IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シファメド・ホールディングス・エルエルシーの特許一覧

特表2023-511420調整可能な流動の緑内障シャントならびに関連するシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】調整可能な流動の緑内障シャントならびに関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544720
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021014774
(87)【国際公開番号】W WO2021151007
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/965,117
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サポジニコフ, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】アルジェント, クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ソール, トム
(72)【発明者】
【氏名】リリー, リチャード
(57)【要約】
本技術は、緑内障を治療するための調整可能なシャントを対象とする。特に、いくつかの実施形態は、関連するポートおよび/または流動管腔を通る流体の流動を制御することができる複数の個々に作動可能な流動制御要素を有するシャントを提供する。例えば、各々個々に作動可能な流動制御要素は、対応するポートおよび/または流動管腔を遮断および/または遮断解除するように作動させることができる。したがって、本明細書に記載のシャントは、ポートおよび/または流動管腔が遮断されるか、遮断解除されるかに基づいて、異なる排液速度を提供する様々な構成に操作することができ、したがって、眼の前房から水を排液するための滴定可能な緑内障治療を提供する。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を排液するためのシステムであって、
第1の身体領域内に位置決め可能な第1の端部領域、および第2の身体領域内に位置決め可能な第2の端部領域を有する排液要素であって、前記第1の端部領域が、第1のポート、第2のポート、および第3のポートを含む、排液要素と、
前記排液要素を通る流体の流動を制御するための流動制御機構であって、
流体が前記第1のポートを介して前記排液要素に流入することを可能にする第1の開位置と、流体が前記第1のポートを介して前記排液要素に流入するのを実質的に防止する第1の閉位置との間で移動可能な第1の流動制御要素と、
流体が前記第2のポートを介して前記排液要素に流入することを可能にする第2の開位置と、流体が前記第2のポートを介して前記排液要素に流入するのを実質的に防止する第2の閉位置との間で移動可能な第2の流動制御要素と、
流体が前記第3のポートを介して前記排液要素に流入することを可能にする第3の開位置と、流体が前記第3のポートを介して前記排液要素に流入するのを実質的に防止する第3の閉位置との間で移動可能な第3の流動制御要素と、を含み、
前記第1の流動制御要素、前記第2の流動制御要素、および前記第3の流動制御要素が、それらのそれぞれの開位置と閉位置との間で独立して移動可能である、流動制御機構と、を備える、システム。
【請求項2】
前記第1の流動制御要素が、前記第1の開位置内にあり、前記第2の流動制御要素が、前記第2の閉位置内にあり、前記第3の流動制御要素が、前記第3の閉位置内にあるとき、前記システムが、流体の流動に対する第1の相対抵抗を提供するように構成されており、
前記第2の流動制御要素が、前記第2の開位置内にあり、前記第1の流動制御要素が、前記第1の閉位置内にあり、前記第3の流動制御要素が、前記第3の閉位置内にあるとき、前記システムが、第2の相対抵抗を提供するように構成されており、
前記第3の流動制御要素が、前記第3の開位置内にあり、前記第1の流動制御要素が、前記第1の閉位置内にあり、前記第2の流動制御要素が、前記第2の閉位置内にあるとき、前記システムが、第3の相対抵抗を提供するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の相対抵抗が、前記第1の相対抵抗未満であり、前記第3の相対抵抗が、前記第1の相対抵抗未満である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の相対抵抗、前記第2の相対抵抗、および前記第3の相対抵抗の間の比が、約4:2:1である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の相対抵抗、前記第2の相対抵抗、および前記第3の相対抵抗の間の比が、約3:2:1である、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の相対抵抗、前記第2の相対抵抗、および前記第3の相対抵抗の間の比が、約1:1:1である、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の流動制御要素が、前記第1の開位置内にあり、前記第2の流動制御要素が、前記第2の閉位置内にあり、前記第3の流動制御要素が、前記第3の閉位置内にあるとき、前記システムが、第1の相対排液速度を提供するように構成されており、
前記第2の流動制御要素が、前記第2の開位置内にあり、前記第1の流動制御要素が、前記第1の閉位置内にあり、前記第3の流動制御要素が、前記第3の閉位置内にあるとき、前記システムが、第2の相対排液速度を提供するように構成されており、
前記第3の流動制御要素が、前記第3の開位置内にあり、前記第1の流動制御要素が、前記第1の閉位置内にあり、前記第2の流動制御要素が、前記第2の閉位置内にあるとき、前記システムが、第3の相対排液速度を提供するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の相対排液速度が、前記第1の相対排液速度よりも大きく、前記第3の相対排液速度が、前記第2の相対排液速度よりも大きい、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の相対排液速度、前記第2の相対排液速度、および前記第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:4である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の相対排液速度、前記第2の相対排液速度、および前記第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:3である、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の相対排液速度、前記第2の相対排液速度、および前記第3の相対排液速度の間の比が、約1:1:1である、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記排液要素が、前記第1のポートに流体的に結合された第1のチャネル、前記第2のポートに流体的に結合された第2のチャネル、および前記第3のポートに流体的に結合された第3のチャネルを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のチャネルが、前記第2のチャネルよりも大きい相対抵抗を提供するように構成されており、前記第2のチャネルが、前記第3のチャネルよりも大きい相対抵抗を提供するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のチャネルが、第1の断面積を有し、前記第2のチャネルが、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有し、前記第3のチャネルが、前記第2の断面積よりも大きい第3の断面積を有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のポートが、第1の面積を有し、前記第2のポートが、前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有し、前記第3のポートが、前記第2の面積よりも大きい第3の面積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のポートが、単一の開口部を含み、前記第2のポートが、2つの開口部を含み、前記第3のポートが、3つ以上の開口部を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のポートが、第1の流入ポートであり、前記第2のポートが、第2の流入ポートであり、前記第3のポートが、第3の流入ポートである、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の身体領域が、前房であり、前記流体が、水である、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
流体を排液するためのシステムであって、
第1の身体領域内に位置決め可能な第1の端部領域、および第2の身体領域内に位置決め可能な第2の端部領域を有する排液要素であって、前記第1の端部領域が、第1の流入ポートおよび第2の流入ポートを含み、
前記第1の流入ポートが、遮断解除され、前記第2の流入ポートが、遮断されるとき、前記システムが、前記排液要素を通る第1の相対排液速度を提供するように構成されており、
前記第2の流入ポートが、遮断解除され、前記第1の流入ポートが遮断されるとき、前記システムが、前記第1の相対排液速度よりも大きい前記排液要素を通る第2の相対排液速度を提供するように構成されている、排液要素と、
流動制御機構であって、
前記第1の流入ポートを通る流体の流動を選択的に制御するように構成された第1の流動制御要素、および
前記第2の流入ポートを通る流体の流動を選択的に制御するように構成された第2の流動制御要素を含み、
前記第1の流動制御要素および前記第2の流動制御要素が、独立して作動可能である、流動制御機構と、を備える、システム。
【請求項20】
前記第1の相対排液速度と前記第2の相対排液速度との間の比が、1:2である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の流入ポートおよび前記第2の流入ポートの両方が遮断解除されるとき、前記システムが、前記第1の相対排液速度および前記第2の相対排液速度よりも大きい、前記排液要素を通る第3の相対排液速度を提供するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1、第2、および第3の相対排液速度の間の比が、1:2:3である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の流入ポートが、単一の開口部を含み、前記第2の流入ポートが、複数の開口部を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の流入ポートが、第1の面積を有し、前記第2の流入ポートが、前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記排液要素が、(i)前記第1の流入ポートと前記第2の端部領域との間に延在する第1の管腔、および(ii)前記第2の流入ポートと前記第2の端部領域との間に延在する第2の管腔を含み、前記第1の管腔が、前記第2の管腔とは異なる流体の流動に対する抵抗を提供するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記排液要素が、第3の流入ポートをさらに備え、前記第3の流入ポートが遮断解除され、前記第1および第2の流入ポートが遮断されるとき、前記システムが、前記排液要素を通る第3の相対排液速度を提供するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の相対排液速度、前記第2の相対排液速度、および前記第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:3である、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1の相対排液速度、前記第2の相対排液速度、および前記第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:4である、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記排液要素が、第4の流入ポートをさらに備え、前記第4の流入ポートが遮断解除され、かつ前記第1、第2、および第3の流入ポートが遮断されるとき、前記システムが、前記排液速度を通る第4の相対排液速度を提供するように構成されており、前記第1、第2、第3、および第4の相対排液速度の比が、約1:2:4:8である、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1の身体領域が眼の前房であり、前記流体が、水である、請求項19に記載のシステム。
【請求項31】
前記排液要素が、第1の端部部分から延在するプレートを含み、前記プレートが、前記第1および第2の流入ポートを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項32】
調整可能なシャントであって、
患者の眼の前房内に位置決め可能な第1の端部部分、および前記患者の標的流出場所内に位置決め可能な第2の端部部分を有する排液要素であって、
前記第1の端部部分が、少なくとも3つの流入ポートを含み、第1の流入ポートが、前記第1の流入ポートのみが開放されるとき、第1の排液速度を提供するように構成されており、第2の流入ポートが、前記第2の流入ポートのみが開放されるとき、前記第1の排液速度よりも大きい第2の排液速度を提供するように構成されており、第3の流入ポートが、前記第3の流入ポートのみが開放されるとき、前記第2の排液速度よりも大きい第3の排液速度を提供するように構成されており、
前記第2の端部部分が、少なくとも1つの流出ポートを含み、
管腔が、前記排液要素を通って前記第1の端部部分から前記第2の端部部分まで延在して、前記少なくとも3つの流入ポートおよび前記少なくとも1つの流出ポートを流体的に接続する、排液要素と、
少なくとも3つの個々に作動可能な流動制御要素を有する流動制御機構であって、第1の流動制御要素が、前記第1の流入ポートを遮断および遮断解除するように選択的に動作可能であり、第2の流動制御要素が、前記第2の流入ポートを遮断および遮断解除するように選択的に動作可能であり、第3の流動制御要素が、前記第3の流入ポートを遮断および遮断解除するように選択的に動作可能である、流動制御機構と、を備える、調整可能なシャント。
【請求項33】
前記第1の排液速度、前記第2の排液速度、および前記第3の排液速度が、所定の相対排液速度であり、前記第1の排液速度が約Xであり、前記第2の排液速度が約2Xであり、前記第3の排液速度が約3Xである、請求項32に記載の調整可能なシャント。
【請求項34】
前記第1の排液速度、前記第2の排液速度、および前記第3の排液速度が、所定の相対排液速度であり、前記第1の排液速度が約Xであり、前記第2の排液速度が約2Xであり、および前記第3の排液速度が約4Xである、請求項32に記載の調整可能なシャント。
【請求項35】
2つ以上の流入ポートが開放されるとき、前記シャントが、前記第1の排液速度、前記第2の排液速度、および前記第3の排液速度とは異なる第4の相対排液速度を提供するように構成されている、請求項34に記載の調整可能なシャント。
【請求項36】
前記シャントが、
前記第1の流入ポートおよび前記第2の流入ポートのみが開放されるとき、約3Xの第4の排液速度、
前記第1の流入ポートおよび前記第3の流入ポートのみが開放されるとき、約5Xの第5の排液速度、
前記第2の流入ポートおよび前記第3の流入ポートのみが開放されるとき、約6Xの第6の排液速度、ならびに
前記第1の流入ポート、前記第2の流入ポート、および前記第3の流入ポートが開放されるとき、約7Xの第7の排液速度を含む、追加の所定の相対排液速度を提供するように構成されている、請求項34に記載の調整可能なシャント。
【請求項37】
前記流動制御要素が、前記所定の相対排液速度のうちのいずれかを実現するために選択的に作動可能である、請求項36に記載の調整可能なシャント。
【請求項38】
緑内障を治療する方法であって、
調整可能なシャントを使用して、眼の前房から標的流出場所に水を排液することであって、前記調整可能なシャントが、
前記シャントの内部に流体的に結合された第1の流入ポートと、
前記シャントの前記内部に流体的に結合された第2の流入ポートと、
流体が前記第1の流入ポートを介して前記シャントに流入することを可能にする第1の開位置と、流体が前記第1の流入ポートを介して前記シャントに流入するのを実質的に防止する第1の閉位置との間で移動可能な第1の流動制御要素と、
流体が前記第1の流入ポートを介して前記シャントに流入することを可能にする第2の開位置と、流体が前記第1の流入ポートを介して前記シャントに流入するのを実質的に防止する第2の閉位置との間で移動可能な第2の流動制御要素と、を含む、排液することと、
前記第1の流動制御要素および/または前記第2の流動制御要素をそれらのそれぞれの開位置と閉位置との間で作動させることによって、前記水の排液速度を選択的に調整することと、を含む、方法。
【請求項39】
前記第1の流入ポートが、前記第1の流入ポートのみが遮断解除されるとき、第1の排液速度を提供し、前記第2の流入ポートが、前記第2の流入ポートのみが遮断解除されるとき、前記第1の排液速度よりも大きい第2の排液速度を提供する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
個々に作動可能な流動制御要素のうちの少なくとも1つを作動させることが、前記個々に作動可能な流動制御要素のうちの少なくとも1つにエネルギーを適用することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記エネルギーが、非侵襲的エネルギーである、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/965,117号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、移植可能な医療デバイス、特に、眼内シャントシステム、および患者の眼の異なる部分間の流体の流動を選択的に制御するための関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
緑内障は、進行性かつ不可逆的な視力喪失を引き起こす可能性のある視神経への損傷を伴う変性の眼の状態である。緑内障は、高眼圧症、眼内の圧力の増加と関連付けられることが多く、眼内の房水(「水」)の生成の増加および/または眼内から血流への水の流出速度における減少からもたらされ得る。水は、眼の後房および前房の境界にある毛様体内で生成される。これは、前房に流動し、最終的には眼の静脈血管に流動する。緑内障は、典型的には、水を眼から血流に輸送する機構内の障害によって引き起こされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本技術は、緑内障を治療するためのシステム、デバイス、および方法を対象とする。特に、いくつかの実施形態は、関連するポートおよび/またはシャント内のチャネルを通る流体の流動を制御することができる複数の個々に作動可能な流動制御要素を有するシャントを提供する。例えば、各々個々に作動可能な各流動制御要素は、対応するポートおよび/もしくはチャネルを実質的に遮断ならびに/または実質的に遮断解除するように作動させることができ、それによって、ポートおよび/もしくはチャネルを通る流動を抑制するか、または許可する。したがって、本明細書に記載のシャントは、ポートおよび/もしくはチャネルが遮断されるか、または遮断解除されるかに基づいて、異なる排液速度を提供する様々な構成に操作することができ、したがって、眼の前房から水を排液するための滴定可能な緑内障治療を提供する。実施形態では、シャントが眼内に移植された後、流動制御要素を非侵襲的に調整して、移植後の調整を可能にすることができる。
【0005】
本明細書に記載の実施形態の多くにおいて、シャントシステムは、システムの他のポートおよび/または排液チャネルに対して異なる治療レベルを提供するように構成されるポートおよび/または排液チャネルを含む。例えば、第1のポートおよび/またはチャネルは、第1の排液速度および/または第1の流体抵抗と関連付けられ得、第2のポートおよび/またはチャネルは、第2の排液速度および/または第2の流体抵抗と関連付けられ得、ならびに第3のポートおよび/またはチャネルは、第3の排液速度および/または第3の流体抵抗と関連付けられ得る。以下に説明するように、これは、異なる寸法(例えば、直径、断面積、長さなど)を有するポートおよび/または排液チャネルを有することによって得ることができる。いくつかの実施形態では、ポートおよびチャネルは、一次排液管腔に対して平行な流体抵抗として配置される。他の実施形態では、流入ポートおよびチャネルは、一次排液管腔に対して直列流体抵抗として配置される。
【0006】
流入ポートおよびチャネルが一次排液管腔に対して並列の流体抵抗として配置される実施形態では、各々個々のポートは、別個の異なる相対抵抗および/または流動と関連付けられ得る。例えば、第1のポートは、1Xの流動を可能にし、第2のポートは、2Xの流動を可能にし、第3のポートは、3Xの流動を可能にし得る。さらに、ポートは並列流体抵抗として配置されているため、ポートの任意の組み合わせが、開放(例えば、遮断を解除)されるか、または閉鎖(例えば、遮断、干渉など)されて、各々個々のポートと関連付けられた個別の相対抵抗および流動とは異なる、追加の個別の相対抵抗および/または排液速度を提供することができる。前述の例では、第2および第3のポートの両方を開放して、5Xの流動を提供することができる。いくつかの実施形態では、ポートおよび/またはチャネルの相対的な寸法は、最大数の個別の治療レベルを具体的に提供するように選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の排液速度、第2の排液速度、および第3の排液速度の間の比は、約1:2:4であり得る。同様に、第1の抵抗、第2の抵抗、および第3の抵抗の間の比は、約4:2:1であり得る。理論に拘束されることなく、これにより、システムが提供できる個別の治療レベルの数が増加することが期待され、同様にして、医療機関が特定の患者のニーズに対して治療レベルを具体的に合わせることが可能になることが期待される。
【0007】
流入ポートおよびチャネルが主排液管腔に対して直列流体抵抗として配置される実施形態では、各々個々の流入ポートは、依然として個別の抵抗および/または排液速度と関連付けられ得る。しかしながら、ポートが並列流体抵抗として配置される実施形態とは異なり、システムは、各々個々のポートごとに提供される個別の抵抗および/または排液速度とは異なる、複数の組み合わされた抵抗および/または流量を実現するように操作することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本技術の多くの態様は、以下の図面を参照して、よりよく理解することができる。図面内の構成要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。代わりに、本技術の原理を明確に例示することに、重点が置かれている。さらに、構成要素は、説明を明確にするだけのために特定の図において透明として示される場合があり、図示された構成要素が必ずしも透明であることを示すものではない。また、構成要素が概略的に示されている場合もある。
【0009】
図1A】シャントが移植された状態の眼Eの簡略化された正面図である。
図1B図1Aの眼胞の等角図である。
図2A】本技術の実施形態に従って構成された調整可能なシャントを例解する。
図2B】本技術の実施形態に従って構成された調整可能なシャントを例解する。
図2C】本技術の実施形態に従って構成された調整可能なシャントを例解する。
図3A】本技術の実施形態に従って構成された図2A図2Cに示されるシャントの選択された特徴を例解する。
図3B】本技術の実施形態に従って構成された図2A図2Cに示されるシャントの選択された特徴を例解する。
図4A】本技術の選択された実施形態に従って構成された調整可能なシャントとともに使用するための排液プレートを例解する。
図4B】本技術の選択された実施形態に従って構成された調整可能なシャントとともに使用するための排液プレートを例解する。
図4C】並列抵抗を有する電気回路の概略図である。
図5A】本技術の選択された実施形態に従って構成された調整可能なシャントとともに使用するための排液プレートを例解する。
図5B】本技術の選択された実施形態に従って構成された調整可能なシャントとともに使用するための排液プレートを例解する。
図5C】直列抵抗を有する電気回路の概略図である。
図6】本技術の選択された実施形態に従って構成されたシャントを例解する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に提示される説明内で使用される専門用語は、本技術の特定の具体的な実施形態の詳細な説明と併せて使用されている場合であっても、その最も広い合理的な方法で解釈されることを意図している。特定の用語は以下で強調されることさえあり得るが、しかしながら、任意の制限された方法で解釈されることを意図したいずれかの専門用語は、この「発明を実施するための形態」のセクションで、そのように明確かつ具体的に定義される。追加的に、本技術は、実施例の範囲内であるが、図1A図6に関して詳細に説明されていない他の実施形態を含むことができる。
【0011】
本明細書において「一実施形態(one embodiment)」または「実施形態(an embodiment)」に言及する場合、当該実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書全体の様々な場所において「一実施形態において」または「実施形態において」という句が出現した場合、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0012】
本明細書全体を通して、例えば「一般的に」、「およそ」、および「約」などの相対的な用語に言及する場合、本明細書では、記載された値プラスまたはマイナス10%を意味するために使用される。本明細書全体を通して「抵抗」という用語への言及は、文脈が他に明確に規定しない限り、流体抵抗を指す。「排液速度」および「流動」という用語は、構造物を通る流体の移動を説明するために交換可能に使用される。
【0013】
本明細書の特定の実施形態は、眼の前房からの流体のシャントに関して説明されているが、当業者は、本技術が、眼の他の部分から、および/または眼の他の部分の間で、より一般的には、第1の身体領域および第2の身体領域から、ならびに/または第1の身体領域と第2の身体領域との間で流体をシャントするように容易に適合することができることを理解する。さらに、本明細書の特定の実施形態は、緑内障治療の文脈で説明されているが、「緑内障シャント」または「緑内障デバイス」と称されるものを含む、本明細書の任意の実施形態は、それにもかかわらず、眼または他の身体領域の他の疾患または状態を含む、他の疾患もしくは状態を治療するために使用および/または修正され得る。例えば、本明細書に記載のシステムは、限定されるものではないが、心不全(例えば、駆出率を維持する心不全、駆出率が低下した心不全など)、肺不全、腎不全、水頭症などを含む、圧力の増加および/または流体の蓄積を特徴とする疾患を治療するために使用することができる。さらに、概して、水をシャントすることに関して説明されているが、本明細書に記載のシステムは、第1の身体領域と第2の身体領域との間で、血液または脳脊髄液などの他の流体をシャントするために等しく適用され得る。
【0014】
本明細書で提供される見出しは、便宜上のものであり、特許請求された本技術の範囲または意味を解釈するものではない。
【0015】
A.緑内障治療のための眼内シャント
緑内障は、視神経の損傷と関連付けられる眼疾患のグループを指し、最終的には視力喪失および失明を引き起こす。上記のように、緑内障は、眼内の水の生成の増加および/または眼内から血流への水の流出速度における減少からもたらされる、眼内の圧力増加を特徴とする退行性の眼の状態である。圧力増加は、時間の経過とともに視神経の損傷につながる。残念ながら、患者は、多くの場合緑内障が発症するまで眼内圧力上昇の症状が現れない。そのため、患者は、典型的には、症状がない場合でも、圧力の増加が確認されると注意深く監視されなければならない。監視は、疾患の経過中継続されるため、臨床医は疾患の進行を食い止めるために早期に介入することができる。圧力を監視するには、患者が定期的に診療所を訪れる必要があるが、これは高価であり、時間がかかり、かつ不便である。緑内障の初期段階は、典型的には、薬物(例えば、点眼薬)および/またはレーザ治療で治療される。しかしながら、薬物/レーザ治療では不十分なとき、外科的アプローチを、使用することができる。外科的または低侵襲的アプローチは、主に、代替的な流体経路の作成または水流出のための自然経路の増強のいずれかによって、前房から血流への水の流出を増加させるように試みる。
【0016】
図1Aおよび図1Bは、本技術の実施形態による、ヒトの眼Eおよびシャントが眼E内に移植され得る好適な場所を例解する。より具体的には、図1Aは、シャント100が移植された状態の眼Eの簡略化された正面図であり、図1Bは、図1Aの眼Eおよびシャント100の等角図である。最初に図1Aを参照すると、眼Eは、上直筋SR、下直筋IR、外側直筋LR、内側直筋MR、上斜筋SO、および下斜筋IOを含む、その移動を制御するためのいくつかの筋肉を含む。眼Eはまた、虹彩、瞳孔、輪部も含む。
【0017】
図1Aおよび図1Bをともに参照すると、シャント100は、流入部分101が眼Eの前房内に位置決めされ、流出部分102は、ブレブ空間など、眼E内の異なる場所に位置決めされるように位置決めされた排液要素105(例えば、排液管)を有することができる。シャント100は、様々な配向で移植することができる。例えば、移植されるとき、排液要素105は、前房から上、下、内側、および/または外側方向に延在し得る。シャント100の設計に応じて、流出部分102は、いくつかの異なる好適な流出場所(例えば、脈絡膜と強膜との間、結膜と強膜との間など)に設置することができる。
【0018】
流出抵抗は、例えば、流出場所がシャント(例えば、シャント100など)の外科的移植後の治癒プロセスを行う際、または前房から小柱網、シュレム管、コレクタチャネル、最終的には静脈および身体の循環器系を通る排液ネットワーク内のさらなる閉塞などの様々な理由で時間の経過とともに変化する可能性がある。したがって、臨床医は、そのような変化または他の臨床的理由に応じて、流出抵抗を増加させるか、または減少させるかのいずれかのために、移植後にシャントを修正することを所望する場合がある。例えば、多くの手技において、シャントは、移植時に修正されて、一時的に流出抵抗を増加させる。組織の治癒および流出抵抗の安定化を可能にするのに十分であると判断される一定期間後、シャントへの修正が覆され、それによって流出抵抗を減少させる。別の例では、臨床医は、シャントを移植し、その後の眼内圧力の監視の後に、シャントを通る排液速度の修正が所望されるかを判断してもよい。かかる修正は、患者にとって侵襲的で、時間がかかり、および/または高価である可能性がある。しかしながら、かかる手技に従わない場合、視神経への損傷を含む、さらなる合併症をもたらし得る低眼圧症(過度に低い眼圧)を作り出す可能性が高くなる。対照的に、本技術の実施形態に従って構成された眼内シャントシステムは、臨床医が、追加の侵襲的外科手技なしに、移植後にシャントを通る流体の流動を選択的に調整することを可能にする。
【0019】
本明細書に記載のシャントは、第1の排液速度を有して移植され、その後、第2の異なる排液速度を実現するために遠隔調整され得る。調整は、個々の患者のニーズに基づくことができる。例えば、シャントは、第1のより低い流量で移植され、その後、臨床的に必要な場合、第2のより高い流量に調整され得る。本明細書に記載のシャントは、ab internoまたはab externo移植技術のいずれかを使用して送達させることができ、針を介して送達させることができる。針は、本明細書に記載のシャントの様々な形状に対応するために、様々な形状および構成を有することができる。移植手技、移植デバイス、およびブレブ形成の詳細は、その開示が、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2020年7月8日に出願された、国際特許出願第PCT/US20/41152号、表題「MINIMALLY INVASIVE BLEB FORMATION DEVICES AND METHODS FOR USING SUCH DEVICES」内に詳細に記載されている。
【0020】
本明細書に記載の実施形態の多くにおいて、流動制御アセンブリは、動作中にシャントを通る流体の流動を選択的に妨害するか、または減衰させる特徴を導入するように構成される。このようにして、流動制御アセンブリは、シャントを通る流動抵抗を段階的または連続的に変更して、圧力および/または流動を選択的に調節することができる。したがって、本技術に従って構成された流動制御アセンブリは、いくつかの異なる位置間の干渉または圧縮のレベルを調整し、多くの変数(例えば、IOP、水生成速度、生来の水流出抵抗、および/または生来の水流出速度)を適応させて、シャントを通る流量を正確に調節することができる。
【0021】
開示された流動制御アセンブリは、エネルギーを使用して動作することができる。この機能により、かかるデバイスを患者内に移植し、患者にさらに侵襲的な手術または手技を行うことなく、時間の経過とともに修正/調整することを可能にする。さらに、本明細書に開示されるデバイスは、外部エネルギー源(例えば、レーザ)からのエネルギーを介して作動させることができるので、かかるデバイスは、所望の配向または位置を維持するためにいずれの追加電力も必要としない。むしろ、本明細書に開示されるアクチュエータ/流体抵抗は、電力なしで所望の位置/配向を維持することができる。これは、かかるデバイスの使用可能な寿命を顕著に増加させ、かかるデバイスが初期の移植手技の後長く有効になることを可能にすることができる。
【0022】
B.調整可能な緑内障シャント
図2A図2Cは、本技術の実施形態に従って構成された調整可能なシャント200(「シャント200」)を例解する。最初に図2Aを参照すると、シャント200は、第1の端部部分204および第1の端部部分204とは反対側の第2の端部部分206を有する排液要素または管202を含む。排液要素202は、第1の端部部分204で、またはそこに隣接する複数の流入ポートまたは開口部(本明細書では図2Bに示されるポート208として称される)と、第2の端部部分206で、またはそこに隣接する流出開口部207とを有することができる。ポート208は、デバイスの一次管腔にアクセスする一組の並列流体抵抗と同等のものを提供するように配置および/または構成することができる。一次管腔は、排液要素202を通って延在して、複数のポート208および流出開口部207を流体連通することができる。したがって、シャント200はまた、並列抵抗とも称され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、排液要素202は、その高さが、その幅未満となるように比較的平坦であり得る(例えば、排液要素202は、楕円形、矩形、または「D字形」の断面形状を有する)。かかる実施形態では、排液要素202は、約1000マイクロメートル(μm)以下、約400μm以下、または約300μm以下の外径(例えば、高さ)を有し得る。排液要素202は、前述の外径の値のいずれかの間にある外径値を有することができる。いくつかの実施形態では、排液要素は、約800μm以下、約300μm以下、または約200μm以下の内径を有し得る。排液要素202は、前述の内径の値のいずれかの間にある内径値を有することができる。いくつかの実施形態では、排液要素202は、約2mm、約2.5mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約15mm、または約20mmの長さを有することができる。排液要素202は、前述の長さの値のいずれかの間の長さを有することができる。他の実施形態では、排液要素202は、実質的に円筒形であり得る。理論に拘束されることを望まないが、比較的平坦なプロファイルを有することは、シャント200の安定性を高めながら、天然組織との干渉を有利に低減することが期待される。
【0024】
シャント200は、排液要素202の第1の端部部分204に位置決めされた流動制御機構210を含むことができる。シャント200が眼内に移植されるとき、第1の端部部分204は前房内に存在することができ、第2の端部部分206は、所望の流出場所(例えば、事前に参照により本明細書に組み込まれた、国際特許出願第PCT/US20/41152号に記載されるようなブレブ空間)内に存在することができる。かかる実施形態では、流動制御機構210は、前房内に位置付けられる。他の実施形態では、第1の端部部分204は、所望の流出場所内に存在し得、第2の端部部分206は、前房内に存在し得る(例えば、流体は、流出開口部207からポート208に流動する)。かかる実施形態では、流動制御機構210は、前房の外側(例えば、ブレブ空間内)に位置決めされる。シャント200の配向に関わらず、シャント200は、シャント200が眼内に移植されるとき、前房から水を排液するように構成される。シャント200は、任意選択的に、眼内に移植されるときにシャント200を所定の位置に固定するのに役立つ追加の機能を有してもよい。例えば、シャント200は、アーム、アンカー、プレート、またはシャント200を天然組織に固定することができる他の好適な特徴(図示せず)を含むことができる。シャント200はまた、シャント200のうちのいくつか、またはすべてを包む、外膜またはカバー(例えば、透明および/または生体適合性膜)を含み得る。
【0025】
ここで図2Bおよび図2Cを参照すると、流動制御機構210は、排液要素202の長さに沿って配置された複数の流動制御要素211a~dを含む。個々の流動制御要素211a~dは、対応する個々のポート208とインターフェース接続することができ、各流動制御要素211a~dは、個々に作動可能であり得る。したがって、以下に記載されるように、シャント200は、ポート208のすべて(図2C)、一部が遮断されているか、もしくは実質的に遮断されるか、またはどのポート208も遮断されない(図2B)任意の数の構成に操作することができる。遮断解除されるか、または別様にアクセス可能なポート208が多いほど、より多くの流体が排液要素202を介して排液することができる。図3Aおよび図3Bに関して詳細に説明されるように、ポート208は、同じまたは異なる寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、ポート208は、概して、規則的に離間される(例えば、約1mm間隔で空けられる)。いくつかの実施形態では、ポート208は、隣接するポート208間の距離が変化するように間隔が空けられている。例えば、少なくとも2つの隣接するポート208は、複数のポート208の他のポート208間の間隔距離とは異なる間隔距離を有することができる。
【0026】
各流動制御要素211a~dは、排液要素202の長さに沿って離間された一対のアンカー212を含む(例えば、第1の流動制御要素211aは、第1のアンカー212aおよび第2のアンカー212bを含む)。いくつかの実施形態では、隣接する流動制御要素211a~dは、アンカーを共有することができる。例えば、第2のアンカー212bは、第1の流動制御要素211aおよび第2の流動制御要素211bの両方を支える。アンカー212は、ポート208の少なくとも1つが、概して、アンカーの各対の間に位置決めされるように、排液要素202に固定される。アンカー212は、流動制御要素211a~dが作動されたときにそれらが移動しないように、排液要素202または他の構造に固定することができる。例えば、アンカー212は、排液要素202の円周に巻き付き、摩擦ばめまたは他の好適な取り付け機構を介してそれに固定され得る。他の実施形態では、アンカー212は、排液要素の全周に巻き付くことはないが、それでも、流動制御機構210を(例えば、溶接、接着、または他の適切な接着技術を介して)排液要素202に固定する。
【0027】
各々個々の流動制御要素211a~dは、可動ゲート要素(例えば、流動制御要素211aは、ゲート要素216aを含み、流動制御要素211bは、本明細書でまとめてゲート要素216と呼ばれるゲート要素216bなどを含む)、第1のアンカー(例えば、第1のアンカー212a)と対応するゲート要素216(例えば、ゲート要素216a)との間に延在する、第1の作動要素(例えば、流動制御要素211aは、第1の作動要素214aを含む)、および第2のアンカー(例えば、第2のアンカー212b)と対応するゲート要素216との間に延在する、第2の作動要素(例えば、流動制御要素211bは、第2の作動要素214bを含む)をさらに含む。各ゲート要素216a~dは、対応するポート208と(例えば、少なくとも部分的に遮断するか、別様に実質的または完全な流体封止を形成して)インターフェース接続するように構成される。作動要素は、対応するゲート要素216を、対応するポート208を遮断する(または部分的に遮断する)1つ以上の位置と、対応するポート208を遮断解除する(または部分的に遮断解除する)1つ以上の位置との間で選択的に移動させるように選択的に作動させることができる。例えば、(a)第1の流動制御要素211aのゲート要素216aは、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入することを可能にする第1の開位置と、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入するのを実質的に防止する第1の閉位置との間で移動することができ、(b)第2の流動制御要素211bのゲート要素216bは、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入することを可能にする第2の開位置と、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入するのを実質的に防止する第2の閉位置との間で移動することができ、(c)第3の流動制御要素211cのゲート要素216cは、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入することを可能にする第3の開位置と、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入するのを実質的に防止する第3の閉位置との間で移動することができ、および(d)第4の流動制御要素211dのゲート要素216dは、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入することを可能にする第4の開位置と、流体が対応するポート208を介して排液要素202に流入するのを実質的に防止する第4の閉位置との間で移動することができる。閉位置および開位置にあるとき、流入ポートを「遮断する」および「遮断解除する」として説明されているが、ゲート要素はまた、開位置にあるとき、出口を通る第1の流体抵抗と干渉しないおよび/または付与しない、ならびに閉位置にあるとき、第1の流体抵抗よりも大きい第2の流体抵抗と干渉する、および/または付与するとして説明され得る。
【0028】
ゲート要素216は、作動要素214を作動させることによって移動させることができる。例えば、第2の作動要素214aを作動させると、ゲート要素216aを第1の方向に移動させることができ、第1の作動要素114bを作動させると、ゲート要素216aを、第1の方向と略反対側の第2の方向に移動させることができる。ゲート要素216の前述の移動を容易にするために、作動要素は、エネルギーの適用時に形状を変化させるように構成される、形状記憶材料(例えば、形状記憶合金)または他の好適な材料から少なくとも部分的に構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、作動要素は、ニチノールから構成される。かかる実施形態では、作動要素(および/またはその領域)は、少なくとも第1の材料相または状態(例えば、マルテンサイト状態、R相、マルテンサイトとR相との間の複合状態など)と、第2の材料相または状態(例えば、オーステナイト状態、R相状態、オーステナイトとR相との間の複合状態など)との間で遷移可能であり得る。第1の材料状態では、作動要素またはその選択領域は、変形可能であり得る(例えば、プラスチック、可鍛性、圧縮性、膨張性など)。第2の材料状態では、作動要素またはその選択領域は、特定の好ましい幾何学形状(例えば、元の幾何学形状、製造されるか、または作製された幾何学形状、ヒートセット幾何学形状など)に向かう好みを有し得る。以下に説明されるように、作動要素は、エネルギー(例えば、熱、光など)を作動要素に適用して、作動要素を遷移温度(例えば、相遷移温度)を上回って加熱することによって、第1の材料状態と第2の材料状態との間で個々に、および/または選択的に遷移させることができる。作動要素がその好ましい幾何学形状に対して変形される場合、第1の材料状態から第2の材料状態への遷移は、作動要素内の寸法変化を誘発する可能性がある。いくつかの実施形態では、寸法変化は、膨張である。いくつかの実施形態では、寸法変化は、収縮(例えば、圧縮)である。いくつかの実施形態では、エネルギーは、眼の外部に位置決めされたエネルギー源(例えば、レーザ)から適用され、これにより、ユーザは、シャントを非侵襲的に調整することができる。
【0029】
流動制御要素211a(例えば、第1の作動要素214aまたは第2の作動要素214b)は、第1のアンカー212aと第2のアンカー212bとの間の排液要素202の軸方向長さに沿って、ゲート要素216aを移動(例えば、並進)するように作動させることができる。ゲート要素216aのこの移動は、関連するポート208を遮断する(例えば、部分的もしくは完全に遮断する)および/または遮断解除する(例えば、部分的もしくは完全に遮断解除する)ことができる。例えば、第1の作動要素214aがその好ましい幾何学形状に対して圧縮される実施形態では、第1の作動要素214aをその遷移温度を上回って加熱することにより、第1の作動要素214aを膨張および/または硬化させる(それによって長さを膨張させる)ことができる。第1のアンカー212aおよび第2のアンカー212bは定位置に固定されているため(例えば、それらは、排液要素202に対して移動しない)、第1の作動要素214aは、ゲート要素216aが膨張する(かつ第2のアンカー212bに向かう)際、第1のアンカー212aから離れるようにゲート要素216aを押圧する。図2Bに例解されるように、これは、以前にゲート要素216aによって覆われていたポート208を遮断解除することができ、それによって、ポート208に流入する(またはポート208から流出する)ことを可能にする。同様に、第2の作動要素214bを加熱すると、第2の作動要素214bの膨張を引き起こし、これが、ゲート要素216aが第2のアンカー212bから離れて第1のアンカー212aに向かって戻るように押圧する。図2Cに例解されるように、これが、ゲート要素216aがポート208を遮断することを引き起こし、それによって、ポート208に流入する(またはポート208から流出する)のを防止することができる。したがって、第1の作動要素214aおよび/または第2の作動要素214bは、ポート208を遮断および/または遮断解除するように選択的に標的化することができる。いくつかの実施形態では、第1の作動要素214aおよび/または第2の作動要素214bは、ポート208を完全に遮断および/または遮断解除するのではなく、ポート208を部分的に遮断するか、または部分的に遮断解除するように作動させることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、作動要素は、エネルギーの適用に続いてそれらの形状を保持するか、または実質的に保持するように構成される。例えば、エネルギーが第1の作動要素214aに適用されて、第1の流動制御要素211aを図2Cに示される構成から図2Bに示される構成に遷移させる場合、第1の流動制御要素211aは、さらなるエネルギーが第1の流動制御要素211aに適用されるまで、図2Bに示される構成を維持することができる。したがって、第1の流動制御要素211aが対応するポート208を遮断解除するように作動させると、対応するポート208は、さらなるエネルギーが(例えば、第2の作動要素214bへのエネルギーの適用によって)第1の流動制御要素211aに適用されるまで遮断解除されたままである。他の実施形態では、作動要素は、エネルギーの適用が終了すると、エネルギーを与えられた作動要素が、元の形状に向かって反動する、(例えば、部分的な)反動効果を呈し得る。
【0031】
前述の説明は、第1の流動制御要素211aを対象とするが、流動制御要素211b~dと関連付けられた構成要素は、同様の様式で作動させることができる。さらに、緑内障シャント用の形状記憶アクチュエータの動作に関する追加の詳細は、米国特許出願公開第2020/0229982号、ならびに国際特許出願第PCT/US20/55144号および同第PCT/US20/55141号内に記載され、それらの開示は、参照によりその全体がすべての目的で本明細書に組み込まれる。
【0032】
シャント200は、体温で、ポート208のすべて、一部が対応するゲート要素216によって遮断されるか、またはポート208のいずれも対応するゲート要素216によって遮断されないように設定することができる。したがって、いくつかの実施形態では、シャント200は、ポート208のすべて、一部が対応するゲート要素216によって遮断されるか、またはポート208のいずれも、対応するゲート要素216によって遮断されていない基本構成を有することができる。
【0033】
シャント200を通る水の排液は、流動制御要素211a~dを使用して、ポート208を選択的に遮断および/または遮断解除することによって選択的に制御することができる。例えば、第1の排液速度および第1の流動抵抗を有する第1のレベルの治療を提供するために、ポート208のうちの1つは、アクセス可能/遮断解除され得、一方で残りのポート208は、アクセス不可能/遮断され得る。第1の排液速度よりも大きい第2の排液速度を有する第2のレベルの治療を提供するために(例えば、第1の流動抵抗未満の第2の流動抵抗)、ポート208のうちの2つが、アクセス可能/遮断解除され得、一方で残りのポート208は、アクセス不可能/遮断される。当業者が理解するように、流動制御要素211a~dは、ポート208の任意の組み合わせが遮断されるか、または遮断解除されて、複数の異なる治療レベルを提供するように作動させることができる。
【0034】
シャント200によって提供され得る個別の治療レベルを増加させるために、各ポート208は、シャント200が所与の圧力に曝されたとき、互いに対して異なるレベルの治療(例えば、抵抗)を提供するように構成され得る。例えば、図3Aは、各ポート208a~dが異なる寸法を有する状態で、4つのポート208a~d(例えば、開口部)を有するシャント200の実施形態を例解する。例えば、ポート208a~dの各々は、異なる相対流量および/または抵抗に対応する、異なる直径を有することができる。例解された実施形態では、ポート208aは、第1の直径を有し、ポート208bは、第1の直径よりも大きい第2の直径を有し、ポート208cは、第2の直径よりも大きい第3の直径を有し、ポート208dは、第3の直径よりも大きい第4の直径を有する。いくつかの実施形態では、ポート208a~dの直径は、約4マイクロメートル~約16マイクロメートル、約8マイクロメートル~約22マイクロメートル、約15マイクロメートル~約60マイクロメートル、または約25マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲であり得、他の実施形態では、ポート208a~dのうちのいくつかまたはすべての直径は、前述の範囲外にある可能性がある。
【0035】
ポート208a~dの各々は、個々の流動制御要素211a~dに対応することができる(明瞭化のために図3Aでは省略されている)。したがって、ポート208a~dの各々は、図2A図2Cに関して上で説明したように、対応する流動制御要素211a~dを作動させることによって、選択的に遮断されるか、または遮断解除され得る。例えば、流動制御要素211a~dは、ポート208a~dのうちの1つ以上が、(i)(例えば、ポート208a~dが完全に開放されかつアクセス可能であるとき)第1のレベルの治療を提供する第1の流体流動断面を有するか、または(ii)(例えば、ポート208a~dが、対応する流動制御要素211a~dによって少なくとも部分的に覆われているとき)第1のレベルの治療未満の第2のレベルの治療を提供する第2の流体流動断面を有するように作動させることができる。さらに、上記のように、ポート208a~dの任意の組み合わせは、遮断することができ、ポート208a~dの任意の組み合わせは、対応する流動制御要素211a~dの位置決めに基づいて、遮断解除することができる。
【0036】
ポート208a~dの各々は、(例えば、所与の圧力下で動作するとき)他のポート208a~cに対して、所望の流体流動および/または排液速度と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、各々個々のポート208a~dを通して提供される相対排液速度は、所与の圧力下で、ポート208aからポート208dへ共通の値だけ増加する。例えば、ポート208aは、約Xの相対排液速度と関連付けられ得、ポート208bは、約2Xの相対排液速度と関連付けられ得、ポート208cは、約3Xの相対排液速度と関連付けられ得、ポート208dは、約4Xの相対排液速度と関連付けられ得る。かかる実施形態では、ポート208a~dに対する相対流量の比は、1:2:3:4である。かかる実施形態では、流動制御要素211a~dは、約X(ポート208aのみが遮断解除される)~約10X(すべてのポート208a~dが遮断解除される)の任意の排液速度を実現するように操作され得る。3つのポート208a~cのみを有する実施形態では、対応する流動制御要素は、約X(ポート208aのみが遮断解除される)~約6X(すべてのポート208a~cが遮断解除される)の任意の排液速度を実現するように操作され得る。以下の表1は、ポート208a~dに対する相対流量の比が1:2:3:4である実施形態に関する相対排液速度(流動)および関連する抵抗値を反映する。
【表1】
【0037】
上記の表1に反映されているように、同じ相対流動値(Q)は、開放ポートおよび閉鎖ポート208a~dの異なる組み合わせ(例えば、3、4、5、6、および7の流動値)を介して達成することができる。したがって、例解された実施形態では、開放ポートおよび閉鎖ポートの15の潜在的な組み合わせを有するにもかかわらず(すべてのポート208a~dが閉鎖される場合は16)、10の個別の治療レベルのみが提供される。
【0038】
他の実施形態では、それぞれのポート208a~dを通る相対排液速度は、ポート208aからポート208dへの共通の値分で増加せず、むしろ(例えば、値の重複を回避するために)より多くの個別の可能な排液速度を実現するように選択的にサイズ決定される。例えば、3つのポート208a~cだけを有する実施形態では、ポート208aは、約Xの相対排液速度と関連付けられ得、ポート208bは、約2Xの相対排液速度と関連付けられ得、ポート208cは、約4Xの相対排液速度と関連付けられ得る。かかる実施形態では、ポート208a~cに対する相対流量の比は、1:2:4である。ポート208a~cは、対応する流動制御要素311a~cによって選択的に遮断および遮断解除されて、様々な所望の排液速度を実現することができる。例えば、ポート208aのみが遮断解除される場合、排液速度は、約Xであり、ポート208bのみが遮断解除される場合、排液速度は約2Xであり、ポート208aおよび208bの両方が遮断解除される場合、排液速度は約3Xであり、ポート208cのみが遮断解除される場合、排液速度は約4Xであり、ポート208aおよび208cが遮断解除される場合、排液速度は約5Xであり、ポート208bおよび208cが遮断解除される場合、排液速度は約6Xであり、ポート208a、208b、および208cがすべて遮断解除される場合、排液速度は約7Xである。1:2:3の相対排液比を有する3つのポートを備えるシャントが、6つの個別の潜在的な排液速度を提供することができる上記の例とは異なり、1:2:4の相対排液比を有する3つのポートを備えるシャントは、少なくとも7つの異なる潜在的な排液速度を提供することができる。したがって、上で説明したようにポート208の寸法を変化させることによって、より少ない数のポート208で、より多くの数の相対排液速度を得ることができる。4つのポート208を有する実施形態では、ポート208dは、可能な固有の排液速度の数をさらに増加させるために、約8Xの相対排液速度を有することができる(例えば、ポート208a~dに対する相対流量の比は、1:2:4:8である)。したがって、ユーザは、どのポート208が遮断され、かつどのポート208が遮断解除されるかを選択して、所望の排液速度のいずれかを実現することができる。以下の表2は、ポート208a~dに対する相対流量の比が1:2:4:8である実施形態に関する相対排液速度(流動)および関連する抵抗値を反映する。
【表2】
【0039】
当然ながら、ポート208a~cに対する相対流量の比は、1:2:4:8または1:2:3:4以外の値であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、比は、1:1:1:1、1:1:2:2、1:1:1:2などであり得る。他の実施形態では、比は、ランダムであり得る(例えば、1:6:2:3、4:2:5:1など)。
【0040】
前述の流動特性はまた、各々個々のポート208a~dによって提供される抵抗の観点から説明することができる。例えば、遮断解除されるか、別様にアクセス可能なとき、ポート208aは、第1の抵抗を有することができ、ポート208bは、第1の抵抗未満の第2の抵抗を有することができ、ポート208cは、第2の抵抗未満の第3の抵抗を有することができ、ポート208dは、第3の抵抗未満の第4の抵抗を有することができる。抵抗は、所定の比を有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、ポート208aと、ポート208bと、ポート208cと、ポート208dに提供される抵抗の比は、4:3:2:1、8:4:2:1、1:1:1:1、または他の比であり得る。以下の表3は、ポート208a~dの相対抵抗の比が4:3:2:1である実施形態に関する相対抵抗および関連する流動を反映する。以下の表4は、ポート208a~dの相対抵抗の比が1:2:4:8である実施形態に関する相対抵抗および関連する流動を反映する。
【表3】
【表4】
【0041】
当業者が本明細書の開示から理解するように、本明細書に記載のシャント200および他のシャントは、各々対応する流動制御要素211を備えた、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のポート208を有することができる。ポート208の数を増加させることは、概して、ポート208の数が増加すると、遮断されたポートおよび/または遮断解除されたポートの固有の組み合わせの数も同様に増加するため、実装することができる異なる排液速度の数を増加させる。上で説明したように、ポート208はまた、最大数の潜在的な治療レベルを提供するように選択的にサイズ決定することができる。例えば、2つのポートを有する実施形態では、ポートに対する相対流量の比は、約1:2であり得、および/またはポートに対する相対抵抗の比は、約2:1であり得る(例えば、合計4つの個別の治療レベルを生成する)。2つのポートを有する他の実施形態では、相対流量の比は、約1:1であり、および/または相対抵抗の比は、約1:1である。3つのポートを有する実施形態では、ポートに対する相対流量の比は、約1:2:4であり得、および/またはポートに対する相対抵抗の比は、約4:2:1であり得る(例えば、合計8つの個別の治療レベルを生成する)。3つのポートを有する他の実施形態では、相対流量の比は、約1:1:1もしくは約1:2:3であり、および/または相対抵抗の比は、約1:1:1もしくは約3:2:1である。4つのポートを有する実施形態では、ポートに対する相対流量の比は、約1:2:4:8であり得、および/またはポートに対する相対抵抗の比は、約8:4:2:1であり得る(合計16の個別の治療レベルを生成する)。4つのポートを有する他の実施形態では、相対流量の比は、約1:1:1:1もしくは約1:2:3:4であり、および/または相対抵抗の比は、約1:1:1:1もしくは約4:3:2:1である。5つのポートを有する実施形態では、ポートに対する相対流量の比は、約1:2:4:8:16であり得、および/またはポートに対する相対抵抗の比は、約16:8:4:2:1であり得る(合計32の個別の治療レベルを生成する)。5つのポートを有する他の実施形態では、相対流量の比は、約1:1:1:1:1もしくは約1:2:3:4:5であり、および/または相対抵抗の比は、約1:1:1:1:1もしくは約5:4:3:2:1である。
【0042】
図3Bは、各流動制御要素211a~dに対応するポート208(例えば、開口部)の数が変化するが、各ポート208の寸法は同じであるか、または少なくとも略同じである、シャント200の別の実施形態を例解する。例えば、排液要素202は、第1の流動制御要素211aに対応する1つのポート208、第2の流動制御要素211bに対応する2つのポート208、第3の流動制御要素211cに対応する4つのポート208、および第4の流動制御要素211dに対応する8つのポート208を有することができる。ポート208の寸法が同じであるか、または少なくとも略同じであるため、第1の流動制御要素211aに対応するポート208は、Xの相対排液速度を提供することができ、第2の流動制御要素211bに対応するポート208は、約2Xの相対排液速度を提供することができ、第3の流動制御要素211cに対応するポート208は、約4Xの相対排液速度を提供することができ、流動制御要素211dに対応するポート208は、約8Xの相対排液速度を提供することができる(例えば、ポート208間の相対流量の比は、1:2:4:8のままである)。上で説明したように、流動制御要素211a~dの各々は、対応するポート208を遮断および/または遮断解除するために個々に作動させることができる。また、上で説明したように、前述の排液速度を促進するポートを提供することは、必要な流動制御要素の数を減少させながら、可能な排液速度の数を増加させる。他の実施形態では、各流動制御要素211a~dに対応するポート208の数は、1つ増加する。さらに他の実施形態では、ポート208は、同じ寸法を有さない。
【0043】
いくつかの実施形態では、シャント200は、個々のポート208と関連付けられた複数の個別の流体的に隔離された管腔またはチャネルを含み得る。かかる実施形態では、治療レベル(例えば、排液速度、抵抗など)は、ポート208の数またはサイズではなく、管腔の相対的な寸法によって判定され得る。例えば、各管腔は、異なる流動抵抗を付与するために異なる寸法を有し得る。かかる実施形態では、シャント200は、対応するチャネルの相対的な流体抵抗を反映するヘルスケア提供物に視覚的な合図を提供するために、異なるサイズのポート208(図3A)または異なる数のポート208(図3B)をなお含むことができる(例えば、1つの開口部は、対応する管腔が第1の抵抗を有することを意味し、2つの開口部は、対応する管腔が第1の抵抗未満の第2の抵抗を有することを意味するなど)。
【0044】
上記の説明は、主に、ポート208a~dが開放されるか、または閉鎖されるかのいずれかであるバイナリ設定の下での潜在的な流量および抵抗を説明する。しかしながら、いくつかの実施形態では、ゲート要素216は、ポート208a~dが完全な開放状態または完全な閉鎖状態の間の1つ以上の位置を占めるように操作することができる。これにより、シャント200が提供できる個別の治療レベルの数をさらに増加させることができる。さらに他の実施形態では、ゲート要素216は、閉位置においてさえ、一部の流体がポート208a~dを通って漏れることを可能にし得る(例えば、ゲート要素216は、閉鎖位置にあるとき、ポート208a~dと完全流体封止部を形成しない。)
【0045】
上で説明された技術および作動アセンブリはまた、他のタイプのシャントおよび排液要素でも使用することができる。例えば、図4Aおよび図4Bは、本技術の選択された実施形態に従って構成された排液プレート440を有するシャント400の選択された特徴を例解する。より具体的には、図4Aは、プレート440の部分的な等角図であり、図4Bは、プレート440の部分的な概略トップダウン図である。プレート440は、流体が複数の対応するチャネル422に流入することを可能にする複数の流入ポート408を含む。チャネル422は、複数の流出ポート409を介して管腔405に入り空になる。したがって、複数の流入ポート408および/またはチャネル422は、並列流体抵抗として配置され、したがって、シャント200(図2A図3B)に関して上で説明されたものと同様の流動特性を呈することができる。管腔405は、流体を所望の流出場所(例えば、ブレブ空間)および/または細長い排液要素(図示せず)に向かって方向付けることができる。
【0046】
シャント400は、チャネル422を通る流体の流動を制御するために、排液プレート440に動作可能に結合された流動制御機構(図示せず)を含むことができる。いくつかの実施形態では、流動制御機構は、個々の流入ポート408およびチャネル422と関連付けられた複数の個々に作動可能な流動制御要素を含む。例えば、いくつかの実施形態では、図2A図2Cに関して説明した流動制御機構210と略同様の流動制御機構が、流動制御要素211a~dが流入ポート408とインターフェース接続するようにプレート440上に配設され得る。いくつかの実施形態では、流動制御機構210の態様は、シャント400の異なる構造を説明するためにわずかに修正され得る。例えば、固定要素は、シャント全体の周りに延在することはできず、むしろプレート440の上部表面に(例えば、溶接、接着または他の好適な接着剤を介して)固定され得る。その構成に関係なく、流動制御機構は、個々の流動制御要素(例えば、図2A図2Cの流動制御要素211a~d)が、個々のポート408を通る流体の流動を制御するように位置決めされるように位置決めすることができる。例えば、流動制御要素211a~d(図2Bおよび図2C)は、対応するチャネル422を通る流動を遮断および/または遮断解除するように独立して、選択的に作動させることができる。他の実施形態では、チャネル422を通る流体の流動を少なくとも部分的に遮断および/または遮断解除するように構成された他の適切な流動制御要素を使用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、チャネル422は、各々、同じまたは大体同じ流動抵抗を有し得る。チャネル422が同じまたは大体同じ流動抵抗を有する実施形態では、追加のチャネル422を開放することは、排液速度における段階的な増加をもたらすことが予想され、追加のチャネル422を遮断することは、排液速度における段階的な減少をもたらすことが予想される。例えば、単一の開放チャネル422から2つの開放チャネル422へ移動することは、概して、排液速度が2倍になることが予想され、一方、2つの開放チャネル422から3つの開放チャネル422に移動することは、概して、排液速度が50パーセント増加することが予想される。しかしながら、第1の管腔のみが遮断解除されているときの抵抗および流動は、第2の管腔のみが遮断解除されているときの抵抗および流動と同じであるため、固有の抵抗の総数、すなわち実現することができる流量は、最大化されない。
【0048】
他の実施形態では、チャネル422は、異なる抵抗、それゆえ異なる相対排液速度を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、各々個々のチャネル422は、互いに対して所望の排液速度および/または抵抗と関連付けられ得る。例えば、第1のチャネルは、約Xの排液速度と関連付けられ得、第2のチャネルは、約2Xの排液速度と関連付けられ得、第3のチャネルは、約4Xの排液速度と関連付けられ得る、等々である。ポート208に関して上で説明したように、各チャネル422が異なる排液速度と関連付けられるとき、より少ないチャネル422でより多くの排液速度を得ることができる。チャネル422を通る流動抵抗、それゆえチャネル422を通る排液速度は、例えば、チャネルの長さおよび/またはチャネルの直径に基づいて、変化し得る。チャネルの長さは、概して、チャネルの抵抗に比例するが、チャネルの直径は、概して、チャネルの抵抗に反比例する。したがって、各々個々のチャネル422は、特定の抵抗を与える、固有の長さ、直径、または長さと直径の組み合わせを有し得る。次いで、個々のチャネル422は、選択的に開放されて(または閉鎖されて)、所望の流量を実現することができる。
【0049】
シャント400(およびシャント200)などの並列流体抵抗を通る流動特性は、並列に配置された複数の抵抗を有する電気回路を通って流動する電流と同様であり得る。例えば、図4Cは、複数の抵抗R1~4を並列に有する電気回路650の概略図である。各抵抗R1~4は、並列抵抗シャントの個々のポートまたはチャネルに類似する(例えば、シャント200のポート208a~d、シャント400のポート408、またはシャント400のチャネル422)。回路を通る電流流動を制御するために、複数のスイッチS1~4は、各々個々の抵抗R1~4を通る回路を完成させるか、または断絶させることができる。これは、各々個々のポートが開放(例えば、遮断)状態と閉鎖(例えば、遮断解除)状態との間で遷移可能であることに類似する。回路450を完成させるために閉鎖されている2つ以上のスイッチS1~4は、2つ以上のポートが並列抵抗シャント内で開放されているのと同様の様式で、回路450を通る電流流動に影響を与える。電流が第1の方向において回路450を通って流動するように示されているが、電流は、本明細書で説明された並列抵抗シャントが、流体がいずれかの方向においてシャントを通って流動して動作し得る方法と同様に、第1の方向とは反対側の第2の方向において回路450を通って代替的に流動することができる。
【0050】
本技術はまた、直列流体抵抗として動作する複数の流入ポートを有するシャントシステムを提供する。例えば、図5Aおよび図5Bは、排液プレート540を有し、直列流体抵抗として機能するように構成されたシャント500の特徴を例解する。より具体的には、図5Aは、排液プレート540のトップダウンの部分的な等角図であり、図5Bは、排液プレート540のボトムアップの部分的な等角図である。排液プレート440(図4A)とは異なり、排液プレート540は、流体がチャネル522に流入することを可能にする単一の流入ポート508を含む。チャネル522は、流体がチャネル522から、流体を所望の流出場所(例えば、ブレブ空間)および/または細長い排液要素(図示せず)に向かって方向付ける管腔(例えば、図4Aおよび図4Bに関して説明される管腔405)に流動することを可能にする複数の流出ポート509を含む。複数の流出ポート509は、チャネル522の長さに沿って直列に配置することができ、および/またはチャネル522から延在する複数の導管によってチャネル522に流体的に結合することができる。他の実施形態では、排液プレート540の配向は、流体が反対方向に(例えば、複数の流出ポート509から単一の流入ポート508へ)流動するように、逆にすることができる。
【0051】
シャント500は、排液プレート540に動作可能に結合されて、流出ポート509から管腔への流体の流動を制御するための流動制御機構(図示せず)を含むことができる。流動制御機構は、個々の流出ポート509と関連付けられた複数の個々に作動可能な流動制御要素を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の流動制御機構210(図2A図2C)と略同様の流動制御機構は、流動制御要素211a~dが流出ポート509とインターフェース接続するようにプレート540上に配設することができる。かかる実施形態では、プレート540は、選択された波長(例えば、約500nm~約600nmなど)を有するレーザエネルギーなどの、少なくともいくつかの形態のエネルギーに対して少なくとも部分的に透過性(例えば、透明)であり得る。他の実施形態では、流出ポート509を通る流体の流動を少なくとも部分的に遮断および/または遮断解除するように構成された他の適切な流動制御要素を使用することができる。
【0052】
プレート540は、直列抵抗として機能するように構成される。例えば、抵抗は、(流入ポート508および/または流出ポート509ではなく)チャネル522によって提供され、流入ポート508と最も近い開放流出ポート509との間の距離に基づく。例えば、流入ポート508から最も離れて間隔を空けられた流出ポート509が、開放される唯一の流出ポート509である場合、流動に対する抵抗は、(例えば、流体がチャネル522を通って最大距離を移動しなければならないため)最大である。流入ポート508に最も近い流出ポート509が開放される場合、次いで、抵抗は、(例えば、流体がチャネル522を通って最短距離を移動しなければならないため)最小である。かかる実施形態では、チャネル/開口部は、それらが直列であるかのように反応し、それゆえ、個別の抵抗の数および排液速度は、概して、流出開口部509の数に等しい。
【0053】
シャント500などの直列流体抵抗を通る流動特性は、直列に配置された複数の抵抗を有する電気回路を通って流動する電流と同様であり得る。例えば、図6Cは、直列に4つの抵抗Ra~dを有する電気回路550の概略図である。各抵抗Ra~dは、直列抵抗シャントの個々のポート(例えば、シャント500のポート509)に類似している。回路を通る電流流動を制御するために、複数のスイッチSa~dが、回路を完成させるか、または断絶させることができる。これは、各々個々のポートが開放(例えば、遮断)状態と閉鎖(例えば、遮断解除)状態との間で遷移可能であることに類似する。回路550を完成させるために閉鎖されている2つ以上のスイッチSa~dは、2つ以上のポートが直列抵抗シャント内で開放されているのと同様の様式で、回路550を通る電流流動に影響を与える。電流が第1の方向において回路650を通って流動するように示されているが、電流は、本明細書で説明された直列抵抗シャントが、流体がいずれかの方向においてシャントを通って流動して動作し得る方法と同様に、第1の方向とは反対側の第2の方向において回路650を通って代替的に流動することができる。
【0054】
図6は、本技術の選択された実施形態に従って構成されたシャント600の等角図である。シャント600は、第1の端部部分604および第2の端部部分606を有する細長い管602を含む。第1の端部部分604は、プレート640に接続される。プレート640は、それぞれ、図4Aおよび図4B、ならびに図5Aおよび図5Bに関して、上で説明されたプレート440および/または540と略同様であり得る。第1の端部部分604は、プレート640の内部(例えば、管腔405~図4A)に流体的に結合され、そこから流体を受容するように構成することができる。第2の端部部分606は、1つ以上のポート(図示せず)を含むことができる。シャント600が眼内に移植されるとき、第1の端部部分604およびプレート640は、前房内に存在することができ、第2の端部部分606は、所望の流出場所(例えば、ブレブ空間)内に存在することができる。他の実施形態では、第1の端部部分604およびプレート640は、所望の流出場所内に存在することができ、第2の端部部分606は、前房内に存在することができる。シャント600の配向に関わらず、シャント600は、シャント600が眼内に移植されるとき、前房から水を排液するように構成される。いくつかの実施形態では、プレート640は、シャント600を所望の位置に少なくとも部分的に固定し得る。シャント600は、任意選択的に、眼内に移植されるときにシャント600を所定の位置に固定するのに役立つ追加の機能を有してもよい。例えば、シャント600は、アーム、アンカー、プレート、またはシャント600を天然組織に固定する他の好適な特徴を含むことができる。
【0055】
本技術は、(例えば、緑内障を治療するために前房から水を排液するために)本明細書に記載のシャントシステムおよびシャントを通して流体をシャントする方法をさらに含む。本方法は、例えば、1つ以上の流動制御要素を選択的に作動させて、シャント上の1つ以上のポート(例えば、流入ポート)を開放および/または閉鎖して、目標の抵抗および/または流動を実現することを含む、上で説明された技術のうちのいずれかを組み込むことができる。本方法はまた、目標の眼内圧力が達成されるまで、1つ以上の流動制御要素を選択的に作動させて、1つ以上のポートを開放および/または閉鎖することを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、ポートは、すべて同時に遮断解除して、所与の圧力に対して最小の抵抗および最大の流動を提供することができる。これは、眼内圧力を迅速に低減させるために医療提供者のオフィス内で行われ得る。目標の眼内圧力が実現されると、ポートの一部またはすべてが閉鎖されて、長期治療により好適な流動および抵抗を提供することができる。理論に拘束されることを意図することなく、本明細書で提供されるような調整可能なシャントの使用は、従来の静的(例えば、調整不可能な)シャントよりも高い流量および低い抵抗を安全に提供できる可能性がある。例えば、従来の静的シャントは、概して、低眼圧症の誘発を回避するために、高い流量または低い抵抗を提供しない。対照的に、本技術のシャントは、(例えば、すべてのポートを開放することによって)高い流量および低い抵抗を提供することができ、長期間変更しないままにする場合、低眼圧症につながる可能性がある。しかしながら、低眼圧症が発症する前に、医療提供者は、シャントを調整して、流動を低下させ、抵抗を増加させることができる。これの期待される利点の1つは、医療提供者が、患者内の眼内圧力をより迅速に低減させることができることである。
【0057】
実施例
本技術のいくつかの態様を以下の実施例に記載する:
1.流体を排液するためのシステムであって、
第1の身体領域内に位置決め可能な第1の端部領域、および第2の身体領域内に位置決め可能な第2の端部領域を有する排液要素であって、第1の端部領域が、第1のポート、第2のポート、および第3のポートを含む、排液要素と、
排液要素を通る流体の流動を制御するための流動制御機構であって、
流体が第1のポートを介して排液要素に流入することを可能にする第1の開位置と、流体が第1のポートを介して排液要素に流入するのを実質的に防止する第1の閉位置との間で移動可能な第1の流動制御要素と、
流体が第2のポートを介して排液要素に流入することを可能にする第2の開位置と、流体が第2のポートを介して排液要素に流入するのを実質的に防止する第2の閉位置との間で移動可能な第2の流動制御要素と、
流体が第3のポートを介して排液要素に流入することを可能にする第3の開位置と、流体が第3のポートを介して排液要素に流入するのを実質的に防止する第3の閉位置との間で移動可能な第3の流動制御要素と、を含み、
第1の流動制御要素、第2の流動制御要素、および第3の流動制御要素が、それらのそれぞれの開位置と閉位置との間で独立して移動可能である、流動制御機構と、を備える、システム。
2.第1の流動制御要素が、第1の開位置内にあり、第2の流動制御要素が、第2の閉位置内にあり、第3の流動制御要素が、第3の閉位置内にあるとき、システムが、流体の流動に対する第1の相対抵抗を提供するように構成されており、
第2の流動制御要素が、第2の開位置内にあり、第1の流動制御要素が、第1の閉位置内にあり、第3の流動制御要素が、第3の閉位置内にあるとき、システムが、第2の相対抵抗を提供するように構成されており、
第3の流動制御要素が、第3の開位置内にあり、第1の流動制御要素が、第1の閉位置内にあり、第2の流動制御要素が、第2の閉位置内にあるとき、システムが、第3の相対抵抗を提供するように構成される、実施例1に記載のシステム。
3.第2の相対抵抗が、第1の相対抵抗未満であり、第3の相対抵抗が、第1の相対抵抗未満である、実施例2に記載のシステム。
4.第1の相対抵抗、第2の相対抵抗、および第3の相対抵抗の間の比が、約4:2:1である、実施例3に記載のシステム。
5.第1の相対抵抗、第2の相対抵抗、および第3の相対抵抗の間の比が、約3:2:1である、実施例3に記載のシステム。
6.第1の相対抵抗、第2の相対抵抗、および第3の相対抵抗の間の比が、約1:1:1である、実施例2に記載のシステム。
7.第1の流動制御要素が、第1の開位置内にあり、第2の流動制御要素が、第2の閉位置内にあり、第3の流動制御要素が、第3の閉位置内にあるとき、システムが、第1の相対排液速度を提供するように構成されており、
第2の流動制御要素が、第2の開位置内にあり、第1の流動制御要素が、第1の閉位置内にあり、第3の流動制御要素が、第3の閉位置内にあるとき、システムが、第2の相対排液速度を提供するように構成されており、
第3の流動制御要素が、第3の開位置内にあり、第1の流動制御要素が、第1の閉位置内にあり、第2の流動制御要素が、第2の閉位置内にあるとき、システムが、第3の相対排液速度を提供するように構成される、実施例1に記載のシステム。
8.第2の相対排液速度が、第1の相対排液速度よりも大きく、第3の相対排液速度が、第2の相対排液速度よりも大きい、実施例7に記載のシステム。
9.第1の相対排液速度、第2の相対排液速度、および第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:4である、実施例8に記載のシステム。
10.第1の相対排液速度、第2の相対排液速度、および第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:3である、実施例8に記載のシステム。
11.第1の相対排液速度、第2の相対排液速度、および第3の相対排液速度の間の比が、約1:1:1である、実施例7に記載のシステム。
12.排液要素が、第1のポートに流体的に結合された第1のチャネル、第2のポートに流体的に結合された第2のチャネル、および第3のポートに流体的に結合された第3のチャネルを有する、実施例1~11のいずれか一項に記載のシステム。
13.第1のチャネルが、第2のチャネルよりも大きい相対抵抗を提供するように構成されており、第2のチャネルが、第3のチャネルよりも大きい相対抵抗を提供するように構成される、実施例12に記載のシステム。
14.第1のチャネルが、第1の断面積を有し、第2のチャネルが、第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有し、第3のチャネルが、第2の断面積よりも大きい第3の断面積を有する、実施例13に記載のシステム。
15.第1のポートが、第1の面積を有し、第2のポートが、第1の面積よりも大きい第2の面積を有し、第3のポートが、第2の面積よりも大きい第3の面積を有する、実施例1~14のいずれか一項に記載のシステム。
16.第1のポートが、単一の開口部を含み、第2のポートが、2つの開口部を含み、第3のポートが、3つ以上の開口部を含む、実施例1~15のいずれか一項に記載のシステム。
17.第1のポートが、第1の流入ポートであり、第2のポートが、第2の流入ポートであり、第3のポートが、第3の流入ポートである、実施例1~16のいずれか一項に記載のシステム。
18.第1の身体領域が、前房であり、流体が、水である、実施例1~17のいずれか一項に記載のシステム。
19.流体を排液するためのシステムであって、
第1の身体領域内に位置決め可能な第1の端部領域、および第2の身体領域内に位置決め可能な第2の端部領域を有する排液要素であって、第1の端部領域が、第1の流入ポートおよび第2の流入ポートを含み、
第1の流入ポートが、遮断解除され、第2の流入ポートが、遮断されるとき、システムが、排液要素を通る第1の相対排液速度を提供するように構成されており、
第2の流入ポートが、遮断解除され、第1の流入ポートが遮断されるとき、システムが、第1の相対排液速度よりも大きい排液要素を通る第2の相対排液速度を提供するように構成される、排液要素と、
流動制御機構であって、
第1の流入ポートを通る流体の流動を選択的に制御するように構成された第1の流動制御要素、および
第2の流入ポートを通る流体の流動を選択的に制御するように構成された第2の流動制御要素を含み、
第1の流動制御要素および第2の流動制御要素が、独立して作動可能である、流動制御機構と、を備える、システム。
20.第1の相対排液速度と第2の相対排液速度との間の比が、1:2である、実施例19に記載のシステム。
21.第1の流入ポートおよび第2の流入ポートの両方が遮断解除されるとき、システムが、第1の相対排液速度および第2の相対排液速度よりも大きい、排液要素を通る第3の相対排液速度を提供するように構成される、実施例20に記載のシステム。
22.第1、第2、および第3の相対排液速度の間の比が、1:2:3である、実施例21に記載のシステム。
23.第1の流入ポートが、単一の開口部を含み、第2の流入ポートが、複数の開口部を含む、実施例19~22のいずれか一項に記載のシステム。
24.第1の流入ポートが、第1の面積を有し、第2の流入ポートが、第1の面積よりも大きい第2の面積を有する、実施例19~23のいずれか一項に記載のシステム。
25.排液要素が、(i)第1の流入ポートと第2の端部領域との間に延在する第1の管腔、および(ii)第2の流入ポートと第2の端部領域との間に延在する第2の管腔を含み、第1の管腔が、第2の管腔とは異なる流体の流動に対する抵抗を提供するように構成される、実施例19~24のいずれか一項に記載のシステム。
26.排液要素が、第3の流入ポートをさらに備え、第3の流入ポートが遮断解除され、第1および第2の流入ポートが遮断されるとき、システムが、排液要素を通る第3の相対排液速度を提供するように構成される、実施例19~25のいずれか一項に記載のシステム。
27.第1の相対排液速度、第2の相対排液速度、および第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:3である、実施例26に記載のシステム。
28.第1の相対排液速度、第2の相対排液速度、および第3の相対排液速度の間の比が、約1:2:4である、実施例26に記載のシステム。
29.排液要素が、第4の流入ポートをさらに備え、第4の流入ポートが遮断解除され、かつ第1、第2、および第3の流入ポートが遮断されるとき、システムが、排液速度を通る第4の相対排液速度を提供するように構成されており、第1、第2、第3、および第4の相対排液速度の比が、約1:2:4:8である、実施例25に記載のシステム。
30.第1の身体領域が、眼の前房であり、流体が、水である、実施例19~29のいずれか一項に記載のシステム。
31.排液要素が、第1の端部部分から延在するプレートを含み、プレートが、第1および第2の流入ポートを含む、実施例19~30に記載のシステム。
32.調整可能なシャントであって、
患者の眼の前房内に位置決め可能な第1の端部部分、および患者の標的流出場所内に位置決め可能な第2の端部部分を有する排液要素であって、
第1の端部部分が、少なくとも3つの流入ポートを含み、第1の流入ポートが、第1の流入ポートのみが開放されるとき、第1の排液速度を提供するように構成されており、第2の流入ポートが、第2の流入ポートのみが開放されるとき、第1の排液速度よりも大きい第2の排液速度を提供するように構成されており、第3の流入ポートが、第3の流入ポートのみが開放されるとき、第2の排液速度よりも大きい第3の排液速度を提供するように構成されており、
第2の端部部分が、少なくとも1つの流出ポートを含み、
管腔が、排液要素を通って第1の端部部分から第2の端部部分まで延在して、少なくとも3つの流入ポートおよび少なくとも1つの流出ポートを流体的に接続する、排液要素と、
少なくとも3つの個々に作動可能な流動制御要素を有する流動制御機構であって、第1の流動制御要素が、第1の流入ポートを遮断および遮断解除するように選択的に動作可能であり、第2の流動制御要素が、第2の流入ポートを遮断および遮断解除するように選択的に動作可能であり、第3の流動制御要素が、第3の流入ポートを遮断および遮断解除するように選択的に動作可能である、流動制御機構と、を備える、調整可能なシャント。
33.第1の排液速度、第2の排液速度、および第3の排液速度が、所定の相対排液速度であり、第1の排液速度が約Xであり、第2の排液速度が約2Xであり、第3の排液速度が約3Xである、実施例32に記載の調整可能なシャント。
34.第1の排液速度、第2の排液速度、および第3の排液速度が、所定の相対排液速度であり、第1の排液速度が約Xであり、第2の排液速度が約2Xであり、第3の排液速度が約4Xである、実施例32に記載の調整可能なシャント。
35.2つ以上の流入ポートが開放されるとき、シャントが、第1の排液速度、第2の排液速度、および第3の排液速度とは異なる第4の相対排液速度を提供するように構成される、実施例34に記載の調整可能なシャント。
36.シャントが、
第1の流入ポートおよび第2の流入ポートのみが開放されるとき、約3Xの第4の排液速度、
第1の流入ポートおよび第3の流入ポートのみが開放されるとき、約5Xの第5の排液速度、
第2の流入ポートおよび第3の流入ポートのみが開放されるとき、約6Xの第6の排液速度、ならびに
第1の流入ポート、第2の流入ポート、および第3の流入ポートが開放されるとき、約7Xの第7の排液速度を含む、追加の所定の相対排液速度を提供するように構成される、実施例34に記載の調整可能なシャント。
37.流動制御要素が、所定の相対排液速度のうちのいずれかを実現するために選択的に作動可能である、実施例36に記載の調整可能なシャント。
38.緑内障を治療する方法であって、
調整可能なシャントを使用して、眼の前房から標的流出場所に水を排液することであって、調整可能なシャントが、
シャントの内部に流体的に結合された第1の流入ポートと、
シャントの内部に流体的に結合された第2の流入ポートと、
流体が第1の流入ポートを介してシャントに流入することを可能にする第1の開位置と、流体が第1の流入ポートを介してシャントに流入するのを実質的に防止する第1の閉位置との間で移動可能な第1の流動制御要素と、
流体が第1の流入ポートを介してシャントに流入することを可能にする第2の開位置と、流体が第1の流入ポートを介してシャントに流入するのを実質的に防止する第2の閉位置との間で移動可能な第2の流動制御要素と、を含む、排液することと、
第1の流動制御要素および/または第2の流動制御要素をそれらのそれぞれの開位置と閉位置との間で作動させることによって、水の排液速度を選択的に調整することと、を含む、方法。
39.第1の流入ポートが、第1の流入ポートのみが遮断解除されるとき、第1の排液速度を提供し、第2の流入ポートが、第2の流入ポートのみが遮断解除されるとき、第1の排液速度よりも大きい第2の排液速度を提供する、実施例38に記載の方法。
40.個々に作動可能な流動制御要素のうちの少なくとも1つを作動させることが、個々に作動可能な流動制御要素のうちの少なくとも1つにエネルギーを適用することを含む、実施例38または39に記載の方法。
41.エネルギーが、非侵襲的エネルギーである、実施例40に記載の方法。
42.調整可能なシャントであって、
患者の眼の前房内に位置決め可能な第1の端部部分、および患者の標的流出場所内に位置決め可能な第2の端部部分を有する排液要素であって、
第1の端部部分が、複数の流入ポートを含み、複数の流入ポートが、少なくとも第1の流入ポートおよび第2の流入ポートを含み、
第2の端部部分が、少なくとも1つの流出ポートを含み、
管腔が、排液要素を通って第1の端部部分から第2の端部部分まで延在して、複数の流入ポートおよび少なくとも1つの流出ポートを流体的に接続する、排液要素と、
複数の流入ポートを通る流体の流動を制御するように構成された流動制御機構であって、流動制御機構が、
第1の流入ポートを通る流体の流動を制御するように構成された第1の流動制御要素、および
第2の流入ポートを通る流体の流動を制御するように構成された第2の流動制御要素を含み、
第1の流動制御要素および第2の流動制御要素が、独立して作動可能であり、その結果、第1の流動制御要素が第2の流動制御要素から独立して移動して、第1の流入ポートを選択的に遮断および/または遮断解除する様に構成され、かつ第2の流動制御要素が、第1の流動制御要素から独立して移動して、第2の流入ポートを選択的に遮断および/または遮断解除するように構成される、流動制御機構と、を備える、調整可能なシャント。
43.第1の流入ポートおよび第2の流入ポートが、異なる直径を有する、実施例42の調整可能なシャント。
44.第1の流入ポートが、単一の流入開口部を備え、第2の流入ポートが、少なくとも2つの流入開口部を備える、実施例42の調整可能なシャント。
45.第1の流入ポートが、第1の流入ポートのみが遮断解除されるとき、シャントを通る第1の排液速度を提供するように構成され、第2の流入ポートが、第2の流入ポートのみが遮断解除されるとき、第1の排液速度よりも大きいシャントを通る第2の排液速度を提供するように構成される、実施例42~44のいずれか一項に記載の調整可能なシャント。
46.排液要素が、第1の端部部分から延在するプレートを含み、プレートが、複数の流入ポートを含む、実施例42~45のいずれか一項に記載の調整可能なシャント。
47.プレートが、
第1の流入ポートおよび管腔を流体的に接続する第1のチャネル、ならびに
第2の流入ポートおよび管腔を流体的に接続する第2のチャネルを含み、
第1のチャネルが、第2のチャネルから分離される、実施例46に記載の調整可能なシャント。
48.第1の流動制御要素が、第1のチャネルと管腔との間に位置決めされ、第2の流動制御要素が、第2のチャネルと管腔との間に位置決めされる、実施例47に記載の調整可能なシャント。
49.第1のチャネルが、第1の流動制御要素と管腔との間に延在し、第2のチャネルが、第2の流動制御要素と管腔との間に延在する、実施例47に記載の調整可能なシャント。
【0058】
結論
本技術の実施形態の上記の詳細な説明は、網羅的であること、または本技術を上記で開示された詳細な形態に限定することを意図していない。技術の特定の実施形態および技術の例を例示の目的で上に説明したが、当業者が認識するように、技術の範囲内で様々な同等の変更が可能である。例えば、本明細書に記載の眼内シャントの特徴のいずれかを、本明細書に記載の他の眼内シャントの特徴のいずれかと組み合わせることができ、またその逆も可能である。さらに、所与の順序でステップが提示されているが、代替の実施形態では異なる順序でステップが実行されてもよい。本明細書で説明される様々な実施形態はまた、さらなる実施形態を提供するために組み合わされてもよい。
【0059】
上記のことから、本技術の特定の実施形態が例解の目的で本明細書で説明されてきたが、眼内シャントと関連付けられた周知の構造および機能は、本技術の実施形態の説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細に示されていないか、または説明されていない。文脈が許す場合、単数または複数の用語は、それぞれ複数または単数の用語も含み得る。
【0060】
文脈から明らかに他のことを必要としない限り、説明および実施例の全体を通じて、「備える(comprise)」、「備える(comprising)」などの単語は、排他的または網羅的な意味とは異なり、包含の意味として解釈されるべきである、すなわち「これに限定されないが、~を含む(including,but not limited to)」の意味として解釈されるべきである。本明細書において使用される場合、「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、またはこれらの用語の任意の変化形は、2つ以上の要素の間の直接的または間接的な任意の接続または結合を意味し、要素間の接続の結合は、物理的、論理的、またはこれらの組み合わせであり得る。また、本明細書において使用される場合、単語「herein(本明細書において)」、「above(上の)」、「below(以下の)」、および類似の意味の単語は、本出願を全体として指すものとし、本出願の特定部分を指すものではない。文脈から可能な場合、単数または複数を使用する上記の詳細な説明中の単語はまた、それぞれ複数または単数を含み得る。本明細書において使用される場合、「Aおよび/またはB(A and/or B)」内のような「および/または(and/or)」という句は、Aのみ、Bのみ、ならびにAおよびBを指す。追加的に、「備える(comprising)」という用語は、任意のより多くの数の同じ機能および/または追加のタイプの他の機能が排除されないように、少なくとも列挙された機能を含むことを意味するために全体を通して使用される。特定の実施形態が例示を目的として本明細書で説明されたが、本技術から逸脱することなく様々な修正が行われ得ることも理解されよう。さらに、本技術のいくつかの実施形態に関連する利点がそれらの実施形態の文脈において説明されているが、他の実施形態は、このような利点を示すこともでき、すべての実施形態が、本技術の範囲内に収まるために必ずしもこのような利点を示す必要がある訳ではない。したがって、本開示および関連する技術は、本明細書において明示的に示されていないか、または説明されていない他の実施形態を包含することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】