(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】平面パネルX線検出器で使用するための発光ガラスセラミック、平面パネルX線検出器、および画像化システム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539064
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 US2021014786
(87)【国際公開番号】W WO2021151017
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】521556598
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ・オブ・テネシー・リサーチ・ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】520145551
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・アール・ルビンスキー
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・ホーワンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・リー・レナード
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】メレディス・ブルック・ベッカート
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ボンド
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188CC09
2G188CC22
2G188DD05
(57)【要約】
発光ガラスセラミックが開示されている。発光ガラスセラミックは、平面パネル撮像装置(FPD)用X線変換層(スクリーン)として、および画像化システムの一部として使用されてもよい。FPDは単一スクリーンおよび二重スクリーンを有してもよい。発光ガラスセラミックは、前面スクリーンまたは背面スクリーンのいずれかで使用されてもよい。発光ガラスセラミックは、約0.3から約20MeVのエネルギーを含む高エネルギーX線応用例で使用されてもよい。積層は、高エネルギー応用例で発光ガラスセラミックに取り付けられてもよい。発光ガラスセラミックは、発光中心および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを含んでもよい。発光中心および光散乱中心に使用される材料は、同じであっても異なっていてもよい。発光ガラスセラミックは、ガラス基板上にコーティングされてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトセンサアレイと、
発光ガラスセラミックを備えたスクリーンであって、前記発光ガラスセラミックが発光中心および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを備えており、前記発光ガラスセラミックは入射X線放射線を光量子に変換するように構成されており、前記発光ガラスセラミックの表面は前記フォトセンサアレイに面し、前記フォトセンサアレイは、前記スクリーンからの前記光量子の少なくとも一部を捕捉し、前記捕捉した光量子を電気信号に変換するように動作可能である、スクリーンと、
を備えた構造。
【請求項2】
前記発光ガラスセラミックは、前記フォトセンサアレイ用の基板である、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記発光ガラスセラミックは、前記フォトセンサアレイに面する前記発光ガラスセラミックの前記表面、および/または前記フォトセンサアレイに面する前記表面に対向する前記発光ガラスセラミックの表面に入射する入射X線放射線を変換するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記光散乱中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の構造。
【請求項5】
前記発光中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含んでいる、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造。
【請求項6】
前記発光中心の前記結晶は活性剤でドープされている、請求項5に記載の構造。
【請求項7】
前記発光中心は、遷移金属、希土類金属、アクチノイドおよびns
2タイプ活性剤の第1および第2の列からのイオンからなる群から選択した1つまたは複数の材料を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の構造。
【請求項8】
前記発光中心はTb
3+であり、前記発光ガラスセラミックはTb
2O
3を備えている、請求項7に記載の構造。
【請求項9】
前記Tb
2O
3の割合は約6%である、請求項8に記載の構造。
【請求項10】
前記結晶はハロゲン化物結晶である、請求項1から9のいずれか一項に記載の構造。
【請求項11】
前記発光ガラスセラミックはさらに増感剤を備えている、請求項1から10のいずれか一項に記載の構造。
【請求項12】
前記増感剤は、ns
2タイプおよびランタニドイオンからなる群から選択された1つまたは複数の材料である、請求項11に記載の構造。
【請求項13】
前記イオンはGd
3+および/またはCe
3+である、請求項12に記載の構造。
【請求項14】
前記ガラスマトリックスはオキシハライドマトリックスである、請求項1から13のいずれか一項に記載の構造。
【請求項15】
前記フォトセンサアレイに面する前記表面に対向する前記発光ガラスセラミックの表面上に位置決めされた積層をさらに備えた、請求項1から14のいずれか一項に記載の構造。
【請求項16】
前記積層は、銅、真鍮、鉛および鉛入りガラスからなる群から選択された材料を備えている、請求項15に記載の構造。
【請求項17】
前記入射X線放射線は、約0.3から約20MeVのエネルギーを有する、請求項15または請求項16に記載の構造。
【請求項18】
前記フォトセンサアレイが複数の画素を有する画像を作り出すように構成された、請求項1から17のいずれか一項に記載の構造と通信するように構成されたプロセッサを備えた画像化システムであって、
前記プロセッサは、前記構造から前記電気信号を受信し、前記電気信号を使用して前記複数の画素を有する前記画像を作り出すように構成されている、画像化システム。
【請求項19】
構造であって、
前記構造に向けられた入射放射線の吸収された部分を光量子に変換する第1の発光スクリーンと、
フォトセンサアレイと、
発光ガラスセラミックを備えた第2の発光スクリーンであって、前記フォトセンサアレイは、前記第1の発光スクリーンと前記第2の発光スクリーンの間にある、第2の発光スクリーンと、
を備え、
前記発光ガラスセラミックは、発光中心および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを備え、前記発光ガラスセラミックは、前記第1の発光スクリーンおよび前記フォトセンサアレイを通して伝達される前記入射放射線の少なくとも一部を光量子に変換するように構成され、
前記フォトセンサアレイは、前記第1の発光スクリーンおよび前記第2の発光スクリーンから前記光量子の少なくとも一部を捕捉し、前記捕捉された光量子を電気信号に変換するように動作可能である、構造。
【請求項20】
前記第2の発光スクリーンはさらに、前記発光ガラスセラミックの別の表面に接触する裏当てを備え、前記別の表面は前記フォトセンサアレイに面する表面に対向し、前記裏当ては、前記光量子に対して吸収性があるまたは反射性がある、請求項19に記載の構造。
【請求項21】
前記発光ガラスセラミックは前記フォトセンサアレイ用の基板である、請求項19または請求項20に記載の構造。
【請求項22】
前記光散乱中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の構造。
【請求項23】
前記発光中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含む、請求項19から22のいずれか一項に記載の構造。
【請求項24】
前記結晶は活性剤でドープされている、請求項23に記載の構造。
【請求項25】
前記発光中心は、遷移金属、希土類金属、アクチノイドおよびns
2タイプ活性剤の第1および第2の列からのイオンからなる群から選択した1つまたは複数の材料を含んでいる、請求項19から24のいずれか一項に記載の構造。
【請求項26】
前記発光中心はTb
3+であり、前記発光ガラスセラミックはTb
2O
3を備えている、請求項25に記載の構造。
【請求項27】
前記Tb
2O
3の割合は約6%である、請求項26に記載の構造。
【請求項28】
前記発光ガラスセラミックはさらに増感剤を備えている、請求項19から27のいずれか一項に記載の構造。
【請求項29】
前記増感剤は、ns
2タイプおよびランタニドイオンからなる群から選択された1つまたは複数の材料である、請求項28に記載の構造。
【請求項30】
前記ガラスマトリックスはオキシハライドマトリックスである、請求項19から29のいずれか一項に記載の構造。
【請求項31】
前記発光ガラスセラミックは、約0.5mmより大きい厚さである、請求項19から30のいずれか一項に記載の構造。
【請求項32】
前記フォトセンサアレイが複数の画素を有する画像を作り出すように構成された、請求項19から31のいずれか一項に記載の構造と通信するように構成されたプロセッサを備えた画像化システムであって、
前記プロセッサは、前記構造から前記電気信号を受信し、前記電気信号を使用して前記複数の画素を有する前記画像を作り出すように構成されている、画像化システム。
【請求項33】
発光中心、光散乱中心、および1つまたは複数の高Z素子をホスティングするガラスマトリックスを備えた、X線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項34】
前記光散乱中心は約10nmより大きいサイズを有する、請求項33に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項35】
前記ガラスマトリックス内の光散乱中心の濃度は、散乱長さが約1μmより大きいようになっている、請求項33または請求項34に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項36】
前記セラミックは、約3.0g・cm
-3より大きい密度を有する、請求項33から35のいずれか一項に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項37】
光量子放出は、約375nmから約650nmまでの波長範囲である、請求項33から36のいずれか一項に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項38】
さらに増感剤を備えた、請求項33から37のいずれか一項に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項39】
前記1つまたは複数の高Z素子は増感剤である、請求項33から38のいずれか一項に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項40】
前記増感剤は、ns
2タイプおよびランタニドイオンからなる群から選択された1つまたは複数の材料である、請求項38または請求項39に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項41】
前記光散乱中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含む、請求項33から40のいずれか一項に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項42】
前記ガラスマトリックスはオキシハライドマトリックスである、請求項33から41のいずれか一項に記載のX線変換用発光ガラスセラミック。
【請求項43】
構造であって、
前記構造に向けられた入射放射線の吸収された部分を光量子に変換する第1の発光スクリーンと、
フォトセンサアレイと、
発光ガラスセラミックおよびガラス基板を備えた第2の発光スクリーンであって、前記発光ガラスセラミックは前記ガラス基板上のコーティングであり、前記フォトセンサアレイは、前記第1の発光スクリーンと前記第2の発光スクリーンの間にある、第2の発光スクリーンと、
を備え、
前記発光ガラスセラミックは、発光中心および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを備え、前記発光ガラスセラミックは、前記第1の発光スクリーンおよび前記フォトセンサアレイを通して伝達される前記入射放射線の少なくとも一部を光量子に変換するように構成され、
前記フォトセンサアレイは、前記第1の発光スクリーンおよび前記第2の発光スクリーンから前記光量子の少なくとも一部を捕捉し、前記捕捉された光量子を電気信号に変換するように動作可能である、構造。
【請求項44】
前記発光ガラスセラミック上にコーティングされたガラスフィルムをさらに備えた、請求項43に記載の構造。
【請求項45】
前記ガラスフィルムは、前記フォトセンサアレイ用の基板である、請求項44に記載の構造。
【請求項46】
前記発光中心および前記光散乱中心は結晶を含む、請求項43から45のいずれか一項に記載の構造。
【請求項47】
前記結晶は、ハロゲン化物結晶、ケイ酸塩結晶、および硫化物結晶からなる群から選択される、請求項46に記載の構造。
【請求項48】
前記結晶はドープされてもよい、請求項46または請求項47に記載の構造。
【請求項49】
前記フォトセンサアレイが複数の画素を有する画像を作り出すように構成された、請求項43から48のいずれか一項に記載の構造と通信するように構成されたプロセッサを備えた画像化システムであって、
前記プロセッサは、前記構造から前記電気信号を受信し、前記電気信号を使用して前記複数の画素を有する前記画像を作り出すように構成されている、画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府出資の研究開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって与えられたC140151、および国立科学財団によって与えられたDMR1600783の下で政府の支持で行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2020年1月24日出願の米国仮特許出願第62/965,460号および米国仮特許出願第62/965,471号の特典を主張する。
【0003】
本出願は概して、放射線検出器用の構造および材料、放射線検出、およびデジタルX線撮影に関する。
【背景技術】
【0004】
平面パネル検出器(FPD)は、デジタルX線画像化デバイスに使用されてきた。例えば、「間接」FPDは、2Dフォトセンサアレイと組み合わされた、発光スクリーン(scintillating screen)、すなわち、X線変換層を使用して、X線の入射空間分配を検出することによってX線画像を形成する。知られているFPDは、入射するX線が最初に発光スクリーンを通過する前面照射(FI)モード、またはX線が最初にフォトセンサアレイを通過する背面照射(BI)モードのいずれかで単スクリーンを使用してもよい。しかし、入射X線ビームの大部分は、検出されないスクリーンを通過する。画質がその後、過剰な空間的ぼやけにより悪い影響を受けるので、単一の発光層(scintillating layer)の厚さが増加することは、実行可能な解決法ではない。
【0005】
国際特許出願公開第WO2019/226859号は、背面スクリーンが、2Dフォトセンサアレイ用の基板として、また検出されない前面スクリーンを通過するX線用のX線変換層として働く二重の目的を果たす発光ガラス(scintillating glass)である二重スクリーンサンドイッチ構成を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO2019/226859号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
フォトセンサアレイ、および発光ガラスセラミック(scintillating glass ceramic)を備えたスクリーンを備えた構造が開示されている。発光ガラスセラミックは、発光中心(luminescent center)および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを備えている。発光ガラスセラミックは、入射X線放射線を光量子に変換するように構成されている。発光セラミックガラスの表面は、フォトセンサアレイに面する。フォトセンサアレイは、スクリーンからの光量子の少なくとも一部を捕捉し、捕捉した光量子を電気信号に変換するように動作可能である。
【0008】
開示の一態様では、発光ガラスセラミックは、フォトセンサアレイ用基板であってもよい。
【0009】
開示の一態様では、発光ガラスセラミックは、構造が前面照射(FI)モードおよび/または背面照射(BI)モードで動作することができるように、フォトセンサアレイに面する発光ガラスセラミックの表面、および/またはフォトセンサアレイに面する表面に対向する発光ガラスセラミックの表面に入射する入射X線放射線を変換するように構成してもよい。
【0010】
開示の一態様では、光散乱中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含んでもよい。開示の一態様では、発光中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含んでもよい。
【0011】
開示の一態様では、発光中心の結晶は活性剤でドープされてもよい。
【0012】
開示の一態様では、結晶はハロゲン化物結晶であってもよい。
【0013】
加えてまたは別の方法では、発光中心は、遷移金属、希土類金属、アクチノイドおよびns2タイプ活性剤の第1および第2の列からのイオンからなる群から選択した1つまたは複数の材料を含んでもよい。
【0014】
開示の一態様では、発光中心はTb3+であってもよく、発光ガラスセラミックはTb2O3を備えてもよい。Tb2O3の割合は、応用例で必要に応じて変更されてもよく、例えば、約6%であってもよい。
【0015】
開示の一態様では、発光ガラスセラミックはさらに増感剤を備えてもよい。増感剤は、ns2タイプおよびランタニドイオンからなる群から選択された1つまたは複数の材料であってもよい。開示の一態様では、増感剤はGd3+および/またはCe3+であってもよい。
【0016】
開示の一態様では、ガラスマトリックスはオキシハライドマトリックスであってもよい。
【0017】
開示の一態様では、構造はさらに、フォトセンサアレイに面する表面に対向する発光ガラスセラミックの表面上に位置決めされた積層を備えてもよい。積層は、銅、真鍮、鉛および鉛入りガラスからなる群から選択された材料を備えてもよい。開示の一態様では、入射X線放射線は、約0.3から約20MeVのエネルギーを有してもよい。
【0018】
また、2つのスクリーンを有する構造が開示されている。構造は、第1の発光スクリーン、フォトセンサアレイ、および発光ガラスセラミックを備えた第2の発光スクリーンを備えている。第1の発光スクリーンは、構造に向けられた入射放射線の吸収された部分を光量子に変換する。フォトセンサアレイは、第1の発光スクリーンと第2の発光スクリーンの間にある。発光ガラスセラミックは、発光中心および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを備えている。発光ガラスセラミックは、第1の発光スクリーンおよびフォトセンサアレイを通して伝達される入射放射線の少なくとも一部を光量子に変換するように構成されている。フォトセンサアレイは、第1の発光スクリーンおよび第2の発光スクリーンから光量子の少なくとも一部を捕捉し、捕捉された光量子を電気信号に変換するように動作可能である。
【0019】
開示の一態様では、第2の発光スクリーンはさらに、発光ガラスセラミックの別の表面に接触する裏当てを備えてもよい。裏当てに接触する表面は、フォトセンサアレイに面する表面に対向する表面である。裏当ては、光量子に対して吸収性があるまたは反射性があることを含む光学性状を有していてもよい。
【0020】
開示の一態様では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミックはフォトセンサアレイ用の基板であってもよい。
【0021】
開示の一態様では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミックは、応用例、および基板として使用されるかどうかによって、異なる厚さを有していてもよい。開示の一態様では、発光ガラスセラミックは、約0.5mmより大きい厚さを有していてもよい。
【0022】
開示の一態様では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミック内の光散乱中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含んでもよい。開示の一態様では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミック内の発光中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含んでもよい。開示の一態様では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミック内の発光中心の結晶は、活性剤でドープされてもよい。開示の一態様では、結晶はハロゲン化物結晶であってもよい。
【0023】
加えてまたは別の方法では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミック内の発光中心は、遷移金属、希土類金属、アクチノイドおよびns2タイプ活性剤の第1および第2の列からのイオンからなる群から選択した1つまたは複数の材料を含んでもよい。開示の一態様では、発光中心はTb3+であってもよく、発光ガラスセラミックはTb2O3を備えてもよい。Tb2O3の割合は、応用例で必要に応じて変更されてもよく、例えば、約6%であってもよい。
【0024】
開示の一態様では、第2の発光スクリーンの発光ガラスセラミックはさらに増感剤を備えてもよい。増感剤は、ns2タイプおよびランタニドイオンからなる群から選択された1つまたは複数の材料であってもよい。開示の一態様では、増感剤はGd3+および/またはCe3+であってもよい。
【0025】
開示の一態様では、第2の発光スクリーンのガラスマトリックスはオキシハライドマトリックスであってもよい。
【0026】
また、発光中心、光散乱中心、および1つまたは複数の高Z素子をホスティングするガラスマトリックスを備えたX線変換用発光ガラスセラミックが開示されている。発光ガラスセラミックは、多くの異なる構成、およびMeV画像化などの他の画像化応用例で使用されてもよい。
【0027】
開示の一態様では、光散乱中心は約10nmより大きいサイズを有していてもよい。開示の一態様では、ガラスマトリックス内の光散乱中心の濃度は、散乱長さが約1μmより大きいようになっていてもよい。
【0028】
開示の一態様では、発光ガラスセラミックは、約3.0g.cm-3より大きい密度を有していてもよい。
【0029】
開示の一態様では、光量子放出は、約375nmから約650nmまでの波長範囲であってもよい。開示の一態様では、光量子放出の波長は、応用例および使用されるフォトセンサアレイに基づいていてもよい。
【0030】
開示の一態様では、1つまたは複数の高Z素子は増感剤であってもよい。別の方法ではまたは加えて、発光ガラスセラミックはさらに別の増感剤を備えてもよく、増感剤は、ns2タイプおよびランタニドイオンからなる群から選択された1つまたは複数の材料であってもよい。
【0031】
開示の一態様では、光散乱中心は、同じ組成の結晶、または異なる組成を有する結晶の組合せを含んでもよい。
【0032】
開示の一態様では、セラミックのガラスマトリックスはオキシハライドマトリックスであってもよい。
【0033】
また、2つのスクリーンを有する別の構造が開示されている。構造は、第1の発光スクリーン、フォトセンサアレイ、および発光ガラスセラミックおよびガラス基板を備えた第2の発光スクリーンを備えている。発光ガラスセラミックは、ガラス基板上のコーティングであってもよい。フォトセンサアレイは、第1の発光スクリーンと第2の発光スクリーンの間にある。発光ガラスセラミックは、発光中心および光散乱中心をホスティングするガラスマトリックスを備えている。発光ガラスセラミックは、第1の発光スクリーンおよびフォトセンサアレイを通して伝達される入射放射線の少なくとも一部を光量子に変換するように構成されている。フォトセンサアレイは、第1の発光スクリーンおよび第2の発光スクリーンから光量子の少なくとも一部を捕捉し、捕捉された光量子を電気信号に変換するように動作可能である。
【0034】
開示の一態様では、構造はさらに、発光ガラスセラミック上にコーティングされたガラスフィルムを備えてもよい。ガラスフィルムは、フォトセンサアレイ用基板であってもよい。
【0035】
開示の一態様では、発光中心および光散乱中心は結晶を含んでもよい。結晶は、ハロゲン化物結晶、ケイ酸塩結晶、硫化物結晶、または他の結晶からなる群から選択されてもよい。開示の一態様では、結晶はドープされてもよい。
【0036】
また、上に記載したような構造と通信するように構成されたプロセッサを備えた画像化システムが開示され、フォトセンサアレイは複数の画素を有する画像を作り出すように構成されている。本態様では、プロセッサは、構造から電気信号を受信し、電気信号を使用して複数の画素を有する画像を作り出すように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1aは、開示の態様による発光ガラスセラミックの一例の図である。
図1b~
図1dは、開示の態様による発光ガラスセラミックの別の例の図である。
【
図2a】非散乱発光媒体(non-scattering scintillating medium)内の発光イベントの進行を示し、発光イベントをトリガする入射放射線を示す図である。
【
図2b】非散乱発光媒体内の発光イベントの進行を示し、全方向性である得られる放射を示す図である。
【
図2c】非散乱発光媒体内の発光イベントの進行を示し、臨界角が出ることができるより小さい角度で非散乱発光媒体と外部媒体の間のインターフェースに到達する光量子を示す図である。
【
図2d】非散乱発光媒体内の発光イベントの進行を示し、臨界角が内部で反射され、「捕捉され」、非散乱発光媒体の側部で出るより大きい角度でインターフェースに到達する光量子を示す図である。
【
図3】
図3aは、発光媒体間の比較を示し、散乱のある媒体を示す図である。
図3bは、発光媒体間の比較を示し、散乱のない透明媒体を示す図である。
【
図4】
図4aは、前面照射(FI)モードで開示の態様による、間接平面パネルX線検出器内のX線変換層として使用される発光ガラスセラミックを有する単一スクリーン構造を示す図である。
図4bは、背面照射(BI)モードで開示の態様による、間接平面パネルX線検出器内のX線変換層として使用される発光ガラスセラミックを有する単一スクリーン構造を示す図である。
【
図5】開示の態様による、二重スクリーンサンドイッチ検出器構成で使用される発光ガラスセラミック変換層を有する二重スクリーン構造の略断面図である。
【
図6】開示の態様による、フォトセンサアレイおよび特定の制御構成部品を示す略図である。
【
図7】開示の態様による、高エネルギー光量子用検出器内で使用される発光ガラスセラミック変換層を有する別の単スクリーン構造の略断面図である。
【
図8】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図9】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図10】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図11】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図12】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図13】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図14】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図15】開示の態様による、発光ガラスセラミックの検査結果のグラフである。
【
図16】2つの知られているフォトダイオードの量子効率を示す図である。
【
図17】開示の態様による、ガラス基板上に発光薄膜(scintillating thin film)を形成するためのフローチャートである。
【
図18】開示の態様による、発光変換層(scintillating conversion layer)がガラス基板上にコーティングされた、二重スクリーンサンドイッチ検出器構成で使用される発光変換層を有する構造の略断面図である。
【
図19】
図19aは、シンチレータ薄膜の一例のSEM断面画像を示す図である。
図19bは、シンチレータ薄膜の一例の断面図である。
【
図20】可視光中および45keVのX線への露出で、開示の態様による、薄いガラス基板上にコーティングされた発光薄膜の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
開示の態様によると、発光ガラスセラミック1Aは、発光中心10および光散乱中心15の両方を含むガラスマトリックス5からなっていてもよい。本明細書で使用されるガラスセラミックという用語は、少なくとも1つの非結晶質相および1つの結晶質相を含む複合材料のことを言う。ガラスマトリックス5は、発光中心10および光散乱中心15の両方をホスティングする。ガラスマトリックス5は、発光中心10および光散乱中心15の両方をホスティングしながら望ましくない失透を経験することなく安定している。ガラスマトリックス5は、これに限らないが、平面パネル画像化システム内での使用を含む予想された動作状態で安定している。ガラスマトリックスはまた、結晶子を沈殿するのに十分熱安定している所望の前駆体結晶元素を含む組成を有してもよい。図(例えば、
図1a)では、発光中心10は緑色の円形で示されており、散乱中心15は青色の六角形で示されている。しかし、図の形状および色は例示的目的のみであり、元素の形状はガラスマトリックス5内で異なっていてもよい。また、図に示した発光中心10および光散乱中心15のサイズは、単に例示的ものである。さらに、ガラスマトリックス5のサイズおよび色(水色)も、例示的目的のみである。
【0039】
開示の態様によると、ガラスマトリックス5は、自己吸収を防ぐために、放出された波長で高度の透明度を有する。低いフォノンエネルギーマトリックスは、マルチフォノンエネルギー伝達を介して非放射戻りを少なくすることによってシンチレーション効率を増加させるために好ましい。開示のいくつかの態様では、発光ガラスセラミック1Aはまた、フォトセンサアレイ600などのFPDエレクトロニクス用基板として働いてもよい。本態様によると、発光ガラスセラミック1Aは、これに限らないが、ガラス遷移温度、結晶化温度、融点、弾性係数、強度、硬度、および耐衝撃性などの必要な熱および機械性状を有してもよい。ガラスマトリックス5は、ハロゲン化物、酸化物、オキシハライド、ホウ酸塩、テルル化物、カルコゲニド、リン酸塩、ゲルマン酸塩、ケイ酸塩、フルオロケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、β-石英、β-リシア輝石リン酸塩、コージライトおよびその他などの系に基づいてもよい。
【0040】
本明細書で使用される発光中心という用語は、適当な放射によって励起される場合に発光を生じさせる、制御した方法で加えられた、材料内の意図した不完全性のことを言う。発光中心はまた、(ガラスマトリックスまたは結晶に意図して加えられた)本明細書では活性剤と呼ぶこともできる。発光中心10は、FPDによって容易に検出することができる光(UV、可視、および/または赤外線)に入射放射線を変換する元素、イオン、または化合物であってもよい。開示のいくつかの態様では、発光中心10の放出スペクトルは、大きな効率のために感光アレイ600の量子効率曲線を一致させてもよい。
図16は、知らせているフォトセンサアレイ600の量子効率曲線を示す。
【0041】
遷移金属(Z=22-30、および40-48)、希土類金属(Z=21、39、および57-71)、アクチニド(Z=89-103)、またはns2タイプ活性剤(Z=31、32、49-51、79、および81-83)の第1および第2の列からのイオンを含む発光中心として働くこともできる多くのアイテムまたはアイテムの組合せがある。結晶材料はまた、放出源(発光中心)として働いてもよい。結晶は、固有または非固有のシンチレータのいずれであってもよい。発光結晶(scintillating crystals)および他の材料の組合せはまた、改善した光出力のために使用されてもよい。
【0042】
上に記載したように、ガラスマトリックス5は、発光中心10に加えて光散乱中心15を含む。本明細書で使用される光散乱中心という用語は、光の弾性散乱につながる、制御された方法で加えられる、透明な材料内の意図した不完全性のことを言う。発明者は、発光中心10および光散乱中心15の両方を使用することにより、単スクリーン構成および二重スクリーン構成の両方において画像化システム用の検出効率および性能を改善することが分かった。
【0043】
発明者は、ガラスマトリックス5内の光散乱中心15は、画像化システム内の放出の「光捕捉」を防ぐために重要であることが分かった。源(
図2a)によってトリガされる発光イベント中、放出される光は全方向性である(
図2b)。したがって、光の大部分は、全内部反射(TIR)、すなわち光捕捉につながる臨界角より大きい角度で発光媒体と外部媒体の間のインターフェースで入射する。「捕捉された」光は、発光媒体の側部から出る、または検出されることなく自己吸収されて、シンチレータ/検出器システムの効率を大幅に減少させる。臨界角は、以下の等式によって定義される。
【0044】
【0045】
式中、n1はシンチレータ媒体の屈折率であり、n2は外部媒体の屈折率である。
【0046】
しかし、開示の態様によると、ガラスマトリックス5内の光散乱中心15の存在は、大きな効率に対するこの「捕捉」効果における減少につながる。ガラスマトリックス5内の光散乱中心15は、シンチレータガラスセラミック1Aを逃がすことができるまで放出をリダイレクトし、フォトセンサアレイ600によって検出される、または内部でまたは裏当て層によって吸収され、いくつかの光量子はガラスマトリックス5内で自己吸収されてもよく、これは透明なマトリックスが望ましい理由である。結晶はまた、光散乱中心15であってもよい。
【0047】
オキシハライドマトリックス、または他のガラスシステム内で沈殿されてもよい結晶のいくつかの例としては以下、PbWO4、Yb2TeO6、PbTeO4、TeO2、CdF3、PbF2、BaF2、BaCl2、BaI2、BaBr2、CaF2、SrCl2、LaF3、Na、YF4、YLiF4、GdF3、およびTbF3が挙げられる。しかし、追加の酸化物、ハロゲン化物、または他のタイプの結晶を、ガラスマトリックス5内で使用してもよい(または、異なるタイプの結晶の組合せを使用してもよい)。合成に必要とされる化学物質は、化学組成または量のいずれかは、前駆体ガラスの形成に有害であるべきではない、すなわち、ガラス形成を可能にし、望ましくない結晶化を容易にしないようにしなければならない。オキシハライドガラスセラミックはまた、熱温度パラメータを介して制御することができる結晶子サイズによって高い透明度を有することができる。開示の態様では、結晶は、自己吸収により逃げた光量子の数を減少させるレベルに散乱長さを減少させるほど濃度は高くないが、シンチレーション放出波長で光散乱を可能にするのに十分大きいサイズであるべきである。開示のいくつかの態様では、結晶は約10nmより大きくてもよい。開示のいくつかの態様では、結晶のサイズは、シンチレーション放出波長の関数であってもよい。開示のいくつかの態様では、レベルは約1μmより大きくてもよい。
【0048】
図3aおよび
図3bは、散乱材料対透明材料において、検出器(フォトセンサアレイ600)に到達する光の量の差を示している。
図3aは散乱発光媒体内の光経路を示し、
図3bは透明な非散乱シンチレータを示している。放出の大きな割合が、散乱シンチレータで検出器に結合される。図では、光経路は矢印で示されている。入射放射線は、より長い矢印で示されている。検出器(フォトセンサアレイ600)は、入射放射線の反対側にある。
【0049】
開示の別の態様では、発光ガラスセラミック1Bはまた、
図1bに示すように、増感剤20を備えてもよい。本明細書で使用される増感剤という用語は、発光(luminescence)につながる、励起状態を誘導する隣接した活性剤にその励起エネルギーを伝達することが可能なイオンのことを言う。増感剤の存在は、シンチレーション効率を大きく改善する可能性がある。増感剤20は、
図1bでは赤色の星で示されている。しかし、図示は単なる例示であり、増感剤20の形状および色は異なってもよい。加えて、
図1bでの増感剤20のサイズは例示的目的のみである。増感剤20は、発光中心10へのエネルギー伝達を介してシンチレーション効率を大きくする。エネルギー伝達は、
図1bでは点線の矢印(赤色)で示されている。開示の一態様では、増感剤20は、Sb
3+およびBi
3+などのns
2イオン、Ce
3+、Pr
3+、Eu
2+、Gd
3+、Tm
3+、およびYb
3+などのランタニド、またはエネルギーを励起された状態から活性剤に伝達することが可能な他のイオンであってもよい。加えて、増感剤の注意深い選択により、大きな密度および大きな平均原子数を通して、大きなシンチレーション効率に対する材料のX線吸収を増加させてもよい。
【0050】
異なる増感アイテムの組合せを使用してもよい。合成物に追加される形のイオンは、前駆体ガラスの形成に有害であるべきではない、すなわち、ガラス形成を可能にしなければならず、シンチレータの透明度を望ましくなく変更する、および/または発光中心の効率に悪い影響を与える可能性がある望ましくない結晶化を容易にすべきではない。
【0051】
開示の別の態様では、同じ成分は、
図1cに示すように、発光ガラスセラミック1C内で発光中心10および光散乱中心15の両方として働いてもよい。結晶は、固有または非固有のシンチレータ材料のいずれであってもよい。例えば、ハロゲン化物結晶は、X線変換で使用されるセラミック内で発光中心10および光散乱中心15の両方として使用されてもよい。ハロゲン化物アニオンに対して希土類イオンの強い親和性があり、それによって、活性剤材料として容易に組み込まれてもよい。ハロゲン化物結晶の低いフォノンエネルギーは、改善されたシンチレーション効率に対する効率的ホストを作り出す。
【0052】
発光/散乱中心15Aが、紫色の八角形として
図1cに示されている。しかし、図示は単に例示的ものであり、発光/散乱中心15Aの形状および色は異なってもよい。加えて、
図1cでの発光/散乱中心15Aのサイズは例示的目的のみである。放出は緑色の矢印で示され、散乱された光は青色の破線矢印で示されている。例えば、Eu
2+などの活性剤でドープされてもされなくてもよい、上に記載したハロゲン化物結晶などの特定の結晶は、散乱中心および発光中心両方として働いてもよく、例えば、BaCl
2:Eu
2+およびBaCl
2、Y
3Al
5O
12、Zn
2SiO
4、PbWO
4などの他の非ハロゲン化物結晶はまた、発光および散乱中心両方として働いてもよい。
【0053】
増感剤20はまた、
図1dに示すように、発光ガラスセラミック1D内で発光/散乱中心で使用されてもよい。
【0054】
開示の一態様では、発光ガラスセラミック1は、入射放射線の効率的な吸収を可能にするように、約3.0g.cm-3などの十分な密度および適当な元素組成を有する。発光ガラスセラミック1の組成は、特定のタイプの入射放射線に調整されてもよい。開示の別の態様では、ガラスマトリックス5はまた、高Z素子を有する。本明細書で使用される高Z素子は、64より大きいまたはこれと等しい原子数を備えたあらゆる元素のことを言う。
【0055】
図4aは、変換層(発光ガラスセラミック変換層は、本明細書では「405」を使用して呼ばれる)として発光ガラスセラミック(集合的に本明細書では「1」を使用して呼ばれる)のいずれかを有する平面パネル検出器(FPD)400の一例(構造の例)を示す。(本明細書では感光記憶素子とも呼ばれる)フォトダイオード608およびTFT606(本明細書では切換素子とも呼ばれる)を含むフォトセンサアレイ600は、X線420の源(図示せず)の反対側にある。
図4aのFPD400は、正面照射(FI)モードである。
【0056】
感光記憶素子608は、光量子に応じて電気信号(電荷)を作り出す。フォトセンサアレイ600は、X線420を吸収し、光を作り出す発光ガラスセラミック変換層405と密接して配置させてもよい。
【0057】
電気信号は、(発光ガラスセラミック変換層405からそれぞれの感光記憶素子に到達し、感光素子に吸収される)全ての光量子に比例する。感光記憶素子608は、a-Si:Hフォトダイオード、MISタイプセンサ、または当業界で知られている他のセンサタイプであってもよい。切換素子106は、a-Si:Hタイプ、金属酸化物(MOTFT)タイプ、または当業界で知られている他のタイプの薄膜トランジスタ(TFT)素子であってもよい。各切換素子606は、感光記憶素子608に対応する。各切換素子606は、対応する記憶素子608から電気信号を読み出すために使用される。
【0058】
フォトセンサアレイ600はまた、これに限らないが、反対側にある偏倚金属層および金属層、および例えば、フォトダイオードの他の層(および他の誘電材料または層)などの追加の層(図面には図示せず)を含んでもよい。
【0059】
(様々な層なしで
図6に示された)フォトセンサアレイ600および周辺エレクトロニクスの一例が
図6に示されている。
図6の例は、3x3アレイを示している。したがって、例では、9つの画素614がある。しかし、
図6の画素の数は記述する目的で単なる例として示され、あらゆる数の行および列の画素を使用してもよい。画素の数は、FPD400での使用の特定の応用例に基づいていてもよい。
図4および
図6に示すように、画素は感光記憶素子608および切換素子606を含む。例では、切換素子606は画素614の隅に示されている。開示の他の態様では、切換素子606は他の位置にあってもよい。
【0060】
図6は、構造をスキャンし、その後、画像を作り出すための画像化システムの特定の構成部品を示す。画像は複数の画素614を有する。図示するように、スキャン制御ユニット605は、ゲートライン622を介して画素の各行に結合される。バイアス電圧は、感光記憶素子608に加えられる。透明な金属バイアス層は、バイアス電圧に使用される構成部品の例である。切換素子606はそれぞれのゲートライン622を介して制御される。切換素子606に電源が入れられると、それぞれのデータライン626に電荷を通過させる。各データラインは、複数の電荷増幅器608に接続される。
【0061】
複数の電荷増幅器608はマルチプレクサ610に結合される。マルチプレクサ610はその後、プロセッサ660に入力を供給するA/D615(変換器)に結合される。プロセッサ660は、切換素子606に電源を入れる/電源を切るためにスキャン制御ユニット605を制御する。プロセッサ660は、メモリ(
図6には図示せず)内に記憶素子/スイッチからの電気信号を記憶してもよい。画像は、メモリに記憶されたデジタル値を使用して作り出してもよい。電荷増幅器608は典型的には、カスタムASICチップ内で実装される。スキャン制御ユニット605は典型的には、ディスプレイ業界で利用可能なゲート制御チップで実装される。マルチプレクサ610は、増幅器からの接続の数を少なくし、ADCチャネルの数を少なくするために使用される。フォトセンサアレイ600からサンプリングされた大容量のデータを迅速に処理するために、メモリは典型的にはプロセッサ660内に含まれる。開示の一態様では、ホストコンピュータ650(例えば、別のプロセッサ)は、インターフェースを介してプロセッサ660に結合される。ホストコンピュータ650は、メモリバッファからデジタル画素情報を受信し、ディスプレイ(図示せず)上に画像の視覚的表現を作り出すことができる。
【0062】
スキャン制御ユニット605は、一回に一行連続して切換素子606の電源を入れたり切ったりしてもよい。画像化システムの他の素子は、当業者によく知られている。
【0063】
プロセッサ660は典型的には、平面パネル検出器と物理的に一体化され、ゲート制御チップ、増幅器チップ、バッファメモリ、およびホストコンピュータ650へのインターフェースと電子的に一体化されてもよい。チップは典型的には、その後、それぞれが数百のデータチャネルを処理してもよい特定用途向け集積回路(ASIC)として実装される。
【0064】
ホストコンピュータ650は、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサ、またはCPUまたはGPUなどのあらゆる他の処理ハードウェアであってもよい。メモリ(図示せず)は、プロセッサと別であってもよい(または一体化されてもよい)。例えば、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサは、これに限らないが、RAM、ROMおよび永続記憶装置などの少なくとも1つの記憶デバイスを含む。開示の一態様では、プロセッサは、コンピュータ読取可能記憶デバイスに記憶された1つまたは複数のプログラムを実行するように構成されていてもよい。
【0065】
開示の態様では、フォトセンサアレイ600は、その後、発光ガラスセラミック変換層405の表面上に直接堆積させてもよく、発光ガラスセラミック変換層405は通常のガラス基板層に代わるものとなる。これによりその後、BI(背面照射)X線画像化の使用が可能になり、X線は
図4bに示すように底部から入射する。これは、従来技術のFI(正面照射)システムでの同じ放射線量でのより鮮明な画像、または同じ鮮明度で低い放射線量画像につながる。
【0066】
図5は、二重スクリーン構成で変換層405として発光ガラスセラミック1のいずれかを有する平面パネル撮像装置(FPD)500の一例(構造の別の例)を示している。有利には、発光ガラスセラミック変換層405は、光検出器およびフォトセンサアレイ600用基板の両方として使用される。これにより、知られているFPDと同様に、別個の(非発光)ガラス基板層の必要性がなくなる(スクリーンとフォトセンサアレイの間で基板内に広がる光による鮮明度の損失、および他の有害な光パイピング効果の原因がなくなる)。さらに、このような配置により、同じ合計厚さの単一スクリーン上の空間的解像度が改善される。というのは、2つのスクリーンはフォトセンサアレイをはさみ、アレイに対する吸収イベントからの平均距離が少なくなり、したがって、光散乱の影響が最小限に抑えられるからである。2つのスクリーンの組み合わせた厚さはまた、空間的解像度を維持しながら、単一スクリーンより厚くされてもよく、より検出器が少ない放射線量を必要とすることにつながる。加えて、発光ガラスセラミック1からのより多くの光量子は、別個の基板層内のあらゆる吸収の廃止により、フォトセンサアレイ600に到達する。
【0067】
FPD500は、上(
図6)に記載したのと同様の方法で画像化システムで使用されてもよい。FPD500は、2つのスクリーン550、560(前面スクリーン550および背面スクリーン560)を含んでもよい。FIモードでは、前面スクリーン550は2つのスクリーンの放射線源に最も近くてもよい。フォトセンサアレイ600は、前面スクリーン550と背面スクリーン560の間に配置されてもよい。前面スクリーン550はフォトセンサアレイ600に面する表面Bを有する。背面スクリーン560はフォトセンサアレイ600に面する表面Cを有する。
【0068】
前面スクリーン550は、発光蛍光層(scintillating phosphor layer)580または材料を備えてもよい。例えば、前面スクリーン550は、入射X線420を捕捉し、捕捉したX線を光量子525に変換してもよい蛍光結晶を含んでもよい(図を単純化するために
図5には1つの代表例のみ示されている)。いくつかの例では、スクリーン550は粉末または粒状タイプ(例えば、GdO
2S
2:Tb、CaWO
4、BaFCl:Eu)であってもよい。他の例では、スクリーン550は、GdO
2S
2:Tbなどの「標準的」スクリーンに特有であるマイクロンサイズの粒子より、量子ドットなどのナノメートルサイズの粒子からなっていてもよい。さらに他の例では、発光材料はペロブスカイトタイプであってもよい。前面スクリーン550は、可視光領域内で光量子(例えば、光量子バースト)を放出してもよい。
【0069】
開示の他の態様では、前面スクリーン550は、構造化された発光層を備えてもよい。例えば、前面スクリーン550は、入射X線420を捕捉し、捕捉したX線を光量子525に変換してもよい発光蛍光針構造を含んでもよい。いくつかの例では、前面スクリーン550は、CsI:Tlからなる真空堆積針構造であってもよい。CsI:Tlが使用される場合、前面スクリーン550は、約550nm領域内で光を放出してもよい。開示の他の態様では、液体発光材料を使用してもよい。いくつかの例では、異なるタイプの発光材料およびタイプの組合せを使用してもよい。
【0070】
スクリーン550、560は異なる厚さを有してもよい。
図5に示すように、背面スクリーン560は、前面スクリーン550より厚い。これは、より薄い前面スクリーンがX線の入射する空間的パターンで細かい細部を捕捉することを可能にし、より厚い背面スクリーンが、入射するX線束のいくつかがその後、前面スクリーン550によって捕捉されないという事実を補償する。前面スクリーン550が厚ければ厚いほど、より少ない入射X線420が背面スクリーン560に到達する。したがって、各スクリーンの厚さは、信号対雑音比を含む特定の性能需要に基づいて判断されてもよく、FPD500が使用される特定の応用例に基づいてもよい。
【0071】
発光ガラスセラミック変換層405の表面Cは円滑である。表面Cは、電子構成部品用基板に必要な基準を満たす平滑度を有する。例えば、平滑度は約1nmRMSであってもよい。開示の他の態様では、平滑度は約1から約5nmRMSであってもよい。開示のさらに他の態様では、平滑度は約5nmから約20nmRMSであってもよい。一方または両方のスクリーン550、560は、任意の裏当て層510を含んでもよい(裏当て層は前面スクリーンでは図示しない)。しかし、裏当て層510は、前面スクリーン550のシンチレーション部分に対するサポートを提供してもよい。加えて、裏当て層510は、特定の応用例(吸収性または反射性)に対する画像化性能を改善する、スクリーン内で作り出された光量子の波長で光学特徴を有してもよい。例えば、裏当ての光反射率は、画像化信号対雑音比を最大限にするために極めて高くても、または画像化空間的解像度を最大限にするために低くてもよい。例えば、開示の一態様では、裏当て510の拡散光反射率は、画像化信号対雑音比を最大限にするために極めて高く(約90%より上)ても、目的が画像化空間解像度を最大限にすることである場合には低くても(約10%より下)てもよい。
【0072】
いくつかの態様では、裏当て層510は背面スクリーン560から省略してもよい。前面スクリーン550はまた、必要に応じて、保護層505を含んでもよい。例えば、保護層505はプラスチックフィルムであってもよい。
【0073】
入射X線420は、前面スクリーン550(発光前面スクリーン)によって完全に捕捉されなくてもよい。というのは、材料は入射X線の全てを吸収するのに十分な厚さを有していない可能性があるからである。捕捉されなかった(および変換されなかった)X線は、前面スクリーン550およびフォトセンサアレイ600を通過し、発光ガラスセラミック変換層405に到達してもよい。したがって、開示の態様によると、発光ガラスセラミック変換層405は、フォトセンサアレイ600が、前面スクリーン550によって変換されないまたはすることができないX線から誘導された余分な光量子を利用するのを容易にする。二重スクリーン構成では、フォトセンサアレイ600は、両方のスクリーン550、560からの光量子を電気信号に変換するように構成されている。それぞれの切換素子606から延びる垂直線は、画素の境界を示す。
【0074】
図7は、高いエネルギー光量子に対する変換層405として発光ガラスセラミック1のいずれかを有する平面パネル撮像装置(FPD)700の一例(構造の別の例)を示している。開示の本態様では、FPD700はまた積層705を有する。フォトセンサアレイ600は、入射X線またはガンマ線420Aと反対側で発光ガラスセラミック変換層405の表面に配置されている。積層705は、入射X線またはガンマ線420Aの近くで発光ガラスセラミック変換層405の表面に配置されている。
【0075】
積層705は、高エネルギービームとの相互作用の際、前方散乱した光量子および電子710を提供することによって感度を増加させてもよい(図を単純化するために電子の1つの代表例のみが示されている)。散乱された光量子および電子710は、発光ガラスセラミック変換層405に入り、画像信号として光を作り出すためにエネルギーを堆積させる。いくつかの態様では、積層705は、これに限らないが、銅、真鍮、鉛または鉛入りガラスであってもよい。
【0076】
ここで、入射X線420Aは、放射線腫瘍学のプラクティスでポータル画像化の特徴として、0.3から20MeV範囲のエネルギーを有してもよい。有利には、フォトセンサアレイ600は、発光ガラスセラミック変換層405の表面上に直接堆積させてもよい。
【0077】
開示のいくつかの態様では、発光ガラスセラミック1は、円錐ビームコンピュータ断層撮影などの高エネルギーX線ビームを必要とする応用例に対してFPDのスクリーンに組み込まれてもよく、既存の検出器は比較的良くない性能を有する。他の態様では、発光ガラスセラミック1は、画像ガイド手術および一般的放射線学を含む他の臨床応用例で使用されてもよい。
【0078】
検査
発光ガラスセラミックを製造する。セラミックは、オキシハライドマトリックス、Tb3+発光中心、BaCl2光散乱中心、および増感剤Gd3+を有する。発明者は、オキシハライドガラスシステムは、大きなシンチレーション効率に対する低い光量子エネルギー、および希土類元素の大きな割合をホスティングするための能力を含む多くの好ましい性状を有することが分かった。三価テルビウムは、FPD内の感光記憶素子に十分適した好ましい放出スペクトルを備えた明るいシンチレータである。光散乱中心として主に使用されるが、BaCl2はまた、シンチレータであり、材料の明るさを加える。ガドリニウムは増感剤であり、より高い原子数(高Z)および大きな密度を介してガラスセラミックのX線吸収を増加させる。
【0079】
発光ガラスセラミックは、(52-x)B2O3-5SiO2-10BaCl2-10GdF3-xTb2O3-23Li2Oの形の分子割合の組成を達成するために粉末を混合することによって作られ、xは0、2、4、6、および8である。組成は一方ではセラミック内にTb3+を有するが、Tb2O3の代わりにTbF3、Tb4O7、TbO2、および/またはTb6O11を置換することなどでこれを達成する異なる組成もある。
【0080】
粉末を1000℃の温度に加熱し、溶融ガラスを作り出す。400℃で真鍮金型内に注ぐ前に溶融ガラスの温度を975℃まで減少させ、975℃への温度減少は、材料内の気泡を減らすための微細化ステップであり、組成および他の要因によって必要ない可能性がある。
【0081】
材料が常温まで約1.5℃毎分の割合で冷却されると、BaCl2結晶はガラスマトリックス内で自然に沈殿して、ガラスセラミック材料を形成する。全体的プロセスがアルゴン環境で起こるが、全酸化物出発物質を備えたものなどの特定の組成は、不活性環境が必要ない可能性がある。他の組成では、セラミングとしても知られる別の熱温度ステップは、結晶を沈殿させるために必要である可能性がある。
【0082】
粉末を溶融プロセス前に乾燥させるが、粉末の吸湿性によって、乾燥ステップは必要ない可能性がある。発光ガラスセラミックは、室温までゆっくり冷却されるので、内部応力減少のために焼鈍され、焼鈍は別のステップとして起こる可能性もある。
【0083】
発光ガラスセラミックは真鍮金型内で形成され、最終形状および表面仕上げは材料の分割および研磨によって決められる。転動およびプレス成形などの、発光ガラスセラミックを形成する他の方法が存在する。焼鈍は、内部応力を軽減するためのこれらの形成プロセスの後に起こる可能性もある。
【0084】
粉末処理などの、発光ガラスセラミックを作り出すための代替方法がある。粉末処理では、ガラス原料が焼結され、その後、部分的に結晶化される。加えて、これに限らないが、噴射、テープおよびスリップ鋳造、静水圧プレス成形、または押出成形を含む、他のセラミック処理技術をその製造において利用することができる。他の態様では、ガラスセラミックはまた、ソルゲルルートを通して得られる可能性がある。
【0085】
出来上がった状態のガラスおよび熱処理されたサンプル(ガラスセラミック)のX線回折測定は、x軸上で20°から80°(2θ)の2θ範囲でPhilips X’Pert MRD X線回折計(PANalytical Inc.、Westborough、マサチューセッツ州、米国)上で行われた。スキャン速度ステップサイズは0.05°であり、時間ステップは10または30秒のいずれかである。
【0086】
X線回折(XRD)実験では、
図8に示すように、発光ガラスセラミック内でBaCl
2結晶子の存在を確認した。
図8は、Tb
2O
3の5つの異なる割合を備えた、上に記載したように作られた発光ガラスセラミック用回折パターン(強度)を示し、(a)は0% Tb
2O
3であり、(b)は2% Tb
2O
3であり、(c)は4% Tb
2O
3であり、(d)は6% Tb
2O
3であり、(e)は8% Tb
2O
3である。斜方晶系BaCl
2(PDF#00-024-0094)用パターンは、対照(f)で示されている。粉末回折ファイルは、回折データ用情報センタから得られる。
図8に示すように、斜方晶系BaCl
2パターン(f)に関連付けられた回折ピークは、回折パターン(a)~(e)で明らかに見ることができる。例えば、22.0°、23.9°、31.0°、および34.2°などのより目立つピークでの合理的な一致がある。
【0087】
示差走査熱量測定法(DSC)(Netzsch DSC 200 F3)スキャンは、10K毎分の速度で300℃から590℃で各出来上がった状態のサンプルに対して行われた。
図9に示すように、スキャンにより、サンプル、例えば発光ガラスセラミックが非結晶質(ガラス質)相を含んでいることが確認された。これは、全てのサンプルに対して430から455℃の間のガラス遷移温度(スキャンが湾曲または減少する温度)の存在によって示されている。
図9は、Tb
2O
3の5つの異なる割合を備えた、上に記載したように作られた発光ガラスセラミックに対するスキャンを示し、(a)は0% Tb
2O
3であり、(b)は2% Tb
2O
3であり、(c)は4% Tb
2O
3であり、(d)は6% Tb
2O
3であり、(e)は8% Tb
2O
3である。
【0088】
DSC結果はまた、ガラス遷移温度に到達するまで生じる熱イベントがないので、材料の必要な熱安定性を示し、a-Si:H TFTアレイに対する最大処理温度は300℃の低さである可能性がある。スキャンは、ガラス遷移温度まで比較的平坦である。
【0089】
図10は、Tb
2O
3の5つの異なる割合を備えた、発光ガラスセラミックの密度、例えば、Tb
2O
3含有量の関数としての密度を示している。密度は、測定した質量および容量から算出される。密度の差は僅かで、実験不確実性内であり、密度測定は全てのサンプルに対して3.2から3.5g・cm
-3である。構成元素のX線減衰性状と組み合わされた(
図10に示すような)これらの密度は、(
図11に示すような)適切なX線質量減衰係数を材料に与え、それによって機能シンチレータを実用的寸法で作り出すことができる。
図11は、60keVエネルギーでTb
2O
3含有量の関数として、各サンプル、例えば、発光ガラスセラミック用の計算されたX線質量減衰係数を示している。棒は、密度決定における実験不確実性を示す。
【0090】
所与のエネルギーに対するサンプルによるX線減衰は、その密度およびX線質量減衰係数によって決められる。材料を通したX線の伝達は、指数関数減衰原理によって記載されてもよい。
【0091】
【0092】
式中、Ioは単一エネルギー光量子のビームの入射強度であり、Iは伝達された強度であり、μ/ρはX線質量減衰係数、xは質量厚さである。質量厚さxは質量毎単位面積として定義される:
x=ρt (3)
【0093】
式中、ρは材料の密度であり、tはその厚さである。密度および質量減衰係数のより大きな値は、大きなX線減衰につながる。
【0094】
図12は、3.3g・cm-
3および60keVのX線の想定密度に基づいた各公称組成式対厚さの計算された減衰を示し、(a)は0% Tb
2O
3であり、(b)は2% Tb
2O
3であり、(c)は4% Tb
2O
3であり、(d)は6% Tb
2O
3であり、(e)は8% Tb
2O
3である。約5mm以上の厚さで、合計減衰は、
図12に示すように、60keVのX線放射線での全てのサンプルに対して100%に近づく。
【0095】
約2mmの厚さで、合計減衰は90%に近いまたはそれより上である。
図12は、高い合計減衰をさらに達成しながら、セラミックを異なる厚さでFPDに対して使用してもよいことを示している。厚さは、FPDが小型であり、同時に、フォトセンサアレイ600用基板である機械的要件を満たすのに十分厚いようになっていてもよい。例えば、セラミックは少なくとも約5mmであってもよい。他の態様では、セラミックは少なくとも約7mmであってもよい。厚さは、信号対雑音比が最大限にされるようになっていてもよい。
【0096】
X線シンチレーション出力は、特に修正されたX線平面パネル検出器で測定され、商業用間接FPD(AXS-2430FDi, Analogic Canada Corporation)のハウジングは、発光ガラスセラミックを感光アレイ(TFTおよびフォトダイオードアレイ層)と直接接触するように押すことができるように修正される。さらに、修正されたX線平面パネル検出器は、入射X線ビームが最初に発光ガラスセラミック(前面照射)を通して、または最初にTFT/フォトダイオード読み出し(背面照射)を通して入るように回転させることができる。
【0097】
組成50B
2O
3-5SiO
2-10BaCl
2-10GdF
3-2Tb
2O
3-23Li
2Oを備えたサンプル(発光ガラスセラミック)は分割され、その後、紙やすりを使用していくつかの異なる厚さに研磨される。このシリーズのサンプルは、5.00、2.50、1.25、および0.63±0.10mmに研磨される。サンプルは、これらを成形および研磨するのに必要な力に耐えるために必要な性状を有するように示され、0.63±0.10mmの厚さの自立型構造として存在することができる。サンプルは特徴付けられながらその完全性を維持し、その機械的耐久性および化学的安定性を示す。
図13は、強度、例えば、(a)前面および(b)背面照射構成で、様々な厚さの発光ガラスセラミックに対するX線シンチレーション出力を示している。各サンプル(発光ガラスセラミック)は、2% Tb
2O
3を含む。円は前面照射、四角は背面照射である。
図13はまた、発光ガラスセラミックは様々な形状に形成されるための能力、および必要な機械的耐久性を有することを示している。強度は任意の単位である。棒は、強度決定における実験的不確実性を示す。出力信号は、X線吸収における増加による厚さで最初上昇し、その後、(特にFIの場合)平坦または実際は減少する。減少は、光吸収による、材料内の深さでの光逃げ効率の減少を示す。
【0098】
発光ガラスセラミックは、組成依存である調整可能性状を有する。
図14に示すように、(例えば、Tb
2O
3の形で)組成に加えられるドーパント、Tb
3+の量は、材料のシンチレーション性能に大きな影響を有する可能性がある。ドーパントは、他の方法で追加されてもよい。
図14は、様々な量のTb
2O
3を備えた発光ガラスセラミック用X線シンチレーション出力を示す。各サンプルの厚さは5.0mmである。測定は、背面照射構成で行われる。分かるように、6% Tb
2O
3を有する発光ガラスセラミックは、5つの異なるサンプルの最高出力を有する。強度は任意の単位である。棒は、強度決定における実験的不確実性を示す。
【0099】
X線励起放出スペクトルは、カスタムセットアップで測定され、サンプルは76.2mm積分球(Labsphere, Inc.)の入力ポートに配置され、タングステン陽極X線管を使用して放射されて、標準的RQA9ビーム品質(120kVp管電圧、40mmAlろ過)を作り出す。得られたX線発光性光(x-ray luminescent light)は、CCDタイプ光学分光計(Spectral Products SM242, Putnam, CT)に向けられる。積分時間は35msである。
【0100】
図15は、2% Tb
2O
3放出を含む発光ガラスセラミックのサンプルのX線励起放出スペクトルを示しており、Tb
3+からの放出がスペクトルに対して支配的であり、約490(
5D
4→
7F
6)、545(
5D
4→
7F
5)、および590nm(
5D
4→
7F
4)を中心とするTb
3+に起因するピークが見られる。Tb
3+の緑色放出は、知られている非晶質シリコン検出器の量子効率曲線への優れた適合である。約402nmで集中されるBaCl
2からの放出は、比較して極めて小さいが、信号全体への貢献を行っている。
【0101】
薄膜(コーティング)
開示の他の態様では、発光(またはシンチレータ)薄膜をガラス基板上にコーティングまたは堆積させてもよい。開示のいくつかの態様では、発光薄膜は、発光中心および光散乱中心、および発光ガラスセラミックとしてガラスマトリックスを含む、上に記載した同様の構成部品からなっていてもよい。膜はまた、1つまたは複数の増感剤からなっていてもよい。
【0102】
薄膜は、これに限らないが、化学蒸着、物理蒸着、変換コーティング、イオンビーム堆積、噴霧、または物理コーティングプロセス(スピンおよびディップコーティング)を含む様々な薄膜堆積方法を介して合成することができる。
【0103】
図17は、開示の態様による、薄膜を製造する方法の一例を示している。S1700では、堆積用対象が形成される。対象は、発光中心、光散乱中心およびガラスマトリックスからなる膜を堆積するために必要な材料を含む。対象はまた、増感剤の堆積を可能にするための材料を含んでもよい。発光中心は、元素、イオン、または化合物である可能性がある。いくつかの態様では、発光中心は、ハロゲン化物(ヨウ化セシウムおよび塩化バリウム)、ケイ酸塩(オルトケイ酸ガドリニウムおよびオキシオルトケイ酸ルテチウムイットリウム)、または硫化物(酸硫化ガドリニウム)などの結晶であってもよく、他の結晶質材料を使用してもよい。これらの発光中心はさらに、ユウロピウム、セシウム、テルビウム、タリウム、またはシンチレーション性能(そのイオン)を増加させるための他のドーパントの1つまたは複数を含んでもよい。結晶質材料はまた、光散乱中心として働いてもよい。他の態様では、追加の材料も光散乱中心として働いてもよい。
【0104】
開示の一態様では、発光(またはシンチレータ)薄膜1805は、TFT堆積に必要な領域において熱的に安定しており、平面連続層として合成することができる。
【0105】
S1705では、発光中心、光散乱中心およびガラスマトリックスを堆積させるために必要な材料は、回転する対象ホルダに取り付けられている。回転している対象ホルダは、堆積基板、例えば、ガラス基板で堆積チャンバ内に配置されている。堆積チャンバは、約10-5Torrより下に保たれる。しかし、圧力は異なる組成で変更されてもよい。S1710では、レーザがガラスマトリックスに使用される材料の上にパルスされる。レーザのエネルギーは、ガラスマトリックスに使用される材料に左右されてもよい。レーザは、第1の回数だけパルスされる。第1の回数は、膜の厚さおよび使用される対象材料に左右されてもよい。S1715では、レーザは、発光中心および光散乱中心(および、含まれている場合は増感剤)に対する材料上にパルスされる。レーザのエネルギーは同じであってもよい。他の態様では、エネルギーは、使用される材料によって異なっていてもよい。レーザは、第2の回数だけパルスされる。第2の回数は、膜の厚さおよび使用される材料に左右されてもよい。S1710およびS1715は、第3の回数繰り返される。また、第3の回数は、層の厚さおよび使用される材料に左右されてもよい。
【0106】
開示の態様によると、(コーティングとしての)発光(またはシンチレータ)薄膜の使用は、溶融クエンチまたは粉末処理などの伝統的な方法を介して合成されたバルクガラスセラミックで応用可能でないことがある特定の発光材料を利用する機会を提供する。バルク合成方法は、ガラスマトリックスと互換性のある材料を使用しなければならなく、ガラス比率にシンチレータをかなり制限する可能性がある。しかし、
図19a、
図19bおよび
図20に示す(コーティングとしての)発光(またはシンチレータ)薄膜は、アブレーション対象内に形成される発光中心および光散乱中心材料を使用して、ガラス比率に対して高いシンチレータでガラスセラミック膜を合成する能力を示す。パルスレーザ堆積(PLD)は、対象材料をアブレーションし、基板に向ける。発光中心、光散乱中心およびガラスマトリックス材料は、アブレーションされ、基板に向けられて、物理的に組み合わされたガラスセラミックにつながる。
【0107】
上に記載した薄膜は、FPDのスクリーン内に組み込まれてもよい。X線を検出するためにFPD内に組み込まれる場合、コーティング厚さ(膜厚さ)は、大きなX線吸収および改善されたシンチレーション歩留まりに対して増加させることができる。発光中心対ガラスマトリックス比はまた、シンチレーション歩留まりを改善するために増加させることができる。いくつかの態様では、FPDは1つのスクリーンまたは二重スクリーンを有してもよい。
【0108】
図18は、二重スクリーン構成のFPD1800の一例(構造の別の例)を示し、背面スクリーン560Aはガラス基板1810上にコーティングされた発光ガラスセラミック変換層(シンチレータ薄膜)1805を備えている。シンチレータ薄膜1805は、
図17に記載した方法で、ガラス基板1810上にコーティングされてもよい。しかし、シンチレータ薄膜をコーティングする他の方法を使用してもよい。
図18はまた、フォトセンサアレイ600用基板として働く、任意のガラス薄膜1815を示している。これは、薄いガラス基板層はフォトセンサアレイ600用の既存の電子製造設備と互換性がある必要がある物理的性状を有するように選択してもよいという利点がある。任意のガラス薄膜1815は、ガラスとして堆積された材料上のレーザのパルスを使用して製造してもよい。任意のガラス薄膜1815は、空間的解像度を大きくする、中に広がる光を減少させるために薄くてもよい。パルスの数およびレーザのエネルギーは、材料および厚さに左右されてもよい。任意のガラス薄膜1815は、TFT堆積に必要な領域内で熱的に安定しており、平面連続層として合成することができる。
【0109】
開示のいくつかの態様では、シンチレータ薄膜1805は、円錐ビームコンピュータ断層撮影などの高エネルギーX線ビームを必要とする応用例に対してFPDのスクリーンに組み込まれてもよく、既存の検出器は比較的良くない性能を有する。他の態様では、シンチレータ薄膜1805は、画像ガイド手術および一般的放射線学を含む他の臨床応用例で使用されてもよい。
【0110】
例示的製造
発光および光散乱中心の両方として働くBaCl2:Eu2+、およびパルスレーザ堆積を介してSiO2ガラス基板上に堆積された非結晶質Siマトリックスからなるプロトタイプが開発された。エキシマレーザが、発光および散乱中心を作り出すための押圧されたBaCl2:Eu2+粉末の対象、およびガラスマトリックスを作り出すためのSi対象をアブレーションするために使用される。対象材料は、対象ホルダに固定され、レーザはガラスセラミック膜を合成するために各材料上にパルスを交互に発する。マトリックスは最初、1000レーザパルスを使用してSi対象上に、その後、5000レーザパルスを使用してBaCl2:Eu2+対象上に堆積される。この順書が、合計500サイクル繰り返される。ガラスセラミック薄膜はその後、Si対象上の1000レーザパルスにより、任意のガラス保護層でキャップされる。
【0111】
図19aは、上記記載により製造されたような非結晶質Siマトリックス内のBaCl
2:Eu
2+膜のSEM断面画像を示している。膜のより高い拡大図が挿入されている。
図19bは、SEM画像内の膜の異なる部分を示す図である。
【0112】
図20は、可視光および45keVのX線に露出された非結晶質ホウケイ酸塩マトリックス内のBaCl
2:Eu
2+膜を示している。分かるように、X線に露出されると、TFT/フォトダイオードアレイによって検出可能な測定可能信号を作り出す膜が発光し、したがって画像化に使用されてもよい。2つの半円形状は、堆積プロセス中に基板をマスキングすることによって作り出されるガラス基板のコーティングされていない部分である。
【0113】
記載では、「約」という用語は、変更が図示した開示に対するプロセスまたは構造の不適合につながらない限り、挙げられた値をいくらか変更してもよいことを示す。例えば、ある要素について「約」という用語は±0.1%の変更を、他の要素について「約」という用語は±1%、±10%または±20%の変更を、またはその中のあらゆる点のことを言うことができる。
【0114】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的としており、発明を限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、内容がそうでないと明確に示していない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、本明細書で使用される場合に、「備えている」および/または「備えた」という用語は、記した機構、整数、ステップ、動作、要素および/または構成部品の存在を特定するが、1つまたは複数の他の機構、整数、ステップ、動作、要素、構成部品の存在または追加、および1つまたは複数の他の機構、整数、ステップ、動作、要素、構成部品、および/またはその群の追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0115】
もしあれば、以下の特許請求の範囲における、全ての手段またはステッププラス機能要素の対応する構造、材料、動作、および同等物は、特に請求するような他の請求する要素と組み合わせて機能を行うためのあらゆる構造、材料、または動作を含むことを意図している。本発明の記載は、図示および記載する目的で提示されているが、開示した形に発明を徹底させるまたは限定することを意図したものではない。多くの変更形態および変形形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には自明であろう。実施形態は、発明の原理および実用的応用例を最良に説明するため、および当業者が考えられる特定の使用に適したような様々な変更形態と合わせて様々な実施形態に対して本発明を理解するために選択および記載されている。
【符号の説明】
【0116】
1A 発光ガラスセラミック
1B 発光ガラスセラミック
1C 発光ガラスセラミック
1D 発光ガラスセラミック
5 ガラスマトリックス
10 発光中心
15 光散乱中心
15A 発光/散乱中心
20 増感剤
106 切換素子
400 平面パネル検出器
405 発光ガラスセラミック変換層
420 X線
500 平面パネル撮像装置
505 保護層
510 裏当て層
525 光量子
550 前面スクリーン
560 背面スクリーン
580 発光蛍光層
600 フォトセンサアレイ
605 スキャン制御ユニット
606 切換素子
608 フォトダイオード、感光記憶素子、電荷増幅器
610 マルチプレクサ
614 画素
615 A/D
622 ゲートライン
626 データライン
650 ホストコンピュータ
660 プロセッサ
700 平面パネル撮像装置
705 積層
710 電子
1800 平面パネル撮像装置
1805 発光(またはシンチレータ)薄膜
1810 ガラス基板
1815 ガラス薄膜
【国際調査報告】