(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】インテリジェント回路遮断
(51)【国際特許分類】
H02H 3/08 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
H02H3/08 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544660
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021014320
(87)【国際公開番号】W WO2021150684
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522291740
【氏名又は名称】アンバー セミコンダクター,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】テレファス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ケシー,タール
(72)【発明者】
【氏名】ケシー,クリス
【テーマコード(参考)】
5G004
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004BA03
5G004DA02
5G004DA04
(57)【要約】
回路遮断装置は、ラインホット端子と、ライン中性端子と、負荷ホット端子と、負荷中性端子と、固体スイッチと、内部短絡スイッチ回路と、制御回路と、を含む。固体スイッチは、ラインホットと負荷ホット端子との間の電気経路において接続されている。内部短絡スイッチ回路は、ラインホットとライン中性端子との間に直列に接続された内部短絡スイッチおよびシャント抵抗器を備える。制御回路は、故障状態の発生を検出するように構成されており、故障状態の発生を検出することに応答して、制御回路は、固体スイッチをスイッチオフ状態に駆動することと、内部短絡スイッチを作動させて、ラインホット端子とライン中性端子との間に内部短絡経路を生成することと、短絡電流が回路遮断装置のラインホット端子とライン中性端子との間のシャント抵抗器を通って流れることを可能にすることと、を行うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断装置であって、
ラインホット端子、ライン中性端子、負荷ホット端子、および負荷中性端子と、
前記ラインホット端子と前記負荷ホット端子との間の電気経路において直列に接続された固体スイッチと、
第1のノードと第2のノードとの間に直列に接続された内部短絡スイッチおよびシャント抵抗器を備える内部短絡スイッチ回路であって、前記第1のノードが、前記ラインホット端子に結合され、前記第2のノードが、前記ライン中性端子に結合されている、内部短絡スイッチ回路と、
前記固体スイッチおよび前記内部短絡スイッチ回路に結合された制御回路と、を備え、
前記制御回路が、故障状態の発生を検出するように構成されており、
前記制御回路が、前記故障状態の発生を検出することに応答して、前記固体スイッチをスイッチオフ状態に駆動するように構成されており、
前記制御回路が、前記故障状態の発生を検出することに応答して前記内部短絡スイッチを作動させ、それによって、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に内部短絡経路を生成して、短絡電流が前記回路遮断装置の前記ラインホット端子と前記ライン中性端子との間の前記シャント抵抗器を通って流れることを可能にするように構成されている、回路遮断装置。
【請求項2】
前記内部短絡スイッチが、第1の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)スイッチおよび第2のMOSFETスイッチを備える双方向固体スイッチを備え、前記第1および第2のMOSFETスイッチが、第3のノードに共通に結合されているゲート端子と、第4のノードに共通に結合されているソース端子と、を備え、前記第1のMOSFETスイッチが、前記第1のノードに結合されているドレイン端子を備え、前記第2のMOSFETスイッチが、前記第2のノードに結合されているドレイン端子を備える、請求項1に記載の回路遮断装置。
【請求項3】
前記シャント抵抗器が、前記第2のMOSFETスイッチの前記ドレイン端子と前記第2のノードとの間に接続されている、請求項2に記載の回路遮断装置。
【請求項4】
前記内部短絡スイッチ回路が、前記ラインホットおよびライン中性端子に印加された交流(AC)電源から引き出された電流を使用して、調節された直流(DC)電圧を生じさせて、前記調節されたDC電圧を、前記固体双方向スイッチの前記第1および第2のMOSFETスイッチの前記ゲート端子に印加するように構成されている、自己バイアス回路を備える、請求項2に記載の回路遮断装置。
【請求項5】
前記自己バイアス回路が、前記調節されたDC電圧を生成するように構成されている電圧クランプ回路を備え、前記電圧クランプ回路が、第5のノードと前記第4のノードとの間に並列に接続されたコンデンサおよびツェナーダイオードを備える、請求項4に記載の回路遮断装置。
【請求項6】
前記内部短絡スイッチ回路が、前記第3のノードと前記第4のノードとの間に結合された作動スイッチを備える、請求項2に記載の回路遮断装置。
【請求項7】
前記制御回路が、前記作動スイッチを、(i)それによって、前記第1および第2のMOSFETスイッチの前記ゲートおよびソース端子をシャントして、前記内部短絡スイッチをスイッチオフ状態にする、スイッチオン状態、および(ii)それによって、前記内部短絡スイッチをスイッチオン状態にすることを可能にする、スイッチオフ状態、のうちの1つに駆動するように構成されている、請求項6に記載の回路遮断装置。
【請求項8】
前記シャント抵抗器が、前記回路遮断装置の前記ラインホット端子と前記ライン中性端子との間を流れる短絡電流の量を回路ブレーカの電流定格の約3倍以下に制限する抵抗値を含む、請求項1に記載の回路遮断装置。
【請求項9】
前記制御回路が、(i)前記ラインホット端子と前記負荷ホット端子との間の前記電気経路を流れる負荷電流の電流波形を感知することと、(ii)前記感知した電流波形に基づいて、短絡故障状態の発生を検出することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の回路遮断装置。
【請求項10】
前記制御回路が、(i)前記ラインホット端子と前記負荷ホット端子との間の前記電気経路の電圧波形を感知することと、(ii)前記感知した電圧波形に基づいて、アーク故障状態の発生を検出することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の回路遮断装置。
【請求項11】
請求項1に記載の回路遮断装置を備える、電源コンセント。
【請求項12】
システムであって、
ライン入力端子および負荷出力端子を備える回路ブレーカであって、前記回路ブレーカの前記ライン入力端子が、交流(AC)電源に結合されている、回路ブレーカと、
前記回路ブレーカの前記負荷出力端子に結合された回路遮断装置と、を備え、前記回路遮断装置が、
ラインホット端子、ライン中性端子、負荷ホット端子、および負荷中性端子と、
前記ラインホット端子と前記負荷ホット端子との間の電気経路において直列に接続された固体スイッチと、
第1のノードと第2のノードとの間に直列に接続された内部短絡スイッチおよびシャント抵抗器を備える内部短絡スイッチ回路であって、前記第1のノードが、前記ラインホット端子に結合され、前記第2のノードが、前記ライン中性端子に結合されている、内部短絡スイッチ回路と、
前記固体スイッチおよび前記内部短絡スイッチ回路に結合された制御回路と、を備え、
前記制御回路が、故障状態の発生を検出するように構成されており、
前記制御回路が、前記故障状態の発生を検出することに応答して、前記固体スイッチをスイッチオフ状態に駆動するように構成されており、
前記制御回路が、前記故障状態の発生を検出することに応答して前記内部短絡スイッチを作動させ、それによって、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に内部短絡経路を生成して、短絡電流が前記回路遮断装置の前記ラインホット端子と前記ライン中性端子との間の前記シャント抵抗器を通って流れることを可能にするように構成されており、前記回路遮断装置の前記ラインホット端子と前記ライン中性端子との間の前記短絡電流の流れが、前記回路ブレーカをトリップするのに十分である、システム。
【請求項13】
前記回路ブレーカが、電磁アクチュエータ要素および熱アクチュエータ要素のうちの少なくとも1つを備える電気機械回路ブレーカを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記シャント抵抗器が、前記回路遮断装置の前記ラインホット端子と前記ライン中性端子との間を流れる短絡電流の量を前記回路ブレーカの電流定格の約3倍以下に制限する抵抗値を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記回路遮断装置の前記内部短絡スイッチが、第1の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)スイッチおよび第2のMOSFETスイッチを備える双方向固体スイッチを備え、前記第1および第2のMOSFETスイッチが、第3のノードに共通に結合されているゲート端子と、第4のノードに共通に結合されているソース端子と、を備え、前記第1のMOSFETスイッチが、前記第1のノードに結合されているドレイン端子を備え、前記第2のMOSFETスイッチが、前記第2のノードに結合されているドレイン端子を備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記回路遮断装置の前記内部短絡スイッチ回路が、前記AC電源から引き出された電流を使用して、調節された直流(DC)電圧を生じさせて、前記調節されたDC電圧を、前記固体双方向スイッチの前記第1および第2のMOSFETスイッチの前記ゲート端子に印加するように構成されている、自己バイアス回路を備え、
前記自己バイアス回路が、前記調節されたDC電圧を生成するように構成されている電圧クランプ回路を備え、前記電圧クランプ回路が、第5のノードと前記第4のノードとの間に並列に接続されたコンデンサおよびツェナーダイオードを備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記内部短絡スイッチ回路が、前記第3のノードと前記第4のノードとの間に結合された作動スイッチを備え
前記制御回路が、前記作動スイッチを、(i)それによって、前記第1および第2のMOSFETスイッチの前記ゲートおよびソース端子をシャントして、前記内部短絡スイッチをスイッチオフ状態にする、スイッチオン状態、および(ii)それによって、前記内部短絡スイッチをスイッチオン状態にすることを可能にする、スイッチオフ状態、のうちの1つに駆動するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
方法であって、
回路遮断装置によって、回路ブレーカによって保護されている分岐回路上の故障状態の発生を検出することと、
前記故障状態の前記発生を検出することに応答して、前記回路遮断装置によって、前記分岐回路上の負荷電流の流れを遮断することと、
前記故障状態の前記発生を検出することに応答して、前記回路遮断装置によって、短絡電流が前記回路遮断装置内のシャント抵抗器を通って流れることを可能にするために短絡経路を生成することであって、前記回路遮断装置内の前記短絡電流の前記流れが、前記回路ブレーカをトリップさせて、交流(AC)電源を前記分岐回路から接続解除させる、生成することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記シャント抵抗器が、前記短絡電流の大きさを前記回路ブレーカの電流定格の約3倍以下に制限する抵抗値を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記短絡経路を生成することが、前記故障状態の前記発生を検出することに応答して、前記回路遮断装置によって、内部短絡スイッチを作動させ、それによって、前記回路遮断装置のラインホット端子とライン中性端子との間に内部短絡経路を生成し、前記短絡電流が前記回路遮断装置の前記ラインホット端子と前記ライン中性端子との間の前記シャント抵抗器を通って流れることを可能にして、前記回路ブレーカをトリップさせることを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月21日に出願された米国仮出願第62/964,078号の利益を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、電気回路をアーク故障状態などの故障状態から保護するための回路遮断技術に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、電気回路遮断器は、分岐回路導体および電気負荷が、例えば電流過負荷状態および故障状態に晒されることから保護するために、所与のビルまたは住宅構造を有する電気分配システムにおいて利用される構成要素である。電流過負荷状態は、その正常な全負荷定格を超える機器の動作またはその電流容量を超える分岐回路の動作として定義され、過負荷が十分な期間にわたって持続した場合、損傷または危険な過熱を生じさせる。故障状態は、故障のインピーダンスに応じて、典型的には過負荷よりもはるかに高い過電流状態をもたらす、意図しないまたは偶発的な負荷状態を含む。最大過電流状態をもたらす故障は、短絡または「ボルテッド故障」と称される。
【0004】
アーク故障回路遮断(AFCI)装置が挙げられるが、これに限定されない、様々なタイプの電気回路遮断装置が存在する。AFCI装置は、潜在的に危険なアーク故障によって電気回路に生じ得る電気火災を防止するように設計されている。アーク故障は、電気回路において生じる意図しない電気アーク放電状態である。アーク放電は、周囲の材料を着火させて火災を生じさせる、高強度の熱を発生させ得る。AFCI装置は、電気回路のアーク放電状態を検出し、電気回路を断続して、アーク放電を停止させるように構成されている。AFCI装置は、電気装置の正常動作(例えば、接点またはスイッチの開閉、ブラシを有するモータの動作、空調機、冷蔵庫、ツールなどの家庭機器の動作、など)の結果として生成される無害な電気アークと、直列アーク故障または並列アーク故障を生じさせ得る、例えば、ワイヤ絶縁の損傷、接点間にアーク放電を生じさせる不完全な接続、電気コード内の導体の切断、などによって生じる潜在的に危険な電気アークと、を区別するように設計されている。
【0005】
特定の一例として、摩耗した接点を有する電源コンセント(例えば、アウトレット)は、電気火災につながり得る電気アーク放電に共通する原因である。経時的に、電源コンセントの接触ばねは、電気プラグの繰り返しの挿入によって摩耗し、接触ばねの張力を失わせ、コンセント接点と電気プラグの端子との間の接続を劣化させる。この接点接続の劣化は、電源コンセント内に電気アークの生成をもたらし、経時的に、コンセント接点の点食、溶融、およびスパッタリングを生じさせ、これは、危険な電気火災を誘発し得る。
【0006】
従来の回路ブレーカは、典型的には、電流過負荷および短絡状態から保護するように構成されており、不規則な、およびしばしば低減された電流を生じる電気アーク放電状態からは保護しない。実際には、分岐回路内のアーク故障状態は、典型的には、低減された電流および電圧をもたらし、これは、従来の回路ブレーカが保護するように構成されている短絡状態または過負荷状態の特性ではなく、またそれを示すものではない。例えば、平行したアーク故障の場合のRMS電流値は、大幅にボルテッド短絡故障のRMS電流値よりもかなり小さくなる。したがって、AFCI保護のない従来の典型的な15アンペア回路ブレーカは、潜在的に着火する前に、アーク故障を解決することができなくなる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、アーク故障状態などの故障状態から電気回路を保護するための回路遮断装置および方法を含む。例えば、例示的な一実施形態では、回路遮断装置は、ラインホット端子と、ライン中性端子と、負荷ホット端子と、負荷中性端子と、固体スイッチと、内部短絡スイッチ回路と、制御回路と、を備える。固体スイッチは、ラインホット端子と負荷ホット端子との間の電気経路において直列に接続されている。内部短絡スイッチ回路は、第1のノードと第2のノードとの間に直列に接続された内部短絡スイッチおよびシャント抵抗器を備え、第1のノードは、ラインホット端子に結合され、第2のノードは、ライン中性端子に結合されている。制御回路は、固体スイッチおよび内部短絡スイッチ回路に結合されている。制御回路は、故障状態の発生を検出し、故障状態の発生を検出することに応答して、固体スイッチをスイッチオフ状態に駆動するように構成されている。制御回路は、故障状態の発生を検出することに応答して内部短絡スイッチを作動させ、それによって、第1のノードと第2のノードとの間に内部短絡経路を生成して、短絡電流が回路遮断装置のラインホット端子とライン中性端子との間のシャント抵抗器を通って流れることを可能にするようにさらに構成されている。
【0008】
別の例示的な実施形態は、回路ブレーカおよび回路遮断装置を備えるシステムを含む。回路ブレーカは、ライン入力端子と、負荷出力端子と、を備え、回路ブレーカのライン入力端子は、交流(AC)電源に結合されている。回路遮断装置は、回路ブレーカの負荷出力端子に結合されている。回路遮断装置は、ラインホット端子と、ライン中性端子と、負荷ホット端子と、負荷中性端子と、固体スイッチと、内部短絡スイッチ回路と、制御回路と、を備える。固体スイッチは、ラインホット端子と負荷ホット端子との間の電気経路において直列に接続される。内部短絡スイッチ回路は、第1のノードと第2のノードとの間に直列に接続された内部短絡スイッチおよびシャント抵抗器を備え、第1のノードは、ラインホット端子に結合され、第2のノードは、ライン中性端子に結合されている。制御回路は、固体スイッチおよび内部短絡スイッチ回路に結合されている。制御回路は、故障状態の発生を検出し、故障状態の発生を検出することに応答して、固体スイッチをスイッチオフ状態に駆動するように構成されている。制御回路は、故障状態の発生を検出することに応答して内部短絡スイッチを作動させ、それによって、第1のノードと第2のノードとの間に内部短絡経路を生成して、短絡電流が回路遮断装置のラインホット端子とライン中性端子との間のシャント抵抗器を通って流れることを可能にするようにさらに構成されており、回路遮断装置のラインホット端子とライン中性端子との間の短絡電流の流れは、回路ブレーカをトリップするのに十分である。
【0009】
別の例示的な実施形態は、回路遮断装置によって実施される方法を含む。本方法は、回路ブレーカによって保護されている分岐回路上の故障状態の発生を検出することと、故障状態の発生を検出することに応答して、分岐回路上の負荷電流の流れを遮断することと、を含む。本方法は、故障状態の発生を検出することに応答して、短絡電流が回路遮断装置内のシャント抵抗器を通って流れることを可能にするために短絡経路を生成することをさらに含み、回路遮断装置内の短絡電流の流れは、回路ブレーカをトリップさせて、分岐回路からAC電源を接続解除させる。
【0010】
他の実施形態は、添付図面と併せて読まれる以下の「発明を実施するための形態」に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の例示的な実施形態によるインテリジェント回路遮断装置を備える電気システムを概略的に例示する。
【
図2】アーク故障状態を伴わない正常動作状態の下での商用電源の例示的なAC波形を概略的に例示する。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、回路遮断を提供するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、アーク故障状態などの故障状態から電気回路を保護するための回路遮断装置および方法に関して、本開示の実施形態をさらに詳細に説明する。「例示的」という用語は、本明細書で使用されるとき、「一例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味する。「例示的」として本明細書で説明される任意の実施形態または設計は、他の実施形態または設計よりも好ましいものまたは有利なものと解釈されるべきではない。
【0013】
図1は、本開示の例示的な実施形態によるインテリジェント回路遮断装置を備える電気システムを概略的に例示する。具体的には、
図1は、商用電源10(本明細書では、AC幹線10と称される)と、回路ブレーカ15と、インテリジェント回路遮断装置100および負荷20を備える分岐回路と、を備える電気システム50を概略的に例示する。AC幹線10は、ホット相11(「ラインホット」11と称される)と、中性相12(「ライン中性」12と称される)と、を備える。回路ブレーカ15は、ライン入力端子15Aと、負荷出力端子15Bと、を備える。インテリジェント回路遮断装置100は、ラインホット端子100A(または第1の入力端子)と、ライン中性端子100B(または第2の入力端子)と、負荷ホット端子100C(または第1の出力端子)と、負荷中性端子100D(または第2の出力端子)と、接地端子100Eと、を備える。回路ブレーカ15のライン入力端子15Aは、AC幹線10のラインホット11に結合され、回路ブレーカ15の負荷出力端子15Bは、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aに結合されている。インテリジェント回路遮断装置100のライン中性端子100Bは、AC幹線10のライン中性12に結合されている。インテリジェント回路遮断装置100の負荷ホット端子100Cは、負荷20の負荷ホットライン21に結合され、インテリジェント回路遮断装置100の負荷中性端子100Dは、負荷20の負荷中性ライン22に結合されている。
【0014】
図1に示されるようないくつかの実施形態では、インテリジェント回路遮断装置100は、回路ブレーカ15によって保護される分岐回路に結合される装置(例えば、第1の分岐電源コンセント)である。いくつかの実施形態では、インテリジェント回路遮断装置100は、回路ブレーカ15の下流の分岐回路上の第1の装置である。これに関して、負荷20は、一般的に、(i)インテリジェント回路遮断装置100の負荷側に直接接続された1つ以上の電気装置、(ii)インテリジェント回路遮断装置100の負荷側に結合されている1つ以上の分岐電源コンセント(例えば、標準分岐アウトレット)、(iii)分岐電源コンセントのうちの1つ以上に接続される1つ以上の電気装置、または(iv)、(i)、(ii)、および(iii)の組み合わせ、を表すことを意味する。
【0015】
図1にさらに例示されるように、AC幹線10のライン中性12は、接地14(GND)に接合されている。接地14は、典型的には、回路ブレーカ分配パネルの接地バーに接続され、接地バーは、回路ブレーカ分配パネルの中性のバーに接合されている。接地接続16は、回路ブレーカ分配パネルの接地バーからインテリジェント回路遮断装置100の接地端子100Eまで作製される。類似する接地接続が、分岐回路上の他のコンセントまたは装置(例えば、負荷20)から回路ブレーカ分配パネルの接地バーに行われる。接地接続16は、インテリジェント回路遮断装置100または負荷20内で地絡状態が発生した場合に、地絡リターン電流を流すための代替の低抵抗経路を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、回路ブレーカ15は、過電流および短絡故障状態に応答して「トリップする」ように構成されている。上述したように、過電流状態は、機器がその正常な全負荷定格を超えて動作したとき、または分岐回路がその電流容量を超えて動作したときに生じ、過電流状態が十分な期間にわたって持続した場合、損傷または危険な過熱を生じさせる。短絡故障状態は、故障のインピーダンスに応じて、過電流状態よりもはるかに高い電流過負荷をもたらす、意図しないまたは偶発的な負荷状態を含む。上述したように、最大過電流状態を生じさせる故障は、短絡または「ボルテッド故障」と称される。いくつかの実施形態では、回路ブレーカ15は、AFCI保護装置ではない。
【0017】
いくつかの実施形態では、回路ブレーカ15は、機械的ACスイッチ(例えば、空隙スイッチ)、機械的アクチュエータ機構、電磁アクチュエータ要素(例えば、ソレノイド)、熱アクチュエータ要素(例えば、バイメタル要素)、および手動スイッチなどの要素を備える、電気機械回路ブレーカを備える。いくつかの実施形態では、機械的空隙スイッチは、機械的アクチュエータ機構(例えば、ばね要素を有するラッチ機構)の動作によって物理的に閉じられるか、または分離される、第1および第2の接点を備える。具体的には、機械的アクチュエータ機構は、手動スイッチの「オン」位置への手動作動に応答して、第1および第2の接点を一緒に物理的に閉じ、それによって、電流が、回路ブレーカ15のライン入力端子15Aと負荷出力端子15Bとの間の電気経路を流れることを可能にするように構成されている。加えて、機械的アクチュエータ機構は、手動スイッチの「オフ」位置への手動作動に応答して手動で、または短絡状態もしくは長期間の過電流状態の発生に応答して自動で、機械的ACスイッチの第1および第2の接点を物理的に分離する(すなわち、回路ブレーカ15をトリップする)ように構成されている。回路ブレーカ15が、手動または自動でトリップされたときに、機械的ACスイッチの第1および第2の接点の間に空隙が作成される。
【0018】
具体的には、電磁アクチュエータ要素(例えば、ソレノイド)は、例えば短絡イベントによって生成される電流の大きなサージに応答して磁気的に作動するように構成されており、電磁要素の作動は、アクチュエータ機構の機械的作動に、ACスイッチの第1および第2の接点を分離させ、それによって、回路ブレーカ15をトリップさせる。加えて、熱アクチュエータ要素(例えば、バイメタル要素)は、長期間の過度の過電流状態に応答して熱的に作動するように構成されており、熱アクチュエータ要素の作動は、アクチュエータ機構の機械的作動に、ACスイッチの第1および第2の接点を分離させ、それによって、回路ブレーカ15をトリップさせる。これに関して、回路ブレーカ15の電磁要素は、電流(短絡)の大きなサージに即座に応答し、一方で、熱アクチュエータ要素は、極端ではないがより長期の過電流状態に応答する。回路ブレーカ15は、トリップされると、手動スイッチを使用して手動でリセット(例えば、手動のスイッチを「オフ」位置に、次いで「オン」位置にトグル)しなければならない。
【0019】
いくつかの実施形態では、インテリジェント回路遮断装置100は、ラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の電気経路において直列に接続されている固体スイッチ101/102と、制御回路110と、内部短絡スイッチ回路120と、を備える。内部短絡スイッチ回路120は、第1のノードN1と第2のノードN2との間に直列に接続された、内部短絡スイッチ121/122および短絡電流制限抵抗器R4(代替的に、本明細書ではシャント抵抗器R4と称される)を備える。第1のノードN1は、ラインホット端子100Aに結合され、第2のノードN2は、ライン中性端子100Bに結合されている。制御回路110は、固体スイッチ101/102および内部短絡スイッチ回路120に結合されている。下でさらに詳細に説明されるように、制御回路110は、(i)故障状態の発生を検出することと、(ii)故障状態の発生を検出することに応答して、固体スイッチ101/102をスイッチオフ状態に駆動することと、(iii)故障状態の発生を検出することに応答して、内部短絡スイッチ121/122を作動させることと、を行い、それによって、第1のノードN1と第2のノードN2との間に内部短絡経路を生成して、短絡電流が回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間のシャント抵抗器R4の中を通って流れることを可能にし、それによって、回路ブレーカ15をトリップさせて、分岐回路からAC幹線10を接続解除させるように構成されている。
【0020】
固体スイッチ101/102は、双方向固体スイッチを形成する、第1のスイッチ101および第2のスイッチ102を備える。いくつかの実施形態では、電流センサ105は、第1のスイッチ101と第2のスイッチ102との間に直列に接続される。いくつかの実施形態では、第1のスイッチ101および第2のスイッチ102は、各々が金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)スイッチ(例えば、パワーMOSFETスイッチ)を備える。いくつかの実施形態では、第1のスイッチ101および第2のスイッチ102は、N型強化MOSFET装置を備える。第1のスイッチ101および第2のスイッチ102は、裏面対裏面で直列に接続され、電流センサ105を通して結合されているソース(S)端子と、制御回路110に接続されている共通に接続されたゲート(G)端子と、を有する。第1のスイッチ101は、ラインホット端子100Aに結合されているドレイン端子を備え、第2のスイッチ102は、負荷ホット端子100Cに結合されているドレイン端子を備える。
【0021】
図1にさらに示されるように、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102は、それぞれが固有のボディダイオード101-1および102-1を備え、各ボディダイオードは、MOSFETスイッチのNドープドレイン領域に対するP型基板ボディ間のPN接合を表す。ボディダイオード101-1および102-1は、MOSFETスイッチ101および102の固有の要素であり(すなわち、個別要素でない)、したがって、破線の接続で示されている。MOSFETスイッチ101および102の固有のボディ-ソースダイオードは、ソース領域と基板ボディとの間の接続によって短絡する(例えば、N+ソースおよびPドープボディの接合部が、ソースの金属化を通して短絡する)ので、示されていないことに留意されたい。
【0022】
固体スイッチ101/102は、(i)固体スイッチ101/102がスイッチオン状態であるときに、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の負荷電流の双方向流れを許容することと、(ii)固体スイッチ101/102がスイッチオフ状態であるときに、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の負荷電流の双方向流れを阻止することと、を行うように構成されている。
【0023】
制御回路110は、電流センサ105と、回路ブレーカアクチュエータ回路111、スイッチ制御回路112、電流制限検出回路113、デジタル信号プロセッサ114、電力測定マイクロプロセッサ115、AC-DCコンバータ回路116、電圧センサ回路117、および無線制御回路118を実装している1つ以上の集積回路ブロックと、を備え、その機能は、下でさらに詳細に説明される。上述したように、内部短絡スイッチ回路120は、第1のノードN1と第2のノードN2との間に直列に接続された内部短絡スイッチ121/122およびシャント抵抗器R4を備える。
図1にさらに示されるように、内部短絡スイッチ回路120は、スイッチバイアス回路123(代替的に、本明細書では、自己バイアス回路123と称される)と、作動スイッチ124と、を備える。スイッチバイアス回路123は、第1の抵抗器R1および第2の抵抗器R2と、第1のダイオードD1および第2のダイオードD2と、第3の抵抗器R3と、コンデンサC1と、ツェナーダイオードZDと、を備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、内部短絡スイッチ121/122は、それぞれが固有のボディダイオード121-1および122-1を備える、第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122を備える、双方向固体スイッチを備える。第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122は、第3のノードN3に共通に結合されているゲート(G)端子と、第4のノードN4に共通に結合されているソース(S)端子と、を備え、第4のノードN4は、内部短絡スイッチ回路120の仮想接地ノードを備える。第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122のゲート(G)端子は、第3のノードN3を通してスイッチバイアス回路123に接続されている。第1のMOSFETスイッチ121は、第1のノードN1に結合されているドレイン(D)端子を備え、第2のMOSFETスイッチ122は、シャント抵抗器R4を通して第2のノードN2に結合されているドレイン(D)端子を備える。
図1に示されるようないくつかの実施形態では、シャント抵抗器R4は、第2のMOSFETスイッチ122のドレイン端子と第2のノードN2との間に接続されている。他の実施形態では、シャント抵抗器R4は、第1のMOSFETスイッチ121のドレイン端子と第1のノードN1との間に接続することができる。
【0025】
図1にさらに示されるように、作動スイッチ124は、第3のノードN3と第4のノードN4との間に結合されている。第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122は、本質的に、作動スイッチ124の動作によって作動/停止される内部短絡スイッチとして動作する。いくつかの実施形態では、作動スイッチ124は、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)(例えば、NPN BJT)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を備え、これは、回路ブレーカアクチュエータ回路111に結合されたベース(B)端子と、(第4のノードN4で)第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122の共通に接続されたソース(S)端子に結合されたエミッタ(E)端子と、(第3のノードN3で)第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122の共通に接続されたゲート(G)端子に接続されたコレクタ(C)端子と、を有する。
【0026】
さらに、スイッチバイアス回路123は、自己バイアス回路を備え、これは、回路遮断装置100のラインホット端子100Aおよびライン中性端子100Bに印加されたAC電源から引き出された電流を使用して、調節された直流(DC)電圧を生じさせて、調節されたDC電圧を、抵抗器R3を通して、内部短絡スイッチの第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122のゲート端子に印加するように構成されている。自己バイアス回路は、調節されたDC電圧を生成するように構成されている電圧クランプ回路を備え、電圧クランプ回路は、第5のノードN5と第4のノードN4との間に並列に接続されているコンデンサC1およびツェナーダイオードZDを備える。加えて、自己バイアス回路は、第1のノードN1と第5のノードN5との間に直列に接続された第1の抵抗R1および第1のダイオードD1と、第2のノードN2と第5のノードN5との間に直列に接続された第2の抵抗器R2および第2のダイオードD2と、を備える。内部短絡スイッチ回路120の動作は、下でさらに詳細に論じられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、制御回路110は、スイッチ制御回路112の動作によって双方向固体スイッチ101/102の作動および停止を制御する。いくつかの実施形態では、スイッチ制御回路112は、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102のゲート端子に印加されるゲート制御信号を生成して、双方向固体スイッチ101/102をスイッチオン状態またはスイッチオフ状態にするように構成されている。具体的には、インテリジェント回路遮断装置100の通常動作中に、スイッチ制御回路112は、ゲート制御信号を第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102のゲート端子に印加して、双方向固体スイッチ101/102をスイッチオン状態にし、これは、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間のAC負荷電流の双方向流れを可能にする。
【0028】
その一方で、制御回路110の所与の回路ブロックが故障状態または異常動作状態(例えば、直列アーク放電、並列アーク放電、短絡状態、過電流状態、地絡状態、異常負荷電力プロファイル、など)の発生を検出したときに、制御回路110は、故障検出制御信号を生成する。故障検出制御信号に応答して、スイッチ制御回路112は、ゲート制御信号を第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102のゲート端子に印加して、双方向固体スイッチ101/102をスイッチオフ状態にし、それによって、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間のAC負荷電流の双方向流れを遮断(すなわち、阻止)し、したがって、負荷20への負荷電流の流れを遮断する。
【0029】
制御回路110は、インテリジェント回路遮断装置100内の種々のノードでの電圧(例えば、VL、VN、など)を監視し、ならびにラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間でインテリジェント回路遮断装置100を通って電気経路を流れる負荷電流を監視し、監視した電流および電圧を利用して、負荷の電力使用およびプロファイルの測定、故障状態の検出などの機能を実行するように構成されている。例えば、負荷電流センサ105は、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間のホットライン経路の負荷電流の流れを感知するように構成されている。負荷電流センサ105は、電流感知抵抗器、電流増幅器、ホール効果電流センサ、などが挙げられるが、これらに限定されない、任意の適切なタイプの電流感知要素を使用して実装することができる。
【0030】
負荷電流センサ105の出力は、検出された負荷電流の大きさおよび/またはAC波形特性に少なくとも部分的に基づいて、制御回路110の種々の回路ブロックに入力されて、故障状態の発生を検出し、負荷20の異常電力プロファイルを検出する。電流センサ105の出力は、実装される電流センサ105のタイプに応じて変化する。例えば、いくつかの実施形態では、電流センサ105の出力は、負荷電流が感知抵抗器を通って流れる結果として感知抵抗器の両端に生成される電圧であり得る。いくつかの実施形態では、電流センサ105の出力は、電流センサ105が過電流状態を検出することなどに応答して生成される故障検出信号であり得る。他の実施形態では、第2の電流センサを、インテリジェント回路遮断装置100のライン中性端子100Bと負荷中性端子100Dとの間の中性ライン経路内の負荷電流の流れを感知するために実装することができる。
【0031】
電圧センサ回路117は、インテリジェント回路遮断装置100内の異なるノードでの電圧レベルを感知するように構成されている。例えば、
図1の例示的な実施形態では、電圧センサ回路117は、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の電気経路に沿った地点でホットライン電圧VLを感知するように構成されている。加えて、電圧センサ回路117は、インテリジェント回路遮断装置100のライン中性端子100Bと負荷中性端子100Dとの間の電気経路に沿った地点での中性ライン電圧VNを感知するように構成されている。
【0032】
電圧センサ回路117は、ゼロ交差検出回路が挙げられるが、これに限定されない、任意の適切なタイプの電圧感知回路を使用して実装することができる。ゼロ交差検出器は、入力としてAC波形を受信し、入力AC波形をゼロ基準電圧(例えば、ライン中性電圧)と比較して、AC波形がゼロ基準電圧と交差するときに一致するAC波形の正および負からの移行を検出するように構成されている。いくつかの実施形態では、ゼロ交差検出器回路は、AC電圧波形の各ゼロ交差検出に応じて出力される、ロジック「1」とロジック「0」との間を移行する方形波出力を生成するように構成されている。他の実施形態では、ゼロ交差検出器回路は、RC調節可能な持続期間を有する短期パルス(約3us)を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、電圧センサ回路117は、感知した電圧VL、VNなどを、入力電圧VL、VNなどの電圧レベルの一部分であるより低い電圧レベルおよび出力電圧に分割するように構成されている、電圧分割回路を備え、より低い電圧レベルは、制御回路110の種々の回路ブロック(例えば、デジタル信号プロセッサ114、電力測定マイクロプロセッサ115、など)に入力されて、故障検出機能および電力測定機能を実行する。
【0033】
電流制限検出回路113は、電流センサ105によって検出されるAC電流波形の大きさ(例えば、RMS値、ピークの電流、など)に基づいて、過電流および短絡状態などの故障状態を検出するように構成されている。例えば、いくつかの実施形態では、電流センサ105は、感知抵抗器を通って流れる負荷電流の量に基づいて「検出電圧」を生成する、感知抵抗器を備え、電流制限検出回路113は、検出電圧を測定して、検出電圧が短絡故障状態を表す所定の値を超えたかどうかを判定するように構成されている。故障状態の検出に応答して、電流制限検出回路113は、故障検出制御信号をスイッチ制御回路112に出力し、これは、スイッチ制御回路112に、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102を停止させる。
【0034】
電力測定マイクロプロセッサ115は、感知電流および電圧(例えば、電流センサ105および電圧センサ回路117の出力)を利用して、負荷20に送達される電力量を判定するように構成されている。いくつかの実施形態では、電力測定マイクロプロセッサ115は、電力ラインシステム内の電力およびエネルギーを測定し、瞬間的な電圧および電流波形を処理して、電圧および電流、有効、無効、ならびに見かけの電力およびエネルギーのRMS値を計算するように特に設計されている、特定用途向け集積回路(ASIC)を備える。他の実施形態では、電力測定マイクロプロセッサ115は、所望の電力測定機能を実装している「市販の」特定用途向け標準製品(ASSP)チップを備える。
【0035】
いくつかの実施形態では、電力測定マイクロプロセッサ115は、負荷20の電力使用を測定し、履歴解析のための時間にわたってそのような電力使用情報を維持するように構成されている。いくつかの実施形態では、電力測定マイクロプロセッサ115は、異常負荷電力使用または異常電力プロファイルを検出するように構成されている。例えば、電力測定マイクロプロセッサ115は、火災を生じさせ得る高い抵抗接続(グローイング接続として知られる)を表す電力プロファイル、および例えば高ライン電圧または低ライン電圧などと関連付けられた他の異常電力プロファイルを検出するように構成することができる。異常負荷電力使用または異常電力プロファイルの存在の検出に応答して、電力測定マイクロプロセッサ115は、故障検出制御信号をスイッチ制御回路112に出力するように構成することができ、これは、スイッチ制御回路112に、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102を停止させる。
【0036】
いくつかの実施形態では、デジタル信号プロセッサ114は、アーク故障状態の発生を検出するように構成されている。より具体的には、いくつかの実施形態では、デジタル信号プロセッサ114は、感知した電圧波形および/または感知した電流波形をデジタルサンプリングして、アーク放電波形を表すサンプリングした電圧および電流波形の特定の特性を識別する、アーク信号分析器として構成されている。例えば、デジタル信号プロセッサ114は、感知した電圧および/または電流波形をわずかな増分(例えば、マイクロ秒)でサンプリングし、サンプリングした波形の特性を既知のアーク放電波形の特性と比較して、アーク放電状態が存在するかどうかを判定するように構成することができ、サンプリングした波形の振幅または時間周期における特定の異常特性は、アーク放電状態を表す。具体的には、減少した電圧、減少した電流、予測されるゼロ電圧交差タイミングの変化、ゼロ電圧交差の損失、などは、アーク放電状態を表すことができる状態である。いくつかの実施形態では、アーク放電状態を表す複数の特徴がAC幹線10のうちの2つ以上のサイクルの中に存在した場合、デジタル信号プロセッサ114は、アーク放電状態が存在すると判定することができる。
【0037】
例えば、
図2は、AC幹線10によって提供することができる商用電源の例示的なAC電圧波形200を概略的に例示する。具体的には、
図2は、アーク故障状態を伴わない正常動作状態の下での商用電源の例示的なAC波形200を概略的に例示する。AC波形200は、それぞれの正の半サイクル201および負の半サイクル202を有する正弦波を含む。AC波形200は、正の半サイクル201の正のピーク電圧VP+および負の半サイクル202の負のピーク電圧VP-、ならびに電圧ゼロ交差(0V)203を有する。例えば、120Vrmsの商用電源の場合、正のピーク電圧VP+は、約170Vであり、負のピーク電圧VP-は、約-170Vである。例示的なAC波形200は、例示的に約16.66ミリ秒の周期を有する60Hzの信号であり、各半サイクル201および202は、約8.33ミリ秒の長さを有する。
【0038】
アーク故障が発生したときに、
図2の例示的なAC電圧波形200は、様々な形に歪み得る。例えば、歪んだAC電圧波形200は、AC電圧波形の小さいリップルを生じさせる高周波AC成分(例えば、100kHz以上)を有し得る。歪んだAC波形200は、減少したピーク電圧を有し得、それによって、AC波形は、予測されるピーク電圧VP+およびVP-に到達しない。さらに、歪んだAC電圧波形は、
図2に示されるゼロ電圧交差203の予想時間に発生しない異常ゼロ電圧交差を有し得る。加えて、歪んだAC電圧波形は、正の半サイクル201および負の半サイクル202の波形プロファイルの顕著な非対称性を有し得、これは、
図2に示されるような正常なAC電圧波形の対称プロファイルから大幅に逸脱する。
【0039】
いくつかの実施形態では、デジタル信号プロセッサ114は、感知したAC電圧波形を1マイクロ秒ごとにデジタルサンプリングすることができ、これは、サンプリングしたAC波形の1ミリ秒当たり1000個のサンプルを提供する。16.67ミリ秒(60Hzの信号)の周期を有する
図2に示される例示的なAC電圧波形200の場合、1マイクロ秒または数マイクロ秒に1回のAC電圧波形(および、関連する電流波形)のデジタルサンプリングは、AC電圧波形の様々な特性を分析してアーク放電状態の存在を判定するための、相当な量の情報を提供することができる。
【0040】
アーク放電状態の存在の検出に応答して、デジタル信号プロセッサ114は、故障検出制御信号をスイッチ制御回路112に出力し、これは、スイッチ制御回路112に、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102を停止させる。加えて、下でさらに詳細に説明されるように、アーク放電状態の検出に応答して、デジタル信号プロセッサ114は、故障検出制御信号を回路ブレーカアクチュエータ回路111に出力し、これは、回路ブレーカアクチュエータ回路111に、内部短絡スイッチ回路120内の内部短絡スイッチ(例えば、双方向固体スイッチ121/122)を作動させる。内部短絡スイッチの作動は、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間に内部短絡経路を作成させ、制御された量の短絡電流が、ラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間に直列に結合されているシャント抵抗器R4通って流れる。インテリジェント回路遮断装置100内の内部短絡電流の流れは、回路ブレーカ15をトリップさせて、分岐回路からAC電力を接続解除させる。
【0041】
AC-DCコンバータ回路116は、DC電源電力をインテリジェント回路遮断装置100の回路ブロック111、112、113、114、115、117、および118に提供するように構成されている。いくつかの実施形態では、AC-DCコンバータ回路116は、ホットライン(例えば、VL)と中性ライン(例えば、VN)との間に接続され、また、AC幹線10によって送達されたAC電力を、制御回路110の様々な回路ブロックに給電するために使用される調節されたDC供給電圧に変換するように構成されている。いくつかの実施形態では、AC-DCコンバータ回路116は、商用電源の停電後に速やかに制御回路110に給電するための十分な貯蔵容量を備え、それにより、関連する停電または短絡情報を得て、商用電源の崩壊として記憶し、次いで、無線制御回路118を使用して、リモートノード、装置、またはシステムに無線で送信し得る。AC-DCコンバータ回路116はまた、負荷短絡イベント中の制御回路110の十分なDC電力を維持するための十分な静電容量を含み、それによって、制御回路110が、適切に動作して、双方向固体スイッチ101/102を停止させて、負荷20への電力を遮断することを可能にする。
【0042】
いくつかの実施形態では、無線制御回路118は、リモートノード、装置、システム、などと無線通信して、エネルギー利用および故障状態の遠隔監視をサポートするために、ラジオ周波数(RF)送受信機を備える。加えて、無線制御回路118は、インテリジェント回路遮断装置100との無線通信を可能にして、技術者、電気技術者、またはリモートコンピューティングノードが、例えば、所定のコマンドを使用してインテリジェント回路遮断装置100をリモート制御することを可能にするように構成されている。無線制御回路118は、Wi-FiまたはWiMAX、Bluetooth、などの、任意の適切な無線通信プロトコルを実装することができる。
【0043】
上述したように、内部短絡スイッチ回路120は、短絡状態、アーク故障状態、などのような故障状態の検出に応答して、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間に内部短絡経路を生成するように構成されている。制御回路110の所与の回路ブロックによって故障状態が検出されたときに、スイッチ制御回路112は、双方向固体スイッチ101/102をスイッチオフ状態にし、回路ブレーカアクチュエータ回路111は、制御された短絡電流をインテリジェント回路遮断器100内に生成するように内部短絡スイッチ回路120を作動させ、それによって、回路ブレーカ15をトリップさせる。内部短絡スイッチ回路120は、シャント抵抗器R4を通ってインテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間を流れる制限された/制御された内部短絡電流を生成して、回路ブレーカ15を効果的にトリップして、遮断するように構成されている。
【0044】
インテリジェント回路遮断装置100の双方向固体スイッチ101/102は、アーク故障状態の検出に応答して停止させて、負荷20への電流の流れを防止することができるが、双方向固体スイッチ101/102の停止は、インテリジェント回路遮断装置100の双方向固体スイッチ101/102のライン側または別様に上流に生じるアーク故障状態から保護せず、回路ブレーカ15がアーク故障回路遮断器機能を実装しない場合、そのような上流のアーク故障状態が持続し得る。これに関して、インテリジェント回路遮断装置100内の内部短絡スイッチ回路120の実装は、回路ブレーカ15がAFCI機能を有していなくても、費用効果的なソリューションを有利に提供して、回路ブレーカ15に接続された分岐回路全体のAFCI保護を提供することを理解されたい。
【0045】
図1に示されるように、内部短絡スイッチ回路120は、内部の第1のノードN1(ラインホット端子100Aに結合されている)と内部の第2のノードN2(ライン中性端子100Bに結合されている)との間に短絡経路を備える。内部ノードN1とN2との間の短絡経路は、双方向固体スイッチ121/122を作動させて、シャント抵抗器R4を通して内部ノードN1とN2との間に制御された短絡電流を流れさせる場合に生成される。第1のMOSFETスイッチ121および第2のMOSFETスイッチ122は、本質的に、作動スイッチ124の動作によって作動/停止される内部短絡スイッチとして動作する。
【0046】
上述したように、スイッチバイアス回路123は、ノードN5上に調節されたDC電圧を生成するように構成されている自己バイアス回路を備え、DC電圧は、作動スイッチ124がオフにされたときに、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122のゲート(G)端子を駆動して第1および第2のスイッチをオンにするために使用される。作動スイッチ124がオンになると、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122のゲート(G)およびソース(S)端子が、効果的にシャント/短絡され(例えば、VGSが約0Vである)、その結果、双方向固体スイッチ121/122の第1のスイッチ121および第2のスイッチ122をスイッチオフ状態に維持する。その一方で、作動スイッチ124がオフになると、ノードN5において自己生成した、調節されたDC電圧が、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122の共通に接続されたゲート(G)端子に印加され、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122をオンにさせ、それによって、内部の第1のノードN1と第2のノードN2との間に、すなわち、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間に、内部短絡経路を生成する。内部短絡経路が生成されると、シャント抵抗器R4が、ラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間に流れて回路ブレーカ15をトリップする、内部短絡電流の大きさを制御する。
【0047】
いくつかの実施形態では、作動スイッチ124の動作(作動/停止)は、回路ブレーカ作動回路111によって制御され、回路ブレーカ作動回路111は、制御電圧を生成して、作動スイッチ124のベース(B)端子に出力して、作動スイッチ124を作動または停止させる。インテリジェント回路遮断装置100の通常動作中に、回路ブレーカ作動回路111は、制御電圧を作動スイッチ124のベース(B)端子に出力して、作動スイッチ124をオン状態に維持して、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122をオフ状態に維持する。制御回路110が故障状態(例えば、デジタル信号プロセッサ114によって検出されたアーク故障状態)を検出すると、故障検出制御信号が生成されて、スイッチ制御回路112および回路ブレーカアクチュエータ回路111に印加される。故障検出制御信号に応答して、回路ブレーカアクチュエータ回路111は、制御電圧を生成して、作動スイッチ124のベース(B)端子に出力して、作動スイッチ124を停止(オフに)させる。作動スイッチ124の停止は、内部短絡スイッチの作動(すなわち、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122の作動)をもたらし、これは、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間(ノードN1とN2と間)に内部短絡経路を作成させ、短絡電流は、ラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間に直列に結合されているシャント抵抗器R4を通って流れる。
【0048】
より具体的には、いくつかの実施形態では、内部短絡スイッチ回路120は、以下のように動作する。インテリジェント回路遮断装置100の電源投入中(すなわち、AC幹線10の電力が、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aおよびライン中性端子100Bにわたって印加されたとき)および通常動作中に、回路ブレーカ作動回路111は、制御電圧を生成して、作動スイッチ124のベース端子に出力して、作動スイッチ124をオン状態にする。作動スイッチ124がオン状態にされると、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122のゲート(G)およびソース(S)端子は、効果的にシャント/短絡され、その結果、内部短絡スイッチの第1のスイッチ121および第2のスイッチ122をスイッチオフ状態に維持する。このように、内部ノードN1とN2との間の経路にはいかなる短絡電流も流れない。
【0049】
いくつかの実施形態では、上述したように、第4のノードN4は、内部短絡スイッチ回路120の仮想接地ノードとしての役割を果たし、ノードN4上の電圧VS(例えば、仮想接地電圧)は、作動スイッチ124のベース(B)端子を駆動するために、制御回路110(例えば、回路ブレーカアクチュエータ回路111)による接地基準として利用される。より具体的には、インテリジェント回路遮断装置100の通常動作中に、制御回路110は、アクチュエータスイッチ124のベース(B)端子に駆動電圧を印加し、それにより、ベース-エミッタ間(VBE)電圧は、少なくともアクチュエータスイッチ124の閾値電圧(例えば、0.7V)以上になる。アクチュエータスイッチ124のベース(B)端子に印加される駆動電圧(VBE)は、仮想ノードN4の電圧VSを基準にして生成される。アクチュエータスイッチ124を停止させると、制御回路110は、本質的に、仮想接地電圧VSをアクチュエータスイッチ124のベース(B)端子に印加し(例えば、仮想接地ノードN4をアクチュエータスイッチ124のベース(B)端子に結合し)、これは、作動スイッチ124をオフにさせる。
【0050】
さらに、インテリジェント回路遮断装置100の電源投入中に、スイッチバイアス回路123は、ツェナーダイオードZDの逆降伏電圧(「ツェナー電圧」と称される)によってクランプされる最大電圧まで、コンデンサC1を充電するように動作する。いくつかの実施形態では、ツェナー電圧は、約10V~約15Vの範囲である。具体的には、AC幹線10の正の半サイクル中に、電流は、第1の抵抗R1、第1のダイオードD1、コンデンサC1、第2のスイッチ122の固有のボディダイオード122-1、およびシャント抵抗器R4を通って経路に沿って流れて、コンデンサC1を充電する。AC幹線10の負の半サイクル中に、電流は、第2の抵抗器R2、第2のダイオードD2、コンデンサC1、および第1のスイッチ121の固有のボディダイオード121-1を通る経路に沿って流れて、コンデンサC1を充電する。したがって、インテリジェント回路遮断装置100の初期電源投入段階中に、AC幹線10のうちの1サイクル以上が、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122の閾値電圧(VT)よりも大きいツェナーダイオードZDのツェナー電圧まで、コンデンサC1を充電させる。
【0051】
インテリジェント回路遮断装置100の動作中に、制御回路110の所与の回路ブロックは、例えば電流センサ105および/または電圧センサ回路117から得られたセンサデータの分析の結果として、短絡状態、過電流状態、アーク故障状態、などの故障状態を検出し得る。例えば、デジタル信号プロセッサ114は、インテリジェント回路遮断装置100の内部またはインテリジェント回路遮断装置100の外部(ライン側または負荷側)のいずれかに存在するアーク放電波形の発生を検出し得る。それに応じて、制御回路110は、回路ブレーカアクチュエータ回路111をトリガする故障検出信号を生成して、内部短絡スイッチ回路120の作動スイッチ124を停止させるための制御信号を生成する。作動スイッチ124の停止は、内部短絡スイッチの作動(すなわち、第1のスイッチ121および第2のスイッチ122の作動)をもたらし、次に、ノードN1とN2との間に内部短絡経路を生成し、これは、インテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとライン中性端子100Bとの間のシャント接続をもたらす。インテリジェント回路遮断装置100内に生成される内部短絡経路は、回路ブレーカ15を通って流れる過電流を生じさせ、それによって、回路ブレーカ15をトリップして、AC幹線10のラインホット11とインテリジェント回路遮断装置100のラインホット端子100Aとの間に電気経路の空隙を作成する。空隙は、AC幹線10のラインホット11を負荷20から電気的に絶縁する役割を果たす。
【0052】
内部短絡スイッチ回路120の動作によって生成された内部短絡経路内を流れる内部短絡電流の大きさは、シャント抵抗器R4の抵抗値によって制限される。いくつかの実施形態では、シャント抵抗器R4の抵抗は、インテリジェント回路遮断装置100内のノードN1とN2との間の短絡経路を流れる内部短絡電流の大きさが、回路ブレーカ15の電流定格の約2倍~約3倍の範囲になるように選択される。例えば、回路ブレーカ15が20アンペアの電流定格を有する場合、シャント抵抗器R4の抵抗は、最大約40~60アンペアの電流が回路ブレーカ15を通り、そしてインテリジェント回路遮断装置100内のノードN1とN2との間の短絡経路を通って流れ、それによって、回路ブレーカ15をトリップさせるように選択される。これに関して、回路ブレーカ15を通って流れる短絡電流の大きさは、シャント抵抗器R4の抵抗値に基づいてノードN1とN2との間の短絡経路に生成される内部短絡電流の大きさによって制限される。この場合、回路ブレーカ15をトリップするために生成される短絡電流の量は、シャント抵抗器R4によって制御/制限され、シャント抵抗器はさらに、回路ブレーカ15がトリップされたときに回路ブレーカ15の空隙スイッチの接点の間に生成される電気アーク放電の量を制限する。
【0053】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、回路遮断を提供するための方法のフロー図である。より具体的には、
図3は、本開示の例示的な実施形態による、
図1のインテリジェント回路遮断装置100の高レベル動作モードを例示する。本方法は、電圧波形および/または電流波形を監視して、回路ブレーカによって保護されている分岐回路の故障状態の発生を検出することを含む(ブロック300)。例えば、上述したように、インテリジェント回路遮断装置100の制御回路110は、例えば、(i)ラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の電気経路、および/または(ii)ライン中性端子100Bと負荷中性端子100Dとの間の電気経路に沿った地点で、電圧波形および負荷電流波形を監視および感知するように構成されている。インテリジェント回路遮断装置100が分岐回路上の故障状態の発生を検出したときに(ブロック301での肯定判定)、インテリジェント回路遮断装置100は、分岐回路上の負荷電流の流れを遮断して(ブロック302)、インテリジェント回路遮断装置100内に内部短絡経路を生成して、短絡電流が、インテリジェント回路遮断装置100内のシャント抵抗器を通って流れることを可能にし、インテリジェント回路遮断装置内の短絡電流の流れは、回路ブレーカをトリップさせ、分岐回路からAC電源を接続解除させる(ブロック303)。
【0054】
図1の例示的な実施形態では、インテリジェント回路遮断装置100は、単極単投接点(SPST)スイッチ構成を備え、双方向固体スイッチの第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102は、ラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の電気経路内に裏面対裏面で直列に接続されている。他の実施形態では、インテリジェント回路遮断装置は、二極単投式(DPST)スイッチ構成を備え、第1のMOSFETスイッチ101は、ラインホット端子100Aと負荷ホット端子100Cとの間の電気経路に接続され、第2のMOSFETスイッチ102は、ライン中性端子100Bと負荷中性端子100Dとの間の電気経路に接続されている。DPST構成では、第2のMOSFETスイッチ102のドレイン(D)端子は、ライン中性端子100Bに結合され、一方で、第2のMOSFETスイッチ102のソース(S)端子は、負荷中性端子100Dに結合されている。上で論じたように、DPSTスイッチ構成では、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102のゲート(G)端子は、
図1のSPSTスイッチ構成のような制御回路110(例えば、スイッチ制御回路112)によって同時に制御され、それによって、第1のMOSFETスイッチ101および第2のMOSFETスイッチ102の停止は、ラインホット端子100Aおよび負荷ホット端子100Cを効果的に接続解除し、同様に、ライン中性端子100Bおよび負荷中性端子100Dを効果的に接続解除する。
【0055】
本開示の例示的な実施形態によるインテリジェント回路遮断装置は、様々な装置および用途において具現化することができることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、
図1のインテリジェント回路遮断装置100は、電気コンセント装置(例えば、分岐アウトレット)に、または電気ライトスイッチ(例えば、壁掛けライトスイッチ、またはスマート照明器具もしくはスマート天井灯電球ソケットに実装されたライトスイッチ、など)に、または負荷に電力を供給する他のタイプの装置に実装すること、または別様に集積化することができる。他の実施形態では、
図1のインテリジェント回路遮断装置100は、住宅またはビルの電気ネットワークのギャングボックス内に配置されて、スタンドアロン型インテリジェント回路遮断装置の下流の分岐回路内に接続されている1つ以上の電気装置、機器、負荷、などを保護するように構成された、スタンドアロン型装置を備え得る。
【0056】
本明細書で開示される例示的なインテリジェント回路遮断装置および方法は、様々な技術的利点を提供することを理解されたい。例えば、双方向固体スイッチ101/102の実装形態は、双方向固体スイッチ101/102の迅速な停止によって、インテリジェント回路遮断装置100が、アーク故障状態、過電流故障状態、負荷側短絡故障状態、内部故障状態、地絡状態、過電圧状態などの差し迫った故障状態に迅速に応答することを可能にする。実際には、固体状態双方向スイッチ101/102は、数マイクロ秒または数ナノ秒程度でスイッチオン状態からスイッチオフ状態へと移行することができるので、双方向固体スイッチ101/102を停止させて故障状態を隔離するための応答時間を、従来の回路ブレーカの電気機械ACスイッチを自動的にトリップして、短絡または過電流状態などの故障状態を隔離することと関連付けられた応答時間(例えば、数ミリ秒程度である)よりも1000倍程度速くすることができる。
【0057】
さらに、上述したように、インテリジェント回路遮断装置100内の内部短絡スイッチ回路120の実装は、回路ブレーカ15がAFCI機能を有していなくても、費用効果的なソリューションを有利に提供して、回路ブレーカ15に接続された分岐回路全体のAFCI保護(および、地絡回路遮断器(GFCI)保護などの他の保護)を提供する。例えば、所与の住宅またはビル内の分岐回路にいかなるAFCI保護も提供しない従来の回路ブレーカを備える既存の電気分配システムでは、
図1に示されるようなインテリジェント回路遮断装置は、従来の回路ブレーカを高価なAFCI回路ブレーカに変更することを必要とせずに、第1の装置(例えば、集積インテリジェント回路遮断装置100を有する電源コンセント)として各分岐回路に加えて、AFCI保護を効果的に提供することができる。
【0058】
さらに、制御された短絡電流を生成して、機械的AC空隙スイッチを有する従来の回路ブレーカをトリップするように構成されている、インテリジェント回路遮断装置100内の内部短絡スイッチ回路120の実装は、AC幹線10のラインホット11と負荷20との間に電気経路の空隙を作成して、負荷20からのAC幹線10の完全な隔離を提供して、ラインホット11から負荷20への電流の流れを防止するための、ならびに双方向固体スイッチ101/102がスイッチオフ状態であるときに双方向固体スイッチ101/102によって生成され得るリーク電流の流れを防止するための機構を提供する。これは、分岐回路の故障状態が発生したときにAC幹線と分岐回路との間の電気経路内に空隙の実装を必要とする、電気工事規定の遵守を可能にする。
【0059】
添付図面を参照しながら例示的な実施形態を本明細書で説明してきたが、本開示は、それらの厳密な実施形態に限定されるものではないこと、および添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な他の変更および修正が行われ得ることを理解されたい。
【国際調査報告】