IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァフィオス アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2023-511412既成の成形部品を形成するための方法及びワイヤ加工機械
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】既成の成形部品を形成するための方法及びワイヤ加工機械
(51)【国際特許分類】
   B21F 11/00 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
B21F11/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544706
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021050925
(87)【国際公開番号】W WO2021148343
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】102020200797.7
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500146945
【氏名又は名称】ヴァフィオス アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】WAFIOS Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】オリバー クーネルト
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ラウッシャー
【テーマコード(参考)】
4E070
【Fターム(参考)】
4E070AA03
4E070AB14
4E070AC02
4E070BF02
4E070CA01
4E070DA02
4E070FA02
4E070FA03
(57)【要約】
ワイヤから既成の成形部品を形成する方法において、ワイヤ(W)が、ワイヤストックから引き出され、ワイヤ加工機械(100)へ供給される。ワイヤが、ワイヤ加工機械(100)内で直線化され、かつ所定ワイヤ長さの成形部品が、直線化されたワイヤから分離加工装置(300)によって分離される。供給されたワイヤから成形部品を分離するために、まず、分離のために設けられた分離位置においてワイヤ(W)が、少なくとも1つのノッチ加工において互いに対向する両側から複数のノッチ加工工具によって、分離位置において対向するノッチの間にテーパー状ワイヤ横断面が残留するように、切り欠かれる。その後、切り欠かれたワイヤが分割加工において、テーパー状ワイヤ横断面の領域内の分離位置で、二つの分割加工工具がワイヤの対向する両側に係合し、かつ、ワイヤ材料が分離位置(TP)において分断されるまで、反対の送り方向においてワイヤ軸に対して横方向、特に垂直に同期して送り移動されることにより、分離される。この方法を実施するために形成されたワイヤ加工機械も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤから既成の成形部品を形成する方法であって、
ワイヤ(W)を、ワイヤストックから引き出し、ワイヤ加工機械(100、800)へ供給し、
前記ワイヤを前記ワイヤ加工機械(100、800)内で直線化し、かつ所定ワイヤ長さの成形部品を直線化されたワイヤから分離する、方法に関し、
供給された前記ワイヤから成形部品を分離するために、
先ず、分離のために定められた分離位置(TP)において、前記ワイヤ(W)を、少なくとも1つのノッチ加工で、互いに対向する両側から複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)を用いて、前記分離位置において対向するノッチ(KB)の間にテーパー状ワイヤ横断面が残留するように、ノッチ加工し、
その後、分割加工において、ノッチ加工された前記ワイヤを、前記テーパー状ワイヤ横断面の領域内の前記分離位置(TP)において、二つの分割加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2、1435-1、1435-2)が前記ワイヤの対向する両側に係合し、かつ、ワイヤ材料が前記分離位置(TP)において分断されるまで、前記二つの分割加工工具がワイヤ軸に対して垂直な反対の送り方向で同期して送り移動させることによって、分離する、方法。
【請求項2】
ノッチ加工は成形加工として実施され、前記ノッチは材料除去なしで材料成形のみによって形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)は、該複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)がワイヤ軸に対して垂直な反対の送り方向に同期して送り移動され、及び/又は前記複数のノッチ加工工具の侵入深さが、第1の方向において切り欠かれていないワイヤの少なくとも10%、特に20%~50%の範囲内にあるように、及び/又は残留幅が、前記ワイヤの長手方向に対して垂直な前記テーパー状ワイヤ横断面内で、前記第1の方向における元のワイヤ直径の90%以下の範囲内、特に50%~80%の範囲内にあるように、制御される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワイヤ(W)は、ノッチ加工の終了後に、切断加工により、特に噛み込み切断加工又は剪断切断加工によって、前記分離位置(TP)において分離される、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記切断加工において前記ワイヤは前記分離位置(TP)で噛み込み切断加工により分離され、前記ワイヤは、楔形状の複数のカッターである複数の切断加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2)として構成されている、二つの分離加工工具の間で保持され、該楔形状の複数のカッターは、前記分離位置(TP)においてワイヤ材料が分断されるまで、互いに対して近づくように移動し、前記楔形状の複数のカッターに形成された切断加工エッジは共通の平面内に位置している、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2)は、第1の方向において互いに対向し、該第1の方向に対して平行に送り移動し、
前記楔形状の複数のカッターを有する前記複数の切断加工工具は、第2の方向において互いに対向し、該第2の方向に対して平行に送り移動し、
前記第1の方向と前記第2の方向とが互いに対して垂直である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分割加工は剪断加工として行われ、前記ワイヤは前記分離位置(TP)において剪断加工により分離され、前記ワイヤは複数の剪断加工工具(1435-1、1435-2)として構成されている二つの分割加工工具の間に保持され、前記複数の剪断加工工具は、前記分離位置(TP)の異なる軸方向の両側に係合し、前記分離位置(TP)でワイヤ材料が分断されるまで、前記ワイヤ軸に対して垂直な反対の送り方向で同期して送り移動する、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
剪断切断加工、剪断切断加工として行われ、前記ワイヤは前記分離位置(TP)において剪断切断加工により分離され、前記ワイヤは、上側ブレードとして形成された剪断切断加工工具と下側ブレードとして形成された剪断切断加工工具との間に保持され、複数の剪断切断加工工具の複数のカッターは、軸方向にオフセットした平面内で互いに対して反対方向で互いの方に向かって移動し、特に、前記ワイヤが前記分離位置(TP)において分離されるまで互いに通過しあうこと、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記剪断加工に先立つノッチ加工において、前記ワイヤは、先ず、第1の方向に対向する両側において、そしてその後、第2の方向に対向する両側において、切り欠かれ、前記第1の方向と前記第2の方向とが互いに対して垂直である、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワイヤは、前記ノッチ加工と前記分割加工の間で前記ワイヤの長手方向に送り移動されず、前記ノッチ加工と前記分割加工とが同一の平面(TE)内で実施される、ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ワイヤ(W)の対向する両側における前記ノッチ加工と前記分割加工のために、それぞれコンビネーション工具(1330-1、1330-2、1430-14、1430-2)が使用され、該コンビネーション工具は、少なくとも1つの統合されたノッチ加工工具と統合された分割加工工具とを有し、前記コンビネーション工具は時間的に次々と対をなし、二つの互いに対して垂直な方向に、同期し送り移動する、ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ノッチ加工及び/又は前記分割加工の前に、分離すべきワイヤ部分は搬送グリッパ(420)によって把持され、前記分割加工の後に、分離された成形部品が前記搬送グリッパによって下流側の作業ステーションへ搬送される、ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記搬送グリッパ(420)は、ワイヤ搬送軸に対して平行に直線的に案内され、前記ノッチ加工及び/又は分割加工の間に、力とトルクを削減するように切り替えられ、前記搬送グリッパは、前記ノッチ加工及び/又は前記分割加工の間、分離すべきワイヤ部分の長さ補正動作にフローティング方式で追従することができる、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
矩形横断面を有するワイヤ(W)は、特に互いに対して平行の二つの幅広側と、幅広側に対して垂直に方向付けされた二つの幅狭側とを有するフラット材料の形態で加工される、ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
直線化後に、所定長さの直線ワイヤロッドは、直線化されたワイヤから分離され、又は、直線化後かつ分離前に、直線化されたワイヤに1つ又は複数の曲げが形成され、成形部品が曲げ加工された部品となる、ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
ワイヤ(W)から既成の成形部品を形成するワイヤ加工機械(100、800)であって、
ワイヤストックからワイヤを引き出す引き出し装置と、
前記ワイヤを直線化する直線化ユニットと、
分離のために定められた分離位置(TP)において、前記ワイヤから成形部品を分断するための分離加工装置(300、900)と、を備え、
前記分離加工装置(300、900)は、ノッチ加工装置(320、920)及び該ノッチ加工装置よりも時間的に後に駆動可能な分割加工装置(340、940)を有し、
前記ノッチ加工装置(320、920)は、分離のために定められた分離位置(TP)において、前記ワイヤを少なくとも1つのノッチ加工で、互いに対向する両側から複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)を用いて切り欠くように、構成されており、それによって前記分離位置において対向するノッチの間にテーパー状ワイヤ横断面が残留し、
前記分割加工装置(340、940)は、セットアップされた状態において、二つの分割加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2、1430-1、1430-2)を有し、該二つの分割加工工具の間を通してワイヤ(W)が通過可能であり、
前記二つの分割加工工具はワイヤ軸に対して垂直な反対の方向に同期して送り移動可能であり、
前記分割加工装置は、切り欠かれたワイヤがテーパー状ワイヤ横断面の領域内の前記分離位置(TP)において分離されるように構成され、
前記二つの分割加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2、1430-1、1430-2)は、ワイヤ材料が分離位置(TP)において分断されるまで、分割加工中にワイヤ軸に対して垂直な反対の方向に同期して送り移動される、ワイヤ加工機械。
【請求項17】
前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)が成形工具として設けられ、前記ノッチは材料除去なしで材料成形のみによって形成可能であり、及び/又は前記ノッチ加工装置は前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)の送り移動を制御するように構成され、それによって前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)は前記ワイヤ軸に対して垂直な反対の送り移動方向に同期して送り移動する、ことを特徴とする請求項16に記載のワイヤ加工機械。
【請求項18】
前記分割加工装置が切断加工装置として構成され、前記二つの分割加工工具は複数の切断加工工具として構成されている、ことを特徴とする請求項16又は17に記載のワイヤ加工機械。
【請求項19】
前記切断加工装置は噛み込み切断加工装置の形態として構成され、該噛み込み切断加工装置は、セットアップされた状態において、楔形状の複数のカッターを備えた複数の切断加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2)を有し、該複数の切断加工工具の間を通して前記ワイヤ(W)が通過可能であり、前記楔形状の複数のカッターは、切断加工を実施するために、互いの方に向かって、互いに移動可能であり、
前記切断加工装置は、切り欠かれたワイヤが前記分離位置(TP)においてテーパー状ワイヤ横断面の領域内で噛み込み切断加工によって分離され、前記複数の切断加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2)の前記楔形状の複数のカッターが、前記分離位置(TP)においてワイヤ材料が分断されるまで、前記切断加工の間、共通の平面内で互いの方に向かって互いに移動するように、構成されている、ことを特徴とする請求項18に記載のワイヤ加工機械。
【請求項20】
前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2)は、第1の方向で互いに対向して配置され、又は配置可能であり、前記第1の方向に対して平行に送り移動可能であり、
前記楔形状の複数のカッターを有する前記複数の切断加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2)は、第2の方向で互いに対向して配置され、又は配置可能であり、かつ前記第2の方向に対して平行に送り移動可能であり、前記第1の方向と前記第2の方向とが互いに対して垂直である、ことを特徴とする請求項18又は19に記載のワイヤ加工機械。
【請求項21】
前記分割加工装置は剪断加工装置として構成され、該剪断加工装置は、前記ワイヤが前記分離位置(TP)において剪断加工によって分離されるように構成され、前記ワイヤは剪断加工工具(1435-1、1435-2)として構成されている二つの分割加工工具の間に保持され、該二つの分割加工工具は、前記分離位置(TP)における異なる軸方向の両側に係合し、ワイヤ材料が前記分離位置(TP)において分断されるまで、前記ワイヤ軸に対して垂直な反対の送り方向において同期して送り移動可能である、ことを特徴とする請求項16~18の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【請求項22】
前記ノッチ加工装置は、前記剪断加工に先立つ前記ノッチ加工において、前記ワイヤが、先ず、第1の方向で互いに対向する両側で、そしてその後、第2の方向に互いに対向する両側で切り欠かれ、前記第1の方向と前記第2の方向とが互いに対して垂直であるように、構成されている、ことを特徴とする請求項21に記載のワイヤ加工機械。
【請求項23】
前記分離加工装置は前記ワイヤの対向する両側にそれぞれコンビネーション工具(1330-2、1330-2、1430-1、1430-2)を有し、該コンビネーション工具は少なくとも1つの統合されたノッチ加工工具と統合された分割加工工具とを有し、前記ワイヤ加工機械の機械軸は、前記コンビネーション工具が、互いに対して垂直な二つの方向で、時間的に次々と対をなして同期して送り移動可能であるように、構成されている、ことを特徴とする請求項16~22の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【請求項24】
前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1425-2)は、シャープな、又は丸みを帯びた尖端領域を有する屋根形状のノッチ加工楔として構成され、楔面によって包まれる楔角度(KWK)は、好ましくは90°~140°の範囲内にあり、及び/又は前記複数の切断加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2)の前記楔形状の複数のカッターは、90°~140°の範囲内の楔角度(KWK)を有する、ことを特徴とする請求項16~23の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【請求項25】
前記ノッチ加工装置の前記複数のノッチ加工工具(325-1、325-2、925-1、925-2、1330-1、1330-2、1425-1、1452-2)と前記切断加工装置の前記複数の切断加工工具(345-1、345-2、945-1、945-2、1330-1、1330-2、1435-1、1435-2)の前記楔形状の複数のカッターは、共通の平面内に配置されている、ことを特徴とする請求項16~24の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【請求項26】
前記ノッチ加工装置(320、820)は唯一の駆動部(322)を有し、該駆動部は、好ましくは同期して送り移動するために二つのノッチ加工工具(325-1、325-2)と結合され、及び/又は前記分割加工装置(340、840)は唯一の駆動部(342)を有し、該駆動部が好ましくは同期して送り移動するために二つの分割加工工具(345-1、345-2)と結合されている、ことを特徴とする請求項16~25の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【請求項27】
前記分割加工装置(300、900)は、前記ワイヤ(W)の通過方向に対して平行にフローティング方式で支承され、又は前記分離加工装置は、駆動部によって、前記ワイヤ(W)の通過方向に対してアクティブに平行に移動可能である、ことを特徴とする請求項16~26の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【請求項28】
前記ノッチ加工及び/又は前記分割加工の前に、分離すべきワイヤ部分を把持するため、及び前記分割加工の終了後に分離されたワイヤ部分を、下流側の作業ステーションへ搬送するための、搬送グリッパ(420)が設けられており、該搬送グリッパ(420)は、好ましくは、ワイヤ搬送軸に対して平行で直線的に移動可能に案内され、かつ前記ノッチ加工及び/又は前記分割加工の間、力とトルクを削減するように切り替え可能であり、前記搬送グリッパは前記ノッチ加工の間及び/又は前記分割加工の間、分離すべき前記ワイヤ部分の長さ補正動作にフローティング方式で追従することができる、ことを特徴とする請求項16~27の何れか一項に記載のワイヤ加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤから既成の成形部品を形成するための方法及びワイヤ加工機械に関する。
【背景技術】
【0002】
既成の成形部品というのは、この出願において「ワイヤロッド」とも称される、真直な成形部品、又はワイヤの複数の端部の間に1つ以上の曲がりを有する2次元又は3次元的に屈曲された、ワイヤからなる曲げ部品とすることができる。
【0003】
全電気駆動装置又は部分電気駆動装置を有する車両が市場に提供されることが増加している。これらの車両は、大体において、複数のバッテリモジュールを備えたエネルギ貯蔵システムを有している。電気エネルギは、個々のバッテリモジュール間で搬送されなければならない。そのために、絶縁されて屈曲された銅レール又はアルミニウムレールが使用され、それらは「バスバー」とも称される。バスバーは、通常、しかるべく成形されたフラット材料から、例えばフラットな矩形横断面を有する銅フラットワイヤ又はアルミニウムフラットワイヤを使用して、形成される。フラット材料は、部分的又は一貫して、電気的に絶縁する絶縁層で被覆することができる。出来上がったバスバーにおいて、これらの終端部分は、典型的に金属むき出しであって、したがって絶縁層無しであり、そのために設けられている組み込み環境内で、終端部分の領域内で、例えばねじ固定され、締め付け固定され、又は半田付け固定される。確実な接触を保証するために、ワイヤの終端部分は、対応する接触部材にできる限り良好に適合しなければならない。ワイヤ端部の後加工をできるだけしないで済むように、ワイヤ端部は、ワイヤ加工機械内での形成直後に、使用環境への良好な適合が与えられるように、前もって仕上げられる。
【0004】
特許文献1は、既成のワイヤロッドの適用領域及び、バリなしでワイヤを分離するように、そのワイヤロッドを形成するために利用することができる方法と装置を、記載している。牽引駆動用の電気モータを形成する場合に、個々の巻き線部材(プラグインコイル、いわゆる「ヘアピン」)が形成され、それが以降のプロセスにおいて完全なステータ巻き線に加工されることが、記載される。より高い充填度によって電気機械のより高い効率を得るために、ヘアピン技術においては、丸いワイヤから矩形の横断面を有するワイヤへ移行している。プラグインコイルの形成の枠内で、エンドレス材料からしかるべきワイヤ部分が切り詰められて、分離され、そのワイヤ部分がステータに位置決めされた後に溶接される。構造的に簡単な手段によってワイヤを確実かつできる限りバリなしで分離することを可能にするために、ある方法が提案され、それにおいてまず、第1の成形加工工程において、第1の移動軸線に沿って第1の成形ユニットの、第1の平面内で互いに対向する二つの成形部分を互いに近づくように移動させることにより、ワイヤ長手位置おいてワイヤの(バリなしの)成形が行われる。この第1の成形加工工程において、二つの対向する両側から、例えば二つの幅狭側から、ワイヤ横断面が狭められる。ワイヤの成形において、第1の成形ユニットの成形部分は、常に互いに離隔しているので、狭められたワイヤ横断面が残留する。その後、ワイヤの成形は、同じワイヤ長手位置において第2の成形加工工程において、第2の移動軸線に沿って第2の成形ユニットの、第2の平面内で互いに対向する二つの成形部分が互いに近づくように移動することによって行われる。すでに狭められているワイヤ横断面が、この第2の成形加工工程において、他の二つの対向する両側から、たとえば二つの幅広側から、狭められる。ワイヤの成形において、第2の成形ユニットの成形部分は、常に互いに離隔しているので、すでに狭められているワイヤ横断面は、さらに狭められた形状で残留する。したがってワイヤ長手位置には、材料ウェブが残留し、その材料ウェブはワイヤの元の横断面形状に比較して内側へ変位して配置されている。この時点で、ワイヤ長手位置(定められている分離箇所)の前後に配置されているワイヤ部分は、材料ウェブを介してまだ材料結合で互いに結合されている。その後、したがって第2の成形加工工程後に、(少なくとも割合的にワイヤ長手方向に沿って作用する)引張り力がワイヤにもたらされることによって、同じワイヤ長手位置においてワイヤの引っ張り分離が行われる。したがってワイヤは、そのワイヤ長手位置において分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第102018114579(B3)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ワイヤ端部の幾何学的にきわめて良好に定められた形態を有する、既成の成形部品を形成することを許す、ワイヤから既成の成形部品を形成する方法及びワイヤ加工機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有する方法を提供する。さらに、請求項16の特徴を有するワイヤ加工機械が提供される。好ましい展開が、従属請求項に記載されている。すべての請求項の文言は、参照することにより明細書の内容とされる。
【0008】
この方法及びワイヤ加工機械は、ワイヤから既成の成形部品を形成するために用いられる。この出願の文脈において、「既成の成形部品」というのは、ワイヤから形成された半製品又はできあがった製品であって、適用目的のために望ましいワイヤ長さとできる限り良好に定められたワイヤ端部とを有するものである。ワイヤ端部は、特に適用目的のために適した、例えばワイヤ端部に面取りを有する、幾何学配置をもたなければならない。初期材料は、適切な横断面形状を有する長い、ある程度簡単に曲がる材料である。円形の横断面を有するワイヤは、ラウンドワイヤと称される。他の断面形状を有するワイヤ、例えばフラットワイヤ、4稜ワイヤ又はプロフィールワイヤも存在する。
【0009】
既成の成形部品は、この出願において「ワイヤロッド」とも称される、真っ直ぐな成形部品であっても、又はワイヤ端部の間に1つ又は複数の曲がりを有する、2次元又は3次元で曲げられた、ワイヤからなる曲げ部品であってもよい。真っ直ぐな既成のワイヤロッドを形成するためのワイヤ加工機械は、場合によっては「ロッド製造機械」と称され、曲がった既成の成形部品を形成するためのワイヤ加工機械の場合には、通常、曲げ機械と称される。既成の成形部品は、ばね機械を用いてワイヤから形成することができる、ばね(例えばコイルばね)であってもよい。
【0010】
この方法において、ワイヤはワイヤストックから少しずつ連続的又は間欠的に引き出され、ワイヤ加工機械へ供給される。ワイヤは、ワイヤ加工機械内で直線化される。その後ワイヤから、成形部品(予め定めることのできるワイヤ長さと所望の形状(形態)を有するワイヤ部分)が切り取られる。
【0011】
直線化と分離との間で、1つ又は複数の曲がりを有する成形部品、したがって曲げ部品を形成するために、1つ又は複数の曲げ加工を実施することができる。代替的に、直線化したワイヤから、真っ直ぐなワイヤ部分、いわゆるワイヤロッドを切り取ることもできる。
【0012】
供給されたワイヤから所望の長さのワイヤロッドを分離するために、時間的に次々と複数の機能的に異なる加工が実施される。
【0013】
まず、ワイヤ材料が、分離のために定められた分離位置又は分離箇所において(少なくとも)1つのノッチ加工において互いに対向する両側から複数のノッチ加工工具を用いて次のように、すなわち分離位置において互いに対向するノッチの間にテーパー状ワイヤ横断面を有する部分が残るように、切り欠かれる。
【0014】
「ノッチ」という概念は、ここでは一般的に、ワイヤ材料に材料排除又は材料搬出によって生じる切り込みを表す。ノッチの大きさと形状は、複数のノッチ加工工具の、ワイヤ材料と係合する作用輪郭及びその侵入深さによって定められる。
【0015】
ノッチ加工は、好ましくは成形加工であって、それにおいてノッチは、材料除去なしの材料押しやり又は材料成形によって形成される。したがってノッチは、好ましくは分離位置の領域内のワイヤ材料の古典的な成形によって形成される。
【0016】
複数のノッチ加工工具は、例えばある程度シャープに出合う楔形状を有することができる。それによって形成されるノッチは、ワイヤ材料内に、大体においてV字形状の、したがって楔形状又はシャープに出合う切り込みを形成する。しかしノッチの形状は、V字形状に限定されない。ノッチは、ノッチ底の領域内で、ある程度はっきりと丸みを帯びることもできる。また、実質的に円筒状の切り込みを有するノッチ又はU字形状を有するノッチを形成することも、可能である。
【0017】
好ましくは、複数のノッチ加工工具は、ノッチ加工の間ワイヤ軸に対して垂直に逆の供給方向に供給される。そのためにノッチ加工装置は、複数のノッチ加工工具の同期供給のためにしかるべく構成することができる。それによって、理想の場合においては、切り欠く際に生じる横の力がワイヤにもたらされず、このノッチ加工によってワイヤがグローバルに曲げられることはない。
【0018】
好ましくは複数のノッチ加工工具の供給運動は次のように、すなわち複数のノッチ加工工具の侵入深さが、第1の方向において切り欠かれないワイヤ材料の延びの少なくとも10%、好ましくは20%~50%の領域内にあるように、制御される。したがって、テーパー状ワイヤ横断面内又はより細いウェブのくびれた領域内に、しかるべき残留幅(ワイヤ長手方向に対して垂直)が残留し、その残留幅は第1の方向における元の直径の90%以下の領域内、特に50%~80%の領域内にある。したがって発明者の経験によれば、後続の切断加工のための良好な準備と、同時にテーパー状ワイヤ横断面の領域内の充分な安定性との間の特に良好な妥協を得ることができる。
【0019】
それに対して代替的に、ノッチは、材料除去しながら、例えばフライス加工又はパンチ加工によって、形成することができる。
【0020】
重要なことは、ノッチ加工において、分離位置の領域内でワイヤの内部に、テーパー状ワイヤ横断面を有するワイヤ部分が残留することである。したがってワイヤ材料は、分離位置において完全に切断されず、ノッチの前後の部分は、テーパー状ワイヤ材料ウェブを介して互いに一体的に結合されたままである。テーパー状ワイヤ横断面の領域内で、成形によるノッチ加工において、通常、ワイヤ材料の硬化が、したがって可塑成形によるワイヤ材料の機械的強度の増大が生じる。
【0021】
ノッチ加工の終了後に、分割加工が実施される。分割加工によって、切り欠かれたワイヤが分離位置においてテーパー状ワイヤ断面の領域内で次のことによって、すなわち二つの分割加工工具がワイヤの対向する両側に係合し、かつ、分離位置においてワイヤが分断されるまで、ワイヤ軸に対して垂直に逆の供給方向において同期して供給されることによって、分離される。
【0022】
「垂直」という概念は、ここでは、ワイヤ軸に対して正確に垂直に(90°の角度で)延びる方向、又は正確に直交する方向から所定の角度、例えば最大で5°だけずれる方向を含むものとする。決定的なことは、技術的許容誤差の枠内で、垂直の供給の努力がなされることである。同様に、「同期」という概念は、制御装置とハードウェアによってもたらされる、筋のとおった技術的許容誤差の枠内での同時性を意味する。
【0023】
「分割」という概念は、この出願において、DIN規格DIN8588に準拠して、分離位置においてワイヤを二つの部分に完全に分離することを言う。分離は、機械的なやり方で、切りくず形成なしで行われる。したがって分割加工は、分離操作であって、それにおいてワイヤは削られず、切りくずなしで(材料除去なし、又は切りくずの発生なしで)分離される。したがって二つの分割加工工具は、切りくずなしで作業する複数の切断加工工具である。
【0024】
ワイヤ材料から既成の成形部品(例えばワイヤロッド又は曲げ部品)を形成するためのワイヤ加工機械において、直線化された、又は直線化後にさらに1次元又は多次元で曲げられたワイヤ材料から成形部品を、分離のために定められた分離位置において分離するために、分離加工装置が設けられており、その分離加工装置がノッチ加工装置と、時間的にノッチ加工装置の後で加工可能な分割加工装置とを有している。分離加工装置は、この方法を実施するように構成されている。
【0025】
本方法は、直線化後に曲げ加工を介在させることなしに、予め定められた長さの真っ直ぐなワイヤロッドが、直線化されたワイヤから分離されるように、形成することができる。代替的に、直線化後かつ分離前に、直線化されたワイヤ内に1つ又は複数の曲がりを形成することが可能であるので、成形部品は曲げ部品である。
【0026】
本方法を実施するのに適し、かつセットアップされたワイヤ加工機械は、分割加工装置を有しており、その分割加工装置は加工準備がセットアップされた状態において、二つの分割加工工具を有しており、それらの間を通してワイヤが案内可能であって、二つの分割加工工具は、分割加工を実施するために、ワイヤ軸に対して垂直に逆方向に同期して供給可能であり、かつ分割加工装置は次のように、すなわち、ワイヤ材料が分離位置において分断されるまで、分割加工において二つの分割加工工具が、ワイヤ軸に対して垂直に逆方向に同期して供給されることにより、切り欠かれたワイヤが分離位置においてテーパー状ワイヤ横断面の領域内で分離できるように、構成されている。
【0027】
二つの分割加工工具の供給の開始前に、通常まだ、二つの分割加工工具とワイヤとの間に触れる接触は存在しないので、二つの分割加工工具はワイヤを保持しない。その後、供給の過程において二つの分割加工工具がワイヤと接触し、かつ機械的にワイヤ材料に係合する。理論的に、これらの分割加工工具は同時に同じ力でワイヤと接触する。実際においては、これは、技術的な許容誤差に基づいて、常に保証されるものではない。対向して係合する二つの分割加工工具の係合が同時ではない場合に、理想のワイヤの向きからワイヤが傾くのを回避するために、分離位置の前後に供給可能な抑えホルダを設けることができ、それらがワイヤを分割加工の前及び場合によってはその開始時にも、一時的に所望の向きに保持する。
【0028】
ワイヤ材料の対向する両側に二つの分割加工工具が同期して両側で係合することによって、終端部分のグローバルな曲がりを回避することができるので、この終端部分は分割加工時及びその後も、横断的な力なしに存在する、真っ直ぐな形状を維持する。本方法によって形成された既成のワイヤロッドは、通常、後加工なしで、定められた使用のために利用することができる。したがって従来よりも経済的に、以降の加工が可能である。
【0029】
本発明の枠内において、ノッチ加工と分割加工を構成し、かつ互いに適合させる、様々な可能性が存在する。
【0030】
展開によれば、ノッチ加工の終了後に、切断加工の形式で分割加工が実施される。したがってワイヤは、特に切削なしの切断加工によって分離される。したがって分割加工装置は切断加工装置として構成されており、二つの分割加工工具は複数の切断加工工具として設計されている。切断加工工具は、少なくとも1つのカッターを有し、そのカッターに切断加工エッジが形成されており、それがここでは、好ましくは真っ直ぐな切断加工エッジである。
【0031】
好ましくは、分離は噛み込み切断加工又は剪断切断加工によって行われ、それについて以下で詳細に説明する。
【0032】
切断加工のバリエーションの例において、ノッチ加工されたワイヤ材料がテーパー状ワイヤ横断面の領域内で、したがって分離位置において、噛み込み切断加工によって分離される。これは、ワイヤ材料が複数の切断加工工具の二つの楔形状のカッターの間の領域内で、適切な位置に保持され、かつ、分離位置においてワイヤ材料が分断されるまで、複数の切断加工工具又は楔形状の複数のカッターが互いに対して近づくように移動されることによって行われる。カッターの供給移動の開始前には、通常、まだカッターとワイヤの間に触れる接触は存在しないので、カッターはワイヤを保持しない。その後、供給移動の経過において、カッターがワイヤと接触して、ワイヤ材料内へ侵入する。
【0033】
製造方法の「噛み込み切断加工」というのは、楔作用切断加工の一つのバリエーションであって、DIN8588によれば、分離すべき工作物を削り屑の形成なしで分離する、分離加工方法に属する。楔形状の複数のカッターに形成されている切断加工エッジは、共通の平面内に位置する。相対移動は、複数の切断加工エッジが切断加工の最後に互いに触れて接触するように、案内することができる。複数の切断加工エッジの間の接触が生じる前に、すでにフラット材料が分断されている場合に、送り移動はその前に終了させることもできる。噛み込み切断加工において、楔形状の複数のカッターが二つの対向する両側から、分離すべきワイヤ材料内へ侵入する。この種類の切断加工によって、ワイヤ材料の端部に、又はその上に、鋭いバリが形成されることを回避できることが、明らかにされている。この切断加工は、ワイヤ材料の実質的にバリのない切断を可能にすると言える。
【0034】
複数の切断加工工具の楔形状の複数のカッターが、ワイヤ材料の対向する両側に同期して両側で係合することによって、終端部分のグローバルな曲がりを回避することができるので、この終端部分は、切断加工の場合及びその後においても、横断的な力なしで存在する、真っ直ぐな形状を維持する。このような既成のワイヤロッドは、通常、再加工なしで、定められた使用のために利用することができる。
【0035】
「ノッチ加工」と「噛み込み切断加工」の2段階の加工バリエーションは、分離位置の前後に位置するワイヤ部分を正確に定められた分離位置において分離することをもたらし、外部からワイヤ長手方向に作用する引張り力を導入する必要はない。したがって従来の引っ張り分離とは異なり、引っ張り分離するためのそれに応じた装置を省くことができる。引っ張り分離のためには、ワイヤ長手方向に作用する引張り力を導入することが必要であるので、それによって分離されたワイヤロッドの長さがわずかに変化することは、排除できないので、引張り力に基づく長さエラーがもたらされることがあり得る。このエラー源は、請求される発明に基づく方法においては、排除されているので、ワイヤ端部の間に正確に定められた長さを有する、既成の成形部品、例えばワイヤロッドが、システマティックに形成される。
【0036】
さらに、分離箇所において生じるワイヤ端部の幾何学的形態は、ノッチ加工において使用される複数のノッチ加工工具の、及び/又は切断加工において使用される複数の切断加工工具の、作用幾何学配置によって、正確に定めることができる。これは特に、ノッチ加工が純粋な成形加工である場合に言えることである。というのは、複数のノッチ加工工具と楔形状の複数のカッターは、引っ張りにより、及び/又は材料除去によって機能するのではなく、単に可塑的な材料押しやりによって機能するので、その機能輪郭は少なくとも部分的に、ワイヤ材料内又はワイヤ端部内に刻印されるからである。したがってわずかな長さ許容誤差と幾何学的にきわめて良好に定められたワイヤ端部とを有する、システマティックに前もって形成されているワイヤ片(真っ直ぐ、又は屈曲した)を形成することができる。
【0037】
また、2段階の加工プロセスは、ワイヤ材料が「噛み込み切断加工」によって分離位置で分離される、その切断加工がノッチ加工によって先行され、そのノッチ加工においてワイヤ材料が予め定められた分離位置の領域内でノッチ加工によって噛み込み切断加工のために準備されるように、記述することもできる。特に、テーパー状ワイヤ横断面を形成するための成形を含むノッチ加工の場合に、ワイヤ材料は、後に楔形状の複数のカッターによって分断されるべき領域内で、硬化される。したがって楔形状の複数のカッターは、前処理されていないワイヤ材料にではなく、すでに前処理されているワイヤ材料に当接し、そのワイヤ材料はノッチ加工によって硬化されており、かつそれによって、テーパー状ワイヤ横断面に比較して柔らかい、成形されていないワイヤ材料よりも、確実かつよりきれいに分離される。この効果も、ワイヤ端部をよりきれいに幾何学的に定めることに寄与する。
【0038】
展開によれば、複数のノッチ加工工具は第1の方向において互いに対して対向して配置され、又は配置可能であって、かつ第1の方向に対して平行に供給移動可能であり、複数の切断加工工具の楔形状の複数のカッターは、第2の方向に互いに対向して配置され、又は配置可能であって、かつ第2の方向に対して平行に供給移動可能であり、第1の方向と第2の方向は、互いに対して垂直に延びている。したがってノッチ加工と切断加工は、互いに対して直交する方向においてワイヤ材料に作用する。それによってワイヤ端部においてワイヤ材料のテーパーは、二つの互いに対して垂直の方向に形成することができる。最終的に噛み込み切断加工において形成される切断面又は破断面は、すべての方向から初期ワイヤのエンベロープ面の内部に位置するので、このエンベロープ面の外周を越えて張り出す、いかなるバリも残らない。ノッチ加工と切断加工の直交する作用方向は、すべての工作物横断面において、したがってラウンドワイヤにおいても、効果的に利用することができる。矩形横断面を有する初期工作物が分離される場合に、ワイヤ材料は第1と第2の方向に対して次のように、すなわち第1の方向が第1の対の平坦な側面に対して垂直に方向付けされ、第2の方向は他の対の互いに対して平行な側面に対して垂直に方向付けされるように、方向付けすることができる。それによって複数のノッチ加工工具及びその後の複数の切断加工工具は、それぞれ実質的に同時に接触面の幅全体にわたってワイヤ材料内へ嵌入することができ、それによって良好に幾何学的に定められたワイヤ端部が生じる。
【0039】
通常、まず幅狭側が切り欠かれ、その後に複数の切断加工工具が幅広側に係合する。それによって、切断する場合に、ノッチの幾何学配置はほぼ維持される。しかし、逆の順序(幅広側のノッチ加工、幅狭側にわたる切断加工)も、可能である。
【0040】
複数のノッチ加工工具が、ワイヤ通過方向に対して垂直に方向付けされた第1の平面内に位置し、切断加工装置の複数の切断加工工具の楔形状の複数のカッターが、ワイヤ通過方向に対して垂直に位置する第2の平面内に位置し、この第2の平面はワイヤ通過方向において第1の平面に対して変位していることが、可能である。この配置によって、切断加工装置とノッチ加工装置の形態のため、構造的自由度を生じさせることができる。もちろん、切断加工が充分正確に、前もってノッチが形成されている位置で行われることを保証するために、二つの平面の間の材料搬送は、高い精度で行われなければならない。
【0041】
好ましい実施形態において、ワイヤ材料はノッチ加工と切断加工の間で、ワイヤ長手方向に前進移動されないので、ノッチ加工と切断加工は、同一の平面内で実施される。構造的にこれは、ノッチ加工装置の複数のノッチ加工工具、もっと正確に言うと、その有効な工具側の端部と複数の切断加工工具又は切断加工装置の複数のカッターの切断加工エッジが、共通の平面内に配置されていることによって、解決することができる。この実施形態においては、ワイヤの移動状態とは関係なく、切り込みと切断は正確に予め定められた分離位置において行うことができるので、ワイヤにおいてノッチと分離箇所の間に軸方向の変位は生じない。ワイヤ端部の形状は、複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具の工具形状によって正確に定めることができる。
【0042】
複数のノッチ加工工具の形態について、様々な可能性が存在する。好ましい実施形態においては、複数のノッチ加工工具はシャープな、あるいいは丸みを帯びた尖端領域を有する屋根形状のノッチ加工楔として、したがって同様に実質的に楔形状に、形成されている。楔形状の複数のノッチ加工工具が対称性を有する楔として形成されていれば、充分な場合もある。この場合に「対称性を有する楔」という概念は、楔面又は楔側面が供給方向に対して実質的に対称に傾斜している楔である。それによって切り欠く場合に、両側の対称の材料の押し込みが得られる。例えば成形部品のワイヤ端部を異なるように形成しようとする場合に、非対称性を有する楔形状も可能である。
【0043】
楔角度、したがって実質的に平坦な二つの楔面によって形成される角度は、適用に合わせて選択することができる。多くの実施形態において、楔面によって形成される楔角度は、90°~140°の領域内にあり、したがって鈍角である。この幾何学配置によって、例えばワイヤ端部に面取りを、正確に形成することができる。
【0044】
代替的又は付加的に、複数の切断加工工具の楔形状の複数のカッターが、90°~140°の領域内の楔角度を有することもできる。特に、ノッチ加工楔における楔角度は、楔形状の複数のカッターにおける楔角度と実質的に一致することができる。それによって、例えば、矩形横断面を有するワイヤ材料の4つの側面すべてに均一に傾斜した面取りを形成することが可能である。楔形状の複数のカッターは、供給方向に対して対称に、場合によっては非対称にも、形成することができる。
【0045】
複数のノッチ加工工具及び/又は楔形状の複数のカッターは、それぞれ専用の駆動部を有することができ、それが送り移動をもたらす。しかし好ましくは、ノッチ加工装置は、唯一の駆動部のみを有しており、その駆動部が、二つのノッチ加工工具に、同期して供給するために結合されている。これは、一方で、コスト的に好ましい解決である。というのは、1つの駆動部を節約することができるからである。他方で、それによって、ノッチ加工における複数のノッチ加工工具の逆方向の送りを、構造的に保証することができる。
【0046】
同様に、切断加工装置において、それが唯一の駆動部のみを有することができ、その駆動部が二つの楔形状のカッターと、同期して送るために結合されている。
【0047】
多くの実施形態において、ノッチ加工装置の駆動部がクランク軸を駆動し、そのクランク軸が二つのコネクティングロッドを介して、逆方向に線形に摺動可能な二つのスライダを駆動し、それらのスライダが、それぞれその工作物側の端部に複数のノッチ加工工具を支持している。同様な解決は、切断加工装置において設けることができる。
【0048】
代替的な解決においては、ノッチ加工装置の複数のノッチ加工工具と切断加工装置の楔形状の複数のカッターの移動を制御するために、1の駆動部のみが設けられている。この駆動部が、制御カムを備えたカムディスクを駆動することができ、そのカムディスクは次のように、すなわちカムディスクがその回転軸を中心に、正しいクロックで正しい回転方向に、かつ正しい程度において回転する場合に、交互に、まず複数のノッチ加工工具を工作物の方向に送り、かつ引き戻し、そしてその後に楔形状の複数のカッターを有する複数の切断加工工具を工作物の方向に送り、かつその後引き戻すことができるように、設計されている。このバリエーション例を、様々なワイヤ幾何学配置に適合させるために、カムディスクは交換可能であるので、このカムディスクを他の制御カムを有するカムディスクと交換することができる。
【0049】
分離加工装置又はその構成部品は、ワイヤ加工機械の機械フレームに機械的に堅固に取りつけることができる。それに対して多くの実施形態において、分離加工装置は、ワイヤの通過方向に対して、又は通過軸に対して平行にフローティング方式支承されている。したがって分離加工装置は、切り欠く際に、及び/又は分離する際にもたらされる、ワイヤの長手方向に発生する力を、通過方向に対して平行にフローティング方式で移動することにより補償することができる。それによって特に、ワイヤ端部におけるワイヤ幾何学配置が特に正確に設定に相当すること、及びワイヤ片がワイヤ端部の近傍において曲がらず、真っ直ぐであるようにできることが、明らかにされている。分離加工装置が駆動部(例えばサーボモータ)によってアクティブに、ワイヤの通過方向に対して平行に移動できることも、可能である。
【0050】
曲げ部品の形式の既成の成形部品を形成するワイヤ加工機械において、1つ又は複数の曲げ工具を有するしかるべき曲げ装置が設けられている。この曲げ装置は次のように、すなわち定められているすべての曲げ加工の終了後に、曲げが済んでいる成形部品と、供給される、まだ曲げられていないワイヤ部分との間で分離が行われるように、配置され、かつ形成されている。そのために、構造的に多数の可能性が存在する。曲げ装置は、材料の通過方向において分離加工装置の下流側に配置されることができるので、両者の間には軸方向の間隔が存在する。また、曲げ装置又はその工具が、分離加工装置と同一の平面内に位置することも、可能である。したがって曲げ装置の工具は、分離平面内で作用することができる。できあがった成形部品は、例えば分類装置を用いて良好部品と問題のある部品とに分類して、後に搬出することができる。同様なことは、定められたワイヤ端部を有する真っ直ぐなワイヤロッドを形成するために、ロッド大量生産機械として形成されている、ワイヤ加工機械においても、可能である。
【0051】
それに対して多くの実施形態は、ノッチ加工及び/又は切断加工の前に分離すべきワイヤ部分を把持するための搬送グリッパが、切断加工の終了後に分離されたワイヤ部分を下流側の作業ステーションへ搬送するために設けられていることを、特徴としている。この搬送グリッパは、ワイヤ搬送軸に対して平行に線形に摺動可能に案内されており、かつ、ノッチ加工の間及び/又は切断加工の間、力とトルクを減少するように切り替えることができるので、搬送グリッパはノッチ加工の間及び/又は切断加工の間に分離すべきワイヤ部分の長さ補正動作に追従することができる。したがって長さを切り詰められた既成の成形部品をさらに搬送する装置においても、成形部品がすでに把持されている場合には、分離プロセスに強制力が反作用しないことが、保証されている。
【0052】
さらに、分離加工が、ワイヤ長手軸に対して平行に作用する引張り力によって悪い影響を受けないことを保証するために、搬送装置は好ましくは次のように、すなわち切断加工の終了後に初めて、したがって分離すべき成形部品が実際に供給されたワイヤから分離された後に初めて、搬送移動を開始することができるように、構成されている。それに対して分離すべき成形部品へのアクセスは、ワイヤが完全に分断される前にすでに行うことができる。
【0053】
他の展開は、ノッチ加工と後続の剪断加工の方法加工工程を組み合わせている。したがって特に以下の問題を追求することができる。
【0054】
溝絶縁ペーパーを有するステータシートパケット内へエアピン(プラグコイル)をプロセス安全に接合するために、ヘアピンレッグにおけるできる限りばりのない面取りされた端部が好ましい。噛み込み切断加工する場合、又は引っ張り分離する場合には、複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具の楔角度にしたがって、ある程度シャープなピラミッド形状が生じる。ステータシートパケット内にヘアピンを差し込んで交差させた後に、ヘアピン端部は、通常、溶接プロセスによって接触される。したがってしばしば、溶接プロセス前にヘアピンレッグのシャープな端部が再切断加工されるので、互いによりよく溶接することができる、垂直の面が生じる。
【0055】
本発明の展開によれば、再切断加工は、品質を損なうことなしに、省くことができる。
【0056】
この展開において、分割加工は剪断加工として設計されており、それにおいて、ワイヤが剪断加工工具として形成された二つの分割加工工具の間に保持され、それらの分割加工工具が分離位置で異なる軸方向の側に対向する両側し、かつ、分離位置においてワイヤ材料が分断されるまで、ワイヤ軸に対して垂直に逆の供給方向へ同期して移動されることによって、ワイヤは分離位置において剪断加工によって分離される。
【0057】
したがって分割加工装置は剪断加工装置として設計されており、剪断加工装置は加工準備完了状態において剪断切断加工のために構成されている。
【0058】
剪断は、機構において既知のように、オフセットされた一対の力の作用からもたらされる。これらの力は剪断加工工具を介して投入され、その一方がワイヤ長手方向において、ワイヤ軸に関して対向する両側の分離位置の前方に、そして他方が長手方向において後方に作用する。したがってこれらの力は、軸方向に変位した位置においてワイヤに作用する。それらの間に分離位置がある。そこで、方法ガイドが正しい場合に、自由なワイヤ端部に、ワイヤ長手軸に対して垂直に方向付けされた、比較的滑らかな剪断面が生じる。
【0059】
剪断加工工具は、切断しない、平面的に延びる作業面を有することができ、かつ分離位置の近傍において平面的かつ材料をていねいに扱うように、ワイヤの軸方向と径方向に対向する両側面に支持され、かつ剪断加工工具が逆方向に供給された場合に、分離位置において剪断加工による分離をもたらす力を導入することができる。
【0060】
切断加工エッジを有する剪断加工工具の使用が効果的である。言い換えると、切断加工は、剪断切断加工として形成することもできる。
【0061】
特に、上で簡単に説明した、ヘアピンを形成する場合のこの適用に関して、剪断切断加工を有する展開が提案され、それがプロセス全体の簡略化を可能にし、かつレッグ端部の後加工のような、以降のプロセスを省くことを可能にする。
【0062】
このバリエーションにおいて、ノッチ加工に続く分割加工は、剪断加工によって行われる。剪断切断加工又は剪断加工は、DIN8588によれば、互いに通過しあう二つのカッターによる材料の分離である。この出願の枠内において、修正された定義によれば、材料は剪断加工の際に二つのカッターによって分離され、それらのカッターは互いに通過移動することができるが、各場合において必ずしもそうである必要はない。カッターは、噛み込み切断加工の場合とは異なり、共通の平面内にではなく、互いに軸方向にわずかに変位した平面内に位置する。例えば銅のような、比較的柔らかい材料の場合には、分離を達成するために、カッターは通常、互いに通過しあうことが必要である。例えばばね鋼のような、より硬い、より脆い材料の場合には、カッターが互いに達する前に、材料が裂けて、したがって分離が完了することがある。分離は、停止させることができる。
【0063】
剪断切断加工のために、剪断加工工具ははさみと同様に切断加工エッジを有しており、その切断加工エッジが剪断加工プロセスの際に互いに変位した平面内で逆に移動し、場合によっては互いに通過し合う。材料は、剪断力によって剪断される。カッターは、その間に介在する切断平面に対して平行に移動し、カッターの間には狭い剪断間隙が存在する。切断平面は、分離位置に位置決めされている。剪断切断加工によって、分離位置において分離されたワイヤの端面は、ワイヤ長手軸に対して実質的に垂直の平面内に位置することができる。ワイヤの終端部分は、ピラミッド台の形状を有することができる。フラットな、微視的に平坦な端面は、特に、ワイヤが後続の加工工程において、例えば溶接により、他の構成部品と平面的に当接して結合されるべき場合に、効果的であり得る。
【0064】
したがって特に、1つの分離加工方法が提供され、それにおいてステータシートパケット内へ容易に接合するための面取りされたワイヤ端部が生じ、かつさらにワイヤ端部に、プロセス安全の溶接に必要とされる、真っ直ぐな面が残る。したがって、以降の「ヘアピン端部を仕上げ切断加工する」プロセスを省くことができ、それがステータ製造における製造コストを低下させる。
【0065】
剪断加工のため、特に剪断切断加工のための準備として、ワイヤが前もって、互いに対をなして対向する4つの側において、切り欠かれると、好ましいことが明らかにされている。ノッチは、矩形横断面を有するワイヤの場合には、好ましくは、実質的に平坦なすべての側面に設けられる。そのために、それに応じた実施形態のノッチ加工装置は次のように、すなわち剪断加工に先立つノッチ加工において、ワイヤがまず、第1の方向に対向する両側において、そしてその後に第2の方向に対向する両側において切り欠かれ、第1の方向と第2の方向が互いに対して垂直に延びるように、構成されている。
【0066】
ノッチ加工と分割加工のために、異なる、特にそれぞれの加工のために設計された工具を使用することができる。しかしそれは、必ずしもそうである必要はない。多くの実施形態において、ノッチ加工のためと分割加工のために、ワイヤの対向する両側にそれぞれコンビネーション工具が使用され、そのコンビネーション工具は(少なくとも)1つの統合されたノッチ加工工具と統合された分割加工工具とを有しており、コンビネーション工具は時間的に次々と対をなして同期して、二つの互いに対して垂直の方向に供給される。ノッチ加工機能と分割加工機能(例えば噛み込み切断加工による、又は剪断切断加工による)は、唯一の工具内に統合されている。ワイヤ加工機械の工具を支持する構成部品は、直交する供給方向における供給移動を許す、必要とされる移動自由度をもたなければならない。
【0067】
コンビネーション工具は、例えばノッチ加工-噛み込み切断加工用に設計されることができる。他のコンビネーション工具は、ノッチ加工-ノッチ加工-剪断切断加工用に設計されることができる。
【0068】
その他、分割加工が、剪断加工、特に剪断切断加工によって実施されるバリエーションの一例においては、噛み込み切断加工による分離を実施するバリエーションの一例と同様に、多くの付随する特徴と措置を選択することができる。これらは、特に、工具の異なる加工移動のための唯一の駆動部の使用、及び/又は搬送グリッパの使用、及び/又はノッチ深さ、ノッチ角度の好ましい寸法、及び/又は切断加工の間のワイヤの静止、を含む。
【0069】
本発明の他の利点及び視点が、請求項から、かつ以下で図を用いて説明する、本発明の好ましい実施例についての以下の説明から、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、第1の実施例に基づいて、ロッド大量生産機械として設計されているワイヤ加工機械を示す側面図である。
図2図2は、分離加工装置の下流側に配置されている、分離されたワイヤロッドを下流側に配置されている次の加工機械へ個別に搬送し、又は引きわたすための搬送装置を示している。
図3図3図1内の分離加工装置の構成部品を示す斜視図である。
図4図4は、図1の分離加工装置を、複数のノッチ加工工具と切断加工装置の楔形状の複数のカッターが作用する平面(分離平面)内で示す垂直の断面図である。
図5図5は切断加工装置の構成部品を示す部分斜視図である。
図6図6はノッチ加工を図式的に示している。
図7図7図6のノッチ加工に続く切断加工を図式的に示している。
図8図8は、2段階の分離加工装置を有する曲げ機械の形式のワイヤ加工機械の他の実施例を示す側面図である。
図9図9図8の曲げ機械を斜視図で示している。
図10図10図9の詳細を拡大して示している。
図11A図11Aは、噛み込み切断加工による第1段階の分離後に、形成されたフラットワイヤのワイヤ端部を幅広側から(上方部分の図)と幅狭側から(下方部分の図)示している(左、FEMシミュレーション、鏡像的に右写真画像)。
図11B図11Bは、図11Aと同様に、本発明の実施形態に基づいて、2段階の分離加工(ノッチ加工及び後続の噛み込み切断加工)後に形成された、フラットワイヤのワイヤ端部を示している。
図12図12は、カムディスクを有する代替的な駆動概念を図式的に示している。
図13A-13B】図13A及び13Bは、それぞれ互いに対して角度をもって方向付けされた二つの楔形状のカッターを有する二つの工具を図式的に示しており、工具は複数のノッチ加工工具としても、複数の切断加工工具としても使用されることを示す。
図14A-14D】図14A-14Dは、ノッチ加工-ノッチ加工-剪断加工の加工順序を有する方法のバリエーションの一例を図式的に示しており、ワイヤの対向する両側におけるすべての部分加工工程に関し、それぞれ、(i)第1の方向におけるノッチ加工、(ii)第1の方向に対して垂直の第2の方向におけるノッチ加工、及び(iii)剪断切断加工の機能を実施する3つの異なる機能部分を有するコンビネーション工具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、実施例に基づいて、全体をロッド大量生産機械として設計されたワイヤ加工機械100の側面図を示している。ワイヤ加工機械は、真っ直ぐなワイヤロッドの形状の既成の成形部品を形成するように整えられている。ワイヤ加工機械は、小文字x、y及びzで特徴付けられる、垂直のz軸と水平のx軸及びy軸を有する直角の機械座標系MKを有している。図示される例において、x軸は、ワイヤ材料が通過する通過方向に対して平行に延びている。機械座標系の座標軸から、閉ループ制御で駆動される機械軸が区別され、その機械軸は通常、大文字(例えばA軸など)で示される。ワイヤ加工機械の制御装置110は、すべての機械軸の作用運動を制御し、かつ調整する。
【0072】
ワイヤ形状の初期材料Wは、巻かれた材料ストック(コイル)の形式で存在し、そのコイルは、例において、リール105上に巻き取られている。初期材料は、電気的に絶縁されたフラット材料の形式で存在し、そのフラット材料が電気的に導通する支持体材料を有し、その支持体材料が電気的に絶縁する絶縁層によって被覆されている。ここで、「フラット材料」という概念は、一般的に、その電気的に導通する支持体材料が対をなして互いに対して平行に方向付けされた側面を有する、工作物である。支持体材料は、例えば比較的シャープな、又はやや、又は完全に丸みを帯びた、及び/又は面取りを有するエッジを備えた矩形横断面を有することができる。矩形横断面を有する、絶縁された銅ワイヤ又はアルミニウムワイヤの形式のフラット材料は、例えば電気モータのコイル部材を形成するために、又はバスバーを形成するために、使用することができる。
【0073】
リール105を出た後に、フラット材料は通過軸155を有する多かれ少なかれ同軸で、下流側のサブアッセンブリ内へ進入する。これは、工作物の通過軸155に沿って次の順序で、すなわち直線化装置120、長さ測定装置130、ストリップ装置200、ストリップ装置の下流側に配置されたブラシ装置160、ブラシ装置の下流側に配置された引き出し装置140、及び引き出し装置の下流側に配置された分離加工装置300を有している。
【0074】
直線化装置120は、相前後して配置されている二つの、直線化ローラを備えた直線化器具を有しており、それらの直線化ローラが通過する工作物を次々に、互いに対して垂直の二つの方向へ加工し、それによって直線化する。
【0075】
選択的な長さ測定装置130は、測定ホィール及び対向する走行ホィールを有し、かつ後続のユニットへ搬送される工作物長さの正確な測定を許す。
【0076】
統合されているストリップ装置200は、供給されたフラット材料から成形部品を分離する前に、絶縁されたフラット材料の部分の絶縁剥がしに用いられる。フライス加工装置200は、互いに対して変位して配置された二つの部分ユニット、すなわち、長さ測定装置130の直ぐ下流側に配置されている、第1の部分ユニット200-1と、第1の部分ユニットの後方に軸方向の間隔をもって配置されている、第2の部分ユニット200-2を有している。部分ユニットの各々は、1つのフライス加工において同時にフラット材料の二つの互いに対向する両側面を周面フライス加工を用いて絶縁剥がしするように、設計されている。部分ユニットの各々は、二つのフライス加工ユニットを有し、それらのフライス加工スピンドルは互いに対して軸平行かつ軸変位して次のように、すなわちフライス加工スピンドルの回転軸が互いに対して平行に変位しており、かつフライス加工スピンドル内に収容されているフライス加工工具が互いに平行に変位した回転軸を中心に回転できるように、配置されている。第1の部分ユニット200-1において、二つのフライス加工ユニットの回転軸線は垂直に、したがって機械座標系のz方向に対して平行に、方向付けされているので、フラット材料の、水平平面内で対向する両側面は同時に絶縁剥がしすることができる。後続の第2の部分ユニット200-2においては、フライス加工ユニットの回転軸は水平、したがって機械座標系のy軸に対して平行に方向付けされており、それによって同時に、通過するフラット材料の垂直に重なり合った上側と下側が同時に絶縁剥がしされる。したがって間隔をもって相前後して配置されている部分ユニットのフライス加工ユニットは、互いに対して90°だけ変位して取りつけられている。
【0077】
他の実施形態において、ストリップ装置は他の原理にしたがって、例えばレーザ加工を用いて、又は真っ直ぐな切断加工エッジを備えたブレードによる皮むき加工を用いて作動し、その切断加工エッジは、ブレードの作業位置において支持体材料の露出すべき側面の近傍に次のように、すなわちブレードによって捕捉された絶縁層の部分が、ブレードに対してフラット材料が前進する場合に支持体材料から除去されるように(独国特許出願公開第102017200745(A1)号明細書)、配置される。
【0078】
ストリップ装置は、例えば加工すべき初期材料がむき出しであり、したがって絶縁材料によって被覆されていない場合には、省くこともできる。ブラシ装置160についても、同じことが言える。
【0079】
送り運動は、ストリップ装置120の後ろに配置されている引き出し装置140を用いてもたらされ、その引き出し装置が工作物を、制御装置を介して予め定めることのできる引き出しプロフィールで、上流側に配置されている装置を通して引き出し、下流側の分離加工装置300へ搬送する。引き出し方向(x方向)における送り力は、引き出し装置の引き出しローラ又は引き出しベルトとフラット材料との間の摩擦によって生じる。代替的に、例えばトング引き出しを設けることもできる。
【0080】
分離加工装置300は、引き出し装置140のすぐ下流側に配置されており、ストリップ装置120の内部ではフラット材料の曲げ成形は行われないので、分離加工装置は、予め定めることのできる長さの真っ直ぐな成形部品、したがってワイヤロッドを、供給される絶縁されたフラット材料から分離する。分離加工装置とそのバリエーションの例については、さらに以下で詳細に説明する。
【0081】
供給されたワイヤ材料を分離した後に、ワイヤロッドは、例えば図示されない収集装置内で収集して、以降の加工へ供給することができる。この実施例において、分離加工装置300の下流に搬送装置400が配置されており、その搬送装置は図2に図式的に示されている。この搬送装置は、分離されたワイヤロッドを下流側のさらなる加工機械へ個別にさらに搬送し、又は引きわたすために用いられ、ここでは「ロッド引きわたし装置」又は略して「ロッド搬送装置」とも称される。搬送装置400は、コンソール405によって支持される水平のリニアガイド410を有しており、そのリニアガイドにおいて搬送グリッパ420が線形に移動可能に案内されている。搬送グリッパの把持機構は、サーボモータを搭載したキャリッジ430に取り付けられており、そのキャリッジがリニアガイド410に沿って走行することができる。
【0082】
図2において、懸架して配置されている搬送グリッパが、搬送操作の開始前に、切り離すべきワイヤロッドW1を上から把持し、それを分離加工の間水平の方向付けで保持し、かつ切り離されたワイヤロッドを分離加工の終了後に引きわたすために左へ搬送し、その後、新しいワイヤロッドを把持するために、搬送装置の後方へ水平に走行して戻る。
【0083】
図示される構成において、搬送グリッパ420は、分離加工の間は力とモーメントを減少するように切り替えられているので、搬送グリッパ420は分離加工の間、分離すべきワイヤ部分の長さ補正動作に水平にフローティング方式で追従することができる。
【0084】
次に、図3~5を用いて分離加工装置300構造と機能を詳細に説明する。図3は、分離加工装置300の構成部品を有する斜視図を示している。図4は、複数のノッチ加工工具と切断加工装置の楔形状の複数のカッターが作用する平面(分離平面)内で分離加工装置300を垂直の断面で示しており、図5は切断加工装置の構成部品の部分図を示している。
【0085】
分離加工装置300は、分離のために設けることができる分離位置において、供給されたワイヤ材料から予め定められたワイヤ長さの成形部品を切り離すために用いられる。「分離位置」という概念は、ワイヤに沿って定められた位置、したがってワイヤに沿った所定の箇所を記述している。分離加工装置300は、ノッチ加工装置320(そのうちのいくつかの構成部品が図4に示されている)及びノッチ加工装置と調整して加工可能な、切断加工装置340の形式の分割加工装置を有しており、その構成部品が図5にさらに単独位置で示されている。
【0086】
分離加工装置300のこれらの構成部品は、その全体を水平方向においてワイヤの通過軸155に対して平行にフローティング方式で支承されている。そのためにこれらの構成部品は、ベースプレート310上に取りつけられており、そのベースプレートはローラ周回ガイドの形式のリニアガイド312上で摺動可能に案内されている。直線化ユニット140へ向いた側にサーボモータ314が取りつけられており、そのサーボモータは、ベースプレートにリンク結合された引っ張りロッドを軸方向に移動させることができる。したがって分離加工装置300は全体として、フローティング動作が行われた後に前方へ動力で連れ戻すことができる。サーボモータは、長手方向にもたらされる力を補償することができるようにするために、フローティング方式での支承が充分でない場合に、分離加工プロセスの間分離加工装置をアクティブに移動させるために、利用することもできる。したがってサーボモータは、x方向(通過軸155に対して平行)において分離加工装置300全体を軸方向に位置決めするためにも、利用することができる。
【0087】
ノッチ加工装置320(その構成部品は図4において垂直断面で見ることができる)は、次のように、すなわちワイヤ材料が所望の分離位置において複数のノッチ加工工具325-1、325-2による、二つの互いに対向する両側からのノッチ加工によって、成形により、したがって材料除去なしで、切り欠くことができるように、構造化されている。ノッチ加工は次のように、すなわち対向するノッチの間の分離箇所に細くなったワイヤ横断面が残るように、制御される。そのためにこれらのノッチ加工工具は、垂直の第1の方向(z軸に対して平行)に沿って逆平行に通過軸155に対して対称に調整して供給される。そのためにノッチ加工装置はサーボモータの駆動部322を有しており、それがトランスミッション323を介して、水平の軸線で軸承されたクランク軸324を回転駆動する。クランク軸上には、第1のコネクティングロッド326-1と第2のコネクティングロッド326-2が、クランク軸のしかるべき偏心した部分に回転可能に支承されている。第1のコネクティングロッドは、第1のスライダ327-1に結合されており、そのスライダはクランク軸によってコネクティングロッドを介して垂直の第1の方向において上方と下方へ線形に摺動可能である。第1のスライダ327-1の、工作物へ向いた端面に、第1のノッチ加工工具325-1のための収容部があって、したがってそのノッチ加工工具は上から工作物内へ進入する。第2のコネクティングロッド326-2は、L字状に形成された第2のスライダ327-2を駆動し、そのスライダも第1の方向に対して平行に上方と下方へ摺動可能であり、かつその前方の端部に、第2のノッチ加工工具325-2のための工具収容部を有している。したがってサーボ駆動部322を介して二つのノッチ加工工具を同時に逆方向に工作物へ、そして工作物から離れるように、送ることができる。コネクティングロッド又はスライダのストロークは次のように、すなわち分離位置において工作物を完全に切断することなしに、複数のノッチ加工工具が工作物にノッチを形成するように、調節されている。むしろ、対向する両側にそれぞれノッチが残り、それらの間にワイヤ材料からなる、テーパー状ワイヤ横断面を備えた「ウェブ」が残留する。
【0088】
分割加工装置として機能する切断加工装置340は、同様に構築されている。それは、サーボモータの形式の切断加工駆動部342を有しており、それがトランスミッションを介して、水平の軸によって支承されているクランク軸を駆動し、そのクランク軸は二つのコネクティングロッドを介して、水平方向に直線的に摺動可能な第1のスライダ347-1及びそれに対して平行に直線的に摺動可能な第2のスライダ347-2を、逆の送り方向をもって同期して駆動する。これらのスライダは、それぞれその端部に工具収容部を支持しており、その工具収容部内に、楔形状のカッターを有する第1の切断加工工具345-1が、そして対向して第2のスライダに楔形状のカッターを有する第2の切断加工工具345-2が取り付けられている。駆動部342の駆動を介して、二つの楔形状のカッターが、切断加工を実施するために、互いに通過軸155に対して対称に、第2の方向(y方向)に対して平行に互いに近づくように、又は互いに離れるように、移動することができる。楔形状の複数のカッターを有する複数の切断加工工具を用いて、切断加工において楔形状の複数のカッターが互いに対して、ワイヤ材料が分離位置において切断されるような距離だけ近づくように移動されることによって、切り欠かれたワイヤ材料は、分離位置においてテーパー状ワイヤ横断面の領域内で、噛み込み切断加工により分離することができる。
【0089】
複数のノッチ加工工具の、工作物(ワイヤ)へ向いて係合する複数のカッター及び複数の切断加工工具の楔形状の複数のカッターの切断加工エッジは、通過方向に対して垂直に方向付けされた同一の平面(分離平面、図4内の図面平面)内に配置されている。複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具の作業運動は、それに対応付けられた駆動部322、342を用いてワイヤ加工機械の制御装置110を介して、次のように、すなわち複数の切断加工工具が外側へ向かってその引き戻された位置へ引き戻されており、それによって複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具の間の衝突が排除されている場合に初めて、複数のノッチ加工工具が工作物内へ係合することができるように、調整される。切断加工のために、複数のノッチ加工工具が工作物から離れるようにその引き戻された位置へ移動され、その後に複数の切断加工工具が工作物のワイヤ材料をテーパー状ワイヤ横断面の領域内で噛み込み切断加工によって切断する。
【0090】
図6と7には、ノッチ加工(図6)と切断加工(図7)が、図式的に示されている。ノッチ加工(図6)においては、シャープな、又はやや丸みを帯びた尖端領域を有する屋根形状のノッチ加工楔の形式の複数のノッチ加工工具325-1、325-2が使用される。楔面の間の楔角度KWKは、鈍角であって、例場合においては100°よりも少し大きく、例えば120°である。ノッチ加工は、どのような材料除去もない、純粋な成形加工である。ワイヤ材料内へ複数のノッチ加工工具が逆平行に進入する場合に、材料は実質的にワイヤの長手方向に押しやられて、材料除去が行われることはない。しかしこのように軸方向に材料を押しやることは、ワイヤ材料の曲がりをもたらさない。というのは、分離加工装置300がフローティング方式で支承されており、かつ軸方向の補償運動を実施することができるからである。これらのノッチの間の領域内に、テーパー状ワイヤ横断面WDが残り、その中でワイヤ材料は、ノッチ加工の結果として、成形されていないワイヤ材料に比較して硬化されている。
【0091】
複数のノッチ加工工具を引き戻した後に、複数の切断加工工具345-1、345-2はすでに切り欠かれている材料の方向に、したがって対向するノッチKBにおいて、第2の方向に対して平行に、したがって複数のノッチ加工工具の作用方向に対して直交して、同期して送られる。図7が示す状況において、複数の切断加工工具の互いに向き合った、1つの平面内に位置する切断加工エッジが次のように、すなわち分離平面内に位置する分離位置TPにおいて噛み込み切断加工によってワイヤ材料が切断されるように、接触し、又はほぼ接触する。分離位置においてすでに切り欠かれている領域内での噛み込み切断加工は、先立つノッチ加工によってワイヤ材料がすでに著しく硬化されている場所で行われることが、明らかである。このことが、切断加工において、きわめて滑らかで、よく定められた破断面をもたらす。
【0092】
さらに、複数のノッチ加工工具の楔面と複数の切断加工工具の楔面は、生じる成形部品のワイヤ端部に、それぞれ、斜めの、ある程度台形状の平面の形式の、はっきりと定められた面取りを生じさせる。複数の切断加工工具の楔面の間の楔角度KWKSは、多くのバリエーションの例において、ノッチ加工工具の楔角度KWKに相当するので、フラット材料の幅広側における斜面(例場合においてこれは、複数のノッチ加工工具によって形成される)も、フラット材料の幅狭側の面取り又は平面(例場合においてこれは、複数の切断加工工具によって形成される)も、側面の最初の方向付けに対して同じ角度だけ傾いている。また、複数の切断加工工具と複数のノッチ加工工具の楔角度が異なることも、可能である。
【0093】
図示される構成とは異なり、ノッチ加工装置と切断加工装置の相対配置を逆にすることもできるので、例えば図4は、切断加工装置の構成部品(垂直方向の切断加工用)を、そして図5はノッチ加工装置の構成部品(水平方向のノッチ加工用)を示している。
【0094】
図8~10を用いて、2段階の分離加工装置(ノッチ加工と噛み込み切断加工)を有するワイヤ加工機械の他の実施例を説明する。ワイヤ加工機械800は、既成の曲げ部品、したがって既成の成形部品を形成する曲げ加工機械800であり、それらの成形部品はワイヤ端部の間に1つ又は複数の曲がりを有している。この例において曲げ機械800は、電気モータを構築するために、既成の曲げ加工部品FTがU字状に曲げられたコイル部材、いわゆるヘアピンの形式で曲げることができるように、構築され、かつプログラミングされている(図10を参照)。
【0095】
曲げ加工機械は、垂直の前壁810を備えた機械フレームを有しており、その前壁内にワイヤガイド820が形成されており、そのワイヤガイドが供給されたワイヤを通過軸855に沿って案内する。機械前壁810の後ろのカプセル化された領域内には、特に直線化ユニットと引き出し装置が存在し、その引き出し装置によってワイヤがエンドレスストックから引き出されて、ワイヤガイド820を通して直線化されて送られる。ワイヤガイド及びそれと相対回動不能に結合されている、上流側に配置された装置(引き出し装置と直線化ユニット)は、制御されて通過軸85を中心に回転可能である。ワイヤガイドの後方の垂直の平面内に、分離加工装置900の構成部品が配置されている。分離加工装置の、機械壁とは逆の出口側に、ワイヤ材料内に予め定められた曲がりを形成するための1つ又は複数の曲げ加工工具を有する、ここには詳細に示されない曲げ加工ユニット850が設けられている。製造プロセスの間、ワイヤ材料は、曲げ加工ユニット850の方向に前方へ搬送されて、そこで、1つ又は複数の互いに変位した曲げ平面内で1回又は複数回曲げられて、それによって成形部品の所望の曲げ幾何学配置を得ることができる。その後、供給されたワイヤストックから、できあがった成形部品が分離加工装置900を用いて分離される。
【0096】
分離加工装置900は、全体として機械座標系のx方向に対して平行に、又は通過軸855に対して平行に、フローティング方式で支承されており、それによって必要な場合には、ノッチ加工と切断加工の間にできあがった成形部品の長手方向の延びの補正動作を許すことができる。サーボモータを結合することもでき、そのサーボモータは(図2のサーボモータ314と同様に)、分離加工プロセスの間に、フローティング方式での支承が充分でなく、長手方向にもたらされた力を補償することができない場合に、分離加工装置900を通過軸855に対して平行にアクティブに移動させるために、利用することができる。
【0097】
分離加工装置900は、ノッチ加工装置920と切断加工装置940を有しており、それらは全体として4つの部分ユニットを有するクロス形状の配置を形成している。ノッチ加工装置920は、線形に摺動可能に支承された第1のスライダ927-1を有しており、そのスライダは、フランジ止めされたサーボモータによって、ボールねじ駆動部を有する、中間配置されたトランスミッションを介して、材料の通過軸855に対して径方向の第1の方向に前進及び後退するように走行することができる。スライダの工具側の端部に、第1のノッチ加工工具925-1を収容するための工具収容部が設けられている。直径方向に対向して第2のスライダ927-2が取りつけられており、そのスライダが専用のサーボ駆動部を介して第2のノッチ加工工具925-2を第1のノッチ加工工具に対して逆平行に工作物の方向へ、又は逆方向に(第1の方向に対して平行)送ることができる。第1の方向は、通過軸に対して垂直のy-z平面内で、y方向及びz方向に対して45°だけ斜めにされている。
【0098】
切断加工装置940の二つの部分ユニットは、ノッチ加工装置の該当するユニットに対して90°周変位して配置されている。切断加工装置940の第1のスライダ947-1は、楔形状のカッターを有する切断加工工具945-1を支持し、対向して第2のスライダ947-2は、楔形状のカッターを有する切断加工工具945-2を支持している。これら工具の配置は、特に図10に良好に見られる。
【0099】
スライダは、それぞれプレート形状の支持体上に取りつけられており、その支持体はz方向に対して平行にも、y方向に対して平行にも走行可能であるので、スライダによって支持される工具及び工具の作業方向は、それぞれの工作物幾何学配置に合わせることができる。
【0100】
この実施形態において、工具の各々(二つのノッチ加工工具の各々と二つの切断加工工具の各々)のために、専用のサーボ駆動部が設けられている。これらのサーボ駆動部は、ワイヤ加工機械の制御ユニットを介して次のように、すなわち同じ平面(分離平面)内の、ワイヤの分離位置が存在する場所において、まず、対向するノッチを形成するために、複数のノッチ加工工具が逆平行に送られ、その後複数のノッチ加工工具が系方向に引き戻され、そしてその後、第1の方向に対して垂直の第2の方向において楔形状の複数のカッターを有する複数の切断加工工具が径方向内側へ、狭められた材料ウェブの領域内で噛み込み切断加工によってワイヤ材料が切断されるまでの距離送られるように、調整されている。
【0101】
図8の表示とは異なる実施例も存在し、それらにおいて、分離加工装置の構成部品と、曲げを形成するのに利用される、曲げ加工ユニットの構成部品は、共通の平面内に位置している。図9において、曲げ加工ユニットのスライダと工具は、例えばそれぞれ周方向において、ノッチ加工装置920と切断加工装置940の、水平に対して45°傾斜したユニットの間に位置することができる。それらは、水平と垂直に方向付けされたユニットを有するクロス形状の配置を形成することができる。
【0102】
多くの試みにおいて、既成の成形部品の製造において、成形による先行するノッチ加工と、テーパーワイヤ部分内の後続の噛み込み切断加工による、2段階の分離加工は、きわめて良好に幾何学的に定められたワイヤ端部をもたらすことが、明らかにされている。説明するために、比較実験が実施され、それらにおいて一方では、本発明に係る2段階の方法において分断加工が実施され、他方では、比較のために、先行するノッチ加工なしの1回の噛み込み切断加工による分断加工が実施された。
【0103】
説明するために、図11Aは、矩形横断面を有するフラットワイヤのワイヤ端部を、一方で幅広側から(上方の部分図)、そして他方では幅狭側から(下方の部分図)示している。左には、それぞれ有限要素(FEM)シミュレーションの結果が示されており、右にはそれに対して鏡像的に、実験に基づくワイヤ端部の写真撮影が示されている。多数の実験が実施された。シミュレーションと実験との間の良好な一致に基づいて、結果は代表的かつ重要であると、推定される。
【0104】
先立つノッチ加工なしの噛み込み切断加工の場合には(図11A)、材料の対向する幅広側にノッチを形成する場合に、幅狭側には外側へ向けられた材料の湾曲WBの形式の著しい横断面拡幅が生じる。この領域内で材料は材料排除によって、元の加工されていないワイヤ材料のエンベロープ輪郭を越えて外側へ押しやられる。それを別にすれば、形成された幾何学配置は、ワイヤ端部の幅広側に実質的に平坦に斜めになった面取りを有する所望の幾何学配置に相当する。
【0105】
それに比較して、図11Bは、先立つノッチ加工を有する切断加工を実施した場合の結果を示している。下方の二つの部分図から明らかなように、ワイヤ材料の幅狭側にも、やや内側へ湾曲した、そのほかにおいては多かれ少なかれ平坦な面取りFSの形式の、はっきりとした横断面のテーパーが生じる。したがってこのように形成されたワイヤ端部は、幅広側にも幅狭側にも、内側へ向けられた面取りFSが設けられているので、終端領域内で材料は、初期材料のエンベロープ輪郭を越えて張り出さない。
【0106】
上で示した実施例の駆動コンセプトは、単なる例である。複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具を駆動するための他の可能性も存在する。
【0107】
図式的な図12は、複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具のために唯一の駆動部で管理する、駆動概念の構成部品の例を示している。図示されていない駆動部が、カムディスク1210を駆動し、そのカムディスクは通過軸155に対して平行又は同軸に延びる回転軸を中心に駆動部によって回転可能である。カムディスク1210にはカムトラックが形成されており、そのカムトラックは、例えば一周する溝1212の形式で形成されており、又はカムディスクの外側又は内側に設けることもできる。カムトラックの推移は、ローラ1214を介してたどられ、それらのローラは、例場合において、垂直に摺動可能な第1のスライダ1227-1、1227-2と水平に摺動可能な第2のスライダ1047-1、1047-2に取りつけられている。通過軸155に対して径方向に線形に摺動可能に案内されているスライダは、第1の実施例におけるのと同様に、その、工作物へ向いた内側に、複数のノッチ加工工具又は複数の切断加工工具用の工具収容部を支持している。
【0108】
スライダ移動の復帰は、それぞれ構造形式にしたがって、溝1212の幾何学配置を介して強制的に、又はばねの復帰力を介して行うことができ、そのばねがローラ又はローラと結合された部材をカムトラックへ押圧する。この概念においては、垂直方向のノッチ加工運動も水平方向の切断加工運動も、唯一のカムディスク1210によって制御される。カムディスクは、他の運動学を実現するために、交換することができる。カム幾何学配置を介して、きわめて大きい力を発生させることができ、それは、特にノッチ加工の場合に効果的であるが、噛み込み切断加工の場合でも効果的である。例場合におけるカムディスクは、無制限に周回せず、最大90°の領域内で可逆的に移動される(双方向矢印を参照)。ノッチ深さの調節は、カムディスクの回転角度を介して行われる。最大で90°の揺動領域を、多く利用するほど、それだけ深くノッチが形成される。カムディスクのコンセプトは、コンパクトな解決であって、それにおいて小さい空間で二つの運動(複数のノッチ加工工具と複数の切断加工工具のための)を実現することができる。様々な勾配のカムを使用する場合に、良好かつ可変の力伝達が得られる。
【0109】
ノッチ加工にも、切断加工にも利用される、楔形状の工具を有する2つだけのサーボ駆動部が設けられる、実施形態も可能である。そのために、例えばワイヤをノッチ加工と切断加工との間で90°回動させることができる。
【0110】
楔形状の工具を次のように、すなわちワイヤWにおいて、一方で、z方向とy方向のしかるべき移動によってノッチ加工が、そして他方では-同一の平面内で-それに対して垂直の方向において切断加工が可能であるように、形成又は構成することも可能である。それについて図13Aは、それぞれ自由端部において三角形状の二つの工具1330-1、1330-2によるノッチ加工を示しており、それらの工具はそれぞれ互いに対して90°で延びるそれぞれ楔形状の二つのカッターを有している。ノッチは、横断面が矩形のワイヤの、y方向において互いに対向する二つの平坦な両側に形成される。図13Bは、自由端部が三角形状の同じ工具による切断加工を示しており、ここでは90°変位して延びる楔形状の複数のカッターが使用される。切断加工のための送り方向は、z方向に対して平行に延びている。したがって工具は、複数のノッチ加工工具としても、複数の切断加工工具としても機能する。それらは、加工の各々のために、楔形状の複数のカッターを有しており、これらのカッターの切断加工エッジは互いに対して垂直に延びている。
【0111】
この実施例の分離加工装置は、ノッチ加工装置と、時間的にノッチ加工装置の後に加工可能な切断加工装置とを有しており、それらは同一の構成部品を分け合うので、ノッチ加工装置は切断加工装置としても利用される。したがってノッチ加工装置と切断加工装置は、互いに別の装置である必要はなく、それらは統合することができる。
【0112】
図13A内の複数の工具1330-1、1330-2は、コンビネーション工具の例であって、そのコンビネーション工具は、互いに直交して延びる真っ直ぐな切断加工エッジを備えた統合されたノッチ加工工具と統合された噛み込み切断加工工具を有している。図13Aにおいてはノッチ加工工具が、そして図13Bにおいては対称楔形状の複数のカッターを有する切断加工工具が、工作物と同期係合している。
【0113】
図14Aから14Dを用いて、他の加工プロセスのバリエーションの例が記述され、それにおいて他のコンビネーション工具1430-1、1430-2が使用される。これらには、互いに直交する楔を有する第1のノッチ加工工具1425-1と第2のノッチ加工工具1425-2及び剪断加工カッターとして設計された切断加工工具1435-1が統合されている。
【0114】
このロセスにおいて、矩形の横断面を有するワイヤの形式の工作物Wが、分離位置において分断又は分離される。そのためにワイヤWは、まず、y方向に対向する平坦な側において同時に切り欠かれる(図14A)。その後、同じ軸方向の位置において、同じコンビネーション工具1430-1、1430-2によって、ワイヤが、z方向に対向する平坦内側面において切り欠かれる(図14Bを参照)。したがって工作物は、2段階のノッチ加工において(又は二つのノッチ加工によって)、4つすべての側面において切り欠かれるので、そこにV字状のノッチが存在する。図14Cに破線で示されるノッチ底KGが、分離位置における狭められたワイヤ横断面を画成している。
【0115】
すべての側のノッチ加工の後に、ワイヤは分離位置において剪断切断加工において、したがって剪断切断によって、完全に分断される。そのためにコンビネーション工具1430-1、1430-2に、それぞれ剪断切断加工用に形成された切断加工工具1435-1、1435-2が統合されており、複数の切断加工工具の1つ、例えば切断加工工具1435-1は、切断加工装置の上側カッターとして、そして他方の切断加工工具、例えば切断加工工具1435-2は、下側カッターとして機能する。複数の切断加工工具1435-1、1435-2は、複数の剪断加工工具又は剪断加工カッターと称することもできる。
【0116】
図14Dの側面図において、複数の切断加工工具(複数の剪断切断加工工具)の形態が、良好に認識される。複数の切断加工工具の各々1435-1、1435-2は、切断加工エッジ1436-1、1436-2を有しており、それらは、工具が付属の機械軸の工具ホルダに固定され、かつ正しく整えられている場合に、y方向に対して平行に直線的に延びている。切断加工エッジは、非対称性を有する切断加工楔に形成されており、その切断加工楔の、分離位置の近傍に位置する画成面(露出面)1437-1、1437-2は、z-y平面に対してほぼ平行に方向付けされており、他の画成面(押圧面)1438-1、1438-2は、それと切断加工エッジ1436-1、1436-2において90°より小さい楔角度KWを形成し、したがってy方向とz方向に対して斜めに延びている。楔角度KWは、先行するノッチ加工工程を実施した、複数のノッチ加工工具の楔角度KWKのほぼ半分の大きさである。
【0117】
剪断切断加工を実施するために、ワイヤWは静止しており、したがって前進されない。コンビネーション工具は、対応付けられた機械軸によって、切断加工エッジ1436-1、1436-2が実質的に、静止しているワイヤの分離位置又は分離平面内に来るように、移動される。
【0118】
そのためには、先行する最後のノッチ加工から始まって、z軸に対して平行の軸移動とx方向に対して平行の二つの切断加工工具の逆の移動が必要である。分離位置TPに対応付けられた、カッター楔の露出面の間には、大体において狭い切断間隙が存在し、その大きさは、例えば百分の1ミリメートル以下の領域内にあることができる。
【0119】
図14Dに示す相対位置から始まって、その後、複数の剪断切断加工工具が、z方向に対して平行に逆方向に同期して供給される(矢印)。切断加工エッジ1436-1、1436-2は、まず多かれ少なかれ同時に(理想の場合においては同時に)向き合ったノッチの底と接触し、その後さらにワイヤ材料の内部へ摺動する。切断加工楔がさらに進入する場合に、楔面1436-1、1436-2が押圧面として作用し、その押圧面が材料を分離位置から外側へ向かって逆方向に押し出す。切断加工段階において、切断加工エッジ1436-1、1436-2は、ワイヤ長手軸(ワイヤ中心)MAに対して対称にだんだんとさらに接近し、ついには中間に位置するワイヤ横断面がきわめて細くなって、最大の剪断応力をうわまわった場合に裂け段階において材料がちぎれる。ワイヤが分断された場合に、切断加工エッジが互いに出合う前に、逆方向の送りを停止することができる。これは、例えばばね鋼のように比較的硬い、又は脆い材料の場合とすることができる。また、剪断切断加工の最終段階において、切断加工エッジが互いに通過することも、可能である。これは、銅又は他の比較的柔らかい材料の場合に、規則的にそうなる。
【0120】
加工プロセスパラメータが正しく調節されている場合に、剪断切断加工を用いて、分離されたワイヤ端部に、微視的に平坦かつワイヤ長手軸に対して垂直に方向付けされた端面を発生させることが、可能である。ワイヤの終端部分は、平坦な端面を備えた矩形のピラミッド台の形状を有し、かつ特に、例えば溶接プロセスによる、大面積の接触に適している。
【0121】
したがって、図14の例の完全に切削なしの分離加工は、3つの加工工程からなり、それは以下のように記述することができる。
【0122】
第1の加工工程。
ワイヤに対して距離をもって直角に配置された二つの楔カッターが、ワイヤ中心の方向へ対称に移動する。この移動は、工具の定められた送りの後に停止され、したがって材料「のみ」が押しやられ、切断加工/分離加工は実施されない。この加工工程の後に、材料は両側で切り欠かれる。
【0123】
第2の加工工程。
ワイヤに対して距離をもって直角に配置された他の二つの楔カッター(しかし他の二つの楔カッターに対して直交して配置されている)は、同様にワイヤ中心の方向に対称に移動する。この移動は、同様に工具の定められた送りの後に停止され、したがって材料「のみ」が押しやられ、切断加工/分離加工は実施されない。この加工工程の後に、材料は4つの側で切り欠かれる。
【0124】
第3の加工工程。
ワイヤに対して距離をもって直角に配置されている二つの剪断加工カッターが、ワイヤ中心の方向に対称に移動する。二つのブレードのカッターは、ワイヤが剪断されるまでの間、ワイヤ中心の方向に移動する。
【0125】
4つの側のノッチと、それに続く剪断切断加工による分離のための3つの加工工程は、1つの平面内で行われる。矩形の材料において、ワイヤ端部は、加工工程後にピラミッド台の形状を有する。
【0126】
ここで説明した種類の加工プロセスは、例えばヘアピン、バスバー、接触ピンなどのような銅構成部品において、ワイヤ端部を幾何学的に成形するために利用することができる。したがってチェーンリンクのノッチ加工と切断加工も実施できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A-13B】
図14A-14B】
図14C
図14D
【国際調査報告】