手段を含むことができる。これらの調節手段により、フィルター1とフィルター2とを通過する細胞培養物の流量の比率を、必要に応じて調整することができ、その結果、収穫液中の生体物質を所望の程度まで濃縮することができる。
【0062】
フィルターでの細胞培養物の循環は、フィルター表面に実質的に平行な流れであり、接線流(tangential flow)としても知られ、例えば、一方向接線流濾過(tangential flow filtration、TFF)又は交差流である。交差流の好ましい例は、交互接線流(alternating tangential flow、ATF)であり、ATFを使用する場合、非常に高い細胞密度でも、フィルターの目詰まりが(迅速に)発生しないことが発見された。“交互接線流”とは、フィルター表面と同じな方向(つまりフィルター表面との接線方向)で往復に流動し、フィルター表面と実質的に垂直な方向で別の流れがあることを意味する。交互接線流は、当業者に知られている方法に従って達成することができる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,544,424号に記載されているように)。
【0063】
本開示での使用に適したフィルターの非限定的な例には、メンブレンフィルター、セラミックフィルター及び金属フィルターが含まれる。フィルターは任意の形状で使用されることができる。フィルターは、例えば、螺旋状に巻かれているか管状であり得るか、又はシートの形態で使用され得る。様々な実施形態において、使用されるフィルターはメンブレンフィルターである。少なくとも1つの実施形態において、フィルターは中空繊維フィルターである。中空繊維を含むフィルター装置は、例えば、Refine Technologyから市販されていることを使用することができる。
【0064】
本開示の装置のいくつかの実施形態において、フィルター1の数は1つ、2つ、3つ以上であり、及び/又はフィルター2の数は1つ、2つ、3つ以上である。
【0065】
別の態様において、本開示は、上記のように本開示の装置によって実施される、培養細胞から生産される生体物質を連続的に収穫するための方法を提供する。
【0066】
III.生体物質を生産するためのシステム及び方法
本開示は、以下の装置を含む生体物質を生産するためのシステムを提供する。
【0067】
(a)基礎培地及び補給培地を用いて細胞を灌流的に培養するための装置と、
【0068】
(b)上記のような本開示の装置。
【0069】
“灌流”培養プロセスは、細胞培養物に新鮮な培地を添加し、使用済み培地をバイオリアクターから除去するプロセスである。灌流は、連続的、段階的、断続的、又はこれらのいずれか1つ以上又はすべての組み合わせであることができる。
【0070】
様々な実施形態において、細胞培養物は、バイオリアクターに目的とする生体物質を発現する細胞を接種することによって確立されることができる。細胞培養は、基礎培地と補給培地を供給することによって維持することができる。
【0071】
培養物への細胞培養培地の添加速度は、細胞の生存率及び密度に影響を及ぼし得る。“生細胞密度(VCD)”と言う用語は、標準的な生存率アッセイ(例えば、トリパンブルー色素排除法)によって確定された、所定の量の培地中の生細胞の数を意味する。
【0072】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、本開示の方法においてマイクロスパージャーを使用することができる。本開示の更なる実施形態において、要求される酸素流量が約0.5VVMに達するときにマイクロスパージャーを使用することができる。本開示において、マイクロスパージャーの適用は、培養中に破裂する気泡によって引き起こされる細胞損傷を軽減することができる。
【0073】
別の態様において、本開示は、生体物質を生産するための方法を提供し、これは、上記のような本開示のシステムによって実施される。
【実施例
【0074】
以下の実施例を参照することにより、上記のように一般的に説明される本開示をより容易に理解することができるが、このような実施例は、例示として提供され、本開示を限定すると理解されるべきではない。
【0075】
細胞株と培養条件
ATCCから購入したCHO-K1宿主細胞(ATCC番号:CCL 61)を含有するバイアルを解凍した。マスター細胞バンク(master cell bank、MCB)100バイアルを生成し、続いて作業細胞バンク(working cell bank、WCB)136バイアルを生成した。次に、WCBバイアルを解凍し、無血清培地を用いた浮遊培養に適用した。懸濁液に適合したクローンCHO-K1-A4で、PCBを60バイアル、MCBを170バイアル、及びWCBを230バイアル生成した。安定したトランスフェクションのために、1つのCHO-K1宿主細胞(CHO-K1-A4)のWCBバイアルを解凍した。
【0076】
米国特許第6,090,382号に開示されている抗hTNFα抗体を発現するためのcDNA配列を、それぞれBlasticidin及びZeocin耐性マーカーを含む2つのベクターにクローン化した。リポソームを用いて安定したトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、細胞を選択培地(9 μg/mL Blasticidinと400μg/mL Zeocinを含むCD CHO培地)で継代し、プール(pool)を選択した。プール(pool)を約2週間選択した後、FACSソーティングによってプール(pool)のクローンを作成した。クローンは、スピンチューブ内の流加培養によってスクリーニングされた。1つの高生産性クローンを選択して、クローンXと命名した。
【0077】
実施例1
本実施例では、クローンXを使用して、本開示の装置及び方法(収穫速度の変動を含む)で実施される強化灌流培養(IPC)プロセス(プロセス-1及びプロセス-2)の性能を評価した。
【0078】
プロセス-1
プロセス-1は、δV制御器を使用して、温度を36.5℃に、pHを約7.2~6.8の範囲に、及びDOを40%の空気飽和度に制御しながら、7Lのアプリコン容器内で実施した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する0.2 μmカットオフの中空繊維フィルター(フィルター1)(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する50kD(約0.008 μm)カットオフの中空繊維フィルター(フィルター2)(Spectrum labs)を使用して、細胞と組換えタンパク質とを保持した。フィルター1とフィルター2とは、分岐パイプを介して並行してApplikon容器に流体的連通が可能的に接続された。
【0079】
培養は、6.0mMのL-グルタミンを補充したExcell Advanced CHO流加培養培地(Sigma)において、0.90~1.10×10細胞/mLの初期VCDで開始した。0日目から毎日約10-100ppmの消泡剤を添加した。基礎培地(Excell Advanced CHO流加培地、Sigma)の灌流は、1日目から0.4 VVDの速度で開始し、3日目に1.5VVDに増やした。補給培地(CB7a/CB7b)の灌流は、4日目から開始し、2.0 g/Lを超える最小グルコース濃度を維持するようにその速度を毎日調整した。3日目から培養終了まで、灌流速度は1.5VVDに保持した。要求される酸素流量が0.5VVMに達したときに、マイクロスパージャーを使用した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に改変し、培養が終了するまで31.0℃に維持した。
【0080】
連続的濃縮収穫を実施するために、フィルター1を通過する濾液(組換えタンパク質(即ち、収穫物)を含む)を連続的に収集した。一方、フィルター2を通過した組換えタンパク質を含まない濾液は、一定の作業体積を維持するために廃棄した。13日目以前には、収穫速度と灌流速度とが等しかったが、13日目以降は、収穫速度が灌流速度の3分の1に低減した。培養の全過程において、細胞は流出することなくバイオリアクターに保留された。
【0081】
プロセス2
プロセス-2は、δV制御器を使用して、温度を36.5℃に、pHを約7.2~6.8の範囲に、及びDOを40%の空気飽和度に制御しながら、7Lのアプリコン容器内で実施した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する0.2 μmカットオフの中空繊維フィルター(フィルター1)(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する50kD(約0.008 μm)カットオフの中空繊維フィルター(フィルター2)(Spectrum labs)を使用して、細胞と組換えタンパク質とを保持した。フィルター1とフィルター2とは、分岐パイプを介して並行してApplikon容器に流体的連通が可能的に接続された。
【0082】
培養は、6.0mMのL-グルタミンが補充されたExcell Advanced CHO流加培地(Sigma)において、0.90~1.10×10細胞/mLの初期VCDで開始した。0日目から毎日約10-100ppmの消泡剤を添加した。基礎培地(Excell Advanced CHO流加培地、Sigma)の灌流は、1日目から0.4 VVDの速度で開始し、3日目に1.5VVDに増やした。補給培地(CB7a/CB7b)の灌流は、4日目から開始し、2.0 g/Lを超える最小グルコース濃度を維持するようにその速度を毎日調整した。3日目から培養終了まで、灌流速度は1.5VVDに保持した。要求される酸素流量が0.5VVMに達したときに、マイクロスパージャーを使用した。5日目に温度を36.5℃から31.0℃に改変し、培養が終了するまで31.0℃に維持した。
【0083】
連続的濃縮収穫を実施するために、フィルター1を通過する濾液(組換えタンパク質(即ち、収穫物)を含む)を連続的に収集した。一方、フィルター2を通過した組換えタンパク質を含まない濾液は、一定の作業体積を維持するために廃棄した。13日目以前には、収穫速度が灌流速度の3分の1であり、13日目から17日目までは、収穫速度と灌流速度とが等しかったが、17日目以降は、収穫速度が灌流速度の3分の1に低減した。培養の全過程において、細胞は流出することなく、バイオリアクターに保留された。
【0084】
プロセス1とプロセス2との比較
図2は、濃縮収穫を有するプロセス(13日後のプロセス-1、及び13日前のプロセス-2)において、より高いピーク生細胞密度が達成されたことを示した。
【0085】
図3は、濃縮収穫を有するプロセス(13日後のプロセス-1、及び13日前のプロセス-2)において、細胞の生存率がより高く維持されたことを示した。
【0086】
図4は、プロセス-1及びプロセス-2において、細胞平均直径が同等であったことを示した。
【0087】
図5は、プロセス-1及びプロセス-2において、グルコース濃度が同等であったことを示した。
【0088】
図6は、どちらのプロセスにおいても、明らかな乳酸の生成又は蓄積の問題が観察されなかったことを示した。
【0089】
図7は、濃縮収穫を有するプロセス(13日後のプロセス-1、及び13日前のプロセス-2)において、収穫物中の組換えタンパク質力価が有意に高かったことを示した。
【0090】
図8は、濃縮収穫を有するプロセス(13日後のプロセス-1、及び13日前のプロセス-2)において、累積容積生産率(Pv)がわずかに低かったことを示した。
【0091】
図9は、濃縮収穫を有するプロセス(13日後のプロセス-1、及び13日前のプロセス-2)において、組換えタンパク質力価保持率(titer retention rate)が有意に低かったことを示した。
【0092】
実施例2
本実施例では、クローンXを使用して、従来の装置及び方法で実施されたIPCプロセス(プロセスA)の性能と、本開示の装置及び方法で実施されたIPCプロセス(プロセスB)の性能とを比較した。
【0093】
プロセスA
プロセスAは、δV制御器を使用して、温度を36.5℃に、pHを約7.2~6.8の範囲に、及びDOを40%の空気飽和度に制御しながら、7Lのアプリコン容器内で実施した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する0.2 μmカットオフの中空繊維フィルター(フィルター1)(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。
【0094】
培養は、4.0mMのL-グルタミンを補充したCDM4培地(Hyclone)において、0.90~1.10×10細胞/mLの初期VCDで開始した。0日目から毎日約10-100ppmの消泡剤を添加した。基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流は、1日目から0.4 VVDの速度で開始し、2日目に1.0 VVDに増やし、培養が終了するまで維持した。補給培地(CB7a/CB7b)の灌流は、3日目から基礎培地の2%の速度で開始し、14日目に徐々に18%に増やし、16日目まで維持した。必要に応じて、マイクロスパージャーを使用して酸素を供給した。6日目に温度を36.5℃から31.0℃に改変し、培養が終了するまで31.0℃に維持した。
【0095】
細胞培養物は、ATFを介して連続的に収集した。培養の全過程において、細胞は流出することなくバイオリアクターに保留された。
【0096】
プロセスB
プロセスBは、δV制御器を使用して、温度を36.5℃に、pHを約7.2~6.7の範囲に、及びDOを40.0%の空気飽和度に制御しながら、3Lのアプリコン容器内で実施した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する0.2 μmカットオフの中空繊維フィルター(フィルター1)(Spectrum labs)を使用して、細胞を保持した。ATF-2Hシステム(Refine Technology)を備えた、ATFフローモードで作動する50kD(約0.008 μm)カットオフの中空繊維フィルター(フィルター2)(Spectrum labs)を使用して、細胞と組換えタンパク質とを保持した。フィルター1とフィルター2とは、分岐パイプを介して並行してApplikon容器に流体的連通が可能的に接続された。
【0097】
培養は、8.0mMのL-グルタミンを補充したCDM4培地(Hyclone)において、19.00~21.0×10細胞/mLの初期VCDで開始した。0日目から毎日約10-100ppmの消泡剤を添加した。基礎培地(CDM4、Hyclone)の灌流は、0日目から1.0 VVDの速度で開始し、培養が終了するまで維持した。補給培地(CB7a/CB7b)の灌流は、0日目から基礎培地の3%の速度で開始され、6日目に徐々に8%に増やした。9日目から12日目まで、補給培地の灌流速度を徐々に6%に低減した。2日目に温度を36.5℃から31.0℃に改変し、培養が終了するまで31.0℃に維持した。
【0098】
連続的濃縮収穫を実施するために、フィルター1を通過する濾液(組換えタンパク質(即ち、収穫物)を含む)を連続的に収集した。一方、フィルター2を通過した組換えタンパク質を含まない濾液は、一定の作業体積を維持するために廃棄した。2日目に温度変化後に収穫を開始し、その後の収穫速度は灌流速度の半分でした。培養の全過程において、細胞は流出することなくバイオリアクターに保留された。
【0099】
プロセスAとプロセスBとの比較
プロセスBとの性能の直接的比較のために、4日目からのプロセスAのデータを示された。
【0100】
図10は、プロセスAにおいて、わずかに高いピーク生細胞密度が達成されたことを示した。
【0101】
図11は、両方のプロセスにおいて、細胞生存率が同等であったことを示した。
【0102】
図12は、両方のプロセスにおいて、細胞平均直径が同等であったことを示した。
【0103】
図13は、両方のプロセスにおいて、グルコース濃度が1.00 g/Lを超えて維持されたことを示した。
【0104】
図14は、どちらのプロセスでも、明らかな乳酸の生成又は蓄積の問題が観察されなかったことを示した。
【0105】
図15は、収穫物中の組換えタンパク質力価が、濃縮収穫を有さないプロセスAに比べて、濃縮収穫を有するプロセスBで有意に高かったことを示した。
【0106】
図16は、両方のプロセスにおいて、累積体積生産率(Pv)が同等であったことを示した。
【0107】
図17は、組換えタンパク質力価保持率(titer retention rate)が、濃縮収穫を有さないプロセスAに比べて、濃縮収穫を有するプロセスBで有意に低かったことを示した。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)細胞は通過させず、生体物質は通過させる濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルターであるフィルター1と、
(b)細胞と生体物質とは通過させず、流体的連通は維持する濾過孔径を有する少なくとも1つのフィルターであるフィルター2と、
を含む、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための装置であって、
前記フィルター1と前記フィルター2とは、並行して前記細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている、前記装置。
【請求項2】
前記フィルター1と前記フィルター2とが、
(a)それぞれ直接的に、
(b)分岐パイプを介して、又は
(c)(a)と(b)との組み合わせにより、
前記細胞を培養するための装置に流体的連通が可能的に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルター1が約0.08μm~0.5μm、好ましくは約0.1μm~0.4μm、より好ましくは約0.2μmの濾過孔径を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルター2が、50kD以下の分子量カットオフ(MWCO)を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルター1の濾過速度を調節するための手段及び/又は前記フィルター2の濾過速度を調節するための手段を更に含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルター1と前記フィルター2とのいずれか一方又は両方が、交互接線流(ATF)フィルター又は接線流濾過(TFF)フィルターである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
前記フィルター1と前記フィルター2とのいずれか一方又は両方が、中空繊維フィルターである、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記フィルター1の数が1つ、2つ、3つ以上であり、及び/又は
前記フィルター2の数が1つ、2つ、3つ以上である、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
(a)基礎培地及び補給培地を用いて前記細胞を灌流的に培養するための装置と、
(b)請求項1~のいずれか一項に記載の装置と、
を含む、生体物質を生産するためのシステム。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の装置によって収穫された物質から生体物質を連続的に捕捉するための装置を更に含む、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
マイクロスパージャーを更に含む、請求項又は10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載の装置によって実施される、培養細胞から生産された生体物質を連続的に収穫するための方法。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載のシステムによって実施される、生体物質生産方法。
【請求項14】
前記細胞が哺乳動物細胞を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物細胞が、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(ベイビーハムスター腎臓)細胞、又は骨髄腫細胞を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生体物質が、受容体、酵素、融合タンパク質、血液タンパク質(例えば、血液凝固カスケードに由来する血液タンパク質)、多機能タンパク質(例えば、エリスロポエチン)、ウイルス又は細菌タンパク質(例えば、ワクチンに使用されるウイルス又は細菌タンパク質)、及び免疫グロブリン(例えば、抗体(例えば、IgG又はIgM)又は多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体))からなる群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【国際調査報告】