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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】キット、システム、及びフローセル
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230313BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20230313BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230313BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230313BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230313BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20230313BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20230313BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALN20230313BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C40B40/06
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
C12M1/26
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577073
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2021014919
(87)【国際公開番号】W WO2021154648
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/966,351
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タイラー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】パラヴィ・ダッグマティ
(72)【発明者】
【氏名】タルン・クマール・クラーナー
(72)【発明者】
【氏名】イル-シュアン・ウ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029HA05
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR06
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR82
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
キットの例は、ライブラリ調製流体、試料流体、及び濃縮流体を含む。ライブラリ調製流体は、ライブラリ調製ビーズを含み、各ライブラリ調製ビーズは、第1の固形支持体と、第1の固形支持体に付着したトランスポソームとを含む。流体は、ゲノムデオキシリボ核酸配列を含む。濃縮流体は、標的捕捉ビーズを含み、各標的捕捉ビーズは、第2の固形支持体と、第2の固形支持体に付着した捕捉プローブとを含む。捕捉プローブのそれぞれは、試料流体中のゲノムデオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キットであって、
ライブラリ調製ビーズを含むライブラリ調製流体であって、各ライブラリ調製ビーズが、
第1の固形支持体と、
前記第1の固形支持体に付着したトランスポソームと、を含む、ライブラリ調製流体と、
ゲノムデオキシリボ核酸配列を含む試料流体と、
標的捕捉ビーズを含む濃縮流体であって、各標的捕捉ビーズが、
第2の固形支持体と、
前記第2の固形支持体に付着した捕捉プローブと、を含み、前記捕捉プローブのそれぞれが、前記試料流体中のゲノムデオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む、キット。
【請求項2】
前記第1の固形支持体及び前記第2の固形支持体が、磁気応答性材料、ガラス、ポリマー、及び金属からなる群から個別に選択される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記捕捉プローブが、結合ペアを介して前記第2の固形支持体に付着している、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
デオキシリボ核酸配列をブロックすることを含むブロッキング流体を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記標的捕捉ビーズのプローブ密度が、固形支持体1個あたり約2×10の捕捉プローブ~固形支持体1個あたり約5×10の捕捉プローブの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
キットであって、
RNA-cDNA変換サブキットと、
標的捕捉ビーズを含む濃縮流体であって、各標的捕捉ビーズが、
固形支持体と、
前記固形支持体に付着した捕捉プローブと、を含み、前記捕捉プローブのそれぞれが、前記RNA-cDNA変換サブキットを使用して生成されたcDNAの標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む、キット。
【請求項7】
前記捕捉プローブが、結合ペアを介して前記固形支持体に付着している、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
システムであって、
基材と、
前記基材上の第1の領域で画定された調製チャネルであって、前記調製チャネルが、ライブラリ調製ビーズを固定化するための調製捕捉部位を含む、調製チャネルと、
前記調製チャネルの下流の前記基材上の第2の領域で画定された濃縮チャネルであって、前記濃縮チャネルが、
増幅プライマーと、
標的捕捉ビーズを固定化するための濃縮捕捉部位と、を含む、濃縮チャネルと、
前記調製チャネル及び前記濃縮チャネルを選択的かつ流体的に接続する輸送チャネルと、を備える、システム。
【請求項9】
前記調製チャネルが、前記増幅プライマーを含まない、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記基材に取り付けられた第2の基材を更に備え、前記第2の基材が、
第2の調製捕捉部位を含む第2の調製チャネルと、
第2の増幅プライマー及び第2の濃縮捕捉部位を含む第2の濃縮チャネルと、を含む、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記濃縮チャネルと選択的に流体連通するフローセル試薬システムを更に備える、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記フローセル試薬システムが、
リザーバと、
前記リザーバに収容された濃縮流体であって、前記濃縮流体が、標的捕捉ビーズを含み、各標的捕捉ビーズが、
固形支持体と、
前記固形支持体に付着した捕捉プローブと、を含み、前記捕捉プローブのそれぞれが、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記濃縮捕捉部位に固定化された前記標的捕捉ビーズを更に含み、各標的捕捉ビーズが、
固形支持体と、
前記固形支持体に付着した捕捉プローブと、を含み、前記捕捉プローブのそれぞれが、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、請求項8~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記濃縮捕捉部位が、結合ペアの第1のメンバーを含み、前記固形支持体が、前記結合ペアの第2のメンバーでコーティングされている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記濃縮チャネルが、隙間領域によって分離されたくぼみを含み、前記増幅プライマー及び濃縮捕捉部位が、前記くぼみのそれぞれの中に配置されている、請求項8~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
フローセルであって、
2つの表面間に画定された濃縮チャネルを備え、前記濃縮チャネルが、
前記2つの表面のうちの少なくとも一方に付着した増幅プライマーと、
前記2つの表面のうちの少なくとも一方に固定化された標的捕捉ビーズと、を含み、各標的捕捉ビーズが、
固形支持体と、
前記固形支持体に付着した捕捉プローブと、を含み、前記捕捉プローブのそれぞれが、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖核酸配列を含む、フローセル。
【請求項17】
前記捕捉プローブが、結合ペアを介して前記固形支持体に付着している、請求項16に記載のフローセル。
【請求項18】
前記2つの表面のそれぞれが、隙間領域によって分離されたくぼみを含み、前記増幅プライマー及び前記標的捕捉ビーズが、前記くぼみのそれぞれの中に配置されている、請求項16又は17に記載のフローセル。
【請求項19】
方法であって、
増幅プライマー及び濃縮捕捉部位を含む少なくとも1つの表面を含む濃縮チャネル内に標的捕捉ビーズを導入し、それによって前記標的捕捉ビーズの少なくともいくつかが、前記濃縮捕捉部位で固定化されることを含み、前記標的捕捉ビーズのそれぞれが、
固形支持体と、
前記固形支持体に付着した捕捉プローブと、を含み、前記捕捉プローブのそれぞれが、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖核酸配列を含む、方法。
【請求項20】
前記標的捕捉ビーズを導入する前に、前記方法が、
各捕捉プローブの末端に付着した結合ペアの第1のメンバーによって前記捕捉プローブを合することと、
前記捕捉プローブを前記固形支持体と共にインキュベートすることであって、前記固形支持体が前記結合ペアの第2のメンバーでコーティングされていることと、によって、前記標的捕捉ビーズを調製することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
インキュベーションに用いる混合物中の前記捕捉プローブの濃度を調整することによって、前記標的捕捉ビーズの捕捉プローブ密度を制御することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲノムデオキシリボ核酸又は前記相補的デオキシリボ核酸からライブラリ断片を調製することと、
前記ライブラリ断片を前記濃縮チャネルに導入することと、
前記濃縮チャネルを所定の温度でインキュベートし、それによって前記標的領域を含む前記ライブラリ断片の少なくともいくつかが前記捕捉プローブにハイブリダイズすることと、を更に含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ライブラリ断片を前記濃縮チャネル内に導入する前に、前記ライブラリ断片の末端をブロッキングオリゴヌクレオチドでブロックすることを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ライブラリ断片と共にクラウディング試薬を導入することを更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
インキュベーション中に電場を印加することを更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
インキュベーション中に前記ライブラリ断片を含有する流体の移動を誘導することを更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項27】
前記濃縮チャネル内で前記ライブラリ断片を前濃縮するために電気泳動を使用することを更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/966,351号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
フローセルは、遺伝子配列決定、遺伝子型決定など、様々な方法及び用途で使用される。いくつかの方法及び用途では、二本鎖DNA(dsDNA)標的分子から、断片化及びタグ付けされたデオキシリボ核酸(DNA)分子のライブラリを生成することが望ましい。多くの場合、その目的は、DNA配列決定反応において鋳型として使用するために、より大きなdsDNA分子からより小さなDNA分子(例えば、DNA断片)を生成することである。鋳型は、短いリード長を得ることを可能にし得る。データの解析中に、重複する短い配列のリードを整列させて、より長い核酸配列を再構築することができる。場合によっては、データ分析を簡素化するために、プレシーケンシングステップ(例えば、特定の核酸分子のバーコード化)を使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
(導入)
本明細書に開示される第1の態様は、ライブラリ調製ビーズを含むライブラリ調製流体であって、各ライブラリ調製ビーズが、第1の固形支持体と、第1の固形支持体に付着したトランスポソームとを含む、ライブラリ調製流体と;ゲノムデオキシリボ核酸配列を含む試料流体と;標的捕捉ビーズを含む濃縮流体であって、各標的捕捉ビーズが、第2の固形支持体と、第2の固形支持体に付着した捕捉プローブとを含み、捕捉プローブのそれぞれが、試料流体中のゲノムデオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む、キットである。
【0004】
本明細書に開示される第2の態様は、RNA-cDNA変換サブキットと;標的捕捉ビーズを含む濃縮流体であって、各標的捕捉ビーズが、固形支持体と、固形支持体に付着した捕捉プローブとを含み、捕捉プローブのそれぞれが、RNA-cDNA変換サブキットを使用して生成されたcDNAの標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む、別のキットである。
【0005】
本明細書に開示される第3の態様は、基材と;基材上の第1の領域で画定された調製チャネルであって、調製チャネルが、ライブラリ調製ビーズを固定化するための調製捕捉部位を含む、調製チャネルと;調製チャネルの下流の基材上の第2の領域で画定された濃縮チャネルであって、濃縮チャネルが、増幅プライマーと、標的捕捉ビーズを固定化するための濃縮捕捉部位とを含む、濃縮チャネルと;調製チャネル及び濃縮チャネルを選択的かつ流体的に接続する輸送チャネルと、を備える、システムである。
【0006】
本明細書に開示される第4の態様は、2つの表面間に画定された濃縮チャネルであって、濃縮チャネルが、2つの表面のうちの少なくとも一方に付着した増幅プライマーと、2つの表面のうちの少なくとも一方に固定化された標的捕捉ビーズとを含み、各標的捕捉ビーズが、固形支持体と、固形支持体に付着した捕捉プローブとを含み、捕捉プローブのそれぞれが、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖核酸配列を含む、濃縮チャネルを備える、フローセルである。
【0007】
本明細書に開示される第5の態様は、増幅プライマー及び濃縮捕捉部位を含む少なくとも1つの表面を含む濃縮チャネルに標的捕捉ビーズを導入し、それによって標的捕捉ビーズの少なくともいくつかが、濃縮捕捉部位で固定化されることを含む、方法であって、標的捕捉ビーズのそれぞれが、固形支持体と、固形支持体に付着した捕捉プローブとを含み、捕捉プローブのそれぞれが、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖核酸配列を含む、方法である。
【0008】
態様のいずれか1つの任意の特徴は、任意の望ましい方法で共に組み合わせることができることを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様及び/又は第4の態様及び/又は第5の態様の特徴の任意の組み合わせは、本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、本開示に記載される利益、例えば、オンフローセル濃縮などを達成することができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載してもよく、記載しなくてもよい。
【0010】
図1A】フローセルの例の上面図である。
【0011】
図1B図1Aの1B-1B線に沿って取られた、濃縮チャネル及びパターン化されていない配列決定表面の例の拡大断面図である。
【0012】
図1C図1Aの1C-1C線に沿って取られた、濃縮チャネル及びパターン化された配列決定表面の例の拡大断面図である。
【0013】
図2】例示的なライブラリ調製方法を示す概略フロー図である。
【0014】
図3A】別の例示的なライブラリ調製方法を示す概略フロー図である。
【0015】
図3B】明確にするために再度示した図3Aの方法から得られるブリッジの概略図である。
【0016】
図4】オンボードライブラリ調製チャンバを有するフローセルの例を含む例示的なシステムの概略図である。
【0017】
図5】本明細書に開示される濃縮方法の例を示す概略図である。
【0018】
図6】比較濃縮方法を使用する場合、及び例示的濃縮方法を使用する場合の、フローセル表面上の標的ライブラリ断片の相対的被覆率のプロットを示すグラフである。
【0019】
図7】異なるプローブ密度を有する標的捕捉ビーズの標的クラスター数を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
いくつかの配列決定技術は、DNAライブラリ断片を捕捉及び増幅するために、フローセルの表面上で捕捉プライマーを利用する。フローセル構造及び増幅プロセスを利用して、フローセルの異なる領域でそれぞれのDNAライブラリ断片のアンプリコンの個別の単クローン性集団を生成することができる。これは、各単クローン性集団が各DNAライブラリ断片について多くのデータを提供し得るため、(DNAライブラリ断片が生成される)DNA試料の全部又は大部分を分析する際に望ましい場合がある。
【0021】
場合によっては、試料全体とは対照的に、DNA試料の標的部分、例えば、所与の試料における特定の遺伝的変異を分析することが望ましい場合がある。この種の分析では、対象となる標的部分又は領域を濃縮することができ、例えば、これは、標的部分を残りのDNA試料から分離するのに役立つ。これにより、標的部分に専念した配列決定リードが可能になる。本明細書に開示される濃縮技術は、標的部分に対応するライブラリ断片のオンフローセルのハイブリダイゼーション及び捕捉を利用する。
【0022】
定義
【0023】
本明細書で使用される用語は、別段の指定がない限り、関連技術の通常の意味をとるものと理解されるであろう。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0024】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、単数形並びに複数形の両方を指す。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「包含する」、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非限定的であり、更なる列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0025】
「一例」、「別の例」、「例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、組成、構成、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくともよいことを意味している。更に、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせ得ることを理解すべきである。
【0026】
特許請求の範囲を含む本開示全体で使用される「実質的に」及び「約」という用語は、処理における変動などに起因するような小さな変動を記載及び説明するために使用される。それらの用語は、表示値から±10%以下、例えば、表示値から±5%以下、表示値から±2%以下、表示値から±1%以下、表示から±0.5%以下、表示値から±0.2%以下、表示値から±0.1%以下、表示値から±0.05%以下を指すことができる。
【0027】
アダプター:例えば、ライゲーション又はタグメンテーションによって核酸分子に融合され得る直鎖状オリゴヌクレオチド配列。アダプターは、意図された目的の配列を示すタグであり得る。いくつかの例では、アダプターは、プライマー、例えば、ユニバーサルヌクレオチド配列(例えば、P5又はP7配列)を含むプライマーの少なくとも一部に相補的な配列を示すことができる。1つの特定の例として、トランスポソーム複合体は、トランスポゾン末端配列を含む3’部分を有するポリヌクレオチドと、クラスター増幅反応のためのプライマーとのハイブリダイゼーションに適した1つ以上の領域を含むアダプターとを含み得る。別の特定の例では、断片の一方の末端におけるアダプターは、第1のフローセルプライマーの少なくとも一部に相補的である配列を含み、断片の他方の末端におけるアダプターは、第2のフローセルプライマーの少なくとも一部と同一である配列を含む。相補的アダプターは、第1のフローセルプライマーにハイブリダイズすることができ、同一のアダプターは、その相補的なコピーのためのテンプレートであり、クラスタリング中に第2のフローセルプライマーにハイブリダイズすることができる。他の例では、アダプターは、配列決定プライマー配列又は配列決定結合部位(例えば、配列決定反応のためのプライマーとのハイブリダイゼーションに適した1つ以上の領域)を含み得る。異なるアダプターの組み合わせを、DNA断片などの核酸分子に組み込むことができる。好適なアダプターの長さは、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、又は約12ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、又は約15ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの範囲であり得る。アダプターは、ヌクレオチド及び/又は核酸の任意の組み合わせを含み得る。
【0028】
捕捉プローブ:ゲノムデオキシリボ核酸の標的領域、又はリボ核酸試料に由来する相補的デオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列。
【0029】
捕捉部位:特定の物質(例えば、標的捕捉ビーズ、複合体、タンパク質バイオマーカーなど)の局在化を可能にする化学的特性を持つよう修飾したフローセル表面の一部。一例では、捕捉部位は、特定の分子に付着、保持、又は結合することができる化学的捕捉剤(すなわち、物質、分子又は部分)を含み得る。化学的捕捉剤の一例としては、特定の物質(又は特定の物質に付着した連結部分)に結合し得る受容体-リガンド結合ペアのメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)が挙げられる。化学的捕捉剤の更に別の例は、特定の物質と静電相互作用、水素結合、又は共有結合(例えば、チオールジスルフィド交換、クリックケミストリー、ディールス・アルダー反応など)を形成することができる化学試薬である。標的捕捉ビーズを付着させるように設計された捕捉部位は、本明細書では「濃縮捕捉部位」と称される。ライブラリ調製のために固形支持体を付着させるように設計された捕捉部位は、本明細書では「調製捕捉部位」と称される。
【0030】
堆積:手動又は自動のものであってよく、場合によっては表面特性の変更をもたらす、任意の適切な塗布技術。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実行され得る。いくつかの特定の例としては、化学蒸着(CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配(puddle dispensing)、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0031】
くぼみ:基材又はパターン化された樹脂による隙間領域によって少なくとも部分的に囲まれる表面開口部を有する、基材又はパターン化された樹脂における別個の凹状の機構。くぼみは、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)などの、様々な形状をとることができる。表面と直交するように取られたくぼみの断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、くぼみは、ウェル又は2つの相互接続されたウェルであり得る。くぼみはまた、尾根、階段状の作りなど、より複雑な構造を有し得る。
【0032】
それぞれ:アイテムのコレクションを指して使用される場合、それぞれがコレクション内の個々のアイテムを識別するが、必ずしもコレクション内の全てのアイテムを指すわけではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0033】
濃縮チャネル:2つの結合した、又は別の方法で付着した構成要素間に画定された領域であり、その中に固定化された標的捕捉ビーズを含むか、又はその中に標的捕捉ビーズを受容して固定化することができる。いくつかの例では、濃縮チャネルは、2つのパターン化された又はパターン化されていない配列決定表面の間に画定され得、したがって、配列決定表面の1つ以上の構成要素と流体連通し得る。
【0034】
フローセル:反応が行われ得るチャンバ(例えば、濃縮チャネルを含み得る)と、チャンバに試薬を送達するための入口と、チャンバから試薬を除去するための出口とを有する容器。いくつかの例では、チャンバは、チャンバ内で発生する反応の検出を可能にする。例えば、チャンバは、アレイ、光学的に標識された分子などの光学的検出を可能にする1つ以上の透明な表面を含み得る。
【0035】
断片:遺伝物質の一部又は断片(例えば、DNA、RNAなど)。
【0036】
核酸分子又は試料:任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドであり、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらの類似体、又はそれらの混合物を含み得る。この用語は、一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドを指す場合がある。
【0037】
「鋳型」核酸分子(又は鎖)は、解析されることになる配列を指し得る。
【0038】
核酸分子中のヌクレオチドは、天然に存在する核酸及びそれらの機能性類似体を含み得る。機能性類似体の例は、配列特異的な形式で核酸にハイブリダイズすることができるか、又は特定のヌクレオチド配列の複製のための鋳型として使用され得る。天然に存在するヌクレオチドは、一般には、ホスホジエステル結合を含有する骨格を有する。類似体構造は、当技術分野で知られている様々なもののいずれかを含む代替骨格結合を有することができる。天然に存在するヌクレオチドは、一般に、デオキシリボース糖(例えば、DNAに見られる)又はリボース糖(例えば、RNAに見られる)を有する。類似体構造は、当技術分野で知られている様々なもののいずれかを含む代替糖部分を有することができる。ヌクレオチドは、天然又は非天然の塩基を含むことができる。天然のDNAは、アデニン、チミン、シトシン、及び/又はグアニンの1つ以上を含むことができ、天然のRNAは、アデニン、ウラシル、シトシン、及び/又はグアニンの1つ以上を含むことができる。ロックド核酸(locked nucleic acid、LNA)及びブリッジ構造核酸(bridged nucleic acid、BNA)などの任意の非天然塩基が使用され得る。
【0039】
プライマー:特定の配列にハイブリダイズすることができる核酸分子。一例として、増幅プライマーは、ライブラリ断片に付着したアダプターにハイブリダイズすることができ、鋳型増幅及びクラスター生成の開始点として機能することができる。別の例では、合成された核酸(鋳型)鎖は、合成された核酸鎖に相補的な新しい鎖の合成をプライミングするために、プライマー(例えば、配列決定プライマー)がハイブリダイズし得る部位を含み得る。任意のプライマーは、ヌクレオチド又はそれらの類似体の任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの例では、プライマーは、一本鎖のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な非天然ヌクレオチドを含むことができる。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0040】
配列決定可能な核酸断片:3’及び5’末端にアダプターを有する遺伝物質の一部。配列決定可能な核酸断片では、各アダプターは、既知のユニバーサル配列(例えば、フローセル上のプライマーの少なくとも一部に相補的又は同一である)及び配列決定プライマー配列を含む。両方のアダプターは、インデックス(バーコード又はタグ)配列を含むこともできる。一例では、一端(例えば、P5’又はP5配列を含む)は、固形支持体インデックスを含み得、他端(P7又はP7’配列を含む)は、試料インデックスを含み得る。
【0041】
配列決定表面:1種以上の増幅プライマーがグラフトされた高分子ヒドロゲル。配列決定表面はまた、標的捕捉ビーズを固定化するための濃縮捕捉剤を含み得る。
【0042】
固形支持体:例えば、球形、卵形、微小球、又は規則的若しくは不規則な寸法を有するかどうかにかかわらずその他の認識される粒子形状を特徴とする形状を有する、硬質又は半硬質の材料で作製された小体(small body)。固形支持体のいくつかの例は、付着したライブラリ断片を有し得る。固形支持体の他の例は、付着した捕捉プローブを有し得る。
【0043】
標的捕捉ビーズ:付着した捕捉プローブを有する固形支持体。
【0044】
標的ライブラリ断片:i)ゲノムデオキシリボ核酸配列又はii)リボ核酸試料に由来する相補的デオキシリボ核酸の一本鎖部分。標的ライブラリ断片の配列は、標的捕捉ビーズの捕捉プローブに相補的である。標的ライブラリ断片の配列は、対象となる領域、例えば、エクソーム又は腫瘍関連遺伝子などの特定のゲノムパネルであってもよい。
【0045】
転移鎖:2つのトランスポゾン末端のうちの転移部分。同様に、「非転移鎖」という用語は、2つのトランスポゾン末端のうちの非転移部分を指す。転移鎖の3’末端は、インビトロ転位反応で標的DNAに結合又は転移される。転移されたトランスポゾン末端配列に相補的なトランスポゾン末端配列を示す非転移鎖は、インビトロ転位反応で標的DNAに結合又は転移されない。
【0046】
いくつかの例では、転移鎖及び非転移鎖は、共有結合している。例えば、いくつかの実施形態では、転移及び非転移鎖配列は、単一のオリゴヌクレオチド上に、例えば、ヘアピン構成で提供される。したがって、非転移鎖の遊離末端は、転位反応によって試料DNAに直接的には結合されないが、非転移鎖は、ヘアピン構造のループによって転移鎖に連結されているため、非転移鎖は、DNA断片に間接的に付着することになる。
【0047】
トランスポゾン末端:インビトロ転位反応で機能するトランスポザーゼ又はインテグラーゼ酵素との複合体を形成するために必要なヌクレオチド配列(「トランスポゾン末端配列」)のみを示す二本鎖核酸DNA。いくつかの例では、トランスポゾン末端は、転位反応においてトランスポザーゼと機能複合体を形成することができる。例として、トランスポゾン末端は、19塩基対(bp)の外側末端(「OE」)トランスポゾン末端、内側末端(「IE」)トランスポゾン末端、又は野生型又は変異体Tn5トランスポザーゼによって認識される「モザイク末端」(「ME」)トランスポゾン末端を含むことができる。トランスポゾン末端は、インビトロ転位反応においてトランスポザーゼ又はインテグラーゼ酵素と機能複合体を形成するのに適した任意の核酸又は核酸類似体を含み得る。例えば、トランスポゾン末端は、DNA、RNA、修飾塩基、非天然塩基、修飾骨格を含むことができ、一方又は両方の鎖にニックを含むことができる。「DNA」という用語は、トランスポゾン末端組成物に関連して本開示全体を通して使用され得るが、任意の適切な核酸又は核酸類似体がトランスポゾン末端において利用され得ることを理解すべきである。
【0048】
トランスポザーゼ:トランスポゾン末端含有組成物(例えば、トランスポゾン、トランスポゾン末端、トランスポゾン末端組成物)と機能複合体を形成し、例えば、インビトロ転位反応において、共にインキュベートされる二本鎖標的核酸へのトランスポゾン末端含有組成物の挿入又は転位を触媒することができる酵素。本明細書に提示されるトランスポザーゼはまた、レトロトランスポゾン及びレトロウイルスからのインテグラーゼを含み得る。本明細書に記載の多くの例は、Tn5トランスポザーゼ及び/又は過活性Tn5トランスポザーゼに言及するが、意図された目的の標的DNAに5’タグを付けて断片化するのに十分な効率でトランスポゾン末端を挿入することができる任意の転位システムを使用し得ることが理解されるであろう。特定の例では、好ましい転位システムは、トランスポゾン末端をランダムに又はほぼランダムに挿入し、標的DNAに5’タグを付けて断片化することができる。
【0049】
トランスポソーム複合体:二本鎖核酸に非共有結合したトランスポザーゼ酵素。例えば、トランスポソーム複合体は、非共有結合複合体形成をサポートする条件下で二本鎖トランスポゾンDNAとプレインキュベートされたトランスポザーゼ酵素であり得る。二本鎖トランスポゾンDNAとしては、例えば、Tn5 DNA、Tn5 DNAの一部、トランスポゾン末端組成物、トランスポゾン末端組成物の混合物、又は過活性Tn5トランスポザーゼなどのトランスポザーゼと相互作用することができる他の二本鎖DNAが挙げられ得る。
【0050】
本明細書に開示される例では、標的捕捉ビーズは、配列決定表面も含むフローセルの濃縮チャネルで利用される。標的捕捉ビーズは、対象となるライブラリ断片を選択的に捕捉することができる捕捉プローブを含む。したがって、標的捕捉ビーズにより、フローセル内でカスタム濃縮を行うことができる。
【0051】
標的捕捉ビーズ
【0052】
標的捕捉ビーズを図1B及び図1Cに参照番号36で示す。標的捕捉ビーズ36は、固形支持体38と、固形支持体に付着した捕捉プローブ40とを含む。
【0053】
固形支持体38は、ガラス(例えば、制御細孔ガラスビーズ);磁気応答性材料;プラスチック、例えば、アクリル、ポリスチレン、又はスチレンと別の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン又はポリテトラフルオロエチレン(The Chemours Co.からのTEFLON(登録商標));アガロース又はSEPHAROSE(登録商標)ビーズ(Cytiviaから入手可能なアガロースの架橋ビーズ形態)などの多糖類又は架橋多糖類;ナイロン;ニトロセルロース;樹脂;ケイ素及び変性ケイ素を含むシリカ又はシリカ系材料;炭素繊維;金属;無機ガラス;光ファイバーバンドル;又は他の様々なポリマーであり得るが、それらに限定されない。
【0054】
「磁気応答性」材料は、磁場に対応する。磁気応答性固形支持体の例は、磁気応答性材料を含むか、又はそれらから構成される。磁気応答性材料の例としては、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が挙げられる。適切な常磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、及びコバルト、並びにFe、BaFe1219、CoO、NiO、Mn、Cr、及びCoMnPなどの金属酸化物が挙げられる。市販の例の1つには、ThermoFisher ScientificのDYNABEAD(商標)M-280ストレプトアビジン(ストレプトアビジンでコーティングされた超常磁性ビーズ)を含む。いくつかの例では、磁気応答性材料は、ポリマービーズのシェルに埋め込まれる。他の例では、磁気応答性材料はビーズ形態であり、酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの不動態化材料でコーティングされる。
【0055】
固形支持体38の任意の例は、固形ビーズ、多孔質ビーズ、又は中空ビーズの形態を有し得る。
【0056】
いくつかの例では、固形支持体38は、結合ペアの一方のメンバーで官能化され得る。「結合ペア」は、互いに付着することができる2つの剤(例えば、材料、分子、部分)を指す。この例では、固形支持体38上のメンバーは、フローセル10(図1A)の配列決定表面(図1Bの12、12’及び図1Cの14、14’参照)上に位置する別のメンバーとの結合ペアである。いくつかの例では、固形支持体38上のメンバーは、i)捕捉プローブ40に付着したメンバーに結合することができ、かつii)フローセル10の配列決定表面12、12’又は14、14’上の濃縮捕捉部位(図1B及び図1Cの32、32’参照)に結合することができるという点で、多官能性であり得る。他の例では、固形支持体38は、2つの異なる結合ペアメンバー、例えば、i)捕捉プローブ40に付着したメンバーに結合することができる1つのメンバーと、ii)フローセル10の12、12’又は14、14’上の濃縮捕捉部位32、32’に結合することができる別のメンバーとで官能化され得る。
【0057】
固形支持体38の官能化は、固形支持体38を結合ペアメンバーでコーティングすること、又は結合ペアメンバーと固形支持体38の表面の官能基との間に結合を形成することを含み得る。結合ペアメンバーの一例としては、フローセルの配列決定表面上に位置する他方の結合ペアメンバーに結合することができる受容体-リガンド結合ペアのメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)が挙げられる。結合ペアメンバーはまた、静電相互作用、水素結合、又は共有結合(例えば、チオールジスルフィド交換、クリックケミストリー、ディールス・アルダー反応など)を形成することができる化学試薬であり得る。
【0058】
他の例では、固形支持体38は、結合ペアのメンバーを含まず、むしろ、固形支持体38は、濃縮捕捉部位32、32’に化学的に共役されることができる。任意の形態の化学的結合を使用して、固形支持体38を濃縮捕捉部位32、32’に付着させてもよい。
【0059】
多くの場合に、標的捕捉ビーズ36が配列決定前に除去され得るように、固形支持体38と濃縮捕捉部位32、32’との間には、可逆的又は開裂可能な相互作用が望ましい。
【0060】
標的捕捉ビーズ36はまた、固形支持体38に付着した捕捉プローブ40を含む。固形支持体38上の各捕捉プローブ40は、同じ一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む。この配列は、各捕捉プローブ40が、対象となる(例えば、分析される)配列を含む標的ライブラリ断片に選択的にハイブリダイズするように選択される。いくつかの例では、捕捉プローブの配列は、ゲノムデオキシリボ核酸の標的領域に相補的である。他の例では、捕捉プローブの配列は、リボ核酸試料の標的領域に由来する相補的デオキシリボ核酸(cDNA)に相補的である。
【0061】
捕捉プローブ40中のヌクレオチドの数は、標的ライブラリ断片中のヌクレオチドの数に依存し得る。場合によっては、捕捉プローブ40は、標的ライブラリ断片よりも小さい。捕捉プローブ40は、約50ヌクレオチド~約200ヌクレオチドを含み得る。一例では、捕捉プローブ40は、約80ヌクレオチド~約120ヌクレオチドを含む。別の例では、捕捉プローブ40は、69ヌクレオチドを含む。
【0062】
捕捉プローブ40は、任意のオリゴヌクレオチド合成技術を使用して調製され得る。
【0063】
捕捉プローブ40の一方の末端は、固形支持体38に付着したメンバーに結合することができるように、結合ペアの他方のメンバーに結合していてもよい。例えば、捕捉プローブ40は、固形支持体38の表面におけるストレプトアビジンと結合するためにビオチン化され得る。
【0064】
捕捉プローブ40は、捕捉プローブ40を含有する混合物中で固形支持体38をインキュベートすることによって、固形支持体38に付着され得る。捕捉プローブ40は、塩緩衝液中に混合され得る。捕捉プローブ40と固形支持体38との間の反応を促進又は可能にする任意の好適な塩緩衝液を使用することができる。一例では、塩緩衝液は、ビオチン化捕捉プローブ40が固形支持体38上のストレプトアビジンに結合するように、ビオチン-ストレプトアビジン反応を促進し得る。例として、塩緩衝液は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含む水溶液である。1つの特定の例では、塩緩衝液は、水中に約0.75M塩化ナトリウム及び約75mMクエン酸ナトリウムを含む。混合物中の捕捉プローブ40の数は、混合物に添加される固形支持体38の数及び標的捕捉ビーズ36の所望のプローブ密度に依存し得る。一例では、標的捕捉ビーズ36の所望のプローブ密度は、固形支持体1個あたり約2×10の捕捉プローブ~固形支持体1個あたり約5×10の捕捉プローブの範囲である。標的捕捉ビーズ36の捕捉プローブ密度は、インキュベーションに用いる混合物中の捕捉プローブの濃度を調整することによって制御され得る。
【0065】
標的捕捉ビーズ36を形成するための1つの例示的な方法は、各捕捉プローブ40の末端に結合ペアの第1のメンバーが付着した捕捉プローブ40を合成することと、捕捉プローブ40を固形支持体38と共にインキュベートすることとを含み、ここで、固形支持体38は、結合ペアの第2のメンバーでコーティングされている。
【0066】
フローセル
【0067】
標的捕捉ビーズ36は、パターン化された配列決定表面14、14’又はパターン化されていない配列決定表面12、12’を有するフローセル10で使用され得る。標的捕捉ビーズ36は、本明細書に記載の固形支持体38及び捕捉プローブ40の任意の例を含み得ることを理解すべきである。
【0068】
フローセル10の例の上面図を図1Aに示す。図1B及び図1Cを参照して説明するように、フローセル10のいくつかの例は、2つの配列決定する対向した配列決定表面を含む。パターン化されていない配列決定表面12、12’の例を図1Bに示し、パターン化された配列決定表面14、14’の例を図1Cに示す。各配列決定表面12、12’又は14、14’は、基材(一般に図1Aでは16として示される)によって支持され、濃縮チャネル(一般に図1Aでは18として示される)は、配列決定表面12、12’又は14、14’の間に画定される。他の例では、フローセル10は、基材16によって支持された1つの配列決定表面と、基材16に取り付けられた蓋とを含む。これらの例では、濃縮チャネル18は、配列決定表面12又は14と蓋との間に画定される。
【0069】
いずれの例でも、基材16は、単一の層/材料であってよい。単層基材の例を図1Bの参照番号16A及び16A’に示す。適切な単層基材16A、16A’の例としては、エポキシシロキサン、ガラス、修飾又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(ChemoursのTEFLON(登録商標)など)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(ZeonのZEONOR(登録商標)など)、ポリイミドなどを含む)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/酸化セラミック、シリカ、溶融シリカ、又はシリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコン及び修飾シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、五酸化タンタル(Ta)又は他の酸化タンタル(TaO)、酸化ハフニウム(HfO)、炭素、金属、無機ガラスなどが挙げられる。
【0070】
基材16はまた、多層構造であってもよい。多層基材の例を図1Cの参照番号16B及び16B’に示す。多層構造16B、16B’のいくつかの例は、表面に酸化タンタル又は別のセラミック酸化物のコーティング層を備えたガラス又はシリコンを含む。図1Cを特に参照すると、多層構造16B、16B’の他の例は、下部支持体20、20’を含み、その上にパターン化された樹脂22、22’を有する。多層基材16B、16B’の更に他の例は、シリコンオンインシュレータ(SOI)基材を含み得る。
【0071】
一例では、基材16(単層であるか、多層である)は、約2mm~約300mmの範囲の直径、又は最大約10フィート(~3メートル)の最大寸法を有する長方形のシート若しくはパネルを有し得る。一例では、基材16は、約200mm~約300mmの範囲の直径を有するウェーハである。別の例では、基材16は、約0.1mm~約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法が提供されるが、任意の適切な寸法を有する基材16を使用できることを理解すべきである。別の例として、300mmの丸いウェーハよりも大きな表面積を有する長方形の支持体であるパネルが使用され得る。
【0072】
図1A図1B及び/又は図1Cに示す例では、フローセル10は、濃縮チャネル18を含む。いくつかの濃縮チャネル18が示されているが、任意の数のチャネル18がフローセル10に含まれ得ること(例えば、単一のチャネル18、4つのチャネル18など)を理解すべきである。本明細書に開示されるいくつかの例では、各濃縮チャネル18は、2つの配列決定表面(例えば、12及び12’又は14及び14’)の間で、2つの取り付けられた基材(例えば、16A及び16A’又は16B及び16B’)によって画定される領域である。本明細書に開示される他の例では、各濃縮チャネル18は、1つの配列決定表面(例えば、12又は14)と蓋との間に画定される領域である。本明細書に記載の流体は、濃縮チャネル18に導入され、そこから除去され得る。各濃縮チャネル18は、任意の特定の濃縮チャネル18に導入された流体が、任意の隣接する濃縮チャネル18に流入しないように、フローセル10内の他の各濃縮チャネル18から分離されていてもよい。
【0073】
濃縮チャネル18の一部は、基材16の材料に部分的に依存する任意の適切な技術を使用して、基材16内に画定され得る。一例では、濃縮チャネル18の一部は、ガラス基材16にエッチングされる。別の例では、濃縮チャネル18の一部は、フォトリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィーなどを使用して、多層基材16B、16B’の樹脂22、22’にパターン化され得る。更に別の例では、別個の材料(例えば、図1B及び図1Cの材料24)を基材16に適用してもよく、それによって別個の材料が濃縮チャネル18の壁の少なくとも一部を画定する。
【0074】
一例では、濃縮チャネル18は直線の構成を有する。濃縮チャネル18の長さ及び幅は、基材16の長さ及び幅よりもそれぞれ小さくてもよく、その結果、濃縮チャネル18を取り囲む基材表面の一部は、別の基材16への取り付けに利用可能である。場合によっては、各濃縮チャネル18の幅は、少なくとも約1mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7mm、少なくとも約10mm、又はそれ以上であり得る。場合によっては、各濃縮チャネル18の長さは、少なくとも約10mm、少なくとも約25mm、少なくとも約50mm、少なくとも約100mm、又はそれ以上であり得る。各濃縮チャネル18の幅及び/又は長さは、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。別の例では、濃縮チャネル18は正方形(例えば、10mm×10mm)である。
【0075】
各濃縮チャネル18の深さは、例えば、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用して、流路壁を画定する別個の材料を堆積する場合、複数の単層の厚さまで小さくすることができる。他の例では、各濃縮チャネル18の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。一例では、深さは、約10μmから約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは約5μm以下である。各濃縮チャネル18の深さは、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であることを理解すべきである。濃縮チャネル18の深さはまた、例えば、パターン化された配列決定表面14、14’が使用される場合、フローセル10の長さ及び幅に沿って変化し得る。
【0076】
図1Bは、パターン化されていない対向する配列決定表面12、12’を含むフローセル10の断面図を示す。一例では、これらの表面12、12’のそれぞれは、基材16A、16A’上に調製され得、次に、基材16A、16A’は、フローセル10の例を形成するために互いに取り付けられ得る。接着剤、結合を助ける放射線吸収材料などの任意の適切な結合材料24を使用して、基材16A、16Bを共に結合してもよい。
【0077】
図1Bに示す例では、濃縮チャネル18の一部は、単層基材16A、16A’のそれぞれに画定される。例えば、各基材16A、16A’は、その中に画定された凹状領域26、26’を有し得、凹状領域には配列決定表面12、12’の構成要素が導入され得る。配列決定表面12、12’の構成要素によって占有されていない凹状領域26、26’内の任意の空間は、濃縮チャネル18の一部であると見なされ得ることを理解すべきである。
【0078】
配列決定表面12、12’は、高分子ヒドロゲル28、28’、高分子ヒドロゲル28、28’に付着した増幅プライマー30、30’、及び濃縮捕捉部位32、32’を含む。
【0079】
高分子ヒドロゲル28、28’の例としては、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAMなどのアクリルアミドコポリマーが挙げられる。PAZAM及び他のいくつかの形態のアクリルアミドコポリマーは、次の構造(I)で表され、
【化1】
(式中、
は、アジド、任意選択で置換アミノ、任意選択で置換アルケニル、任意選択で置換アルキン、ハロゲン、任意選択で置換ヒドラゾン、任意選択で置換ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意選択で置換テトラゾール、任意選択で置換テトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、硫酸塩、及びチオールからなる群から選択され、
はH又は任意選択で置換アルキルであり、
、R、及びRはそれぞれ、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH-のそれぞれは、任意選択で置き換えられ得、
pは1から50の範囲の整数であり、
nは1から50,000の範囲の整数であり、及び
mは、1から100,000の範囲の整数である)。
【0080】
当業者は、構造(I)において繰り返される特徴「n」及び「m」の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターン化、又はそれらの組み合わせ)中に任意の順序で存在し得ることを認識する。
【0081】
PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDaから約1500kDa又は約10kDaから約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは特定の例では、約312kDaであり得る。
【0082】
いくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは線状ポリマーである。他のいくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0083】
他の例では、高分子ヒドロゲル28、28’は、構造(I)の変形であり得る。一例では、アクリルアミドユニットはN,Nージメチルアクリルアミド(
【化2】
)で置き換えられ得る。この例では、構造(I)のアクリルアミドユニットは
【化3】
で置き換えられ得、ここで、R、R、及びRはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R及びRはそれぞれC1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は繰り返す特徴「n」及び「m」に加えて
【化4】
を含み得、ここでR、R、及びRはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R及びRはそれぞれC1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0084】
更に別の例として、高分子ヒドロゲル28、28’は、構造(III)及び(IV)のそれぞれの繰り返し単位を含み得、
【化5】
ここで、R1a、R2a、R1b及びR2bのそれぞれは、水素、任意選択では置換アルキル又は任意選択では置換フェニルから独立して選択され、R3a及びR3bのそれぞれは、水素、任意選択で置換アルキル、任意選択で置換フェニル、又は任意選択で置換C7~C14アラルキルから独立して選択され、L及びLのそれぞれは、任意選択で置換アルキレンリンカー又は任意選択で置換ヘテロアルキレンリンカーから独立して選択される。
【0085】
オリゴヌクレオチドプライマー30、30’をグラフトするために官能化される限り、他の分子を使用して高分子ヒドロゲル28、28’を形成することができることを理解すべきである。適切なポリマー層の他の例としては、アガロースなどのコロイド構造、又はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、又はポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、シランフリーアクリルアミド(SFA)、又はアジド分解バージョンのSFAなどの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドとアクリル酸若しくはビニル基を含むアクリル酸とから、又は[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成され得る。適切な高分子ヒドロゲル28、28’の更に他の例としては、アクリルアミドとアクリレートとの混合コポリマーが挙げられる。本明細書に開示される実施例では、星状ポリマー、星型又は星型ブロックポリマー、デンドリマーなどを含む分岐ポリマーなど、アクリルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリレートなど)を含む様々なポリマー構造は利用され得る。例えば、モノマー(例えば、アクリルアミドなど)は、ランダムに又はブロックで、星型ポリマーの分岐(アーム)に組み込まれ得る。
【0086】
高分子ヒドロゲル28、28’を凹状領域26、26’に導入するために、高分子ヒドロゲル28、28’の混合物が生成され、次に(凹状領域26、26’を画定する)それぞれの基材16A、16A’に適用され得る。一例では、高分子ヒドロゲル28、28’は、混合物(例えば、水との混合物、又はエタノールと水との混合物)中に存在し得る。次に、混合物は、スピンコーティング、浸漬又は浸漬コーティング、あるいは正圧又は負圧下での材料のフロー、又は別の適切な技術を使用し、それぞれの基材表面(凹状領域26、26’を含む)に適用され得る。これらのタイプの技術は、高分子ヒドロゲル28、28’を基材16A、16A’のそれぞれの基材上に(例えば、凹状領域26、26’内及びそれに隣接する隙間領域34、34’上に)全面的(blanketly)に堆積させる。他の選択的堆積技術(例えば、マスク、制御された印刷技術などを含む)を使用し、隙間領域34、34’ではなく、凹状領域26、26’に高分子ヒドロゲル28、28’を特異的に堆積させることができる。
【0087】
いくつかの例では、基材表面(凹状領域26、26’を含む)が活性化され得、次に、混合物(高分子ヒドロゲル28、28’を含む)がそれに適用され得る。一例では、シラン又はシラン誘導体(例えば、ノルボルネンシラン)は、蒸着、スピンコーティング、又は他の堆積方法を使用し、基材表面に堆積され得る。別の例では、基材表面をプラズマ灰化に曝露させて、高分子ヒドロゲル28、28’に付着し得る表面活性化剤(例えば、-OH基)を生成することができる。
【0088】
高分子ヒドロゲル28、28’の化学的性質に応じて、適用された混合物を硬化プロセスに曝露してもよい。一例では、硬化は、室温(例えば、約25℃)~約95℃の範囲の温度で、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間にわたって行うことができる。
【0089】
凹状領域26、26’の周囲の隙間領域34、34’から高分子ヒドロゲル28、28’を除去し、かつ凹状領域26、26’の表面上に高分子ヒドロゲル28、28’を少なくとも実質的に無傷のまま残すために、研磨が実行され得る。
【0090】
配列決定表面12、12’はまた、高分子ヒドロゲル28、28’に付着した増幅プライマー30、30’を含む。
【0091】
グラフトプロセスを実行して、増幅プライマー30、30’を凹状領域26、26’の高分子ヒドロゲル28、28’にグラフトしてもよい。一例では、増幅プライマー30、30’は、プライマー30、30’の5’末端又はその近傍における一点共有結合性付着によって、高分子ヒドロゲル28、28’に固定化され得る。この付着により、i)プライマー30、30’のアダプター特異的部分は、その同族の配列決定可能な核酸断片に自由にアニールすることができ、ii)3’ヒドロキシル基は、自由にプライマーを伸長することができる。この目的のために、任意の好適な共有結合を使用することができる。使用できる末端プライマーの例としては、アルキン末端プライマー(例えば、高分子ヒドロゲル28、28’のアジド表面部分に付着し得る)、又はアジド末端プライマー(例えば、高分子ヒドロゲル28、28’のアルキン表面部分に付着し得る)が挙げられる。
【0092】
好適なプライマー30、30’の具体例としては、HISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、NOVASEQ(商標)、GENOME ANALYZER(商標)、ISEQ(商標)、及び他の機器プラットフォームでの配列決定のためにIllumina Inc.により販売されている市販のフローセルの表面上で使用されるP5及びP7プライマーが挙げられる。P5及びP7プライマーのいずれも、高分子ヒドロゲル28、28’のそれぞれにグラフトされ得る。
【0093】
一例では、グラフトは、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又はプライマー30、30’を高分子ヒドロゲル28、28’に付着させる別の適切な方法によるものであり得る。これらの例示的な技術のそれぞれは、プライマー30、30’、水、緩衝液、及び触媒を含み得る、プライマー溶液又は混合物を利用し得る。グラフト法のいずれかを用いると、プライマー30、30’は、凹状領域26、26’において高分子ヒドロゲル28、28’の反応基と反応し、周囲の基材16A、16A’に対して親和性を有さない。したがって、プライマー30、30’は、高分子ヒドロゲル28、28’に選択的にグラフトする。
【0094】
図1Bに示す例では、濃縮捕捉部位32、32’は、高分子ヒドロゲル28、28’の少なくとも一部に付着又は適用される化学的捕捉剤を含む。本明細書で開示される化学的捕捉剤の任意の例を使用することができる。いくつかの例では、化学的捕捉剤は、ストレプトアビジン含有標的捕捉ビーズ36をフローセルの配列決定表面12、12’又は14、14’に付着させることができる、ビオチンであり得る。他の例では、化学的捕捉剤は、別の結合ペアメンバー(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン結合ペア以外)であり得る。これらの他の例のいくつかでは、標的捕捉ビーズ36は、2つの異なる結合ペアメンバー、例えば、i)ストレプトアビジン(ビオチンに結合して捕捉プローブ40を付着させる)と、ii)フローセル10の配列決定表面12、12’又は14、14’上の濃縮捕捉部位32、32’の化学的捕捉剤に結合することができる別のメンバーとを含み得る。これらの他の例では、化学的捕捉剤は、ビオチンではない結合ペアメンバーであってもよく、ここで、結合ペアの他方のメンバーは、ストレプトアビジンに加えて固形支持体38に付着している。
【0095】
いくつかの例では、高分子ヒドロゲル28、28’の遊離官能基(例えば、プライマー30、30’に付着されていないもの)は、いくつかの濃縮捕捉部位32、32’が高分子ヒドロゲル28、28’の表面にわたって形成されるように、化学的捕捉剤で官能化され得る。一例では、クリックケミストリーを使用して、アルキン-PEG-ビオチンリンカー又はアルキン-ビオチン遊離アジド基を、高分子ヒドロゲル28、28’上の遊離アジドに共有結合させることができる。別の例では、増幅プライマー30、30’に相補的なプライマーは、当該プライマーに付着した化学的捕捉剤(例えば、ビオチン又は別の結合ペアのメンバー)を有し得る。これらの相補的なプライマーは、いくつかの増幅プライマー30、30’にハイブリダイズされ、濃縮捕捉部位32、32’を形成し得る。
【0096】
別の例では、化学的捕捉剤は、マイクロコンタクト印刷、エアロゾル印刷などを使用して望ましい場所に堆積され、濃縮捕捉部位32、32’を形成し得る。更に別の例では、マスク(例えば、フォトレジスト)を使用して、化学的捕捉剤が堆積され、したがって濃縮捕捉部位32、32’が形成される、空間/場所を画定してもよい。次に、(例えば、リフトオフ、溶解、又は別の適切な技術を介して)化学的捕捉剤が堆積され得、マスクが除去される。この例では、濃縮捕捉部位32、32’は、化学的捕捉剤の単層又は薄層を含み得る。
【0097】
図1Cは、パターン化された対向する配列決定表面14、14’を含むフローセル10の断面図を示す。一例では、これらの表面14、14’のそれぞれは、基材16B、16B’上に調製され得、次に、基材16B、16B’は、フローセル10の例を形成するために(例えば、材料24を介して)互いに取り付けられ得る。
【0098】
図1Cに示す例では、フローセル10は、多層基材16B、16B’を含み、そのそれぞれは、支持体20、20’及び支持体20、20’上に配置されたパターン化された材料22、22’を含む。パターン化された材料22、22’は、隙間領域34、34’によって分離されたくぼみ42、42’を画定する。
【0099】
図1Cに示す例では、パターン化された材料22、22’は、それぞれ支持体20、20’上に配置される。くぼみ42、42’及び隙間領域34、34’を形成するために選択的に堆積、又は堆積及びパターン化され得る任意の材料が、パターン化された材料22、22’に使用され得ることを理解すべきである。
【0100】
一例として、無機酸化物は、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して支持体20、20’に選択的に適用され得る。適切な無機酸化物の例としては、酸化タンタル(例えば、Ta)、酸化アルミニウム(例えば、Al)、酸化ケイ素(例えば、SiO)、酸化ハフニウム(例えば、HfO)などが挙げられる。
【0101】
別の例として、樹脂は支持体20、20’に塗布されてからパターン化され得る。適切な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアゾール印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などを含む。適切なパターニング技術としては、フォトリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などが挙げられる。適切な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン樹脂(Hybrid PlasticsからPOSS(登録商標)の商品名で市販されている)ベースの樹脂、多面体オリゴマーシルセスキオキサンではないエポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、アモルファスフルオロポリマー樹脂(例えば、BellexからのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用されるとき、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」という用語は、シリカ(SiO)とシリコーン(RSiO)との間のハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成物を指す。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2を有する有機ケイ素化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例示的なR基としては、エポキシ、アジド(azide)/アジド(azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、及び/又はメタクリレート、あるいは、更に、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、及び/又はハロアルキル基を含む。本明細書に開示される樹脂組成物は、モノマーユニットとして1つ以上の異なるケージ又はコア構造を含み得る。
【0103】
図1Cに示すように、パターン化された材料22、22’は、それぞれそこに画定されたくぼみ42、42’、及び隣接するくぼみ42、42’を分離する隙間領域34、34’を含む。規則的、繰り返し、及び非規則的なパターンを含む、くぼみ42、42’の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、くぼみ42、42’は、密なパッキング及び改善された密度のために六角形グリッドに配置される。他のレイアウトは、例えば、直線的な(長方形)レイアウト、三角形のレイアウトなどを含み得る。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているくぼみ42、42’のx-y形式であり得る。他のいくつかの例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ42、42’及び/又は隙間領域34、34’の繰り返し配置であり得る。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ42、42’及び/又は隙間領域34、34’のランダムな配置であり得る。パターンは、ウェル、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、照合印、格子縞、対角線、矢印、正方形、及び/又は斜交平行を含み得る。
【0104】
くぼみ42、42’のレイアウト又はパターンは、画定された領域におけるくぼみ42、42’の密度(例えば、くぼみ42、42’の数)により特徴付けられ得る。例えば、くぼみ42、42’は、1mmあたり約200万の密度で存在し得る。例えば、1mmあたり約100、1mmあたり約1,000、1mmあたり約10万、1mmあたり約100万、1mmあたり約200万、1mmあたり約500万、1mmあたり約1000万、1mmあたり約5000万、又はそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。パターン化された材料22、22’のくぼみ42、42’の密度は、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間にあり得ることを更に理解すべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離されたくぼみ42、42’を有するものとして特徴付けられ得、中密度アレイは、約400nm~約1μmで分離されたくぼみ42、42’を有するものとして特徴付けられ得、低密度アレイは、約1μmを超えて分離されたくぼみ42、42’を有するものとして特徴付けられ得る。密度の例が提供されるが、任意の適切な密度を使用できることを理解すべきである。くぼみ42、42’の密度は、くぼみ42、42’の深さに部分的に依存し得る。場合によっては、くぼみ42、42’間の間隔が、本明細書に記載された例よりも更に大きいことが望ましい場合がある。
【0105】
くぼみ42、42’のレイアウト又はパターンはまた、又は代替的に、平均ピッチ、又はくぼみ42、42’の中心から隣接するくぼみ42、42’の中心までの間隔(中心間の間隔)、又は1つのくぼみ42、42’の右端から隣接するくぼみ42、42’の左端までの間隔(エッジ間の間隔)に関して特徴付けられ得る。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、おおよそ約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μmであってもよい。くぼみ42、42’の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得る。一例では、くぼみ42、42’は、約1.5μmのピッチ(中心間の間隔)を有する。平均ピッチ値の例が提供されるが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解すべきである。
【0106】
くぼみ42、42’のそれぞれのサイズは、その体積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。
【0107】
くぼみ42、42’のそれぞれは、フローセル10に導入される少なくともいくらかの流体を隔離する(confining)ことができる任意の体積を有し得る。最小又は最大の体積は、例えば、フローセル10の下流での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、解像度、ヌクレオチド、又は分析物の反応性に対応するように選択され得る。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、体積は、最大で約1×10μm、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.1μm、又はそれ以下であり得る。
【0108】
各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の体積と同様の基準に基づいて選択され得る。例えば、各くぼみ開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、面積は、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.1μm、最大で約1×10-2μm、又はそれ以下であり得る。各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0109】
くぼみ42、42’のそれぞれの深さは、高分子ヒドロゲル28、28’の一部を収容するのに十分な大きさであり得る。一例では、深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、深さは、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、又はそれ以下であり得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。それぞれのくぼみ42、42’の深さは、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0110】
いくつかの例では、くぼみ42、42’のそれぞれの直径又は長さ及び幅は、少なくとも約50nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、直径又は長さ及び幅は、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.5μm、最大で約0.1μm、又はそれ以下(例えば、約50nm)であり得る。いくつかの例では、直径、又は長さ及び幅のそれぞれは、約0.4μmである。各くぼみ42、42’の直径又は長さ及び幅は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0111】
この例では、配列決定表面14、14’の構成要素の少なくともいくつかは、くぼみ42、42’に導入され得る。配列決定表面14、14’の構成要素によって占有されていないくぼみ42、42’内の任意の空間は、濃縮チャネル18の一部であると見なされ得ることを理解すべきである。
【0112】
図1Cに示す例では、高分子ヒドロゲル28、28’は、くぼみ42、42’のそれぞれの中に配置される。高分子ヒドロゲル28、28’は、図1Bを参照して説明したように適用され得、その結果、高分子ヒドロゲル28、28’は、くぼみ42、42’内に存在し、周囲の隙間領域34、34’又は濃縮捕捉部位32、32’上には存在しない。
【0113】
図1Cに示す例では、プライマー30、30’は、各くぼみ42、42’内の高分子ヒドロゲル28、28’にグラフトされ得る。プライマー30、30’は、図1Bを参照して説明したように適用され得、したがって、周囲の隙間領域34、34’又は濃縮捕捉部位32、32’ではなく、高分子ヒドロゲル28、28’にグラフトされる。
【0114】
図1Cに示す例では、濃縮捕捉部位32、32’は、隙間領域34、34’の少なくともいくつかに適用される化学的捕捉剤である。例えば、化学的捕捉剤は、マイクロコンタクト印刷、エアロゾル印刷などを使用して隙間領域34、34’の少なくともいくつかに堆積され、濃縮捕捉部位32、32’を形成し得る。更に別の例では、マスク(例えば、フォトレジスト)を使用して、化学的捕捉剤が堆積され、したがって濃縮捕捉部位32、32’が形成される、空間/場所を画定してもよい。次に、(例えば、リフトオフ、溶解、又は別の適切な技術を介して)化学的捕捉剤が堆積され得、マスクが除去される。
【0115】
他の例では、濃縮捕捉部位32、32’は、高分子ヒドロゲル28、28’の遊離官能基(例えば、プライマー30、30’に付着されていないもの)に付着した化学的捕捉剤である。更に他の例では、濃縮捕捉部位32、32’は、増幅プライマー30、30’のいくつかにハイブリダイズしたプライマーに付着した化学的捕捉剤である。これらの例では、濃縮捕捉部位32、32’は、くぼみ42、42’に存在し、隙間領域34、34’には存在しない。
【0116】
本明細書に開示される化学的捕捉剤の任意の例は、図1Cに示す例において使用され得る。化学的捕捉剤は、標的捕捉ビーズ36の固形支持体38がどのように官能化されているかに部分的に依存して、ビオチン又は別の結合ペアのメンバーであることができる。
【0117】
図1B及び図1Cに示すように、基材16Aと16A’又は16Bと16B’は、配列決定表面12と12’又は14と14’が互いに向き合ってそれらの間に濃縮チャネル18が画定されるように互いに取り付けられる。
【0118】
基材16Aと16A’又は16Bと16B’は、隙間領域34、34’のいくつか又は全てで互いに結合され得る。基材16Aと16A’又は16Bと16B’との間に形成される結合は、化学的結合、又は機械的結合(例えば、留め具を使用するなど)であり得る。
【0119】
レーザー結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当技術分野で知られる他の方法などの任意の適切な技術を使用し、基材16A及び16A’又は16B及び16B’を共に結合し得る。一例では、スペーサー層(例えば、材料24)を使用し、基材16A及び16A’又は16B及び16B’を結合し得る。スペーサー層は、基材16Aと16A’又は16Bと16B’の少なくとも一部を共にシールする任意の材料24であり得る。いくつかの例では、スペーサー層は、結合を助ける放射線吸収材料であり得る。
【0120】
図示していないが、フローセル10が1つの配列決定表面12又は14を有するように、基材16A又は16A’の一方に蓋を結合し得ることを理解すべきである。
【0121】
フローセルの外部でのライブラリ調製
【0122】
図1A図1B、及び図1Cに示すフローセル10では、ライブラリ断片の調製は、フローセル10の外部で行われ得る。ライブラリ調製がフローセル10の外部で行われる場合、より長い遺伝物質部分を断片化し、所望のアダプターを断片の末端に組み込む、任意の好適なライブラリ調製技術を使用することができる。
【0123】
DNAライブラリ調製技術の一例は、固形支持体上でのタグメンテーションを含む。この例では、固形支持体は、標的捕捉ビーズ36に関して本明細書に記載した任意の例であってもよく、タグ付けされたライブラリ断片は、固形支持体の表面上に固定化される。
【0124】
このライブラリ調製例では、固形支持体は、固定化されたトランスポソーム複合体を有し、各トランスポソーム複合体は、第1のポリヌクレオチドに結合したトランスポザーゼを含み、第1のポリヌクレオチドは、(i)トランスポゾン末端配列を含む3’部分と、(ii)第1のタグ(アダプター)とを含む。DNA試料は、DNA試料がトランスポソーム複合体によって断片化され、かつ第1のポリヌクレオチドの3’トランスポゾン末端配列が断片の一方の鎖の5’末端に転移される条件下で、固形支持体に曝露される。これにより、少なくとも一方の鎖が第1のタグで5’タグを付けられた、二本鎖断片の固定化されたライブラリが生成される。
【0125】
図2は、このライブラリ調製方法を一般的に示す。この例では、固形支持体38’は、表面結合したトランスポソーム複合体44を含む。トランスポソーム複合体44は、オリゴヌクレオチド(固形支持体38’にグラフトされており、そのうちのいくつかがME配列を含有する)と、オリゴヌクレオチドに非共有結合したトランスポザーゼ酵素とを含む。これらの表面結合したトランスポソーム44の密度は、ME配列を含有するグラフトされたオリゴヌクレオチドの密度を変化させることによって、又は固形支持体38’に添加されるトランスポザーゼの量によって調節することができる。例えば、いくつかの実施形態では、トランスポソーム複合体44は、1mm当たり少なくとも10、10、10個の複合体、又は少なくとも10個の複合体の密度で固形支持体38’上に存在する。
【0126】
二本鎖DNA試料37が固形支持体38’に添加されると、トランスポソーム複合体44は、添加されたDNAをタグ付けし、したがって(例えば、挿入されたタグにより)両方の末端で固形支持体38’の表面に結合された二本鎖断片46を生成する。いくつかの例では、架橋断片46の長さは、表面上のトランスポソーム複合体44の密度を変えることによって変化させることができる。いくつかの例では、得られる架橋断片の長さは、100塩基対(bp)、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1,000bp、1,100bp、1,200bp、1,300bp、1,400bp、1,500bp、1,600bp、1,700bp、1,800bp、1,900bp、2,000bp、2,100bp、2,200bp、2,300bp、2,400bp、2,500bp、2,600bp、2,700bp、2,800bp、2,900bp、3,000bp、3,100bp、3,200bp、3,300bp、3,400bp、3,500bp、3,600bp、3,700bp、3,800bp、3,900bp、4,000bp、4,100bp、4,200bp、4,300bp、4,400bp、4,500bp、4,600bp、4,700bp、4,800bp、4,900bp、5,000bp、10,000bp、30,000bp、又は100,000bp未満である。他の例では、得られる架橋断片46の長さは、より長い。特定の実施形態では、得られる架橋断片46の長さは、上で例示したものから選択される上限及び下限によって規定される範囲内であり得る。
【0127】
二本鎖DNA試料37の適用は、生体試料を固形支持体38’に添加することを含み得る。生体試料は、DNAを含有し、タグメンテーションのために固体表面38’上に堆積させることができる任意の種類であり得る。例えば、試料は、精製DNAなどの様々な精製状態のDNAを含有することができる。しかしながら、試料は、完全に精製される必要はなく、例えば、タンパク質、他の核酸種、他の細胞成分、及び/又は任意の他の夾雑物が混入しているDNAを含有することができる。例えば、生体試料は、DNA、タンパク質、他の核酸種、他の細胞成分、及び/又はインビボで見られるものとほぼ同じ割合で存在する任意の他の夾雑物の混合物を含有し得る。成分は、無傷細胞に見られるものと同じ割合であってもよい。いくつかの例では、生体試料は、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7未満、又は0.60未満の、260/280比を有する。いくつかの実施形態では、生体試料は、少なくとも2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7未満、又は少なくとも0.60の、260/280比を有する。本明細書で提供される方法により、DNAを固形支持体38’に結合させることができるため、他の夾雑物は、表面結合タグメンテーションが生じた後に固形支持体を洗浄するだけで除去することができる。生体試料は、例えば、粗細胞溶解物又は全細胞を含み得る。例えば、この例のライブラリ調製方法において固形支持体38’に適用される粗細胞溶解物は、他の細胞成分から核酸を単離するために従来から使用されている分離工程のうちの1つ以上を行う必要はない。
【0128】
したがって、いくつかの例では、生体試料は、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、粘液、痰、尿、精液、脳脊髄液、気管支吸引物、糞便、及びこれらの浸軟組織、若しくはこれらの溶解物、又はDNAを含む任意の他の生体標本を含み得る。
【0129】
図3A及び図3Bは、一例によるタグメンテーション反応を示す。図3Aに示すように、トランスポソーム44は、Tn5のダイマーを含み、各モノマー50は、二本鎖分子、例えば、MEアダプターを結合している。MEアダプターの一方の鎖48は、固形支持体38’の表面に共有結合している。トランスポソーム44は、試料DNAに結合し、DNA骨格に2つのニックを生成して、断片46を作り出す。図3Aに示す例では、ニックは、いずれの鎖でも9塩基離れている。トランスポソーム44は、ニック間に7、8、9、10、11、又は12bpのギャップを生じさせ得ることを理解すべきである。各MEアダプターの2本の鎖のうちの一方(例えば、鎖48)は、各ニック位置で各断片46の5’末端に連結される。この鎖48は「転移鎖」と呼ばれ、その5’末端を介して固形支持体38’の表面にグラフトされる。得られたブリッジの特質を明確にするために、図3Aの表面タグメンテーションの結果として生じるブリッジを図3Bに再度示す。
【0130】
転移鎖48は、第1の配列決定プライマー配列(例えば、リード1配列決定プライマー配列)と、フローセルの配列決定表面12、14上の増幅プライマー(例えば、P5)のうちの1つの少なくとも一部に相補的である第1の配列(P5’)とを含み得る。したがって、タグメンテーションにより、各DNA断片46に1つのアダプター(又はタグ)が導入される。
【0131】
タグメンテーション後、トランスポザーゼ酵素を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)処理又は熱若しくはプロテイナーゼK消化によって除去することができる。トランスポザーゼ酵素の除去により、固形支持体38’に付着した断片46が残る。
【0132】
MEアダプターの非転移鎖48’は、タグメンテーション中にDNA断片46に組み込まれないアダプターであり、むしろ、その後に各断片46の他方の末端にライゲーションされ得る。タグメンテーション中、非転移鎖48’は、塩基対合により転移鎖48に付着され得る。いくつかの例では、非転移鎖48’は、第2の配列決定プライマー配列(例えば、リード2配列決定プライマー配列)と、フローセルの配列決定表面12、14上の別の増幅プライマー(P7)の少なくとも一部と同一である第2の配列(P7)とを含む、アダプター(又はタグ)である。増幅中、同一の配列により、フローセルの配列決定表面12、14上の増幅プライマー(例えば、P7)のうちの1つの少なくとも一部に相補的なコピーの形成が可能になる。図3Bに示すように、ライゲーションLは、転移鎖48が組み込まれている反対側の末端で、非転移鎖48’を各DNA断片46に組み込むために行われ得る。
【0133】
1つのライブラリ調製技術を詳細に説明してきたが、他のライブラリ調製技術も使用できることを理解すべきである。
【0134】
別のライブラリ調製例では、アダプター(例えば、第1の配列決定プライマー配列と、フローセルの配列決定表面12、14上の増幅プライマーのうちの1つの少なくとも一部(例えば、P5)に相補的な第1の配列(P5’)とを含む)のうちの1つが、固形支持体38’の表面に結合され得る。
【0135】
この例では、トランスポソーム複合体もまた、固形支持体38’に結合され得る。トランスポソーム複合体を固形支持体16上に載せる前に、部分的なYアダプターをトランスポザーゼ酵素(例えば、2つのTn5分子を含む)と混合して、トランスポソーム複合体の例を形成してもよい。部分的なYアダプターは、互いにハイブリダイズする2つのモザイク末端配列を含み得る。モザイク末端配列のうちの一方は、タグメンテーション中に断片化DNA鎖46に付着することができる遊離末端を有し、したがって、図3A及び図3Bの転移鎖48と同様である。モザイク末端配列の他方は、第2の配列決定プライマー配列(例えば、リード2配列決定プライマー配列)と、フローセルの配列決定表面12、14上の別の増幅プライマー(P7)の少なくとも一部と同じ配列を有する第2の配列(P7)とに付着され得るため、そのコピーは、増幅プライマー(P7)に相補的である(例えば、P7’)。この例では、モザイク末端配列の他方、第2の配列決定プライマー配列、及び第2の配列は、タグメンテーション中に断片化DNA鎖に付着しないアダプター配列を構成し、したがって、図3A及び図3Bの非転移鎖48’と同様である。
【0136】
トランスポソーム複合体を固形支持体38’上に載せることは、トランスポソーム複合体を固形支持体38’と混合すること、及び部分的なYアダプターのモザイク末端を固形支持体38’上のアダプター配列の3’末端にライゲーションするための好適な条件に混合物を曝露することを含み得る。
【0137】
この例では、次にタグメンテーションプロセスを行うことができる。タグメンテーション中、DNA試料37が固形支持体38’に適用され得る。試料がトランスポソーム複合体と接触すると、より長い核酸試料37がタグ付けされる。この例のタグメンテーション中、試料36は、断片64に断片化され、各断片64は、その5’末端において、部分的なYアダプターのモザイク末端の遊離末端でタグ付けされる。より長い核酸試料37の連続的なタグメンテーションにより、トランスポソーム複合体間で複数の架橋分子が得られる。架橋分子は、固形支持体38’の周囲を包み込む。トランスポザーゼ酵素は除去することができ、更なる伸長及びライゲーションを行って、付着していないアダプター配列の部分的なYアダプターに試料断片を確実に付着させる。
【0138】
更に別のライブラリ調製例では、ヌクレオチドライブラリは、付着したアダプターを有するチューブ内で生成され、次いでライブラリは、固形支持体38’上のプライマーにアダプターがハイブリダイズすることにより固形支持体38’に付着される。更に別のライブラリ調製例では、結合ペアの一方のメンバーを有するアダプター配列は、チューブ内のライブラリ断片に添加され得、次いで配列決定可能なライブラリ断片は、チューブ内の固形支持体38’に結合される。
【0139】
フローセルの外部で行われるライブラリ調製は、リボ核酸(RNA)試料も含むことができる。
【0140】
これらの実施例では、RNA試料は、最初に相補的デオキシリボ核酸(cDNA)試料に変換される。この変換は、逆転写酵素を利用する逆転写を使用して行われ得る。いくつかの例では、逆転写及び二本鎖合成のためのキットが使用される。これらの例では、ThermoFisherScientificの大容量cDNA逆転写キットが使用され得る。他の例では、逆転写及び鋳型スイッチ(第2鎖用)用のキットが使用される。これらの例では、New EnglandBiolabsの鋳型スイッチングRT酵素混合物が使用され得る。
【0141】
RNA試料から二本鎖DNAを生成したら、本明細書に記載のものを含む任意のDNAライブラリ調製方法を使用して、断片46にアダプター/タグを付加し、固形支持体38’に付着した配列決定可能な核酸断片を生成してもよい。
【0142】
フローセル上でのライブラリ調製
【0143】
図1A図1B、及び図1Cに示すフローセル10の例はまた、一体型ライブラリ調製及び分析システム52に含まれてもよい。このシステム52と、その中に含まれるフローセル10’とを図4に概略的に示す。フローセル10’は、濃縮チャネル18の上流に1つ以上の調製チャネル54、54’を含む。濃縮チャネル18は、配列決定表面12又は14及び濃縮捕捉部位32、32’を含むフローセル10に関して本明細書に開示した任意の例であってもよい。
【0144】
図4に示すように、システム52は、少なくとも濃縮チャネル18と選択的に流体連通するフローセル試薬システム56を含む。フローセル試薬システム56は、リザーバ58、60、62、流体チャネル(例えば、輸送チャネル64)、ポンプ、バルブ、及びフローセル10’の異なるチャネル18、54、54’に出入りする試薬の流れを制御し得る他の流体装置部品を含み得る。
【0145】
調製チャネル54、54’は、オンフローセルライブラリ調製に利用される。DNAを分析する場合、フローセル10’は、濃縮チャネル18の上流にあってそれと選択的に流体連通する、DNAライブラリ調製チャネル54を含み得る。RNAを分析する場合、フローセル10’は、RNAライブラリ調製チャネル54’及びDNAライブラリ調製チャネル54(互いに流体連通している)の両方を含み得る。この例では、DNAライブラリ調製チャネル54は、濃縮チャネル18の上流にあってそれと選択的に流体連通し、RNAライブラリ調製チャネル54’は、DNAライブラリ調製チャネル54の上流にあってそれと選択的に流体連通している。
【0146】
フローセル10’は、基材16の任意の例を含んでもよく、そこで、調製チャネル54、54’は第1の領域に画定され、濃縮チャネル18は第2の領域に画定される。基材16の異なる領域に画定されるため、チャネル54、54’、及び/又は18内の構造及び構成要素は異なっていてもよい。
【0147】
濃縮チャネル18と同様に、DNAライブラリ調製チャネル54は、2つの基材16の間、又は1つの基材16と蓋との間に画定され得る。DNAライブラリ調製チャネル54を画定する基材16の領域は、パターン化されていなくてもよく(基材16B、16B’と同様)、ライブラリ調製に用いられる固形支持体38’を一時的に付着する調製捕捉部位(図示せず)を含むように官能化され得る。
【0148】
一例では、DNAライブラリ調製チャネル54を画定する基材領域の表面は、ライブラリ調製に用いられる固形支持体38’上に位置する他方の結合ペアメンバーに結合することができる結合ペアメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)でコーティングされている。各結合ペアメンバーは、1つの調製捕捉部位である。別の例では、DNAライブラリ調製チャネル54を画定する基材領域の表面は、ビオチン化オリゴヌクレオチド(オリゴ)がハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドでコーティングされている。この例では、ビオチン化オリゴは、ライブラリ調製に用いられる固形支持体38’を一時的に付着することができる調製捕捉部位である。他の例では、調製捕捉部位は、固形支持体38’をDNAライブラリ調製チャネル54の表面に付着させることができる、任意の他の形態の化学結合が可能である。
【0149】
DNAライブラリ調製は、DNAライブラリ調製チャネル54内で行われてもよく、したがって、DNAライブラリ調製チャネル54は、増幅プライマー30、30’を含まない。
【0150】
リザーバ58は、DNAライブラリ調製チャネル54と選択的に流体連通するものとして示されている。このリザーバ58は、ライブラリ調製がチャネル54内で行われ得るように、DNA試料37及びライブラリ調製流体をDNAライブラリ調製チャネル54に選択的に送達するための異なるチャンバを含み得る。いくつかの例では、ライブラリ調製流体は、ライブラリ調製ビーズ(固形支持体38’と、図2及び図3Aを参照して説明したように固形支持体に付着したトランスポソーム44とを含む)を含み得る。DNA試料37及びライブラリ調製流体がDNAライブラリ調製チャネル54に導入されると、固形支持体38’は、調製捕捉部位に結合することができ、DNAライブラリ調製は、例えば、本明細書に記載のタグメンテーション法を使用して行われ得る。
【0151】
リザーバ58はまた、使用されるライブラリ調製方法に応じて、異なる流体をDNAライブラリ調製チャネル54に送達し得ることを理解すべきである。
【0152】
フローセル10’のいくつかの例は、DNAライブラリ調製チャネル54の上流にRNAライブラリ調製チャネル54’を含む。
【0153】
濃縮チャネル18及びDNAライブラリ調製チャネル54と同様に、RNAライブラリ調製チャネル54’は、2つの基材16の間、又は1つの基材16と蓋との間に画定され得る。RNAライブラリ調製チャネル54’を画定する基材16の領域は、パターン化されていなくてもよい(基材16B、16B’と同様)。RNAライブラリ調製チャネル54’は、RNA試料の初期調製に使用することができ、したがって、RNAライブラリ調製チャネル54’は、増幅プライマー30、30’を含まない。
【0154】
RNAライブラリ調製の初期プロセスは、RNAライブラリ調製チャネル54’内で行われ得る。リザーバ60は、RNAライブラリ調製チャネル54’と選択的に流体連通するものとして示されている。このリザーバ60は、RNAがチャネル54’内でcDNAに変換され得るように、RNA試料及びライブラリ調製流体をRNAライブラリ調製チャネル54’に選択的に送達するための異なるチャンバを含み得る。いくつかの例では、ライブラリ調製流体は、第2の鎖の合成のための逆転写酵素及び試薬を含み得る。他の例では、ライブラリ調製流体は、(第2の鎖の)鋳型スイッチのための逆転写酵素及び試薬を含み得る。
【0155】
次いで、RNAライブラリ調製チャネル54’で調製されたcDNAは、(例えば、輸送チャネルを介して)DNAライブラリ調製チャネル54に送達され得る。DNAライブラリ調製チャネル54内で、cDNAは、タグ付けされて、アダプター(タグ)を組み込み、DNAライブラリ調製チャネル54内の固形支持体38に付着した配列決定可能な核酸断片を生成することができる。あるいは、DNAライブラリ調製チャネル54内のcDNAにおいて、任意の他のいずれか好適なDNAライブラリ調製技術を実行してもよい。
【0156】
DNAライブラリ調製チャネル54は、濃縮チャネル18と選択的に流体連通している。一例では、輸送チャネル64は、調製チャネル54と濃縮チャネル18とを選択的かつ流体的に接続し、その結果、配列決定可能な核酸断片は、捕捉、増幅、及び配列決定のために濃縮チャネル18に送達され得る。
【0157】
濃縮方法
【0158】
例示的な濃縮方法は、ゲノムデオキシリボ核酸又は相補的デオキシリボ核酸からライブラリ断片を調製することと、ライブラリ断片を濃縮チャネル18に導入することと、濃縮チャネル18を所定の温度でインキュベートし、それによって標的領域を含むライブラリ断片の少なくともいくつかが捕捉プローブ40にハイブリダイズすることと、を含む。
【0159】
本明細書に開示される標的捕捉ビーズ36は、フローセル10、10’内の濃縮捕捉部位32、32’に予め付着されていてもよく、又は濃縮及び配列決定ワークフローの一部として(例えば、フローセル10、10’の使用者によって)濃縮チャネル18に導入されてもよい。
【0160】
配列決定ワークフローの一部として導入される場合、標的捕捉ビーズ36は、濃縮流体(例えば、標的捕捉ビーズ36を含む塩緩衝液)中で濃縮チャネル18に含まれてもよい。図4に示す例では、濃縮流体は、濃縮チャネル18と選択的に流体連通するリザーバ62内に収容され得る。
【0161】
濃縮流体は、リザーバ62から濃縮チャネル18に送達され得る。濃縮捕捉部位32、32’は、濃縮チャネル18内の配列決定表面12、12’又は14、14’で標的捕捉ビーズ36のいくつかを固定化する。標的捕捉ビーズ36の一部は、濃縮捕捉部位32、32’に付着しない場合があり、これらの標的捕捉ビーズ36は、更なる処理の前に濃縮チャネル18から除去されることを理解すべきである。濃縮チャネル18から濃縮流体及び任意の固定化されていない標的捕捉ビーズ36を除去する前に、所定の時間を経過させてもよい。一例では、所定の時間は、所望の数の固定化された標的捕捉ビーズ36を得るために、約5分間~約30分間の範囲であり得る。より長いインキュベーション時間も使用され得る。
【0162】
次に、この例の方法は、濃縮チャネル18から濃縮流体及び捕捉されていない標的捕捉ビーズ36を洗浄することを含む。洗浄は、洗浄流体を濃縮チャネル18に導入することを含み得る。流れにより、濃縮捕捉部位32、32’に固定化されていない任意の標的捕捉ビーズ36は、濃縮チャネル18の出口ポートを通って押し出され得る。標的捕捉ビーズ36と濃縮捕捉部位32、32’との間の固定化メカニズム(例えば、結合ペア、ハイブリダイゼーション、共有結合など)は、任意の固定化された標的捕捉ビーズ36が出口流の一部になることを防止し得る。
【0163】
オフ又はオンフローセルライブラリ調製技術のいずれを使用するかにかかわらず、配列決定可能な核酸断片は、濃縮チャネル18に導入される前に、固形支持体38’から放出され得る。
【0164】
オフフローセルライブラリ調製技術では、配列決定可能な核酸断片の固形支持体38’からの放出は、任意の好適な技術を使用して、フローセル10、10’の外部で開始され得る。一例では、切断剤を導入してもよく、刺激を加えて切断剤をトリガーし、配列決定可能な核酸断片を固形支持体38’から放出してもよい。他の例では、配列決定可能な核酸断片の放出は、配列決定可能な核酸断片にハイブリダイズしているプライマーの融解温度を超えて固形支持体38’を加熱することを含み得る。配列決定可能な核酸断片が二本鎖である場合(例えば、図2及び図3Bに示すように)、加熱を用いて断片を互いに解離させることができる。放出された配列決定可能な核酸断片は、固形支持体38’から分離してもよい。
【0165】
オンフローセルライブラリ調製技術では、配列決定可能な核酸断片の固形支持体38’からの放出は、任意の好適な技術(例えば、切断剤及び刺激、加熱など)を使用して、DNAライブラリ調製チャネル54内で開始され得る。固形支持体38’は、DNAライブラリ調製チャネル54内の調製捕捉部位に付着したままであってもよく、したがって、放出された配列決定可能な核酸断片は、DNAライブラリ調製チャネル54から濃縮チャネル18に輸送され得る。
【0166】
濃縮チャネル18に導入される前に、一本鎖の配列決定可能な核酸断片は、各末端でアダプターに付着したブロッカーを有していてもよい。ブロッカーは、アダプターとプライマーとのハイブリダイゼーションを低減するように選択され得る。したがって、ブロッカーは、配列決定可能な核酸断片がフローセルプライマー30、30’にハイブリダイズするのを少なくとも低減し得る。一例では、ブロッカーは、Integrated DNA Technologiesから入手可能なXGEN(登録商標)Universal Blockersである。
【0167】
図5は、濃縮捕捉部位32に固定化された標的捕捉ビーズ36を有する濃縮チャネル18への、末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66、66’の導入を概略的に示す。一部の末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’は、標的ライブラリ断片を含むが、他の末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66は、非標的ライブラリ断片(例えば、特定の分析の対象とならないDNA試料の断片)を含む。捕捉プローブ40は、標的ライブラリ断片の末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’に相補的な配列を有するため、末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’のうちの少なくとも一部は、それぞれ捕捉プローブ40にハイブリダイズする。対照的に、他の末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66は、それらの非標的ライブラリ断片の配列が捕捉プローブ40に相補的でないため、捕捉プローブ40にハイブリダイズしないであろう。更に、ブロッカーは、末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66、66’がフローセルプライマー30にハイブリダイズするのを防止し得る。
【0168】
末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66、66’は、濃縮チャネル18内で、標的ライブラリ断片と捕捉プローブ40との間にハイブリダイゼーションが生じるような時間及び温度でインキュベートされ得る。インキュベーション時間は、約5分間~約2時間の範囲であり得る。一例では、インキュベーション時間は約1.5時間である。インキュベーション温度は、約50℃~約55℃の範囲であり得る。一例では、インキュベーション温度は約50℃である。
【0169】
いくつかの例では、配列決定可能な核酸断片66、66’と共に、クラウディング試薬が導入され得る。例示的なクラウディング試薬としては、硫酸デキストラン及びポリエチレングリコールが挙げられる。これらのクラウディング試薬は、配列決定可能な核酸断片66、66’を標的捕捉ビーズ36に密集させるのに役立ち得る。
【0170】
他の例では、配列決定可能な核酸断片66、66’のインキュベーション中に、濃縮チャネル18に電場を印加してもよい。電場は、フローセル10、10’に組み込まれた電極を使用して、又は外部電極を使用して印加され得る。電場は、配列決定可能な核酸断片66、66’を標的捕捉ビーズ36に移動させるのに役立ち得る。
【0171】
更に他の例では、方法は、インキュベーション中に、配列決定可能な核酸断片66、66’を含有する流体の移動を誘導することを含み得る。一例では、濃縮チャネル18は、流体の移動を容易にすることができるブラシ、ピラー、又は他の表面上の三次元構造を含み得る。
【0172】
更に別の例では、電気泳動を使用して、配列決定可能な核酸断片66、66’を濃縮チャネル18内で前濃縮してもよい。一例では、等速電気泳動(ITP)を使用して、ハイブリダイゼーションを加速させてもよい。ITPは、配列決定可能な核酸断片66、66’を狭帯域幅、例えば、ITPの濃度よりも1000倍高い濃度に濃縮するために使用され得る。これは、ハイブリダイゼーション動態を著しく促進し、したがってハイブリダイゼーション時間を(例えば、約1.5時間から約15分に)著しく促進するであろう。
【0173】
配列決定可能な核酸断片66’のハイブリダイゼーション効率を高めるために、他の既知の方法(例えば、緩衝液条件の調整、高い表面負電荷状態など)も使用することができる。
【0174】
次に、方法の任意の例は、末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66を濃縮チャネル18から洗浄することを含み得る。洗浄は、洗浄流体を濃縮チャネル18に導入することを含み得る。流れにより、捕捉プローブ40にハイブリダイズしていない任意の断片66又は66及び66’は、濃縮チャネル18の出口ポートを通って押し出され得る。末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’と標的捕捉ビーズ36の捕捉プローブ40との間の固定化メカニズム(例えば、ハイブリダイゼーション)は、固定化されている末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’が出口流の一部になることを防止し得る。
【0175】
本明細書に開示される濃縮方法全体を通して、非標的ライブラリ断片を含む断片66の結合を最小限に抑えるために、i)捕捉プローブ40と標的ライブラリ断片とのハイブリダイゼーション効率、及びii)洗浄プロセスを高めるように、流量及び/又は温度をプログラムし得ることを理解すべきである。
【0176】
ライブラリ断片の放出及び配列決定
【0177】
固定化されている末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’は、次に、捕捉プローブ40から変性され得る。変性は、播種試薬(例えば、塩緩衝液)中で、好適な変性温度で達成され得る。変性温度は、利用される播種試薬に応じて、約70℃~約92℃の範囲であり得る。一例では、変性温度は約92℃である。変性温度は、ブロッカーの除去に必要な温度より高くてもよい。したがって、変性により、ブロッカーを除去することができ、追加の除去プロセスは使用されないであろう。更に、末端ブロックされた配列決定可能な核酸断片66’は、濃縮チャネル18内で放出されるため、放出された断片66’の損失は最小限である。したがって、後濃縮PCRは使用されない。
【0178】
次いで、溶出した断片66’(そのそれぞれが標的ライブラリ断片を含む)は、配列決定表面12、12’又は14、14’にわたって播種される。播種は、断片66’のアダプター/タグの配列とプライマー30、30’の相補的配列との間のハイブリダイゼーションにより達成される。播種は、断片66’及びプライマー30、30’に適したハイブリダイゼーション温度で実行され得る。
【0179】
配列決定可能な核酸断片66’がフローセル10内で播種する場所は、プライマー30、30’がどのように付着しているかに部分的に依存する。パターン化されていない配列決定表面12、12’を有するフローセル10の例では、放出された配列決定可能な核酸断片66’は、凹状領域26、26’内の高分子ヒドロゲル28、28’にわたって播種するであろう。パターン化された配列決定表面14、14’を有するフローセル10の例では、放出された配列決定可能な核酸断片66’は、各くぼみ42、42’内の高分子ヒドロゲル28、28’にわたって播種するであろう。
【0180】
次いで、標的捕捉ビーズ36の固形支持体38を、濃縮チャネル18から除去することができる。固形支持体38の除去は、標的捕捉ビーズ36を濃縮捕捉部位32、32’に付着するために使用されたメカニズムに応じた任意の適切な技術を含み得る。例として、変性、結合開裂などが使用され得る。
【0181】
次いで、播種された配列決定可能な核酸断片66’は、クラスター生成を使用して増幅され得る。
【0182】
クラスター生成の一例では、配列決定可能な核酸断片66’は、高忠実度DNAポリメラーゼを使用する3’伸長によって、ハイブリダイズしたプライマー30、30’からコピーされる。元の配列決定可能な核酸断片66’は変性され、配列決定表面12、12’又は14、14’に固定化されたコピーが残る。コピーは、標的ライブラリ断片の配列を含む。固定化されたコピーを増幅するために、等温ブリッジ増幅又は他の何らかの形態の増幅が使用され得る。例えば、コピーされた鋳型はループオーバーして隣接する相補的なプライマー30、30’にハイブリダイズし、ポリメラーゼはコピーされた鋳型をコピーして二本鎖ブリッジ構造を形成し、当該構造は変性して2本の一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして隣接する相補的なプライマー30、30’にハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、密集したクローンクラスターを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスターが変性される。一例では、逆方向鎖は、特異的な塩基切断によって除去され、順方向鋳型ポリヌクレオチド鎖(標的ライブラリ断片の配列を有する)が残る。クラスター化により、配列決定表面12、12’又は14、14’に沿っていくつかの鋳型ポリヌクレオチド鎖が形成される。このクラスター化の例は、等温ブリッジ増幅であり、実行できる増幅の一例である。排除増幅(Examp)ワークフロー(Illumina Inc.)などの他の増幅技術が使用され得ることを理解すべきである。
【0183】
鋳型ポリヌクレオチド鎖上の相補的な配列にハイブリダイズする配列決定プライマーを導入してもよい。この配列決定プライマーは、鋳型ポリヌクレオチド鎖を配列決定可能な状態にする。鋳型及び任意のフローセル結合プライマー30、30’の3’末端(コピーに付着されていない)は、配列決定反応への干渉を防止するために、特に、望ましくないプライミングを防止するために、ブロックされ得る。
【0184】
配列決定を開始するために、組み込み(incorporation)混合物が濃縮チャネル18に加えられ得る。一例では、組み込み混合物は、液体キャリア、ポリメラーゼ、及び蛍光標識したヌクレオチドを含む。蛍光標識したヌクレオチドは、3’OHブロッキング基を含み得る。組み込み混合物が濃縮チャネル18に導入されると、流体はチャネル18に入り、いくつかの例では、くぼみ42、42’(鋳型ポリヌクレオチド鎖が存在する)に入る。
【0185】
蛍光標識したヌクレオチドが鋳型に依存する方法で配列決定プライマーに追加され(それにより、配列決定プライマーを伸長し)、配列決定プライマーに追加されたヌクレオチドの順序及びタイプの検出が、鋳型の配列決定に使用され得る。より具体的には、ヌクレオチドの1つは、それぞれのポリメラーゼにより、配列決定プライマーを伸長し鋳型ポリヌクレオチド鎖に相補的である新生鎖に組み込まれる。言い換えれば、濃縮チャネル18にわたる鋳型ポリヌクレオチド鎖の少なくともいくつかにおいて、それぞれのポリメラーゼは、組み込み混合物中のヌクレオチドの1つによってハイブリダイズした配列決定プライマーを伸長する。
【0186】
ヌクレオチドの組み込みは、画像化イベントを通じて検出され得る。画像化イベント中に、照明システム(図示せず)が、それぞれの配列決定表面12、12’又は14、14’に励起光を提供し得る。
【0187】
いくつかの例では、ヌクレオチドは、ヌクレオチドが配列決定プライマーに加えられると、更なるプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性(例えば、3’OHブロッキング基)を更に含み得る。例えば、可逆的末端部分を有するヌクレオチド類似体が配列決定プライマーに加えられ、その結果、デブロッキング剤が送達されて当該部分を除去するまで、その後の伸長は起こり得ない。したがって、可逆的終端を使用する例の場合、検出が行われた後、デブロッキング試薬が濃縮チャネル18に送達され得る。
【0188】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次に、SBSサイクルをn回繰り返し、配列決定プライマーをnヌクレオチドによって伸長し、それによって長さnの配列を検出することができる。
【0189】
いくつかの例では、順方向鎖が、配列決定され、除去され、次に、逆方向鎖が、本明細書に記載されるように構築され、配列決定されてもよい。
【0190】
SBSについて詳細に説明してきたが、本明細書に記載されるフローセル10、10’は、他の配列決定プロトコルを用いて、遺伝子型決定のために、又は他の化学的及び/若しくは生物学的用途において利用され得ることを理解すべきである。
【0191】
キット
【0192】
本明細書に開示されるいくつかの例は、キットである。キットを使用して、本明細書に開示されるオンフローセル標的濃縮を行うことができる。
【0193】
キットの一例は、ライブラリ調製ビーズを含むライブラリ調製流体であって、各ライブラリ調製ビーズが、第1の固形支持体38’と、第1の固形支持体38’に付着したトランスポソーム44とを含む、ライブラリ調製流体と;ゲノムデオキシリボ核酸配列を含む試料流体と;標的捕捉ビーズ36を含む濃縮流体であって、各標的捕捉ビーズ36が、第2の固形支持体38と、第2の固形支持体38に付着した捕捉プローブ40とを含み、捕捉プローブ40のそれぞれが、試料流体中のゲノムデオキシリボ核酸の標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む。
【0194】
この例示的なキットでは、第1の固形支持体38’及び第2の固形支持体38は、磁気応答性材料、ガラス、ポリマー、及び金属からなる群から個別に選択される。
【0195】
この例示的なキットでは、捕捉プローブ40は、結合ペアを介して第2の固形支持体38に付着され得る。本明細書に開示される任意の結合ペアを使用することができる。
【0196】
このキットのいくつかの例は、ブロッキング流体も含み、これは、デオキシリボ核酸配列をブロックすることを含む。ブロッキング流体は、配列決定可能な核酸断片66、66’がフローセル10、10’の濃縮チャネル18に導入される前に、それらをブロックするために使用され得る。
【0197】
キットの別の例は、RNA-cDNA変換サブキットと;標的捕捉ビーズ36を含む濃縮流体であって、各標的捕捉ビーズ36が、固形支持体38と、固形支持体38に付着した捕捉プローブ40とを含み、捕捉プローブ40のそれぞれが、RNA-cDNA変換サブキットを使用して生成されたcDNAの標的領域に相補的な一本鎖デオキシリボ核酸配列を含む、濃縮流体と、を含む。
【0198】
この例示的なキットはまた、ライブラリ調製ビーズを含むライブラリ調製流体であって、各ライブラリ調製ビーズが、第1の固形支持体38’と、第1の固形支持体38’に付着したトランスポソーム44とを含む、ライブラリ調製流体を含み得る。
【0199】
この例示的なキットでは、捕捉プローブ40は、結合ペアを介して固形支持体38に付着され得る。本明細書に開示される任意の結合ペアを使用することができる。
【0200】
本開示を更に説明するために、本明細書に例を示す。これらの例は、例示の目的で提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
非限定的な作業例
【0201】
実施例1
【0202】
この実施例では、比較濃縮方法及び例示的濃縮を行った。
【0203】
PhiXゲノムの標的領域を選択し、標的領域に相補的な配列を有する一本鎖捕捉プローブを調製した。標的領域はゲノム座標3194を含み、捕捉プローブのサイズは69ヌクレオチドであった。捕捉プローブを一方の末端でビオチン化した。
【0204】
NEXTERA(商標)PhiXライブラリ(Illumina Inc.から入手)を調製し、ブロッカー(Integrated DNA Technologiesから入手)をライブラリに添加した。ブロックされたライブラリの最終濃度は、約2pMであった。このライブラリを2つのチューブに分けた。
【0205】
比較濃縮方法では、ビオチン化捕捉プローブ(0.02μM/1.5μL/合計1.8E+10プローブ)を、一方のチューブ内でライブラリ断片と共に約1.5時間インキュベートして、標的領域を含むライブラリ断片とビオチン化捕捉プローブとの間でハイブリダイズさせた。次に、チューブ内容物をストレプトアビジンビーズ(M280、6E+06ビーズ)に曝露し、ハイブリダイズしたプローブ/断片が、捕捉プローブのビオチン標識を介してビーズに結合した。次いで、(捕捉されたライブラリ断片を有する)ビーズを、磁力を使用して非捕捉ライブラリ断片から分離した。次いで、(捕捉されたハイブリダイズしたプローブ/断片を有する)ビーズを、アルキンPEG-ビオチン及びP5/P7プライマーで官能化された非パターン化フローセルに投入した。(捕捉されたハイブリダイズしたプローブ/断片を有する)ビーズは、ビーズ上の遊離ストレプトアビジン部位を介してアルキンPEG-ビオチン部位に固定化された。ライブラリ断片を、ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中で、約92℃で約2分間ビーズから溶出させ、次いで、約5分間播種するために温度を約40℃に降下させた。
【0206】
例示的濃縮方法では、ビオチン化捕捉プローブ(0.02μM/1.5μL/合計1.8E+10プローブ)を、ストレプトアビジンビーズ(M280、6E+06ビーズ)と共に約1時間インキュベートした。ビオチン化捕捉プローブは、ビオチン標識を介してビーズに結合した。次いで、(捕捉されたビオチン化捕捉プローブを有する)ビーズを、アルキンPEG-ビオチン及びP5/P7プライマーで官能化された非パターン化フローセルに投入した。(捕捉されたビオチン化捕捉プローブを有する)ビーズは、ビーズ上の遊離ストレプトアビジン部位を介してアルキンPEG-ビオチン部位に固定化された。他方のチューブ内のライブラリ断片をフローセルに投入し、約1.5時間インキュベートして、標的領域を含むライブラリ断片とビーズ表面上のビオチン化捕捉プローブとの間でハイブリダイズさせた。洗浄プロセスを行って、結合していないライブラリ断片を除去した。結合したライブラリ断片を、ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中で、約92℃で約2分間ビーズから溶出させ、次いで、約5分間播種するために温度を約40℃に降下させた。
【0207】
比較方法及び例示的方法の両方において、フローセルを洗浄してビーズを除去した。
【0208】
比較方法及び例示的方法の両方において、等温増幅を使用してクラスター化を行い、次いで配列決定を行った。比較方法及び例示的方法の両方とも、PhiXゲノムの標的領域から非常に多くのリードが得られた(ライブラリのサイズによって定義されるように、+/-500bpウィンドウ内で95%リード)。
【0209】
図6は、比較濃縮方法を使用した場合のフローセル表面、及び例示的濃縮方法を使用した場合のフローセル表面における、クラスター化した標的ライブラリ断片の相対的被覆率のプロットを示す。相対的被覆率のプロットは、ゲノム座標に対する遺伝子座での相対的リード深さ(%、Y軸)である。相対的被覆率のプロットは、比較方法及び例示的方法の両方において、捕捉プローブが標的領域を含むライブラリ断片を効果的にハイブリダイズすることを示す。例示的方法は、(比較方法と比べて)ワークフローを簡素化し、標的濃縮も達成する。
【0210】
実施例2
【0211】
この例では、標的領域は、TRUSIGHT(商標)Tumor 170パネル(Illumina Inc.)から得た。標的領域に相補的な配列を有する一本鎖捕捉プローブを調製した。捕捉プローブを一方の末端でビオチン化した。
【0212】
ビオチン化捕捉プローブを、ストレプトアビジンビーズ(M280)と共に約1時間インキュベートして、ビーズ1個あたり約3.13E+05の捕捉プローブのプローブ密度を達成した。ビオチン化捕捉プローブは、ビオチン標識を介してビーズに結合した。次いで、(捕捉されたビオチン化捕捉プローブを有する)ビーズを、アルキンPEG-ビオチン及びP5/P7プライマーで官能化された非パターン化フローセルに投入した。(捕捉されたビオチン化捕捉プローブを有する)ビーズは、ビーズ上の遊離ストレプトアビジン部位を介してアルキンPEG-ビオチン部位に固定化された。
【0213】
NEXTERA(商標)Flexライブラリ調製キット(Illumina Inc.)を使用して、Human-NA 12878試料(Coriell Life Sciencesから入手)を用いてライブラリを調製し、ブロッカー(Integrated DNA Technologiesから入手)をライブラリに添加した。ライブラリ断片をフローセルに投入し、約50℃で約2時間インキュベートして、標的領域を含むライブラリ断片と固定化ビーズの表面上のビオチン化捕捉プローブとの間でハイブリダイズさせた。
【0214】
洗浄プロセスを行って、結合していないライブラリ断片を除去した。結合したライブラリ断片を、ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中で、約92℃で約2分間ビーズから溶出させ、次いで、約5分間播種するために温度を約40℃に降下させた。
【0215】
フローセルを洗浄してビーズを除去し、等温増幅を使用してクラスター化を行った。次いで、配列決定を行い、配列決定リードを得た。標的クラスター数は、リード数を2で割ることによって決定した。濃縮係数は、標的領域に整列した合計リードの割合を決定することによって決定した。これらの結果を、表1において1回のライブラリ送達の試料で示す。
【0216】
この方法を繰り返したが、ただし、ライブラリ断片は、ロータリーバルブを使用して2回往復してフローセルに投入し、各往復において約50℃で約2時間インキュベートして、標的領域を含むライブラリ断片と固定化ビーズの表面上のビオチン化捕捉プローブとの間でハイブリダイズさせた。各往復の送達とハイブリダイゼーションとの間に、約50℃で洗浄を行った。
【0217】
ライブラリ断片を、ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中で、92℃で約2分間ビーズから溶出させ、次いで、約5分間播種するために温度を約40℃に降下させた。
【0218】
フローセルを洗浄してビーズを除去し、等温増幅を使用してクラスター化を行った。次いで、配列決定を行い、配列決定リードを得た。標的クラスター数及び濃縮係数を決定した。これらの結果を、表1において複数回のライブラリ送達の試料で示す。
【表1】
【0219】
表1に示すように、両方の方法で標的領域から望ましいクラスター数が得られたが、複数回の送達方法は濃縮因子を増加させた。
【0220】
実施例3
【0221】
この例では、標的領域は、TRUSIGHT(商標)Tumor 170パネル(Illumina Inc.)から得た。標的領域に相補的な配列を有する一本鎖捕捉プローブを調製した。捕捉プローブを一方の末端でビオチン化した。
【0222】
ビオチン化捕捉プローブを、ストレプトアビジンビーズ(M280)と共に約1時間それぞれインキュベートし、3つの異なる試料で異なるプローブ密度を達成した-試料1=ビーズ1個あたり約5.78E+04の捕捉プローブ、試料2=ビーズ1個あたり約2.98E+05の捕捉プローブ、及び試料3=ビーズ1個あたり約1.16E+06の捕捉プローブ。各試料について、ビオチン化捕捉プローブは、ビオチン標識を介してビーズに結合した。次いで、(捕捉されたビオチン化捕捉プローブを有する)ビーズ試料を、アルキンPEG-ビオチン及びP5/P7プライマーで官能化された3つの異なる非パターン化フローセルにそれぞれ投入した。各試料について、(捕捉されたビオチン化捕捉プローブを有する)ビーズは、ビーズ上の遊離ストレプトアビジン部位を介してアルキンPEG-ビオチン部位に固定化された。
【0223】
NEXTERA(商標)Flexライブラリ調製キット(Illumina Inc.)を使用して、Human-NA 12878試料(Coriell Life Sciencesから入手)を用いてライブラリを調製し、ブロッカー(Integrated DNA Technologiesから入手)をライブラリに添加した。ライブラリ断片を異なるフローセルに投入し、約50℃で約2時間インキュベートして、標的領域を含むライブラリ断片と固定化ビーズの表面上のビオチン化捕捉プローブとの間でハイブリダイズさせた。
【0224】
洗浄プロセスを行って、結合していないライブラリ断片を除去した。結合したライブラリ断片を、ドデシル硫酸ナトリウムを含む生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中で、約92℃で約2分間ビーズから溶出させ、次いで、約5分間播種するために温度を約40℃に降下させた。
【0225】
フローセルを洗浄してビーズを除去し、等温増幅を使用してクラスター化を行った。次いで、配列決定を行い、配列決定リードを得た。標的クラスター数は、リード数を2で割ることによって決定した。
【0226】
各試料のクラスター数を図7に示す。図示したように、ビーズ上のプローブ密度が増加すると、標的領域を有するライブラリ断片がより多く濃縮された。
【0227】
追記事項
【0228】
更に、本明細書で提供される範囲は、明示的に列挙されているかのように、表示範囲及び表示範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解すべきである。例えば、約2mm~約300mmによって表される範囲は、約2mm~約300mmの明示的に記載された限界だけでなく、約15mm、22.5mm、245mmなどの個々の値、及び約20mm~約225mmなどの部分範囲も含むと解釈するべきである。
【0229】
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組み合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解すべきである。
【0230】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解すべきである。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
【符号の説明】
【0231】
10 フローセル
12、12’、14、14’ フローセルの配列決定表面
16、16A、16A’、16B、16B’ 基材
18 濃縮チャネル
20、20’ 支持体
22、22’ 樹脂
24 材料
26、26’ 凹状領域
28、28’ 高分子ヒドロゲル
30、30’ プライマー
32、32’ 濃縮捕捉部位
34、34’ 隙間領域
36 標的捕捉ビーズ
37 二本鎖DNA試料
38 固形支持体
40 捕捉プローブ
44 トランスポソーム複合体
46 架橋断片
48 転移鎖
48’ 非転移鎖
50 モノマー
52 ライブラリ調製及び分析システム
54、54’ 調製チャネル
56 フローセル試薬システム
58、60、62 リザーバ
64 輸送チャネル
66、66’ 核酸断片
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】