(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】センサハウジングおよびセンサハウジングの開放した収容室を注封する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
H01L23/28 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544724
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2021051137
(87)【国際公開番号】W WO2021148438
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】102020200848.5
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クナッカート
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブラインリンガー
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109CA04
4M109DB10
(57)【要約】
本発明は、センサハウジング(1,1A)であって、開放した収容室(3,3A)を備え、この開放した収容室(3,3A)は、開放した端部に、クリープバリアとしての環状の縁部(10,10A)を有し、収容室(3,3A)は、注封材料(16)によって充填されており、完全硬化させられた注封材料(16)は、環状の縁部(10,10A)に対する凹状の表面を形成している、センサハウジング(1,1A)と、このようなセンサハウジング(1,1A)の開放した収容室(3,3A)を注封する方法とに関する。この場合、環状の縁部(10,10A)は、注封プロセス中、安定した凸状の注封材料表面(16A)を形成する、収容室(3,3A)の一時的な過充填を可能にする外向きに下降した傾斜部(12)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサハウジング(1,1A,1B)であって、
開放した収容室(3,3A,3B)を備え、該開放した収容室(3,3A,3B)は、開放した端部に、クリープバリアとしての環状の縁部(10,10A,10B)を有し、
前記収容室(3,3A,3B)は、注封材料(16)によって充填されており、
完全硬化させられた前記注封材料(16)は、前記環状の縁部(10,10A,10B)に対する凹状の表面を形成している、
センサハウジング(1,1A,1B)において、
前記環状の縁部(10,10A,10B)は、注封プロセス中、安定した凸状の注封材料表面(16A)を形成する、前記収容室(3,3A,3B)の一時的な過充填を可能にする外向きに下降した傾斜部(12)を有することを特徴とする、センサハウジング(1,1A,1B)。
【請求項2】
前記収容室(3,3A,3B)の縁部は、登り方向で丸み付け部(14)として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のセンサハウジング(1,1A,1B)。
【請求項3】
前記収容室(3,3A,3B)は、丸みを帯びた角隅領域を備えた方形の底面を有することを特徴とする、請求項2記載のセンサハウジング(1,1A,1B)。
【請求項4】
前記収容室(3,3B)は、少なくとも1つの丸み付けられた凹み部または少なくとも1つの丸み付けられた膨らみ部を有することを特徴とする、請求項3記載のセンサハウジング(1,1B)。
【請求項5】
前記外向きに下降した傾斜部(12)は、20°~70°の範囲内の傾角(a)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のセンサハウジング(1,1A,1B)。
【請求項6】
前記環状の縁部(10,10A,10B)は、0.1~1mmの範囲内の高さを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のセンサハウジング(1,1A,1B)。
【請求項7】
前記収容室(3,3A,3B)は、センサの、前記完全硬化させられた注封材料(16)により保護された少なくとも1つの電子コンポーネントを収容していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のセンサハウジング(1,1A,1B)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載により形成されたセンサハウジング(1,1A,1B)の開放した収容室(3,3A,3B)を注封する方法であって、
前記収容室(3,3A,3B)内に注封材料(16)を注ぎ込むステップと、
注ぎ込まれた前記注封材料(16)を完全硬化させるステップと、
を含む、方法において、
開放した端部の環状の縁部(10,10A,10B)に、安定した凸状の注封材料表面(16A)が形成されるまで、前記注封材料(16)を前記収容室(3,3A,3B)内に注ぎ込むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前提部に記載のセンサハウジングから出発する。本発明の対象は、また、このようなセンサハウジングの開放した収容室を注封する方法でもある。
【0002】
先行技術に基づき、電子コンポーネントを封止材料、例えばエポキシド、シリコーンによって、湿分、腐食および電気的な短絡から保護するために注封することが公知である。したがって、慣用の技術では、センサの電子コンポーネントを収容するセンサハウジングに設けられた開放した収容室が、湿分、腐食、電気的な短絡等から保護するために、エポキシ樹脂注封またはシリコーン注封によって埋められている。
【0003】
特に小型構造のセンサ、例えば回転数センサでは、小さな寸法による毛管現象、複雑なジオメトリおよび/または凹状の縁部ならびに親水性の濡れ特性の組合せによって、注封材料が注封プロセス中に流出してしまうことがある。その結果、注封材料による製品および設備の汚染が生じてしまうことがある。
【0004】
独国特許発明第102008042489号明細書に基づき、圧力センサ用の工作物複合体が公知である。この公知の工作物複合体は、プリフォームと、このプリフォームに設けられた切欠き内に収容されたゲルとを備えている。切欠きは、クリープバリアとしての少なくとも1つの縁部によって取り囲まれており、これによって、ゲルの広がりが阻止されている。縁部により閉鎖された少なくとも1つの面は、縁部に隣接した領域に、疎油性の材料から成るコーティングを備えている。この疎油性の材料から成るコーティングが、上述した面でのゲルのクリープを阻止している。
【0005】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有するセンサハウジングは、注封材料を規定の領域に保持するためには、環状の縁部が適しているという利点を有している。したがって、この環状の縁部は、外向きに下降した傾斜部によって注封材料の流出ならびに製品および設備の汚染を阻止している。さらに、収容室の許容された一時的な過充填によって、安定したロバストな注封プロセスがより迅速なサイクルタイムで可能となる。
【0006】
さらに、本発明に係るセンサハウジングの実施例は、開放した収容室の領域に単純なジオメトリを有している。この単純なジオメトリは、例えばセンサ長さ、センサ幅、電子コンポーネントの個数において異なっていてもよい様々なデザインバリエーションに簡単に転用可能である。さらに、センサハウジングは、自由落下する射出成形部材として製造可能である。
【0007】
本発明の実施形態は、センサハウジングであって、開放した収容室を備え、この開放した収容室は、開放した端部に、クリープバリアとしての環状の縁部を有する、センサハウジングを提供する。収容室は、注封材料によって充填されており、完全硬化させられた注封材料は、環状の縁部に対する凹状の表面を形成している。この場合、環状の縁部は、注封プロセス中、安定した凸状の注封材料表面を形成する、収容室の一時的な過充填を可能にする外向きに下降した傾斜部を有する。
【0008】
さらに、このようなセンサハウジングの開放した収容室を注封する方法が提案される。この場合、開放した端部の環状の縁部に、安定した凸状の注封材料表面が形成されるまで、注封材料が収容室内に注ぎ込まれる。次いで、注ぎ込まれた注封材料が完全硬化させられる。
【0009】
センサハウジングの実施形態は、好ましくは、小型構造の回転数センサに使用されてもよい。当然ながら、センサハウジングの実施形態は、別の小型構造のセンサに使用されてもよい。
【0010】
従属請求項に記載した手段および改良形態によって、独立請求項1に記載したセンサハウジングの有利な改良が可能となる。
【0011】
収容室の縁部が、登り方向で丸み付け部として形成されてもよいことが特に有利である。したがって、収容室は、例えば、丸みを帯びたかもしくは凹状の角隅領域を備えた方形の底面を有してもよい。さらに、収容室は、少なくとも1つの丸み付けられたかもしくは凹状の凹み部または少なくとも1つの丸み付けられたかもしくは凸状の膨らみ部を有してもよい。注封材料の登り方向に形成された丸み付け部によって、注封プロセス中に注封材料の流出を促進させてしまうことがあるシャープな縁部が回避される。
【0012】
センサハウジングの有利な構成では、外向きに下降した傾斜部は、例えば20°~70°の範囲内の傾角、好ましくは45°の傾角を有してもよい。さらに、環状の縁部は、0.1~1mmの範囲内の高さを有してもよい。
【0013】
センサハウジングの別の有利な構成では、収容室は、センサの、完全硬化させられた注封材料により保護することができる少なくとも1つの電子コンポーネントを収容していてもよい。この少なくとも1つの電子コンポーネントは、例えばASIC部品(ASIC:特定用途向け集積回路)として形成されていてもよい。
【0014】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記載において詳しく説明する。図中、同じ機能もしくは類似の機能を実施する構成部分もしくは要素には、同一の符号が付してある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】収容室内に注封材料が注ぎ込まれていない本発明に係るセンサハウジングの第1の実施例の一部の概略的な斜視図である。
【
図2】
図1に示した本発明に係るセンサハウジングの概略的な断面図である。
【
図3】収容室内に注封材料が注ぎ込まれた、
図1に示した本発明に係るセンサハウジングの概略的な斜視図である。
【
図4】
図3に示した本発明に係るセンサハウジングの概略的な断面図である。
【
図5】収容室内に注封材料が注ぎ込まれていない本発明に係るセンサハウジングの第2の実施例の一部の概略的な平面図である。
【
図6】先行技術に基づき公知の従来の環状の縁部を備えかつ注封材料が注ぎ込まれた収容室の一部の概略的な断面図である。
【
図7】先行技術に基づき公知の従来の環状の縁部を備えかつ注封材料が注ぎ込まれた収容室の一部の概略的な断面図である。
【
図8】先行技術に基づき公知の従来の環状の縁部を備えかつ注封材料が注ぎ込まれた収容室の一部の概略的な断面図である。
【0016】
発明の実施形態
図1~
図5から明らかであるように、図示の実施例の本発明に係るセンサハウジング1,1A,1Bは、それぞれ1つの開放した収容室3,3A,3Bを備えている。この収容室3,3A,3Bは、開放した端部に、注ぎ込まれた注封材料16用のクリープバリアとして環状の縁部10,10A,10Bを有している。この環状の縁部10,10A,10Bは、外向きに下降した傾斜部12を有している。この傾斜部12によって、注封プロセス中、安定した凸状の注封材料表面16Aを形成する、注封材料16による収容室3,3A,3Bの一時的な過充填が可能となる。
【0017】
図1および
図2には、注封材料16による注封プロセス前もしくは充填前の収容室3,3A,3Bが示してある。
【0018】
このようなセンサハウジング1,1A,1Bの開放した収容室3,3A,3Bを注封するための本発明に係る方法によれば、開放した端部の環状の縁部10,10A,10Bに、
図3および
図4に示した安定した凸状の注封材料表面16Aが形成されるまで、注封材料16が収容室3,3A,3B内に注ぎ込まれる。次いで、この収容室3,3A,3B内に注ぎ込まれた注封材料16が完全硬化させられる。完全硬化プロセス中、注ぎ込まれた注封材料16は収容室3,3A,3B内で分配され、この収容室3,3A,3Bに設けられた中空室(図示せず)およびアンダカット(図示せず)にも流れ込む。完全硬化プロセス後、完全硬化させられた注封材料16は、収容室3,3A,3B内に環状の縁部10,10A,10Bに対する凹状の表面を形成する。
【0019】
図6~
図8からさらに明らかであるように、図示の収容室3は、外向きに下降した傾斜部12なしの、先行技術に基づき公知の従来の環状の縁部5を有している。
図6には、注ぎ込まれた注封材料16が、従来の環状の縁部5に対する凹状の注封材料表面16Bを形成している安定した状態が示してある。
図7からさらに明らかであるように、収容室3内に注ぎ込まれた注封材料16は、過充填時に、不安定な凸状の注封材料表面16Aを形成している。注封材料16は、
図8から明らかであるように、材料に起因した接触角を上回ると、従来の縁部5を越えて収容室3の隣接面に流出する。注封材料16の流出によって、安定した状態への回復と、従来の環状の縁部5に対する凹状の注封材料表面16Bの形成とが可能となる。液体表面もしくは張り出した注封材料16は、材料に起因した接触角が、最も近くの面、本実施例では収容室の隣接面に対して満たされている限りは変動しない。このことは、収容室3が過充填されない限り、隣接面に対して90°の角度を有する従来の単純な環状の縁部5が、注封材料16を収容室3の内部にのみ保持していることを意味している。
【0020】
図3および
図4からさらに明らかであるように、本発明に係るセンサハウジング1Aの環状の縁部10Aは、
図6~
図8に示した従来の縁部5と異なり、外向きに下降した傾斜部12によって、最も近くの面、本実施例では、傾斜部12に対して20°~70°の範囲内の傾角aを有している。これによって、注封プロセス中、注封材料16が収容室3Aから流出することなしに、収容室3A,3Bの過充填と、安定した凸状の注封表面16Aの形成とが可能となる。
【0021】
図1~
図3および
図5から明らかであるように、収容室3,3A,3Bの縁部は、登り方向で丸み付け部14として形成されている。これによって、収容室3,3A,3Bにおいて、注封プロセス中に収容室3,3A,3Bからの注封材料16の流出を促進させてしまうシャープな縁部が回避される。
【0022】
図1~
図3からさらに明らかであるように、センサハウジング1Aの図示の第1の実施例における収容室3Aは、丸みを帯びた角隅領域を備えた方形の底面を有している。このことは、収容室3Aの4つの角隅領域が丸み付け部として形成されていることを意味している。
【0023】
図5からさらに明らかであるように、センサハウジング1Bの図示の第2の実施例における収容室3Bは、方形の底面に加えて、一方の端面に、丸み付けられた凹み部18を有している。丸み付け部14によって、凹み部18も登り方向でシャープな縁部を有していない。
【0024】
本発明に係るセンサハウジング1の代替的な実施例(図示せず)では、収容室3は、少なくとも1つの丸み付けられた膨らみ部を有している。
【0025】
図1~
図5からさらに明らかであるように、環状の縁部10,10A,10Bの外向きに下降した傾斜部12は、センサハウジング1,1A,1Bの図示の実施例では、例えば45°の傾角aを有している。環状の縁部10,10A,10Bの高さは、センサハウジング1,1A,1Bの別の寸法もしくは収容室3,3A,3Bの寸法に応じて、0.1~1mmの範囲内の高さを有している。センサハウジング1Aの図示の第1の実施例では、環状の縁部10Aは、例えば0.5mmの高さを有している。センサハウジング1Aの図示の第2の実施例では、環状の縁部10Bは、例えば0.15mmの高さを有している。
【0026】
センサハウジング1,1A,1Bの図示の実施例は、好ましくは回転数センサに使用される。この場合、収容室3,3A,3Bは、回転数センサの、完全硬化させられた注封材料16により保護された少なくとも1つの電子コンポーネントを収容している。
図1~
図4に示した第1の実施例の本発明に係るセンサハウジング1Aは、例えばASIC部品(ASIC:特定用途向け集積回路)として形成された1つの電子コンポーネントを収容していてもよい。
図5に示した第2の実施例の本発明に係るセンサハウジング1Bは、例えば、ASIC部品(ASIC:特定用途向け集積回路)として形成された2つの電子コンポーネントを収容していてもよい。
【国際調査報告】