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特表2023-511505オリゴ糖及び/又は多糖からのフルクトースの生産
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】オリゴ糖及び/又は多糖からのフルクトースの生産
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20230313BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
C12P19/02 ZNA
C12N9/16 B
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022538439
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020087480
(87)【国際公開番号】W WO2021123436
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218550.2
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522247080
【氏名又は名称】カスカット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ピック
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050CC04
4B050CC08
4B050DD02
4B050KK07
4B050LL05
4B064AF02
4B064CA21
4B064CB01
4B064CC01
4B064DA10
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法に関し、本方法は、
a)水、リン酸塩、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む組成物に、少なくとも4種の酵素を添加する工程と、
b)続いて、前記少なくとも4種の酵素の存在下で、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに酵素的に変換する工程とを含み、
工程a)において、少なくとも1種の追加の糖が添加され、前記少なくとも1種の追加の糖は、20以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせを含む糖からなる群から選択され;
工程a)において、前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
工程a)の少なくとも1種の酵素はホスファターゼである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法であって、
a)水、リン酸塩、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む組成物に、少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素を添加する工程と、
b)続いて、前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素の存在下で、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに酵素的に変換する工程とを含み、
工程a)において、少なくとも1種の追加の糖が添加され、前記少なくとも1種の追加の糖は、20以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくは17以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせを含む糖からなる群から選択され;
工程a)において、前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び、
工程a)の少なくとも1種の酵素はホスファターゼである方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
工程a)において、前記少なくとも1種の追加の糖は、十四糖、十三糖、十二糖、十一糖、十糖、九糖、八糖、七糖、六糖、五糖、四糖、三糖、二糖、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、四糖、三糖、二糖、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、さらにより好ましくはマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、及びこれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
工程a)の前記組成物は、乾燥重量ベースで前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖の35%以下を含み、及び/又は、
工程a)の前記オリゴ糖及び/又は多糖は、グルコースベースのオリゴ糖及び/又は多糖から選択され、好ましくはデンプン及びその誘導体、ヘミセルロース及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも6種の酵素が前記組成物に添加され、及び/又は、
前記少なくとも1種の追加の糖は、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖と少なくとも部分的に同じグリコシド結合を有する方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
好ましくは工程b)において、糖リン酸が中間的に生成され、及び/又は、
工程b)において、前記酵素的変換はワンポット反応であり、及び/又は、
前記ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、及びより好ましくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む方法。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の方法であって、
工程a)において、少なくとも1種のトランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のホスホリラーゼ、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のイソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼが添加される方法。
【請求項5】
工程b)は室温(25℃)で少なくとも24時間実施される。前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の方法であって、
工程a)の組成物中に存在する糖の少なくとも50%は、24時間の酵素的変換後にフルクトースに変換され、及び/又は、
工程a)の組成物中に存在する糖の少なくとも70%は、48時間の酵素的変換後にフルクトースに変換される方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の方法であって、
工程b)の温度は、10~100℃、好ましくは20~90℃であり、及び/又は、
前記組成物のpHは、3~12、好ましくは4~10である方法。
【請求項8】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物であって、
- 水、
- リン酸塩、
- 少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素(ここで少なくとも1種の酵素はホスファターゼである)、
- 少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖、を含み、
前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
前記組成物は、少なくとも1種の追加の糖をさらに含み、前記少なくとも1種の追加の糖は、20以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくは17以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせを含む糖からなる群から選択される組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物であって、
前記ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、及びより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、又は
前記ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する組成物。
【請求項10】
- 乾燥重量ベースで少なくとも50%のフルクトース、
- 乾燥重量ベースで0.001~25%のグルコース、
- 乾燥重量ベースで0.01~22%のリン酸塩、及び
- 乾燥重量ベースで、0.001~2%の少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素を含む水性組成物であって、
前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
少なくとも1種の酵素はホスファターゼである水性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の水性組成物であって、
前記ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、及びより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、又は
前記ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する水性組成物。
【請求項12】
請求項1~7に記載の方法により得られる、請求項10又は11に記載の水性組成物。
【請求項13】
配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98.5%、及びさらにより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むホスファターゼ。
【請求項14】
配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する、請求項13に記載のホスファターゼ。
【請求項15】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖からフルクトースへの変換における、請求項13又は14に記載のホスファターゼの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物、及びフルクトースを含む水性組成物に関する。さらに本発明は、ホスファターゼ、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖の変換におけるホスファターゼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
D-フルクトースの現在の工業生産プロセスは、特に2段階のプロセスに基づいている。最初の工程では、多糖又はオリゴ糖、たとえばデンプンが、加水分解によって単糖に切断される。第2段階では、異性化が行われ、それによって約42%の収率(パーセントに対応する)でD-フルクトースが得られる。純粋なD-フルクトースを調製するためのその後処理は、費用のかかるクロマトグラフィー精製技術によって行われる。
【0003】
別の工業プロセスは、酵素インベルターゼを用いるスクロースの加水分解である。これにより、D-グルコースとD-フルクトースの等モル混合物が得られる。D-フルクトースを濃縮するには、これを費用のかかるクロマトグラフィー操作で再度精製する必要がある。
【0004】
工業プロセスには、溶液中に存在する糖類の最大50%を占めるD-フルクトースの溶液のみが生成されるため、重大な欠点がある。より高いD-フルクトース溶液を得るには、費用のかかるクロマトグラフィー精製を行うか、55%フルクトース含有量の高フルクトースコーンシロップ(HFCS55)などの高価な純粋なD-フルクトースを添加する必要がある。
【0005】
基質としてD-グルコースを使用して純粋なD-フルクトースを生産するための代替プロセスが知られており、EP0028136B1及びAT513928B1に詳細に記載されている。この場合、D-グルコースはピラノース-2-オキシダーゼで酸化されてD-グルコソンになり、次に還元されてD-フルクトースになる。還元は、化学的手段、すなわち均一又は不均一触媒作用によって、又は生体触媒を使用することによって実施することができる。
【0006】
このプロセスはまだ技術的に実現されていない。これは、酸化と還元を互いに別々に実施しなければならないという欠点があるため、追加のプロセス工程が必要になる。さらに、還元が化学的に行われる場合、高純度の基質が必要で、かつ高圧及び高温が必要となり、これは、望ましくない副産物の生成につながる可能性がある。還元が酵素的に行われる場合、使用される還元剤及び不安定な補酵素(例えばNADH)に非常に高い費用が発生する。
【0007】
D-フルクトースの製造のための既知のプロセスには、さまざまな欠点がある。基質を効率的に変換するには、部分的に高圧と高温が必要である。あるいは、基質に応じて最大50%の収率しか達成できないか、副産物を減少させるためにきれいな基質を使用する必要がある。さらに濃縮するには、クロマトグラフィー装置の再利用を確実にするために非常にクリーンなプロセス流が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高価な補因子の使用、又はさらなるクロマトグラフィー精製及び濃縮工程を必要とする好ましくない平衡などの上記の欠点を克服して、オリゴ糖及び/又は多糖をD-フルクトースに変換する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、基質に対して高収率でかつ副産物が無いか又は少ない、D-フルクトース生産を可能にする方法を提供することである。さらに、後処理が単純化され、有機補酵素の使用を不要にすべきである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記目的は、請求項1に記載の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法によって、請求項8に記載の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物によって、及び請求項10に記載のフルクトースを含む水性組成物によって解決される。さらに、前記目的は、請求項13に記載のホスファターゼによって、及び請求項15に記載の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖の変換における前記ホスファターゼの使用によって解決される。
【0011】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法に関し、本方法は、
a)水、リン酸塩、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む組成物に、少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素を添加する工程と、
b)続いて、前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素の存在下で、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに酵素的に変換する工程とを含み、
工程a)において、少なくとも1種の追加の糖が添加され、前記少なくとも1種の追加の糖は、20以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくは17以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせを含む糖からなる群から選択され;
工程a)において、前記少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
工程a)の少なくとも1種の酵素はホスファターゼである。
【0012】
さらに好適な実施態様は、従属請求項ならびに明細書に記載されている。
本発明においてフルクトースへの言及は、D-フルクトースへの言及として理解されるべきである。
本発明によるオリゴ糖は、少なくとも2つの単糖残基を含む糖であり、これらの単糖残基は同一でも異なっていてもよい。
【0013】
ホスファターゼは、分類EC3.1.3に該当する任意の酵素であると理解されるべきである。トランスフェラーゼは、分類EC2.4に該当する任意の酵素であると理解されるべきである。ホスホリラーゼは、分類EC2.4.1に該当する任意の酵素であると理解されるべきである。ムターゼは、分類EC5.4.2に該当する任意の酵素であると理解されるべきである。イソメラーゼは、分類EC5.3.1に該当する任意の酵素であると理解されるべきである。ヒドロラーゼは、分類EC3.2に該当する任意の酵素であると理解されるべきである。
【0014】
本発明による基質として、オリゴ糖及び多糖を使用することができる。改善された収率は、糖、及びおそらく糖にすでに存在するフルクトース単位の開裂によって調製することができる糖リン酸から得られる。
【0015】
驚くべきことに、D-フルクトースの製造方法が見つかり、これは、高圧や高温がなくても機能し、プロセス内の汚染物質の存在をよりよく許容する。触媒の選択は、中間体の糖リン酸を生成することにより、プロセス中で高収率のD-フルクトースを得ることが可能にする。その結果、現在使用されている工業生産方法よりも基質(糖類)に基づく比率を高くすることができ、後処理が不要になる。これにより、費用のかかるクリーニング操作が不要になる。糖は、オリゴ糖及び/又は多糖であり得る。
【0016】
好ましくは工程a)の組成物は、乾燥重量ベースで35%以下の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む。好ましくは組成物は、乾燥重量ベースで、0.5%~35%の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む。
【0017】
さらに好ましくはオリゴ糖及び/又は多糖は、グルコースベースのオリゴ糖及び/又は多糖、好ましくはデンプン及びその誘導体、ヘミセルロース及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
それぞれのオリゴ糖及び/又は多糖は、デンプン生産を介して、又はバイオマスの加水分解によって、例えばパルプ生産又はわらの加工において得ることができる。
【0019】
好ましくは工程a)において、少なくとも1種の追加の糖は、十四糖、十三糖、十二糖、十一糖、十糖、九糖、八糖、七糖、六糖、五糖、四糖、三糖、二糖、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、四糖、三糖、二糖、及びこれらの組み合わせ、さらにより好ましくはマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0020】
さらに好ましくは工程a)において、少なくとも1種の追加の糖はマルトデキストリンである。マルトデキストリンはD-グルコース単位からなる糖類であり、主にα-1,4-グリコシド結合で結合し、可変長の鎖で接続されている。通常マルトデキストリンは、3~17グルコース単位の長さの鎖の混合物で構成されている。マルトデキストリンはDE(ブドウ糖当量)によって分類され、DEは3~20である。DE値が高いほど、グルコース鎖は短くなる。
【0021】
さらに好ましくは、少なくとも1種の追加の糖は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖と少なくとも部分的に同じグリコシド結合を有する。
【0022】
好ましくはホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
好適な実施態様においてホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、より好ましくは少なくとも99%、及びさらにより好ましくは少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
好適な実施態様においてホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有するホスファターゼの群から選択される。
【0025】
さらに工程a)において、好ましくは少なくとも6種の酵素が組成物に添加される。
【0026】
好ましくは少なくとも4種の酵素、より好ましくは5種の酵素、さらにより好ましくは6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択される。
【0027】
好ましくは工程a)において、少なくとも1種のトランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼが添加され;及び/又は
好ましくは工程a)において、少なくとも1種のホスホリラーゼ、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され;及び/又は
好ましくは工程a)において、少なくとも1種のムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼが添加され;及び/又は
好ましくは工程a)において、少なくとも1種のイソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼが添加され;及び/又は
好ましくは工程a)において、少なくとも1種のヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼが添加される。
【0028】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法の好適な実施態様によれば、工程a)において少なくとも1種の追加の糖は、四糖、三糖、二糖、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、及びこれらの組み合わせから選択され;及び/又は工程a)の組成物は、乾燥重量ベースで35%以下の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含み、好ましくは組成物は、乾燥重量ベースで0.5%~35%の少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含み;及び/又は少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖は、グルコースベースのオリゴ糖及び/又は多糖、好ましくはデンプン及びその誘導体、ヘミセルロース及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され;及び/又は工程a)において、少なくとも6種の酵素が組成物に添加され;及び/又は少なくとも1種の追加の糖は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖と少なくとも部分的に同じグリコシド結合を有する。
【0029】
好ましくは工程b)において、糖リン酸が中間的に生成される。
さらに好ましくは工程b)において、酵素的変換はワンポット反応である。
工程b)の好適な実施態様によれば、糖リン酸は中間的に生成され、酵素的変換はワンポット反応である。
【0030】
本発明の方法は、いくつかの触媒工程により、オリゴ糖及び多糖からDフルクトースへの変換を可能にする。これにより、糖リン酸の形の中間体が生成され、最終的にD-フルクトースとリン酸に切断される。
【0031】
好ましくは工程a)で添加されるオリゴ糖及び/又は多糖は、複数のグルコース単位、より好ましくはD-グルコース単位を含む。さらにより好ましくは、工程a)で添加されるオリゴ糖及び/又は多糖は、複数のグルコース単位、より好ましくはD-グルコース単位からなる。
【0032】
1つの実施態様において本発明の方法は、反応シーケンスが適用される酵素プロセスであり、個々のD-グルコース分子をD-グルコース-1-リン酸の形に切断することを可能にする。続いて、これらの放出されたD-グルコース-1-リン酸分子は、さらなる糖リン酸中間体を介してD-フルクトース-6-リン酸に変換される。続いてD-フルクトース-6-リン酸は分割され、D-フルクトースとリン酸が得られる。
【0033】
この変換中の反応工程は、次の工程を含む:糖分子は酵素的にD-グルコース-1-リン酸に切断され、D-グルコース-1-リン酸は酵素的にD-グルコース-6-リン酸に変換され、D-グルコース-6-リン酸は酵素的にD-フルクトース-6-リン酸に変換され、そしてD-フルクトース-6-リン酸は酵素的に切断されてD-フルクトースとリン酸になる。
【0034】
リン酸塩は、少量の触媒量でのみ使用されて、例えばD-グルコース-1-リン酸、D-グルコース-6-リン酸、D-フルクトース-6-リン酸などの糖リン酸を中間的に形成する。最初の工程でリン酸塩は、D-グルコース単位含有混合物に添加され、最後の工程でリン酸塩が切断除去され、最初の工程で再び利用できるようになる。
【0035】
本発明のこの方法は、当技術分野で知られているようなD-フルクトースの生産の酵素的代替法を提供し、これは、残留中間体を分離及び精製する必要性を大幅に単純化する。従って本発明は、現在使用されている技術に比べて、糖からのD-フルクトースの生産における顕著な改善を表す。既存の方法とは対照的に、使用される生体触媒システムは、製品D-フルクトースの強化された濃縮を実現する。
【0036】
この方法は、基本的にオリゴ糖及び多糖の使用に適している。
【0037】
好ましくは、セロビオース、マルトース、又はデンプンから、D-フルクトースに富む加水分解物を生成することができる。この場合、最初の工程は、セロビオースホスホリラーゼ、マルトースホスホリラーゼ、又はデンプンホスホリラーゼを使用して実行され、その後いくつかの触媒工程が続く。この方法は、甜菜又はサトウキビから得ることができるスクロースの基質としての使用において特に有用である。この場合、最初の工程はスクロースホスホリラーゼを使用して実行される。この特定のケースでは、53%を超える収率(質量に基づく)をするD-フルクトース、又は1molのスクロースあたり1molを超えるD-フルクトースが得られる。
【0038】
本発明の方法は、様々な溶媒系で実施することができる。好ましくは、これは水性溶媒系で実施される。
【0039】
緩衝系によって水性システムを補うことも可能である。適切な緩衝液(システム)は既知であり、従来の緩衝液(システム)、例えば酢酸塩、リン酸カリウム、トリス-HCl、グリシルグリシン、及びグリシン緩衝液、又はこれらの混合物が含まれる。
【0040】
好ましくは、本発明の方法で使用される緩衝液は、pH3~12、好ましくはpH4~12、より好ましくはpH4~11を有する。生体触媒の最適活性のために、イオン、例えばMg2+が添加される。安定剤、グリセロールなどを使用すると、生体触媒をより長く使用できる場合がある。
【0041】
本発明の方法では、リン酸塩が必要である。プロセスにおいて十分量のリン酸塩を確保するために、リン酸、リン酸の塩、ポリリン酸塩、又はこれらの組み合わせの形の外部添加が必要である。
【0042】
好ましくは本発明の方法は、適切な温度、例えば使用する酵素によって異なる温度で実施される。適切な温度には、10~100℃、好ましくは10~90℃、より好ましくは20~90℃、さらにより好ましくは20~80℃が含まれる。
好ましくは工程b)の温度は、10~100℃、より好ましくは20~90℃、及びさらにより好ましくは20~80℃である。
さらに好ましくは組成物のpHは、3~12であり、及びより好ましくは4~10である。
【0043】
本発明の方法の利点は、中間体を単離する必要なしに、同じ反応バッチですべての触媒工程を実行することである。この方法は、バッチ式で又は連続的に操作することができる。この場合、関与するすべての酵素を同時に添加するか、酵素の一部のみを添加することができ、例えば酵素は、工程b)の間に追加することができ、時間的又は局所的な遅延を伴って、酵素の別の部分を後で追加することができる。
【0044】
酵素の第2の部分を加える前に、反応混合物中にすでに存在する酵素を、例えば物理的に(濾過又は固定化によって)除去するか、又は不活化することができる。後者は、例えば80℃までの10分間の短期間の温度上昇によって行うことができる。あるいは、反応溶液を反応混合物に通して、変換率を高め、収率を数倍上げることもできる。
【0045】
本発明の方法における糖のD-グルコース-1-リン酸への開裂は、酵素的、すなわち酵素触媒作用によるものであり、既知の方法に従って実施することができる。切断は、好ましくは、ホスホリラーゼを用いる触媒作用によって実施される。
【0046】
好ましくは工程a)の組成物中に存在する糖の少なくとも50%は、24時間の酵素的変換後にフルクトースに変換される。
また、好ましくは工程a)の組成物中に存在する糖の少なくとも70%は、48時間の酵素的変換後にフルクトースに変換される。
【0047】
本発明の方法は、高濃度のオリゴ糖及び/又は多糖、例えば膨潤したデンプンの取り扱いをさらに改善することを可能にする。例えば、35%の乾燥物質デンプンの開始濃度で本発明の方法を実行することが可能である。
好ましくは工程b)は、室温(25℃)で少なくとも24時間実施される。
【0048】
別の態様において、本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法に関し、この方法は、a)水、リン酸塩、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む組成物に少なくとも1種の酵素を添加する工程、及びb)続いて、少なくとも1種の酵素の存在下で、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに酵素的に変換する工程を含み、工程a)において少なくとも1種の追加の糖が添加され、少なくとも1種の追加の糖は、20以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくは17以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせを含む糖からなる群から選択される。
【0049】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、この方法にも当てはまる。
【0050】
好ましくは工程a)における少なくとも1種の酵素はホスファターゼである。
さらに、工程a)において、好ましくは少なくとも4種の酵素、より好ましくは少なくとも5種の酵素、さらにより好ましくは少なくとも6つの酵素が組成物に添加される。
【0051】
第2の態様において本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物に関し、本組成物は、
- 水、
- リン酸塩、
- 少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素(ここで少なくとも1種の酵素はホスファターゼである)、
- 少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含み、
ここで、少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
本組成物は、少なくとも1種の追加の糖をさらに含み、少なくとも1種の追加の糖は、20以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせ、好ましくは17以下の単糖残基及び/又はこれらの組み合わせを含む糖からなる群から選択される。
【0052】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法に関するすべての説明、特に前述の酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を変換するための組成物にも当てはまる。
【0053】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0054】
別の好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、より好ましくは少なくとも99%、及びさらにより好ましくは少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0055】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有するホスファターゼの群から選択される。
【0056】
好ましくは、少なくとも4種の酵素、より好ましくは5種の酵素、及びさらにより好ましくは6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択される。
【0057】
好適な実施態様によれば、組成物は、トランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼを含み;及び/又は
組成物は、さらにホスホリラーゼを含み、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され;及び/又は
組成物は、ムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼを含み;及び/又は
組成物は、イソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼを含み;及び/又は
組成物は、ヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼを含む。
【0058】
別の態様において本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物であって、水、リン酸塩、少なくとも5種の酵素(ここで少なくとも1種の酵素はホスファターゼである)を含む組成物に関し、ここで、ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0059】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素、及びオリゴ糖及び/又は多糖、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物に関するすべての説明は、該当する場合、この態様にも当てはまる。
【0060】
好ましくは、少なくとも5種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択される。
【0061】
第3の態様において、本発明は、
- 乾燥重量ベースで少なくとも50%のフルクトース、
- 乾燥重量ベースで0.001~25%のグルコース、好ましくは0.005~20%のグルコース、
- 乾燥重量ベースで0.01~22%のホスフェート、好ましくは0.05~20%のホスフェート、及び
- 乾燥重量ベースで、0.001~2%の少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素、好ましくは0.005~1%の少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素、を含む水性組成物に関し、
ここで、少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
ここで、少なくとも1種の酵素はホスファターゼである。
【0062】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、水性組成物にも当てはまる。
【0063】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0064】
別の好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、より好ましくは少なくとも99%、及びさらにより好ましくは少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0065】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有するホスファターゼの群から選択される。
【0066】
好ましくは、少なくとも4種の酵素、より好ましくは5種の酵素、及びさらにより好ましくは6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択される。
【0067】
好適な実施態様によれば、組成物は、トランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼを含み;及び/又は
組成物は、さらにホスホリラーゼを含み、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され;及び/又は
組成物は、ムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼを含み;及び/又は
組成物は、イソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼを含み;及び/又は
組成物は、ヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼを含む。
【0068】
第4の態様において、本発明は、
- 乾燥重量ベースで少なくとも50%のフルクトース
- 乾燥重量ベースで0.001~25%のグルコース、好ましくは0.005~20%のグルコース、
- 乾燥重量ベースで0.01~22%のホスフェート、好ましくは0.05~20%のホスフェート、及び
- 乾燥重量ベースで、0.001~2%の少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素、好ましくは0.005~1%の少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素、を含む水性組成物に関し、
ここで、少なくとも4種の酵素、好ましくは少なくとも5種の酵素は、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、及び
ここで、少なくとも1種の酵素はホスファターゼであり、
これは、上記の本発明の方法によって得られる。
【0069】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、本発明の方法によって得られる水性組成物にも当てはまる。
【0070】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0071】
別の好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、より好ましくは少なくとも99%、及びさらにより好ましくは少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0072】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有するホスファターゼの群から選択される。
【0073】
好ましくは、少なくとも4種の酵素、より好ましくは5種の酵素、及びさらにより好ましくは6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択される。
【0074】
好適な実施態様によれば、組成物は、トランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼを含み;及び/又は
組成物は、さらにホスホリラーゼを含み、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され;及び/又は
組成物は、ムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼを含み;及び/又は
組成物は、イソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼを含み;及び/又は
組成物は、ヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼを含む。
【0075】
別の態様において、本発明は、乾燥重量ベースで少なくとも50%のフルクトース、乾燥重量ベースで25%未満のグルコース、好ましくは20%未満のグルコース、乾燥重量ベースで22%未満のホスフェート、好ましくは20%未満のホスフェート、乾燥重量ベースで2%未満の少なくとも4種の酵素、好ましくは1%未満の少なくとも4種の酵素を含む水性組成物に関し、ここで、1種の酵素はホスファターゼである。
【0076】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、水性組成物にも当てはまる。
【0077】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0078】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有するホスファターゼの群から選択される。
【0079】
好適な実施態様によれば、組成物は、トランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼを含み、及び/又は組成物は、ホスホリラーゼをさらに含み、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され、及び/又は組成物は、ムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼを含み、及び/又は組成物は、イソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼを含み、及び/又は組成物は、ヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼを含む。
【0080】
別の態様において、本発明は、乾燥重量ベースで少なくとも50%のフルクトース、乾燥重量ベースで25%未満のグルコース、好ましくは20%未満のグルコース、乾燥重量ベースで22%未満のホスフェート酸塩、好ましくは20%未満のホスフェート、及び、乾燥重量ベースで2%未満の少なくとも4種の酵素、好ましくは1%未満の少なくとも4種の酵素を含む水性組成物に関し、ここで、1種の酵素は、上記の本発明の方法によって得られるホスファターゼである。
【0081】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、本発明の方法によって得られる水性組成物にも当てはまる。
【0082】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0083】
好適な実施態様によれば、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有するホスファターゼの群から選択される。
【0084】
好適な実施態様によれば、組成物は、トランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼを含み;及び/又は組成物はホスホリラーゼをさらに含み、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され;及び/又は組成物は、ムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼを含み;及び/又は組成物は、イソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼを含み;及び/又は組成物は、ヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼを含む。
【0085】
別の態様において、本発明は、上記の本発明の方法によって得られるフルクトースに関する。
【0086】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、本発明の方法によって得られるフルクトースにも当てはまる。
【0087】
第5の態様において、本発明は、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、より好ましくは少なくとも99%、及びさらにより好ましくは少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含むホスファターゼに関する。
【0088】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、ホスファターゼにも当てはまる。
【0089】
好ましくは、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する。
【0090】
これらのホスファターゼは、D-フルクトースのより高い収量を提供する。本発明のホスファターゼは、フルクトース-6-リン酸に関して改善された選択性を提供する。これらのより高い活性のために、適用される酵素の量を減少させることが可能である。従って、これらのホスファターゼは特に工業プロセスに適している。
【0091】
別の態様において、本発明は、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、及びさらにより好ましくは少なくとも98.5%同一であるアミノ酸配列を含むホスファターゼに関する。
【0092】
好ましくは、ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する。
【0093】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、ホスファターゼにも当てはまる。
【0094】
第6の態様において、本発明は、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する際の本発明のホスファターゼの使用に関する。
【0095】
前述の、少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法、特に酵素及びオリゴ糖及び/又は多糖に関するすべての説明は、該当する場合、本発明のホスファターゼの使用にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】デンプンから始まりフルクトースをもたらす本発明のプロセスの概略図。
図2図1に示されるプロセスの中間工程。無機リン酸(G)を使用してポリマーの末端グルコース残基と残りの部分(B-A)の間のα-1,4結合を切断して、グルコース-1-リン酸(C)を放出するグルカンホスホリラーゼ(3)。
図3図1に示されるプロセスの中間工程。グルコース-1-リン酸(C)は、ホスホグルコムターゼ(4)の作用によりグルコース-6-リン酸(D)に変換される。
図4図1に示されるプロセスの中間工程。グルコース-6-リン酸は、ホスホグルコイソメラーゼ(5)を使用してフルクトース-6-リン酸(E)に変換される。
図5図1に示されるプロセスの中間工程。フルクトース-6-リン酸は、ホスファターゼ(6)の作用により、フルクトース(F)とリン酸(G)に切断される。
図6図1に示されるプロセスの中間工程。デンプン(A-アミロース(B)とアミロペクチン(H)の混合物)に含まれるすべてのα-1,6結合は、プルラナーゼを使用して切断される。
図7図1に示されるプロセスの中間工程。α-グルカノトランスフェラーゼは、アクセプター炭水化物(B)の新しい位置への1,4-α-D-グルカン(B)のセグメントの移動を触媒し、新しいα-1,4結合を生成する。
図8】改良されたホスファターゼ、すなわちP46Tとマルトース(0.1mM)を使用して、48時間以内に天然デンプンをより速く変換するための最適化されたプロセスの進行状況を示す図。
図9】プルラナーゼ、α-グルカノトランスフェラーゼ、及びグルカンホスホリラーゼを使用する天然デンプンの分解、及び生成されたG1Pの検出のための、短いオリゴ糖の有益な影響を証明する実験設定の結果を示す図。
図10】プロセスで発生する3種の異なる糖-リン酸(G6P及びF6P)における触媒性能の改善について、野生型ホスファターゼと9つの変種(P46T、P46TE47Y、P46TE47YG50L、Y23HP46TE47Y、P46TE47YG50I、Y23HP46TE47YG50L、Y23HP46TE47YG50I、Y23SP46TE47YG50L、Y23SP46TE47YG50IL)の比較を示す図。
図11】プロセスで発生する3種の異なる糖-リン酸(G6P及びF6P)における触媒性能の改善について、野生型ホスファターゼと6つの変種(HTYL、Y47T、Y47F、V45M、V45Q、及びV45R)の比較を示す図。
図12】プロセスで発生する3種の異なる糖-リン酸(G6P及びF6P)における触媒性能の改善について、6つの変種(V45R、HTFL、HTLV45R、HTFLV45R、HTFLV45M、及びHTFLV45Q)の比較を示す図。
図13】スクロースからフルクトースへの変換における触媒性能の改善について、野生型ホスファターゼと2つの変種(TY及びHTYL)の比較を示す。
【0097】
以下において、図及び/又は表で使用されている略語と酵素について説明する。
1 プルラナーゼ
2 α-グルカノトランスフェラーゼ
3 グルカンホスホリラーゼ
4 ホスホグルコムターゼ
5 ホスホグルコイソメラーゼ
6 ホスファターゼ
A でんぷん
B アミロース
B-A アミロースから1グルコース単位を除いたもの
C グルコース-1-リン酸(G1P)
D グルコース-6-リン酸(G6P)
E フルクトース-6-リン酸(F6P)
F フルクトース
G リン酸塩
H アミロペクチン
WT 野生型;配列番号13
【0098】
T 46位でプロリンからスレオニンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(P46T);配列番号15;
TY 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの追加のアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(P46TE47Y);配列番号17;
TYL 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからロイシンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(P46TE47YG50L);配列番号19;
【0099】
HTY 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HP46TE47Y);配列番号23;
TYI 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからイソロイシンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(P46TE47YG50I);配列番号21;
HTYL 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HP46TE47YG50L);配列番号25;
【0100】
HTYI 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからイソロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HP46TE47YG50I);配列番号27;
STYL 46位でプロリンからスレオニンへの、47位でグルタミン酸からチロシンへの、50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからセリンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23SP46TE47YG50L);配列番号29;
STYI 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからイソロイシンへの、及び23位でチロシンからセリンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23SP46TE47YG50I);配列番号31;
【0101】
Y47T/HTTL 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からスレオニンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへのにアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HP46TE47TG50L);配列番号33;
Y47F/HTFL 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からフェニルアラニンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへのでアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HP46TE47FG50L);配列番号35;
V45M 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからメチオニンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45MP46TE47YG50L);配列番号37;
【0102】
V45Q 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからグルタミンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45QP46TE47YG50L);配列番号39;
V45R 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からチロシンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからアルギニンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45RP46TE47YG50L);配列番号41;
HTTLV45R 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からスレオニンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからアルギニンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45RP46TE47TG50L);配列番号43;
【0103】
HTFLV45R 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からフェニルアラニンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからアルギニンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45RP46TE47FG50L);配列番号45;
HTFLV45M 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からフェニルアラニンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからメチオニンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45MP46TE47FG50L);配列番号47;
HTFLV45Q 46位でプロリンからスレオニンへの、及び47位でグルタミン酸からフェニルアラニンへの、及び50位でグリシンからロイシンへの、及び23位でチロシンからヒスチジンへの、及び45位でバリンからグルタミンへのアミノ酸交換を有するホスファターゼ変種(Y23HV45QP46TE47FG50L);配列番号49。
【0104】
図1は本発明のプロセスの概略図を示し、これは、デンプン(A-アミロースとアミロペクチンの混合物)がプルラナーゼ(1)とα-グルカノトランスフェラーゼ(2)を使用してアミロース(B)に変換されることから始まり、次の工程では、無機リン酸(G)を使用してホスホリラーゼ(グルカンホスホリラーゼ(3))によって触媒されて、ポリマーの末端グルコース残基と残りの部分の間のα-1,4結合が切断されてグルコース-1-リン酸(C)が放出され、Cはホスホグルコムターゼ(4)の作用によりグルコース-6-リン酸(D)に変換され、グルコース-6-リン酸はホスホグルコイソメラーゼ(5)を使用してフルクトース-6-リン酸(E)に変換され、最後の工程でフルクトース-6-リン酸はホスファターゼ(6)の作用によりフルクコース(F)とリン酸(G)に切断される。
【0105】
図2は、図1に示す全般的なプロセスの中間プロセス工程を示す。グルカンホスホリラーゼ(3)と無機リン酸(G)を使用して、末端のグルコース残基とポリマーの残り(B-A)の間のα-1,4結合が切断され、グルコース-1-リン酸(C)が放出される。
【0106】
図3図7は、図1に示されるプロセスのさらなる中間工程を示す。
【0107】
図8~13は、以下の実験セクションでさらに議論される実験データの図を提示する。
【0108】
本発明は、特定の好適な実施態様を参照して説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、同等物はその要素で置き換えることができることは、当業者によって理解されるであろう。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。従って、本発明は特定の実施態様に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施態様を含むことが意図されている。
【0109】
実験セクション
【0110】
1.材料
すべての化学物質は分析グレード以上の品質であり、Sigma-Aldrich、Carbosynth、又はVWRから購入し、さらに精製することなく使用した。
Glucidex 12及びGlucidex 19は、Roquette Freres(フランス)から入手したマルトデキストリン化合物である。
【0111】
グルコースポリマーの分子量は、式(180×n-18×(n-1))を使用して計算でき,nはグルコースポリマーのDP(重合度)である。DE(デキストロース当量)は100×(180/分子量(グルコースポリマー))として計算できる。DPは、式DP=111/DEを使用して計算できる(Balto, Amy S., et al. "On the use of differential solubility in aqueous ethanol solutions to narrow the DP range of food-grade starch hydrolysis products." Food chemistry 197 (2016): 872-880)。DEが11~14のGlucidex 12は、平均DPが8~10であると想定される。DEが18~20のGlucidex 19は、平均DPが5~6であると想定される。しかし、これらの調製物は酵素処理によって得られるため、より小さナ及びより大きなマルトデキストリンも含まれる。
【0112】
この試験では次の菌株を使用した:大腸菌(E. coli)XL1 Blue、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)、すべての構築物は37℃で自己誘導培地を使用して正常に発現された。
【0113】
2.方法
分析
図1に示す完全なプロセスの分析は、オートサンプラー(WPS 3000TRS)、カラムコンパートメント(TCC3000RS)、及び光散乱検出器を備えたHPLC DionexUltimate3000システムを使用して実行された。7℃のYMC Triart Diol Hilicカラム(100×2mm、1.9μm、12nm)を使用して、移動相として0.1%ギ酸(pH4.5)及びACN中の0.1%ギ酸を0.45ml/分で使用して勾配溶出(15~85%)による分離を行った。試料を水/アセトニトリルで3:7の比率で希釈した。データは、Dionex Chromeleonソフトウェアを使用して分析した。
【0114】
ケトース全体(フルクトースとフルクトース-6-リン酸)の検出は、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)に基づくアッセイを使用して行った。検出方法は、アルドースとケトースの還元速度の差に基づく。2mlの試験管に、0.05mlの試料、0.01mlの1%水性TTC、及び0.04mlの6N NaOHを加える。正確に5分後、1.5mlの酢酸:エタノール(1:9)を加え、試験管の内容物をボルテックス混合する。水をブランクとして使用し、分光光度計(Multiskan GO, Thermo Fisher)を使用して480nmで吸光度を測定する。グルコースとグルコース-6-リン酸は、TTCを赤色の色素(トリフェニルホルマザン)に還元する。これは、同等量のフルクトースより約100倍遅い。
【0115】
グルコースは、グルコースオキシダーゼに基づくアッセイを使用して検出される。50μlの試料又は希釈試料を50μlのマスターミックス(0.75mM ABTS、2U/mlグルコースオキシダーゼ、0.1U/mlペルオキシダーゼ、20mM KPi、pH6.0)と混合し、30℃で30分間インキュベートし、次に分光光度計(Multiskan GO, Thermo Fisher)を使用して418nmで測定する。
【0116】
タンパク質発現
最適化されたタンパク質発現は1つの酵素について例示的に説明されており、同じ操作をすべてのタンパク質に対して行った。
【0117】
目的のプラスミド(プロセスに記載されている酵素の1つをコードする1つの遺伝子を有するpET28誘導体)を含む大腸菌BL21(DE3)を、250mlの自己誘導培地(Studier, F. William. "Protein production by auto-induction in high-density shaking cultures." Protein expression and purification 41.1 (2005): 207-234)で増殖させた。前培養物を、100μg/mlカナマイシンを含む4mlのLB培地で、ロータリーシェーカー(180rpm)で37℃で一晩インキュベートした。発現培養物に、一晩培養物の1:100希釈物を接種した。インキュベーションは37℃で24時間行った。遠心分離により細胞を回収し、50mMトリス塩酸(pH8.0)に再懸濁した。粗抽出物は、Basic-Z 細胞破壊器(IUL Constant Systems)又は超音波装置を使用し、続いてDNaseI(1μg/ml)と組み合わせてMgClを最終濃度2.5mMになるように添加し、その後室温(25℃)で20分間インキュベートしてDNAを分解することにより調製した。次に、すべての粗抽出物を70℃で30分間熱処理した。溶解物の不溶性画分を遠心分離(20,000rpm、4℃で40分間)により除去した。上清を0.45μmシリンジフィルターでろ過し、精製した酵素調製物として使用した。各精製物のアリコートを、Laemmli Ulrich K. "Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4." nature 227.5259 (1970): 680に記載された12%SDS-Pageに供した。
【0118】
酵素は以下の配列に対応する:配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号:31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49。
【0119】
酵素の活性試験
バチルス・フラボカルダリウス(Bacillus flavocaldarius)のプルラナーゼ(配列番号1)の活性を、基質としてのプルランと検出用の3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)を使用して試験した。
【0120】
プルラナーゼを、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の1%(w/v)プルラン、及び5mM MgClとともに65℃でインキュベートした。さまざまな時点で、24μlのアリコートを96μlのDNS試薬(1リットルにつき10gの3,5-ジニトロサリチル酸、300gの酒石酸カリウムナトリウム、16gの水酸化ナトリウム)に移した。95℃まで5分間加熱し、その後100μlを平底マイクロタイタープレートに移し、分光光度計(Multiskan GO, Thermo Fisher)で540nmで測定した。
【0121】
メイオサームス・ルーバー(Meiothermus ruber)のα-グルカノトランスフェラーゼ(配列番号3)を、活性について基質としてマルトトリオースを使用して、そしてより大きなオリゴ糖を構築する能力について試験した。活性の検出は、TLC(イソプロパノール:酢酸エチル:水(3:1:1))及びチモール噴霧試薬(0.5gチモール、95mlエタノール、5ml硫酸97%)を使用して行った。メイオサームス・ルーバーのα-グルカノトランスフェラーゼを50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の50mMマルトトリオース、及び5mM MgClとともに65℃でインキュベートした。
【0122】
サーモトガ・ナフトフィラ(Thermotoga naphthophila)のα-グルカンホスホリラーゼ(配列番号5)を、活性について酵素の組み合わせを使用して試験して、生成物α-D-グルコース-1-リン酸を検出した。α-D-グルコース-1-リン酸はα-D-グルコース-6-リン酸に変換され、続いてα-D-グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼによってα-D-グルコン酸-6-リン酸に酸化された。生成されたNADHは、電子メディエーターとして1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルサルフェート(PMS)を使用してWST-1を変換するために使用された。α-グルカンホスホリラーゼを、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の1%(w/v)可溶性デンプン、及び5mM MgCl、及び0.1mMピリドキサール-5-リン酸とともに65℃でインキュベートした。さまざまな時点で、10μlのアリコートを、ホスホグルコムターゼ0.1U、α-D-グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ0.1U、0.1mM WST-1、0.005mM PMSを含む190μlの検出溶液に移した。混合物を30分間インキュベートし、分光光度計(Multiskan GO, ThermoFisher)で440nmで測定した。
【0123】
ビフィドバクテリウム・アドルセンティス(Bifidobacterium adolescentis)のスクロースホスホリラーゼ(配列番号51)を、活性について、基質としてスクロース及び検出用の3,5-ジニトロサリチル酸を使用して試験した。検出に3,5-ジニトロサリチル酸を使用するアッセイでは、生成物のフルクトースのみがシグナルを生成する。スクロースホスホリラーゼは、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の100mMスクロース、及び5mM MgClとともに50℃でインキュベートされた。さまざまな時点で、24μlのアリコートを96μlのDNS試薬(1リットルにつき10gの3,5-ジニトロサリチル酸、300gの酒石酸カリウムナトリウム、16gの水酸化ナトリウム)に移した。95℃まで5分間加熱し、その後100μlを平底マイクロタイタープレートに移し、分光光度計(Multiskan GO, Thermo Fisher)で540nmで測定した。
【0124】
サッカロロブス・スフファタリクス(Saccharolobus sulfataricus)P2のホスホグルコムターゼ(配列番号7)又はクロストリジウム・サーモセラム(Chlostridium thermocellum)のホスホグルコムターゼ(配列番号9)を、活性について、基質としてα-D-グルコース-1-リン酸及び検出用の3,5-ジニトロサリチル酸を使用して試験した。検出用に3,5-ジニトロサリチル酸を使用するアッセイでは、生成物のα-D-グルコース-6-リン酸のみがシグナルを生成する。ホスホグルコムターゼを、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の50mM α-D-グルコース-1-リン酸及び5mM MgClとともに65℃でインキュベートした。さまざまな時点で、24μlのアリコートを96μlのDNS試薬(1リットルにつき10gの3,5-ジニトロサリチル酸、300gの酒石酸カリウムナトリウム、16gの水酸化ナトリウム)に移した。95℃まで5分間加熱し、その後100μlを平底マイクロタイタープレートに移し、分光光度計(Multiskan GO, Thermo Fisher)で540nmで測定した。
【0125】
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)のホスホグルコイソメラーゼ(配列番号11)を、活性について、基質としてフルクトース-6-リン酸を使用し、検出用にα-D-グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼを使用して試験した。生成されたNADHは、電子メディエーターとして1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルサルフェート(PMS)を使用してWST-1を変換するために使用された。ホスホグルコイソメラーゼを、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の50mMフルクトース-6-リン酸、及び5mM MgClとともに65℃でインキュベートした。さまざまな時点で、10μlのアリコートをα-D-グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ0.1U、0.1mM WST-1、0.005mM PMSを含む190μlの検出溶液に移した。混合物を30分間インキュベートし、分光光度計(Multiskan GO, ThermoFisher)で440nmで測定した。
【0126】
サーモトガ・ナフトフィラのホスファターゼ(配列番号13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49)を、活性について、基質としてフルクトース-6-リン酸を使用して、リン酸アッセイで試験した。リン酸アッセイは、溶液A(1N HCl溶液中の12%(w/v)l-アスコルビン酸)、溶液B(ddH2O中の2%(w/v)Na2MoO4×2H2O)、溶液F(ddH2O中の2%(w/v)クエン酸及び2%(w/v)酢酸)の3つの溶液からなる。溶液Dは溶液Aと溶液Bの2:1混合物であり、測定前に新たに調製される。75μlの溶液Dを、平底マイクロタイタープレートの必要なウェルにピペットで入れる。次の工程で、25μlの試料又は定義された濃度の標準物質を加え、室温で5分間インキュベートする。最後の工程で、75μlの溶液Fを添加し、室温で15分間のインキュベーション工程を追加して反応を停止させる。試料は、分光光度計(Multiskan GO, Thermo Fisher)で655nmで測定される。
【0127】
試験されたすべての酵素は、プロセス内の工程の1つを触媒する要件を満たし、プロセス条件下(65℃、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、5mM MgCl、0.005mM PLP)で安定している。
【0128】
3.デンプンからフルクトースへの変換(本発明の実施例1;IE1)
変換実験は、7gの天然デンプンを含む50mlのファルコンチューブを使用して15mlのスケールで実施した。天然デンプンを6mlの水と緩衝液で前処理し、95℃まで30分間加熱して、ほぼ完全に膨潤させた。その後、膨潤したデンプンを65℃に冷却し、酵素を加えた。7gの天然デンプンに、10.5mlの量の緩衝液、塩、及び酵素を加えた。さらに、マルトースを最終濃度が10mMになるように添加した。最終混合物には、50mM KPi(pH7.0)、5mM MgCl、0.1mM PLP、10mMマルトース、0.4mgプルラナーゼ、1.5mg α-グルカノトランスフェラーゼ、30mg α-グルカンホスホリラーゼ、1.4mgホスホグルコムターゼ、1.2mgのホスホグルコイソメラーゼ、及び14mgのホスファターゼを含有した。バチルス・フラボカルダリウス、メイオサームス・ルーバー、サーモトガ・ナフトフィラ(ホスホリラーゼ及びホスファターゼ)、クロストリジウム・サーモセラム、及びサーモトガ・マリティマの酵素を使用した。0時間のインキュベーションから始めて、定期的に試料を採取し、10kDaスピンフィルター(VWR 82031-350)を使用してろ過した。必要に応じて、更なる分析のために、試料を3:7の比率の水/アセトニトリルで希釈した。
【0129】
本発明の実施例1(IE1)によるデンプンからフルクトースへの変換の結果(35%乾燥物質デンプンは、単糖の2153.5mM濃度に相当する)を表1及び図8に示す。
【表1】
【0130】
表1から、48時間後に約70%の収率でフルクトースが得られることがわかる。
【0131】
4.マルトース(IE2~IE5)、マルトトリオース(IE6~IE9)、マルトテトラオース(IE10~IE12)、マルトデキストリンGlucidex 12(IE13~IE15)、又はマルトデキストリンGlucidex 19(IE16~IE18)の存在下のデンプンからフルクトースへの変換
リン酸カリウム緩衝液50mM(pH7.0)、MgCl 5mM、PLP 0.005mM、膨潤天然デンプン1%(w/v)、マルトース(0.01mM、0.1mM、1.0mM、又は10mM;IE2~IE5)、又はマルトトリオース(0.01mM、0.1mM、1.0mM、又は10mM;IE6~IE9)、又はマルトテトラオース(0.01mM、0.1mM、又は1.0mM;IE10~IE12)、又はマルトデキストリンGlucidex 12(0.0342%(w/v)、0.00342%(w/v)、又は0.000342%(w/v);IE13~IE15)、又はマルトデキストリンGlucidex 19(0.0342%(w/v)、0.00342%(w/v)、又は0.000342%(w/v);IE16~IE18)、グルカンホスホリラーゼ(0.0025mg/ml)、アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(0.075mg/ml)、プルラナーゼ(0.02mg/ml)の総量5mlを65℃で1時間インキュベートし、アリコートを取り出してグルコース-1-リン酸についてチェックした。グルコース-1-リン酸アッセイは、上記の酵素の活性試験に記載されている。
【0132】
比較例1~5(CE1~CE5)は、それぞれ1mMのマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、Glucidex 12、又はGlucidex 19のみを添加し、デンプンを添加せずに実施した。比較実施例6は、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、Glucidex 12、又はGlucidex 19などの追加の糖類を添加せずに実施した。
【0133】
グルコース-1-リン酸への変換率に対する追加の糖、例えばマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、Glucidex 12、又はGlucidex 19などの短いオリゴ糖の影響に関する試験の結果を表2に示す。それぞれの図は図9に示される。
【表2】
【0134】
プロセス内のデンプン又はセルロースのような同等の基質などの大きな多糖類の変換は、1つの主要な律速段階、例えばグルカンホスホリラーゼによって触媒されるグルコース-1-リン酸分子の生成を含む。ホスホリラーゼは、無機リン酸を使用してポリマーの末端グルコース残基と残りの部分の間のα-1,4結合の切断を触媒してグルコース-1-リン酸を放出するために、多糖のアクセス可能な末端を必要とする。プルラナーゼ、α-グルカノトランスフェラーゼ、及び短いオリゴ糖、例えばマルトース(IE2~IE5)、マルトトリオース(IE6~IE9)、マルトテトラオース(IE10~IE12)、マルトデキストリンGlucidex 12(IE13~IE15)、又はマルトデキストリンGlucidex 19(IE16~IE18)(表2参照)の組合わせ作用は、短いオリゴ糖を添加すると変換率が向上することを示している。これは、グルコース-1-リン酸のより高い生産をもたらし、従って、本発明のプロセス内でデンプンからフルクトースへのより迅速な変換を可能にする。
【0135】
すべての比較例1~6の変換率は、本発明の実施例2~18と比較して低い。
【0136】
5.リン酸アッセイ
プロセスに存在する異なるホスファターゼ及び2つの糖リン酸中間体の変種の異なる活性を追跡するために、リン酸アッセイを実施した。
【0137】
反応混合物は、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)、2.5mM MgCl、10mMのG1P、G6P、又はF6P、及び1つのホスファターゼ(0.003mg/ml)を総量1ml中に含有した。混合物を65℃でインキュベートし、一定の時間間隔でアリコートを取り出し、放出されたリン酸塩について試験した。リン酸アッセイは、上記でさらに詳細に記載されている。
【0138】
リン酸アッセイの結果を表3と図10に示す。G6PとF6Pの量を検出し、F6P/G6Pの比率を決定した。F6P/G6Pの比率は、試験されたホスファターゼの選択性を示す。
【表3】
【0139】
サーモトガ・ナフトフィラのホスファターゼへの変異P46T(IE19(T))の導入は、酵素の全体的な活性を上昇させ、グルコース-6-リン酸(G6P)に対する酵素の活性を低下させることが、表3と図10からわかる。これにより、酵素量の減少と全体的なフルクトース生産の向上という観点から、プロセスの経済性が向上している。P46TE47Y(IE20(TY))は、野生型(CE7(WT))と比較してF6Pに対してわずかに改善された活性を有し、G6Pに対してほぼ同じ活性を示し、グルコースなどの不要な副産物が減少している。P46TE47YG50L(IE21(TYL))は、野生型(CE7(WT))と比較してF6Pに対する改善された活性を有し、G6Pに対する活性が低下し、グルコースなどの不要な副産物も減少する。Y23HP46TE47Y(IE23(HTY))もまた、CE7(WT)と比較してF6Pに対して改善された活性を有し、G6Pに対する活性がわずかに増加している。しかし、両方の活性に関連して、この変種はまた本発明のプロセスの改善された性能を示し、グルコースのような望ましくない副産物を減少させる改善されたプロセスを可能にする。P46TE47YG50I(IE22(TYI))は、F6Pに対する選択性が向上している。Y23HP46TE47YG50L(IE24(HTYL))は、CE7(WT)と比較してF6Pに対して改善された活性を有し、全体的な活性が上昇している状況でG6Pに対する活性が低下している。Y23HP46TE47YG50I(IE25(HTYI))は、F6Pに対して改善された活性を有し、全体的な活性が上昇している状況でG6Pに対する活性が低下している。Y23SP46TE47YG50L(IE26(STYL))は、CE7(WT)と比較してF6Pに対して改善された活性を有し、全体的な活性が上昇している状況でG6Pに対する活性が低下している。Y23SP46TE47YG50I(IE27(STYI))は、F6Pに対する選択性が向上している。
【0140】
本発明のホスファターゼ(表3と図10を参照)は、改善された活性、選択性の向上、又はその両方を示している。
【0141】
野生型ホスファターゼと比較して、追加のホスファターゼを試験するさらなるリン酸アッセイの結果を表4及び図11に示す。使用したホスファターゼが改善された活性を示したため、測定にかかる時間間隔が短縮された。
【表4】
【0142】
Y23HP46TE47YG50L(HTYL)は、野生型と比較してF6Pに対して改善された活性を有し、全体的な活性が上昇している状況でG6Pに対する活性が低下している。このため、酵素は改善されたプロセスを可能にし、グルコースのような望ましくない副産物を減少させる。同じことが変種Y23HP46TE47TG50L(Y47T)、Y23HP46TE47TG50L(Y47F)、Y23HV45MP46TE47TG50L(V45M)、Y23HV45QP46TE47TG50L(V45Q)、Y23HV45RP46TE47TG50L(V45R)にも当てはまる。
【0143】
追加のホスファターゼを試験する別のリン酸アッセイの結果を表5及び図12に示す。使用したホスファターゼが改善された活性を示したため、測定にかかる時間間隔も短縮された。
【表5】
【0144】
変種Y23HV45RP46TE47TG50L(V45R)、Y23HP46TE47FG50L(HTFL)、Y23HV45RP46TE47TG50L(HTTLV45R)、Y23HV45MP46TE47FG50L(V45M)、及びY23HV45QP46TE47FG50L(V45Q)はすべて、F6Pに対して改善された活性を有し、全体的な活性が上昇している状況でG6Pに対する活性が低下している。このため、酵素はグルコースのような望ましくない副産物を減少させる改善されたプロセスを可能にする。
【0145】
6.改善されたホスファターゼ酵素を使用するスクロースからフルクトースへの変換
リン酸カリウム緩衝液50mM(pH7.0)、MgCl 5mM、スクロース1000mM、スクロースホスホリラーゼ(0.25mg/ml)、ホスホグルコムターゼ(0.04mg/ml)、ホスホグルコイソメラーゼ(0.075mg/ml)、及びホスファターゼ(0.18mg/ml)を総量10mlで、50℃で48時間インキュベートし、アリコートを取り出してグルコースとフルクトースの濃度をチェックした。ビフィドバクテリウム・アドルセンティス(スクロースホスホリラーゼ)、サーモトガ・ナフトフィラ(ホスファターゼ)、クロストリジウム・サーモセラム(ホスホグルコムターゼ)、及びサーモトガ・マリティマ(ホスホグルコイソメラーゼ)からの酵素を使用した。フルクトースは、方法に記載されているように決定された。
【0146】
表6及び図13に、3つの異なるホスファターゼ酵素を使用したスクロースからフルクトースへの変換の結果を示す。
【表6】
【0147】
表6から明らかなように、本発明のホスファターゼTY(IE40)及びHTYL(IE41)の変換率は、野生型ホスファターゼWT(CE9)と比較して、より高い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023511505000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換する方法であって、
a)水、リン酸塩、及び少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖を含む組成物に、少なくとも6種の酵素を添加する工程と、
b)続いて、前記少なくとも6種の酵素の存在下で、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに酵素的に変換する工程とを含み、
工程a)において、少なくとも1種の追加の糖が添加され、前記少なくとも1種の追加の糖は、十四糖、十三糖、十二糖、十一糖、十糖、九糖、八糖、七糖、六糖、五糖、四糖、三糖、二糖、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記少なくとも1種の追加の糖は、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖と少なくとも部分的に同じグリコシド結合を有し、
工程a)において、前記少なくとも6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択され、及び、
工程a)の少なくとも1種の酵素はホスファターゼであり、及び
前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖は、グルコースベースのオリゴ糖及び/又は多糖から選択される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
工程a)において、前記少なくとも1種の追加の糖は、四糖、三糖、二糖、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、及びこれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
工程a)の前記組成物は、乾燥重量ベースで前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖の35%以下を含み、及び/又は、
前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖は、デンプン及びその誘導体、ヘミセルロース及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
好ましくは工程b)において、糖リン酸が中間的に生成され、及び/又は、
工程b)において、前記酵素的変換はワンポット反応であり、及び/又は、
前記ホスファターゼは、配列番号13の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、及びより好ましくは少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む方法。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の方法であって、
工程a)において、少なくとも1種のトランスフェラーゼ、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはグルカノトランスフェラーゼ、さらにより好ましくはアルファ-グルカノトランスフェラーゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のホスホリラーゼ、好ましくはグルカンホスホリラーゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のムターゼ、好ましくはホスホグルコムターゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のイソメラーゼ、好ましくはホスホグルコイソメラーゼが添加され、及び/又は、
工程a)において、少なくとも1種のヒドロラーゼ、好ましくはグルカノヒドロラーゼ、より好ましくはプルラナーゼが添加される方法。
【請求項5】
工程b)は室温(25℃)で少なくとも24時間実施される。前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の方法であって、
工程a)の組成物中に存在する糖の少なくとも50%は、24時間の酵素的変換後にフルクトースに変換され、及び/又は、
工程a)の組成物中に存在する糖の少なくとも70%は、48時間の酵素的変換後にフルクトースに変換される方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の方法であって、
工程b)の温度は、10~100℃、好ましくは20~90℃であり、及び/又は、
前記組成物のpHは、3~12、好ましくは4~10である方法。
【請求項8】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖をフルクトースに変換するための組成物であって、
- 水、
- リン酸塩、
- 少なくとも6種の酵素(ここで少なくとも1種の酵素はホスファターゼである)、
- 少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖、を含み、
前記少なくとも6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択され、
前記組成物は、少なくとも1種の追加の糖をさらに含み、前記少なくとも1種の追加の糖は、十四糖、十三糖、十二糖、十一糖、十糖、九糖、八糖、七糖、六糖、五糖、四糖、三糖、二糖、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記少なくとも1種の追加の糖は、前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖と少なくとも部分的に同じグリコシド結合を有し、及び
前記少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖は、グルコースベースのオリゴ糖及び/又は多糖から選択される組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物であって、
前記ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、及びより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、又は
前記ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する組成物。
【請求項10】
- 乾燥重量ベースで少なくとも50%のフルクトース、
- 乾燥重量ベースで0.001~25%のグルコース、
- 乾燥重量ベースで0.01~22%のリン酸塩、及び
- 乾燥重量ベースで、0.001~2%の少なくとも6種の酵素を含む水性組成物であって、
前記少なくとも6種の酵素は、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ムターゼ、イソメラーゼ、及び/又はヒドロラーゼからなる群から選択され、
少なくとも1種の酵素はホスファターゼであり;及び
前記ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む水性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の水性組成物であって、
前記ホスファターゼは、配列番号41の配列と少なくとも98.5%、及び好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、又は
前記ホスファターゼは、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する水性組成物。
【請求項12】
請求項1~7に記載の方法により得られる、請求項10又は11に記載の水性組成物。
【請求項13】
配列番号41の配列と少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、及びより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むホスファターゼ。
【請求項14】
配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、又は配列番号49のアミノ酸配列を有する、請求項13に記載のホスファターゼ。
【請求項15】
少なくとも1種のオリゴ糖及び/又は多糖からフルクトースへの変換における、請求項13又は14に記載のホスファターゼの使用。
【国際調査報告】