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特表2023-511430微生物由来蛋白質加水分解物、ならびにその調製法およびその用途
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  • 特表-微生物由来蛋白質加水分解物、ならびにその調製法およびその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】微生物由来蛋白質加水分解物、ならびにその調製法およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20230310BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20230310BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C12N1/00 F
C12N5/00
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544730
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 US2021014795
(87)【国際公開番号】W WO2021151025
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/965,303
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522258569
【氏名又は名称】エア プロテイン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リード,ジョン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロバートソン,ダン イー.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB02
4B065BB19
4B065BB20
4B065BB28
4B065BB32
4B065BB40
4B065BC02
4B065BC03
4B065BD45
4B065BD50
(57)【要約】
化学独立栄養性微生物などの微生物に由来する蛋白質加水分解物組成物、および同組成物を調製および使用する方法が提供される。当該蛋白質加水分解物組成物は、生物由来または大気由来の二酸化炭素を固定化することによって環境に優しい方法で生産してもよい。当該蛋白質加水分解物組成物には、動物細胞の血清不含培養ならびにプロバイオティクスおよび乳酸菌など他の種類の細胞を培養する培地の添加剤としての用途がある。すなわち、本開示は、医薬品および栄養補助食品への利用を目的とした細胞培養ならびに食物成分または食物製品として人間における消費について、環境に優しい人道的方法を提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物または細胞を培養するための培地を生産する方法であって、該方法が:
第1の微生物を培養し、それによってバイオマスを生産すること;
蛋白質加水分解物組成物を生産するために、該第1の培養微生物によって生成したバイオマスを処理すること、
および
第2の微生物または細胞を含む第2の培養のために、該蛋白質加水分解物組成物を培地に添加することであって、
ここで該蛋白質加水分解物組成物が該第2の微生物または細胞の増殖の栄養源となる、
該蛋白質加水分解物組成物を培地に添加すること、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、ここで該処理することが、温度上昇、圧力上昇、およびプロテアーゼのうちの1種類以上で該バイオマスを処理することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、ここで該処理することが、該バイオマスを含む懸濁液のpHを上昇させることを含む、方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、ここで該処理することが、該バイオマスを含む懸濁液のpHを低下させることを含む、方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物が、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を含む、方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、ここで該PHAがポリヒドロキシ酪酸(PHB)を含む、方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物が、ビタミンを含む、方法。
【請求項8】
請求項7の方法であって、ここで該ビタミンが、ビタミンB、ビタミンB、およびビタミンB12のうちの1種類以上を含む、方法。
【請求項9】
請求項1の方法であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物の全有機的内容物が、蛋白質、ペプチド、および/またはアミノ酸で強化されている、方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、ここで該第2の培養が動物細胞を含む、方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、ここで動物細胞の該培地が血清不含培地である、方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、ここで動物細胞の該培地が動物成分不含培地である、方法。
【請求項13】
請求項10の方法であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物が組換え動物細胞を培養するための添加物として利用される、方法。
【請求項14】
請求項10の方法であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物が肉を培養するための添加物として利用される、方法。
【請求項15】
請求項1の方法であって、ここで該第1の微生物が化学独立栄養性微生物であり、ここで該第1の微生物を培養することが、独立無機栄養条件下で該化学独立栄養性微生物を培養することを含む、方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、ここで該独立無機栄養条件が、該化学独立栄養性微生物を増殖させるためにガス状基質を提供することを含む、方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、ここで該ガス状基質が、CO、CO、およびCHのうちの1種類以上を炭素源として含む、方法。
【請求項18】
請求項16または17の方法であって、ここで該ガス状基質が、H、CO、およびCHのうちの1種類以上を電子供与体として含む、方法。
【請求項19】
請求項16の方法であって、ここで該ガス状基質が、熱分解ガス、発生炉ガス、合成ガス、天然ガスまたはバイオガスを含む、方法。
【請求項20】
請求項15の方法であって、ここで該化学独立栄養性微生物が水素酸化微生物である、方法。
【請求項21】
請求項20の方法であって、ここで該化学独立栄養性微生物が:Aquifexの菌種;Cupriavidusの菌種;Corynebacteriumの菌種;Gordoniaの菌種;Nocardiaの菌種;Rhodopseudomonasの菌種;Rhodobacterの菌種;Rhodospirillumの菌種;Rhodococcusの菌種;Rhizobiumの菌種;Thiocapsaの菌種;Pseudomonasの菌種;Hydrogenomonasの菌種;Hydrogenobacterの菌種;Hydrogenophilusの菌種;Hydrogenovibrioの菌種;Hydrogenothermusの菌種;Helicobacterの菌種;Xanthobacterの菌種;Hydrogenophagaの菌種;Bradyrhizobiumの菌種;Ralstoniaの菌種;Alcaligenesの菌種;Amycolataの菌種;Aquaspirillumの菌種;Arthrobacterの菌種;Azospirillumの菌種;Variovoraxの菌種;Acidovoraxの菌種;Bacillusの菌種;Calderobactenumの菌種;Derxiaの菌種;Flavobacteriumの菌種;Microcyclusの菌種;Mycobacteriumの菌種;Paracoccusの菌種;Persephonellaの菌種;Renobacterの菌種;Seliberiaの菌種;Streptomycetesの菌種;Thermocrinisの菌種;Wautersiaの菌種;Anabaenaの菌種;Arthrospiraの菌種;Scenedesmusの菌種;Chlamydomonasの菌種;Ankistrodesmusの菌種;およびRhaphidiumの菌種のうちの1種類以上から選択される、方法。
【請求項22】
請求項15の方法であって、ここで該化学独立栄養性微生物が遺伝子改変される、方法。
【請求項23】
微生物に由来する蛋白質加水分解物組成物を含む、細胞培養培地添加物。
【請求項24】
請求項23に記載の培地添加物であって、ここで該微生物が化学独立栄養性微生物である、培地添加物。
【請求項25】
請求項23の培地添加物であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物がビタミンを含む、培地添加物。
【請求項26】
請求項25の培地添加物であって、ここで該ビタミンがビタミンB、ビタミンB、およびビタミンB12のうちの1種類以上を含む、培地添加物。
【請求項27】
請求項23の培地添加物であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物がPHAを含む、培地添加物。
【請求項28】
請求項27の培地添加物であって、ここで該PHAがPHBである、培地添加物。
【請求項29】
請求項23の培地添加物であって、ここで該添加物の全有機的内容物が、蛋白質、ペプチド、および/またはアミノ酸で強化されている、培地添加物。
【請求項30】
動物細胞を培養する方法であって、該方法が:
請求項23~29のいずれかに記載の培地添加物を血清不含培地に添加すること、
および
該血清不含培地で動物細胞を培養すること、
を含む、方法。
【請求項31】
請求項30の方法であって、ここで該血清不含培地が動物成分不含培地である、方法。
【請求項32】
請求項30の方法であって、ここで該培地が植物由来、および/または酵母由来の蛋白質加水分解物組成物を含む、方法。
【請求項33】
請求項30の方法であって、ここで該動物細胞が組換え細胞を含む、方法。
【請求項34】
請求項30の方法であって、ここで該動物細胞が幹細胞を含む、方法。
【請求項35】
請求項34の方法であって、ここで該動物細胞が筋芽細胞および/または筋肉細胞を含む、方法。
【請求項36】
請求項30の方法であって、ここで該動物細胞が脂肪細胞および/または線維芽細胞を含む、方法。
【請求項37】
請求項30の方法であって、ここで培養することが、生物分解性および/または摂取可能である足場において該動物細胞が増殖するに充分な条件下で該細胞に該足場を接触させることを含む、方法。
【請求項38】
請求項37の方法であって、ここで該足場がPHAポリマーを含む、方法。
【請求項39】
請求項38の方法であって、ここでPHAポリマーがPHBを含む、方法。
【請求項40】
請求項38または39の方法であって、ここで該PHAポリマーが化学独立栄養性微生物に由来する、方法。
【請求項41】
請求項10の方法であって、ここで該蛋白質加水分解物組成物が該動物細胞の増殖および/または分化のための添加物として利用される、方法。
【請求項42】
請求項23に記載の培地添加物であって、ここで該添加物が動物細胞培養培地添加物としての用途で処方される、培地添加物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2020年1月24日付けで出願された米国仮出願番号第62/965,303号に基づく利益を主張するものである。その優先出願の開示内容全体が参照として本出願に組み入れられる。
【0002】
本開示は、生物学的資源から生産される蛋白質加水分解物、およびそれを調製する方法の分野に関する。本開示は、特に二酸化炭素放出およびその他の廃炭素変換または転換プロセスを利用するように設計した生物学的プロセスなどの、再生可能資源からの蛋白質加水分解物の生産に関する。本開示は、プロバイオティクス微生物、真核細胞、およびビタミン産生細胞を含む、他の微生物または単細胞の増殖を支援するための、蛋白質加水分解物の用途に関する。本開示はまた、肉様産物の産生のための細胞培養法であって、動物細胞を培養することを含む細胞培養法(例えば、動物成分不含培地を用いた人工肉産生)に関する。
【背景技術】
【0003】
各種の細胞培養系が、低分子生体分子、治療用抗体、および細胞を基盤とした治療法を含む、有用な生物学的産物を生産するために利用される。工業的発酵は、バイオマス製品または発酵製品をより高収量で得ることのできる半規定的培地および複合培地で実施されることが多い。多様な栄養素を提供する目的で、ペプトン、蛋白質加水分解物、酵母エキス、成長因子などの粗成添加物および未同定添加物を発酵培地に添加することができる。微生物培地に動物由来材料を含めることに関しては、長い歴史がある。伝統的には、動物細胞を培養する培地に、動物血清または動物由来蛋白質加水分解物を添加して、細胞増殖を維持促進する。例えば、動物血清は、栄養素、ホルモン、増殖因子および付着因子、鉄などの微量元素、緩衝能、活性酸素種および機械的剪断に対する保護、ならびにその他の各種有益因子を提供する。動物蛋白質加水分解物は窒素源として利用され、またペプチドおよび/またはアミノ酸およびビタミンを提供する。
【0004】
動物細胞培養または乳酸菌(LAB)培養などの細胞培養物の生育に、蛋白質加水分解物が有益な効果を与えることは周知であり、何十年もの間、有用な細胞培養添加剤として利用されてきた。乳酸菌(LAB)は、アミノ酸合成能に関しては限定的であるため、アミノ酸およびペプチドの外来供給源に依存する。したがって、乳酸菌(LAB)培養における増殖にとって、生化学的窒素源(例えば、蛋白質、ペプチドおよびアミノ酸)の提供は必須である。典型的なアミノ酸源は、乳汁およびその他の加水分解蛋白質中のペプチドである。様々な由来の蛋白質加水分解物が、各種の乳酸菌(LAB)株に異なる効果をもたらすことが知られており、菌増殖を支援するものもあれば、あるいは特定種類のアミノ酸代謝を誘導するものもある。乳酸菌(LAB)の発酵において良好に用いられることが報告されている異なる市販の蛋白質加水分解産物としては、N-Zアミン、Hy-Case、Hy-Soy、Edamin、およびN-Z-Caseが挙げられる(Misono, H., Goto, N., & Nagasaki, S. (1985). Purification, crystallization and properties of nadp+-specific glutamate dehydrogenase from lactobacillus fermentum. Agricultural and Biological Chemistry. https://doi.org/10.1080/00021369.1985.10866676; Molskness, T.A., Lee, D.R., Sandine, W.E., & Elliker, P. R. (1973). -D-phosphogalactoside galactohydrolase of lactic streptococci. Applied Microbiology. https://doi.org/10.1128/aem.25.3.373-380.1973; Viniegra-Gonzalez, G., & Gomez, J. (1984). Lactic acid production by pure and mixed bacterial cultures. Bioconversion Systems. Boca Raton, FL; CRC Press. P, 17-39.; Vedamuthu, E.R. (1980). Method for diacetyl flavor and aroma development in creamed cottage cheese. 米国特許第4,191,782号.; Kegel, M.A., & Wallace, D.L. (1989). Use of stabilizing agents in culture media for growing acid producing bacteria. 米国特許第4,806,479号)。
【0005】
トリプトン(カゼインのプロテアーゼ・トリプシンによる消化物またはカゼインの膵液消化物)は、野生型および遺伝的に改変した微生物を増殖させる実験室培地および発酵培地における通常成分である。組換えDNA技術の出現およびバイオ医薬品の製造と生産へのその導入によって、動物由来成分を含む培地の需要が増加した。
【0006】
オリゴペプチドおよび遊離アミノ酸を提供する蛋白質加水分解物は、例えば、治療用蛋白質の生産のための動物細胞培養に広く利用されている。蛋白質加水分解物は、細胞密度を増加させ、蛋白質産物の収量を増加させることが報告されている。ヒト成長ホルモン、抗生物質、インスリンなど、多くの商業的に製造される製品は、ウシ由来の栄養素および培地成分で増殖する組換え株によって生産される。
【0007】
野菜から肉および乳汁にいたるまで様々な供給資源から生産される、多くの異なる種類の市販加水分解蛋白質が存在する。供給資源の例としては、カゼイン、乳清蛋白質、脱脂粉乳、乳汁および乳清蛋白質単離物および濃縮物、ラクトアルブミン、肉および動物組織、コラーゲン、ゼラチン、トウモロコシ、綿実、脱脂大豆、大豆蛋白質単離物および濃縮物が挙げられる。これらの材料の一部は、他のプロセスの副産物であり、ばらつきが多い。他の場合には、特定供給資源の蛋白質(例えば、カゼインおよび乳清)はかなり一定したアミノ酸組成を有し得るものだとしても、そのような由来の各種蛋白質加水分解物もやはりペプチドおよびアミノ酸のプロファイルには大きなばらつきが存在し得る。また、カゼイン、肉、ゼラチン、および大豆などの異なる蛋白質源は、全アミノ酸組成および蛋白質構造がそれぞれ互いに異なっている。乳加水分解物は、Glu、Ile、Leu、Val、およびMetなどのアミノ酸に富んでおり、他方、肉/大豆加水分解物は、相対的にArg、Cys、Gly、およびProがより豊富である。
【0008】
動物由来加水分解物は、歴史的にはラクトアルブミン加水分解物、カゼイン加水分解物、およびプリマトンを含むワクチンおよび生物学的製剤などの医薬品の生産において細胞培養栄養添加剤として利用されてきた。しかし、そのような動物由来増殖添加物にはマイナス面もある。血清および蛋白質加水分解物の組成は明確に規定されておらず、血清の供給にはバッチ毎のばらつきが多い。血清は動物由来であるため、血清にはプリオン類など外来性物質および混入物の汚染リスクがつきものである。これが、細胞培養の過程において血清を排除する主たる理由となっている。バイオ医薬品産業界および規制当局の、動物由来成分の利用に起因する伝染性海綿状脳症(TSE)などのプリオン類および他の外来性因子(ウイルスおよびマイコプラズマなど)に関する懸念によって、培地から動物由来成分を排除することが必要となっている。牛海綿状脳症(BSE)の出現およびその結果としての食品医薬品局(FDA)による規制の強化に伴い、発酵培地からウシ由来の材料を排除する努力が進行中である。また、血清の生産は高価でもある。血清可用性、血清プロテアーゼによる標的分子の分解、下流産物精製の複雑性に関する影響、潜在的免疫原性、およびその他の血清関連アーティファクトなど、他の要因もまた懸念事項である。さらに、人道的な環境に優しい生物学的産物製造法の利用に対する関心が高まってきていることも挙げられる。例えば、動物を利用することのない、環境に優しい、食肉生産物培養法に対する関心の高まりが挙げられる。
【0009】
伝統的には、哺乳動物細胞は通常5~20%の血清または血清由来成分を含む栄養混合物(基礎培地)を必要とする。ウシ胎仔血清(fetal calf serum:FCS)は、胎仔ウシ血清(fetal bovine serum:FBS)ともよばれ、ホルモン(例えば、インスリン)、成長因子、輸送蛋白質(トランスフェリンおよびアルブミンなど)、栄養素、および付着因子を含む培地成分物質源である。伝統的には、栄養素、ホルモン、成長因子、およびプロテアーゼ阻害剤の供給源として血清を増殖培地に添加していた。血清は、動物細胞の接着と増殖を促進し、機械的損傷およびせん断力に対する非特異的保護を提供し、ならびに毒性化合物を結合し、培地の緩衝能を高める。血清中のアルブミンおよびトランスフェリンは、脂質類、脂肪酸類、ホルモン類、および鉄などの微量元素の担体として働く。
【0010】
動物由来成分を避けるために、培地、餌、および成分要素の供給元は、植物由来の成分または組換え体発現によって製造される成分を用いた培地の開発を行うことによって対応している。数十年に亘り、様々な哺乳動物培養プロセスにおいて、血清および血清成分の代替として蛋白質加水分解物(例えば、ペプトン)が利用されている。個々にまたは組み合わせて用いる、例えば、綿実、大豆、または小麦などの植物由来蛋白質加水分解物は、特定の細胞培養系ではウシ血清の好適な代替物となることが分かっている。歴史的な製造プロセスでは規制が免除されてきた動物由来の臓器、組織および蛋白質の比較的粗成の溶解物および抽出物は、より再現性の高い酵母および植物由来代替物によって置換されつつある。乳加水分解物および肉加水分解物も、多くの場合に植物由来および酵母由来加水分解物で代替されるようになった。
【0011】
植物由来蛋白質加水分解物は、オリゴペプチド、遊離アミノ酸、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類(カリウム、カルシウム、鉄、および微量ミネラル類など)、脂質類、ヌクレオシド、ヌクレオチド、痕跡量の低分子量成分および不明の成分の混合物を含み得る。蛋白質加水分解物は、細胞増殖速度、組換え蛋白質分泌、および長期細胞生存率をいずれも増進し得る。蛋白質加水分解物は、栄養素、接着成分、および/または増殖因子類似物質を供給し得る。蛋白質加水分解物は、治療用組換え蛋白質の工業生産では、血清不含細胞培養プロセスにおいて主要培地添加剤として用いられる。産業的に重要な細胞種(ハイブリドーマ、アフリカミドリザル腎臓(VERO)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胚腎臓(HEK)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、およびバキュロウイルスに感染したSpodoptera frugiperda昆虫細胞(Sf9)など)に対する植物由来加水分解物の有益な効果については、詳細な報告がある。蛋白質加水分解物は、アミノ酸のより有効な利用を伴う効率の高い細胞代謝を刺激することが報告されており、血清によって達成される細胞代謝を凌ぐ代謝改善が得られることも多い。
【0012】
しかし、新しい種類の動物質不含細胞培養培地添加物に対する必要性も依然として存在するのである。一部の植物由来加水分解物では、特定利用において性能が劣ることが示されている。小麦グルテン抽出物または高い遊離アミノ酸含有量の抽出物は、インビトロで特定の細胞種に毒性を示すこともあり、または毒性効果を誘導することもある;また、動物細胞の無細胞システムにおいて蛋白質合成を阻害し得ることが、以前の研究で示されている。一部の植物由来加水分解物では、殺虫剤および除草剤の残留物についての懸念がある。商業レベルの発酵に用いるのであれば、培地成分は、安価で、入手が容易で、質的に再現性のあることが要件となる。残念なことに、動物および植物に由来する蛋白質加水分解物、抽出物、および血清などの多くの複合栄養素は、生物学的資源のばらつき、ならびに地域、気候、および異なる季節によるこれら材料のばらつきに起因する大きな不均質性の問題がある。こういったばらつきは、最終的な発酵製品の質に大きな影響を及ぼすのであり、製品の大きなばらつきと生産量低減をもたらす。より均質で、地域、気候、または季節変動の影響を受けない複合栄養素(溶解物、蛋白質加水分解物、およびペプチド組成物など)が必要とされる。より質的に一定したペプチドおよびアミノ酸のプロファイルを有する蛋白質加水分解物製品が必要である。動物由来培地栄養成分、蛋白質加水分解物、および血清などの動物由来培地成分の代替として、非動物由来蛋白質加水分解物が必要とされる。培地および/または培地添加物のバッチ間でのばらつきを最小化する必要がある。また、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ホルモン、または抗生物質の残留物を含まない蛋白質加水分解物が必要とされる。動物由来成分は感染性因子を含むこともあるので、動物由来成分が最少の培地、あるいは完全に動物質不含の培地を開発することに関心が持たれている。動物由来産物の利用を最小化することに対する倫理的および環境要求もまた存在するのである。
【発明の概要】
【0013】
本明細書においては、有機炭素源で発酵によって増殖した微生物または化学独立栄養的に増殖した微生物に由来する蛋白質加水分解物組成物が提供される。特定の実施態様においては、微生物が、C1炭素源で増殖する(炭素源としてCOで化学独立栄養的増殖;炭素源としてCOで一酸化炭素資化性増殖;または炭素源としてCHおよび/またはCHOHでメタン資化性またはメチロトローフ増殖など)。
【0014】
本明細書中に記載の蛋白質加水分解物は、アミノ酸、蛋白質加水分解物、または血清などの1種類以上の動物由来細胞培養成分の非存在下で培養する動物細胞の増殖、維持、生育および/または分化を促進するための、動物成分添加物の一部または全部を代替する代替物として好適である。例えば、蛋白質加水分解物は、例えば、動物質不含または血清不含培地において動物成分不含添加剤としての用途に好適なものであってもよい。本明細書中に記載の通りに生産される溶解物および/または加水分解物は、増殖を促進するペプチド、アミノ酸、炭水化物、脂質類、ミネラル類、および/またはビタミンを提供し得る。特定の実施態様においては、本明細書中に記載の通りに生産されるペプチドは、下記の機能のうちの1つ以上の機能を発揮する:すなわち、アミノ酸源(例えば、遊離アミノ酸を代替する、または補う)としての機能;増殖刺激因子および/または目的のバイオマスおよび/または目的の分子の産生の刺激因子としての機能;せん断応力に対する細胞保護の機能。特定の実施態様においては、本明細書中に記載の溶解物および/または加水分解物は、アミノ酸のより効率的な取り込みおよび利用を含む機構(ただし、これらのみに限定されるものではない)によって、より効率的な細胞代謝を刺激する。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物は、該溶解物および/または加水分解物を含む培地で生育する培養物の増殖速度および/または蛋白質発現を、該溶解物および/または加水分解物を含まない培養物と比較して向上させる。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物は、浸透圧保護剤および/または抗アポトーシス効果を含む効果(ただし、これらのみに限定されるものではない)によって、該溶解物および/または加水分解物を含む培地で生育する培養物の性能を向上させる。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物は剪断効果に対する保護を支援する。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物は細胞接着および/またはその後の細胞の広がりを促進する。
【0015】
本開示は、培養動物細胞に由来する摂取可能な肉製品の生産に用いる、動物成分不含蛋白質加水分解物を含む。本開示はまた、肉様産物および/または高蛋白質産物、ならびにその他の食品生産物、成分、栄養素、および香味料に加工することもできる「一般的に安全とみなされている」(GRAS)生物の増殖、および/またはプロバイオティクス微生物の増殖に好適な動物成分不含蛋白質加水分解物を含む。本開示はまた、植物微生物叢または動物微生物叢の有益な構成員であると見なされる生物の増殖に好適な動物成分不含蛋白質加水分解物を含む。特定の実施態様においては、該植物または動物は、ヒトの食品または動物飼料またはヒトによって用いられる他の植物由来産物または動物由来産物の生産に利用される。該動物成分不含蛋白質加水分解物は、環境に優しい方法によって生成するものであってもよく、例えば、醸造所またはワイン醸造所での発酵によるCO放出ガスならびに大気またはその他の天然資源から捕捉したCOなどの環境に優しくクリーンな資源に由来するCOの微生物性固定化によるものであってもよい。
【0016】
本開示の蛋白質加水分解物組成物は、アミノ酸の存在量、ペプチドのサイズ分布、異なるペプチド配列の存在量、蛋白質同一性および存在量、脂質組成、有機ポリマーの存在量、ビタミンの存在量、ミネラル類の存在量などによって規定されるものであってもよい。本明細書においては、蛋白質加水分解物のライブラリーが提供されるが、ここでライブラリーに含まれる異なる組成物は、異なるアミノ酸の存在量、ペプチドのサイズ分布、ペプチド配列の存在量、蛋白質同一性および存在量、脂質組成、有機ポリマーの存在量、ビタミンの存在量、ミネラル類の存在量などのうちの1種類以上によって特徴付けられる。該蛋白質加水分解物組成物は、該加水分解物組成物に依存して、動物細胞培養または微生物細胞培養の特定の局面(例えば、増殖、生育、成長、分化)を促進するために好適なものであってもよい。
【0017】
本開示は、生物刺激剤成分を含む蛋白質加水分解物組成物を含む。そのような特定の実施態様においては、該生物刺激剤は植物性または真菌性(菌糸)の作物の性能または特性を改善する。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリマーなどの生物刺激剤ポリエステルを含む。いくつかの実施態様においては、該PHAポリマーは、該蛋白質加水分解物組成物の由来する微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)によって産生されるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)を含む。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)を含む。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、PHBおよび/またはPHVを含む共重合体を含む。その他の実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、PHBまたはPHAまたはPHVのオリゴマー、またはその共重合体を含む。特定の実施態様においては、該オリゴマーは、それぞれPHBまたはPHAまたはPHVを含むポリマーの加水分解によって生成する。特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ヒドロキシ酪酸(HB)またはヒドロキシ吉草酸(HV)の単量体を含む。
【0018】
本開示は、1種類以上のビタミンを含む蛋白質加水分解物組成物を含む。該ビタミンは、該蛋白質加水分解物組成物が由来する化学独立栄養性微生物によって産生されるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12などの1種類以上のビタミンB類を含む。
【0019】
本明細書においてはまた、微生物培養物(化学独立栄養性微生物の培養物など)から蛋白質加水分解物組成物を生産する方法を提供する。本開示の蛋白質加水分解物の組成物は、培養に用いられる微生物の種類および株(例えば、化学独立栄養性微生物)、増殖条件、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)の培養に用いる炭素源および/またはエネルギー源、該蛋白質加水分解物の調製法、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)の遺伝子操作などの、各種製造パラメーターに応じて異なるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該微生物は、化学独立栄養性微生物、例えば、COなどのC1炭素源から炭素を固定化することのできるいずれかの好適な化学独立栄養性微生物である。特定の実施態様においては、CO固定化はH酸化に共役する。いくつかの実施態様においては、該微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)は遺伝子操作される。あるいは他の実施態様においては、該微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)は遺伝子操作されず、天然株であるか、もしくは遺伝子工学以外の1種類以上の公知の方法によって生成した変異体または変異株である。
【0020】
該蛋白質加水分解物組成物は、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)の増殖で生成したバイオマスの物理的処理、化学的処理および/または酵素処理によって調製したものであってもよい。物理的処理としては、バイオマスを圧力上昇および/または温度上昇に供することが挙げられる。化学的処理としては、バイオマスを酸性または塩基性条件に供することが挙げられる。酵素処理としては、エキソプロテアーゼ類および/または配列特異的エンドプロテアーゼおよび/または金属プロテアーゼによる蛋白質分解が挙げられる。特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、バイオマスを調製プロセスに供した後であっても、生物刺激剤成分および/またはビタミン類を保持する。
【0021】
本明細書においてはまた、動物細胞を含む細胞を培養する方法であって、本開示の蛋白質加水分解物組成物を培地添加物として用いる方法を提供する。該蛋白質加水分解物組成物は、培養において増殖を継続させるため、および/または動物細胞の成長と分化を促進するために好適な培地栄養素を提供するものであってもよい。該方法は、培地に該蛋白質加水分解物を提供すること、および培地中で動物細胞を培養することを含むものであってもよい。該蛋白質加水分解物組成物は、典型的には、アミノ酸、蛋白質加水分解物、または血清などの、動物由来の従来の細胞培養培地成分のうちの1種類以上を代替するものであってもよい。いくつかの実施態様においては、蛋白質加水分解物組成物を添加する該動物細胞培養培地は、血清不含培地である。いくつかの実施態様においては、本開示の蛋白質加水分解物組成物を添加する該細胞培養培地は、ビーガン(vegan)培地である。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物を添加する該細胞培養培地(動物細胞培養培地が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)は、動物成分不含培地である。いくつかの実施態様においては、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)から産生される溶解物、蛋白質加水分解物、および/またはアミノ酸組成物は、血清と共に動物細胞培養に添加される。特定の実施態様においては、溶解物、蛋白質加水分解物、および/またはアミノ酸組成物を、付着依存性細胞の増殖に用いる。その他の実施態様においては、溶解物、蛋白質加水分解物、および/またはアミノ酸組成物を、付着非依存性細胞の増殖に用いる。
【0022】
該蛋白質加水分解物組成物は、治療用抗体、蛋白質または低分子を発現する組換え細胞株、または細胞を基盤とした治療法のために培養される免疫細胞を含む様々な目的で、細胞を培養する培地での利用に好適なものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、肉産物(人工肉または肉代替産物が挙げられるがこれらのみに限定されるものではない)を培養する培地での利用に好適なものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、プロバイオティクスまたはビタミン合成微生物を培養する培地での利用に好適なものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施態様にしたがう、第1のバイオプロセスから栄養素を生産および抽出する方法の概要図であるが、ここで該栄養素は、第2の細胞培養の栄養培地に利用するものである。
図2】本開示の実施態様にしたがう、COから蛋白質に富んだバイオマスを化学独立栄養的に生産し、次いで蛋白質に富んだバイオマスを蛋白質加水分解物に変換する方法の概要図であるが、ここで該蛋白質加水分解物は、第2の細胞培養の栄養培地に利用するものである。
図3】本開示の実施態様にしたがう、COから蛋白質に富んだバイオマスを化学独立栄養的に生産し、次いで蛋白質に富んだバイオマスを蛋白質加水分解物に変換する方法の概要図であるが、ここで該蛋白質加水分解物は、動物細胞培養の栄養培地に利用し、動物細胞を増殖させて回収し、培養肉を生産する、すなわち、多細胞動物全体を屠殺することを含まない肉製品生産を行うものである。
図4】本開示の実施態様にしたがう、COから蛋白質に富んだバイオマスを化学独立栄養的に産生し、次いで蛋白質に富んだバイオマスを蛋白質加水分解物に変換する方法の概要図であるが、ここで該蛋白質加水分解物は、プロバイオティクスおよび/またはヒト、植物、動物に有益な微生物を含む微生物培養の栄養培地に利用するものである。
図5】COを炭素源として増殖させたC.necatorから生産される蛋白質加水分解物(PH)を添加した培地での、有益な真菌Trichoderma atrovirideの増殖を示すが、ここではPH添加物非存在下でのTrichoderma atrovirideの対照増殖と比較している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する蛋白質加水分解物組成物、および同組成物を調製および利用する方法が提供される。該微生物由来蛋白質加水分解物組成物は、微生物バイオマスから生産されるものであってもよく、栄養素を提供するための培地添加物として用いられるものであってもよく、および培養で増殖する動物細胞を支援するために用いられるものであってもよく、あるいは例えば、乳酸菌(LAB)および/またはプロバイオティクスなどの他の真核および/または原核細胞の栄養素として用いられるものであってもよい。他の植物由来または酵母由来蛋白質加水分解物と同様に、本微生物由来蛋白質加水分解物は、動物由来成分(血清または成長因子など)に頼らずに、細胞(真核細胞(例えば、動物細胞)および/または原核細胞(例えば、LABおよび/またはプロバイオティクス細胞)など)を増殖、分化および/または発生させる培地を補う目的で用いるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、バイオマスを生成させるために、化学独立栄養性微生物を、例えば、H酸化と共役したCO固定化によって、独立栄養的に培養してもよく、例えば、環境に優しいクリーンなCO源(醸造所またはワイン醸造所における発酵の排出ガスなどのCO、または大気、または海洋、または他の天然源(地熱水噴出孔または温泉など)から捕捉されるCOなど)からのCO固定化を利用しても良い。化学独立栄養性微生物の利用によって、発酵放出ガスから、天然のCO源、工業煙道ガス、バイオマス(例えば、農業または林業廃棄物)のガス化に至るまで、生産原材料としての炭素源の選択に幅広い柔軟性が可能になる。
【0025】
したがって、本開示は、動物蛋白質およびその他の栄養素によって動物細胞を培養する、および食品生産物を生産する、人道的な方法を支援するために利用することのできる、蛋白質加水分解物の環境に優しい供給源を提供する。
【0026】
本開示は、微生物または細胞を培養するための培地を生産する方法を提供するが、ここで該方法は:
第1の微生物を培養することであって、それによってバイオマスを生産する、
培養すること;
蛋白質に富んだバイオマス由来の産物(蛋白質に富んだ溶解物組成物または蛋白質加水分解物組成物などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を生産するために、
第1の培養微生物によって生成したバイオマスを処理すること;
および
第2の微生物または細胞を含む第2の培養のために、
蛋白質に富んだ栄養素(例えば、蛋白質に富んだ溶解物または蛋白質加水分解物)の組成物を培地に添加すること、
を含み、
ここで該蛋白質に富んだ栄養素(例えば、蛋白質に富んだ溶解物または蛋白質加水分解物)の組成物は、該第2の微生物または細胞の増殖の栄養源となる。特定の非限定的実施態様においては、該第2の培養は動物細胞を含む。
【0027】
いくつかの実施態様においては、該本蛋白質加水分解物組成物は、食品生産物(肉製品など)を培養するための培地添加物として利用され、それによって食品生産物(培養肉など)を産生する方法であって、環境に優しい人道的方法を支援するものであってもよい。
【0028】
肉の特性を細部まで模倣し、肉代替物または人工肉製品のように機能する、人間が摂取するのに好適な新規蛋白質組成物の産生については、例えば、2020年12月30日付出願の、「HIGH PROTEIN FOOD COMPOSITIONS」と題する、PCT出願第PCT/US20/67555号に記載がある;本参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0029】
いくつかの実施態様においては、本開示の蛋白質加水分解物組成物は、一般的にPHAを産生しない植物とは対照的に、細胞の増殖、維持、成長および/または分化を促進する、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリマーなどの生物刺激剤成分を含むものであってもよい。本発明において生産されるPHA、PHAオリゴマー、および単量体は、栄養素および生物活性物質として作用することができる。
【0030】
いくつかの実施態様においては、本蛋白質加水分解物組成物は、1種類以上のビタミン(ビタミンB、B、および/またはビタミンB12挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含むが、ここで培地に該蛋白質加水分解物を添加した場合に、該ビタミンは、細胞の培養増殖、成長および/または分化を促進する、および/または培養した食品生産物の栄養価を増強するものであってもよい。本明細書中に記載の通りに調製される加水分解物は、植物が合成せず、また一般的に植物には大量に存在しない固有の栄養(ビタミンB12が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)を含み得る。
【0031】
いくつかの実施態様においては、該本蛋白質加水分解物組成物は、培地に添加した場合に、培養した食品生産物の香味を改善または向上させるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該本蛋白質加水分解物組成物は、動物、植物、および酵母の加水分解物および抽出物に相当する、あるいはそれらを凌ぐ栄養上の利点を有する。
【0032】
本開示は、複数の利点を有する蛋白質加水分解物、溶解物、および/または抽出物を製造する方法を提供し、そのような利点としては以下が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:蛋白質に富んだバイオマスに取り込まれるCOおよび/またはその他のC1原料の化学独立栄養的変換によって開始するため、初期原料にばらつきがなく、完全に規定されること;組成上の整合性;省スペースでありながら、大規模産生能力を有すること;農地の換地が不要なこと;植物由来または動物由来加水分解物に比較して、利用する水量が少量であること。本開示の特定の実施態様においては、本明細書中に記載の通りに調製する蛋白質加水分解物、溶解物、および/または抽出物の生産には、耕作可能な土地を必要としない。
【0033】
本開示は、所望の画分に富んだ加水分解物を生産する酸加水分解法、塩基加水分解法、および酵素的加水分解法を提供し、該加水分解物は以下を含むが、これらのみに限定されるものではない:
利用可能なアミノ酸源となる、あるいは植物または細胞の健康状態に特定効果を発揮するペプチド;蛋白質消化のためのアミノ酸開裂性配列特異的エンドプロテアーゼまたはプロテアーゼの組み合わせ;所望の長さのペプチドに富む加水分解物を生産する調節性ペプチド組成物;培養動物細胞の増殖および/または収量を向上させる約2~約10アミノ酸残基の残基分布を有するペプチド。
【0034】
特定のペプチドは、植物、動物および微生物叢に影響を与える外来性分子シグナルとして作用し得る。蛋白質加水分解は、植物に根の位置で栄養素を提供する、あるいは土壌根圏微生物叢の有益な微生物株を刺激することが可能であり、それによって植物の成長と生産性を間接的に促進する。本開示の特定の蛋白質加水分解物、溶解物、および/または抽出物は、疾病抵抗性および/または栄養摂取を増強する植物微生物叢または動物微生物叢の生物を刺激することが可能である。
【0035】
本明細書中に開示の蛋白質加水分解物、溶解物、および/または抽出物は、腸管から動物に栄養素および物活性物質を提供することができる、あるいは腸管内菌叢の宿主に有益な株を刺激することができる。
【0036】
本明細書においては、他で特段に定義されるのでない限り、本開示に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものである。さらに、特に文脈によって必要とされるのでない限り、単数形の用語はその複数形も含み、また複数形の用語はその単数形も含むものである。本開示の方法および技術は一般的に、当該技術分野において周知の従来法にしたがって実施される。生化学、酵素学、分子生物学および細胞生物学、微生物学、遺伝学ならびに蛋白質化学および核酸化学およびハイブリダイゼーションの、本明細書中に記載の技術に関連して用いる用語は、通常、当該技術分野において周知であり、一般的に使用される技術である。特段に明記されていない限り、本開示の方法および技術は一般的に、当該技術分野において周知の従来法および本明細書を通じて引用および考察される様々な一般的およびより専門的な文献に記載されるような方法にしたがって実施される。
【0037】
Singletonらの「微生物学および分子生物学辞典(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)」、第2版、John Wiley and Sons、New York (1994);およびHale & Markhamの「ハーパーコリンス生物学辞典(The Harper Collins Dictionary of Biology)」、Harper Perennial、NY (1991)は、当業者にとって、本発明に用いられる用語の多くに関する一般的辞書となる。本明細書中に記載の方法および材料に類似または同等の方法および材料はいずれも、本明細書中に記載の方法、システム、および組成物についての実施または試験に利用可能である。
【0038】
本発明の実施には、特に明記されていない限り、当該技術分野に技術に含まれる、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、および生化学の従来技術が利用される。そのような技術は、例えば以下の文献に完全な説明が載っている:
「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第2版(Sambrookら、1989);「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(M.J.Gait、編集、1984; 「分子生物学における最新のプロトコル集(Current Protocols in Molecular Biology)」(F.M.Ausubelら、編集、1994);「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:The Polymerase Chain Reaction)」(Mullisら編集、1994);および「遺伝子導入と発現:実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual)」(Kriegler、1990)。
【0039】
本明細書に記載の数値範囲は、範囲を規定する数を含むものである。
【0040】
特に明記されていない限り、それぞれ、核酸は5’から3’への方向に対応して左から右に書かれ;アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシ末端への方向に対応して左から右に書かれている。
【0041】
定義
文脈が明確に示すのでない限り、「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、複数についての言及をも含み、したがって本明細書および特許請求の範囲における不定冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」、ならびに「the(その)」は、特に明記されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。
【0042】
本明細書中の用語「約」が、量および持続時間などの測定可能な値について言及する際に用いられる場合には、本開示の方法を実施するときに、または本開示の組成物に関連して特定値から±5%、±1%、または±0.1%の変動が適切であるならば、用語「約」はそのような変動を含むことを意味する。
【0043】
「酢酸生成微生物」は、嫌気的呼吸産物として酢酸および/またはC4鎖長までの他の短鎖有機酸を生成する微生物を指す。
【0044】
「好酸性微生物」は、高度に酸性条件下(通常、pH2.0以下)で繁殖する好極限性微生物種を指す。
【0045】
「アミノ酸」という用語は、炭素に結合したアミン基およびカルボキシル基の両方を含有する分子を指し、この炭素はアルファ炭素と称される。好適なアミノ酸としては、天然に存在するアミノ酸のD異性体およびL異性体の両方、ならびに有機合成または他の代謝経路によって調製される非天然のアミノ酸が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、単一「アミノ酸」は、拡張脂肪族または芳香族の骨格足場に利用可能であるような、複数の側鎖部分を有し得る。特に文脈が具体的に示すのでない限り、本明細書のアミノ酸という用語は、アミノ酸類似体を含むことが意図されている。本明細書では、アミノ酸に標準的な3文字略称を用いるが、それは、例えば以下である:Cys システイン;Gln グルタミン;Glu グルタミン酸(Glutamic acid/Glutamate);Gly グリシン;His ヒスチジン;Ile イソロイシン;Leu ロイシン;Lys リジン;Met メチオニン;Phe フェニルアラニン;Pro プロリン;Ser セリン;Thr トレオニン;Trp トリプトファン;Tyr チロシン;Val バリン。
【0046】
本明細書および特許請求の範囲において用いる表現「および/または」は、この表現によって結合される要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、場合によっては結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味するものと理解されたい。そうではないと明確に示されるのでない限り、具体的に特定された要素に関連する、関連しないに関わらず、「および/または」の条項によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択的に存在するのであってもよい。したがって、非限定的な一例として、「含む」などの開放表現と共に使用される場合、「Aおよび/またはB」についての言及は、一実施形態においては、Bを有しないA(B以外の他の要素を任意選択的に含む)、別の実施形態においては、Aを有しないB(A以外の他の要素を任意選択的に含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(他の要素を任意選択的に含む)を指すことができるなどである。
【0047】
用語「バイオマス」は、細胞の増殖および/または生育によって生産される材料を指す。バイオマスは、細胞および/または細胞内容物、ならびに細胞外物質を含むものであってもよく、そのような細胞外物質としては、細胞によって分泌される化合物が挙げられるが、これのみに限定されるものではない。
【0048】
「バイオリアクター」または「発酵槽」という用語は、細胞が増殖する、および維持される閉鎖型または半閉鎖型の容器を指す。細胞は、液体懸濁液中に存在するのであってもよいが、必ずしも液体懸濁液中に保持される必要はない。いくつかの実施態様においては、細胞は、液体懸濁液中に保持されるのではなく、むしろ他の非液体性基質に接触して、非液体性基質上で、または非液体性基質内部で増殖する、および/または維持されるが、そのような非液体性基質としては増殖支持体固体材料が挙げられるが、これのみに限定されるものではない。
【0049】
「生物刺激剤(biostimulant)」または「生物刺激剤(bio-stimulant)」は、培地に添加された場合に、細胞の増殖、生育および/または成長を刺激可能な化合物、および/または摂取された場合、あるいは利用可能な形態で該生物に提供された場合に、該生物の増殖、生育および/または発生を刺激することが可能な化合物を指す。
【0050】
「炭素固定」反応または経路という用語は、周囲条件下でガス状である炭素の形態(CO、CO、およびCHが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含むC1炭素分子を、炭素性生体化学物質(周囲条件下で液体または固形物であるか、もしくは水溶液に溶解する、または水溶液に懸濁して保持される生体分子を含む)に変換する酵素反応または代謝経路を指す。
【0051】
「炭素源」は、微生物が有機生合成に必要な炭素を取り出す分子の種類を指す。
【0052】
「一酸化炭素資化性」は、一酸化炭素に耐性である、または一酸化炭素を酸化することのできる微生物を指す。好ましい実施態様においては、一酸化炭素資化性微生物は、生合成および/または呼吸のための炭素源として、および/または還元電子源としてCOを利用することができる。
【0053】
「化学独立無機栄養的(性)」は、化学電子受容体が化学電子供与体を酸化することによってエネルギーを獲得し、生物の生存および増殖に必要な全ての有機化合物を二酸化炭素から合成する、該生物の能力を指す。
【0054】
本開示の特許請求の範囲ならびに明細書においては、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などの全ての移行句は、開放移行句であることを理解されたい;すなわち、「~が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない」を意味するものと理解されたい。移行句の「から成る(consisting of)」および「本質的にから成る(consisting essentially of)」のみが、それぞれ閉鎖移行句または半閉鎖移行句となる。
【0055】
用語「培養する」は、細胞集団、例えば、微生物細胞または動物細胞を、液体または固形培地において増殖、生育、維持、成長および/または分化に好適な条件下で増殖および維持することを指す。
【0056】
「に由来する(derived from)」という用語は、「を起源とする(originated from)」、「から得られる(obtained from)」、「から取得可能である(obtainable from)」、「から単離される(isolated from)」、および「から作製される(created from)」という用語を包含し、一般には、1つの特定の材料について、その起源が別の特定材料にあるか、または別の特定材料を参照して説明され得る特徴を有していることを示すものである。
【0057】
「エネルギー源」は、好気的呼吸において酸素によって酸化される電子供与体、または嫌気的呼吸において酸化される電子供与体と還元される電子受容体との組み合わせのいずれかを指す。
【0058】
「好極限性微生物」は、地表または地表近くの大部分の生物形態によって許容される地表上または海洋上の条件と比較して、物理的または地球化学的極限条件(例えば、高温もしくは低温、高pHもしくは低pH、または高塩分)で繁殖する微生物を指す。
【0059】
用語「ガス化」は一般的に、炭素性材料を、合成ガス(synthesis gas)、合成ガス(syngas)または発生炉ガスとよばれる、水素、一酸化炭素、および二酸化炭素を含むガス混合物に変換する高温のプロセスを指す。このプロセスは一般的に、部分燃焼および/または酸素および/または蒸気の制御性添加と共に、外部生成した熱の利用を含むのであるが、炭素性材料の完全燃焼には不充分な量の酸素しか存在しない。
【0060】
「好塩性微生物」は、非常に高濃度の塩を含む環境で繁殖する種類の好極限性微生物を指す。
【0061】
「従属栄養性」は、植物質、動物質または微生物質などの有機物質の取り込みと代謝によって、生物が増殖および維持される様式を指す。二酸化炭素によって生存かつ増殖するために、生物が必要とする全有機化合物をその生物自身が合成せず、有機化合物を利用する場合の増殖は、従属栄養性である。従属栄養性増殖では、生物が自己の食物を生産することができず、代わりに植物質または動物質などの有機物質を取り込み代謝することによって食物とエネルギーを獲得する(すなわち、二酸化炭素などの無機供給源から炭素を固定化するのではない)。
【0062】
「水素酸化微生物」は、細胞内還元同等物の産生および/または呼吸において還元Hを電子供与体として利用する微生物を指す。
【0063】
「超好熱微生物」は、極限的高熱生育環境、典型的には約60℃(140°F)以上の温度で繁殖する種類の好極限性微生物を指す。
【0064】
用語「水素酸化(knallgas)」は、分子状水素と酸素ガスの混合物を指す。「水素酸化微生物(knallgas microorganism)」は、呼吸においてアデノシン-5’-三リン酸(ATP)などの細胞内エネルギー担体の生成のために水素を電子供与体として、および酸素を電子受容体として利用することのできる微生物である。用語「酸水素」および「酸水素微生物」は、それぞれ「水素酸化(knallgas)」および「水素酸化微生物(knallgas microorganism)」と同義語であり得る。水素酸化微生物(knallgas microorganism)は一般的に、NAD(および/またはその他の細胞内還元同等物)の還元に利用されるHからの供与電子の一部および好気的呼吸に用いられるHからの供与電子の一部を利用すると共に、ヒドロゲナーゼによって分子状水素を利用する。水素酸化微生物(knallgas microorganism)は一般的に、カルヴィン回路または逆クエン酸サイクル[「好熱細菌(hermophilic bacteria)」、Jakob Kristjansson、第5章、第III節、CRC Press、(1992)]などの経路(これらのみに限定されるものではない)によって独立無機栄養的にCOを固定化する。
【0065】
「溶解物」という用語は、細胞溶解によって生じる細胞内容物の混合物および/または溶液を含有する液体を指す。いくつかの実施態様においては、濃縮溶解物を調製するために溶解物を脱水してもよく、あるいは乾燥固形物を調製するために乾燥させてもよい。そのような特定の実施態様においては、乾燥溶解物は粉末形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞溶解物中の化学物質または化学物質の混合物を精製することを含む。いくつかの実施形態では、本法は、細胞溶解物中のアミノ酸および/または蛋白質を精製することを含む。
【0066】
「溶解」という用語は、大量の細胞内物質が細胞外間隙に溢出するような原形質膜破裂および、細胞壁が存在する場合には細胞壁の破裂を意味する。溶解は、電気化学的、機械的、浸透圧的、熱的、またはウイルス的手段を使用して実施することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のような細胞または微生物の溶解を実施して、バイオリアクターの内容物から化学物質または化学物質の混合物を分離することを含む。いくつかの実施形態では、本法は、本明細書に記載の細胞または微生物の溶解を実施して、バイオリアクターまたは細胞増殖培地の非蛋白質性内容物からアミノ酸またはアミノ酸および/または蛋白質および/またはペプチドの混合物を分離することを含む。
【0067】
「メタン生成微生物」は、嫌気的呼吸の産物としてメタンを生成する微生物を指す。
【0068】
「メチロトローフ微生物」は、増殖のために炭素源として、および/または電子供与体として、メタノールまたはメタンを含む還元型一炭素化合物を利用できる微生物を指す。
【0069】
「メタン資化微生物」は、増殖のために炭素源として、および/または電子供与体として、メタンを代謝することのできる微生物を指す。
【0070】
用語「微生物(microorganism)」および「微生物(microbe)」は、顕微鏡レベルの単一細胞生命体を意味する。
【0071】
「分子」という用語は、1つ以上の原子を含む物質の、任意の異なるまたは区別可能な構造単位を意味し、例えば、炭化水素類、脂質類、ポリペプチド類、およびポリヌクレオチド類を含む。
【0072】
「栄養的に選好性の」株は、複合栄養要求性または特定の栄養要求性を有する生物、例えば、特定栄養素が存在する場合にのみ増殖する生物を指す。
【0073】
「オリゴペプチド」は、比較的少数のアミノ酸残基、例えば、約2~約20アミノ酸を含むペプチドを指す。
【0074】
本開示の明細書および特許請求の範囲において用いられる「または(or)」は、上記に定義されるような「および/または」と同一の意味を有するものであると理解されたい。例えば、一覧表内の項目を分離する場合に、「または」または「および/または」は、包括的であるとみなされ、すなわち、複数の要素または列挙される要素、および任意選択的に付加的な非列挙項目のうちの少なくとも1つを含むが、しかし2つ以上も含むとみなされる。それとは対照的に、「のうちの1つのみ」または「のうちの厳密に1つ」などの明確に「のみ」を表現する用語、あるいは特許請求の範囲において用いられる場合の「から成る(consisting of)」は、複数の要素または列挙される要素のうちの厳密に1つの要素を含むものであることを意味する。一般に、本明細書中の「または」という用語は、「のいずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、「のうちの厳密に1つ」などの排他的な用語が先行する場合にのみ、排他的な代替物(すなわち、「両方ではなく、一方または他方」)を示すと解釈されたい。特許請求の範囲において用いられる場合の「本質的にから成る(consisting essentially of)」は、特許法の分野において使用される場合の、その通常の意味を有するものである。
【0075】
用語「有機化合物」は、無機と見なされる以下の例外を除いて、炭素原子を含有する任意のガス状、液状、または固体状の化学化合物を指す;すなわち、例外は、炭化物類、炭酸塩類、炭素の単純酸化物類、シアン化物類、および純炭素の同素体(ダイアモンドおよびグラファイトなど)である。
【0076】
「ペプチド」は、鎖状に連結した2つ以上のアミノ酸からなる化合物を指し、各酸のカルボキシル基は、R-OC-NH-R’型の結合によって次に来る酸のアミノ基に連結しており、「ペプチド」は約2~約50個のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0077】
本明細書中の用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さ、任意の三次元構造、および一本鎖または複数鎖(例えば、一本鎖、二本鎖、三重螺旋など)の多量体型ヌクレオチドを指し、これは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの類似体または修飾形態(修飾ヌクレオチドまたは塩基またはそれらの類似体を含む)を含むものである。遺伝暗号は縮重しているので、特定の1アミノ酸をコードするために2種類以上のコドンを用いてもよく、本発明は、特定の1アミノ酸配列をコードする複数のポリヌクレオチドを含む。使用条件下でポリヌクレオチドが所望の機能性を保持する限り、ヌクレアーゼ抵抗性を増強する修飾(例えば、デオキシ、2’-O-Me、ホスホロチオエート類など)を含む、任意の種類の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を用いてもよい。標識(例えば、放射性または非放射性の標識またはアンカー(例えば、ビオチン)など)が検出または捕捉の目的で組み込まれてもよい。ポリヌクレオチドという用語はまた、ペプチド核酸(PNA)をも含む。ポリヌクレオチドは、天然のものであっても、非天然のものであってもよい。用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」は、本明細書において同義語として用いられる。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA、またはその両方、および/またはそれらの修飾形態および/または類似体を含むものであってもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断されるものであってもよい。1つ以上のホスホジエステル結合が、代替的な連結基で置換されていてもよい。これらの代替的な連結基としては、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR.sub.2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR´、CO、またはCH.sub.2(「ホルムアセタール」)によって置き換えられており、ここで、各RまたはR´は独立して、任意でエーテル(--O--)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルキルを含有する、Hまたは置換もしくは非置換アルキル(1~20C)である実施形態が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは、直鎖状であっても環状であってもよく、または直鎖状部分と環状部分との組み合わせを含んでもよい。
【0078】
本明細書中の「ポリペプチド」は、アミノ酸によって構成され当業者によって蛋白質として認識される組成物を指す。慣用的なアミノ酸残基の1文字コードまたは3文字コードを用いてもよい。用語「ポリペプチド」および「蛋白質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すものとして、本明細書中では同義語として用いられる。ポリマーは直鎖であっても分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、それは非アミノ酸によって中断されるものであってもよい。この用語はまた、天然状態において修飾されている、または人工的に修飾されているアミノ酸ポリマーをも含み、そのような修飾としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との共役反応などの、任意のその他の操作もしくは修飾などが挙げられる。また、例えば、アミノ酸の1種類以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)ならびに当該技術分野において公知の他の修飾を含むポリペプチドもこの定義に含まれる。
【0079】
「に対する前駆体」または「の前駆体」という用語は、最終産物の構成要素のうちの1つ以上が産生に向かう途上にある中間体である。
【0080】
用語「プロバイオティクス」は、摂取した場合に健康上の利点を提供する微生物(例えば、有益な腸内フローラ)を指す。
【0081】
「発生炉ガス」は、様々な割合でH、CO、およびCOを含むガス混合物であって、標準条件下で単位体積あたり、典型的には天然ガスの1/2~1/10の間の範囲の発熱量を有するガス混合物を指す。発生炉ガスは、様々な原材料から、炭素性原材料のガス化、水蒸気改質、または自己改質を含む各種の方法で生成することができる。H、CO、およびCOに加えて、発生炉ガスは、生成プロセスおよび材料に応じて、他の成分を含有し得るが、そのような成分としてはメタン、硫化水素、凝縮性ガス、タール、および灰が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。リアクター内で空気が酸化剤として利用されるか否か、および反応のための熱が直接燃焼または間接熱交換によって提供されるかどうかに応じて、混合物中のNの割合は高いことも低いこともあり得る。
【0082】
用語「産生する」は、細胞内および細胞外の化合物産生の両方を含む(細胞からの化合物分泌を含む)。
【0083】
「好冷性微生物」は、低温、典型的には約10℃以下で増殖および生育可能な種類の好極限性微生物を指す。
【0084】
用語「組換え体」は、遺伝的物質(すなわち、核酸、それらがコードするポリペプチド、ならびにそのようなポリヌクレオチドを含むベクターおよび細胞)であって、改変ポリペプチドを産生するようにコード配列を突然変異させること;コード配列を別の遺伝子のコード配列に融合すること;遺伝子を異なるプロモーターの制御下に置くこと;遺伝子を異種生物で発現させること;遺伝子の発現レベルを低下または上昇させて発現させること;遺伝子をその天然発現プロファイルとは異なる様式で条件的または構成的に発現させることなどによって、その配列または発現特性が修飾または改変されている遺伝的物質を指す。一般に、組換え核酸、ポリペプチド、およびそれらに基づく細胞は、それらが関連する天然の核酸、ポリペプチド、および細胞と同一にはならないように、人間によって操作されている。組換え細胞はまた、「工学的に操作された」と称されることもある。
【0085】
本明細書中の用語「回収した」、「単離した」、「精製した」および「分離した」は、天然には会合している少なくとも1種類の成分から除かれた材料(例えば、蛋白質、核酸、または細胞)を指す。例えば、これらの用語は、天然状態、例えば、無損傷の生体システムなどに見いだされるような、通常はそれを伴う構成成分を、実質的または本質的に含んでいない材料を指すのであってもよい。
【0086】
特定の成分に関して、「実質的に含んでいない」という表現は、そのような成分が仮に存在するとしても、機能的には取るに足りない量で存在することを意味し、すなわち、いずれのプロセスまたは産物の意図する性能または機能にも有意に負の影響を与えることがないことを意味する。典型的には、「実質的に含んでいない」は、そのような成分の重量において約1%未満であることを意味し、それは約0.5%未満であることを含み、約0.1%未満であることを含み、およびまた0%であることを含む。
【0087】
「硫黄酸化微生物」は、細胞内還元等価物の生成および/または呼吸における電子供与体として、還元型硫黄含有化合物(HSが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)を利用する微生物を指す。
【0088】
「合成ガス(Syngas)」または「合成ガス(Synthesis gas)」は、発生炉ガスと同様にHおよびCOを含むが、特定種類の化学製品(メタノールまたはフィッシャー・トロプシュ・ディーゼルなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の合成のために、HおよびCOの含有量および比率ならびに不純物レベルに関してより具体的に調整されている種類のガス混合物を指す。合成ガスは一般に、主成分としてH、CO、およびCOを含み、確立された方法によって生成させることができるが、そのような方法としては、メタン、液化石油ガス、またはバイオガスの水蒸気改質;あるいは任意の有機、可燃性、炭素系材料(バイオマス、廃棄有機物、様々なポリマー、泥炭、および石炭が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)のガス化が挙げられる。合成ガスの水素成分は、水性ガス転化反応におけるCOと水蒸気との反応によって増加させることが可能であり、その際、同時に合成ガス混合物中においてCOの増加を伴う。
【0089】
「好熱性微生物」は、比較的高い温度、典型的には約45℃~約122℃で終生生育する種類の好極限性微生物を指す。
【0090】
「力価」は、微生物培養において単位容積当たりの微生物が産生する物質の量を指す。例えば、バイオマス力価は、溶液(例えば、培地)1リットル当たりに産生されるバイオマスのグラム数として表してもよい。
【0091】
「ビタミン」は、生物の増殖および/または栄養にとって必須であり、典型的には食物摂取あるいは増殖培地または培養培地に少量必要とされる化合物(例えば、有機化合物)である。
【0092】
本明細書中の「ビタマー」は、互いに効果的に機能的代替がなされ、および/またはビタミンの欠乏を効果的に緩和する、特定ビタミンの化学的類似体を指す。
【0093】
「野生型」は、天然に存在する微生物を指す。
【0094】
「収量」は、全ての原材料物質が生成物に変換された場合に生成される物質の総量に相対的な、原材料から生産される産物量を指す。例えば、アミノ酸収量は、原材料物質の100%がアミノ酸に変換された場合の理論収量に相対的な、産生アミノ酸の%として表すことができる。
【0095】
蛋白質加水分解物組成物の生産法
微生物の培養
特定の実施態様においては、本開示の方法は、微生物増殖に好適であって、後に蛋白質加水分解物組成物に変換されてもよいバイオマスの生成に好適である条件下で、バイオリアクターまたは発酵槽中で微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)を培養することを含む。該微生物を培養するために、いずれの好適な方法を用いてもよい。バイオマスの増殖と生産に好適な環境であれば、いずれの好適な条件で該微生物を増殖させてもよい。いくつかの実施態様においては、独立無機栄養培養条件、従属栄養性培養条件、あるいは独立無機栄養および従属栄養性培養条件の組み合わせで、該微生物を増殖させてもよい。従属栄養性培養は、1種類以上の糖(例えば、グルコース、フルクトース、スクロースなど)などの好適な炭素源およびエネルギー源を含むものであってもよい。独立無機栄養培養は、C1化学物質(一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、メタノール、ギ酸塩、および/またはギ酸など)、および/またはC1化学物質を含む混合物(各種合成ガス組成物または各種の発生炉ガス組成物が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含むものであってもよく、そのようなものとしては、例えば、低価値の炭素源またはエネルギー源(リグノセルロースエネルギー作物、作物残余物、バガス、おがくず、林業残余物、または食物などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)から生成したものであって、酸水素微生物または水素酸化微生物または一酸化炭素酸化微生物によって、炭素源およびエネルギー源として利用され得る、低価値炭素源のガス化、部分酸化、熱分解、または水蒸気改質によって生成したものが挙げられる。本法に利用する、微生物を培養する好適な方法、およびバイオマスを生成する好適な方法については、例えば、以下の参考文献に記載がある:PCT出願第PCT/US2010/001402号、第PCT/US2011/034218号、第PCT/US2013/032362号、第PCT/US2014/029916号、第PCT/US2017/023110号、第PCT/US2018/016779号;および米国特許第9,157,058号;これらの参考文献はいずれも、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。いくつかの実施態様においては、バイオリアクターで、水栽培システムで、温室内で、または耕作地で、該生物を光合成的に生育させてもよく、あるいは該生物を廃棄物または天然源から採集してもよい。
【0096】
該微生物は、いずれの好適なバイオリアクターまたは発酵槽を用いて培養してもよい。好適なバイオリアクターとしては、以下に示すもののうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:エアリフト反応器;生物学的スクラバーカラム;気泡塔;撹拌タンク反応器;連続撹拌タンク反応器;対向流、上向流、拡張床反応器;消化漕、および特に、下水および廃水処理またはバイオリメディエーションの従来技術で公知のもののような消化槽システム;フィルター(散水濾床、回転生物学的接触フィルター、回転円板、土壌フィルターが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);流動層反応器;ガスリフト発酵槽;固定化細胞反応器;ループ型反応槽;膜バイオフイルム反応器;パチュカ槽;充填床反応器;栓流反応器;静的ミキサー;トリクルベッド反応器;および/または立軸バイオリアクター。
【0097】
いくつかの実施態様においては、該微生物は、ガス状炭素およびエネルギー源(合成ガス、発生炉ガス、排ガス、熱分解ガス、またはHおよびCOおよび/またはCOガス混合物などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含む、化学独立栄養的増殖に好適な培地で増殖および維持される。化学独立栄養的CO固定化には光を必要とはせず、また特定の実施態様においては、増殖環境に光がほとんどないか、あるいは全くない。
【0098】
例示的であるが非限定的な実施態様においては、栄養培地を含むバイオリアクターに、生産する細胞を接種する。一般に、細胞の倍加が始まる前に、遅滞期がある。遅滞期の後に、細胞倍加時間が短縮して培養は対数増殖期に入る。対数増殖期の終わりに倍加時間が延長する;理論による限定を意図するものではないが、これは、物質移動の限界、窒素源またはミネラル源を含む栄養素の枯渇、あるいは阻害性化学物質濃度の上昇、または微生物による菌体密度感知機構のいずれかによるものであると考えられる。増殖は減速した後、培養が定常期に入ると増殖が停止する。特定の実施態様においては、定常期に先立って算術的増殖期が存在する。細胞マスを回収するために、対数増殖期および/または算術的(増殖)期および/または定常期に、特定の実施態様の培養物を回収する。
【0099】
バイオリアクターにおいて増殖条件(溶解ガス(二酸化炭素、酸素、および/またはその他のガス(水素など)など)ならびに他の溶解した栄養素、微量要素、温度およびpHの)を調節してもよい。特定の実施態様に関しては、バイオリアクター内の液体懸濁液中で、蛋白質に富む細胞マスを高密度に増殖させる、および/または高生産性に増殖させる。
【0100】
バイオリアクターに、栄養培地ならびにガスを添加することができるが、これは、バッチ添加または周期的添加、または枯渇検出に応答して、またはプログラムされた設定点で、あるいは培養物が増殖および維持される期間に亘って連続的に、のいずれかによって添加可能である。特定の実施態様については、増殖開始の接種時に、バイオリアクターを出発バッチの栄養培地および/または1種類以上のガスで満たすが、接種後にはそれ以上の付加的な栄養培地および/または1種類以上のガスの添加を行わない。特定の実施態様については、接種後に栄養培地および/または1種類以上のガスを周期的に添加する。特定の実施態様については、接種後に栄養素および/またはガスの枯渇検出に応答して、栄養培地および/または1種類以上のガスを添加する。特定の実施態様については、接種後に栄養培地および/または1種類以上のガスを連続的に添加する。
【0101】
特定の実施態様については、添加する栄養培地は全く有機化合物を含まず、例えば、炭素源として微生物によって代謝され得る糖分子または他の有機分子などの有機炭素源を含まない。
【0102】
特定の実施態様においては、設定容積の培地に少量の微生物細胞(すなわち、接種材料)を添加し;次いで、培養物をインキュベートし;該細胞マスは、増殖の遅延期、指数関数期、減速期、および定常期を経る。
【0103】
回分(バッチ)培養系では、微生物の培養条件(例えば、栄養素濃度、pHなど)は、一般的に増殖期間を通じて連続的に変化する。特定の非限定的実施態様においては、回分(バッチ)培養に固有の条件的揺らぎを避け、回分(バッチ)培養系の総生産性を改善するために、蛋白質および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素の生産に用いる微生物は、ケモスタット(例えば、培養容積を一定に保つように同一速度で、残余栄養、代謝の最終産物および微生物を含む培養液を連続的に除去しながら、新鮮培地を連続的に添加するバイオリアクターまたはその他の培養容器)とよばれる連続培養系で増殖させる。特定の実施態様においては、蛋白質および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素の生産に用いる微生物は、タービドスタット(例えば、培養容器の濁度と希釈率との間でフィードバックを有する連続微生物培養デバイス)とよばれる連続培養系で増殖させる。
【0104】
特定の実施態様については、バイオリアクターは栄養培地の混合を可能にする機構を有し、そのような機構としては、以下のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:回転撹拌子、回転翼、羽根車、またはタービン;回転、振盪、または旋回容器;ガスリフト、散布;再循環導管によって、容器の底から上部までブロスを再循環させる、ループおよび/または静的ミキサーを通じてブロスを流す。培地は連続的または断続的に混合してもよい。
【0105】
特定の実施態様においては、微生物を含む栄養培地を部分的または完全に、周期的または連続的にバイオリアクターから除去してもよく、また特定の実施態様においては、指数増殖期および/または算術的増殖期の細胞培養を維持するために、および/または増殖培地の栄養枯渇に対して補充を行うために、および/または阻害的老廃物を除去するために、栄養培地を新鮮な無細胞培地と交換する。
【0106】
微生物を容れるバイオリアクター容器のなかへ、および/または、容器からガス、液体、固形物、および/またはスラリーを送達または吸引するために、バイオリアクター中の標準的なポートを利用してもよい。多くのバイオリアクターは、異なる目的(例えば、培地添加用ポート、ガス添加用ポート、pHおよび溶解酸素(DO)の探針用ポート、および採取用ポート)の複数のポートを有しているので、発酵の経過中に様々な目的で所定のポートを利用してもよい。一例を挙げれば、一時点でバイオリアクターに栄養培地を添加するために1ポートを使用し、また別の時点で採取のためにそのポートを使用することができる。いくつかの実施態様においては、増殖環境への汚染または侵入生物種の持ち込みを回避しながら、採取ポートの複数利用が可能である。試料流の制御または連続採取が可能な弁またはアクチュエータを、採取ポートに設置することができる。特定の実施態様では、バイオリアクターは、培養物接種に好適である少なくとも1つのポートであって、培地またはガスの添加を含むその他の用途にさらに利用可能な少なくとも1つのポートを備える。バイオリアクターのポートは、培養環境内の気体組成調節および培養環境への流量調節を可能にする。例えば、当該ポートはガスをポンプでバイオリアクターに送り込むためのガス注入口として利用することができる。
【0107】
いくつかの実施態様に関しては、ポンプでバイオリアクターに送り込んでもよいガスとしては、以下に示すもののうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:合成ガス、発生炉ガス、熱分解ガス、水素ガス、CO、CO、O、空気、空気/CO混合物、天然ガス、バイオガス、メタン、アンモニア、窒素、希ガス(アルゴンなど)、ならびにその他のガス。いくつかの実施態様においては、ポンプでシステムに送り込むCOは、以下の資源に由来するものであってもよいが、これらのみに限定されるものではない:
有機物質のガス化によるCO;生石灰CaOを生産するための石灰岩CaCOの焼成によるCO;アンモニア、メタノール、または水素生成のCO副産物などの、メタン水蒸気改質によるCO;燃焼、焼却、またはフレアリングによるCO;発酵に利用する糖および/またはその他の有機炭素基質の嫌気性または好気性の発酵による副産物であるCO;メタノトローフ・バイオプロセスの副産物であるCO;一酸化炭素資化性バイオプロセスの副産物であるCO;従属栄養性代謝の副産物であるCO;廃水処理によるCO;リン酸ナトリウム産生の副産物であるCO;地質学的または地熱的に産生または放出されるCO;酸性ガスまたは天然ガスから取り出したCO。特定の非限定的実施態様においては、COは工業煙道ガスから分離された、あるいは地質学的発生源から捕捉されたものであって、これを行わなければ、おのずから大気中に放出されるものである。特定の実施態様においては、炭素源は、海水またはそれ以外の地球表面の水または地下水に溶けているCOおよび/または重炭酸および/または炭酸である。そのような特定の実施態様においては、無機炭素を液体水に溶けた状態および/または固形物としてバイオリアクターに導入してもよい。特定の実施態様においては、炭素源は、大気から捕捉したCOである。特定の非限定的実施態様においては、例えば、国際宇宙ステーション(ISS)において利用されるCO除去装置(CDRA)などの設備(これにのみに限定されるものではない)を用いた、閉鎖ループ生命維持システムの一部として、閉鎖キャビンからCOを捕捉している。
【0108】
特定の非限定的実施態様においては、地質学的地物(高濃度のエネルギー源(例えば、H、HS、COガス)および/または炭素源(例えば、CO、HCO 、CO 2-)および/またはその他の溶解ミネラル類を放出する地熱噴出孔および/または熱水噴出孔が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、本明細書に記載の微生物の栄養源として用いてもよい。
【0109】
特定の実施態様においては、二酸化炭素に加えて、あるいは二酸化炭素の代わりに、1種類以上のガスを別の炭素源として、溶液に溶解して培養ブロスに添加する、および/または直接培養ブロスに溶解するが、そのようなものとしては、ガス状電子供与体および/または炭素源(例えば、水素および/またはCOおよび/またはメタンガス)が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、投入ガスとしては、その他の電子供与体および/または電子受容体および/または炭素源および/または無機栄養素が挙げられ、そのような無機栄養素としては、合成ガス(例えば、炭化水素)の他のガス構成成分および不純物;アンモニア;硫化水素;および/または他の酸性ガス;および/またはO;および/またはミネラルを含む粒子および灰が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0110】
ガスを取り込む微生物を保持する反応器システムを通過させた後、特定の実施態様においては、その残留ガスを、バイオリアクターへと再循環させてもよく、あるいはプロセス加熱のために燃焼させてもよく、または焼却してもよく、または地下へ排出してもよく、または大気中に放出してもよい。Hを電子供与体として利用する、本明細書に記載の特定の実施態様においては、培地内に泡立つように通気すること、あるいは当該技術分野において公知の水素透過性/水非透過性膜であって、液体培地に接面する膜を透過させること、のいずれかによってHを培養容器に導入する。
【0111】
特定の実施態様においては、C1分子(二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸塩、またはギ酸が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)および/またはC1分子を含む混合物(ガス化した、熱分解した、または水蒸気改質した各種の固定化炭素原材料から生成した各種の合成ガス組成物が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)が、炭素源として微生物によって利用され、好気性、微好気的、無酸素的、嫌気性、および/または通性条件のうちの1種類以上の条件下で、生化学的により長鎖の有機分子(すなわち、C2またはより長い炭素鎖分子、およびいくつかの実施態様においては、C5またはより長い炭素鎖分子)に変換される。いくつかの実施態様においては、ガス状COは炭素源として微生物に利用され、好気性、微好気的、無酸素的、嫌気性、および/または通性条件下で、化学独立栄養的により長鎖の有機分子(すなわち、C2またはより長い炭素鎖分子、およびいくつかの実施態様においては、C5またはより長い炭素鎖分子)に変換される。いくつかの実施態様においては、炭素固定化およびC1炭素分子のより長鎖の有機分子への変換に関して、Hが電子供与体として、またOが電子受容体として用いられる。いくつかの実施態様においては、化学独立栄養的炭素固定化およびCOのより長鎖の有機分子への変換に関して、Hが電子供与体として、またOが電子受容体として用いられる。
【0112】
特定の実施態様においては、有機炭素源を、細胞代謝における炭素源および/または還元電子源として用いる。特定の実施態様においては、そのような増殖および代謝は、従属栄養性または混合栄養性である。
【0113】
特定の実施態様においては、バイオリアクターにおいて、以下のもののうちの1種類以上のパラメーターをモニターおよび/または制御する:廃棄物レベル;pH;温度;塩分;溶解酸素;溶解二酸化炭素ガス;液体流量;撹拌速度;ガス圧。特定の実施態様においては、化学独立栄養的増殖に影響を与える操作パラメーターをセンサー(例えば、電子供与体/受容体濃度を判定するための溶解酸プローブまたは酸化還元プローブ)でモニターする、および/または設備(作動弁、ポンプ、および撹拌機が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を利用することにより、センサーからのフィードバックに基づいて、用手的または自動のいずれかで、操作パラメーターを制御する。特定の実施態様においては、流入ブロスならびに流入ガスの温度をシステム(冷却器、加熱器、および/または熱交換器が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)によって制御する。
【0114】
いくつかの実施態様においては、蛋白質産生および微生物が産生するアミノ酸分子の分布を、以下のもののうちの1種類以上によって、最適化する:バイオリアクター条件の調節、栄養素レベルの調節、および/または細胞の遺伝子改変。特定の実施態様においては、化学的生成物の産生に関して、アミノ酸、蛋白質、またはその他の栄養素、あるいは細胞の全生産物ヘの経路を、特定の増殖条件(例えば、窒素、酸素、リン、硫黄、痕跡程度の微量栄養素(無機イオンなど)のレベル、および存在する場合には、制御性分子であって一般的には栄養素またはエネルギー源とはみなされない制御性分子のレベル)を維持することによって制御および最適化する。特定の実施態様においては、微生物の要求性に応じて、ブロスを好気的、微好気的、無酸素的、嫌気性、または通性条件に維持することによって、溶解酸素(DO)を最適化してもよい。通性環境は、水柱の層化による好気性上層と嫌気性下層、あるいはO含有ガスに曝露される領域とO含有ガスに曝露されない領域との空間的分離による、好気性または微好気的領域と嫌気性領域との空間的分離を含むと考えられる。
【0115】
いくつかの実施態様においては、微生物によるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)(例えば、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)および/またはポリヒドロキシ吉草酸(PHV))の蓄積を促す条件下で、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)を増殖させる。いくつかの実施態様においては、PHA(例えば、PHB;PHV)の蓄積を起こす、1種類以上の栄養を制限した条件下(窒素またはリンを制限した条件下など)で、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)を増殖させる。いくつかの実施態様においては、H/COおよび/または合成ガスで増殖させた微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)は、細胞バイオマス中にPHA(PHBおよび/またはPHVなど)を蓄積する。いくつかの実施態様において、PHA(例えば、PHB;PHV)は蓄積して、重量で微生物バイオマスの約50%以上、重量で約60%以上または約70%以上を占める。
【0116】
特定の実施態様においては、微生物によるビタミン(例えば、ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12のうちの1種類以上のビタミンBが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の産生を促進する条件下で、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)を増殖させる。いくつかの実施態様においては、1種類以上のビタミン(ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12など)を生産するために、微生物を化学独立栄養的に増殖させるのであってもよい。
【0117】
培養微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)によって生成したバイオマスを、好適な方法を用いて回収してもよく、次いで回収したバイオマスから、蛋白質加水分解物を調製してもよい。いくつかの実施態様においては、好適な方法を用いて、バイオマスを液体培地から分離する。好適な方法としては、遠心分離;凝集;浮遊;膜性フィルター、中空繊維性フィルター、渦巻き形フィルター、またはセラミックフィルターシステムを用いた濾過;真空濾過;タンジェント流濾過;清澄分離;沈殿;ハイドロサイクロンが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。微生物細胞マスをマトリックス上に固定化してもよい特定の実施態様においては、重力沈降または濾過などの方法(これらのみに限定されるものではない)によって、細胞マスを回収し、増殖基質からそれらをこすり取ることによって、または液体せん断力によって分離してもよい。
【0118】
特定の実施態様において回収した微生物細胞は、溶解物を調製するために、周知の方法で破砕することができるが、そのような方法としては、ボールミル粉砕、キャビテーション圧、超音波処理、ホモジナイズすること、または機械的剪断のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。いくつかの実施態様においては、1回以上の凍結/解凍サイクル、溶菌酵素、界面活性剤、溶媒、または抗生物質によって、バイオマスの細胞を溶解してもよい。
【0119】
いくつかの実施態様における回収したバイオマスは、単一工程または複数の工程で乾燥させてもよい。バイオマスの乾燥は、特定の実施態様において、好適な方法を用いて実施することができるが、そのような方法としては、遠心分離、ドラム乾燥、蒸発、凍結乾燥、加熱、噴霧乾燥、真空乾燥、および/または真空濾過のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様において、廃熱はバイオマスの乾燥に利用することができる。特定の実施態様において、炭素源として用いる煙道ガスの工業資源に由来する廃熱は、バイオマスの乾燥に利用することができる。特定の実施態様において、電子供与体および/またはC1炭素源の生成に由来する熱副産物は、バイオマスの乾燥に利用することができる。特定の実施態様において、ガス化、メタン水蒸気改質、自己改質、または部分酸化に由来する熱副産物は、バイオマスの乾燥に利用することができる。
【0120】
特定の実施態様においては、乾燥後に、または前もって乾燥工程を行うことなく、バイオマスをさらに処理して、有用生化学物質の分離と生産を進める。特定の実施態様においては、この付加的処理は、微生物バイオマスから蛋白質または脂質内容物またはビタミン類または核酸またはその他の標的生化学物質を分離することを含む。特定の実施態様においては、脂質抽出用の非極性溶媒または極性溶媒を用いることによって、脂質類の分離を行うことができるが、そのような溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ドデカン、エチルエーテル、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エタノールなど)、リン酸トリブチル、超臨界二酸化炭素、トリフェニルホスフィンオキシド 、アンモニア、第2級および第3級アミン類、プロパン、アセトン、炭酸プロピレン、ジクロロメタン、またはクロロホルムのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、溶媒を用いて、他の有用な生化学物質を抽出することができるが、そのような溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、酢酸エチル、炭酸プロピレン、およびテトラクロロエチレンのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、有用生化学物質の分離と生産のために、細胞溶解を行う。
【0121】
いくつかの実施態様においては、微生物バイオマスの少なくとも一部については蛋白質加水分解を行わず、その生産物は微生物細胞溶解物であるか、または微生物細胞溶解物を含む。いくつかの実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物に対して分離工程または乾燥工程を行わず、該溶解物および/または加水分解物は溶解性成分と不溶性成分の粗混合物である。そのような特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物は清明ではなく、および/または濁っている。いくつかの実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物に固体/液体分離工程を用い、その結果、可溶性産物および不溶性副産物が生じる。特定の実施態様においては、可溶性溶解物または加水分解産物は清明であり、および/または濁ってはいない。特定の実施態様においては、該溶解物または加水分解物を限外濾過する。そのような特定の実施態様においては、該限外濾過に分子量約10,000以下のカットオフを用いる。特定の実施態様においては、溶解物および/または加水分解物について、以下の下流プロセスのうちの1種類以上の処理を行う:遠心分離;プレート濾過およびフレーム濾過;精密濾過;限外濾過;ナノ濾過;イオン交換クロマトグラフィー。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物を、1種類以上のグレードの炭素を含むフィルターで濾過する。そのような特定の実施態様において、該炭素は、該溶解物および/または加水分解物から着色を除く。特定の実施態様においては、溶解物および/または加水分解物および/または溶解物および/または加水分解物の濾過物は、例えば、塩含量を低下させる目的で、イオン交換クロマトグラフィーにかける。
【0122】
特定の実施態様においては、本明細書に開示するような溶解物および/または加水分解物は、別の細胞培養物の増殖に用いる前に、濾過滅菌する。
【0123】
特定の実施態様においては、溶解物および/または加水分解物および/またはそれらの濾過物を、以下のもののうちの1種類以上を用いて濃縮する:流下膜式蒸発器;液膜上昇蒸発器;膜蒸留、ナノ濾過;逆浸透。
【0124】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/または抽出物および/または濃縮物および/または単離物のうちの1種類以上を、工業発酵および/または脱水培地および/または細胞培養用途で利用する。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物の限外濾過を行い、高分子量の物質を除去する。特定の実施態様においては、そのような限外濾過の産物を含む培地で増殖させた細胞培養物は、非濾過同等物で増殖させた細胞培養物よりも性能が優れている。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物のうちの1種類以上を、培養物中の動物細胞の増殖に利用する。そのような特定の実施態様においては、該動物細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物を用いて、細胞培養物を増殖させるが、この細胞培養物は、蛋白質および/または組織を生産して肉型生産物を形成させるためのものである。そのような特定の実施態様においては、人間が摂取する肉型生産物を生産する。
【0125】
特定の実施態様においては、1種類以上の医薬品を生産するための細胞培養物を、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物を用いて増殖させる。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような方法で産生される、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子は、栄養物質および/またはバイオ医薬品を生産するための各種の天然の細胞または組換え細胞(原核細胞など)の増殖に用いる培地中の1種類以上の動物由来成分の代替物となる。特定の実施態様においては、そのような天然原核生物または組換え原核生物としては、以下のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:Bacillus subtilis;Corynebacterium ammoniagenes;Pseudomonasの菌種;Streptomyces lividans。特定の実施態様においては、当該医薬品としては、以下のもののうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:
抗生物質(セファロスポリン類およびセファマイシン類などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);抗凝固剤;血液因子;ワクチン;多糖ワクチン;組換えワクチン;組換え蛋白質;抗体;サイトカイン(インターロイキン11、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);融合蛋白質;成長因子;インターフェロン類;凝固因子;ホルモン(ヒト成長ホルモン、インスリン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ヒト副甲状腺ホルモンなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);モノクローナル抗体;核酸;治療用酵素(ヒト組織プラスミノゲン活性化因子などが挙げられるが、これのみに限定されるものではない);線維素溶解酵素;治療用蛋白質(形質転換成長因子-α-シュードモナス外毒素融合蛋白質(TGF-α-PE40)、ヒト上皮細胞増殖因子(hEGF)などが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)。特定の実施態様においては、組換え蛋白質を産生する細胞培養物を、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物を用いて増殖する。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような培地成分(例えば、微生物溶解物および/または加水分解物)を用いて生産されるモノクローナル抗体としては、Herceptin;Remicade、Rituxan、Synagisのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物または加水分解物を、ウシ胎仔血清(FCS)などの血清または血清由来成分の代替として用いる。
【0126】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子を、1種類以上の他の生物または細胞(例えば、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子が由来する該微生物とは異なる1種類以上の生物または細胞)に供給するが、該他の生物または細胞としては、以下のうちの1種類以上が挙げられるが、それらにのみに限定されるものではない:
Actinomycetes、Aspergillus awamori、Aspergillus fumigates、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Aspergillus foetidus、Bacillus alkalophilus、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus brevis、Bacillus circulans、Bacillus clausii、Bacillus coagulans、Bacillus lentus、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Bacillus pumilis、Bacillus stearothermophilus、Bacillus subtilis、Bacillus thuringiensis、E.coli、E.coli株B、E.coli株C、E.coli株K、E.coli株W、Streptomyces lividans、Streptomyces murinus、Trichoderma atroviride、Trichoderma koningii、Trichoderma longibrachiatum、Trichoderma reesei、Trichoderma viride、Humicola insolens、Humicola lanuginose、Mucor miehei、Rhizomucor miehei、Rhodococcus opacus、293細胞、3T3細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、Cvl細胞、HeLa細胞、MDCK細胞、P12細胞、VERO細胞。
【0127】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子を、1種類以上の他の生物または細胞(例えば、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子が由来する該微生物とは異なる1種類以上の生物または細胞)に供給するが、該他の生物または細胞としては、以下の属のうちの1種類以上の構成員が挙げられるが、それらにのみに限定されるものではない:
Aspergillus属、Bacillus属、Chrysosporium属、Escherichia属、Fusarium属、Humicola属、Kluyveromyces属、Lactobacillus属、Mucor属、Myceliophtora属、Neurospora属、Penicillium属、Phanerochaete属、Pichia属、Pleurotus属、Pseudomonas属、Rhizomucor属、Rhodococcus属、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Stenotrophamonas属、Streptomyces属、Trametes属、Trichoderma属、Yarrowia属。
【0128】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子を、植物に有益であり、および/または植物微生物叢および/または根圏の有益な構成員であり、および/または有益な土壌生物(Trichoderma atroviride;Azospirillum brasilense、Bradyrhizobium japonicum、および/またはArbuscular mycorrhizal真菌を含むMycorrhizal真菌のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)である、1種類以上の他の生物または細胞(例えば、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子が由来する該微生物とは異なる1種類以上の生物または細胞)に供給する。
【0129】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子を、1種類以上の他の生物または細胞(例えば、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子が由来する該微生物とは異なる1種類以上の生物または細胞)に供給し、該他の生物または細胞としては、以下のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:
古細菌細胞、グラム陰性細菌および/またはグラム陽性細菌を含む細菌性細胞、糸状菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、動物細胞、植物細胞、酵母細胞。
【0130】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはPHBおよび/またはヒドロキシ酪酸および/またはビタミンおよび/またはその他の栄養素または補因子を、1種類以上の微生物産物または化学的産物の生産のための栄養源として、細胞培養に提供するが、そのような微生物産物または化学的産物としては、以下のもののうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:
多糖類、脂質類、バイオディーゼル、ブタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロパン、アルカン類、オレフィン類、芳香族、脂肪アルコール類、脂肪酸エステル類、アルコール類;1,3-プロパンジオール、1,3-ブタジエン、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-ヒドロキシプロピオン酸、7-ADCA/セファロスポリン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、アクリル酸塩、アクリル酸、アジピン酸、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸、アスパラギン酸、カプロラクタム、カロテノイド類、クエン酸塩、クエン酸、DHA、ドセタキセル、エリスロマイシン、エチレン、γブチロラクトン、グルタミン酸塩、グルタミン酸、HPA、ヒドロキシ酪酸塩、イソペンテノール、イソプレーン、イソプレノイド、イタコン酸塩、イタコン酸、乳酸塩、乳酸、ラノステロール、レブリン酸、リコピン、リジン、リンゴ酸塩、マロン酸、ペプチド、オメガ-3DHA、オメガ-3EPA、オメガ-3ALA、オメガ脂肪酸、オメガ-7脂肪酸、オメガ-7に富んだ油類、パクリタキセル、PHA、PHB、ポリケチド類、ポリオール類、プロピレン、ピロリドン類、セリン、ソルビトール、スタチン類、ステロイド、コハク酸塩、テレフタル酸塩、テルペン類、THF、天然ゴム、ワックスエステル類、ポリマー、汎用化学製品、工業化学物質、特殊化学製品、パラフィン置換物、添加剤、栄養補助食品、栄養補助食品、医薬品、医薬品中間体、パーソナルケア製品;市販の酵素、抗生物質、アミノ酸、ビタミン、バイオプラスチック、グリセロール、ジェット燃料、ディーゼル、ガソリン、オクタン。
【0131】
および/またはCOおよび/またはCOおよび/またはCHを含むガス状原材料から蛋白質、アミノ酸およびその他の栄養素を生産するための化学独立栄養性微生物の利用については、例えば、2017年3月18日付けの国際特許出願、「MICROORGANISMS AND ARTIFICIAL ECOSYSTEMS FOR THE PRODUCTION OF PROTEIN, FOOD, AND USEFUL CO-PRODUCTS FROM C1 SUBSTRATES」と題する国際公開公報第PCT/US17/23110号に記載がある。この公開公報は全ての目的においてその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0132】
および/またはCOおよび/またはCOおよび/またはCHを含むガス状原材料から植物、動物、およびヒトの栄養を生産するための化学独立栄養性微生物の利用については、例えば、2018年2月4日付けの国際特許出願、「VEGAN NUTRIENTS, FERTILIZERS, BIOSTIMULANTS, AND SYSTEMS FOR ACCELERATED SOIL CARBON SEQUESTRATION」と題する国際公開公報第PCT/US2018/016779号に記載がある;この公開公報はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0133】
微生物に由来する蛋白質加水分解物の生産については、2020年9月15日付けの国際特許出願、「MICROBIAL PROTEIN HYDROLYSATE COMPOSITIONS AND METHODS OF MAKING SAME」と題する国際公開公報第PCT/US20/50902号に記載がある;この公開公報はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0134】
特定の非限定的実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物を約25%~約50%固形物に濃縮する。そのような特定の実施態様においては、約25%~約50%固形物への濃縮の後に乾燥工程を行う。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物はポンプ吸い上げ可能な濃縮形態である。そのような特定の実施態様においては、該ポンプ吸い上げ可能な溶解物および/または加水分解物は約25%~約60%固形物である。他のそのような実施態様においては、該ポンプ吸い上げ可能な溶解物および/または加水分解物は約60%以上の固形物である。特定の実施態様においては、濃縮溶解物および/または濃縮加水分解物が微生物的に安定である、充分低い水分活性を有する。特定の実施態様においては、大型粒子を除去する目的で、当該溶解物および/または加水分解物および/または濾過物および/または上清および/または濃縮物をポンプによりカートリッジ・フィルターで濾過する。特定の実施態様においては、当該溶解物および/または加水分解物および/または濾過物および/または上清および/または濃縮物を好適な方法で乾燥させ、そのような方法としては、噴霧乾燥機;ローラードラム乾燥器;凍結乾燥のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0135】
特定の実施態様においては、該バイオマスおよび/または溶解物および/または加水分解物につき1工程以上の脱脂工程を実施する。特定の実施態様においては、該1工程以上の脱脂工程によって、産物からリポ多糖類(LPS)を除去する、あるいはその含量を減らす。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物につき、1工程以上の濾過工程または限外濾過工程を実施する。特定の実施態様においては、該1工程以上の濾過工程または限外濾過工程によって、産物からLPSを除去する、あるいはその含量を減らす。特定の実施態様においては、該限外濾過工程の分子量カットオフは、100キロダルトン(kD)以下、または50kD以下、または25kD以下、または20kD以下、または10kD以下、または5kD以下である。特定の実施態様においては、1工程以上の脱脂工程および/または1工程以上の濾過工程または限外濾過工程で除去される、または減少させるLPSは内毒素である。
【0136】
本明細書に記載の方法で生産される、溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、ペプチド類(増殖促進性ペプチドが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);アミノ酸;ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび/または核酸;炭水化物;脂質類;ミネラル類(カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、および微量ミネラル類が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);ビタミン;および/または他の痕跡量の低分子量成分のうちの1種類以上を提供することができる。特定の実施態様においては、該ペプチド類は、細胞培養物の増殖因子および/または生存因子として機能するものであってもよい。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される、溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または抽出物は、別の培養物および/またはコンソーシアムおよび/または微生物叢のヌクレオチド源(RNAおよびDNA前駆体)として機能し、および/または該ヌクレオチドは再循環によってバイオリアクター内に戻り、および/または本明細書中に開示のような蛋白質および/またはバイオマスの生産に利用する微生物に戻る。特定の実施態様においては、該ヌクレオチドは、混合栄養増殖および/または産生におけるCO炭素源と共に利用される。
【0137】
特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含まない培地と比較して、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含む培地で増殖する細胞の培養において、増殖速度および/または蛋白質発現を改善する。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、該組成物を受容する培養物において以下のパラメーターのうちの1種類以上を改善する:増殖速度;生産性;および/または長期生存率。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、基質上への細胞の付着および広がりを促進することによって、接着性のファイブロネクチン様活性を付与または増強する。特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、浸透圧保護効果および/または抗アポトーシス効果を含む効果(これらのみに限定されるものではない)によって、該組成物を含む培地で増殖する培養物の性能を改善する。特定の実施態様においては、動物細胞の凍結保存溶液において、本明細書に記載のような蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を用いる。特定の実施態様においては、胚凍結培地において、本明細書に記載のような蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を用いる。特定の当該実施態様においては、凍結工程および/または解凍工程において、該蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、細胞および/または胚の生存性を改善する。
【0138】
いくつかの実施態様においては、蛋白質加水分解物組成物の生産前、生産中、または生産後に、該バイオマスを処理し、生分解性ポリエステル(ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリマーを含むが、これのみに限定されるものではない)を抽出および/または精製してもよい。いくつかの実施態様においては、該バイオマスを処理して、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)を含む多量体産物を抽出してもよい。いくつかの実施態様においては、該バイオマスを処理して、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)を含む多量体産物を抽出してもよい。該PHAまたはPHBまたはPHVポリマーは、好適な方法を用いて該バイオマスから抽出してもよい。いくつかの実施態様においては、該PHAまたはPHBまたはPHVポリマーを最初に抽出してもよく、以下に挙げるような溶媒のうちの1種類を該バイオマスに混合することによって抽出するのでもよい:クロロホルム、メタノール、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、コハク酸ジエチル、アセトン、ヘキサン、炭酸プロピレン、イソプロパノールおよびエタノール。いくつかの実施態様においては、該溶媒と混合する前に、該バイオマスを(例えば、ホモジナイズすることによって)溶解する。該抽出は好適な温度で実施してもよく、また室温~150℃以上の範囲の温度で実施してもよい。いくつかの実施態様においては、該抽出は、該バイオマスを該溶媒と混合した後で、水相と有機相を分離することを含む。該相分離は、遠心分離などの好適な方法(これにのみに限定されるものではない)を用いて実施してもよい。いくつかの実施態様においては、該抽出は、例えば、該混合物を冷却すること、および/または該混合物に逆溶剤(例えば、ヘキサン)を添加することによる、PHAまたはPHBまたはPHVの沈殿析出を含む。該抽出は、バイオマス溶媒混合物から溶媒を除去することを含むものであってもよい。いくつかの実施態様においては、抽出後に、ヘキサンなどの第2の溶媒であって、そこでは非極性脂質類は溶解性であるが該PHAまたはPHBまたはPHVは不溶性である第2の溶媒に、該抽出した材料を混合することにより、該抽出した材料をさらに精製する。混合後に、第2の溶媒を除去してもよい。PHAまたはPHBまたはPHVポリマーを抽出する好適な方法については、例えば、以下の文献に記載がある:Feiらの「Effective recovery of poly-β-hydroxybutyrate (PHB) biopolymer from Cupriavidus necator using a novel and environmentally friendly solvent system」、(2016) 、Biotechnol Prog. 32(3):678-85;Ujangらの「Recovery of Polyhydroxyalkanoates (PHAs) from Mixed Microbial Cultures by Simple Digestion and Saponification」、(2009) Malaysia: University Teknology, Institute of Environmental and Water Resource Management, 8-15;これらの参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0139】
蛋白質加水分解物組成物の調製
微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)から精製したバイオマスは、本開示の局面にしたがって、培養物を加水分解して蛋白質加水分解物を調製してもよい。該加水分解は、微生物バイオマスに用いる物理的処理、化学的処理、および酵素処理のうちの1種類以上を用いて実施してもよい。その結果得られる蛋白質加水分解物(例えば、ペプトン、ペプチド、加水分解蛋白質)の質は、出発原料、用いる加水分解剤、プロセスパラメータ、および加水分解度を含む因子によって決まる。加水分解度は通常、アミノ窒素/総窒素(AN/TN)比で定義される。異なる蛋白質消化法では、異なる加水分解度(DH%)でアミノ酸およびペプチドが遊離する。これら遊離したペプチドのサイズとアミノ酸組成は、該蛋白質加水分解物を与える生物の増殖速度とバイオマス収量に影響を与える。特定蛋白質加水分解物の生物価はアミノ酸の総レベルによってのみ評価されるのではなく、その形態(すなわち、オリゴペプチド、ジペプチドおよびトリペプチド、または遊離アミノ酸としての形態)によっても評価される。異なる市販の蛋白質加水分解物は、異なるDH%および総蛋白質含量を有する。
【0140】
特定の非限定的実施態様においては、微生物(例えば、細菌)の蛋白質を遊離アミノ酸および/または短鎖ペプチドに加水分解することのできる少なくとも1種類の酵素で、該微生物バイオマスを加水分解する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産された蛋白質を制御性に消化するが、これは、添加するプロテアーゼおよび/またはプロテアーゼとペプチダーゼの混合物を用いて行う。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産された蛋白質を消化する際に、各種の特異性を有する複数の市販蛋白質分解酵素を用いる。他の非限定的実施態様においては、加水分解プロセスで外来酵素を用いない。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は精製酵素によって加水分解することを含む。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は酵素と該酵素を調製する培地との混合物によって加水分解することを含む。
【0141】
特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、植物および/または動物および/または細菌および/または古細菌および/または真菌に由来する酵素で加水分解することを含む。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、植物、動物、細菌、古細菌、および/または真菌に由来する1種類以上の酵素の混合物で加水分解することを含む。特定の実施態様においては、非動物性酵素を利用する。特定の実施態様においては、酵素的加水分解に用いる酵素は、動物起源(例えば、ブタ膵臓に由来するトリプシン)ではない。特定の実施態様においては、プロテアーゼならびに非蛋白質分解性の加水分解酵素を用いるが、後者によって、原材料(例えば、微生物バイオマス(例えば、化学独立栄養的バイオマス))の非蛋白質性重合性画分の主要成分を遊離させることができる。例示的な実施態様においては、1種類以上のプロテアーゼ、リパーゼ、および/またはアミラーゼで、細菌性細胞を加水分解してもよい。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、細菌、植物、真菌、古細菌、および/または動物に由来する1種類以上の蛋白質分解酵素を含む。
【0142】
特定の実施態様においては、該方法は、加水分解に1種類以上のアルカリプロテアーゼおよび/または酸性プロテアーゼおよび/または中性プロテアーゼを用いることを含む。いくつかの実施態様においては、酵素的加水分解は、1種類以上のエキソプロテアーゼの利用を含む。いくつかの実施態様においては、酵素的加水分解は、配列特異的エンドプロテアーゼを含む1種類以上のエンドプロテアーゼの利用を含む。好適なエンドプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼおよびシステインプロテアーゼが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、以下に示す酵素から選択される少なくとも1種類の酵素で加水分解することを含む:
パンクレアチン、パパイン、ブロメライン、フィシン、細菌プロテアーゼ、真菌プロテアーゼ、Bacillusの菌種によって産生される中性プロテアーゼ、Bacillus B.licheniformis、および/またはSubtilisin carlesbergのアルカラーゼ2.4L、B.lentus由来のエスペラーゼ、B.amyloliquifacus由来のヌトラーゼ、Bacillusの菌種由来のプロタメックス、B.thermoproteolyticus由来のテロリシン/テロラーゼ、Aspergillus oryzae由来のフレーバーザイム、Aspergillusの菌種のプロテアーゼ2A、B.subtilis由来のプロテアーゼN、B.subtilisニュートラーゼ、トリプシン、キモトリプシン、ケラチナーゼ、ペプシン、スブチリシン、および/またはレンニン。いくつかの実施態様においては、該酵素的加水分解は、複数のプロテアーゼを逐次的に、または同時に用いてバイオマス中の蛋白質を加水分解することを含む。
【0143】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の微生物のうちの1種類以上から単離したバイオマスおよび/または蛋白質からペプトンまたはトリプトンを作製する。特定の実施態様においては、本発明の微生物のうちの1種類以上から単離したバイオマスおよび/または蛋白質から膵液消化物またはトリプシン消化物を作製する。特定の実施態様においては、加水分解処理に組換えプロテアーゼを利用する。特定の実施態様においては、組換えプロテアーゼは、固有の開裂特異性および/またはより均一な加水分解物を提供する。
【0144】
微生物バイオマスを酵素的に加水分解することは、好適な条件下で酵素と微生物バイオマスとを好適な量で組み合わせることを含むものであってもよい。特定の実施態様においては、圧力、温度、pHおよび酵素的加水分解の時間の条件は、酵素活性が最大レベルまたは好適なレベルに達する条件である。特定の実施態様においては、酵素的加水分解を実施することは、バイオマスの窒素含有量100g当たりの酵素量が約0.1~約10gの範囲となる重量比で、酵素と微生物バイオマスを組み合わせることを含む。別の特定の一実施態様においては、アゾカゼインアッセイによる活性が約70,000単位である活性を有する酵素ストック溶液を、容積で0.05%~0.5%の濃度で用いて、酵素的加水分解を行う。様々な例示的実施態様においては、好適な方法を用いて微生物バイオマスの酵素的加水分解の効率を改善してもよい。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、酵素と微生物バイオマスを組み合わせること、および該組み合わせた酵素と微生物バイオマスを好適な方法で撹拌することを含む。好適なデバイス(例えば、温度制御および撹拌を備えた反応器など)で酵素処理を実施することができる。
【0145】
特定の実施態様においては、特異的ペプチド結合の部位で蛋白質を開裂させるために酵素を利用する。例えば、ペプシンは、アミノ酸のうちの少なくとも1つが芳香族アミノ酸(例えば、フェニルアラニン;トリプトファン;またはチロシン)である蛋白質を、アミノ酸間のアミド結合の部位で消化する。特定の実施態様においては、芳香族アミノ酸を含むアミド結合を開裂するためにペプシンを利用する。
【0146】
上記のように、いずれかの好適な条件下で加水分解を実施してもよいが、様々な例示的実施態様においては、約pH2~約10の範囲で加水分解を行うのであってもよい。特定の実施態様においては、約pH4~約12の範囲内のpH条件下で酵素的加水分解を実施する。その他の実施態様においては、約pH5~約9.5または約pH6~約8の範囲内、または約pH7で加水分解を実施する。特定の一実施態様においては、酵素的加水分解中は、塩基(例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、またはリン酸カリウムなど)を添加することによって、pHの値を一定に維持し、その他の実施態様においては、酸(リン酸、硫酸、または炭酸(すなわち、CO))を添加することによってpHを維持する。様々な例示的実施態様においては、約15.5℃~約55℃の温度で、かつ約2~約120時間の範囲の時間、加水分解を行うのであってもよい。特定の実施態様においては、酵素的加水分解を約10℃~約80℃の範囲の温度条件下で実施し、またその他の実施態様においては、約10℃~約65℃または約10℃~約55℃の範囲の温度下で実施する。加水分解に用いるpH、温度および時間は、利用する特定酵素(複数可)および所望の加水分解度(例えば、ペプチドのサイズ分布)に依存し得る。
【0147】
特定の実施態様においては、酵素的加水分解を実施することは、触媒の存在下で、酵素を微生物バイオマスに接触させることを含む。該単一の酵素または複数の酵素の効率を向上させるいかなる触媒を利用してもよく、そのような触媒としては、不均一触媒、均一触媒および/または電解触媒が挙げられる。そのような特定の実施態様においては、該触媒は、鉄、銅、コバルト、ニッケル、ホウ素、マグネシウム、カルシウムおよび希土類金属(ランタンなどが挙げられるが、これにのみに限定されるものではない)のうちの少なくとも1種類を含む。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、電流を印加しながら、酵素を微生物バイオマスに接触させることを含む。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、該微生物バイオマスを酵素的に加水分解する前および/または加水分解中に、該微生物バイオマスを電流で処理することを含む。好適な条件下および好適な方法で電流を微生物バイオマスに流すのであってもよい。様々な例示的実施態様において、約2V~約120Vで約1~約60分間、電流を流す。
【0148】
本明細書中に記載の方法の様々な例示的な実施態様は、微生物バイオマスを酵素的に加水分解する前に行う前処理をさらに含むものであってもよい。各種の前処理法を利用することによって、酵素を用いる微生物蛋白質加水分解の効率を改善することができる。特定の実施態様においては、酵素的加水分解を実施することは、酵素的加水分解前に微生物バイオマスを酸または塩基で処理することを含む。様々な例示的実施態様においては、酸(塩酸、硫酸、リン酸、または炭酸(すなわち、CO)などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を用いて、バイオマスを含む懸濁液のpHを約3~約5の範囲に調整することによって、酸前処理を実施する。特定の実施態様においては、約100℃~約130℃の温度で約0.25時間~約10時間、酸による前処理を実施してもよい。様々な例示的実施態様においては、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、酸化カルシウム、またはアンモニアなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を用いて、バイオマス懸濁液のpHを約9~約14、例えば、約10~約13(約11~約13を含む)に調整することによって、塩基による前処理を実施する。特定の実施態様においては、約100℃~約130℃の温度で約0.25時間~約10時間、塩基による前処理を実施してもよい。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、酵素的加水分解前および/または酵素的加水分解中に、微生物バイオマスを超音波振動で処理することを含む。特定の実施態様においては、酵素的加水分解は、酵素的加水分解前に、微生物バイオマスを超臨界水および/または超臨界二酸化炭素で処理することを含む。
【0149】
特定の実施態様は、「ワンポット」工程によって加水分解物または有機酵素抽出物を取得する方法を含む。本発明の文脈において、「ワンポット」という表現は、中間体分離工程を用いずに処理が実施されることを意味する。特定の実施態様においては、微生物バイオマスを含む細胞ブロスの物理的処理では、相分離を用いず、酵素的加水分解前に、細胞ブロスを過圧および高温条件下で濃縮塩基によって処理する。特定の実施態様においては、バイオマス懸濁液は1種類の「ワンポット」工程を経るのであるが、この場合、特定の非限定的実施態様においては、以下の工程を含む:
(a)濃縮塩基を微生物細胞懸濁液に添加して、そのpHを調製する工程;
(b)工程(a)で得られた混合物を過圧および高温に供する工程;
および
(c)工程(b)で得られた混合物を酵素的加水分解に供して、有機酵素抽出物を取得する工程。特定の実施態様においては、工程(a)のアルカリ処理では、水酸化アンモニウム、アンモニア、水酸化カリウムおよび/または水酸化カルシウムの1種類以上から選択される塩基などの好適な塩基を用いる。特定の非限定的実施態様においては、水酸化アンモニウムは重量で約28%を用いるが、別の実施態様では、約10Mの水酸化カリウムを用いる。
【0150】
特定の実施態様においては、該ブロスのアルカリ処理後に、その混合物の物理的処理を過圧および/または高温で行う。特定の非限定的一実施態様では、温度を上昇させ、工程(b)において約102kPa~約141kPaの圧力を用いる。特定のいくつかの実施態様では、物理的処理に、約90℃~約140℃の温度を用いる。特定のいくつかの実施態様では、工程(b)において、約90℃~約140℃の温度で、約102kPa~約141kPaの圧力を用いる。この物理的処理は、例えば、オートクレーブなど、当業者によって選択される任意の好適なデバイス中で実施する。
【0151】
特定の実施態様においては、該物理的処理の後に酵素処理を行う。特定の実施態様においては、該物理的処理後であって、かつ該酵素処理の前に、処理を行う混合物のpHが、利用する酵素にとって最適pH値となるように、濃縮塩基および/または濃縮酸を添加する。特定の実施態様においては、工程(c)の酵素的加水分解に用いる1種類以上の酵素は、細菌、植物、真菌、古細菌、または動物由来の蛋白質分解酵素である。特定の一実施態様においては、工程(c)の酵素的加水分解は約40℃~約70℃の温度、および約pH8~約11で、約2時間~約48時間、実施する。特定の実施態様においては、「ワンポット」工程によって、同様の多ポット工程に比べて、工程が簡素化され、および/または経費が減り、および/または汚染が減る。
【0152】
酵素を利用する場合であっても、利用しない場合であっても、微生物バイオマスの加水分解は、酸加水分解またはアルカリ加水分解を充分な熱と圧力の条件と組み合わせて用いることによって達成され得る。特定の非限定的実施態様においては、微生物バイオマスを加水分解することは、酸加水分解を実施することを含む。そのような特定の実施態様においては、酸加水分解は、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、およびクエン酸から選択される少なくとも1種類の物質などの酸で、微生物細胞を含む組成物のpHを調整することを含む。様々な例示的実施態様においては、微生物バイオマスクリームを約0.5~約5のpHに調整することによって、酸加水分解を実施する。そのような特定の実施態様においては、酸加水分解は、微生物バイオマスを含む懸濁液のpHを調整し、該pH調整した懸濁液を好適な期間、例えば、約10分間~約48時間、好適な温度、例えば、約30℃~約200℃の温度で加熱することを含む。そのような特定の実施態様においては、酸加水分解は、微生物バイオマスを含む懸濁液のpHを調整し、該pH調整した懸濁液を圧力下で加熱することを含む。特定の非限定的実施態様においては、微生物細胞を加水分解することは、アルカリ加水分解を実施することを含む。そのような特定の実施態様においては、アルカリ加水分解を実施することは、微生物バイオマスを含む懸濁液をpH約8~約14に調整することを含む。そのような特定の実施態様においては、アルカリ加水分解は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、アンモニア、およびリン酸三カリウムから選択される塩基などの、少なくとも1種類の塩基で、微生物バイオマスを含む組成物のpHを調整することを含む。そのような特定の実施態様においては、アルカリ加水分解は、微生物バイオマスを含む組成物のpHを調整し、該pH調整した組成物を約30℃~約200℃の温度で、約10分間~約48時間、加熱することを含む。そのような特定の実施態様においては、アルカリ加水分解は、微生物バイオマスを含む組成物のpHを調整し、該pH調整した組成物を圧力下で加熱することを含む。いくつかの実施態様においては、該アルカリ加水分解または酸加水分解は、圧力を上昇させた状態で実施する。特定の実施態様においては、該アルカリ加水分解または酸加水分解の経過中に、微生物バイオマスを含む懸濁液を約5~約40psiの圧力下に置く。本明細書中に記載のような酸加水分解技術またはアルカリ加水分解技術によって一般的に、溶解性物質および細胞壁残骸を含む加水分解組成物が得られる。特定の実施態様においては、該細胞壁残骸は、遠心分離などの固体/液体分離によって蛋白質加水分解物から分離することができる。
【0153】
特定の非限定的実施態様においては、微生物バイオマスを加水分解することは、酸または塩基の添加を含む。特定の実施態様においては、該酸または塩基はそれぞれ、強酸または強塩基である。特定の実施態様においては、該酸は、硫酸、リン酸、塩酸、および/または炭酸のうちの1種類以上を含む。特定の実施態様においては、該塩基は、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、リン酸カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および/または水酸化ナトリウムのうちの1種類以上を含む。酸加水分解または塩基加水分解は部位特異的ではなく、したがって一般的に得られるペプチドはより均一であり、低分子量(MW)のペプチドおよび/または遊離アミノ酸がより高レベルとなる。特定の実施態様においては、酸加水分解または塩基加水分解を用いて、より均一度の高いペプチドサイズ分布および/またはより高いレベルの低分子量ペプチドを得る。処理時間および/または用いる条件(例えば、pH、温度(T)、圧力(P))の強度が充分であれば、酸加水分解または塩基加水分解によって、全ての遊離アミノ酸または本質的に全ての遊離アミノ酸(例えば、カザミノ酸)に完全に分離することができる。特定の実施態様においては、酸加水分解および/または塩基加水分解によって、原料蛋白質は大部分が、または完全に遊離アミノ酸に変換される。酸または塩基で全てが遊離アミノ酸に加水分解された蛋白質は、典型的にはNaClなどの塩を最大で40%含み得る。特定の実施態様においては、大部分が、または完全に塩不含である遊離アミノ酸組成物(例えば、NaCl含有量が約2%未満である遊離アミノ酸組成物)が生産される。そのような特定の実施態様においては、その総塩含有量は、20%未満、約10%未満、約5%未満、または約2%未満であり得る。酸加水分解においては、特定のアミノ酸(例えば、システイン(Cys)、トリプトファン(Trp))が破壊され得る。特定の実施態様においては、システインおよび/またはトリプトファンなどの不安定アミノ酸を保護するために、酵素消化物および/または膵液消化物を利用する。
【0154】
特定の実施態様においては、温度の調節および/または浸透圧変化を用いることによって、細胞自己融解が起こり、それによって細胞溶解物を生じる。特定の実施態様においては、酸、塩基および/または加熱のうちの1種類以上を用いて、自己融解を惹起させてもよい。特定の実施態様においては、細胞自己融解後に、および/または細胞自己融解に伴って、内在性酵素による蛋白質消化が起こり、その結果、加水分解蛋白質を有する細胞溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはオリゴペプチドおよび/または遊離アミノ酸が生じる。
【0155】
特定の実施態様において、出発バイオマス(例えば、化学独立栄養的バイオマス)または溶解物は、MW≧10,000Daの蛋白質を含む。そのような特定の実施態様においては、本明細書に記載の1種類以上の蛋白質加水分解工程の産物は、MW≧10,000Daの蛋白質またはペプチドをほとんど生じないか、または全く生じない。本発明の特定の実施態様においては、本明細書中に記載の1種類以上の蛋白質加水分解工程によって生成した蛋白質加水分解産物中のペプチドおよびアミノ酸の平均MWの範囲は、以下である:
約9,000~約10,000Da、または約8,000~約9,000Da、または約7,000~約8,000Da、または約6,000~約7,000Da、または約5,000~約6,000Da、または約4,000~約5,000Da、または約3,000~約4,000Da、または約2,000~約3,000Da、または約1,000~約2,000Da、または約1,000Da未満。特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物(PH)中のペプチドおよびアミノ酸の平均MWは、約700Daである。
【0156】
特定の実施態様においては、所望の範囲のペプチド画分、および遊離アミノ酸に対するペプチドの所望の比率、および所望の平均MWを有するようにPHを設計する目的で、を各種加水分解剤用いる。低分子量ペプチドを含む加水分解物は、乳業用乳酸菌(LAB)の増殖を刺激することが知られている。特定の実施態様においては、低分子量ペプチドを含むPHを生産する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される低分子量ペプチドを含むPHを、他の培養物(LABを含む培養物などが挙げられるがこれのみに限定されるものではない)に与える。特定の当該実施態様においては、該LAB培養物は、1種類以上のL.lactis株を含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産されるPHは、以下の種類の蛋白質加水分解物うちの1種類以上の蛋白質加水分解物と比較して、低分子ペプチド(3~7アミノ酸残基)および遊離の必須アミノ酸の含量が多い:
カゼインのパパイン消化物;大豆ペプトン;および/または乳清。
【0157】
特定の実施態様においては、初期増殖を支援するオリゴペプチド、および細胞膜を通過する輸送が可能であり、自由エネルギー(ATP)の最小支出でバイオマス合成に利用し得るジペプチドおよびトリペプチドおよび必須アミノ酸の組み合わせを含むように、PHおよび/または窒素源を設計する。特定の実施態様においては、アミノ酸、ジペプチドおよびトリペプチドを別の細胞および/または生物へ取り込ませる際のATP要求性が最小となるように、アミノ酸、ジペプチドおよびトリペプチドの組成物を設計する。
【0158】
酵素加水分解および酸加水分解においては、特定のアミノ酸、例えば、カゼイン加水分解物中のシステイン(Cys)、および酸消化カゼインペプトン中のトリプトファン(Trp)が破壊されることが知られている。特定の実施態様においては、感受性アミノ酸(Cysおよび/またはTrpなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を保護するために、加水分解剤および加水分解処理の選択を行う。特定の実施態様においては、Trpを保護するために、蛋白質の膵液消化を行う。
【0159】
PHおよび培地を設計する際に、考慮に入れなければならない複数の酵素特異性が存在する。乳酸菌のPrtB/PrtH蛋白質分解酵素の生合成は、培地のペプチドプールによって制御され、ペプチドに富んだ培地では抑制されることが報告されている(Kenny, O., FitzGerald, R. J., O’Cuinn, G., Beresford, T., & Jordan, K. (2003) Growth phase and growth medium effects on the peptidase activities of Lactobacillus helveticus. International Dairy Journal. https://doi.org/10.1016/S0958-6946(03)00073-6)。同様に、乳酸球菌のpepXおよびpepNは、増殖培地のペプチド含有量によって制御されることが報告されている。他方、Lactobacillus helveticus CRL1062のpepNアミノペプチダーゼ活性およびLactobacillus bulgaricusのpepX、pepIおよびpepNの活性は増殖培地のペプチド含有量に依存しないことが報告されている(Morel, F., Gilbert, C., Geourjon, C., Frot-Coutaz, J., Portalier, R., & Atlan, D. (1999) The prolyl aminopeptidase from Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus belongs to the α/β hydrolase fold family. Biochimica et Biophysica Acta - Protein Structure and Molecular Enzymology. https://doi.org/1 0.1016/S0167-4838(98)00264-7)。L.helveticusでは、アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、トリペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼ活性などについての酵素は株および種に依存することが報告されている。したがって、乳酸菌株をチーズスターター培養または付加培養として利用する場合には、細胞外および細胞内の蛋白質分解システムなどの重要な代謝経路を誘導および維持する培地成分を用いるべきである。これら微生物の特質によって、予想される時間内での乳汁酸性化および/またはチーズ熟成中の風味発生に必要な酵素放出が可能になる。
【0160】
ペプチドに富む培地が細胞外および細胞内の蛋白質分解システムなどの重要な代謝経路を抑制する特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で(例えば、化学独立栄養的に)産生される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または完全蛋白質(すなわち、非加水分解蛋白質)を培地成分として用いる。そのような特定の実施態様においては、上記のような培地をスターター培養および/または付加培養の増殖に用いるのであってもよい。スターター培養および付加培養を伴う場合とは対照的に、プロバイオティクス株(例えば、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus reuteri)の生産における最も重要なことは高収量と生細胞数であり、それによって培養物が凍結乾燥および室温での長期保存にも耐えて生存することが可能となるのである。特定の実施態様においては、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子の抽出物などの栄養素、および/または上記成分の1種類以上を含む処方物を選択するが、ここで該栄養素を供給する培養物に関する以下の特性のうちの1種類以上を最大化するように選択する:
収量;生細胞数;凍結乾燥における細胞の生存;および/または室温における保存可能期間。そのような特定の実施態様においては、該培養物はプロバイオティクス株(L.acidophilus、L.johnsonii、および/またはL.reuteriなどのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含む。
【0161】
特定の実施態様においては、複数種/株で構成される、規定されてはいないスターター培養物または規定されたスターター培養物を調製する。特定の実施態様において、蛋白質加水分解物および/またはその他の栄養素、および同上の複合培地への処方は、継代培養および発酵プロセスを通じて、再現性の高い性能を維持する、および/または株/種間の適正および/または所望の比を維持するように設計する。これを達成するために、培地処方中の様々な因子を最適化する(発酵増殖培地中の炭素源および窒素源を正しいバランスに調整すること、などが挙げられるが、これにのみに限定されるものではない)。
【0162】
いくつかの実施態様においては、加水分解したバイオマスを、清澄分離、濃縮、乾燥、低温殺菌、および/または分離などの1種類以上の加水分解後プロセスに供してもよい。特定の実施態様においては、本明細書中に記載の方法は、濃縮加水分解物を得るために、加水分解後に加水分解物を濃縮する1種類以上のさらなる工程を含む。特定の実施態様において、濃縮加水分解物は乾燥物重量で少なくとも40%であるが、他の実施態様においては、乾燥物重量で少なくとも50%であり、また、その他の実施態様においては、乾燥物重量で約50%~約55%以上である。当該技術分野で公知の従来法により(例えば、恒温槽を備えたロータリーエバポレーターを用いて加熱することにより、または逆浸透により、あるいはその他の好適なデバイスによって)、この濃縮を達成してもよい。いくつかの実施態様においては、該加水分解バイオマスを凍結乾燥して、大部分の水分、または実質的に全水分を除去する。
【0163】
特定の実施態様においては、例えば、非蛋白質性成分を除去するために、該溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチドおよび/またはアミノ酸組成物を、限外濾過によって、および/または化学的手段(アセトン沈殿などが挙げられる、これにのみに限定されるものではない)によってさらに精製する。特定の実施態様においては、該溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチドおよび/またはアミノ酸組成物をサイズ排除クロマトグラフィーによって分画する。特定の実施態様においては、そのような分画によって得られた画分を、別の産物および/または副産物として利用する。特定の実施態様においては、該溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチドおよび/またはアミノ酸組成物を最終分画に供する。そのような特定の実施態様においては、最も活性のある単一ペプチドまたは複数ペプチドを回収して精製する。特定の実施態様においては、例えば、均一ペプチドを取得するために、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチドおよび/またはアミノ酸組成物に対して高性能濾過法を利用する。特定の実施態様においては、該均一ペプチドの配列決定を行う。
【0164】
別の特定の一実施態様において、該方法は、蛋白質加水分解後に、さらなる工程を含むが、ここで、加水分解後に得られた蛋白質加水分解物を分離に供して:
(i)溶解性加水分解物画分、
および
(ii)固相の、不溶性である加水分解物画分、
を取得する。本分離は、好適な固体/液体分離法(例えば、他の好適な産業設備を用いた濾過または遠心分離によって、など)で実施することができる。
【0165】
特定の非限定的実施態様においては、溶解物および/または加水分解物を、固体/液体分離の単一工程または複数工程(遠心分離;および/または濾過のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に供する。特定の非限定的実施態様においては、不溶性細胞膜成分を該可溶性画分から分離する。特定の実施態様においては、該溶解性および/または不溶性画分を乾燥法(噴霧乾燥および/または凍結乾燥が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に供する。特定の実施態様においては、該可溶性画分を細胞培養用途に用いる。特定の実施態様においては、該不溶性画分を植物、動物、真菌、またはその他の生物の栄養用途に用いる。
【0166】
特定の実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、蛋白質、ペプチド、およびアミノ酸を含むことに加えて、ビタミン;脂質類;炭水化物;核酸;ミネラル類;および/またはその他の微量栄養素のうちの1種類以上を含む。
【0167】
本明細書に記載の加水分解法の様々な実施態様では、蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を異なる純度で生産する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、以下のグレードのうちの1種類以上である:技術グレード;食物グレード;および/または非食物グレード。特定の実施態様においては、スターター培養物は食物グレードの原料のみを用いて生産される。特定の実施態様においては、LAB培養物および/またはプロバイオティクス培養物および/または単一細胞蛋白質および/または動物細胞培養物(哺乳動物細胞培養物などが挙げられるが、これにのみに限定されるものではない)および/またはその他の栄養素(1種類以上のビタミンが挙げられるが、これにのみに限定されるものではない)は、食物グレードの原料のみを用いて産生される。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を、肉および/または大豆および/または小麦および/または乳蛋白質から生産される市販の蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物の代替物として利用する。
【0168】
いくつかの実施態様においては、1種類以上の異なる微生物または微生物共培養物または微生物コンソーシアムに由来する1つ以上のバッチのバイオマスを、複数の加水分解プロトコルを用いて処理し、異なる組成を有する加水分解物のライブラリーを作成してもよい。いくつかの実施態様においては、1種類以上の異なる生物;1種類以上の異なる加水分解剤;1種類以上の異なるプロセスパラメータセット;1種類以上の異なる加水分解度;および1種類以上の異なる加水分解後処理および/または精製工程を用いてライブラリーを作成する。加水分解物ライブラリーに含まれる特定の加水分解組成物は、特定の細胞種および/または細胞増殖段階(動物細胞種および/または動物細胞の増殖段階などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の培養に好適なものであってもよい。
【0169】
いくつかの実施態様においては、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)から取得したバイオマスは、培養物を処理し該微生物が増殖中に蓄積した有機ポリマーを抽出してもよい。いくつかの実施態様においては、本明細書中に記載のような微生物はH/COおよび/または合成ガスで増殖させることができ、該微生物はポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、例えば、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)および/またはポリヒドロキシ吉草酸(PHV)を重量で細胞バイオマスの約50%以上に蓄積し得る。いくつかの実施態様においては、該微生物はアセチルCoA代謝中間産物経由の高炭素流誘導能を元々有しており、これによって、PHAおよび/またはPHBおよび/またはPHVの合成、ならびにアミノ酸を含む複数の他の合成経路と共に、脂肪酸生合成が可能となる。いくつかの実施態様においては、これらの特質を示す微生物は、Cupriavidus necator(例えば、Cupriavidus necator DSM531またはDSM541)および/またはCupriavidus metallidurans、例えば、Cupriavidus metallidurans DSM2839)である。
【0170】
特定の実施態様において、化学独立栄養性微生物から取得したバイオマスの処理は、不溶性加水分解物画分からPHAおよび/またはPHBおよび/またはPHVを抽出することを含む。その他の実施態様においては、化学独立栄養性微生物から取得したバイオマスの処理は、溶解性加水分解物画分からPHAまたはPHBまたはPHVに富む固形物を回収することを含む。微生物バイオマスの処理に関する上記の考察のように、PHAまたはPHBまたはPHVを抽出する好適な方法を用いて、PHAまたはPHBまたはPHVを抽出してもよい。
【0171】
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載のような1種類以上の溶解物および/または加水分解物および/またはアミノ酸組成物を、他の因子および/またはペプチドと組み合わせて、培地を栄養学的に強化し、および/またはグルタミンの安定性を高め、および/または生細胞密度を高める。多くの異なる細胞種にとって、低分子オリゴペプチド、低分子量物質、および遊離アミノ酸は、培地の栄養価および/またはそのような培地で増殖する培養物の生産性に好ましい寄与をすることが報告されている。特定の実施態様においては、本明細書中に記載のように生産されるオリゴペプチド、低分子量物質、および遊離アミノ酸は、培地の栄養価に寄与し、および/またはそのような培地で増殖する培養物の生産性を増強する。特定の実施態様においては、該オリゴペプチド、低分子量物質、および/または遊離アミノ酸は、培地に添加してもよい。特定の実施態様においては、該オリゴペプチド、低分子量物質、および/または遊離アミノ酸は、本明細書中に記載の1種類以上の微生物によって培地中に分泌および/または放出されるのであってもよい。いくつかの実施態様においては、該微生物は、Cupriavidus necator(例えば、Cupriavidus necator DSM531またはDSM541)および/またはCupriavidus metallidurans(例えば、Cupriavidus metallidurans DSM2839)を含む。一実施態様においては、該微生物は、Cupriavidus necator DSM541を含む。
【0172】
特定の実施態様において、本明細書に記載の方法によって生産されるペプチドは、細胞培養物に保護効果をもたらすことによって、無機イオンの毒性レベルを低下させる。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、以下のもののうちの1種類以上の供給源である:
ビタミン;脂肪酸(オレイン酸、アラキドン酸、および/またはリノール酸が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);リン脂質類;および/またはステロール類。
【0173】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、それを添加した細胞培養物または生物の細胞機能および生理に影響を与える。
【0174】
微生物
いくつかの実施態様においては、本開示の微生物は化学独立栄養性微生物である。いくつかの実施態様においては、本開示の微生物は混合栄養増殖が可能であり、および/または従属栄養性微生物である。いくつかの実施態様においては、本開示の微生物は光合成微生物である。いくつかの実施態様においては、本開示の微生物は酸水素株または水素酸化株であり、すなわち、呼吸において、細胞内エネルギー担体(アデノシン-5’-三リン酸(ATP)など)の生成に関して水素を電子供与体として、および酸素を電子受容体として利用することが可能な微生物である。水素酸化微生物は一般的に、NAD(および/または他の細胞内還元同等物)の還元に利用されるH由来の供与電子の一部、および好気的呼吸に利用されるHに由来する電子の一部と共に、ヒドロゲナーゼによって分子状水素を利用する。水素酸化微生物は一般的に、カルヴィン回路または逆クエン酸サイクルなどの経路(これらのみに限定されるものではない)によって、化学独立栄養的にCOを固定化する。
【0175】
いくつかの実施態様において、該微生物、または微生物を含む組成物は、以下の水素酸化微生物のうちの1種類以上を含む:
Aquifex pyrophilus、Aquifex aeolicus、またはその他のAquifexの菌種; Cupriavidus necatorまたはCupriavidus metalliduransまたはその他のCupriavidusの菌種;Corynebacterium autotrophicumまたはその他のCorynebacteriumの菌種;Gordonia desulfuricans、Gordonia polyisoprenivorans、Gordonia rubripertincta、Gordonia hydrophobica、Gordonia westfalica、またはその他のGordoniaの菌種;Nocardia autotrophica、Nocardia opaca、またはその他のNocardiaの菌種;紫非硫黄光合成細菌(Rhodobacter sphaeroides、Rhodopseudomonas palustris、Rhodopseudomonas capsulata、Rhodopseudomonas viridis、Rhodopseudomonas sulfoviridis、Rhodopseudomonas blastica、Rhodopseudomonas spheroides、Rhodopseudomonas acidophila、またはその他のRhodopseudomonasの菌種が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);Rhodobacterの菌種;Rhodospirillum rubrum、またはその他のRhodospirillumの菌種;Rhodococcus opacusまたはその他のRhodococcusの菌種;Rhizobium japonicumまたはその他のRhizobiumの菌種;Thiocapsa roseopersicinaまたはその他のThiocapsaの菌種;Pseudomonas facilis、Pseudomonas flava、Pseudomonas putida、Pseudomonas hydrogenovora、Pseudomonas hydrogenothermophila、Pseudomonas palleronii、Pseudomonas pseudoflava、Pseudomonas saccharophila、Pseudomonas thermophile、またはその他のPseudomonasの菌種;Hydrogenomonas pantotropha、Hydrogenomonas eutropha、Hydrogenomonas facilis、またはその他のHydrogenomonasの菌種;Hydrogenobacter thermophilus、Hydrogenobacter halophilus、Hydrogenobacter hydrogenophilus、またはその他のHydrogenobacterの菌種;Hydrogenophilus islandicusまたはその他のHydrogenophilusの菌種;Hydrogenovibrio marinusまたはその他のHydrogenovibrioの菌種;Hydrogenothermus marinusまたはその他のHydrogenothermusの菌種;Helicobacter pyloriまたはその他のHelicobacterの菌種;Xanthobacter autotrophicus、Xanthobacter flavus、またはその他のXanthobacterの菌種;Hydrogenophaga flava、Hydrogenophaga palleronii、Hydrogenophaga pseudoflava、またはその他のHydrogenophagaの菌種;Bradyrhizobium japonicumまたはその他のBradyrhizobiumの菌種;Ralstonia eutrophaまたはその他のRalstoniaの菌種;Alcaligenes eutrophus、Alcaligenes facilis、Alcaligenes hydrogenophilus、Alcaligenes latus、Alcaligenes paradoxus、Alcaligenes ruhlandii、またはその他のAlcaligenesの菌種;Amycolataの菌種;Aquaspirillum autotrophicumまたはその他のAquaspirillumの菌種;Arthrobacter株11/X、Arthrobacter methylotrophus、またはその他のArthrobacterの菌種;Azospirillum lipoferumまたはその他のAzospirillumの菌種;Variovorax paradoxusまたはその他のVariovoraxの菌種;Acidovorax facilis、またはその他のAcidovoraxの菌種;Bacillus schlegelii、Bacillus tusciae、その他のBacillusの菌種;Calderobactenum hydrogenophilumまたはその他のCalderobactenumの菌種;Derxia gummosaまたはその他のDerxiaの菌種;Flavobacterium autothermophilumまたはその他のFlavobacteriumの菌種;Microcyclus aquaticusまたはその他のMicrocyclusの菌種;Mycobacterium gordoniaeまたはその他のMycobacteriumの菌種;Paracoccus denitrificansまたはその他のParacoccusの菌種;Persephonella marina、Persephonella guaymasensis、またはその他のPersephonellaの菌種;Renobacter vacuolatumまたはその他のRenobacterの菌種;Seliberia carboxydohydrogenaまたはその他のSeliberiaの菌種、Streptomycetes coelicoflavus、Streptomycetes griseus、Streptomycetes xanthochromogenes、Streptomycetes thermocarboxydus、およびその他のStreptomycetesの菌種;Thermocrinis ruberまたはその他のThermocrinisの菌種;Wautersiaの菌種;藍色細菌(Anabaena oscillarioides、Anabaena spiroides、Anabaena cylindrica、またはその他のAnabaenaの菌種が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);およびArthrospira platensis、Arthrospira maxima、またはその他のArthrospiraの菌種;緑藻類(Scenedesmus obliquusまたはその他のScenedesmusの菌種が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);Chlamydomonas reinhardiiまたはその他のChlamydomonasの菌種;Ankistrodesmusの菌種;およびRhaphidium polymorphiumまたはその他のRhaphidiumの菌種;ならびに酸水素微生物を含む微生物のコンソーシアム。
【0176】
いくつかの実施態様においては、該微生物または該微生物を含む組成物は、以下のもののうちの1種類以上を含む偏性および/または通性の化学独立栄養性微生物を含む:
Acetoanaerobiumの菌種;Acetobacteriumの菌種;Acetogeniumの菌種;Achromobacterの菌種;Acidianusの菌種;Acinetobacterの菌種;Actinomaduraの菌種;Aeromonasの菌種;Alcaligenesの菌種;Alcaliqenesの菌種;Aquaspirillumの菌種;Arcobacterの菌種;Aureobacteriumの菌種;Bacillusの菌種;Beggiatoaの菌種;Butyribacteriumの菌種;Carboxydothermusの菌種;Clostridiumの菌種;Comamonasの菌種;Dehalobacterの菌種;Dehalococcoideの菌種;Dehalospirillumの菌種;Desulfobacteriumの菌種;Desulfomonileの菌種;Desulfotomaculumの菌種;Desulfovibrioの菌種;Desulfurosarcinaの菌種;Ectothiorhodospiraの菌種;Enterobacterの菌種;Eubacteriumの菌種;Ferroplasmaの菌種;Halothibacillusの菌種;Hydrogenobacterの菌種;Hydrogenomonasの菌種;Leptospirillumの菌種;Metallosphaeraの菌種;Methanobacteriumの菌種;Methanobrevibacterの菌種;Methanococcusの菌種;Methanococcoidesの菌種;Methanogeniumの菌種;Methanolobusの菌種;Methanomicrobiumの菌種;Methanoplanusの菌種;Methanosarcinaの菌種;Methanospirillumの菌種;Methanothermusの菌種;Methanothrixの菌種;Micrococcusの菌種;Nitrobacterの菌種;Nitrobacteraceaeの菌種;、Nitrococcusの菌種;Nitrosococcusの菌種;Nitrospinaの菌種;Nitrospiraの菌種;Nitrosolobusの菌種;Nitrosomonasの菌種;Nitrosospiraの菌種;Nitrosovibrioの菌種;Nitrospinaの菌種;Oleomonasの菌種;Paracoccusの菌種;Peptostreptococcusの菌種;Planctomycetesの菌種;Pseudomonasの菌種;Ralstoniaの菌種;Rhodobacterの菌種;Rhodococcusの菌種;Rhodocyclusの菌種;Rhodomicrobiumの菌種;Rhodopseudomonasの菌種;Rhodospirillumの菌種;Shewanellaの菌種;Siderococcusの菌種;Streptomycesの菌種;Sulfobacillusの菌種;Sulfolobusの菌種;Thermothrixの菌種;Thiobacillusの菌種;Thiomicrospiraの菌種;Thioplocaの菌種;Thiosphaeraの菌種;Thiothrixの菌種;Thiovulumの菌種;硫黄酸化微生物;水素酸化微生物;鉄酸化微生物;酢酸生成微生物;およびメタン生成微生物;化学独立栄養性生物を含む微生物コンソーシアム;熱水噴出孔、地熱水噴出孔、温泉、冷水湧出帯、地下帯水層、塩水湖、含塩層、採掘坑、酸性鉱山排水、鉱山尾鉱、油井、製油所廃水、石炭層、深部地下;廃水および汚水処理植物;地熱発電所、硫気地帯、および土壌;のうちの少なくとも1つに棲息する化学独立栄養性生物、および好熱性微生物、超好熱微生物、好酸性微生物、好塩性微生物、および好冷性微生物のうちの1種類以上から選択される好極限性微生物。
【0177】
いくつかの実施態様においては、該微生物または該微生物を含む組成物は、メタノトローフおよび/またはメチロトローフを含む。いくつかの実施態様においては、該微生物はMethylococcus属に属する。いくつかの実施態様においては、該微生物はMethylococcus capsulatusである。いくつかの実施態様においては、該微生物はメチロトローフである。いくつかの実施態様においては、該微生物はMethylobacterium属に属する。いくつかの実施態様においては、該微生物は以下の生物種のうちの1種類以上から選択される:
Methylobacterium zatmanii;Methylobacterium extorquens;Methylobacterium chloromethanicum。いくつかの実施態様においては、該微生物が水素酸化化学独立栄養性微生物および/または一酸化炭素資化性生物および/またはメチロトローフおよび/またはメタノトローフである組成物が提供される。
【0178】
複数の異なる微生物が、一酸化炭素を電子供与体および/または炭素源として増殖が可能な微生物(すなわち、一酸化炭素資化性微生物)と特徴付けられている。場合によっては、一酸化炭素資化性微生物はまた、Hを電子供与体として利用することができ、および/または混合栄養的に増殖することができる。場合によっては、該一酸化炭素資化性微生物は、通性化学独立栄養性微生物である(「原核生物の生物学(Biology of the Prokaryotes)」J Lengeler, G. Drews, H. Schlegel編集、John Wiley & Sons(2009年7月10日);本参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。いくつかの実施態様においては、該微生物または該微生物を含む組成物は、以下の一酸化炭素資化性微生物のうちの1種類以上を含む:
Acinetobacterの菌種;Alcaligenes carboxydusまたはその他のAlcaligenesの菌種;Arthrobacterの菌種;Azomonasの菌種;Azotobacterの菌種;Bacillus schlegeliiまたはその他のBacillusの菌種;Hydrogenophaga pseudoflavaまたはその他のHydrogenophagaの菌種;Pseudomonas carboxydohydrogena、Pseudomonas carboxydovorans、Pseudomonas compransoris、Pseudomonas gazotropha、Pseudomonas thermocarboxydovorans、またはその他のPseudomonasの菌種;Rhizobium japonicumまたはその他のRhizobiumの菌種;およびStreptomyces G26、Streptomyces thermoautotrophicus、またはその他のStreptomycesの菌種。特定の実施態様においては、一酸化炭素資化性微生物を用いる。特定の実施態様においては、化学独立栄養的に生育が可能な一酸化炭素資化性微生物を用いる。特定の実施態様においては、呼吸および/または生合成においてHを電子供与体として利用することのできる一酸化炭素資化性微生物を用いる。
【0179】
本開示の微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)は天然株であってもよく、あるいは遺伝子操作したものであってもよい。該微生物は、蛋白質を発現するように遺伝子改変した微生物であってもよく、ここで該蛋白質は、該蛋白質を含む加水分解物を、例えば、培地添加物として培養物中の動物細胞に与えたときに、該細胞にとって高栄養価を有する1種類以上の蛋白質である。いくつかの実施態様においては、化学独立栄養性微生物は、プロテアーゼ開裂部位によって区分された複数のペプチド部分配列を含むポリペプチド配列を発現するように遺伝子改変されていてもよい。そのようなポリペプチド配列は模式的に:HN-X-C-[A-C]-Y-COOHで表されるような配列であってもよく、ここで「HN」および「COOH」は、それぞれポリペプチドのN末端およびC末端を表し;「A」はペプチド部分配列であり;「C」はプロテアーゼ開裂部位であり;「X」および「Y」は存在していても、存在していなくてもよいリンカー配列であり;およびnは1以上の整数であり、例えば、2以上、5以上、10以上、20以上を含む。ペプチド部分配列(A)を、培地に添加した場合に培養における動物細胞の増殖に有益な効果を有するペプチド配列(A’)を含むように設計してもよい。遺伝的に改変した微生物から取得したバイオマスを、開裂部位を切断する適当なプロテアーゼを用いて加水分解する場合には、得られる蛋白質加水分解物が有益ペプチドについて濃縮されたものであってもよい。
【0180】
いくつかの実施態様においては、該微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)は、生合成経路に関与する1種類以上の内在性遺伝子の発現を欠損するように遺伝子改変してもよい。いくつかの実施態様においては、該微生物は、ポリヒドロキシアルカン酸(ポリヒドロキシ酪酸など)の生合成に関与する1種類以上の遺伝子の発現を欠損するように遺伝子改変してもよい。ポリヒドロキシアルカン酸の生合成に関与する好適な遺伝子であって、その発現を欠損させてもよい遺伝子としては、3-ケトチオラーゼ、アセトアセチルCoA還元酵素、および/またはPHB合成酵素をコードする遺伝子が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。いくつかの実施態様においては、該微生物は、ビタミン(ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の生合成に関与する1種類以上の遺伝子の発現を欠損あるいは増強するように遺伝子改変してもよい。いくつかの実施態様においては、ビタミンB12の生合成に関与する遺伝子の発現を欠損または増強させる。1種類以上の遺伝子の発現を、好適な方法によって欠損あるいは増強してもよく、例えば、微生物ゲノム中の該遺伝子の、コード領域または制御領域の全体または一部を欠失または突然変異させることにより欠損させてもよく、または微生物ゲノム内の該遺伝子のコード領域または制御領域を複製することにより増強してもよい。
【0181】
該微生物は、好適な方法を用いて遺伝子操作してもよい。水素酸化微生物の遺伝子操作については、例えば、米国特許第9,879,290B2号に記載がある;本参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0182】
蛋白質加水分解物組成物
本明細書においては、本明細書に記載のような微生物、例えば、化学独立栄養性微生物に由来する蛋白質加水分解物組成物を提供する。該蛋白質加水分解物組成物は、培地の添加物としての用途、例えば、動物細胞培養培地において、例えば、血清全体または血清の一部の代替として好適であり、例えば、その目的は、動物細胞を増殖、発生、および/または分化させるための血清不含または動物成分不含の細胞培養培地を提供する、あるいは動物細胞培養培地の1種類以上の動物由来成分を代替することである。
【0183】
特定の実施態様において、該蛋白質加水分解物組成物は、蛋白質、ペプチドおよび/または遊離アミノ酸が強化された有機的内容物を有する。いくつかの実施態様において、該蛋白質加水分解物の有機的内容物が含むアミノ酸(蛋白質中、ペプチド中において、または遊離アミノ酸として存在する)の量は、有機的内容物重量に対する重量%で、約10%以上であり、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上である(約90%以上であることを含む)。いくつかの実施態様において、該蛋白質加水分解物の有機的内容物が含むアミノ酸(蛋白質中、ペプチド中において、または遊離アミノ酸として存在する)の量は、該有機的内容物の重量に対する重量%で、約10%~約98%であり、例えば、約20%~約98%、約30%~約98%、約40%~約98%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%である(約75%~約95%の範囲であることを含む)。総有機物含有量は、好適な方法を用いて測定してもよい。
【0184】
本開示の蛋白質加水分解物組成物は、ポリペプチドサイズの分布を含むものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該加水分解物組成物におけるポリペプチドの平均サイズは、約25kDa以下であり、例えば、約20kDa以下、約15kDa以下、約10kDa以下、約5kDa以下、約2kDa以下、約1kDa以下である(0.5kDa以下であることを含む)。いくつかの実施態様においては、該加水分解物組成物におけるポリペプチドの平均サイズは、約0.1kDa~約100kDaの範囲であり、例えば、約0.5kDa~約50kDa、約0.1kDa~約10kDa、約0.5kDa~約20kDa、約1kDa~約10kDaの範囲である(約1kDa~約5kDaの範囲であることを含む)。いくつかの実施態様においては、数にしてポリペプチドの約10%以上、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上(約95%以上であることを含む)が、約25kDa以下であり、例えば、約20kDa以下、約15kDa以下、約10kDa以下、約5kDa以下、約2kDa以下、約1kDa以下(約0.5kDa以下であることを含む)であり、例えば、約0.1kDa~約100kDaであり、例えば、約0.5kDa~約50kDa、約0.1kDa~約10kDa、約0.5kDa~約20kDa、約1kDa~約10kDaである(約1kDa~約5kDaであることを含む)。特定の実施態様においては、該ペプチドの平均MWは、約600~約1,100Daの範囲である。
【0185】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、MWが約600~約1,100Daの範囲のペプチドを含む。いくつかの実施態様において、該溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物、またはアミノ酸組成物の分子量範囲は、約0.1kDa~約100kDa、または約0.1kDa~約10kDa、または約1kD~約10kDaである。いくつかの実施態様においては、約10kDaよりも大きい分子量のものはごく一部しか存在しないか、あるいは全く存在しない。
【0186】
いくつかの実施態様においては、該溶解物および/または蛋白質加水分解物は、約1%の遊離アミノ酸、または約5%の遊離アミノ酸、または約30%の遊離アミノ酸、または約40%以上の遊離アミノ酸を含む。
【0187】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、抽出物、ペプチド組成物、および/またはアミノ酸組成物は、以下の特性のうちの1種類以上を有する:
少なくとも約60%の総アミノ酸含有量(すなわち、ペプチドおよび/または蛋白質および/または他の生物化学物質内で重合しているアミノ酸を含む)、または重量で≧約%、または≧約73%、または≧約75%、または約≧80%総アミノ酸;そのうち約35%~約40%、または約30%~約45%、または約20%~約50%が、遊離アミノ酸であり;および約10%~約15%、または約5%~約20%が、ジペプチドおよびトリペプチドであり;および約40%~約45%、または約30%~約50%、または約20%~約60%が、MW約2,000Da~約3,000Daのオリゴペプチドである。
【0188】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される低分子量ペプチドおよび/または低分子量ペプチドを含む本明細書に記載のような蛋白質加水分解物を含む、化学的に規定される培地が提供される。特定の実施態様においては、該低分子量ペプチドはほぼ、または完全にMW≦約1,000Daである。特定の実施態様においては、該低分子量ペプチドおよび/または蛋白質加水分解物を、1種類以上のLAB(Lactobacillus株など、例えば、L.lactis)を含む培養物(これらのみに限定されるものではない)に与える。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、平均MWが約700Daである低分子量ペプチド、平均MWが約700Da以下である低分子量ペプチド、または平均MWが約700Da~約1000Daである低分子量ペプチドを含む。特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物、例えば、本明細書に記載のような低分子量ペプチドを含む蛋白質加水分解物を、LABを含む培養物に与える。
【0189】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、抽出物、ペプチド組成物、および/またはアミノ酸組成物は疎水性ペプチドおよび/または塩基性ペプチド画分のペプチドを含み、それらのペプチドは分子量が、約600Da~約1,100Daの範囲のである。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、抽出物、ペプチド組成物、および/またはアミノ酸組成物は、約600Da~約1,100Daの分子量範囲の、疎水性ペプチドおよび/または塩基性ペプチド画分のペプチドを、乳汁または乳汁由来蛋白質または乳汁蛋白質加水分解物よりも高い割合および/または重量比(%)で含む。特定の実施態様においては、そのような約600Da~約1,100Daの分子量範囲の疎水性および/または塩基性のペプチドを、LAB培養物(Lactobacillus株、例えば、L.lactisを含む培養物が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)に与える。
【0190】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、抽出物、ペプチド組成物、および/またはアミノ酸組成物などの栄養源は、約1,400Da~約3,200DaのMWの酸性ホスホペプチドを、乳汁または乳汁由来蛋白質または乳汁蛋白質加水分解物よりも低い割合および/または低い重量比(%)で含む。特定の実施態様においては、約1,400Da~約3,200DaのMWの酸性ホスホペプチドを比較的低含有量で含む該栄養源を、LAB培養物(Lactobacillus株、例えば、L.lactisを含む培養物が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)に与える。
【0191】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を1種類以上の株に与えるが、ここで該1種類以上の株は、その増殖および/または生産に完全蛋白質(すなわち、非加水分解蛋白質)を利用することができるが、しかしながら全蛋白質に比べて蛋白質加水分解物のほうが可用性が高い株である。そのような特定の実施態様において、該株は1種類以上のLAB(lactobacilliなど)を含む。
【0192】
特定の実施態様においては、培養物にとって、大豆蛋白質加水分解物および/または完全大豆蛋白質よりも、本明細書に記載のような蛋白質加水分解物のほうが、可用性が高い。
【0193】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、約3%(w/v)の濃度で培地に添加する。特定の実施態様においては、約3%(w/v)の濃度で添加する該蛋白質加水分解物の平均ペプチドMWは、約700Da、または約700Da~約1000Daである。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される窒素源(例えば、蛋白質性バイオマス、溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物、および/またはアミノ酸組成物)を約0.5%~約2.5%(w/v)の量で培養物に添加する。
【0194】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、増殖を増強し、および/または細胞培養で生産される1種類以上の産物力価を増加させる。特定の実施態様においては、バイオマスおよび/または乳酸についてのLAB培養物において、増殖および/または力価(g/L)の増加が観察される。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を添加することによって、大豆ペプチド、大豆蛋白質加水分解物、および/または完全大豆蛋白質を添加したときと比べて、産物の増殖および/または力価が高くなる。特定の実施態様においては、本明細書中に記載のような蛋白質加水分解物を含む添加物では、乳酸力価が約50g/L以上となるが、これと比較して、蛋白質加水分解物添加物が非存在の同一の培地で増殖させた同培養物では、乳酸力価が約50g/L未満でしかない。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を添加することによって、蛋白質加水分解物添加物が非存在の同一の培地で増殖させた同培養物と比較して、pH4.50に達するまでのLAB培養物の発酵時間が短縮する。
【0195】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または抽出物は2~10アミノ酸残基のペプチドを含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物は、主に2~10アミノ酸残基から成るペプチドによって構成される、あるいは2~10アミノ酸残基から成るペプチドを主に含む。特定の実施態様においては、精製産物は、主に2~10アミノ酸残基から成るペプチドによって構成される、あるいは2~10アミノ酸残基から成るペプチドを主に含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または抽出物は、ペプチド~ペンタペプチド(2~5アミノ酸残基)を含む。特定の当該実施態様においては、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチドおよび/またはアミノ酸組成物および/または抽出物は、主にペプチド~ペンタペプチドから成るペプチドによって構成される、あるいはペプチド~ペンタペプチドから成るペプチドを主に含む。
【0196】
いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物は、約50以下の重合(DP)度、例えば、約40以下、約30以下、約20以下、約10以下の重合度(約5以下、例えば、約50、40、30、20、10、または5のいずれかから約1までの重合度を含む)を有するペプチドを含む。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物は、約1~約50のDP範囲、例えば、約1~約30、約1~約20のDP範囲(約2~約10のDP範囲を含む)を有するペプチドを含む。
【0197】
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、約10%~約30%のAN/TN比を有する。特定の当該実施態様においては、約10%~約30%のAN/TN比を有する該蛋白質加水分解物は酵素を用いて生産される。いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、約20%~約50%のAN/TN比を有する。特定の実施態様においては、約20%~約50%のAN/TN比を有する該蛋白質加水分解物は、膵液消化物として生産される。いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、約50%~約80%のAN/TN比を有する。特定の当該実施態様においては、約50%~約80%のAN/TN比を有する該蛋白質加水分解物は、酸または塩基を用いて生産される。いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞産物または溶解物および/または蛋白質加水分解物は、約10%未満のAN/TN比を有する。いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、約80%超のAN/TN比を有する。
【0198】
いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物は実質的に完全長蛋白質を含まない。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物は蛋白質およびポリペプチドが枯渇しており、遊離アミノ酸が濃縮されている。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物は実質的に蛋白質およびポリペプチドを含まない。ポリペプチドのサイズ分布は、本明細書に記載のような酵素的、化学的および物理的手段のうちの1種類以上を用いて達成される加水分解度に依存するものであってもよい。
【0199】
いくつかの実施態様において、該蛋白質加水分解物組成物は、細胞の増殖および/または成長に関して有益な効果を発揮し得る特定のアミノ酸配列を含む1種類以上のペプチドについて濃縮されている。特定の実施態様においては、濃縮されている配列は、加水分解物中のポリペプチド総数のうちの約0.001%以上、例えば、約0.01%以上、約0.1%以上、約1%以上(約5%以上であることを含む)に相当するものであってもよい。いくつかの実施態様においては、濃縮されている配列は、加水分解物中のポリペプチド総数のうちの約0.001%~約5%の範囲、例えば、約0.001%~約1%の範囲(約0.01%~約1%の範囲であることを含む)に相当するものであってもよい。
【0200】
いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、約5%~約50%の灰分、例えば、約10%~約40%の灰分(約10%~約35%の灰分を含む)を有する。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、約5%以下の灰分を有する。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、約3%~約20%の総窒素含有量、例えば、約5%~約15%の総窒素含有量(約5%および約15%の総窒素含有量を含む)を有する。
【0201】
特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は1種類以上のビタミンを含む。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12、および/またはそのビタマーを含む。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、ビタミンB12、および/または1種類以上のそのビタマー(例えば、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン)を含む。特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物における揮発性有機物と比較して、ビタミンB12および/またはそのビタマーの濃度は、約2μgビタミンB12および/またはそのビタマー/100g乾燥揮発性有機物~約6.5μg/100g揮発性有機物、または約6.5μg/100g揮発性有機物~約13μg/100g揮発性有機物、または約13μg超/100g揮発性有機物である。いくつかの実施態様においては、該ビタミンB12および/またはそのビタマーは微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する。
【0202】
特定の実施態様においては、リボフラビンおよび/またはビタミンB12(および/またはそのビタマー)などのビタミン類(これらのみに限定されるものではない)は、本明細書に記載のような蛋白質加水分解物および/またはその他の栄養素で増殖する微生物によって生産される。特定の実施態様においては、1種類以上の香味料または香料(バニリンが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)は、本明細書に記載のような蛋白質加水分解物および/またはその他の栄養素で増殖する微生物によって生産される。
【0203】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物は、栄養素;接着成分;および/または増殖因子類似体のうちの1種類以上を、別の細胞培養物に提供する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物は、動物由来アミノ酸または蛋白質加水分解物を含まない培地において用いられる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物は、血清不含培地において用いられる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物は、ヒト、動物、齧歯類、および/または昆虫の細胞培養物に利用されることの多い動物由来のアミノ酸、蛋白質加水分解物、および/または胎仔ウシ血清(fetal calf/bovine serum)の量を減らすため、またはその代替として用いられる。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物、蛋白質加水分解物、および/または遊離アミノ酸組成物を、ITS(インスリン-トランスフェリン-セレン)、例えば約1%のITSと組み合わせて細胞培養物に添加する。
【0204】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるペプチドを、以下のうちの1種類以上として用いる:直接的にアミノ酸源として;間接的に刺激因子(例えば、血清の代替)として;および/または培養細胞のせん断応力に対する保護(例えば、アポトーシス)の目的。
【0205】
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、培養中の増殖細胞にビタミン源を供給する。該溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12、および/またはそのビタマーなどのビタミン源(これらのみに限定されるものではない)であってもよい。本発明の特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、以下のうちの1種類以上のビタミン源であってもよい:ビタミンA;β-カロテン;ルテイン;ゼアキサンチン;チアミン(B);リボフラビン(B);ナイアシン(B);パントテン酸(B);ビタミンB;葉酸(B);ビタミンB12;コリン;ビタミンC;ビタミンD;ビタミンE;および/またはビタミンK;および/またはそのビタマー(ただし、これらのみに限定されるものではない)。該蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、以下のうちの1種類以上のミネラル源であってもよい:カルシウム;鉄;マグネシウム;マンガン;リン;カリウム;ナトリウム;および/または亜鉛(ただし、これらのみに限定されるものではない)。
【0206】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマス産物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分、および/またはそれらのうちの1種類以上を含む処方物は、以下のもののうちの1種類以上を産生する1種類以上の他の生物を増殖させるために利用する:
ビタミン:ビタミンA;β-カロテン;ルテイン;ゼアキサンチン;チアミン(B);リボフラビン(B);ナイアシン(B);パントテン酸(B);ビタミンB;葉酸(B);ビタミンB12;コリン;ビタミンC、ビタミンD;ビタミンE;および/またはビタミンK;および/またはそのビタマー。
【0207】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマス産物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の抽出物は、別の細胞培養物のための、アミノ酸;オリゴペプチドを含むペプチド;脂質類;炭水化物;多糖類;ビタミンおよび/または鉄を含むミネラル類の1種類以上の供給源として利用される。
【0208】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物は水溶性である。
【0209】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物は、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物を添加する細胞培養において、遊離型対重合型の比で、同一または類似の割合および量の各アミノ酸を含む、対応する遊離アミノ酸混合物と比較して、エネルギー効率がより高い代謝を刺激する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物を添加する細胞培養物は、遊離型対重合型の比で、同一または類似の割合および量の各アミノ酸を含む、対応する遊離アミノ酸混合物と比較して、アンモニア産生および/または乳酸産生がより少なく、および/または解糖および/またはグルタミン分解(グルタミノリシス)が起こりにくい。
【0210】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、1種類以上の微生物に由来する。特定の実施態様においては、該由来する微生物は1種類以上の化学独立栄養性微生物を含む。特定の実施態様においては、該由来する微生物は、微生物コンソーシアムであるか、または微生物コンソーシアムを含む。
【0211】
いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、生分解性ポリエステルを含む。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、をPHBおよび/またはPHVなどのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリマーを含む。いくつかの実施態様においては、該PHAポリマーは化学式:[COCHCH(R)O]によって表されるものであってもよく、ここでRはC1~C5アルキルであり、nは50以上の整数である。いくつかの実施態様においては、該PHAオリゴマーは、化学式:[COCHCH(R)O]で表してもよいものとして存在するが、ここでRはC1~C5アルキルであり、nは50以下の整数である。いくつかの実施態様においては、遊離ヒドロキシ酪酸および/またはその他のヒドロキシアルカン酸(例えば、ヒドロキシ吉草酸)単量体が存在する。いくつかの実施態様においては、該PHAポリマーの平均分子量は、約1kDa以上であり、例えば、約10kDa以上、約100kDa以上である(約1,000kDa以上であることを含む)。いくつかの実施態様においては、該PHAポリマーの平均分子量は、約1kDa~約10,000kDaの範囲であり、例えば、約10kDa~約5,000kDaの範囲である(約100kDa~約2,000kDaの範囲であることを含む)。いくつかの実施態様においては、該PHAポリマーの平均分子量は約1kDa以下である。特定の実施態様においては、該PHAポリマーはポリヒドロキシ酪酸(PHB)を含むが、ここでRはCHである。いくつかの実施態様においては、該PHAポリマーはコポリマーである(ブロック共重合体を含む)。いくつかの実施態様においては、該PHA(例えば、PHBおよび/またはPHV)は、1種類以上の微生物(例えば、化学独立栄養性微生物を含む)に由来する。
【0212】
該蛋白質加水分解物組成物は、該生分解性ポリエステル、例えば、PHA(例えば、PHBおよび/またはPHV)を、約1%w/w以上、例えば、約5%w/w以上、約10%w/w以上、約20%w/w以上、約30%w/w以上、約40%w/w以上を含むものであってもよい(約50%w/w以上であることを含む)。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、該生分解性ポリエステル、例えば、PHA(例えば、PHBおよび/またはPHV)を、約1%~約90%w/wの範囲、例えば、約5%~約80%w/w、約10%~約70%w/w、約20%~約60%w/wの範囲で含むものであってもよい(約30%~約50%w/wの範囲であることを含む)。
【0213】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物の製造に用いる容器は適切に消毒されており、同一処理設備を用いて生産される可能性のある動物由来材料からの潜在的交差汚染を排除する目的で利用される処置について検証がなされている。特定の実施態様においては、非動物由来材料を加工するために用いられる設備が動物材料の加工に用いられる設備から分離されている施設で、加水分解処理を実施する。特定の実施態様においては、非動物由来材料を加工するためだけに利用されている施設および/または設備で、加水分解処理を実施する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるバイオマスおよび/または溶解物および/または加水分解物および/またはアミノ酸組成物の、細菌発酵ブロス内の栄養成分または動物由来処理酵素などの動物由来材料に対する2次的な曝露は存在しない。特定の実施態様においては、製造プロセス全体を通して2次的な動物由来材料を含まない。
【0214】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のようなバイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、殺虫剤および/または除草剤および/または殺真菌剤の残留物を全く含まず、以前にいかなる殺虫剤および/または除草剤および/または殺真菌剤にも曝露されたことがない。特定の実施態様においては、本明細書に記載のようなバイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、以前にセファロスポリンなどのいかなる抗生物質(これのみに限定されるものではない)にも曝露されたことがない。
【0215】
本明細書においてはまた細胞培養培地添加物を提供するが、該細胞培養培地添加物としては、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物などの栄養源を含む動物細胞培養培地添加物が挙げられる(ただし、これらのみに限定されるものではない)。特定の実施態様においては、該補充的栄養源は、特定の培地に、蛋白質加水分解物および/またはその他の栄養性化合物および成長因子を補充する。
【0216】
特定の実施態様においては、動物細胞の培養に好適な完全培地を提供するために、該蛋白質加水分解物組成物を、基礎細胞培養培地と組み合わせてもよい。基礎培地は典型的にはアミノ酸、ビタミン、有機塩および/または無機塩、微量要素、緩衝性塩および糖類を含む。基礎培地の例としては、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、DMEM/F12、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、IMDM/F12、IMDM/F12/NCTC 135、MEM(イーグル最小必須培地)、Medium199、RPM-I1640、およびRPMI1640/DMEM/F12が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。基礎培地に本蛋白質加水分解物組成物を加えて調製する完全培地は、付加的成分を必要とすることなく、あるいは動物由来のアミノ酸または蛋白質加水分解物、または動物由来血清などの動物由来成分を必要とすることなく、培養において動物細胞の増殖および/または成長を支援するものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物および1種類以上の付加的成分(成長因子、または植物由来蛋白質加水分解物または酵母由来蛋白質加水分解物などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、該基礎培地に添加してもよい。特定の実施態様においては、アミノ酸;ビタミン;有機塩および/または無機塩;微量要素;緩衝性塩;および/または糖類のうちの1種類以上を含む(これらのみに限定されるものではない)基礎培地において、栄養成分を置換または代替するために、本発明の溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物を用いるのであってもよい。特定の実施態様においては、本溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物を、基礎培地の代わりに、または代替として用いるのであってもよい。
【0217】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で(例えば、COから化学独立栄養的生合成によって)生産された、完全細胞バイオマス産物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分などの栄養素を、他の供給源に由来する他の典型的な培地成分(アミノ酸、ビタミン、有機塩および/または無機塩、微量要素、緩衝性塩および/または糖類が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)と組み合わせて、複合培地を提供するものであってもよい。そのような特定の実施態様においては、該複合培地は、別の細胞培養物を培養する好適な完全培地である。特定の実施態様においては、通常用いられる複合培地(Ellikerブロス(Lactobacilliブロスとしても知られている);トリプトン・グルコース・酵母エキス(TGYE)培地;Lysogenyブロス(LB培地(LB)としても知られている);Seed培地;M9培地;M9CA;複合培地M101;YT培地;MMBL培地;Terrificブロス;Superブロス;酵母エキス-麦芽エキス(YEME)培地が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に補充する目的および/または培地成分を置換する目的で、本明細書に記載の方法で生産された、完全細胞バイオマス産物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分、などの栄養素を用いる。特定の実施態様においては、上記の複合培地のうちの1種類において用いる、トリプトン;カゼインの(酸および/または酵素)加水分解物;ペプトン;カザミノ酸(これらのみに限定されるものではない)のうちの1種類以上などの、動物、乳、または植物由来の蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物を代替する、あるいは補う目的で、および/または酵母エキスおよび/または麦芽エキスの代替として、または補う目的で、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または抽出物を用いる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または抽出物を、複合培地に約5g/L~約25g/Lの範囲の濃度で用いる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または抽出物を、複合培地に約25g/L~約32g/Lの範囲の濃度、または約32g/L~約52g/Lの範囲の濃度、または約52g/L超の濃度で用いる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される栄養素であって、複合培地に含める栄養素の最適濃度(g/L)を決定するために、例えば、バイオマスまたは産物の収量などの、所望の培養計量値を、例えば、最大化するために、表面応答手段(ERONESE,T.V、BOUCHU,A.、PERLOT,P.、PARK,J.W.、PARK,K.N.、WEBER,F.J.、TRAMPER,J.、RINZEMA,A.、D’SOUZA,F.、LALI,A.、他(1999)D.LEVISAUSKAS,V.GALVANAUSKAS,R.SIMUTISおよびA.LUBBERT 37-42. Biotechnology Techniques、13、937-943)を利用する。
【0218】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を、別の培養(LAB株が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)の増殖培地の処方において用いるのであってもよい。特定の実施態様においては、該栄養補正または栄養補助は、別の培養(LAB株が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)の窒素要求性に寄与する、または該窒素要求性を満たすものである。特定の実施態様においては、該処方は炭水化物源(例えば、乳糖)を含むものであってもよい。特定の実施態様においては、例えば、LAB培養によって、該炭水化物が酸(乳酸が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)に変換されて、pHが下がるのであってもよく、それによって産物の保存に役立ち、産物の味と風味に影響してもよい。
【0219】
酵母細胞に由来する濃縮性の可溶成分である酵母エキスは、培養の増殖培地においても、広く用いられている。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される処方物は、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または加水分解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子、ならびに酵母エキスを含むものであってもよい(例えば、酵母エキスと組み合わせて、または培地の酵母エキスの一部の代替として)。その他の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または加水分解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を用いて、処方物中の酵母エキス全体を代替とする。
【0220】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物の基本処方への添加は、約100mg/L~約2.5g/Lの範囲の量である。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物であって、培地に添加する蛋白質加水分解物の濃度は、約0.25~約4g/Lの範囲の濃度、または約4g/L~約25g/L、または約25g/L~約32g/L、または約32g/L~約52g/Lの範囲の濃度、または約52g/L超の濃度である。
【0221】
特定の実施態様においては、乳汁加水分解物および/または肉加水分解物を、本明細書に記載の方法で生産される微生物由来の加水分解物で代替する。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、ウシ胎仔血清などの動物由来血清の量を減らすこと、または動物由来血清を排除することを可能にするので、完全血清不含培地を提供することができる。特定の実施態様においては、乳汁加水分解物および/または肉加水分解物によるそのような代替および/または血清の削減または排除によって、規制当局の承認を得ることが容易になる。特定の実施態様においては、乳汁加水分解物および/または肉加水分解物によるそのような代替および/または血清の削減または排除によって、疑わしい原材料から潜在的外来性物質を除去するプロセスを検証する必要性を予め取り除くのである。
【0222】
蛋白質加水分解は通常比較的安定であり、乾燥状態で保存することができる(例えば、冷蔵温度で)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を乾燥状態および/または冷蔵温度で保存する。
【0223】
従来法のボールミル粉砕法による乾燥培地の生産は、特定の蛋白質加水分解物を含めた場合には、複雑化する可能性もある;その理由は、温度上昇および物理的損傷によって不安定加水分解物成分が分解することもあり得るためである。本明細書に記載するような溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物を利用する特定の実施態様においては、滞留時間、熱変性および機械的剪断(ハンマー・ミリングまたは流動層造粒など)を減らす培地生産プロセスを利用する。
【0224】
利用法
本明細書においてはまた、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物または微生物コンソーシアム)由来の、本明細書に記載するような溶解物および/または蛋白質加水分解物組成物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素を添加した、または含む培養培地において、細胞、例えば、真核細胞(動物細胞など)または原核細胞(乳酸菌(LAB)など)を培養する方法を提供する。特定の実施態様においては、本明細書に記載する方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素は、別の培養にエネルギー源および/または炭素源および/または窒素源を提供する。特定の実施態様においては、本明細書に記載する方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素は、培地中で用いる窒素源(動物または植物に由来する蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸;および/または酵母エキスのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を補う、または該窒素源を代替する。
【0225】
特定の実施態様においては、別の微生物および/または生物の栄養上の必要性(ペプチド;アミノ酸;炭素源;窒素源;ビタミン;ミネラル類;成長因子;および/またはその他の栄養素のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に基づいて、蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子抽出物および/または上記の成分のうちの1種類以上を含む処方を、設計および/または選択する。特定の実施態様においては、該栄養成分および/または栄養処方は、予想発酵時間;細胞収量;細胞生存率;下流の処理;および/または保存可能期間のうちの1種類以上を提供または最適化するように設計および選択される。
【0226】
特定の実施態様においては、加水分解度;ペプチドプロファイル;アミノ窒素(AN)と総窒素(TN)との間の比;遊離アミノ酸レベル;ミネラル含有量;産生コスト;回収の難易度および/または下流の処理;価格対性能比;および/または規制順守のうちの1種類以上に基づいて、蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子抽出物および/または上記の成分のうちの1種類以上を含む処方を、設計および/または選択する。
【0227】
特定の実施態様においては、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子は、アミノ酸;ペプチド;ビタミン;ミネラル類;核酸塩基;および/または他の成長因子のうちの1種類以上を含む(これらのみに限定されるものではない)必須要素を提供することによって、別の生物種/株の栄養要求を満たす。特定の実施態様においては、1種類以上のペプトン、蛋白質加水分解物、酵母エキス、成長因子、および/またはビタミンを、本明細書に記載の方法で生産される1種類上の栄養素で置換または代替する。特定の実施態様においては、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分(脂質類、多糖類、糖類、PHB、PHA、PHV、核酸、ビタミン、および/またはミネラル類のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を用いて、培地成分(単糖類(例えば、グルコース、フルクトース)、二糖類(例えば、乳糖、スクロース、マルトース)、デキストリン類および/またはマルトデキストリン類などの糖類;脱脂粉乳、乳清、および/または乳清蛋白質濃縮物などの蛋白質源;ペプトン、カゼイン加水分解物、乳清蛋白質加水分解物、大豆蛋白質加水分解物、肉蛋白質加水分解物、プリマトン、加水分解した穀物固形物、および/または酵母エキスなどの蛋白質加水分解物または溶解物;酵母エキス、コーンスティープリカーなどのビタミン源およびミネラル源;および/またはTween/オレイン酸、無機塩、消泡剤、および/または緩衝液などの他の培地成分のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を置換する。
【0228】
特定の実施態様においては、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分(脂質類;多糖類;糖類;PHB;PHA;PHV;核酸;ビタミン類、ミネラル類のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、他の培地成分を含む培地処方に含めるが、該他の培地成分としては、単糖類(例えば、グルコース、フルクトース)、二糖類(例えば、乳糖、スクロース、マルトース)、デキストリン類および/またはマルトデキストリン類などの糖類;脱脂粉乳、乳清、および/または乳清蛋白質濃縮物などの蛋白質源;ペプトン、カゼイン加水分解物、乳清蛋白質加水分解物、大豆蛋白質加水分解物、肉蛋白質加水分解物、加水分解した穀物固形物、および/または酵母エキスなどの蛋白質加水分解物または溶解物;酵母エキスおよび/またはコーンスティープリカーなどのビタミン源および/またはミネラル源;および/またはTween/オレイン酸、無機塩、消泡剤、および/または緩衝液などの他の培地成分のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0229】
特定の実施態様においては、1種類以上の化学独立栄養性微生物を1種類以上従属栄養性生物と一緒に共培養するが、ここで該化学独立栄養性微生物はアミノ酸(これのみに限定されるものではない)などの栄養素を培養ブロス中に分泌し、またここで該従属栄養性生物は、アミノ酸(これのみに限定されるものではない)などの栄養素を取り込み、および/または増殖および/または産生に利用する。特定の実施態様において、該化学独立栄養性微生物としては、Cupriavidus微生物(例えば、Cupriavidus necatorおよび/またはCupriavidus metallidurans)が挙げられる。そのような特定の実施態様において、該化学独立栄養性微生物としては、Cupriavidus necator微生物(Cupriavidus necator DSM531および/またはDSM541を含む)、および/またはCupriavidus metallidurans(Cupriavidus metallidurans DSM2839を含む)が挙げられる。特定の実施態様においては、共培養物中の1種類以上の他の生物によって、化学独立栄養性微生物が溶解される、および/または摂取される;および/または化学独立栄養的に合成された蛋白質が加水分解される。
【0230】
本明細書に記載の組成物および方法の特定の局面は、細胞培養物の栄養要求性および細胞培養物の発酵および/または増殖における蛋白質加水分解物および/またはその他の抽出物の利用に関係する。特定の局面は、細胞培養物の発酵および/または増殖に用いる培地に関係する。特定の局面は、乳酸菌(LAB)の増殖およびそのような増殖における培地に関係する。特定の局面は、細胞培養物(LABを含む培養物が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の増殖および生存に対する、特定の蛋白質加水分解物の有益な効果に関係する。
【0231】
特定の実施態様においては、化学的に規定される培地(CDM)に、本明細書に記載の方法で生産される低分子量ペプチド(LMWP)を添加する。特定の実施態様においては、該LMWPは分子量(MW)が3,000Da以下のペプチドを含む。特定の実施態様においては、該LMWPのほとんど、または全てまたは実質的にすべてが、分子量(MW)3,000Da以下である。特定の実施態様においては、別の株(例えば、LMWPが由来する微生物とは異なる微生物株または生物種)を増殖させる目的で、該LMWPを添加したCDMを提供する場合には、CDMのみ(すなわち、LMWP添加無しの場合)でその別の株を増殖させたときと比較して、細胞数は少なくとも1.3倍増加する。特定の実施態様においては、その別の株はLactobacillusの株であり、また特定の非限定的実施態様においては、L.helveticusである。
【0232】
いくつかの実施態様においては、培地中に添加して該蛋白質加水分解物組成物を用いることによって、動物由来蛋白質加水分解物、アミノ酸、または血清などの動物由来成分のいずれかを、またはいずれをも培地に含むことなく、動物細胞を培養することが可能となる。したがって、いくつかの実施態様において、該方法は、本蛋白質加水分解物組成物を添加した血清不含培地で細胞を培養することを含む。例えば、本開示の蛋白質加水分解物を培地に添加することによって、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヤギ血清、またはその他のいずれの動物由来血清も含まない該培地で、該細胞を培養するものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該方法は、血清由来アルブミン、トランスフェリン、インスリン、増殖因子および/またはその他の因子などの動物由来成分を全く含まない培地であるが、該蛋白質加水分解物組成物は含む培地で細胞を培養することを含む。
【0233】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分は、培養における株の経時的な生存率を改善する。特定の実施態様においては、該溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分は、培養中の酸化還元電位の維持を助ける。株の経時的な生存率は、例えば、CFU/g(培養物グラム当たりのコロニー形成単位)について計測することができる。
【0234】
特定の実施態様においては、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子は、地域、季節、または気候に関わりなく、一貫した、再現性のある方法で生産される。特定の実施態様においては、該溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子のバッチ間変動は、同等な動物由来加水分解物または植物由来加水分解物の場合の変動よりも少ない。
【0235】
特定の実施態様においては、スターター培養物;付加培養物;および/または1種類以上のプロバイオティクスのうちの1種類以上を生産するために、本明細書に記載の方法で調製される蛋白質加水分解物を用いる。特定の実施態様においては、工業スターター培養物、例えば、工業的なスターター培養発酵物を増殖させるために、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を用いる。特定の実施態様においては、スターター培養物の生産に用いる発酵培地の処方に、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素を組み入れる。特定の実施態様において、該工業スターター培養物はLABを含む。特定の実施態様においては、該スターター培養物を溶液から回収して、保存、輸送、および/または販売のために濃縮凍結形態または凍結乾燥形態に変換する。特定の実施態様においては、以下に挙げる下流処理工程のうちの1種類以上を、該スターター培養に関して利用する:濃縮;凍結防止剤の添加;凍結;および/または凍結乾燥。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される栄養素で増殖するプロバイオティクス株を、発酵乳のスターター培養の成分として用い、および/または該栄養素を凍結乾燥物質そのままの形態および/またはカプセル化した凍結乾燥物質の形態で調製してもよい栄養補助食品として用いる。「バルクセット(bulk set)」(Redi set) または「ダイレクトバットセット(direct vat set:直接原料に添加する方法)」(DVS)として、市販のスターター培養濃縮物が利用可能な場合もある。「バルクセット」は、中間スターター培養物を調製するために用いるが、次いでこれを、最終産物を調製するための生産タンクに接種する。これらの培養物は、凍結形態(約70mL)または凍結乾燥形態(約5~10gの包装物)で入手可能であり、100~1,000Lの材料に接種するように設計されている。DVS培養物は、最終産物の培養において直接接種物として利用する。DVS培養物は、凍結培養物または凍結乾燥培養物として入手可能であるが、その場合、培養の種類と用途に応じて、凍結培養物、約500gを用いて、2,500~5,000Lの材料へ接種する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるスターター培養物を、バルクセット培養物またはDVS培養物として調製する。
【0236】
特定の実施態様においては、第1のスターター培養物を補う、および/または最終的な発酵製品の価値を高めることに寄与する1種類以上の株の増殖に、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素を利用する。特定の実施態様においては、食物の伝統的発酵物に、本発明の溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を添加する。特定の実施態様においては、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、LAB培養物および/またはプロバイオティクス培養物に、増殖および/または生存のための栄養を提供する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を、乳スターター培養物および/または肉スターター培養物の生産に用いる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物は、LAB生物種の窒素要求性を満たす。特定の実施態様においては、本明細書中に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を、通常スターター培養および/または風味培養および/または付加培養として用いられる細菌種を含む培養物に添加する。特定の実施態様においては、本明細書中に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を、LABおよび/または他のプロバイオティクスを含む培養物(乳酸球菌;乳酸菌;連鎖球菌;ペジオコックス;および/またはビフィズス菌のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に添加する。
【0237】
バイオマスの質に影響を与える重要なパラメーターは、生物の細胞壁の組成と状態であり、それによって下流の処理における細胞の生存率が決まる。細胞壁の堅牢性は生物種依存性であり、またさらには株にも依存し得るものであるが、培地組成、増殖条件、および回収時の細胞の生理的状態によっても影響を受ける。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子は、細胞壁の厚さ;細胞伸長;および/または細胞分裂のうちの1種類以上に影響を与える。
【0238】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を、以下の微生物のうちの1種類以上を含む培養物に添加する:
Lactococcus lactis;Leuconostocの菌種(複数);Streptococcus thermophilus;Lactobacillusの菌種(複数)(L.bulgaricus、L.delbrueckiiの亜種bulgaricus、L.helveticus、L.casei、L.paracasei、L.acidophilus、L.johnsonii、L.reuteri、L.gallinarum、L.gasseri、L.plantarumが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない);Pediococcusの菌種(複数)(Pediococcus pentosaceus、Pediococcus acidilacticiが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない); および/または Bifidobacteriumの菌種(複数)(B.adolescentis、B.bifidum、B.lactis、B.longum、B.infantisが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)。特定の実施態様においては、該微生物は1種類以上の栄養的に選好性の株を含む。特定の実施態様においては、該微生物は1種類以上のプロバイオティクスを含む。
【0239】
特定の実施態様においては、「一般的に安全であると認識される(generally recognized as safe)」(GRAS)、および/または伝統的には(例えば、歴史的には)ヒトの食物および発酵産物の生産に利用されてきた1種類以上の微生物および/または肉眼視可能生物(macroorganism)に、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を与える。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を1種類以上の他の生物に与えるが、該1種類以上の他の生物としては、例えば、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子が由来する微生物とは異なる1種類以上の生物が挙げられ、以下のような生物のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない:
酵母(Candida humilis、Candida milleri、Debaryomyces hansenii、Kazachstania exigua(Saccharomyces exiguous)、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces florentinus、Torulaspora delbrueckii、Trichosporon beigelliなど);
真菌(Aspergillus oryzae、Aspergillus sojae、Aspergillus luchuensis、Fusarium venenatum A3/5、Neurospora intermedia var. oncomensis、Rhizopus oligosporus、Rhizopus oryzaeなど);
細菌(Acetobacter aceti、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus subtilis、Bifidobacterium animalis(lactis)、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Gluconacetobacter xylinus(Komagataeibacter xylinus)、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus brevis、Lactobacillus casei、Lactobacillus delbrueckiiの亜種bulgaricus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus hilgardii(Brevibacterium vermiforme)、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus lactis、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus sanfranciscensis、Lactococcus lactis(Streptococcus lactis;Streptococcus lactisの亜種diacetylactis)、Leuconostocの菌種、Leuconostoc carnosum、Leuconostoc cremoris、Leuconostoc mesenteroides、Pediococcusの菌種、Propionibacterium freudenreichii、Arthrospira(Spirulina) platensis, Streptococcus faecalis、Streptococcus thermophilus、Staphylococcus xylosusなど)。特定の実施態様においては、該生物は、共培養物またはコンソーシアムまたは細菌と酵母との共生培養物に存在する(SCOBY)。特定の実施態様においては、該共培養物、コンソーシアム、またはSCOBYは、1種類以上の化学独立栄養性微生物株を含む。
【0240】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素を、中等温度好性または高温好性の乳培養物に添加する。
【0241】
微生物は広範な発酵産物の製造に利用される。発酵食品における微生物の利用の始まりは、それら微生物についての知識よりもはるか以前に遡る。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素を、以下の食品、飲料、および飼料の品目のうちの1種類以上を生産するために用いる培養物に与える:
発酵乳産物(ヨーグルト、ケフィア、バターミルクが挙げられるがこれらのみに限定されるものではない);サワークリーム;チーズ(クリームチーズ、軟質チーズ、チェダー・チーズ、大陸型チーズ、半硬質チーズ、硬質チーズ、チェダー、スイス、ゴーダ、モツァレラ、エメンタール、パルメザン、ロマーノ、プロヴォローネ、ヤールスベルグ、レアダマ、マースダムが挙げられるがこれらのみに限定されるものではない);発酵肉、ソーセージ(sausage)、ソーセージ(saucisson)、サラミ;サワードウパン;ドーサ;発酵野菜および/または植物材料(野菜の漬け物、ピクルス、ザウアークラウト、キュウリ、キムチ、漬け物、テンペ、醤油、味噌、発酵した豆のペースト、赤オンチョム、納豆、オリーブおよびオリーブ塩水漬け、ココアが挙げられるがこれらのみに限定されるものではない);発酵飲料(紅茶、コンブチャ、ジュン、ジンジャービールが挙げられるがこれらのみに限定されるものではない);栄養酵母;パン;ビール;ワイン;メスカル酒;コロンシュ;テキーラ;シードル;ミリン;苺の木のフルーツジュース(strawberry tree fruits juice);サトウキビ汁;食用酢;栄養補助食品;飲料、粉末、サプリ、およびカプセルを含むプロバイオティクス;テクイラトゥル(tecuitlatl);ダイエ;サイレージ。
【0242】
特定の実施態様においては、溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、LAB微生物が限定的な合成能しか有していない、あるいは合成することのできないアミノ酸および/またはペプチドを提供する。特定の実施態様においては、該アミノ酸は、典型的には乳汁を起源とするアミノ酸またはペプチド、および/または乳汁、動物、または植物に由来する加水分解蛋白質を起源とするアミノ酸またはペプチドの代替となる、あるいはそれを補うものである。
【0243】
利用可能な蛋白質、ペプチド、および/または遊離アミノ酸を、新たに合成する蛋白質(酵素が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)の構成要素として用いるためには、細胞膜を透過させて、これらを細胞内に輸送する必要がある。蛋白質およびペプチドが大きすぎて、細胞の取り込みシステムがこれらを処理できない場合には、これらをさらに加水分解して、より小型のペプチドまたは遊離アミノ酸にしなければならない。一部のLABは細胞外プロテアーゼを合成および分泌することが可能であり、蛋白質をペプチドおよびアミノ酸にまで分解して輸送可能にする。例えば、L.lactisは蛋白質分解システムを有し、このシステムは、細胞外膜に位置する蛋白質分解酵素、3種類のペプチド輸送システム、1セットの細胞内ペプチダーゼ、および9種類の異なるアミノ酸輸送システムを含み、これらは協調的に働いて乳蛋白質を消化し、必須かつ増殖刺激性のペプチドおよびアミノ酸を細胞に供給する(Poolman, B., Juillard, V., Kunji, E.R.S., Hagting, A., & Konings, W. N. (1996) Casein-breakdown by Lactococcus lactis. In Lactic Acid Bacteria (pp.303-326). Springer.;Kunji, E.R.S.(1996) The proteolytic systems of lactic acid bacteria. In Antonie van Leeuwenhoek, International Journal of General and Molecular Microbiology. https://doi.org/1 0.1007/BF00395933; Mierau, I., Venema, G., Kok, J., & Kunji, E. R. S. (1997) Casein and peptide degradation in lactic acid bacteria. Biotechnology and Genetic Engineering Reviews. https://doi.org/1 0.1080/02648725.1997.10647945))。特定の実施態様においては、完全蛋白質または大型のペプチドを含む、本明細書に記載の方法で生産されるバイオマスまたは完全細胞産物、または細胞溶解物、またはその他の組成物を、1種類以上の細胞外プロテアーゼを合成および分泌可能な、および/または蛋白質をペプチドおよび/またはアミノ酸に加水分解可能な1種類以上の蛋白質分解システムを含む微生物に提供する。特定の実施態様においては、該微生物は、乳酸球菌、例えば、L.lactisである。特定の実施態様においては、該ペプチドおよび/またはアミノ酸を、ペプチドおよび/またはアミノ酸の輸送システムを有する微生物または生物に与えるが、この微生物または生物は、該細胞外プロテアーゼおよび/または蛋白質分解システムを提供する微生物と同一の生物であっても、同一の生物でなくてもよい。特定の実施態様においては、1種類以上の細胞外プロテアーゼを合成および分泌が可能であり、および/または1種類以上の蛋白質分解システムを有する微生物であっても、酵素産生に必要となる分の細胞エネルギーの消費を抑え、それによって細胞増殖および/または産物収量を増強する目的であれば、このような微生物に蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を与える。または、最適増殖および/または生産を支援する、微生物の細胞外プロテアーゼおよび/または蛋白質分解システムによる、蛋白質栄養素からの必須アミノ酸の放出が遅すぎる場合であれば、特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または遊離アミノ酸の形態で、これら必須アミノ酸の提供および/または補充を行う。
【0244】
一部のLABは蛋白質分解システムを欠いており、窒素源としてアミノ酸およびアンモニアなどの基本構成要素を含む培地を必要とする。特定の実施態様においては、第1の微生物とそれとは異なる第2の微生物を含む共培養物を提供するが、ここで該第1の微生物は、細胞外プロテアーゼの合成および分泌が可能であり、および/または蛋白質分解システムを有する微生物であり、一方、該第2の微生物は、蛋白質分解システムを欠いており、および/または窒素源としてアミノ酸およびアンモニアなどの基本構成要素を含む培地を必要とする微生物である。特定の実施態様においては、該第1の微生物は、L.lactisなどの乳酸球菌であり、および/または該第2の微生物はLABである。
【0245】
LABは一般的に機能的トリカルボン酸(TCA)サイクルを有しておらず、このことによって、該生物のエネルギー生成経路は比較的低効率となる。Lactococcus lactis、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus helveticus、およびLactobacillus acidophilusなどのホモ発酵生物は、解糖(Embden-Meyerhoff-Parnas-EMP)経路によりエネルギーを生成するが、ここで消費される六炭糖1モル当たり、2モルのATPが生成する。Leuconostocの菌種は、ヘテロ発酵性経路によってエネルギーを生成するが、消費される六炭糖1モル当たり、たった1モルのATPしか生成しない。付加的に、化学浸透圧エネルギープロセス、例えば、乳酸流出によって、ATPの生成が起こることもある。さらに、LABは一般的に、少量のホスホエノールピルビン酸のプールを除けば、グリコーゲン、ポリリン酸、およびポリ-β-ヒドロキシ酪酸などの内在性エネルギー保存化合物を産生しない。例外はBifidobacterium bifidumであり、定常期にグリコーゲンおよびポリリン酸類などの保存化合物を産生する。したがって、LAB培養物の蛋白質同化プロセスおよび細胞増殖を支援するためには、一般的にエネルギー源およびその他の栄養源を培地に供給されなければならない。
【0246】
本明細書中の特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を、LAB培養物に供給することによって、不完全トリカルボン酸(TCA)サイクルを補う。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を、LAB培養に供給することによって、培養中に非効率的なLAB代謝によって作動する蛋白質同化経路において、生体物質(例えば、有機化合物)の合成に消費するエネルギーを温存し、乳糖またはグルコースなどの炭素源、および/またはATPを保存および/またはより効率的に利用することができるようになる。特定の実施態様においては、蛋白質同化経路によって合成される生体物質としては、アミノ酸;ペプチド;脂質類;糖類;多糖類;核酸;ビタミン;および/または補因子のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0247】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子は、微生物培養物(LAB培養物が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)にホスホエノールピルビン酸(PEP)のプールを補充し、および/または該プールのPEP濃度を増加させる。
【0248】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または抽出物は、LAB培養物などの培養物に、以下のうちの1種類以上を提供する:
脂質類、テイコ酸、および/またはペプチドグリカン類などの細胞壁成分;
および/またはプリンおよびピリミジン塩基などのRNAおよび/またはDNA前駆体。特定の実施態様においては、これら添加物の培地への添加は、培養物が生体物質の合成によって消費する糖および/またはATPを維持する。
【0249】
乳酸球菌(Lactococcus)は、多くの硬質チーズおよび半硬質チーズ、ならびに発酵乳およびクリームの生産に利用する乳培養物の主成分であるが、かなり栄養価の高い増殖培地である乳汁に長い間適応してきたため、強力な蛋白質分解活性特性を消失しており、大部分のアミノ酸についての栄養要求性を獲得している(Bringel, F., & Hubert, J. C. (2003) Extent of genetic lesions of the arginine and pyrimidine biosynthetic pathways in Lactobacillus plantarum, L. paraplantarum, L. pentosus, and L. casei: Prevalence of CO2-dependent auxotrophs and characterization of deficient arg genes in L. plantarum. Applied and Environmental Microbiology. https://doi.org/10.1128/AEM.69.5.2674-2683.2003; Morishita, S., & Tarui, S. (1981. Lactic acidosis. Nihon Rinsho. Japanese Journal of Clinical Medicine, 39(11), 3459-3465)。乳酸球菌(Lactococcus)においては、アミノ酸要求性およびアミノ酸輸送システムが増殖についての限定因子であることが知られている(PoolmanおよびKonings、1988)。特定の実施態様においては、乳基質に依存した進化によって、蛋白質分解活性を消失しており、および/またはアミノ酸栄養要求性を獲得している微生物を含む培養物に、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を与える。特定の実施態様においては、蛋白質分解活性を消失しており、および/またはアミノ酸栄養要求性を獲得している微生物は、乳酸球菌(Lactococcus)株である。
【0250】
乳Lactococcus lactisの亜種、lactisは、少なくとも7アミノ酸:Gln、Met、Leu、Ile、Val、ArgおよびHisについて栄養要求性である(Lawら、(1976))。L.lactisの亜種cremoris株は、L.lactisの亜種lactisよりもさらに多くの要求性を示すことが報告されており、前記に加えて、さらにTyr、AsnおよびAlaを要求することが多い。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸(Gln;Met;Leu;Ile;Val;Arg;His;Tyr;Asn;および/またはAlaのうちの1種類以上を含むが、これらのみに限定されるものではない)を、アミノ酸のうちの1種類以上に関して栄養要求性である別の微生物株に提供する。特定の実施態様においては、アミノ酸または蛋白質性補給組成物を、遊離アミノ酸;ペプチド;蛋白質加水分解物;蛋白質;溶解物;および/または完全細胞バイオマスのうちの1種類以上の形態で、独立無機栄養株に提供する。特定の実施態様において、該独立無機栄養株は、乳Lactococcus lactisの亜種lactisおよび/またはL.lactisの亜種cremorisである。特定の実施態様においては、遊離アミノ酸;ペプチド;蛋白質加水分解物;蛋白質;溶解物;および/または完全細胞バイオマスのうちの1種類以上の形態で、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸が添加されている増殖培地は、乳汁での増殖速度と比較して、本明細書に記載のような微生物株(独立無機栄養株など)の増殖速度を高める。特定の実施態様においては、該アミノ酸または蛋白質性添加物を、最大約4%(w/v)の濃度、または最大約2.5%(w/v)の濃度で培地に添加する。いくつかの実施態様においては、該アミノ酸または蛋白質性添加物の利用は、約0.5%(w/v)~約2.5%(w/v)である。特定の実施態様においては、該アミノ酸添加物は約4%(w/v)超の濃度で添加する。特定の実施態様においては、該アミノ酸または蛋白質性添加物は、アミノ酸:Leu;Phe;および/またはGluのうちの1種類以上を含むが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、該添加された培地における増殖速度は、乳汁での増殖速度よりも、少なくとも約10%、20%、または40%以上速い。
【0251】
プロリン(Pro)は、このアミノ酸を合成する能力とは無関係にL.lactis株の増殖を刺激することが明らかにされている(SmidおよびKonings、(1990))。乳汁はProに富んでいるが、一部の株ではプロリン輸送システムを欠失しているために、このアミノ酸は可用性が低いことが報告されている。受動拡散またはプロリン含有ペプチドの輸送によってのみ、プロリンが細胞内に輸送され得る(SmidおよびKonings、上掲)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるProを、別の培養物(例えば、該Proが由来する微生物とは異なる微生物の培養物)に与える。特定の実施態様においては、該Pro、遊離アミノ酸として、および/またはペプチドおよび/または蛋白質の内部に含まれるProとして提供される。特定の実施態様においては、該形態でPro添加物の提供を受ける培養物は、1種類以上のL.lactis株を含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるProの提供を受けた微生物株は、該Proが与えられていない同一培養物よりも、増殖速度が速い。いくつかの実施態様においては、該微生物株は、L.lactis株、例えば、Lactococcus lactisの亜種lactisおよび/またはLactococcus lactisの亜種cremoris株のうちの1種類以上である。
【0252】
L.lactisに関して、化学的に規定される培地が数多く開発されている。Ottoら(1983)によって開発され、PoolmanとKonings(1988)[上掲]によって改良された標準合成培地(MCD)は、18種のアミノ酸と14種のビタミンを含む47種類の成分を含むものである。特定の実施態様においては、別の微生物(例えば、該アミノ酸および/またはビタミンが由来する微生物とは異なる微生物)を培養するための化学的に規定される培地に含まれるアミノ酸および/またはビタミンのうちの1種類以上が、本明細書に記載の方法で生産される。そのような特定の実施態様においては、該アミノ酸および/またはビタミンは、COを唯一の炭素源として産生される。特定の実施態様においては、該アミノ酸および/またはビタミンを受容する該微生物は、乳酸球菌(Lactococcus)、例えば、L.lactisである。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される1種類以上のアミノ酸を培地に添加するのであるが、もし該アミノ酸を省略した場合には、該アミノ酸を含むことのない培地での培養おいて、増殖速度は少なくとも約75%低くなり、および/またはバイオマス収量が少なくとも約50%低くなるであろう。
【0253】
複数の乳酸菌(Lactobacillus)種が、ヨーグルト(L.Delbrueckiiの亜種bulgaricus)および様々な種類のチーズ(L.helveticus、L.paracasei)の産生のスターター培養物の成分として用いられ、また発酵乳および/または栄養補助食品(L.acidophilus、L.johnsonii、L.reuteri)におけるプロバイオティクスとして用いられている。栄養要求性および窒素要求性は生物種毎に、また同一種/亜種の株間であっても大きく変わる。乳酸菌(Lactobacillus)種の一般的栄養要求を検証する目的で、複数の研究が行われている。Elliら(2000)、およびChervauxら(2000)は、21種類のアミノ酸およびその他の栄養素を含む60種類の成分を含む化学的に規定される培地を用い、22種類の乳酸菌(Lactobacillus)株の栄養要求性について報告している。一般的に、最適増殖および生存率に関しては、これらの乳酸菌(Lactobacillus)は、豊富な炭素源および窒素源、ビタミン、微量栄養素および主要栄養素、およびヌクレオチド塩基を添加した発酵培地を必要とした。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるバイオマス;蛋白質;溶解物;蛋白質加水分解物;ペプチド組成物;アミノ酸組成物;および/またはその他の抽出物のうちの1種類以上を用いて、1種類以上乳酸菌(Lactobacillus)株を含む培養物に、炭素源;窒素源;ビタミン;主要栄養素;微量栄養素;および/またはヌクレオチド塩基のうちの1種類以上を供給する。
【0254】
L.helveticusは、他のほとんどのLactobacillusまたはLactococcus株よりもアミノ酸要求性が高いことが報告されている。Morishitaら(1981)[上掲]は、ATCC15009株は14種類のアミノ酸、4種類のビタミン、ならびにウラシルについて栄養要求性であり、一方、CRL1062株は13種類のアミノ酸を要求することを示した(Hebertら、2000)。特定の実施態様においては、1種類以上のアミノ酸;ビタミン;および/または核酸塩基(ウラシルなどが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)についての栄養要求体を含む培養物に、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸;ビタミン;および/またはRNAおよび/またはDNA塩基(ウラシルなど)のうちの1種類以上を提供する。特定の実施態様においては、該栄養要求体はL.helveticus株である。
【0255】
プロバイオティクスLactobacillus acidophilus(LA)は、増殖にPro、Arg、Glu (Morishitaら、(1981)[上掲])、芳香族アミノ酸、およびHis(Hebertら、(2000)、[上掲])の存在を要求することが報告されている。芳香族アミノ酸およびHisの要求性は、LAが完全に機能的な五炭糖リン酸経路を有していないことに関連性があると報告されている。しかし、LAは18種類のアミノ酸のほとんど全てで強い刺激を受けることも報告されている。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸(Pro、Arg、Glu、芳香族アミノ酸、および/またはHisのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、1種類以上の別の株(例えば、該アミノ酸が由来する微生物とは異なる微生物株)に供給する。そのような特定の実施態様においては、該株は、増殖に関して、Pro、Arg、Glu、芳香族アミノ酸、および/またはHisのうちの1種類以上について要求性を有する。そのような特定の実施態様においては、本開示にしたがって生産されるそれらのアミノ酸(すなわち、Pro、Arg、Glu、芳香族アミノ酸、および/またはHis)を、完全に機能的な五炭糖リン酸経路を有してはいない1種類以上の微生物に供給する。そのような特定の実施態様においては、上記の別の株としてはLA株が挙げられる。
【0256】
必須とはみなされないのであっても、Argは、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus reuteri、Pediococcus pentosaceus、およびStreptococcus thermophilus株の増殖を刺激することが報告されている。特定の非限定的実施態様においては、1種類以上の他の株(例えば、本明細書に記載の方法でArgを生産するための微生物とは異なる微生物株)であって、Argによってその増殖が刺激される他の株に、Argを与える。特定の実施態様においては、微生物:L.bulgaricus;L.acidophilus;L.reuteri;Pediococcus pentosaceus;および/またはS.thermophilus株のうちの1種類以上を含む培養物にArgを添加する。特定の実施態様においては、トリプレットコドンによって直接的にコードされる20種類の蛋白質新生アミノ酸すべてを、本明細書に記載の方法で生産し、1種類以上の他の株 (例えば、該アミノ酸が由来する微生物とは異なる微生物株)に供給する。特定の実施態様においては、本開示にしたがって生産され、本明細書に記載のように提供される20種類のアミノ酸のうちの1種類以上を与えることによって、1種類以上の他の株の増殖を刺激する。特定の実施態様においては、上記の他の株はLA株および/またはLactobacillus reuteri株を含む。
【0257】
Lactobacillus reuteriは特に選好性の生物であることが知られており、その増殖にアミノ酸のMet、Glu、Tyr、Trp、His、Leu、Val、およびAlaを要求し、その他のアミノ酸がこの生物に与えられていないときには、その増殖速度が低下する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸(Met、Glu、Tyr、Trp、His、Leu、Val、および/またはAlaのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、1種類以上の他の株、例えば、本明細書に記載の方法で該アミノ酸を生産する微生物とは異なる微生物株に与える。そのような特定の実施態様においては、該他の株は、その増殖に関して、Met、Glu、Tyr、Trp、His、Leu、Val、および/またはAlaのうちの1種類以上に対して要求性を有する。特定の実施態様においては、該他の株としては、Lactobacillus reuteriが挙げられる。特定の実施態様においてはまた、本明細書に記載の方法で生産されるMet、Glu、Tyr、Trp、His、Leu、Val、およびAla以外の他の付加的なアミノ酸についても、Lactobacillus reuteriに提供する。
【0258】
特定の実施態様においては、遺伝子暗号のトリプレットコドンによって直接的にコードされ、「標準」アミノ酸として知られる蛋白質新生アミノ酸の20種類すべてを、本明細書に記載の方法で生産し、1種類以上の他の株および/または生物(例えば、本明細書に記載の方法でアミノ酸を生産する微生物とは異なる微生物株および/または生物)に与える。特定の実施態様においては、蛋白質新生(「蛋白質構成」)アミノ酸の22種類全てを、本明細書に記載の方法で生産し、1種類以上の他の株および/または生物(例えば、本明細書に記載の方法でアミノ酸を生産する微生物とは異なる微生物株および/または生物)に与える。特定の実施態様においては、公知の大まかには500種類の天然アミノ酸のうちの1種類以上を、本明細書に記載の方法で生産し、1種類以上の他の株および/または生物(例えば、本明細書に記載の方法でアミノ酸を生産する微生物とは異なる微生物株および/または生物)に与える。
【0259】
Streptococcus thermophilus(ST)株は、ヨーグルト培養物および一部のチーズ培養物の必須成分である。一部の株では、乳酸以外にもエキソ多糖類(EPS)を産生するが、これは発酵乳の質感にも影響を与え、一部の種類のチーズの収量を増加させ得る(Petersenら、(2000))。S.thermophilusの増殖は、培地中に窒素源を要求する。乳汁は、S.thermophilusの増殖に好適な窒素を含んでいる。しかし、アミノ酸の天然供給および乳汁に存在する非蛋白質窒素では、S.thermophilusの高細胞数増殖を支援するには不充分である。本明細書に記載の特定の実施態様においては、完全細胞バイオマス産物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素、補因子、または成分などの栄養素を、多糖(EPSおよび/または乳酸が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を産生する培養物に与える。特定の実施態様においては、該栄養素をS.thermophilusに与えた場合には、該栄養素はEPSおよび/またはより大型の莢膜の形成を増加させる。特定の実施態様においては、該栄養素は、発酵乳の質感を改善し、および/またはチーズの収量を増加させる。特定の実施態様においては、該栄養素は、S.thermophilusにとっての窒素源となるか、あるいはS.thermophilusにとっての追加窒素源となる。特定の実施態様においては、乳汁を該栄養素で補うこと、または該栄養素で乳汁を代替することによって、乳汁のみで増殖させた場合と比較して、微生物株をより高細胞数に増殖させる。特定の実施態様においては、該高細胞数に増殖する株はS.thermophilusである。
【0260】
S.thermophilusは、完全蛋白質を消化する細胞壁結合性蛋白質分解酵素に依存する、あるいはアミノ酸、ペプチド、およびオリゴペプチドの供給源としての蛋白質加水分解物で増殖する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産された完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または完全蛋白質などの栄養素を、S.thermophilusに与え、これらの栄養素を、増殖および/またはEPSおよび/または乳酸の産生に必要なアミノ酸、ペプチド、および/またはオリゴペプチドへと変換するには、その天然の蛋白質分解酵素に依存することになるのである。
【0261】
S.thermophilusにとっては、硫黄含有アミノ酸と共にGlnおよびGluは、必須アミノ酸であるとみなされる。また、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の生合成経路は機能してはいるが、BCAAの補充がない場合には、S.thermophilusの最適増殖を可能にするには不充分である(Garaultら、(2000))。したがって、通常はBCAAを補う。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸(Gln;Glu;硫黄含有アミノ酸;および/またはBCAAsのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、遊離のものであっても、ペプチドおよび/または蛋白質中で結合しているものであってもよいが、1種類以上の他の株または生物(例えば、本明細書に記載の方法でアミノ酸を生産する微生物とは異なる微生物株および/または生物)に提供する。そのような特定の実施態様においては、該株はS.thermophilusである。
【0262】
蛋白質加水分解は、酵母エキスと組み合わせた場合に、S.thermophilusの最適生産に適切な窒素源を提供し得ることが報告されている。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を増殖培地で酵母エキスと組み合わせて、S.thermophilusなどの微生物(これのみに限定されるものではない)に提供する。特定の実施態様においては、S.thermophilusなどの微生物(これのみに限定されるものではない)に与える培地中の酵母エキスを、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、加水分解物、および/またはその他の抽出物によって代替する。特定の実施態様においては、Ellikerブロス(Lactobacilliブロスとしても知られている)の1種類以上の成分を、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素および/または補因子によって代替し、その結果、改変Ellikerブロスを得る。特定の実施態様においては、該改変Ellikerブロスにおいて、代替される成分としては、カゼイン加水分解物および/または酵母エキスが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素および/または補因子を、Ellikerブロスに添加するが、その結果、栄養補充されたEllikerブロスを得る。特定の実施態様においては、該改変および/または栄養補充Ellikerブロスは、連鎖球菌および/または乳酸菌の培養に用いる。
【0263】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物を、約5g/L~約20g/Lまたは約5g/L~約25g/L、または約20g/L~約25g/Lの濃度で培地に添加する。カゼイン加水分解物および乳清加水分解物を乳汁へ添加することによって、S.thermophilus ST-7の増殖と酸性化速度が向上することが報告されており、それによってヨーグルトの発酵時間が短縮する(Lucasら)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される加水分解物は、別の培養物の増殖および/または酸性化速度を向上させる。特定の実施態様においては、該培養物は、S.thermophilus ST-7を含む、またはS.thermophilus ST-7から成る。凍結乳製品デザートで試験した場合には、2%のカゼイン加水分解物およびシステインを乳汁に添加することによって、12週間にわたるS.thermophilus WJ7の生存率が改善することが報告されている(RavulaとShah、1998)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される加水分解物を、約2%(w/v)の濃度で培地に添加する。特定の実施態様においては、カゼイン加水分解物および/またはシステインの代替として、蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物を用いる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物および/またはアミノ酸組成物は、微生物、例えば、S.thermophilus培養物の生存率を改善する。
【0264】
ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の菌種は、発酵乳スターター培養の成分として、およびカプセル化凍結乾燥材料としての両方に用いられる。ビフィドバクテリウム属細菌はいずれも、乳糖を利用することができるので乳汁中で増殖可能であるが、低蛋白質分解活性のためにその増殖は弱いことが多い(Klaverら、1993;CollinsとHall、1984)。しかし、Bifidobacterium bifidumおよびBifidobacterium adolescentisなどの生物種は、細胞内プロテアーゼおよび細胞外プロテアーゼを産生することが報告されている。ほとんどの株がロイシンアミノペプチダーゼを含み、他方、少数の株がバリンアミノペプチダーゼを有する(Desjardinsら、1990)。大部分のビフィドバクテリウム属細菌は、アンモニウム塩を唯一の窒素源として利用できるが(Azaolaら、1999)、それでもペプチドおよびアミノ酸の補充は、これらの株の経済的生産にとっては要件とみなされている。固有の窒素要求性は株に依存するのであるが、典型的窒素源はペプチド/アミノ酸、システイン、およびアンモニウム塩である。ビフィドバクテリウム属細菌は成長因子およびビタミン(ビオチンおよびパントテン酸カルシウムが挙げられる)について比較的高い要求性を有することが報告されている(KurmannとRasic、1991)。ジスルフィド/スルフヒドリル含有ペプチド、結合金属(Fe、Cu、Zn)を伴うラクトフェリン、α-ラクトアルブミン、およびβ-ラクトグロブリンなどの複数の蛋白質性増殖プロモーターが乳汁中に形成される(PetschowとTalbott、1991)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質分解的消化物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素および/または補因子などの栄養素を、乳糖を含む乳汁および/または培地と組み合わせ、次いで、別の培養物、例えば、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質分解的消化物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素および/または補因子が由来する微生物とは異なる微生物の培養物に提供する。特定の実施態様においては、乳糖などの他の培地成分と組み合わせてもよい該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質分解的消化物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素および/または補因子を、乳汁の代替として用いる。特定の実施態様においては、該培養物としては、1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株が挙げられる。
【0265】
特定の実施態様では、乳汁などの基質において、例えば、低蛋白質分解活性に起因して緩徐な増殖を示す微生物培養物に、蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を与える。特定の実施態様においては、該培養物として、1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株が挙げられる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される栄養素、添加物、または培地処方物(例えば、蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物が挙げられる)を、1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌を含む培養物に与えると、乳汁のみで増殖させた同一培養物よりも速い増殖が観察される。
【0266】
特定の実施態様においては、細胞内プロテアーゼおよび/または細胞外プロテアーゼを産生する微生物を含む培養物に、本明細書に記載の方法で生産される栄養素(例えば、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質濃縮物および/または蛋白質単離物および/または完全蛋白質が挙げられる)を与えると、該プロテアーゼ産生性微生物は、この栄養素を該微生物自身ならびにその他の微生物の増殖およびバイオマスおよび/またはバイオ産物の生産に利用し得るペプチドおよび/または遊離アミノ酸に消化することができる。特定の実施態様においては、該プロテアーゼ産生性微生物は、Bifidobacterium bifidumおよび/またはBifidobacterium adolescentisであってもよいが、これらのみに限定されるものではない。
【0267】
特定の実施態様においては、培養物および/または培養産物の経済的生産を目的として、本明細書に記載の方法で生産されるペプチドおよび/またはアミノ酸を該培養物に添加する。特定の実施態様においては、該培養物は1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株を含む。特定の実施態様においては、ペプチドおよび/またはアミノ酸(本明細書に記載の方法で生産されるシステインが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)を含む窒素源を処方する。特定の実施態様においては、該窒素源は無機形態の窒素(アンモニウム塩が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)も含む。特定の実施態様においては、該窒素源を別の培養物(例えば、該窒素源が由来する微生物とは異なる微生物の培養物)に与える(1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株を含む培養物などが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)。
【0268】
特定のビフィドバクテリウム属細菌株にとっては、小型ペプチドは遊離アミノ酸よりも良好なアミノ酸源であることが報告されている(Proulxら、1994)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質の加水分解は、低分子ペプチド量を最大化し、遊離アミノ酸量を最少化するように設計される。特定の実施態様においては、遊離アミノ酸が高濃度になることを防止するために、酵素的加水分解を利用する。特定の実施態様においては、遊離アミノ酸含量が低い、または遊離アミノ酸含量がゼロである、または遊離アミノ酸含量が実質的にゼロである該ペプチドを、別の培養物、例えば、該ペプチドが由来する微生物とは異なる微生物の培養物(1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株を含む培養物などが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)に与える。蛋白質分解酵素の選択は、蛋白質加水分解物の増殖プロモーターとしての価値に影響を及ぼすことが報告されている。トリプシン分解カゼインに由来するペプチドは、Alcalase(登録商標)またはキモトリプシンによる酵素消化物よりも、Bifidobacterium longum およびBifidobacterium infantis に対して良好な増殖促進効果を有することが報告されている(Proulxら、1994、上掲)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質から酵素的に蛋白質加水分解物を生産し(例えば、C1化合物(CO、CO、および/またはCHなど)から、例えば、化学独立栄養的に生産し)、別の培養物(B.longumおよび/またはB.infantisのうちの1種類以上を含む微生物培養物などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に与える。
【0269】
複合培地にEscherichia coli(大腸菌)抽出物を用いた場合には、B.longumに有意な増殖促進効果をもたらすことが報告されている(IbrahimとBezkorovainy、1994)。特定の実施態様においては、例えば、C1基質(CO、CO、および/またはCHなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)で増殖させた化学独立栄養性微生物の抽出物を別の生物に与える。特定の実施態様においては、該抽出物を増殖培地に添加することによって、別の生物(ビフィドバクテリウム属の微生物(例えば、B.longum)などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に増殖促進効果をもたらす。
【0270】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される栄養素は、成長因子類およびビタミン類(ビオチンおよび/またはパントテン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含む。特定の実施態様においては、該成長因子類および/またはビタミン類を、別の培養物(例えば、該成長因子類および/またはビタミン類が由来する微生物とは異なる生物および/または微生物の培養物)に与える。特定の実施態様においては、該ビタミン類はビオチンおよび/またはパントテン酸カルシウムを含み、これらの栄養素を与える該培養物としては1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株が挙げられる。
【0271】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される栄養素は、蛋白質性増殖プロモーター(ジスルフィド/スルフヒドリル含有ペプチドなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される蛋白質性増殖プロモーターを、別の基質(乳汁など)に由来する1種類以上の増殖プロモーター(結合金属(例えば、Fe、Cu、Zn)を伴うラクトフェリン、α-ラクトアルブミン、および/またはβ-ラクトグロブリン)と組み合わせる。特定の実施態様においては、前述の蛋白質性増殖プロモーターのうちの1種類以上を、別の培養物、例えば、蛋白質性増殖プロモーターが由来する微生物とは異なる生物および/または微生物(1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の培養物に与える。
【0272】
d-グルコサミンは、N-アセチルグルコサミンおよびムラミン酸のペプチドグリカン単位の構成要素であり、したがってBifidobacteriumの菌種が必要とする細胞壁の必須成分である(Poupardら、(1973)、上掲)。この細胞壁の組成と強度は、下流の処理経過中のビフィドバクテリウム属細菌の生存に影響を及ぼす。乳汁はオリゴ糖類の形態でN-アセチル-グルコサミンを含み、グルコサミン源として利用されることが最も多い(ExterkateとVeerkamp、1969)。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマス産物および/または溶解物および/または加水分解物および/または抽出物は、ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位(d-グルコサミン;N-アセチルグルコサミン;および/またはムラミン酸のうちの1種類以上など)を含む。特定の実施態様においては、該ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位を、別の培養物(例えば、該ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位が由来する微生物とは異なる生物および/または微生物の培養物)に与える。特定の実施態様においては、別の供給源由来の(植物、動物(乳汁など)由来など)ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位(N-アセチル-グルコサミンなど)の代替として、またはそれを補うために、前記ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位を利用する。特定の実施態様においては、該培養物は、細胞壁の産生および/または生物(例えば、微生物)の増殖に該ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位を必要とする。特定の実施態様においては、培地成分として、および/または添加物として、該ペプチドグリカンおよび/またはペプチドグリカン単位を提供することによって、培養物中の微生物の組成および細胞壁の強度を改善し、および/または下流の処理経過中の該培養物における微生物の生存率を高める。特定の実施態様においては、該培養物は1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株を含む。
【0273】
ビフィドバクテリウム属細菌を培養する場合には、複合栄養要求性に加えて、これらの株が酸素に対して極度に感受性であることに対処する必要性もある。この問題は、酸化還元電位を維持可能な物質を添加することによって、通常克服される。この目的では、システイン、アスコルビン酸、または硫酸ナトリウムを用いることが多い。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される1種類以上の栄養素および/または生体物質(例えば、有機化合物)は、それらを加える培地内および/または培養環境内の酸化還元電位の維持を助ける。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される酸化還元電位低下成分としては、システインおよび/またはアスコルビン酸が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、該酸化還元電位低下成分を1種類以上のビフィドバクテリウム属細菌株を含む培養物に添加する。
【0274】
特定の実施態様においては、本明細書中に記載の栄養素および/または培地のうちの1種類以上で増殖させる培養物を、発酵食品生産物(例えば、発酵乳)などの発酵産物のスターター培養物として用いる、および/またはさらに処理してカプセル化凍結乾燥物にする。
【0275】
ペジオコックス(pediococcus)は、伝統的発酵ソーセージの成分のスターター培養成分として用いられる。乳汁とは異なり、肉は、スターター培養物の接種前に低温殺菌を行わないので、多量の常在微生物叢が含まれたままである。ペジオコックス(pediococcus)の菌種の生産では、エネルギー源および炭素源としてグルコースまたはスクロースを用いる。必須ではないが、酢酸塩の添加によって、遅滞期が短縮し、生物の増殖が刺激されることが報告されている。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質分解的消化物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または他の栄養素および/または補因子などの栄養素を、培地において、グルコースおよび/またはスクロースと組み合わせ、次いで、別の培養物(例えば、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質分解的消化物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または他の栄養素および/または補因子などの栄養素が由来する微生物とは異なる生物および/または微生物の培養物)に添加する。特定の実施態様においては、該培養物は1種類以上のペジオコックス(pediococcus)株を含む。特定の実施態様においては、該培地はさらに酢酸塩を含む。特定の実施態様においては、該酢酸塩は、例えば、C1基質(CO、CO、および/またはCHなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)から化学独立栄養的に産生される。特定の実施態様においては、肉以外の蛋白質性基質で、1種類以上のPediococcus株を発酵させる。特定の実施態様においては、該蛋白質性基質は、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質分解的消化物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を含む。そのような特定の実施態様においては、スターター培養物(1種類以上のPediococcus株が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の接種前に、基質を低温殺菌せず、したがって常在微生物叢を含むのであってもよい。
【0276】
Pediococcus pentosaceusは、Val、Ala、Met、Pro、Arg、Glu、Cys、Tyr、およびHisに関してアミノ酸要求性を有することが報告されており、他方、他のアミノ酸は刺激効果を有することが報告されている。Cys塩酸塩は刺激性であることが報告されているが、その刺激効果の一部は脱酸素剤としての機能に関連している可能性もある。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸(Val、Ala、Met、Pro、Arg、Glu、Cys、Tyr、およびHisのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を、遊離アミノ酸および/またはペプチドおよび/または蛋白質中で結合しているアミノ酸の形態で、1種類以上の別の株(例えば、該アミノ酸が由来する微生物とは異なる生物および/または微生物)に与える。そのような特定の実施態様においては、該株は増殖に関して、Val、Ala、Met、Pro、Arg、Glu、Cys、Tyr、および/またはHisのうちの1種類以上についての要求性を有している。特定の実施態様においては、該株は1種類以上のPediococcus微生物(Pediococcus pentosaceusなどが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)を含む。
【0277】
Pediococcus acidilacticiは肉蛋白質を加水分解可能であることが報告されている。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマス、溶解物、および/または完全蛋白質を、これらの加水分解が可能な別の生物(例えば、該完全細胞バイオマス、溶解物、および/または全蛋白質が由来する微生物とは異なる生物および/または微生物)に与える。特定の実施態様においては、次いで、該加水分解によって得られたペプチドおよび/またはアミノ酸は、該生物自身によって栄養として利用される、あるいは他の生物によって栄養素として利用される。特定の実施態様においては、該加水分解によって得られたペプチドおよび/またはアミノ酸は、最終食品または飼料製品中に含まれる。特定の実施態様においては、該生物または蛋白質の加水分解を行う生物は、1種類以上のPediococcus株(Pediococcus acidilacticiなどが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)を含む。
【0278】
微生物株が所定の蛋白質基質について適切な蛋白質分解システムを有している場合であっても、カゼインを例とすれば、His、Leu、Gln、Val、およびMetなどの特定のアミノ酸が低レベルであるが故に、特定蛋白質(カゼインなど)での増殖は限定的であり得る(Kunjiら、1995)。特定の実施態様においては、所定の蛋白質性基質に、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸源:遊離アミノ酸;ペプチド;蛋白質加水分解物;蛋白質;溶解物;および/または完全細胞バイオマスのうちの1種類以上を補充し、それによって該蛋白質性基質に欠如しているアミノ酸を補う。特定の実施態様においては、欠如しているアミノ酸を補うことによって、培養における増殖の制限を取り除く。いくつかの実施態様においては、補充を受ける蛋白質性基質は乳汁蛋白質(カゼインなど)である。いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸源の提供によって補充されるアミノ酸としては、His;Leu;Gln;Val;および/またはMetのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0279】
複数の乳酸菌(Lactobacillus)種(L.johnsonii、L.gallinarum、L.gasseri、L.helveticus)が、デノボでプリン類およびピリミジン類を合成することができない(Elliら、2000)。乳汁および乳汁由来加水分解物はプリン前駆体およびピリミジン前駆体を含まない。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産したプリン類および/またはピリミジン類を、デノボでプリン類および/またはピリミジン類を合成できない1種類以上の微生物株に与える。特定の実施態様においては、該株は乳酸菌(Lactobacillus)種(L.johnsonii、L.gallinarum、L.gasseri、および/またはL.helveticusのうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)を含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるプリン類および/またはピリミジン類を、乳汁または乳汁由来加水分解物で増殖する培養物に与える。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるプリン類および/またはピリミジン類を含む組成物を、培地におけるプリン類および/またはピリミジン類の別の典型的な供給源(酵母エキスなどが挙げられるが、これのみに限定されるものではない)の代替として用いる。
【0280】
特定の実施態様においては、栄養培地に添加する、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、該栄養培地で増殖する細胞の増殖および/または生物学的生産および/または細胞密度を高める。特定の実施態様においては、該細胞は動物細胞である。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、該溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含まない同一培地中で増殖する同一細胞と比較して、生細胞密度および/またはバイオマス増加および/または産物収量を高める。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物が該栄養培地に含まれる場合には、細胞密度を増加させる。その他の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、細胞密度と産物収量の両方を高め、またさらに別の実施態様において、細胞増殖を抑制するが1種類以上のバイオ産物の収量については増加をもたらす。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物は、細胞増殖および細胞死に影響を与える外部分子シグナルとして作用するオリゴペプチドを含む。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるオリゴペプチドは細胞増殖を刺激し、その結果としてバイオマス生産を高め、および/または分泌蛋白質の産生を刺激し、および/または培養物の生細胞密度を増加させる。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるオリゴペプチドは、細胞培養物においてアポトーシス死を遅延する因子として作用する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるペプチドは、細胞培養において持続的代謝シフトを誘起し、および/または遺伝子発現および/または細胞増殖の変化を誘導する。特定の実施態様においては、該シフトおよび/または変化は数日間持続する。特定の実施態様では、本明細書に記載の方法で生産されるペプチドを含む培地において、細胞周期の各期の分布が変化する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるペプチドは、培養動物細胞の増殖および/またはシグナル伝達カスケードを制御し、および/または遺伝子を活性化または抑制する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるペプチドは、約1mM以上の濃度で細胞培養物に添加する。
【0281】
特定の実施態様においては、溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物のクロマトグラフィー画分は、それが添加された細胞培養物において、異なる活性を発揮する。特定の実施態様においては、本明細書に記載のような溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、利用可能なアミノ酸源としてのみ働くのではなく、細胞増殖および/または生産性に対して特定の効果を発揮するペプチドの供給源としても働くのである。特定の実施態様においては、溶解物および/または加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物の利用によって、生細胞密度;長期生存率;および/または1種類以上のバイオ産物の収量から成る培養パラメーターのうちの1種類以上が改善する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産されるアミノ酸および/またはその他の栄養素の濃縮混合物は、該アミノ酸および/またはその他の栄養素を添加した培養物中の1種類以上のバイオ産物の収量を増加させる。
【0282】
特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、(該蛋白質加水分解物組成物の乾燥重量で測定した場合に)約0.001%w/v以上の濃度、例えば、約0.01%w/v以上の濃度、約0.05%w/v以上の濃度、約0.1%w/v以上の濃度(約1%w/v以上の濃度を含む)で培地に添加する。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、(該蛋白質加水分解物組成物の乾燥重量で測定した場合に)約0.001%w/v~約5%w/vの範囲、例えば、約0.01%w/v~約2%w/vの範囲、約0.05%w/v~約1%w/vの範囲(約0.1%w/v~約1%w/vの範囲を含む)で培地に添加する。培地に添加する該蛋白質加水分解物組成物の量は、1種類以上の検討事項(細胞種、増殖、生育、生産性、分化など)に応じて異なるのであってもよい。特定の実施態様においては、該培地を動物細胞培養物に提供する。
【0283】
特定の実施態様においては、ペプチドを、約1mMの濃度、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約1mM~約7mM、約7mM~約10mM、または約10mM超の濃度で培地に添加する。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産されるオリゴペプチドを、約1mMの濃度、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約1mM~約7mM、約7mM~約10mM、または約10mM超の濃度で培地に添加する。特定の実施態様においては、該培地を動物細胞培養物に提供する。
【0284】
いくつかの実施態様においては、培地に添加する該蛋白質加水分解物組成物は、生物刺激剤ポリエステルを含む。該生物刺激剤ポリエステルは、PHAポリマー(PHBおよび/またはPHVなど)であってもよい。該生物刺激剤は、単量体(ヒドロキシ酪酸(HB)など)であっても、あるいはオリゴマーであってもよい。該蛋白質加水分解物組成物を培地に添加する場合には、該組成物は有効量の該生物刺激剤ポリエステル、例えば、PHA(PHBおよび/またはPHVなど)を該培地に提供し、それによって培養細胞の増殖および/または成長を促進する。
【0285】
いくつかの実施態様においては、培地に添加する該蛋白質加水分解物組成物は、ビタミン(ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12など)および/またはそのビタマーを含む。該蛋白質加水分解物組成物を培地に添加する場合には、該組成物は有効量のビタミンを該培地に提供し、それによって培養細胞の増殖および/または成長を促進する。いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物は、ビタミンB12、および/または1種類以上のそのビタマー(例えば、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミンおよび/またはメチルコバラミン)を含む。
【0286】
いくつかの実施態様においては、該蛋白質加水分解物はバイオマスから生産され、該バイオマスはC1基質(CO、CO、および/またはCHなど)から生産されたものであり、該蛋白質加水分解物はビタミンB12を、バイオマスの乾燥重量と比較して約2μg/100g乾燥バイオマスの濃度、最大で約6.5μg/100g乾燥バイオマスの濃度で含む。いくつかの実施態様においては、C1基質から生産される培地は、ビタミンB12を、例えば、バイオマスの乾燥重量を基準にして、約6.5μg/100g乾燥バイオマスの濃度、最大約13μg/100g乾燥バイオマスの濃度、または約13μg超/100g乾燥バイオマスの濃度で含む。
【0287】
いくつかの実施態様においては、該方法は、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物に加えて、植物または酵母に由来する1種類以上の蛋白質加水分解物を含む培地で細胞を培養することを含む。好適な植物性蛋白質加水分解物としては、大豆、米、ジャガイモまたはトウモロコシに由来するものが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。いくつかの実施態様においては、該方法は、植物性蛋白質加水分解物および本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物を含む培地で細胞を培養することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、酵母由来蛋白質加水分解物および本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物を含む培地で細胞を培養することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、酵母由来蛋白質加水分解物、植物性蛋白質加水分解物および本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物を含む培地で細胞を培養することを含む。好適な植物由来蛋白質加水分解物および/または酵母由来蛋白質加水分解物については、例えば、米国特許第8,093,045号およびPCT特許出願公開第WO1999057246号に記載がある;これらの参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0288】
該植物由来蛋白質加水分解物または酵母由来蛋白質加水分解物は、任意の好適な量で培地に添加するものであってもよい。特定の実施態様においては、該植物由来蛋白質加水分解物または酵母由来蛋白質加水分解物は、約0.001%w/v以上の濃度、例えば、約0.01%w/v以上、約0.05%w/v以上、約0.1%w/v以上(約1%w/v以上を含む)の濃度で培地に添加する。いくつかの実施態様においては、該植物由来蛋白質加水分解物または酵母由来蛋白質加水分解物は、約0.001%w/v~約5%w/vの範囲、例えば、約0.01%w/v~約2%w/vの範囲、約0.05%w/v~約1%w/vの範囲(約0.1%w/v~約1%w/vの範囲を含む)で培地に添加する。
【0289】
該細胞は、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物を含む培地中で、好適な長さの時間、培養してもよい。いくつかの実施態様においては、培地中で、増殖および生育経過中全体を通じて継続的に該蛋白質加水分解物の存在下で該細胞を培養する。いくつかの実施態様においては、化学独立栄養性微生物由来蛋白質加水分解物を含む培地で、約1時間以上、例えば、約5時間以上、約12時間以上、約24時間以上、約5日以上、約2週間以上、約6週間以上、約3か月以上、約6か月以上(約1年間以上を含む)、該細胞を培養する。いくつかの実施態様においては、化学独立栄養性微生物由来蛋白質加水分解物を含む培地で、約1時間~約3年間の期間、例えば、約5時間~約1年間、約12時間~約6か月、約24時間~約3か月(約5日~約6週間を含む)、該細胞を培養する。
【0290】
いくつかの実施態様においては、該微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物は、細胞培養の経過中に一時的に培地に存在する。培地中において、該微生物由来蛋白質加水分解物非存在下で細胞を増殖させるときには、植物由来蛋白質加水分解物または酵母由来蛋白質加水分解物などの他の培地添加物が該培地中に存在していてもよい。
【0291】
本法を用いて、いずれの好適な細胞を培養してもよい。該細胞は、哺乳動物、鳥類、魚類、昆虫、またはその他の動物に由来するものであってもよい。該細胞は幹細胞であってもよい。該細胞は、真菌、植物、真核、または原核細胞であってもよい。該細胞はプロバイオティクスであってもよい。培養細胞は、初代細胞、不死化細胞株、ハイブリドーマ、確立した細胞株、幹細胞由来細胞、または遺伝子操作した細胞(異種ポリペプチドまたは蛋白質を発現する組換え細胞など)であってもよい。該細胞は、個々の細胞、組織、臓器であってもよい。好適な非哺乳動物細胞としては、昆虫細胞、トリ細胞(ニワトリ細胞を含む)、および魚類細胞が挙げられる。好適な細胞は、ヒトまたは非ヒト由来の哺乳動物細胞を含む。好適な哺乳動物細胞は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、またはウマの細胞を含むが、これらのみに限定されるものではない。該培養細胞は、サル腎臓細胞、ウシ腎臓細胞、イヌ腎臓細胞、ブタ腎臓細胞、ウサギ腎臓細胞、マウス腎臓細胞、ラット腎臓細胞、ヒツジ腎臓細胞、ハムスター腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞または任意の組織に由来する動物細胞であり得る。好適な哺乳動物細胞としては、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、293細胞、HEK-293細胞、HEK細胞、PER.C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、M1細胞、NS0細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞、幹細胞、およびそれらの派生細胞が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。好適な非哺乳動物細胞としては、AGE1.CR細胞、EB66細胞、Sf9細胞、幹細胞、およびそれらの派生細胞が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される培地成分で増殖させる培養細胞は外来性核酸で形質転換されている。
【0292】
いくつかの実施態様においては、該方法は、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する溶解物および/または蛋白質加水分解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含む培地で筋肉細胞を培養することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、筋肉細胞を形成また維持させるために、該培地中で細胞を培養することを含む。筋肉細胞を形成させるために好適な細胞としては、胚性幹細胞、衛星細胞および筋芽細胞が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。いくつかの実施態様においては、該細胞は脂肪細胞を含む。いくつかの実施態様においては、該細胞は線維芽細胞を含む。いくつかの実施態様においては、筋肉細胞、脂肪細胞および線維芽細胞のうちの任意の2種類以上を一緒に、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物を含む培地中で培養する。
【0293】
該細胞はいずれの好適な方法を用いて培養してもよい。該細胞は、懸濁液、ローラーボトル、フラスコなどで増殖させてもよい。撹拌発酵槽中の微小担体に接着して増殖する接着細胞を含バイオリアクターなどの大規模アプローチもまた、含まれる。いくつかの実施態様においては、該細胞を懸濁液中で増殖させる。該細胞を微小担体上で増殖させる場合には、微小担体は、デキストラン、コラーゲン、プラスチック、ゼラチンおよびセルロースなどを基盤とする微小担体の群から選択することができる。特定の実施態様においては、該微小担体は、本明細書中に記載のような微生物から生産されるPHA(例えば、PHBおよび/またはPHV)を含むのであってもよい。特定の実施態様においては、撹拌タンクバイオリアクター内の擬懸濁培養物に微小担体支持体システムを利用してもよい。
【0294】
いくつかの実施態様においては、該方法は3次元支持体または足場上で該細胞を培養することを含む。該足場は、培地中において、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来蛋白質加水分解物組成物の存在下で、該細胞の増殖、維持、成長および/または分化を支援する好適な微小環境を提供するものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該3次元支持体または足場は多孔質である。特定の実施態様においては、該3次元支持体または足場は、本明細書に記載のような微生物から生産されるPHA(例えば、PHBおよび/またはPHV)を含む。
【0295】
該3次元支持体または足場は、培養細胞がそこで増殖するのに好適な任意の材料で作られるものであってもよい。いくつかの実施態様においては、該足場は生物分解性である。いくつかの実施態様においては、該足場は、分解性ポリエステルまたはヒドロゲルなどの生分解性材料で作られている。いくつかの実施態様においては、該足場は、PHB(これのみに限定されるものではない)などのPHAポリマーで作られている。いくつかの実施態様においては、PHAまたはPHBなどの生分解性ポリエステルは、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)によって生産される。特定の実施態様においては、該足場は摂取可能であり、例えば、ヒトによる摂取に好適である。可食支持体または足場は、ジェランガム、アルギン酸、ペクチン、またはセルロースで作られるものであってもよいが、これらのみに限定されるものではない。特定の実施態様においては、該足場は3次元プリントされる。
【0296】
該細胞は、適当な温度および適当なpHで培養してもよい。哺乳動物細胞は、典型的には約37℃の細胞恒温器中で、最適pH約6.8~7.6の範囲(7.0~7.3を含む)の培地を用いて培養する。いくつかの実施態様においては、回分培養(batch culture)の細胞は、必要に応じて、約2~3日毎、またはある程度の頻度で、完全培地交換が可能である。灌流培養の細胞(例えば、バイオリアクターまたは発酵槽中の細胞)は、連続再循環に基づく新鮮培地交換が可能である。
【0297】
特定の実施態様においては、該方法は、ヒトによる摂取に好適な産物(肉産物など)を生産するために動物細胞を培養することを含む。したがって、本明細書においては、他の細胞(脂肪細胞または線維芽細胞など)の存在下または非存在下で筋肉細胞を培養する方法であって、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含む培地を用いて肉を培養する方法を提供する。該培養培地が血清不含または動物成分不含培地である場合には、本法は、肉製品を産生するための人道的プロセスを提供するのである。特定の実施態様においては、該培地中に動物由来血清を用いるが、アミノ酸または蛋白質加水分解物の一部については、本明細書に記載のような微生物に由来する。
【0298】
いくつかの実施態様においては、該微生物由来蛋白質加水分解物組成物は、培養する食品生産物(例えば、培養肉)の風味を改善する成分を含む。特定の実施態様においては、該蛋白質加水分解物組成物は、培養する食品生産物(例えば、培養肉)の風味要素の発生を刺激する。本明細書においては、食品生産物の風味をより良くすることは、製品をより美味な状態にすること、または該培養生産物に対応する自然に産生される相当物に存在する1種類以上の風味成分を付与することを含む。
【0299】
いくつかの実施態様においては、該方法は、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)由来の完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含む血清不含培地で、筋肉細胞を培養することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する完全細胞バイオマスおよび/または抽出物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含む血清不含培地中で、筋肉細胞前駆細胞を培養することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、動物由来血清を含むが、また、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する蛋白質完全細胞バイオマスおよび/または抽出物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物をも含む培地中で、筋肉細胞を培養することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、動物由来血清を含むが、また、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する完全細胞バイオマスおよび/または抽出物および/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物をも含む培地中で、筋肉細胞前駆細胞を培養することを含む。該培地中において該筋肉細胞前駆細胞の増殖を促進するのに充分な条件下で、該前駆細胞を培養してもよい。いくつかの実施態様においては、該前駆細胞を筋肉細胞に分化を誘導するのに充分な条件下で該筋肉細胞前駆細胞を培養してもよい。該前駆細胞は、筋肉細胞を形成するように誘導することが可能な好適な細胞であってもよい。好適な前駆細胞としては、衛星細胞、胚性幹細胞、および筋芽細胞が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。したがって、本法は、筋肉細胞の増殖、維持、成長および/または分化を促進するために、有効量の該化学独立栄養性微生物由来蛋白質加水分解物を培地に添加することを含む。
【0300】
特定の実施態様においては、該筋肉細胞を1種類以上の他の細胞種と共に培養する。該筋肉細胞との共培養に好適な細胞としては、脂肪細胞および線維芽細胞、またはその前駆細胞が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。したがって、筋肉細胞、脂肪細胞、および結合組織の集合体を生産するために、本法は、本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を含む、血清不含培地または動物由来血清を含む培地中で、細胞を培養することを含むものであってもよい。筋形成または筋肉線維形成を誘導するのに充分な条件下で、該細胞を培養してもよい。いくつかの実施態様においては、該方法は、脂肪細胞および/または線維芽細胞の増殖、維持、成長および/または分化を促進するために、有効量の該微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を培地に添加することを含む。いくつかの実施態様においては、該方法は、筋形成を誘導する、持続させる、および/または促進するために、有効量の該微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を培地に添加することを含む。
【0301】
いくつかの実施態様においては、該筋肉細胞を、3次元支持体または足場上で(脂肪細胞および/または線維芽細胞の存在下または非存在下で)培養する。該足場が多孔質の場合もある。該足場は、該細胞の増殖および/または筋形成の支援に好適な材料で作られているものであってもよい。該足場は、生物分解性および/または摂取可能材料であってもよい。いくつかの実施態様においては、該足場は、生分解性ポリエステルまたは生分解性ヒドロゲルを含む。特定の実施態様においては、該足場は、PHBおよび/またはPHVなどのPHAポリマーを含む。いくつかの実施態様においては、該足場は、微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する材料によって作られている。いくつかの実施態様においては、該足場は、該微生物の増殖(例えば、化学独立栄養的増殖)によって環境に優しい方法で生産される、PHA(例えば、PHBおよび/またはPHV)などの生分解性ポリエステルを含む。
【0302】
いくつかの実施態様においては、有効量の本明細書に記載のような微生物(例えば、化学独立栄養性微生物)に由来する完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を培地に添加することによって、増殖細胞にビタミン源を提供する。該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、例えば、筋肉細胞および/またはその他の細胞についての、ビタミン(ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の供給源であってもよい。該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、例えば、筋肉細胞および/またはその他の細胞についての、1種類以上のビタミン(ビタミンA;β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、チアミン(B)、リボフラビン(B)、ナイアシン(B)、パントテン酸(B)、ビタミンB、葉酸(B)、ビタミンB12、コリン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の供給源であってもよい。該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物は、例えば、筋肉細胞および/またはその他の細胞についての、1種類以上のミネラル(カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)の供給源であってもよい。
【0303】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物を、細胞培養におけるアミノ酸;オリゴペプチド;脂質類;および/または鉄のうちの1種類以上の供給源として用いられるが、これらの供給源を受容する培養細胞は、該アミノ酸、オリゴペプチド、脂質類、および/または鉄が由来する微生物細胞とは異なる細胞である。
【0304】
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の方法によって生産される食品生産物(例えば、肉産物または肉様産物が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)は、ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12などのビタミン栄養源であってもよい。特定の実施態様においては、該食品生産物は、ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12などのビタミンを含む。特定の当該実施態様においては、該ビタミンB、ビタミンB、および/またはビタミンB12は、該食品生産物の少なくとも一部を生産するために用いる培養細胞の培地に添加される本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の抽出物によって提供される。特定の実施態様においては、該食品生産物は1種類以上のビタミンを含むが、そのようなビタミンとしては、ビタミンA;β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、チアミン(B)、リボフラビン(B)、ナイアシン(B)、パントテン酸(B)、ビタミンB、葉酸(B)、ビタミンB12、コリン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、および/またはビタミンK、が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない;これらのうちの一部、または全部が、突き詰めれば該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/または抽出物が由来する微生物に由来するものであってもよい。特定の実施態様においては、該ビタミンは、該食品生産物の少なくとも一部を生産するために用いる培養細胞の培地に添加される該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物によって提供される。
【0305】
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載のような方法で生産される食品生産物(例えば、肉または肉様産物)は、ミネラル(カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、カリウム、ナトリウム、および/または亜鉛のうちの1種類以上が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)についての栄養源であってもよい。特定の実施態様においては、該ミネラル類は、該食品生産物を生産するために用いる培養細胞の培地に添加する、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の抽出物によって、提供される。特定の実施態様においては、該完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物中に含まれる鉄は、ヘム形態の鉄を含む。
【0306】
特定の実施態様においては、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子を、他の成分と組み合わせて含む処方物が提供されるが、ここで該他の成分としては、肉;乳;卵;大豆;小麦;米;エンドウ豆;その他の植物蛋白質;酵母;プロバイオティクス;LAB;および/またはその他のGRAS微生物または肉眼視可能生物(macro-organism)のうちの1種類以上を供給源とする、バイオマスおよび/または完全細胞および/または蛋白質濃縮物および/または蛋白質単離物および/または蛋白質加水分解物および/または抽出物が挙げられる(これらのみに限定されるものではない)。特定の実施態様において、ヨーグルトミックスには、本明細書に記載の方法で生産される完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物および/またはその他の栄養素または補因子のうちの1種類以上が添加される。特定の実施態様においては、該処方物は、肉および/または大豆に由来する蛋白質またはその他のバイオマス成分を含まない。特定の実施態様においては、該処方物は、乳および/または非大豆野菜に由来する蛋白質、蛋白質加水分解物および/またはその他のバイオマス成分を含まない。場合によっては、該処方物は遺伝的に改変した微生物を含まない(すなわち、GMO不含である)。場合によっては、該処方物は肉および/または乳を含まない。特定の実施態様においては、該処方物は食品、飼料、または飲料製品に利用される。特定の実施態様においては、該食品、飼料、または飲料製品は菜食主義者向け、または完全菜食主義者向けである。特定の実施態様においては、処方はヒトによる摂取についてGRASを考慮する。
【0307】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物で増殖する細胞の培養物は、蛋白質産物を分泌する。特定の実施態様においては、該蛋白質産物を回収および/または精製するために、蛋白質精製工程を用いる。該蛋白質産物を回収および/または精製するために、当該技術分野で周知であるような、いずれの好適な蛋白質精製方法を用いてもよい。
【0308】
特定の実施態様においては、本明細書に記載のような完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を培地成分として用いて、産物を生産した後に、完全細胞バイオマスおよび/または溶解物および/または抽出物および/または蛋白質加水分解物および/またはペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物の材料を、培地または発酵ブロスおよび/または産物から除去する処理を行う。特定の場合においては、そのような除去栄養素を、より完全に利用するためにリサイクルして1種類以上の上流工程へ戻す、および/または副産物として利用する。
【0309】
以下に記載する実施例は、本発明を具体的に説明することを意図するものであって、限定するものではない。
【0310】
実施例
実施例1:Cupriavidus necatorの培養物から調製した蛋白質加水分解物
Cupriavidus necator株を無機塩増殖培地でCOを炭素源およびHを電子供与体として化学独立栄養的に培養した。増殖後に、増殖培地から完全細胞バイオマスを遠心分離により単離して、凍結乾燥した。乾燥バイオマスは、以下のように処理した。
【0311】
完全細胞バイオマスの脱脂:完全細胞バイオマスに、水酸化アンモニウムおよびメタノールを加え(1:1:0.4、WCB:NHOH:MeOH)、この混合物をドラフト内の密封キャップ容器中で1時間撹拌することにより脱脂した(脂質類を抽出除去した)。ワットマン濾紙NO.4を用いて、混合物を真空濾過した。濾過液は抽出脂質類を含んでいた。濾紙上の残留物が脱脂バイオマスであり、これを40℃恒温器内で一晩乾燥させた。
【0312】
NHOHによる蛋白質加水分解とCOによる中和:加水分解工程に投入する固形物は脱脂乾燥マス2%とし、これを必要量の脱イオン(DI)水で再水和して調製した。このスラリーをTurret Stickで15,000rpmで1分間撹拌した。(予め調製した)28%~30%NHOH溶液を用いてドラフト内で反応混合物のpHを10.85に上昇させた。50mLの有効容積を有する圧力管(サイズ:120mL)に、上記混合物を移した。次いで、混合物を110℃で10分間オートクレーブしてから、ゆっくりと蒸気排出を行った。オートクレーブ後の溶液pHは、10.82であった。次いで、溶液内に挿入したカニューレ/18Gの針より、COを泡立つように10~20分間通気することにより、pHを9に低下させた。次に、細菌性アルカリプロテアーゼを用いた酵素消化をpH9、55℃、110rpmで一晩行った。20000xg、5℃で20分間遠心分離することにより、PHBに富んだ粗沈殿から、溶解性加水分解蛋白質を含む上清を分離した。次いで、上清蛋白質加水分解物を凍結乾燥した。この蛋白質加水分解物(PH)について測定した灰分は5%であった。最少量300mgの蛋白質加水分解物の粉末を風袋重量測定済みの坩堝に入れ、マッフル炉で加熱灰分測定サイクルを行うことにより、灰分を定量した。独立に外部の検査室(SGS、North America)にて、AOAC法942.05を利用した分析測定も行った。該PHの総アミノ酸含有量およびアミノ酸プロファイルについても、SGS、North Americaにて、AOAC法AOAC994.12を用いて決定した。結果を表1に示す。
【0313】
【表1】
【0314】
実施例2:Cupriavidus necator培養物から調製した蛋白質加水分解物
Cupriavidus necatorのPHB欠損変異体株(DSM541)を、無機ミネラル増殖培地でCOを炭素源およびHを電子供与体として化学独立栄養的に培養した。増殖後に、増殖培地から完全細胞バイオマスを遠心分離により単離して、凍結乾燥した。乾燥バイオマスは、以下のように処理した。
【0315】
完全細胞バイオマスの脱脂:乾燥完全細胞バイオマスを、水酸化アンモニウムおよびエタノール(1:4:0.5w/v)で処理して脱脂した。ドラフト内でワットマン濾紙NO.4を用いて、混合物を真空濾過する前に、蓋で密閉したガラスビン内でバイオマスと溶媒スラリーを30分間撹拌した。濾過液は脂質画分を含んでいた。濾紙から回収した脱脂残留物を40℃恒温器で4~6時間乾燥させた後、一晩風乾した。
【0316】
脱脂バイオマスのCa(OH)による蛋白質加水分解とHPOによる中和:乾燥脱脂バイオマスを最終濃度2%でDI水に再懸濁した。このバイオマス溶液を、IKAウルトラタラックスを用いて15000rpmで完全に均一に再懸濁されるまで撹拌した。Ca(OH)を添加することによって、バイオマス溶液のpHを11に調整した。この溶液をガラス培地ボトルに移して、110℃で10分間オートクレーブしてから室温まで冷ました。HPOを用いてこの溶液を中和してpH9に調整した。細菌性アルカリプロテアーゼ(Sigma P8038)を2.6活性単位/gバイオマスの濃度で溶液に加えた。このバイオマス溶液を55℃振盪水浴内に一晩置いた。消化を16~24時間行った後に、このスラリーを95℃の湯浴で10分間恒温下に置くことによって、前記酵素を不活性化した。次いで、バイオマススラリーを室温まで冷ました後、26000xg、7℃で30分間遠心分離することによって、その蛋白質加水分解物(上清画分)を分離した。その結果得られた蛋白質加水分解物溶液を、-80℃冷凍庫で凍結してから凍結乾燥した。乾燥粉末の水分、灰分、および窒素含量を定量し、蛋白質プロファイルはSDS-PAGE分析によって分析した。蛋白質加水分解物中に2000ダルトン超の蛋白質は存在せず、得られた灰分は10.5%であった。このPHの総アミノ酸含有量およびアミノ酸プロファイルもまた、SGS、North Americaにて、AOAC法AOAC994.12を用いて決定した。無機物プロファイルについては、AOAC法AOAC968.08を用いて決定した。結果を表2に示す。
【0317】
【表2】
【0318】
実施例3:蛋白質加水分解物の設計
各種の異なる消化プロセス(酸加水分解、またはアルカリ加水分解、または酵素的加水分解、または自己融解)、異なる酵素特異性を有する酵素の選択(外来性の動物性/植物性/微生物性酵素および/または内在性酵素の精製物または混合物)、およびプロセスパラメータ(pH、温度およびインキュベーション時間/処理時間)について、化学独立栄養的バイオマスから生産した蛋白質加水分解物を分析する。ペプチドプロファイルによって表されるペプチド分離およびペプチドサイズについての評価を行う。ペプチドの平均分子量(MW)(Da)を決定する。総窒素に対するアミノ窒素の比率(AN/TN比)および加水分解度(DH%)ならびに遊離アミノ酸のレベルを測定する。DH%およびペプチドとアミノ酸の分布プロファイルに基づいて、各種加水分解剤の効果を比較する。本明細書に記載の方法で生産される蛋白質加水分解物の比較を、酵素、酸性、アルカリ、および/または自己融解を含む各種の加水分解法によって生産される、一般的および/または市販の蛋白質加水分解物(乳、肉、および/または大豆の蛋白質加水分解物および/または酵母エキスが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)に対して行う。全アミノ酸プロファイル、AN/TN比、ならびに上記で概説したその他のパラメーターおよび特性に基づいて、この比較を行う。
【0319】
また、所定の蛋白質加水分解物を与えたときの培養物の増殖能に基づいて、上記の比較を行う。本試験培養物は1種類以上のLABを含み得る。該LABはL.helveticus株を含み得る。比較の対象である蛋白質加水分解物は、カゼインの膵液消化で調製されるカジトン-カゼインの膵液消化物(カジトン)-ペプトンを含み得る。培養増殖能の尺度としては、経時的に測定される細胞数および固有の増殖速度が挙げられる。本試験における1陰性対照は、いかなる蛋白質加水分解物も添加していない基礎培地であり得る。他の陰性対照は、いかなる蛋白質加水分解物も添加していない、またはいかなるアミノ酸培地成分も含まない該培地であり得る。他の実験的試験および比較は、本明細書に記載の方法で調製されたものを含む異なる蛋白質加水分解物間での比較であり、これは蛋白質加水分解物が唯一のアミノ酸源を構成する培地(すなわち、その培地には全く他のアミノ酸成分を含んではいない)で行われる。他の蛋白質加水分解物に対する比較に加えて、蛋白質加水分解物を添加していないが、カザミノ酸などの遊離アミノ酸組成物は含む、あるいはカゼインなどの完全蛋白質を含む、培地に対しても比較を行う。
【0320】
実施例4:有益な真菌であるTrichoderma atrovirideに対する、完全細胞バイオマス、溶解物および加水分解物の効果に関する試験
Trichoderma atrovirideは、根圏に棲息し、また広い温度範囲および広い土壌pH条件範囲の土壌に棲息する腐生性真菌である。この真菌は、植物病原性真菌(トマト、豆類、キュウリ、イチゴ、綿およびブドウを含む何百もの植物性農作物に疾病を起こすRhizoctonia solaniおよびBotrytis cinereaを含む)に対抗する能力を有しており、そのために多くの異なる作物にとって有益である。それはまた植物による微量栄養素の摂取を増加させ、根の成長刺激にも関連している。Trichoderma atrovirideは、農作物収穫システムにおいて、微生物接種材料として広く用いられている。
【0321】
本インビトロ実験の目的は、以下のものによる該刺激活性を評価することである:すなわち、7種類の異なる溶解物および蛋白質加水分解物、ならびにCupriavidus necatorバイオマスから、COを炭素源として、およびHを電子供与体として用いて独立栄養的に増殖させ、本明細書に記載の方法で生産した完全細胞バイオマス(WCB)。これら7種類のバイオマス産物を、2種類の市販の生物刺激剤(一方は植物由来PHを含み、他方は動物由来PHを含む)に対して比較した。
【0322】
異なるWCB、溶解物、およびPH試料が、滅菌基質におけるTrichoderma atroviride AT10の増殖を促進する、増殖促進能について評価を行った。Trichoderma atroviride AT10の純粋培養物を、対照としてのジャガイモデキストロース寒天(PDA)培地、ならびに9種類のWCB、溶解物、およびPH試料を3ml/Lで添加したPDA培地を用いて、25℃の暗所で24時間増殖させた。
【0323】
溶解物およびPH産物で強化したPDA培地は、必要量の各有機産物を脱イオン水に溶解することによって調製した。得られた溶液は、0.25μmフィルターを用いて濾過しながら、45℃でPDAを含む滅菌ボトルに移した。基質を穏やかに撹拌してから、個々の9cmのペトリ皿に注いだ。ペトリ皿内の基質が冷えて固まってから、4日間増殖させた後の純粋培養物の周辺域から得たTrichoderma atroviride AT10の5mm菌糸体ディスクを、各ペトリ皿の中央部に置いて、25℃でインキュベートした。24時間インキュベーションした後に、この菌糸体の放射状増殖を計測した。処理当たりペトリ皿の枚数は12枚であった。全データをSPSS v.21(IBM Corp.、Armonk、NY、USA)で統計分析した。ダンカンの多重比較検定を、測定した有意変数のそれぞれについて、P=0.05で実施した。表3において、平均値の後に標準誤差を示す。各カラム内の異なる文字は、ダンカンの多重比較検定P=0.05にしたがう有意差を示している。
【0324】
【表3】
【0325】
有機産物で強化したPDA基質は、24時間インキュベーション後のTrichoderma菌糸体放射増殖に大きく影響することが明らかになった。塩基処理後にプロテアーゼ処理を行うことによって生産したC.necatorのPHが、最も高いTrichoderma増殖を記録した。植物由来PHを基盤とする市販の生物刺激剤では平均増殖が低いが、有意差はなかった。塩基処理後にプロテアーゼ処理を行うことによってC.necatorから生産したPHは、対照および動物由来PHを基盤とする市販の生物刺激剤よりも有意に高い増殖をもたらした。Trichodermaの増殖および生育の手段である胞子について対照(図5)と比較した場合には、C.necatorのPHによる処理後では、肉眼的にも、実質的により密度の高い胞子形成が観察される。
【0326】
この予備的試験の結果は、塩基処理後にプロテアーゼ処理を行うことによってC.necatorから生産したPHは、インビトロでTrichodermaの増殖を促進する効力を有していることを実証した。根の成長および栄養摂取を刺激し、天然または人工接種したTrichoderma種の土壌集団を強化する目的で、C.necator由来のPHを、作物の根域に用いてもよい。
【0327】
実施例5:蛋白質性Cupriavidus necatorバイオマスのテンペ発酵基質への添加に関する試験
本試験の目的は、テンペ生産に利用する植物基質を強化する目的に、COで増殖させたCupriavidus necator由来の高蛋白質バイオマスが利用可能か否かを評価することであった。
【0328】
Rhizopus oryzaeの市販スターター培養物を取得した。
【0329】
ひよこ豆を滅菌水(沸騰させたもの)に一晩浸漬した後、インスタントポットに入れて通常圧力下モードで1分間調理した。調理したひよこ豆は、ちょうど完全に噛める程度に充分柔らかくなっていた。次いで、このひよこ豆の湯をまだ熱いうちに素早く捨てた。次に、ペーパータオルの上にひよこ豆を薄い層に広げて乾燥させた。豆の皮をはずして取り除いた。
【0330】
次に、2つの平らな広口プラスチック容器にひよこ豆を分けて入れた。容器1を対照とし、そこにはひよこ豆のみを入れた。容器2には、乾燥させたCupriavidus necator完全細胞バイオマスと共に、ひよこ豆を入れ、バイオマスの割合は出発ひよこ豆重量の10%とした。
【0331】
両方の容器に食酢を徐々に入れながら、よく混合して出発pHを3.5に調整した。
【0332】
調理豆乾燥重量1ポンド当たり茶さじ1杯のRhizopus oryzaeスターター培養物を基質全体に振りかけた。次いで、ひよこ豆+培養物をスパチュラでよく混ぜて、培養物が基質全体に均一に馴染むようにした。
【0333】
広口プラスチック容器(すなわち、ひよこ豆対照およびひよこ豆+C.necator実験検体)は両方とも、0.3~0.5インチ間隔の穴の開いた蓋を有しており、この蓋を容器上部に緩く保持させた。これら容器を30.5℃の恒温器に移して、48~72時間インキュベートした。
【0334】
20~24時間のインキュベーション後に、R.oryzaeの白色菌糸増殖が開始し、この後、発酵基質を恒温器から室温に移した。48~72時間後に、R.oryzaeの完全菌糸増殖が観察された。
【0335】
白色菌糸増殖であっても、R.oryzaeは、C.necatorバイオマスの添加の有る無しにかかわらず、等しく良好にひよこ豆で増殖することが観察された。したがって、テンペにC. necatorによって提供される蛋白質およびその他の栄養素(例えば、Bビタミン)を補うことは可能である。
【0336】
補充を行ったテンペと行わなかったテンペの間の、組成物上または栄養上の差異を調べるために、さらなる分析を実施する。
【0337】
テンペまたは味噌または醤油のような、その他の発酵製品の生産に利用する他の可食真菌株(Aspergillus oryzae(NRRL3485)、Rhizopus oligosporus(NRRL2710)、およびRhizopus oryzae(NRRL3613)など)を試験する目的で、同様の実験を実施することができる。米、大麦、緑豆、おから粉、および大豆などの別の発酵基質についても試験することができる。
【0338】
実施例6:蛋白質加水分解物および蛋白質単離物を用いた乳酸菌増殖の試験
COで生産されるCupriavidus necator蛋白質性バイオマスに由来する栄養素について、GRAS乳酸菌(LAB)を試験する。被検蛋白質由来栄養素としては、以下が挙げられる:NHOHを用いた塩基処理と、その後のCOによる中和および細菌アルカリプロテアーゼを用いた酵素的加水分解(BAP)によって生産されるアルカリ蛋白質加水分解物(PH);
POを用いた酸処理と、その後のCa(OH)による中和および引き続き行うBAPによる酵素的加水分解によって生産される蛋白質酸加水分解物;
および
バイオマスの超音波処理とそれに続く遠心分離、沈殿の廃棄、蛋白質に富んだ上清の回収と乾燥によって形成する蛋白質単離物(PI)。
【0339】
これらおよびその他の蛋白質由来産物をLAB株について試験する;そのようなLAB株としては、Sthermophilus、L.delbrueckiiの亜種Bulgaricus、L.acidophilus、およびBifidobacterium lactisなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。LAB株の試験は、個別に実施し、また共培養、混合培養、およびコンソーシアムでも実施する。対照に用いる増殖培地としては、1つの対照が通常の牛乳であり、別の対照はEllikerブロス(Sigma #17123)である。Ellikerブロスの組成は以下である:
0.5g/Lアスコルビン酸;20g/Lカゼイン酵素的加水分解物;5g/Lデキストロース;2.5g/Lゼラチン;5g/L乳糖;5g/Lサッカロース;1.5g/L酢酸ナトリウム;4g/L塩化ナトリウム;5g/L酵母エキス。
【0340】
乳汁ヨーグルトの対照例を次のようにして調製する:
1~2クオートの低温殺菌全乳を180Fに加熱し、次いで115Fに冷やす。この乳汁をガラス容器に注ぎ込み、1パックの市販ヨーグルトスターター培養物(S.thermophilus、L.delbrueckiiの亜種Bulgaricus、L.acidophilus、およびBifidobacterium lactisを含む)を加えて充分に混ぜる。次いで、この乳汁培養物に覆いをして、ヨーグルトモードにしたインスタントポット中、105~112Fでおおよそ8時間インキュベートする。培養物の確認は、穏やかにジャーを傾けることによって行う。ジャーの内側面を流れるように動くのではなく、ヨーグルトが一塊となってジャーの内側面から離れるようであれば、培養は終了である。ヨーグルトが固まったら、覆いをして室温で2時間冷やしてから冷蔵する。
【0341】
EllikerブロスでのLAB増殖の対照例を次のようにして調製する:
48.5グラムのEllikerブロス粉末を1リットルの蒸留水に懸濁する。培地を完全に溶解するために撹拌して沸騰させ、次いで121℃で15分間オートクレーブを実施して滅菌する。培地溶液は透明で、淡色~中程度の琥珀色を呈し、pHは6.6~7である。この溶液を115Fに冷やして、培地1~2クオート当たり、1パックの市販ヨーグルトスターター培養物(S.thermophilus、L.delbrueckiiの亜種Bulgaricus、L.acidophilus、およびBifidobacterium lactisを含む)を接種する。次いで、この培地に覆いをして、105~112Fでおおよそ24~48時間培養する。Ellikerブロス中のLAB培養物の600nmにおける光学密度(OD600)を経時的に観察する。
【0342】
乳汁対照に対して試験を行う1つの実験は、C.necator由来のPHまたはPIを、C.necator窒素(N)対乳汁窒素=1:1比で乳汁に混合した後、上記と同一のヨーグルト発酵工程を実施することを含む。
【0343】
Ellikerブロス対照に対して試験を実施するもう1つの他の実験は、ブロス中のカゼイン酵素的加水分解物の代替として被検基質(PH/PI)を用いることを含み、このときEllikerブロス中で20g/Lカゼイン酵素的加水分解物と窒素含量が同一になる量の被検基質(PH/PI)を用いる。培地の残りの組成に関しては同一に保つ。増殖速度および最終力価についての比較を行うことにより、実験的ブロスでのLAB増殖能をEllikerブロス対照での増殖能と比べる。同様の実験は、Ellikerブロス中のカゼインの酵素的加水分解物およびゼラチンの両方を、窒素量を同一に調整しながら、実験的PHおよび/またはPIで代替すること;ならびに、Ellikerブロス中のカゼインの酵素的加水分解物、ゼラチン、および酵母エキスを、窒素量を同一に調整しながら置換されたカゼインの酵素的加水分解物およびゼラチンで、およびビタミンB量またはヌクレオチド量を同一に調整しながら置換された酵母エキスで代替することを含む。
【0344】
実施例7:細胞生存率およびその他の性能測定値に及ぼす蛋白質加水分解物の効果に関する試験
生産プロセス流入するCOを唯一の炭素源として、本明細書に記載の方法で調製した溶解物および/または蛋白質加水分解物の、それらを添加する細胞培養物への影響を調べる。本明細書に記載の方法で生産される蛋白質の酸加水分解物を2%(w/v)の濃度で乳基質に添加したときの、LA株の生存率に対する効果を調べる。実験および対照の両方について、12週間後のLA株の生存率を、コロニー形成単位(CFU)/グラムで判定する。陰性対照は乳基質のみであってもよい。陽性対照は、2%の濃度で添加する酸性カゼイン加水分解物(ACH)およびシステインを添加したものであってもよい。その他の陽性および陰性の対照としては、以下のものの添加であってもよい:
システインのみ、ACHのみ、乳清粉末(WP)、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、トリプトン(カゼインのトリプシン消化物)、大豆蛋白質加水分解物(NZ Soy-BL、Hy-soy、およびダイズタンパク質酸加水分解物(Amisoy)などの市販大豆PHが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない)、または完全大豆蛋白質。S.thermophilusおよびBifidobacteriaの菌種を含む他の株を、生存率ならびにその他の性能測定値について試験する。細胞生存率に加えて、またはそれらの代替として、測定、試験、および比較するその他の培養測定値としては、固有の増殖速度、pH4.50に至るまでに必要とする発酵時間、および乳酸力価(g/L)が挙げられる。
【0345】
実施例8:蛋白質加水分解物を用いて増殖したプロバイオティクス株についての増殖および酸生産の評価
本明細書に記載の方法で生産される1種類以上の蛋白質加水分解物を添加した培地を用いて、B.lactis株の増殖とこの株による酸産生を評価する。比較する陽性対照としては、培地としてのヒツジ乳汁およびヤギ乳汁であって、市販のプロテアーゼ(例えば、Aspergillusの菌種、Protease 2A;天野エンザイム株式会社、名古屋、日本)を用いて調製した乳蛋白質加水分解物(MPH)を添加したヒツジ乳汁およびヤギ乳汁が挙げられる(GomesとMalcata、1998)。実験的例および対照例において、本明細書に記載の方法(例えば、COの化学独立栄養的変換)で生産される遊離アミノ酸を含む様々な由来の遊離アミノ酸を、窒素を強化した添加剤として利用することもできる。遊離アミノ酸濃縮物を、25~50mL/Lの割合で培地に添加する。実験試料および対照試料中のB.lactisの生細胞数を計測して比較する。
【0346】
実施例9:蛋白質加水分解物および/または蛋白質を用いたスターター培養物の生産の評価
P.pentosaceusを基質で増殖させる。P.pentosaceusの生産における窒素源としての、本明細書に記載の方法によって生産した蛋白質および/または蛋白質加水分解物を、陽性対照と比較する;ここで、該陽性対照としては、カゼインペプトン(加水分解カゼイン);プリマトン(加水分解肉蛋白質);および/または酵母ペーストが挙げられる。発酵時間および/またはバイオマス収量を含む性能測定値を決定する。最適窒素/炭素(N/C)比を決定する。
【0347】
本明細書に記載の方法によって生産される各種の完全細胞バイオマス、溶解物、および完全蛋白質の、Pediococcus acidilacticiに関する増殖プロモーターとしての効果を、各種の乾燥および凍結肉ストック(1~5%)に対して比較する。
【0348】
実施例10:溶解物、加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物のライブラリーによる、異なる細胞株の増殖能に関する試験
本明細書に記載のような異なる原材料および方法を用いて産生される複数の溶解物、加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物のライブラリーを、組成分析およびライブラリーの構成員を含む培地での各種のモデル細胞種の増殖能によって評価する。
【0349】
溶解物、加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物の組成分析および特徴付けは以下を含む:
α-アミノ窒素(AN)%;総窒素(TN)%;(AN/TN)比;遊離アミノ酸(総アミノ酸に対する%);ペプチドサイズ範囲、例えば100~200Da(%);200~500Da(%);500~1000Da(%);>1000Da(%);平均MW;灰分(%);水分(%);pH;ナトリウム(%);カリウム(%);カルシウム(mg/g);マグネシウム(mg/g);塩素(mg/g);硫酸塩(mg/g);リン酸塩(mg/g);アミノ酸含有量、すなわちアラニン(mg/g)、アルギニン(mg/g)、アスパラギン酸(mg/g)、システイン(mg/g)、グルタミン酸(mg/g)、グリシン(mg/g)、ヒスチジン(mg/g)、イソロイシン(mg/g)、ロイシン(mg/g)、リジン(mg/g)、メチオニン(mg/g)、フェニルアラニン(mg/g)、プロリン(mg/g)、セリン(mg/g)、トレオニン(mg/g)、トリプトファン(mg/g)、チロシン(mg/g)、バリン(mg/g)、および総アミノ酸(mg/g)。
【0350】
細胞種の生育を、本明細書に記載の方法によって生産される1種類以上の溶解物、加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を添加した培地で試験する。
【0351】
そのような増殖試験に用いることのできる3種類のモデル細胞種は、イラクサギンウワバ(キャベツルーパー)に由来するHigh Five(商標)細胞、およびヨトウムシ(Spodoptera frugiperda)に由来するSf9細胞およびSf21細胞である。定量的性能評価前に、試験対象である溶解物、加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を(例えば、0.6%w/vの濃度で)添加した血清不含培地で各細胞株を培養する。各細胞種について、補充添加を行った培地における増殖を、標準培地における増殖と比較する。
【0352】
実施例11:動物由来蛋白質を含まない細胞培養培地の処方
本明細書に記載の方法によって生産される溶解物、加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を基礎培地ヘの添加物として検査する。これら組成物を増量させながら様々な濃度で基礎培地に加える。これら添加物を含む各培地における細胞増殖を、対応する非添加培地(陰性対照)またはFBS添加培地(陽性対照)と比較する。3継代した培養物について25cmフラスコ当たりの平均細胞数で増殖を評価する。実験培地および対照培地で増殖させる細胞株は、Vero(アフリカミドリザル腎臓)細胞であってもよい。血清不含のプロトタイプ処方物に、様々な由来の加水分解物を添加し、それらの培地におけるVero細胞の増殖を調べ、馴化3継代後の培養物の増殖を、5%(v/v)FBSを添加したE-MEM参照培地と比較する。溶解物、加水分解物、ペプチド組成物およびアミノ酸組成物は各々200mg/Lの濃度で培地に添加する。平均細胞数について、FBS添加参照材料と比較する。
【0353】
本明細書に記載の方法によって生産される蛋白質加水分解物であって血清不含の蛋白質加水分解物、または血清添加対照のいずれかで、維持し、または感染させるVero細胞培養から得られる標的モデルウイルスの収量の比較検討も行う。本明細書に記載の方法によって生産される蛋白質加水分解物を添加した血清不含培地で増殖させたVERO細胞が産生するシンドビス・ウイルス、ポリオウイルス1、仮性狂犬病ウイルス、およびレオウイルスの力価を、対照として2%血清を含むEMEMで増殖させたVERO細胞のウイルス産生と比較する。この比較はプラーク形成単位(PFU)に基づいて行う。
【0354】
本明細書に記載の方法によって生産される蛋白質加水分解物を添加した血清不含培地における、MDCK(Madin-Darbyイヌ腎臓)細胞の増殖およびイヌアデノウイルスまたは感染性ウシ鼻気管炎(IBR)ウイルスの産生を、5%FBSを添加したE-MEMにおける増殖および産生と比較する。本明細書に記載の方法によって生産される蛋白質加水分解物を添加した血清不含培地における、PK-15(ブタ腎臓)細胞の増殖および仮性狂犬病ウイルスの産生を、5%FBSを添加したE-MEMにおける増殖および産生と比較する。この比較は細胞数および50%組織培養感染量(TCID50)に基づいて行う。
【0355】
実施例12:CHO細胞による組換え蛋白質産生
組換えCHO細胞に関する比較増殖実験を、本明細書に記載の方法によって生産される蛋白質加水分解物を添加した血清不含培地で行い、血清対照における増殖および産生と比較する。増殖の比較は、ピーク細胞密度および持続細胞生存率に基づいて行う。固有の蛋白質産生速度および容積測定的生産性について比較する。
【0356】
実施例13:モデル細胞で試験したペプチド添加物
本明細書に記載の方法で生産されるペプチド添加物の活性を、IgG2a抗体を産生するモデルマウスハイブリドーマME-750で試験する。その蛋白質不含培地は、0.4mM HEPESおよび2.0g/L炭酸ナトリウムを加えたDMEM/F12/RPMI1640(3:1:1)である(Franekら、1992)。この対照に、さらにイーグル基礎培地(BME)アミノ酸、2.0mMグルタミン、生存促進性アミノ酸(FranekとSramkova、1996a)を添加し、ならびに0.4mMクエン酸酸化鉄を含む鉄強化増殖促進混合物を添加する(Franek、ら、1992、上掲)。対照に対して比較を行う実験では、以下の添加物のうちの1種類以上を本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物で代替する:
イーグル基礎培地(BME)アミノ酸、2.0mMグルタミン、生存促進性アミノ酸(FranekとSramkova、1996a、上掲)、および/または0.4mMクエン酸酸化鉄を含む鉄強化増殖促進混合物(Franekら、1992、上掲)。対照との比較を行う別の実験では、上記に列挙されるような、対照に加える添加物を含む完全培地を利用し、次いでさらにこの培地に、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物を添加する。接種時における溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物の濃度は、0.1%、0.2%、または0.3%(w/v)である。
【0357】
別の実験群では、供給回分培養物(fed-batch culture)について試験する。対照においては、10xBMEアミノ酸、10xBMEビタミン、および20mMグルタミンで栄養価を高めたDMEMを含む、0.25mL容量の栄養混合物を毎日添加する。対照との比較を行う実験では、10xBMEアミノ酸;10xBMEビタミン;および/または20mMグルタミンのうちの1種類以上を、本明細書に記載の方法で生産される溶解物、蛋白質加水分解物、ペプチド組成物および/またはアミノ酸組成物で代替する。
【0358】
回分培養物(batch culture)および供給回分培養物(fed-batch culture)のいずれも、5%COを含む加湿環境下37℃で、25cmのT-フラスコを用いて増殖させる。培養容積は6.0mLである。
【0359】
モノクローナル抗体の濃度は、較正曲線を利用した免疫比濁法で決定する。培養物中にアポトーシスを起こした細胞の数は、アポトーシス形態を示す細胞(波打つ膜を伴う萎縮細胞)を顕微鏡下でカウントすることによって決定する。細胞周期の各期の割合は、透過化およびヨウ化プロピジウムによる染色によって決定する。
【0360】
回分実験および供給回分実験は、生細胞/mL;培養生存率(%);モノクローナル抗体濃度(mg/L)に基づいて、それぞれの対照と比較する。これらのパラメーター値の比較は、接種してから6日後に行う。
【0361】
実施例14:蛋白質加水分解物中間体を経る2工程プロセスにおける、COからのオメガ-7油脂生産
このプロセスの第1段階においては、Cupriavidus necatorを利用してCOおよびHをもとに、蛋白質および/またはポリヒドロキシ酪酸(PHB)が産生される。第2段階では、第1段階で産生される加水分解蛋白質および/またはPHBで、オメガ-7産生性微生物Rhodococcus opacusを増殖させて、Rhodococcus opacusバイオマスから油脂を抽出する。
【0362】
本試験では、このプロセスの第2段階に注目し、Cupriavidus necatorバイオマスの加水分解によって生成し得るものに類似することが知られている被検基質を用いて、オメガ-7油脂を含む油脂を産生するRhodococcus opacusの産生能を実証した。予備的スクリーニングでは、各種の代表的な基質を選択した。トリプトンのみ、またはトリプトンをヒドロキシ酪酸と組み合わせた場合に、Rhodococcus opacusは最も高い力価を示した。油脂生産については、C.necatorをトリプシン加水分解したPHを代替するトリプトンを選択した。
【0363】
300リットルのバイオリアクター中でトリプトンを炭素源および窒素源として、Rhodococcus opacusを増殖させ、560グラムの乾燥バイオマスが得られた。乾燥前のバイオマスの一部の分析に基づけば、総脂質類のうちのオメガ-7分画は、15.7%であった(4%パルミトレイン酸および9%バクセン酸を含む)。バイオマスの総脂質含有量は19%であり、9~10%の中性脂質類を含む。溶媒混合物をもちいて、バイオマスから油脂を抽出した。このプロセスによって、中性脂質類および極性脂質類を分離した。約100mLの油脂を抽出した。
【0364】
実施例15:微生物培地においてトリプトンの代替となる化学独立栄養性微生物由来蛋白質加水分解物
化学独立栄養性微生物に由来する(例えば、CO、CO、および/またはCHなどのC1炭素源から生合成された蛋白質に由来する)複数の蛋白質加水分解物を評価する。Luria-Bertani(LB)培地(ブロス)におけるトリプトンを、それと等量の上記代替蛋白質加水分解物(PH)によって代替する。LB培地に存在するトリプトンを各種のPHで置換した代替物を、組換え大腸菌株の増殖速度および増殖収量に基づいて評価する。さらに、プラスミドの安定性、誘導性および各種蛋白質加水分解物存在下で増殖させた組換え株における、プラスミドがコードするβ-ガラクトシダーゼの活性を評価する。
【0365】
細菌株
用いる株は、プラスミドPOP(UV-5)-3を含む大腸菌(Escherichia coli)ATCC39114である。このプラスミドはlacZ遺伝子を含み、β-ガラクトシダーゼを非常に高いレベルで発現する(最大で、総細胞蛋白質の15%)。
【0366】
培地
この培養物の通常の増殖には、LB寒天およびLBブロスが用いられる。LB培地は、蒸留水1リットル当たり10gのトリプトン、5gの酵母エキスおよび10gの塩化ナトリウムを含む。
【0367】
培養物は、グリセリン添加LBブロス中に入れて、-80℃で保存する。テトラサイクリンは20μg/mLの濃度で用いる。IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)は、0.5mMの濃度で用いる。
【0368】
各種の蛋白質加水分解物で、LB培地中のトリプトンを代替する。それぞれ異なる蛋白質加水分解物を、10g/L(w/v)の濃度で用いる。
【0369】
増殖試験
シード培養物は、試験管中の5mLのLBブロスにおいて、37℃で好気的に増殖させる。接種材料を1%で用い、500mLの枝付きフラスコ中の20mLの培地に接種してから、37℃で250rpmの振盪を行いながら増殖させる。増殖測定は600nmの光学密度で行う。
【0370】
β-ガラクトシダーゼアッセイ
試験管中の、テトラサイクリン(20μg/mL)を含む5mLの各培地(PH実験およびLB陽性対照)それぞれに、培養物の単一コロニーを接種して、37℃で250rpmの振盪を行いながらインキュベートする。8~12時間後に、接種材料を1%で同一組成の新鮮培地5mLに移し、振盪しながら好気的に一晩増殖させる。一晩増殖させた後、接種材料を1%で125mLの三角フラスコ内の新鮮培地20mLに移し、光学密度がそれぞれ0.35単位および0.7単位に達するまで、増殖を継続する。IPTGを最終濃度0.5mMで添加することによって、β-ガラクトシダーゼを誘導する。この培養物を250rpmで振盪しながら、37℃で30分間誘導を行う。上記のように増殖させた細胞をβ-ガラクトシダーゼ活性についてアッセイし、その単位数をMiller(1992)の方法で算出する。
【0371】
プラスミド安定性
多様な培地におけるプラスミド安定性を判定する目的で、培養物の単一コロニーを試験管内のLBブロス5mLに接種し、250rpmで振盪しながら37℃でインキュベートする。一晩増殖の後に、接種材料を1%で125mLの三角フラスコ内の20mLの様々な培地(実験的PH培地およびLB対照)に移し、250rpmで振盪しながら37℃で増殖させる。培養物は、ODが1.4になるまで増殖させる。試料(100ML)を分注して、希釈し、テトラサイクリンの存在下および非存在下で様々な培地のプレートに播種する。これらのプレートを37℃で12時間インキュベートし、コロニーを計数する。
【0372】
蛋白質加水分解物の特性
蛋白質含量(%)、全アミノ酸組成およびプロファイル、総窒素(TN)(%)、アミノ窒素(AN)(%)、アミノ窒素対総窒素の比AN/TN、pH、灰分(%)、および水分(%)などの加水分解物の化学特性を、実験的培地およびLB対照について測定する。様々な培地のアミノ酸の割合%および絶対アミノ酸組成をAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValについて決定する。
【0373】
本開示はその応用において、本明細書中に説明される構成成分の処方および構成の詳細に限定されるものではない。本開示の実施態様は、様々な方法で実施および実行することが可能である。または、本明細書中の表現および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定するものであるとみなすべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、および本明細書中のそれらの変形の使用は、その語のあとに列挙される項目、およびそれらの同等物ならびに付加的な項目を含むことが意図される。
【0374】
上記の発明は、明確な理解を目的として、実例および具体例によってある程度詳細に説明されているが、付属の特許請求項によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の変形および変更を加え得ることは、当業者にとっては明白である。したがって、本願の記載が本発明の範囲を限定するものであるとみなすべきではない。
【0375】
本明細書中で引用するあらゆる公表物、特許、および特許出願は、すべての目的において、またあたかも個々それぞれの公表物、特許、および特許出願が具体的かつ個別に本明細書の一部を構成するが如く、参照としてその全体が本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】