IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

特表2023-511517不可逆的エレクトロポレーション(IRE)電極上の灌注を使用して、アーク放電を阻止すること
<>
  • 特表-不可逆的エレクトロポレーション(IRE)電極上の灌注を使用して、アーク放電を阻止すること 図1
  • 特表-不可逆的エレクトロポレーション(IRE)電極上の灌注を使用して、アーク放電を阻止すること 図2
  • 特表-不可逆的エレクトロポレーション(IRE)電極上の灌注を使用して、アーク放電を阻止すること 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】不可逆的エレクトロポレーション(IRE)電極上の灌注を使用して、アーク放電を阻止すること
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230313BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20230313BHJP
   A61N 1/32 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61B18/14
A61N1/05
A61N1/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540396
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2020050681
(87)【国際公開番号】W WO2021136976
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】16/731,238
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053CC03
4C053JJ02
4C160KK03
4C160KK28
4C160KK38
4C160KK57
(57)【要約】
医療用プローブは、シャフト及びフレームを含む。シャフトは、患者の器官の中に挿入するように構成されている。フレームは、シャフトの遠位端部に連結され、(i)フレームの外側表面上に配設され、電圧パルスを印加することによって不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び(ii)電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌注を用いた不可逆的エレクトロポレーションのためのシステムであって、
医療用プローブであって、
患者の器官の中に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に連結されたフレームであって、
前記フレームの外側表面上に配設され、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び
前記電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を備える、フレームと、を備える、医療用プローブと、
IREパルスを生成し、かつ前記組織をエレクトロポレーションするように、前記電極のうちの隣接する電極間に前記IREパルスを印加するように構成された、発生器と、を備える、システム。
【請求項2】
前記灌注チャネルが、前記電極の縁部の近くに位置し、前記灌注流体を前記灌注チャネルからその周囲環境の中に流すように構成された、1つ又は2つ以上の灌注穴を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記灌注チャネルが、前記電極に熱的に連結され、閉回路内に前記灌注流体を流して、前記電極の縁部から熱を除去するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記灌注チャネルが、熱伝導性材料で作製されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記熱伝導性材料が、ニチノールを含む、請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に侵襲性医療用プローブに関し、特に不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)のためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
組織への高電圧不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスの送達は、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2011/0202052号は、前立腺体積を減少させることではなく、尿道壁を侵食することによって、前立腺を通る尿道の内径を増大させることにより、尿流を改善するシステムについて記載している。これは、尿道壁への電界の浸透深さを制限する特別に設計されたIRE電極によって行われる。一実施形態では、電極を運ぶカテーテルは、中空にすることができ、灌注穴が追加され得る。そのような穴を使用して、冷却用の生理食塩水溶液、及び疼痛低減などのための手順を支援するための薬剤を送達することができる。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2018/0296264号は、十二指腸粘膜を調節するためにエレクトロポレーションを使用することによって肥満及び糖尿病を治療するためのいくつかのデバイス及び方法について記載している。いくつかの実施形態では、導電性液体が流れ得るルーメン(例えば、灌注ルーメン)を含む内視鏡が使用される。エレクトロポレーションデバイスが使用されるとき、導電性液体は、内視鏡のルーメンを通って流れ、その後、エレクトロポレーションデバイス内で膨張した近位バルーンと遠位バルーンとの間の十二指腸内に常在することができる。この配置では、エレクトロポレーションデバイスの通電された電極からのエネルギーは、導電性液体によって、十二指腸粘膜の陰窩内を含む十二指腸粘膜に伝導することができる。
【0004】
米国特許第9,877,781号は、直流組織治療のための不関電極を備えた電極カテーテルデバイスについて記載している。カテーテルデバイスの例は、少なくとも1つのアブレーション電極を備えた可撓性チューブを有する。カテーテルデバイスはまた、患者の体内に可撓性チューブを導入するためのシースと共に使用され得る。シース上の不関電極は、電気エネルギーを送達し、電界隣接組織を作成するための直流(direct current、DC)パルスのための接地を提供することができる。様々な他の実施形態も開示される。灌注カテーテルの一実施形態では、先端電極及び/又は先端アセンブリ内の他の位置は、例えば、電極のうちの2つ又は3つ以上の間の複数の開口部と共に形成され得る。中央ルーメンは、一方の端部の流体フィッティング、及びもう一方の端部のポートと流体連通することができる。したがって、導電性流体又はゲルは、内部チューブを通して注入され、ポートから分泌されて、電流路を形成し、電極間の電流の伝導を促進することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、シャフト及びフレームを含む医療用プローブを提供する。シャフトは、患者の器官の中に挿入するように構成されている。フレームは、シャフトの遠位端部に連結され、(i)フレームの外側表面上に配設され、電圧パルスを印加することによって不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び(ii)電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、灌注チャネルは、電極の縁部の近くに位置し、灌注流体を灌注チャネルからその周囲環境の中に流すように構成された、1つ又は2つ以上の灌注穴を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、灌注チャネルは、電極に熱的に連結され、閉鎖回路内に灌注流体を流して、電極の縁部から熱を除去するように構成されている。
【0008】
一実施形態では、灌注チャネルは、熱伝導性材料で作製されている。
【0009】
別の実施形態では、熱伝導性材料は、ニチノールを含む。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、シャフトの遠位端部に連結されたフレームを患者の器官の中に挿入することを含む方法であって、フレームが、(i)フレームの外側表面上に配設され、電圧パルスを印加することによって不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び(ii)電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を含む、方法が、さらに提供される。灌注流体は、灌注チャネルを介して圧送される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
図1】本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システムの概略描画図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による、図1の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテルの分解斜視図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、図2の組み立てられた不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
カテーテルベースの不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を使用して、(例えば、カテーテルの隣接する電極間に)高電圧双極パルスを印加し、パルスが印加される組織細胞を破壊するために必要な高い電界強度を達成することができる。例えば、バルーンカテーテルなどの医療用プローブは、バルーン上に配設された複数の電極を使用して、高電圧パルスを組織に印加するために使用することができる。バスケットカテーテル又はラッソーカテーテル(Biosense-Webster、Irvine、California製)などの電極を運ぶ他のタイプのカテーテルも、同様に使用することができる。しかしながら、高電圧は、パルスを印加する電極間にアーク放電を引き起こす場合があり、これにより、電界が低下し、過度に加熱される場合がある。
【0013】
アーク放電は、高電圧パルスが電極表面を加熱し、例えば電気分解によって、電極と接触している血液中に泡が生成されたときに発生する場合がある。泡により、双極インピーダンスが増加し、加熱によってより多くのガスが電極の周りに形成され得る。高電圧は、高インピーダンスガスを通して電流を生成し、イオン化されたプラズマを生み出し、アーク放電は、通常、電流密度が高く、温度が局所的にピークに達し得る電極の縁部(例えば、電極の周辺にわたる縁部位置)で生じる。
【0014】
以下に記載される本発明の例示的な実施形態は、灌注を使用して、気泡の形成を抑制するために血液を局所的に冷却することによって、アーク放電の可能性を低減する。アーク放電は電極縁部上で生じる傾向があるため、灌注をこれらの領域内に集中させることが好ましい。
【0015】
いくつかの例示的な実施形態は、フレームを備えた、患者の器官の中に挿入するためのシャフトを提供し、フレームは、シャフトの遠位端部に連結された拡張可能なフレーム又は固定フレームであり得る。フレームは、電圧パルスを印加することによってIREを組織に印加するように構成される、フレームの外側表面上に配設された複数の電極を含む。1つ又は2つ以上の灌注チャネルは、電極の近くに灌注流体を流して、電極の縁部で血液を冷却するように構成される。
【0016】
1つの例示的な実施形態では、灌注は、熱対流によって血液から熱を除去するために、開放されている(すなわち、灌注流体、典型的には生理食塩水がIREカテーテルから患者の中に吐出される)。別の例示的な実施形態では、灌注流体は閉回路内を通り、冷却流体は、電極と熱接触するチューブを使用してカテーテルから再循環されて、熱伝導によって血液から熱を除去する。
【0017】
これらの灌注方法は、別々に又は組み合わせて使用されるかどうかにかかわらず、IREパルスの組織への印加中に電極端部での血液の加熱を大幅に軽減し、そうすることで、アーク放電に有利な状態の構築を阻止する。
【0018】
典型的には、カテーテル全体で毎秒数十ミリワットの熱除去速度で十分なはずである。水の高熱容量により、対流による熱除去は、少なくとも毎分数ミリリットルの典型的な速度で、冷却生理食塩水を血液と混合する開放灌注で容易に達成可能である。例えば、灌注は、電極当たり数ワットの速度で、高周波バルーン電極から熱を容易に除去することができる。
【0019】
一方、水の熱伝導性による熱除去速度は、対流と比較してはるかに低い、例えば、約3桁も低いため、熱伝導はより注意深く実行する必要がある。それでも、閉回路灌注の形態及び材料の適切な設計(例えば、チューブと電極との間に良好な熱接触を有するニチノールなどの材料に有利になるプラスチックチューブを回避する)、並びにチューブを冷却するための低い生理食塩水温度は、熱除去の十分な速度を容易に提供することができる。
【0020】
開示された開回路及び閉回路の灌注IREカテーテルは、安全で電気的に効率的な様態でIRE治療の適用を可能にし、したがって、心不整脈のIRE治療などの侵襲性IRE治療の臨床転帰を改善することができる。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システム20の概略描画図である。システム20はカテーテル21を含み、カテーテルのシャフト22は、シース23を通って患者28の心臓26に挿入される。カテーテル21の近位端部は、コンソール24に接続されている。
【0022】
コンソール24は、カテーテル21を介してIREパルスを印加して、心臓26の左心房45内の肺静脈の小孔組織を不可逆的にエレクトロポレーションするためのIRE発生器38を備える。本明細書に記載される例示的な実施形態では、カテーテル21は、心臓26の別の組織を電気的に検知する及び/若しくは不可逆的にエレクトロポレーションするなどの任意の他の好適な治療並びに/又は診断目的で使用することができる。
【0023】
医師30は、患者28の脈管系を通してカテーテル22を挿入する。挿入図25に見られるように、シャフト22の遠位端部22aに固定される拡張可能なバルーンカテーテル40は、さらに図2に記載される、半球及び灌注の形態で高電圧絶縁被覆膜50を備える。被覆膜50は、「Irreversible-Electroporation (IRE) Balloon Catheter with Membrane-Insulated High-Voltage Balloon wires」と題された、2019年12月9日に出願された米国特許出願第16/707175号に記載されており、これは、本発明の特許出願の譲受人に譲渡され、この文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
シャフト22の挿入中に、バルーン40は、シース23の内側に畳み込まれた構成で維持されている。バルーン40を畳み込まれた構成で収容することにより、シース23はまた、血管外傷を最小限に抑える働きをする。医師30は、シャフト22の遠位端部を心臓26内の標的位置へとナビゲートする。
【0025】
シャフト22の遠位端部22aが標的位置に到達すると、医師30はシース23を後退させ、例えば、前述の拡張可能な膜によって画定された内部体積の中に生理食塩水を圧送することによってバルーン40を拡張する。次いで、医師30は、バルーンカテーテル40上に配設された電極55が小孔の内壁と係合するように、シャフト22を操作し、コンソール24を動作させて、電極55を介して高電圧IREパルスを小孔組織に印加する。
【0026】
コンソール24は、シャフト22の内側を通るパイプを介して生理食塩水をバルーン40の中に圧送する灌注圧送システム33を備える。灌注流体は、電極55の縁部上の灌注穴66から注がれて、対流によって血液を冷却し、アーク放電に有利な状態を回避する。
【0027】
コンソール24は、典型的には患者26の胸の周りに位置付けられるカテーテル21及び外部電極49から信号を受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路37を備えたプロセッサ41、典型的には汎用コンピュータを備える。この目的のために、プロセッサ41は、ケーブル39を通るワイヤによって外部電極49に接続されている。
【0028】
プロセッサ41は、通常、本明細書に記載の機能を実施するようにソフトウェアにプログラムされる。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0029】
図示されている例示的な実施形態は、具体的には心臓組織のIREのためのバルーンの使用に関するが、本明細書に記載されているシステム20の要素及び方法は、代替的に、拡張可能なフレームを有するアブレーションカテーテル、例えばバスケットカテーテル、及び固定フレームを有するカテーテル、例えばLasso(登録商標)カテーテル又はPentaRay(登録商標)カテーテルなどの他の種類の多重電極アブレーションデバイスを使用してアブレーションを制御する際に適用され得る。
【0030】
IRE電極上の灌注を使用して、アーク放電を阻止すること
図2は、本発明の例示的な実施形態による、図1の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテル40の分解斜視図である。
【0031】
バルーンカテーテル40の拡張可能な膜44は、膜44の近位膜部分46でシャフト22の遠位端部22aに取り付けられる。膜44は、長手方向軸42の周りに配設され、外側表面44a及び内側表面44bを有する。外側表面44aは周囲環境に露出されている一方、内側表面44bは、膜44によって画定されたバルーンの内部体積に露出している。
【0032】
拡張可能な膜44は、畳み込まれた形状(一般に細長いチューブ状構成)からバルーン(又は、一般に回転楕円体)形状部材まで拡張されるよう構成される。複数の電極55は、拡張可能な膜44の外側表面44a上に配設される。電極55は、膜44の遠位半球部分にわたって等距離で配置される。図示されている例示的な実施形態では、電極55の各々は、電極に高電圧を伝導するように電気的に接続される絶縁電気ワイヤ60を有する。電気ワイヤ60は、中空シャフト22を介してコンソール24に入る配線(図示せず)によってIRE発生器24の出力に連結される。
【0033】
各電極55の底面は、周囲環境に露出しておらず、典型的には膜44の外側表面44aに接合されている。
【0034】
境界52を有する拡張可能な被覆膜50は、ワイヤ60が膜44と被覆膜50との間に拘束されるように、被覆膜50と拡張可能な膜44との間にワイヤ60を封入する。このようにして、ワイヤ60は、IRE手順中に伝導する高電圧電気信号による誘電破壊に対する回復力を持つ。
【0035】
各電極55は、電極を取り囲む循環チューブ64を供給するチューブ62を有する。いくつかの例示的な実施形態では、循環チューブ64は、図3に記載されるように、灌注穴で固定されて、対流によって電極縁部を冷却する。他の例示的な実施形態では、循環チューブ64は、ニチノールなどの熱伝導性材料で作製され、各循環チューブ64は、それぞれの電極に熱的に連結されて、熱伝導によって電極の縁部を冷却する。
【0036】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、図2の組み立てられた不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテル40の側面図である。このように、複数の電極55の各々は、拡張可能な被覆膜50によって被覆されていない面積を画定して、電極が周囲環境に露出することを可能にする。
【0037】
複数の電極55は、被覆膜50が各電極55の近位縁部を封入するように、長手方向軸42の周りに等角度に配設される。典型的には、各電極55は、拡張可能な膜44の外側表面にそれ自体が接続又は接合されている基材53を介して、膜44の外側表面に連結される。
【0038】
図3で分かり得るように、各チューブ62は、(膜44の下の)バルーン40の内部体積内を通り、各チューブ62が膜44の形状に実質的に従うように、遠位端部22aから電極55のそれぞれの循環チューブ64まで延在する。このようにして、バルーン40の拡張及び畳み込み中にチューブが絡むリスクはほとんど又は全くない。
【0039】
断面挿入図65においてさらに詳述された、図示されている例示的な実施形態では、各循環チューブ64の灌注流体は、灌注穴66を介してバルーン40の外側に、すなわち、周囲環境の中に流れて、電極55の縁部で血液を冷却する。
【0040】
膜44及びチューブ(62、64)の外壁は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリウレタン、又はPEBAX(登録商標)などのプラスチック(例えば、ポリマー)から形成された生体適合性材料で作製される。
【0041】
本明細書に記載の実施例又は実施形態のいずれも、上記のものに加えて又はそれらの代わりに様々な他の特徴を含むことができる。特に、図2及び図3に示される簡略化された構成は、概念の明確さ及び表現の簡略のために純粋に選択されている。例えば、電極55は、温度センサと共に配設され得る。
【0042】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経や耳鼻咽喉などの他の医療用途で用いることもできる。
【0043】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) 灌注を用いた不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブであって、
患者の器官の中に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に連結されたフレームであって、
前記フレームの外側表面上に配設され、電圧パルスを印加することによって不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び
前記電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を備える、フレームと、を備える、医療用プローブ。
(2) 前記灌注チャネルが、前記電極の縁部の近くに位置し、前記灌注流体を前記灌注チャネルからその周囲環境の中に流すように構成された、1つ又は2つ以上の灌注穴を備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 前記灌注チャネルが、前記電極に熱的に連結され、閉回路内に前記灌注流体を流して、前記電極の縁部から熱を除去するように構成されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(4) 前記灌注チャネルが、熱伝導性材料で作製されている、実施態様3に記載の医療用プローブ。
(5) 前記熱伝導性材料が、ニチノールを含む、実施態様4に記載の医療用プローブ。
【0045】
(6) 灌注を用いた不可逆的エレクトロポレーションのための方法であって、
シャフトの遠位端部に連結されたフレームを患者の器官の中に挿入することであって、前記フレームが、
前記フレームの外側表面上に配設され、電圧パルスを印加することによって不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び
前記電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を備える、挿入することと、
前記灌注チャネルを介して前記灌注流体を圧送することと、を含む、方法。
(7) 前記灌注チャネルが、前記電極の縁部の近くに位置する1つ又は2つ以上の灌注穴を備え、前記灌注流体を圧送することが、前記灌注流体を前記灌注チャネルからその周囲環境の中に流すことを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記灌注チャネルが、前記電極に熱的に連結され、前記灌注流体を圧送することが、閉回路内に前記灌注流体を流して、前記電極の縁部から熱を除去することを含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記灌注チャネルが、熱伝導性材料で作製されている、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記熱伝導性材料が、ニチノールを含む、実施態様9に記載の方法。
【0046】
(11) 灌注を用いた不可逆的エレクトロポレーションのためのシステムであって、
医療用プローブであって、
患者の器官の中に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に連結されたフレームであって、
前記フレームの外側表面上に配設され、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び
前記電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を備える、フレームと、を備える、医療用プローブと、
IREパルスを生成し、かつ前記組織をエレクトロポレーションするように、前記電極のうちの隣接する電極間に前記IREパルスを印加するように構成された、発生器と、を備える、システム。
(12) 前記灌注チャネルが、前記電極の縁部の近くに位置し、前記灌注流体を前記灌注チャネルからその周囲環境の中に流すように構成された、1つ又は2つ以上の灌注穴を備える、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記灌注チャネルが、前記電極に熱的に連結され、閉回路内に前記灌注流体を流して、前記電極の縁部から熱を除去するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記灌注チャネルが、熱伝導性材料で作製されている、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記熱伝導性材料が、ニチノールを含む、実施態様14に記載のシステム。
【0047】
(16) 灌注を用いた不可逆的エレクトロポレーションのための方法であって、
シャフトの遠位端部に連結されたフレームを患者の器官の中に挿入することであって、前記フレームが、
前記フレームの外側表面上に配設され、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を組織に印加するように構成された、複数の電極、及び
前記電極の近くに灌注流体を流すように構成された1つ又は2つ以上の灌注チャネル、を備える、挿入することと、
前記灌注チャネルを介して前記灌注流体を圧送することと、
IREパルスを生成し、前記組織をエレクトロポレーションするように、前記電極のうちの隣接する電極間に前記IREパルスを印加することと、を含む、方法。
(17) 前記灌注チャネルが、前記電極の縁部の近くに位置する1つ又は2つ以上の灌注穴を備え、前記灌注流体を圧送することが、前記灌注流体を前記灌注チャネルからその周囲環境の中に流すことを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記灌注チャネルが、前記電極に熱的に連結され、前記灌注流体を圧送することが、閉回路内に前記灌注流体を流して、前記電極の縁部から熱を除去することを含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記灌注チャネルが、熱伝導性材料で作製されている、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記熱伝導性材料が、ニチノールを含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
【国際調査報告】