(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】大きなダイヤモンドの成長方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/04 20060101AFI20230310BHJP
C30B 25/02 20060101ALI20230310BHJP
C30B 25/20 20060101ALI20230310BHJP
C01B 32/26 20170101ALI20230310BHJP
【FI】
C30B29/04 B
C30B25/02 P
C30B25/20
C01B32/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544437
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021014154
(87)【国際公開番号】W WO2021150587
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522291108
【氏名又は名称】エム・セブン・ディー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】M7D Corporation
【住所又は居所原語表記】6710 Virginia Manor Road, Beltsville, MD 20705, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ピー. チラルド
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン レヴァイン-マイルズ
【テーマコード(参考)】
4G077
4G146
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB09
4G077BA03
4G077DB07
4G077DB16
4G077EA02
4G077EA05
4G077EA06
4G077ED02
4G146AA04
4G146AB07
4G146AD28
4G146BA12
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC24
4G146BC25
4G146BC33A
4G146BC34A
4G146BC38A
(57)【要約】
ある方法が1つ以上のダイヤモンドを形成する。前記方法は、ガス環境を有する成長チャンバを準備する。単結晶ダイヤモンド基板を成長チャンバ内に配置する。ダイヤモンド材料を、前記単結晶ダイヤモンド基板上に堆積してエピタキシャル成長させる。前記単結晶ダイヤモンド基板は、所定の結晶配向を有する。成長を、規定の温度、規定の圧力で、且つガス環境についての規定のガス含分を用いて継続する。前記規定のガス環境は、約0.5ppmを上回り且つ約5.0ppm未満の窒素濃度を有する。前記規定の温度は、約650℃を上回り且つ約950℃未満である。前記規定の圧力は、約130Torrを上回り且つ約175Torr未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のダイヤモンドの形成方法であって、
ガス環境を有する成長チャンバを準備すること、
前記成長チャンバ内に単結晶ダイヤモンド基板を配置すること、
前記単結晶ダイヤモンド基板上にダイヤモンド材料を堆積してエピタキシャル成長させ、前記単結晶ダイヤモンド基板は所定の結晶配向を有すること、
規定の温度、規定の圧力で、且つ前記ガス環境についての規定のガス含分を用いて、成長を継続させることを含み、
前記規定のガス環境は約0.5ppmを上回り且つ約5.0ppm未満の窒素濃度を有し、
前記規定の温度は約650℃を上回り且つ約950℃未満であり、
前記規定の圧力は約130Torrを上回り且つ約175Torr未満である、
前記方法。
【請求項2】
堆積がプラズマ支援化学気相堆積技術の使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス環境が酸素不含である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス環境が酸素、アルゴン、メタンおよび水素の1種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ダイヤモンド材料を堆積させることから形成されるダイヤモンドが、約15ミリメートルを上回る最大寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数のダイヤモンドを同時に製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成長がダイヤモンド表面上で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記規定の温度が、成長を継続する際に変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記規定の圧力が、成長を継続する際に変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ダイヤモンドの成長面が、約±5度の範囲のミスカット/ミスオリエンテーションを有する(100)配向を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上のダイヤモンドの成長方法であって
成長チャンバ内にシードを準備し、前記シードは約±5度のミスカットを有する(100)結晶配向を有すること、
第1の期間の間、前記成長チャンバ内のガス濃度が約1.5ppm~約5.0ppmであるように設定すること、
前記成長チャンバ内の温度が約650℃~1100℃であるように設定すること、
前記成長チャンバ内の圧力が約135Torr~175Torrであるように設定すること、
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記シード上にダイヤモンド層をエピタキシャル成長させることをさらに含む、請求項11に定義される方法。
【請求項13】
前記第1の期間が約1時間~48時間である、請求項11に定義される方法。
【請求項14】
前記第1の期間の後の第2の期間について、前記成長チャンバ内のガス濃度が約0.5ppm~約1.5ppmであるように設定することをさらに含む、請求項11に定義される方法。
【請求項15】
前記第2の期間が約350時間~約750時間である、請求項14に定義される方法。
【請求項16】
層を堆積させて約3.5カラット~約9カラットのバルクのダイヤモンドを形成することをさらに含む、請求項11に定義される方法。
【請求項17】
前記バルクのダイヤモンドが連続的に形成される、請求項16に定義される方法。
【請求項18】
層を堆積して約10カラット~約20カラットのバルクのダイヤモンドを形成することをさらに含む、請求項11に定義される方法。
【請求項19】
第2のダイヤモンド層を第1のダイヤモンド層上に直接的または間接的に成長させることをさらに含み、前記第2のダイヤモンド層は前記第1のダイヤモンド層よりも大きな幅および/または長さを有する、請求項12に定義される方法。
【請求項20】
ダイヤモンド層を外向きに成長させることをさらに含む、請求項11に定義される方法。
【請求項21】
前記シードがダイヤモンドシードである、請求項11に定義される方法。
【請求項22】
1つ以上のダイヤモンドを連続的に形成する方法であって、
ガス環境を有する成長チャンバを準備すること、
前記成長チャンバ内に単結晶基板を配置すること、
前記単結晶基板上にダイヤモンド材料を堆積してエピタキシャル成長させること、
規定の温度、規定の圧力で、且つ前記ガス環境についての規定のガス含分を用いて、成長を継続させることを含み、
前記規定のガス環境は0パーセントを上回るが約0.0005パーセント未満の窒素濃度を有し、
前記規定の温度は約750℃を上回り且つ約1150℃未満である、
前記方法。
【請求項23】
前記単結晶基板がダイヤモンドから形成されており、且つホモエピタキシーを使用してダイヤモンド層を成長させる、請求項22に定義される方法。
【請求項24】
前記単結晶基板がダイヤモンドではない材料から形成されており、且つヘテロエピタキシーを使用してダイヤモンド層を成長させる、請求項22に定義される方法。
【請求項25】
ダイヤモンド層を350~750時間の間、成長させて約3.5カラット~約20カラットのバルクのダイヤモンド基板を製造することをさらに含む、請求項22に定義される方法。
【請求項26】
前記ダイヤモンド層が連続的に形成される、請求項22に定義される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
この特許出願は、米国仮特許出願第62/963231号(2020年1月20日付提出、表題「METHOD OF GROWING LARGER DIAMONDS」、発明者としてJohn CiraldoおよびJonathan Levine-Milesが名指しされている)からの優先権を主張し、前記文献の開示は参照をもってその全文が本願内に含まれるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明の例示的な実施態様は一般に結晶成長に関し、且つより具体的には、例示的な実施態様は化学気相堆積法を使用した大きなダイヤモンドの成長に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ダイヤモンドは広範な用途において使用されている。例えば、それらを、集積回路を製造するために、またはレーザーシステム用のレンズとして使用できる。それらを単純に宝石として使用することもできる。しかしながら、ダイヤモンドの製造は、多数の技術的課題をもたらすことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施態様の要約
本発明の1つの実施態様によれば、ある方法が1つ以上のダイヤモンドを形成する。前記方法は、ガス環境を有する成長チャンバを準備する。単結晶ダイヤモンド基板を前記成長チャンバ内に配置する。ダイヤモンド材料を、前記単結晶ダイヤモンド基板上に堆積してエピタキシャル成長させる。前記単結晶ダイヤモンド基板は、所定の結晶配向を有する。成長を、規定の温度、規定の圧力で、且つガス環境についての規定のガス含分を用いて継続する。前記規定のガス環境は、約0.5ppmを上回り且つ約5.0ppm未満の窒素濃度を有する。前記規定の温度は、約650℃を上回り且つ約950℃未満である。前記規定の圧力は、約130Torrを上回り且つ約175Torr未満である。
【0005】
とりわけ、堆積はプラズマ支援化学気相堆積技術の使用を含む。いくつかの実施態様において、前記ガス環境は酸素不含である。しかしながら、いくつかの実施態様において、前記ガス環境は、酸素、アルゴン、メタンおよび水素の1種以上を含み得る。いくつかの実施態様において、前記規定の温度および/または前記規定の圧力は、成長を継続する際に変化する。
【0006】
上述の方法を使用して、約15ミリメートルよりも大きい最大寸法を有するダイヤモンドを形成できる。さらに、複数のダイヤモンドを同時に製造できる。ダイヤモンド表面上でエピタキシャル成長を実施できる。そのダイヤモンドの成長面は、約±5度の範囲のミスカット/ミスオリエンテーションを有する(100)結晶配向を有し得る。
【0007】
さらに他の実施態様によれば、ある方法が1つ以上のダイヤモンドを成長させる。前記方法は、成長チャンバ内にシードを準備する。前記シードは、約±5度のミスカットを有する(100)結晶配向を有する。前記成長チャンバ内でのガス濃度は、第1の期間について、約1.5ppm~約5.0ppmであるように設定される。前記成長チャンバ内での温度は、約650℃~1100℃であるように設定される。前記成長チャンバ内での圧力は、約135Torr~175Torrであるように設定される。
【0008】
前記第1の期間は、約1時間~48時間であってよい。前記成長チャンバ内でのガス濃度は、前記第1の期間の後の第2の期間について、約0.5ppm~約1.5ppmに設定され得る。前記第2の期間は、約350時間~約750時間であってよい。ダイヤモンド層を堆積して、約3.5カラット~約9カラットのバルクのダイヤモンドを形成できる。
【0009】
いくつかの実施態様において、ダイヤモンド層をシード上にエピタキシャル成長させる。ダイヤモンド層を、ヘテロエピタキシャル成長またはホモエピタキシャル成長させることができる。前記シードはダイヤモンドシードであってよい。バルクのダイヤモンドを連続的に形成できる。例えば、望ましくない多結晶材料を除去するために成長が止められ得ない。いくつかの実施態様において、層を堆積して、約10カラット~約20カラットのバルクのダイヤモンドを形成できる。
【0010】
さらに、第2のダイヤモンド層を、第1のダイヤモンド層上に直接的または間接的に成長させることができる。前記第2のダイヤモンド層は、好ましくは前記第1のダイヤモンド層よりも大きな直径、幅および/または長さを有する。従って、ダイヤモンド層は外向きに成長できる。
【0011】
さらに他の実施態様によれば、ある方法が1つ以上のダイヤモンドを連続的に成長させる。前記方法は、ガス環境を有する成長チャンバを準備する。単結晶基板が成長チャンバ内に配置される。ダイヤモンド材料を、前記単結晶基板上に堆積してエピタキシャル成長させる。ダイヤモンド層は、規定の温度、規定の圧力で、且つガス環境についての規定のガス含分を用いて成長される。前記規定のガス環境は、ゼロパーセントを上回るが約0.0005パーセント未満である窒素濃度を有し得る。前記規定の温度は、約750℃を上回り且つ約1150℃未満であってよい。
【0012】
いくつかの実施態様において、ダイヤモンド層を350~750時間の間、堆積して、約3.5カラット~約20カラットのバルクのダイヤモンドを製造できる。各々の連続的に成長されたダイヤモンド層は、そのダイヤモンド層が上に成長された元のダイヤモンド層の最大寸法よりも大きい最大寸法を有し得る。さらに、様々な実施態様において、ダイヤモンド層は、多結晶材料を除去するために成長プロセスを止めることなく成長され得る。いくつかの実施態様において、前記規定の圧力は、約100Torrを上回り且つ約200Torr未満であってよい。
【0013】
様々な実施態様が、本願内に記載される様々な方法の1つ以上に従ってダイヤモンドを成長させるように構成されるシステム(例えば成長チャンバを含むシステム)に関し得る。追加的または代替的に、様々な実施態様が、本願内の1つ以上の様々な方法を使用して成長されたダイヤモンドに関し得る。例えば、例示的な実施態様は、連続的に(例えば多結晶材料を除去するための処理はされずに)成長された約3.5カラット~約20カラットのダイヤモンドを含み得る。
【0014】
図面の簡単な説明
当業者は本発明の様々な実施態様を、この直後に要約され、図面を参照して議論される以下の「例示的な実施態様の説明」から、より完全に認識するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、本発明の例示的な実施態様に従って化学気相堆積を使用して成長されたバルクのダイヤモンドを模式的に示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の例示的な実施態様に従って化学気相堆積を使用して成長された、より大きなバルクのダイヤモンドを模式的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の例示的な実施態様に従って大きなバルクのダイヤモンドを成長させる方法を示す。
【
図3】
図3は、本発明の例示的な実施態様に従って結晶成長させるために配置されたシードを有するプラットフォームの上面図を模式的に示す。
【
図4】
図4は、本発明の例示的な実施態様に従って成長されたダイヤモンドの側面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の例示的な実施態様に従って成長されたダイヤモンドの側面図の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施態様の説明
例示的な実施態様において、大きなダイヤモンドが成長速度を改善する方法を使用して成長される。前記方法は有利なことに、成長チャンバ内部で好ましい成長条件を提供することによって、他の方法では成長し得る望ましくない多結晶炭素の成長を低減する。特に、本発明者らはチャンバ内部のガスの化学的性質、温度、圧力およびシード層の結晶配向の1つ以上を、多結晶材料の成長を低減するように設定できることを発見した。例示的な実施態様の詳細を以下で説明する。
【0017】
図1Aは、本発明の例示的な実施態様に従って化学気相堆積を使用して成長されたバルクのダイヤモンド10を模式的に示す。当業者には公知のとおり、ダイヤモンド10は単結晶シード12(例えば単結晶ダイヤモンドシード12)上にエピタキシャル成長される。最終的に、カットダイヤモンド14はバルクのダイヤモンド10からカットされ得る。しかしながら、
図1Aに示されるとおり、カットダイヤモンド14のサイズは、バルクのダイヤモンド10の寸法によって制限される。さらには、当業者には公知のとおり、エピタキシャル成長の間、多結晶材料16がダイヤモンド10の周縁部上(および場合によりダイヤモンド10の成長面18上)で形成し始める。多結晶材料16が成長面18の周縁部上で成長し始めるので、バルクのダイヤモンド10の全ての後続の層の直径/幅はどんどん小さくなっていき、なぜなら、単結晶ダイヤモンド10は多結晶材料16の上では成長できないからである。
【0018】
図1Bは、本発明の例示的な実施態様に従って化学気相堆積を使用して成長された、より大きなバルクのダイヤモンド10を模式的に示す。有利なことに、多結晶材料16(例えば多結晶炭素)の成長は妨げられるか、または防止される。従って、成長面18は多結晶材料16によって遮られない。実際に、バルクのダイヤモンド10は、垂直に成長できるだけでなく、ダイヤモンド10が外向きに成長することが可能である。これは、著しく大きなバルクのダイヤモンド10、最終的にはカットダイヤモンド14をもたらす。
【0019】
図2は、本発明の例示的な実施態様に従って
図1Bに示される大きなバルクのダイヤモンド10を成長させる方法を示す。この方法は、ダイヤモンド10を成長させるより複雑な方法の簡易化版であることを注記すべきである。従って、実際の方法は、議論されていないさらなる段階を有し得る。さらに、いくつかの段階を、異なる順で、または互いに並行して実施できる。さらには、様々な実施態様において、1つ以上の段階が任意であることができる。従って、この方法の議論は例示的なものであり、本発明の様々な実施態様を限定することは意図されていない。さらには、この方法は主に単独のダイヤモンド10を製造することに関して議論されるが、
図2の方法を、複数のダイヤモンド10を同時に(例えば同じ成長チャンバ内で)、および/または順次製造するためにも使用できる。
【0020】
前記方法は、バルクのダイヤモンド10を成長させるダイヤモンドシード12を準備する段階202から開始する。シード12は、天然または成長されたダイヤモンドから得ることができる。例えば、シード12は、ダイヤモンド10からカット(例えばレーザーカット)された薄層であってよい。シード12は、所望の結晶配向を達成するために好ましくは研磨される(例えば2800RPMでのロボット研磨)。好ましくは、シード12は、その上に多結晶領域または多結晶材料16を有さない。いくつかの実施態様において、シード12は矩形(例えば正方形)の形状である。シード12は様々な寸法を有し得る。一般に、シードの成長寸法が大きくなるほど、成長されたダイヤモンド10が大きくなる。従って、いくつかの実施態様において、シード12は約6mm~約15mm(例えば約9mm)の幅および/または長さを有し得る。
【0021】
本発明者らは、結晶シード12の配向が、成長されたダイヤモンド10のサイズに影響することを発見した。当業者には公知のとおり、単結晶は異方性である。結晶配向を変えることによって、成長された結晶の特性が変化することがある。特に本発明者らは、(100)の結晶配向が多結晶材料16の成長を妨げることを見出した。特に、(100)面上で±5度の範囲のミスオリエンテーション/ミスカットが、成長プロセスの間の多結晶材料16の事例を実質的に低減する一方で、有利なことに、ダイヤモンド10の外向きの成長(例えば、外向きに約45度までの角度での外向きの成長)を強化することが判明した。
【0022】
±5度の最大ミスオリエンテーションを有するまたは有さない、より大きなダイヤモンド10の成長のための他の結晶配向は(110)配向を含む。本発明者らは、(110)配向が多結晶材料16の成長を妨げることを見出した。しかしながら、(110)配向は、((100)配向に比して)ダイヤモンド10の外向きの成長も妨げる。従って、(110)配向は、±5度の範囲(例えば2度)のミスカットを有する(100)配向と同じ成長の利点のいくつかを欠いている。
【0023】
前記方法は、シード12を、ダイヤモンド成長チャンバ内のプラットフォーム20上に配置する段階204に続く。
図3はシード12を上に配置されたプラットフォーム20の上面図を模式的に示す。ダイヤモンド10は、化学気相堆積を使用して、シード12上にエピタキシャル成長される。ダイヤモンド10が成長すると、前記ダイヤモンド10の上部表面を成長面18と称することもできる。従って、成長面18はシード層12に由来する約±5度の範囲のミスカットを有し得る。
【0024】
いくつかの実施態様において、
図3に示すように、複数のシード12を反応器内に配置できる。例えば、2つ以上のシードをプラットフォーム20の上に配置できる。いくつかの実施態様において、約16~約32のシード12をプラットフォーム20上に同時に配置できる。シード12がプラットフォーム20上でそれらの間にいくらかの距離を有するとして示されているが、いくつかの実施態様においては、シード12はそれらの端部が互いに接するように配置されてよい。この「モザイク手法」は、複数の正方形のダイヤモンドシード12を使用し、それが互いに接触して「より大きな」シード12を形成する。従って、シード12上に堆積されたダイヤモンド10の膜は、シード12にわたって連続的であることができる。しかしながら、前記のモザイク技術は、乏しい再現性、および個々のシード12の接合部付近でのas-grown膜(つまりas-grown層)中での高い結晶欠陥密度を含む、いくつかの課題を欠点として持つ。シード12にわたる成長を支援するために、例示的な実施態様は有利なことに、チャンバ内での窒素濃度を約1.5ppm~約5ppm(例えば2ppm)で、約1時間~約48時間(例えば24時間)保って、ダイヤモンド10の層が一緒に成長することを支援できる。
【0025】
段階206で、CVD成長チャンバ内のガスの化学的性質は、好ましい成長条件を作り出すように設定される。特に、窒素濃度が、チャンバ内の全体のガス濃度の約0.5ppm~約5.0ppmであるように制御/設定される。本発明者らは、本願内で議論される他の要因を考慮して、この範囲の窒素がダイヤモンド10の外向きの成長を可能にすることを見出した。
【0026】
図4は、本発明の例示的な実施態様に従って成長されたダイヤモンド10の側面図を示す。示されるとおり、ダイヤモンド10はシード12から外向きに(例えば約45度の角度で)成長する。様々な実施態様において、ダイヤモンド10の層は約1度~約45度の角度で外向きに成長できる。いくつかの実施態様において、前記成長は等方性(例えば45度)である。従って、成長面18、および続くダイヤモンド10の層は、最終的には成長して最初のシード12よりも大きくなる(例えば、より大きな幅および長さ、直径など)。
【0027】
窒素濃度が約5.0ppmより高くなると、ダイヤモンド10は外向きよりもむしろ垂直に成長し始める。つまり、ダイヤモンド10は、より低い窒素濃度と同じ程度には外向きに成長できない。前記範囲の他方の側では、0.5ppm未満の窒素濃度が外向きの成長に無視できる影響を有することが判明している。
【0028】
他の問題は、より高い窒素濃度が、宝石のために(用途によっては)望ましくない色をもたらす(つまり、無色ではない)傾向があることである。ダイヤモンド10の色の範囲が受け容れ可能であり得る一方で、上述の窒素濃度は、GIA(ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ)のスケールにおけるD、EまたはFのダイヤモンド色を有するダイヤモンドを作り出すことができる。従って、いくつかの実施態様は、約0.5ppm~1.5ppmの窒素濃度を使用できる。
【0029】
いくつかの実施態様において、窒素濃度は成長サイクルを通じて変化し得る。例えば、窒素濃度は第1の期間(例えば最初の24時間)については2ppmまでであってよい。次に、第2の期間(例えば350~720時間)について、窒素濃度を約1ppmに落とすことができる。第1の期間について、より高い初期濃度で開始することによって、プロセスの開始時に結晶の外向きの成長が支援される。これは特に、モザイク手法を使用する場合に有用であり、なぜならシード12(例えば16~32のシード)がより速く一緒になり、シード12がそれらの初めの位置から望ましくなく動く可能性(例えば、それはより遅い成長の間に起きることがある)を下げるからである。より高い窒素環境下(例えば約2ppm~約5ppm)でシード12を成長させることによって、ダイヤモンド10は、シード12にわたって広がる単独のプレートとして成長する。これは、シード12から伝搬し得る欠陥を減少または防ぐことの助けとなる。いくつかの実施態様において、濃度が約2ppm未満に下げられる前に、より高い窒素濃度が数時間存在し得る。従って、いくつかの実施態様において、第1の期間は24時間未満、12時間未満、6時間未満、または約3時間であってよい。
【0030】
図2のプロセスに戻って、段階208で成長チャンバ内での温度が設定される。例示的な実施態様は、成長チャンバ内での温度を約650℃~約950℃の範囲に設定および/または維持する。本発明者らは、650℃未満の温度はダイヤモンド10を大きく成長させるが、ダイヤモンド10の品質が低いことを発見した。他方で、約950℃よりも高い温度は、高品質のダイヤモンドを作り出すが、大きなダイヤモンド10を成長させることが困難である。特に、より高い温度は多結晶材料16にとって優れた成長条件を提供する。しかしながら、先述のとおり、多結晶材料16はダイヤモンド10が外向きに成長することを妨げる。いくつかの実施態様は、高品質だが小さいサイズのダイヤモンドを作り出すために、チャンバを約1100℃~約1200℃に加熱することがある。
【0031】
好ましくは、例示的な実施態様は、成長チャンバ内での温度を約750℃~約850℃の範囲に設定および/または維持する。本発明者らはこの範囲が優れた品質のダイヤモンド10を提供する一方で等方的な外向きの成長を可能にすることを特定した。
【0032】
前記方法は、成長チャンバに圧力を設定する段階210に続く。例示的な実施態様は、成長条件を最適化するためにチャンバ内の圧力を約100Torr~200Torrの範囲で維持する。本発明者らは、前記範囲の上限の圧力が、ダイヤモンド10を速く成長させることを特定した。しかしながら、温度と同様に、多結晶材料16の成長は圧力の増加に比例する。従って、圧力(または温度)が特定の範囲を超えて高められると、ダイヤモンド10の直径/幅は、それが成長するにつれて減少する(例えば
図1A参照)。従って、いくつかの実施態様において、チャンバ内の圧力を約135Torr~約175Torrの範囲で維持することが有利であり得る(例えば温度が本願内に記載される範囲の上限である場合)。
【0033】
前記方法は次に、化学気相堆積を使用して大きなダイヤモンド10を成長させる段階212に続く。ダイヤモンド10は上述の結晶配向、ガスの化学的性質、温度範囲および/または圧力範囲を使用して成長され得る。
【0034】
例示的な実施態様は、(多結晶材料16を除去するために成長を止めることなく)大きなダイヤモンドの連続的な成長を可能にすることが理解されるべきである。従って、例示的な実施態様は、3.5カラットを上回るダイヤモンド10を連続的に成長させることができる。いくつかの実施態様は、約5カラット~6カラットのダイヤモンド10を連続的に(例えば約700~750時間で)成長させることができる。例示的な実施態様は、9カラットまで、またはそれより上の大きなダイヤモンド10を成長させることができる。例えば、いくつかの実施態様は、約10カラット~約20カラットのダイヤモンドを成長させることができる。大きなダイヤモンド10の連続的な成長は、多結晶材料16を除去するために成長プロセスを開始および停止する必要なく、ダイヤモンド10の成長の拡張性を可能にする。従って、例示的な実施態様は、大きなダイヤモンドをより迅速に、且つ従来技術の方法よりも少ない段階で成長させることができる。
【0035】
さらに、チャンバ内部の条件を、ダイヤモンド10の成長の間に変化させることができる。例えば、いくつかの実施態様は、第1の期間のいくらかの間、本願内に記載される温度および圧力範囲の下限でダイヤモンド10を有利に成長させることができる。所定量の成長後、温度および/または圧力を本願内に記載される範囲の上限へと高めることができる。これらの範囲の上限でダイヤモンドがもはや外向きに成長できなくても、この変化は成長において有利に使用され得る。
図1A~1Bに示されるとおり、カットされたダイヤモンド14は一般に上に向けて先細りになっている。従って、例示的な実施態様は、成長速度を増加し、且つバルクのダイヤモンド10の直径/幅を減少できる一方で、特定のサイズのカットされたダイヤモンド14をまだ維持する。例えば、特定のカットされたダイヤモンド14のサイズについて、先細り点は予め定められ得る。バルクのダイヤモンド10が先細り点まで、またはそれを超えて成長した後、外向きに成長することなくダイヤモンド10の直径がより速く成長し始めることができるように、チャンバ内の設定を制御できる。実際に、ダイヤモンドは、所望のカットされたダイヤモンド14にとって不充分なバルク材料を提供するほど十分に内向きに成長しない限り、内向きに成長し始めてもよい。
【0036】
前記方法は次に、ダイヤモンド10をその具体的な用途のためにカットする段階214に続く。例示的な実施態様は、宝飾品のために使用され得る高品質のダイヤモンドを提供する。しかしながら、いくつかの実施態様は、光学用途のために適した、またはシード12として使用されるダイヤモンドを作り出すこともできる。いくつかの実施態様において、複数のシード12が成長の間に一緒に結合すると、(例えばモザイクのパターンにおける)そのシード12が分離され得るようにダイヤモンド10をカットすることができる。
【0037】
従って、それらの技術を使用して、いくつかの実施態様は宝石、基板、産業機器等として使用するためのより大きなダイヤモンドを製造する。例えば、いくつかの実施態様は、順次製造されるバッチから、どんどん大きな基板12を製造できる。例えば、上記の9mmの単結晶の正方形シード12を使用して、より大きな単結晶の正方形基板(例えば13mm)を製造でき、それを引き続き使用して、さらにより大きな単結晶基板12(例えば19mm)を製造できる。この方法を繰り返して、所定の用途のために適切なサイズにされた基板を製造できる。正方形の基板12を使用する代わりに、いくつかの実施態様は正方形ではない矩形状の基板12、丸い基板12、または他の形状(例えば不規則な形状)を有する基板12を使用することに留意されたい。
【0038】
例示的な実施態様は、好ましくはプラズマ支援CVD法を、上記の望ましいプロセス条件で使用して、単結晶ダイヤモンドを製造する。
図5はこの方法を使用して成長されたダイヤモンド10の側面図を示す。ダイヤモンド10は基板12と一致する比較的矩形の底部を有し、先細りで外向きに拡張する。例えば、先細りは約45度であることができ、そこで上向きに1単位成長し、且つ外向きに1単位成長する。
【0039】
様々な実施態様がホモエピタキシャル用途(例えばダイヤモンドシード上のダイヤモンド層の成長)に適用される一方で、他の実施態様はヘテロエピタキシャル用途(例えばダイヤモンドではないシード上のダイヤモンド層の成長)に適用される。そのような用途は、基板端付近での多結晶材料の形成を軽減し得る。上記の議論は大きなダイヤモンドの成長に関する一方で、いくつかの実施態様においては、ダイヤモンドではない材料も本願内に記載される条件下で同様に成長され得ることも理解されるべきである。
【0040】
上記の議論は本発明の様々な例示的な実施態様を開示するが、当業者は、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく本発明の利点のいくつかを達成する様々な変更をなし得ることは明らかであるはずである。
【国際調査報告】