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特表2023-511350異種のシェール鉱石からのバナジウム抽出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】異種のシェール鉱石からのバナジウム抽出
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/22 20060101AFI20230310BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20230310BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20230310BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C22B34/22
C22B3/08
C22B3/26
C22B3/44 101Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544068
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 CA2021050036
(87)【国際公開番号】W WO2021146797
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/963,451
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522287031
【氏名又は名称】ファースト バナジウム コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FIRST VANADIUM CORP.
【住所又は居所原語表記】Four Bentall Centre 1055 Dunsmuir St., Suite 2200, Box 49237, Vancouver, British Columbia V7X 1L2, Canada
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドライシンガー、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】エスプリン、ジョディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コルドスキー、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ルゴール、エリン
(72)【発明者】
【氏名】ムラツェック、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スヴェインソン、フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】スヴェインソン、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴクチェヴィッチ、ラドミル
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA17
4K001AA28
4K001AA33
4K001BA02
4K001BA05
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA05
4K001DB03
4K001DB14
4K001DB16
4K001DB24
4K001DB26
4K001DB27
4K001DB34
4K001DB36
(57)【要約】
本発明は、次の湿式精錬のバナジウム抽出の結合された工程で処理することができる、バナジウムが富化された濃縮物を共に提供する選鉱の別個の工程と共に、バナジウム等価物を回収するためのシェール堆積物の異種の分画の統合された処理を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェール堆積物からバナジウム等価物を回収する方法であって、
・シェール堆積物から酸化された物質を回収するステップであって、酸化された物質は、炭酸塩脈石、バナジウム含有鉱物沈殿物及び酸化されたバナジン酸塩含有ケロゲンを含み、酸化された物質は、
1重量%以下の有機炭素、
最初の酸化されたバナジウム分画として2重量%以下の五酸化バナジウム、及び
最初の酸化された炭酸塩分画として10重量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有するステップ;
・炭酸塩脈石及びバナジウム含有ケロゲンを含むシェール堆積物から炭素質物質を回収するステップであって、炭素質物質は、
4重量%以上の有機炭素、
最初の炭素質バナジウム分画として2重量%以下の五酸化バナジウム、及び
最初の炭素質炭酸塩分画として10重量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有するステップ;
・酸化された物質を磨砕工程及び粒子サイズ分離工程に付して、より粗大な炭酸塩流からバナジウム微粉流を分離するステップであって、バナジウム微粉流が約30重量%未満の最初の酸化された炭酸塩分画を含み、及び少なくとも約75重量%の最初の酸化されたバナジウム分画がバナジウム微粉流の管理下にあるステップ;
・炭素質物質をスライム除去工程に付して、より粗大なバナジウムと炭酸塩含有分画から微細バナジウムと炭酸塩含有分画を分離するステップ、及びより粗大なバナジウム含有分画を浮遊選鉱に付して、炭酸塩浮選尾鉱からバナジウム泡濃縮物を分離するステップであって、バナジウム泡濃縮物が約30重量%未満の最初の炭素質炭酸塩分画を含み、少なくとも75重量%の最初の炭素質バナジウム分画がバナジウム泡濃縮物及び微細バナジウムと炭酸塩含有分画の組合せの管理下にあるステップ;
・バナジウム泡濃縮物、微細バナジウムと炭酸塩含有分画、及びバナジウム微粉を混合して、少なくとも1重量%のバナジウム濃度を有するバナジウム濃縮物を提供するステップ;
・オートクレーブ由来硫酸を添加して、バナジウム濃縮物を大気中の予備浸出(PL)に付して、予備浸出された生成物流を製造して、バナジウム濃縮物中の残留炭酸塩鉱物を分解して二酸化炭素オフガスを製造し、及びバナジウム濃縮物から鉄種を沈殿させるステップ;
・予備浸出された生成物をPL固液分離に付して、バナジウム回収溶液からPL固体流を分離するステップ;
・圧力酸化(POX)浸出酸及びPOX酸化剤の存在下の圧力酸化(POX)にPL固体流を送り、オートクレーブ由来硫酸を含むPOX溶液中にバナジウムを浸出させることでPOX生成物流を製造するステップ;
・POX生成物流をPOX固液分離に付し、POX溶液から固体POX残留物を分離するステップ;
・POX溶液を大気中のPLに送り、オートクレーブ由来硫酸を大気中のPLに供給するステップ;
・バナジウム回収溶液をバナジウム酸化工程に付して、溶解されたバナジウム種を酸化されたバナジウム回収溶液中の溶解されたバナジウム(V)オキソアニオン種に変換するステップ;
・酸化されたバナジウム回収溶液をバナジウム溶媒抽出(VSX)工程に付して、富んだ有機相にバナジウム種を充填し、及び使用済みのバナジウム回収溶液から富んだ有機相を分離するステップ;
・富んだ有機相からバナジン酸ナトリウム又はアンモニウム水性溶液中にバナジウムを逆抽出して、逆抽出された有機相を提供し、逆抽出された有機相をVSX工程にリサイクルするステップ;及び
・硫酸アンモニウムを添加することで、バナジン酸ナトリウム又はアンモニウム溶液からメタバナジン酸アンモニウムを沈殿させるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
メタバナジン酸アンモニウムを焼成して五酸化バナジウム生成物を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シェール堆積物がドロマイト性シェール堆積物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
最初の酸化された炭酸塩分画が、酸化された物質の20重量%以上又は25重量%以上を構成する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
最初の炭素質炭酸塩分画が、炭素質物質の20重量%以上又は25重量%以上を構成する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
酸化された物質及び/又は炭素質物質が、0.2~1.5重量%の五酸化バナジウムを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
酸化された物質及び/又は炭素質物質が、水和バナジン酸カルシウム(ヘウェッタイト又はメタヘウェッタイトとして)、コーブサイト、モンローゼアイト-ゲータイト及びパスコイトのうちの1つ以上を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
酸化された物質中のバナジウム含有鉱物沈殿物がゲータイトを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
酸化された物質及び/又は炭素質物質が、6~16重量%のCaO及び/又は4~10重量%のMgOを含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
酸化された物質中の五酸化バナジウムの少なくとも90重量%が、バナジウム微粉流の管理下にある、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
炭素質物質中の五酸化バナジウムの少なくとも90重量%が、バナジウム泡濃縮物の管理下にある、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
シェール堆積物からバナジウム濃縮物を製造する方法であって、
・シェール堆積物から酸化された物質を回収するステップであって、酸化された物質は、炭酸塩脈石、バナジウム含有鉱物沈殿物及び酸化されたバナジン酸塩含有ケロゲンを含み、酸化された物質は、
1重量%以下の有機炭素、
最初の酸化されたバナジウム分画として2重量%以下の五酸化バナジウム、及び
最初の酸化された炭酸塩分画として10重量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有するステップ;
・炭酸塩脈石及びバナジウム含有ケロゲンを含むシェール堆積物から炭素質物質を回収するステップであって、炭素質物質は、
4重量%以上の有機炭素、
最初の炭素質バナジウム分画として2重量%以下の五酸化バナジウム、及び
最初の炭素質炭酸塩分画として10重量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有するステップ;
・酸化された物質を磨砕工程及び粒子サイズ分離工程に付して、より粗大な炭酸塩流からバナジウム微粉流を分離するステップであって、バナジウム微粉流が約30重量%未満の最初の酸化された炭酸塩分画を含み、及び少なくとも約75重量%の最初の酸化されたバナジウム分画がバナジウム微粉流の管理下にあるステップ;
・炭素質物質をスライム除去工程に付して、より粗大なバナジウムと炭酸塩含有分画から微細バナジウムと炭酸塩含有分画を分離するステップ、及びより粗大なバナジウム含有分画を浮遊選鉱に付して、炭酸塩浮選尾鉱からバナジウム泡濃縮物を分離するステップであって、バナジウム泡濃縮物が約30重量%未満の最初の炭素質炭酸塩分画を含み、少なくとも75重量%の最初の炭素質バナジウム分画がバナジウム泡濃縮物及び微細バナジウムと炭酸塩含有分画の組合せの管理下にあるステップ;及び
・バナジウム泡濃縮物、微細バナジウムと炭酸塩含有分画、及びバナジウム微粉を混合して、少なくとも1重量%のバナジウム濃度を有するバナジウム濃縮物を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
シェール堆積物がドロマイト性シェール堆積物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
最初の酸化された炭酸塩分画が、酸化された物質の20重量%以上又は25重量%以上を構成する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
最初の炭素質炭酸塩分画が、炭素質物質の20重量%以上又は25重量%以上を構成する、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
酸化された物質及び/又は炭素質物質が、0.2~1.5重量%の五酸化バナジウムを含む、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
酸化された物質及び/又は炭素質物質が、水和バナジン酸カルシウム(ヘウェッタイト又はメタヘウェッタイトとして)、コーブサイト、モンローゼアイト-ゲータイト及びパスコイトのうちの1つ以上を含む、請求項12~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
酸化された物質中のバナジウム含有鉱物沈殿物がゲータイトを含む、請求項12~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
酸化された物質及び/又は炭素質物質が、6~16重量%のCaO及び/又は4~10重量%のMgOを含む、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
酸化された物質中の五酸化バナジウムの少なくとも90重量%が、バナジウム微粉流の管理下にある、請求項12~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
炭素質物質中の五酸化バナジウムの少なくとも90重量%が、バナジウム泡濃縮物の管理下にある、請求項12~20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された革新は、化学的及び物理的ミネラル処理技術の分野にあり、特にバナジウム等価物(vanadium values)を抽出するための異種のシェール鉱石(shale ores)の調整された処理(coordinated processing)のための方法である。
【背景技術】
【0002】
広範なアプローチが、広範な種類の原料物質からバナジウム等価物を回収するために提案されている(参照,Gupta and Krishnamurthy,1992)。様々な環境において、バナジウムは、米国における風化されたドロマイト性シェール等の堆積鉱床に伴って生じる(Brooks,1974)。異種の鉱石から構成された堆積物中にバナジウムが比較的低濃度で生じる状況で、特別な課題が提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
バナジウム濃縮物を製造する方法、及びシェール堆積物からバナジウム等価物を回収する方法が提供される。これらの方法は、2つの別個の物質分画、酸化された物質及び炭素質物質を回収する工程を含む。酸化された物質は、炭酸塩脈石(gangue)、バナジウム含有鉱物沈殿物(vanadiferous mineralization)及び酸化されたバナジン酸塩含有ケロゲン(oxidized vanadate-containing kerogen)から構成されてもよく、酸化された物質は、例えば、1重量%以下の有機炭素、最初の酸化されたバナジウム分画として2重量%以下の五酸化バナジウム、及び最初の酸化された炭酸塩分画として、10重量%、20重量%又は30重量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有してもよい。これに対して、炭素質物質は、炭酸塩脈石及びバナジウム含有ケロゲンから構成されてもよく、炭素質物質は、例えば、4重量%以上の有機炭素、最初の炭素質バナジウム分画として2重量%以下の五酸化バナジウム、及び最初の炭素質炭酸塩分画として10重量%、20重量%又は30重量%以上の炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有してもよい。酸化された物質及び炭素質物質を、別個の選鉱(beneficiation)プロセスに付すことができる。
【0004】
酸化された物質を、磨砕(attrition)工程に付すことができ、及び粒子サイズ分離工程に付すことができる。より粗大な炭酸塩流からバナジウム微粉流を分離するように、本工程を行うことができる。バナジウム微粉流が約30重量%未満の最初の酸化された炭酸塩分画から構成されるように、及び少なくとも約75重量%の最初の酸化されたバナジウム分画がバナジウム微粉流の管理下にある(reports to)ように、プロセスパラメータを調節することができる。
【0005】
酸化された物質の処理とは対照的に、炭素質物質は、より粗大なバナジウムと炭酸塩含有分画から微細バナジウムと炭酸塩含有分画を分離するように、スライム除去工程に付すことができる。バナジウム泡濃縮物(froth concentration)が約30重量%未満の最初の炭素質炭酸塩分画を含むように、及び少なくとも75重量%の最初の炭素質バナジウム分画がバナジウム泡濃縮物及び微細バナジウムと炭酸塩含有分画の組合せの管理下にあるように調節された条件で、より粗大な分画を浮遊選鉱(flotation)に付して、炭酸塩浮選尾鉱(flotation tail)からバナジウム泡濃縮物を分離することができる。
【0006】
バナジウム泡濃縮物及び微細バナジウムと炭酸塩含有分画を、バナジウム微粉と混合して、例えば少なくとも1重量%のバナジウム濃度を有するバナジウム濃縮物を提供することができる。オートクレーブ由来硫酸(autoclave-sourced sulfuric acid)を添加して、バナジウム濃縮物を大気中の予備浸出(PL:pre-leach)に付して、予備浸出された生成物流を製造することができ、例えば、バナジウム濃縮物中の残留炭酸塩鉱物を分解して二酸化炭素オフガスを製造し、バナジウム濃縮物から鉄種を沈殿させることができる。
【0007】
予備浸出された生成物をPL固液分離に付して、バナジウム回収溶液からPL固体流を分離することができる。圧力酸化(POX)浸出酸及びPOX酸化剤の存在下の圧力酸化(POX)にPL固体流を送り、オートクレーブ由来硫酸を含むPOX溶液中にバナジウムを浸出させることでPOX生成物流を製造することができる。続いて、POX生成物流をPOX固液分離に送り、POX溶液から固体POX残留物を分離することができる。POX溶液を大気中のPLに送り、オートクレーブ由来硫酸を大気中のPLに供給することができる。
【0008】
次に、バナジウム回収溶液をイオン交換プロセスに付して、塩化物形態の強塩基性樹脂によって低濃度のウラン及び/又はモリブデンを除去することができる。更に、精製されたバナジウム回収溶液をバナジウム酸化工程に付して、溶解されたバナジウム種を酸化されたバナジウム回収溶液中の溶解されたバナジウム(V)オキソアニオン種に変換することができる。続いて、酸化されたバナジウム回収溶液をバナジウム溶媒抽出(VSX)工程に付して、富んだ(pregnant)有機相にバナジウム種を充填し、使用済みのバナジウム回収溶液から富んだ有機相を分離することができる。富んだ有機相からバナジン酸ナトリウム又はアンモニウム水性溶液中にバナジウムを逆抽出(stripping)して、逆抽出された有機相を提供し、逆抽出された有機相をVSX工程にリサイクルすることができる。次に、硫酸アンモニウムを添加することで、バナジン酸ナトリウム又はアンモニウム溶液からメタバナジン酸アンモニウムを沈殿させることができる。続いて、メタバナジン酸アンモニウムを焼成して五酸化バナジウム生成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】シェール堆積物の異種の鉱石分画からバナジウム等価物を抽出するプロセスを示すプロセスフロー図である。
図2】バナジウム種の種分化(speciation)図である。
図3】酸化物ハイドロサイクロンフローシートの概略図である。
図4】バナジウム回収のための抽出等温線及びマッケーブシールダイアグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本明細書において酸化された物質及び炭素質物質として特徴づけられる異種の物質からなるシェール堆積物から、バナジウム等価物を回収する方法が提供される。両方の物質は、かなりの割合の炭酸塩脈石、例えばドロマイト性シェール中、例えば、2から30重量%以上のCOを有する、又は10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%以上の炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムを含む炭酸塩脈石を含んでいてもよい。酸化された物質及び炭素質物質は、約6~16%の範囲のCaO等価物及び/又は約4~10%の範囲のMgO含有量を有することを更に特徴とすることができる。その脈石は、例えば、比較的細かな粒とし、石英、長石、粘土、方解石、及び/又はドロマイト性石灰石の1つ以上の均質混合物から構成されることができる。その異種のシェール物質は両方とも、バナジウム濃度が比較的低く、例えば0.2~1.5重量%の五酸化バナジウムを有することができ、例えば、水和バナジン酸カルシウム(ヘウェッタイト(hewettite)又はメタヘウェッタイト(metahewettite))、コーブサイト、モンローゼアイト(montroseite)-ゲータイト(goethite)、又はパスコイト(pascoite)として存在することができる。
【0011】
ホスト物質との均質混合物の中のその比較的低いバナジウム濃度は、特に比較的高い炭酸塩脈石濃度と組み合わせて、バナジウム等価物を経済的に抽出するための重要な課題を提出する。バナジウム等価物をホスティングする物質の性質において、その物質がその他の点で異なっている事実によって、更なる重要な課題が提供される。
【0012】
バナジウム含有シェールは、例えば、比較的少ない量の有機物質、例えば、1重量%以下の有機炭素を含む酸化された上部物質からの風化された進行(weathered progression)を表す、鮮明な黒色から褐色又は灰色のシルト石又は泥岩を含むことができる。その酸化された物質はまた、バナジウム含有鉱物沈殿物、例えばバナジウム含有ゲータイト、及び酸化されたバナジン酸塩含有ケロゲン(例えば、きちんと定められておらず、検出が困難なバナジン酸塩を有する不確定の組成物の高度に酸化されたパッチ状のケロゲンである)を含有することができる。その酸化された物質中、バナジウムの大部分は、例えば、小さな構造的に結合したバナジウム及びバナジン酸塩の表面被覆の両方を含有するメタヘウェッタイト、パスコイト、又はゲータイトを伴うモンローゼアイト等のバナジン酸塩として報告することができる。
【0013】
炭素質物質又は還元された物質では、酸化された物質とは対照的に、バナジウムは、例えば、主として、S担持ケロゲンを伴って、例えば4重量%以上又は4~13重量%の有機炭素の炭素質物質中でバナジウムのための一次ホストとして作用するケロゲンを伴って見い出されることができる。
【0014】
図1を参照すれば、シェール堆積物から別個の分画として酸化された物質10を回収する方法であって、酸化された物質が炭酸塩脈石、ゲータイト等のバナジウム含有鉱物沈殿物、及び酸化されたバナジン酸塩含有ケロゲンを含む、方法が提供される。その酸化された物質は、例えば1重量%以下の有機炭素;2重量%以下若しくは0.2~1.5重量%の五酸化バナジウム;及び/又は、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、20重量%、25重量%、若しくは30重量%以上の炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムの1つ以上を含むことを特徴とすることができる。
【0015】
同様に、本発明の方法は、シェール堆積物から炭素質物質12を回収することを含むことができ、その炭素質物質は炭酸塩脈石及びバナジウム含有ケロゲンを含む。その炭素質物質は、例えば4~13重量%の有機炭素;2重量%以下若しくは0.2~1.5重量%の五酸化バナジウム;及び/又は、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、20重量%、25重量%、若しくは30重量%以上の炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムの1つ以上を含むことを特徴とすることができる。
【0016】
酸化された物質10は、磨砕工程14に付され、次いで粒子サイズ分離工程16に供されて、より粗大な炭酸塩流20からバナジウム微粉流18を分離することができる。そのバナジウム微粉流は、例えば約5~15重量%未満の炭酸塩を含むことを特徴とすることができる。選択された実施態様において、酸化された物質中の少なくとも75~90重量%の五酸化バナジウムが、そのバナジウム微粉流の管理下にある。
【0017】
酸化された物質10を、例えば、粉砕、湿式粉砕及び磨砕14で処理することができる。磨砕14を実施して、より粗大な炭酸塩含有鉱物粒子から細かいバナジウム含有鉱物粒子を取り除くことができる。例えば、磨砕スラリーを、サイクロニング又は遠心分離プロセスに付して、より粗大な炭酸塩含有流20から細かいバナジウム含有流18を分離することができる。例えば、浸出プロセスを行う前に、バナジウムが富化された細かい物質18を濃縮して、炭酸塩含有流20を尾鉱に転用することができる(又は、プロセスの他の側面において、酸を中和するアルカリ源として用いることもできる)。
【0018】
炭素質物質12を、並列スライム除去プロセス22に付して、より粗大なバナジウムと炭酸塩含有分画26から細かいバナジウムと炭酸塩含有分画24を分離することができる。次いで、そのより粗大なバナジウムと炭酸塩含有分画26を、浮遊選鉱プロセス28に付して、炭酸塩浮選尾鉱31からバナジウム泡濃縮物30を分離することができる。バナジウム泡濃縮物30は、例えば約10~15重量%未満の炭酸塩を含むことができる。選択された実施態様において、炭素質物質中の少なくとも75重量%の五酸化バナジウムが、バナジウム泡濃縮物30及び細かなバナジウムと炭酸塩含有分画の組合せの管理下にある。
【0019】
炭素質(又は還元された)物質12を、例えば、粉砕、湿式粉砕、サイクロニング又は遠心分離(任意)及び鉱物浮遊選鉱28で処理することができる。粉砕及び湿式粉砕を実施して、鉱物の破壊及び遊離を提供することができる。サイクロニング又は遠心分離を実施して、(スライム除去工程中の)粉砕したより粗大なバナジウムと炭酸塩含有スラリーから、サイクロンオーバーフローとして報告される微粉24と共に、細かいバナジウムと炭酸塩含有物質24を取り除くことができる。残留するより粗大なサイクロンされた又は遠心分離された固体26を鉱物浮遊選鉱28に付して、バナジウム泡濃縮物30を回収する。使用される浮遊選鉱化学物質は、例えば、コレクターとしてのディーゼル油等の炭化水素液体と、MIBC(メチルイソブチルカルビノール又は4-メチル-2-ペンタノール、IUPAC名:4-メチルペンタン-2-オール)等の適切な起泡剤であることができる。MIBCは、水-空気界面で吸収し、気泡の生成を助け、浮遊選鉱泡を安定化する。より粗大な固体26は、例えば、高密度/高強度コンディショニング工程において、例えばディーゼル油でコンディショニングして、浮遊選鉱混合物の均質な混合を容易にし、次いで、浮遊選鉱28に付して、炭酸塩含量が枯渇したバナジウム濃縮物30を製造することができる(これによって、続く浸出プロセスにおける酸消費を最小にする)。
【0020】
酸化された物質と炭素質物質の両方の選鉱で、バナジウムが富化され、炭酸塩が枯渇した物質が製造される。その結果、バナジウム泡濃縮物30を、細かいバナジウムと炭酸塩含有分画と、またバナジウム微粉18と混合して、続くバナジウム抽出の湿式製錬工程に適したバナジウム濃縮物32を提供することができる。バナジウム濃縮物は、例えば少なくとも1重量%の五酸化バナジウムのバナジウム濃度を有することができる
【0021】
バナジウム濃縮物32を、例えばオートクレーブ由来硫酸の添加と共に、大気中の予備浸出(PL)34プロセスに付して、予備浸出生成物流36を製造することができる。例えば、このPLプロセスを実施して、バナジウム濃縮物32中の残留炭酸塩鉱物を分解して二酸化炭素オフガスを製造し、及び/又はバナジウム濃縮物から鉄種を沈殿させることができる。従って、PLプロセス34は、圧力酸化プロセス42からの酸を用いて濃縮物32中の炭酸塩の分解を可能にする。いくつかの実施態様において、酸のバランスを完了するために追加の塩基をPLに添加することができる。典型的な実施では、濃縮物中に過剰の残留塩基性物質が存在し、オートクレーブ由来の酸が完全に中和されるが、濃縮物中に過剰の酸が存在する場合には、上記の添加が有用であり得る。予備浸出プロセス34は、例えば、鉄塩を+3の酸化状態に酸化するために、酸及び空気又は酸素の追加の添加を含むことができる。いくつかの実施態様において、予備浸出における反応は、以下を含むことができる。
・炭酸塩鉱物の酸分解
CaCO+HSO+HO=CaSO・2HO+CO(g)
MgCO+HSO=MgSO+HO+CO(g)
・黄鉄鉱(又は存在する他の硫化物)での硫酸第二鉄の還元
4Fe(SO+FeS+4HO=9FeSO+S+4HSO
・硫酸第一鉄の空気酸化での硫酸第二鉄の生成
4FeSO+O+2HSO=2Fe(SO+2H
・硫酸第二鉄の加水分解での水酸化第二鉄の生成と、バナジウム浸出液からの鉄の除去
Fe(SO+9HO=2Fe(OH)+6HSO
・黄鉄鉱(又は存在する他の硫化物)での硫酸バナジウムの還元
4(VOSO+4HSO+FeS=8VOSO+S+FeSO+H
・硫酸第二鉄でのバナジウムの部分的沈殿でのバナジン酸第二鉄固体の生成(続くPOXでこれらを再び回収する)
(VOSO+Fe(SO+4HO=2FeVO+4HSO
【0022】
従って、予備浸出34を実施して、炭酸塩を分解させ、POX42の管理下にある炭酸塩の濃度を減少させて(密閉されたPOXオートクレーブからの二酸化炭素の排出、及びその結果としての熱と酸素の損失を最小化させ)、バナジウムの回収のための低鉄含有バナジウム溶液を製造することができる。
【0023】
予備浸出スラリー生成物36(完成後)が、PL固液分離(例えば、増粘剤又はフィルター)に付されて、バナジウム回収溶液40からPL固体流38を分離することができる。次いで、PL固体流38を、例えば、湿式スラリーとして、POX浸出酸及びPOX酸化剤の存在下の加圧酸化(POX)42プロセスに送り、酸と酸素の存在下、高温でバナジウムをPOX溶液48に浸出することで、POX生成物流44を製造することができる。典型的な温度は、例えば約110℃~240℃の範囲であり、例えば100~200psi、又は約100psi(700kPa)の酸素過圧力で、30g/L HSO、40g/L HSO、50g/L HSO、60g/L HSO、又は70g/L HSO以上の酸濃度である。
【0024】
POX生成物流44を、POX固液分離に送り、POX溶液48から固体POX残留物50を分離することができる。次いで、POX溶液48を、大気中のPL34に送り、オートクレーブ由来硫酸を大気中のPL34に提供することができる。選択された実施態様において、POXに含まれる反応は、以下を含むことができる
・炭酸塩鉱物の酸分解(すべての残留炭酸塩のため)
CaCO+HSO+HO=CaSO・2HO+CO(g)
MgCO+HSO=MgSO+HO+CO(g)
・黄鉄鉱酸化
2FeS+7.5O+HO=Fe(SO+HSO
・炭素酸化
C+O=CO
・ケロジェン酸化
+(x+y/2-z/2)O=xCO+y/2H
・酸化鉄溶解
2FeOOH+3HSO=Fe(SO+4H
・バナジウム(+4)抽出
VO+HSO=VOSO+H
・バナジウム(+4)酸化
4VO+O+2HSO=2(VOSO+2H
・バナジウム(+5)抽出
+HSO=(VOSO+H
・バナジン酸第二鉄抽出
2FeVO+4HSO=(VOSO+Fe(SO+4H
・鉄沈澱
Fe(SO+3HO=Fe+3HSO
【0025】
POX排出物を、例えば大気温度及び圧力にフラッシュして、液体48から固体50を分離することができる。固体50を、例えば適当な洗浄と共に、一連の向流デカンテーション増粘剤(counter current decantation thickener)で洗浄することができる。従って、POX42からの生成物は、尾鉱に対する洗浄された残留物50と、硫酸バナジウム(+4及び+5)、鉄塩及びオートクレーブ由来の酸を含有する強酸性溶液48であることができる。
【0026】
PL生成物バナジウム回収溶液40は、いくらかの残留鉄とバナジウム種と共に、酸(pH約2)が一般に比較的低い。いくつかの実施形態において、いくつかの微量ウラン及びモリブデン等価物を含むことができる。例えば、強塩基性イオン交換によって、ウランを除去して、例えばウランのバナジウム生成物への移動を避けることができる。この実施態様において、以下のように、ウランをNaCl溶液で溶離することができる。
UO(SO 4-+4(-NRCl)=(-NRUO(SO+4Cl
(-NRUO(SO+4NaCl=UO 2++3SO 2-+4(-NRCl)+4Na
【0027】
ウラン除去後の溶液を、必要に応じて硫化物で処理して、価値物としてモリブデンを選択的に除去することができる。これは、例えば硫化水素、硫化水素ナトリウム又は硫化ナトリウムで達成され、その結果、硫化モリブデン沈殿物(これを、ろ過し、洗浄し、副生成物として回収することができる)を次のように製造することができる。
MoO+3NaS+3HSO=MoS+4HO+3NaSO
【0028】
モリブデンがこの段階で溶液から任意に除去されない場合、モリブデンは、バナジウムと共にバナジウム溶媒抽出に進み、バナジウムと共に共抽出される。モリブデンに対してバナジウムに対して選択的であるように、バナジウムの沈殿プロセス(溶媒抽出後)を調整することができる。これは、最終バナジウム生成物の管理下にあるモリブデンを最小化するために実施することができる他の実施態様を提供する。
【0029】
例えばウラン及びモリブデンを除去した後、PL生成物バナジウム回収溶液40を、例えば高温での過酸化物で、又はHSO(カロ酸)、Na(過硫酸ナトリウム)、NaOCl(次亜塩素酸ナトリウム)、塩素、オゾン、SO/空気(例えば、K、Mg又はCa塩等のナトリウム塩以外の変形物を含む)等の他の酸化剤で、バナジウム酸化(VO)プロセス52に付すことができる。従って、VOプロセスを実施して、酸化されたバナジウム回収溶液54中、次のように溶解されたバナジウム種を溶解されたバナジウム(V)オキソアニオン種に変換することができる。
2VO+H+HSO=(VOSO+2H
【0030】
いくつかの実施態様において、以下の反応に従って、VOプロセス52の間に生じるいくつかの更なる鉄の酸化及び沈殿がありえる。この場合、形成された固体を、バナジウムの溶媒抽出の前に、浄化によって除去することができる。
2FeSO+H+4HO=2Fe(OH)+2HSO
【0031】
VOプロセス52において、バナジウム種は、+5の酸化状態のバナジウムを維持しながら、多核種の範囲を形成することができる(参照,図2)。例えば、10-V多核種は、以下に示す通りである。
5(VOSO+8HO=(H(H1028 4-)+5HSO
【0032】
次いで、酸化されたバナジウム回収溶液54を、バナジウム溶媒抽出(VSX)56プロセスに付して、富んだ有機相にバナジウム種を充填することができる。選択された実施態様において、アラミン336等の三級アミンを、例えば灯油等の適当な希釈剤中、溶媒として使用することができる。バナジウム抽出の前に、アラミン336等の三級アミンを、例えば、硫酸溶液でコンディショニングすることができる。アラミン336は式(NR)〔式中、R基は約60/40の比でそれぞれ8個の炭素及び10個の炭素の炭化水素基を表す〕を有する。コンディショニングされたアラミン336をNR(HSO )として表すと、コンディショニングされたアラミン336を使用してバナジウムを抽出することは、以下のように表すことができる。
・充填:
4(NR(HSO ))+(H(H1028 4-)←→(NR(H1028 4-)+4HSO
【0033】
実際には、アミンプロトン化、酸消費及びバナジウム抽出の反応は複雑である。一般用語において、水溶液中のバナジウム+5は、主として低いpHではVO カチオンとして、高いpHではVO アニオンとして存在する。pH2~6の範囲では、主な種は、オレンジ色のデカバナジン酸イオン[V1028 6-]であり、いくつかのプロトン化された形態で存在することができる。これらのバナジウム+5オキシアニオンは、プロトン化されたアミンで容易に抽出される。最大担持試験は、平均して3個のプロトン化されたアミンが約9個のバナジウム原子を抽出することを示す。これは抽出された一級アニオンが、以下に表すことができる[V1025(OH)3-であることを示唆する。
N+3H←→3RNH+[V1025(OH)3-←→[(RNH(V1025(OH) 3-)]
富んだ担持された有機相58を、水又は希酸又はバナジウム+5塩溶液(例えば)で洗浄及び/又はごしごし洗浄し、搭載された水溶液又は共抽出された不純物(別の種として担持され、又は多核バナジウム種に導入されることができる鉄を含む)を除去することができる。
【0034】
次いで、富んだ有機相58を、使用したバナジウム回収ラフィネート60から分離することができる。V-逆抽出工程62において、例えば炭酸ナトリウム又はアンモニア水で、富んだ有機相58からバナジン酸ナトリウム又はアンモニウム水溶液64にバナジウムを逆抽出することができる。バナジン酸ナトリウム又はアンモニウム水溶液64は、溶媒抽出化学物質(例えば、アラミン336)の残留重硫酸塩担持物に由来する硫酸ナトリウム又は硫酸アンモニウムを含有することができる。従って、炭酸ナトリウム溶液との逆抽出反応には、以下のものが含まれる
・バナジウム逆抽出
(NR(H1028 4-)+5NaCO=2.5Na12+3HO+5CO(g)+4(NR
・硫酸塩逆抽出
(NR(HSO ))+NaCO=NaSO+CO(g)+(NR
【0035】
次いで、必要に応じて(デカバナジン酸塩担持の前に、アミンをプロトン化するに十分な酸がSXへの供給溶液中に存在する場合は、これに当てはまらない)、逆抽出された有機相66をコンディショニングし、VSXプロセス56にリサイクルさせることができる。
(NR)+HSO=(NR(HSO ))
【0036】
沈殿工程66において、例えば硫酸アンモニウム70を添加することで、バナジン酸ナトリウム溶液からメタバナジン酸アンモニウム68を沈殿させることができる。逆抽出溶液中に過剰の鉄が存在する場合には、逆抽出溶液を加熱して、鉄が溶液から沈殿する時間にわたって熟成させることができる。次いで、沈殿物をろ過し、溶液をメタバナジン酸アンモニウム沈殿に進める。
5(NHSO+2.5Na12=10NHVO+5NaSO
【0037】
次いで、メタバナジン酸アンモニウム(AMV)68を任意にろ過し、洗浄して搭載された不純物(ナトリウムを含む)を除去し、次いで焼成プロセス72中で処理して、焼成された五酸化バナジウム生成物74を提供することができる。
2NHVO=V+2NH(g)+HO(g)
【実施例
【0038】
実施例1:酸化物バナジウム含有鉱石の選鉱
本実施例は、酸化物鉱石(oxide ore)中でのバナジウムの効果的な選鉱とそれに続く炭酸塩の除去を説明する。
【0039】
図3に示される酸化物ハイドロサイクロンフローシートに従って、4つの酸化物鉱石の2kg給鉱を水で50%固体にどろどろにして(pulped)、磨砕洗浄インペラーを装備した4リットルの浮遊機械で30分間、ごしごし洗浄した(scrubbed)。各々の供給給鉱からの洗浄したスラリーを合わせて、5%固体に希釈した。スラリーを、28psiの供給圧力で、50.8mmのハイドロサイクロン(11mm渦ファインダー及び6.4mm頂部)を通して圧送した(Cyc#1)。Cyc#1のアンダーフローを、第2のサイクロニングステージのために、再度、50.8mmのハイドロサイクロンを通して圧送した(Cyc#2)。同様に、Cyc#2のアンダーフローを、第5のサイクロニングステージに供給した(Cyc#5)。Cyc#5のアンダーフローを乾燥し、ろ過し、秤量し、サブ試料を分析に供した。Cyc#1、Cyc#2及びCyc#5からのオーバーフローを、それぞれ第3のサイクロニングステージ(Cyc#3)、第4のサイクロニングステージ(Cyc#4)、及び第6のサイクロニングステージ(Cyc#6)に供給した。ステージ3~6のそれぞれについて、スラリーを、50psiの供給圧力で10mmハイドロサイクロンを通して圧送した。これらの各々のサイクロニング工程のオーバーフロー生成物及びアンダーフロー生成物を、乾燥し、ろ過し、秤量し、サブ試料を分析に供した。
【0040】
上記の手順により、表1に示した結果が得られ、酸化されたバナジウム含有鉱石からのバナジウムの選鉱と炭酸塩の除去が成功したことが証明された。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例2:還元されたバナジウム含有鉱石の選鉱
本実施例は、還元鉱石(reduced ore)からのバナジウムの効果的な選鉱と炭酸塩の除去を説明する。
【0043】
還元鉱石の2kg給鉱を水で65%固体にどろどろにして、約45分間ロッドミル中で粉砕した。粉砕したスラリーを30分間、磨砕洗浄タンク内に入れた。洗浄された物質を5%固体に希釈して、50psiの供給圧力で10mmハイドロサイクロンを通して圧送した。サイクロンのオーバーフロー鉱液を乾燥し、ろ過し、秤量し、サブ試料を分析に供した。4リットルの浮遊セル中で、5分間、サイクロンのアンダーフローを、乳化されたディーゼル油(コレクター)及びMIBC(起泡剤)と共に、高密度及び高強度(1,800rpm)でコンディショニングした。コンディショニングステージに続いて、有限の時間、空気を浮遊セルに導入し、6つの粗選浮遊選鉱(rougher flotation)ステージの最初のステージを完了した。各ステージの浮遊選鉱時間は2~10分間で変化し、後のステージほど時間が増えた。各ステージの間、追加の量のコレクタ-及び起泡剤を加えた。各ステージの最後に、浮遊濃縮物をろ過し、乾燥し、秤量し、サブ試料を分析に供した。各ステージからの尾鉱は、次の粗選浮遊選鉱ステージのための供給物として用いた。最終の粗選尾鉱を、ろ過し、乾燥し、秤量し、サブ試料を分析に供した。
【0044】
上記の手順により、表2に示した結果が得られ、還元されたバナジウム含有鉱石からのバナジウムの選鉱と炭酸塩の除去が成功したことが証明された。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例3:予備浸出酸性化
この実施例は、2つの分析で、大気中の予備浸出酸性化プロセスにおける炭酸塩鉱物の分解を実証する。
【0047】
第1の予備浸出分析において、バナジウム含有鉱石の試料を、95%が105μm以下の粒子サイズになるまで粉砕した。423gの鉱石試料(乾燥基準)を、15%固体に希釈するのに十分な水と共に攪拌された反応器中に入れた。スラリーを75℃に加熱し、96%HSOをゆっくりと添加して、約30g/LのHSO溶液を得た。合計で200.5gの96%HSOを、供給原料1トン当たり200.5×0.96/423×1000=455kgのHSOの添加速度で加えた。
【0048】
この第1の予備浸出酸性化の結果を表3に示す。その結果、鉱石試料の炭酸塩含量が16.2%から0.09%に減少したことが示され、それは99%の炭酸塩の分解を示す。同時に、36%のバナジウム、47%のウラン及び32%のモリブデンが溶液中に抽出された。
【0049】
【表3】
【0050】
第2の予備浸出分析において、バナジウム含有濃縮物の試料を調製した。750gの濃縮物試料(乾燥基準)を、15%固体に希釈するのに十分な水と共に攪拌された反応器中に入れた。スラリーを75℃に加熱し、96%HSOをゆっくりと添加して、約30g/LのHSO溶液を得た。合計で427.4gの96%HSOを、供給原料1トン当たり427.4×0.96/750×1000=541kgのHSOの添加速度で加えた。
【0051】
酸性化の結果を表4に示す。その結果、試料の炭酸塩含量が21.4%から0.18%に減少したことが示され、それは99%の炭酸塩の分解を示す。同時に、13%のバナジウムが溶液中に抽出された。
【0052】
【表4】
【0053】
実施例4:圧力酸化
この実施例は、圧力酸化プロセスで、バナジウム含有鉱石からバナジウムを完全に抽出することを示す。
【0054】
酸性化された(予備浸出された)バナジウム含有鉱石の試料を、圧力酸化で処理した。この実証のために、2LのParrチタンオートクレーブを用いた。オートクレーブ条件は、220℃、3時間、100psigの酸素及び1000rpmの攪拌速度であった。377.6gの乾燥試料を水で25%固体にどろどろにした。硫酸(86.5g,96%純度)を、6.3gのリグンゾル(lignsol)溶液及び20.9gの硫酸第二鉄と共に添加した。反応器を密封して、目標温度に加熱した。酸素を添加した。二酸化炭素等の不活性ガスの蓄積を防止するために、試験中、オートクレーブからベントガスの少量の抽気流を除去した。
【0055】
圧力酸化の結果を表5に示す。その結果は試料中の93%のバナジウムの抽出を示した。
【0056】
【表5】
【0057】
実施例5:ウラン及びモリブデンのイオン交換抽出
この実施例は、イオン交換による酸性浸出溶液からのU及びMoの効果的除去を示す。実施例4に記載のように、バナジウム含有鉱石の圧力酸化で酸性浸出液を調製した。浸出溶液は、バナジウム酸化状態が+4に制御されるのに十分な還元された酸化還元電位(ORP)であった。強塩基性イオン交換樹脂(Purolite A660)を室温で150g/LのHSO溶液でコンディショニングして、樹脂を硫酸塩型に変換した。酸でコンディショニングされた樹脂を水で洗浄し、ウラン及びモリブデンを除去する前に樹脂から過剰の酸を除去した。
【0058】
100mLの湿式沈降性樹脂を2.54cmカラムに入れた。浸出溶液を樹脂のカラムを通して下流に流し、処理された溶液を回収し、分析した。表6は、試験の間にわたる溶液の組成を示し、溶液中のバナジウムが充填されずに、U及びMoが樹脂によって溶液から除去されたことを示す。
【0059】
【表6】
【0060】
実施例6:バナジウムの溶媒抽出
この実施例は、三級アミンのアラミン336を用いた、溶解されたバナジウムの溶媒抽出の効果を示す。
【0061】
炭化水素希釈剤に可溶な三級アミンは、プロトン化されて、有機相中に大きな有機カチオンを形成することができる。この大きな有機カチオンは、水性相中の金属アニオンとイオン対を形成して、有機可溶性カチオンアニオン複合体を形成し、それによって金属含有イオンを水相から有機相中に移動させることができる。一定の範囲内の有機相と水相の体積比にわたって、それぞれの3級アミンを含有する有機相をそれぞれの金属アニオンを含有する水相と激しく混合し、両相を分離し、得られた有機相と水相を目的の金属について分析することで、抽出等温線のためのデータを生成することができる。抽出等温線はデータが生成される条件の関数であり、独特であり、それらの条件の下での結果を表す。抽出等温線を用いることで、計算的に抽出をモデル化することが可能である。そのモデル化には、マッケーブシールダイアグラムに反映される、進行する有機相流、進行する水相流及び抽出ステージの効率をモデル化することが含まれる。それによって、例えば、1つ、2つ又はそれ以上の抽出の向流ステージと共に、等温線の生成に用いられた条件の下での目的の金属の回収の程度を予測することが可能になる。
【0062】
プラス5の酸化状態のバナジウムは、広いpH範囲にわたってバナジウム-酸素複合体アニオンを形成する。これらのバナジウム-酸素複合体アニオンは三級アミンで抽出することができる。本プロセスの文脈においてこの挙動をモデル化するために、炭化水素希釈剤のAromatic 150ND中に1体積%のアラミン336(BASFから入手可能な三級アミン)を含有する有機溶液を用いて、等温線データを生成した。有機溶液を作りたての1.5g/Lの硫酸溶液で2回激しく接触させて、完全にプロトン化されたアラミン336溶液を得た。一定の範囲内の有機相と水相の体積比にわたって、作りたての完全にプロトン化されたアラミン336有機溶液を、1.65g/Lの+5の酸化状態のV、約5g/Lの第二鉄、及び微量のモリブデンを含む他の金属を含む作りたての水溶液で、激しく接触させた。接触は、平衡を保証するために合計10分間であり、温度は45℃であった。水相の平衡のpHは1.5を目標とした。合計の混合時間の終わりに、pH1.35~1.4を示す水相と共に、混合を停止させ、少量のNaOHを加え、再度攪拌を開始してpHを1.5に上昇させた。この操作を再度繰り返して、最終pHを1.55とした。最後に両相を分離するようにし、水相のpHを決定した。それぞれの有機相及び水相のろ過された試料を、バナジウム分析に付して、表7の等温線データが得られた。
【0063】
【表7】
【0064】
等温線データを用いてマッケーブシールダイアグラムを生成して、100%ステージ効率で1/1の進行する有機相流/進行する水相流を仮定した。2つの抽出の向流ステージのためのバナジウム回収のためのマッケーブシールダイアグラムと共に抽出等温線を、図4に示す。マッケーブシールダイアグラムは、2つの向流抽出ステージを有する溶媒抽出プラントで45℃のAromatic 150ND希釈剤中の1体積%アラミン336溶液を用いる場合に、1.65g/Lのバナジウムを有するpH1.5の水溶液からの約84%のバナジウムの回収を示す。
【0065】
実施例7:バナジウム逆抽出
この実施例は、アラミン336溶媒からのバナジウムの効果的な逆抽出を示す。この実施例では、8リットルのAromatic 150ND中の1体積%のアラミン336溶液を用いて、この溶液を作りたての1.5g/Lの硫酸溶液と2回、少なくとも2分間、激しく接触させた。この1体積%のプロトン化されたアラミン336溶液を、本明細書に記載のようにバナジウム酸化物鉱石を加圧浸出し、過酸化水素を用いて全てのバナジウムを+5の酸化状態に酸化することで生成されたバナジウム浸出水溶液で10分間、激しく接触させた。得られたバナジウム担持有機相は、不純物としての鉄及びモリブデンと共に、960mg/LのVを含有した。このバナジウム装填有機溶液を、有機相/水相の体積比1で、100g/Lの炭酸ナトリウムを含む200mLの溶液でバッチ逆抽出した。逆抽出溶液を作りたてのバナジウム充填有機相と接触させた後、回収されたバナジウム逆抽出溶液のpHは、炭酸ナトリウムの添加で約9からpH11に上昇させた。
【0066】
逆抽出された有機相のバナジウム濃度は1mg/L未満であり、炭酸ナトリウムを用いた約9以上のpHでのバナジウムの本質的に完全な逆抽出が示された。最初の逆抽出溶液の最終体積は214mLであった。結晶化又は沈殿の前、その溶液は、34.6g/LのV、約1.7g/LのFe、110g/Lのナトリウム及び102mg/Lのモリブデンを含み、pHは>9であった。
【0067】
実施例8:メタバナジン酸アンモニウムの結晶化
この実施例は、実施例7に記載のように調製した逆抽出液からのメタバナジン酸アンモニウム(AMV)の効果的な結晶化を示す。静置後、実施例7で製造した逆抽出液は自発的な結晶化及び沈殿の徴候を示した。結晶及び固体を逆抽出液からろ過し、脱イオン水で洗浄した。ほとんどの部分の洗浄水に溶解した結晶は、少量の赤褐色の沈殿物をろ紙上に残した。得られた固体/結晶の洗浄水を分析した結果、8.2g/Lのバナジウム、325mg/LのFe、29.9g/Lのナトリウム及び25.6mg/Lのモリブデンを含有することが見出され、時間と共に逆抽出され結晶化したバナジウムの一部が洗浄水に溶解したことが示された。
【0068】
ろ過した逆抽出液は、33.3g/LのV、1.65g/LのFe、89.4g/Lのナトリウム及び97mg/Lのモリブデンを含有し、pHが10.1であった。この溶液を、95℃で7時間、溶液を加熱することによる鉄の除去に付して、36.4g/LのV、117g/LのNa及び992mg/LのFeを含み、pHが9.92である溶液を得た。NaOHを用いて、この溶液のpHを10.5に調整し、約6時間、約95~100℃に戻した。加熱中、液体はやがて部分的に濁り、ろ過を行って透明なバナジウム含有逆抽出溶液を製造する際、少量の赤色固体がろ紙上に残った。この最終の透明なバナジウム脱鉄逆抽出溶液は、42.3g/LのV、142g/LのNa及び126mg/LのFeを含有し、蒸発による体積の損失を示した。
【0069】
以下のようにして、上記の最終の透明な脱鉄溶液の79mLの試料からバナジン酸アンモニウムを沈殿させた。79mLの試料を35℃で攪拌し、硫酸の添加でpHを8に維持しながら、モル基準で6倍過剰の硫酸アンモニウムを約3時間にわたってゆっくりと添加した。得られた溶液を攪拌し、室温で一晩冷却した。
【0070】
反応容器中に形成された結晶をろ過して、15.4gのAMVを製造した。ろ過溶液は、872mg/Lのバナジウムを含有した。
【0071】
実施例9:AMVの焼成
実施例9で製造した15.4gのAMVを500℃で3時間、焼成し、12.2gの焼成物(重量損失21%)を得た。最初の焼成生成物はNaが高く、続く連続する洗浄を用いてNa含有量を減少させた。焼成物を200mLの熱い脱イオン水で30分間、温度で再度どろどろにし、ろ過した。次いで、硫酸を加えてpHで、それを脱イオン水で再度どろどろにし、30分間よく混合し、ろ過した。脱イオン水を用いて、ろ過ケーキ上で最終的な置換洗浄を行った。
【0072】
3回洗浄した焼成物は、主要成分として、49.7%のV、1.82%のNa、0.09%のFe及び0.02%のAlを示した。VをVに直接変換すると、88.7%のVを示し、一方、100%から不純物を差し引く分析では、97~98%のVを示す。
【0073】
洗浄によって、最初の焼成物中のNaの約92%及びFeの約1/3を除去し、それらの大半は最初の熱水で処理された。続く2回の洗浄は、研磨工程として作用させた。
【0074】
焼成物を洗浄する他の方法は、焼成前に、脱イオン水中の約450g/Lの硫酸アンモニウム溶液でAMVを数回洗浄することであろう。同様に、再結晶で高純度のAMVを製造することができる。
【0075】
組み込まれた参考文献
Gupta and Krishnamurthy (1992), Extractive Metallurgy of Vanadium, Process Metallurgy 8, Elsevier Science Publishers B.V.
Brooks and Potter, "Recovering vanadium from dolomitic Nevada shale" 1974, U.S. Bureau of Mines.
【0076】
本明細書中の参考文献の引用は、これらの参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書に引用され、特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない全ての優先権文書及び全ての刊行物、並びにこれらの文書及び刊行物に引用される全ての文書は、個々の刊行物が参照により本明細書に組み入れられるために明確に個々に記載されているように、また本明細書中に完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施態様が本明細書に開示されるが、当業者の共通の一般的知識に従って、本発明の範囲内で多くの改造及び改変を行うことができる。この改変には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するための、本発明の任意の側面に対する既知の等価物の置換が含まれる。本明細書では、「代表的な」又は「例示された」等の用語が、「実施例、事例、又は実例として機能すること」を意味する。従って、「代表的な」又は「例示された」として本明細書に記載された全ての実施形態は、独立した実施態様である他の全ての実施形態よりも必然的に好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。異なって記載されていない限り、数値範囲は、範囲を規定する数字を含み、数字は、必然的に与えられた小数部の近似値である。本明細書では、用語「含む(comprising)」は、オープンエンド用語として用いられ、実質的に表現「含むが、これに限定されない」と等価である。用語「含む(comprises)」は、それに対応する意味を有する。文脈が明確に異なって規定していない限り、本明細書で用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、複数の参照を含む。従って、例えば、「物」の参照は、1つ以上のその物を含む。本発明は、実施例及び図面を参照して、本明細書中に実質的に記載される全ての実施形態及び変形を含む。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】