(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】RORγ調節剤としての三環スルホン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 215/36 20060101AFI20230310BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230310BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230310BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230310BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230310BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230310BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230310BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230310BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230310BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230310BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230310BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230310BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20230310BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C07D215/36 CSP
A61P11/06
A61P37/08
A61P3/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P17/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P25/00
A61P13/12
A61K31/473
C07D409/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544733
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021014488
(87)【国際公開番号】W WO2021150803
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チンジエ
(72)【発明者】
【氏名】ダール,ティ ジー ムラリ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC95
4C063DD14
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC28
4C086GA04
4C086GA06
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC21
(57)【要約】
本明細書では、式(I):
(式中、全ての置換基は本明細書に規定されている)
のRORγ調節剤、あるいはその立体異性体または医薬的に許容される塩が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、Rが、
【化2】
である]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
(S)-N-((6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパンアミドである、式(II):
【化3】
の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物、および医薬的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項4】
患者における喘息、アレルギー性疾患または障害、代謝疾患または障害、およびがんから選択される自己免疫性疾患または障害を治療する方法であって、患者に治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを特徴とする、方法。
【請求項5】
自己免疫性疾患または障害が、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性移植片対宿主病、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群、および多発性硬化症から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項2に記載の化合物、および医薬的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
患者における自己免疫性疾患または障害、喘息、アレルギー性疾患または障害、代謝疾患または障害、およびがんから選択される、疾患または障害を治療する方法であって、治療上有効量の請求項2に記載の化合物を患者に投与することを特徴とする、方法。
【請求項8】
自己免疫性疾患または障害が、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性移植片対宿主病、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群、および多発性硬化症から選択される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年1月24日出願の米国仮出願番号第62/965,206号に対する優先権を主張するものであって、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、レチノイド関連オーファン受容体RORγの調節剤および該調節剤を使用する方法に関する。ここに記載する化合物は、特にヒトおよび動物における多様な疾患および障害の治療に有用である。障害の例として、以下に限らないが、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性移植片対宿主病、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群および多発性硬化症が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
レチノイド関連オーファン受容体、RORα、RORβ、およびRORγは、臓器発達、免疫、代謝、および概日リズムを含む多数の生物学的過程において重要な役割を果たす。例えば、Dussault et al. in Mech. Dev. (1998) vol. 70, 147-153;Andre et al. in EMBO J. (1998) vol. 17, 3867-3877; Sun et al. in Science (2000) vol. 288, 2369-2373;およびJetten in Nucl. Recept. Signal. (2009) vol. 7, 1-32を参照のこと。
【0004】
RORγは、胸腺、腎臓、肝臓、および筋肉を含むいくつかの組織で発現する。RORγは、RORγ1およびRORγ2(RORγおよびRORγtとしても知られる)の2つのアイソフォームが同定されている。例えば、Hirose et al. in Biochem. Biophys. Res. Commun. (1994) vol. 205, 1976-1983; Oritz et al. in Mol. Endocrinol. (1995) vol. 9, 1679-1691;およびHe et al. in Immunity (1998) vol. 9, 797-806を参照のこと。RORγtの発現は、CD4+CD8+胸腺細胞、IL-17生産ヘルパーT(Th17)細胞、リンパ組織誘導(LTi)細胞、およびγδ細胞を含むリンパ系細胞型に限定される。RORγtは、リンパ節およびパイエル板の発達ならびにTh17、γδ、およびLTi細胞の正常分化に必須である。例えば、Sun et al. in Science (2000) vol. 288, 2369-2373; Ivanov et al. in Cell (2006) vol. 126, 1121-1133; Eberl et al. in Nat. Immunol. (2004) vol. 5, 64-73; Ivanov et al. in Semin. Immunol. (2007) vol. 19, 409-417;および Cua and Tato in Nat. Rev. Immunol. (2010) vol. 10, 479-489を参照のこと。
【0005】
Th17細胞および他のRORγ+リンパ球により生産される炎症性サイトカイン(例えば、IL-17A(IL-17とも称する)、IL-17F、およびIL-22)は、細胞外病原体に対する免疫応答を活性化し、指令する。例えば、Ivanov et al. in Semin. Immunol. (2007) vol. 19: 409-417;および Marks and Craft in Semin. Immunol. (2009) vol. 21, 164-171を参照のこと。RORγは、IL-17転写を直接抑制し、マウスにおけるRORγの破壊はIL-17産生を減弱させる。例えば、Ivanov et al. in Cell (2006) vol. 126, 1121-1133を参照のこと。
【0006】
IL-17産生の調節不全は、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)および喘息を含むいくつかのヒト自己免疫性疾患および炎症性疾患に関与している。例えば、Lock et al. in Nat. Med. (2002) vol. 8, 500-508; Tzartos et al. in Am. J. Pathol. (2008) vol. 172, 146-155; Kotake et al. in J. Clin. Invest. (1999) vol. 103, 1345-1352; Kirkham et al. in Arthritis Rheum. (2006) vol. 54, 1122-1131; Lowes et al. in J. Invest. Dermatol. (2008) vol. 128, 1207-1211; Leonardi et al. in N. Engl. J. Med. (2012) vol. 366, 1190-1199; Fujino et al. in Gut (2003) vol. 52, 65-70; Seiderer et al. in Inflamm. Bowel Dis. (2008) vol.14, 437-445; Wong et al. in Clin. Exp. Immunol. (2001) vol. 125, 177-183;および Agache et al. in Respir. Med. (2010) 104: 1131-1137を参照のこと。これらの疾患のマウスモデルにおける、中和抗体によるIL-17の機能の阻害またはIL-17もしくはIL-17受容体の遺伝子破壊は、疾患経過または臨床症状を軽減する。例えば、Hu et al. in Ann. N.Y. Acad. Sci. (2011) vol. 1217, 60-76を参照のこと。
【0007】
マウスにおけるRORγの破壊はまた、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、イミキモド誘発乾癬、大腸炎およびアレルギー性気道疾患を含む自己免疫および炎症の動物モデルにおいて疾患進行または重症度を減弱させる。例えば、Ivanov et al. in Cell (2006) vol. 126, 1121-1133; Yang et al. in Immunity (2008) vol. 28, 29-39; Pantelyushin et al. in J. Clin. Invest. (2012) vol. 122, 2252-2256; Leppkes et al. in Gastroenterology (2009) vol. 136, 257-267;およびTilley et al. in J. Immunol. (2007) vol. 178, 3208-3218を参照のこと。
【0008】
この背景技術部分の各引用文献は、その全体をあらゆる目的で参照することで本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
様々な炎症性疾患および自己免疫性疾患を処置するための治療剤は存在するが、これらの治療分野においてなお相当なアンメット・メディカル・ニーズが残っている。ヒト疾患におけるIL-17の役割およびマウス疾患モデルにおける標的としてのIL-17およびRORγの検証から、RORγt活性を調節できる化合物は、多くの免疫障害および炎症性障害の処置において治療効果をもたらすと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある態様において、本発明は、式(I):
【化1】
[式中、Rは、
【化2】
である]
の化合物またはその医薬的に許容される塩を包含する。本発明は、その立体異性体、溶媒和物またはプロドラッグを含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、(S)-N-((6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパンアミドである式(II):
【化3】
の化合物を包含する。
【0012】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載した式(II)の化合物または医薬的に許容される塩、ならびに医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物を包含する。
【0013】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物を包含する。
【0014】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容される塩の有効量を、細胞と接触させることを含む、細胞中のRORγを調節する方法を包含する。この態様は、インビトロまたはインビボで行われ得る。
【0015】
別の態様において、本発明は、RORγにより調節される疾患または障害に罹患している患者を治療する方法であって、治療上有効量の式(I)に記載の化合物または医薬的に許容される塩、あるいは本明細書に記載の医薬組成物を患者に投与することを特徴とする方法を包含する。
【0016】
別の態様において、本発明は、炎症性疾患または障害、自己免疫性疾患または障害、アレルギー性疾患または障害、代謝疾患または障害、および/またはがんから選択される患者の疾患または障害を治療する方法であって、本明細書に記載した通りの、治療上有効量の式(I)に記載の化合物または医薬的に許容される塩、あるいは医薬組成物を患者に投与することを特徴とする方法を包含する。
【0017】
(本発明の詳細な説明)
ある態様において、本発明は、式(I):
【化4】
の化合物、またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物を包含する。
【0018】
別の態様において、本発明は、(S)-N-((6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパンアミドである、式(II):
【化5】
の化合物を包含する。
【0019】
ある実施態様において、本発明は、医薬的に許容される担体および治療上有効量の本発明の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、本発明の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物を製造する方法を提供する。
【0021】
別の実施態様において、本発明は、治療に使用するための本発明の化合物を提供する。
【0022】
別の実施態様において、本発明は、同時、別々または連続で治療に用いる、本発明の化合物と別の治療薬の組み合わせ医薬を提供する。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、以下に限らないが、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性移植片対宿主病、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群および多発性硬化症などが構成として含まれる炎症疾患の治療において使用するための本発明の化合物(または疾患を治療する方法)を提供する。
【0024】
次に示すものは、本明細書および添付する特許請求の範囲で使用される用語の定義である。本明細書での基または用語について提供される最初の定義は、特に断りが無い限り、本明細書および特許請求の範囲をとおして、個々にまたは他の基の一部としてその基または用語に適用される。
【0025】
カルボン酸を含んでいる式Iの化合物は、(イオン化していない)遊離体で存在し得るか、または塩を形成し得るが、それらもまた本発明の範囲に含まれる。特に断りが無い限り、発明に関する化合物への言及はその遊離体および塩への言及を含むと理解される。用語「塩」は、無機および/または有機の塩基により形成される塩基塩を表す。医薬的に許容される(すなわち、無毒かつ生理学的に許容される)塩とは、例えば、カチオンが塩の毒性または生物活性に有意に寄与しないような許容される金属塩およびアミン塩が好ましい。しかしながら、その他の塩も、例えば、製造過程で使用され得る単離または精製のステップにおいて有用な場合もあり、それ故、その他の塩も本発明の範囲であると考えられる。式Iの化合物の塩は、例えば、式Iの化合物を一定量の塩基(例えば、1当量)と反応させることで、溶媒中、例えば塩を沈殿させるか、または水溶液を次いで凍結乾燥させることにより形成してもよい。
【0026】
塩基塩の例として、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、リチウム、およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウム塩)、バリウム、亜鉛、およびアルミニウム塩、有機塩基塩、例えば、有機アミン(例えば、トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、エフェナミン、N,N'-ジベンジルエチレン-ジアミン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン)、または類似の医薬的に許容されるアミン、およびアミノ酸(例えば、アルギニン、リシン)との塩などが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用されるフレーズ「医薬的に許容される」とは、通常の医学的判断の範囲内において、ヒトおよび動物の組織と過度な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題、もしくは合併症を起こすことなく接触させるのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比をもたらす、化合物、物質、組成物、および/または投与剤形のことを示す。
【0028】
本明細書で用いる「医薬的に許容される塩」は、親化合物を塩基塩に調製することで修飾された本明細書に開示される化合物の誘導体をいう。医薬的に許容される塩の例として、以下に限らないが、カルボン酸のアルカリ塩または有機塩が挙げられる。医薬的に許容される塩には、従来の無毒な塩、または例えば無毒な無機塩基または有機塩基から形成される親化合物の四級アンモニウム塩が含まれる。
【0029】
本発明の医薬的に許容される塩は、酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的手法により合成することが出来る。一般にそのような塩は、水中、または有機溶媒中、またはその二つの混合溶媒中で、化学量論量の適当な塩基を用いて化合物の遊離酸体と反応させることで製造することが出来る。一般に非水溶媒には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどが好ましい。適切な塩の一覧は、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Edition、Mack Publishing Company、Easton、PA (1990)に記載され、その内容は全て参照により本明細書に援用される。
【0030】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物もまた意図される。用語「プロドラッグ」は、患者に投与後、代謝または化学過程による化学変換を受けて、式Iの化合物、および/またはその塩および/または溶媒和物を生じる化合物を表す。体内で変換され、生物活性剤(すなわち式Iの化合物)を与えるあらゆる化合物は、本発明の精神の範囲において、プロドラッグである。例えば、式Iの化合物のカルボキシ基は、生理的加水分解性エステルを形成し得て、そのエステルは体内で加水分解されることによりプロドラッグとして働く、式Iの化合物自体を生じる。加水分解は多くの場合、主に消化酵素の影響下で起こるため、そのようなプロドラッグは好ましくは経口投与される。そのエステル自体に活性があるか、または血液中で加水分解が起こる場合は、非経口投与され得る。式Iのカルボン酸を含む化合物の生理的加水分解性エステルの例として、C1-6アルキルベンジル、4-メトキシベンジル、インダニル、フタリル、メトキシメチル、C1-6アルカノイルオキシ-C1-6アルキル(例えば、アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチルまたはプロピオニルオキシメチル)、C1-6アルコキシカルボニルオキシ-C1-6アルキル(例えば、メトキシカルボニルオキシメチルまたはエトキシカルボニルオキシメチル、グリシルオキシメチル、フェニルグリシルオキシメチル、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)-メチル)、および例えばペニシリンやセファロスポリンの分野で使用される、他の周知の生理的加水分解性エステルが挙げられる。そのようなエステルは当業者に公知の従来の技法により製造されてもよい。
【0031】
プロドラッグの様々な形態は当該分野にて周知であり、Rautio, J. et al., Nature Review Drug Discovery, 17, 559-587 (2018)に記載されている。
【0032】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の式Iの化合物、またはその医薬用塩または溶媒和物を含む医薬組成物である。本明細書に記載の医薬組成物は、一般に本明細書に記載の化合物および医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤の組み合わせを含む。そのような組成物は、医薬的に許容されない成分を実質的に含まない、すなわち、医薬的に許容されない成分は、本出願提出時における米国規制の許容条件より低い量で含む。この態様の一部の実施態様において、化合物が水に溶解または懸濁されている場合、組成物は、さらに別の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を適宜包含してもよい。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、固体医薬組成物(例えば、錠剤、カプセルなど)である。
【0033】
これらの組成物医薬分野で周知の方法により製造でき、局所的治療または全身治療が望まれるか、そしてどの部分を治療するかにより様々な経路で投与され得る。投与は、局所(眼ならびに経鼻、膣および直腸を含む粘膜への送達を含む)、肺(例えば、粉末またはエアロゾルの吸入または吹送(例えば、ネブライザー)による、気管内、経鼻、上皮および経皮など)、眼内、経口または非経口で行われ得る。眼内送達の方法として、局所投与(点眼)、結膜下注射、眼球周囲注射または硝子体注射、またはバルーンカテーテルもしくは外科的に結膜嚢に配置された眼球インサートによる導入が挙げられ得る。非経口投与として、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または点滴、または頭蓋内(例えば、髄腔内または脳室内)投与が挙げられる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形であってもよく、または例えば、連続的注入ポンプによるものであってよい。局所投与用医薬組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴剤、坐薬、スプレー、液剤および散剤を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などは必要であるかまたは望まれ得る。
【0034】
また、医薬組成物は、活性成分として、上記に記載の化合物を、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含み得る。本明細書に記載の組成物の製造において、活性成分は、一般に賦形剤と混合し、賦形剤により希釈され、例えば、カプセル、小袋、紙または他の容器などの運搬体の中に封入される。賦形剤が希釈剤として働く場合、賦形剤は活性成分のビヒクル、担体または媒体として働く固体、半固体または液体物質であり得る。それ故、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、サシェ、カシェー、エリキシル剤、懸濁液剤、エマルジョン、液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(固体としてまたは液体媒体中)、例えば、10重量%までの活性化合物を含む軟膏、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、坐薬、無菌注射溶液剤、および無菌包装散剤の形体であり得る。
【0035】
製剤の製造において、活性化合物は、他の成分と合わせる前に粉砕され、適当な粒子径を提供し得る。活性化合物が実質的に不溶性である場合、200mesh未満の粒子径に粉砕され得る。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒子径は、製剤中で実質的に均一に分散するように粉砕により調節され得、例えば約40meshとなり得る。
【0036】
適切な賦形剤のいくつかの例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。製剤はさらに、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油);湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;防腐剤(例えば、メチル-およびプロピルヒドロキシ-ベンソエート);甘味剤;ならびに風味剤を含み得る。本明細書に記載の組成物は、当分野で知られる方法を用いることにより、患者に投与後、活性成分が速放性、持続性または遅延性放出するように製剤化され得る。
【0037】
活性化合物は、広い投与量範囲で有効であり、一般に医薬的有効量で投与される。しかしながら、実際に投与する化合物の量は、処置する状態、選択した投与経路、実際に投与する化合物、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況により、通常医師により決定されることが理解される。
【0038】
錠剤などの固体組成物の製造のために、主要活性成分を医薬賦形剤と混合し、本明細書に記載の化合物の均一混合物を含む固体製剤前組成物を形成する。これらの製剤前組成物が均一であると見なす場合、組成物が容易に等しく有効な単位投与形態(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル)に小分けされ得るように、活性成分は、一般に組成物全体に均一に分散される。この製剤前固体は、次いで、本明細書に記載の化合物の活性成分を例えば、0.1~約500mg含む、上記のタイプの単位投与形態に小分けされる。
【0039】
錠剤または丸剤は、被覆するかまたは混合して持続作用効果をもたらす投与量形態を提供し得る。例えば、錠剤または丸剤は、内部製剤および外部製剤構成要素を含み得て、後者は前者を被覆する形態である。この2構成要素は、胃における崩壊に耐え、内部構成要素が十二指腸まで無傷で届くかまたは遅延放出可能なように働く腸溶性層により分けられ得る。様々な材料が該腸溶性層またはコーティングに使用でき、該材料には、多数のポリマー酸、およびポリマー酸と、シェラック、セチルアルコール、ならびに酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
【0040】
化合物および組成物が経口または注射による投与のために取り込まれ得る液体形態には、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、および可食油(例えば、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナツ油)を用いて風味付けされたエマルジョン、ならびにエリキシルおよび類似の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0041】
吸入または吹送用組成物は、医薬的に許容される、水性または有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液ならびに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上記の適切な医薬的に許容される賦形剤を含み得る。一部の実施態様において、組成物は、局所または全身作用のために経口または経鼻呼吸器経路で投与される。組成物は、不活性ガスの使用によりネブライザーで投与され得る。ネブライザーで投与される溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込むかまたは噴霧デバイスをフェイステントマスクもしくは間欠性陽圧人工呼吸器に取り付け得る。溶液、懸濁液、または粉末組成物を、製剤を適当な方法で送達するデバイスから経口または経鼻投与し得る。
【0042】
患者に投与する化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防なのか治療なのかといった投与の目的、患者の状態、投与方法などにより異なる。治療で使用する場合、組成物を既に疾患を患っている患者に、疾患およびその合併症の症状を治癒または少なくとも部分的に停止するように十分な量投与し得る。有効用量は、治療する疾患状態ならびに因子(例えば、疾患の重症度、患者の年齢、体重および一般的な健康状態など)による担当医の判断による。
【0043】
患者に投与する組成物は、上記の医薬組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技法により滅菌でき、または滅菌濾過し得る。水溶液をそのまま使用するために包装するかまたは凍結乾燥し得て、凍結乾燥製剤を投与前に無菌水性担体とあわせてもよい。化合物製剤のpHは、一般に3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8である。特定の前記賦形剤、担体、または安定化剤の使用により、医薬的に許容される塩の形成をもたらすことが理解される。
【0044】
化合物の治療用量は、例えば、治療がなされる特定の用途、化合物の投与方法、患者の体調および状態、および処方医の判断により変わり得る。医薬組成物中の本明細書に記載の化合物の割合または濃度は、投与量、化学的特徴(例えば、疎水性など)、および投与経路などの多数の因子により変わり得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、非経口投与のために、約0.1~約10%w/vの化合物を含む生理学的緩衝液水溶液で提供され得る。ある典型的用量範囲は、1日あたり約1μg/kg~約1g/kg体重である。一部の実施態様において、用量範囲は、1日あたり約0.01mg/kg~約100mg/kg体重である。投与量は、疾患または障害のタイプおよび進行度合、特定の患者の全体的健康状態、化合物の生物学的有効性、賦形剤の剤形、およびその投与経路などの可変要素によって決まる可能性が高い。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導かれる用量反応曲線から外挿され得る。
【0045】
本発明の化合物は、ヒトまたは動物における様々な医学的障害の予防、診断、および治療に有用である。この化合物は、同化合物非存在下のRORγ受容体と比較して、RORγ受容体と関連する活性を1つ以上阻害または低減するために用いられる。それ故、本発明のある態様において、患者における自己免疫性疾患または障害、喘息、アレルギー性疾患または障害、代謝疾患または障害、およびがんから選択される、疾患または障害を治療する方法には、治療上有効量の、本明細書に記載の式(I)の化合物、または医薬的に許容される塩、溶媒和物、または医薬組成物を患者に投与することを含む。例えば、各内容が全て引用により本明細書に援用される、L.A. Solt et al., "Action of RORs and their ligands in (patho)physiology," Trends Endocrinol. Metab. 2012, 23 (12): 619-627; M.S. Maddur et al., "Th17 cells: biology, pathogenesis of autoimmune and inflammatory diseases, and therapeutic strategies," Am. J. Pathol. 2012 Jul;181(1):8-18;およびA.M. Jetten, "Retinoid-related orphan receptors (RORs): critical roles in development, immunity, circadian rhythm, and cellular metabolism," Nucl. Recept. Signal. 2009;7:e003、ならびに背景技術の項に記載の引用文献を参照のこと。ある実施態様において、自己免疫性疾患または障害は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬および乾癬性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群および全身性エリテマトーデスから選択される。ある実施態様において、アレルギー性疾患または障害は、アレルギー性鼻炎および皮膚炎から選択される。ある実施態様において、代謝疾患または障害は、肥満、肥満誘発インスリン抵抗性およびII型糖尿病から選択される。
【0046】
ある実施態様において、該疾患または障害は、関節リウマチである。
【0047】
他の実施態様において、該疾患または障害は、多発性硬化症である。
【0048】
他の実施態様において、該疾患または障害は、強直性脊椎炎である。
【0049】
他の実施態様において、該疾患または障害は、炎症性腸疾患である。
【0050】
他の実施態様において、該疾患または障害は、ループスである。
【0051】
他の実施態様において、該疾患または障害は、シェーグレン症候群である。
【0052】
他の実施態様において、該疾患または障害は、乾癬である。
【0053】
他の実施態様において、該疾患または障害は、乾癬性関節炎である。
【0054】
他の実施態様において、該疾患または障害は、移植片対宿主病(GVHD)である。
【0055】
他の実施態様において、該疾患または障害は、自己免疫性ブドウ膜炎である。
【0056】
他の実施態様において、該疾患または障害は、肥満および/またはインスリン抵抗性である。
【0057】
他の実施態様において、該疾患または障害は、黒色腫である。
【0058】
ある態様において、本開示の化合物の使用により診断、治療、または予防される医学的障害は、例えば、自己免疫性障害であり得る。他の実施態様において、本開示の化合物の使用により診断、治療、または予防される障害は、炎症性障害であり得る。例えば、ある実施態様において、該障害は、関節炎、糖尿病、多発性硬化症、ブドウ膜炎、関節リウマチ、乾癬、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、ヘリコバクター・ピロリ感染および炎症性腸疾患から選択される。他の実施態様において、該障害は、クローン病、潰瘍性大腸炎、スプルーおよび食物アレルギーから選択される。他の実施態様において、該障害は、自己免疫性脳脊髄炎、イミキモド誘発乾癬、大腸炎またはアレルギー性気道疾患である。
【0059】
本明細書で用いるフレーズ「治療上有効量」は、組織、システム、動物、個体またはヒトにおいて、生物学的または医薬的応答を引き起こす活性化合物または医薬品の量であり、研究者、獣医、医師またはその他臨床医により求められている量をいう。
【0060】
ある実施態様において、治療上有効量は、(1)疾患の予防;例えば、疾患、病状または障害に罹りやすい状態であり得るが、まだその疾患の症状または兆候を経験していないまたは発現していない個体における、疾患、病状または障害の予防;(2)疾患の阻害;例えば、疾患、病気または障害の症状または兆候を経験または発現している個体における、疾患、病気または障害の阻害;または(3)疾患の改善;例えば、疾患、病状または障害の症状または兆候を経験または発現している個体における、疾患の重症度の減少など、疾患、病状または障害の改善(すなわち、病状および/または症状の好転)に適切な量であり得る。
【0061】
本明細書で用いる用語「治療」および「治療する」は、(i)前述の病態の改善;例えば、疾患、病状または障害の症状または兆候を経験または発現している各患者の疾患の重症度の減少など、疾患、病気または障害の改善(すなわち、病状および/または症状の好転または改善);(ii)研究者、獣医、医師またはその他臨床医により求められている、組織、システム、動物、個体またはヒトにおける、生物学的または医薬的応答の誘発;または(iii)前述の病態の阻止;例えば、疾患、病気または障害の症状または兆候を経験または発現している、各患者の疾患、病気または障害の阻止を意味する。これらの方法は、説明を目的としており、
【0062】
(製造方法)
本発明の化合物は、有機化学の当業者が利用可能な多くの方法により合成され得る。本発明の中間体および化合物を製造するための方法は、以下の実施例に記述される。これらの方法は、説明を目的としており、本発明に開示された中間体および化合物を製造するために当業者が実施し得る技術を制限することを意図するものではない。本発明の化合物を製造するための様々な方法は、当業者には明白に理解されよう。合成分野の熟練の化学者は頻繁に、1つ以上の検討事項(例えば、より短い反応時間、より安価な出発物質または試薬、操作および精製の容易さ、より高い収率、触媒の適合性、毒性試薬の回避、特殊な機器での利用可能性、およびステップ数の削減など)に基づいて望ましい代替製造方法を考案し得る。
【0063】
ホモキラルな実施例化合物の製造は、当業者に公知の技法により行われ得る。例えば、ホモキラルな化合物は、ラセミ生成物またはジアステレオマーを、例えば、キラル相分取HPLCで分離することにより製造され得る。あるいは、実施例化合物は、エナンチオマーまたはジアステレオマーを多く含む生成物を得るための公知の方法により製造され得る。
【0064】
本発明の中間体および化合物を製造するために記述される反応および技法は、用いる試薬および物質に適した溶媒中で行われ、もたらされる変換に適切である。全ての反応条件(溶媒、反応雰囲気、反応温度、実験時間およびワークアップ方法の選択など)は、該反応に適切である条件となるように選択されることは理解されるべきであり、また当業者により容易に認識されよう。分子の様々な部分に存在する官能基が、提示される試薬および反応に適合しなければならないことは、有機合成分野の当業者により理解される。反応条件に適合する置換基がそのように制限されることは、また存在する置換基が適さない場合には、代替案が必要とされることは、当業者にとって容易に理解される。該反応は本発明の所望の化合物を得るために、合成ステップの順序の変更またはある特定の反応過程を異なるものに選択する判断が必要な場合もある。また、この分野のあらゆる合成経路計画における、もう1つの重要な検討対象は、本発明に記載の化合物に存在する反応性官能基の保護に用いる保護基の賢明な選択であると認識される。熟練した実験者に対し、多くの保護基の代替案を記載している権威ある文献としてWuts およびGreene著のGreene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth Edition, Wiley and Sons (2007)が挙げられる。
【実施例】
【0065】
下記の実施例は、特定かつ好ましい本発明の実施態様を説明するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。化学的略語および記号ならびに科学的略語および記号は、特に断りが無いない限り、その一般的および慣用的な意味をもつ。実施例および本出願の他の各所に用いられる別の略語は、以下に定義される。共通する中間体は、一般に、複数の実施例の製造において有用であり、それらを製造する際の中間体の番号およびステップ(例えば、中間体1、ステップA)によるか、または化合物が表題化合物である場合のみ中間体番号により順次同定される。実施例の化合物は、化合物が中間体の場合は実施例番号および製造ステップ(例えば、実施例1、ステップA)により、また化合物が実施例の表題化合物である場合は実施例番号のみにより識別される。合成分野における熟練の化学技術者は、反応時間の短縮、より安価な出発材料、操作または単離の容易性、収率の向上、触媒作用への適合性、毒性試薬の回避、特殊な器具の利用可能性、直線ステップ数の減少などの1または複数の考慮事項に基づいて、望ましいと思われる別の製造手法を考え出すことが出来る。製造が明示されていない出発物質および中間体は、市販されているか、または文献から既知である。
【0066】
有機溶液の乾燥は、無水硫酸ナトリウムまたは無水硫酸マグネシウム上で静置して、デキャンテーションまたはろ過することにより残留水を除去した。溶媒の除去は、減圧下で濃縮することによって行われた。カラムクロマトグラフィーは、一般に、CombiFlash(登録商標)自動クロマトグラフィー装置(Teledyne Isco)を用いて、予め充填されたシリカゲルカートリッジで所定の溶媒または溶媒混合物を用いて溶出させて行われた。
【0067】
分析HPLCを以下の条件で行った:カラム-XBridgeTM C18, 2.1 x 50 mm, 1.7 μm (Waters Corp.);温度50℃;移動相A - 5:95 MeCN-水(0.1 % TFAを含む);移動相B - 95:5 MeCN-グラジエント;グラジエント、3分かけて0~100 % B、次いで0.75分間100% B;流速1 mL/min; MSおよびUV(220 nm)による検出。
【0068】
分取HPLCを以下の条件で行った:カラム-XBridgeTM C18 19 x 200 mm, 5 μm (Waters Corp.);移動相A - 5:95 MeCN-水(10 mM 酢酸アンモニウムを含む);移動相B - 95:5 MeCN-水(10 mM 酢酸アンモニウムを含む);グラジエント:Bを増加させた後、濃度均一;流量20 mL/min。キラル超臨界流体クロマトグラフィーによるエナンチオマーまたはジアステレオマーの分離を、個別に記載した条件を用いて実施した。質量分析データは、エレクトロスプレーイオン化法を用いた液体クロマトグラフィー質量分析計により得た。
【0069】
化合物名は、ChemBioDraw Ultraバージョン14.0.0.126(PerkinElmer Inc.)を用いて決定した。以下の略語が用いられる:
【表1】
【0070】
中間体1
(6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-アミン, HCl塩
【化6】
工程A:
7,8-ジヒドロキノリン-2,5(1H,6H)-ジオン
【化7】
3-アミノ-2-シクロヘキセン-1-オン(12.0 g, 108 mmol)およびエチルプロピオネート(14.6 mL, 144 mmol)の混合溶液を、100℃に終夜加熱した。その後、温度を、2時間170℃まで昇温させた後、冷却した。暗褐色混合溶液を、20分かけてMeOH(35 mL)で滴加処理すると、徐々に懸濁液が形成し、これを70℃で2時間攪拌した。混合溶液を、0℃に冷却して、1時間攪拌した。沈殿物を濾取して、2:1のヘプタンおよびDCM混合物(30 mL)、次いでMeOH(10 mL)で洗い、風乾して、7,8-ジヒドロキノリン-2,5(1H,6H)-ジオンを黄褐色固体として得た(4.4 g)。LCMS m/z 163.9 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, DMSO-d
6) δ 12.08 (br s, 1H), 7.77 (d, J=9.5 Hz, 1H), 6.24 (d, J=9.5 Hz, 1H), 2.79 (t, J=6.2 Hz, 2H), 2.44 - 2.40 (m, 2H), 2.00 (quin, J=6.4 Hz, 2H).
【0071】
工程B:
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5(6H)-オン
【化8】
7,8-ジヒドロキノリン-2,5(1H,6H)-ジオン(8.65 g, 53.0 mmol)、2-(ブロモメチル)-1,3-ジクロロベンゼン(15.3 g, 63.6 mmol)およびCs
2CO
3(17.3 g, 53.0 mmol)/MeCN(200 ml)の混合物を、室温で22時間攪拌した。沈殿物を、濾去して、濾液を濃縮した。残留物を、EtOAcおよび水に分配して、有機相をブラインで洗い、MgSO
4上で乾燥させて、濃縮した。残留物を、EtOAc-ヘキサン(5~10%のグラジエント)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(220 g)により精製して、2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5(6H)-オンを白色固体として得た(14.5 g)。LCMS m/z 322.0, 324.0 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 8.19 (d, J=8.6 Hz, 1H), 7.39 - 7.36 (m, 2H), 7.28 - 7.24 (m, 1H), 6.69 (d, J=8.6 Hz, 1H), 5.68 (s, 2H), 3.08 (t, J=6.2 Hz, 2H), 2.69 - 2.60 (m, 2H), 2.19 (quin, J=6.4 Hz, 2H).
【0072】
工程C:
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5-イル トリフルオロメタンフルホネート
【化9】
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5(6H)-オン(8.24 g, 25.6 mmol)およびN,N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリン(11.9 g, 33.2 mmol)の無水THF溶液を、-78℃に冷却して、約10分かけて、1M カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(トルエン中で1.0 M; 34.5 mL, 34.5 mmol)で処理した。80分間攪拌した後に、混合溶液を、水で処理して、室温に温めた。飽和NaHCO
3水溶液を加えて、混合溶液をエーテルで抽出した。有機相を、ブラインで洗い、Na
2SO
4上で乾燥させて、濃縮した。残留物を、EtOAc-ヘキサン(0~5%のグラジエント)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して(220 g)、2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5-イル トリフルオロメタンスルホネートを無色シロップ(7.29 g)として得た。LCMS m/z 454.0, 456.0 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 7.54 (d, J=8.5 Hz, 1H), 7.39 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.27 - 7.21 (m, 1H), 6.68 (d, J=8.5 Hz, 1H), 5.94 (t, J=4.8 Hz, 1H), 5.62 (s, 2H), 3.04 (t, J=8.6 Hz, 2H), 2.63 (td, J=8.6, 4.8 Hz, 2H)。不純物の2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5-イル トリフルオロメタンスルホネートの追加の一部分も、別の無色シロップ (4.39 g)として得た。
【0073】
工程D:
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-5-((4-フルオロフェニル)チオ)-7,8-ジヒドロキノリン
【化10】
耐圧フラスコ内の2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-7,8-ジヒドロキノリン-5-イル トリフルオロメタンスルホネート(20.2 g, 44.5 mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンチン(1.29 g, 2.22 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1.63 g, 1.78 mmol)およびDIEA(14.0 mL, 80 mmol)/1,4-ジオキサン(127 mL)の混合溶液を、4-フルオロベンゼンチオール(8.5 mL, 80 mmol)で処理した。混合溶液を、窒素で5分間パージして、容器を窒素雰囲気下で密封して、115℃で3時間加熱した。混合溶液を、rtに冷却して、セライトパッドを通して濾過し、固体をエーテルで洗った。濾液を、飽和NaHCO
3水溶液およびエーテルに分配した。有機相を、ブラインで洗い、MgSO
4上で乾燥させて、濃縮した。残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して(750 g)、EtOAc-ヘキサン(0~25%のグラジエント)を用いて溶出して、2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-5-((4-フルオロフェニル)チオ)-7,8-ジヒドロキノリン(16.0 g)を淡黄色シロップとして得た。LCMS m/z 432.0, 434.0 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 7.65 (d, J=8.5 Hz, 1H), 7.36 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.26 - 7.21 (m, 3H), 6.96 (t, J=8.7 Hz, 2H), 6.52 (d, J=8.5 Hz, 1H), 6.40 (t, J=4.6 Hz, 1H), 5.58 (s, 2H), 3.01 (t, J=8.4 Hz, 2H), 2.57 (td, J=8.4, 4.6 Hz, 2H).
【0074】
工程E:
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-5-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-7,8-ジヒドロキノリン
【化11】
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-5-((4-フルオロフェニル)チオ)-7,8-ジヒドロキノリン(16.0 g, 37.0 mmol)/DCM(463 mL)の溶液を、氷水浴上で冷却して、少量に分割してmCPBA(19.9 g, 89.0 mmol)で処理した。得られる懸濁液を、0℃で2時間攪拌して、次いで濾過して、回収した固体をDCMで洗った。濾液を飽和NaHCO
3水溶液で処理して、混合溶液を10分間攪拌した。有機相を分離して、飽和NaHCO
3水溶液、10% Na
2S
2O
3水溶液およびブラインを用いて順に洗い、MgSO
4上で乾燥させて、濃縮した。残留物を、真空乾燥させて、2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-5-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-7,8-ジヒドロキノリンを、オフホワイトの固体として得た(16.3 g)。LCMS m/z 464.2, 466.1 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 8.08 (d, J=8.7 Hz, 1H), 7.98 - 7.89 (m, 2H), 7.37 - 7.34 (m, 2H), 7.31 (t, J=4.9 Hz, 1H), 7.26 - 7.22 (m, 1H), 7.18 (t, J=8.6 Hz, 2H), 6.58 (d, J=8.7 Hz, 1H), 5.56 (s, 2H), 3.00 - 2.86 (m, 2H), 2.67 (td, J=8.4, 4.9 Hz, 2H).
【0075】
工程F:
エチル 3-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(ジアステレオマー混合物)
【化12】
2-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-5-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-7,8-ジヒドロキノリン(17.1 g, 36.8 mmol)およびエチル 4-クロロブタノエート(21.1 mL, 147 mmol)のTHF溶液(184 mL)を、-78℃に冷却して、30分かけてリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中で1.0 M;147 mL, 147 mmol)で処理した。得られる混合溶液を、-78℃で2時間攪拌して、次いで一晩かけてゆっくりと室温に昇温させた。18時間後、混合溶液を、0℃に冷却して、飽和NH
4Cl水溶液で処理した。混合溶液を、真空濃縮して、次いでエーテルおよび飽和水溶液NH
4Clに分配した。有機相を、飽和NH
4Cl水溶液およびブラインで順に洗い、MgSO
4上で乾燥させ、濃縮した。得られた薄茶色のシロップを、エーテルでトリチュレートすると、固体が形成した。懸濁液を0℃で30分間撹拌し、固体を濾取して、冷エーテルで2回洗い、真空下で乾燥させて、エチル3-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレートのジアステレオマー混合物を薄褐色固体として得た(7.83g)。LCMS m/z 578.5, 580.5 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 7.68 (d, J=8.6 Hz, 1H), 7.41 - 7.34 (m, 4H), 7.29 - 7.23 (m, 1H), 7.05 (t, J=8.6 Hz, 2H), 6.67 (d, J=8.7 Hz, 1H), 5.64 - 5.49 (m, 2H), 4.23 (q, J=7.2 Hz, 2H), 3.28 (td, J=8.7, 5.9 Hz, 1H), 3.18 (ddd, J=13.9, 7.6, 3.6 Hz, 1H), 2.73 - 2.65 (m, 1H), 2.58 (dt, J=16.9, 5.2 Hz, 1H), 2.37 (dtd, J=12.5, 9.8, 7.6 Hz, 1H), 2.16 (ddd, J=13.9, 10.0, 7.2 Hz, 1H), 2.11 - 2.01 (m, 2H), 1.96 (ddd, J=16.9, 9.8, 4.4 Hz, 1H), 1.45 (dtd, J=13.8, 9.3, 4.6 Hz, 1H), 1.32 (t, J=7.2 Hz, 3H). 濾液を濃縮し、残留物をシリカゲル(330g)のカラムクロマトグラフィーにより精製し、EtOAc-ヘキサン(5~25%のグラジエント)で溶出して、僅かに純度が低下した別のエチル 3-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレートをオフホワイトのガラス状固体として得た(7.68 g)。
【0076】
工程G:
エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-ヒドロキシ-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(ジアステレオマー混合物)
【化13】
エチル 3-((2,6-ジクロロベンジル)オキシ)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(17.0 g, 29.4 mmol)/DCE (147 mL)のジアステレオマー混合溶液を、HCl(1,4-ジオキサン中で4.0 M; 44.1 mL, 176 mmol)を用いて室温で処理した。混合溶液を、50℃で18時間加熱して、次いで濃縮した。淡褐色シロップの残留物を、DCM(20 mL)に溶解して、攪拌したエーテル(400 mL)にゆっくりと加えた。得られる懸濁液を、30分間攪拌して、固体を濾取して、3回エーテルで洗い、真空乾燥して、ジアステレオマー混合物のエチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-ヒドロキシ-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(12.3 g)を得た。LCMS m/z 420.4 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, MeOH-d
4) δ 7.82 (d, J=9.3 Hz, 1H), 7.69 - 7.63 (m, 2H), 7.35 (t, J=8.8 Hz, 2H), 6.68 (d, J=9.4 Hz, 1H), 4.18 (q, J=7.2 Hz, 2H), 3.20 (td, J=8.4, 5.8 Hz, 1H), 2.97 (ddd, J=13.8, 7.5, 4.4 Hz, 1H), 2.76 (q, J=8.5 Hz, 1H), 2.63 - 2.55 (m, 1H), 2.24 - 2.16 (m, 1H), 2.15 - 2.03 (m, 3H), 2.02 - 1.94 (m, 1H), 1.62 - 1.46 (m, 1H), 1.27 (t, J=7.2 Hz, 3H).
【0077】
工程H:
エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート (ジアステレオマー混合物)
【化14】
エチル9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-ヒドロキシ-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(12.3g, 29.3mmol)/DCM(147mL)の混合溶液を、ピリジン(4.74 mL, 58.6 mmol)で処理した。この溶液を、氷水浴上で冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(7.40 mL, 44.0 mmol)を用いて30分にわたって滴加処理した。混合物を、0~5℃で1時間撹拌した後、追加のピリジン(1.19 mL, 14.7 mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.48 mL, 8.79 mmol)で再度処理した。混合溶液を、0~5℃で1.5時間撹拌し、次に飽和NH
4Cl水溶液(2 mL)で処理した。混合溶液を、EtOAcで希釈し、水およびブラインで順次洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥し、濃縮して、エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(15.5 g)の粗製ジアステレオマー混合物を得て、これを精製せずに使用した。LCMS m/z 552.4 (M+H)
+.
【0078】
工程I:
エチル 3-ブロモ-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(ジアステレオマー混合物)
【化15】
エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(15.5 g, 28.1 mmol)/DCM(20 mL)およびトルエン(160 mL)の粗製ジアステレオマー混合物の激しく攪拌した溶液を、LiBr(11.0 g, 126 mmol)で処理した後、少量ずつp-トルエンスルホン酸(5.88 g, 30.9 mmol)を用いて処理した。混合溶液を、50℃で16時間撹拌した後、rtに冷却し、DCMおよび水で希釈した。有機相を、分離して、ブラインで洗い、Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮した。残留物を、EtOAc-ヘキサン(0~30%のグラジエント)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して(120 g)、エチル 3-ブロモ-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(10.2 g)のジアステレオマー混合物を得た。LCMS m/z 482.4, 484.4 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 7.67 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.43 - 7.36 (m, 3H), 7.15 - 7.09 (m, 2H), 4.22 (q, J=7.2 Hz, 2H), 3.30 (td, J=8.8, 5.9 Hz, 1H), 3.21 (ddd, J=13.8, 7.6, 3.2 Hz, 1H), 2.70 - 2.63 (m, 2H), 2.36 (dtd, J=12.4, 10.0, 7.4 Hz, 1H), 2.17 - 1.99 (m, 4H), 1.46 - 1.37 (m, 1H), 1.31 (t, J=7.2 Hz, 3H).
【0079】
工程J:
エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(ジアステレオマー混合物)
【化16】
活性銅を、攪拌しながらCuSO
4四水和物(45.1 g, 283 mmol)/水(250 mL)の溶液に、10分かけて少量ずつ亜鉛粉末(24.6 g, 376 mmol)を添加することにより製造した。混合溶液を、10分以上攪拌して、次いで懸濁液をデキャンテーションにより赤色沈殿物を分けた。これを、水を用いるデキャンテーションにより2回洗い、その後1M HCl水溶液(400 mL)と共に2.5時間攪拌した。上清をデキャンテーションして、沈殿物を真水で攪拌した後に、上清のpHが約7となるまで、デキャンテーションにより繰返し洗った。固体を、水および不活性雰囲気(アルゴンまたは窒素)下にて保管した。使用するためには、固体を、MeOHからデキャンテーションで2回洗い、次にジエチルエーテルでデカンテーションによって2回洗い、真空乾燥させた。
【0080】
耐圧フラスコ内の乾燥活性銅粉(15.8g, 248mmol)の試料を、エチル 3-ブロモ-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレートのジアステレオマー混合物(10.2g, 21.2mmol)/乾燥DMF(141mL)溶液により処理した。混合溶液に、2分間窒素を流した後、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-2-ヨードプロパン(12.0 mL, 85.0 mmol)を用いて処理した。容器を、窒素下で密封して、120℃で2.5時間加熱した。混合溶液を、rtまで冷却し、水(300 mL)およびエーテル(350 mL)と混合し、セライトパッドで濾過した。固体を、エーテルで3回洗った。合わせた濾液を分離して、有機相を、飽和NaHCO3水溶液、10%LiCl水溶液およびブラインで順に洗い、MgSO4上で乾燥させて、濃縮して、エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレートの粗製ジアステレオマー混合物を、茶色の粘性固体として得て(12.0 g)、これを精製することなく使用した。LCMS m/z 572.2 (M+H)+. 1H NMR (499 MHz, CDCl3) δ 8.01 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.60 (dd, J=8.2, 2.6 Hz, 1H), 7.23 - 7.17 (m, 2H), 7.04 - 6.98 (m, 2H), 4.28 - 4.23 (m, 2H), 3.40 - 3.32 (m, 2H), 2.74 - 2.63 (m, 2H), 2.53 - 2.43 (m, 1H), 2.25 - 2.14 (m, 3H), 1.85 - 1.77 (m, 2H), 1.33 (t, J=7.2 Hz, 3H).
【0081】
工程K:
9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボン酸(ジアステレオマー混合物)
【化17】
エチル 9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボキシレート(12.0 g, 21.0 mmol)の粗製ジアステレオマー混合物を、LiOH一水和物(3.52 g, 84.0 mmol)/THF-EtOH-水(3:1:1, 175 mL)と合わせて、rtで18時間攪拌した。混合溶液を、真空濃縮して、残留物を、EtOAc(250 mL)および0.5M HCl水溶液(181 mL)に分配した。有機相を、ブラインで洗い、MgSO
4で乾燥させて、濃縮して、9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボン酸のジアステレオマー混合物を、明黄色固体(11.4 g)として得た。LCMS m/z 544.3 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, DMSO-d
6) δ 12.67 - 12.06 (m, 1H), 8.80 (s, 1H), 7.93 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.77 (dd, J=8.3, 2.9 Hz, 1H), 7.32 - 7.27 (m, 3H), 3.27 - 3.20 (m, 1H), 3.05 (ddd, J=14.1, 6.8, 2.2 Hz, 1H), 2.80 - 2.71 (m, 1H), 2.61 (dt, J=16.4, 3.9 Hz, 1H), 2.30 (s, 1H), 2.20 - 2.13 (m, 1H), 2.13 - 1.99 (m, 3H), 1.42 (br s, 1H).
【0082】
工程L:
2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメート(ジアステレオマー混合物)
【化18】
9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-カルボン酸(11.4 g, 21.0 mmol)/トルエン(210 mL)のジアステレオマー混合物の懸濁液を、0℃で、トリエチルアミン(5.85 mL, 42.0 mmol)で処理した。得られる溶液を、0℃で5分間攪拌して、次いで10分かけてジフェニルホスホロアジデート(10.4 mL, 48.2 mmol)で処理した。混合溶液を、0℃で1時間攪拌して、次いで室温まで昇温させて、2時間以上攪拌した。混合溶液を、水で処理して、EtOAcで抽出した。有機相を、ブラインで洗い、MgSO
4上で乾燥させた。得られる淡黄色油状物を、2-(トリメチルシリル)エタン-1-オール(75.0 mL, 524 mmol)で処理して、混合溶液を、80℃で90分間加熱した後、室温に冷却した。混合溶液を、水およびEtOAcに分配して、有機相をブラインで洗い、MgSO
4上で乾燥させた。残留物を、EtOAc-ヘキサン(0~30%のグラジエント)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して(220 g)、2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメートのジアステレオマー混合物を、明黄色固体(15.0 g)として得た。LCMS m/z 659.3 (M+H)
+.
【0083】
工程M:
2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメート, 別々の4つのジアステレオマー
【化19】
サンプルとして2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメート(1.2 g)のジアステレオマー混合物を、MeOH(17 mL)に溶解して、SFCにより分離した(カラム: Whelko-RR, 5 x 50 cm, 10 μm (Phenomenex Inc.);圧力100 bar; 温度35℃;移動相:CO
2-MeOH (85:15);流速300 mL/min;1 mLインジェクション、3.5分のサイクルタイムにて)。3つの画分を収集した。
【0084】
最初の溶出画分を濃縮して、2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメートの単一ジアステレオマーを白色固体(0.396 g)として得た。LCMS m/z 659.0 (M+H)+. 1H NMR (499 MHz, CDCl3) δ 8.09 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.62 (dd, J=8.2, 2.6 Hz, 1H), 7.15 - 7.08 (m, 2H), 6.97 (t, J=8.5 Hz, 2H), 5.60 (br d, J=8.9 Hz, 1H), 4.25 - 4.16 (m, 2H), 4.16 - 4.08 (m, 1H), 3.32 (dt, J=14.2, 7.0 Hz, 1H), 2.75 - 2.64 (m, 2H), 2.31 (dt, J=14.5, 7.3 Hz, 1H), 2.26 - 2.19 (m, 1H), 2.18 - 2.09 (m, 2H), 1.69 - 1.60 (m, 1H), 1.37 (qd, J=12.8, 3.6 Hz, 1H), 1.07 - 1.00 (m, 2H), 0.07 (s, 9H).
二番目の溶出画分を濃縮して、2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメートの第二の単一ジアステレオマーを白色固体(0.375 g)として得た。LCMS m/z 659.0 (M+H)+. 1H NMR (499 MHz, CDCl3) δ 8.09 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.62 (dd, J=8.3, 2.6 Hz, 1H), 7.17 - 7.08 (m, 2H), 6.97 (t, J=8.5 Hz, 2H), 5.60 (br d, J=8.7 Hz, 1H), 4.26 - 4.06 (m, 3H), 3.32 (dt, J=14.2, 7.0 Hz, 1H), 2.77 - 2.60 (m, 2H), 2.31 (dt, J=14.6, 7.4 Hz, 1H), 2.26 - 2.19 (m, 1H), 2.19 - 2.07 (m, 2H), 1.70 - 1.59 (m, 1H), 1.37 (qd, J=12.8, 3.4 Hz, 1H), 1.07 - 1.00 (m, 2H), 0.07 (s, 9H).
三番目の溶出画分を濃縮して、残留物をMeOH(17 mL)に溶解して、さらにSFCにより分離した(カラム:セルロース-4, 3 x 25 cm, 5 μm;圧力100 bar;温度35℃;移動相:CO2-MeOH (85:15)(0.1% NH4OHを含む);流速180 mL/min;1 mLインジェクション、1.1分間のサイクルタイムにて)。2つの更なる画分を回収した。
【0085】
二回目の分離からの最初の溶出画分を濃縮して、2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメートの第三の単一ジアステレオマーを白色固体(46 mg)として得た。LCMS m/z 659.0 (M+H)+. 1H NMR (499 MHz, CDCl3) δ 8.27 (br d, J=8.3 Hz, 1H), 7.66 (dd, J=8.2, 2.5 Hz, 1H), 7.13 (br s, 2H), 6.95 (t, J=8.6 Hz, 2H), 4.68 - 4.56 (m, 2H), 4.26 - 4.14 (m, 2H), 3.21 (ddd, J=14.0, 11.0, 8.2 Hz, 1H), 3.12 - 2.97 (m, 1H), 2.70 (br d, J=16.1 Hz, 1H), 2.44 - 2.22 (m, 2H), 1.89 (br dd, J=7.9, 3.9 Hz, 1H), 1.72 - 1.62 (m, 1H), 1.55 - 1.48 (m, 1H), 1.20 - 1.08 (m, 1H), 1.05 - 0.96 (m, 2H), 0.06 (s, 9H).
【0086】
二回目の分離からの二番目の溶出画分を濃縮して、2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメートの第四の単一ジアステレオマーを、白色固体(46 mg)として得た。LCMS m/z 659.0 (M+H)+. 1H NMR (499 MHz, CDCl3) δ 8.27 (br d, J=8.2 Hz, 1H), 7.66 (dd, J=8.3, 2.6 Hz, 1H), 7.14 (br s, 2H), 6.95 (t, J=8.5 Hz, 2H), 4.68 - 4.56 (m, 2H), 4.30 - 4.12 (m, 2H), 3.28 - 3.14 (m, 1H), 3.13 - 3.00 (m, 1H), 2.70 (br d, J=17.0 Hz, 1H), 2.39 - 2.23 (m, 2H), 1.89 (br dd, J=8.2, 3.8 Hz, 1H), 1.66 (br dd, J=11.3, 8.7 Hz, 1H), 1.56 - 1.48 (m, 1H), 1.21 - 1.08 (m, 1H), 1.00 (br t, J=8.3 Hz, 2H), 0.06 (s, 9H).
【0087】
工程N:
(6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-アミン, HCl塩
【化20】
中間体1の工程Mから得た2-(トリメチルシリル)エチル (9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)カルバメートの第二のジアステレオマー(0.375 g, 0.569 mmol)/DCE(4.8 mL)溶液を、氷水浴上で冷却して、HCl(1,4-ジオキサン中で4.0 M;1.42 mL, 5.69 mmol)で処理して、得られる混合溶液を、40℃で6時間加熱しながら攪拌した。混合溶液を、室温で冷却し、濃縮して、(6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-アミン,HCl塩を白色固体(0.33g)として得た。LCMS m/z 514.9 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, MeOH-d
4) δ 8.01 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.71 (dd, J=8.2, 2.7 Hz, 1H), 7.31 (dd, J=8.5, 4.9 Hz, 2H), 7.17 (t, J=8.7 Hz, 2H), 3.62 - 3.52 (m, 1H), 3.37 (dd, J=7.1, 4.8 Hz, 1H), 3.15 - 3.06 (m, 1H), 2.72 (dt, J=16.7, 3.9 Hz, 1H), 2.46 (ddd, J=14.7, 9.8, 7.3 Hz, 1H), 2.38 - 2.25 (m, 3H), 2.00 (ddd, J=16.7, 12.9, 3.8 Hz, 1H), 1.53 - 1.41 (m, 1H). 絶対配置は、単結晶X線分析によるFlack法(Acta Cryst. B, 2013, 69, 249) を用いた異常分散シグナルから決定した。
【0088】
中間体2
(S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパン酸
【化21】
工程A:
メチル 2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルチオ)プロパノエート(ラセミ体)
【化22】
ラセミ体のメチル 2-メチルオキシラン-2-カルボキシレート(5.00 g, 42.6 mmol)および酢酸(3.05 mL, 53.3 mmol)/無水MeOH(125 mL)の溶液を、窒素雰囲気下に氷水浴上で攪拌した。内部温度が約5℃に達した時に、溶液を、約5分間かけて、ナトリウムメタンチオレート(11.0 g, 149 mmol)を少量ずつ滴加すると、約20℃に発熱する。10分後の内部温度は約12℃であり、冷却浴を外して、攪拌を続けた。添加を完了してから2時間後に、混合溶液を、氷水浴上で冷却して、酢酸(6.1 mL, 107 mmol)で処理した。混合溶液を真空濃縮して、残留スラグを、エーテル(300 mL)および水(50 mL)に分配した。水相を、エーテル(2x100 mL)で二回抽出して、合わせた有機相を、飽和NaHCO
3水溶液およびブラインで順に洗い、Na
2SO
4上で乾燥させて、真空濃縮して、ラセミ体のメチル 2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルチオ)プロピオネートを、淡黄色液体(6.87 g)として得た。LCMS m/z 186.9 (M+Na)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 3.85 - 3.78 (m, 3H), 3.48 (s, 1H), 2.97 (d, J=14.1 Hz, 1H), 2.77 (d, J=13.9 Hz, 1H), 2.18 (s, 3H), 1.49 (s, 3H).
【0089】
工程B:
メチル 2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエート(ラセミ体)
【化23】
ラセミ体のメチル2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルチオ)プロパノエート(8.00 g, 48.7 mmol)/DCM(400 mL)の溶液を、氷水浴上で撹拌して、約5分かけてmCPBA(33.6 g, 146 mmol)で数回に分けて処理した。5分以上後に、追加のmCPBA(11.2 g, 48.7 mmol)を添加した。さらに5分間攪拌を続けた後、冷却浴を取り外し、白色の懸濁液をrtで攪拌した。1.75時間後、混合溶液を濾過し、白色固体をDCMで2回洗った。合わせた濾液を、氷水浴上で冷却し、数回に分けたNa
2S
2O
3水溶液(125 mL中で20 g)で処理すると、発熱が認められた。十分に混合した後、層を分離して、水相をDCMで抽出した。合わせた有機相を、飽和NaHCO
3水溶液および水で順に洗い、これら2つの水相を併せて、DCMで再度抽出した。有機相を合わせて、Na
2SO
4上で乾燥させて、濾過して、濃縮し、ラセミ体のメチル 2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエートを白色固体(6.98 g)として得た。LCMS m/z 219.1 (M+Na)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 3.88 (s, 3H), 3.61 (dd, J=15.1, 1.0 Hz, 1H), 3.44 (d, J=15.0 Hz, 1H), 3.06 (s, 3H), 1.52 (s, 3H).
【0090】
全ての水相を合わせて、固体NaClで処理し、濃縮して、濃縮スラッジとした。固体を、濾取して、まだ湿気が残っている間にDCMと共に攪拌した。混合溶液を濾過し、回収した固体をさらにDCMで洗った。濾液の層を分離して、水相をDCMで抽出し、合わせた有機相を飽和NaHCO3水溶液で洗い、Na2SO4上で乾燥させて、濃縮して、別のラセミ体のメチル 2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエートを淡黄色固体として得た(2.23g)。
【0091】
工程C:
メチル (R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエートおよびメチル (S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエート
【化24】
ラセミ体のメチル 2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエート(25.3 g)を、DCM(40 mL)およびMeOH(250 mL)に溶解し、SFCにより分離した(カラム: Chiralpak AD-H, 5 x 25 cm, 5 μm; 圧力100 bar; 温度40℃;移動相:CO
2-MeOH (82:18);流速290 mL/min;0.7 mLインジェクション(1.2分のサイクルタイムにて)。2つの画分を回収した。
最初の溶出画分を濃縮して、メチル (R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエートを白色固体(12.3 g)として得た。LCMS m/z 197.2 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, CDCl
3) δ 3.88 (s, 3H), 3.80 (s, 1H), 3.60 (dd, J=15.1, 1.0 Hz, 1H), 3.43 (d, J=15.0 Hz, 1H), 3.06 (s, 3H), 1.51 (s, 3H).
二番目の溶出画分を濃縮して、メチル (S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエートを白色固体(11.9 mg)として得た。LCMS m/z 197.0 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, クロロホルム-d) δ 3.88 (s, 3H), 3.80 (s, 1H), 3.60 (dd, J=15.1, 1.0 Hz, 1H), 3.43 (d, J=15.0 Hz, 1H), 3.06 (s, 3H), 1.51 (s, 3H). このエナンチオマーの絶対配置は、実施例1の単結晶X線分析によるFlack法を用いた異常分散シグナルから決定した。
【0092】
工程D:
(S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパン酸
【化25】
メチル (S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエート(2.00 g, 10.2 mmol)/THF(51 mL)およびMeOH(17 mL)の溶液を、氷水浴にて攪拌して、LiOH水和物(0.684 g, 16.3 mmol)/水(17 mL)の溶液を用いて処理した。冷浴を取り外して、若干白濁した溶液を室温で攪拌した。90分間後に、混合溶液を、氷水浴上で攪拌して、1M HCl水溶液(16.3 mL, 16.3 mmol)で処理して、真空濃縮して、大部分の有機性溶媒を取り除いた。水性の残留物を、ドライアイス-アセトン上で凍らせて、凍結乾燥させて、LiClおよび残留水を含有する白色固体(2.75 g)として(S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパン酸;推定純度67%を得た。この物質を、さらなる精製をせずに用いた。LCMS m/z 181.1 (M-H)
-.
1H NMR (499 MHz, DMSO-d
6) δ 3.53 - 3.37 (m, 2H), 3.00 (s, 3H), 1.37 (s, 3H).
【0093】
中間体3
(R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパン酸
【化26】
用いた方法に従って、中間体2, メチル (R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパノエート(89 mg, 0.454 mmol)を製造して、(R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパン酸に変換した。LCMS m/z 183.0 (M+H)
+.
【0094】
実施例1
(S)-N-((6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパンアミド
【化27】
(6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-アミン, HCl塩(中間体1; 9.90 g, 18.0 mmol)/DMF(150 mL)の混合溶液を、(S)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパン酸(中間体2; 6.50 g, 24.3 mmol)、HATU(10.6 g, 27.9 mmol)およびDIEA(12.6 mL, 71.9 mmol)により0℃で処理して、この混合溶液を、rtで1.5時間攪拌した。混合溶液を、氷水浴上で冷却して、水(20 mL)で処理した。EtOAcおよび飽和NaHCO
3水溶液に分配して、有機相を、10%NaHCO
3水溶液およびブラインで順に洗い、MgSO
4上で乾燥させた。残留物を、EtOAc-ヘキサン(0~100%のグラジエント)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して(220 g)、(S)-N-((6aS,7R,9aS)-9a-((4-フルオロフェニル)スルホニル)-3-(パーフルオロプロパン-2-イル)-6,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5H-シクロペンタ[f]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(メチルスルホニル)プロパンアミドを白色固体(12.0 g)として得た。LCMS m/z 679.3 (M+H)
+.
1H NMR (499 MHz, MeOH-d
4) δ 8.15 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.73 (dd, J=8.3, 2.7 Hz, 1H), 7.34 (dd, J=8.4, 5.1 Hz, 2H), 7.16 (t, J=8.7 Hz, 2H), 4.20 - 4.09 (m, 1H), 3.66 (d, J=1.0 Hz, 1H), 3.50 (d, J=14.9 Hz, 1H), 3.29 - 3.21 (m, 1H), 3.12 (s, 3H), 3.07 - 3.01 (m, 1H), 2.71 (dt, J=16.7, 4.0 Hz, 1H), 2.45 (dt, J=14.0, 6.8 Hz, 1H), 2.26 - 2.14 (m, 2H), 2.08 - 1.99 (m, 1H), 1.94 (ddd, J=16.7, 12.3, 4.1 Hz, 1H), 1.55 (s, 3H), 1.49 - 1.38 (m, 1H). 絶対配置は、単結晶X線分析によるFlack法を用いた異常分散シグナルから決定した。
【0095】
以下の追加の実施例を、中間体1および適切なカルボン酸から実施例1の方法を用いて製造して、分取HPLCにより精製した。
【表2】
【0096】
(一般的なRORγ Gal4レポーターアッセイ)
RORγへの潜在的リガンドのインバースアゴニスト活性を、Jurkat細胞におけるGal4-ルシフェラーゼレポーターアッセイの発光阻害により測定した。
RORγ受容体を安定して過剰発現するJurkat細胞である、Jurkat pEx/Gal/hRORγCLBD/HYGpG5luc/blastを、0.1%BSA、100 X HEPES(Gibco 15360-080)、100mMピルビン酸ナトリウム(Gibco 11360-040)、50mg/mL ヒグロマイシンB(Invitrogen 10687-010)および10mg/mLブラストサイジン(Invitrogen R210-01)を含むアッセイ緩衝液RPMI1640(Gibco 11875-085 1L)中、10,000細胞/ウェル濃度で384ウェル固形白色細胞培養プレート(Perkin Elmer #6007899)に播種した。3倍連続希釈し、最終濃度が40mM~0.67nMの試験化合物(100nL)を細胞に加えて、次いでこれを終夜インキュベートした。
【0097】
翌日、細胞を、10μLのSteady-Glo Luciferase Assay System(Promega Cat.No. EZ550)で溶解し、直ぐに分析した。IC50値を決定した。IC50値は、ルシフェラーゼ活性を50%減少させるのに必要な試験化合物濃度として定義し、標準化データを適合させるための4パラメータロジスティック方程式を使用して計算した。
【0098】
RORγ Gal4レポーターアッセイにおける化合物のIC
50値を、下記に示した。
【表3】
【0099】
(ヒト全血アッセイ)
化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、ECHO acoustic liquid handling technologyを用いて、Matrix Technologies社製の透明なV底384ウェルプレートの各ウェルに分注した(60 nL/ウェル)。ヒト全血サンプル(30μL)を、CyBio FeliX 液体分注装置を用いて各ウェルに加え、プレートを、プレートシェーカー上で3分間振盪し、37℃で1時間インキュベートした。次にウェルを、最終濃度1μg/mLのCD3+CD28を用いて、AIM-V培地のウェルあたり30μLで処理し、プレートをプレートシェーカー上で3分間振盪した後、この反応混合溶液を37℃で20時間インキュベートした。遠心分離(450g, 5分, 周囲温度)により各サンプルから血漿を分取した。分取した血漿サンプル(4μL)を、その後、FeliX液体処理装置を用いて、白色の浅底384-ウェル ProxiPlate(PerkinElmer)の各ウェルに分注し、IL17A含量を、製造業者であるPerkinElmer社の説明書通りにAlphaLISA技術を用いて測定した。
【0100】
独自のBMSデータ解析ソフトウェアを使用して、化合物のEC50値を決定した;ここで、ベースラインは、DMSOの平均値を使用して確立され、100%誘導は、試験した最大濃度の参照化合物の値を使用して確立された。
【0101】
(ナトリウムチャネル記録のためのパッチクランプアッセイプロトコル)
心臓のナトリウムイオンチャネルアッセイを、クローニングされたヒトナトリウムチャネル遺伝子SCN5Aイオンチャネルを安定して発現するヒト胚性腎臓細胞(HEK 293)を用いて実施した。
【0102】
ナトリウムチャネルアッセイでは、化合物を10 μMで評価し、ピークの内向き電流の阻害を測定することで効果を算出した。刺激周波数は、1Hzおよび4Hzの2種類(化合物A)を用いて、化合物のナトリウムチャネルに対する速度依存的な効果を検証した。全ての結果は、平均値±SEMとして報告している:DMSOをビヒクルとして使用し、DMSOの最終濃度は0.1%を超えないようにした。
【0103】
膜電流の記録は、Multiclamp 700シリーズの微小パッチクランプ増幅器(Axon Instruments, Foster City, California)を用いて、従来のパッチクランプ法の全細胞型改変法を使用して行われた。SCN5Aナトリウムイオンチャネルを発現している細胞を、プレキシガラス製の浴チャンバーに置いて、倒立顕微鏡のステージ上に取り付けて、浴溶液を連続的に灌流した。
【0104】
ナトリウム電流浴溶液は、下記のものを含有する(mM):140 NaCl、4 KCl、1.8 CaCl2、1 MgCl2、10 グルコース、10 HEPES(pH7.4, NaOH)。ナトリウムチャネル実験に使用されるパッチピペットのフィリング溶液は、下記のものを含有する(mM):130 KCl、1 MgCl2, 1 CaCl2、5 ATP-K2、10 EGTA、10 HEPES (pH 7.2, KOH)。
【0105】
定常状態の阻害を決定するために、以下の電圧プロトコルを用いて、5秒毎にナトリウム電流を誘起させた(0.2Hz)。細胞は-90mVの電位に保持され、45msの間に-20mVへと進められる。-20 mVへの脱分極ステップに反応する最大ナトリウム電流を、試験物質の存在下で新たな定常状態が達成されるまで、コントロール緩衝液中および試験物質適用後においてモニターした。ナトリウム電流の速度依存的阻害を評価するために、1Hzおよび4Hzの周波数での電圧ステップのトレイン(各30回の掃引電圧)を、0.2Hzの周波数で決定したように、試験物質適用前の細胞(コントロール)と試験物質を用いた定常状態の阻害後の細胞に適用した。速度依存的実験に用いられた電圧波形は、0.2Hz刺激周波数での定常状態の阻害を評価するために用いた波形と同じものであった。速度依存的阻害は、試験した各周波数において、試験物質の存在下での30回の掃引電圧の最後の3回の平均と、コントロール条件下での30回の掃引電圧の最後の3回の平均を比較することにより算出された。
【0106】
各化合物を、別段の記載が無い限り、10uMの濃度で1Hzの刺激により2つの細胞において試験した(化合物Aは、1Hzおよび4Hzの両方の刺激により3つの細胞において行った)。電流は、低いローパスフィルタの2倍以上の速度でサンプリングした。実験中、流速は一定に保持した。すべての電流は、室温~25℃で記録された。
【0107】
RORγGal4レポーターアッセイ、ヒト全血アッセイおよびNaチャネルアッセイにおける化合物1および参照化合物AのIC50値を以下に提供する。
【0108】
化合物Aは、米国特許第9,815,859号に開示され、特許請求の範囲に記載されている。化合物1は、ヒト全血アッセイにおいて2倍の効力を示しており、またNaチャネルアッセイにおいて本質的に不活性であることが判明し、一方で化合物Aは、本アッセイにおいては8.6μMのIC50を示した。これらの違いから、化合物1は、今後の開発候補として優れていると考えられた。
【表4】
【国際調査報告】