(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】メンブレンモジュールを含む細胞押出装置およびこれを用いた細胞押出方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230310BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230310BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544735
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2020012628
(87)【国際公開番号】W WO2021149891
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0008298
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0079466
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522292378
【氏名又は名称】エムディイミューン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MDIMUNE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100109139
【氏名又は名称】今井 孝弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163902
【氏名又は名称】市川 奈月
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ドンウ
(72)【発明者】
【氏名】ペ,シンギュ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ソンウク
(72)【発明者】
【氏名】シム,ユンボム
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンジュ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B065AA90X
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、メンブレンモジュールを含む細胞押出装置およびこれを用いた細胞押出方法に関し、メンブレンモジュール内で細胞を含む懸濁液を効率的に分散させることによって、メンブレン目詰まり現象を防止することができると共に、メンブレン使用面積を増加させることができ、また、メンブレン交換および工程実行が容易で、生産効率をさらに上げることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の加圧を通じてメンブレンモジュールを通過する懸濁液内細胞を押出する細胞押出装置において、
前記メンブレンモジュールは、
前記懸濁液が移動する貫通ホールが形成された一対の支持体と、
前記細胞が通過して押出されるメンブレンと、
中心部を含む分散ゾーンを除いて微細ホールが多数形成された分散ディスクと、を含み、
前記一対の支持体の間に、前記メンブレンおよび前記分散ディスクが位置し、
前記一対の支持体にそれぞれ形成された貫通ホールおよび前記分散ディスクの中心部が同一軸上に位置し、
前記メンブレンモジュールは、一対のホルダー部によって密着固定されることを特徴とする細胞押出装置。
【請求項2】
前記メンブレンモジュールは、
前記分散ディスクおよび前記分散ディスクに隣接する支持体の間にOリングが位置し、一定空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の細胞押出装置。
【請求項3】
前記メンブレンモジュールは、
前記分散ディスクおよび前記メンブレンの間にOリングが位置し、一定空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の細胞押出装置。
【請求項4】
前記メンブレンモジュールは、
前記メンブレンの一つ以上の面に多孔性メンブレン支持フィルムが位置し、前記メンブレンの破損を防止することを特徴とする請求項1に記載の細胞押出装置。
【請求項5】
一定の加圧を通じてメンブレンモジュールを通過する懸濁液内細胞を押出させる細胞押出装置において、
前記メンブレンモジュールは、
前記懸濁液が移動する貫通ホールが形成された一対の支持体と、
前記細胞が通過して押出されるメンブレンと、
中心部を含む分散ゾーンを除いて微細ホールが多数形成された一対の分散ディスクと、を含み、
前記一対の支持体の間に、前記メンブレンおよび前記メンブレンの両方向に前記一対の分散ディスクがそれぞれ位置し、
前記一対の支持体それぞれの貫通ホール、前記一対の分散ディスクの中心部が同一軸上に位置し、
前記メンブレンモジュールは、一対のホルダー部によって密着固定されることを特徴とする細胞押出装置。
【請求項6】
前記メンブレンモジュールは、
前記支持体と前記分散ディスクの間にOリングがそれぞれ位置し、一定空間を形成することを特徴とする請求項5に記載の細胞押出装置。
【請求項7】
前記メンブレンモジュールは、
前記メンブレンと前記分散ディスクの間にOリングがそれぞれ位置し、一定空間を形成することを特徴とする請求項5に記載の細胞押出装置。
【請求項8】
前記メンブレンモジュールは、
前記メンブレンの一つ以上の面に多孔性メンブレン支持フィルムが位置し、前記メンブレンの破損を防止することを特徴とする請求項5に記載の細胞押出装置。
【請求項9】
前記メンブレンモジュールは、
前記懸濁液が収容されたシリンジを前記一対の支持体に形成された貫通ホールのうちいずれか一つ以上に連結することを特徴とする請求項1または5に記載の細胞押出装置。
【請求項10】
前記シリンジは、シリンジポンプによってプランジャーが移動することを特徴とする請求項9に記載の細胞押出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の細胞押出装置を用いた細胞押出方法において、
細胞を含む懸濁液が収容されたシリンジを前記細胞押出装置の貫通ホールのうち前記分散ディスクに隣接する支持体の貫通ホールに連結する段階と、
前記シリンジに収容された懸濁液を前記メンブレンモジュール内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て残りの貫通ホールに排出する段階と、
を含む過程を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする細胞押出方法。
【請求項12】
請求項5に記載の細胞押出装置を用いた細胞押出方法において、
細胞を含む懸濁液が収容された第1シリンジを前記細胞押出装置のうち一方の貫通ホールに連結し、プランジャーを内部に圧着させた第2シリンジを他方の貫通ホールに連結する段階と、
前記第1シリンジに収容された懸濁液を前記メンブレンモジュール内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て前記第2シリンジに流入させる段階と、
前記第2シリンジに流入した懸濁液をさらに前記メンブレンモジュール内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て前記第1シリンジに流入させる段階と、
を含む過程を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする細胞押出方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の細胞押出方法によって製造されるベシクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンモジュールを含む細胞押出装置およびこれを用いた細胞押出方法に関し、より詳細には、メンブレンモジュール内で細胞を含む懸濁液を効率的に分散押出させることによって、メンブレン目詰まり現象を防止すると共に、メンブレン使用面積を増加させることができ、また、メンブレン交換および工程実行が容易で、生産効率をより高めることができる細胞押出装置およびこれを用いた細胞押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞体(extracellular vesicles)は、細胞から分泌される多様な種類の粒子を指し、大きく、エンドソーム経路(endosomal pathway)に由来するエキソソーム(exosomes)と、原形質膜(plasma membrane)に由来するマイクロベシクル(microvesicles)などに区分される。
【0003】
細胞によって排出される球形小胞であるエキソソーム(exosomes)は、母細胞のタンパク質、DNAなどの多様な情報を有していて、これをバイオマーカーとして活用してがん診断マーカーおよびセンサーの開発が活発に行われている。
【0004】
また、マイクロベシクル(microvesicles)は、一般に0.03~1μmのサイズを有する細胞小器官の一種であり、細胞の細胞膜から自然遊離して、二重リン脂質(phospholipid)膜の形態を有していて、mRNA、DNAおよびタンパク質などの細胞質内成分を含有している。
【0005】
近年、このような細胞外小胞体を用いた薬物伝達体の研究が活発に行われており、微量の薬物をペジクルにカプセル化させて、特定部位に当該薬物を伝達できるところ、細胞外小胞体を用いた多様な医療分野において活用性が大きくなっている。特にマイクロベシクルは、細胞膜から直接的に遊離することによって、母細胞の抗原体をそのまま保有しているので、ワクチンなどの活用の可能性が非常に高い。
【0006】
しかしながら、細胞から得られる細胞外小胞体の量が非常に限定的であるから、最近では、これを人為的に多い量を得るための細胞外小胞模倣体の製造方法が要求されている。
【0007】
通常、細胞外小胞模倣体を得るための方法として遠心分離機が用いられ得るが、遠心分離機は、価格が高く、依然として収得量が期待に達しない限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような問題点を解決するために、本発明の目的は、メンブレンモジュール内で細胞を含む懸濁液を効率的に分散させる分散ディスクを適用することによって、懸濁液の分散率を高めて、結果的に、押出工程時にメンブレン使用面積を増加させることができ、大容量シリンジ(syringe)を使用することによって、大量生産が可能で、生産効率を上げることができる細胞押出装置およびこれを用いた細胞押出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を達成するために、本発明は、一定の加圧を通じてメンブレンモジュールを通過する懸濁液内細胞を押出する細胞押出装置において、前記メンブレンモジュールは、前記懸濁液が移動する貫通ホールが形成された一対の支持体と、前記細胞が通過して押出されるメンブレンと、中心部を含む分散ゾーンを除いて微細ホールが多数形成された分散ディスクと、を含み、前記一対の支持体の間に、前記メンブレンおよび前記分散ディスクが位置し、前記一対の支持体にそれぞれ形成された貫通ホールおよび前記分散ディスクの中心部が同一軸上に位置し、前記メンブレンモジュールは、一対のホルダー部によって密着固定されることを特徴とする。
【0010】
前記メンブレンモジュールは、前記分散ディスクおよび前記分散ディスクに隣接する支持体の間にOリングが位置し、密閉された一定空間が形成されるところ、これを通じて、支持体を貫通した懸濁液が分散ディスクに形成された多数の微細ホールに拡散できることになる。
【0011】
また、前記分散ディスクおよび前記メンブレンの間にもOリングが位置し、一定の密閉空間を形成することによって、懸濁液のメンブレン透過効率を上げることができる。
【0012】
前記メンブレンモジュールは、前記メンブレンの一つ以上の面に多孔性メンブレン支持フィルムが位置する場合、前記メンブレンの破損を防止することができる。
【0013】
他の態様による本発明は、前記細胞押出装置を用いた細胞押出方法において、細胞を含む懸濁液が収容されたシリンジを前記細胞押出装置の貫通ホールのうち前記分散ディスクに隣接する支持体の貫通ホールに連結する段階と、前記シリンジに収容された懸濁液を前記メンブレンモジュールの内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て残りの貫通ホールに排出する段階と、を含む過程を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする。
【0014】
さらに他の態様による本発明は、一定の加圧を通じてメンブレンモジュールを通過する懸濁液内細胞を押出させる細胞押出装置において、前記メンブレンモジュールは、前記懸濁液が移動する貫通ホールが形成された一対の支持体と、前記細胞が通過して押出されるメンブレンと、中心部を含む分散ゾーンを除いて微細ホールが多数形成された一対の分散ディスクと、を含み、前記一対の支持体の間に、前記メンブレンおよび前記メンブレンの両方向に前記一対の分散ディスクがそれぞれ位置し、前記一対の支持体それぞれの貫通ホール、前記一対の分散ディスクの中心部が同一軸上に位置し、前記メンブレンモジュールは、一対のホルダー部によって密着固定されることを特徴とする。
【0015】
前記メンブレンモジュールは、前記支持体と前記分散ディスクの間にOリングがそれぞれ位置し、密閉された空間を形成して、支持体を貫通した懸濁液が分散ディスクに形成された多数の微細ホールに拡散できることになる。
【0016】
また、前記メンブレンモジュールは、前記メンブレンと前記分散ディスクの間にOリングがそれぞれ位置し、一定の密閉空間を形成することによって、懸濁液のメンブレン透過効率を上げることができる。
【0017】
また、前記メンブレンモジュールは、前記メンブレンの一つ以上の面に多孔性メンブレン支持フィルムが位置し、前記メンブレンの破損を防止することができる。
【0018】
前記メンブレンモジュールは、前記懸濁液が収容されたシリンジを前記一対の支持体に形成された貫通ホールのうちいずれか一つ以上に連結することができ、前記シリンジは、シリンジポンプによってプランジャーが移動することができる。
【0019】
さらに他の態様による本発明は、請求項1に記載の細胞押出装置を用いた細胞押出方法において、
細胞を含む懸濁液が収容されたシリンジを前記細胞押出装置の貫通ホールのうち前記分散ディスクに隣接する支持体の貫通ホールに連結する段階と、
前記シリンジに収容された懸濁液を前記メンブレンモジュールの内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て残りの貫通ホールに排出する段階と、
を含む過程を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする細胞押出方法。
【0020】
さらに他の態様による本発明は、前記細胞押出装置を用いた細胞押出方法において、細胞を含む懸濁液が収容された第1シリンジを前記細胞押出装置のうち一方の貫通ホールに連結し、プランジャーを内部に圧着させた第2シリンジを他方の貫通ホールに連結する段階と、前記第1シリンジに収容された懸濁液を前記メンブレンモジュールの内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て前記第2シリンジに流入させる段階と、前記第2シリンジに流入した懸濁液をさらに前記メンブレンモジュールの内部に注入した後、前記分散ディスクと前記メンブレンを経て前記第1シリンジに流入させる段階と、を含む過程を少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、下記のような効果を有する。
【0022】
1.大容量シリンジを用いて細胞を含む懸濁液をメンブレンモジュールの内部に注入することができるので、操作が容易で、迅速に細胞を押出させることができる。
【0023】
2.メンブレンモジュールの内部に位置する一対の支持体に形成された貫通ホールおよび分散ディスクの中心部が同一軸上に位置し、前記分散ディスクの分散ゾーンには微細ホールが形成されていないので、貫通ホールを通過した懸濁液が分散ディスクの分散ゾーンにぶつかって分散するので、四方に開いた微細ホールを通過することになって、メンブレン使用面積を増加させることができるだけでなく、繰り返し使用の際にメンブレンが詰まる現象も防止することができる。
【0024】
3.メンブレンモジュールの内部にメンブレンを基準として両側に一対の分散ディスクがそれぞれ位置する押出装置の両端にシリンジを連結して押出する場合、連続的な押出工程が可能になって、押出時間を短縮させることができる。
【0025】
4.メンブレンモジュールが相互締結される一対のホルダー部によって密着が固定または解除されるので、多孔サイズが異なるメンブレンを容易に交替することができ、メンブレンモジュールの内部構成全体に使い捨て用品を使用する場合、工程上の汚染発生の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態による細胞押出装置の分離斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による細胞押出装置の分離断面図である。
【
図4】本発明による第1実施形態の細胞押出装置の一側にシリンジが連結された様子を示す斜視図である。
【
図5】本発明による第2実施形態による細胞押出装置の分離斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態による細胞押出装置の分離断面図である。
【
図7】本発明による第2実施形態による細胞押出装置の両側にシリンジが連結された様子を示す斜視図である。
【
図8】本発明による第2実施形態による細胞押出装置の両側に連結されたシリンジをシリンジポンプに移動させる様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して本発明による実施形態を詳細に説明する。
【0028】
本発明は、様々な実施形態が図面に例示されて示され、以下で詳細に説明される。しかしながら、本発明を開示された特別な形態に限定しようとする意図ではなく、かえって本発明は、請求項によって定義された本発明の思想と合致するすべての修正、均等および代用を含む。ただし、添付の図面において、厚さおよびサイズは、明細書の明確性のために誇張されたものであり、したがって本発明は、添付の図面に示された相対的なサイズや厚さによって制限されない。
【0029】
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態による細胞押出装置(以下、「押出装置」という)を説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態による押出装置10の分離斜視図であり、
図2は、本発明の第1実施形態による押出装置10の分離断面図である。
【0031】
前記押出装置10は、メンブレンモジュール100と、前記メンブレンモジュール100を密着固定させる一対のホルダー部200、200′と、を含む。
【0032】
前記メンブレンモジュール100は、細胞を含む懸濁液300が前記メンブレンモジュール100の内部を貫通しつつ、微細な多孔性を有するメンブレン110を通過するとき、細胞が押出される。
【0033】
前記細胞を含む懸濁液300は、シリンジ(syringe)を用いて前記メンブレンモジュール100の内部に注入されることができる。しかしながら、懸濁液300の注入手段は、必ずシリンジに限定されるものではなく、懸濁液300を一定の方向に加圧させて排出可能なものであれば構わない。
【0034】
前記メンブレンモジュール100は、内部に一対の支持体120、120′と前記一対の支持体120、120′の間にメンブレン110および分散ディスク130を含む。
【0035】
前記支持体120、120′は、それぞれ懸濁液が移動する貫通ホール121、121′が形成される。前記貫通ホール121、121′は、支持体120、120′の中心に形成されることが懸濁液300の移動軸を直線にするにあたって好ましい。
【0036】
前記貫通ホール121、121′の末端は、細胞を含む懸濁液300が収容されたシリンジ400の末端と容易な結合のために、支持体120、120′から一定の高さで突出することができる。前記支持体120、120′の末端は、シリンジ400の末端と容易な結合のために一定の高さで突出した形態でありうる。もし、シリンジ400の末端にニードル(needle)との結合のためにねじ線が形成されてもよいが、この場合、前記支持体120、120′の末端は、前記シリンジ400の末端に形成されたねじ線に対応するねじ線を形成すると、シリンジ400との結合をより丈夫に結合させることができる。
【0037】
図3(A)および
図3(B)に示されたように、前記分散ディスク130は、中心部を含む分散ゾーン131を除いて微細ホール132が多数形成されているが、注入される懸濁液300が貫通ホール121に沿って速い速度で移動して、分散ディスク130の分散ゾーン131に衝突することによって、広く分散することになる。
【0038】
ここで、分散効率を上げるためには、前記メンブレンモジュール100の内部に位置する支持体120、120′に形成された貫通ホール121、121′と分散ディスク130の中心部が同一軸上に位置しなければならない。
【0039】
前記分散ディスク130によって分散した懸濁液300が外部に流出されることなく、持続的な圧力を受けて、分散ディスク130に形成された多数の微細ホール132を抜け出るためには、前記分散ディスク130および前記分散ディスク130に隣接する支持体120の間にOリング140が位置することが好ましい。これは、Oリング140が前記位置にあれば、密着した状態で前記分散ディスク130と前記支持体120の間に密閉された一定空間が形成され、これを通じて、前記懸濁液300が分散効果をさらに高めることができる。
【0040】
前記メンブレンモジュール100は、分散ディスク130とメンブレン110の間にOリング140がさらに位置していてもよく、これを通じて、密着した状態で、また、密閉された一定の空間が形成されて、懸濁液300がメンブレン300の通過時に持続的な加圧状態を維持することができる。
【0041】
また、必要に応じてメンブレンモジュール100の構成間の密閉された密着を高めるために、さらなるOリング140がさらに位置していてもよい。
【0042】
また、前記メンブレンモジュール100は、メンブレン110の少なくとも一つ以上の面に多孔性を有するメンブレン支持フィルム150がさらに位置していてもよい。前記メンブレン支持フィルム150は、メンブレン110に一定の圧力が加えられるとき、メンブレン110が破損するのを防止する。前記メンブレン支持フィルム150の多孔性サイズは、メンブレン110の多孔性サイズより大きい場合にのみ、懸濁液300の移動が円滑になりえる。
【0043】
前記メンブレンモジュール100は、内部の構成が相互密着する場合、懸濁液300が流出することなく、一定の圧力状態でメンブレン110を円滑に通過することができる。したがって、前記メンブレンモジュール100の密着のために、一対のホルダー部200、200′が前記メンブレンモジュール100を収容しつつ、締結手段によって密着固定される。前記締結手段は、
図1および
図2に示されたように、相互対応するねじ線であってもよいが、必ずこれに限定されるものではなく、通常の締結手段なら全部これに該当することができる。前記一対のホルダー部200、200′の末端は、前記支持体120、120′の末端が露出するように一定のホールが形成される。前記ホルダー部200、200′の材質は、特に限定されないが、一定の密着による圧力に耐えるためには、金属類でありうる。
【0044】
細胞の押出工程で、多孔性サイズが異なるメンブレン110の交換が頻繁に発生するが、前記ホルダー部200、200′は、簡単な操作でも密着状態を解除することができ、メンブレン110の交換が容易になるという長所を有する。
【0045】
また、細胞押出工程においてメンブレンモジュール100の洗浄が重要であるから、本発明によるメンブレンモジュール100の構成品を低コストの使い捨て材質で使用することが好ましい。
【0046】
以下、
図4を参照して、本発明の第1実施形態による押出装置10を用いた細胞押出方法を説明することとする。
【0047】
前記押出装置10は、分散ディスク130が一つ存在するので、懸濁液300の注入方向も一方向であることが好ましい。したがって、
図4のように、押出装置10の一側には、細胞を含む懸濁液300が収容されたシリンジ400が連結され、反対の他側には、メンブレン110を通過して排出される懸濁液を外部に誘導する連結ホース160が連結されて、懸濁液300を収容する収容部170に収容される。
【0048】
まず、細胞を含む懸濁液300が収容されたシリンジ400を前記細胞押出装置10の貫通ホール121、121′のうち分散ディスク130に隣接する支持体120に形成された一方の貫通ホール121に連結する(S10段階)
【0049】
次に、連結したシリンジ400に収容された懸濁液300をメンブレンモジュールの内部に注入するように、シリンジ400内部のプランジャー(plunger)を移動させると、前記懸濁液300は、分散ディスク130とメンブレン110を経て残りの他方の貫通ホール121′に排出する(S20段階)。
【0050】
前記S10およびS20段階を少なくとも1回以上、より好ましくは、3~5回以上繰り返することによって、十分な押出効果を得ることができる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態による押出装置10′を
図5~
図8を参照して説明することとする。
【0052】
本発明の第2実施形態による押出装置10′は、前記第1実施形態による押出装置10と一対の分散ディスク130、130′が位置することを除いて、全体的に類似していて、メンブレン110、支持体120、120′および分散ディスク130、130′の形態と機能は、前述した通りである。したがって、前記第2実施形態による押出装置10′は、
図7のように、二つのシリンジ400、400′を両末端に連結して両方向の押出工程が可能になる。
【0053】
図5~
図6では、前記押出装置10′によるメンブレンモジュール100′は、前記一対の支持体120、120′の間にメンブレン110およびメンブレン110の両方向に一対の分散ディスク130、130′がそれぞれ位置する。
【0054】
前記第2実施形態による押出装置10′のメンブレンモジュール100′は、前述した第1実施形態による押出装置10のメンブレンモジュール100のように、一対の支持体それぞれの貫通ホール121、121′、一対の分散ディスク130、130′の中心部が全部同一軸上に位置する。これは、注入される懸濁液300の分散効率を上げるためであり、その原理は、前述したので省略する。
【0055】
前記メンブレンモジュール100′は、各支持体120、120′と分散ディスク130、130′の間ごとにOリング140が位置していてもよいが、これを通じて、密閉された一定空間が形成されて、両方向の懸濁液300の移動時に懸濁液300が外部に流出されないように、密閉された状態で一定の圧力が加えられるので、支持体120、120′を通過した懸濁液300が分散ディスク130、130′により分散して、メンブレン目詰まり現象を防止することができると共に、メンブレン使用面積の増加効果をさらに高めることができる。
【0056】
また、メンブレンモジュール100′は、メンブレン110と分散ディスク130、130′の間ごとにOリング140がそれぞれ位置していてもよいが、これも、密閉された一定空間を形成して、懸濁液300のメンブレン通過時押出効率を上げるためである。
【0057】
前記メンブレン110も、破損を防止するために、メンブレン110の一つ以上の面に多孔性メンブレン支持フィルム150が位置していてもよい。
【0058】
図8は、シリンジポンプ500、500′によって第1および第2シリンジ400、400′内部のプランジャーが自動移動するようにすることができる。より好ましくは、前記二つのシリンジポンプ500、500′が第1および第2シリンジ400、400′の内部圧力が一定に維持されるように自動調節することができ、このために、別途の圧力計(不図示)が設置されてもよい。
【0059】
以下、本発明の第2実施形態による押出装置10′を用いた細胞押出方法について説明する。
【0060】
まず、細胞を含む懸濁液300が収容された第1シリンジ400を前記押出装置10′のうち一方の貫通ホール121に連結し、プランジャーを内部に圧着させた第2シリンジ400′を他方の貫通ホール121′に連結する(S′10段階)。
【0061】
次に、前記第1シリンジ400に収容された懸濁液300をメンブレンモジュール100′の内部に注入した後、分散ディスク130、130′とメンブレン110を経て前記第2シリンジ400′に流入させる(S;20段階)。
【0062】
次に、前記第2シリンジ400′に流入した懸濁液300をさらに前記メンブレンモジュール100′の内部に注入した後、前記分散ディスク130、130′と前記メンブレン110を経て前記第1シリンジ400に流入させる(S′30段階)。
【0063】
このようなS′10段階からS′30段階まで少なくとも1回以上、より好ましくは、3~5回以上繰り返することによって、十分な押出効果を得ることができる。
【0064】
また、本発明は、前記細胞押出方法によって製造されるベシクル(VESICLE)を含む。本発明による押出装置を用いた押出方法によって懸濁液内細胞が押出されて、細胞外小胞体(エキソソーム、マイクロベシクルなど)をはじめとする細胞膜によって形成された細胞外小胞模倣体などのベシクルを獲得することができる。
【0065】
以上説明した本発明は、本明細書で開示された実施形態によって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が変更可能なすべての形態も、本発明の権利範囲に属すると言える。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、メンブレンモジュールを含む細胞押出装置およびこれを用いた細胞押出方法に関し、メンブレンモジュール内で細胞を含む懸濁液を効率的に分散させることによって、メンブレン目詰まり現象を防止することができると共に、メンブレン使用面積を増加させることができ、また、メンブレン交換および工程実行が容易で、生産効率をさらに上げることができる。
【符号の説明】
【0067】
10、10′ 押出装置
100、100′ メンブレンモジュール
110 メンブレン
120、120′ 支持体
121、121′ 貫通ホール
130、130′ 分散ディスク
131 分散ゾーン
132 微細ホール
140 Oリング
150 メンブレン支持フィルム
160 連結ホース
170 収容部
200、200′ ホルダー部
300 懸濁液
400、400′ シリンジ
500、500′ シリンジポンプ
【国際調査報告】