(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】分子篩SSZ-116、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
C01B39/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543172
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 IB2020058658
(87)【国際公開番号】W WO2021144627
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】パスクアル、イエスス
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA64
4G073BA75
4G073BA80
4G073BA82
4G073BB03
4G073BB06
4G073BB13
4G073BB24
4G073BB44
4G073CZ05
4G073CZ41
4G073CZ50
4G073FB03
4G073FB30
4G073FC04
4G073FC13
4G073FC19
4G073FC25
4G073FC30
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA24
4G073UA01
4G073UA06
(57)【要約】
SSZ-116と呼ばれる新規の合成結晶性アルミノゲルマノシリケート分子篩材料が提供される。SSZ-116は、構造指向剤として3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを使用して合成することができる。SSZ-116は有機化合物の変換反応及び/または収着プロセスで使用されてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成された形態にて、以下のピークを含む粉末X線回折パターンを有する分子篩:
【表4】
【請求項2】
モル関係:
Al
2O
3:(n)TO
2
(式中、nは≧30であり;Tはシリコンとゲルマニウムを含む4価元素である)を含む組成を有する、請求項1に記載の分子篩。
【請求項3】
モル関係:
Al
2O
3:(n)TO
2
(式中、nは≧50であり;Tはシリコンとゲルマニウムを含む4価元素である)を含む組成を有する、請求項1に記載の分子篩。
【請求項4】
合成されたままの形態にて、以下のピークを含む粉末X線回折パターンを有する分子篩:
【表3】
【請求項5】
以下のモル関係を含む化学組成:
【表0-1】
(式中、Tはシリコン及びゲルマニウムを含む四価元素であり;Qは3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを含む)を有する、請求項4に記載の分子篩。
【請求項6】
以下のモル関係を含む化学組成:
【表0-2】
(式中、Tはシリコン及びゲルマニウムを含む四価元素であり;Qは3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを含む)を有する、請求項4に記載の分子篩。
【請求項7】
請求項4に記載の分子篩を合成する方法であって、
(a)(1)FAUフレームワーク型ゼオライトと;
(2)ゲルマニウムの供給源と;
(3)3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤と;
(4)フッ化物イオンの供給源と;
(5)水と;を含む反応混合物を提供することと、
(b)前記反応混合物を前記分子篩の結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することと、を含む、前記方法。
【請求項8】
前記反応混合物が、モル比に関して以下のような組成:
【表1-1】
(式中、Tはシリコンとゲルマニウムを含む4価元素である)を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、モル比に関して以下のような組成:
【表1-2】
(式中、Tはシリコンとゲルマニウムを含む4価元素である)を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記FAUフレームワーク型がゼオライトYである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶化条件が125℃~200℃の温度を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物が0.8~1.2の範囲のQ/Fモル比を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
構造指向剤が3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウム水酸化物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
有機化合物を含む原料を変換生成物に変換するためのプロセスであって、有機化合物変換条件にて前記原料を請求項1に記載の分子篩を含む触媒と接触させることを含む、前記プロセス。
【請求項15】
以下の構造を有するカチオンを含む有機窒素化合物:
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月16日に出願された米国特許仮出願第62/962,032号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、SSZ-116と呼ばれる新規の合成結晶性分子篩、その合成、ならびに有機化合物変換反応及び収着プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
分子篩は、明確なX線回折(XRD)パターンによって示され、特定の化学組成を有する、規定された細孔構造を持つ明確な結晶構造を有する商業的に重要なクラスの材料である。結晶構造は特定のタイプの分子篩の特徴である空洞と細孔を定義する。
【0004】
本開示によれば、SSZ-116と呼ばれ、独特の粉末X線回折パターンを有する新しい結晶分子篩が、構造指向剤としての3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを使用して合成されている。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、合成されたままの形態で、少なくとも以下の表3のピークを含む粉末X線回折パターンを有する分子篩が提供される。
【0006】
合成されたままの無水形態では、分子篩は以下のモル関係を含む化学組成を有することができる:
【表0】
式中、Tはシリコン及びゲルマニウムを含む四価元素であり;Qは3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを含む。
【0007】
第2の態様では、焼成形態で、少なくとも以下の表4のピークを含む粉末X線回折パターンを有する分子篩が提供される。
【0008】
焼成形態では、分子篩は以下のモル関係を含む化学組成を有することができる:
Al2O3:(n)TO2
式中、nは≧30であり;Tはシリコンとゲルマニウムを含む4価元素である。
【0009】
第3の態様では、本明細書に記載されている分子篩を合成する方法が提供され、この方法は(a)(1)FAUフレームワーク型のゼオライトと、(2)ゲルマニウムの供給源と、(3)3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤と、(4)フッ化物イオンの供給源と、(5)水とを含む反応混合物を提供することと、(b)分子篩の結晶を形成するのに十分な結晶化条件に反応混合物を供することとを含む。
【0010】
第4の態様では、有機化合物変換条件で原料を本明細書に記載されている分子篩を含む触媒と接触させることを含む、有機化合物を含む原料を変換生成物に変換するプロセスが提供される。
【0011】
第5の態様では、以下の構造を有するカチオンを含む有機窒素化合物が提供される:
【化1】
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な記述
定義
「フレームワーク型」という用語は、Ch. Baerlocher and L.B. McCusker and D.H. Olsenによる「Atlas of Zeolite Framework Types」(Elsevier, Sixth Revised Edition,2007)に記載されている意味を有する。
【0013】
「ゼオライト」という用語は、アルミナとシリカで構成されたフレームワーク(すなわち、SiO4とAlO4の四面体ユニットの繰り返し)を有する合成アルミノシリケート分子篩を指す。
【0014】
「アルミノゲルマノシリケート」という用語は、そのフレームワーク構造内にアルミニウム、ゲルマニウム、及び酸化シリコンを含む結晶性微細孔固体を指す。アルミノゲルマノシリケートは、「純粋なアルミノゲルマノシリケート」(すなわち、そのフレームワーク構造に他の検出可能な金属酸化物が存在しない)であってもよく、または任意に置換されてもよい。「任意に置換された」と記載されている場合、それぞれのフレームワークは、親フレームワークにまだ存在しない、1以上の原子の代わりに置換される他の原子(例えば、B、Ga、In、Fe、Ti、Zr)を含有してもよい。
【0015】
「合成されたままの」という用語は本明細書では、結晶化後、構造指向剤を除去する前のその形態の分子篩を指すのに用いられる。
【0016】
「無水」という用語は本明細書では、物理的に吸着された水及び化学的に吸着された水の双方を実質的に欠く分子篩を指すのに用いられる。
【0017】
本明細書で使用されるとき、周期表群の番号付けスキームは、Chem. Eng. News 1985,63(5),26-27に開示されているとおりである。
【0018】
分子篩の合成
分子篩SSZ-116は、(a)(1)FAUフレームワーク型のゼオライトと、(2)ゲルマニウムの供給源と、(3)3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤と、(4)フッ化物イオンの供給源と、(5)水とを含む反応混合物を提供することと、(b)分子篩の結晶を形成するのに十分な結晶化条件に反応混合物を供することとによって合成され得る。
【0019】
反応混合物は、モル比に関して、表1に示される範囲内の組成を有することができる。
【表1】
式中、Tはシリコン及びゲルマニウムを含む四価元素であり;Qは3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを含む。
【0020】
FAUフレームワーク型のゼオライトは、唯一のシリカ及びアルミニウムの供給源であることができる。FAUフレームワーク型ゼオライトは、ゼオライトYであることができる。FAUフレームワーク型ゼオライトは2以上のゼオライトを含むことができる。2以上のゼオライトは、異なるシリカ対アルミナのモル比を有するYゼオライトであることができる。
【0021】
ゲルマニウムの好適な供給源には、二酸化ゲルマニウム及びゲルマニウムアルコキシド(例えば、テトラエトキシゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマニウム)が挙げられる。
【0022】
反応混合物は、4~12の範囲(例えば、6~10)のSiO2/GeO2のモル比を有してもよい。
【0023】
フッ化物イオンの好適な供給源には、フッ化水素、フッ化アンモニウム、及び二フッ化アンモニウムが挙げられる。
【0024】
SSZ-116は、以下の構造(1)によって表される3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤を使用して合成される:
【化1】
【0025】
Qの好適な供給源は第四級アンモニウム化合物の水酸化物及び/または他の塩である。
【0026】
反応混合物は、0.80~1.20の範囲(例えば、0.85~1.15、0.90~1.10、0.95~1.05、または1~1)のQ/Fのモル比を有してもよい。
【0027】
反応混合物は、反応混合物の0.01~10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で、前の合成からのSSZ-116のような分子篩材料のシードを含有してもよい。播種は、完全な結晶化が起こるのに必要な時間を短縮するのに有利になり得る。さらに、播種は、望ましくない相にわたってSSZ-116の核形成及び/または形成を促進することによって得られる生成物の純度の向上につながり得る。
【0028】
反応混合物成分は1を超える供給源から供給できることに留意されたい。また、2以上の反応成分を1つの供給源から提供することもできる。反応混合物はバッチ式または連続的に調製することができる。
【0029】
結晶化及び合成後の処理
上記の反応混合物からの分子篩の結晶化は、対流オーブンに置かれた好適な反応容器(例えば、ポリプロピレンジャー、またはテフロン(登録商標)加工もしくはステンレス鋼のオートクレーブ)内で、静的、回転または撹拌の条件下で、125℃~200℃の温度にて、使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間(例えば、1日~14日)で、実施することができる。水熱結晶化プロセスは、通常、オートクレーブ内などの圧力下で行われ、好ましくは自生圧力下で行われる。
【0030】
分子篩結晶が形成されると、遠心分離や濾過などの標準的な分離技術によって、固体生成物が反応混合物から分離される。回収された結晶は水洗された後、数秒から数分(例えば、フラッシュ乾燥の場合は5秒~10分)または数時間(例えば、75℃~150℃でのオーブン乾燥の場合は約4~24時間)乾燥させ、合成されたままの分子篩結晶を得る。乾燥工程は大気圧または真空下で実施することができる。
【0031】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性分子篩生成物は、その細孔構造内に、合成に使用された構造指向剤の少なくとも一部を含有する。
【0032】
合成されたままの分子篩は、その合成に使用された構造指向剤の一部または全部を除去するための処理に供されてもよい。これは、合成されたままの分子篩が構造指向剤の一部または全部を除去するのに十分な温度で加熱される熱処理(例えば、焼成)によって都合よく達成される。熱処理は、当該技術分野で従来知られている任意の方法で実施されてもよい。好適な条件には、少なくとも300℃(例えば、少なくとも約370℃)の温度で少なくとも1分間、一般に20時間以内、例えば、1時間から12時間の加熱が含まれる。熱処理には大気圧以下の圧力を採用することができるが、利便性の理由から大気圧が望ましい。熱処理は約925℃までの温度で行うことができる。例えば、熱処理は、酸素含有ガスの存在下にて400℃~600℃の温度で実施することができる。
【0033】
分子篩内の任意の余分なフレームワークカチオンは、当該技術分野で周知の技術に従って(例えば、イオン交換によって)、水素、アンモニウム、または任意の所望の金属カチオンで置き換えることができる。
【0034】
分子篩の特性評価
合成されたままの無水形態では、分子篩SSZ-116は表2に示される以下のモル関係を含む化学組成を有することができる:
【表2】
式中、Tはシリコン及びゲルマニウムを含む4価元素であり;Qは3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウムカチオンを含む。いくつかの態様では、分子篩は4~12の範囲(例えば、6~10)のSiO
2/GeO
2のモル比を有することができる。
【0035】
焼成形態では、分子篩SSZ-116は以下のモル関係を含む化学組成を有することができる:
Al2O3:(n)TO2
式中、nは≧30(例えば、30~500、≧50、50~250、または50~150)であり;Tはシリコンとゲルマニウムを含む4価元素である。
【0036】
分子篩SSZ-116は、分子篩の合成されたままの形態では、少なくとも表3に示されるピークを含み、分子篩の焼成形態では、少なくとも表4に示されているピークを含む粉末XRDパターンを特徴とする。
【表3】
【表4】
【0037】
本明細書に提示されている粉末X線回折パターンは標準的な技術によって収集された。放射線はCuKα放射線であった。面間間隔(d-間隔)はオングストローム単位で計算し、線の相対強度I/Ioはピーク強度のバックグラウンドより上の最も強い線の強度に対する比率を表す。ローレンツ効果と偏光効果について強度は補正されてない。相対強度は、次の表記法で示される:w(弱い)は<20であり;m(中)は≧20~<40であり;s(強い)は≧40~<60であり;vs(非常に強い)は≧60である。
【0038】
回折パターンのわずかな変動は、格子定数の変化による試料のフレームワーク種のモル比の変動に起因し得る。さらに、無秩序な材料及び/または十分に小さい結晶は、ピークの形状と強度に影響を与え、大幅なピークの広がりにつながる。回折パターンのわずかな変動は、調製に使用される有機化合物の変化からも生じ得る。焼成もXRDパターンに小さなシフトを引き起こし得る。これらの小さな摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変化しないままである。
【0039】
収着と触媒作用
分子篩SSZ-116(構造指向剤の一部または全部が除去されている)は、現在の商業的/産業的な重要性の多くを含む多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒するための吸着剤または触媒として使用され得る。SSZ-116によって、それ自体で、または他の結晶性触媒を含む1以上の他の触媒活性物質と組み合わせて、効果的に触媒される化学変換プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするものが挙げられる。SSZ-116によって触媒され得る有機変換プロセスの例には、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、芳香族化、及び異性化が挙げられる。
【0040】
多くの触媒の場合のように、有機変換プロセスで採用される温度及び他の条件に耐性である別の材料とSSZ-116を組み合わせることが望ましい場合がある。そのような材料には、活性及び不活性の材料、及び合成のまたは天然に存在するゼオライトが挙げられ、同様に粘土、シリカ及び/またはアルミナのような金属酸化物のような無機材料が挙げられる。後者は、天然に存在してもよく、またはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン状の沈殿物またはゲルの形態であってもよい。SSZ-116と併用した(すなわち、それと組み合わせて、または新しい材料の合成中に存在する)活性のある材料の使用は、特定の有機変換プロセスにおける触媒の変換及び/または選択性を変える傾向がある。不活性材料は、反応速度を制御するために他の手段を採用することなく、経済的かつ秩序だった方法で生成物を得ることができるように所与のプロセスにおける変換量を制御するための希釈剤として好適に機能する。これらの材料は天然に存在する粘土(例えば、ベントナイト及びカオリン)に組み込まれて、商業的操作条件下での触媒の破砕強度を改善する。これらの材料(すなわち、粘土、酸化物など)は触媒の結合剤として機能する。商業的使用においては、触媒が粉末状の材料に分解するのを防ぐことが望ましいので、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土及び/または酸化物の結合剤はふつう、触媒の破砕強度を改善する目的でのみ採用されてきた。
【0041】
SSZ-116と複合化できる天然に存在する粘土にはモンモリロナイト及びカオリンが挙げられ、そのファミリーにはサブベントナイトが含まれ、その主要鉱物構成成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトであるDixie、McNamee、Georgia及びFloridaの粘土として一般に知られるカオリンが含まれる。そのような粘土は、最初に採掘された未加工の状態で、または最初に焼成、酸処理、または化学修飾を受けたような状態で使用することができる。SSZ-116との複合化に有用な結合剤には、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの混合物のような無機酸化物も挙げられる。
【0042】
前述の材料に加えて、SSZ-116は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアのような多孔質マトリックス材料、同様にシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアのような三元組成物と共に複合化することができる。
【0043】
SSZ-116と無機酸化物マトリックスの相対的な比率は大きく異なってもよく、SSZ-116の含量は複合材料の1~90重量%(例えば、2~80重量%)の範囲である。
【実施例】
【0044】
以下の例示的な例は非限定的であることが意図される。
【0045】
例1
3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウム水酸化物の合成
磁気撹拌棒を備えた100mLの丸底フラスコに、8gの3,5-ジ-tert-ブチルベンジル臭化物と、2.99gの1,2-ジメチルイミダゾールと、60mLのトルエンとを充填した。次に、還流凝縮器を取り付け、混合物を96℃で24時間加熱した。冷却後、混合物を濾過し、固形残留物を酢酸エチルで洗浄した。次に固形物を真空下で乾燥させた。
【0046】
得られた臭化物塩を、脱イオン水中の水酸化物交換樹脂と共に一晩撹拌することによって、対応する水酸化物塩に交換した。溶液を濾過し、0.1NのHClの標準溶液で少量の試料を滴定することによって濾液の水酸化物濃度を分析した。
【0047】
例2
SSZ-116の合成
風袋を量った23mLのParr反応器に、0.27gのTosoh 390HUA Y-ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比は約300)と、0.05gのGeO2と、2.5ミリモルの3-[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル]-1,2-ジメチル-1H-イミダゾリウム水酸化物の水溶液とを加えた。次に、反応器をベント型フードに入れ、水を蒸発させて、H2O/(SiO2+GeO2)のモル比を7にした(懸濁液の総質量で決定)。次に、HF(2.5ミリモル)を加え、反応器を160℃に加熱し、43rpmで約7日間回転させた。固体生成物を遠心分離により回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0048】
粉末XRDは、生成物が新しい相SSZ-116の純粋な形態であることを示した。
【0049】
生成物は、SiO2/GeO2のモル比が8であった。
【0050】
例3
SSZ-116の焼成
実施例1の合成されたままの分子篩を、マッフル炉内で550℃の空気流下で5時間焼成し、次いで冷却し、粉末XRDによって分析した。
【0051】
焼成された材料の粉末XRDパターンは、構造指向剤を除去するための焼成後も材料が安定したままであることを示した。
【0052】
例4
微細孔容積分析
窒素物理吸着のt-プロット法によるSSZ-116の焼成形態の分析は、試料が38.00m2/gの外部表面積と0.1178cm3/gの微細孔容積を持っていることを示している。すべてのN2吸着等温線はTriStar II装置(Micromeritics)を使用して77Kで実施された。分析の前に、試料を400℃の真空下でガス抜きした。t-プロット法を使用して、吸着枝にて微細孔容積を計算した。
【0053】
アルゴン物理吸着のtプロット法によるSSZ-116の水素形態の分析は、試料が51.552m2/gの外部表面積と0.058cm3/gの微細孔容積を持っていることを示している。アルゴン物理吸着は、Quantachrome Autosorb iQ装置で実施した。吸着測定の前に、試料を真空下で80℃にて1時間、120℃にて3時間、350℃にて10時間加熱することによって(10℃/分の速度で)、ガス抜きした。吸着等温線は一定線量(準平衡)法を使用して87.45Kでアルゴンを使用して収集した。微細孔容積はt-プロット法(0.1<P/P0<0.3)を使用して等温線の吸着枝から得た。
【0054】
例5
拘束係数試験
拘束係数(CI)は、直鎖アルカン対分岐アルカンを分解する材料の相対的な傾向を説明する試験である。n-ヘキサン対3-メチルペンタンの競合的分解が、W. O. Haag et al. (J. Catal. 1981,67,218-222)によって最初に説明された。試験の結果を明確にするのに役立つさらなる研究が、S. I. Zones et al. (Micropor. Mesopor.Mater.2000,35-36,31-46)及びM. E. Davis et al. (J. Catal.2010,269,64-70)によって実施されている。CI値は方程式1(Xは各種の部分変換を示す)を使用して計算できるため、n-ヘキサン(nC
6)対3-メチルペンタン(3MP)の観察された分解速度定数に比例する。
【数1】
通常報告されているように、小細孔ゼオライトはふつう、12を超えるCI値を示し;中細孔ゼオライトは2~12の範囲のCI値を示すことが多く;大細孔ゼオライトはふつう1未満のCI値を示す。
【0055】
実施例4に従って調製された水素形態のSSZ-116を4kpsiでペレット化し、粉砕し、20~40メッシュに造粒した。粒状材料の0.6gの試料を540℃にて4時間空気中で焼成し、乾燥を確実にするためにデシケーターにて冷却した。次に、分子篩床の両側にアランダムを備えた1/4インチのステンレス鋼チューブに0.47gの材料を詰めた。炉(Applied Test Systems, Inc.)を使用して反応管を加熱した。窒素を9.4mL/分及び大気圧で反応管に導入した。反応器を約800°F(427℃)に加熱し、n-ヘキサン及び3-メチルペンタン(3MP)の50/50供給物を8μL/分の速度で反応器に導入した。供給はISCOポンプによって送達された。GCへの直接試料採取は供給導入の15分後に始まった。細流(800°F)にて15分後の試験データの結果を表5に示す。
【表5】
【0056】
例6
CBV-780Y-ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比=80;Zeolyst International)をFAU源として使用したことを除いて実施例2を繰り返した。粉末XRDは生成物がSSZ-116であることを示した。
【0057】
例7
CBV-760Y-ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比=60;Zeolyst International)をFAU源として使用したことを除いて実施例2を繰り返した。粉末XRDは生成物がSSZ-116であることを示した。
【0058】
元素分析は、生成物が14.7重量%のシリコン含量、4.8重量%のゲルマニウム含量、0.34重量%のアルミニウム含量、7.66のSi/Geモル比、及び95の(SiO2+GeO2)/Al2O3モル比を有することを示した。
【0059】
例8
CBV-720Y-ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比=30;Zeolyst International)をFAU源として使用したことを除いて実施例2を繰り返した。粉末XRDは生成物がSSZ-116であることを示した。合成されたままのSSZ-116を実施例3に記載されているように焼成した。
【0060】
窒素物理吸着のt-プロット法による焼成SSZ-116の分析は、試料が0.11cm3/gの微細孔容積を持っていたことを示している。
【0061】
例9
ブレンステッド酸性度
焼成形態の実施例8の分子篩のブレンステッド酸性度は、T. J. Gricus Kofke et al. (J. Catal.1988,114,34-45);T. J. Gricus Kofke et al. (J.Catal.1989,115,265-272);及びJ. G. Tittensor et al. (J.Catal.1992,138,714-720)によって公表された説明から適合されたn-プロピルアミン温度プログラム脱着(TPD)によって決定された。乾燥したH2を流しながら試料を400℃~500℃で1時間前処理した。次に、脱水した試料を流動乾燥ヘリウム中で120℃に冷却し、吸着のためにn-プロピルアミンで飽和した流動ヘリウム中で120℃にて30分間保持した。次に、n-プロピルアミン飽和試料を流動乾燥ヘリウム中で10℃/分の速度で500℃まで加熱した。ブレンステッド酸性度は、熱重量分析(TGA)による重量損失対温度、及び質量分析による流出NH3とプロペンに基づいて算出した。試料は90.07μmol/gのブレンステッド酸性度を有しており、これは、アルミニウム部位が分子篩のフレームワークに組み込まれていることを示している。
【国際調査報告】