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特表2023-511379脊髄損傷の治療及び移動運動機能の改善のためのエレトリプタン臭化水素酸塩
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  • 特表-脊髄損傷の治療及び移動運動機能の改善のためのエレトリプタン臭化水素酸塩 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】脊髄損傷の治療及び移動運動機能の改善のためのエレトリプタン臭化水素酸塩
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20230310BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544314
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 IB2020062306
(87)【国際公開番号】W WO2021148868
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】116069
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】509302467
【氏名又は名称】テクノファージ, インベスティガサン エ デセンボルビメント エム ビオテクノロジア,エスエー
(71)【出願人】
【識別番号】511115734
【氏名又は名称】インスティテュート デ メディシナ モレキュラー ジョアオ ロボ アントゥネス
【氏名又は名称原語表記】Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo Antunes
【住所又は居所原語表記】Faculdade de Medicina, Universidade de Lisboa, Avenida professor Egas Moniz,1649-028 Lisbon,Portuguese Republic
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】シャペラ ドゥアルテ ピレス ディアナ ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ボルケル コルテ-レアル ソフィア マリサ
(72)【発明者】
【氏名】タバレス サウデ マリア レオノール
(72)【発明者】
【氏名】アントゥネス マルティンス イザウラ ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】マウリシオ デ ソウザ サラ クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
(57)【要約】
本発明は、脊髄損傷の治療及び移動運動機能の改善におけるエレトリプタン臭化水素酸塩の使用について開示する。傷害の際の限られた回復を改善する試みにおいてなされた多大な努力にもかかわらず、マルチターゲット組合せ治療手法のみが、脊髄損傷の性質の複雑性に対して有効であるはずである。幼生ゼブラフィッシュ創薬プラットフォームを利用して、エレトリプタンHbrが再生促進モデルにおいて移動運動回復特性を有することが本明細書で明らかにされ、エレトリプタンHbrがげっ歯類(線維化促進)挫傷モデルに対して保存効果を有することが確認された。この手法は、エレトリプタンHbrについて、有望な新たな治療適応を特定することを可能にし、これは組合せ治療戦略及び革新的な工学的手法を伴いることに関連しており、脊髄損傷の回復の大きな可能性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊髄損傷の治療における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項2】
脊髄損傷後の移動運動機能の改善における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項3】
脊髄損傷が急性期又は亜急性期である、請求項1に記載の使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項4】
脊髄損傷に関連する炎症の調節における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項5】
脊髄血液関門における血管漏出の保護における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項6】
出血の低減における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項7】
出血が脊髄損傷に関連する、請求項6に記載の使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項8】
脊髄損傷が急性期である、請求項7に記載の使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項9】
それを必要とする対象における脊髄損傷を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量のエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項10】
エレトリプタン臭化水素酸塩の投与が、損傷後1時間目から開始される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象が、温血脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊髄損傷の治療及び移動運動機能(locomotive function)の改善におけるエレトリプタン臭化水素酸塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
運動、感覚及び自律神経機能不全につながる脊髄損傷(SCI,spinal cord injury)は、世界中で数百万の人々に影響を及ぼす神経外傷を引き起こしており、臨床使用のための有効な脊髄修復戦略を編み出すことが至急となりつつある(Kjell, J. & Olson, L. Rat models of spinal cord injury: from pathology to potential therapies. Dis Model Mech 9, 1125-1137, doi:10.1242/dmm.025833 (2016))。SCIの病態生理は、損傷の一次及び二次機構に分けられる。一次損傷は、軸索、血管及び細胞膜の変質を誘導する脊髄組織の機械的破壊により発生し、即時の神経組織喪失及び脱髄につながる(Boutonnet, M., Laemmel, E., Vicaut, E., Duranteau, J. & Soubeyrand, M. Combinatorial therapy with two pro-coagulants and one osmotic agent reduces the extent of the lesion in the acute phase of spinal cord injury in the rat. Intensive Care Med Exp 5, 51, doi:10.1186/s40635-017-0164-z (2017)、Donovan, J. & Kirshblum, S. Clinical Trials in Traumatic Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 654-668, doi:10.1007/s13311-018-0632-5 (2018)、Duncan, G. J. et al. Locomotor recovery following contusive spinal cord injury does not require oligodendrocyte remyelination. Nat Commun 9, 3066, doi:10.1038/s41467-018-05473-1 (2018))。最初の外傷が起こった後、いくつかの機構、すなわち、炎症細胞の浸潤、炎症性サイトカインの放出、並びに興奮毒性及び虚血につながる興奮性神経伝達物質の不均衡な放出につながる、血液脊髄関門(BSCB,blood spinal cord barrier)破壊により、二次損傷が発生する(Boutonnet, M., Laemmel, E., Vicaut, E., Duranteau, J. & Soubeyrand, M. Combinatorial therapy with two pro-coagulants and one osmotic agent reduces the extent of the lesion in the acute phase of spinal cord injury in the rat. Intensive Care Med Exp 5, 51, doi:10.1186/s40635-017-0164-z (2017)、Donovan, J. & Kirshblum, S. Clinical Trials in Traumatic Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 654-668, doi:10.1007/s13311-018-0632-5 (2018)、Zhou, X., He, X. & Ren, Y. Function of microglia and macrophages in secondary damage after spinal cord injury. Neural Regen Res 9, 1787-1795, doi:10.4103/1673-5374.143423 (2014)、Yilmaz, T. & Kaptanoglu, E. Current and future medical therapeutic strategies for the functional repair of spinal cord injury. World J Orthop 6, 42-55, doi:10.5312/wjo.v6.i1.42 (2015))。したがって、二次損傷は多因子性であり、反応性グリオーシス、浮腫、グリア/軸索瘢痕、及び中心空洞化を引き起こし得る炎症の存在を特徴とする(Zhou, X., He, X. & Ren, Y. Function of microglia and macrophages in secondary damage after spinal cord injury. Neural Regen Res 9, 1787-1795, doi:10.4103/1673-5374.143423 (2014)、Yilmaz, T. & Kaptanoglu, E. Current and future medical therapeutic strategies for the functional repair of spinal cord injury. World J Orthop 6, 42-55, doi:10.5312/wjo.v6.i1.42 (2015)、Picoli, C. C. et al. Pericytes Act as Key Players in Spinal Cord Injury. Am J Pathol 189, 1327-1337, doi:10.1016/j.ajpath.2019.03.008 (2019))。
【0003】
成熟したSCI病変は、3つの主な組織区画を呈する:非神経組織を有する病変コア/線維性瘢痕、病変コアを包囲するアストロサイト瘢痕、及び機能性であるが反応性である残された神経組織を有する包囲領域(O'Shea, T. M., Burda, J. E. & Sofroniew, M. V. Cell biology of spinal cord injury and repair. J Clin Invest 127, 3259-3270, doi:10.1172/JCI90608 (2017))。実際に、SCI瘢痕は、修復応答(細胞損傷の伝播を防止するのに必須)及び経時的に変化し病変に対する空間的位置により規定される有害応答(再成長及び組織修復を制限する)につながる(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)、Hausmann, O. N. Post-traumatic inflammation following spinal cord injury. Spinal Cord 41, 369-378, doi:10.1038/sj.sc.3101483 (2003)、Bradbury, E. J. & Burnside, E. R. Moving beyond the glial scar for spinal cord repair. Nat Commun 10, 3879, doi:10.1038/s41467-019-11707-7 (2019)、Orr, M. B. & Gensel, J. C. Spinal Cord Injury Scarring and Inflammation: Therapies Targeting Glial and Inflammatory Responses. Neurotherapeutics 15, 541-553, doi:10.1007/s13311-018-0631-6 (2018))。事実、損傷後に反応性アストロサイトは、病変の拡大を制限するグリア瘢痕を形成するだけでなく、軸索再生を制限及び阻害しつつ、炎症を病変中心に限局する(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)、Cregg, J. M. et al. Functional regeneration beyond the glial scar. Exp Neurol 253, 197-207, doi:10.1016/j.expneurol.2013.12.024 (2014))。さらに、ミクログリア/マクロファージにより、表現型可塑性が可能となるだけでなく、病変損傷を悪化させる炎症促進性応答の延長及び悪化(すなわち二次損傷)を引き起こす細胞毒性因子も産生される(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)、Zhang, B. et al. Reducing age-dependent monocyte-derived macrophage activation contributes to the therapeutic efficacy of NADPH oxidase inhibition in spinal cord injury. Brain Behav Immun 76, 139-150, doi:10.1016/j.bbi.2018.11.013 (2019))。それに加えて、オリゴデンドロサイト及びオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC,oligodendrocyte precursor cell)が、アポトーシス又はネクローシスにより死滅し得るだけでなく、分化及び再髄鞘化も達成し得る(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)、Keirstead, H. S. et al. Human embryonic stem cell-derived oligodendrocyte progenitor cell transplants remyelinate and restore locomotion after spinal cord injury. J Neurosci 25, 4694-4705, doi:10.1523/JNEUROSCI.0311-05.2005 (2005)、McTigue, D. M. & Tripathi, R. B. The life, death, and replacement of oligodendrocytes in the adult CNS. J Neurochem 107, 1-19, doi:10.1111/j.1471-4159.2008.05570.x (2008))。ゆえに、複数の異なる細胞型、細胞内及び細胞外微小環境の間の複雑な相互作用を考慮すると、これらの細胞型又は応答のうちの1つを完全に排除しても、SCI修復にとって有効ではない(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)、Bellver-Landete, V. et al. Microglia are an essential component of the neuroprotective scar that forms after spinal cord injury. Nat Commun 10, 518, doi:10.1038/s41467-019-08446-0 (2019)、Anderson, M. A. et al. Astrocyte scar formation aids central nervous system axon regeneration. Nature 532, 195-200, doi:10.1038/nature17623 (2016))。SCI瘢痕の有益な特性を維持し、その修復応答を改善しつつ負の面を標的とするため、組合せ治療の時間依存性戦略が必要とされる(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)、Bradbury, E. J. & Burnside, E. R. Moving beyond the glial scar for spinal cord repair. Nat Commun 10, 3879, doi:10.1038/s41467-019-11707-7 (2019)、Courtine, G. & Sofroniew, M. V. Spinal cord repair: advances in biology and technology. Nat Med 25, 898-908, doi:10.1038/s41591-019-0475-6 (2019))。
【0004】
治療選択肢は、標準的ケアであれ実験的なものであれ、重症の患者に良好な神経的及び機能的回復をもたらすことにおいて限定的な成功を収めている。Ghosh and Pearse (2015)は、グルタミン、NA、DA及び5-HTパスウェイが移動運動の開始及び調節に関与すること、並びに実験的研究により、中枢パターン発生器を介する動作のリズム及び協調の調節における5-HTの寄与の証拠がもたらされることを示唆している。非選択的5-HT受容体アゴニストキパジンを用いての実験により、選択的5-HT2アンタゴニストSB204741及びSB242084存在下での移動運動様動作の誘導が示される。Ghosh and Pearseは、脊髄損傷の治療及び移動運動機能の向上において、5-HT2アンタゴニストなしで単独で使用されるエレトリプタン、5-HT 1B/1D受容体アゴニストについては開示していない。
【0005】
エレトリプタンは、片頭痛の治療のための、及び片頭痛再発の防止のための5-HT 1B/1D受容体アゴニストとして、国際公開第92/06973号パンフレット(Pfizer社)において最初に開示されたトリプタン薬物である。国際公開第92/06973号パンフレットは、脊髄損傷及び移動運動機能の改善におけるエレトリプタンの使用については開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第92/06973号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kjell, J. & Olson, L. Rat models of spinal cord injury: from pathology to potential therapies. Dis Model Mech 9, 1125-1137, doi:10.1242/dmm.025833 (2016)
【非特許文献2】Boutonnet, M., Laemmel, E., Vicaut, E., Duranteau, J. & Soubeyrand, M. Combinatorial therapy with two pro-coagulants and one osmotic agent reduces the extent of the lesion in the acute phase of spinal cord injury in the rat. Intensive Care Med Exp 5, 51, doi:10.1186/s40635-017-0164-z (2017)
【非特許文献3】Donovan, J. & Kirshblum, S. Clinical Trials in Traumatic Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 654-668, doi:10.1007/s13311-018-0632-5 (2018)
【非特許文献4】Duncan, G. J. et al. Locomotor recovery following contusive spinal cord injury does not require oligodendrocyte remyelination. Nat Commun 9, 3066, doi:10.1038/s41467-018-05473-1 (2018)
【非特許文献5】Zhou, X., He, X. & Ren, Y. Function of microglia and macrophages in secondary damage after spinal cord injury. Neural Regen Res 9, 1787-1795, doi:10.4103/1673-5374.143423 (2014)
【非特許文献6】Yilmaz, T. & Kaptanoglu, E. Current and future medical therapeutic strategies for the functional repair of spinal cord injury. World J Orthop 6, 42-55, doi:10.5312/wjo.v6.i1.42 (2015)
【非特許文献7】Picoli, C. C. et al. Pericytes Act as Key Players in Spinal Cord Injury. Am J Pathol 189, 1327-1337, doi:10.1016/j.ajpath.2019.03.008 (2019)
【非特許文献8】O'Shea, T. M., Burda, J. E. & Sofroniew, M. V. Cell biology of spinal cord injury and repair. J Clin Invest 127, 3259-3270, doi:10.1172/JCI90608 (2017)
【非特許文献9】Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018)
【非特許文献10】Hausmann, O. N. Post-traumatic inflammation following spinal cord injury. Spinal Cord 41, 369-378, doi:10.1038/sj.sc.3101483 (2003)
【非特許文献11】Bradbury, E. J. & Burnside, E. R. Moving beyond the glial scar for spinal cord repair. Nat Commun 10, 3879, doi:10.1038/s41467-019-11707-7 (2019)
【非特許文献12】Orr, M. B. & Gensel, J. C. Spinal Cord Injury Scarring and Inflammation: Therapies Targeting Glial and Inflammatory Responses. Neurotherapeutics 15, 541-553, doi:10.1007/s13311-018-0631-6 (2018)
【非特許文献13】Cregg, J. M. et al. Functional regeneration beyond the glial scar. Exp Neurol 253, 197-207, doi:10.1016/j.expneurol.2013.12.024 (2014)
【非特許文献14】Zhang, B. et al. Reducing age-dependent monocyte-derived macrophage activation contributes to the therapeutic efficacy of NADPH oxidase inhibition in spinal cord injury. Brain Behav Immun 76, 139-150, doi:10.1016/j.bbi.2018.11.013 (2019)
【非特許文献15】Keirstead, H. S. et al. Human embryonic stem cell-derived oligodendrocyte progenitor cell transplants remyelinate and restore locomotion after spinal cord injury. J Neurosci 25, 4694-4705, doi:10.1523/JNEUROSCI.0311-05.2005 (2005)
【非特許文献16】McTigue, D. M. & Tripathi, R. B. The life, death, and replacement of oligodendrocytes in the adult CNS. J Neurochem 107, 1-19, doi:10.1111/j.1471-4159.2008.05570.x (2008)
【非特許文献17】Bellver-Landete, V. et al. Microglia are an essential component of the neuroprotective scar that forms after spinal cord injury. Nat Commun 10, 518, doi:10.1038/s41467-019-08446-0 (2019)
【非特許文献18】Anderson, M. A. et al. Astrocyte scar formation aids central nervous system axon regeneration. Nature 532, 195-200, doi:10.1038/nature17623 (2016)
【非特許文献19】Courtine, G. & Sofroniew, M. V. Spinal cord repair: advances in biology and technology. Nat Med 25, 898-908, doi:10.1038/s41591-019-0475-6 (2019)
【非特許文献20】Ghosh and Pearse (2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本開示は、脊髄損傷の治療及び移動運動機能の改善におけるエレトリプタン臭化水素酸塩の使用に関する。
【0009】
実施形態1.本特許出願は、脊髄損傷の治療における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物について開示する。
【0010】
実施形態2.脊髄損傷後の移動運動機能の改善における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0011】
実施形態3.脊髄損傷が急性又は亜急性期である、実施形態1による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0012】
実施形態4.脊髄損傷に関連する炎症の調節における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0013】
実施形態5.脊髄血液関門(spinal blood barrier)における血管漏出の保護における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0014】
実施形態6.出血の低減における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0015】
実施形態7.出血が脊髄損傷に関連する、実施形態6による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0016】
実施形態8.脊髄損傷が急性期である、実施形態7による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0017】
実施形態9.それを必要とする対象における脊髄損傷を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量のエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0018】
実施形態10.エレトリプタン臭化水素酸塩の投与が、損傷後1時間目から開始される、実施形態9による方法。
【0019】
実施形態11.対象が温血脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである、実施形態9~10による方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本出願のより容易な理解のため、実施の好ましい形態を表すが、本明細書で開示される技術を制限することは意図されない図が添付書類に付される。
図1】エレトリプタンHbrによる移動運動機能障害の救済を示す図である。媒体処理済みの負傷させた幼生と比較した、FDA承認済みの化学化合物ライブラリーから選ばれたエレトリプタンHbrで処理された横断ゼブラフィッシュ幼生における、移動した総距離(A)及び回転角度(B)から描写される移動運動能力(n=幼生16匹)。平均値±s.e.m.が提示される。*p0.05未満、***p0.001未満、Welch補正を伴うStudent t検定。
図2】SCIげっ歯類モデルにおける15日間のエレトリプタンHbr処理の有効性についての実験デザインを図示し、T9挫傷型損傷の際の、15日間の処理によるSCIマウスの移動運動回復を示す図である。
図3図2の実験デザインに従っての、以下のものを示す図である。(B)1~42dpiの、媒体処理マウスと比較されたエレトリプタンHbr処理マウスのBMSスコア。SCI+媒体ではn=9、SCI+エレトリプタンHbrではn=14(21dpi後のSCI+エレトリプタンHbrではn=13)(B’)1~42dpiの、媒体処理マウスと比較されたエレトリプタンHbr処理マウスのBMSサブスコア。平均値±s.e.m.が提示される。*p0.05未満、二元配置反復測定ANOVAとそれに続くBonferroni事後補正。(C)BMS試験中に観察された、けいれん、転倒及び側弯症イベントなどの移動運動能力機能障害を有する、さらに軽度の体幹安定性を取り戻す能力を有する、媒体処理マウス及びエレトリプタンHbr処理マウスでの動物のパーセント(%)(42dpi)。SCI+媒体ではn=9、SCI+エレトリプタンHbrではn=13(D)スコアが手動での膀胱圧搾中に収集された尿の量に帰する、膀胱機能の判定。平均値±s.e.m.が提示される。*p0.05未満、二元配置反復測定ANOVAとそれに続くBonferroni事後補正。SCI+媒体ではn=9、SCI+エレトリプタンHbrではn=14(21dpi後のSCI+エレトリプタンHbrではn=13)(E)アセトン蒸発冷却により引き起こされた侵害防御応答の累積反応時間(E’)冷感過敏症のエピソード数。(E~E’)14dpiで、SCI+媒体ではn=8、SCI+エレトリプタンHbrではn=11、42dpiで、SCI+媒体ではn=9、SCI+エレトリプタンHbrではn=13。
図4】実験群間の衝撃力及び変位を図示するグラフである。(A)SCI中に脊髄に与えられた衝撃力(kdyne)(ns-有意でない、Welch補正を伴うt student検定)。(B)SCI中に脊髄と接触した後のインパクターチップの変位(μm)(ns-有意でない、Welch補正を伴うt student検定)。媒体処理マウスではn=9、エレトリプタンHbr処理マウスではn=14。
図5】損傷を受けて42日目の、媒体処理マウス及びエレトリプタンHbr処理マウスにおける白質残存を示す図である。(A)FluoroMyelinグリーンで染色された、エレトリプタンHbr処理マウスと比較した媒体処理マウスの代表的な脊髄切片。(B)媒体処理マウス及びエレトリプタンHbr処理マウスにおける、中心から1100μm吻側及び尾側の総断面積に対する白質面積。二元配置ANOVAとそれに続くBonferroni事後補正。SCI+媒体ではn=8、SCI+エレトリプタンHbrではn=12。
図6】42dpiの線維性瘢痕の判定を示す図である。(A~C’’)それぞれ、シャム、媒体処理マウス及びエレトリプタンHbr処理マウスにおける、病変中心並びに中心に対して1000μm吻側及び尾側の、GFAPアストロサイト(緑)(A’~C’)、PDGFRβ周皮細胞/線維芽細胞(赤紫)(A’’~C’’)及び混合チャネル(A~C)を示す、脊髄切片の免疫蛍光法での代表的な画像。白の矢印は、中心に対して1000μm吻側及び尾側の、脊髄背側におけるPDGFRβ発現を示す。(D~F)媒体処理マウス(n=8)及びエレトリプタンHbr処理マウス(n=12)における、総断面積に対する線維性病変コア面積のパーセント(D)、線維性病変長さ(E)及びPDGFRβ発現の増加が視認可能な病変組織の範囲(長さでの)(F)についてのグラフ表示。*p0.05未満、Welch補正を伴うStudent t検定。スケールバー:150μm。
図7】中心から1000μmの媒体-脊髄切片における、脈管構造を伴うPDGFRβ細胞を示す図である。(A)42dpiの、PDGFRβ周皮細胞/線維芽細胞(緑)、CD31内皮細胞(赤紫)及びDAPIによる混合チャネルを示す、脊髄切片の免疫蛍光法での代表的な画像。(B’~B’’’)ROI領域Bの脊髄切片画像の拡大。(C’~C’’’)ROI領域Cの脊髄切片画像の拡大。白の矢印は、CD31細胞を伴うPDGFRβの存在を示す。スケールバー:150μm(A)及び100μm(B’~C’’’)。
図8】42dpiの炎症応答を示す図である。(A~C’’)それぞれ、シャム、媒体処理マウス及びエレトリプタンHbr処理マウスにおける、病変中心、中心に対して400及び1100μm吻側及び尾側での、F4/80マクロファージ(緑)(A’~C’)、P2Y12ミクログリア(赤紫)(A’’~C’’)及び混合チャネル(A~C)を示す、脊髄切片の免疫蛍光法での代表的な画像。中心に対して1100μm吻側及び尾側の脊髄背側において、白の矢印はF4/80発現を示し、白の半フレームはP2Y12発現を示す。(D)P2Y12F4/80活性化ミクログリア細胞の計数。SCI+媒体ではn=8、SCI+エレトリプタンHbrではn=12。統計分析は、一元配置ANOVAとそれに続くBonferroni事後検定を使用して実施した。スケールバー:150μm。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、脊髄損傷の治療及び移動運動機能の改善におけるエレトリプタン臭化水素酸塩の使用に関する。
【0022】
本明細書で使用される場合、脊髄損傷(SCI)は、外傷(例えば自動車事故)から、又は疾患若しくは変性(例えばがん)から生じ、脊髄又は神経の機能の一時的若しくは永続的な変化を引き起こす、脊髄又は神経の任意の部分への損傷を指す。症状には、損傷レベル以下の、脊髄が機能する体の部分における筋機能、感覚又は自律神経機能の部分的若しくは完全な喪失が含まれ得る。最も重症の脊髄損傷は、腸又は膀胱制御、呼吸、心拍及び血圧を調節する系に影響を及ぼす。脊髄損傷を有する大部分の患者は慢性痛を経験する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「対象」、「ホスト」、及び「患者」という語は、互換可能に使用される。本明細書で使用される場合、対象は、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、マウスなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)などの哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、標的疾患又は障害の治療又は管理において、それらを患う対象に投与される際に、少なくとも1つの治療上の有益性をもたらす薬剤の量(例えば、本発明における使用のためのエレトリプタンHbrの量)を指す。さらに、本発明における使用のための薬剤に関しての治療有効量は、疾患又は障害の治療又は管理において少なくとも1つの治療上の有益性をもたらす、単独での、又は他の療法と組み合わせた際の薬剤の量を意味する。
【0025】
「投与する」は、当業者に公知の各種方法及び送達系のいずれかを使用しての、対象への薬剤の物理的導入を指す。本明細書で開示される化合物についての例示的な投与経路には、例えば注射又は注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口投与経路が含まれる。「非経口投与」という句は、本明細書で使用される場合、通常は注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、以下に限定されないが、静脈内、筋肉内、髄腔内、病巣内、嚢内、皮内、腹腔内、皮下、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入、さらにインビボでのエレクトロポレーションを含む。一部の実施形態において、化合物は、非経口でない経路を介して、例えば経口的に投与される。他の非経口でない経路には、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、舌下又は局所的が含まれる。投与は、例えば、1回で、複数回で、及び/又は1回若しくは2回以上の長期間をかけて実施されてもよい。
【0026】
臨床使用のための新たな治療薬の発見を加速させる有用な一戦略は、既存の薬物の新たな用途を見つける方法、すなわちドラッグリパーパシング戦略である(Hall, C. J. et al. Repositioning drugs for inflammatory disease - fishing for new anti-inflammatory agents. Dis Model Mech 7, 1069-1081, doi:10.1242/dmm.016873 (2014))。事実、最初にある疾患で治療効果を有することが判明した薬物は、別の疾患でも潜在的に効果的である可能性があり、薬物は前臨床及び臨床試験を既に経ているため、この戦略により、開発期間の短縮、コストの低下、リスクの低下及び成功率の向上が可能となる(Hall, C. J. et al. Repositioning drugs for inflammatory disease - fishing for new anti-inflammatory agents. Dis Model Mech 7, 1069-1081, doi:10.1242/dmm.016873 (2014)、Buckley, C. E. et al. Drug reprofiling using zebrafish identifies novel compounds with potential pro-myelination effects. Neuropharmacology 59, 149-159, doi:10.1016/j.neuropharm.2010.04.014 (2010))。
【0027】
ゼブラフィッシュは、単純でコスト効率の高い薬物スクリーニング用の、特に多用途の脊椎動物モデルとして台頭しつつある(Hall, C. J. et al. Repositioning drugs for inflammatory disease - fishing for new anti-inflammatory agents. Dis Model Mech 7, 1069-1081, doi:10.1242/dmm.016873 (2014)、Rennekamp, A. J. & Peterson, R. T. 15 years of zebrafish chemical screening. Curr Opin Chem Biol 24, 58-70, doi:10.1016/j.cbpa.2014.10.025 (2015)、Early, J. J. et al. An automated high-resolution in vivo screen in zebrafish to identify chemical regulators of myelination. Elife 7, doi:10.7554/eLife.35136 (2018)、MacRae, C. A. & Peterson, R. T. Zebrafish as tools for drug discovery. Nat Rev Drug Discov 14, 721-731, doi:10.1038/nrd4627 (2015))。本明細書で開示される結果を達成するため、本発明者らは、SCI適応症に対する治療特性を有する新たな分子を特定するために本発明者らの研究室により以前に開発された幼生ゼブラフィッシュ薬物スクリーニングプラットフォームを使用し、運動回復特性を有するエレトリプタンHbrを特定した。エレトリプタンHbrは、片頭痛の急性治療のための、5-ヒドロキシトリプタミン1-受容体サブタイプB/D(5-HT1/1)及びF(5-HT1)に対して高度に選択的な親和性を有するFDA承認済みの薬物であり(Capi, M. et al. Eletriptan in the management of acute migraine: an update on the evidence for efficacy, safety, and consistent response. Ther Adv Neurol Disord 9, 414-423, doi:10.1177/1756285616650619 (2016)、Tepper, S. J., Rapoport, A. M. & Sheftell, F. D. Mechanisms of action of the 5-HT1B/1D receptor agonists. Arch Neurol 59, 1084-1088, doi:10.1001/archneur.59.7.1084 (2002))、本明細書で初めて、この分子の使用について可能性のある新たな治療適応が開示される。リパーパシング戦略が採用され、インビボでの薬物スクリーニングプラットフォームとしてゼブラフィッシュ幼生(再生促進モデル)を利用してエレトリプタンHbrを特定し、次いで我々は、脊髄機能修復を改善するエレトリプタンHbrの能力を示すことにより、マウス挫傷(線維化促進)モデルにおける治療効果の保存を確認する。
【0028】
方法
倫理についての記述
動物を伴う実験は全て、欧州共同体ガイドライン(ディレクティブ2010/63/EU)、動物ケアについてのポルトガル法(DL113/2013)に従って実施され、Instituto de Medicina Molecular Internal Committee(ORBEA)及びPortuguese Animal Ethics Committee(DGAV)により承認された。取り組みは全て、使用される動物の数を最少にし、本開示において使用される動物の苦痛を減少させるためになされた。
【0029】
動物
ゼブラフィッシュSCIモデル:
Tg(mnx1:GFPml2)、hb9と略記:魚類ケア及び管理プロトコールのための標準ガイドラインに従うことにより、GFPを一定条件で管理及び飼育した(Westerfield, M. The Zebrafish Book: A Guide for the Laboratory Use of Zebrafish (Brachydanio rerio). (2000))。ゼブラフィッシュ幼生を、SCIについての表現型ベーススクリーニングに使用した。
【0030】
マウスSCIモデル:
成体メスC57BL/6Jマウス(8~10週齢;Charles River社製)を本研究に使用した。マウスをケージ1つあたり3~4匹収容し、研究の期間中、制限なしの食料及び水とともに12時間明/暗周期で管理した。
【0031】
SCIについての表現型ベーススクリーニング
幼生ゼブラフィッシュ表現型ベーススクリーニングを使用して、Diana et al. 2019(Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019))により以前に記載されたように、低分子ライブラリー(PHARMAKON 1600-MicroSource Discovery Systems, Inc.社製、USA)由来の化合物プールをスクリーニングした。簡潔に言えば、ゼブラフィッシュ幼生を、5受精後日数(dpf,days-post-fertilization)まで1μMメチレンブルー含有EM中で生育させた。5dpfに、ゼブラフィッシュ幼生脊髄を、肛門の穴のレベルで横断した(Diana et al. 2019)。1dpiに、EM+10mM HEPESを含有する6ウェルプレートに幼生をランダムに分配し、培地に添加された化学化合物に24時間曝露した。2dpiに、ゼブラフィッシュ幼生用の自動追跡システムであるDanioVision(商標)(Noldus Information Technology社製、オランダ)を使用して、行動評価を実施した。EM+10mM HEPES含有96ウェルプレート(1幼生/ウェル)中で幼生を自由に遊泳させ、幼生の遊泳活動を90分間、10分間の明暗周期(すなわち3回の明周期及び3回の暗周期)で追跡した。Ethovision X.T. 10ソフトウェア(Noldus社製、ヴァーヘニンゲン、オランダ)を使用して、取得された追跡データを分析し、3回の暗期で得られた遊泳活動のみを分析した(de Esch, C. et al. Locomotor activity assay in zebrafish larvae: influence of age, strain and ethanol. Neurotoxicol Teratol 34, 425-433, doi:10.1016/j.ntt.2012.03.002 (2012))。
【0032】
挫傷脊髄損傷及び術後ケア
Infinite Horizon Impactor(PSI社製)を用いて、中等症-重症の挫傷型の損傷を成体C57BL/6メスマウス(10~12週)に実施した(Tep, C. et al. Oral administration of a small molecule targeted to block proNGF binding to p75 promotes myelin sparing and functional recovery after spinal cord injury. J Neurosci 33, 397-410, doi:10.1523/JNEUROSCI.0399-12.2013 (2013))。手術は全て無菌条件下で実施した。簡潔に言えば、ケタミン及びキシラジン(それぞれ120mg/kg及び16mg/kg、i.p.)による深麻酔下で、マウスに第9胸椎(T9)レベルでの背側椎弓切除を施した。ステンレス鋼インパクターチップにより第8胸椎(T8)及び第10胸椎(T10)の外側突起を固定した後、75kdyneの、制御された力を規定された衝撃を、曝露された脊髄に与えた(Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019)、Tep, C. et al. Oral administration of a small molecule targeted to block proNGF binding to p75 promotes myelin sparing and functional recovery after spinal cord injury. J Neurosci 33, 397-410, doi:10.1523/JNEUROSCI.0399-12.2013 (2013))。次いで、筋肉及び皮膚を、4.0ポリグリコール酸(PGA,polyglycolic acid)吸収性縫合糸(Safil、G1048213)を用いて閉じた。本研究では、実際の変位値が間隔500~700μmの外であった場合、又は衝撃後の実際の力が2SD 75Kdyneを超えた場合はマウスを除外した。損傷直後に、マウスの皮下に滅菌生理食塩水0.5mlを注射し、次いで5日間毎日注射した。本実験中、マウスは、自力で排尿するまで毎日2回穏やかな膀胱圧搾を受けた。損傷の際にこのSCIモデルにおいて、10%の体重減少が概して観察されたため、損傷後15日目(15dpi[days-post-injury])までは毎日、次いで研究の期間中毎週、体重をモニタリングし、高カロリーペレット(Supreme Mini-Treats(商標)S05478及びS05472)を栄養補助食品として供給した。
【0033】
マウスSCIモデルにおける薬物治療
使用されたエレトリプタンHbr(Sigma-Aldrich社製、PZ0011)投与量は、ヒト市場用量と同量であり(Nair, A. B. & Jacob, S. A simple practice guide for dose conversion between animals and human. J Basic Clin Pharm 7, 27-31, doi:10.4103/0976-0105.177703 (2016))、治療投与量は全て、二重盲検措置を維持するためコード化システムを使用して等分した。このコードは、全ての行動試験終了時にのみ明らかにされた。マウスを各実験群(SCI+媒体及びSCI+エレトリプタンHbr)にランダムに分配した。媒体及びエレトリプタンHbrを、損傷後1時間目(hpi,hour after injury)から、次いで損傷後15日目(15dpi)まで毎日腹腔内注射(i.p.,intraperitoneal injection)により投与した。
【0034】
Bassoマウススケール(BMS,Basso Mouse Scale)評価
BMS査定システムによりオープンフィールド移動運動を評価した(Tep, C. et al. Oral administration of a small molecule targeted to block proNGF binding to p75 promotes myelin sparing and functional recovery after spinal cord injury. J Neurosci 33, 397-410, doi:10.1523/JNEUROSCI.0399-12.2013 (2013)、Basso, D. M. et al. Basso Mouse Scale for locomotion detects differences in recovery after spinal cord injury in five common mouse strains. J Neurotrauma 23, 635-659, doi:10.1089/neu.2006.23.635 (2006))。使用されたオープンフィールドは、通常の照明を有する静かな試験室内に配置された、直径85cm及び高さ30.5cmを有する円形プラットフォームであった。手術前2週間、毎日5分間マウスを試験プラットフォームに慣らした。以前に記載されたように、BMS試験(BMSスコアリング及びサブスコアリング)を実施した(Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019)、Tep, C. et al. Oral administration of a small molecule targeted to block proNGF binding to p75 promotes myelin sparing and functional recovery after spinal cord injury. J Neurosci 33, 397-410, doi:10.1523/JNEUROSCI.0399-12.2013 (2013))。簡潔に言えば、最大BMSスコア値であることが予期されるベースライン術前移動運動値を得るため、手術前にマウスを試験した。処理後の機能回復を決定するため、各マウスのBMSスコアを1、3、7、14dpiに、次いで実験終了まで毎週判定した。BMSスコア及びサブスコアの判定は、処理群に対して盲検化され、マウス1匹あたり4分間の後肢移動運動を記録した2名の査定者により常に実施された。査定者間でスコアが異なった場合、得られた最終スコアは両スコアの平均であった。
【0035】
アセトン蒸発アッセイ
アセトン蒸発アッセイを使用して、損傷の際の冷刺激に対する感受性を測定した(Deuis, J. R., Dvorakova, L. S. & Vetter, I. Methods Used to Evaluate Pain Behaviors in Rodents. Front Mol Neurosci 10, 284, doi:10.3389/fnmol.2017.00284 (2017))。まず、金網を有するプラットフォームに4分間マウスを慣らし、次いで、1mlシリンジを使用して、アセトン50μl一滴を後足の足底表面に滴下した。試行間の間隔2分で、5回の試行を各後足に実施した。各試行において、タイマーを使用して、60秒間で後足を動かす又は舐めるのに要した時間を測定し、分析のために記録した(Golden, J. P. et al. RET signaling is required for survival and normal function of nonpeptidergic nociceptors. J Neurosci 30, 3983-3994, doi:10.1523/JNEUROSCI.5930-09.2010 (2010))。
【0036】
灌流及び組織処理
行動試験の終了時に、マウスに0.9%NaCl、それに続いてpH7.4 0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS,phosphate-buffered saline)中4%パラホルムアルデヒド(PFA,paraformaldehyde)溶液で経心灌流を行った。PBSで一晩すすいだ後、脊髄を30%スクロース中で3日間凍結保護処理し、次いで、損傷中心に対して3mm吻側から3mm尾側(合計6mm)のブロックとして、最適切断温度(OCT,optimal cutting temperature)化合物(Sakura Finetek社製、USA)中で凍結させた。次いで、各ブロックをクライオスタット上で横断面(10μm)で切断し、交互の10セットでスライドに乗せ、-20℃で必要時まで保管した(Ma, M., Basso, D. M., Walters, P., Stokes, B. T. & Jakeman, L. B. Behavioral and histological outcomes following graded spinal cord contusion injury in the C57Bl/6 mouse. Exp Neurol 169, 239-254, doi:10.1006/exnr.2001.7679 (2001))。
【0037】
免疫組織化学
切片における免疫組織化学のため、PBSを使用して凍結切片からOCTを除去した(30分)。切片を0.5%PBS-Triton X-100で洗浄し、ブロッキング溶液(0.1%Triton X-100含有PBS中5%ヤギ血清)中で室温で2時間ブロッキングした。次いで、脊髄切片を、抗GFAP(1:500;ThermoFisher Scientific社製、13-0300)、抗PDGFRβ(1:200;Abcam社製、ab32570)、抗CD31/PECAM-1(1:100;RD Systems社製、AF3628)、抗F4/80(1:500;Abcam社製、ab6640)及び抗P2Y12(1:500;AnaSpec社製AS-55043A)一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートし、0.1%PBS-Triton X-100、PBS中で洗浄し、AlexaFluor 568(1:500;ThermoFisher Scientific社製、A11011又はA11057)、AlexaFluor 488(1:500;ThermoFisher Scientific社製、A11006又はA11008)二次抗体とともに4℃で一晩再インキュベートした。活性化ミクログリア定量化のため、切片をDAPIにより対比染色した。次いで切片をPBS中で洗浄し、DABCO含有蛍光封入培地に乗せた。
【0038】
FluoroMyelinグリーン染色及び白質残存分析
脱髄を定量化するため、100μm離して配置され、ブロック全体に及ぶ1セットの切片を、FluoroMyelin(商標)グリーン(ThermoFisher Scientific社製、F34651)で1時間染色した。10x拡大の電動倒立広視野蛍光顕微鏡(Zeiss Cell Observer、Carl Zeiss MicroImaging社製)でZ-スタック組成を取得した。Fijiソフトウェアを使用して、白質残存の断面積(WMA,cross-sectional area of white matter sparing)及び組織切片の総断面積(TCA,total cross-sectional area)を測定し、次いで損傷中心に対して1100μm吻側から1100μm尾側の比例する断面積を計算した(WMA/TCA)。最小WMA/TCAを有する切片として特定された、周縁部に最小面積の蛍光グリーン染色された白質を有する組織切片として、中心を特定した。コード化切片を介して、かつ処理又は結果群を知らない研究者により、病変の分析を実施した(Hoschouer, E. L., Finseth, T., Flinn, S., Basso, D. M. & Jakeman, L. B. Sensory stimulation prior to spinal cord injury induces post-injury dysesthesia in mice. J Neurotrauma 27, 777-787, doi:10.1089/neu.2009.1182 (2010))。
【0039】
線維性瘢痕の定量化
1セットの切片を抗PDGFRβ及び抗GFAPで染色して、線維性瘢痕領域の境界の輪郭を描いた。20x拡大の電動倒立広視野蛍光顕微鏡(Zeiss Cell Observer、Carl Zeiss MicroImaging社製)でZ-スタック組成を取得した。Fijiソフトウェアを使用して、手動で輪郭を描き、PDGFRβ面積及び総断面積を計算して、その後総断面積に対する線維性瘢痕面積のパーセントを定量化した。線維性病変の吻側及び尾側の範囲を検査により決定した。線維性コア又はPDGFRβ発現増加(それぞれ)を有する組織を含有する切片の数に、各切片間の距離(100μm)をかけることにより、線維性病変の長さ及びPDGFRβ発現の範囲を計算した。
【0040】
活性化ミクログリアの定量化
活性化ミクログリアを定量化するため、1セットの脊髄切片を、抗P2Y12(ミクログリア特異的マーカー)及び抗F4/80(汎マクロファージマーカー)で染色し、DAPIで対比染色した。20x拡大の電動倒立広視野蛍光顕微鏡(Zeiss Cell Observer、Carl Zeiss MicroImaging社製)でZ-スタック組成を取得した。閾値及びパラメーターを手動で設定した後、F4/80及びP2Y12細胞の数を計算する特注のMultichannel Cell counter4TIFFソフトウェアを使用して、細胞数を定量化した。
【0041】
統計分析
幼生ゼブラフィッシュSCIモデル由来のグラフ表示及びデータ分析は全て、Prism 8ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.社製、サンディエゴ、CA、USA)を使用して実施した。使用された統計的検定は両側検定であった。ゼブラフィッシュSCI研究での異なる群間の平均値比較は、Welch補正を伴う対応のないStudent t検定を使用して実施した。マウスSCIモデル由来のデータ分析は、SigmaPlot 14を使用して、二元配置分散分析(ANOVA,analysis of variance)又は反復測定二元配置分散分析、それに続くBonferroni事後検定を使用して実施した。P値0.05未満を有意とみなした。データは全て平均値±平均値の標準誤差(SEM,standard error of the mean)として表される。
【0042】
結果
エレトリプタンHbrは、ゼブラフィッシュ幼生横断脊髄損傷モデルにおける移動運動機能障害を救済する。
脊髄損傷(SCI)に対する見込みのある新たな治療薬の発見を加速させるため、我々は、FDA承認済みの低分子ライブラリー由来の化学化合物プールのスクリーニングを可能にする表現型アッセイを使用した。この表現型ベーススクリーニングにおいて、我々は、損傷後1日目(dpi)に化学化合物(25μM)を盲検的に投与し、我々は、Chapela D. et al. 2019により以前に記載されたように、24時間後(すなわち2dpi)に行動評価を実施した。移動運動機能の指標として選択された、移動した総距離及び/又は回転角度パラメーターの統計上有意な改善があれば、低分子をまず盲検的に選択した。次いで、我々は、規定の除外基準(特許取得済み又はSCIについて報告された治療適応を有する;重大な報告された毒性を有する又は血液脳関門を通過できない場合)により選択を絞り込んだ。とりわけ、エレトリプタンHbrは、この創薬プラットフォームを介して特定された最も有望な候補のうちの1つであった。エレトリプタンHbrは、ヒト成体における前兆を伴う又は伴わない片頭痛の急性治療のための第2世代トリプタン薬物として知られており、興味深いことに、このゼブラフィッシュ幼生横断脊髄損傷モデルにおいて移動運動機能障害を救済することを示し(図1A、A’)、哺乳動物SCIモデルで試験される有望なSCI治療薬候補となった。
【0043】
エレトリプタンHbrは、T9挫傷型損傷を有するマウスの運動機能を改善する。
非再生モデルにおけるSCI適応症に対するエレトリプタンHbrの治療効果を検証するため、SCIげっ歯類モデルにおけるその有効性を試験することを決定した。したがって、Infinite Horizon(IH)Impactorを使用してC57BL/6メスマウスに挫傷型損傷を実施し、Bassoマウススケール(BMS)試験(Basso, D. M. et al. Basso Mouse Scale for locomotion detects differences in recovery after spinal cord injury in five common mouse strains. J Neurotrauma 23, 635-659, doi:10.1089/neu.2006.23.635 (2006))を使用して損傷後の動物の移動運動能力を判定した。まず、マウスをオープンフィールドプラットフォームに慣らし、15日後にマウスを中等症-重症のT9挫傷(75kdyne)で負傷させた(図2A)。損傷直後及び生体力学的除外基準の際に、マウスを各実験群(SCI+媒体及びSCI+エレトリプタンHbr)にランダムに分配した。治療投与量(媒体又はエレトリプタンHbr)を、損傷後1時間目(1hpi)から、次いで損傷後15日目(15dpi)まで毎日腹腔内(i.p.)注射により投与した(図2A)。SCI+媒体とSCI+エレトリプタンHbr実験群との間で、IHインパクターにより加えられた損傷力又は変位に差はなかった(図4)。損傷の際の移動運動回復の判定のため、BMSスコア及びサブスコアを42日間測定した(図3B~B’)。エレトリプタンHbr処理マウス及び媒体処理マウスにおけるBMSスコアの平均は、損傷後1日目(1dpi)以降に増大し、それぞれ損傷後28~35日目(28~35dpi)の間及び損傷後21~28日目(21~28dpi)の間に横這い状態に到達した。エレトリプタンHbr処理マウスにおけるBMSスコアは、媒体処理マウスと比較して、長期にわたって有意ではないが一貫して高かった(図3B)。注目すべきことに、エレトリプタンHbr処理マウス13匹中1匹がBMSスコア6を達成し(すなわちある程度の前後肢協調を伴う頻繁な足底でのステップを示した)、残りの12匹が損傷後42日目(42dpi)にBMSスコア5を達成した(すなわち頻繁な又は一貫した足底でのステップを示した)。同じ時点で、媒体処理マウスのBMSスコアは4~5であり、9匹中3匹の動物が時々の足底でのステップを達成するのみだった。さらに、エレトリプタンHbr処理マウスの85%が、最初の接地時の両方の後肢の足の平行配置を伴う頻繁な足底でのステップも示し、23%が持ち上げの際に後肢の足のうちの少なくとも一方の平行配置を呈した。
【0044】
平均BMSサブスコアは、損傷後7~42日目(7~42dpi)で、媒体処理マウスよりもエレトリプタンHbr処理マウスにおいて一貫して高く、損傷後35日目(35dpi)(図3B’)~損傷後42日目(42dpi)(図3B’)で有意により高くなった
【0045】
損傷後42日目(42dpi)に、9匹中8匹の媒体処理マウスが、傾き、よたつき又は後肢が崩れかかるなどの重症の体幹不安定性を示し、1匹の動物のみが軽度の体幹安定性を獲得した。さらに、エレトリプタンHbr処理マウスは、けいれん及び転倒などの歩行動作を遮断するイベントの減少を示し、この実験群の動物の46%が軽度の体幹安定性を獲得した(図3C)。
【0046】
さらに我々は、SCI後に見られる一般的な影響である(Donovan, J. & Kirshblum, S. Clinical Trials in Traumatic Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 654-668, doi:10.1007/s13311-018-0632-5 (2018)、Dias, D. O. et al. Reducing Pericyte-Derived Scarring Promotes Recovery after Spinal Cord Injury. Cell 173, 153-165.e122, doi:10.1016/j.cell.2018.02.004 (2018))、膀胱機能不全状態も判定した。手動での膀胱圧搾中、我々は0(尿を有しない通常の膀胱、すなわち自力での排尿能力を有する動物)~3(貯留された多量の尿を有する大きな膀胱)のスコアによった。エレトリプタンHbr処理マウスは、損傷後1日目(1dpi)に統計上有意なより少量の貯留された尿(すなわちより小さいスコア)を示したが、この効果はこの時点後に失われ、研究終了時まで実験群間で差はなかった(図3D)。
【0047】
冷感異痛は、一般的にSCIに関連する、通常は非侵害性の冷刺激に対する有痛性の応答である過敏症と規定される(Deuis, J. R., Dvorakova, L. S. & Vetter, I. Methods Used to Evaluate Pain Behaviors in Rodents. Front Mol Neurosci 10, 284, doi:10.3389/fnmol.2017.00284 (2017))。本研究では、蒸発冷却により引き起こされる侵害防御応答のエピソード数及び期間を定量化することによる、損傷後14日目(14dpi)及び損傷後42日目(42dpi)でのアセトン蒸発試験を使用して、冷刺激に対する感受性を判定した。エレトリプタンHbr処理マウスの平均は、媒体処理マウスと比較して、有意でないが一貫した累積反応時間の減少及び冷感過敏症のエピソード数の低下を示した(図3E、E’)。
【0048】
エレトリプタンHbrは、病変の末端範囲付近の脱髄を防止すると思われる
損傷の際の脱髄状態に対するエレトリプタンHbrの効果を分析するため、FluoroMyelin(商標)グリーン蛍光ミエリン染色を使用して、実験群(SCI+エレトリプタンHbr及びSCI+媒体)間での、総断面積に対する残された白質面積を比較した(図5A)。エレトリプタンHbr処理マウスにおける総断面積に対する残された白質の平均は、病変中心で、さらに病変の中心から700μm吻側及び尾側にわたって、媒体で処理されたマウスよりも有意ではないが一貫してより高かった(図5B)。
【0049】
PDGFR-β発現レベルの増大の範囲が、エレトリプタンHbr処理により低減される
瘢痕の線維性区画は、線維芽細胞様細胞のコアを作り出すPDGFRβ血管周囲細胞のサブセット、及び細胞外マトリックス分子の高密度の堆積により構成される(Dias, D. O. et al. Reducing Pericyte-Derived Scarring Promotes Recovery after Spinal Cord Injury. Cell 173, 153-165.e122, doi:10.1016/j.cell.2018.02.004 (2018))。さらに最近、周皮細胞由来の瘢痕を低減させると、マウスにおいて脊髄損傷の際の機能回復が促進されることが示されたため(Dias, D. O. et al. Reducing Pericyte-Derived Scarring Promotes Recovery after Spinal Cord Injury. Cell 173, 153-165.e122, doi:10.1016/j.cell.2018.02.004 (2018))、線維性瘢痕の面積及び長さを判定することにより、線維性瘢痕状態に対するエレトリプタンHbrの効果を分析することを決定した。
【0050】
この分析のため、瘢痕のグリア制限境界の輪郭を描くことを可能にするGFAP、及び瘢痕の線維性要素を標識するための周皮細胞マーカーPDGFRβにより、二重免疫組織化学を実施した(図6A~C、6A’~C’、6A’’~C’’)。この手法により、線維性瘢痕区画の輪郭を描き、病変中心におけるその面積を測定し、PDGFRβ病変コアの、長さでの範囲、さらにはシャムマウスにおけるPDGFRβ染色のレベルとの比較により、PDGFRβ免疫染色のレベルの増大の範囲を規定することができた。病変中心において、損傷後42日目(42dpi)時点で、エレトリプタンHbr処理マウスと媒体処理マウスとの間で線維性病変コアの面積に統計上有意な差はなかった。媒体及びエレトリプタンHbr処理群の間でPDGFRβ病変コアの範囲に統計上有意な差はなかったが、媒体処理マウスと比較して、エレトリプタンHbrで処理されたマウスでは、PDGFRβ免疫染色のレベルの増大の範囲に統計上有意な低減があった(図6D~F)。
【0051】
エレトリプタンHbr処理により、脈管構造を伴う異常な数のPDGFRβ細胞を有する組織の範囲が低減する
病変範囲の末端において検出されたPDGFRβレベルの増大が血管を伴うかどうかを推論するため、我々は周皮細胞マーカーPDGFRβ及び内皮細胞マーカーCD31(PECAM-1)を使用して二重免疫組織化学を実施することを決定した(図7)。中心から1000μmの切片における、媒体処理マウスで検出されエレトリプタンHbr処理マウスでは低減されたPDGFRβ発現の増大は、CD31内皮細胞を伴っていた(図7A~C’’’)。
【0052】
ミクログリアはエレトリプタンHbrの影響を受ける
ミクログリアがSCI修復にとって非常に重要であることは公知である。ミクログリアがなければ、脱髄及び病理学的MDM浸潤物が増強され、グリア瘢痕形成が破壊され、運動機能障害が悪化する(Brennan , F. H., Hall, J. C. E., Guan, Z. & P.G., P. Microglia limit lesion expansion and promote functional recovery after spinal cord injury in mice. Cold Spring Harbor Laboratory, doi:https://doi.org/10.1101/410258 (2018))。この状況で、P2Y12(ミクログリアマーカー)及びF4/80(汎マクロファージマーカー)による二重免疫組織化学を実施することにより、損傷の際のミクログリア状態に対するエレトリプタンHbrの効果を判定することを決定した。P2Y12ミクログリアは、シャムマウスでは長い突起を有する分枝状形態を示したが、媒体処理マウスでは、ミクログリアは病変中心においてまばらに検出された、より短い突起を示した(図8A~C’’)。媒体で処理されたマウスでは、P2Y12ミクログリアは病変中心においてほとんど検出されず、存在する場合、ミクログリアは主に病変周辺部のクラスターにおいて、又はアメーバ様形状を有する残された白質において観察された(図8B、B’’;8C、C’’)。エレトリプタンHbr処理マウスも、病変周辺部のアメーバ様形状及びより短い突起を有するクラスターにおいて、又は残された白質においてミクログリアを示したが、一部の切片では、中心付近又は中心において、より長い分枝状突起も観察され、媒体処理マウスでは観察されなかった特徴である(図8B、B’’;8C、C’’)。中心から1000μmの切片において、P2Y12ミクログリアは灰白質及び白質にわたって存在し、シャム動物と比較して、媒体処理マウス及びエレトリプタンHbr処理マウスの両方で、灰白質において(主に脊髄背側で)いくつかのより短い突起及びより反応性の高い形状を有する形態を示した(図8A、A’;8B、B’’;8C、C’’)。P2Y12F4/80(活性化ミクログリア)細胞の数には統計上有意な差がなかったが、この数は、エレトリプタンHbr処理マウスの、中心に対して400μm吻側及び尾側において一貫してより高かった(図8D)。
【0053】
脊髄損傷(SCI)は非常に複雑な性質を有する。複雑な生理的過程を妨害する化合物の可能性を調査するための最良のシステムが、インビボでのそれらの効果を判定することであり、ゼブラフィッシュ幼生がインビボでの表現型薬物スクリーニング用の、特に多用途の脊椎動物モデルとなりつつあることは周知である(Hall, C. J. et al. Repositioning drugs for inflammatory disease - fishing for new anti-inflammatory agents. Dis Model Mech 7, 1069-1081, doi:10.1242/dmm.016873 (2014)、Rennekamp, A. J. & Peterson, R. T. 15 years of zebrafish chemical screening. Curr Opin Chem Biol 24, 58-70, doi:10.1016/j.cbpa.2014.10.025 (2015))。
【0054】
我々の研究室で以前に確立されたインビボでの幼生ゼブラフィッシュ表現型ベーススクリーニングを使用して(すなわち再生促進モデルを使用して)(Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019))、FDA承認済みの低分子ライブラリー由来の、SCI救済特性を有する有望な化合物が本明細書で初めて特定される。次いで我々は、SCIのインビボでのマウス挫傷(線維化促進)モデルにおける、この化合物の治療効果の保存を検証及び判定する。
【0055】
我々の、以前に検証されたゼブラフィッシュ創薬プラットフォームから、我々は、移動した総距離及び回転角度パラメーターの両方で運動機能障害を救済する、脊髄回復可能性を有する最も有望な候補のうちの1つとして、エレトリプタンHbrを選択した。重要なことには、総距離及び回転角度パラメーターに現れた改善が、エレトリプタンHbrがSCI幼生の遊泳能力を救済することを示しただけでなく、それぞれ運動方向制御も改善すると思われた。
【0056】
このゼブラフィッシュ手法によるエレトリプタンHbrの選択の後、この化合物を、急性及び亜急性損傷期の間、損傷後1時間目(1hpi[hour upon injury])から、次いで損傷後15日目(15dpi)まで毎日、T9挫傷マウスモデルに毎日投与した。したがって、エレトリプタンHbrが、線維化促進モデルにおける移動運動行動の改善に対する保存された効果を有することが確認されただけでなく、損傷後42日目(42dpi)の脱髄状態、線維性瘢痕形成及び炎症過程に対するその効果を判定することも可能であった。重要なことには、この時点は、反応性アストログリオーシス及びマクロファージ/ミクログリア誘導性炎症が存在した、げっ歯類における慢性期時間にあたる。
【0057】
とりわけ、エレトリプタンHbrは、BMS評価において移動運動能力を有意に改善し、マウスの体幹安定性を改善し重症イベント数を低減させることを示した。さらに、エレトリプタンHbrの投与により、有意ではないが一貫して、アセトン蒸発試験における累積反応時間が減少し冷感過敏症のエピソード数が低下して、おそらくこの化合物がSCI状況における冷感異痛を減少させ得ることが示された。事実、冷感受性を測定するためにいくつかの研究で使用されているにもかかわらず、アセトン蒸発試験はいくつかの制限、すなわち、正確な量のアセトンが確実に毎回一貫して滴下されることが困難であり、冷刺激が変動することを有する(Deuis, J. R., Dvorakova, L. S. & Vetter, I. Methods Used to Evaluate Pain Behaviors in Rodents. Front Mol Neurosci 10, 284, doi:10.3389/fnmol.2017.00284 (2017)、Brenner, D. S., Golden, J. P. & Gereau, R. W. A novel behavioral assay for measuring cold sensation in mice. PLoS One 7, e39765, doi:10.1371/journal.pone.0039765 (2012))。この方法は実施するのに簡便であるが、応答を促進する最低温度を測定する代わりに、応答の規模を定量化するのみである(Brenner, D. S., Golden, J. P. & Gereau, R. W. A novel behavioral assay for measuring cold sensation in mice. PLoS One 7, e39765, doi:10.1371/journal.pone.0039765 (2012))。
【0058】
ヒトでは時々、機能障害の程度は必ずしも組織損傷の程度と相関するわけではない。実際に、挫傷型損傷はしばしば、損傷部に残された組織が存在するにもかかわらず、運動及び感覚の完全な喪失につながる(Oudega, M. Molecular and cellular mechanisms underlying the role of blood vessels in spinal cord injury and repair. Cell Tissue Res 349, 269-288, doi:10.1007/s00441-012-1440-6 (2012))。処理群間で統計上有意な差はなかったが、エレトリプタンHbrは病変の末端範囲付近での一貫してより高いミエリン維持を促進することを示した。
【0059】
SCI後、軸索再成長を阻害し、同時に、脊髄実質への免疫細胞の浸潤を制限する線維性瘢痕の形成がある(Zhu, Y. et al. Hematogenous macrophage depletion reduces the fibrotic scar and increases axonal growth after spinal cord injury. Neurobiol Dis 74, 114-125, doi:10.1016/j.nbd.2014.10.024 (2015))。重要なことには、周皮細胞由来の瘢痕を適度に阻害すると、創傷治癒が維持され炎症及び反応性アストログリオーシスが低減されるだけでなく、軸索再生が可能となり機能回復が改善される(Dias, D. O. et al. Reducing Pericyte-Derived Scarring Promotes Recovery after Spinal Cord Injury. Cell 173, 153-165.e122, doi:10.1016/j.cell.2018.02.004 (2018))。
【0060】
興味深いことに、エレトリプタンHbrは、PDGFRβ免疫染色レベルの増大の範囲を有意に低減させたが、病変中心におけるPDGFRβ線維性病変コア面積又は範囲は低減させなかったことが本明細書で開示される。
【0061】
本特許出願において開示されるように、病変範囲の末端において検出されたPDGFRβレベルの増大は血管を伴い、エレトリプタンHbrが、PDGFRβ細胞、すなわちCD31細胞を伴うPDGFRβの数の増大を有する病変組織の範囲を低減させ、おそらく虚血状態に対する効果を有することが示唆された。
【0062】
損傷に対する応答において、ミクログリアが活性化され、神経栄養因子の放出及び残屑除去を介して、切断された軸索の再生を可能にする。しかし、炎症性サイトカインの分泌及びフリーラジカルの産生により、神経毒性も促進され得る(Brennan , F. H., Hall, J. C. E., Guan, Z. & P.G., P. Microglia limit lesion expansion and promote functional recovery after spinal cord injury in mice. Cold Spring Harbor Laboratory, doi:https://doi.org/10.1101/410258 (2018))。
【0063】
SCI修復及び回復に対するミクログリアの非常に重要な役割ゆえに、本発明者らは、炎症過程に対するエレトリプタンHbrの効果を調査することを決定した。興味深いことに、エレトリプタンHbrで処理されたマウスは、より短い突起とともに肥大化を示す、適度に活性化されたミクログリアに特徴的な形態により類似した形態を有するミクログリアを有することを示した。事実、クラスターにおいてアメーバ様形状を有するミクログリアが観察されたが、一部のマウスは脊髄切片において病変中心付近により長い分枝状突起を示した。これは、強力な分子炎症応答に特徴的な(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018))、アメーバ様形態を有する強力に活性化されたミクログリアのみが検出された媒体処理マウスでは観察されなかった。
【0064】
エレトリプタンHbrは、片頭痛の治療におけるその著しい臨床有効性について公知の、5-HT1B、5-HT1D及び5-HT1F受容体に対して高い親和性を有するセロトニン受容体アゴニストである(Capi, M. et al. Eletriptan in the management of acute migraine: an update on the evidence for efficacy, safety, and consistent response. Ther Adv Neurol Disord 9, 414-423, doi:10.1177/1756285616650619 (2016))。注目すべきことに、本明細書で初めて、エレトリプタンHbrに対する新たな適応症が開示され、SCIの2つの異なる(横断再生促進及び挫傷線維化促進)動物モデルにおいてその移動運動回復特性が示される。最後に、他の分子との組合せ療法におけるエレトリプタンHbr、並びに工学的手法及び特定の時間依存性の介入を伴うエレトリプタンHbrは、SCIの状況において大きな可能性を有する。
【0065】
互いに独立に、又は他の特徴の任意の組合せとともにそれぞれ使用可能ないくつかの特徴が以下に記載される。しかし、いずれの個々の特徴も、先に論じられた問題のいずれにも対処しえないか、又は先に論じられた問題のうちの1つにのみ対処可能であり得る。先に論じられた問題のうちのいくつかは、本明細書に記載される特徴のいずれによっても完全には対処できない。見出しは提供されるものの、特定の見出しに関するがその見出しを有するセクションでは見つからない情報が、本明細書の他の箇所で見つかることもある。
【0066】
実施形態の記載
ここで、本出願の好ましい実施形態が詳細に記載されるが、これらは本出願の範囲を制限することを意図されない。
【0067】
実施形態1.本特許出願は、脊髄損傷の治療における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物について開示する。
【0068】
実施形態2.脊髄損傷後の移動運動機能の改善における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0069】
実施形態3.脊髄損傷が急性期である、実施形態1による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0070】
実施形態4.脊髄損傷に関連する炎症の調節における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0071】
実施形態5.脊髄血液関門における血管の漏出の保護における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0072】
実施形態6.出血の低減における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0073】
実施形態7.出血が脊髄損傷に関連する、実施形態6による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0074】
実施形態8.脊髄損傷が急性期である、実施形態7による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【0075】
実施形態9.それを必要とする対象における脊髄損傷を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量のエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0076】
実施形態10.エレトリプタン臭化水素酸塩の投与が、損傷後1時間目から開始される、実施形態9による方法。
【0077】
実施形態11.対象が温血脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである、実施形態9~10による方法。
【0078】
エレトリプタンHbrを含む医薬組成物の投与の適切な単位形態には、非制限的な例として、経口的に投与される形態及び非経口経路を介して投与される形態が含まれ、その非制限的な例には、吸入、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与及び皮内投与が含まれる。
【0079】
一部の実施形態において、経口投与用の医薬組成物は、錠剤、丸剤、散剤、硬ゼラチンカプセル剤、軟ゼラチンカプセル剤、及び/又は顆粒剤の形態であってよい。そのような医薬組成物の一部の実施形態において、開示の化合物及び/又は開示の化合物の薬学的に許容される塩は、1種又は2種以上の不活性な希釈剤と混合され、その非制限的な例には、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトース、及びシリカが含まれる。一部の実施形態において、そのような医薬組成物は、(非制限的な例として)、滑沢剤、着色剤、コーティング、又はワニスなどの、希釈剤以外の1種又は2種以上の物質をさらに含んでいてよい。
【0080】
本明細書において、本発明の実施形態は、実施ごとに異なり得る多くの具体的な詳細に関して記載されている。ゆえに、何が本発明であるか、及び出願者らにより何が本発明であると意図されるかについての単独かつ排他的な指標は、本出願から生じる一連の請求項であり、それに続く補正を含む、そのような請求項が生じる具体的な形態をとる。そのような請求項に含有される語についての、本明細書で明白に示される定義は、請求項において使用されるそのような語の意味を支配するものとする。したがって、請求項に明白に記載されない制限、要素、特性、特徴、利点又は特質は、いかなる方法によってもそのような請求項の範囲を制限するはずがない。したがって本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的なものとみなされるべきである。
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27 Westerfield, M. The Zebrafish Book: A Guide for the Laboratory Use of Zebrafish (Brachydanio rerio). (2000).
28 Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019).
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊髄損傷の治療における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項2】
脊髄損傷後の移動運動機能の改善における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項3】
脊髄損傷が急性期又は亜急性期である、請求項1に記載の使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項4】
脊髄損傷に関連する炎症の調節における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項5】
脊髄組織における微小血管漏出の保護における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項6】
出血の低減における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項7】
出血が脊髄損傷に関連する、請求項6に記載の使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項8】
脊髄損傷が急性期である、請求項7に記載の使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【請求項9】
それを必要とする対象における脊髄損傷を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量のエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項10】
エレトリプタン臭化水素酸塩の投与が、損傷後1時間目から開始される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象が、温血脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである、請求項9又は10に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
実施形態5.脊髄組織における微小血管漏出の保護における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
実施形態.それを必要とする対象における脊髄損傷を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量のエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
実施形態.対象が温血脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである、実施形態による方法。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本明細書で使用される場合、脊髄損傷(SCI)は、外傷(例えば自動車事故)から、又は疾患若しくは変性(例えばがん)から生じ、脊髄又は神経の機能の一時的若しくは永続的な変化を引き起こす、脊髄又は神経の任意の部分への損傷を指す。症状には、損傷レベル以下の、脊髄が機能する体の部分における移動運動機能、感覚又は自律神経機能の部分的若しくは完全な喪失が含まれ得る。最も重症の脊髄損傷は、腸又は膀胱制御、呼吸、心拍及び血圧を調節する系に影響を及ぼす。脊髄損傷を有する大部分の患者は慢性痛を経験する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
SCIについての表現型ベーススクリーニング
幼生ゼブラフィッシュ表現型ベーススクリーニングを使用して、Diana et al. 2019(Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019))により以前に記載されたように、低分子ライブラリー(PHARMAKON 1600-MicroSource Discovery Systems, Inc.社製、USA)由来の化合物プールをスクリーニングした。簡潔に言えば、ゼブラフィッシュ幼生を、5受精後日数(dpf,days-post-fertilization)まで1μMメチレンブルー含有EM中で生育させた。5dpfに、ゼブラフィッシュ幼生脊髄を、肛門の穴のレベルで横断した(Diana et al. 2019 (Chapela, D. et al. A zebrafish drug screening platform boosts the discovery of novel therapeutics for spinal cord injury in mammals. Sci Rep 9, 10475, doi:10.1038/s41598-019-47006-w (2019)))。1dpiに、EM+10mM HEPESを含有する6ウェルプレートに幼生をランダムに分配し、培地に添加された化学化合物に24時間曝露した。2dpiに、ゼブラフィッシュ幼生用の自動追跡システムであるDanioVision(商標)(Noldus Information Technology社製、オランダ)を使用して、行動評価を実施した。EM+10mM HEPES含有96ウェルプレート(1幼生/ウェル)中で幼生を自由に遊泳させ、幼生の遊泳活動を90分間、10分間の明暗周期(すなわち3回の明周期及び3回の暗周期)で追跡した。Ethovision X.T. 10ソフトウェア(Noldus社製、ヴァーヘニンゲン、オランダ)を使用して、取得された追跡データを分析し、3回の暗期で得られた遊泳活動のみを分析した(de Esch, C. et al. Locomotor activity assay in zebrafish larvae: influence of age, strain and ethanol. Neurotoxicol Teratol 34, 425-433, doi:10.1016/j.ntt.2012.03.002 (2012))。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
灌流及び組織処理
行動試験の終了時に、マウスに0.9%NaCl、それに続いてpH7.4 0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS,phosphate-buffered saline)中4%パラホルムアルデヒド(PFA,paraformaldehyde)溶液で経心灌流を行った。PBSで一晩すすいだ後、脊髄を30%スクロース中で3日間凍結保護処理し、次いで、損傷中心に対して3mm吻側から3mm尾側(合計6mm)のブロックとして、最適切断温度(OCT,optimal cutting temperature)化合物(Sakura Finetek社製、USA)中で凍結させた。次いで、各ブロックをクライオスタット上で横断面(10μm)で切断し、交互の10セットでスライドに乗せ、-20℃で必要時まで保管した(Ma, M., Basso, D. M., Walters, P., Stokes, B. T. & Jakeman, L. B. Behavioral and histological outcomes following graded spinal cord contusion injury in the C57Bl/6 mouse. Exp Neurol 169, 239-254, doi:10.1006/exnr.2001.7679 (2001)、Hoschouer, E. L., Finseth, T., Flinn, S., Basso, D. M. & Jakeman, L. B. Sensory stimulation prior to spinal cord injury induces post-injury dysesthesia in mice. J Neurotrauma 27, 777-787, doi:10.1089/neu.2009.1182 (2010))。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
このゼブラフィッシュ手法によるエレトリプタンHbrの選択の後、この化合物を、急性及び亜急性損傷期の間、損傷後1時間目(1hpi[hour upon injury])から、次いで損傷後15日目(15dpi)まで毎日、T9挫傷マウスモデルに毎日投与した。したがって、エレトリプタンHbrが、線維化促進モデルにおける移動運動行動の改善に対する保存された効果を有することが確認されただけでなく、損傷後42日目(42dpi)の脱髄状態、線維性瘢痕形成及び炎症過程に対するその効果を判定することも可能であった。重要なことには、この時点は、反応性アストログリオーシス及びマクロファージ/ミクログリア誘導性炎症が存在した、げっ歯類における慢性期時間にあたる(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018))
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
損傷に対する応答において、ミクログリアが活性化され、神経栄養因子の放出及び残屑除去を介して、切断された軸索の再生を可能にする(Brennan, F. H., Hall, J. C. E., Guan, Z. & P.G., P. Microglia limit lesion expansion and promote functional recovery after spinal cord injury in mice. Cold Spring Harbor Laboratory, doi:https://doi.org/10.1101/410258 (2018))。しかし、炎症性サイトカインの分泌及びフリーラジカルの産生により、神経毒性も促進され得る(Brennan , F. H., Hall, J. C. E., Guan, Z. & P.G., P. Microglia limit lesion expansion and promote functional recovery after spinal cord injury in mice. Cold Spring Harbor Laboratory, doi:https://doi.org/10.1101/410258 (2018))。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
SCI修復及び回復に対するミクログリアの非常に重要な役割ゆえに、本発明者らは、炎症過程に対するエレトリプタンHbrの効果を調査することを決定した。興味深いことに、エレトリプタンHbrで処理されたマウスは、より短い突起とともに肥大化を示す、適度に活性化されたミクログリアに特徴的な形態により類似した形態を有するミクログリアを有することを示した(Brennan, F. H., Hall, J. C. E., Guan, Z. & P.G., P. Microglia limit lesion expansion and promote functional recovery after spinal cord injury in mice. Cold Spring Harbor Laboratory, doi:https://doi.org/10.1101/410258 (2018))。事実、クラスターにおいてアメーバ様形状を有するミクログリアが観察されたが、一部のマウスは脊髄切片において病変中心付近により長い分枝状突起を示した。これは、強力な分子炎症応答に特徴的な(Gaudet, A. D. & Fonken, L. K. Glial Cells Shape Pathology and Repair After Spinal Cord Injury. Neurotherapeutics 15, 554-577, doi:10.1007/s13311-018-0630-7 (2018))、アメーバ様形態を有する強力に活性化されたミクログリアのみが検出された媒体処理マウスでは観察されなかった。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
実施形態3.脊髄損傷が急性期又は亜急性期である、実施形態1による使用のためのエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
実施形態5.脊髄組織における微小管漏出の保護における使用のための、エレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
実施形態.それを必要とする対象における脊髄損傷を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量のエレトリプタン臭化水素酸塩又はその医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
実施形態.対象が温血脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである、実施形態による方法。
【国際調査報告】