(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】複数の転写産物のハイスループット連結
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20230310BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230310BHJP
C40B 40/02 20060101ALI20230310BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20230310BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12N15/10 100Z
C40B40/02
C12Q1/686 Z
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544751
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 US2021014631
(87)【国際公開番号】W WO2021150903
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521359911
【氏名又は名称】アトレカ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】キャロル、 ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ウィジー、 ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】ボヤルスキー、 セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR62
4B063QS25
(57)【要約】
同じ細胞によって発現したmRNA分子から誘導されたcDNA分子を物理的に連結させるためのハイスループット方法、及びその方法によって生成された連結したcDNA分子のライブラリが提供される。方法は、第1のコンテナにおいて単一細胞からmRNAを逆転写してcDNA分子を生成すること、及び第2のコンテナにおいてcDNA分子を連結させることを含む。方法は、予期しないことに、同じ細胞から誘導された他の分子と正確に連結した分子の数が増加したcDNA分子のライブラリを生成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一細胞から2つ以上の連結した核酸分子を生成する方法であって、
(i)単一細胞を第1のコンテナに単離し、前記単一細胞を溶解してmRNA分子を放出すること;
(ii)前記第1のコンテナにおいて前記mRNA分子を逆転写してcDNA分子を生成すること;及び
(iii)第2のコンテナにおいて工程(ii)において前記単一細胞から誘導された前記cDNA分子を連結させること、
を含み、それにより連結した核酸分子を生成する、前記方法。
【請求項2】
前記第1のコンテナは、前記mRNA分子の一部と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の固体支持体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記mRNA分子は、前記相補的な配列への結合を介して前記オリゴヌクレオチドに結合される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記逆転写することは、前記オリゴヌクレオチドを逆転写酵素で伸長させて前記cDNA分子を生成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)からの前記cDNA分子は、前記固体支持体に共有結合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の固体支持体の各々は、工程(iii)の前に異なる第2のコンテナに単離される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドは、リンカーによって前記固体支持体に結合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカーは、前記固体支持体の表面と前記mRNA分子の一部と相補的な前記配列との間に配置されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リンカーは、光切断性リンカーである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記cDNA分子は、前記第2のコンテナにおいて前記光切断性リンカーを光に曝露することによって前記固体支持体から放出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1~20個の固体支持体が、前記第1のコンテナに存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
平均で3~5個の固体支持体が、前記第1のコンテナに存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
平均で15個の固体支持体が、前記第1のコンテナに存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記固体支持体は、ビーズまたは粒子である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記固体支持体は、1~20マイクロメートルの直径を有する球状粒子である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記固体支持体は、5~10マイクロメートルの間の平均直径を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
工程(iii)において前記cDNA分子を連結させることは、重複伸長PCRによって前記cDNA分子を増幅し、連結させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記cDNA分子は、工程(iii)の前に前記第2のコンテナにおいて前記固体支持体から放出される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用して前記cDNA分子を増幅することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ビオチンタグを含むcDNA分子が、工程(iii)の後に除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用して前記cDNA分子を増幅することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記cDNA分子は、工程(iii)の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記単一細胞は、免疫系細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記単一細胞は、B細胞、メモリーB細胞、活性化B細胞、ブラスティング(blasting)B細胞、形質細胞、または形質芽球である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記mRNA分子は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記cDNA分子は、重鎖及び軽鎖可変領域の同種対をコードする、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記単一細胞は、T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記単一細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記cDNA分子は、T細胞受容体アルファ及びベータ鎖の同種対をコードする、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記第1または前記第2のコンテナは、パーティション、エマルション中の水性液滴、微小胞、チューブ、またはマルチウェルプレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記液滴は、直径が2~500マイクロメートルである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(ii)の後に前記mRNAを消化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記mRNAは、前記第1のコンテナにおいて、または工程(ii)と(iii)との間に消化される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
連結した核酸分子のライブラリを生成するための方法であって、
a)複数の単一細胞を複数の第1のコンテナに単離することであって、前記第1のコンテナは、単一細胞を含む、前記単離すること;
b)前記第1のコンテナにおいて前記単一細胞を溶解してmRNA分子を放出すること;
c)前記第1のコンテナにおいて前記mRNA分子を逆転写して前記単一細胞から誘導されたcDNA分子を生成すること;
d)第2のコンテナにおいて工程(c)からの前記cDNA分子を連結させること;
e)工程(d)からの前記連結したcDNA分子を組み合わせて、連結した核酸分子のライブラリを生成すること
を含む、前記方法。
【請求項36】
前記単一細胞は、B細胞であり、前記ライブラリにおける同種軽鎖可変領域と正確に対合した重鎖可変領域の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記単一細胞は、T細胞であり、前記ライブラリにおける同種T細胞受容体ベータ鎖と正確に対合したT細胞受容体アルファ鎖の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記単一細胞は、NKT細胞であり、前記ライブラリにおける同種T細胞受容体ベータ鎖と正確に対合したT細胞受容体アルファ鎖の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
工程(d)は、重複伸長PCRによって前記cDNA分子を増幅し、連結させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用して前記cDNA分子を増幅することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ビオチンタグを含むcDNA分子が、工程(d)の後に除去される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用して前記cDNA分子を増幅することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記cDNA分子は、工程(d)の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
単一細胞から2つ以上の連結した核酸分子を生成するための方法であって、
(i)単一細胞を第1のコンテナに単離し、前記単一細胞を溶解してmRNA分子を放出すること;
(ii)前記mRNA分子を固体支持体に結合した捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることであって、前記捕捉オリゴヌクレオチドは、mRNA配列の一部と相補的な配列を含む、前記ハイブリダイズさせること;
(iii)前記第1のコンテナにおいて前記mRNA分子を逆転写して、前記固体支持体に結合したcDNA分子を生成すること;
(iv)第2のコンテナにおいて工程(iii)から誘導された前記cDNA分子を連結させること
を含み、それにより連結した核酸分子を生成する、前記方法。
【請求項46】
前記捕捉オリゴヌクレオチドは、前記固体支持体と前記mRNA配列の一部と相補的な前記配列との間に配置されたリンカーをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記リンカーは、切断され、工程(iv)の前に前記固体支持体から前記cDNA分子を放出する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程(iv)は、重複伸長PCRによって前記cDNA分子を増幅し、連結させることを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用して前記cDNA分子を増幅することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ビオチンタグを含むcDNA分子が、工程(iv)の後に除去される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用して前記cDNA分子を増幅することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記cDNA分子は、工程(iv)の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられる、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月22日に出願された米国仮出願番号第62/964,319号の優先権の利益を主張し、これは、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ネイティブ対合した免疫レパートリー配列:B細胞の場合は重鎖-軽鎖対、及びT細胞の場合はアルファ-ベータ鎖対のハイスループット捕捉を達成するために近年開発された多数の方法が存在する。得られたデータセットから収集された情報は、ヒト免疫反応の内部作用に対する独自の洞察を提供し、例えば、治療剤及びワクチンを開発するためのより情報化されたアプローチを可能とし得る。
【0003】
そのような方法の1つのカテゴリは、マイクロコンテナ(例えば、液滴)における個々の免疫細胞の大規模並行単離、その後のそれらのコンテナ内での細胞の溶解、及びmRNA鎖のポリ-A尾部を介するポリ-T捕捉ビーズへのmRNA転写産物の捕捉を含む。しばしば、ビーズは次いで、ハイブリダイゼーションを介して結合したmRNAを有するそれらのコンテナから回収される。これらのビーズは次いで、洗浄され、二次マイクロコンテナ内に個々に再封入され、所望の転写産物(重鎖及び軽鎖またはアルファ及びベータ鎖)はcDNAに逆転写され、最終的にそれらのcDNA配列は、増幅され、元の細胞からの重鎖及び軽鎖配列の両方またはアルファ及びベータ鎖配列の両方を含む単一のアンプリコンへと増幅され、互いに連結される。その後の連結したアンプリコンのシーケンシングは、オペレーターからの最小限の操作時間で1,00,000+の独自の連結した免疫細胞受容体配列を生成し得る。また、連結したアンプリコン断片はさらに、特定の標的(例えば、細胞、対象となる特定のタンパク質)に結合する配列についての免疫レパートリーの詮索のためのディスプレイ形式(例えば、ファージディスプレイ、酵母、ディスプレイ)へと操作され得る。
【0004】
これらのアプローチにおける欠陥、すなわち、mRNA転写産物の捕捉ビーズに対する非共有結合の結果である転写産物の誤対合及び喪失の傾向が存在する。細胞転写産物は、ビーズに共有結合しないので、細胞転写産物が不正確なビーズ上に行き着き、単一細胞への接続を喪失する複数の機会が存在する。そのような接続喪失の1つの例は、上述され、以下の説明で詳述される2つの封入工程間の介在期間において生じる。マイクロコンテナ間のこの時間の間、ビーズサンプルは、極端なケアで処置されなければならない:洗浄溶液は、イオン強度、pH、ならびに界面活性剤及びRNaseの存在の観点から慎重に調整されなければならず、サンプルは、すべての時間で低温で維持されなければならず、洗浄工程は、転写産物喪失、シャッフルまたはそうでなければ捕捉ビーズへの転写産物のランダムなハイブリダイゼーション、ならびに比較的デリケートなmRNA転写産物の分解の程度を最小化するために可能な限り迅速に行われなければならない。
【0005】
捕捉ビーズからのmRNAの脱ハイブリダイゼーション、またはmRNA転写産物それ自体の分解の結果として転写産物の喪失が生じ得る。脱ハイブリダイゼーションは、不十分なイオン強度または洗浄溶液中の所定の界面活性剤もしくは他の試薬の存在、すべての時間でビーズ溶液を低温で維持することの失敗、または第1のコンテナからのビーズの抽出と第2のコンテナへの再封入との間の単純に長引いた時間間隔によって引き起こされ得る。mRNA転写産物の分解は、コンタミネーションを介するRNaseへの曝露または洗浄溶液の不適切なpHによって引き起こされ得る。分解または脱ハイブリダイゼーションの結果は、正確な免疫細胞配列対合の感度及び精度の欠如となる。
【0006】
誤対合は、それらの元のコンテナの外側でありながら、捕捉ビーズに対するmRNA転写産物のランダムな結合の結果として生じる。これは、上記条件のいずれかによって引き起こされ得る。また、捕捉率はほぼ常に100%未満であるため、またはビーズは転写産物で飽和するため、溶液中で遊離したままである元のコンテナ中のある程度余剰の転写産物がほぼしばしば存在する。それらの元のコンテナから除去されると、これらの余剰の遊離転写産物は、他の捕捉ビーズとランダムに結合する機会を有し、このランダム結合はまた、誤対合につながる。
【0007】
本開示は、現在の方法に関連する上記の問題に対する解決策を記載する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書には、複数の転写産物のハイスループット連結のための方法であって、高感度であり、上述した転写産物喪失及び誤対合の元を事実上排除する、方法が記載される。また、同じ単一細胞から誘導された物理的に連結したアンプリコンのライブラリを生成するための方法が記載される。方法は、ライブラリにおける同じ細胞からのアンプリコンに正確に連結したアンプリコンの割合を増加させるという予期しない利点を提供する。
【0009】
一態様では、単一細胞から2つ以上の連結した核酸分子を生成するための方法であって、方法は、
(i)単一細胞を第1のコンテナに単離し、単一細胞を溶解してmRNA分子を放出すること;
(ii)第1のコンテナにおいてmRNA分子を逆転写してcDNA分子を生成すること;及び
(iii)第2のコンテナにおいて工程(ii)において単一細胞から誘導されたcDNA分子を連結させること、
を含み、それにより連結した核酸分子を生成する、方法が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のコンテナは、mRNA分子の一部と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、mRNA分子は、相補的な配列への結合を介してオリゴヌクレオチドに結合される。いくつかの実施形態では、逆転写することは、オリゴヌクレオチドを逆転写酵素で伸長して、cDNA分子を生成することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、リンカーによって固体支持体に結合されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、固体支持体の表面とmRNA分子の一部と相補的な配列との間に配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、リンカーは、光切断性リンカーである。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、光切断性リンカーを光に曝露することによって固体支持体から放出される。いくつかの実施形態では、リンカーは、紫外(UV)光によって切断される。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、第2のコンテナにおいて固体支持体から放出される。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、第2のコンテナにおいて光切断性リンカーを光に曝露することによって固体支持体から放出される。
【0013】
いくつかの実施形態では、上の工程(ii)からのDNA分子は、固体支持体に共有結合される。所定の実施形態では、1つ以上の固体支持体の各々は、工程(iii)の前に異なる第2のコンテナに単離される(または分散される)。
【0014】
いくつかの実施形態では、1~20個の固体支持体が、第1のコンテナに存在する。いくつかの実施形態では、平均で3、4または5個の固体支持体が、第1のコンテナに存在する。いくつかの実施形態では、平均で15個の固体支持体が、第1のコンテナに存在する。
【0015】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、ビーズまたは粒子である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、1~20マイクロメートルの直径を有する球状粒子である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、5~10マイクロメートルの間の平均直径を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、工程(iii)においてcDNA分子を連結させることは、重複伸長PCRによってcDNA分子を増幅し、連結させることを含む。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、ビオチンタグを含むcDNA分子は、連結工程の後に除去される。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、連結工程の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられる。5’-エキソヌクレアーゼは、両方の末端で化学的に改変された外部プライマーを含有しない任意の分子を消化し、分解し得る。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、cDNA分子を増幅し、連結させる前に固体支持体から放出される。
【0017】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、免疫系細胞、例えば、B細胞、メモリーB細胞、活性化B細胞、ブラスティング(blasting)B細胞、形質細胞、形質芽球、T細胞、またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0018】
いくつかの実施形態では、mRNA分子は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする。
【0019】
所定の実施形態では、cDNA分子は、重鎖及び軽鎖可変領域の同種対をコードする。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、T細胞受容体アルファ及びベータ鎖の同種対をコードする。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のコンテナは、パーティション、エマルション中の水性液滴、微小胞、チューブ、またはマルチウェルプレートにおけるウェルを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、液滴は、直径が2~500マイクロメートルである。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、工程(ii)の後にmRNAを消化することをさらに含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、第1のコンテナにおいて、または工程(ii)と(iii)との間に消化される。
【0023】
別の態様では、連結した核酸分子のライブラリを生成するための方法であって、方法は、
a)複数の単一細胞を複数の第1のコンテナに単離することであって、第1のコンテナは、単一細胞を含む、単離すること;
b)第1のコンテナにおいて単一細胞を溶解してmRNA分子を放出すること;
c)第1のコンテナにおいてmRNA分子を逆転写して単一細胞から誘導されたcDNA分子を生成すること;
d)第2のコンテナにおいて工程(c)からのcDNA分子を連結させること;
e)工程(d)からの連結したcDNA分子を組み合わせて、連結した核酸分子のライブラリを生成すること
を含む、方法が記載される。
【0024】
いくつかの実施形態では、工程(d)は、重複伸長PCRによってcDNA分子を増幅し、連結させることを含む。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、ビオチンタグを含むcDNA分子は、工程(d)の後に除去される。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、工程(d)の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、B細胞であり、ライブラリにおける同種軽鎖可変領域と正確に対合した重鎖可変領域の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する。
【0026】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、T細胞であり、ライブラリにおける同種T細胞受容体ベータ鎖と正確に対合したT細胞受容体アルファ鎖の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する。
【0027】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、NKT細胞であり、ライブラリにおける同種T細胞受容体ベータ鎖と正確に対合したT細胞受容体アルファ鎖の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する。
【0028】
別の態様では、単一細胞から2つ以上の連結した核酸分子を生成するための方法であって、方法は、
(i)単一細胞を第1のコンテナに単離し、単一細胞を溶解してmRNA分子を放出すること;
(ii)mRNA分子を固体支持体に結合した捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることであって、捕捉オリゴヌクレオチドは、mRNA配列の一部と相補的な配列を含む、ハイブリダイズさせること;
(iii)第1のコンテナにおいてmRNA分子を逆転写して、固体支持体に結合したcDNA分子を生成すること;
(iv)第2のコンテナにおいて工程(iii)から誘導されたcDNA分子を連結させること
を含み、それにより連結した核酸分子を生成する、方法が記載される。
【0029】
いくつかの実施形態では、工程(iv)は、重複伸長PCRによってcDNA分子を増幅し、連結させることを含む。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、ビオチンタグを含むcDNA分子は、工程(iv)の後に除去される。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、工程(iv)の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、固体支持体とmRNA配列の一部と相補的な配列との間に配置されたリンカーをさらに含む。よって、捕捉オリゴヌクレオチドが逆転写酵素によって伸長されてcDNAが生成される場合、cDNAは、捕捉オリゴヌクレオチドに共有結合し、それによりcDNAは、リンカーを介して固体支持体の表面に結合される。
【0031】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、cDNA分子を単一のアンプリコンに増幅し、連結させる工程の前に、リンカーは、切断され、固体支持体からcDNA分子を放出し得る。
【0032】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、cDNA分子を連結させることは、重複伸長PCRによってcDNA分子を増幅し、連結させることを含み得る。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ビオチンタグを含む1つ以上の内部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、ビオチンタグを含む分子は、重複伸長PCR工程の後に除去される。ビオチンタグを含む分子は、分子を、例えば、ビーズまたは磁性ビーズなどの固体支持体に連結したストレプトアビジン接触させ、ビオチンタグを含まない未結合分子からストレプトアビジンに結合するビオチンタグを含む分子を分離することによって除去され得る。いくつかの実施形態では、重複伸長PCRは、ヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変された1つ以上の外部プライマーを使用してcDNA分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の外部プライマーは、ホスホロチオエート結合を含むように化学的に改変されている。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、重複伸長PCR工程の後に5’-エキソヌクレアーゼと接触させられて、両端で化学的に改変された外部プライマーを含有しない分子が消化され、分解される。さらなる増幅の前のビオチンタグを含む分子の除去及び/または非連結一本鎖分子の分解は、最終連結生成物の収率及び正確な対合を増加させる利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】最先端方法及び本開示の2つの実施形態の概略図を示している。3つすべての場合において、工程1は、コンテナ内での細胞の溶解と、それに続く捕捉ビーズに対するmRNA鋳型のハイブリダイゼーションを含む。最新技術の方法の場合、mRNA鋳型は、工程2中に捕捉ビーズにハイブリダイズされたままである。工程3において、エマルションが分解され、ビーズが洗浄される。それは、いくつかのmRNA鋳型がしばしばビーズから失われるこの段階において、ビーズ間でシャッフルされ、または別のコンテナの内容物からランダムに捕捉される。工程4において、ビーズは、第2のコンテナに再封入され、次いでcDNAへの逆転写及び増幅及び標的cDNA間の連結が達成され得る。本開示の一実施形態では、工程2は、mRNA標的を捕捉ビーズ上で直接的に逆転写し、続いて元のmRNA鋳型を消化することを含む。工程3において、ビーズはそれらのコンテナから抽出され、cDNA標的はビーズに共有結合しているので、cDNA標的を失うリスクを伴わずに洗浄される。工程4において、ビーズは、二次コンテナに再封入され、ここで、cDNAは増幅され、所望の生成物が単一のアンプリコンで互いに連結され得る。本開示の代替的な実施形態では、工程2は、捕捉ビーズ上でmRNA標的をcDNAに直接的に逆転写することを含む。工程3において、ビーズはそれらのコンテナから抽出され、洗浄され、mRNA鋳型は消化除去される。cDNA標的はビーズに共有結合しているので、cDNA標的の喪失のリスクがない。工程4において、ビーズは、二次コンテナに再封入され、ここで、cDNAは増幅され、所望の生成物が単一のアンプリコンで共に連結され得る。
【
図2】液滴形成のためのフローフォーカシング構成における油インプットチャネル及び以下の水性インプットチャネル:(1)懸濁緩衝液中の細胞及び(2)溶解/逆転写(RT)ミックス中の捕捉ビーズを有するマイクロ流体液滴チップの概略図を示している。異なるマイクロ流体チャネルの中で組み合わされるまたは分けられる様々な成分(細胞、ビーズ、溶解ミックス、RTミックス)で複数の異なる実施形態が可能であり、その異なるマイクロ流体チャネルはすべてが合流して、液滴中で所望とされる最終ミックスを含むような比でそれらの成分を統合する。バーコード付きビーズ及び細胞は、ポアソン分布によって記載されるように水性液滴にロードされる。液滴当たりのビーズ及び液滴当たりの細胞の平均値(ラムダ)は、それらのインプットストリームにおけるそれらの成分の濃度の関数である。液滴は、細胞溶解及び逆転写反応が生じる反応コンテナである。
【
図3】捕捉DNAオリゴヌクレオチドを固体支持体にコンジュゲートさせるための代表的な連結ストラテジーを示している。銅フリークリックケミストリーアプローチは、アジド改変オリゴヌクレオチド及びDBCO官能化固体支持体を使用する。カルボキシル-アミン結合において、アミン改変オリゴは、カルボン酸官能化固体支持体とコンジュゲートされる。非共有結合性であるが強い結合はまた、ストレプトアビジン分子で改変された固体支持体にビオチン化オリゴヌクレオチドを結合させることによって達成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
用語
用語「誘導された」は、別の分子から直接的にまたは間接的に生成される化合物または分子を指す。用語「単一細胞から誘導された」は、単一細胞から直接的に単離された分子、または単一細胞から単離された分子から合成された分子を指す。単一細胞から単離された分子が核酸分子である場合、その用語は、単離された核酸分子と相補的、または逆相補的な配列を含む分子を含む。例えば、cDNAが単一細胞から単離されたmRNA鋳型分子から合成された場合、cDNA分子は、単一細胞から誘導されている。
【0035】
用語「固体支持体」は、核酸分子をそれに結合または付着させるのに好適な個体表面を含む組成物を指す。
【0036】
用語「ポリヌクレオチド(複数可)」及び「核酸(複数可)」は、DNA分子及びRNA分子ならびにそれらのアナログ(例えば、ヌクレオチドアナログを使用してまたは核酸化学を使用して生成されたDNAまたはRNA)を指す。所望により、ポリヌクレオチドは、合成的に、例えば、当該技術分野で認識されている核酸化学を使用してまたは例えば、ポリメラーゼを使用して酵素的に作製され得、所望の場合、改変され得る。典型的な改変には、メチル化、ビオチン化、及び他の当該技術分野で知られている改変が含まれる。また、ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得、所望の場合、検出可能な部位に連結され得る。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、ハイブリッド分子(例えば、DNA及びRNAを含む)を含み得る。
【0037】
「G」、「C」、「A」、「T」及び「U」はそれぞれ通常、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミジン及びウラシルを含有するヌクレオチドを表す。しかしながら、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」はまた、改変ヌクレオチドまたは代理置換部位を指し得ることが理解される。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルが、そのような置換部位を有するクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対合特性を実質的に変化させることなく他の部位によって置換され得ることをよく知っている。例えば、限定されないが、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成し得る。よって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、ヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含有するヌクレオチドに置換され得る。別の例では、オリゴヌクレオチドにおけるいずれかの場所のアデニン及びシトシンは、グアニン及びウラシルで置換され得、それぞれ、標的mRNAとG-U揺らぎ塩基対合を形成し得る。そのような置換部位を含有する配列は、本明細書に記載の組成物及び方法に好適である。
【0038】
本明細書で使用される場合、及び別段示されない限り、用語「相補的」は、第2のヌクレオチド配列に関連して第1のヌクレオチド配列を記載するために使用される場合、当業者によって理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが、所定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとハイブリダイズし、二本鎖構造を形成する能力を指す。そのような条件は、例えば、ストリンジェントな条件であり得、ストリンジェントな条件は、400mM NaCl、40 mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃で12~16時間、それに続く洗浄を含み得る。生物内で遭遇し得るような生理的に関連する条件などの他の条件も適用され得る。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終的な用途に従って2つの配列の相補性の試験のために最も適切な条件のセットを決定することができる。
【0039】
相補的な配列には、第2のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの領域に対する第1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの領域の、一方または両方のヌクレオチド配列の長さまたは長さの一部にわたる塩基対合が含まれる。そのような配列は、本明細書で互いに関して「相補的」と称され得る。しかしながら、第1の配列が本明細書で第2の配列に関して「実質的に相補的」と称される場合、2つの配列は、相補的であり得、またはそれらは、塩基対合した領域内に1つ以上であるが、通常は約5、4、3、または2つ以下のミスマッチ塩基対を含み得る。ミスマッチ塩基対を有する2つの配列の場合、2つのヌクレオチド配列が塩基対合を介して互いに結合する場合、配列は「実質的に相補的」とみなされる。
【0040】
「相補的」配列はまた、本明細書で使用される場合、それらのハイブリダイズする能力に関して上の実施形態が満たされる限り、非ワトソン・クリック塩基対及び/または非天然及び改変ヌクレオチドから形成される塩基対を含み、またはそれから全体的に形成され得る。そのような非ワトソン・クリック塩基対には、G:U揺らぎまたはフーグスティーン型塩基対合が含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関する用語「同一」率は、後述する配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTNまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズム)の1つを使用してまたは視覚検査によって測定して、最大一致について比較及びアライメントされた場合、同じである特定の割合のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列またはサブ配列を指す。用途に応じて、「同一」率は、比較されている配列の領域にわたって、例えば、機能性ドメインにわたって存在し、または、代替的に、比較される2つの配列の全長にわたって存在し得る。
【0042】
配列比較のため、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、部分配列座標が指定され、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列(複数可)の配列同一率を計算する。
【0043】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカル相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性方法のための探索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、または視覚検査(一般にAusubel et al.(上掲)を参照されたい)によって実行され得る。
【0044】
配列同一及び配列類似率を決定するのに好適なアルゴリズムの1つの例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを介して公共に利用可能である。
【0045】
同一配列には、一方または両方のヌクレオチド配列の全体の長さにわたって第2のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに対する第1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの100%同一性が含まれる。そのような配列は、本明細書で互いに関して「完全に同一」と称され得る。しかしながら、いくつかの態様では、第1の配列が本明細書で第2の配列に関して「実質的に同一」と称される場合、2つの配列は、完全に相補的であり得、またはそれらは、アライメントすると1つ以上のミスマッチヌクレオチドを有し得る。いくつかの態様では、第1の配列が、本明細書で第2の配列に関して「実質的に同一」と称される場合、2つの配列は、完全に相補的であり得、またはそれらは、互いに少なくとも約50、60、70、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一であり得る。
【0046】
ヌクレオチド配列を記載するために従来の表記が本明細書で使用される:一本鎖ヌクレオチド配列の左側の末端は、5’末端である;二本鎖ヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と称される。生成中のRNA転写産物へのヌクレオチドの5’から3’への付加の方向は、転写方向と称される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と称される;そのDNAから転写されたmRNAと同じ配列を有するDNA鎖上にあり、かつRNA転写産物の5’末端に対して5’に位置する配列は、「上流配列」と称される;mRNAと同じ配列を有するDNA鎖上にあり、かつコーディングRNA転写産物の3’末端に対して3’にある配列は、「下流配列」と称される。
【0047】
用語「メッセンジャーRNA」または「mRNA」は、イントロンを有さず、かつポリペプチドに翻訳され得るRNAを指す。
【0048】
用語「cDNA」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのmRNAと相補的または同一であるDNAを指す。
【0049】
用語「アンプリコン」は、核酸増幅反応、例えば、RT-PCRの増幅された生成物を指す。
【0050】
用語「ハイブリダイズする」は、相補的核酸との配列特異的共有結合相互作用を指す。ハイブリダイゼーションは、核酸配列のすべてまたは一部に対して生じ得る。当業者は、核酸二本鎖、またはハイブリッドの安定性がTmによって決定され得ることを認識する。ハイブリダイゼーション条件に関する追加のガイダンスは、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,1989,6.3.1-6.3.6及びSambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,Vol.3で見ることができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「領域」は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の連続的部分を指す。本明細書に記載される領域の例には、識別領域及びサンプル識別領域が含まれる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の領域を含み得る。いくつかの態様では、領域は、結合され得る。いくつかの態様では、領域は、機能可能に結合され得る。いくつかの態様では、領域は、物理的に結合され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、組換え事象から生じる可変ヌクレオチド配列を指し、例えば、それは、対象となるT細胞またはB細胞、例えば、活性化T細胞または活性化B細胞から単離された免疫グロブリンまたはT細胞受容体配列のV、J、及び/またはD領域を含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「B細胞可変免疫グロブリン領域」は、B細胞から単離された可変免疫グロブリンヌクレオチド配列を指す。例えば、可変免疫グロブリン配列は、対象となるB細胞、例えば、メモリーB細胞、活性化B細胞、または形質芽球から単離された免疫グロブリン配列のV、J、及び/またはD領域を含み得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ネイティブ対」または「同種対」は、同じB細胞によって発現する重鎖及び軽鎖可変領域をコードする免疫グロブリン遺伝子、または同じT細胞によって発現するアルファ及びベータ鎖をコードするT細胞受容体(TCR)遺伝子を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「識別領域」は、第2の区別されるヌクレオチド配列に結合されて、例えば、後の第2のヌクレオチド配列の識別を可能とし得る第1のヌクレオチド配列(例えば、独自のバーコード配列)を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「バーコード」または「バーコード配列」は、少なくとも1つのヌクレオチド配列に結合されて、例えば、後の少なくとも1つのヌクレオチド配列の識別を可能とし得る任意の独自の配列を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン領域」は、抗体の一方または両方の鎖(重及び軽)からのヌクレオチド配列の連続的部分を指す。
【0058】
用語「抗体」は、任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、または標的抗原への特異的結合についてインタクトな抗体と競合し得るその断片を指し、例えば、キメラ、ヒト化、完全ヒト、及び二重特異的抗体を含む。「抗体」は、抗原結合タンパク質の種である。インタクト抗体は通常、少なくとも2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含むが、いくつかの例では、重鎖のみを含み得るラクダ科動物に天然に存在する抗体などのより少ない鎖を含み得る。抗体は、単一源のみから誘導され得、または「キメラ」であり得、すなわち、抗体の異なる部分が、2つの異なる抗体から誘導され得る。抗原結合タンパク質、抗体、または結合断片は、ハイブリドーマにおいて、組換えDNA技術によって、またはインタクト抗体の酵素的もしくは化学的切断によって生成され得る。別段示されない限り、用語「抗体」には、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、バリアント、断片、及び変異タンパク質が含まれる。さらに、明白に除かれない限り、抗体には、モノクローナル抗体、二重特異的抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(時に本明細書で「抗体模倣体」と称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体(時に本明細書で「抗体コンジュゲート」と称される)、及びそれらの断片がそれぞれ含まれる。いくつかの実施形態では、その用語はまた、ペプチボディを包含する。
【0059】
用語「コンテナ」は、本明細書に記載の分子生物学的反応を行うのに好適な包囲されたまたは部分的に包囲された空間を指し、パーティション、エマルション中の水性液滴、微小胞、チューブ、またはマルチウェルプレートにおけるウェルを含む。
【0060】
用語「捕捉オリゴヌクレオチド」は、別の核酸配列の少なくとも一部と相補的な核酸配列を含むオリゴヌクレオチドを指す。例えば、捕捉オリゴヌクレオチドは、サンプルに存在するmRNA配列の少なくとも一部と相補的な配列を含み得る。
【0061】
用語「約」は、本明細書で数値を修飾する場合、当業者が遭遇する通常の変動を包含する。よって、用語「約」は、修飾された数値においてプラスまたはマイナス0.1%、0.5%、1.0%、2%、5%または10%の変動を含む。本明細書で提供されるすべての範囲は、端点及び端点間のすべての値を1桁目の有効数字まで含む。
【0062】
転写産物を連結させるための方法
本明細書には、細胞から転写産物を連結させるための方法であって、高感度であり、当該技術分野で知られている現在の方法で生じる転写産物喪失及び誤対合の源を事実上排除する、方法が記載される。この高感度及び増加した精度は、mRNA鋳型を、固体支持体がそれらの元のコンテナ内に保持されつつ、固体支持体(例えば、捕捉ビーズ)に共有結合したcDNAに逆転写することによって達成される。一態様では、逆転写(RT)工程は、増幅及び連結工程とは別のコンテナにおいて行われる。いくつかの実施形態では、mRNA転写産物は、固体支持体が第1のコンテナを離れる前に消化によって破壊される。方法は、予期しないことに、後のPCR工程の感度を増加させ得、結果として、それらの元のコンテナに存在する配列のみが増幅され、互いに連結される。この革新的工程は、既存の方法と比較して対形成忠実性及び感度を有意に改善するという主要な利益を有する。例えば、発明者は、予期しないことに、第1のコンテナにおいて逆転写工程を行うことが、固体支持体が第1のコンテナから除去された後、固体支持体を第2のコンテナに加える前にRT工程を行う、または固体支持体が第2のコンテナに加えられた後にRT工程を行う場合と比較して、同じ細胞から誘導された連結したcDNA(例えば、ネイティブ対合したcDNA)の割合の有意な増加をもたらしたことを見出した。方法はまた、プロセスがより安定的であり、固体支持体がそれらの元のコンテナから抽出された後かつそれらが二次コンテナに加えられる前に停止され得るという二次的な利益を提供する。この二次的利益は、より高いワークフロー柔軟性の利点を提供する。
【0063】
本明細書に記載の方法は、別段示されない限り、当該技術分野の技術の範囲内のタンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の従来の方法を含み得る。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Green & Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th Edition,2012);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992);Current Protocols in Molecular Biology(2002- ;Wiley;Online ISBN:9780471142720;DOI:10.1002/04711142727);Current Protocols in Immunology(2001- ;Wiley;Online ISBN:9780471142737;DOI:10.1002/0471142735)を参照されたい。
【0064】
一態様では、2つ以上の連結した核酸分子を生成するための方法が記載される。本明細書に記載の方法は、細胞溶解及び逆転写反応が固体支持体(ビーズなど)にコンジュゲートされたオリゴ-dTプライマーを使用して第1のコンテナ(コンテナ1)において行われ、第1の液滴において固体支持体に共有結合したcDNAをもたらす一方で、cDNAを連結させるPCR増幅反応が第2のコンテナ(コンテナ2)において行われる点で当該技術分野で現在使用されている方法とは異なる。本方法によって提供される利点には、(i)cDNAが固体支持体に永続的に共有結合するので、コンタミネーションがより少ないこと(例えば、他のコンテナからの固体支持体に結合する異なるサンプルからの転写産物の交差コンタミネーションであり、連結したcDNA分子は、同じサンプルからもはや誘導されないことになる)及び(ii)RT反応の増加した感度が含まれる。実施例は、方法の代表的な実施形態を提供する。1つの代表的な実施形態では、方法の工程は、エマルション液滴への細胞の個々の封入、細胞(複数可)の液滴内溶解、cDNAを生成するための逆転写、液滴2へのcDNAの組み込み、及びcDNA分子を互いに連結させるための液滴2におけるPCRを含む。いくつかの実施形態では、連結したcDNA分子は、単一細胞から誘導された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖をコードする。
【0065】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、細胞などの生物学的サンプルに元々存在していた。いくつかの実施形態では、核酸分子は、免疫系タンパク質、例えば、IgG重鎖及び軽鎖可変領域、またはT細胞受容体アルファ及びベータ鎖をコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、IgG重鎖及び軽鎖可変領域のネイティブ対(「同種対」とも称される)、またはT細胞受容体アルファ及びベータ鎖をコードする。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、(i)単一細胞を第1のコンテナに単離すること、及び細胞を溶解して核酸分子を放出すること、(ii)第1のコンテナにおいて核酸分子の相補的コピーを生成すること;及び(iii)第2のコンテナにおいて核酸分子の相補的コピーを連結させ、それにより連結した核酸分子を生成することを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、RNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)分子である。
【0067】
よって、いくつかの実施形態では、方法は、(i)単一細胞を第1のコンテナに単離すること、及び細胞を溶解して核酸分子を放出すること、(ii)第1のコンテナにおいてmRNA分子を逆転写してcDNA分子を生成すること;及び(iii)第2のコンテナにおいてcDNA分子を連結させ、それにより連結した核酸分子を生成することを含む。いくつかの実施形態では、方法の工程は、以下の順序で生じる:(i)、続いて(ii)、続いて(iii)。
【0068】
いくつかの実施形態では、工程(iii)におけるcDNA分子は、単一細胞に存在するmRNA分子から誘導される。すなわち、単一細胞に存在するmRNA分子は、細胞が溶解した場合に単一細胞から放出され、当該技術分野で知られている方法を使用してcDNAに逆転写される。例えば、mRNA分子は、オリゴヌクレオチドプライマーのmRNAにおける相補的な配列に対するハイブリダイゼーションを促進する条件下で、mRNA分子の一部と相補的な核酸配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーと接触させられ得、プライマーは、mRNA/オリゴヌクレオチドヘテロ二本鎖を逆転写酵素活性を有する酵素と接触させることによって伸長され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1のコンテナは、mRNA分子の一部と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の固体支持体を含む。オリゴヌクレオチドは、mRNA分子が相補的な配列への結合を介してオリゴヌクレオチドに結合されるように、mRNA分子の相補的部分にハイブリダイズし得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、cDNA分子が固体支持体に共有結合するようにcDNA分子を生成するために転写酵素でオリゴヌクレオチドを伸長させることによって逆転写される。
【0070】
いくつかの実施形態では、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、mRNA転写産物(すなわち、mRNA転写産物を「捕捉」し、そのため、代替的に「捕捉オリゴヌクレオチド」と称される)にハイブリダイズするように機能し、逆転写反応を開始させてmRNA分子をcDNA分子に(逆転写酵素によるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長を介して)逆転写するためのプライマーとしての役割を果たす。いくつかの実施形態では、リンカーは、固体支持体表面とオリゴヌクレオチドとの間に配置され、これによりオリゴヌクレオチドは、リンカーを介して間接的に固体支持体表面に結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、光切断性リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、紫外(UV)光によって切断され得る。
【0071】
第1のコンテナにおけるcDNA分子に結合した個体支持体の生成の後、固体支持体は、第1のコンテナから除去され、第2のコンテナに移される。いくつかの実施形態では、cDNAにハイブリダイズされたmRNA鋳型は、第1のコンテナから固体支持体(複数可)を除去する前に、酵素で消化され得る。よって、いくつかの実施形態では、RNA鋳型は、第1のコンテナから固体支持体を除去する前に、破壊される。理論に縛られるものではないが、連結工程を行う前にRNA鋳型を破壊することは、他のコンテナからの固体支持体に結合する異なるサンプルからの転写産物の交差コンタミネーションを低減し、これにより連結したcDNA分子は、同じサンプルからもはや誘導されないという利点を提供し得る。免疫グロブリン可変領域の文脈において、そのような交差コンタミネーションは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドのネイティブ対(同種対とも呼ばれる)をコードしない連結したcDNAをもたらすであろう。
【0072】
いくつかの実施形態では、熱安定性RNaseが、RNA鋳型を消化するために使用される。いくつかの実施形態では、熱安定性RNaseは、RNase Hである。一実施形態では、熱安定性RNaseは、RT反応中に最小限の活性を維持し、次いで温度を上昇させて、リボヌクレアーゼ活性を促進し、RNA鋳型を広範に消化する。
【0073】
いくつかの実施形態では、mRNA消化工程は、元のコンテナにおいて行われる。いくつかの実施形態では、固体支持体が元のコンテナから抽出された後、二次コンテナへの再封入の前に、mRNA消化工程が行われる。いくつかの実施形態では、mRNA消化工程は、逆転写工程の後に行われる。いくつかの実施形態では、mRNA消化工程は、逆転写工程の後及び増幅及び/または連結工程の前に行われる。いくつかの実施形態では、mRNA転写産物は、意図的に破壊されず、洗浄工程中に持続し、第2のコンテナに封入される。
【0074】
支持体が第1のコンテナから除去された後、それらが第2のコンテナに加える前に、固体支持体は、細胞性物質、RNA及び酵素を除去するために洗浄され得る。固体支持体が第2のコンテナに移された後、cDNA分子は、物理的に連結され得る。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、物理的に連結される前に増幅される。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、同じ反応において、例えば、重複伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(「oePCR」)を使用することによって増幅され、物理的に連結される。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、例えば、分子をリガーゼと接触させることによって、分子を互いに接合することによって物理的に連結される。いくつかの実施形態では、cDNA分子は、物理的にギブソン反応または一工程PCRとライゲーション反応を使用して相同末端の融合によって連結される。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1のコンテナからの各固体支持体は、異なる第2のコンテナに加えられ、これにより、第1のコンテナからの1つ以上の固体支持体は、1つ以上の第2のコンテナに分散され、各第2のコンテナは、単一の固体支持体を含有する。よって、いくつかの実施形態では、第1のコンテナから抽出された1つ以上の固体支持体の各々は、各第2のコンテナが単一の固体支持体を含有するように、連結工程の前に異なる(区別される)第2のコンテナに加えられる。
【0076】
増加した対合忠実性のための重複PCR後の一本鎖断片の除去
重複PCR工程からの一本鎖断片の存在は、その後の対合した重鎖及び軽鎖の増幅及びクローニングを妨害し、重鎖及び軽鎖の誤対合をもたらし得る。増幅前に一本鎖断片を最小限にすることは、最終生成物の収率及び対合忠実性を大幅に増加させ得る。よって、別の態様では、非対合断片が正確に対合した重複生成物と区別され、システムから除去される方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、重複PCR反応中に区別的プライマーを導入することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、区別的プライマーは、一本鎖を増幅するために使用される内部プライマーを含むが、そのプライマーは、最終重複PCR生成物に存在しない。いくつかの実施形態では、区別的因子は、重複PCR工程から残存した任意の一本鎖断片の除去を補助するために使用され得るタグである。
【0078】
例えば、いくつかの実施形態では、内部プライマーは、ビオチンタグなどの5’分子タグで改変され得る。ストレプトアビジンシステム、例えば、磁性ストレプトアビジンビーズは、ビオチンタグを含有する重複-PCR反応の後にから残存した任意のDNA分子を除去するために使用され得る。正確に対合した二重重鎖及び軽鎖連結重複断片は、ビオチン化分子をもはや含有しないので、所望の正確に対合した連結した重及び軽PCR断片は残存する一方で、一本鎖コンタミネーション断片はストレプトアビジンビーズで除去され得る。
【0079】
代替的には、最終重複生成物を増幅する外側プライマーは、区別的因子を含むように改変され得る。いくつかの実施形態では、区別的因子は、化学的改変を含む。いくつかの実施形態では、例えば、外側プライマーが分子上に存在する場合、外側プライマーは、枯渇または分解に抵抗するように改変され得る。いくつかの実施形態では、外側プライマーは、ヌクレアーゼまたは5’-エキソヌクレアーゼ分解に抵抗するように化学的に改変され得る。よって、いくつかの実施形態では、外側プライマーは、ロック塩基の包含によって骨格においてホスホロチオエート結合を含むように改変され得る。連結した対合した分子及び一本鎖の分子の混合物は、さらなる増幅の前に5’-エキソヌクレアーゼで処置され得る。よって、両末端上に改変された外部プライマーを有する分子(例えば、連結した重鎖及び軽鎖)のみが、エキソヌクレアーゼ分解に対して耐性であるであろう。他方で、1つの改変された外部プライマーのみを含有する一本鎖分子は、エキソヌクレアーゼ分解に対して耐性ではないであろうし、さらなる増幅の前に5’-エキソヌクレアーゼで消化され、これによりそれらを反応から除去して誤対合を低減し得る。
【0080】
連結した核酸分子のライブラリを生成するための方法
別の態様では、方法は、連結した核酸分子のライブラリを生成する。いくつかの実施形態では、方法は、
a)複数の単一細胞を複数の第1のコンテナに単離または分配することであって、第1のコンテナは、単一細胞を含む、単離または分配すること;
b)単一細胞を溶解してmRNA分子を第1のコンテナ内に放出すること;
c)第1のコンテナにおいてmRNA分子を逆転写してcDNA分子を生成すること;
d)第2のコンテナにおいてcDNA分子を連結させること;及び
e)連結したcDNA分子を組み合わせて、連結した核酸分子のライブラリを生成すること
を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、B細胞であり、ライブラリにおける同種軽鎖可変領域と正確に対合した重鎖可変領域の割合は、逆転写及び連結工程が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する。
【0082】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、T細胞であり、ライブラリにおける同種T細胞受容体ベータ鎖と正確に対合したT細胞受容体アルファ鎖の割合は、逆転写及び連結工程が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する。
【0083】
いくつかの実施形態では、単一細胞は、NKT細胞であり、ライブラリにおける同種T細胞受容体ベータ鎖と正確に対合したT細胞受容体アルファ鎖の割合は、工程(c)及び(d)が同じコンテナで行われる方法と比較して増加する。
【0084】
いくつかの実施形態では、固体支持体に結合したcDNA分子は、第2のコンテナにおける増幅(例えば、PCR)工程の前に固体支持体表面から放出または切断される。発明者は、予期しないことに、生成物の収率(例えば、回収された重鎖及び軽鎖の数)及び生成物純度(例えば、ネイティブ対合した重鎖及び軽鎖の割合)は、cDNA分子を互いに単一のアンプリコンに連結させる重複伸長PCRを行う前にcDNA分子が固体支持体から放出される場合、増加し得ることを見出した。いくつかの実施形態では、収率は、増幅工程がcDNA分子を固体支持体表面から放出することなく行われる方法と比較して、少なくとも5%、10%、15%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、純度は、増幅工程がcDNA分子を固体支持体表面から放出することなく行われる方法と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%またはそれ以上増加する。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2のコンテナに封入される固体支持体は、本明細書に記載されるように、リンカーを使用してcDNA分子に結合される。いくつかの実施形態では、増幅(PCR)工程を開始させる前に、リンカーは切断されて、cDNA分子を放出する。例えば、いくつかの実施形態では、リンカーは、光切断性リンカーであり、リンカーは、リンカーを切断することが可能な波長を含む光に曝露され、それにより固体支持体表面からcDNA分子を放出する。いくつかの実施形態では、光切断性リンカーは、リンカーを切断するのに好適な時間(例えば、5~10分)、紫外(UV)光(365nM)に曝露される。リンカーの切断の後、cDNA分子は、例えば、PCRによって増幅され得る。
【0086】
リンカー
オリゴヌクレオチドを固体支持体に結合させるために様々な化学が使用され得る。いくつかの実施形態では、異なるタイプのビーズと適合性のある5’オリゴヌクレオチド改変が使用される。5’オリゴヌクレオチド/ビーズ改変の代表的な例には、ビオチン/ストレプトアビジン、スルフヒドリル/NHSエステル、及びアジド/DBCO(クリックケミストリー)が含まれる。いくつかの実施形態では、第一級アミンがオリゴヌクレオチドに加えられ、これにより固体支持体表面上でのNHSエステルとの反応が可能となる。いくつかの実施形態では、アミノ改変オリゴヌクレオチドは、アミド結合を形成するために1-エチル=3-(3-ジメチルアミノプロプル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)を使用して5’アミノ改変を介してカルボン酸改変固体支持体に結合され得る。オリゴヌクレオチドを固体支持体に結合させるための代表的な方法が
図3に示されている。オリゴヌクレオチドを固体支持体を結合させるための方法は、“Strategies for Attaching Oligonucleotides to Solid Supports”(Integrated DNA Technologies,2014,v6)に記載されている。
【0087】
バーコード
いくつかの実施形態では、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、単一細胞からのmRNAに結合する固体支持体を識別するために使用され得る、核酸バーコードとも称される識別配列を含む。好適なバーコードの例は、PCT/US2012/000221(US2015/0133317に対応する)及びPCT/US2014/072898(US2015/0329891に対応する)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0088】
いくつかの実施形態では、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、2つの異なるまたは2つの区別されるバーコード配列を含む。いくつかの実施形態では、1つの(または第1の)バーコード配列は、mRNA転写産物が単離されたサンプルを識別する。いくつかの実施形態では、サンプルは、1つ以上の細胞、または単一細胞を含む。よって、いくつかの実施形態では、第1のバーコードは、「細胞バーコード」と称される。いくつかの実施形態では、別の(または第2の)バーコード配列は、サンプル、例えば、細胞から単離された転写産物を識別する。よって、いくつかの実施形態では、第2のバーコードは、「転写産物バーコード」と称される。
【0089】
いくつかの実施形態では、バーコード配列は、8~32個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のバーコード配列は、8~16個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、バーコード配列は、16~32個のヌクレオチドを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、リンカーまたはスペーサーによってオリゴヌクレオチドに連結される。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、5個以上のヌクレオチドを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、ポリ-T配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリ-T配列は、10~25個のヌクレオチドを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、5個以上のヌクレオチドのリンカーまたはスペーサー、8~16個のヌクレオチドの第1または細胞バーコード配列、8~16個のヌクレオチドの第2または転写産物バーコード配列、及び10~25個のヌクレオチドのポリT配列を含む。
【0093】
ライブラリ
また、本明細書に記載の方法によって生成される連結したアンプリコンのライブラリが提供される。ライブラリは、第1のコンテナにおけるmRNAの逆転写、ならびに第2のコンテナにおけるアンプリコンの増幅及び連結によって生成された物理的に連結したアンプリコンを含む。いくつかの実施形態では、連結したアンプリコンは、同じ細胞から誘導され、すなわち、それらは、第1のコンテナにおける同じ細胞からのmRNAの逆転写によって調製されたcDNAから増幅される。
【0094】
いくつかの実施形態では、ライブラリは、B細胞からのIgG重鎖及び軽鎖配列をコードする連結したアンプリコンを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリは、単一または同じB細胞からのIgG重鎖及び軽鎖配列をコードする連結したアンプリコンを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリは、IgG重鎖及び軽鎖配列の同種対をコードする連結したアンプリコンを含む。アンプリコン間のリンカーは、scFv抗体断片発現のためのリンカーまたはFab抗体断片発現のための定常領域配列を含み得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、ライブラリは、T細胞受容体のアルファ及びベータ鎖をコードする連結したアンプリコンを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリは、T細胞受容体のアルファ及びベータ鎖の同種対をコードする連結したアンプリコンを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリは、単一または同じT細胞からのT細胞受容体のアルファ及びベータ鎖をコードする連結したアンプリコンを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、増幅された核酸配列の発現(例えば、転写及び/または翻訳)は、所望ではない。これらの実施形態では、リンカーは、有意な二次的構造を伴わないヌクレオチドの任意の伸長物、例えば、長さが15~30個のヌクレオチドであり得る。
【0097】
コンテナ
いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のコンテナは、チューブ、マルチウェルもしくはマイクロタイタープレートにおけるウェル、マイクロウェルもしくはナノウェルプレートにおけるウェル、パーティション、液滴またはナノ液滴、または微小胞である。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のコンテナは、油エマルションにおける水性液滴である。
【0098】
いくつかの実施形態では、液滴は、約2マイクロメートル~約500マイクロメートル、またはその間の任意の値の直径を有する。例えば、いくつかの実施形態では、液滴は、約2~約450マイクロメートル、約2~約400マイクロメートル、約2~約350マイクロメートル、約2~約300マイクロメートル、約2~約250マイクロメートル、約2~約200マイクロメートル、約2~約150マイクロメートル、約2~約100マイクロメートル、約2~約50マイクロメートル;約2~約20マイクロメートル;約5~約500マイクロメートル、約5~約450マイクロメートル、約5~約400マイクロメートル、約5~約350マイクロメートル、約5~約300マイクロメートル、約5~約250マイクロメートル、約5~約200マイクロメートル、約5~約150マイクロメートル、約5~約100マイクロメートル、約5~約50マイクロメートル、約5~約20マイクロメートル;約10~約500マイクロメートル、約10~約450マイクロメートル、約10~約400マイクロメートル、約10~約350マイクロメートル、約10~約300マイクロメートル、約10~約250マイクロメートル、約10~約200マイクロメートル、約10~約150マイクロメートル、約10~約100マイクロメートル、約10~約50マイクロメートル;または約20~約500マイクロメートル、約30~約500マイクロメートル、約40~約500マイクロメートル、約50~約500マイクロメートル、約60~約500マイクロメートル、約70~約500マイクロメートル、約80~約500マイクロメートル、約90~約500マイクロメートル、約100~約500マイクロメートル、約200~約500マイクロメートル、約300~約500マイクロメートル、または約400~約500マイクロメートルの直径を有する。いくつかの実施形態では、液滴は、約2マイクロメートル~約10マイクロメートル、例えば、約2マイクロメートル~約5マイクロメートルの直径を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のコンテナは、水性液滴である。いくつかの実施形態では、第1の液滴の直径は、第2の液滴の直径と同じであり、または類似している。いくつかの実施形態では、第1の液滴の直径は、第2の液滴の直径と異なる。
【0100】
固体支持体
いくつかの実施形態では、第1のコンテナは、mRNA分子の一部と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、mRNA分子は、相補的な配列への結合を介してオリゴヌクレオチドに結合される。いくつかの実施形態では、固体支持体は、ビーズ、磁性ビーズ、アガロースビーズ、または粒子である。mRNA分子の一部と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドに結合したビーズまたは粒子は、時に本明細書で「捕捉ビーズ」と称される。用語「ビーズ」は、本明細書で実施形態を記載するために使用され得るが、固体支持体という用語は、ビーズという用語と互換的に使用され得ることが理解される。
【0101】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドに結合したmRNAは、cDNAに逆転写される。いくつかの実施形態では、CDNAは、固体支持体に共有結合される。
【0102】
いくつかの実施形態では、1~20個の固体支持体が、第1のコンテナに存在する(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の固体支持体が、第1のコンテナに存在する。いくつかの実施形態では、平均で3、4、5、または6個の固体支持体が、第1のコンテナに存在する。
【0103】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、1~20マイクロメートルの直径、または5~10マイクロメートルの直径、または5~10マイクロメートルの間の平均直径を有する球状粒子である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、1~20マイクロメートルの直径、または5~10マイクロメートルの直径、または5~10マイクロメートルの間の平均直径を有するビーズである。
【0104】
核酸及びオリゴヌクレオチドを固体支持体に結合またはコンジュゲートするための方法は、当該技術分野で知られており、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルリガンドを含む固体支持体へのアミノオリゴコンジュゲーションを含み、その場合、オリゴヌクレオチドは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)官能基と反応して安定なアミド結合を形成する第1級アミノ基で改変される。一般的に使用されるストラテジーの他の例には、ビオチン化オリゴをストレプトアビジン官能化固体支持体にコンジュゲートすること、及びチオレート化オリゴを金固体支持体またはマレイミド官能化支持体にコンジュゲートすることが含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
マイクロ流体システム
いくつかの実施形態では、マイクロ流体システムは、mRNA捕捉ビーズならびに細胞溶解及び逆転写反応を行うために必要とされる他の分子生物学的成分と共に細胞を隔離するための油中水型液滴を生成するために使用される。
図2は、米国特許出願番号第14/586,857号(US20150329891;現在は米国特許番号第9,580,736号)(参照により本明細書に組み込まれる)に先行記載された1つのシステム(液滴デバイス)の代表的な例を示している。デバイスは、細胞懸濁液、ビーズ懸濁液、及び細胞溶解物/RTミックスの水性ストリームを、ほぼ均一な体積の水性液滴を一定間隔で分断するフローフォーカシング油チャネルと接合部で組み合わせる。この液滴の単分散セットは、油相によって互いに離れて維持され、油相もまた、個々の液滴を安定化する界面活性剤を含み、それらがそれらの含有物を統合するまたは交換することを任意の有意な程度まで阻止する。このように、各液滴は、溶解及び逆転写が周囲の液滴からの影響を受けずに進行し得るコンテナを含む。所与の液滴サイズのため、液滴当たりの細胞及びバーコード付きビーズの平均数は、それらのそれぞれの水性インプットストリームにおけるそれらの成分の濃度を調整することによって調整され得る。マイクロ流体デバイスでの液滴生成のために使用される油及び界面活性剤システムのための多様な選択が存在する。いくつかの実施形態では、油相は、HFE-7500フッ素化油(3M,St.Paul,MN)中の2%フッ素系界面活性剤(RAN Biotechnologies,Beverly,MA)を含む。
【0106】
本明細書に記載の方法は、多数の異なる油/界面活性剤システムと共に使用され得る(それらが十分な液滴安定性及び関与する分子生物学との適合性を促進する場合に限る)ことが当業者によって理解される。典型的な油システムには、フッ素化油、鉱油、及びシリコーン油が含まれ、これらのいずれかは、エマルション工程のいずれかで潜在的に使用され得る。
【0107】
サンプル
本明細書に記載の方法は、細胞を含む生物学的サンプルに適用され得る。本明細書に記載の方法は、単一細胞の任意の所与の集団からの複数のトランスクリプトーム標的の接合を含む任意の用途において使用され得る。方法は、異なる生物学的組織からの多くの異なる細胞タイプを用いて使用され得る。細胞は、マウス、ラット、コンパニオンアニマル、例えば、ネコ及びイヌ、牧場動物、例えば、ウシ、ブタ、及びウマ、ならびにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳動物から単離され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、個々の単一細胞に選別される。個々の単一細胞は、例えば、フローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、磁気活性化セルソーティング(MACS)またはパンニングを使用して選別され得る。いくつかの実施形態では、単一細胞は、本明細書に記載のコンテナ、例えば、油中水型液滴に加えられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、サンプルは、単一免疫細胞、例えば、単一B細胞または単一T細胞(Tリンパ球)を含む。B細胞には、例えば、活性化B細胞、ブラスティングB細胞、形質細胞、形質芽球、メモリーB細胞、B1細胞、B2細胞、辺縁帯B細胞、及び濾胞B細胞が含まれる。T細胞(Tリンパ球)には、例えば、T細胞受容体を発現する細胞が含まれる。T細胞には、活性化T細胞、ブラスティングT細胞、ヘルパーT細胞(エフェクターT細胞またはTh細胞)、細胞傷害性T細胞(CTL)、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞及び制御性T細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、サンプルは、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、B細胞は、直径が約8~20μm、例えば、直径が約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20μm超の活性化B細胞である。いくつかの態様では、活性化B細胞は、面積が約60、70、80、90、100、120、130、140、150、200、250、300、350、または350μm2超である。いくつかの態様では、活性化B細胞は、体積が約250、268、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、または4000μm3超である。いくつかの態様では、活性化B細胞は、対照休止B細胞のメジアン直径よりもサイズが10%以上、15%以上、または20%以上大きい直径を有する。いくつかの態様では、活性化B細胞は、免疫グロブリンを分泌することが可能である。いくつかの態様では、B細胞は、フローサイトメトリーによって休止Bリンパ球のFSC平均の1.2倍を超える前方散乱(FSC)を有する。いくつかの態様では、B細胞は、フローサイトメトリーによってヒト単球のFSC平均の0.7~1.15倍のFSC平均を有する。いくつかの態様では、B細胞は、CD19陽性B細胞、CD38陽性B細胞、CD27陽性B細胞、またはCD20陰性B細胞である。いくつかの態様では、B細胞は、CD19+CD20-CD27+CD38hiB細胞である。
【0110】
個々のB細胞は、血液、バルク末梢血単核細胞(PBMC)、バルクB細胞、形質芽球、形質細胞、メモリーB細胞、または他のB細胞集団からフローサイトメトリーによって選別され得る。
【0111】
B細胞を単一細胞に選別するための方法は、US2015/0133317に記載されている。簡潔には、血液は、ヘパリンチューブ(Beckton Dickinson and Company,カタログ#BD366664)またはCPTチューブ(Beckton Dickinson and Company,カタログBD362761)チューブに収集され得る。ヘパリンチューブを処理するための1つの代表的な方法では、1ミリリットルの血液がマイクロフュージチューブに移され、12,000rpmで3分間遠沈され、血漿が収集され、-80℃で凍結され(後の抗体反応性の試験のため)、血液の残りは、Ficoll上に積層され、SX4750 Swinging Bucket Rotorを有するBeckman Coulter Allegra X-15R卓上遠心分離機でヘパリンチューブの場合は800gで室温で20分間、最小限の加速でブレーキを使用せずに遠心分離され得、末梢血単核細胞(PBMC)層が収集される。代替的には、CPTチューブは、1,500gで室温で20分間、最小限の加速でブレーキを使用せずに直接的に遠心分離され、PMBC層が収集され得る。収集されたPBMCは、使用前にPBSで2回洗浄され得る。
【0112】
細胞及び細胞サブ集団の単離及び濃縮
形質芽球。いくつかのサンプルの場合、PBMCは、改変されたPlasma Cells Isolation Kit II(Miltenyi 130-093-628)を使用することによって形質芽球が濃縮され得る。
【0113】
メモリーB細胞。CD19+マイクロビーズ(Miltenyi 130-050-301)及びCD27+マイクロビーズ(130-051-601)は、選別時間を短縮するために、細胞選別の前にメモリーB細胞を濃縮するために使用され得る。他の濃縮方法、例えば、メモリーB細胞単離キット(Miltenyi 130-093-546)もまた、それらがCD19+CD27+細胞を濃縮する限り、使用され得る。
【0114】
総B細胞。CD19+マイクロビーズ(Miltenyi 130-050-301)は、例えば、選別時間を短縮するために、細胞選別の前に総B細胞を濃縮するために使用され得る。他の濃縮方法もまた、CD19+細胞を濃縮するために使用され得る。
【0115】
他の細胞タイプ。所望の血球集団のMACS濃縮は、選別時間を短縮し得る。形質細胞、他のB細胞集団及び非B細胞集団を含む他の細胞集団もまた、適切な試薬を使用してMACSまたは他のシステムを使用して濃縮され得る。例えば、総T細胞は、CD3+マイクロビーズを使用して濃縮され、エフェクターT細胞及びヘルパーT細胞は、CD8+及びCD4+マイクロビーズをそれぞれ使用して単離され得る。CD45ROマイクロビーズは、メモリーエフェクターまたはメモリーヘルパーT細胞をそれぞれ単離するために使用されるCD8+またはCD4+ビーズと併せて、メモリーT細胞を単離するために使用され得る。
【0116】
単一細胞選別
MACS濃縮は、選別のために必要とされないが、形質芽球についてのMACS濃縮は、選別時間を短縮するために行われ得る。PBMCがMACS濃縮を受けた場合、未濃縮PBMC(約百万細胞)のアリコートもまた、タンデムで分析され得、サンプルにおけるベースラインの形質芽球の割合を決定する可能ことが可能となる。形質芽球を選別するため、細胞は、製造業者が推奨する体積のCD3-V450(BD 560365)、IgA-FITC(AbD Serotec STAR142F)、IgM-FITC(AbD Serotec STAR146F)またはIgM-PE(AbD Serotec STAR146PE)、CD20-PerCP-Cy5.5(BD 340955)、CD38-PE-Cy7(BD 335808)、CD19-APC(BD 340437)及びCD27-APC-H7(BD 560222)で50μLのFACS緩衝液(2%FBSを有するPBSまたはHBSS)中で氷上で暗所で20分間染色され得る。いくつかの細胞はまた、代わりにIgM-FITCと一緒にIgG-PE(BD 555787)、CD138-PE(eBioscience 12-1389-42)、またはHLA-DR-PE(BD 555812)で染色され得る。形質芽球、メモリー及びナイーブB細胞の同時選別のため、以下の染色スキームが使用され得る:IgD-FITC(Biolegend 348205)、IgG-PE(BD 555787)、CD20-PerCP-Cy5.5、CD38-PECy7、IgM-APC(BD 551062)、CD27-APC-H7、IgA-ビオチン(AbD Serotec 205008)と、それに続くStrepavidin-eFluor710(eBioscience 49-4317-82)及びCD19-BV421(Biolegend 302233)。メモリーB細胞は、CD19+CD27+IgG+またはCD19+CD20+IgG+のいずれかとして選別され得、ナイーブB細胞は、CD19+IgD+IgM+として選別され得る。IgA+形質芽球は、CD19+CD20-CD27+CD38++IgA+IgM-として定義される。他の細胞表面マーカーも使用され得、B細胞または他の細胞集団が細胞表面マーカーを使用して表現型で識別可能である限り、集団は単一細胞選別され得る。次いで細胞は、2mLのFACS緩衝液で1回洗浄され、FACSのための適切な体積で再懸濁され得る。細胞はまず、BD Aria IIで5mLの丸底チューブ内に選別され得る。典型的には、>80%の純度が第1の選別から達成され得る。IgG+形質芽球の場合、ゲーティング(細胞の選択)ストラテジーは、マーカーCD19+CD20-CD27+CD38++IgA-IgM-についての選別を含み得る。選別されたプレートは、アルミニウムプレートシーラー(Axygen PCR-AS-600)で封止され、ドライアイスですぐに凍結され、-80℃で保存され得る。
【0117】
単一細胞選別ゲーティングストラテジー。
【0118】
B細胞。B細胞の場合、ゲーティングアプローチは、以下のマーカー:IgM、IgG、IgA、IgD、CD19、またはCD20のうちの1つ以上についての選別を含み得る。総IgG+B細胞の場合、ゲーティングアプローチは、IgG+についての選別を含み得る。総IgA+B細胞の場合、ゲーティングアプローチは、IgA+についての選別を含み得る。総IgM+B細胞の場合、ゲーティングアプローチは、IgM+についての選別を含み得る。
【0119】
活性化B細胞。活性化B細胞には、それらの膜抗原受容体のその同種抗原への結合を介して刺激された及び/または同じ巨大分子抗原から誘導されたエピトープを認識するT細胞からT細胞の助けを受けたB細胞が含まれる。活性化B細胞は、増加した細胞サイズ(例えば、「ブラスティングB細胞」;以下を参照されたい)、細胞表面マーカー(複数可)の発現、細胞内マーカー(複数可)の発現、転写因子(複数可)の発現、細胞周期のギャップ0(G0)期の脱却、細胞周期を介する進行、サイトカインもしくは他の因子の生成、及び/または所定の細胞表面マーカー(複数可)、細胞内マーカー(複数可)、転写因子もしくは他の因子の下方制御を含む多様な特性によって識別され得る。活性化B細胞を識別する1つの方法は、B細胞マーカー、例えば、CD19または免疫グロブリンの検出を、活性化のマーカー、例えば、増加した細胞サイズもしくは体積、細胞表面活性化マーカーCD69、または細胞透過性アクリジン橙色DNA染色に基づく細胞周期を介する進行または別の細胞周期分析と組み合わせることである。
【0120】
ブラスティングB細胞。「ブラスティングB細胞」は、活性化され、休止B細胞と比較してサイズが増大したB細胞である。ブラスティングB細胞には、形質芽球集団及び活性化B細胞の他の集団が含まれ、ブラスティングB細胞は、休止B細胞よりもサイズが物理的に大きい。ブラスティングB細胞は、細胞直径、細胞体積、電気インピーダンス、FSC、FSCパルス(FSC-A)の積分(面積)、FSC高さ(FSC-H)、前方散乱パルス幅(FCS-W)、側方散乱(SSC)、側方散乱パルス面積(SSC-A)、側方散乱高さ(SSC-H)、側方散乱幅(SSC-W)、自己蛍光及び/または細胞サイズの他の測定に基づくそれらが物理的により大きなことに基づくB細胞のゲーティング(選択)を含むいくつかの異なるアプローチを使用して単一細胞選別され得る。
【0121】
フローサイトメトリーにおいて、前方散乱(FSC)は、細胞のストリームに従って光線を使用して測定され、各細胞の比例サイズ及び直径に関する情報を提供する。FSCを使用して、休止B細胞のメジアンFSCよりも高いFSC、例えば、休止B細胞よりも5%高い、休止B細胞よりも10%高い、休止B細胞よりも15%高い、休止B細胞よりも20%高い、休止B細胞よりも30%高い、休止B細胞よりも40%高い、休止B細胞よりも50%高い、休止B細胞よりも60%高いFSC-AまたはFSC-Hを有するB細胞を選択し得る。特定のサイズの較正ビーズを分析することによって、FSCを使用して、較正ビーズに対するB細胞の相対サイズを決定し得る。それをすることにより、約8um、>8um、>9um、>10um、>11um、>12um、>13um、>14um、>15um、>16um、>17um、>18um、>19um、または>20umの直径を有するB細胞に対して特異的にゲーティングし、それによりそれを選択し得る。
【0122】
細胞サイズの別の測定は、細胞体積である。細胞体積のための絶対的標準は、電子的測定に基づくコールター原理を使用する(Tzur et al,PLoS ONE,6(1):e16053.doi:10.1371/journal.pone.0016053,2011)。液滴チャージ及び偏向による選別方法は、インピーダンスによって細胞体積を測定したデバイスにおいて最初に使用されたが、現在利用可能なフローサイトメーターは、光学的測定のみを行う。FSC測定、特にFSC-A(FSC積分面積)は、細胞サイズを評価するために一般的に使用されるが、FSC測定は、粒子と流体との間の屈折率差によって影響を受け得る(Tzur et al,PLoS ONE,6(1):e16053.doi:10.1371/journal.pone.0016053,2011)。一部の者は、体積推定が、FSC-W、SSC及び450/50-A自己蛍光を含む光学的パラメータを組み合わせることによって改善され得ることを示した(Tzur et al,PLoS ONE,6(1):e16053.doi:10.1371/journal.pone.0016053,2011)。
【0123】
例えば、増加したサイズに基づく活性化B細胞の選択は、CD19などのマーカーを使用してB細胞を識別し、FSCまたはFSC-Aを介してサイズを評価することにより達成され得る。サイズの評価のための他のB細胞マーカー及び/またはパラメータは、本明細書に記載されている。
【0124】
形質芽球。形質芽球の単離のため、ゲーティングアプローチは、CD19+CD38++B細胞についての選別を含み得る。IgG+形質芽球の単離のため、ゲーティングアプローチは、CD19+CD38++IgA-IgM-B細胞についての選別を含み得る。IgA+形質芽球の単離のため、ゲーティングアプローチは、CD19+CD38++IgA+B細胞についての選別を含み得る。IgM+形質芽球の単離のため、ゲーティングアプローチは、CD19+CD38++IgM+B細胞についての選別を含み得る。また、他のゲーティングストラテジーは、本明細書に記載の方法を行うのに十分な数の形質芽球を単離するために使用され得る。形質芽球はまた、以下のマーカー発現パターンCD19low/+、CD20low/-、CD27+及びCD38++を使用して単離され得る。すべてのこれらのマーカーの使用は通常、単一細胞選別から最も純粋な形質芽球集団をもたらすが、上記マーカーのすべてが使用されることが必要とされるわけではない。例えば、形質芽球はまた、以下のゲーティングストラテジーを使用して単離され得る:より大きな細胞用の前方散乱高さ(FSChi)、FSChiCD19lo細胞、FSChi及びCD27+、CD38++、またはCD20-細胞。これらのマーカーまたは形質芽球を他のB細胞と区別することができることが見出された他のマーカーのいずれかの組み合わせは通常、選別された形質芽球の純度を増加させるが、上記マーカーのいずれか1つ単独(FSChiを含む)は、より低い純度ではあるが、形質芽球を他のB細胞と区別し得る。
【0125】
メモリーB細胞。IgG+メモリーB細胞の場合、ゲーティングアプローチは、CD19+CD27+IgG+またはCD19+CD20+IgG+についての選別を含み得る。IgA+メモリーB細胞の場合、ゲーティングストラテジーは、CD19+CD27+IgA+またはCD19+CD20+IgA+を含み得る。IgM+メモリーB細胞の場合、ゲーティングストラテジーは、CD19+CD27+IgM+またはCD19+CD20+IgM+を含み得る。
【0126】
他の細胞タイプ。B細胞、T細胞、または他の細胞集団が細胞マーカーを使用して表現型で識別可能である限り、それは単一細胞選別され得る。例えば、T細胞は、CD3+またはTCR+として識別され、ナイーブT細胞は、CD3+CD45RA+として識別され、メモリーT細胞は、CD3+CD45RO+として識別され得る。エフェクター及びヘルパーT細胞は、それぞれ、CD3+CD8+及びCD3+CD4+として識別され得る。細胞集団は、マーカーの組み合わせ、例えば、メモリーヘルパーT細胞の場合はCD3+CD4+CD45RO+を使用することによってさらに分類され得る。
【実施例】
【0127】
実施例は、説明のためにのみ提供され、本発明の任意の実施形態の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確保するように努めたが、多少の実験誤差及び偏差は許容されるべきである。
【0128】
実施例1
この実施例は、本明細書に記載の方法の代表的な実施形態を記載する。
【0129】
第1の液滴(液滴1)において、細胞を液滴当たり一(1)細胞で個々に封入し、液滴は典型的には、10個超のmRNA捕捉ビーズ/液滴を含有する。液滴中の細胞を溶解し、液滴1中で逆転写反応が生じる。RT反応は、ポリ-A RNAをオリゴ-dTがコンジュゲートされたビーズに一次的にハイブリダイズさせることを含む。次いでcDNA合成がオリゴdTプライマーのプライマー伸長によって生じ、液滴1中で捕捉ビーズに共有結合したcDNAをもたらす。cDNAにハイブリダイズしたRNAは、液滴1における酵素消化によって破壊され、そのため、RNAは液滴1から単離されない。液滴1を破壊し、ビーズを洗浄する。液滴1から単離された洗浄されたビーズは、溶解した細胞からのRNAを含む感知可能な量の細胞性物質を含有しない。
【0130】
共有結合したcDNAを含む単離されたビーズは次いで、1個以下のビーズ/液滴の濃度で第2の液滴(液滴2)に組み込まれる。PCR反応を行って、重鎖及び軽鎖cDNAを連結させ、ビーズから連結した重鎖及び軽鎖cDNAを放出する。
【0131】
実施例2
この実施例は、本明細書に記載の方法の代表的な実施形態を記載する。
【0132】
液滴1における逆転写(RT)
【0133】
材料:
【0134】
RT反応試薬:Invitrogen SuperScript IV RT(ref#18090050)、dNTP、1M DTT、BSA、Ribolock、Tween-20、NEB RNaseH(Cat#M0523S);オリゴd(T)25ビーズ(NEB,Cat#S1419S);1xビーズ洗浄緩衝液(BWB):5mM トリス-HCl(pH7.5)、0.5mM EDTA、1M NaCl;PBS;Optiprep(Sigma,Cat#D1556);FC40 5%Ran;プラスチック:ストリップチューブ、1.5mLマイクロ遠心管;Mushroom磁石;ZeroStat Milty帯電防止銃。
【0135】
RT反応ミックス。
1.RTマスターミックスを作製する:
【表1】
2.FACS選別細胞のバイアルを解凍する。
3.細胞を20%オプティプレップを有するPBSに1x10^6細胞/mL(または1000細胞/uL)の濃度で再懸濁し、100uLのアリコートに分ける。
4.45uL(1mL中の1x10
6細胞のために十分)のOdTビーズを1.5mLチューブに取り、チューブを磁石上に置く。保存緩衝液を吸引し、500uLのBWBで1回洗浄する。磁石上に再度置き、300uLのPBSに再懸濁する。実行に必要とされるビーズの体積を計算する:例えば、30万細胞のためには、300uL/1,000,000細胞*300,000細胞=90uL。
5.OdTビーズを正確な体積のRT反応マスターミックス(「mmix」;細胞と同じ体積)に再懸濁し、100uLのアリコートに分ける。
6.サンプルを液滴機械に流すことを進行させる。
【0136】
液滴1形成:
【0137】
機能性液滴デバイスの1つの例が
図2に示されている。挙げられているすべての部分番号は、別段特定されない限り、IDEX Health & Science(Oak Harbor,WA)部分を指す。A.01及びB.01は、A.01リザーバが2%RANフッ素系界面活性剤を有するHFE-7500フッ素化油で満たされており、B.01リザーバが水で満たされている圧力ポンプに接続している。B.11は、シリンジポンプに接続されている。
7.サンプルをサンプルループに導くためにシリンジポンプを使用して液滴デバイスの2つのリザーバに細胞懸濁液及びRT/溶解/ビーズ懸濁液を別々にロードする。B.15における推進流体とサンプルとの間に1cmの空気間隙を維持する。
8.A.10及びB.15を100umのエッチ深さのフッ素化2Rチップ(Dolomite品番3200510)に接続させる
9.各水性ライン(B.15)の場合は15uL/分及び油ラインの場合は180uL/分(A.10)の流速でサンプルを送る。
10.エマルションを、氷上で維持される15mL円錐チューブに収集する。
【0138】
液滴1クリーンアップ及びRT/RNaseHインキュベーション:
11.各チューブに500uLの5% Ran FC40を有する2つの1.5mLチューブを構成する。
12.広い口径のチップをエマルションを扱うために使用し、抗静電気銃(ZeroStat Milty)をチップに対して使用してエマルションの剪断を防止した。
13.15mLのFalconからエマルションを収集し、5% Ranを有するチューブの1つに吸引する。チューブの底部からいくらかの5% Ranを吸引し、エマルションをそれで穏やかに洗浄する。繰り返す。
14.第1の洗浄チューブから他のチューブにエマルションを収集し、再度洗浄する。
15.洗浄されたエマルションをストリップチューブに収集し(90uL/ウェル)、サーモサイクラーに置く。
16.RT+RNaseHサーモサイクルプログラム:55C 20分、65C 10分、80C 10分を実行する。
【0139】
液滴2/PCR1:
【0140】
必要とされる材料:
【0141】
リチウム溶解緩衝液:100mM トリス(pH7.5)、500mM LiCl、10mM EDTA、1%(w/v)ドデシル硫酸リチウム、5mM DTT。
【0142】
洗浄緩衝液1:100mM トリス(pH7.5)、500mM LiCl、1mM EDTA。
【0143】
洗浄緩衝液2:20mM トリス(pH7.5)、3mM MgCl、50mM KCl。
【0144】
20mL 油混合物:19010uL 鉱油、900uL Span80、80uL Tween-80、10uL Triton X-100。
【0145】
20% PFO。
【0146】
KOD Xtreme Hot Start DNA Polymerase(Millipore,Cat#71975)。
【0147】
標的アンプリコンのためのフォワード及びリバースプライマー、例えば、重鎖及び軽鎖可変領域のためのV及びJ遺伝子プライマー。
【0148】
IKA分散チューブ+エマルション分散装置
【0149】
Zymo DNA Clean and Concentrateキット。
【0150】
Dynabeads MyOne C1 Streptavidin Beads(Cat#65001、65002)。
【0151】
2xビーズ洗浄緩衝液(BWB):10mM トリス-HCl(pH7.5)、1mM EDTA、2M NaCl。
【0152】
プレート/チューブ:98ウェルプレート、1.5mLチューブ。
【0153】
RT生成物洗浄及びPCR1の構成:
1.新たなリチウム溶解緩衝液を毎日生成する。洗浄緩衝液1及び2は、3~6ヶ月毎に新たに生成されるべきである。
2.新たな油混合物を生成し、氷上に置く。
3.PCR1反応ミックスを生成する:
【表2】
4.逆転写されたエマルションをストリップチューブから新たな1.5mLチューブに収集し、等体積の20%PFO(1:1比)を加えてエマルションを分解する。
5.サンプルをボルテックスし、2000xgで2分間遠心分離する。
6.油層(下)を除去し、水性層(上)を測定し、上清を新たなチューブに移す。
7.サンプルを磁石上に置く。
8.すべての洗浄工程を迅速に行い、ピペッティングによる混合を避けてビーズが粘着質となること及びピペットチップ内に詰まることを防止する。
9.上清を吸引し、100uLの洗浄緩衝液1.ミックスをピペッティング(例外)によって加え、新たなチューブに直ちに移す。磁石上に置く。
10.上清を吸引し、100uLのリチウム溶解緩衝液に加える。チューブを磁石から外さないようにする。チューブを回転させることによって混合する:ビーズは、チューブの一方の端部から他方の端部に移動するはずである。ビーズが粘りがあるように見える場合、チューブの端部を叩いてそれらが取り除かれることを補助する。
11.上清を吸引し、100uLの洗浄緩衝液1を加え、直ぐに吸引する。
12.100uLの洗浄緩衝液1を再度加え、チューブを磁石上で維持するがそれを回転させることによって洗浄する(工程10のように)。
13.上清を吸引し、100uLの洗浄緩衝液2を加え、チューブを磁石上で維持するがそれを回転させることによって洗浄する(工程10のように)。
14.磁石上に置き、上清を吸引し、200uLのPCR1mmixをビーズに加える。氷上で数分間放置する。上下にピペッティングすることによってウェルを懸濁する。
15.さらなるPCR1mmixを2.8mLまでサンプルに加える
16.IKA分散チューブを9mLの低温油混合物で満たし、チューブをエマルション分散装置に取り付ける。単位を600rpmに設定し、電子ディスペンサーを使用してビーズを有するPCR1mmixを油に1滴ずつ分配する。各サンプルを流してエマルションを生成するのに5分要する。
17.広い口径のチップまたはカットオフチップを有するリピーターピペットを使用し、100uLのエマルションを96ウェルプレートの各ウェルに移す。各サンプルは、2つのプレートを必要とする。
18.プレートをサーモサイクラーに置き、「KOD xtremeファージPCR1」と称されるKOD xtremeサーモサイクルプログラム:94C 2分;35サイクル:94C 30秒、60C 30秒、68C、45秒;68C 5分を実行する。
【0154】
サンプルのPCR1後処理:
19.ヒュームフード内で水及びジエチルエーテルを1:10(1mLの水及び9mLのジエチルエーテル)で混合することによって水和エーテルを生成する。ボルテックスし、混合物を氷上に置き、約5分間静置する。上層のみ使用する。
20.PCR1エマルションをプレートからの1.5mLチューブに収集する(1mL以下/チューブ)。
21.チューブを10,000xgで10分遠心分離する。
22.遠心分離の後、上部油層及び底部の任意の合体物質を吸引する。
23.チューブ内のエマルションの体積を推定し、水和エーテルを1:1の比で加える(ヒュームフードを使用する)。
24.第1のZymoクリーンアップを終えるまでヒュームフード内で作業を継続する。
25.ウェルをボルテックスし、10,000xgで10分再度遠心分離する。
26.水性層(下側)を新たな1.5mLチューブに吸引する。体積を測定する。
27.サンプルを3x結合緩衝液でZymo清浄する。Zymo SOPに従い、20uL(2x10uL)の10mMトリスに溶出させる。
【0155】
PCR2
【0156】
材料:
【0157】
Q5(NEB Cat# M0493S/L)。
【0158】
アガロース、SYBRSafeゲル色素、TBE緩衝液
【0159】
Qiagen MinElute Gel Extraction キット(Cat # 28006)
【0160】
10mM トリス
【0161】
プラスチック:1.5mLチューブ、ストリップチューブまたは96ウェルプレート
【0162】
PCR2反応の構成:
【0163】
試験PCR2反応を構成し、各サンプルについて正しいサイクル数を決定する:マスターミックス(25uLの合計/サイクル)を調製し、プライマーFab-K/L-F-R2-v1(プール)及び#1032を使用し、1uLのPCR1生成物を鋳型として使用する。
【0164】
13、17、21、25サイクル実行する。サーモサイクルプログラム:98℃ 30秒;13/17/21/25サイクル:98℃ 15秒、62℃ 30秒、72℃ 45秒;72℃ 5分を使用する。
【0165】
PCRが完了すると、5uLの生成物をゲルに流す。
【0166】
実際のPCR2を実行して、シーケンシングのためのライブラリ調製の準備用の生成物を生成する:マスターミックスを調製し、2uLのPCR1生成物を鋳型として使用する。
【0167】
PCRを行った後、サンプル全体(50uL)をゲルにロードする。
【0168】
Qiagen MinEluteゲル抽出キットを使用することによってサンプルをゲル抽出する。20uLの10mMトリスに溶出させる。
【0169】
PCR2の後:
【0170】
NGSシーケンシングのためのアダプターのライゲーションを、標準的なシーケンシングキット及び方法を使用して行うことができる。例えば、Rajan et al.(2018),“Recombinant human B cell repertoires enable screening for rare,specific,and natively paired antibodies.” Communications Biology,1(1),5,and McDaniel et al.(2016),“Ultra-high-throughput sequencing of the immune receptor repertoire from millions of lymphocytes.” Nature Protocols,11(3),429-442を参照されたい。
【0171】
マスターミックス:
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0172】
多様な他の成分が同じ機能を果たすために使用され得ることが当業者によって理解される。代替的成分は、他の成分の中でも、溶解剤、RT酵素、RNase、プライマー配列、及びDNAポリメラーゼとして使用され得る。
【0173】
実施例3
この実施例は、増幅及び連結工程とは別のコンテナにおける逆転写工程を行うことが、アンプリコンのネイティブ対合を改善することを示す実験データを提供する。
【0174】
単一細胞からのmRNAの逆転写(RT)が第1のコンテナ(液滴1)において、第1及び第2のコンテナの間(液滴1及び2の間)に、または第2のコンテナ(液滴2)において行われたれた場合のライブラリにおける正確に対合したアンプリコンのパーセントを試験するために実験を行った。
【0175】
方法:
【0176】
使用した条件:
【0177】
(i)液滴1におけるRT:標準的な手順(v2.1液滴ファージディスプレイ)に従った。
【0178】
(ii)液滴1後のRT及び洗浄:液滴1を作製するための標準的な手順に従ったが、RTインキュベーションを続ける代わりに、エマルションを20%PFOで分解し、標準的な手順に従ってビーズを洗浄した(液滴1後洗浄工程)。洗浄したビーズ上でRTを行った(標準的な条件)。インキュベーションの後、サンプルを磁石上に置き、標準的な手順に従ってビーズを再度洗浄した(液滴1後洗浄工程)。洗浄したビーズをPCR1のためのKOD Xtreme(商標)(EMD Millipore)反応ミックスに再懸濁し、DT-20で液滴2工程を継続した。PCR1の後、標準的な手順に従った。
【0179】
(iii)液滴2におけるRT(RT-PCRキット、SSIV及びTitan):):液滴1を作製するための標準的な手順に従ったが、RTインキュベーションを続ける代わりに、エマルションを20%PFOで分解し、標準的な手順に従ってビーズを洗浄した(液滴1後洗浄工程)。洗浄されたビーズをRT-PCR反応ミックス(SuperScriptIV、Titan、またはQuantaのいずれか)に再懸濁し、DT-20を使用して、RTインキュベーション及びPCR1サイクルのための液滴を生成した(各反応ミックスの推奨サイクル条件に従った)。PCR1の後、標準的な手順に従った。
【0180】
結果:以下の表に示されているように、液滴1における逆転写は、同じ細胞からの別のアンプリコンと正確に対合し、連結したアンプリコンの割合を増加させた。%DNAネイティブは、ライブラリにおけるネイティブ軽鎖アンプリコンと正確に対合した重鎖アンプリコンの分率を指す。純度は、ネイティブ対合対非ネイティブ対合のライブラリの分率を指す。表から分かるように、ライブラリにおけるアンプリコンの65~77%は、RTが液滴1において行われた場合に正確に対合した一方で、9~32%が液滴1及び2の間で行われた場合に正確に対合し、23~40%が液滴2において行われた場合に正確に対合した。
独自のCDRH3を使用して、ライブラリにおける連結したアンプリコンの総回収量を決定した。液滴1におけるRTは、総回収量を低下させた。
【表10】
【0181】
上で提供されたデータは、第1のコンテナにおいてRT工程を行うことが、本明細書に記載の方法によって生成されたライブラリにおけるアンプリコンのネイティブ対合を増加させることを実証している。
【0182】
実施例4
この実施例は、ビーズと捕捉オリゴヌクレオチドとの間の光切断性リンカーの使用が増幅された生成物の収率及び純度を増加させることを記載する。この実施例の方法は、実施例1に記載のものと類似しており、以下に変更を詳述する。
【0183】
この実施例では、カスタムmRNA捕捉ビーズは、オリゴdT ssDNAをビーズにコンジュゲートすることによって調製される。IDT(改変コード‘/iSpPC/’)によって提供されたニトリベンジルリンカーなどの光切断性リンカーは、オリゴdT捕捉/プライミング配列とビーズ表面との間に配置される。ビーズからのssDNAの成功裏の光切断及び放出を試験するために、ビーズの懸濁液を365nmのUV光に6分間曝露する。次いで懸濁液を遠心分離してビーズをペレット化し、上清をQubit(Thermo Fisher Cat番号Q10212)によってアッセイして、ビーズから放出されるssDNAの量を決定する。
【0184】
試薬:DBCO改変10μm直径ポリスチレンビーズ(Creative Diagnostics Cat番号DNM-M006)。アジド及び光切断性リンカー改変mRNA捕捉オリゴ(IDT):
5’-アジド-iSpPC-TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT-3’(配列番号1)。EvaGreen用の液滴生成油(BioRad Cat番号1864112)。
【0185】
方法:
mRNA捕捉ビーズのストックを以下のように調製した:
1.1000万個のDBCOビーズを500uLの0.1X PBS+0.001%Tween-20中で5回洗浄する
2.8百万個のビーズを0.5mLのPCRチューブに移す
3.遠沈し、上清を吸引除去する
4.ビーズを以下の反応ミックスに再懸濁させる:
【表11】
5.チューブをボルテックスし、アルミニウムホイルで包み、回転機または振盪機上に置き、72Cで1時間インキュベーションする
6.インキュベーション後、カップリングチューブから別の0.5mLのPCRチューブに移す
7.遠沈し、上清を吸引し、0.5mLの0.1X PBS+0.001% Tween-20に再懸濁する
8.0.5mLの0.1X TE+0.001% Tween-20で3回洗浄する
9.上述したように光切断/Qubitアッセイを行って、コンジュゲーション収率を決定し、ビーズ表面からのオリゴdTの成功裏の放出を試験する。
【0186】
段落[0126]の工程4(「RT反応ミックス」)が45uLのビーズストックではなく5百万個のカスタムビーズを使用すること、及び段落[0144]の工程15及び16(「RT生成物洗浄及びPCR1の構成」)を以下の工程に置き換えたこと以外は実施例1と同じ手順に従った:
1.さらなるPCR1mmixを500uLまでサンプルに加える
2.今度はEvaGreen用のBioRad液滴生成油が満たされたA.01リザーバ及び水が満たされたB.01を有する前述したものと同じ液滴デバイスを使用する。B.11は、シリンジポンプに接続されている。
3.サンプルをサンプルループに誘導するためにシリンジポンプを使用して液滴デバイスの2つのリザーバの各々にビーズ/PCRミックス懸濁液の半分(250uL)を別々にロードする。B.15における推進流体とサンプルとの間に1cmの空気間隙を維持する。
4.A.10及びB.15を100umのエッチ深さのフッ素化2Rチップ(Dolomite品番3200510)に接続させる
5.各水性ライン(B.15)の場合は12uL/分及び油ラインの場合は180uL/分(A.10)の流速でサンプルを流す。
6.エマルションを、氷上で維持される15mL円錐チューブに収集する。
7.エマルションの生成の後かつエマルションをPCRプレートに分配する前に、エマルションのすべての部分が均一に曝露されるようにチューブを回転させながらエマルションを365nmのUV光に6分間曝露する。
【0187】
UV切断工程を組み込むことにより、発明者は、軽鎖と明らかに対合した独自の重鎖配列の割合が71.1%から80.6%まで増加したことを観察した。
【0188】
この実施例は、回収された重鎖及び軽鎖対の数及びネイティブ対合した重鎖及び軽鎖の割合の両方が、上述した方法を使用して増加し得ることを実証している。
非公式配列表:
配列番号1:5’-アジド-iSpPC-TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT-3’。
【0189】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示的な目的のためのものにすぎないこと、及び様々な改変が本開示を検討した後に当業者に示唆され得、これは添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書で引用されるすべての刊行物、配列アクセッション番号、特許、及び特許出願は、すべての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0186
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0186】
段落[0135]の工程4(「RT反応ミックス」)が45uLのビーズストックではなく5百万個のカスタムビーズを使用すること、及び段落[0153]の工程15及び16(「RT生成物洗浄及びPCR1の構成」)を以下の工程に置き換えたこと以外は実施例1と同じ手順に従った:
1.さらなるPCR1mmixを500uLまでサンプルに加える
2.今度はEvaGreen用のBioRad液滴生成油が満たされたA.01リザーバ及び水が満たされたB.01を有する前述したものと同じ液滴デバイスを使用する。B.11は、シリンジポンプに接続されている。
3.サンプルをサンプルループに誘導するためにシリンジポンプを使用して液滴デバイスの2つのリザーバの各々にビーズ/PCRミックス懸濁液の半分(250uL)を別々にロードする。B.15における推進流体とサンプルとの間に1cmの空気間隙を維持する。
4.A.10及びB.15を100umのエッチ深さのフッ素化2Rチップ(Dolomite品番3200510)に接続させる
5.各水性ライン(B.15)の場合は12uL/分及び油ラインの場合は180uL/分(A.10)の流速でサンプルを流す。
6.エマルションを、氷上で維持される15mL円錐チューブに収集する。
7.エマルションの生成の後かつエマルションをPCRプレートに分配する前に、エマルションのすべての部分が均一に曝露されるようにチューブを回転させながらエマルションを365nmのUV光に6分間曝露する。
【国際調査報告】