(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】体積熱処理方法及び関連システム
(51)【国際特許分類】
C21D 1/34 20060101AFI20230310BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20230310BHJP
C22F 1/18 20060101ALI20230310BHJP
C22F 1/08 20060101ALI20230310BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20230310BHJP
C21D 1/63 20060101ALI20230310BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230310BHJP
C22C 38/04 20060101ALI20230310BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C21D1/34 H
C22F1/04 M
C22F1/18 H
C22F1/04 A
C22F1/08 K
C21D9/00 A
C21D1/63
C22C38/00 301Z
C22C38/04
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 630D
C22F1/00 650F
C22F1/00 691Z
C22F1/00 675
C22F1/00 630L
C22F1/00 613
C22F1/00 650A
C22F1/00 630C
C22F1/00 630B
C22F1/00 630K
C22F1/00 691A
C22F1/00 623
C22F1/00 631A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543644
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021051442
(87)【国際公開番号】W WO2021148600
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518047322
【氏名又は名称】レーザー エンジニアリング アプリケーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クピシエウィックズ,アクセル ステファン エム
(72)【発明者】
【氏名】ラモス デ カンポス,ホセ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ブルネール,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ヘンロッティン,アンネ
(72)【発明者】
【氏名】カングエイロ,リリアナ
(72)【発明者】
【氏名】デクルトット,マーク
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,ポール-エティエンヌ
【テーマコード(参考)】
4K042
【Fターム(参考)】
4K042AA25
4K042BA02
4K042BA03
4K042BA05
4K042DA01
4K042DA02
4K042DA03
4K042DB04
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC04
4K042DC05
4K042DD02
4K042DD03
4K042DD05
4K042DE02
4K042DE05
4K042DE06
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】
本開示は、体積を画定する外面(22)を有する部品(2)を、体積熱処理する方法であり、本方法は、a.レーザ源(3)を設けるステップと、b.部品(2)を設けるステップと、c.部品(2)を支持するための支持手段(4)を設けるステップと、d.支持手段(4)によって所定の位置に保持されるように部品(2)を配置するステップと、e.レーザ源(3)を用いて、部品(2)の本質的に全体積における温度上昇を得るためのレーザ露光期間で、部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)にレーザ出力を照射するステップと、を含む。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積を画定する外面(22)を有する部品(2)を体積熱処理する方法であって、
該方法が、
a.レーザ源(3)を設けるステップと、
b.部品(2)を設けるステップと、
c.該部品(2)を支持するための支持手段(4)を設けるステップと、
d.該支持手段(4)によって所定の位置に保持されるように前記部品(2)を配置するステップと、
e.前記レーザ源(3)を用いて、前記部品(2)の本質的に全体積における温度上昇を得るための期間で、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)にレーザ露光出力を照射するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップeの後に、
f.前記部品(2)を冷却するために、前記ステップeの照射を停止するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記部品(2)を体積焼入れする方法であり、
前記ステップeが、前記部品(2)を構成する材料に構造変化を引き起こすことができ、
前記ステップfが、前記ステップeにおける照射前とは異なる構造で、前記部品(2)を構成する材料を凍結させるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップeの照射が、前記部品(22)の本質的に全体積において、本質的に均一な温度を与えるように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ源(3)が、コリメートされた光ビームを放射するように構成され、更に、前記ステップeにおいて、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)を、前記コリメートされた光ビームで照射するように構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップfが、対流によって前記部品(2)を冷却するために、流体を前記部品(2)の方向に導く動作を更に含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記部品(2)を処理ガスに曝露して、前記部品(2)の外面(22)を改質する動作を更に含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持手段(4)が、前記部品(2)を支持するための平坦な支持面を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記支持手段(4)が耐火材料を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持手段(4)が、20W.m
-1.℃
-1未満、好ましくは10W.m
-1.℃
-1未満、更により好ましくは5W.m
-1.℃
-1未満の熱伝導率を有する材料を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記部品(2)と前記支持手段(4)との間に接触面が存在し、該接触面が、前記外面(22)の表面積の10%未満、好ましくは2%未満、更により好ましくは1%未満の該表面積を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記部品(2)が、10W.m
-1.℃
-1超、好ましくは35W.m
-1.℃
-1超、更により好ましくは50W.m
-1.℃
-1超の熱伝導率を有する材料を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記部品(2)の体積が、0.01mm
3~5cm
3、好ましくは0.1mm
3~500mm
3、更により好ましくは1mm
3~100mm
3であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記部品(2)が、0.01mm
-1~150mm
-1、好ましくは0.1mm
-1~100mm
-1、更により好ましくは1mm
-1~10mm
-1の比表面積を有することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
-前記外面(22)が、前記外面(22)の第1の区画(23)及び第2の区画(28)を備え、
-前記ステップeが、前記外面(22)の第1の区画(23)と第2の区画(28)との間に、実質的に等しい温度を有するための露光期間で、前記外面(22)の第1の区画(23)のみにレーザ出力を照射することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
-前記外面(22)が、前記外面(22)の第1の区画(23)及び第2の区画(28)を備え、
-前記ステップeが、前記外面(22)の第1の区画(23)及び第2の区画(28)を照射することを含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップeが、10秒以下、好ましくは8秒以下、更により好ましくは5秒以下の露光期間で、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画を照射することを含むことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザ源(3)が、連続レーザ源であるか、あるいは1ミリ秒を超える期間のパルスを有する、又は20~30ミリ秒の期間のパルスを有するレーザ源であることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップeが、100W未満、好ましくは50W未満、更により好ましくは10W未満の出力のレーザビームを、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画に照射することを含むことを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記レーザ源(3)が強度調節レーザビームを供給するように適合され、前記ステップeが、前記ステップe中に時間と共に減少する照射出力で、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画を照射することを含むことを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記レーザ源(3)が、
-レーザビーム発生器(31)と、
-該レーザビーム発生器(31)によって放射された前記レーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段(35)と、
を備えることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ビーム制御手段(35)が、
-入力部と出力部とを備え、該入力部と該出力部との間で前記レーザビーム発生器(31)によって放射されたレーザビームを搬送するように適合される光ファイバ(32)であって、好ましくは、該光ファイバがマルチモードである、光ファイバ(32)と、
-レーザビーム投影デバイス(33)であって、該光ファイバ(32)から、該レーザビーム投影デバイス(33)の出口における前記レーザビームの像を、前記部品(2)上に投影するように構成されるレーザビーム投影デバイス(33)と、
を備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記レーザビーム投影デバイス(33)が、前記レーザビームの像を、コリメートされたレーザビームで、前記部品(2)上に投影するように構成されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記レーザビーム投影デバイス(33)が、前記出力部で取られた所定のマルチモード光ファイバ断面と、前記部品(2)に投影されたときのレーザビームの像との間の倍率を調整するように適合されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ビーム制御手段(35)が、
-前記レーザビーム発生器(31)から放射された前記レーザビームの直径を変更して、修正済みのコリメートされたレーザビームにするように構成されるメニスカスレンズ
を備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ビーム制御手段(35)が、
-非球面光学面を、又は位相シフトを引き起こすように適合される光学面を、有する光学要素を備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記ビーム制御手段(35)が、
-回折光学要素を備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記レーザ源(3)が、前記ビーム制御手段(35)と前記部品(2)との間に配置されたビーム集束手段(36)を更に備えることを特徴とする請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、焼鈍しの後の焼入れ方法であり、更に前記方法が、前記ステップaの前に、
g.前記レーザ源(3)を用いて、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)に、前記ステップeで使用される前記レーザ露光出力よりも小さい、焼鈍しレーザ露光出力を照射するステップと、
h.前記部品を、前のステップの焼鈍し温度まで加熱した後で、前記部品を、100℃未満の温度、好ましくは室温まで冷却するステップと、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、焼戻しの前の焼入れ方法であって、更に前記方法が、前記ステップfの後に、
i.前記焼入れのために、前記レーザ源(3)を用いて、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)に、前記ステップeで使用される前記レーザ露光出力よりも小さい、焼戻しレーザ露光出力を照射するステップ、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、
j.真空チャンバを設け、該真空チャンバ内に前記部品(2)を挿入するステップと、
k.50,000Pa未満、好ましくは10,000Pa未満、更により好ましくは5,000Pa未満で、前記部品(2)を囲む前記真空チャンバ内の部分真空を実現するステップと、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、
l.熱交換器(18)を設けるステップと、
m.前記ステップf中に、前記部品(2)を該熱交換器(18)と接触させるステップと、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項2から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、
n.液体浴(19)を設けるステップと、
o.前記ステップf中に、前記部品(2)を該液体浴(19)に部分的に浸漬する、好ましくは、前記部品(2)を完全に浸漬するステップと、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項2から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記部品(2)を少なくとも部分的に構成する前記材料が、金属材料であることを特徴とする請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記部品(2)を少なくとも部分的に構成する前記金属材料が、炭素鋼、好ましくは重量で1%の炭素を含む鋼であることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記支持手段(4)が、前記支持手段(4)と前記部品(2)との間において、ある程度の断熱性を有することを特徴とする請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
体積を画定する外面(22)を有する部品(2)を、体積熱処理するシステムであって、該システムが、
-前記部品(2)を構成する前記材料の構造変更を引き起こすために、前記部品(2)の実質的に全体積における温度上昇を達成するための期間で、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)にレーザ露光出力を照射するように構成されるレーザ源(3)と、
-前記部品(2)を支持するための支持手段(4)と、
を備える、システム。
【請求項38】
前記レーザ源(3)が、連続レーザ源であるか、あるいは1ミリ秒を超える期間のパルスを有する、又は20~30ミリ秒の期間のパルスを有することを特徴とする請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記温度上昇が、200℃超、好ましくは400℃超、より好ましくは700℃超、更により好ましくは850℃超の温度上昇であることを特徴とする請求項37から38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記部品(2)の本質的に全体積における前記温度上昇が、前記部品(2)の体積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、更により好ましくは99%の温度上昇であることを特徴とする請求項37から39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記支持手段(4)が、前記部品(2)に接触するための支持面を有し、該支持面が、前記部品(2)の外面(22)の10%未満、好ましくは5%未満、更により好ましくは前記部品(2)の外面(22)の1%未満の表面積を有することを特徴とする請求項37から40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記支持手段(4)が耐火材料を含むことを特徴とする請求項37から41のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記支持手段(4)が、前記部品(2)を支持するための平面な支持面を有することを特徴とする請求項37から42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記支持手段(4)が、20W.m
-1.℃
-1未満、好ましくは10W.m
-1.℃
-1未満、更により好ましくは5W.m
-1.℃
-1の熱伝導率を有することを特徴とする請求項37から43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記部品(2)が、15W.m
-1.℃
-1超、好ましくは35W.m
-1.℃
-1超、更により好ましくは50W.m
-1.℃
-1超の熱伝導率を有する材料を含むことを特徴とする請求項37から44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記部品(2)の体積が、0.01mm
3~1cm
3、好ましくは0.1mm
3~500mm
3、更により好ましくは1mm
3~100mm
3であることを特徴とする請求項37から45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記レーザ源(3)が、100W未満、好ましくは50W未満、更により好ましくは10W未満の出力のレーザビームを、部品(2)の前記外面(22)の区画(23)に照射するように構成されることを特徴とする請求項37から46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記システムが光ファイバを更に備え、加えて、前記レーザ源(3)からのレーザビームが、前記支持手段(4)によって支持された部品(2)の前記外面(22)の少なくとも1つの区画(23)に、該光ファイバによって到達するように適合されるように、前記システムが設計されることを特徴とする請求項37から47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項49】
前記レーザ源(3)が、
-レーザビーム発生器(31)と、
-該レーザビーム発生器(31)によって放射された前記レーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段(35)と、
を備えることを特徴とする請求項37から48のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項50】
前記ビーム制御手段(35)が、
-入力部と出力部とを備える所定の断面の光ファイバ(32)であって、該光ファイバ(32)が、該入力部と該出力部との間で、前記レーザビーム発生器(31)によって放射されたレーザビームを運ぶように適合され、好ましくは、該光ファイバがマルチモードである、光ファイバ(32)と、
-レーザビーム投影デバイス(33)であって、該マルチモード光ファイバ(32)から、該レーザビーム投影デバイス(33)の出口における前記レーザビームの像を、前記部品(2)上に投影するように適合されるレーザビーム投影デバイス(33)と、
を備えることを特徴とする請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記レーザビーム投影デバイス(33)が、前記レーザビームの像を、コリメートされたレーザビームで、前記部品(2)上に投影するように構成されることを特徴とする請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記レーザビーム投影デバイス(33)が、前記出力部で取られたマルチモード光ファイバの前記所定の断面と、前記部品(2)上に投影されたときのレーザビームの像との間の倍率を調整するように適合されることを特徴とする請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記ビーム制御手段(35)が、
-前記レーザビーム発生器(31)から放射された前記レーザビームの直径を変更して、修正済みのコリメートされたレーザビームにするように構成されるメニスカスレンズを備えることを特徴とする請求項49に記載のシステム。
【請求項54】
前記ビーム制御手段(35)が、
-非球面光学面を、又は位相シフトを引き起こすように適合される光学面を、有する光学要素を備えることを特徴とする請求項49に記載のシステム。
【請求項55】
前記ビーム制御手段(35)が、
-回折光学要素を備えることを特徴とする請求項49に記載のシステム。
【請求項56】
前記レーザ源(3)が、前記ビーム制御手段(35)と前記部品(2)との間に配置されたビーム集束手段(36)を更に備えることを特徴とする請求項49から55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記マルチモード光ファイバ(32)が、1m~12mの長さ、好ましくは2m~8mの長さを有することを特徴とする請求項50から52のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記システムが、前記レーザ源(3)からのレーザビームを、体積焼入れされる異なる部品(2)に導くためのスキャナを更に備えることを特徴とする請求項37から57に記載のシステム。
【請求項59】
前記システムが、前記部品(2)の温度を測定するための温度センサ、好ましくは高温計を更に備えることを特徴とする請求項37から58に記載のシステム。
【請求項60】
前記支持手段(4)が、前記支持手段(4)と前記部品(2)との間において、ある程度の断熱性を有することを特徴とする請求項37から59のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、体積熱処理方法に関する。第2の態様によれば、本発明は、部品の体積熱処理のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
体積熱処理(焼入れ、焼戻し、焼鈍し)は、当業者に知られている冶金学的作業である。体積熱処理は、部品を加熱温度まで加熱し、次いで、加熱温度で得られた部品の冶金構造を、例えば室温で維持するために、部品を所定の速度で冷却することを含む。体積熱処理では、本質的に部品の全体積、好ましくは部品の全体積が、このような熱処理を受ける。このような体積熱処理を受けた部品の機械的特性は、熱処理を受けていない部品の機械的特性よりも特定の用途に関して、一般に極めて良好である(例えば、熱処理が焼入れである場合、一般に、体積焼入れのおかげで部品が硬化したと言える)。例えば、体積熱処理によって、変形に対し、極めて高い抵抗を持ち得ることが多い。アルミニウム合金の場合、体積焼入れ熱処理は、硬度を低下させるが、機械的特性を改善する効果を有する。
【0003】
体積熱処理は通常、部品を炉内で加熱することによって、更に本質的に部品全体(又は本質的に部品の体積全体)において、部品を構成する材料の構造の変化、又は部品に存在する制約の解放をもたらし得る所定の温度に達するために十分な長さで、炉内に部品を保持することによって、実現される。次いで、後者は通常、例えば、部品を液体又は気体流体に曝露することによって、多くの場合、部品を液体又は気体流体に浸漬することによって、急速に冷却される。その流体は、例えば、水、油又は気体である。急冷は、温度上昇によって引き起こされる構造において、材料を室温に維持するために多くの場合、必要である。更に、1.2mm以下の厚さを有する金属部品の局所レーザ又は誘導熱処理のための技術が、知られており、これらの部品は、一般的に板形状(例えば圧延工程から生じる)である。これらの部品の全体を加熱したい場合、これらの技術は、加熱される部品に対する熱源の相対的な移動を必要とするので、これらの部品の厚さレーザ又は誘導処理は、体積処理ではない。熱源と、処理される部品との間の各相対位置について、部品の長さを横断する小さな断面のみが加熱される。その処理が局所的なものに過ぎないので、部品の全長に沿って処理作業を繰り返す必要がある。したがって、そのような処理は、体積処理ではない。その一方で、そのような熱処理は、例えば、加熱される部品と、熱源との間の相対移動を可能にするシステムを提供する必要性、不均一な加熱のリスク等、様々な欠点を呈する。更に、誘導熱処理は、強磁性材料等の特定の材料に対してのみ、工業的に有効である。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、本発明の目的の1つは、実施が単純であり、実行が速い体積熱処理の方法を提供することである。この目的のために、本発明者らは、体積を画定する外面を有する部品を、体積熱処理する方法を提案し、
本方法は、
a.レーザ源を設けるステップと、
b.部品を設けるステップと、
c.部品を支持するための支持手段を設けるステップと、
d.支持手段によって所定の位置に保持されるように部品を配置するステップと、
e.レーザ源を用いて、部品の本質的に全体積における温度上昇を得るための期間で、部品の外面の少なくとも1つの区画にレーザ露光出力を照射するステップと
を含む。
好ましくは、支持手段は、支持手段と部品との間において、ある程度の断熱性を有する。後に説明するように、本発明者らは、そのような断熱性の大きな度合いを用いることを示し、これにより、照射されている部品の外面区画の平面において、レーザ源によって生成された熱(又は熱エネルギー)は、支持手段よりも部品を構成する材料に拡散しやすくなる。
【0005】
本発明者らは、予想に反して、レーザ源のみを使用して、例えば部品を硬化させるために、部品に体積単位で、熱処理を施すことが可能であることを観察した。本発明の方法は、部品の明らかな変形なしに、熱処理を行うことを可能にする。好ましくは、上記温度上昇は、200℃超、より好ましくは400℃超、更により好ましくは700℃超、更により好ましくは850℃超である。
【0006】
本発明の方法は、レーザ源が、部品の外部環境を加熱することなく、部品を体積単位で加熱し得るので、特に効果的である。したがって、部品の冷却が開始されるとき、部品に蓄えられた熱のみを放散するだけでよい。特に、部品の支持手段によって、又は炉の壁によって蓄えられた熱量を、排出する必要がない。部品を加熱するためにレーザ源を使用することによって、部品のみを加熱することができ、部品の直接的な外部環境を加熱しない。これは、特に、直火、放射管、又は電気抵抗等の従来の加熱技術と比較して、レーザ源の高い放射力により可能である。誘導加熱技術に対する本発明の利点は、非強磁性材料の熱処理が、可能であることである。そのような利点は、熱処理パラメータの制御の容易さを犠牲にしても、本発明の方法で熱処理され得る部品の形状を犠牲にしても、達成されない。好ましくは、加熱用のレーザ源と、自らと部品との間において、ある程度の断熱性を有する支持手段と、の組合が、レーザ源によって供給される熱を部品に限定して与え、構造改質温度を達成し得る。レーザ源と、自らと部品との間において、ある程度の断熱性を有する支持手段との、この同じ組合せは、レーザ源からのレーザビームが消滅するとすぐに、十分な急冷を開始して、部品を構成する材料を加熱ステップ(ステップe)中に得られた構造に、凍結させ得る。部品がもはやレーザ源からエネルギーを受け取らなくなるとすぐに、部品内の熱は、例えば放射、対流、又は任意の他の熱交換手段によって、部品の外側の環境に向かって極めて迅速に放熱される。これらすべての理由から、本発明による方法は、知られた体積熱処理方法と比較して効率的であると説明し得る。
【0007】
本発明の方法が実施されるとき、部品に供給される熱は、部品の直接的な外部環境をほとんど加熱しない。このことは、特に、必要に応じて、自らと部品との間において、ある程度の断熱性を有する支持手段に起因し、更に、加熱される部品又はその一部のみにレーザビームを限定し得るという事実に起因する。レーザ源によって供給される熱エネルギーが、部品のみを加熱し、部品の環境を加熱しないので、部品の外側の環境を著しく加熱しないことにより、部品から熱を迅速に吸収し得る。したがって、熱処理される部品の加熱のみでよい本発明の方法により、温度上昇段階及び冷却段階の両方で、かなりのエネルギーを節約し得る。したがって、本発明の方法は、部品の熱処理に関連するエネルギー消費の低減を望むとき、従来技術の方法と比較して特に有利である。
【0008】
ステップeにおいて、レーザの露光出力は、所与の温度における部品の熱損失に実質的に等しくなるように、好ましくは選択される。したがって、熱処理温度に達するとき、部品を数秒間又は数分間も、安定した温度に維持することができ、これは、レーザ源の適切な出力を選択するだけで十分であるので、容易である。部品を所定の温度に維持するためのレーザ露光出力は、選択された所定の温度に直接依存する。本発明の好ましい実施形態では、ステップeで供給されるレーザ出力は、部品の本質的に全体積における温度安定化を達成するために、更に、この温度をステップeで到達した温度よりも低い温度で所定の期間を維持するために、減少され、そのような温度は通常、等温段階の温度である。そのような等温段階は、当業者に知られており、熱処理の最後の所望の冶金相、及び処理された材料に応じて、熱処理を適合させることを意図している。本発明の方法及びシステムは、熱処理中に、そのような等温段階の実施に、特に有利であり、特に、本発明は、初期熱処理温度と等温段階温度との間を迅速に移行し得る。好ましくは、等温段階は、10分~5時間、好ましくは30分~2時間の等温段階の期間を有する。本発明の好ましい実施形態によって定義されるような小さい体積部品の場合、10分未満の期間の等温段階が想定され得る。
【0009】
部品の本質的に全体積とは、部品の体積の少なくとも80%、好ましくは部品の体積の少なくとも90%、より好ましくは部品の体積の少なくとも95%、更により好ましくは部品の体積の少なくとも99%を意味する。部品又は試料は、mm3で表され得る特定の体積、及びmm2で表され得る外面を有する。しかしながら、体積及び外面に他の単位を使用することもできる。
【0010】
非限定的に、本発明の熱処理方法は、
-医療用部品、特に医療用インプラント、例えば歯科用インプラント、関節プロテーゼ等、
-精密機械又は精密機構の部品、
-セキュリティ部品、及び
-形状記憶材料を備える部品
の用途に使用され得る。
【0011】
本発明による方法の別の利点は、比較的単純な制御手段だけでよく、実施が極めて容易であることである。実際、本発明による熱処理のプログラミングは、ほとんどの場合、制御手段による時間に応じた、レーザ源に供給される電力の制御でよい。制御手段は、熱処理される部品の物理的特性及び幾何学的特性に、並びに所望の熱処理(勾配、段階等)に、レーザ源の出力を適合させ得る。したがって、制御手段は、オペレータによってプログラムされた熱処理に対応する勾配及び段階に従って部品を熱処理するために、時間に応じて供給されるレーザ出力を定義する。したがって、本発明の方法は、その熱処理システムで、多数の異なる材料での熱処理、異なる形状を有する部品での熱処理、及び広い温度範囲にわたる熱処理を、実現し得る。したがって、制御手段は極めて単純であり、レーザに供給される出力は、他のタイプの電気加熱手段に供給される出力と比較して低い。
【0012】
好ましくは、本方法は、ステップeの後に、
f.部品を冷却するために、ステップeの照射を停止するステップ
を更に含む。
【0013】
この好ましい実施形態では、レーザ源によって部品が加熱された後、部品の冷却を可能にするために、ステップが追加される。冷却段階も有する知られた熱処理と比較して、この好ましい実施形態は単純である。実際、本方法は、温度上昇ステップと冷却ステップとの間で、試料(又は部品)の移動又は取扱いが不要である。特に、冷却ステップfは、部品を液体に浸漬する必要がない。この理由からも、本発明による方法は単純である。これらの操作が不要であることにより、速い冷却段階の体積熱処理方法も可能である。従来技術から知られている冷却速度は、10~100℃/秒の間で変化する。本発明の方法及びシステムは、ステップfにおいて、100℃/秒超、好ましくは150℃/秒超の冷却速度を達成し得る。
【0014】
熱処理方法は、体積焼入れであり、これは、部品を加熱温度まで加熱し、次いで、加熱温度で得られた部品の冶金構造を、例えば室温で維持するために、部品を十分に速い速度で冷却することを含む。体積焼入れでは、部品の本質的に全体積、好ましくは部品の全体積が、このような熱処理を受ける。このような体積焼入れ方法を受けた部品の機械的特性は、非焼入れ部品の機械的特性よりも、一般に極めて良好である(一般に、体積焼入れのおかげで部品が硬化したとする一方で、アルミニウム合金等の特定の材料の場合、焼入れ作業は、硬度を低下させるが、それにもかかわらず、その機械的特性を改善する効果を有し得る)。一例として、体積焼入れによって、多くの場合、極めて高い変形抵抗及び/又は耐摩耗性を達成し得る。
【0015】
体積焼入れは通常、部品を炉内で加熱することによって、更に本質的に部品全体(又は本質的に部品の体積全体)において、所定の温度に達するために十分な長さで保持することによって実現され、それによって、部品を構成する材料の構造の変化を達成し得る。次いで、後者は、部品を液体又は気体流体に曝露することによって、多くの場合、部品を液体又は気体流体に浸漬することによって、急速に冷却される。その流体は、例えば、水、油又は気体である。急冷は、温度上昇によって引き起こされる構造において、材料を凍結させ得る。
【0016】
好ましくは、本発明の1つの目的は、実施が容易であり、実現が速い、体積焼入れ方法を提案することである。焼入れは、当業者に知られた用語である。好ましくは、本発明の方法は、部品の体積焼入れ方法であり、
ステップeは、部品を構成する材料に構造変化を引き起こすことができ、
ステップfは、ステップeにおける照射前とは異なる構造で、部品を構成する材料を凍結するように構成される。
例えば、部品を構成する材料の構造の変化は、相変化、又は冶金構造の変化である。これは当業者に知られている。相変化は同素変態である。例えば、レーザ源による照射によって引き起こされる部品の温度上昇中に、部品を形成する材料の状態図における相変化線が交差するとき、相変化が起こり得る。好ましくは、焼入れ中に、材料は、ステップeで得られた構造において凍結される。このために、ステップfにおける冷却は、一般に極めて高速であるべきであるが、これは材料の種類に依存する。
【0017】
本発明者らが提案した体積焼入れ方法は、極めて驚くべきものである。すべての可能性のあるものに対して、レーザ源のみを使用して、部品を硬化させるために、部品に体積焼入れを施し得ることを確認した。本発明の方法は、部品の明らかな変形なしに、焼入れを実現し得る。部品に明らかな変形がないということは、本焼入れ方法が部品の全体積を極めて短時間で処理し得るという事実に起因していることを、本発明者らは見出した。
【0018】
本発明の方法は、温度上昇ステップと冷却ステップとの間で、試料の移動又は操作を必要としないので、単純な方法で部品の体積焼入れが可能である。冷却ステップfは、部品を液体に浸漬する必要なしに、部品を形成する材料を、新しい構造、例えば、加熱中(ステップe)に得られた構造に、凍結させる。この理由からも、本発明による方法は単純である。これらの操作がないことにより、高速な体積焼入れ方法も可能になる。
【0019】
本発明の方法は、レーザ源が部品の外側の環境を加熱することなく、部品を効果的に加熱し得るので、特に効果的である。したがって、ステップfが部品全体を急冷するように開始されるとき、部品に蓄えられた熱のみを放散すればよい。特に、部品の支持手段によって、又は炉の壁によって、又は部品を囲む気体環境によって、蓄えられた熱量を放散する必要はない。部品を加熱するためにレーザ源を使用することによって、部品のみを加熱することができ、部品の直接的な外部環境を加熱しない。これは、特に、直火、放射管、電気抵抗又は誘導等の従来の加熱技術と比較して、レーザ源の高い放射力により可能である。好ましくは、加熱用のレーザ源と、自らと部品との間において、ある程度の断熱性を有する支持手段と、の組合が、レーザ源によって供給される熱を部品に限定して与え、構造改質温度を達成し得る。レーザ源と、自らと部品との間において、ある程度の断熱性を有する支持手段と、のこの同じ組合せは、レーザ源からのレーザビームが消滅するとすぐに、十分な急冷を開始して、部品を構成する材料を、例えば、加熱ステップ中(ステップe)に得られた新しい構造に、凍結させ得る。部品がもはやレーザ源からエネルギーを受け取らなくなるとすぐに、部品内の熱は、例えば放射、対流、又は任意の他の熱交換手段によって、部品の外側の環境に向かって極めて迅速に放熱される。これらすべての理由から、本発明による方法は、知られた体積焼入れ方法と比較して効率的であると説明し得る。
【0020】
本発明の体積焼入れ方法が実施されるとき、部品に供給される熱は、部品の直接的な外部環境をほとんど加熱しない。このことは、特に、必要に応じて、自らと部品との間において、ある程度の断熱性を有する支持手段に起因し、更に、加熱される部品又はその一部のみにレーザビームを限定し得るという事実に起因する。冷却ステップ、つまりステップf中に、部品の外側の環境を著しく加熱しないことにより、部品から熱を迅速に放散することができ、これは、部品を構成する材料が所与の構造で凍結される効率的な焼入れ方法のために重要である。
【0021】
例えば、部品は鋼製であり、鋼製部品の焼入れ温度は、多くの場合、700℃~950℃である。例えば、アルミニウム製部品の場合、焼入れ温度は、多くの場合、440℃~535℃である。例えば、チタン製部品の場合、焼入れ温度は、300℃~600℃である。
【0022】
部品の本質的に全体積とは、部品の体積の少なくとも80%、好ましくは部品の体積の少なくとも90%、より好ましくは部品の体積の少なくとも95%、更により好ましくは部品の体積の少なくとも99%を意味する。例えば、部品が、15W.m-1.℃-1を超える熱伝導率を有する材料を含むと、これにより、部品は、好ましくは、部品の体積の100%で、本発明の熱処理の影響を受け得る。
【0023】
好ましくは、ステップeにおける照射は、部品の本質的に全体積において、本質的に均一な温度を与えるように構成される。本発明者らは、驚くべきことに、レーザ照射を使用して、部品の全体積において実質的に均一な温度を得ることを可能にする、ステップeのようなレーザ出力及び期間を選択し得ることを実際に見出した。これは、部品の体積の異なる領域が、ステップeにおいて本質的に同じ温度上昇を受けるので、効率的で良好な品質の体積焼入れ方法を、最終的にもたらす。
本質的に均一な温度とは、部品の体積の2点間の最大相対温度差が最大20%、好ましくは最大10%、更により好ましくは最大1%であることを意味する。
したがって、本実施形態では、部品の断面(横方向又は長手方向)に応じて、本質的に平坦な又は均一な温度プロファイルが、部品の外面とコアとの間に得られるまで、部品は、ステップeで照射される。ここで、長手方向又は横方向断面とは、レーザ源からのレーザビームの方向に、平行に形成された断面を意味する。
【0024】
好ましくは、レーザ源は、コリメートされた光ビームを放射するように構成され、更にステップeにおいて、上記部品の外面の少なくとも1つの区画を、コリメートされた光ビームで照射するように構成される。
部品の照射に、コリメートされたレーザビームを使用することにより、ビームの集束又は発散に対する距離の調整が、不要になり得る。また、コリメートされたレーザビームは、部品の外面の輪郭(いくつかの高さを有する輪郭)にかかわらず、ステップeにおいて、部品を照射し得る。したがって、コリメートされたレーザビームが、可能な限り最も均一な出力密度で、異なる高さを有する部品の区画を同時に照射し得るので、コリメートされたレーザビームは、均一な方法で非平面の輪郭を有する部品の外面の区画を照射し得る。したがって、コリメートされたレーザビームの使用により、集束レーザビームによる熱処理と比較して、複雑な表面形状を有する部品に適合し得る熱処理が、可能になる。本発明の別の実施形態では、レーザビームは、均質化され、次いで部品に向かって集束される。
【0025】
好ましくは、ステップfは、対流によって部品を冷却するために、流体を部品の方向に導く動作を更に含む。そのような動作は任意であるが、特に対流による熱伝達によって、部品の冷却を加速し得る。流体は、気体又は液体であり得る。
【0026】
好ましくは、本方法は、部品を処理ガスに曝露して、部品の外面を改質する動作を更に含む。例えば、ガスが窒素であると、これにより、熱処理中に、部品の外面に窒化が生じる。
【0027】
好ましくは、支持手段は、部品を支持するための平坦な支持面を有する。これは、部品が平坦な外面の少なくとも1つの区画を有する場合に、部品の機械的安定性を高め、部品の高温制約を最小限に抑えて材料のクリープを防止し得る。
【0028】
好ましくは、支持手段は耐火材料を含む。本発明の方法、特に体積焼入れ方法に対応する好ましい実施形態が、支持手段と部品との間の断熱性の程度が大きいほど、いっそう効果的であることを、本発明者らは確認した。これは、ステップe中に、部品から支持手段に向かう熱伝達を最小限に抑えることができ、熱が、外部よりも、部品自体の内部で拡散する傾向があるので、部品の体積において、大きな均一性を有する温度上昇を、最終的に有し得る。これに関連して、本発明者らは、好ましくは断熱材料、より好ましくは耐火材料(この用語は当業者に知られている)で作られた支持手段を使用することを提案する。耐火性という用語は、当業者に知られている。
【0029】
好ましくは、支持手段は、20W.m-1.℃-1未満、より好ましくは10W.m-1.℃-1未満、更により好ましくは5W.m-1.℃-1未満の熱伝導率を有する材料を含む。W.m-1.K-1の等価単位が、W.m-1.℃-1である。熱伝導率は、当業者に知られた用語である。熱伝導率の好ましい値は、25℃の温度について与えられる。この好ましい実施形態では、部品の広範囲の可能な材料、特に広範囲の金属に対して、支持手段の熱伝導率と比較して、焼入れされる部品が、比較的高い熱伝導率を有し得る。これにより、支持手段を可能な限り小さく加熱しつつ、部品の全体積における温度上昇の高度な均一性が、可能になる。支持手段のために、必ずしも耐火材料を使用することなく、20W.m-1.℃-1未満、好ましくは10W.m-1.℃-1未満、更により好ましくは5W.m-1.℃-1未満の熱伝導率を有する支持手段を想定し得ることに留意されたい。これは、本発明の方法の別の好ましい実施形態を構成する。
【0030】
好ましくは、部品と支持手段との間に接触面が存在し、その接触面は、外面の表面積の10%未満、より好ましくは2%未満、更により好ましくは1%未満の表面積を有する。支持手段が同じ熱伝導率では、部品と支持手段との間の接触面が小さいとき、部品と支持手段との間の熱交換は小さくなる。
【0031】
好ましくは、本発明の熱処理方法は、熱伝導率が低く、更に部品と支持手段との間の接触面が小さい支持手段に、特に好適に適合する。したがって、乗算(支持手段の熱伝導率)x(部品と支持手段との間の接触面)を可能な限り小さくすることが、特に重要である。
【0032】
好ましくは、部品は、10W.m-1.℃-1超、より好ましくは35W.m-1.℃-1超、更により好ましくは50W.m-1.℃-1超の熱伝導率を有する材料を含む。すでに上で示したように、本発明者らは、部品の外面の平面で発生した熱の伝達が、支持手段に向かうような外側ではなく、主に部品の体積内であるとき、本発明の方法、特に体積焼入れ方法に対応する好ましい実施形態が、いっそう効果的であることを確認した。これは、熱が、外部よりも部品内で拡散する傾向があるので、部品の体積内に大きな均一性を示す温度上昇を、最終的に有し得る。これに関連して、本発明者らは、好ましくは十分に高い熱伝導率を有する材料で作られた部品を使用することを提案する。
【0033】
好ましくは、部品の体積は、0.01mm3~5cm3、より好ましくは0.1mm3~500mm3、更により好ましくは1mm3~100mm3である。驚くべきことに、本発明者らは、小さな体積の部品、すなわち1cm3未満(したがって、かなり質量も小さい)が、本発明による方法で、特に効率的であり得ると分かった。これは、体積焼入れ方法に対応する好ましい実施形態にも当てはまる。これは極めて驚くべきことである。妥当な説明は以下の通りである。熱処理される(焼入れされる)部品の体積が小さいとき、すなわち、例えば1cm3未満のとき、外面で発生した熱を放散し得る材料がほとんどなく、したがって、部品の全体積が、極めて急速に加熱される傾向がある。したがって、体積の小さい部品の質量は、部品の外面における温度上昇の結果として、部品に、十分に大きい熱勾配を生成しない。したがって、均一に加熱されず、照射面の温度に近い温度に達することなく、部品の体積が表面加熱を吸収し得る表面焼入れと、このプロセスは異なる。例えば、アルミニウム製部品又は真鍮製部品の場合で、部品の体積は、5cm3未満である。例えば、鋼製部品又はチタン製部品の場合で、部品の体積は、2cm3未満である。本発明の方法のための小さい部品質量の例は、1~100グラムの間、好ましくは10~50グラムの間、更により好ましくは15~30グラムの間である。1グラム未満の質量の部品、例えば0.005~0.1グラムの質量を有する部品を提供することも可能である。
【0034】
好ましくは、部品は、0.01mm-1~150mm-1、より好ましくは0.1mm-1~100mm-1、更により好ましくは1mm-1~10mm-1の比表面積を有する。部品の比表面積は、部品の外面の面積を部品の体積で割ったものに等しい。熱処理された部品における冶金構造の勾配が、ほぼなく(完全になく)、したがって、例えばステップf中に、部品の冶金構造の体積均一性を得るために、そのようなステップを含む好ましい実施形態では、部品は、小型化ではなく、同じ体積を有する球の比表面積よりも少なくとも10倍大きい比表面積を有することが好ましい。これにより、例えば、ステップfにおいて、そのようなステップを含む好ましい実施形態では、部品を、容易かつ迅速に冷却し得る。そのような制約、したがってそのような好ましい実施形態は、本発明の体積処理方法が体積焼入れ方法に対応するとき、特に有利である。
【0035】
好ましくは、
-上記外面が、第1及び第2の外面区画を備え、
-ステップeが、外面の第1の区画と第2の区画との間に、実質的に等しい温度を有するための露光期間で、外面の第1の区画のみにレーザ出力を照射することを含む。
部品の第1及び第2の外面区画の間の実質的に等しい温度は、それらが、50℃未満、好ましくは25℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは5℃未満、更に最も好ましくは2℃未満の温度差を有することを意味する。
部品の外面の区画のみを照射するだけでよいので、この好ましい実施形態は、方法を特に容易に実施し得る。特に、部品を片側からのみ照射することも想定し得る。
【0036】
好ましくは、
-外面が、第1及び第2の外面区画を備え、
-ステップeが、第1及び第2の外面区画を照射することを含む。
この他の可能な実施形態によれば、本発明者らは、部品の外面の少なくとも2つの異なる区画を照射することを提案する。例えば、部品の面の2つ、例えば、部品反対側を照射し得る、例えば、部品の右側及び左側を照射し得る。これにより、部品の2つの異なる端部から温度上昇を引き起こすことができ、これは、厚さのある部品に特に有用であり得る。
【0037】
好ましくは、ステップeは、10秒以下、より好ましくは8秒以下、更により好ましくは5秒以下の露光期間で、部品の外面の少なくとも1つの区画を照射することを含む。本発明者らは、このような長いレーザ露光期間を使用して、特に良好な結果が達成されることを見出した。特に、そのような露光期間は、照射された部品の本質的に全体積における温度上昇を可能にし、多くの場合、部品の全体積における均一な温度上昇を可能にする。
【0038】
好ましくは、レーザ源は、連続レーザ源であるか、あるいは1ミリ秒を超える期間のパルスを有する、又は20~30ミリ秒の期間のパルスを有するレーザ源である。本発明者らは、安価な連続レーザ源を使用して、極めて良好な結果を得ることが可能であることを見出した。比較的長いパルス、すなわち1ミリ秒を超えるパルスを有するレーザ源でも、良好な結果が得られる。このようなパルス期間を有する連続レーザ源又は光源は、安価であるだけでなく、本発明の方法の範囲内で、極めて一般的で、実装が容易である。そのようなレーザ源は、広範囲の波長で利用可能である。これは、部品を構成する材料に適合した波長を有するため、有用であり、したがって、部品による放射の吸収を、更に、この部品の温度上昇のための熱への放射の変換を最大にするために、有用であり得る。好ましい実施形態によれば、放射の偏光は、部品による放射の吸収が最大になるように、調整され得る。例えば、部品上のレーザビームの偏光は、直線s又はp、楕円形又は円形であり得る。湾曲した外面を有する、又は異なる勾配を有する部品を熱処理するとき、レーザビームの入射角(レーザビームの伝搬方向と照射点における面の法線とのなす角)によって、反射係数は変化し得る。熱処理される部品によるレーザビームの吸収を最大にするために、好ましくは、レーザビームが、10°を超える部品の区画との入射角を有するとき、部品の照射面全体で、部品による良好な吸収を得るために、レーザビームの偏光を、直線偏光、好ましくは偏光pに修正することは興味深い。湾曲した部品、又は異なる勾配を有する部品の場合、特定の直線偏光(好ましくはp)の使用は、外面の照射区画によるレーザビームの吸収の良好な均一性をもたらし得る。
【0039】
好ましくは、ステップeは、100W未満、より好ましくは50W未満、更により好ましくは10W未満の出力を有するレーザビームを、部品の外面の少なくとも1つの区画に照射することを含む。本発明者らは、本発明の方法が体積焼入れ方法であるとき、低出力レーザ源を用いてでも、極めて良好な結果、特に極めて良好な焼入れ結果を得ることが可能であることを見出した。したがって、一部の部品では、例えば10W又は6W未満の出力の連続レーザ源で、1400Kの温度上昇を得ることが可能である。そのような場合、本発明者らは、室温(約20℃)での部品の自然冷却、すなわち対流等の強制冷却なしの冷却には、35秒未満かかることを確認した。
【0040】
好ましくは、レーザ源は、強度調節レーザビームを供給するように構成され、ステップeは、ステップe中に、時間と共に減少する照射出力で、部品の外面の少なくとも1つの区画を照射することを含む。この好ましい実施形態では、部品の任意の部分の過剰な過熱、特にレーザ源によって照射される外面区画の過剰な過熱のリスクを低減する、又は更にはそのリスクを回避することが可能である。過度の過熱は、一般に許容され得ず、部品の局所的又は完全な溶融を引き起こす。本発明のこの好ましい実施形態では、加熱ステップe中に、レーザビームの強度が低減されるので、このリスクが低減される。
【0041】
好ましくは、レーザ源は、
-レーザビーム発生器と、
-レーザビーム発生器によって放射されたレーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段と
を備える。
【0042】
この好ましい実施形態では、レーザビーム発生器は、レーザビーム制御手段に光学的に接続される。好ましくは、レーザビーム制御手段は、レーザビーム整形手段である。レーザビーム制御手段は、レーザビームの伝搬方向に垂直な平面に従って決定されるレーザビームの強度プロファイルを整形し得る。ビーム制御手段は、均一な強度分布のビームを得ることを可能にし、したがって、出力密度に関して均一に、部品を照射し得る。
【0043】
好ましくは、ビーム制御手段は、
-入力部と出力部とを備え、入力部と出力部との間でレーザビーム発生器によって放射されたレーザビームを搬送するように構成される光ファイバであって、より好ましくは、その光ファイバがマルチモードである、光ファイバと、
-レーザビーム投影デバイスであって、光ファイバから、レーザビーム投影デバイスの出口におけるレーザビームの像を、部品上に投影するように構成されるレーザビーム投影デバイスと
を備える。
【0044】
この好ましい実施形態では、レーザビーム発生器は、マルチモード光ファイバの入力部に光学的に接続され、これにより、本質的にレーザビーム全体は、マルチモード光ファイバによってその出力部に搬送される。レーザビーム発生器がマルチモード・レーザ・ビーム発生器であるとき、マルチモード光ファイバによって搬送されたマルチモード・レーザ・ビームは、均一なレーザビーム強度でファイバの出力面(出力部)を照射するように、マルチモード光ファイバを通過するときに混合される。好ましくは、マルチモード光ファイバが曲げられるとき、出力面上の良好なモード混合、したがって、良好なビーム強度均一性が達成される。例えば、マルチモード光ファイバは、「8」の形状に曲げられる。好ましくは、良好なモードの混合、したがって、マルチモード光ファイバの出力部における良好な強度プロファイル均一性を可能にするために、マルチモード光ファイバは、2mを超える長さ、より好ましくは6m~10m、例えば8mの長さを有する。
【0045】
レーザビーム投影デバイスは、マルチモード光ファイバの出力部の(出力面の)像を熱処理される部品上に投影し得る。レーザ源の本実施形態は、レーザビームの強度プロファイルを変更することができ、これにより、マルチモード光ファイバの入力部において、(マルチモード)レーザビームは、レーザビーム発生器によって放射されるときに実質的にガウス強度プロファイルを有し、出力部において、レーザビームは、レーザビームが照射する出力面の実質的に全体にわたって、均一な強度プロファイルを有する。次いで、レーザビーム投影デバイスは、均一な強度で照射されたマルチモード光ファイバの出力面の像を、熱処理される部品上に形成し得る。
【0046】
好ましくは、レーザビーム投影デバイスは、レーザビームの像を、コリメートされたレーザビームで、部品上に投影するように構成される。
【0047】
レーザ源の本実施形態の別の利点は、コリメートされたレーザビームを部品に照射し得ることである。これは、レーザ源からの部品の距離を調整する追加のステップを必要としないことによって、方法を単純化し得るので、(すでに上述したように)いっそう有利である。更に、均一な強度のこのようなコリメートされたレーザビームは、高いフォームファクタによって特徴付けられた複雑な幾何学的形状を有する、又は曲げられた表面を有する部品を、出力密度に関して、均一に照射し得る。
【0048】
好ましくは、レーザビーム投影デバイスは、出力部で取られた所定のマルチモード光ファイバ断面と、部品に投影されたときのレーザビームの像との間の倍率を、調整するように構成される。
【0049】
この好ましい実施形態では、レーザビーム投影デバイスは、マルチモード光ファイバの出力部でレーザビームを投影して(その後発散する)、コリメートされたレーザビームで熱処理される部品上のレーザビーム像にするために、第1及び第2の集光レンズを備えることが好ましい。好ましくは、第1及び第2のレンズは、マルチモード光ファイバの出力部におけるレーザビームの主伝搬方向によって画定される光軸に平行な並進に従って、互いに対して相対的に移動可能である。好ましくは、第1のレンズをマルチモード光ファイバ出力距離に調整するために、第1のレンズは、マルチモード光ファイバの出力部に対して移動可能である。好ましくは、第1のレンズと第2のレンズとの間の距離の増加は、倍率を増加し得る。したがって、レーザビーム投影デバイスは、レーザビームのサイズを、熱処理される部品のサイズに適合させ得る。例えば、マルチモード光ファイバは、400μmの断面を有し、部品に投影された、マルチモード光ファイバの出力部におけるレーザビームの像は、6mmの直径を有する。本発明のレーザ源のこの好ましい実施形態は、均一で寸法調整可能なレーザ強度で、部品を照射し得る。部品の温度上昇がその後、部品の表面の平面で、熱勾配がほぼ無い又はゼロの状態で発生するので、部品上の均一なビーム強度は、高品質の熱処理を実現し得る。一方で、従来技術のレーザ源による加熱は、そのようなレーザ源のガウス強度プロファイルに起因して、部品の表面に熱勾配を必然的に引き起こす。レーザビーム投影デバイスの別の利点は、レーザビームの強度の均一性を変更することなく、部品上のレーザビームの出力において、レーザビームの像の直径の調節を可能にすることである。
【0050】
好ましくは、ビーム制御手段は、
レーザビーム発生器から放射されたレーザビームの直径を変更して、修正済みのコリメートされたレーザビームにするように構成されるメニスカスレンズ
を備える。好ましくは、ビーム制御手段は、それぞれの光軸に沿って位置合わせされた複数のメニスカスレンズを備える。例えば、各メニスカスレンズの少なくとも1つの面は、メニスカスレンズの使用による収差を制限するために、非球面である。
【0051】
好ましくは、ビーム制御手段は、
非球面光学面を、又は位相シフトを引き起こすように構成される光学面を、有する光学要素を備える。
【0052】
好ましくは、ビーム制御手段は、
-回折光学要素
を備える。
【0053】
好ましくは、レーザ源は、ビーム制御手段と部品との間に配置されたビーム集束手段を更に備える。
【0054】
好ましくは、本発明の方法は、焼戻しの前の焼入れ方法であり、更にそれは、ステップfの後に、
i.焼入れのために、レーザ源を用いて、部品の外面の少なくとも1つの区画に、ステップeで使用されるレーザ露光出力よりも小さい焼戻しレーザ露光出力を照射する、
追加のステップを含む。
部品の焼戻しは、部品を、焼戻し温度(焼入れ温度より低い)で、所定の期間保持することによって実現される。次いで、部品を室温まで適切に冷却する。焼戻しは、部品を延性に、及び強靭にすることによって、焼入れの影響を低減し得る。このような焼戻しは、部品の位置を変更することなしに、焼入れ後に有利に実現することができ、これにより、このような焼戻しステップを実施し得る方法及びシステムの実施が大幅に単純化される。好ましくは、鋼製部品の焼戻し温度は、200℃~450℃である。好ましくは、アルミニウム製部品の焼戻し温度は、150℃~200℃、例えば170℃である。
【0055】
好ましくは、本発明の方法は、焼鈍しの後の焼入れ方法であり、更にステップaの前に、
g.レーザ源を用いて、部品の外面の少なくとも1つの区画に、ステップeで使用されるレーザ露光出力よりも小さい焼鈍しレーザ露光出力を照射するステップと、
h.部品を、前のステップの焼鈍し温度まで加熱した後で、部品を、100℃未満の温度、好ましくは室温まで冷却するステップと
の追加のステップを含む。
焼鈍しは、部品を所定の温度(焼鈍し温度と呼ぶ)に加熱し、部品を、この焼鈍し温度で所定時間維持し、次いで、室温に戻した後、安定平衡状態に近い、部品を構成する材料の構造状態を得るために、所定の冷却速度で、部品を冷却することを含む。この作業は、例えば以前の熱処理に関連する残留制約を排除する、又は低減すること、あるいは(変形、機械加工、熱処理等)破砕なしに、後の動作に有利な構造の形成を得ることを目的とする。このような焼鈍しは、支持手段上の部品の位置を変更することなしに、焼入れの前に、有利に実現することができ、これにより、このような焼鈍しステップを実施し得る方法及びシステムの実装を大幅に単純化する。
本発明の方法では、部品の位置を変更する必要なしに(場合によっては極めて短時間で)、同じデバイスで3つの熱処理段階(焼鈍し、次いで焼入れ、次いで焼戻し)を提供し得る。そのような場合、Tannealing温度での第1の加熱段階があり、それは、制御した冷却の前に、Tannealingで所定時間保持され、続いて、Tquenching温度での第2の加熱段階があり、それは、制御した冷却の前に、Tquenchingで所定時間保持され、Tquenchingは、Tannealingより大きく、続いて、Ttempering温度での第3の加熱段階があり、それは、制御した冷却の前に、Ttemperingで所定時間保持され、Tquenchingは、Ttemperingより大きい。
【0056】
好ましくは、本発明の方法は、
j.真空チャンバを設け、真空チャンバ内に部品を挿入するステップと、
k.50,000Pa未満、好ましくは10,000Pa未満、更により好ましくは5,000Pa未満で、部品を囲む真空チャンバ内の部分真空を実現するステップと
の追加のステップを更に含む。
次いで、ステップe、及び/又はステップf、及び/又はステップg、及び/又はステップhは、高真空又は部分真空で実現され得る。その利点は、部品を構成する材料の汚染を良好に制御し得る、又は更には回避し得ることである。
【0057】
好ましくは、本発明の方法は、
l.熱交換器を設けるステップと、
m.ステップf中に、部品を熱交換器と接触させるステップと
の追加のステップを更に含む。
このような好ましい実施形態は、部品の迅速で、効率的な冷却を可能にする。
【0058】
好ましくは、本発明の方法は、
n.液体浴を設けるステップと、
o.ステップf中に、部品を液体浴に部分的に浸漬する、好ましくは、部品を完全に浸漬するステップと
の追加のステップを更に含む。
このような好ましい実施形態は、部品の迅速で、効率的な冷却を可能にする。
【0059】
好ましくは、部品を少なくとも部分的に構成する材料は、金属材料である。本発明の方法は、実際に、この種の材料(金属)に特に適している。
【0060】
例えば、部品を少なくとも部分的に構成する金属材料は、炭素鋼、好ましくは重量で1%の炭素を含む鋼である。炭素鋼は、当業者に知られている用語である。これは、一般に、その主な合金成分が炭素であり、質量で0.02%~2%のセグメント範囲の鋼を指す。
【0061】
本発明者らはまた、体積を画定する外面を有する部品を、体積熱処理するシステムを提案し、そのシステムは、
-部品を構成する材料に任意の構造を引き起こすために、部品の本質的に全体積における温度上昇を達成するための期間で、部品の外面の少なくとも1つの区画にレーザ露光出力を照射するように構成されるレーザ源と、
-部品を支持するための支持手段と
を備える。
好ましくは、本発明のシステムは、部品の体積焼入れのために使用される。好ましくは、支持手段は、支持手段と部品との間において、ある程度の断熱性を有する。
【0062】
本発明の方法について提示した特定の実施形態及び関連する利点は、必要な変更を加えて、本発明のシステムに適用する。
【0063】
好ましくは、レーザ源は、連続レーザ源であるか、あるいは1ミリ秒を超える期間のパルスを有する、又は20~30ミリ秒の期間のパルスを有する。
【0064】
好ましくは、温度上昇は、200℃超、好ましくは400℃超、より好ましくは700℃超、更により好ましくは850℃超の温度上昇である。
【0065】
好ましくは、部品の本質的に全体積における温度上昇は、部品の体積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、更により好ましくは99%の温度上昇である。
【0066】
1つの可能な実施形態によれば、支持手段は、部品に接触するための支持面を有し、支持面は、部品の外面の10%未満、好ましくは5%未満、更により好ましくは1%未満の表面積を有する。この好ましい実施形態では、焼入れされる部品と支持手段との間の接触が低減され、部品から支持手段に向かう伝導性の熱伝達の可能性が低減される。これにより、焼入れされる部品の外面区画で発生した熱が、部品の体積内で拡散する以外に代わりがほとんどないので、レーザ照射加熱中に、部品内の温度が更に上昇する。部品から支持手段に向かう熱伝達は、支持手段が耐火材料を含むことによって、更に低減される。好ましくは、支持手段は、25℃で20W.m-1.℃-1未満の熱伝導率を有する。
【0067】
別の可能な実施形態によれば、支持手段は、部品を支持するための平面支持面を有する。そのような場合、焼入れされる部品が容易に所定の位置に留まるシステムを有し得る。この場合では、クランプ等の手段が部品を所定の位置に保持する必要が通常ない。
【0068】
好ましくは、支持手段は、20W.m-1.℃-1未満、より好ましくは10W.m-1.℃-1未満、更により好ましくは5W.m-1.℃-1未満の熱伝導率を有する。
【0069】
好ましくは、部品は、15W.m-1.℃-1超、より好ましくは35W.m-1.℃-1超、更により好ましくは50W.m-1.℃-1超の熱伝導率を有する材料で作られる。
【0070】
好ましくは、部品の体積は、0.01mm3~1cm3、より好ましくは0.1mm3~500mm3、更により好ましくは1mm3~100mm3である。
【0071】
好ましくは、レーザ源は、100W未満、より好ましくは50W未満、更により好ましくは10W未満の出力を有するレーザビームを、部品の外面区画に照射するように構成される。
【0072】
別の可能な実施形態によれば、システムは、光ファイバを更に備え、加えて、レーザ源からのレーザビームが、支持手段によって支持された部品の少なくとも1つの外面区画に、光ファイバによって到達するように、システムは設計される。光ファイバを使用することで、レーザ源からのレーザビームを誘導することができる。これは、システムに大きな柔軟性をもたらす。特に、レーザ源を、焼入れされる部品から遠ざけることが可能である。いくつかの用途では、そのような構成が好ましい場合がある。
【0073】
別の好ましい実施形態によれば、レーザ源は、
-レーザビーム発生器と、
-レーザビーム発生器によって放射されたレーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段と
を備える。
【0074】
好ましくは、ビーム制御手段は、
-入力部と出力部とを備える所定の断面の光ファイバであって、光ファイバが、その入力部とその出力部との間で、レーザビーム発生器によって放射されたレーザビームを運ぶように適合され、より好ましくは、光ファイバがマルチモードである、光ファイバと、
-レーザビーム投影デバイスであって、光ファイバ、より好ましくはマルチモード光ファイバから、レーザビーム投影デバイスの出口におけるレーザビームの像を、部品上に投影するように構成されるレーザビーム投影デバイスと
を備える。
【0075】
好ましくは、レーザビーム投影デバイスは、レーザビームの像を、コリメートされたレーザビームで、部品上に投影するように構成される。
【0076】
好ましくは、レーザビーム投影デバイスは、出力部で取られたマルチモード光ファイバの所定の断面と、その部品上に投影されたときのレーザビームの像との間の倍率を調整するように構成される。
【0077】
好ましくは、ビーム制御手段は、
-レーザビーム発生器によって放射されたレーザビームの直径を変更して、修正済みのコリメートされたレーザビームにするように構成されるメニスカスレンズ
を備える。
【0078】
好ましくは、ビーム制御手段は、
-非球面光学面を、又は位相シフトを引き起こすように構成される光学面を、有する光学要素
を備える。
【0079】
好ましくは、ビーム制御手段は、
-回折光学要素
を備える。
【0080】
好ましくは、レーザ源は、ビーム制御手段と部品との間に配置されたビーム集束手段を更に備える。
【0081】
別の可能な実施形態によれば、マルチモード光ファイバは、1m~12mの長さ、より好ましくは2m~8mの長さを有する。
【0082】
好ましくは、システムは、レーザ源からのレーザビームを、体積焼入れされる異なる部品に導くためのスキャナを更に備える。これにより、複数の部品を容易に、かつ迅速に処理し得るので、更に効率的な熱処理システム及び方法が可能になる。例えば、それを、トレイ内で作業することが可能となり、異なる部品がトレイ上に支持され、レーザビームがスキャナによって異なる部品に向けられる。
【0083】
好ましくは、システムは、部品の温度を測定するための温度センサ、好ましくは高温計を更に備える。本実施形態では、温度センサによって測定された温度に応じて、レーザ源の出力を調整するための制御ループを設けることが可能である。例えば、温度センサの一例である高温計は、レーザ源によって照射された部品の外面の区画の温度を測定する。
【0084】
本発明者らはまた、すべての好ましい実施形態を有する上記のシステム、及び焼入れされる部品を備えるアセンブリを提案する。
【0085】
本発明者らは、本発明の方法及びシステムの以下の理論的説明を提案する。
【0086】
温度上昇/レーザ加熱入力
エネルギーは、特定の流束量(流束=レーザ出力(W)/照射面(cm2))を有するレーザビーム(L)を介して部品に供給される。好ましくは、いくつかの実施形態について上述したように、部品のコアと、照射された外面区画との間の温度勾配を更に低減するために、複数のビームが、部品のエンベロープ(又は外面)全体に当たり得る。所定の出力Pのレーザは、例えば、円形断面を有するレーザスポットの直径Dで、部品の外面区画を照射する。
【0087】
照射された部品における熱平衡の検討
部品と、部品の外部環境との間の熱の伝達は、伝導、対流及び放射の3つの現象によって支配される。
以下のように、
-熱伝導率k(又は熱伝導率)の係数は、物体がT°の差を受けるときに熱流束を発生させる物体の傾向を測定し、
-比熱c(又は熱質量容量)は、T°の内部エネルギーの変化率を測定し、その大きさは、その温度が上昇したときの熱形態のエネルギーを蓄積する材料の能力を反映し、
-熱容量C(又は熱容量)は、熱を蓄積(又は回復)する媒体の容量を測定する、
ことを、検討すべき物理特性とする。逆に、この大きさは、その温度を1ケルビンだけ上昇させるために、部品に伝達されなければならないエネルギーを評価する。
これらの係数から、部品の異なる材料について、部品の材料における熱の伝搬の容易さを測定する熱拡散率α=k/(ρc)を計算することができる。t秒後に熱情報によって移った距離は、α.tの平方根に比例する。式α=k/(ρc)において、ρは密度(pはg.cm-3で表される)であり、cは比熱(通常、Jkg-1K-1で表される)である。
一般的に使用される材料の熱拡散率αの例は、α(鋼)=4.30E-06m2/秒、α(アルミニウム)=9.79E-05m2/秒、α(真鍮)=3.79E-05m2/秒、α(チタン)=7.66E-06m2/秒である。
【0088】
表1は、いくつかの既知の金属に関する侵入深さの推定における温度勾配の推定値を示す。
【表1】
これらの推定は、外面上の同じ照射出力について、外面の温度に近い温度に達する、照射された外面までの距離を示す。熱拡散係数が大きいほど、熱は部品のコアに迅速に拡散される。使用される様々な係数が通常の条件下(20℃)で採用されるので、これらの推定値は、数値の大きさを与えるように意図されているが、このような係数は、温度と共に変化する(例えば、kは、鋼について温度と共に減少するが、kは、一部の合金及び真鍮について、温度と共に増加する)。
部品の反対面が、レーザビームによって照射される部品の表面と同じ温度になる時間の数値の大きさを、決定することができる(これにより、部品内の温度勾配の大きさ/部品の厚さの概念を与え得る)。このような数値の大きさを表2に示す。
【表2】
【0089】
鋼及びチタンの厚さが2mm未満、真鍮の厚さが5mm未満、アルミニウムの厚さが10mm未満の部品では、照射面から反対面に熱が伝搬する時間は、1秒未満であることが見出された。このような手法により、表3に示すように、照射面と反対面との間の最大勾配の数値の大きさを、決定することができる。
【表3】
【0090】
部品の温度上昇時間の計算
本発明者らは、上昇時間が200℃/秒である場合、1mmまでの部品厚さは、本発明の方法の大部分の用途について、及び大部分の材料について、部品の温度勾配は、許容可能であることを見出した。一方、5mmの部品厚さに対して、許容可能な温度勾配は、アルミニウム等の高い熱伝導率係数を有する材料の使用が必要である。したがって、部品の温度上昇率は、単位時間当たりに、部品の照射面上でレーザによってもたらされるエネルギーの量、すなわち、照射面によって乗算されるレーザビームの流束量に比例する。
温度上昇段階では、レーザビームによって供給されるエネルギーの量の計算は、部品内の熱平衡に依存する。第1の近似として、相変化の結果として部品によって生成される吸収熱量、又は内部仕事Qgenさえ無視される。
【0091】
1.レーザによるエネルギー入力:Qin
部品の上面に、1つのレーザビーム(マルチビームなし)が、レーザエネルギーPで照射されると仮定すると、
Qin=P×(照射面/ビーム表面積)×(1-R)
であり、
ここで、Rは、部品を構成する、好ましくは、部品の外面を構成する材料の反射率である。
2.エネルギー損失:
2.a.伝導によって:
部品は、支持手段と接触している。伝導による損失を最小限に抑えるために、支持手段は、伝達面積及び格子間伝導係数の範囲を最小限に抑えるために、極めて小さい及び/又はセラミックの接触面を備えると、仮定される。
2.b.対流によって:
上昇段階中の対流を、
-自然対流への制限(外部空気流なし)と、
-真空チャンバ内の部分真空(部分真空は真空ポンプによって生成される)と
によって最小化することができ、ここで、このような部分真空は、対流による損失を制限することに加えて、酸化を極めて強力に遅らせるという目的も有する(高温での部品の表面の脱炭酸を参照)。
2.c.放射によって:
外部環境が中程度の温度、一般に室温(15~25℃の間、好ましくは20℃)のままであるので、本発明の方法を実施するとき、炉を使用する場合と比較して、放射損失が最大になる。放射損失は、T4で変化し、環境の温度と部品の温度との間の差が大きい(著しい)場合、部品の温度上昇段階の終わりに考慮されるべきである。
部品の温度上昇が100~200℃/秒である場合、伝導、対流及び放射による損失の推定は、これらがレーザのエネルギー入力と比較して極めて低いことを示している。
このような損失を無視する近似により、目標温度を得るために、目標温度、材料、及び所望の時間に応じて供給されるレーザ出力の数値の大きさを決定することが可能になる。
【0092】
実施例1:
本発明によれば、支持手段によって保持された鋼製部品を、(20℃の周囲温度から開始して)4秒で820℃まで、すなわち200℃/秒の温度上昇時間を必要とする800℃の温度差DTまで、加熱することが望ましい。部品は、0.6mmの断面及び4mmの長さのシリンダであると仮定すると、
-最初の400℃では、対流による損失は、熱入力Qinの約2~10%になり、放射による損失は、熱入力Qinの約1~2%になり、
-最後の400℃では、対流による損失は、熱入力Qinの約4~20%になり、放射による損失は、熱入力Qinの約5~から15%になる。
これらの損失(例えば、支持手段と部品との間に断熱性を設けることによる、又は、支持手段が完全に断熱的であると仮定することによる、支持手段との損失を含む)を、無視する場合、部品にもたらされるエネルギー量Qaは、
Qa=P×(1-R)=ρc×DT×V、又は4秒で3.1J、すなわち約0.75Wである。
ρは密度であり、cは比熱である。
レーザPの出力は、その表面状態、レーザの波長、及びレーザビームの偏光に依存する、材料の反射率Rを考慮に入れなければならない。例えば、R=70%の場合、本発明によるシステムにおいて、ステップeによる実施例1の部品の熱処理を実現するために、3W未満のレーザ出力が必要とされる。
【0093】
実施例2:
本発明によれば、支持手段によって保持されたアルミニウム製部品を、(20℃の周囲温度から開始して)4秒で420℃まで、すなわち100℃/秒の上昇時間を必要とする400℃の温度差DTまで、加熱することが望ましい。部品は、2×2mmの断面及び6mmの長さのロッドであり、
-最初の200℃では、対流による損失は、熱入力Qinの5~15%程度になり、放射による損失は、熱入力Qinの1~から2%程度になり、
-最後の200℃では、対流による損失は、熱入力Qinの約15~30%になり、放射による損失は、熱入力Qinの約5~10%になる。
これらの損失(例えば、支持手段と部品との間に断熱性を設けることによる、又は、支持手段が完全に断熱的であると仮定することによる、支持手段との損失を含む)を、無視する場合、供給されるエネルギー量Qaは、
Qa=P×(1-R)=ρc*DT*V、すなわち4秒で24J、すなわち6Wである。
レーザの出力は、その表面状態、レーザの波長、及びレーザビームの偏光に依存する、材料の反射率Rを考慮に入れなければならない。例えば、R=70%の場合、本発明によるシステムにおいて、ステップeによる実施例2の部品の熱処理を実現するために、20W未満のレーザ出力が必要とされる。特に対流及び放射による損失を無視せず、必要なレーザ出力Qaの2倍が必要であると考慮すると、比較的低い(レーザ)出力である40Wのレーザ出力が必要である。
【0094】
現在のダイオード及びファイバレーザの出力:
現在のレーザは、
-コンパクトで、空冷式の安価なレーザ:
壁コンセント効率>40%で10W~400W、
-強力な水冷レーザは、壁コンセント効率>40%で120kWまで利用可能である、
という程度の出力を有し得る。
壁コンセント効率が40%であることは、100Wの電力が、40Wのレーザ出力に変換されることを意味する。
小さな部品のコア熱処理(例えば、焼入れ)のために利用可能な出力は、少なくとも1つの部品の熱処理(焼入れ)に必要な出力の数値の大きさに完全に対応する。極めて強力なレーザ源の使用は、本発明の方法及びシステムによる熱処理(例えば、焼入れ)を、多くの部品で並行して実現し得る。したがって、
-小型のレース400Wは、実施例1の一連の50~100個の部品の焼入れを同時に実現することを可能にし、
-強力なレーザ4kWは、実施例1の一連の500~1000個の部品、又は実施例2の50~100個の部品の同時焼入れを実現することを可能にする。
【0095】
温度の安定化及び低下
熱処理のために、部品の所望の温度に達したとき、本方法のステップfに従ってレーザのスイッチをオフにした場合、エネルギー入力は0である。次いで、部品は、伝導、対流及び放射によって、エネルギー量(熱量Qout)を放散する。
上記で説明したように、外部環境が局所的な熱入力によって、影響が最小限であるので、本発明のシステム及び方法は、放射による損失を最適化し得る。外部環境が室温(例えば20℃)のままなので、部品と外部環境との間の温度差は、最適である。放射によるこの損失は、T4への依存性により、高温の場合に重要である。
対流による損失については、
-部分真空下での作業によって最小化されるか、
-あるいは、
o 室温でのガス(空気、中性ガス、又は窒素)の投入、
o 断熱膨張を介して又は渦によって冷却されたガス(空気、中性ガス、又は窒素)の投入、
o 液体(浴(水、油、グリコール)中への降下)への部品の浸漬、
によって、対流係数を増加させることによって増加させるか、
のいずれかとし得る。
伝導による損失については、
-断熱支持手段(セラミック)上で作業することによって、及び小さい接触面(例えば、プレート上に配置されたシリンダ、スパイク上のプレート)を用いることで、最小化されるか、
-あるいは、
o 接触面(表面接触を可能にする位置決め)、
o 導電性界面を介した伝導、
を増加することによって増加させるか、
のいずれかとし得る。
温度低下(冷却速度)の緩やかな勾配が必要である場合、断熱設備(支持手段)、自然対流又は部分真空下(真空チャンバ内)が、好ましい。
大きい勾配が望まれる場合、優先順位は、
-室温でのガス流束の使用、
-低温ガス流束の使用、
-部品と熱伝導性表面(熱交換器)との接触、
である。
極めて重要な勾配(例えば、ハイパークエンチ)に到達することを望む場合、部品の液体への浸漬(部分浸漬)が可能である。
これらの現象はすべて、(材料及び部品の初期構造に応じて)1つの相から別の相への段階及び経路に従って、組み合わせられ、連続的に使用され得る。
【0096】
実施例3:
A.ステップeに従って、レーザ(出力P1)によって部品の温度を上昇させた後、放射及び対流による損失が、部品の温度を低下させる。等温段階を維持したい場合、制限されたレーザ出力入力P2(P2<P1)によって、これらの損失を相殺して、部品の熱平衡を平衡にすることを提案する。
B.ステップeに従って、レーザ(出力P)によって部品の温度を上昇させた後、(酸化又は脱炭酸を回避するために)部分真空下で、冷却された中性ガスが、対流による損失を増加させるために、注入される。
C.ステップeに従って、レーザ(出力P)によって部品の温度を上昇させた後、(酸化又は脱炭素化を回避するために)部分真空下で、伝導による損失を促進する熱伝導性表面(熱交換器)と接触させるために、部品を下降する。
D.レーザ(出力P)によって部品の温度を上昇させた後、部品をジャッキによって、液体浴(溶融塩、油等)に浸漬(浸漬)して、ハイパークエンチを実現する。
使用される冷却手段は、所望の冷却速度及び部品の幾何学的形状に依存する。例えば、同一平面内に大きい外面がある部品は、熱伝導面(熱交換器)に接触させることで、効率的に冷却され得る。
【0097】
部品のエネルギー平衡の制御
レーザ出力Pは、電流を光出力Pに変換するインターフェースを介して極めて容易に制御される。
ガス投入、及びその圧力の制御は、例えば、空気圧アイランドの制御を介して実現される。
熱伝導性表面(熱交換器)上、又は浴内において、部品の移動のためのジャッキの下降(図に関連して以下で説明する)は、例えば、空気圧又は電気ジャッキの制御手段に電気信号を送信することによって実現される。
【0098】
部品の温度の制御は、
-支持手段上に配置された温度センサを介して、
実現され得る。これは、
-熱カメラ、高温計等といった、熱処理サイクル(焼入れ)を妨害しない非接触測定手段を介して、
伝導による損失を増加させ、温度低下勾配を増加させる、部品との伝導接続を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、本発明の特定の実施形態の詳細な説明において明らかにされ、参照は、図面の図によって実施する。
【
図1a】本発明による、システムの一実施形態を示す図である。
【
図1b】本発明による、システムの他の実施形態を示す図である。
【
図1c】本発明による、システムの他の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による、システムの別の可能な実施形態を示す図である。
【
図3a】本発明の方法で体積焼入れされ得る部品の様々な例を示す図である。
【
図3b】本発明の方法で体積焼入れされ得る部品の様々な例を示す図である。
【
図3c】本発明の方法で体積焼入れされ得る部品の様々な例を示す図である。
【
図4a】本発明による、方法及びシステムの別の可能な実施形態を示す図である。
【
図4b】本発明による、方法及びシステムの別の可能な実施形態を示す図である。
【
図5a】本発明による、方法及びシステムの別の可能な実施形態を示す図である。
【
図5b】本発明による、方法及びシステムの別の可能な実施形態を示す図である。
【
図6a】本発明による、方法の実現中の温度シミュレーションを示す図である。
【
図6b】本発明による、方法の実現中の温度シミュレーションを示す図である。
【
図6c】本発明による、方法の実現中の温度シミュレーションを示す図である。
【
図7】本発明による、方法又はシステムによって部分的又は全体的に実現され得る熱サイクルの一例を示す図である。
【
図8a】本発明による、レーザ源の好ましい実施形態を示す図である。
【
図8b】本発明による、レーザ源の好ましい実施形態を示す図である。
【
図8c】本発明による、レーザ源の好ましい実施形態を示す図である。
【
図9】本発明の好ましい実施形態による、部品上に投影されたレーザビームの強度プロファイルを示す図である。
【
図10a】本発明による、システムの好ましい実施形態を表す図である。
【
図10b】本発明による、システムの好ましい実施形態を表す図である。 図面の図は、縮尺通りではない。一般に、同様の要素は、図面において同様の参照符号で示される。図における参照番号の存在は、そのような番号が特許請求の範囲に示されているときであっても、限定と見なされるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図1aは、本発明による、部品2の体積熱処理に関するシステムの実施形態の一例を示している。好ましくは、その熱処理は、体積焼入れに対応する。本発明によるシステムは、連続的又はパルスであり得るレーザ源3を備える。支持手段4が、例えば焼入れされる部品2を支持し得る。
図1aに示す例では、これらの支持手段は、下面28が支持手段4と接触している、焼入れされる部品2を、所定の位置に支持し、及び保持する実質的に平坦な上面を有する。
【0101】
部品2が支持手段4によって所定の位置に配置され、及び保持されると、本発明の方法は、部品2の外面22の少なくとも1つの区画23をレーザ源3で照射することを含む。
図1aの例では、部品2の外面22に対するコリメートされた光ビームの集束距離の位置に関する調整を制限するように、レーザ源3は、コリメートされた光ビームを放射する。
図1bに示す例では、レーザ源3は、部品2の外面22の大きな区画23を照射し得るように、発散光ビームを放射する。
図1cに示す例では、光ビームが部品2の外面22の選択された区画23上に向けられるように、レーザ源3は、収束光ビームを放射する。
図1cのこの例は、均質化され、及び集束された光ビームの使用を示している。この外面22は、焼入れされる部品2の体積を画定する。レーザ源3によるこの照射は、直接的又は間接的であり得る。したがって、レーザ源3と部品2との間に1つ又は複数の光学要素を挿入して、例えば、レーザ源3が生成したレーザビームを偏向させ、それを部品2に向けることが可能である。
図1a、
図1b、及び
図1cに示す例では、部品2は、その上面からのみ照射される。このレーザ照射の結果として、部品2の温度は、レーザ源3によって照射された表面の区画23から上昇する。
【0102】
支持手段4は、支持手段4と部品2との間において、ある程度の断熱性を有し、又は支持手段4と部品2との間に、同等な、特定の断熱能力を有する。断熱性の程度は、部品2と支持手段4との間の熱交換を制限する能力によって定義され得る。このような技術的効果は、様々な方法で得ることができる。したがって、部品2と支持手段4との間の接触に続く伝導によって、熱交換を制限する低熱伝導率の支持手段4を使用することができる。部品2と支持手段4との間の接触面の面積を制限することもできる。部品2と支持手段4との間の限定された接触面はまた、部品2と支持手段4との間の伝導による熱交換を制限し得る。支持手段4が同じ熱伝導率では、部品2と支持手段4との間の接触面(接触表面積)が小さいとき、部品2と支持手段4との間の熱交換は低くなる。本発明では、部品2上の位置(例えば、部品の外面22上の点)に存在する熱エネルギー(又は熱)が、支持手段4に向かって拡散するのではなく、部品2内に拡散する可能性が高くなるような、支持手段4を有することが好ましい。
【0103】
部品2にレーザ源3が照射されるとき、レーザ源3によって照射された表面区画23の平面で発生した熱は、部品2の体積全体に拡散する傾向がある。本発明者らは、部品2の全体積において(したがって、照射された区画23の平面だけでなく)、温度を上昇させ、部品2を構成する材料の構造の改質を引き起こし得ることに気付いた。
【0104】
図1a、
図1b、
図1cに示す例では、支持手段4が、支持手段4と部品2との間の熱交換を制限すると仮定して、本発明者らは、この驚くべき現象を説明する、以下の物理的解釈がある。照射区画23の平面で発生した熱は、一定時間後に反対側の下面28に到達する。熱が下面28に、1~4秒で、迅速に到達するように、比較的薄い厚さ(5mm以下、例えば2~1mm)の部品2を有することが好ましい。熱が下面28に達すると、支持手段4に向かう低い熱伝達による「跳ね返り」がある。したがって、完全に均一ではないにしても、かなりの温度上昇をもたらす場合、可能性のある、唯一の顕著な熱拡散は、材料のコアに向かう。
【0105】
この加熱ステップの後、本発明は、好ましくは、加熱に使用されるレーザ照射を停止することを含む。これが体積焼入れ方法であるとき、加熱前に存在する構造以外の構造で材料を凍結させ得る。いくつかの部品2、例えば小さい部品(すなわち、1cm3未満の体積を有する)では、この新しい材料構造で、部品2を凍結させるために、強制冷却は不要である。これは、部品2を冷却し、新しい結晶学的構造で部品を凍結するために、流体の使用を多くの場合必要とするような、知られた体積焼入れ方法を超える、大きな利点をもたらす。
【0106】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法を使用して部品2の体積焼入れを実現するために、極めて強力なレーザ源3は、不要であることに気付いた。したがって、50W程度又はそれ未満、例えば20W又は6Wの出力の連続レーザ源3を用いた体積焼入れが可能である。これは、部品2の体積が小さいとき、すなわち1cm3未満のときに、特に当てはまる。次いで、照射区画23上で3000K程度の温度上昇を得ることができる。
【0107】
図2は、1つのレーザ源でなく、部品2の照射区画23を大きくするように、部品2が、2つのレーザ源によって照射される本発明の別の実施形態を示している。これは、部品の全体積における温度上昇を可能な限り迅速に達成するために、有利である。本実施形態は、厚い及び/又は複雑な形状を有する部品2に、特に有利であり、部品2の周りに熱入力を分散させる。本実施形態は、支持手段4の異なる例を含む実施形態とは無関係に実施され得る。
図2の実施形態では、同じ部品2について、照射区画23の平面で発生した熱は、
図1の実施形態よりも短い時間で反対側の下面28に到達する。
図2の本実施形態は、
図1a、
図1b及び
図1cの実施形態とは無関係に実施され得る。
【0108】
図3a~
図3cは、本発明の方法で体積焼入れされ得る部品2の様々な例を示している。
図3a~
図3cは、様々な幾何学的形状の部品2のコア27を示している。コアは、外面22から等距離の位置で部品2の体積内に配置されることが多い。本発明の方法は、部品2のコア27の焼入れを含む、部品2の全体積の焼入れを可能にする。
【0109】
図4a及び
図4bは、本発明の特定の実施形態を示している。支持手段4は、ここでは、支持手段4と部品2との間の接触面を最小にするように、スパイクのように整形される。
図5aで分かるように、この特定の実施形態では、本発明者らは、部品2の外面22(好ましくは反対側の下面28)から一定の距離で配置された熱交換器18を更に提案する。本発明の方法のステップeの終了時に、部品2の冷却が、(例えば、そのようなステップを含む実施形態のステップf中に)開始される。
図4bでは、本発明のこの特定の実施形態によれば、レーザ放射が停止される。ほぼ同時に、部品2は、部品の反対側の下面28で、熱交換器18と物理的に接触する。これにより、部品2と熱交換器18との間の伝導性熱交換が大幅に増加するため、部品2の冷却が加速される。部品2から外部環境に向かう放射によって一定量の熱が放出されるのを待つために、接触は、冷却段階の開始と比較して、例えば、ステップfの開始と比較して、少し遅れてもよい。このような構成では、放射による損失があまり重要でないとき、部品2と熱交換器18との接触は、部品から外部環境に向かう熱交換を最適化し得る。好ましくは、熱交換器18は、支持手段4よりも高い(適切な)熱伝導率を有する。
図4a及び
図4bで分かるように、熱交換器18は、好ましくは、部品2に対して相対運動するように構成される。この目的のために、例えば、部品2に対する相対運動を記述し得る電気ジャッキ又は空気圧ジャッキに、部品は取り付けられ得る。
【0110】
図5a及び
図5bは、本発明の別の特定の実施形態を示している。支持手段4はまた、部品2と支持手段4との間の接触面を最小限に抑え、したがって、支持手段4と部品2との間の伝導熱伝達を低減するように、スパイクのように整形される。この特定の実施形態では、本発明者らは、その上面が部品2の外面22(好ましくは反対側の下面28)から一定の距離で配置されている液体浴19を、使用することを提案する。本発明の方法のステップeの終了時に、冷却が、(例えば、このようなステップを含む実施形態のステップfで)開始される。これは、レーザ源3がオフにされている
図5bに対応する。ほぼ同時に、部品2は、液体浴19に(部分的に又は完全に)浸漬される。次いで、その外面22は液体浴19と接触する。これにより、部品2と液体浴19との間の伝導及び/又は対流による熱交換が大幅に増加するため、部品2の冷却が加速される。最大量の熱が部品2から外部環境に向かって放射されるのを待つために、浸漬は、ステップeの終了から、及びこのようなステップを含む実施形態のステップfの開始から、少し遅れてもよい。放射損失がそれほど重要でないとき、部品2を液体浴19に浸漬することにより、部品2と液体浴19との間の対流損失によって部品2を更に冷却し得る。液体浴19内への部品2の浸漬を可能にするために、本発明者らは、例えば、部品2を支持する支持手段4を電気ジャッキ又は空気圧ジャッキに取り付けることを提案する。これにより、部品2の垂直移動、したがって、部品2を液体浴19に浸漬することができる。
【0111】
図6a、
図6b、及び
図6cは、有限要素シミュレーションの結果を示している。
図6aは、4mmの軸方向長さ、及び0.6mmの直径の断面積を有する1mm
3の鋼製シリンダ90の長手方向断面区画の半分を示している。点91、92、93は、シリンダ90の中心を表す。点91及び93は部品の外面に位置し、点92は、点91と点93との間の等距離で、部品のコアに位置する。点94、95、96は、シリンダ90の側面を表す。点94及び96は、部品の外面上に位置し、点95は、点94と点96との間の等距離で、部品の側面の中心に位置する。
-点1と点4との間の上部で受けたレーザ出力=0.7W(電力:1、8W)、
-反射率R:70%、
-5秒間の照射、
-k及びcは、部品の温度の関数、
-冷却は、
o ε(放射率)定数=0.25の放射によって、
o h(W.m
-2.K
-1で一般的に表される熱伝達係数)定数=10の自然対流によって、
-部品による消費電力(Pa):0.2W、
以上の仮定をシミュレーションに使用し、その結果は、
図6b及び
図6cに示している。
図6bは、シミュレートされた部品内の点91~96の各々について、温度対時間の変化を示している。
図6bのスケールでは、様々な曲線が重ね合わされており、したがって、本発明者らは、様々な点間に有意な温度勾配がないと推定し、点91~96の各々における温度の変化はほぼ同じである。
図6cは、レーザ照射が終了した瞬間を拡大したものである。所与の瞬間に、様々な点間で、10℃を超えない温度勾配が確認される。レーザビーム照射は、方向91~93に沿って点91を中心とする。これは、本発明の方法が、cm
3範囲の体積を有する部品(金属)の熱処理(例えば、焼入れ)に、極めて好適に適合していることを示している。
【0112】
図7は、本発明による方法によって、部分的又は全体的に実施され得る熱サイクルを示している。このような熱サイクルは、
-AB、GH及びKLの区画が示す、レーザの出力の制御による所定の勾配での温度上昇と、
-BC、DE、FG、HI及びLMの区画が示す、(放射及び/又は対流及び/又は伝導による)損失を制御することによる、更にそれらを平衡させる残留レーザ出力を供給することによる、温度の安定化と、
-CD、EF、IJ、MNの区画が示す、外部環境に向かう、部品の熱損失を最適化することによる温度の低下と
を示す。好ましくは、レーザ源3は、これらの温度低下又は冷却中に、スイッチがオフにされる。
温度上昇及び温度低下は、
-極めてソフト:導電性絶縁、自然対流又は部分真空中での維持、及び必要に応じて極めてソフトなレーザ出力と、
-ソフト:自然対流~強制対流(室温ガス)と、
-高速:強制対流(冷却ガスによる)、導電性接続と、
-極めて高速:所与の温度での液体溶液(溶融塩、油、グリコール)中の変位で、急速加熱のための高レーザ出力と
であり得る。
熱サイクルKLMNの区画は、多くの場合、焼鈍しに関連する。熱サイクルABCDEFの区画は、多くの場合、焼入れに関連する。等温段階DEのない焼入れの場合、点Dは点Aの温度に近い温度であり、点E及びFは省略される。熱サイクルGHIJの区画は、多くの場合、焼戻しに関連する。
【0113】
実験例
この実験例では、本発明による焼入れ方法は、鋼製部品2の外面区画22に向けられた0.7Wの出力レーザ・ビーム・パワーを有する連続レーザ源3を用いて実施された。部品は、支持手段によって保持される。t=0秒では、ステップeに従って、部品は室温(20℃)にあり、0.7Wのレーザ出力での2秒照射後、部品は750℃の温度に達し、3秒後、温度は950℃であり、4秒~5秒の間に、部品の温度は1300℃に達し、これは所望の熱処理の目標温度に対応する。その後、レーザ源3は、スイッチがオフにされる。6秒後、部品内の温度は800℃に低下し、7秒後、温度は575℃である。部品の冶金的考察は、部品の冶金的変態、及び約800HV(ビッカース硬度の単位)への硬度の増加を明らかにする。
この実験試験の結論は、5秒間に1mm
3の体積によって吸収された0.2Wのレーザ出力のみが、溶融温度(1300℃)を超えることを示し、部品の様々な場所において、温度勾配は観察されなかった。温度低下は、部品2の温度が約800℃に達するまでは400℃/秒を超える速度を示し、その後、約200℃/秒に減速する。
実験結果とモデルとの比較は、
図6a、
図6b、
図6cに示し、かつ上記で説明したモデル/シミュレーションと、温度上昇が一致することを示している。しかしながら、温度低下がモデル/シミュレーションよりもはるかに速いので、外部環境への部品2の熱損失は過小評価される。シミュレーションと本実験結果との間の差は、
-係数h=10が、自然対流(ΔT<100℃)に対してのみ有効である、
という制限によって、少なくとも部分的に説明され得る。ΔT>>100℃は、大幅にhを増加させ、
-格子間伝導(セラミック/鋼)による損失は、シミュレーションでは考慮されず、
-係数εは、本シミュレーションの場合、温度に対して一定であると考えられ、これは、現実とは違うが、合理的な近似を表す。
【0114】
図8a、
図8b及び
図8cは、本発明のレーザ源3の好ましい実施形態を示している。
図8aの例示的な実施形態は、レーザビーム発生器31と、レーザビーム発生器31によって放射されたレーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段35と、を備えるレーザ源3を示している。
図8bの実施形態の例は、レーザビーム発生器31と、レーザビーム発生器31によって放射されたレーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段35と、を備えるレーザ源3を示している。ビーム制御手段35は、マルチモード光ファイバ32と、レーザビーム投影デバイス33と、を備える。マルチモード光ファイバ32は、入力部と、出力部と、を備える。マルチモード光ファイバ32は、レーザビーム発生器31によって放射されたレーザビームを、マルチモード光ファイバ32の入力部から、その出力部まで搬送するように構成される。マルチモード光ファイバ32は、その入力部と出力部との間で一定である所定の断面を有する。レーザビーム投影デバイス33は、部品2上に、上記マルチモード光ファイバ32の出力部の像を、したがって、その輪郭がマルチモード光ファイバ32の出力断面によって画定されるマルチモード光ファイバ32によって搬送されるレーザビームの像を、投影するように構成される。
図8cの例示的な実施形態は、レーザビーム発生器31と、レーザビーム発生器31によって放射されたレーザビームの強度プロファイルを調節するように構成されるビーム制御手段35と、集束手段36と、を備えるレーザ源3を示している。
【0115】
図9は、マルチモード光ファイバ32によって搬送され、更に、コリメートされた光ビームの主伝搬方向に垂直な平面である、部品2の外面22上にレーザビーム投影デバイス33によって投影された、レーザビームの強度分布を表すグラフを示している。このグラフは、部品2上において、レーザビームの像の直径39の平面における強度分布を表す。ここで、部品2上のレーザビームの像の直径39は、約5mmである。レーザビームの像は、部品2の照射面23のほぼ全体にわたって均一な照射を示す。
【0116】
図10aは、
図8に示すレーザ源3を備える部品2の体積熱処理に関するシステムの好ましい実施形態を示している。
図8に示すレーザ源3は、レーザビーム発生器31と、マルチモード光ファイバ32と、レーザビーム投影デバイス33と、を備え、レーザビーム投影デバイス33は、第1の収束光学要素37と、第2の収束光学要素38と、を備える。第1の収束光学要素37及び第2の収束光学要素38は、好ましくは集光レンズであり、より好ましくは凸面型レンズである。更に好ましくは、第1の凸面集光レンズ37の凸面は、第2の凸面集光レンズ38の凸面と対向する。レーザビーム投影デバイス33は、支持手段4によって支持された部品2上に直径39の像を形成し得る。レーザビーム投影デバイス33の構成(レンズ37、38の倍率、並びに互いに対する、及びマルチモード光ファイバ32の出力部に対するそれらレンズの相対位置)によって、更に、マルチモード光ファイバ32の(その出力部における)断面によって、直径39は画定される。マルチモード光ファイバ32の出力部が、レーザビーム投影デバイス33によって像を作られ、更に、レーザビーム発生器31が、マルチモード光ファイバ32によって搬送されるレーザビームを放射するとき、マルチモード光ファイバの出力部の像は、直径39を有する光スポットに対応する。
【0117】
図10bは、部品2上において、可能な限り小さい表面温度勾配22で熱処理を実現し得るために、部品2上のマルチモード光ファイバ32の出力部像の直径39を増加させる必要がある、大きい部品2に関する
図10aの実施形態を示している。マルチモード光ファイバ32の出力部に対する第1の集光レンズ37の相対位置、及び/又は第1の集光レンズ37に対する第2の集光レンズ38の位置を変更することによって、レーザビーム投影デバイス33は、部品2上におけるマルチモード光ファイバ32の出力部の像の直径39を調節し得る。このような調節は、大きく変化し得るサイズを有する部品に適合し得る倍率を、得ることができる。好ましくは、第1の集光レンズ37は、部品2上のレーザビームのサイズを調整するように、マルチモード光ファイバ32の出力部と第2の集光レンズ38との間で位置制御される。
【0118】
ステップeにおける部品の温度上昇は、部品の照射を単一のステップで実現し、これは、部品の均一な熱処理を提供するという利点を有する。特に、本発明では、レーザ源(加熱源)と処理される部品との間で、大きな移動が不要である。処理される部品とレーザ光源との間の小さな相対運動(基準位置周りの振動等)を想定することは可能であるが、レーザ光源と処理される部品との間の数十mm以上の並進移動を予測する必要はない。本発明は、特に、10mm未満、好ましくは8mm以下の最長寸法を有する部品に適用可能である。
【0119】
本発明を、特定の実施形態に関連して上述したが、これらは例示的なものであり、限定的であると見なされるべきではない。一般に、本発明は、説明した、及び/又は上述した例に限定されない。動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、又は任意の他の変形、並びに、それらの活用形の使用は、言及したもの以外の要素の存在を決して除外しない。要素を導入するための不定冠詞「a」、「an」、又は定冠詞「the」の使用は、複数のこれらの要素の存在を排除しない。特許請求の範囲における参照番号は、それらの範囲を限定するものではない。
【0120】
要するに、本発明は、以下のように記載され得る。
体積を画定する外面22を有する部品2を、体積熱処理する方法であって、
本方法は、
a.レーザ源3を設けるステップと、
b.部品2を設けるステップと、
c.上記部品2を支持するための支持手段4を設けるステップと、
d.上記支持手段4によって所定の位置に保持されるように上記部品2を配置するステップと、
e.上記レーザ源3を用いて、部品2の本質的に全体積における温度上昇を得るための露光期間で、上記部品2の外面22の少なくとも1つの区画23にレーザ出力を照射するステップと
を含む方法。
好ましくは、部品2を支持するための支持手段4は、支持手段4と上記部品2との間において、ある程度の断熱性を有する。
本発明は、以下のように説明することもできる。
体積を画定する外面を有する部品を、体積熱処理するシステムであって、
本システムは、
-部品を構成する材料の構造改質を引き起こすために、部品の本質的に全体積における温度上昇を得るためのレーザ露光の期間で、部品の外面の少なくとも1つの区画に出力を照射するように構成されるレーザ源と、
-部品を支持するための支持手段と
を備える。
好ましくは、支持手段は、支持手段と部品との間において、ある程度の断熱性を有する。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積を画定する外面(22)を有する部品(2)を体積熱処理する方法であって、
該方法が、
a.レーザ源(3)を設けるステップと、
b.部品(2)を設けるステップと、
c.該部品(2)を支持するための支持手段(4)を設けるステップと、
d.該支持手段(4)によって所定の位置に保持されるように前記部品(2)を配置するステップと、
e.前記レーザ源(3)を用いて、前記部品(2)の本質的に全体積における温度上昇を得るための期間で、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)にレーザ露光出力を照射するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップeの後に、
f.前記部品(2)を冷却するために、前記ステップeの照射を停止するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記部品(2)を体積焼入れする方法であり、
前記ステップeが、前記部品(2)を構成する材料に構造変化を引き起こすことができ、
前記ステップfが、前記ステップeにおける照射前とは異なる構造で、前記部品(2)を構成する材料を凍結させるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップeの照射が、前記部品(22)の本質的に全体積において、本質的に均一な温度を与えるように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ源(3)が、コリメートされた光ビームを放射するように構成され、更に、前記ステップeにおいて、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)を、前記コリメートされた光ビームで照射するように構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップfが、対流によって前記部品(2)を冷却するために、流体を前記部品(2)の方向に導く動作を更に含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持手段(4)が、前記部品(2)を支持するための平坦な支持面を有することを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持手段(4)が耐火材料を含むことを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記支持手段(4)が、20W.m
-1.℃
-1未満、好ましくは10W.m
-1.℃
-1未満、更により好ましくは5W.m
-1.℃
-1未満の熱伝導率を有する材料を含むことを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記部品(2)と前記支持手段(4)との間に接触面が存在し、該接触面が、前記外面(22)の表面積の10%未満、好ましくは2%未満、更により好ましくは1%未満の該表面積を有することを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記部品(2)が、10W.m
-1.℃
-1超、好ましくは35W.m
-1.℃
-1超、更により好ましくは50W.m
-1.℃
-1超の熱伝導率を有する材料を含
み、
および/または、前記部品(2)の体積が、0.01mm
3
~5cm
3
、好ましくは0.1mm
3
~500mm
3
、更により好ましくは1mm
3
~100mm
3
であり、
および/または、前記部品(2)が、0.01mm
-1
~150mm
-1
、好ましくは0.1mm
-1
~100mm
-1
、更により好ましくは1mm
-1
~10mm
-1
の比表面積を有することを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
-前記外面(22)が、前記外面(22)の第1の区画(23)及び第2の区画(28)を備え、
-前記ステップeが、前記外面(22)の第1の区画(23)と第2の区画(28)との間に、実質的に等しい温度を有するための露光期間で、前記外面(22)の第1の区画(23)のみにレーザ出力を照射することを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
-前記外面(22)が、前記外面(22)の第1の区画(23)及び第2の区画(28)を備え、
-前記ステップeが、前記外面(22)の第1の区画(23)及び第2の区画(28)を照射することを含むことを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、焼鈍しの後の焼入れ方法であり、更に前記方法が、前記ステップaの前に、
g.前記レーザ源(3)を用いて、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)に、前記ステップeで使用される前記レーザ露光出力よりも小さい、焼鈍しレーザ露光出力を照射するステップと、
h.前記部品を、前のステップの焼鈍し温度まで加熱した後で、前記部品を、100℃未満の温度、好ましくは室温まで冷却するステップと、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、焼戻しの前の焼入れ方法であって、更に前記方法が、前記ステップfの後に、
i.前記焼入れのために、前記レーザ源(3)を用いて、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)に、前記ステップeで使用される前記レーザ露光出力よりも小さい、焼戻しレーザ露光出力を照射するステップ、
の追加のステップを更に含むことを特徴とする請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記支持手段(4)が、前記支持手段(4)と前記部品(2)との間において、ある程度の断熱性を有することを特徴とする請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
体積を画定する外面(22)を有する部品(2)を、体積熱処理するシステムであって、該システムが、
-前記部品(2)を構成する前記材料の構造変更を引き起こすために、前記部品(2)の実質的に全体積における温度上昇を達成するための期間で、前記部品(2)の外面(22)の少なくとも1つの区画(23)にレーザ露光出力を照射するように構成されるレーザ源(3)と、
-前記部品(2)を支持するための支持手段(4)と、
を備える、システム。
【請求項19】
前記支持手段(4)が耐火材料を含むことを特徴とする請求項
17または18に記載のシステム。
【請求項20】
前記支持手段(4)が、前記支持手段(4)と前記部品(2)との間において、ある程度の断熱性を有することを特徴とする請求項
17から
19のいずれか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】