(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】酸化ストレスの疾患及び傷害の治療のためのプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
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A61P 7/06 20060101ALI20230310BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230310BHJP
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A61P 3/10 20060101ALI20230310BHJP
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A61P 13/12 20060101ALI20230310BHJP
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A61P 27/16 20060101ALI20230310BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230310BHJP
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A61P 31/04 20060101ALI20230310BHJP
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A61P 25/32 20060101ALI20230310BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230310BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230310BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230310BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230310BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230310BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230310BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230310BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
A61K31/16
A61P37/02
A61P31/18
A61P7/06
A61P27/02
A61P11/00
A61P3/10
A61P17/02
A61P13/12
A61P11/06
A61P39/06
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A61P25/16
A61P7/00
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A61P9/00
A61P19/04
A61P27/16
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A61K9/14
A61K9/20
A61K9/08
A61K9/48
A61K9/72
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/198
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544278
(86)(22)【出願日】2021-01-23
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2021014819
(87)【国際公開番号】W WO2021151044
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517159253
【氏名又は名称】ナキュイティ ファーマシューティカルズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】NACUITY PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ウォール ジー. マイケル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、酸化ストレスが関与する疾患又は障害を予防又は治療する治療目的で、diNACA、NACA及びNACを哺乳動物に送達するためのプロドラッグとしてジNACAを使用するための方法を含む。方法は、治療剤としてのNACA又はNACの治療的な使用を伴う、任意の疾患を含む。また、患者における角膜内皮細胞減少の予防、低減又は治療のための組成物及び方法が提供され、該組成物及び方法は、角膜内皮細胞減少を予防若しくは低減するか、又は老視を予防若しくは治療する量の、N-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)(diNACA)の少なくとも1つの単独又は組合せを、患者に提供するステップを含む。diNACAは、白内障を予防又は治療するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における酸化ストレスの疾患又は障害を治療するために、diNACA、NACA又はNACを送達するためのプロドラッグとしてdiNACAを使用するための方法であって、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、糖尿病を有していない対象における白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、黄斑変性症、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、呼吸器系における粘膜の蓄積若しくは肥厚、精子形成低下及び男性不妊症、ベータ-サラセミア、抗菌感染症、HIV関連認知症、メタンフェタミン乱用、コカイン乱用、アルコール乱用、皮膚色素過剰又はフリードライヒ失調症から選択される、酸化ストレスの1又は2以上の疾患又は障害を予防又は治療するために、治療有効量のdiNACA、NACA、NAC、又はそれらの組合せを前記哺乳動物に投与するステップを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、前記方法。
【請求項2】
diNACA、NACA及びNACを哺乳動物に送達するためのプロドラッグが、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、経皮、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
diNACAが、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、経皮、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
diNACAが、慢性閉塞性肺障害、気管支炎及び嚢胞性線維症を含む、呼吸器系における粘膜の蓄積又は肥厚の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
diNACAが、網膜色素変性症の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
diNACAが、精子形成低下及び男性不妊症の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
diNACAが、パーキンソン病の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
diNACAが、ベータ-サラセミアの治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
diNACAが、HIV関連認知症の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
diNACAが、メタンフェタミン乱用の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
diNACAが、コカイン乱用の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
diNACAが、アルコール乱用の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
diNACAが、アルコール乱用の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、NACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
diNACAが、皮膚色素過剰又は若返りを必要とする皮膚の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射若しくは鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
diNACAが、老視の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射により若しくは鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
diNACAが、黄斑変性症の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射により若しくは鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
diNACAが、肝毒性の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
diNACAが、脳振盪の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
diNACAが、電離放射線への曝露の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
diNACAが、高エネルギー爆破から生じる外傷性脳傷害又は脊髄傷害の治療的な予防又は治療のために哺乳動物に投与され、diNACAの送達が、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により若しくはインプラントにより投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
ヒト対象における角膜内皮細胞減少の防止のための方法であって、
角膜内皮細胞減少の治療を必要とするヒト患者を特定するステップと、
前記角膜内皮細胞減少を予防又は低減するのに十分な治療有効量のN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)の少なくとも1つを、前記ヒト患者に投与するステップと
を含む、前記方法。
【請求項22】
NACA又はdiNACAが、製剤、挿入物又はインプラントであり得る、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
角膜細胞減少が、白内障又は眼科手術に起因し、組成物が、白内障若しくは眼科手術の後、又はヒト対象が糖尿病を有していない場合は白内障の後に、前記対象に提供される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下若しくは直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、約0.01~150mg/Kgの1日用量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、1日2回又は3回投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、第2の活性薬剤と共に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
投与のための用量が、1用量当たり約0.001、0.01、0.1、1、10、100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、眼球挿入物、眼球インプラント、点眼薬又は液剤を介して経口送達される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、角膜内皮細胞減少を予防又は低減するために予防的に、手術後に又は他の処置若しくは治療の後に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
ヒト対象における老視の予防又は低減のための方法であって、
老視のための治療を必要とするヒトを特定するステップと、
老視を予防又は低減するのに十分な治療有効量のNAC、N-アセチルシステインアミド(NACA)、又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を、前記ヒトに投与するステップと
を含む、前記方法。
【請求項33】
NAC、NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
NAC、NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
NAC、NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、約0.01~150mg/Kgの1日用量で投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
NAC、NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、1日2回又は3回投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
NAC、NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
投与のための用量が、1用量当たり約0.001、0.01、0.1、1、10、100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
NAC、NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される、請求項323に記載の方法。
【請求項40】
治療有効量が、好ましくは、視力低下を低減するか、又は視力を改善する治療剤の量を指す、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
治療有効量のdiNACAを、それを必要とする対象に提供し、治療有効量のdiNACAを前記ヒト患者に投与して、白内障を予防又は治療することによる、白内障の予防又は低減のための方法。
【請求項42】
diNACAが、硝子体切除手術の前、最中、又は後に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
diNACAが、経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、舌下若しくは直腸内に、点眼薬、挿入物若しくはインプラントを介して眼球に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年1月24に出願された米国仮出願第62/965,660号の優先権を主張するものであり、その内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府資金による研究の記述
適用なし。
【0003】
本発明は、一般に、酸化ストレスが関与する様々な疾患及び/又は障害の防止及び/又は治療のための、NACA及びNACに対するプロドラッグとしての(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
抗酸化物質であるNAC又はNACAには、それらの抗酸化特性、抗アポトーシス特性、抗炎症特性及び神経保護特性のおかげで、酸化ストレスが関与する数々の疾患及び障害の治療のための多くの使用及び潜在的な使用がある。(Salamon S, Kramar B, Marolt TP, Poljsak B, Milisav I.; Medical and Dietary Uses of N-Acetylcysteine. Antioxidants 2019, 8, 111; doi:10.3390/antiox8050111、Sunitha K, Hemshekhar M, Thushara R, Santhosh MS, Yariswamy M, Kemparaju K, et al. N-acetylcysteine amide: a derivative to fulfill the promises of N-acetylcysteine. Free Radical Res 2013;47:357-367)。これらの使用のいくつかを、以下に記載する。
【0005】
粘液溶解。米国特許第3,340,147号明細書は、粘液溶解薬としてのNACの使用を特許請求している。NACは、粘液溶解薬(MUCOMYST(登録商標))としての使用について、米国食品医薬局(FDA、Food and Drug Administration)によって承認された。
【0006】
肝毒性。NACは、アセトアミノフェン過剰摂取のためのACETADOTE(登録商標)及びCETYLEV(登録商標)によって引き起こされた肝毒性の治療における使用について、FDAによって承認された。
【0007】
米国特許第9,216,162B2号明細書は、アセトアミノフェンの肝毒性を阻止又は低減するためのNACAの使用を特許請求している。しかし、その文献は、アセトアミノフェンの肝毒性を阻止又は低減するための、NACA又はNACに対するプロドラッグとしてのdiNACAの使用を教示していない。
【0008】
米国特許出願第14/632,089号明細書(米国公開第20150164830A1号明細書)は、アセトアミノフェンの肝毒性を阻止又は低減するためのNACAの使用を特許請求している。しかし、その文献は、アセトアミノフェンの肝毒性を阻止又は低減するための、NACA又はNACに対するプロドラッグとしてのdiNACAの使用を教示していない。
【0009】
眼科使用。網膜の疾患及び障害のためのNACA。
Schimel et al.(Schimel AM, Abraham L, Cox D, Sene A, Kraus C, Dace DS, et al. N-acetylcysteine amide (NACA) prevents retinal degeneration by up-regulating reduced glutathione production and reversing lipid peroxidation. Am J Pathol 2011;178:2032-2043)は、NACAを用いたヒト網膜色素上皮細胞の治療が、酸化ストレス誘発性の細胞傷害及び死滅から保護したことを示した。
【0010】
網膜色素変性症。網膜色素変性症(RP、Retinitis Pigmentosa)のためのNAC。高用量の経口NACは、視力を改善し(2~5文字、p<0.05)、RP患者(n=30)におけるNACの房水濃度を増大した(Campochiaro PA, Iftikhar M, Hafiz G, Akhlaq A, Tsai G, Wehling D, Lu L, Wall GM, Singh MS, Kong X. Oral N-acetylcysteine improves cone function in retinitis pigmentosa patients in phase I trial. J Clin Invest. 2020. https://doi.org/10.1172/JCI132990)。
【0011】
網膜色素変性症のためのNACA。米国特許出願第15/523,665号明細書は、RPの治療のためのNACAの使用を教示している。NACAは、RPのマウスモデルにおいて、NACよりも大いに視覚パラメータを改善することが示された。
【0012】
角膜内皮細胞生存。NACは、細胞培養及びマウスモデルにおける角膜内皮生存を増大した(Kim EC, Meng H; Jun AS. N-Acetylcysteine Increases Corneal Endothelial Cell Survival in a Mouse Model of Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy. Exp Eye Res 2014; 127: 20-25)。
【0013】
白内障。NACは、酸化誘発性白内障から目の水晶体を保護し、硝子体切除術後の白内障を防止する、又は初期段階での糖尿病性白内障の進行を阻害する活性を示した。(Wang P, Liu XC, Yan H, Li MY. Hyperoxia-induced lens damage in rabbit: protective effects of N-acetylcysteine. Mol Vis. 2009;15:2945-52、Liu XC, Wang P, Yan H. A rabbit model to study biochemical damage to the lens after vitrectomy: effects of N-acetylcysteine. Exp Eye Res. 2009;88(6):1165-70. doi: 10.1016/j.exer.2009.01.001、Zhang S, Chai FY, Yan H, Guo Y, Harding J, Effects of N-acetylcysteine and glutathione ethyl ester drops on streptozotocin-induced diabetic cataract in rats. Mol Vis. 2008;14:862-70)
【0014】
NACAは、亜セレン酸ナトリウム誘発性白内障及びl-ブチオニン-(S,R)誘発性白内障を阻害することが示された(それぞれ、Maddirala et al. BMC Ophthalmology (2017) 17:54、及びCarey JW, Pinarci EY, Penugonda S, Karacal H, Ercal N. In vivo inhibition of I-buthionine-(S, R)-sulfoximine-induced cataracts by a novel antioxidant, N-acetylcysteine amide. Free Radical Biol Med. 2011;15; 50(6):722-9. doi: 10.1016/j.Free Rad Biol Med.2010.12.017)。
【0015】
国際特許出願公開第2013/163545A1号パンフレットは、治療有効量のNACAを使用して白内障を治療する方法を教示しているとされる。しかし、国際特許出願公開第2013/163545A1号パンフレットは、白内障の形成を防止又は遅延するためのNACAの使用を記載していない。さらに、国際特許出願公開第2013/163545A1号パンフレットは、白内障の治療又は防止のための、NACAを目に送達するためのプロドラッグとしてのdiNACAの使用を記載していない。
【0016】
米国特許出願公開第20200281944A1号明細書、PCT出願/IB第2018/058979号明細書及びカナダ特許出願第3078680号明細書は、水晶体障害の治療のためのラノステロール又は25-ヒドロキシコレステロールでエステル化されたNACの使用、及び水晶体障害の治療のための、NAC又はNACAと組み合わせたラノステロール又は25-ヒドロキシコレステロール誘導体の使用に関する。しかし、それらの文献は、白内障の防止若しくは治療のための、NAC単独若しくはNACA単独の使用、又は白内障若しくは任意の他の徴候の防止若しくは治療のための、NACA若しくはNACを目に送達するためのプロドラッグとしてのdiNACAの使用を教示していない。
【0017】
老視。米国特許出願公開第20200281944A1号明細書、PCT出願/IB第2018/058979号明細書及びカナダ特許出願第3078680号明細書は、水晶体障害を治療するためのラノステロール又は25-ヒドロキシコレステロールでエステル化されたNACの使用、水晶体障害の治療のための、NAC又はNACAと組み合わせたラノステロール又は25-ヒドロキシコレステロール誘導体の使用を教示しているとされる。しかし、それらの文献は、老視の防止若しくは治療のためのNAC単独若しくはNACA単独の使用、又は老視若しくは任意の他の徴候の防止若しくは治療のための、NACA若しくはNACを目に送達するためのプロドラッグとしてのdiNACAの使用を教示していない。
【0018】
皮膚色素過剰又は皮膚若返り(rejuvenation)。メラニン細胞によって分泌された皮膚色素沈着の主要構成成分であるメラニンは、有害な紫外(UV、ultraviolet)放射線から皮膚を保護するが、日焼けで損傷した皮膚へのメラニン色素の蓄積は、様々な色素沈着過剰障害をもたらす。抗酸化物質であるNACA(「NPI-001」)及びdiNACA(「NPI-002」)は、ヒトメラニン細胞におけるメラニン産生を阻害し、UV放射線に曝露された健康なヒト皮膚外植片におけるグルタチオン及びNACを増大した。まとめると、これらの知見は、反応性酸素種が、再構成されたヒト上皮培養物及びUV照射に曝露された皮膚におけるメラニン形成に関与するという理論を裏付ける。グルタチオン(GSH、glutathione)は、チロシナーゼの活性を抑制することによってメラニン形成を阻害し、ヒトにおけるGSHの経口投与は、皮膚におけるメラニン産生を低減する。実際、チロシナーゼ活性の著しい阻害が、NACA及びdiNACAで用量応答方式により観察された。これらの結果に基づくと、NACA及びdiNACAは、抗酸化物質、すなわち皮膚のための潜在的治療薬としての治療実用性を有する(Neil J; Wall GM; Brown M. Antioxidant Effects of N-acetylcysteine Amide and NPI-002 on Human Skin or Equivalents. AAPS PharmSci360, Poster Abstract, October 26-November 5, 2020)。
【0019】
脳振盪。米国特許第8,993,627B2号明細書は、脳振盪の防止又は治療のための、様々な経路によって様々な形態及び濃度で送達されるNACAの使用を教示しているとされる。しかし、その文献は、脳振盪を防止又は治療するための、NACA又はNACに対するプロドラッグとして任意の形態又は経路で投与されるdiNACAを、使用も教示もしていない。
【0020】
電離放射線。米国特許第8937099B2号明細書は、電離放射線への曝露の防止又は治療のための、様々な経路によって様々な形態及び濃度で送達されるNACAの使用を特許請求している。しかし、その文献は、電離放射線への曝露を防止又は治療するための、NACA又はNACに対するプロドラッグとして任意の形態又は経路で投与されるdiNACAの使用を教示していない。
【0021】
高エネルギー爆破から生じる外傷性脳傷害又は脊髄傷害。米国特許第8,354,449B2号明細書は、高エネルギー衝撃爆破への曝露から生じる外傷性脳傷害又は脊髄傷害の治療のための、様々な経路によって様々な形態及び濃度で送達されるNACAを教示しているとされる。しかし、その文献は、高エネルギー衝撃爆破への曝露から生じる外傷性脳傷害又は脊髄傷害の治療のための、NACA又はNACに対するプロドラッグとして任意の形態又は経路で投与されるdiNACAの使用を教示していない。
【0022】
黄斑変性症。米国特許出願第15/943236号明細書は、黄斑変性症の治療のための、眼科的経路によって様々な形態及び濃度で送達されるNACAの使用を特許請求している。しかし、その文献は、黄斑変性症の治療のための、NACA又はNACに対するプロドラッグとして任意の形態又は経路で投与されるdiNACAの使用を教示していない。
【0023】
眼科学のための他の抗酸化物質。老視のためのリポ酸コリンエステル。老視は、いくつかの眼科的変化の結果である。水晶体は、経時的に引き延ばされ、毛様体は萎縮変化を受け、硝子体は粘性が低下し、水晶体はその柔軟性を喪失する。年齢と共に、ヒトの自然水晶体におけるクリスタリンと呼ばれるタンパク質は、架橋し始め、水晶体の可塑性の喪失を引き起こす。まずこれは、視調節の喪失として顕在化し、それによって、近くの物体に焦点を合わせる能力が低下し、最終的には混濁又は白内障となる。したがって、老視及び白内障は、ヒトが加齢するにつれて自然水晶体において進行する、一連の抗酸化プロセスであると考えられる。このプロセスは、治療剤(例えば、局所的副腎皮質ステロイド点眼薬)、手術(例えば、硝子体切除術)、又は他の原因によって加速され得る。抗酸化物質は、老視及び白内障の治療においていくらかの有効性を示した。
【0024】
近年の研究により、局所的な眼の抗酸化療法が、老視を治療し得ることが実証された。EV06点眼溶液(リポ酸コリンエステル、LACE、lipoic acid choline ester)は、1.5%点眼薬(Encore Vision社)であり(Novartis社ではUNR844と呼ばれる)、水晶体にリポ酸を送達するために使用されるプロドラッグである(https://www.eyeworld.org/has-presbyopia-found-encore)。LACEは、角膜に浸透し、コリン及びリポ酸の2種の自然に存在する物質に代謝される。水晶体の線維細胞内の酵素は、リポ酸を、活性形態であるジヒドロリポ酸(DHLA、dihydrolipoic acid)に化学的に還元する。DHLAは、水晶体タンパク質間のジスルフィド結合を還元し、水晶体の変形能を増大し、視調節の幅を増大することによって、水晶体のマイクロ流体を回復するといわれている。
【0025】
LACEの開発を活発にした仮説により、水晶体の柔軟性又は老視におけるその欠如について取り組まれた。水晶体タンパク質が経時的に酸化すると、ジスルフィド結合が形成されて、視調節の作用中にそれらが互いに対して移動しにくくなる。仮説とは、抗酸化剤であるLACEの局所適用が、架橋されたジスルフィド結合を破壊することができ、タンパク質が、柔軟性の増大を取り戻し、水晶体の変形範囲をより大きくし、それによって視調節の動的範囲の増大につながるはずであるというものであった。LACEは、水晶体へのDHLAの眼球送達を促進した。DHLAは、水晶体に入ると、水晶体タンパク間のジスルフィド結合を還元し、水晶体マイクロ流体を回復したといわれている。概念実証は、まず、ヒト屍体水晶体を用いてインビトロで、及びウサギの目においてインビボで確認され、それによって、薬物が水晶体を軟らかくし、水晶体変形能を増大した(https://www.eyeworld.org/has-presbyopia-found-encore)。
【0026】
老眼者におけるLACEの小規模ファースト・イン・ヒューマン臨床治験では、レジメンが停止された後も、薬物が相対的に安全、ロバスト、かつ持続的であったことが示されたが、これにより、プラセボと比較して統計的に有意な、近見視力(遠見矯正下近見視力(DCNVA、distance corrected near visual acuity))の改善が実証された。
【0027】
臨床研究は、4カ所の米国現場からの、遠視、近視又は正視眼、及び老視の診断を有する75人の患者(45~55歳)を含む、前向き無作為化二重盲検プラセボ対照研究であった。患者を2:1に無作為化した(EV06=50、プラセボ=25)。治験薬は、91日間与えられ、患者は、7カ月間の追跡期間にわたってモニタリングされた。ベースラインにおいて、研究患者は、それぞれの目が20/40未満のDCNVAであり、それぞれの目が20/20又はそれよりも良好な最良遠方矯正下視力(BCDVA、best corrected distance visual acuity)であり、自覚的屈折検査による等価球面度数と調節麻痺下屈折検査による等価球面度数との間の差が≦0.50Dであった。視力改善は、対象が両目視力を用いた場合に最も顕著であり、84%が20/40又はそれよりも良好な両目視力を達成したのに対して、プラセボ群では52%であった。研究参加者の53パーセントは、両目視力において約0.2logMARの変化を達成したのに対して、プラセボでは22%であった。どの対象も中断せず、視界を脅かすAE又はIOPの変化はなかった。薬物は、導入時には心地良く、最良遠方矯正下視力、自覚的屈折検査値、調節麻痺下屈折検査値、又は瞳孔径に変化を引き起こさなかった。研究群において、91日目にEV06の投薬を停止したEV06を投薬した後も、近視改善に対する薬物効果は長く持続した。プラセボと比較して、研究期間の終了後241日間、著しい効果が報告され、治療薬の分解はごく少量であった。3カ月の研究時間の終了後7カ月間、治療された対象の39%は、プラセボのわずか6%と比較して、両目の近視において≧0.2logMARの変化を維持した(www.eyeworld.org/has-presbyopia-found-encore)。
【0028】
白内障のためのN-アセチルカルノシン。研究により、抗酸化物質による眼の局所療法は、白内障を防止及び/又は治療し得ることが実証された。白内障の発症における1つの機序として、フリーラジカル誘発性脂質酸化(LPO、lipid oxidation)が報告された(Babizhayev MA, Deyev AI, Yermakova VN, Remenshchikov VV, Bours J. Revival of the Lens Transparency with N-Acetylcarnosine. Current Drug Therapy, 2006:1; 91-116)。白内障の初期段階は、LPO産物である主成分(ジエンコンジュゲート、セトジエン(cetodiene))の蓄積によって特徴付けられるが、後期段階には、LPO蛍光性最終産物が優勢になる。水晶体脂質の脂肪アシル含量の増大は、脂肪酸であるフルオロ置換誘導体を産生することが、ガスクロマトグラフィー分析によって示された。水晶体の混濁度は、水晶体における還元型グルタチオン(GSH)濃度の減少に起因して、水晶体タンパク質のチオール(-SH)基の酸化を伴う、水晶体におけるLPO蛍光性最終産物の蓄積レベルと相関する。LPO産物を硝子体液に注射すると、白内障が誘発されることが示された。ペルオキシドによる水晶体繊維膜の損傷は、白内障形成の初期の原因となり得る。Babizhayevら(2006)は、加齢性白内障の非外科的な防止及び治療に適した、N-アセチルカルノシンを含有する点眼薬を開発した。N-アセチルカルノシン点眼薬は、水晶体を酸化ストレス誘発性損傷から保護し、臨床治験において、視界の長期間にわたる改善をもたらした。N-アセチルカルノシン点眼薬は、目に局所投与されると、L-カルノシンを房水に送達した。水晶体の混濁に対するN-アセチルカルノシン点眼薬の効果が、白内障を有する患者及び加齢性白内障を有するイヌにおいて調査された。水晶体の透明性及び混濁帯域を清澄化する修正に対するプラス効果が実証された。これらの結果は、局所抗酸化物質であるN-アセチルカルノシン点眼薬による加齢性白内障の治療のプラス効果(逆転及び防止の両方)を示唆した。(国際特許出願公開第2004/028536A1号パンフレット)。
【0029】
神経変性(Neuorogenerative)疾患及び物質乱用。パーキンソン病(PD、Parkinson's disease)。研究により、NACAが脳に浸透し、組織培養物における様々な酸化ストレス発生神経毒から、概してニューロンを、特にドーパミン作動性細胞を保護することが実証された。NACAを用いる治療は、PDの3つの実験モデルにおけるドーパミン作動性ニューロンの損傷を著しく低減した。NACAは、一側性6-OHDA誘発性黒質病変を有するラットのアンフェタミン誘発性回転行動を抑制した。NACAは、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6,-テトラヒドロピリジンで治療したマウスにおける線条体のドーパミンレベルの低減を減弱した。またNACAは、ラットにおけるロテノンの長期的頸静脈内投与後のドーパミン作動性ニューロン喪失を低減した。したがって、NACAは、PDを有する患者における黒質ニューロン変性及び疾病進行を緩徐するのに有効となり得る(Bahat-Stroomza M, Gilgun-Sherki Y, Offen D, Panet H, Saada A, Krool-Galron N, Barzilai A, Atlas D, Melamed E. A novel thiol antioxidant that crosses the blood brain barrier protects dopaminergic neurons in experimental models of Parkinson's disease. European Journal of Neuroscience, 2005; 21: 637-646)。
【0030】
HIV関連認知症及びメタンフェタミン。研究により、HIV-1関連認知症(HAD、HIV-1 associated dementia)のリスクの上昇が、メタンフェタミン(METH、methamphetamine)乱用患者において観察されたことが示された。HIVウイルスタンパク質(gp120、Tat)及びMETHは、共に酸化ストレスを誘発するので、薬物乱用患者は、酸化ストレス誘発性損傷のリスクがより高い。NACA/生理食塩水で予め治療したCD-1マウスが、gp120、Tat、gp120+Tat又は生理食塩水の注射を5日間受け、続いて、5日目にMETH/生理食塩水の注射を3回受け、最終注射の24時間後に屠殺された。様々な酸化ストレスパラメータが測定され、gp120+Tat+Methで治療した動物は、それらのGSH及びMDAレベルによって示される通り、最も高いチャレンジ群であることが見出された。NACAを用いる治療は、動物を酸化ストレスから著しく救出した。さらに、NACAで治療した動物は、gp120+Tat+METH単独で治療された群と比較して、TJタンパク質の発現及びBBB浸透性が著しくより高かったが、このことは、NACAが、gp120、Tat及びMETHに曝露された動物における酸化ストレス誘発性損傷からBBBを保護することができ、したがって、HADを有する患者のための実行可能な治療選択肢となり得ることを示している(Banerjee A, Zhang X, Manda KR, Banks WA, Ercal N. HIV proteins (gp120 and Tat) and methamphetamine in oxidative stress-induced damage in the brain: Potential role of the thiol antioxidant N-acetylcysteine amide. Free Radic Biol Med. 2010 May 15; 48(10): 1388-1398. doi:10.1016/j.freeradbiomed.2010.02.023)
【0031】
コカイン乱用。研究により、NACAが、嗅球摘出ラットにおけるコカイン探索挙動を阻止したことが実証された(Jastrzebska1 J, Frankowska M, Filip M, Atlas D. N-acetylcysteine amide (AD4) reduces cocaine-induced reinstatement. Psychopharmacology 2016;33:3437-3448 DOI 10.1007/s00213-016-4388-5)。
【0032】
アルコール乱用。慢性的なアルコール摂取は、神経炎症及び細胞傷害をもたらし、アルコール摂取を永続化し、再発のきっかけを与える変化をもたらすことが提唱されている。研究により、脳内酸化ストレスは、アルコール誘発性神経炎症と一貫して関連していることが示され、文献により、酸化ストレス及び神経炎症が互いに永続化させることが暗示されている。アルコールを好むラットで実施された研究により、慢性的なエタノール摂取が、低用量の抗酸化物質であるNAC(40mg/kg/日)又は抗炎症性アスピリン(15mg/kg/日)のいずれかの経口投与によって50%~55%阻害された一方、両方の薬物の同時投与により、慢性的なアルコール摂取が70%~75%(p<.001)阻害されたことが示されている。慢性的なアルコール摂取、長期的なアルコール欠乏及びその後のアルコールの再接近後の飲酒の再開は、60分で95~100mg/dLの血中アルコールレベルをもたらしたが、NAC又はアスピリンのいずれかにより60%、両方の薬物の同時投与により85%低減された(血中アルコール:10~15mg/dL、p<.001)。アスピリン及びNACの同時投与は、慢性的なエタノール摂取を著しく阻害し、過飲の再発を阻止した(Israel Y, Quintanilla ME, Ezquer F, Morales P, Santapau D, Berrios-Carcamo P, Ezquer M, Olivares B, Herrera-Marschitz M. Aspirin and N-acetylcysteine co-administration markedly inhibit chronic ethanol intake and block relapse binge drinking: Role of neuroinflammation-oxidative stress self-perpetuation. Addiction Biology. 2019;e12853. https://doi.org/10.1111/adb.12853)。
【0033】
血液障害。研究により、β-サラセミア患者からの血液細胞の、NACAを用いたインビトロ治療が、赤血球(RBC、red blood cells)、血小板及び多形核(PMN、polymorphonuclear)白血球の低下したGSH含量を増大し、それらの反応性酸素種(ROS、reactive oxygen species)を低減したことが示された。これらの効果により、溶血及びマクロファージによる貪食に対するサラセミアRBCの感受性が著しく低下した。β-サラセミアマウスへのNACAの腹腔内注射(150mg/kg)は、酸化ストレスのパラメータを著しく低減した。NACAは、インビトロ及びインビボの両方で、サラセミア細胞における酸化ストレスマーカーの低減においてNACよりも優れていることが示された。(Amer J, Atlas D, Fibach E. N-acetylcysteine amide (AD4) attenuates oxidative stress in beta-thalassemia blood cells. Biochimica et Biophysica Acta 1780 (2008) 249-255)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】米国特許第3,340,147号明細書
【特許文献2】米国特許第9,216,162B2号明細書
【特許文献3】米国特許出願第14/632,089号明細書(米国公開第20150164830A1号明細書)
【特許文献4】米国特許出願第15/523,665号明細書
【特許文献5】国際特許出願公開第2013/163545A1号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第20200281944A1号明細書
【特許文献7】PCT出願/IB第2018/058979号明細書
【特許文献8】カナダ特許出願第3078680号明細書
【特許文献9】米国特許第8,993,627B2号明細書
【特許文献10】米国特許第8937099B2号明細書
【特許文献11】米国特許第8,354,449B2号明細書
【特許文献12】米国特許出願第15/943236号明細書
【特許文献13】国際特許出願公開第2004/028536A1号パンフレット
【非特許文献】
【0035】
【非特許文献1】Salamon S, Kramar B, Marolt TP, Poljsak B, Milisav I.; Medical and Dietary Uses of N-Acetylcysteine. Antioxidants 2019, 8, 111; doi:10.3390/antiox8050111
【非特許文献2】Sunitha K, Hemshekhar M, Thushara R, Santhosh MS, Yariswamy M, Kemparaju K, et al. N-acetylcysteine amide: a derivative to fulfill the promises of N-acetylcysteine. Free Radical Res 2013;47:357-367
【非特許文献3】Schimel AM, Abraham L, Cox D, Sene A, Kraus C, Dace DS, et al. N-acetylcysteine amide (NACA) prevents retinal degeneration by up-regulating reduced glutathione production and reversing lipid peroxidation. Am J Pathol 2011;178:2032-2043
【非特許文献4】Campochiaro PA, Iftikhar M, Hafiz G, Akhlaq A, Tsai G, Wehling D, Lu L, Wall GM, Singh MS, Kong X. Oral N-acetylcysteine improves cone function in retinitis pigmentosa patients in phase I trial. J Clin Invest. 2020. https://doi.org/10.1172/JCI132990
【非特許文献5】Kim EC, Meng H; Jun AS. N-Acetylcysteine Increases Corneal Endothelial Cell Survival in a Mouse Model of Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy. Exp Eye Res 2014; 127: 20-25
【非特許文献6】Wang P, Liu XC, Yan H, Li MY. Hyperoxia-induced lens damage in rabbit: protective effects of N-acetylcysteine. Mol Vis. 2009;15:2945-52
【非特許文献7】Liu XC, Wang P, Yan H. A rabbit model to study biochemical damage to the lens after vitrectomy: effects of N-acetylcysteine. Exp Eye Res. 2009;88(6):1165-70. doi: 10.1016/j.exer.2009.01.001
【非特許文献8】Zhang S, Chai FY, Yan H, Guo Y, Harding J, Effects of N-acetylcysteine and glutathione ethyl ester drops on streptozotocin-induced diabetic cataract in rats. Mol Vis. 2008;14:862-70
【非特許文献9】Maddirala et al. BMC Ophthalmology (2017) 17:54
【非特許文献10】Carey JW, Pinarci EY, Penugonda S, Karacal H, Ercal N. In vivo inhibition of I-buthionine-(S, R)-sulfoximine-induced cataracts by a novel antioxidant, N-acetylcysteine amide. Free Radical Biol Med. 2011;15; 50(6):722-9. doi: 10.1016/j.Free Rad Biol Med.2010.12.017
【非特許文献11】Neil J; Wall GM; Brown M. Antioxidant Effects of N-acetylcysteine Amide and NPI-002 on Human Skin or Equivalents. AAPS PharmSci360, Poster Abstract, October 26-November 5, 2020
【非特許文献12】https://www.eyeworld.org/has-presbyopia-found-encore
【非特許文献13】Babizhayev MA, Deyev AI, Yermakova VN, Remenshchikov VV, Bours J. Revival of the Lens Transparency with N-Acetylcarnosine. Current Drug Therapy, 2006:1; 91-116
【非特許文献14】Bahat-Stroomza M, Gilgun-Sherki Y, Offen D, Panet H, Saada A, Krool-Galron N, Barzilai A, Atlas D, Melamed E. A novel thiol antioxidant that crosses the blood brain barrier protects dopaminergic neurons in experimental models of Parkinson's disease. European Journal of Neuroscience, 2005; 21: 637-646
【非特許文献15】Banerjee A, Zhang X, Manda KR, Banks WA, Ercal N. HIV proteins (gp120 and Tat) and methamphetamine in oxidative stress-induced damage in the brain: Potential role of the thiol antioxidant N-acetylcysteine amide. Free Radic Biol Med. 2010 May 15; 48(10): 1388-1398. doi:10.1016/j.freeradbiomed.2010.02.023
【非特許文献16】Jastrzebska1 J, Frankowska M, Filip M, Atlas D. N-acetylcysteine amide (AD4) reduces cocaine-induced reinstatement. Psychopharmacology 2016;33:3437-3448 DOI 10.1007/s00213-016-4388-5
【非特許文献17】Israel Y, Quintanilla ME, Ezquer F, Morales P, Santapau D, Berrios-Carcamo P, Ezquer M, Olivares B, Herrera-Marschitz M. Aspirin and N-acetylcysteine co-administration markedly inhibit chronic ethanol intake and block relapse binge drinking: Role of neuroinflammation-oxidative stress self-perpetuation. Addiction Biology. 2019;e12853. https://doi.org/10.1111/adb.12853
【非特許文献18】Amer J, Atlas D, Fibach E. N-acetylcysteine amide (AD4) attenuates oxidative stress in beta-thalassemia blood cells. Biochimica et Biophysica Acta 1780 (2008) 249-255
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0036】
一実施形態によれば、本発明は、プロドラッグであるdiNACAの代謝によってインビボで生成される、NACA及びNACに対するプロドラッグとして働くdiNACAの使用のための方法を提供する。一実施形態によれば、本発明は、プロドラッグであるNACAの代謝によってインビボで生成される、NACに対するプロドラッグとして働くNACAの使用のための方法を提供する。NACはまた、プロドラッグであるdiNACAから、NACA、次にNACへの代謝によって生成され得る。したがって、NACA及びdiNACAが共にプロドラッグとして働いて、インビボでNACをもたらすことができ、したがって、それに限定されるものではないが、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、糖尿病を有していない対象における白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、黄斑変性症、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、呼吸器系における粘膜の蓄積若しくは肥厚、精子形成低下及び男性不妊症、ベータ-サラセミア、抗菌感染症(antimicrobial infection)、HIV関連認知症、メタンフェタミン乱用、コカイン乱用、アルコール乱用、皮膚色素過剰又はフリードライヒ失調症から選択される酸化ストレスの1又は2以上の疾患又は障害を防止又は治療するために、治療有効量のdiNACA、NACA、NAC、又はそれらの組合せを哺乳動物に投与するステップを含む、酸化ストレスが関与する任意の疾患又は障害の防止又は治療において有効であることが見出された。一実施形態によれば、本発明は、老視の防止又は治療のために、抗酸化物質であるN-アセチルシステインアミド(NACA、N-acetylcysteine amide)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を使用するための方法を提供する。さらに、一実施形態によれば、本発明は、白内障の防止のために、抗酸化物質であるN-アセチルシステインアミド(NACA)を使用し、白内障の防止又は治療のために、抗酸化物質であるN-アセチルシステインアミド(NACA)及び(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を使用するための方法を提供する。別の態様では、白内障を有する患者は、糖尿病を有していない。
【0037】
非限定的な一例では、動物又はヒトに、治療有効量のNACA又はdiNACAを投与するステップを含む、動物又はヒトにおけるAIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返り(rejuventation)を必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症と関連する酸化ストレスの防止又は低減が提供される。一態様では、NACA又はdiNACAは、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、眼内、網膜下、硝子体内、経口、静脈内、筋肉内、局所、舌下、直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、butylated hydroxyanisole)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、butylated hydroxytouene)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。別の態様では、NACA又はdiNACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠(dual release)、混合放出錠(mixed release)、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症と関連する酸化ストレスを防止又は低減するために、予防的に投与される。別の態様では、動物は、ヒトである。別の態様では、白内障を有する患者は、糖尿病を有していない。
【0038】
別の実施形態によれば、本発明は、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症と関連する酸化ストレスの治療のための方法であって、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症と関連する酸化ストレスのための治療を必要とするヒトを特定するステップと、ヒトに、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症と関連する酸化ストレスを治療するのに十分な治療有効量のN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を投与するステップを含む、方法を含む。非限定的な一例では、角膜内皮細胞減少の防止又は低減は、白内障手術後の患者においてである。一態様では、NACA又はdiNACAは、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される。別の態様では、NACAは、眼内、網膜下、硝子体内、経口、静脈内、筋肉内、局所、舌下、又は直腸内に投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、約0.005~150mg/Kgの1日用量で投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.01、0.1、1、10、100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.01~0.1、0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。別の態様では、NACA又はdiNACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、液剤、眼球挿入物、注射又はインプラントを介して経口送達される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、角膜内皮細胞減少と関連する酸化ストレスを防止又は低減するために、予防的に投与される。別の態様では、白内障を有する患者は、糖尿病を有していない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
ここで、本発明の特色及び利点のより完全な理解のために、本発明の詳細な説明を添付の図と共に参照する。
【
図1】NACA及びdiNACAが、対照(「白内障モデル」)との比較に基づいて、単離されたラット水晶体における白内障の酸化的形成(混濁)を阻害することを示す。
【
図2】NAC、NACA及びdiNACAが、単離されたブタ水晶体におけるH
2O
2誘発性白内障を、用量依存的に防止することができることを示す。NACA及びdiNACAは、NACよりも高い有効性を示す。
【
図3】NAC、NACA、及びdiNACAによる24時間の前処理に続いて、tBHPによる処理及び4時間のインキュベーションの効果を示すグラフである。
【
図4】NAC、NACA、及びdiNACAによる48時間の前処理に続いて、tBHPによる処理及び4時間のインキュベーションの効果を示すグラフである(tBHPのみと比較して
***P<0.0001(保護)、tBHPのみと比較して#P<0.05、tBHPのみと比較して###P<0.001)。
【
図5】diNACAが、ラットにおける経口投与後に生体利用可能であること、並びにdiNACAの経口投与が、ラット血漿において著しいレベルのdiNACA、NACA及びNACをもたらすことを示す。
【
図6】diNACAの硝子体内インプラントの移植後7日目における、diNACA、NACA及びNACのレベルを示す。
【
図7】IVT投与後のプロドラッグであるdiNACAの代謝産物としての、NACA及びNACの生成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を、以下により詳細に論じるが、本発明は、多種多様な特定の状況において具体化することができる、適用できる本発明の多くの概念を提供することが理解されるべきである。本明細書で論じられる特定の実施形態は、本発明を作製し、使用するための特定の仕方を単に例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語を、以下に定義する。本明細書において定義される用語は、本発明が関連する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図されず、具体例が例示のために使用され得る一般的クラスを含む。本明細書における専門用語は、本発明の特定の実施形態を記載するために使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲に概説されるものを除いて、本発明を限定するものではない。
【0042】
本発明は、一般に、酸化ストレスが関与する様々な疾患及び/又は障害の防止及び/又は治療のための、NACA及びNACに対するプロドラッグとしての(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)の使用に関する。本発明はまた、一般に、酸化ストレスが関与する様々な疾患及び/又は障害の防止及び/又は治療のための、NACに対するプロドラッグとしてのNACAの使用に関する。酸化ストレスが関与する疾患又は障害には、AIDS、アルコール若しくは物質乱用、抗毒素、ベータ-サラセミア(thallassemia)、がん、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、covid-19、シスチン症、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、男性の精子形成低下及び不妊症、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症が含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
diNACAは、白内障、角膜内皮細胞減少及び老視の防止及び治療を含む、酸化ストレスによって引き起こされた眼の状態の治療のために使用することができる。加えて、NACA又はNACは、老視を防止又は治療するために使用することができる。さらに、NACAは、角膜内皮細胞減少を治療するために使用することができる。加えて、diNACAは、物質乱用障害を治療するために使用することができる。
【0044】
N-アセチルシステインは、2-アセトアミド-3-スルファニルプロパン酸又はNACとしても公知であり、以下の化学構造を有する。
【0045】
【0046】
N-アセチルシステイン(NAC、N-acetylcysteine)は、酸化誘発性白内障から水晶体を保護する、硝子体切除術後の白内障を防止する、又は初期段階での糖尿病性白内障の進行を阻害する潜在的な役割を示した。(Wang P, Liu XC, Yan H, Li MY. Hyperoxia-induced lens damage in rabbit: protective effects of N-acetylcysteine. Mol Vis. 2009;15:2945-52、Liu XC, Wang P, Yan H. A rabbit model to study biochemical damage to the lens after vitrectomy: effects of N-acetylcysteine. Exp Eye Res. 2009;88(6):1165-70. doi: 10.1016/j.exer.2009.01.001、Zhang S, Chai FY, Yan H, Guo Y, Harding J, Effects of N-acetylcysteine and glutathione ethyl ester drops on streptozotocin-induced diabetic cataract in rats. Mol Vis. 2008;14:862-70)。
【0047】
N-アセチルシステインアミド(NACA)は、(R)-2-(アセチルアミノ)-3-メルカプト-プロパンアミド、N-アセチル-L-システインアミド、又はアセチルシステインアミドとしても公知であり、以下の化学構造を有する。
【0048】
【0049】
N-アセチルシステインアミド(NACA)は、N-アセチル-L-システイン(NAC、N-acetyl-L-cysteine)のアミド形態であり、小分子チオール抗酸化物質であり、銅キレーターである。NACAは、細胞損傷に対して保護効果を提供する。NACAは、RBCにおけるt-ブチルヒドロキシペルオキシド(BuOOH)誘発性細胞内酸化を阻害し、RBCにおけるBuOOH誘発性チオール枯渇及びヘモグロビン酸化をNACよりも遅延させることが示された。(L. Grinberg et al., Free Radical Biol Med. 2005;38(1):136-45)。NACAは、酸化グルタチオン(GSSG)と反応して、還元GSHを生じることが示された。NACAは、NACよりも良好に、細胞膜に容易に浸透する。NACAは、酸性のNACとは対照的に中性なので、NACAは、NACよりも高い親油性及び細胞浸透性を有する(Atlas Dら、米国特許第5,874,468号明細書)。NACAは、亜セレン酸ナトリウム誘発性白内障(Maddirala et al. BMC Ophthalmology (2017) 17:54)及びl-ブチオニン-(S,R)誘発性白内障(Carey JW, Pinarci EY, Penugonda S, Karacal H, Ercal N. In vivo inhibition of l-buthionine-(S, R)-sulfoximine-induced cataracts by a novel antioxidant, N-acetylcysteine amide. Free Radical Biol Med. 2011;15; 50(6):722-9. doi: 10.1016/j.Free Rad Biol Med.2010.12.017)を阻害することが示された。
【0050】
(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA、NPI-002)は、以下の化学構造を有する。
【0051】
【0052】
(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)は、N-アセチルシステインアミドのダイマー形態であり、NACAの合成前駆体である(オーストラリア特許第2018365900B2号明細書)。diNACAは、diNACAの代謝産物であるNACA及びNACに対するプロドラッグである。したがって、それらに限定されるものではないが、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症を含む、NAC又はNACAで治療することができる、酸化ストレスと関連するいかなる疾患又は障害も、diNACAを用いる治療に適している可能性が高い。別の例では、白内障を有する患者は、糖尿病を有していない。
【0053】
本発明は、ヒトの疾患及び障害、例えば先に概説されるものの治療における使用のための医薬組成物において、使用することができる。典型的に、このような組成物は、公知でありかつ許容される薬務によって求められる通り、薬学的に許容される(すなわち不活性な)担体をさらに含む。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed, (1980), Mack Publishing Co.を参照されたい。このような担体の例として、滅菌担体、例えば生理食塩水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、リン酸緩衝食塩水、水性又は非水性溶液、薬学的に許容されるpH、例えば5~8の範囲内のpHに適した緩衝剤、例えば酢酸ナトリウム三水和物を含む緩衝液が挙げられる。注射(例えば、経口、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、門脈内による、或いは目への局所的若しくは眼周囲への塗布又は目への硝子体内注射による目への局所送達による)又は持続注入のための医薬組成物は、適切には、目に見える微粒子物質を含まず、本明細書で教示される通り、diNACA、NAC、NACAを個々に又は組合せで含み得る。さらに、ヒトの疾患及び障害、例えば、先に概説されるものの治療における使用のための医薬組成物はまた、生体内分解性又は非生体内分解性(non-bioerodable)のポリマービヒクル、例えば挿入物又はインプラントを含むことができ、組織近く又は組織内に置かれると、それからプロドラッグが溶出する。
【0054】
グルタチオン(Gluthathione)(GSH)は、すべての哺乳動物組織に見出されるトリペプチドである、c-L-グルタミル-L-システイニル-グリシンである。GSHは、求電子試薬の解毒作用、ROSの捕捉、タンパク質のチオール状態の維持、並びにビタミンC及びEの還元形態の再生を含む、いくつかの重要な機能を有する。GSHは、哺乳動物細胞において主要な非タンパク質チオールである。したがって、GSHは、細胞内の酸化還元バランス及びタンパク質の必須チオール状態の維持に必須である。また、いくつかの抗酸化物質酵素、例えばグルタチオンペルオキシダーゼの機能にとって必要である。
【0055】
単離されたラット水晶体の酸化の阻害のためのプロトコール。3週齢のウィスター系ラットの目から眼球除去し、水晶体を、ダルベッコ改変イーグル培地(低グルコース)(DMEM-F12、Dulbecco's modified eagle's medium)中で顕微解剖した。水晶体を、透明度の変化を回避するために特注ガラスループのみを使用して取り扱い、1%ペニシリン(pencillin)/ストレプトマイシン/ネオマイシンを含む1mLのDMEMに入れた。水晶体を、37℃/5%CO2に設定した培養インキュベーターに1時間入れた。次に、水晶体を暗視野及び明視野(グリッド)下で画像化して、ビヒクル(H2O)、10mMのNACA(溶液)、又は10mMのdiNACA(懸濁液)を添加する前に依然として確実に透明であるようにした。次に、水晶体を、6時間目に画像化して、確実に透明度が維持されるようにし、次にさらに18時間インキュベートし、次に再び画像化した(合計24時間のインキュベーション)。培地を収集し、新鮮な培地をウェルに添加した。0.5mMのH2O2(37℃で加温した)を添加し、さらに24時間インキュベーションした。水晶体を画像化し、培地を収集し、水晶体を秤量し、風袋引きしたバイアル中で瞬間凍結させ、さらなる分析にかけた。
【0056】
図1は、NACA及びdiNACAが、対照(「白内障モデル」)との比較に基づいて、単離されたラット水晶体における白内障の酸化的形成(混濁)を阻害することを示す。
【0057】
単離されたブタ水晶体の酸化の阻害のためのプロトコール。ブタ由来の新鮮な目を、Sierra For Medical Science社から得た。まず水晶体を、12ウェルプレート中培地199(Sigma-Aldrich社、米国、ミズーリ州、セントルイス)及び1%ブタ血清中で、2時間インキュベートした。インキュベーションの終了時に、水晶体を暗視野顕微鏡下で画像化し、クリアで透明な水晶体のみを、さらなる実験方法のために使用した。次に、水晶体を、NAC、NACA又はdiNACAと共に24時間プレインキュベートした。前処理の後に、水晶体を、6時間のさらなるインキュベーション中に一定のH2O2レベルを維持するためにグルコースオキシダーゼ(GO、glucose oxidase)を補充した、600μMのH2O2を含有する培地に移した[Wang GM, Raghavachari N, Lou MF. Relationship of protein-glutathione mixed disulfide and thioltransferase in H2O2-induced cataract in cultured pig lens. Exp Eye Res. 1997 May;64(5):693-700. doi: 10.1006/exer.1996.0251. PMID: 9245898]。6時間のインキュベーションの終了時に、水晶体を暗視野顕微鏡下で画像化した。
【0058】
図2は、NAC、NACA及びdiNACAが、単離されたブタ水晶体におけるH
2O
2誘発性白内障を、用量依存的に阻害することを示す。NACA及びdiNACAは、NACよりも高い有効性を示す。
【0059】
角膜内皮細胞保護のためのプロトコール。細胞生存率を、比色細胞生存率キット(Cayman社、ミシガン州、アナーバー)によって、テトラゾリウム塩WST-8(2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、一ナトリウム塩)を用いて測定し、この塩は、生存細胞に存在するデヒドロゲナーゼによって水溶性のオレンジ色ホルマザン色素に生体内還元(bioreduce)された。産生されたホルマザンの量は、生細胞の数に正比例していた。細胞を、96ウェルアッセイ中、6000個の細胞/ウェル(100μlの総体積/ウェル)の密度で播種した。細胞(n=8)を、異なる濃度のNAC、NACA、及びdiNACA(2、20、及び40mM)と共に又はそれなしに48時間インキュベートし、次に500μMのtert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP、tert-butyl hydroperoxide)でさらに4時間処理した。処理後、WST-8溶液10μlを、培養プレートの各ウェルに添加し、インキュベーター内で4時間インキュベートした。吸収を、マイクロプレートリーダー(BioTek社、バーモント州、ウィヌースキー)を使用して450nmで評価した。
【0060】
図3は、NAC、NACA、及びdiNACAによる24時間の前処理に続いて、tBHPによる処理及び4時間のインキュベーションの効果を示すグラフである。
図4は、NAC、NACA、及びdiNACAによる48時間の前処理に続いて、tBHPによる処理及び4時間のインキュベーションの効果を示すグラフである(tBHPのみと比較して
***P<0.0001(保護)、tBHPのみと比較して#P<0.05、tBHPのみと比較して###P<0.001)。
図4~
図3における細胞生存率アッセイの結果の比較は、抗酸化物質を用いる前処理が長いほど、酸化から細胞がより保護されることを示している。
【0061】
細胞内GSHレベルは、産生と喪失のバランスによって決定される。産生は、GSSGレダクターゼによるGSSGからのGSHのデノボ合成及び再生から生じる。一般に、GSSGレダクターゼ系には、すべての細胞内GSHを還元状態で維持するのに十分な能力があり、したがって、その経路を増強することによって得られるものはほとんどない。細胞内GSHの喪失の主な供給源は、細胞からの輸送である。細胞内GSHレベルは1~8mMの範囲であり、一方、細胞外レベルは、わずか数μMである。この大きい濃度勾配は、本質的に、細胞へのGSHの輸送が起きないようにし、GSHが細胞から輸送されると、GSHはγ-グルタミルトランスペプチダーゼによって急速に分解される。GSHトランスポーターの阻害は、理論的には細胞内GSHレベルを増大することができたが、トランスポーターはGSHに対して特異的でなく、それらの抑制は、他のアミノ酸及びペプチドの不均衡をもたらすおそれがあるので、潜在的に問題がある。したがって、細胞内GSHレベルは、主に合成の変化によってモジュレートされる。
【0062】
GSHは、L-グルタミン酸+L-システイン+ATP[→]γ-グルタミル-L-システイン+ADP+25Pi及びγ-グルタミル-L-システイン+L-グリシン+ATP[→]GSH+ADP+Piの2つのATP要求酵素ステップによって、事実上すべての細胞のサイトゾルにおいて合成される。最初の反応は律速的であり、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL、glutamate cysteine ligase、EC6.3.2.2)によって触媒される。GCLは、様々な遺伝子によってコードされる、73Kdの重い触媒サブユニット(GCLC)及び30Kdの修飾因子サブユニット(GCLM)から構成されている。GCCLは、GSHの非アロステリック競合的阻害(Ki=2.3mM)により、及びL-システインの利用能により制御される。グルタミン酸についてのGLCの見かけのKmは、1.8mMであり、細胞内グルタミン酸濃度は、それよりもほぼ10倍高く、したがって、グルタミン酸は制限的ではないが、システインについてのKmは、0.1~0.3mMであり、これはその細胞内濃度に近い。第2の反応は、GSHシンターゼ(GS、GSH synthase、EC6.3.2.3)によって触媒され、これは118Kdであり、2つの同一サブユニットから構成されている。GSは、正常状態の下でのGSH合成の制御において重要であるとは思われないが、外科的外傷に応答してGSHレベル及びGS活性が低下した一方、GCL活性は変化しなかったので、GSは、ストレスの多い条件下で、ある役割を担うことができる。さらに、GCLC単独の発現増大と比較して、GCLC及びGSの両方の発現の増大は、より高いレベルのGSHをもたらした。合成酵素を増大する効果を最大限にするために、システインレベルを増大することが必要である。培養されたニューロンにおいて、システイン取込みの90%は、ナトリウム依存性興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT、excitatory amino acid transporter)系によって生じる。5種のEAATが存在し、ニューロンによるシステイン取込みは、主に、より一般には興奮性アミノ酸担体-1(EAAC1、excitatory amino acid carrier-1)として公知のEAAT3によって生じる。正常環境下では、ほとんどのEAAC1は、ERに存在し、活性化されると初めて原形質膜に移動する。この移動は、グルタミン酸トランスポーター関連タンパク質3-18(GTRAP3-18、glutamate transporter associated protein)によって負に制御され、GTRAP3-18の抑制は、ニューロンにおけるGSHレベルを増大した。したがって、システインの内部移行は、GSH合成にとって障壁をもたらすが、幸いなことに、活性化EAAC1の非存在下でも細胞に容易に入るN-アセチルシステイン(NAC)によって、その障壁を迂回することができる。全身投与されたNACは、CNSに接近し、GSHレベルを増大し、酸化ストレスが病変形成の重要な部分である神経変性障害において利益をもたらす。
【0063】
細胞質、ミトコンドリア及び核を含むすべての細胞区画は、酸化的損傷から保護されなければならない。本発明者らは、反応性酸素種を解毒する酵素の遺伝子導入を予め実施したが、その手法は、細胞質における2種の酵素及びミトコンドリアにおける2種の酵素の発現を必要とする。それとは対照的に、本発明は、GSHが細胞中に拡散するので、サイトゾルにおける2種の酵素の発現のみで、すべての細胞区画の保護を提供する。
【0064】
NACは、アセトアミノフェン過剰摂取の治療のために、負荷用量として140mg/kgの用量に続いて、負荷用量の4時間後に開始して、17の用量について4時間ごとに70mg/kgで使用される。臨床研究では、NACは、400~1000mgで1日1回及び200~600mgで1日3回、経口投与された。しかし、ヒトにおける600mgの経口投薬後、NACは急速に吸収され、次に急速に排除される。NACの血漿内半減期は、2.5時間であると報告され、投与の10~12時間後には、NACは検出不可能である。吸収中に、NACは、グルタチオンの直接的な前駆体であるシステインに急速に代謝される。一実施形態によれば、本発明は、対象における酸化ストレスと関連する疾患又は状態の防止、緩和、又は治療のための方法であって、治療有効量のNACA又はdiNACAを投与して、NAC、したがって対象の組織に発現するグルタチオンの量を増大するステップを含む、方法を提供する。
【実施例1】
【0065】
NACA及びNACに対するプロドラッグとしてのdiNACA
ラットにおける経口投薬研究
IACUC(動物実験委員会、Institutional Animal Care and Use Committee)により承認された研究により、雄性Sprague-Dawleyラットにおいて、経口強制飼育により投薬したdiNACAを評価した。diNACAを秤量して、個々の管に入れた。管にキャップをかぶせ、室温で一晩保存した。ラットを秤量した。適量のリン酸緩衝食塩水pH7.0を、各管に添加して、所望のdiNACAの濃縮物(concentration)を懸濁液として達成した。血液検体を、特定された時点で尾静脈から収集し、処理して血漿を産生した。血漿検体を、妥当性を検証された液体クロマトグラフィー質量分析手順を使用して分析した(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36)。
図5は、ラットにおける1キログラム当たりdiNACA200ミリグラムの強制経口飼育後、ラット血漿において達成されたdiNACA、NACA及びNACのレベルを示す。この研究により、diNACAがNACA及びNACに対するプロドラッグとして働くことが実証される。
【実施例2】
【0066】
ウサギにおける局所的眼球研究
IACUCにより承認された研究により、ウサギにおいて、diNACA又はNACAの局所的眼球投薬を評価した。1%diNACA又は1%NACAのいずれかを含有する眼科製剤を開発し、それらをダッチベルテッド系ウサギへの局所的眼球滴下注入を反復するために使用した。動物に、両目への局所投与を介して、1~6日目はおよそ8:00AM、11AM、2PM、及び4:00PMに1日4回投薬し、7日目はおよそ8:00AMに1回投薬した。眼の忍容性を、結膜水腫、眼脂、及び充血を点数化することによって(Draize点数化)、ベースラインにおいて及び初日投薬前にアセスメントした。眼組織を剖検で採取した(7日目)。認定されたLC-MS分析法を展開し、房水(AH、aqueous humor)におけるNACAレベルを定量化するために使用した。局所的眼球投薬後に、重篤な有害知見は観察されなかった。表Iは、1%diNACA又は1%NACAのいずれかの投薬後、房水において達成されたNACAレベルを示す。AHにおけるdiNACAの存在により、diNACAが、局所的眼球投薬後、目に浸透することが実証された。AHにおけるNACAの存在により、diNACAが、NACAをAHに送達するためのプロドラッグとして働いたことが実証された。
【0067】
【実施例3】
【0068】
ウサギにおける硝子体内投薬研究
IACUCにより承認された研究により、ウサギにおいて、硝子体内(IVT、intravitreally)投薬されたdiNACAを評価した。diNACAを含有する標準的な滅菌硝子体内インプラントを調製した。雌性ニュージーランド白色ウサギに、片目0.8mgの用量でdiNACAのインプラントをIVT投与した。1つの群の動物は、いかなる被検物質も含まないIVTプラセボインプラントを受けた。臨床的眼科検査を、ベースラインにおいて、並びに投薬後8日目及び23日目に実施した。全体的な健康状態の観察を、毎日実施した。体重を、ベースラインにおいて及び終了前に記録した。動物を、8、15、又は23日目に安楽死させ、組織を収集し、バイオアナリシスにかけた。diNACAのIVT送達は、投薬日の最小限の眼の知見と関連していた。結膜の膨隆、眼脂、及び最小限の出血の観察は、注射手順に関すると決定され、投薬の翌日に大部分の目において回復した。臨床的眼科検査によって8日目に観察された、軽度から中程度の結膜のうっ血、腫脹及び眼脂は、23日目までに回復したが、このことは、これらの知見が、IVT注射手順のための22ゲージ針の使用と関連していたことを示唆している。眼以外の全般的健康状態又は体重に対する、被検物質投与の重篤な有害効果は観察されなかった。要約すると、diNACAのIVT送達は、一般に良好な認容性を示した。
図6は、diNACAのIVTインプラントの移植後7日目の、diNACA、NACA及びNACのレベルを示している。
図7は、IVT投与後のプロドラッグであるdiNACAの代謝産物としての、NACA及びNACの生成を示している。硝子体液(VH、vitreous humor)におけるdiNACAの存在により、diNACAが、IVTインプラントからVHに溶出したことが実証された。VHにおけるNACAの存在及び著しい濃度のNACにより、diNACAが、NACA及びNACに対するプロドラッグとして働いたことが実証された。
【0069】
本明細書で使用される場合、「活性酸素種」又は「反応性酸素種」とは、スーパーオキシドであるO2’’形態を有するアニオン、又は式O2-’’若しくはO-O単結合を含有する化合物を有するペルオキシドアニオン、例えば過酸化水素及び過酸化脂質を産生する、1つ又は2つの電子の移動と理解される。このようなスーパーオキシド及び過酸化物は、反応性が高く、タンパク質、核酸、及び脂質を含む細胞構成成分に対して損傷を引き起こす場合がある。
【0070】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、治療活性がある化合物又は潜在的に治療活性がある化合物、例えば抗酸化物質を指す。薬剤は、既に公知の又は未知の化合物であり得る。本明細書で使用される場合、薬剤は、典型的に非細胞ベースの化合物であるが、薬剤には、生物学的治療剤、例えば、ペプチド又は核酸治療薬、例えば、siRNA、shRNA、サイトカイン、抗体などが含まれ得る。
【0071】
酸化は、物質から酸化剤に電子を移動する化学反応である。このような反応は、スーパーオキシドアニオン又は過酸化物によって促進され得るか、又はそれらを産生し得る。酸化反応は、フリーラジカルを産生することができ、それによって、細胞に損傷を与える連鎖反応が開始される。抗酸化物質は、フリーラジカル中間体を除去することによってこれらの連鎖反応を終了させ、それら自体が酸化されることによって他の酸化反応を阻害する。結果として、抗酸化物質は、チオール、アスコルビン酸又はポリフェノールなどの還元剤であることが多い。抗酸化物質には、α-トコフェロール、アスコルビン酸、Mn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン、α-リポ酸、及びn-アセチルシステインが含まれるが、それらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「有効用量」という用語は、意図される薬理学的、治療的又は予防的な結果をもたらす、薬剤の量を指す。薬理学的有効量は、疾患若しくは状態の1若しくは2以上の徴候若しくは症状、又は疾患若しくは状態の進行の緩和をもたらすか、或いは疾患又は状態の退行を引き起こす。例えば、治療有効量は、好ましくは、未治療対照対象と比較して、視覚低下、全体的な視力低下、視野喪失を、規定された期間、例えば、2週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、2年間、5年間、又はそれよりも長期間にわたって、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれよりも多く低減する、治療剤の量を指す。有効用量を提供するために、2以上の用量が求められる場合がある。
【0073】
本明細書で使用される場合、「有効な」及び「有効性」という用語は、薬理学的有効性及び生理的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、患者において所望の生物学的効果をもたらす、治療の能力を指す。生理的安全性は、毒性レベル、又は治療の投与から生じる、細胞、臓器及び/若しくは生物レベルの他の有害な生理学的効果(副作用と呼ばれることが多い)を指す。他方では、「無効な」という用語は、治療が、少なくとも非階層化集団において有害な効果の非存在下であっても、治療上有用になるのに十分な薬理学的効果を提供しないことを示す。(例えば、治療が、1又は2以上の発現プロファイルによって特定することができるサブグループにおいて無効であり得る)。「あまり有効でない」とは、治療が、治療的に著しいより低レベルの薬理学的有効性及び/又は治療的により高いレベルの有害な生理学的効果、例えば、より高い肝臓毒性をもたらすことを意味する。
【0074】
したがって、薬物の投与と関連して、疾患又は状態「に対して有効」である薬物は、臨床的に適切な方式での投与が、少なくとも統計的に有意な分率の患者にとって有益な効果、例えば症状の改善、治癒、疾患の徴候若しくは症状の低減、延命、生活の質の改善、又は特定のタイプの疾患若しくは状態の治療に精通している医師によって有益であると一般に認識される他の効果をもたらすことを示す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ペルオキシダーゼ」又は「ペルオキシド代謝酵素」という用語は、以下の形態の反応を典型的に触媒する、大きなファミリーの酵素を指す。
【0076】
ROOR1+電子供与体(2e-)+2H+→ROH+R1OH
これらの酵素の多くについて、最適な基質は過酸化水素であるが(各Rは、Hである)、有機ヒドロペルオキシド、例えば過酸化脂質を用いる方が活性になるものもある。ペルオキシダーゼは、それらの活性部位においてヘム補因子、又は酸化還元活性があるシステイン若しくはセレノシステイン残基を含有することができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という語句は、当技術分野で認識されており、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに適した、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを含む。担体には、身体のある臓器又は部分から身体の別の臓器又は部分への対象薬剤の担持又は輸送に関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は被包材料が含まれる。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者にとって傷害性でないという意味で「許容され」なくてはならない。例えば、細胞の投与のための薬学的に許容される担体は、典型的に、注射による送達に許容される担体であり、洗浄剤などの薬剤も、送達されることになる細胞を損傷するおそれがある他の化合物も含まない。薬学的に許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例として、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末化トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバター及び坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝薬剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに眼内送達にとって好ましい、医薬製剤において用いられる他の非毒性の適合性のある物質、特にリン酸緩衝食塩水溶液が挙げられる。
【0078】
湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び賦香剤、保存剤及び抗酸化物質が、組成物中に存在することもできる。
【0079】
薬学的に許容される抗酸化物質の例として、水溶性抗酸化物質、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化物質、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0080】
本発明の製剤には、経口、経鼻、局所、経皮、口腔内頬側、舌下、筋肉内、腹腔内(intraperotineal)、眼内、硝子体内、網膜下、及び/又は他の非経口経路の投与に適した製剤が含まれる。特定の投与経路は、とりわけ、標的にされる特定の細胞に応じて決まる。製剤は、好都合には、単位剤形で提示することができ、調剤分野で周知のいかなる方法によっても調製することができる。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。
【0081】
本明細書で使用される場合、「複数」とは、2以上を意味すると理解される。例えば複数は、少なくとも2、3、4、5、又はそれよりも多いことを指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」又は「ペプチド」という用語は、共有結合(例えば、ペプチド結合)によって接合した、2又は3以上の、独立に選択された天然又は非天然アミノ酸と理解される。ペプチドは、ペプチド結合によって接合した、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、又はそれよりも多い天然又は非天然アミノ酸を含むことができる。本明細書に記載されるポリペプチドには、全長タンパク質(例えば、完全に処理されたタンパク質)並びにより短いアミノ酸配列(例えば、自然に存在するタンパク質の断片又は合成ポリペプチド断片)が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、約1500Da、1000Da、750Da、又は500Da以下の分子量を有する化合物、典型的に有機化合物を指す。一実施形態では、小分子には、天然アミノ酸及び/又はヌクレオチドのみを含むポリペプチド又は核酸は含まれない。
【0084】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、特にヒトを指す。ある特定の実施形態では、生物は動物であり、ある特定の好ましい実施形態では、対象は哺乳動物であり、ある特定の実施形態では、対象は、家畜化哺乳動物又は非ヒト霊長類を含む霊長類である。対象の例として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット(rates)、ウシ、ウマ、ヤギ、及びヒツジが挙げられる。ヒト対象はまた、対象又は患者と呼ぶことができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「スーパーオキシドジスムターゼ」とは、スーパーオキシドの、酸素及び過酸化水素への不均化をもたらす酵素と理解される。例として、SOD1、SOD2、及びSOD3が挙げられるが、それらに限定されない。Sod1及びSOD3は、哺乳動物に存在するCu-Zn含有スーパーオキシドジスムターゼ酵素の、2つのアイソフォームである。Cu-Zn-SOD又はSOD1は、細胞内空間に見出され、細胞外SOD(ECSOD又はSOD3)は、主に、ほとんどの組織の細胞外マトリックスに見出される。
【0086】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、細胞又は対象への単回又は複数回用量の投与時に、このような障害を有する患者の生存期間を延長し、障害の1又は2以上の徴候又は症状を低減し、このような治療の非存在下で予測されるものを上回って防止する又は遅延させるなどに有効な、薬剤の量を指す。
【0087】
薬剤又は他の治療介入は、従来の賦形剤、例えば、薬学的に許容される担体との混合物における医薬組成物として、又は治療的な治療として、単独で又は1若しくは2以上の追加の治療剤若しくは介入と組み合わせて、対象に投与することができる。
【0088】
医薬品は、好都合には、単位剤形で投与することができ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., Easton, PA, 1985)に記載される通り、調剤分野において周知の方法のいずれかによって調製することができる。非経口投与のための製剤は、一般的な賦形剤、例えば滅菌水又は生理食塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレンなどを含有し得る。特に、生体適合性、生分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、ある特定の薬剤の放出を制御するのに有用な賦形剤であり得る。
【0089】
本発明は、角膜内皮細胞減少を含む酸化ストレスのいくつかの疾患又は状態を治療、防止又は低減するための、NACA及び/又はdiNACAの使用を対象とする。一実施形態では、本発明は、例えばヒトにおける白内障手術後の、患者における角膜内皮細胞減少の防止のための、NACA及び/又はdiNACAの使用のための方法であって、ヒトに、治療有効量のNACA及び/又はdiNACAを投与するステップを含む方法を含む。一部の実施形態では、NACA及び/又はdiNACAは、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される。他の実施形態では、NACA及び/又はdiNACAは、眼内、網膜下、硝子体内、経口、静脈内、筋肉内、局所、舌下、直腸内、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)に投与される。
【0090】
所与の療法において使用される活性化合物の実際の好ましい量は、例えば、利用されている特定の化合物、製剤化された特定の組成物、投与様式、並びに対象の特徴、例えば対象の種、性別、体重、全体的な健康状態及び年齢に従って変わることを理解されよう。所与の投与プロトコールに最適な投与速度は、前述の指針に関して実施された従来の投与量決定試験を使用して、当業者によって容易に確認され得る。本明細書で提供される範囲は、その範囲内の値のすべてについての略記法であると理解される。
【0091】
本明細書で使用される場合、本発明の実施形態は、薬学的に許容されるその誘導体を含むと定義される。「薬学的に許容される誘導体」とは、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物を(直接的又は間接的に)提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的塩、エステル、エステルの塩、又は他の誘導体を意味する。特に好都合な誘導体は、このような化合物が哺乳動物に投与される場合、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増大するか(例えば、経口投与された化合物がより容易に血中に吸収されるようにして、血清安定性を増大するか、又は化合物のクリアランス率を低減することによって)、又は親種と比べて、生物学的区画(例えば、脳又はリンパ系)への親化合物の送達を増強する、誘導体である。誘導体には、水溶解度又は腸膜を介する能動輸送を増強する基が、本明細書に記載される式の構造に付加されている誘導体が含まれる。
【0092】
本発明の実施形態は、選択的生物学的特性を増強するのに適した官能基を付加することによって修正され得る。このような修正は、当技術分野において公知であり、所与の生物学的区画(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を増大し、経口利用性を増大し、注射による投与を可能にするように溶解度を増大し、代謝を変え、排出速度を変える修正が含まれる。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される無機及び有機の酸及び塩基に由来する塩が含まれる。適切な酸の塩の例として、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩(napthalenesulfonate)、ニコチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(palmoate)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩(undeconaoate)が挙げられる。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びN-(アルキル)4+塩が含まれる。
【0093】
本発明はまた、本明細書で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性若しくは油溶性、又は水分散性若しくは油分散性の生成物は、このような四級化によって得ることができる。
【0094】
本発明の実施形態は、例えば、注射、眼内、硝子体内、網膜下、静脈内、動脈内、真皮下、筋肉内若しくは皮下によって、又は経口、口腔内頬側、経鼻、経粘膜、疾患状態の臓器にカテーテルにより直接的に、局所的に、又は眼科調製物で、体重1kg当たり約0.001~約100mgの範囲の投与量で、又は特定の薬物の要件に従って、より好ましくは体重1kg当たり0.5~10mgで、投与することができる。化合物が目に直接的に送達される場合、体重などの考慮は、用量に対して影響を与えにくいと理解される。
【0095】
投薬頻度は、投与された薬剤、対象における疾患又は状態の進行、及び当業者に公知の他の考慮に応じて決まる。例えば、目又はさらには目の中の区画に送達された組成物の薬物動態及び薬力学的考慮は異なり、例えば、網膜下空間のクリアランスは非常に低い。したがって、投薬は、1カ月に1回、3カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回、1年に1回、5年ごとに1回、又はそれ未満のように低頻度であってよい。抗酸化物質の全身投与が、網膜下空間への発現構築物の投与と共に実施されるべき場合、抗酸化物質の投薬頻度は、発現構築物よりも高く、例えば、1日1回又は2回以上、週1回又は2回以上になると予測される。
【0096】
投薬は、疾患の1又は2以上の徴候又は症状、例えば、視力、視野、夜間視力などのモニタリングと併せて決定され得る。単一剤形を生成するために担体材料と合わされ得る活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に応じて変わる。典型的な調製物は、約1%~約95%の活性化合物(w/w)を含有する。代替として、このような調製物は、約20%~約80%の活性化合物を含有する。先に列挙したものよりも低い又は高い用量が必要とされる場合がある。任意の特定の患者のための特定の投与量及び治療レジメンは、用いられた特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時期、排出速度、薬物の組合せ、疾患、状態又は症状の重症度及び過程、疾患、状態又は症状に対する患者の素質、並びに治療医の判断を含む、様々な因子に応じて決まる。
【0097】
医薬組成物は、注射可能な滅菌調製物の形態で、例えば、注射可能な滅菌水性又は油性懸濁液として存在し得る。この懸濁液は、当技術分野で公知の技術に従って、適切な分散化剤又は湿潤剤(例えば、TWEEN(登録商標)80など)及び懸濁化剤を使用して製剤化され得る。注射可能な滅菌調製物はまた、非毒性の非経口に許容される希釈剤又は溶媒中の、注射可能な滅菌溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液として存在し得る。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒には、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁化媒体として用いられている。この目的では、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いることができる。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油又はヒマシ油、特にそれらがポリオキシエチレン化したもののように、注射剤の調製において有用である。これらの油性溶液又は懸濁液はまた、薬学的に許容される剤形、例えばエマルション剤及び又は懸濁液剤の製剤において一般に使用される、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、又はカルボキシメチルセルロース若しくは類似の分散化剤を含有し得る。他の一般に使用される界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)若しくはSPAN(登録商標)、及び/又は薬学的に許容される固体、液体若しくは他の剤形の製造において一般に使用される、他の類似の乳化剤若しくはバイオアベイラビリティ増強剤も、製剤化の目的で使用され得る。
【0098】
1又は2以上の実施形態では、NACA又はdiNACAは、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与される。他の実施形態では、NACA又はdiNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化物質、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などから選択される第2の活性薬剤と共に投与される。
【0099】
一部の実施形態では、投与のためのNACA又はdiNACAの用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、102、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。
【0100】
別の態様では、NACA又はdiNACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、角膜内皮細胞減少を防止又は低減するために、予防的に投与される。別の実施形態では、本発明は、角膜内皮細胞減少の治療のための方法であって、角膜内皮細胞減少の治療を必要とするヒトを特定するステップと、ヒトに、角膜内皮細胞減少を防止又は低減するのに十分な治療有効量のNACA又はdiNACAを投与するステップとを含む方法を含む。先に定義される他の実施形態と同様に、NACA又はdiNACAは、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与されることが理解されよう。別の態様では、NACA又はdiNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、先に開示される通り、第2の活性薬剤と共に投与される。
【0101】
別の態様では、投与のためのNACA又はdiNACAの用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.001~0.01、0.01~0.1、0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、102、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。
【0102】
別の態様では、NACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される。別の態様では、NACA又はdiNACAは、角膜内皮細胞減少を防止又は低減するために、予防的に投与される。
【0103】
本明細書で使用される場合、特定の疾患又は状態など「に対して感受性がある」又は「の傾向がある」又は「の素因がある」とは、遺伝、環境、健康、及び/又は他のリスク因子に基づいて、母集団よりも疾患又は状態を発症する可能性が高い個体を指す。疾患を発症する可能性の増大は、約10%、20%、50%、100%、150%、200%又はそれよりも高い増大であり得る。
【0104】
別の態様では、ヒト対象における角膜内皮細胞減少の防止のための方法は、角膜内皮細胞減少の治療を必要とするヒト患者を特定するステップと、ヒト患者に、角膜内皮細胞減少を防止又は低減するのに十分な治療有効量のN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を投与するステップを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0105】
ヒト対象における角膜内皮細胞減少の防止又は低減のための方法は、角膜内皮細胞減少の治療を必要とするヒトを特定するステップと、ヒトに、角膜内皮細胞減少を防止又は低減するのに十分な治療有効量のN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を投与するステップを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0106】
NACA及び/又はdiNACAの臨床治験
臨床治験を実施して、投与されたNACA及び別個にdiNACAが、老視、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、黄斑変性症、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症を治療する能力を実証することができる。AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、黄斑変性症、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症に適したモデル系が選択され、diNACA、NAC、NACA、又はそれらの組合せを、別個に又は一緒に提供することができ、プラセボ対照と比較する。
【0107】
例えば、あるモデルは、EV06の抗老視活性の実証のために使用されるモデルに類似し得る(www.eyeworld.org/has-presbyopia-found-encore)。臨床研究は、老視に関して薬物ごとに、遠視、近視又は正視眼、及び老視の診断を有するおよそ75人の患者(45~55歳)を含む、1又は2以上の臨床現場における、前向き無作為化二重盲検プラセボ対照研究である。患者は、2:1(例えば、活性成分=50、プラセボ=25)に無作為化される可能性が高い。治験薬は90日間与えられ、患者は、3カ月間の追跡期間中、モニタリングされる。ベースラインにおいて、研究患者は、DCNVAをモニタリングされ、追跡のために来院することになる。安全性は、活性物質アーム対プラセボアームの有害効果の比較に基づく。有効性は、活性物質アーム対プラセボアームの両目視力におけるlogMARの変化によって測定される通り、視力測定の比較に基づく。
【0108】
同様に、老視、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、黄斑変性症、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、抗菌感染症、並びに/又はフリードライヒ失調症から選択される酸化ストレスの様々な状態又は疾患のために、治験を実施することができる。
【0109】
本明細書において論じられるいかなる実施形態も、本発明のいかなる方法、キット、試薬、又は組成物に関して実施することができ、逆の場合も同じであることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0110】
本明細書に記載される特定の実施形態は、例示によって示され、本発明を限定するものではないことを理解されよう。本発明の主要な特色は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において用いることができる。当業者は、ごく日常的な実験方法を使用して、本明細書に記載される特定の手順に対する数々の等価物を認識又は確認することができよう。このような等価物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲によって網羅される。
【0111】
本明細書において言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する分野の当業者の技術レベルを示す。
【0112】
すべての刊行物及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されることが具体的かつ個々に示されるのと同程度に、参照により本明細書に援用される。
【0113】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と併用される場合、「1(one)」を意味することができるが、「1又は2以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」及び「1又は1よりも多い(one or more than one)」の意味とも合致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替のみを指すと明示されていない限り、又は代替のみ及び「及び/又は」を指す定義を本開示が裏付けているが、代替が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。本願を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイス、方法について固有の誤差変動、又は研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0114】
本明細書及び特許請求の範囲(複数可)において使用される場合、「含む(comprising)」(及び含む(comprising)の任意の形態、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有する(having)」(及び有する(having)の任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(及び含む(including)の任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)又は「含有する(containing)」(及び含有する(containing)の任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)という語は、包括的又は非限定的であり、列挙されていない追加の要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で提供される組成物及び方法のいずれかの実施形態において、「含む(comprising)」とは、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、特定された整数(複数可)又はステップ、並びに特許請求される本発明の特徴又は機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書で使用される場合、「からなる(consisting)」という用語は、列挙された整数(例えば、1つの特色、1つの要素、1つの特徴、1つの特性、1つの方法/プロセスステップ又は1つの限定)又は整数の群(例えば、特色(複数可)、要素(複数可)、特徴(複数可)、特性(複数可)、方法/プロセスステップ又は限定(複数可))のみの存在を示すために用いられる。
【0115】
「又はそれらの組合せ」という用語は、本明細書で使用される場合、用語の前に列挙された項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」とは、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCのうちの少なくとも1つを含むことを意図され、特定の文脈において順番が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことも意図される。この例に続いて、1又は2以上の項目又は用語の反復を含有する組合せ、例えばBB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどが明確に含まれる。当業者は、文脈から別段明らかでない限り、典型的に、いかなる組合せにおいても項目又は用語の数には制限がないことを理解されよう。
【0116】
本明細書で使用される場合、限定されるものではないが、「約」、「実質的」又は「実質的に」などの近似の語は、条件が、そのように修飾された場合には必ずしも絶対的又は完全ではないと理解されるが、当業者にとって、その条件が存在するものとして指定することが正当とするのに十分近いと考えることができる条件を指す。記載が変動し得る程度は、どれ程大きな変化が起こり得るか、及び修飾された特色が、修飾されていない特色の求められる特徴及び能力を依然として有するとして、当業者に依然として認識させることができるかに応じて変わる。一般に、ただし先行する議論次第で、「約」などの近似の語によって修飾されている本明細書の数値は、記述された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動し得る。
【0117】
加えて、本明細書の節の見出しは、37CFR1.77の下での提案との整合性を保つか、又はそうでなければ構成上の手がかりをもたらすために提供される。これらの見出しは、本開示から生じ得るいずれの請求項に記載される本発明(複数可)も、限定することも特徴付けることもない。特に例として、見出しが「技術分野」を指していても、このような請求項は、この見出しの下におけるいわゆる技術分野を記載するための言語によって限定されるべきではない。さらに、「背景技術」の節における技術の記載は、その技術が、本開示のいかなる発明(複数可)に対しても、先行する技術であることの承認として解釈されるべきではない。「発明の概要」も、提示された請求項に記載される本発明(複数可)を特徴付けるものとみなされるべきではない。さらに、本開示における単数形の「発明」へのいかなる言及も、本開示に新規性が1点しかないことを主張するために使用されるべきではない。本開示から提示される複数の請求項の限定に従って、複数の発明を記載することができ、それに応じてこのような請求項は、請求項によって保護される本発明(複数可)及びその等価物を定義する。すべての場合において、このような特許請求の範囲は、本開示に照らしてそれら自体の利点に関して考慮されるが、本明細書に記載される見出しによって制約を受けるべきではない。
【0118】
本明細書で開示され、特許請求される組成物及び/又は方法のすべては、本開示に照らして過度の実験方法を行うことなく作製し、実行することができる。本発明の組成物及び方法を、好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物及び/又は方法並びにステップ又は方法のステップの順番に変更を加えることができることが、当業者には明らかになろう。当業者に明らかなすべてのこのような類似の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される通りの本発明の精神、範囲及び概念内にあるとみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA
)、
N-アセチルシステインアミド(NACA
)又は
N-アセチルシステイン(NAC
)を送達するためのプロドラッグとして
のdiNACA
を含む、哺乳動物における酸化ストレスの疾患若しくは障害の予防剤又は治療剤であって、
前記酸化ストレスの疾患若しくは障害が、AIDS、抗毒素、ベータ-サラセミア、白内障、糖尿病を有していない対象における白内障、慢性閉塞性肺疾患、角膜内皮細胞減少、糖尿病及び糖尿病誘発性潰瘍、黄斑変性症、造影剤誘発性腎症、喘息、肺挫傷、黄斑変性症、メタンフェタミン誘発性酸化ストレス、多発性硬化症、パーキンソン病、血小板アポトーシス、老視、遅発性ジスキネジア、アルツハイマー病、HIV、HIV-1関連認知症、ミトコンドリア病、心筋ミオパチー、神経変性疾患、肺線維症、網膜色素変性症、アッシャー症候群、シュタルガルト症候群、加齢性黄斑変性症、皮膚色素沈着、若返りを必要とする皮膚、呼吸器系における粘膜の蓄積若しくは肥厚、精子形成低下及び男性不妊症、ベータ-サラセミア、抗菌感染症、HIV関連認知症、メタンフェタミン乱用、コカイン乱用、アルコール乱用、皮膚色素過剰
、又はフリードライヒ失調症から選択され
る、前記予防剤又は治療剤。
【請求項2】
diNACA、NACA及びNACを哺乳動物に送達するためのプロドラッグが、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、経皮、眼球(点眼薬、挿入物、注射又はインプラント)、舌下、直腸内に、又は注射若しくは吸入により投与される、請求項1に記載の
予防剤又は治療剤。
【請求項3】
呼吸器系における粘膜の蓄積又は肥厚が、慢性閉塞性肺障害、気管支炎及び嚢胞性線維症を含
む、請求項1に記載の
予防剤又は治療剤。
【請求項4】
N-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)の少なくとも1つ
を含む、角膜内皮細胞減少の予防剤又は低減剤。
【請求項5】
NACA又はdiNACA
の少なくとも1つが、製剤、挿入物又はインプラントであり得る、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に
、経口(ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、眼球挿入物、眼球インプラント、点眼薬又は液剤を介して)、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、眼球(点眼薬、挿入物又はインプラント)、舌下若しくは直腸内に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項6】
角膜細胞減少が、白内障又は眼科手術に起因し、
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、白内障若しくは眼科手術の後、又はヒト対象が糖尿病を有していない場合は白内障の後に、前記対象に
投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項7】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、約0.01~150mg/Kgの1日用量で投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項8】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、1日2回又は3回投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項9】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、第2の活性薬剤と共に投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項10】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項11】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つの投与のための用量が、1用量当たり約0.001、0.01、0.1、1、10、100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項12】
NACA又はdiNACAの少なくとも1つが、角膜内皮細胞減少を予防又は低減するために予防的に、手術後に又は他の処置若しくは治療の後に投与される、請求項
4に記載の
予防剤又は低減剤。
【請求項13】
NAC、N-アセチルシステインアミド(NACA
)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)
を含む、老視の予防剤又は低減剤。
【請求項14】
(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(diNACA)を含む、白内障の予防剤又は治療剤。
【請求項15】
diNACAが、硝子体切除手術の前、最中、又は後に投与される、請求項14に記載の予防剤又は治療剤。
【請求項16】
diNAC
Aが、経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、局所、
舌下若しくは直腸内に、点眼薬、挿入物、
若しくはインプラント
を介して眼球に、又は注射、鼻腔用スプレー若しくは吸入により投与される、請求項
14に記載の
予防剤又は治療剤。
【国際調査報告】