(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】アニオン導電膜を利用する環境制御システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/32 20060101AFI20230310BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230310BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230310BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20230310BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B01D53/32
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/23
A61L9/015
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565731
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 US2020067471
(87)【国際公開番号】W WO2021138425
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323003115
【氏名又は名称】エフエフアイ イオニクス アイピー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザービー,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】バハー,バムダッド
(72)【発明者】
【氏名】イエラミリ,サイ
【テーマコード(参考)】
4C180
4K021
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CA01
4C180EA17X
4C180HH01
4C180HH05
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB36
(57)【要約】
環境制御システムは、アニオン導電膜を利用する電解セルを使用し、電源は、電解セルのアノードおよびカソードにわたって結合されて、出力ガス流中の酸素および/または二酸化炭素を減少させる反応を起こさせる。カソードエンクロージャは、電解セルと結合されて、入力ガス流を提供し、かつ出力ガス流を受容し得る。第1の電解セルを利用して、酸素の濃度を低下させる第2の電解セルに向けられた出力流内の二酸化炭素濃度を低下させることができる。酸素および/または二酸化炭素は、システムから排出されて、補助目的で使用され得る。電解質溶液は、アノードへの電解質溶液の流れを提供するために、リザーバからアノードへのループに構成され得る。カソードからの水分が収集されて、アノードに提供され得る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解セルを利用する環境制御システムであって、
a)アニオン導電膜と、
b)アノードであって、前記電解セルのアノード側に構成され、かつ
i)アノード触媒層と、
ii)多孔質集電体と、
iii)アノード触媒層と流体連通する電解質溶液とを備える、アノードと、
c)カソードであって、前記電解セルのカソード側に構成され、かつ
i)カソード触媒層と、
ii)ガス拡散層と、
iii)前記カソード触媒層と流体連通するカソードガスと、
iv)入口と、
v)出口とを備える、カソードと、
d)カソードエンクロージャガスを収容するカソードエンクロージャと、を備え、
前記カソードエンクロージャが、前記カソードへの前記入口と結合されている、環境制御システム。
【請求項2】
前記アニオン導電膜が、複合アニオン導電膜であって、
a)支持材料と、
b)アニオン導電性ポリマーであって、前記アニオン導電性ポリマーに取り付けられた前記支持材料と結合した、アニオン導電性ポリマー、とを含む、複合アニオン導電膜である、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項3】
カソードエンクロージャを備え、前記電解セルが、前記カソード側の酸素と反応して、前記カソードエンクロージャ内の酸素濃度を低下させる、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項4】
前記電解セルの前記アノード側に結合された酸素除去システムをさらに備え、酸素が、前記酸素除去システムによって収集される、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項5】
電解質溶液リザーバをさらに備え、前記酸素除去システムが、前記電解質溶液リザーバと結合されている、請求項4に記載の環境制御システム。
【請求項6】
二酸化炭素が、前記カソード側で反応して、HCO
3-として前記アニオン導電膜を通して移送されるHCO
3
-を形成し、次いで、前記アノード触媒層上での反応を介して再形成されて、前記アノード側で二酸化炭素を形成する、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項7】
前記アノード側の前記二酸化炭素が、前記電解セルから排出される、請求項6に記載の環境制御システム。
【請求項8】
前記電解質溶液が、水酸化物を含む、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項9】
前記電解質溶液が、炭酸塩を含む、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項10】
電解質溶液リザーバをさらに備え、電解質が、電解質溶液リザーバから前記アノードに流れ、かつ前記電解質溶液リザーバに戻って電解質ループを形成する、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項11】
前記電解質ループが、前記電解質ループを通して前記電解質溶液をポンプ圧送するためのポンプを備える、請求項10に記載の環境制御システム。
【請求項12】
前記電解質ループに水を供給するための水補給システムをさらに備える、請求項11に記載の環境制御システム。
【請求項13】
前記水補給システムが、前記水補給システムおよび前記電解質ループに供給される生成された再生水に対して前記カソードと結合された水再生デバイスを備える、請求項12に記載の環境制御システム。
【請求項14】
前記水再生デバイスが、前記カソードからの水を凝縮する凝縮器を含む、請求項13に記載の環境制御システム。
【請求項15】
酸素が、前記電解質ループから除去される、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項16】
空気移動デバイスが、前記カソード触媒層への酸素の流れを増加させる、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項17】
前記電解セルの少なくとも一部分を加熱する電解セルヒータをさらに備える、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項18】
前記電解セルヒータが、前記電解セルの前記アノード側を加熱して、前記アノード触媒層の反応動態を改善する、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項19】
前記電解質溶液を加熱する電解質溶液ヒータをさらに備える、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項20】
前記カソードに入る前に、前記カソードエンクロージャガスから二酸化炭素を除去するスクラバをさらに備える、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項21】
環境制御システムであって、
カソードエンクロージャガスを収容するカソードエンクロージャと、
二酸化炭素除去電解セルであって、
a)アニオン導電膜と、
b)アノードであって、前記電解セルのアノード側に構成され、かつ
i)アノード触媒層と、
ii)多孔質集電体と、
iii)アノード触媒層と流体連通する電解質溶液と、を備える、アノードと、
c)カソードであって、前記電解セルのカソード側に構成され、かつ
i)カソード触媒層と、
ii)ガス拡散層と、
iii)前記カソード触媒層と流体連通するカソードガスと、
iv)前記カソードと結合されたカソードエンクロージャと、
v)前記カソードエンクロージャと結合された入口と、
vi)出口、を備える、カソードと、を備える、二酸化炭素除去電解セルと、
酸素枯渇電解セルであって、
a)アニオン導電膜と、
b)アノードであって、前記電解セルのアノード側に構成され、かつ
vii)アノード触媒層と、
viii)多孔質集電体と、
ix)アノード触媒層と流体連通する電解質溶液と、を備える、アノードと、
c)カソードであって、前記電解セルのカソード側に構成され、かつ
x)カソード触媒層と、
xi)ガス拡散層と、
xii)前記カソード触媒層と流体連通するカソードガスと、
xiii)前記二酸化炭素除去電解セルの前記出口に結合された入口と、
xiv)前記カソードエンクロージャと結合された出口と、を備える、カソードと、を備える、酸素枯渇電解セルと、を備え、
前記カソードエンクロージャガスが、入口ガスとして前記二酸化炭素除去セルの前記カソードの前記入口に供給され、前記二酸化炭素除去セルの前記カソード上で反応して、前記入口ガスの二酸化炭素濃度から低減された二酸化炭素濃度を有する低減二酸化炭素ガスを生成し、
前記低減二酸化炭素ガスが、前記二酸化炭素除去セルの前記カソードの前記出口から前記酸素枯渇セルの前記カソードの前記入口に進み、
前記低減二酸化炭素ガスが、前記酸素枯渇電解セルの前記カソード上で反応して、前記低減二酸化炭素ガスの酸素濃度から低減された酸素濃度を有する出口ガスを生成し、
前記出口ガスが、前記酸素枯渇電解セルの前記出口から前記カソードエンクロージャに進み、
前記環境制御システムが、前記カソードエンクロージャ内の二酸化炭素レベルおよび酸素レベルの両方を効果的に低減する、環境制御システム。
【請求項22】
前記二酸化炭素除去セルの前記アノードからの前記二酸化炭素が、前記エンクロージャに供給され、前記カソードエンクロージャ内の酸素レベルを低減しながら、前記エンクロージャ内の二酸化炭素レベルを効果的に維持する、請求項21に記載の環境制御システム。
【請求項23】
不活性ガス流を生成する方法であって、
環境制御システムを提供することであって、前記環境制御システムが、
カソードエンクロージャガスを収容するカソードエンクロージャと、
二酸化炭素除去電解セルであって、
a)アニオン導電膜と、
b)アノードであって、前記電解セルのアノード側に構成され、かつ
i)アノード触媒層と、
ii)多孔質集電体と、
iii)アノード触媒層と流体連通する電解質溶液と、を備える、アノードと、
c)カソードであって、前記電解セルのカソード側に構成され、かつ
i)カソード触媒層と、
ii)ガス拡散層と、
iii)前記カソード触媒層と流体連通するカソードガスと、
iv)前記カソードと結合されたカソードエンクロージャと、
v)前記カソードエンクロージャと結合された入口と、
vi)出口と、を備える、カソードと、を備える、二酸化炭素除去電解セルと、
酸素枯渇電解セルであって、
a)アニオン導電膜と、
b)アノードであって、前記電解セルのアノード側に構成され、かつ
vii)アノード触媒層と、
viii)多孔質集電体と、
ix)アノード触媒層と流体連通する電解質溶液と、を備える、アノードと、
c)カソードであって、前記電解セルのカソード側に構成され、かつ
x)カソード触媒層と、
xi)ガス拡散層と、
xii)前記カソード触媒層と流体連通するカソードガスと、
xiii)前記二酸化炭素除去電解セルの前記出口に結合された入口と、
xiv)前記カソードエンクロージャと結合された出口と、を備える、カソードと、を備える、酸素枯渇電解セルと、を備える、提供すること、
前記カソードエンクロージャガスを、入口ガスとして前記二酸化炭素除去セルの前記カソードの前記入口に流すことであって、前記入口ガスが、前記二酸化炭素除去セルの前記カソード上で反応して、前記入口ガスの二酸化炭素濃度から低減された二酸化炭素濃度を有する低減二酸化炭素ガスを生成する、流すこと、
前記低減二酸化炭素ガスを前記二酸化炭素除去セルの前記カソードの前記出口から前記酸素枯渇セルの前記カソードの前記入口に流すことであって、前記低減二酸化炭素ガスが、前記酸素枯渇電解セルの前記カソード上で反応して、前記低減二酸化炭素ガスの酸素濃度から低減された酸素濃度を有する出口ガスを生成する、流すこと、および、
前記酸素枯渇電解セルの前記出口から前記出口ガスを流して、不活性ガス流を生成すること、を含む、方法。
【請求項24】
カソードエンクロージャを提供することと、前記出口ガスを前記カソードエンクロージャ内に流すことと、をさらに含み、前記環境制御システムが、前記カソードエンクロージャ内の二酸化炭素レベルおよび酸素レベルの両方を効果的に低減する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記二酸化炭素除去セルの前記アノードからの前記二酸化炭素が、前記カソードエンクロージャに供給され、それにより、前記カソードエンクロージャ内の酸素レベルを低減しながら、前記エンクロージャ内の二酸化炭素レベルを効果的に維持する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年12月30日に出願された米国仮特許出願第62/974,880号の優先権の利益を主張するものであり、当該仮特許出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府ライセンス権)
本発明は、米国環境保護庁によって付与された政府支援契約番号68HERC20C0038で行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
アニオン導電膜を組み込んだ電解セルは、電解セルのアノード側および/またはカソード側のいずれかのガスの濃度を制御するように、システム内に構成される。
【背景技術】
【0004】
酸素レベルおよび/または湿度レベルが制御される環境制御を必要とする多くのタイプのエンクロージャが存在する。例えば、博物館のアーチファクトおよび文書は、酸化、錆などによる劣化を低減するために、環境制御されたエンクロージャ内に保管されることが多い。さらに、冷蔵品を含む、農産物および他の消費財ならびに商品は、環境制御されたエンクロージャ内での保管から恩恵を受けることができる。
【0005】
水の電気分解を使用して、水および酸素を2つのチャンバ間で移動させることができ、酸素の生成または枯渇、および加湿または除湿が可能になる。電気分解は、二酸化炭素のような分子を輸送するためにも使用され得る。
【0006】
プロトン交換膜(PEM)に基づく現在の最先端の電解セルは、典型的にはPtファミリーのより高価な触媒、ならびにチタンおよび貴金属コーティングされた構成要素を必要とし、それにより、システムに追加コストが加わる。より低コストのシステムは、多種多様な用途へのこれらのアイテムの統合を可能にするであろう。
【0007】
アニオン導電膜を使用するより低コストのシステムは、より低グレードの触媒およびより安価な金属構成要素が電気分解を行うことを可能にする。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、アニオン導電膜を利用する電解セルを使用する環境制御システムに関する。以下の反応は、電解質を用いる水素生成に使用されたときのシステムの動作を説明する。
カソード:4H2O+4e-→2H2+4OH-
アノード:4OH-→2H2O+O2+4e-
【0009】
気候制御システムとして空気中で使用されるとき、システムは、異なる支配半反応(governing half reactions)下で動作する。アニオン導電性電解コールは、以下の半反応下で動作して、2つの環境間で水および酸素を効果的に移動させ得る。
カソード:2H2O+O2+4e-→4OH-
アノード:4OH-→2H2O+O2+4e-
【0010】
水および酸素が、カソードで分解されて、ヒドロキシルイオンを生成する。ヒドロキシルイオンは、膜を通って移動し、アノードで再結合して水と酸素とを生成する。水および酸素は、ある環境から別の環境に効果的に移動される。
【0011】
二酸化炭素が存在する場合、一連の競合反応があり、二酸化炭素が、ヒドロキシルイオンと反応して、重炭酸塩を形成する。重炭酸塩はまた、さらに反応して、炭酸イオンを形成し得る。すべてのイオンが、膜を通る輸送を競っており、印加される電位およびセルの条件が、各種の量を決定する。以下は、二酸化炭素が存在する場合の、生成されたヒドロキシルイオンとのカソード側での反応である。
OH-+CO2→HCO3
-
OH-+HCO3
-→CO3
2-
【0012】
例示的な一実施形態では、セルアセンブリは、多層構造である。膜は、ガス拡散層の間に挟まれた両側に触媒層を有する。触媒は、Pt族、またはより好ましくは、ニッケル、銀、銅、マンガン、鉄、または他のより低コスト触媒を含むより低コストの触媒からのものであり得る。ガス拡散層は、典型的には、Ni、SS、Ti、または炭素基材から構成される。
【0013】
例示的なアニオン導電性ポリマーは、ポリ(スチレン)、ポリ(フェニレン)、ポリベンズイミダゾール、またはポリ(アリレン)骨格を有する四級アンモニウムまたはホスホニウム官能基を含む。ポリ(フェニレン)またはポリ(アリレン)などの剛性の芳香族ポリマー骨格は、高苛性環境下で、水酸化物除去反応を介した化学分解に対する耐性とともに、高い引張強度を提供する。これらのアイオノマーで生成されたイオン交換膜は、微多孔質ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、またはポリプロピレン膜などの多孔質支持材料によってさらに強化され得る。多孔質支持マトリックスでアイオノマーを強化すると、複合アニオン導電膜が生じる。本発明で使用するための好適な微多孔性支持体は、多孔性超高分子量ポリエチレンが、強化カチオン交換膜用の標準である延伸ポリテトラフルオロエチレンに比べて、優れた化学的適合性、および代替のポリオレフィン支持体であるポリプロピレンに比べて、多孔性を有するため、多孔性超高分子量ポリエチレンである。本発明で使用するための例示的なイオン交換膜は、ポリ(アリレン)またはポリ(フェニレン)骨格、ならびにイオン導電性のための四級アンモニウムまたはホスホニウム基を特徴とするアルキルまたはピペリジン側鎖を有するポリマーを含む。例示的な一実施形態では、このアイオノマーの溶液が、特により低い厚さでのより高い強化および安定性のために、微多孔性ポリオレフィン支持体に含浸される。
【0014】
例示的なアニオン導電膜は、支持材料によって強化されたアニオン導電性ポリマーを含む複合アニオン導電膜である。例示的な複合アニオン導電膜は、アニオン導電性ポリマーでコーティングされるか、またはアニオン導電性ポリマーを含浸した微多孔性ポリオレフィンを組み込む。微多孔性ポリオレフィン支持材料などの例示的な支持材料は、約5および100ミクロンの厚さ、約50%~90%の範囲の多孔性、および約20nm~5ミクロン、またはより好ましくは20nm~1ミクロンの細孔径を有する。例示的なアニオン導電性ポリマー溶液は、二価金属カチオン、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、または4,4’-トリメチレンビス(1-メチル-ピペリジン)などの架橋剤とともに、ポリ(アリレン)またはポリ(フェニレン)骨格にグラフト化された三級アミン基を含むアイオノマーの前駆体形態を含み、その後、乾燥した複合膜を水またはエタノール中のトリメチルアミン溶液に曝露する。架橋は、高温、ならびに赤外線または紫外線に曝露することによって、開始または促進され得る。
【0015】
例示的な支持材料は、例えば、多孔質ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステルなどの多孔質または微多孔質ポリオレフィンであり得る。例示的な支持材料は、多孔質ポリマーであり得、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む延伸フルオロポリマーなどの多孔質フルオロポリマーを含み得る。
【0016】
例示的なアニオン導電膜または複合アニオン導電膜は、約100ミクロン以下、約75ミクロン以下、50ミクロン以下、約40ミクロン以下、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、または約20ミクロン~約50ミクロン、および提供された厚さ値を含むそれらの間の任意の他の範囲の厚さを有する。
【0017】
例示的なアニオン導電膜は、層の厚さを通して様々な特性を有する異方性アニオン導電膜であり、異方性膜を作製するために共に融合された一連の薄膜を含み得る。典型的には、四級アンモニウムイオンは、カチオンサイトであり、骨格は様々であるが、ホスホニウムをカチオン中心とするカチオン種を作製することが可能である。層の数を変化させるとともに、ブレンド比をステップ状に変えて、著しい異方性の内部構造の膜を生成することができる。
【0018】
アニオン導電膜内のアニオン導電性ポリマーは、架橋剤または架橋性化合物を使用して架橋され得る。複合アニオン導電膜内などのアニオン導電性ポリマーは、特に水和状態でのそれらの機械的および化学的安定性を増加させるために、架橋され得る。官能性四級アンモニウム基を有するアニオン性アイオノマーの場合、四級アンモニウム基を、ポリアミン、ブロック化ポリアミン、ジシアノアミド、二価金属カチオン、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-トリメチレンビス(1-メチル-ピペリジン)、または4,4’-(1,3-プロパンジイル)ビス(1-メチル-ピペリジン)などの架橋剤と一緒に連結することによって、架橋が、ポリマー鎖間に作製され得る。複合アニオン導電膜は、支持材料に、アイオノマーならびに上記架橋剤のうちの1つを、官能性イオン基に対する架橋剤の所定のモル比で含有するポリマー溶液を染み込ませることによって、形成され得る。これらの膜は、本質的に水を保持し、ヒドロキシルイオンなどのアニオンを伝導するナノスケールチャネルによって特徴付けられる。これらの新しいアニオン導電膜は、アニオンに対する高い導電性または高い選択透過性を達成する能力を実証した。
【0019】
例示的な一実施形態では、環境制御システムは、エンクロージャと結合され、エンクロージャ内の酸素濃度を低減する酸素枯渇電解槽セルを備える。酸素枯渇電解槽セルは、カソードからアノードにアニオンまたはヒドロキシルイオンを輸送するアイオノマーなどのイオン導電性材料を含み、アノードおよびカソードは、アイオノマーの両側に構成される。カソードは、エンクロージャと流体連通しており、電源は、アノードおよびカソードと結合され、アノードおよびカソードにわたって電位を提供して、水の電気分解を開始する。水および酸素は、カソードで消費されて、ヒドロキシルイオンを生成する。ヒドロキシルイオンは、アイオノマーまたはアニオン導電性材料を横切ってアノードに輸送され、アノードで、これらのヒドロキシルイオンが酸化されて、水および酸素を形成し、それにより、カソード側で酸素および水を枯渇させ、アノード側で水および酸素を生成する。カソードは、エンクロージャ内の空気と直接接触していてもよいか、または空気がカソードに配管されていてもよい。空気移動デバイスは、いずれかの設定で構成され得る。
【0020】
例示的な環境制御システムは、酸素発生電解槽セルを備え得、アノードは、エンクロージャと流体連通して構成され、カソードでの水と酸素との反応から酸素を生成する。酸素制御電解槽セルは、アノードおよびカソードにわたって印加される電位に応じて、酸素枯渇モードまたは酸素生成モードのいずれかで動作し得る。アノードは、エンクロージャ内の空気と直接接触していてもよいか、または空気がアノードに配管されていてもよい。空気移動デバイスは、いずれかの設定で構成され得る。
【0021】
例示的な環境制御システムは、エンクロージャの加湿レベルを増加させる加湿デバイスなどの湿度制御デバイスを備える。アノードは、エンクロージャと流体連通して構成され、カソードでの水と酸素との反応から水を生成する。アノードは、エンクロージャ内の空気と直接接触していてもよいか、または空気がアノードに配管されていてもよい。空気移動デバイスは、いずれかの設定で構成され得る。
【0022】
例示的な環境制御システムは、除湿電解槽セルを備え、電解槽セルは、カソードがエンクロージャと流体連通した状態で動作する。カソードは、エンクロージャ内の空気と直接接触していてもよいか、または空気がカソードに配管されていてもよい。空気移動デバイスは、いずれかの設定で構成され得る。
【0023】
例示的な環境制御システムは、二酸化炭素除去セルを備え、電解槽セルは、カソードがエンクロージャと流体連通した状態で動作する。カソードは、エンクロージャ内の空気と直接接触していてもよいか、または空気がカソードに配管されていてもよい。空気移動デバイスは、いずれかの設定で構成され得る。
【0024】
例示的な環境制御システムは、二酸化炭素発生セルを備え、電解槽セルは、アノードがエンクロージャと流体連通した状態で動作する。二酸化炭素は、アノードループから除去されて、エンクロージャに供給される。カソードは、外部環境内の空気と直接接触しているか、または空気がカソードに配管されているかのいずれかであり得る。空気移動デバイスは、いずれかの設定で構成され得る。
【0025】
消毒のためのオゾンを生成するために電圧が増加される例示的な実施形態。
【0026】
例示的な一実施形態では、酸素制御および/または加湿電解槽は、アニオン導電性の膜または薄板または層の形態であるアニオン導電性アイオノマーを備える。アニオン導電膜は、アイオノマーでコーティング、および/またはアイオノマーを吸収した支持材料を含む複合アニオン導電膜に形成され得る。アニオン導電膜は、100ミクロン未満、75ミクロン未満、50ミクロン未満、25ミクロン未満、20ミクロン未満、およびより好ましくは15ミクロン未満などの非常に薄いものであり得る。薄いアニオン導電膜は、より高いプロトン輸送速度およびより良好な効率を可能にするので、酸素枯渇には、薄いアニオン導電膜が好ましい。より厚いアニオン導電膜は、逆拡散が制限されるので、湿度制御デバイスに対してより効果的である。
【0027】
例示的な一実施形態では、保湿性を向上させるために、添加剤が、膜に添加される。この添加剤は、乾燥剤であってもよく、イオン性液体乾燥剤または無水シリカなどの固体乾燥剤に限定されない。
【0028】
例示的な環境制御システムは、制御チャンバ内の湿度または酸素レベルを監視し、次いで、湿度制御チャンバの除湿電解槽セルのアノードおよびカソードにわたる電位を制御するための制御システムを含み得る。
【0029】
任意の数のフィルタおよび/またはバルブを使用して、環境制御システム内またはその周囲へのガスまたは空気の流れを制御することができる。フィルタは、汚染物質が電解槽セルを汚染するのを防止するために、コンディショナチャンバに対して構成され得る。フィルタは、エンクロージャへの入口および出口上に構成され得る。
【0030】
一実施形態では、空気移動デバイスは、電解槽の電極を横切って、またはその上を吹くように構成される。これにより、電解槽の性能が大幅に向上することが見出された。これは、カソード、アノード、または両方の上であり得る。
【0031】
膜の乾燥および導電性の損失を防止するために、アノード側の水または電解質ループは、アノード触媒層に水または電解質溶液を流し得る。電解質ループは、ポンプ、継手、およびバルブの様々な構成で構成され得る。
【0032】
例示的な一実施形態では、水を含有する電解質溶液、水酸化物溶液、炭酸塩溶液、またはそれらの組み合わせが、セルのアノードで使用され得る。
【0033】
例示的な一実施形態では、炭酸塩は、膜の空気への曝露からの二酸化炭素汚染の問題を軽減するので、炭酸塩が、酸素および水の輸送のための好適な電解質である。水酸化物溶液を使用する場合、二酸化炭素が、水に可溶化して膜に入り、それにより、ヒドロキシルイオンの流れを阻害し、システムの性能を低下させる。移動性種を炭酸塩とすることで、この問題が軽減され、アニオン導電性電解セルに基づく空気不活性化システムでは、性能の低下は見られないであろう。
【0034】
例示的な一実施形態では、セルのアノードにおける電解質からの水の拡散によってもたらされるカソード側の湿度を低減するために、水の捕捉、低減、除去、またはそれらの組み合わせの方法が用いられる。これは、空気中の水蒸気を凝縮させるチラーなどの水回収デバイスを使用することによって、実施され得る。次いで、この凝縮空気が、戻されて電解質ループに添加され、水を再生することができる。特定の実施形態では、除湿器が使用されて、水は、システムから廃棄され得る。他の実施形態では、PTFEなどの疎水性添加剤を添加することによって、疎水性を改善するように、電極層が改質され得る。これにより、電極層を出てカソード空気に入る水の量が減少するであろう。膜はまた、バルク膜層よりも高い疎水性を有する膜材料の薄層を追加することによって、カソードの表面で改質されてもよい。
【0035】
例示的な一実施形態では、ポンプが使用されて、セルのアノード上に電解質または電解質溶液を循環させる。電解質ループ内で失われた水に対する追加の水を供給するための水補給システムがあってもよい。
【0036】
例示的な一実施形態では、システムは、ポンプなしで機能するように設計され、電極でのガスの発生が、電解質の循環を引き起こす。これにより、システムの複雑さおよびコストが軽減される。電解質ループで失われた水を補給するための供給ラインがあってもよい。
【0037】
例示的な一実施形態では、酸素除去システムは、電解質再循環ラインまたはタンクに接続される。酸素除去システムは、過剰な酸素が閉ループシステムから出ることを可能にし、その結果、圧力の蓄積がない一方で、電解質溶液がシステムから出ることを阻止する。酸素除去システムは、水および電解質を残しながら、酸素が逃げることを可能にするために、圧力リリーフ弁、逆止弁、フィルタ、ウォータートラップ、またはバルブの任意の組み合わせを備え得る。
【0038】
例示的な一実施形態では、反応の動態を改善し、酸素および/または二酸化炭素の除去を改善するために、熱がシステムに加えられる。熱は、セル、リザーバ、電解質ライン、またはそれらの組み合わせに直接加えられ得る。例示的な一実施形態では、二酸化炭素除去システムがあり、酸素除去セルの前に配置する。二酸化炭素除去システムは、以下に限定されないが、圧力スイング、温度スイング、膜分離、または電気分解のうちの1つであり得る。酸素除去セルの前に二酸化炭素を除去することで、酸素除去セルの膜を汚染する可能性が、低減される。
【0039】
例示的な一実施形態では、電気化学的二酸化炭素除去セルが、酸素除去セルと直列に配置される。二酸化炭素は、二酸化炭素除去セルのカソードで反応して、低レベルの二酸化炭素を含有する流れを酸素除去セルに供給する。二酸化炭素除去セルは、よりかさ高の炭酸塩基および重炭酸塩基の輸送のため、より低い電流密度で動作する。セルは、酸素除去セルの性能を妨げないように、二酸化炭素レベルを許容可能なレベルまで低下させるようにサイズ設定される。
【0040】
例示的な一実施形態では、電気化学的二酸化炭素除去セルは、酸素除去セルと直列に配置される。低い酸素レベルを有するが、二酸化炭素レベルを維持することが有益であり得るいくつかの場合がある。二酸化炭素セルのアノード側は、二酸化炭素をエンクロージャ内に戻して供給するガス分離システムを有し得る。このようにして、エンクロージャは、低レベルの酸素を有するが、二酸化炭素レベルを維持した。
【0041】
酸素濃度および/または相対湿度レベルの制御が必要または所望される多くの異なる用途がある。多くのエンクロージャは、文書、アーチファクト、宝石、装身具、武器、銃、ナイフ、通貨など、高湿度への長期の曝露によって損傷される可能性のある貴重品のための金庫またはエンクロージャを含むがこれらに限定されない、これらの環境パラメータを制御するように構成される。さらに、気道陽圧(Positive Airway Pressure、PAP)デバイス、レスピレータ、酸素吸入器など、制御されたレベルの酸素および/または湿度を有する空気の流れが所望される用途がある。PAPデバイスは、睡眠中の効果的な呼吸を支援するために、加圧された空気の流れを人に提供する。本明細書に記載の環境制御システムは、PAPデバイス内の空気の流れに追加の湿度および/または酸素を提供し得る。さらに、酸素レベルの制御が所望されるか、または有益であるエンクロージャ内に位置し得る農産物などの物品が存在する。農産物用の冷蔵庫コンパートメント内の低減された酸素レベルは、農産物が台無しになるか、または悪化するのを防止し得る。さらに、いくつかのエンクロージャは、生物を殺すために、制御および低減されたレベルの酸素を有し得る。
【0042】
酸素低減は、酸化を防止するため、細菌を殺し、害虫侵入を止めるため、食品、貴重なアーチファクトを保存するため、およびエンクロージャ内で火災が発生するのを防止するために、非常に望ましい。これとは別に、湿度を制御することも同様に重要である。湿度レベルおよび酸素レベルを独立に制御しないで電解槽セルを作動させることには不利点がある。1つは、条件のうちのいずれかに対する正確な独立した制御の欠如である。理想的な湿度レベルおよび酸素レベルは、エンクロージャ内に何が保存されているかによって異なる。正確な制御を達成する1つの方法は、別の形態の除湿で水分を別々に除去すること、または、電解槽セルをエンクロージャから密閉しながら、電解槽セルを逆に使用することである。シールは、水分は通過できるが、酸素を含むガスは通過できない膜を有する窓からなり得る。このタイプの湿度および酸素除去の独立した制御は、エンクロージャの内容物を測定する方法を必要とする。また、電子機器で加湿および除湿システムを独立して制御することが可能である必要がある。シールの完全性およびエンクロージャ外の条件が、効率において、ある役割を果たす。
【0043】
本明細書に記載のエンクロージャ、特にカソードエンクロージャは、アニオン導電性電解セルと結合された任意のエンクロージャであり、エンクロージャ内のガスの濃度は、アニオン導電性電解セルによって制御または修正される。例示的なエンクロージャは、アクセス用に構成され、その中に収容されるアイテムの取り出し用のドアを有し得る。例示的なカソードエンクロージャとしては、以下に限定されないが、ガス用のチューブまたは導管、加湿設備、冷蔵庫または冷凍庫サブコンパートメント、博物館の陳列、銃保管庫、楽器保管庫、紙の保管庫、および化石、古代のアーチファクト、切手、証書などの多くの水分感受性製品の保管庫、ならびに出荷用コンテナが挙げられる。例示的な制御システムは、エンクロージャの要求を満たすようにサイズ決めされ得る。より大きなエンクロージャは、より小さいエンクロージャよりも大きな酸素枯渇電解槽セル領域を必要とするであろう。
【0044】
場合によっては、反応ガスがエンクロージャ内になければならないという認識がある。エンクロージャは、必ずしも密閉されたシステム内にあるとは限らず、すなわち、エンクロージャへの、およびエンクロージャからのある程度の漏入および漏出は、オプションである。さらに、システムは、デバイス内のセンサで制御され得、他では、システムは、限定された持続時間にわたって、単純にスイッチオンおよびオフされる。
【0045】
特定の実施形態では、電解のカソードの入口に供給されるガスは、周囲の空気からであり、エンクロージャに含まれない。これは、不活性化ではなく、CO2および酸素の生成および使用に有益であり得る。
【0046】
例示的な環境制御システムは、エンクロージャのためのリモートモニタを備え得、湿度レベルおよび酸素濃度またはレベルを含むエンクロージャ条件の無線監視を含み得る。エンクロージャ環境条件は、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはコンピュータなどのリモート電子デバイスに送信され得る。ユーザは、エンクロージャの湿度、温度、および酸素レベルの所望の設定点を変更し得る。無線送信はまた、リモート電子デバイスが、エンクロージャパラメータ、温度、湿度、および酸素レベルを記録することを可能にし得る。さらに、ユーザは、エンクロージャ環境パラメータに有意な変化がある場合、またはパラメータのうちの1つが、設定点のうちの1つの閾値の外側に落ちて移動する場合、アラートを受信し得る。
【0047】
例示的な制御システムは、他のシステムと組み合わせて使用され得る酸素および湿度制御システムを備える。例えば、スペインスギを湿度制御デバイスとともに使用すると、湿度緩衝が提供されることが見出された。また、シリカゲルを湿度制御デバイスと組み合わせて使用することも、湿度緩衝を提供することが見出されており、電気がスイッチオフされた場合、または何らかの理由でシステムが、不十分または過大に加湿する場合、緩衝が補償し得るので、いくつかの利点がある。シリカゲルまたは他の吸湿性材料が、この水分緩衝を提供するために、エンクロージャ内に配置され得る。いくつかの吸湿性材料は、ある湿度レベル範囲を有し、相対湿度が、それぞれ、この範囲を超えるか、またはこの範囲を下回るときに、それが、水分を吸収または放出する。
【0048】
定義
本明細書で使用される場合、不活性化は、エンクロージャ内のガス濃度を制御すること、および特に、除去または酸素などの反応性ガスによって、エンクロージャ内の不活性ガスの濃度を増加させることを指す。
【0049】
本発明の概要は、本発明の実施形態のうちのいくつかの一般的な紹介として提供され、限定することを意図しない。本発明の変形および代替の構成を含む追加の例示的な実施形態が、本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
添付の図面が、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、この説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0051】
【
図1】不活性化システムの例示的な電解セル図を示す。
【
図2】不活性化システムの動作原理を示す例示的な電解セル図を示す。
【
図3】二酸化炭素除去システムの動作原理を示す例示的な電解セル図を示す。
【
図4】電解質ループがアノードで循環する状態でエンクロージャに接続された不活性化システムのカソードを含む例示的な電解セル図を示す。
【
図5】電解質ループがアノードで循環する状態で、エンクロージャおよび水補給源に接続された不活性化システムのカソードを含む例示的な電解セル図を示す。
【
図6】酸素除去セルと直列の二酸化炭素除去セルを有する例示的な電解セル図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1を参照すると、電解セル1は、カソード側21にカソード2、およびアノード側31にアノード3を有する。アノードおよびカソードは、アニオン導電膜10の両側に構成されている。カソードは、カソードチャンバ4と、カソードガス拡散層5と、カソード触媒層6とで構成される。アノードは、アノードチャンバ7と、アノード多孔質集電体8と、アノード触媒層9とを備える。アニオン導電膜アセンブリ100は、アノード触媒層と、アニオン導電膜と、カソード触媒層とを含み、カソードガス拡散層およびアノード多孔質集電体も含み得る。アニオン導電膜10は、複合アニオン導電膜であり得、支持層または膜などの支持材料112、およびアニオン導電性ポリマー110を含み得る。複合アニオン導電膜は、より耐久性があり、堅牢であり、アニオン導電膜をより薄くすることを可能にする。
図1に示されるように、電源70が、アノードおよびカソードにわたって結合され、電気分解を起こさせるために、アノードおよびカソードにわたる電位を生成する。システムには電源が必要であるが、明確にするために、後続の図には示されていないことを理解されたい。
【0053】
図2を参照すると、電解セル1は、アニオン導電膜10の両側に構成されたカソード2およびアノード3を有する。水は、システムのアノードに入り、アニオン導電膜を横切ってカソードに移送されて、カソード側で酸素と反応し、カソード側の式(2H
2O+O
2+4e
-→4OH
-)に示されるように、ヒドロキシルイオンを形成する。ヒドロキシルイオンは、電解セルのアノードに輸送されて、電解セルのアノード側の式(4OH
-→2H
2O+O
2+4e
-)に示されるように、反応して水および酸素を形成する。この電解セル内では、電解セルのカソード側の反応を介して、酸素が低減される。カソードは、カソードチャンバ4と、カソードガス拡散層5と、カソード触媒層6とで構成される。アノードは、アノードチャンバ7と、アノード多孔質集電体8と、アノード触媒層9とを備える。
【0054】
図3を参照すると、電解セル1は、カソード側21にカソード2、および、アノード側31にアノード3を有する。アノードおよびカソードは、アニオン導電膜10の両側に構成されている。水は、システムのアノードに入り、アニオン導電膜を横切ってカソードに移送されて、カソード側で酸素と反応し、カソード側の式(2H
2O+O
2+4e
-→4OH
-)に示されるように、ヒドロキシルイオンを形成する。ヒドロキシルイオンは、二酸化炭素と反応して、重炭酸塩および炭酸塩を形成する。ヒドロキシルイオン、炭酸塩、および重炭酸塩は、電解セルのアノードに輸送し、反応して水、二酸化炭素、および酸素を形成する。この電解セルでは、電解セルのカソード側の反応を介して、二酸化炭素が低減されている。
【0055】
図3には、電解セルのカソード側で起こる平衡反応も示されており、二酸化炭素とヒドロキシル基とが反応して、重炭酸塩を形成する(CO
2+OH
-→HCO
3
-)。重炭酸塩イオンは、アニオン導電膜を横切ってアノード側に移送されて、二酸化炭素およびヒドロキシル基を再形成する(HCO
3
-→CO
2+OH
-)。
【0056】
図4を参照すると、水および電解質、電解質溶液20が、電解質溶液リザーバ12から電解セル1のアノード側31に、電解質ループ22内を流れ、電解質溶液タンクに戻る。電解質溶液リザーバは、一定期間、閉ループであり得、必要に応じて、追加の電解質溶液を定期的に受容し得る。カソード側では、酸素が、カソードエンクロージャ11からカソードに流れるカソードエンクロージャガス55から除去される。電解セルのカソード側の反応は、2H
2O+O
2+4e
-→4OH
-であり、それにより、カソードエンクロージャ11内に窒素のより高い濃度を形成する。電解セル1は、カソードエンクロージャなしで動作してもよく、カソードは、環境からカソード入口ガス流を受容してもよいことに留意されたい。
【0057】
図5を参照すると、水補給システム13が、電解質ループに取り付けられている。水補給システムは、水がアニオン導電膜10を横切ってカソードに移送されるときに、電解質ループ22に水を添加する。水補給システムは、電解質ループ22内の電解質溶液20のpHを維持する。電解質ループ内の電解質溶液の流れは、アノードを出る太字の矢印によって示されるように、アノードからの出口流れによって制御され得る。水補給システムは、水源33から水を受容し得るか、または凝縮器などの水再生デバイス30によって収集された水を受容し得る。水再生デバイスによって収集された水は、ポンプ32によって、導管34を通して水補給システム13または電解質溶液ループ22にポンプ圧送され得る。水再生デバイスによって収集された水または水分は、流れ得、カソード側21からアノード側31に結合された水補給システム13への重力であることに留意されたい。
【0058】
図5には、アノードチャンバへの電解質溶液20の流れを強制するために、電解質ループ22に接続されている任意選択の電解質ポンプ14も示されている。任意選択の酸素除去システム15が、閉ループから追加の酸素を除去するために、電解質ループに接続されている。例示的な酸素除去システムは、通気を介してなどで、電解セルのアノード側からの酸素のリリーストを可能にし得る。例示的な酸素除去システムは、電解質溶液リザーバ12内のヘッドスペース28から酸素を引き出してもよく、および/または逆止弁25および/もしくは選択的透過性膜27を使用してもよい。例示的な逆止弁は、定期的にまたは制御されたスケジュールで開くことができるフラップまたは圧力制御デバイスであり得る。電解質溶液センサ29は、システムを補充するために、追加の電解質または水がいつ必要かを決定するように構成され得る。
【0059】
例示的な電解質溶液センサは、電解質溶液レベルが特定のレベルを下回って低下するときを検出するレベルセンサであり得るか、または電解質溶液のpHを測定し、pHが閾値レベルを超えるときに補充を開始するpHセンサであり得る。
【0060】
アノード側の二酸化炭素は、ヘッドスペースからの通気を通してなどで、電解セルのアノード側からも放出され得る。例示的なカーボンドダイオキサイド除去システムは、電解質溶液リザーバ12内のヘッドスペース28から二酸化炭素を引き出してもよく、および/または逆止弁25および/もしくは選択的透過性膜27を使用してもよい。例示的な逆止弁は、定期的にまたは制御されたスケジュールで開くことができるフラップまたは圧力制御デバイスであり得る。
【0061】
電解質溶液センサヒータ36は、電解質溶液20を加熱するように構成され得、電解質溶液温度センサ39は、電解質溶液温度を監視し、電解質溶液温度が閾値レベルを下回って低下したときに、コントローラ90を通して加熱を開始し得る。電解質溶液の温度の上昇は、その温度上昇が反応動態を改善するので、反応速度を増加させるであろう。
【0062】
図5には、カソードへの酸素の流れを改善するために、エンクロージャからカソード供給側に接続されている、任意選択の空気移動デバイス16も示されている。空気移動デバイスは、ファン、ポンプ、または他の好適なデバイスであり得る。
【0063】
図5に示されるように、任意選択の電解セルヒータ51は、アノード、またはアニオン導電膜アセンブリ100のアノード側などのセルの少なくとも一部分を加熱するように構成される。電解セル温度センサ59は、電解セル温度を監視し、電解セル温度が閾値レベルを下回って低下したときに、コントローラ90を通して加熱を開始し得る。電解セル、特にアノードまたはアノードカソード層の温度の上昇は、その温度上昇が反応動態を改善するので、反応速度を増加させるであろう。
【0064】
スクラバ40は、二酸化炭素などのエンクロージャガス55の構成要素のうちの1つ以上を低減および/または除去するように、カソードエンクロージャ11と、カソード2との間に構成され得る。二酸化炭素スクラバなどのスクラバは、二酸化炭素(CO2)を吸収する1台の装置であり得る。例示的な二酸化炭素スクラバは、二酸化炭素と反応させるためにアミンを利用するアミンスクラバ、二酸化炭素と反応させるためにミネラルまたはゼオライトを利用し得るミネラルスクラバ、二酸化炭素と反応させるために水酸化ナトリウムを利用する水酸化ナトリウムスクラバ、二酸化炭素と反応させるために水酸化リチウムを利用する水酸化リチウム、二酸化炭素を吸収するために活性炭または金属有機構造体(MOF)などの吸収剤を使用する吸収スクラバを含み得る。
【0065】
酸素センサ19は、カソード側21および/またはカソードエンクロージャ11の酸素レベルを監視するように構成され得る。コントローラ90は、酸素レベルが閾値を超えると、電解セル1に提供される電力を変更し得る。
【0066】
コントローラ90は、アニオン電解セル1の様々な構成要素とインターフェースし得、構成要素がオンにされるか、またはアクティブにされるときを、センサ入力の関数として制御し得る。カソードエンクロージャセンサ19は、酸素、窒素、および/または二酸化炭素などのカソードエンクロージャ内のガスの濃度を監視し得、コントローラ90に入力を提供し得る。コントローラは、アノードと、カソードとの間の電位、またはこれらへの電流を変化させて、ガスレベルを、所望のガス濃度閾値内に維持し得る。
【0067】
図6を参照すると、第1の電解セル1は、第2の電解セル1’と直列である。第2の電解セル1’は、アニオン導電膜10’の両側に構成されたカソード2’およびアノード3’を有する。カソードエンクロージャは、カソードエンクロージャガス55を収容する。第1の電解セルは、カソードエンクロージャ11から入口ガス56を受容し、カソード上の反応を介して二酸化炭素を除去して低減二酸化炭素ガス57を生成する二酸化炭素除去セルである。次いで、低減二酸化炭素ガスが、低減した酸素濃度を有する出口ガス58を生成する、酸素枯渇セルである第2の電解セル1’に供給され、低減二酸化炭素ガスは、酸素枯渇セルのカソード上で反応して、低減二酸化炭素ガスの酸素濃度から酸素濃度を低下させる。次いで、出口ガスが、カソードエンクロージャにフィードバックされる。また、二酸化炭素除去セルからの二酸化炭素は、アノードから戻されてエンクロージャに供給され得、酸素レベルを低下させながら、エンクロージャ内の二酸化炭素レベルを効果的に維持する。
【0068】
代替的な実施形態では、カルドンダイオキサイド低減セルへの入口ガスは、周囲環境または別のエンクロージャからのものであり、入口ガスは、触媒層の触媒を保護するために、スクラブなどによって前処理または調整され得る。出口形態第2の電解セル、酸素枯渇セルは、カソードエンクロージャに流れ得、カソードエンクロージャは、調整され環境制御されたガスの流れがエンクロージャを通って流れることを可能にするために、放出ベントを有し得る。
【0069】
当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明において様々な修正、組み合わせ、および変形を行い得ることが明らかであろう。本明細書に記載の特定の実施形態、特徴、および要素は、任意の好適な様式で修正、および/もしくは組み合わされ得る。したがって、本発明の修正、組み合わせ、および変形が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内である限り、本発明は、それらの修正、組み合わせ、および変形を包含することが意図される。
【国際調査報告】