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特表2023-511547頻繁する片頭痛の治療のためのジヒドロエルゴタミンの反復投与
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】頻繁する片頭痛の治療のためのジヒドロエルゴタミンの反復投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/48 20060101AFI20230313BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61K31/48
A61P25/06
A61P43/00 121
A61K31/522
A61K47/26
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543038
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2021013282
(87)【国際公開番号】W WO2021146318
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/961,076
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513221307
【氏名又は名称】インペル ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディー.フークマン
(72)【発明者】
【氏名】ケルシー エイチ.サタリー
(72)【発明者】
【氏名】ステフェン ビー.シュルーズベリー
(72)【発明者】
【氏名】スコット ユーマンズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フラー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB25
4C076BB27
4C076DD67
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA56
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA08
4C086ZC75
(57)【要約】
前兆のある、または前兆のない頻繁する片頭痛を有する対象における片頭痛発作の頻度を減少させるための方法が提供される。方法は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物を反復投与スケジュールで対象に鼻腔内投与することを含み、各鼻腔内投与は、手動作動、推進剤駆動、定量投与デバイスによって送達され、このスケジュールは、対象が片頭痛を感じている間に各反復投与が実行される長期間欠的スケジュールである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前兆のある、または前兆のない頻発する片頭痛を有する対象において片頭痛発作の頻度を減少させる方法であって、
ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物を、前記対象の気道を介して反復投与スケジュールで投与する工程を含み、
前記スケジュールが、前記対象が片頭痛を感じている間に前記反復投与が実施される、長期間欠的スケジュールである、方法。
【請求項2】
前記投与する工程が、鼻腔内投与により実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鼻腔内投与が、手動作動、推進剤駆動、定量投与デバイスにより実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与する工程が、経肺投与により実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反復投与スケジュールが、前記医薬組成物の少なくとも第1の用量および第2の用量の投与を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物が、液体医薬組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
用量のそれぞれが、2分割サブ用量として投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分割サブ用量が、別々の鼻孔に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分割サブ用量が、1分以内に投与される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記分割サブ用量が、45秒以内に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分割サブ用量が、30秒以内に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
最初の手動作動の前に、前記医薬組成物および推進剤が前記デバイス内で接触していない、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物が、バイアル内に収容されており、前記推進剤がキャニスタ内に収容されており、前記キャニスタが加圧キャニスタである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一連の手動作動の間、前記バイアル内に収容されている医薬組成物と、前記キャニスタ内に収容されている推進剤とが、前記デバイス内で接触していない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各手動作動が、前記医薬組成物の計量された体積と、別個に計量された体積の推進剤とを前記デバイスの投与チャンバ内で接触させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスの投与チャンバ内での推進剤と前記医薬組成物との接触が、製剤がデバイスのノズルを通して放出されるときに、前記医薬組成物のスプレーを生成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ノズルが複数の内腔を有し、前記スプレーが複数のノズル内腔を通して同時に放出される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記推進剤が、ヒドロフルオロアルカン推進剤である、請求項3~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記推進剤が、ヒドロフルオロアルカン-134aである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
最初の作動の前に、前記バイアルが前記デバイスと一体となっておらず、前記デバイスに取り付けられるように構成されている、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記バイアルが、前記バイアルにねじ式に取り付けできるように構成されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記医薬組成物の各用量が、2.0mg以下のDHEまたはその塩を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物の各用量が、2.0mg未満のDHEまたはその塩を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬組成物の各用量が、1.2~1.8mgのDHEまたはその塩を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物の各用量が、1.4~1.6mgのDHEまたはその塩を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬組成物の各用量が、約1.45mgのDHEまたはその塩を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記液体組成物が、2つのスプレーにおいて2分割された用量として投与され、前記2分割された用量のそれぞれが、140~250μLである、請求項7~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記2分割された用量のそれぞれが、175~225μLである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記2分割された用量のそれぞれが、約200μLである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記液体組成物が、DHEの塩を含む、請求項7~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記液体組成物が、DHEメシル酸塩を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記液体組成物が、DHEメシル酸塩を2.5~7.5mg/mlの濃度で含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記液体組成物が、DHEメシル酸塩を3.5~6.5mg/mlの濃度で含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記液体組成物が、DHEメシル酸塩を約4.0mg/mlの濃度で含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記液体組成物が、カフェインをさらに含む、請求項6~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記液体組成物が、カフェインを10mg/mlの濃度で含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記液体組成物が、デキストロースをさらに含む、請求項7~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記液体組成物が、デキストロースを50mg/mlの濃度で含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物が、4.0mg/mlのDHEメシル酸塩、10.0mg/mlのカフェイン、および50mg/mlのデキストロースを含む、請求項6~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、前記第1の用量の投与直前の4週間の間に、少なくとも3回の片頭痛発作を有する、請求項2~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、前記第1の用量の投与直前の4週間の間に、少なくとも4回の片頭痛発作を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の4週間の間に、3回未満の片頭痛を有する、請求項5~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の4週間の間に、2回未満の片頭痛を有する、請求項5~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の4週間の間に、片頭痛を有しない、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の8週間の間に、6回未満の頭痛を有する、請求項5~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の8週間の間に、4回未満の片頭痛を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の8週間の間に、2回未満の片頭痛を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の12週間の間に、12回未満の片頭痛を有する、請求項5~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の12週間の間に、6回未満の片頭痛を有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、前記反復投与直後の12週間の間に、3回未満の片頭痛を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、前記反復投与直後の24週間の間に、18回未満の片頭痛を有する、請求項5~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の24週間の間に、12回未満の片頭痛を有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、前記第2の用量の投与直後の24週間の間に、4回未満の片頭痛を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
片頭痛の前記頻度が、前記第1の用量の投与直前の4週間の間の片頭痛の前記頻度と比較して、前記第2の用量の投与直後の4週間の間に少なくとも50%減少する、請求項5~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
片頭痛の前記頻度が、前記第1の用量の投与直前の4週間の間の片頭痛の前記頻度と比較して、前記第2の用量の投与直後の4週間の間に少なくとも60%減少する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
片頭痛の前記頻度が、前記第1の用量の投与直前の4週間の間の片頭痛の前記頻度と比較して、前記第2の用量の投与直後の4週間の間に少なくとも75%減少する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記医薬組成物の反復投与の第1の用量の投与が、疼痛、吐き気、音恐怖症および光恐怖症から選択される1つ以上の症状を軽減する、請求項5~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ以上の症状の軽減が、投与後2時間で生じる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、トリプタン系薬剤に応答しない片頭痛を有する、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記反復投与のそれぞれが、自己投与によって行われる、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも1ヶ月続く、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも2ヶ月続く、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも3ヶ月続く、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも4ヶ月続く、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも5ヶ月続く、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも6ヶ月続く、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記反復投与スケジュールが、5~8週間続く、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記反復投与スケジュールが、9~12週間続く、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記反復投与スケジュールが、13~16週間続く、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記反復投与スケジュールが、17~20週間続く、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記反復投与スケジュールが、21~24週間続く、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも5週間続く、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも9週間続く、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも13週間続く、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも17週間続く、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記反復投与スケジュールが、少なくとも21週間続く、請求項75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.関連出願の相互参照
この出願は、2020年1月14日に出願された米国特許仮出願第62/961,076号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
2.背景
片頭痛は、米国および欧州連合の8,000万人以上が経験する一般的かつ日常生活に支障を来すほどの神経障害である。片頭痛を起こしやすい人のほとんどは、月に1回または2回、痛みを伴う発作がある。しかし、片頭痛患者の中には、より高頻度で頭痛を起こす人もいる。これらの頻繁かつ重度の発作は、生活の質を損なう。
【0003】
片頭痛治療は、進行中の片頭痛発作の強度を抑制もしくは低減させることを目的とした急性治療、または片頭痛発作の頻度を減少させることを目的とした長期治療に分類することができる。CGRPアンタゴニストの開発に先立ち、ほとんどの研究開発努力は片頭痛の急性治療法の開発に焦点を当てた。例えば、ジヒドロエルゴタミン(DHE)は、麦角アルカロイドエルゴタミンの半合成誘導体であり、片頭痛の急性治療用に70年以上にわたって承認されている。DHEの正確な作用機序は不明であるが、DHEはセロトニン受容体アゴニストとして作用し、頭蓋内血管の血管収縮を引き起こし、ドーパミンおよびアドレナリン受容体と中枢性の相互作用をすることが知られている。
【0004】
DHEの経口バイオアベイラビリティは低く、DHEは、一般に、皮下、筋肉または静脈注射によってメシル酸塩として非経口投与され、さらに承認された場合には、経鼻スプレーによって投与される。片頭痛は一時的かつ予測不可能に起こるため、経鼻スプレーによる投与は、注射による投与よりも片頭痛の治療にははるかに便利である。しかし、すでに承認された経鼻スプレー薬剤-デバイス組み合わせ製品は、静脈注射のバイオアベイラビリティの32%しか提供せず、(他の要因の中でも)変わりやすい有効性がEUおよび他の国の市場からの撤退につながっているが、米国では依然として利用可能である。
【0005】
したがって、DHEを投与するための改良された方法を含む、急性片頭痛発作を治療するための改良された薬剤および方法に対する要求、並びに片頭痛発作の頻度を減少させることができる薬剤および方法の要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.概要
本開示は、前兆のある、または前兆のない頻繁する片頭痛を有する対象において片頭痛発作の頻度を減少させる方法を提供する。方法は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)メシル酸塩を含む医薬組成物を反復投与スケジュールで鼻腔内投与する、第III相臨床試験からの発見に基づく。各鼻腔内投与は、手動作動、推進剤駆動、定量投与(manually actuated, propellant-driven, metered-dose administration)デバイスによって送達され、スケジュールは、対象が片頭痛を経験している間に各反復投与が実施される長期間欠的スケジュールであり、急性症状を治療すること、および反復投与中に、片頭痛発作の頻度を減少させることの両方に有効である。実施例3に詳細に記載するように、投与は、急性の疼痛緩和(2時間における疼痛緩和、並びに2時間における増加した疼痛解消および最も厄介な症状(most bothersome symptom)の緩和を含む)を提供し、PRN投与を繰り返すと、片頭痛発作の頻度を減少させた。急性緩和は、片頭痛発作の頻度の減少とともに、片頭痛が生活の質に及ぼす影響を測定するMIDASおよびHIT-6スコアの改善につながった。
【0007】
第3相試験において、用量は、我々のPrecision Olfactory Delivery(POD(登録商標))Deviceを使用して、ジヒドロエルゴタミン(DHE)メシル酸塩の、単回の分割された1.45mg鼻腔内用量として投与した。この薬剤-デバイス組み合わせ製品「INP104」は、鼻腔のより遠位の領域に鼻弁を超えて定量の液体医薬組成物を再現可能に送達することができる、手動作動、推進剤駆動、鼻腔内投与デバイスである。実施例2に詳細に記載する、先の第I相臨床試験で試験した際、INP104は、米国FDA承認製品ラベルに従って、Migranal(登録商標)Nasal Sprayを使用して鼻腔内に投与された2.0mg用量のDHEメシル酸塩よりも、4倍高い平均最大血漿濃度、3倍近く高い平均全身薬物曝露量をもたらし、より早く最大DHE血漿濃度に達した。より高い最大血漿濃度および全身薬物曝露量は、DHEメシル酸塩の低用量の同一製剤(INP104 1.45mgに対しMigranal(登録商標)2.0mg)で達成され、Migranal(登録商標)で必要とされるような、分割サブ用量の投与の間に15分間の待機は必要とされなかった。加えて、DHEの全身送達は、Migranal(登録商標)よりもINP104とより一致しており、DHEのAUC0-infおよびCmaxにおけるより低い変動係数(CV%)が被験者間で観察された。
【0008】
したがって、第1の態様において、前兆ある、または前兆のない頻繁する片頭痛を有する対象において片頭痛発作の頻度を減少させるための方法が提供され、方法は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物を、対象の気道を介して反復投与スケジュールで投与する工程を含み、スケジュールは、対象が片頭痛を感じている間に各反復投与が実施される長期間欠的スケジュールである。
【0009】
いくつかの実施形態において、投与する工程は、鼻腔内投与によって実施される。いくつかの実施形態において、鼻腔内投与は、手動作動、推進剤駆動、定量投与デバイスを用いて実施される。いくつかの実施形態において、投与する工程は、経肺投与によって実施される。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、医薬組成物の少なくとも第1の用量および第2の用量の投与を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、液体医薬組成物である。いくつかの実施形態において、各用量は、2分割されたサブ用量として投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、別々の鼻孔に投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、1分以内に投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、45秒以内に投与される。いくつかの実施形態において、分割用量は、30秒以内に投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、最初の手動作動の前に、医薬組成物および推進剤は、デバイス内で接触していない。いくつかの実施形態において、医薬組成物はバイアル内に収容されており、推進剤はキャニスタ内に収容されており、キャニスタは加圧キャニスタである。いくつかの実施形態において、一連の手動作動の間、バイアル内の医薬組成物およびキャニスタ内の推進剤は、デバイス内で接触していない。いくつかの実施形態において、各手動作動は、計量された体積の医薬組成物および別個に計量された体積の推進剤をデバイスの投与チャンバ内で接触させる。いくつかの実施形態において、デバイスの投与チャンバ内での推進剤と医薬組成物との接触は、製剤がデバイスのノズルを通して放出されるときに、医薬組成物のスプレーを生成する。いくつかの実施形態において、ノズルは複数の内腔を有し、スプレーは複数のノズル内腔を通して同時に放出される。いくつかの実施形態において、推進剤は、ヒドロフルオロアルカン推進剤である。いくつかの実施形態において、推進剤は、ヒドロフルオロアルカン-134aである。
【0012】
いくつかの実施形態において、最初の作動の前に、バイアルはデバイスと一体ではなく、デバイスに取り付けられるように構成されている。いくつかの実施形態において、バイアルは、デバイスにねじ式に取り付けできるように構成されている。いくつかの実施形態において、医薬組成物の各用量は、2.0mg以下のDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物の各用量は、2.0mg未満のDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物の各用量は、1.2~1.8mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物の各用量は、1.4~1.6mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物の各用量は、約1.45mgのDHEまたはその塩を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、液体組成物は、2つのスプレーにおいて2分割されたサブ用量として投与され、2分割サブ用量のそれぞれは、140~250μLである。いくつかの実施形態において、2分割された用量のそれぞれは、175~225μLである。いくつかの実施形態において、2分割された用量のそれぞれは、約200μLである。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEの塩を含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を2.5~7.5mg/mlの濃度で含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を3.5~6.5mg/mlの濃度で含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を約4.0mg/mlの濃度で含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、液体組成物は、カフェインをさらに含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、カフェインを10mg/mlの濃度で含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、液体組成物は、デキストロースをさらに含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、デキストロースを50mg/mlの濃度で含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、4.0mg/mlのDHEメシル酸塩、10.0mg/mlのカフェイン、および50mg/mlのデキストロースを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥粉末医薬組成物である。
【0018】
いくつかの実施形態において、鼻腔内投与は、鼻腔内ディスペンサデバイスによって送達される。いくつかの実施形態において、デバイスは、使用者によって係合されて空気を空気源からバルブアセンブリを通してリザーバに押し込み、ノズルから押し出すように適合されている、空気源を備える。いくつかの実施形態において、デバイスは、圧縮力をポンプに加えることによって動作する。いくつかの実施形態において、ポンプは、手動エアポンプを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEまたはその塩と、増粘剤、担体、pH調整剤、および糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1つの要素と、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は増粘剤を含み、増粘剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アカシア、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、デンプン、カーボポール、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、増粘剤はHPMCである。
【0020】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は担体を含み、担体は、微結晶セルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、キトサン、およびβシクロデキストリンから選択される。いくつかの実施形態において、担体は、微結晶セルロースである。
【0021】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は糖アルコールを含み、糖アルコールは、マンニトール、グリセロール、ガラクチトール、フシトール、イノシトール、ボレミトール、マルトトリトール、マルトエテトライトール(maltoetetraitol)、ポリグリシトール、エリスリトール、トレイトール、リビトール、アラビトール、キシリトール、アリトール、ズルシトール、グルシトール、ソルビトール、アルトリトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、およびイソマルトからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、糖アルコールは、マンニトールである。
【0022】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は流動化剤をさらに含み、流動化剤は、リン酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態において、流動化剤は、三塩基性リン酸カルシウムを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物はDHEの塩を含み、その塩はDHEメシル酸塩である。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.01~0.2mg/mgの濃度で含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.01~0.1mg/mgの濃度で含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.016~0.07mg/mgの濃度で含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.02~0.07mg/mgの濃度で含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、第1の微結晶セルロース(MCC-1)、第2の微結晶セルロース(MCC-2)、および三塩基性リン酸カルシウム(TCP)を含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩および第1の微結晶セルロース(MCC-1)を含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMC、マンニトール、MCC-2およびTCPを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMCおよびマンニトールを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMC、マンニトール、pH調整剤、MCC-2およびTCPを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMC、マンニトール、およびpH調整剤を含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMCおよびマンニトールを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、10~300μmの平均直径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、平均直径は15~200μmである。いくつかの実施形態において、平均直径は20~100μmである。いくつかの実施形態において、粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥、または溶融押出される。
【0026】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、単位用量で製剤化される。いくつかの実施形態において、単位用量は、3~6mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、3.9mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、5.2mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、投与される乾燥医薬組成物の各用量は、3~6mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、各用量は、3.9mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、各用量は、5.2mgのDHEまたはその塩を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)は、少なくとも750pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEのCmaxは、少なくとも1000pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEのCmaxは、少なくとも1200pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の鼻腔内投与後、DHEのCmaxは、少なくとも2000pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)は45分未満である。いくつかの実施形態において、第1の用量の鼻腔内投与後、DHEのTmaxは30分以下である。いくつかの実施形態において、第1の用量の鼻腔内投与後、DHEのTmaxは約30分である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも2500pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも3000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも4000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも5000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも6000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも10000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、8”OH-DHEの平均ピーク血漿濃度(Cmax)は、少なくとも50pg/mlである。
【0028】
いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均Cmaxは、少なくとも55pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも1000pg*hr/mlである。
【0029】
いくつかの実施形態において、対象は、第1の用量の投与直前の4週間の間に少なくとも3回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第1の用量の投与直前の4週間の間に少なくとも4回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の4週間の間に3回未満の片頭痛を有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の4週間の間に2回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の4週間の間に片頭痛を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の8週間の間に6回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の8週間の間に4回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の8週間の間に2回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の12週間の間に12回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の12週間の間に6回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の12週間の間に3回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の24週間の間に18回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の24週間の間に12回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、第2の用量の投与直後の24週間の間に4回未満の片頭痛を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、第1の用量の投与直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、第2の用量の投与直後の4週間の間に少なくとも50%減少する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、第1の用量の投与直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、第2の用量の投与直後の4週間の間に少なくとも60%減少する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、第1の用量の投与直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、第2の用量の投与直後の4週間の間に少なくとも75%減少する。いくつかの実施形態において、医薬組成物の反復投与の第1の用量の投与は、疼痛、吐き気、音恐怖症、および光恐怖症から選択される1つ以上の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状の軽減は、投与後2時間で生じる。いくつかの実施形態において、対象は、トリプタン系薬剤に応答しない片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、反復投与のそれぞれは、自己投与によって行われる。
【0032】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも1ヶ月続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも2ヶ月続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも3ヶ月続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも4ヶ月続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも5ヶ月続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも6ヶ月続く。
【0033】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは5~8週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは9~12週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは13~16週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは17~20週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは21~24週間続く。
【0034】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも5週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも9週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも13週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも17週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも21週間続く。
【0035】
別の態様において、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物は、前兆のある、または前兆のない頻繁する片頭痛を有する対象における片頭痛発作の頻度を減少させる方法で我々に提供され、この方法は、医薬組成物を反復投与スケジュールで対象に鼻腔内投与する工程を含み、各鼻腔内投与は、手動作動、推進剤駆動、定量投与デバイスによって送達され、このスケジュールは、対象が片頭痛を感じている間に各反復投与が実施される長期間欠的スケジュールである。
【0036】
さらに別の態様において、前兆のある、または前兆のない頻発する片頭痛を治療するためのキットが提供される。キットは、少なくとも1回の有効用量の、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む液体医薬組成物を密封可能に含むバイアルと、デバイスとを含み、バイアルは、デバイスに取り付け可能であるように構成され、デバイスは、バイアルを取り付けると、液体医薬組成物の用量の鼻腔内投与後に、(a)少なくとも750pg/mlの平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)、(b)45分未満のDHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)、および(c)少なくとも2000pg*hr/mlのDHEの平均血漿AUC0-infを提供することができる、手動作動、定量、推進剤駆動の鼻腔内投与デバイスとなる。
【0037】
いくつかの実施形態において、キット内のデバイスはキャニスタを含み、キャニスタは、推進剤を含む加圧キャニスタである。
【0038】
様々なキット実施形態において、バイアルは、2ml以下の液体医薬組成物を含む。いくつかの実施形態において、バイアルは、約1mlの液体医薬組成物を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、加圧キャニスタは、1用量以下の液体医薬組成物を投与するのに十分な量の推進剤を含む。
【0040】
本開示の他の特徴および利点は、図面を含む以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲の範囲内の様々な変更および修正は当該詳細な説明から当業者に明らかとなるため、詳細な説明および特定の実施例は説明するためだけに示されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ジヒドロエルゴタミン(DHE)の正確な嗅覚送達に有用な、手持ちの、手動作動、定量、推進剤駆動鼻腔内投与デバイスの実施形態の断面図を示す。
図2図2A~Cは、停止および作動の段階における図1の経鼻送達デバイスの断面を示す。図2Aは、静止時の経鼻送達デバイスを示す。図2Bは、ポンプの作動を示す。図2Cは、推進剤バルブの作動を示す。
図3】経鼻送達デバイスの別の実施態様の断面図を示す。
図4】デバイス内に配置された拡散器の断面図を示す。
図5A】組み立てられていない投与チャンバおよびY接合部の分解図を示す。
図5B】協働する投与チャンバおよびY接合部の分解図を示す。
図6】用量および推進剤の流れの両方を表す矢印を示す。
図7】アクチュエータグリップおよび円錐形ばねの配置を示す。
図8】任意選択のノーズコーンの断面図および任意選択のノーズコーンの側面図を示す。
図9A】実施例2に記載する第I相臨床試験で使用されたデバイスを、表1に示す番号付けされたパーツのさらなる説明とともに図示する。
図9B】実施例2に記載する第I相臨床試験で使用されたデバイスを、表1に示す番号付けされたパーツのさらなる説明とともに図示する。
図10A】実施例2に記載する第I相比較バイオアベイラビリティ臨床試験において測定されたDHEの血漿濃度対時間をプロットし、0~8時間のデータをプロットする。
図10B】実施例2に記載する第I相比較バイオアベイラビリティ臨床試験において測定されたDHEの血漿濃度対時間をプロットし、0~24時間のデータをプロットする。
図11A】実施例2に記載する第1相比較バイオアベイラビリティ臨床試験において測定した場合のDHEの8'-OH-DHE代謝物の血漿濃度対時間をプロットし、0~8時間のデータをプロットする。
図11B】実施例2に記載する第1相比較バイオアベイラビリティ臨床試験において測定した場合のDHEの8'-OH-DHE代謝物の血漿濃度対時間をプロットし、0~24時間のデータをプロットする。
図12A】経鼻送達デバイスの代替的実施態様の断面図を示す。
図12B図12Aの断面図の拡大図を示す。
図13A】追加の実施形態による、デバイス内に配置された拡散器の断面図を示す。
図13B】追加の実施形態による、ノズルおよびY接合部の分解図を示す。
図14】追加の実施形態によるノーズコーンを示す。
図15】実施例3に記載する第III相臨床試験の概略のデザインを示す。
図16】第III相臨床試験に参加した対象302例のスクリーニング期間の治療を示す。対象302例の片頭痛1,396回を、4週間のスクリーニング期間中に最良の通常治療(例えば、トリプタン類、アセトアミノフェン、NSAID、オピオイド類、バルビツール酸塩、併用鎮痛薬)で治療した。
図17A】ラスミジタン(プラセボ、100mg、または200mg)、リメゲパント(プラセボ、または75mg)、ウブロゲパント(プラセボ、25mg、または50mg)、MAP0004-DHE(プラセボ、または1.0mg)、またはINP104による処置後2時間において疼痛解消を示す患者の割合(%)を提供する。ラスミジタン、リメゲパント、ウブロゲパントおよびMAP0004-DHEのデータは過去のものである。
図17B】ラスミジタン(プラセボ、100mg、または200mg)、リメゲパント(プラセボ、または75mg)、ウブロゲパント(プラセボ、25mg、または50mg)、MAP0004-DHE(プラセボ、または1.0mg)、またはINP104による処置後2時間において疼痛解消を示す患者の割合(%)を提供する。ラスミジタン、リメゲパント、ウブロゲパントおよびMAP0004-DHEのデータは過去のものである。
図18】ラスミジタン(100mgまたは200mg)(過去)、リメゲパント(75mg)(過去)、ウブロゲパント(50mg)(過去)、最良の通常治療またはINP104での処置後2時間において最も厄介な症状の解放を示す患者の割合(%)を提供する。
図19A】INP104の第1の用量の投与後、投与後15分~120分に疼痛緩和を有する患者の割合を提供する。
図19B】ラスミジタン(200mg)、リメゲパント(75%)、ウブロゲパント(100mg)、MAP0004、またはMigranalによる処置後2時間において疼痛緩和を報告した患者の割合を要約する、以前の研究からのデータを有する表を提供する。
図20】実施例3に記載する第III相臨床試験の4週間のスクリーニング期間および24週間の治療期間中の片頭痛発作の頻度を経時的にプロットする。
図21】実施例3に記載する第III相臨床試験における、INP104による処置経験に関連する各質問に対して肯定的な回答(中立、同意する、または強く同意する)を提供した対象の割合をプロットする。
図22】24週間の処置期間においてINP104投与の2時間後に痛みが解消した片頭痛発作の平均割合をプロットし、反復投与による急性緩和効果の維持(タキフィラキシーがないこと)を示す。
図23】52週間の処置期間においてINP104投与の2時間後に痛みが解消した片頭痛発作の平均割合をプロットし、反復投与による急性緩和効果の維持を示す。
図24】24週間の処置期間においてINP104投与の2時間後における最も厄介な症状(MBS)が解消した片頭痛発作の平均割合をプロットし、反復投与による急性緩和効果の維持を示す。
図25】52週間の処置期間においてINP104投与の2時間後に最も厄介な症状(MBS)が解消した片頭痛発作の平均割合をプロットし、反復投与による急性緩和効果の維持を示す。
図26】24週間の処置期間においてINP104投与の24時間後に疼痛再発を伴う片頭痛発作の平均割合をプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0042】
5.詳細な説明
5.1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解されている意味を有する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「片頭痛」、「前兆のない片頭痛」、および「前兆のある片頭痛」という用語は、The International Classification of Headache Disorders,3rd edition,Cephalalgia 38(1):1-211(2018)に定義される通りであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
本明細書で使用される「頻繁する片頭痛(frequent migraine headaches、frequent migraines)」という用語は、6ヶ月の期間にわたる、月に少なくとも2回の片頭痛発作の頻度を指す。
【0045】
本明細書で使用される「用量」という用語は、特定の時間に服用されるか、または服用が推奨される薬(medicine)または薬物(drug)の量を指す。本明細書で使用される「サブ用量」という用語は、用量の全量未満である、用量の一部を指す。典型的な実施形態において、用量は、2以上のサブ用量に分割される。
【0046】
本明細書で使用される「初期投与期間」という用語は、治療薬の第1の投与を含む期間、および治療薬の第1の投与の直後の期間を指す。
【0047】
5.2.その他の解釈上の規則
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様は、範囲形式で提示される。範囲は、記載された終わりの点を含む。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔さのためであって、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な部分範囲および個々の数値を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、範囲の記載、例えば、1~6は、具体的に開示される部分範囲、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6等、並びにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を有すると見なされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0048】
特に明記されていないまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「または」という用語は、包括的であると理解される。
【0049】
特に明記されていないまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「a」、「an」および「the」という用語は、単数または複数であると理解される。すなわち、冠詞「a」および「an」は、本明細書において、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0050】
この開示において、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」「有すること(having)」「含む(include)」「含むこと(including)」およびその言語的変化形は、米国特許法においてそれらが帰する意味を有し、明示的に列挙されている成分以外のさらなる成分の存在を許容する。
【0051】
特に記載がない、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野で通常許容される範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内であると理解され、記載された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、よりいっそう好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0052】
5.3.実験的観察の概要
我々は、鼻弁を超えて鼻腔のより遠位の領域に定量の液体医薬組成物を再現可能に送達することができる、手動作動、推進剤駆動、鼻腔内投与デバイスを設計した。我々は、このデバイスを第I相臨床試験で試験し、健康な成人の対象において、(i)このPrecision Olfactory Delivery(POD(商標))Device(「INP104」)を使用して単回の分割鼻腔内用量1.45mgとして投与されたジヒドロエルゴタミン(DHE)メシル酸塩、(ii)米国FDA承認製品ラベルに従ってMigranal(登録商標)Nasal Sprayを使用して鼻腔内投与された2.0mg用量のDHEメシル酸塩、および(iii)注射用DHEメシル酸塩(D.H.E.45(登録商標))1.0mgの静脈注射のバイオアベイラビリティを比較した。
【0053】
実施例2に詳細に記載するように、INP104は、Migranal(登録商標)よりも3倍近く高い平均全身薬物曝露および4倍近く高い平均最大血漿濃度をもたらし、より速く最大DHE血漿濃度に達した。より高い全身薬物曝露およびより高い最大血漿濃度は、DHEメシル酸塩の同一製剤のより低い投与用量(INP104 1.45mg対Migranal(登録商標)2.0mg)で達成され、Migranal(登録商標)で必要とされるような、分割サブ用量の投与の間の15分間の待機は必要としなかった。
【0054】
加えて、DHEの全身送達は、Migranal(登録商標)よりもINP104と一致しており、AUC0-infパラメータおよびCmaxパラメータの両方について、対象間でより低い変動が観察された。
【0055】
1mgのDHEメシル酸塩の急性静脈投与は、INP104によって鼻腔内投与された1.45mgのDHEメシル酸塩よりも10倍以上高いCmaxをもたらしたが、静脈投与で達成される高いCmaxは、有害事象(「AE」)、特に吐き気と相関することが知られており、IVのDHEメシル酸塩は、最も一般的に、制吐剤と共に投与される。投与後20~30分以内に、INP104鼻腔内投与によって達成されたDHE血漿濃度は、静脈投与によって達成された濃度と本質的に区別できなかった。したがって、10倍を超えるCmaxにもかかわらず、1mgのDHEメシル酸塩の急性静脈投与は、INP104鼻腔内送達と比較して、AUC0-infとして測定される、2倍未満の全身薬物送達をもたらした。
【0056】
DHEの8’OH-DHE代謝産物は活性があり、片頭痛に対するDHEの長期持続効果に寄与することが知られている。我々は、INP104による1.45mgのDHEメシル酸塩の鼻腔内投与が、1.0mgのDHEメシル酸塩を急性静脈投与した場合のDHEの活性代謝産物に相当する全身曝露をもたらすことを見出した。対照的に、8’-OH DHE代謝産物は、Migranal(登録商標)を投与された対象のごく一部においてのみ検出することができた。
【0057】
INP104の安全性および治療効果は、第III相介入、非盲検、単群割付、安全性、忍容性および探索的有効性試験(NCT03557333、「STOP-301」)においてさらに試験した。1ヶ月に少なくとも2回の片頭痛発作を有する対象は、認識可能な片頭痛を経験したときに、INP104(1.45mgのDHEを分割用量で、鼻孔あたり1回の作動)を鼻腔内に自己投与した。彼らは、24時間以内にINP104を2用量以下、7日間に3用量以下、4週間に12用量以下使用した。
【0058】
実施例3に詳細に記載するように、INP104の第1の用量を受けると、対象の38%が2時間時に疼痛が解消したことを報告し、対象の53%が2時間時に最も厄介な症状が解消したことを報告した。これらの結果は、ラスミジタン、リメゲパント、ウブロゲパント、およびMAP20004-DHEの文献で報告されている結果を上回る。さらに、INP104の疼痛緩和効果は、他の治療法で報告されているよりも早く現れた。INP104投与の15分後には、対象の16.8%が疼痛緩和を報告したが、文献では、それぞれ対象の9%および8%のみが、MAP0004およびリメゲパント投与の15分後に疼痛緩和を有したと報告されている。
【0059】
驚くべきことに、反復投与スケジュールでのINP104の複数回の投与もまた、片頭痛の頻度を低下させた。片頭痛の頻度の低下は、24週間の処置期間を通して持続した。24週間の処置期間を完了した患者147例は、24週間の処置期間に片頭痛の頻度の約44%の低下を示した。24週間の処置期間を完了した患者45例のサブグループ、24週間の処置期間にわたって処置された12回未満の片頭痛発作を有した人々は、片頭痛の頻度の約76%の低下を示した。さらに、報告された頭痛全体の数と、各ベースライン後の4週間間隔の間に発生した片頭痛発作の数は、特に最初の12週間において、標準治療の急性薬で治療された全ての頭痛のベースライン測定値と比較して、実質的に減少した。
【0060】
5.4.前兆のある、または前兆のない、頻発する片頭痛の治療方法
したがって、第1の態様において、反復投与スケジュールでジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物の複数回の用量を対象の呼吸器系に投与することにより、前兆のある、または前兆のない頻発する片頭痛を有する患者を治療し、ある期間にわたって片頭痛の頻度の持続的な減少を達成するための方法が提供される。
【0061】
方法は、反復投与スケジュールで、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物の複数の用量を対象の呼吸器系に投与することを含み、スケジュールは、少なくとも(i)第1の用量の医薬組成物の投与、および(ii)28日の初期投与期間内の第2の用量の医薬組成物の後続投与を含み、複数の用量は、28日間の初期投与期間直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、28日間の初期投与期間直後の4週間の間に、片頭痛の頻度を低減するのに十分である。
【0062】
5.4.1.投与方法
反復投与スケジュールは、28日間の初期投与期間内に2用量以上の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12用量の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第1の用量の投与および第2の用量の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第3の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第4の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第5の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第6の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第7の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第8の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第9の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第10の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第11の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第12の用量の投与をさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間後に、少なくとも1回の追加の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間後に、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の追加の投与をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも1ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも2ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも3ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも4ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも5ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも6ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも7ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも8ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも9ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも10ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも11ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも12ヶ月間続く。
【0065】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、5~8週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、9~12週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、13~16週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、17~20週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、21~24週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、25~28週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、29~32週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、33~36週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、37~40週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、41~44週間続く。
【0066】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも5週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも9週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも13週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも17週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも21週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも25週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも29週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも33週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも37週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも41週間続く。
【0067】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の28日間の期間内に、20、18、16、14、12、10、8、6、4、または2用量以下の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の28日間の期間内に12用量以下の医薬組成物の投与を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の7日間の期間内に、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1用量以下の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の7日間の期間内に3用量以下の医薬組成物の投与を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の24時間の期間内に2用量以下の医薬組成物の投与を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、各投与が、対象が片頭痛を感じている間に行われる長期間欠的スケジュールである。いくつかの実施形態において、各投与は、対象が片頭痛を感じ始めたとき、240、120、90、60、45、30、15、または10分以内に実行される。
【0071】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、投与が所定の間隔で行われる固定スケジュールである。いくつかの実施形態において、スケジュールは、1週間あたり3回、2回、または1回の投与である。いくつかの実施形態において、スケジュールは、1週間あたり1回の投与である。いくつかの実施形態において、スケジュールは、1週間あたり2回の投与である。
【0072】
様々な実施形態において、各反復投与は、少なくとも1つの前駆症状の発症から5分、10分、15分、30分、45分、60分、または120分以内に実施される。様々な実施形態において、各反復投与は、少なくとも1つの急性症状の発症から5分、10分、15分、30分、45分、60分、または120分以内に実施される。
【0073】
いくつかの実施形態において、対象は、片頭痛の予防または治療のための併用薬を使用する。例示的な併用薬には、これらに限定されないが、アセトアミノフェン、アスピリン、およびイブプロフェンまたは他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が含まれる。典型的実施形態において、併用薬は、本明細書に記載の方法を使用する組成物の投与の2時間後にのみ投与される。いくつかの実施形態において、非麦角系または非トリプタン系鎮痛剤は、依然として頭痛を有する対象に使用される。
【0074】
いくつかの実施形態において、単回用量は、2つ以上に分割されたサブ用量として投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、別々の鼻孔に投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、1分以内に投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、45秒以内または30秒以内に投与される。
【0075】
いくつかの実施形態において、対象は、片頭痛の治療に有効であることが知られている他の方法で追加的に治療される。方法は、これらに限定されないが、ボトックス注射、カルシウム遺伝子関連ペプチド(CGRP)インヒビターおよびCGRP受容体を標的にするように設計された抗体による治療、CGRP受容体拮抗薬(例えば、ゲパント)、β遮断薬(例えば、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール)およびカルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミル)等の高血圧を治療するために使用される薬剤、アミトリプチリンおよびノルトリプチリン等の抗うつ薬、ガバペンチン、トピラメートおよびバルプロ酸等の抗けいれん薬、並びにPAフリーバターバー、コエンザイムQ10およびナツシロギク等の片頭痛予防のための非伝統的なサプリメント処置を含む。いくつかの実施形態において、対象は、ラスミジタン、リメゲパント、ウブロゲパント、またはMAP20004-DHEで追加的に治療される。
【0076】
いくつかの実施形態において、対象は、投与(自己投与)を行う。いくつかの実施形態において、投与は、親、保護者、介護者、または医療専門家などの別の個人によって行われる。
【0077】
5.4.2.頻発する片頭痛を有する患者
本明細書に提供される方法で治療することができる患者は、頻発する片頭痛または片頭痛症状を有し、これには、これらに限定されるものではないが、疼痛、吐き気、光恐怖症、吐き気、音恐怖症、ぼんやりした思考、嘔吐、視覚変化、他の疼痛、嗅覚、めまい、または接触過敏が含まれる。患者は、月に少なくとも2回の片頭痛または片頭痛症状を有する対象である。
【0078】
頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に2回の片頭痛発作を起こし得る。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に3回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に少なくとも2回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に少なくとも3回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に少なくとも4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に10回未満の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に9回未満の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、頻発する片頭痛を有する患者は、本明細書に提供される方法による治療の前に、平均して月に8、7、6、5、4または3回未満の片頭痛発作を有する。
【0079】
本明細書に記載の方法は、対象が認識可能な片頭痛を感じているときに、対象における頻発する片頭痛を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、治療は、ある期間にわたって片頭痛の頻度を持続的に減少させることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、対象は、国際頭痛学会(International Headache Society、IHS)基準に従って片頭痛と診断されている。いくつかの実施形態において、対象は、他の医学的基準に従って片頭痛と診断されている。対象は、前兆のある、または前兆のない片頭痛を有し得る。いくつかの実施形態において、対象は、国際頭痛分類第3版β(ICHD3b)基準による、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または他の慢性頭痛症候群を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、国際頭痛分類第3版β基準による、三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛、片側頭痛症候群、並びに結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作を含む)、片頭痛前兆に頭痛を伴わないもの、片麻痺性片頭痛、または脳幹性前兆を伴う片頭痛(以前は脳底片頭痛と称された)、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または他の慢性頭痛症候群を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎表面抗原、またはC型肝炎抗体の陽性試験を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、プリンツメタル異型狭心症を含む、冠動脈血管攣縮と一致する虚血性心疾患または臨床症状もしくは所見を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、冠動脈疾患もしくは糖尿病の病歴もしくは喫煙、既知の末梢動脈疾患、レイノー現象、敗血症もしくは血管手術(試験開始の3ヶ月以内)、または重度の肝機能もしくは腎機能障害の重大な危険因子を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、顕著な鼻閉、どちらかの鼻孔の物理的閉塞、著しい鼻中隔湾曲、鼻中隔穿孔、またはスコア1以上の内視鏡検査上の任意の既存の鼻粘膜異常(粘膜浮腫を許容するスコア1を除く)を有しない。いくつかの実施形態において、対象は、以前に、麦角アルカロイドまたは薬剤製品中の成分のいずれかに対する過敏症を示していない。いくつかの実施形態において、対象は、以前に、片頭痛の治療のための静脈注射DHEに応答していない。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に提供される方法による治療の前2ヶ月間に、月に12日を超えるトリプタン系または麦角系薬剤を使用していない。
【0081】
片頭痛は、ICHD3b基準によって定義することができる。通常、片頭痛は、時間の経過とともに繰り返し発症する人もいる、一次性頭痛の一種である。片頭痛は、吐き気、嘔吐、または光への過敏症などの症状を伴って発症することがある。一部の片頭痛患者にとっては、拍動性の疼痛が頭部の片側のみに感じられる。本明細書に提供される方法で治療される片頭痛は、「前兆のある」または「前兆のない」片頭痛であり得る。前兆は神経症状の一群であり、通常は兆候として出る視覚障害である。
【0082】
いくつかの実施形態において、対象は、前兆のある頻発する片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、前兆のない頻繁する片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1つの片頭痛の前駆症状の発症を有している。様々な実施形態において、治療される片頭痛は、月経関連片頭痛である。いくつかの実施形態において、治療される片頭痛は、トリプタン類に対する耐性が証明されている。
【0083】
様々な実施形態において、対象は、頭痛の痛み(headache pain)の発症を伴わずに、少なくとも1つの片頭痛の前駆症状の発症を有している。ある特定の実施形態において、対象は、頸部硬直、顔面の感覚異常、光過敏症、音過敏症、および視覚性前兆から選択される少なくとも1つの前駆症状の発症を有している。
【0084】
様々な実施形態において、対象は、急性片頭痛に関連する少なくとも1つの症状の発症を有している。ある特定の実施形態において、対象は、視覚性前兆、鈍痛、拍動痛、脈打つ痛みを含む頭痛の痛み、光過敏症、音過敏症、吐き気、嘔吐から選択される少なくとも1つの症状の発症を有している。視覚性前兆および頭痛の痛みは、片側性または両側性、限局性または広範的であることがある。
【0085】
様々な実施形態において、本方法は、片頭痛ではなくむしろ群発頭痛の急性治療に使用される。
【0086】
様々な実施形態において、対象は、反復投与の1ヶ月前に、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上の片頭痛を有している。
【0087】
ある特定の実施形態において、対象は、トリプタン耐性片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、トリプタンによる治療に応答しない。例示的なトリプタン類としては、これらに限定されないが、アルモトリプタン(Axert)、エレトリプタン(Relpax)、フロバトリプタン(Frova)、ナラトリプタン(Amerge)、リザトリプタン(Maxalt)、スマトリプタン(Imitrex)、およびゾルミトリプタン(Zomig)が含まれる。いくつかの実施形態において、対象は、トリプタンを使用する片頭痛の併用療法に応答しない。いくつかの実施形態において、対象は、ナプロキセンナトリウム(Treximet)と組み合わせたスマトリプタンに応答しない。いくつかの実施形態において、対象は、トリプタン系もしくは麦角系薬剤またはCYP3A4シトクロムP450代謝経路に強くもしくは中程度に影響を及ぼす薬剤を使用しない。
【0088】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の前の少なくとも30日間、定期的な片頭痛予防治療を受けている。いくつかの実施形態において、対象は、これらに限定されないが、β遮断薬および三環式抗うつ薬を含む1つ以上の併用薬を、それらが麦角誘導体との併用について禁忌である場合を除き、投与されている。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の前の少なくとも30日間、定期的な片頭痛予防治療を受けていない。
【0089】
いくつかの実施形態において、対象は、28日の初期投与期間の直前の4週間の期間に、ICHD3b基準によって定義される少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の4週間の期間に、ICHD3b基準によって定義される少なくとも2回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の4週間の期間に、ICHD3b基準によって定義される少なくとも4回の片頭痛発作を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の6ヶ月の期間に、ICHD3b基準によって定義される少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の6ヶ月の期間に、ICHD3b基準によって定義される少なくとも2回の片頭痛発作を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の6ヶ月の期間に、ICHD3b基準によって定義される少なくとも4回の片頭痛発作を有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、対象は、片頭痛発作中に様々な最も厄介な症状を経験する。対象は、光恐怖症、吐き気、音恐怖症、ぼんやりした思考、嘔吐、視覚変化、その他の痛み、嗅覚、めまい、または接触過敏症を経験する場合がある。
【0092】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、対象は成人である。いくつかの実施形態において、対象は雄である。いくつかの実施形態において、対象は雌である。
【0093】
5.4.3.片頭痛の減少
様々な実施形態において、医薬組成物の反復投与は、疼痛、吐き気、音恐怖症、および光恐怖症から選択される1つ以上の症状を減少させる。いくつかの実施形態において、医薬組成物の反復投与は、疼痛、吐き気、音恐怖症、および光恐怖症によって測定される、片頭痛の頻度または重症度を減少させる。いくつかの実施形態において、医薬組成物の反復投与は、投与後2、4、6、12、24、または48時間以内の疼痛再発の発生率を減少させる。
【0094】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の8週間の間に、28日の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の12週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の16週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の20週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度の減少を有する。
【0095】
いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも4週間持続する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも8週間持続する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも12週間持続する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも16週間持続する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも20週間持続する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも24週間持続する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、28日間の初期投与期間の後少なくとも28週間持続する。
【0096】
いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少する。
【0097】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度の少なくとも10%の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、または70%の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、または60~70%の減少を有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の8週間の間に、28日の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において少なくとも10%の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の8週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、または70%の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の8週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、または60~70%の減少を有する。
【0099】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の20週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、少なくとも10%の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の20週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、または70%の減少を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の20週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度において、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、または60~70%の減少を有する。
【0100】
いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度の減少は、少なくとも4週間、8週間、12週間、16週間、20週間、24週間、またはそれ以上持続する。
【0101】
様々な実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の後、月に3回未満、2回未満、または1回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間、片頭痛を有しない。ある特定の実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の後の8週間の間に、月に6回未満、5回未満、4回未満、3回未満、2回未満、または1回未満の片頭痛を有する。ある特定の実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の後の12週間の間に、月に12回未満、11回未満、10回未満、9回未満、8回未満、7回未満、6回未満、5回未満、4回未満、3回未満、2回未満、または1回未満の片頭痛を有する。ある特定の実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の後の24週間の間に、月に18回未満、17回未満、16回未満、15回未満、14回未満、13回未満、12回未満、11回未満、10回未満、9回未満、8回未満、7回未満、6回未満、5回未満、4回未満、3回未満、2回未満、または1回未満の片頭痛を有する。ある特定の実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の後の24週間の間に、月に3回未満、2回未満、または1回未満の片頭痛を有する。
【0102】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の反復投与は、2時間における疼痛解消を改善する。いくつかの実施形態において、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、99%またはそれ以上の対象は、本明細書に記載の方法を使用した医薬組成物の投与の2時間後に疼痛解消を感じる。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に提供される方法で治療される片頭痛の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%において、2時間で疼痛緩和を達成する。いくつかの実施形態において、2時間時の疼痛解消の改善は、少なくとも5、10、15、20、30、60、または90日間持続する。いくつかの実施形態において、2時間時の疼痛解消の改善は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月間持続する。いくつかの実施形態において、2時間時の解消による利益は、本明細書に記載の方法を使用する1用量の投与を必要とする。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、少なくとも75%減少する。
【0103】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の反復投与は、疼痛、吐き気、音恐怖症、および光恐怖症から選択される1つ以上の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、医薬組成物の反復投与は、投与後2時間における最も厄介な症状(MBS)を軽減する。典型的なMBSとしては、これらに限定されるものではないが、光恐怖症、吐き気、音恐怖症、ぼんやりした思考、嘔吐、視覚変化、その他の痛み、嗅覚、めまい、または接触過敏症が挙げられる。いくつかの実施形態において、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、またはそれ以上の対象は、本明細書に記載の方法を使用する医薬組成物の投与後2時間において、最も厄介な症状の解消を経験する。いくつかの実施形態において、最も厄介な症状の改善は、少なくとも5、10、15、20、30、60、または90日間持続する。いくつかの実施形態において、最も厄介な症状の改善は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月間持続する。いくつかの実施形態において、2時間時の解消による利益は、本明細書に記載の方法を使用する1用量の投与を必要とする。
【0104】
いくつかの実施形態において、対象は、軽減された治療中に生じる有害事象を有するか、または全く有しない。いくつかの実施形態において、対象は、減少した片頭痛関連のヘルスケア利用率を有するか、または全く有しない。いくつかの実施形態において、対象は、減少した入院、救急外来受診および応急手当受診を有するか、または全く有しない。いくつかの実施形態において、対象は、MIDASおよび/またはHIT-6アンケートによって評価される、減少した頭痛関連障害を有するか、または全く有しない。
【0105】
いくつかの実施形態において、対象は、鼻内視鏡検査によって検出される鼻粘膜または嗅覚機能における最小限の変化を有するか、または全くない。
【0106】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、ICHD3b基準によって定義される、3回未満、2回未満の片頭痛を有するか、または全く有しない。いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の8週間の間に、ICHD3b基準によって定義される、6回未満、5回未満、4回未満、3回未満、または2回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の12週間の間に、ICHD3b基準によって定義される、12回未満、10回未満、8回未満、6回未満、5回未満、4回未満、または3回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の24週間の間に、ICHD3b基準によって定義される、18回未満、16回未満、14回未満、12回未満、10回未満、8回未満、6回未満、5回未満、または4回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の52週間の間に、ICHD3b基準によって定義される、18回未満、16回未満、14回未満、12回未満、10回未満、8回未満、6回未満、5回未満、または4回未満の片頭痛を有する。
【0107】
5.4.4.医薬組成物
本開示は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物を投与することによって、頻発する片頭痛を有する対象を治療する方法を提供する。
【0108】
様々な実施形態において、治療方法に使用される医薬組成物は、呼吸器系を介した投与に適した組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、鼻腔内投与、経肺投与、または経口吸入に適した液体組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、鼻腔内投与、経肺投与、または経口吸入に適した乾燥粉末組成物である。
【0109】
5.4.4.1.液体医薬組成物
液体医薬組成物は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む。
【0110】
典型的実施形態において、液体医薬組成物は、DHEの塩を含む。好ましい実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を含む。
【0111】
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩-メシル酸塩として9,10位で水素化されたエルゴタミン-は、化学的には、エルゴタマン-3'、6'、18-トリオン,9,10-ジヒドロ-12'-ヒドロキシ-2'-メチル-5'-(フェニルメチル)-,(5'α)-,モノメタン-スルホン酸塩として知られている。その分子量は679.80であり、実験式はC33H37N5O5・CH4O3Sである。構造を以下の式(I)に示す。
【0112】
【化1】
【0113】
典型的実施形態において、液体医薬組成物は、少なくとも1mg/ml、1.5mg/ml、2.0mg/ml、2.5mg/ml、3.0mg/ml、3.5mg/ml、4.0mg/ml、4.5mg/mlまたは5.0mg/mlの濃度でDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、液体医薬組成物は、DHEメシル酸塩を2.5~7.5mg/mlの濃度で含む。ある特定の実施形態において、液体医薬組成物は、3.0~5.0mg/mlまたは3.5~6.5mg/mlのDHEメシル酸塩を含む。特定の実施形態において、液体医薬組成物は、4.0mg/mlのDHEメシル酸塩を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、組成物は、カフェインをさらに含む。特定の実施形態において、組成物は、1mg/ml~20mg/ml、5mg/ml~15mg/ml、または7.5mg/ml~12.5mg/mlの濃度でカフェインを含む。特定の実施形態において、組成物は、10.0mg/mLのカフェインを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、組成物は、デキストロースをさらに含む。ある特定の実施形態において、組成物は、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、または50mg/mlの濃度でデキストロースを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、デキストロースを少なくとも50mg/mlの濃度で含む。
【0116】
様々な現在好ましい実施形態において、液体医薬組成物は、4.0mg/mlのDHEメシル酸塩、10.0mg/mlのカフェイン、および50mg/mlのデキストロースを含む。
【0117】
5.4.4.2.乾燥粉末医薬組成物
本方法は、片頭痛を有する対象に、繰り返される有効用量のジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む乾燥医薬組成物を投与することを含む。典型的実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEまたはその塩、および少なくとも1つの賦形剤を含む複数の粒子を含む。
【0118】
鼻腔内投与用乾燥粉末組成物
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、鼻腔内投与に適した粉末医薬組成物であり、この組成物は、活性薬剤と、増粘剤、担体、pH調整剤、および糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1つの要素とを含む。いくつかの実施形態において、粉末組成物の少なくとも約20パーセントは、0.1~10mg、1~9mg、2~7mg、3~6mg、または4~5mgのDHEメシル酸塩を含有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物の単位用量は、4~5mgのDHEメシル酸塩を含有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物の単位用量は、3.9mgのDHEメシル酸塩を含有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物の単位用量は、5.2mgのDHEメシル酸塩を含有する。
【0119】
経肺投与用乾燥粉末組成物
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、経肺投与に適した粉末医薬組成物であり、組成物は、DHEまたはその塩、および少なくとも1つの賦形剤を含む。
【0120】
典型的な実施形態において、粉末医薬組成物は、DHEまたはその塩および少なくとも1つの賦形剤を含み、その塩はDHEメシル酸塩である。いくつかの実施形態において、粉末医薬組成物は、1つ以上の酸化防止剤を含む。経肺投与に適した乾燥粉末医薬組成物の例示的な製剤は、米国特許第8,119,639号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
いくつかの実施形態において、組成物は、追加の成分、例えば、防腐剤、緩衝剤、張力剤、酸化防止剤および安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、粘度増加剤、吸収増強剤などをさらに含む。
【0122】
好適な吸収増強剤としては、N-アセチルシステイン、ポリエチレングリコール、カフェイン、シクロデキストリン、グリセロール、アルキルサッカライド、脂質、レシチン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0123】
溶液中での使用に好適な防腐剤としては、ポリクオタニウム-1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。典型的には(しかしそうとは限らないが)、そのような防腐剤は、0.001重量%~1.0重量%の濃度で用いられる。
【0124】
好適な緩衝剤としては、pHを約pH6~pH8、好ましくは約pH7~pH7.5で維持するのに十分な量のホウ酸、重炭酸ナトリウムおよびカリウム、ホウ酸ナトリウムおよびカリウム、炭酸ナトリウムおよびカリウム、酢酸ナトリウム、重リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0125】
好適な等張化剤は、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどであり、眼科用溶液の塩化ナトリウム当量が0.9プラスまたはマイナス0.2%の範囲にあるようにする。
【0126】
好適な酸化防止剤および安定剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオ亜硫酸水素ナトリウム、チオ尿素、カフェイン、クロモグリケート塩、シクロデキストリンなどが挙げられる。好適な湿潤剤および清澄剤としては、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールが挙げられる。好適な粘度増加剤としては、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ワセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は安定剤をさらに含み、安定剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Soluplus)、ビニルピロリノン-酢酸ビニルコポリマー(Kollidon VA64)、ポリビニルピロリノンK30(Kollidon K30)、ポリビニルピロリジン K90(Kollidon K90)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(HPBCD)、マンニトール、およびラクトース一水和物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、安定剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0128】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、酸化防止剤をさらに含み、酸化防止剤は、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブロノポール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クエン酸一水和物、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアイネトラ酢酸、フマル酸、リンゴ酸、メチオニン、プロピオン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チモール、およびビタミンEポリエチレングリコールサクシネートからなる群から選択される。
【0129】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は透過促進剤をさらに含み、透過促進剤は、n-トリデシル-B-D-マルトシド、n-ドデシル-3-D-マルトシド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、プロピレングリコール、EDTA二ナトリウム、PEG400モノステアレート、ポリソルベート80、およびマクロゴール(15)ヒドロキシステアレートからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、透過促進剤は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0130】
いくつかの実施形態において、粉末医薬組成物は、DHEまたはその塩、および少なくとも1つの賦形剤を含む複数の粒子を含む。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~100、0.5~75、0.5~50、0.5~25、0.5~10、0.5~5、または1~4μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~75μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~50μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~25μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~10μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~5μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、1~4μmである。
【0131】
いくつかの実施形態において、粉末医薬組成物は、結晶または非晶質形態である。いくつかの実施形態において、粉末医薬組成物は、部分的に結晶性かつ部分的に非晶質の形態である。いくつかの実施形態において、粉末医薬組成物は、噴霧乾燥、超臨界流体系プロセスにより得られ、または当分野で標準的な方法を使用して調製される。
【0132】
5.4.5.投与経路
医薬組成物の送達は、呼吸器系を介した投与によって行うことができる。いかなる理論にも拘束されることなく、呼吸器系を介した投与は、鼻腔内投与、経肺投与、または経口吸入によって送達することができる。
【0133】
5.4.5.1.鼻腔内投与
いくつかの実施形態において、反復投与の各投与は、鼻腔内投与によって行われ、この組成物は、液体医薬組成物または粉末医薬組成物である。
【0134】
5.4.5.1.1.液体組成物の投与
いくつかの実施形態において、液体組成物の送達は、鼻腔内投与デバイスを使用して実施される。典型的実施形態において、鼻腔内投与デバイスは手動作動、推進剤駆動、定量鼻腔内投与デバイスである。
【0135】
いくつかの実施形態において、最初の手動作動の前に、液体医薬組成物および推進剤は、デバイス内で接触していない。ある特定の実施形態において、液体医薬組成物はバイアルに収容されており、推進剤はキャニスタに収容されている。キャニスタは、加圧キャニスタであってもよい。いくつかの実施形態において、連続した手動作動の間、バイアル内の液体医薬組成物およびキャニスタ内の推進剤は、デバイス内で接触していない。
【0136】
典型的実施形態において、各手動作動は、計量された体積の液体医薬組成物および別個に計量された体積の推進剤をデバイスの投与チャンバ内で接触させ、デバイスの投与チャンバ内での推進剤と液体医薬組成物との接触は、製剤がデバイスのノズルを通って放出されるときに、液体医薬組成物のスプレーを生成する。
【0137】
特定の実施形態において、ノズルは複数の内腔を有し、スプレーは複数のノズル内腔を通じて同時に排出される。いくつかの実施形態において、推進剤はヒドロフルオロアルカン推進剤であり、特定の実施形態において、推進剤はヒドロフルオロアルカン-134aである。
【0138】
様々な実施形態において、最初の作動の前に、バイアルはデバイスと一体ではなく、バイアルに取り付けできるように構成されている。これらの実施形態のいくつかにおいて、バイアルは、デバイスにねじ取り付けできるように構成されている。
【0139】
典型的実施形態において、液体組成物の用量のそれぞれは、2分割サブ用量として投与される。特定の実施形態において、分割サブ用量は、別々の鼻孔に投与される。例えば、分割サブ用量は、鼻孔ごとに1つの、2つのスプレーで投与される。典型的な分割サブ用量の実施形態において、用量は、10、5、2、または1分以内にわたって投与される。いくつかの実施形態において、分割用量は、60、45、30、または15秒以内に投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、30秒以下にわたって投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、30秒以内に投与される。
【0140】
5.4.5.1.2.乾燥粉末組成物の投与
いくつかの実施形態において、乾燥粉末組成物の送達は、鼻腔内投与デバイスを使用して行われる。典型的実施形態において、鼻腔内投与デバイスは、鼻腔内拡散器デバイスである。
【0141】
いくつかの実施形態において、鼻腔内投与デバイスは、ノズルの少なくとも一部を対象の鼻孔に配置することを可能にするように適合された上流端および下流端を有するノズルと、単回用量の粉末治療製剤を含むリザーバであって、上流端および下流端を有し、ノズル内に配置されている、リザーバと、上流端および下流端を有するバルブであって、デバイス内の第1の位置および第2の位置を占めるように適合され、デバイスが作動するときに粉末治療製剤の拡散を引き起こすように適合されたバルブと、バルブの上流端に動作可能に連結された空気源と、を備え、デバイスは、単回使用デバイスである。
【0142】
いくつかの実施形態において、デバイスは、使用者によって係合されて空気を空気源からバルブアセンブリを通してリザーバに押し込み、ノズルから押し出すように適合されている、空気源を備える。典型的実施形態において、デバイスは、圧縮力をポンプに加えることによって動作する。いくつかの実施形態において、ポンプは、手動エアポンプを含む。
【0143】
典型的実施形態において、液体組成物の用量のそれぞれは、2分割されたサブ用量として投与される。特定の実施形態において、分割サブ用量は、別々の鼻孔に投与される。例えば、分割サブ用量は、鼻孔ごとに1つの、2つのスプレーで投与される。典型的な分割サブ用量の実施形態において、用量は、10、5、2、または1分以内にわたって投与される。いくつかの実施形態において、分割用量は、60、45、30、または15秒以内に投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、30秒以下にわたって投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、30秒以内に投与される。
【0144】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末組成物の送達は、吸入療法を使用して行われる。典型的実施形態において、送達は、経肺投与デバイスを使用することによって行われる。いくつかの実施形態において、デバイスは、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器、加圧式定量吸入器、または呼吸作動型加圧式定量吸入器を含む。
【0145】
5.4.5.2.経肺投与
いくつかの実施形態において、乾燥粉末組成物の反復投与の各用量は、経肺投与デバイスを使用して経口吸入によって実施され、各用量は、肺内送達を介して投与される。
【0146】
様々な実施形態において、各用量は、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器、加圧式定量吸入器、または呼吸作動型加圧式定量吸入器を含むデバイスによって投与される。いくつかの実施形態において、各用量は、呼吸作動型加圧式定量吸入器を含むデバイスによって投与される。呼吸作動型加圧式定量吸入器は、プルーム制御機構および/または渦流チャンバを含み得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、吸入投与は、呼吸作動型吸入器、例えば米国特許第8,119,639号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるようなTempo(商標)吸入器(Map Pharmaceuticals,Inc.、マウンテンビュー、カリフォルニア)を用いて実施される。
【0148】
いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、ヒドロフルオロアルカン推進剤ブレンド中にDHEまたはその塩の懸濁液を含有する。いくつかの実施形態において、推進剤ブレンドは、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227ea)および1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)からなる。特定の実施形態において、推進剤ブレンドは、70:30のHFA227ea:HFA134aからなる。
【0149】
5.4.6.投与量
本方法は、片頭痛を有する対象に、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物の有効用量の複数を繰り返し投与することを含み、各用量は、鼻腔内送達デバイスまたは肺内送達デバイスによって投与され、それは、最初の投与の後、(a)少なくとも750pg/mlの平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)、(b)45分未満のDHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)、および(c)少なくとも2000pg*hr/mlのDHEの平均血漿AUC0-infを提供する。
【0150】
様々な実施形態において、第1の用量の投与後、未分割用量または複数の分割サブ用量として投与される用量の投与後に達成される平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)は、少なくとも750pg/ml、800pg/ml、900pg/ml、1000pg/ml、1100pg/ml、1200pg/ml、または2000pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、用量の投与後に達成される平均DHE Cmaxは、少なくとも1250、1300、1350、1400、1450、または1500pg/mlである。ある特定の実施形態において、第1の用量の投与後、用量の投与後に達成される平均DHE Cmaxは、少なくとも750pg/ml、800pg/ml、900pg/ml、1000pg/ml、1100pg/ml、または1200pg/mlである。ある特定の実施形態において、第1の用量の投与後、用量の投与後に達成される平均DHE Cmaxは、少なくとも1250、1300、1350、1400、1450、または1500pg/mlである。特定の実施形態において、第1の用量の投与後、用量の投与後に達成される平均DHE Cmaxは、1000~1500pg/ml、1100~1400pg/ml、または1200~1300pg/mlである。
【0151】
様々な実施形態において、第1の用量の投与後、投与後のDHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)は55分未満である。典型的な実施形態において、DHE Tmaxは、50分未満、45分未満、40分未満、または35分未満である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、投与後のDHEのTmaxは、30~50分、または35~45分である。特定の実施形態において、第1の用量の投与後、DHE Tmaxは、35分、40分、または45分以下である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHE Tmaxは45分未満である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHE Tmaxは30分以下である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHE Tmaxは約30分である。
【0152】
様々な実施形態において、第1の用量の投与後のDHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも2500pg*hr/ml、3000pg*hr/ml、4000pg*hr/ml、5000pg*hr/ml、または6000pg*hr/mlである。様々な実施形態において、第1の用量の投与後のDHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも7000pg*hr/ml、8000pg*hr/ml、9000pg*hr/ml、または10,000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後のDHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、または6000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後のDHEの平均血漿AUC0-infは、6000、5900、5800、5700、5600、5500、5400、5300、5200、5100または5000pg*hr/mlを超える。
【0153】
様々な実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均ピーク血漿濃度(Cmax)は、少なくとも50pg/mlである。ある特定の実施形態において、8’-OH-DHEの平均Cmaxは、少なくとも55pg/mlである。
【0154】
様々な実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも500pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、8'-OH-DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも600pg*hr/ml、700pg*hr/ml、800pg*hr/ml、900pg*hr/ml、またはさらには少なくとも1000pg*hr/mlである。ある特定の実施形態において、8’-OH-DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも1100pg*hr/ml、1200pg*hr/ml、1250pg*hr/ml、1300pg*hr/ml、1400pg*hr/ml、または1500pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、8’-OH-DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも1000pg*hr/mlである。
【0155】
様々な実施形態において、液体医薬組成物の用量は、2.0mg以下のDHEまたはその塩である。典型的実施形態において、用量は、2.0mg未満のDHEまたはDHE塩である。
【0156】
ある特定の実施形態において、液体医薬組成物の用量は、1.2~1.8mgのDHEもしくはその塩、1.4~1.6mgのDHEもしくはその塩、または1.4~1.5mgのDHEもしくはその塩である。いくつかの実施形態において、用量は、約1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、または1.7mgのDHEもしくはその塩である。いくつかの実施形態において、用量は、約1.45mgのDHEまたはその塩である。
【0157】
様々な実施形態において、乾燥医薬組成物の用量は、0.1~10.0mgのDHEまたはその塩である。典型的実施形態において、用量は、10.0mg以下のDHEまたはDHE塩である。
【0158】
鼻腔内投与用の医薬粉末組成物は、単位用量で製剤化される。ある特定の実施形態において、鼻腔内投与のための乾燥医薬組成物の用量は、1.0~6.0mgのDHEもしくはその塩、1.5~4.0mgのDHEもしくはその塩、2.5~4.5mgのDHEもしくはその塩、または4.0~6.0mgのDHEもしくはその塩である。いくつかの実施形態において、この用量は、約1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、または6.0mgのDHEまたはその塩である。いくつかの実施形態において、用量は、約3.9mgのDHEまたはその塩である。いくつかの実施形態において、用量は、約5.2mgのDHEまたはその塩である。
【0159】
いくつかの実施形態において、肺内投与のための粉末医薬組成物は、単位用量で製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物の単位用量は、0.1~10mg、0.5~5mg、または1~2mgのDHEまたはその塩を含有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物の単位用量は、0.5~5mgのDHEまたはその塩を含有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1.0~2.0mgのDHEの塩を含有し、その塩は、DHEメシル酸塩である。いくつかの実施形態において、医薬組成物の単位用量は、1.0mgのDHEメシル酸塩を含有する。
【0160】
いくつかの実施形態において、用量は、1つの未分割用量として投与される。これらの実施形態において、用量は、左鼻孔または右鼻孔のいずれかに投与される。
【0161】
他の実施形態において、用量は、複数の分割サブ用量として投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、用量は、2、3、または4分割サブ用量として投与される。特定の実施形態において、用量は、2分割サブ用量として投与される。いくつかの実施形態において、用量は、2分割サブ用量として投与され、1つの分割サブ用量が各鼻孔に投与される。
【0162】
用量が複数の分割サブ用量として投与される実施形態において、全体の有効用量は、典型的には、1分以内にわたって投与され、すなわち、複数の分割用量の全てが、第1の分割用量の投与の1分以内に投与される。ある特定の分割用量の実施形態において、用量は、45秒以下にわたって投与される。ある特定の分割用量の実施形態において、用量は、30秒以下にわたって投与される。ある特定の分割用量実施形態において、用量は、約30秒にわたって投与される。
【0163】
用量が複数の分割サブ用量として投与される実施形態において、分割用量当たりの投与される液体組成物の体積は、典型的には140~250μLである。ある特定の実施形態において、分割用量当たりの投与される液体組成物の体積は、145μL~225μLである。いくつかの実施形態において、分割用量当たりの投与される液体組成物の体積は、175μL~225μLである。特定の実施形態において、分割用量当たりの投与される液体組成物の体積は、約180μLまたは約200μLである。
【0164】
5.4.7.追加の実施形態
さらなる実施形態において、本開示は前兆のある、または前兆のない頻発する片頭痛を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、反復投与スケジュールで、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物の複数の用量を対象の呼吸器系に投与することを含み、スケジュールは、少なくとも(i)第1の用量の医薬組成物の投与、および(ii)28日間の初期投与期間内の第2の用量の医薬組成物の後続投与を含み、複数の用量は、28日間の初期投与期間直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、片頭痛の頻度を減少させるのに十分である。
【0165】
呼吸器送達は、鼻腔内投与または経肺投与によって達成することができる。経肺投与は、本明細書において、経口吸入と同義的に使用される。
【0166】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、第3の用量、第4の用量の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間の後、少なくとも1回の追加の投与をさらに含む。
【0167】
様々な実施形態において、スケジュールは、特定の期間内に複数の用量の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の28日間の期間内に12用量以下の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の7日間の期間内に3用量以下の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の24時間の期間内に2用量以下の医薬組成物の投与を含む。
【0168】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、各投与が、対象が片頭痛を感じている間に行われる長期間欠的スケジュールである。
【0169】
いくつかの実施形態において、スケジュールは、投与が所定の間隔で行われる固定スケジュールである。いくつかの実施形態において、スケジュールは、1週間あたり1回の投与である。いくつかの実施形態において、スケジュールは、1週間あたり2回の投与である。
【0170】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の各用量は、鼻腔内投与によって投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、液体組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥粉末組成物である。
【0171】
いくつかの実施形態において、各用量は、2分割サブ用量として投与される。特定の実施形態において、分割サブ用量は、別々の鼻孔に投与される。典型的な分割サブ用量の実施形態において、用量は、1分以内にわたって投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、45秒以内に、または30秒以内にわたって投与される。いくつかの実施形態において、分割サブ用量は、30秒以内に投与される。
【0172】
送達ステップは、送達デバイスを使用して実行することができる。いくつかの実施形態において、鼻腔内投与は、鼻腔内投与デバイスによって送達される。典型的実施形態において、鼻腔内送達デバイスは手動作動、推進剤駆動、定量鼻腔内投与デバイスである。いくつかの実施形態において、最初の手動作動の前に、液体医薬組成物および推進剤は、デバイス内で接触していない。ある特定の実施形態において、液体医薬組成物はバイアルに収容されており、推進剤はキャニスタに収容されている。キャニスタは、さらに加圧キャニスタであってもよい。いくつかの実施形態において、連続した手動作動の間、バイアル内の液体医薬組成物およびキャニスタ内の推進剤は、デバイス内で接触していない。
【0173】
いくつかの実施形態において、各手動作動は、計量された体積の医薬組成物および別個に計量された体積の推進剤をデバイスの投与チャンバ内で接触させる。いくつかの実施形態において、デバイスの投与チャンバ内の液体医薬組成物と推進剤との接触は、製剤がデバイスのノズルを通して排出されるときに、液体医薬組成物のスプレーを生成する。いくつかの実施形態において、ノズルは複数の内腔を有し、スプレーは複数のノズル内腔を通して同時に排出される。いくつかの実施形態において、推進剤は、ヒドロフルオロアルカン推進剤である。いくつかの実施形態において、推進剤は、ヒドロフルオロアルカン-134aである。
【0174】
様々な実施形態において、最初の作動の前に、バイアルはデバイスと一体ではなく、バイアルに取り付けできるように構成されている。これらの実施形態のいくつかにおいて、バイアルは、デバイスにねじ取り付けできるように構成されている。
【0175】
いくつかの実施形態において、用量のそれぞれは、2.0mg以下のDHEまたはその塩である。いくつかの実施形態において、用量のそれぞれは、2.0mg未満のDHEまたはその塩である。いくつかの実施形態において、用量のそれぞれは、約1.2~1.8mgのDHEまたはその塩である。いくつかの実施形態において、用量のそれぞれは、約1.4~1.6mgのDHEまたはその塩である。特定の実施形態において、用量は、約1.45mgのDHEまたはその塩である。
【0176】
様々な実施形態において、液体組成物は、2つのスプレーにおいて2分割サブ用量として投与され、2分割サブ用量のそれぞれは、140~250μLである。いくつかの実施形態において、2分割サブ用量のそれぞれは、175μL~225μLである。いくつかの実施形態において、2分割サブ用量のそれぞれは、約200μLである。
【0177】
典型的実施形態において、液体組成物は、DHEの塩を含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を2.5~7.5mg/mlの濃度で含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を3.5~6.5mg/mlの濃度で含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、DHEメシル酸塩を4.0mg/ml DHEメシル酸塩の濃度で含む。
【0178】
いくつかの実施形態において、液体組成物は、カフェインをさらに含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、カフェインを10mg/mlの濃度で含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、デキストロースをさらに含む。いくつかの実施形態において、液体組成物は、デキストロースを50mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態において、液体組成物は、4.0mg/mlのDHEメシル酸塩、10.0mg/mlのカフェイン、および50mg/mlのデキストロースを含む。
【0179】
ある特定の実施形態において、医薬組成物が乾燥粉末組成物である場合、組成物は、鼻腔内投与によって送達される。いくつかの実施形態において、鼻腔内投与は、鼻腔内ディスペンサデバイスによって送達される。いくつかの実施形態において、デバイスは、使用者によって係合されて空気を空気源からバルブアセンブリを通してリサーバに押し込み、ノズルから押し出すように適合されている、空気源を備える。いくつかの実施形態において、デバイスは、圧縮力をポンプに加えることによって動作する。いくつかの実施形態において、ポンプは、手動エアポンプを含む。
【0180】
様々な実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEまたはその塩と、増粘剤、担体、pH調整剤、および糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1つの要素と、を含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は増粘剤を含み、増粘剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アカシア、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、デンプン、カーボポール、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンからなる群から選択される。特定の実施形態において、増粘剤はHPMCである。
【0182】
様々な実施形態において、乾燥医薬組成物は担体を含み、担体は、微結晶セルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、キトサン、およびβシクロデキストリンから選択される。特定の実施形態において、担体は、微結晶セルロースである。
【0183】
様々な実施形態において、乾燥医薬組成物は糖アルコールを含み、糖アルコールは、マンニトール、グリセロール、ガラクチトール、フシトール、イノシトール、ボレミトール、マルトトリトール、マルトエテトライトール(maltoetetraitol)、ポリグリシトール、エリスリトール、トレイトール、リビトール、アラビトール、キシリトール、アリトール、ズルシトール、グルシトール、ソルビトール、アルトリトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、およびイソマルトからなる群から選択される。特定の実施形態において、糖アルコールは、マンニトールである。
【0184】
様々な実施形態において、乾燥医薬組成物は流動化剤をさらに含み、流動化剤は、リン酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態において、流動化剤は、三塩基性リン酸カルシウムを含む。
【0185】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物はDHEの塩を含み、その塩はDHEメシル酸塩である。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.01~0.2mg/mgの濃度で含む。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.01~0.1mg/mgの濃度で含む。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.016~0.07mg/mgの濃度で含む。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、DHEメシル酸塩を0.02~0.07mg/mgの濃度で含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、第1の微結晶セルロース(MCC-1)、第2の微結晶セルロース(MCC-2)、および三塩基性リン酸カルシウム(TCP)を含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩および第1の微結晶セルロース(MCC-1)を含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMC、マンニトール、MCC-2およびTCPを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMCおよびマンニトールを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMC、マンニトール、pH調整剤、MCC-2およびTCPを含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMC、マンニトール、およびpH調整剤を含む。いくつかの実施形態において、乾燥粉末医薬組成物は、DHEメシル酸塩、MCC-1、HPMCおよびマンニトールを含む。
【0187】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、10~300μmの平均直径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、15~200μmの平均直径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、20~100μmの平均直径を有する粒子を含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥、または溶融押出される。典型的実施形態において、粒子は噴霧乾燥されている。
【0189】
典型的実施形態において、乾燥医薬組成物は、単位用量で製剤化される。いくつかの実施形態において、単位用量は、3~6mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、3.9mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、5.2mgのDHEメシル酸塩を含む。
【0190】
様々な実施形態において、投与される乾燥医薬組成物の各用量は、3~6mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、3.9mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、5.2mgのDHEまたはその塩を含む。
【0191】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物の各用量は、経口吸入によって投与される。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物の各用量は、経肺投与デバイスによって投与される。特定の実施形態において、各用量は、肺内送達を介して投与される。
【0192】
様々な実施形態において、用量は、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器、加圧式定量吸入器、または呼吸作動型加圧式定量吸入器を含むデバイスによって投与される。いくつかの実施形態において、用量は、呼吸作動型加圧式定量吸入器を含むデバイスによって投与される。いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、プルーム制御機構を含む。いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、渦流チャンバを含む。
【0193】
いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、ヒドロフルオロアルカン推進剤ブレンド中にDHEまたはその塩の懸濁液を含有する。いくつかの実施形態において、推進剤ブレンドは、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227ea)および1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)からなる。特定の実施形態において、推進剤ブレンドは、70:30のHFA227ea:HFA134aからなる。
【0194】
典型的実施形態において、各用量は、0.1~5.0mgのDHEまたはその塩を含む。いくつかの実施形態において、各用量は、0.1~5.0mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、各用量は、1.0~2.0mgのDHEメシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、各用量は、1.0mgのDHEメシル酸塩を含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥粉末医薬組成物である。ある特定の実施形態において、乾燥医薬組成物は、DHEメシル酸塩および少なくとも1つの賦形剤を含む複数の粒子を含む。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~100μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~75μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~50μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~25μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~10μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、0.5~5μmである。いくつかの実施形態において、複数の粒子のメジアン径(D50)は、1~4μmである。
【0196】
いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、結晶または非晶質形態である。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、部分的に結晶性であり、部分的に非晶質の形態である。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、非晶質形態である。いくつかの実施形態において、乾燥医薬組成物は、噴霧乾燥または超臨界流体系プロセスによって得られる。
【0197】
いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)は、少なくとも750pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)は、少なくとも1000pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)は、少なくとも1200pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)は、少なくとも2000pg/mlである。
【0198】
いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)は45分未満である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)は30分以下である。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)は約30分である。
【0199】
いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも2500pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも3000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも4000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも5000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも6000pg*hr/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも10000pg*hr/mlである。
【0200】
いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均ピーク血漿濃度(Cmax)は、少なくとも50pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均Cmaxは、少なくとも55pg/mlである。いくつかの実施形態において、第1の用量の投与後、8’OH-DHEの平均血漿AUC0-infは、少なくとも1000pg*hr/mlである。
【0201】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の4週間の期間に、少なくとも3回有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直前の4週間の期間に、少なくとも4回の片頭痛発作を有する。
【0202】
いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、3回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、2回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、片頭痛を有しない。
【0203】
いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の8週間の間に、6回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の8週間の間に、4回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の8週間の間に、2回未満の片頭痛を有する。
【0204】
いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の12週間に、12回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の12週間の間に、6回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、初期投与期間の直後の12週間の間に、3回未満の片頭痛を有する。
【0205】
いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の24週間の間に18回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の24週間の間に、12回未満の片頭痛を有する。いくつかの実施形態において、対象は、反復投与直後の24週間の間に、4回未満の片頭痛を有する。
【0206】
いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、少なくとも50%減少する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、少なくとも60%減少する。いくつかの実施形態において、片頭痛の頻度は、28日間の初期投与期間の直後の4週間の間に、28日間の初期投与期間の直前の4週間の間の片頭痛の頻度と比較して、少なくとも75%低下する。
【0207】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の第1の用量の投与は、疼痛、吐き気、音恐怖症、および光恐怖症から選択される1つ以上の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状の軽減は、投与2時間後に生じる。
【0208】
いくつかの実施形態において、対象は、トリプタン系薬剤に応答しない片頭痛を有する。
【0209】
典型的実施形態において、反復投与のそれぞれは、自己投与によって行われる。
【0210】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも1ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも2ヶ月続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも3ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも4ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも5ヶ月間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、少なくとも6ヶ月続く。
【0211】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは5~8週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは9~12週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは13~16週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは17~20週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは21~24週間続く。
【0212】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも5週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも9週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも13週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも17週間続く。いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは少なくとも21週間続く。
【0213】
別の態様において、本開示は、前兆のある、または前兆のない頻発する片頭痛を有する対象における片頭痛発作の頻度を減少させる方法を提供し、この方法は、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む医薬組成物を反復投与スケジュールで対象に鼻腔内投与することを含み、各鼻腔内投与は、手動作動、推進剤駆動、定量投与デバイスによって送達され、このスケジュールは、対象が片頭痛を経験している間に各反復投与が行われる長期間欠的スケジュールである。
【0214】
いくつかの実施形態において、反復投与スケジュールは、医薬組成物の少なくとも第1の用量および第2の用量の投与を含む。
【0215】
いくつかの実施形態において、第1の用量および第2の用量は、28日間の初期投与期間内に投与される。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、医薬組成物の第3の用量の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間内に、第4の用量の医薬組成物を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、28日間の初期投与期間後に、少なくとも1回の追加の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の28日間の期間内に12用量以下の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の7日間の期間内に3用量以下の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、スケジュールは、任意の24時間の期間内に2用量以下の医薬組成物の投与を含む。
【0216】
5.5.デバイス
本明細書に記載の方法において、用量は、鼻腔内投与後に(a)少なくとも750pg/mlの平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)、(b)45分未満のDHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)、および(c)少なくとも2000pg*hr/mlのDHEの平均血漿AUC0-infを提供する鼻腔内送達デバイスによって投与される。
【0217】
5.5.1.化合物送達デバイス
様々な実施形態において、鼻腔内投与デバイスは、米国特許第9,550,036号明細書、米国特許出願公開第2018/0256836号明細書、または米国特許出願公開第2019/0209463号明細書(これらの開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される「化合物送達デバイス」である。
【0218】
5.5.2.医療用単位用量コンテナデバイス
様々な実施形態において、鼻腔内投与デバイスは、国際公開第2014/179228号、米国特許出願公開第2018/0256836号明細書、または米国特許出願公開第2019/0209463号明細書(これらの開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される「医療用単位用量コンテナ」デバイスである。
【0219】
5.5.3.液体組成物を鼻腔内投与するためのデバイス:手動作動、推進剤駆動、定量デバイス
典型的実施形態において、鼻腔内送達デバイスは手動作動、推進剤駆動、定量鼻腔内投与デバイスである。
【0220】
いくつかの実施形態において、液体医薬組成物および推進剤は、第1の手動作動の前にデバイス内で接触しておらず、任意選択的に、連続した手動作動の間にデバイス内で接触していない。そのような実施形態において、デバイスは、典型的には、バイアルおよびキャニスタを含み、液体医薬組成物はバイアルに収容され、推進剤はキャニスタに収容される。典型的には、キャニスタは、推進剤の加圧キャニスタである。典型的実施形態において、推進剤は、薬学的使用に好適なヒドロフルオロアルカン推進剤である。特定の実施形態において、推進剤は、ヒドロフルオロアルカン-134aである。
【0221】
様々な実施形態において、各手動作動は、計量された体積の液体医薬組成物および別個に計量された体積の推進剤をデバイスの投与チャンバ内で接触させる。デバイスの投与チャンバ内の液体医薬組成物と推進剤との接触は、用量をデバイスのノズルに向かって推進し、用量がデバイスのノズルを通って排出されるときにスプレーを生成する。いくつかの実施形態において、ノズルは複数の内腔を有し、スプレーは複数のノズル内腔を通して同時に排出される。
【0222】
キットに関して以下でさらに詳細に論じるように、いくつかの実施形態において、バイアルは、デバイスと一体ではなく、デバイスに取り付けることができるように構成される。特に、実施形態において、バイアルは、デバイスにねじ式に取り付けできるように構成されている。
【0223】
いくつかの実施形態において、デバイス(例えば、I123PDO Device)は、約175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、または205μL/作動ポンプである公称出力を有し得る。
【0224】
5.5.3.1.インライン経鼻送達デバイス
ある特定の実施形態において、手動作動、推進剤駆動定量鼻腔内投与デバイスは、国際公開第2017/044897号に記載される「インライン経鼻送達デバイス」であり、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0225】
典型的には、これらの実施形態において、デバイスは、液体医薬組成物の用量の少なくとも一部を、鼻弁を超えて、鼻甲介および/または嗅部への送達を含む、鼻腔に送達する。ある特定の実施形態において、デバイスは、液体医薬組成物の用量の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、または70%を、鼻弁を超えて送達する。ある特定の実施形態において、デバイスは、液体医薬組成物の用量の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、または70%が対象の鼻腔(鼻上皮)の上部3分の1と接触するように、液体医薬組成物を送達する。
【0226】
図1に示されるように、インライン経鼻送達デバイス1は、ハウジング10、拡散器20、先端35、ノズル40、投与チャンバ45、アクチュエータ50、および液体医薬組成物を投与チャンバ45内に移動させるためのポンプ25を含む。一連の実施形態において、インライン経鼻デバイス1は、推進剤キャニスタ5、推進剤バルブ15、および液体医薬組成物を投与チャンバ45内に移動させるためのポンプ25と協働する液体医薬組成物のバイアル30に結合し、かつ、それらと協働する。
【0227】
一連の実施形態において、拡散器20は、フリット(frit)21(図1には図示せず)である。拡散器は、推進剤キャニスタ5内の液化推進剤の気体への変換、および/または推進剤の温度の上昇をもたらす。
【0228】
一連の実施形態において、推進剤バルブ15は、定量推進剤バルブ16である。
【0229】
一連の実施形態において、液体医薬組成物は、例えばガラス製の、密封されたバイアル30の形態で供給される。一連の実施形態において、バイアル30は、取り外し可能なクロージャ32(図示せず)によって密封されるネック31(図示せず)を有し、例えば、これらに限定されないが、プラスチック製カバー、圧着金属シール、およびゴム栓を用いて(安定性および滅菌の目的のために)密封される。クロージャ32が取り外されると、デバイス1は、バイアル30に係合され得る。一連の実施形態において、デバイス1は、バイアル30のネック31と協働することにより、バイアル30に係合され得る。関連する態様において、以下でさらに説明するが、密封バイアル30およびデバイス1は、使用時に組み立てられるキットに共包装され得る。
【0230】
ある特定の実施形態において、バイアル30は、3.5mLの黄褐色ガラス製バイアルである。
【0231】
ポンプ25は、液体医薬組成物を投与チャンバ45内に移動させる。
【0232】
推進剤キャニスタ5は、圧縮気体または液化推進剤のキャニスタである。圧縮気体としては、これらに限定されないが、圧縮空気および圧縮炭化水素が挙げられる。一連の実施形態において、圧縮気体は、窒素または二酸化炭素である。液化推進剤としては、これらに限定されないが、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロアルカンが挙げられる。いくつかの実施形態において、推進剤キャニスタ5は、HFA-134aを含む。
【0233】
キャニスタ5は、一般に、気体流を制御することができる推進剤バルブ15を備える。
【0234】
先端35は、ノズル40を含む。一連の実施形態において、ノズル40は、複数のノズル開口部41(図示せず)(同義的に、ノズル内腔)を有する。液体医薬組成物および推進剤は、複数のノズル開口部41を通じて、鼻腔に送達される。
【0235】
推進剤キャニスタ5の作動は、液体医薬組成物のためのバイアル30に対するポンプ25の作動と効率的に協調される。この構成は、液体医薬組成物のためのバイアル30の作動が推進剤キャニスタ5の作動を生じさせるような構成とされ得る。図2は、静止時(図2A)および作動時(図2Bおよび2C)におけるデバイス1を示す。
【0236】
一例として、デバイス1の作動の段階分けは、以下の通りである。ハウジング10は、推進剤キャニスタ5を準備するために圧迫される。ハウジング10が圧迫されたときに、アクチュエータ50はハウジング10内で静止したままであるが、推進剤キャニスタ5およびバイアル30は、アクチュエータ50に向かって移動する。この時点では、推進剤キャニスタ5に結合された推進剤バルブ15は、圧迫によって作動されない。アクチュエータ50は、ポンプ25に作用してポンプ25を圧縮し、バイアル30からの液体医薬組成物は、投与チャンバ45内に移される。液体医薬組成物の大部分が投与チャンバ45内に移動した後、アクチュエータ50は推進剤バルブ15に作用し、推進剤バルブ15は圧縮し始める。アクチュエータ50の押圧が続けられることにより、推進剤キャニスタ5から推進剤が放出される。推進剤は、先端35内に配置されたノズル40のノズル開口部(内腔)41(図示せず)を通って液体医薬組成物がデバイス1から出るときに、液体医薬組成物を押す。アクチュエータ50は、ポンプ25の最初の作動をもたらし、次いでポンプ25が底に達すると、アクチュエータ50の押圧が続けられることにより、キャニスタ5からの推進剤の放出がもたらされる。
【0237】
デバイス1の代替的実施態様(図示せず)において、デバイス1は、拡散器20を含まない。そのような実施形態において、デバイスは、典型的には、別のタイプの用量保持バルブを組み込む。
【0238】
図3は、デバイス100のさらに別の実施態様を示す。デバイス100は、バイアル30または他の容器から、1回分または複数回分の用量を送達することができる。デバイス100は、複数回分の用量、または1回分の用量がバイアル30から送達されることを可能にする。例えば、バイアル30は、複数回の投与のための液体医薬組成物の体積を収容することができ、一方で、使用者は、バイアル30から1回分の用量だけを送達することを決めることができる。液体医薬組成物は、薬剤、医薬品有効成分、または医薬製剤であり得る。
【0239】
最初に、バイアル30は、組み立てられたデバイス100の残りの部分とは別体とされ得る。使用時に、デバイス100およびバイアル30は、それぞれの包装から取り出される。使用に先立って、バイアル30は一般に、密封される。プラスチック製カバー、金属シール、および栓によりバイアル30が覆われる実施形態において、プラスチック製カバーおよび金属シールは、バイアル30の頂部から引き離され、ゴム栓は、バイアル30から取り除かれる。バイアル30は、デバイス100の基部に配置されたポンプ取付具180にねじ込まれ得る。例えば、これに限定されないが、バイアル30は、ポンプ取付具180上の雄ねじにねじ込まれ得る雌ねじを有してもよく、その逆でもよい。バイアル30は、例えば、これに限定されないが、端点を含めて2~3mL、また別に実施形態において2~2.5mlの液体医薬組成物を収容し得る。
【0240】
図3に示されるように、デバイス100は、ハウジング110を含む。ハウジング110は、Y接合部120を含むデバイス100の構成要素を収容する。Y接合部120は、共通の基部から放射状に延びる3つの枝路を有する。Y接合部およびその3つの枝路は、成形された構成要素であってもよい。Y接合部120は、デバイス100内に流体および気体の両方の経路を構築し、かつ、推進剤キャニスタ140がデバイスと組み合わせられたときに、定量ポンプ130、投与チャンバ150、および推進剤キャニスタ140に接続する。
【0241】
図3に示されるように、デバイス100を使用するために、使用者は一般に、推進剤キャニスタ140を組み付けて上部に配置し、バイアル30を組み付けて底部に配置させた状態で、デバイス100を正しい向きに置く。デバイス100のハウジング110内に収容されると、任意選択的なチェックバルブ160(定量ポンプ130のステムに取り付けられている)は、Y接合部120の第1の枝路の受入ハブ内に圧入される。内部ボアが、定量ポンプ130から任意選択のチェックバルブ160を通って、投与チャンバと接続するY接合部120の第3の枝路に至る、流体連通を提供する。一連の実施形態において、チェックバルブ160は、定量ポンプ130とY接合部120との間でプラスチック製ハウジング内に導入されるエラストマー構成要素である。任意選択のチェックバルブ160は、(a)ポンプステムが押圧され推進剤キャニスタ140が作動された場合に定量ポンプ130を通じて起こり得る用量漏れを軽減または排除し、(b)デバイス100による用量送達の一貫性の向上を可能にし、および/または、液体医薬組成物が、Y接合部120の内部用量装填チャネル230が押し戻されて定量ポンプ130に入ることがないようにする。
【0242】
動作時に使用されるように配向されると、デバイス100の頂部に向かってデバイス100のハウジング110内に収容された推進剤キャニスタ140は、Y接合部120の第2の枝路に圧入されて、内部ボアを通り拡散器170を経て投与チャンバ150に至る気体経路を構築する。
【0243】
デバイス100のこの実施態様において、拡散器170は環状である。図4に示されるように、環状拡散器170は、投与チャンバ150の後端にあるボアの内側に位置する。環状拡散器170の外径は、投与チャンバ150との圧縮嵌合状態にある。図示されていない他の実施形態において、環状拡散器は、圧縮嵌合以外の手段、または追加の手段を使用して、投与チャンバに固定される。
【0244】
投与チャンバ150がY接合部120上に取り付けられると、Y接合部120の一部分として成形された内部用量装填チャネル230が、環状拡散器170の内部ボア内に嵌合する。環状拡散器170の内径は、Y接合部120の内部用量装填チャネル230部分との圧縮状態にある。環状拡散器170は、内部用量装填チャネル230の外壁と投与チャンバ150の内壁との間に着座されて、それらの表面の両方に対して封止して、投与チャンバ150の底部を形成する。拡散器170、投与チャンバ150、およびY接合部120の追加の実施形態は、図12~13に関連して説明される。
【0245】
一連の実施形態において、拡散器170は、フリット171(図示せず)である。他の実施形態において、拡散器170は、均一または不均一に多孔質である構成要素である。いくつかの実施形態において、拡散器170は、ディスク形状の部材であってもよい。拡散器170は、(a)推進剤キャニスタ140内の液化推進剤の気体への変換をもたらし、(b)推進剤の温度の上昇をもたらし、(c)推進剤がデバイス100内に逆流するのを防ぐ働きをし、(d)液体医薬組成物がデバイス100内に逆流するのを防ぐ働きをし、および/または(e)液体医薬組成物が漏出するのを防ぐと同時に投与チャンバ150へ気体の流入を可能にする働きをする。拡散器は、多孔質ポリマー材料で作られ得る。
【0246】
デバイス100の動作における、液体医薬組成物、拡散器170、内部用量装填チューブ230、投与チャンバ150、およびY接合部120との間の関係性が、少なくとも図6に示されている。動作にあたっては、投与チャンバ150内に装填されている液体医薬組成物は、制限のより少ないルートを通ってバイアル30から流れ出て、拡散器170を通ってY接合部120の推進剤の送達経路内へと後方に装填されるのではなく、投与チャンバ150を満たす。デバイス100の動作にあたっては、動作の段階分けおよびデバイスの動作に必要とされる時間により、拡散器170は、推進剤キャニスタ140が液体医薬組成物の装填後に作動されるように、必要とされる期間にわたって液体医薬組成物がY接合部120内に逆流するのを制限することが可能になる。適切なデバイス100の使用中、定量ポンプ130および推進剤キャニスタ140を含むデバイス100の全体的な作動は、おおよそ1秒、または1秒未満である。投与チャンバ150内の装填された用量には、Y接合部120に逆流するのに足りるほどの時間がない。投与チャンバ150が満ちるとすぐに、推進剤は、デバイス100から液体医薬組成物を排出する。
【0247】
投与チャンバ150は、45度の角度をなすY接合部120の第3の脚上で、Y接合部120に圧入されて、デバイスを通過する気体および流体の両方のための流路を完成させる。一連の実施形態において、角度は、端点および中間の角度を含め、30度、35度、40度、45度、50度、55度、60度である。
【0248】
Y接合部120は、デバイス100のハウジング110内での組立体の固定および位置決めの助けとなるように、係合リブ(engagement rib)(図示せず)を含み得る。
【0249】
デバイス100は、ポンプ取付具180を含む。ポンプ取付具180は、定量ポンプ130をバイアル30に固定し、かつ、デバイス100の使用中に両方の構成要素を所定の位置に保持する。ポンプ取付具180の一連の実施形態は、それが係合リブからなるものであり、係合リブは、それをハウジング110内に保持し、垂直方向の変位を提供し、かつ、バイアル30の取り付け中に回転を防止する。
【0250】
デバイス100は、投与チャンバ150を含む。投与チャンバ150は、Y接合部120の内部チューブから押し出された液体医薬組成物を受容し、貯蔵する。推進剤キャニスタ140が作動されると、Y接合部120および投与チャンバ150は加圧され、推進剤気体は、液体医薬組成物を投与チャンバ150から放出する。図5Aおよび図5Bに示されるように、投与チャンバ150は、Y接合部120に圧入される。ノズル190は、Y接合部120に圧入されるのとは反対側の、投与チャンバ150の端部内に取り付けられる。
【0251】
ノズル190は、投与チャンバ150の遠位端部(投与チャンバ150がY接合部120内に圧入されるのとは反対側の端部)内に取り付けられて、外径の周りに液密および気密のシールを形成する。デバイス100の作動中に、推進剤は、投与チャンバ150から液体医薬組成物を抜いて、それをノズル190から押し出す。
【0252】
ノズル190は、狭い噴煙角度(plume angle)(例えば、端点およびそれらの間の断続的な角度を含む1から40度の角度であり、一連の実施形態において、角度は、5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度である)の多流沈着(multi-stream deposition)を形成する。ノズル190、および生成される噴煙の得られる角度は、使用者の鼻腔の嗅部への液体医薬組成物の送達を促進する。
【0253】
この実施態様において、図8に示されるように、デバイス100は、任意選択のノーズコーン200を含み得る。ノーズコーン200の外的な幾何形状は、鼻への挿入中にデバイス100の適切な位置合わせを提供するのに役立つ。直径方向に向かい合った平坦面は、正確な挿入深さを提供する深さ止めとともに、どちらかの鼻孔の隔壁に対する配置を支援する。ノーズコーン200は、設計に取り入れられた機械的干渉を通じて、ノズル190の保持に冗長性を付加する。図3および図8に示されるように、ノーズコーン200には、ノズル190と一列に並ぶ開口部が存在する。ノーズコーン200は、加圧される流路の一部ではない。
【0254】
ハウジング110は、デバイス100の本体に相当する。ハウジング110は、デバイス100の構成要素を隠し、すべての構成要素を保持して機能性を保証する、2つの異なる「クラムシェル」を含む。ハウジング110は、定量ポンプ130およびポンプ取付具180、アクチュエータグリップ210、Y接合部120、推進剤キャニスタ140、並びに投与チャンバ150を収容する。ノーズコーン200は、ハウジング110の外側幾何形状上に係合するか、または任意選択的にクラムシェルの設計に組み込まれてもよい。ノーズコーン200の追加の実施形態は、図14に関連して説明される。ハウジング110は、例えば、これらに限定されないが、幾何形状内に成形されたマテルピン、留め具、柱もしくはネジ、またはそれらの組み合わせの使用を通じて容易に組み立てられるように設計される。
【0255】
アクチュエータグリップ210は、使用者による作動変位(actuation displacement)を提供する。アクチュエータグリップ210は、2つの部品、アクチュエータグリップAおよびアクチュエータグリップBで構成され、かつ、Y接合部120を取り囲みハウジング110内に常駐する。図7は、使用者が指で、例えば、しかし限定されるのでなしに、人差し指および中指でデバイス100に係合することを可能にするようにアクチュエータグリップ210に設計された、2つのフィンガーグリップノッチ215を示す。これらのフィンガーグリップノッチ215は、使用者が下向きの動きを加えてデバイス100の作動を引き起こすことを可能にする。
【0256】
定量ポンプ130は、液体医薬組成物をバイアル30からY接合部120へくみ上げる。定量ポンプ130は、特注のポンプ取付具180を利用して、デバイス100内での機能性を高めるとともにねじ山を介したバイアル30の取付けを可能することができる。定量ポンプ130は、例えば、これらに限定されないが、作動中に130μl、140μl、150μl、160μl、170μl、180μl、190μl、200μl、または230μlの体積を送達することができる。市販されている定量ポンプ130が使用され得る。
【0257】
デバイス100が液体医薬組成物を一貫して送達するために、定量ポンプ130が最初に液体医薬組成物を送達し、続いて推進剤キャニスタ140が作動して液体医薬組成物を放出する必要がある。図7に示されるように、これを達成する1つの方法は、推進剤キャニスタ140とY接合部120との間の円錐形ばね220を介して、定量ポンプ130と推進剤キャニスタ140との間の正しい作動の順序をもたらすのに必要とされる推進剤キャニスタ140の作動力を生じさせるものである。一実施態様において、円錐形ばね220が使用されるが、この力は円錐形ばね220によって生成されることに限定されるのではなく、他の機構が使用されてもよい。一連の実施形態において、円錐形ばね220は、約25.5lbf/inのk値および3.2lbfの最大荷重を伴って、ほぼゼロの予荷重を有する。ばねまたは機構の選択は、(a)適切なデバイス100の段階分けを実現すること、(b)デバイス100内の物理的空間、および/または(c)円錐形ばね220のどの程度の硬さにより様々な使用者がデバイス100を作動させることがなおも可能となるかに関する使用者のフィードバックについての考慮を含む。
【0258】
円錐形ばね220は、推進剤キャニスタ140とY接合部120との間に直線的に取り付けられる。アクチュエータグリップ210は、推進剤キャニスタ140を物理的に保持する。使用者は、例えば、アクチュエータグリップ210から下方に作用する、およびバイアル30から上方に作用する直線的な力を加えることにより、デバイス100を作動させる。この力は、定量ポンプ130および推進剤キャニスタ140の両方を作動させるように同時に作用する。円錐形ばね220は、内部の推進剤キャニスタ定量バルブばねと並行して作用して、推進剤キャニスタ140を作動させるのに必要とされる必須の力を増大させる。推進剤キャニスタ140を作動させるのに必要とされる必須の力が定量ポンプ130を完全に作動させるのに必要とされる最大の必須の力を超えるように円錐形ばね220を選択することにより、デバイス100は、推進剤気体が液体医薬組成物をデバイス100から放出し始める前に、投与チャンバ150内に用量が装填されることを実現する。
【0259】
別の実施形態において、円錐ばねの代わりに伸張ばねが使用される。伸張ばねは、図12Aに関連して説明される。
【0260】
デバイス100の作動中、定量ポンプ130は、デバイス100の底部にあるバイアル30から、Y接合部120を介して内部用量装填チャネル230を経て投与チャンバ150内へ、液体医薬組成物をくみ上げる。内部用量装填チャネル230は、液体医薬組成物が拡散器170の多孔質材料を物理的に通過することを必要とすることなく、拡散器170の前方に装填されるための明瞭なルートを提供する。図6に示されるように、小矢印頭部は、推進剤の流れを表し、大矢印頭部は、液体医薬組成物の流れを表す。使用者が投与するのに先だって、定量ポンプ130およびY接合部120の内部用量装填チャネル230を完全に満たすために、プライミングショット(priming shot)が必要とされ得る。任意選択の投与キャップ(図示せず)が、デバイス100のノーズコーン200を覆ってプライミングショットを捕捉すると同時に、デバイスがプライミングされたことを示す使用者への可視指示の手段を提供してもよい。
【0261】
デバイス100の作動の第2の段階では、投与チャンバ150が満たされると、推進剤キャニスタ140は、推進剤を放出し、推進剤は、Y接合部120の頂部から入って、図6においてより小さい矢印頭部によって示された経路を辿る。推進剤は、推進剤の気化を促進する拡散器170の多孔質材料を物理的に流れる。拡散器170および推進剤が移動する経路(図6中の矢印頭部によって示される)は、液体推進剤を気体推進剤に変換し、推進剤の膨張および推進をもたらす。推進剤は、デバイス100内に着座された拡散器170の近位の(遠位は、ノズル190により近いことであり、近位は、ノズル190からより遠いことである)面において、最初に液体医薬組成物に接触する。推進剤が膨張し続けるにつれて、それは、液体医薬組成物を投与チャンバ150内で前方に(ノズル190に向かって)押し、投与チャンバ150の端部においてノズル190から出る。
【0262】
推進剤キャニスタ140は、デバイス100に推進エネルギーを提供する。推進剤バルブのステムは、Y接合部120の頂部受容部内に着座する。使用中、使用者は、アクチュエータグリップ210押し下げ、それが推進剤キャニスタ140の本体を引き下げて、推進剤バルブを作動させる。これが、定量の液体推進剤を放出する。推進剤が気化および膨張するにつれて、液体医薬組成物は、投与チャンバ150の遠位端部の方へ、およびノズル190を通して外へ押し出される。
【0263】
推進剤の非限定的な例として、推進剤キャニスタ140は、システムのための推進剤としてHFA134Aを使用する。他の推進剤も想定される。市販の推進剤キャニスタ140が存在する。
【0264】
特定の実施形態において、デバイス、推進剤キャニスタ、および液体医薬組成物を含むバイアルは、別々に提供され、任意でキット内に一緒にパッケージされ、その後、使用のために組み立てられる。特定の実施形態において、推進剤キャニスタ140は、デバイス100内で組み立てられて提供され、液体医薬組成物を含むバイアルは、別々に提供され、任意に、デバイス(一体化されたキャニスタを有する)およびバイアルが、キット内に一緒にパッケージされる。いくつかの実施形態において、デバイス、推進剤キャニスタ、および液体医薬組成物を含むバイアルは、完全に組み立てられた状態でユーザーに提供される。
【0265】
5.5.3.2.代替のインライン経鼻送達デバイス
特定の実施形態において、デバイスは以下の部品を含む。部品の番号付けは、図9Aおよび9Bに示したとおりである。
【0266】
【表1】
【0267】
略語
ABS=アクリロニトリルブタジエンスチレン;CMO=医薬品製造受託機関、HDPE=高密度ポリエチレン;HFA=ヒドロフルオロアルカン-134a;LCP=液晶ポリマー;LDPE=低密度ポリエチレン;PE=ポリエチレン;POM=ポリアセタールコポリマー;PP=ポリプロピレン
【0268】
バイアルは、単一の分割されていない用量または複数の分割用量中に、DHEまたはその塩の少なくとも1回の総用量がデバイスによって送達される十分な量で、液体医薬組成物を含む。特定の実施形態において、バイアルは、単一の分割されていない用量または複数の分割用量中に、DHEまたはその塩の最大で1回の総用量がデバイスによって送達されるのに十分な量で、液体医薬組成物を含む。
【0269】
様々な実施形態において、推進剤キャニスタは、デバイスの任意のプライミングに続いて、少なくとも1回の総用量のDHEまたはその塩の送達が、単一の分割されていない用量または複数の分割用量でデバイスによって送達されるのに十分な量で加圧推進剤を含む。特定の実施形態において、推進剤キャニスタは、デバイスの任意のプライミングに続いて、最大で1回の総用量のDHEまたはその塩の送達が、単一の分割されていない用量または複数の分割用量でデバイスによって送達されるのに十分な量で加圧推進剤を含む。
【0270】
いくつかの実施形態において、作動のたびに、少量の加圧液体ヒドロフルオロアルカンが、気体状ヒドロフルオロアルカンに変換される。特定の実施形態において、加圧液体ヒドロフルオロアルカンの量は、所定の数のデバイス作動を可能にするのに十分である。これらの実施形態のいくつかにおいて、その量は、2、3、4、5、6、7または8回の作動を可能にするのに十分である。いくつかの実施形態において、その量は、10、11、12、13、14、15、またはさらに20回の作動を可能にするのに十分である。特定の実施形態において、加圧液体ヒドロフルオロアルカンの大部分は、2、3、4、5、6、7、または8回の作動後に気体状ヒドロフルオロアルカンに変換される。特定の実施形態において、加圧液体ヒドロフルオロアルカンの大部分は、10、11、12、13、14、15、または20回の作動後に気体状ヒドロフルオロアルカンに変換される。
【0271】
図12Aは、インライン経鼻送達デバイス1200の代替実施形態の断面図を示す。インライン経鼻送達デバイス1200は、インライン経鼻送達デバイス100の実施形態であり得る。例えば、デバイス1200は、図3~9に関して説明したように、デバイス100と同一または類似の構成要素を使用し得る。さらに、デバイス1200およびデバイス100の構成要素は、交換可能に、またはそれらのいくつかの組み合わせで使用され得る。図12Aの実施形態において、デバイス1200は、ハウジング12110、Y接合部12120、定量ポンプ12130、推進剤キャニスタ12140、投与チャンバ12150(図13Aに示される)、チェックバルブ12160、拡散器12170(図13Aに示される)、ポンプ取付具12180、ノズル(図示せず)、ノーズコーン12200、およびアクチュエータグリップ12210を含む。ハウジング12110は、上部1205および下部1210を含む。デバイス1200は、さらに、伸張ばね1215およびチェックバルブアダプター1220を含む。
【0272】
図3に関して説明したアクチュエータグリップ210と同様に、アクチュエータグリップ12210は、使用者による作動変位を提供する。アクチュエータグリップ12210はY接合部12120を取り囲み、ハウジング12110内に存在する。図12は、使用者が指で、例えば、しかしこれらに限定するものではないが、人差し指および中指でデバイス1200に係合することを可能にするようにアクチュエータグリップ12210に設計された、2つのフィンガーグリップノッチ12215を示す。フィンガーグリップノッチ12215は、使用者がデバイス1200を作動させるためにデバイスに係合またはしっかりつかむことを可能にする。
【0273】
より具体的には、アクチュエータグリップ12210は、(図12Aに示されるように)推進剤キャニスタ12140の背後のハウジング12110の長さに沿って延在し、推進剤キャニスタ12140の端部を捕捉する案内機構1225を含む。図示の例において、端部は、推進剤キャニスタ12140の下部であり、これは、推進剤散布用のバルブを含む端部とは反対である。案内機構1225は、上方に折り畳むか、または端部に接着することにより、推進剤キャニスタ12140の端部を捕捉することができる。推進剤キャニスタ12140は、案内機構1225が推進剤キャニスタ12140を確実に支持するように、案内機構1225内に入れ子にされている。推進剤キャニスタ12140の一部を包むことにより、案内機構1225は、デバイス1の実施形態における推進剤バルブ15などの狭い表面に結合されたときよりも推進剤キャニスタ12140のより大きく、より堅固な表面域にしっかりと結合される。この構成では、使用者がフィンガーグリップノッチ12215を介して下向きの動きを加えてデバイス1200を作動させると、案内機構1225は、下向きの力を推進剤キャニスタ12140に伝達し、それにより、推進剤キャニスタ12140を作動させる。案内機構1225は、安定した方法で推進剤キャニスタ12140を作動させ、推進剤キャニスタ12140とのその物理的な結合を失う可能性が低い。
【0274】
一実施形態において、推進剤キャニスタ12140は、ハウジング12110内に完全に囲まれる。1つの特定の実施形態において、推進剤キャニスタ12140は、少なくとも2つの別個の部品から製造中に形成され得る、ハウジング1205の上部によって囲まれている。Y接合部12120は、下部ハウジング部1210と共に所定の位置に固定され、案内機構1225は上方に延在してY接合部12120に対する推進剤キャニスタ12140の位置を確立する。この構造は、推進剤キャニスタ12140が流体的に結合されている作動中に、Y接合部12120に対して移動することを確実にする。
【0275】
図7に関して説明した円錐ばね220と同様の方法で、伸張ばね1215は、定量ポンプ12130と推進剤キャニスタ12140との間の所望の作動順序を確実にする作動力を生成する。具体的には、デバイス作動中、定量ポンプ12130は、最初に液体医薬組成物を投与チャンバ12150に送達し、次いで、液体医薬組成物を放出するために推進剤キャニスタ12140を作動させる。伸張ばね1215の力は、適切な作動順序を提供することと、使用者による作動の容易さを可能にすることの両方のために確立される。
【0276】
伸張ばね1215は、ハウジング上部1205およびアクチュエータグリップ12210に結合される。図12Aに示すように、伸張ばね1215の第1の端部は、ハウジング上部1205のボス1230に結合し、伸張ばね1215の第2の端部は、アクチュエータグリップ12210のボス1235に結合する。図12Aの実施形態において、ハウジング上部1205およびアクチュエータグリップ12210は、デバイス1200の作動中に互いに平行移動する。伸張ばね1215は、ハウジング上部1205およびアクチュエータグリップ12210が互いに離れるように平行移動するとき、伸張ばね1215が抵抗力を生み出すように、各構成要素に結合されている。前述のように、使用者は、例えば、アクチュエータグリップ12210から下方に、そして医薬組成物を含有するバイアルから上方に作用する直線的な力を加えることによって、デバイス1200を作動させる。この加えられた力は、バイアルの定量ポンプ12130および推進剤キャニスタ12140の両方を作動させる。伸張ばね1215への加えられた力が増加すると、まず加えられた力が定量ポンプ12130の閾値力を超えるように、定量ポンプ12130を作動させる閾値(より低い)力が達成された後に、推進剤キャニスタ12140を作動させる閾値(より高い)力が達成される。この構成において、デバイス1200の作動は、まず定量ポンプ12130を作動させ、次いで、推進剤がデバイス1200から液体医薬組成物を放出し始める前に、用量が投与チャンバ12150内に装填されるように、推進剤キャニスタ12140を作動させる。
【0277】
いくつかの実施形態において、伸張ばね1215は、円錐ばね220の代わりに、またはそれに加えて使用することができる。伸張ばねの構成は、円錐ばねが推進剤キャニスタ140とY接合部120との間に抵抗力を生じさせて、構成要素が組立中に押し離されるのに対し、伸張ばねが、構成要素を互いに引き寄せるようにすることができるため、円錐ばねの構成に対してデバイスの組立工程を合理化し得る。さらに、伸張ばねの構成は、円錐ばねの構成と比較して、デバイスの保管寿命および全寿命を延ばすことができる。これは、一部には、デバイス100の推進剤キャニスタ140のステムとY接合部120の間の圧入が、時間の経過とともに自然に緩和され、推進剤キャニスタ140とY接合部120との間の円錐ばねの抵抗力によって伝わり、圧入の時間の経過に伴う耐久性の低下を助長する可能性があるためである。
【0278】
チェックバルブアダプター1220は、チェックバルブ12160およびY接合部12120を結合するアダプターである。チェックバルブ12160は、チェックバルブ160の実施形態であり得る。図12A~12Bの実施形態において、チェックバルブアダプター1220は、Y接合部12120のチャネル内に挿入されY接合部12120のチャネル内に配置されたチェックバルブ12160と噛み合う第1の端部と、定量ポンプ130と噛み合う第2の端部とを有する円筒形構成要素である。図12Bの拡大図に示されるように、チェックバルブ12160の端部はY接合部12120のチャネルの端部で捕捉され、チェックバルブアダプター1220のそれぞれのインターフェースと嵌合するフランジを備える。チェックバルブ12160および/またはチェックバルブアダプター1220は、接着剤、超音波溶接、締まりばめ(例えば、圧入、摩擦圧入、または類似のもの)、またはそれらの組み合わせによって各端部に固定されてもよい。チェックバルブアダプター1220は、チェックバルブ12160とY接合部12120との間のシールを改善することによって、チェックバルブ12160の機能を増大することができる。図3に関して説明したように、チェックバルブは、(a)ポンプステムが押圧され推進剤キャニスタが作動された場合に定量ポンプを通じて起こり得る用量漏れを軽減または排除し、(b)デバイスによる用量送達の一貫性の向上を可能にし、および/または、(c)液体医薬組成物が、Y接合部の内部用量装填チャネルが押し戻されて定量ポンプに入ることがないようにする。
【0279】
図13Aは、追加の実施形態による、デバイス1200内に配置された拡散器12170の断面図を示す。拡散器12170は、拡散器170の実施形態であり得る。デバイス1200のこの実施態様において、拡散器12170は環状である。図13Aに示すように、拡散器12170は、Y接合部12120のボア1310内のシェルフ(shelf)1305に着座し、投与チャンバ12150は、Y接合部12120のボア1310内に挿入される。拡散器12170は、Y接合部12120のボアのシェルフと投与チャンバ12150の底面との間に着座されて、これらの表面の両方に対して封止する。拡散器12170は、さらに、その内径に沿ってY接合部12120まで封止されてもよい。この構成では、拡散器12170は、その内径、上面、および下部外縁(シェルフ1305に接触して)に沿って干渉シールを作り出す。この構成は、例えば、推進剤が温度の変化により、またはデバイス組み立ての結果として、拡散器12170を通って流れるときに、拡散器12170の膨張を可能にすることができる。その内径に沿って拡散器12170を封止することにより、(推進剤が移動し、拡散する経路)内で拡散経路を圧縮することができる圧縮嵌めにおいて拡散器12170をその上面および底面に沿ってシールすることと比較して、拡散器12170の封止の一貫性および/または品質および/または性能が改善され得る。この構成において、拡散器12170の製造におけるばらつきが拡散器12170の性能に影響を及ぼす可能性は低いかもしれない。例えば、拡散器12170の平面度がその面に沿って適切な圧縮嵌合を確実にするように維持されるように、拡散器12170の曲げを防止するために、拡散器12170の外径の公差をそれほど正確に制御する必要はないかもしれない。場合によっては、干渉シールは、液密または気密であってもなくてもよい。
【0280】
図13Bは、追加の実施形態による、投与チャンバ12150およびY接合部12120の分解図を示す。図13Bは、Y接合部12120のボア1310およびシェルフ1305を示す。投与チャンバ12150は、投与チャンバ12150がボア1310内に容易に挿入されるように、その底面の外縁の周りに面取り部1315を含んでもよい。代替の実施形態において、投与チャンバ12150およびY接合部12120の構成は、投与チャンバ12150が、拡散器およびY接合部12120の端部が挿入されるボアを含むように逆にすることができる。
【0281】
図14は、追加の実施形態によるノーズコーン12200を示す。ノーズコーン12200は、ノーズコーン200の実施形態であり得る。前述のように、ノーズコーン12200の外的な幾何形状は、鼻への挿入中にデバイス1200の適切な位置合わせを提供するのに役立つ。図14に示すように、ノーズコーン12200は、ノズル(図示せず)と一列に並ぶ開口部1405を含む。投与チャンバ12150(この図には示されていない)は、投与チャンバ12150とノーズコーン12200内のノズルとの整列を維持する2つのボス1410a、1410bの間に配置されてもよい。図14の実施形態において、ノーズコーン12200はクラムシェルの設計に組み込まれている。ノーズコーン12200およびクラムシェルは、製造中に一緒に成形することができ、デバイス1200の全体の部品数を減少させ、デバイス1200の容易な組立を可能にする。
【0282】
5.5.4.乾燥粉末組成物を投与するためのデバイス
粉末組成物は、当該分野における任意の従来のデバイスを使用して鼻腔内投与することができる。例えば、組成物は、ディスペンサ、例えば、単回使用ディスペンサまたは複数回使用ディスペンサを使用して投与することができる。ある特定の実施形態において、粉末組成物は、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第2011/0045088号または国際公開第2012/105236号に記載されているようなデバイスなどのデバイスを使用して鼻腔内投与される。特定の実施形態において、粉末組成物を投与するために使用されるデバイスは、Fit-Lizer(商標)(SNBL,LTD)鼻腔内ディスペンサデバイスである。
【0283】
いくつかの実施形態において、粉末組成物の鼻腔内投与に使用されるデバイスは、ノズルの少なくとも一部を対象の鼻孔に配置することを可能にするように適合された上流端および下流端を有するノズルと、単回用量の粉末治療製剤を含むリザーバであって、上流端および下流端を有し、ノズル内に配置されたリザーバと、上流端および下流端を有するバルブであって、デバイス内の第1の位置および第2の位置を占めるように適合され、デバイスが作動するときに粉末治療製剤の拡散を引き起こすように適合されたバルブと、バルブの上流端に作動可能に連結された空気源と、を備え、デバイスは、単回使用デバイスである。
【0284】
ある特定の実施形態において、乾燥粉末組成物は、鼻腔内ディスペンサデバイスによって送達される。いくつかの実施形態において、デバイスは、使用者によって係合されて空気を空気源からバルブアセンブリを通してリサーバに押し込み、ノズルから押し出すように適合されている、空気源を備える。典型的実施形態において、デバイスは、圧縮力をポンプに加えることによって動作する。いくつかの実施形態において、ポンプは、手動エアポンプを含む。
【0285】
粉末組成物は、当技術分野における任意の従来の技術、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,119,639号明細書に記載のデバイスを利用して経肺投与によって送達することができる。いくつかの実施形態において、投与方法は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器、加圧式定量吸入器(pMDI)などを使用した肺吸入によるものである。いくつかの実施形態において、呼吸作動型定量吸入器(例えば、Map Pharmaceuticals、マウンテンビュー、カリフォルニアのTEMPO(商標)Inhaler)などのpMDIが、DHEを投与するために使用される。
【0286】
いくつかの実施形態において、デバイスは、呼吸作動型加圧式定量吸入器を含む。いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、プルーム制御機構を含む。いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、渦流チャンバを含む。
【0287】
いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、ヒドロフルオロアルカン推進剤中にDHEまたはその塩の懸濁液を含有する。いくつかの実施形態において、ヒドロフルオロアルカン推進剤はHFA134aである。
【0288】
いくつかの実施形態において、呼吸作動型加圧式定量吸入器は、ヒドロフルオロアルカン推進剤ブレンド中にDHEまたはその塩の懸濁液を含有する。
【0289】
5.6.キット
別の態様において、呼吸器系を介して医薬組成物を投与することによって片頭痛の持続的な減少した頻度を達成するための、対象における片頭痛を治療するためのキットが提供される。対象は、前兆のある、または前兆のない、片頭痛を有し得る。
【0290】
キットは、バイアルおよびデバイスを含む。いくつかの実施形態において、バイアルは密封され、ジヒドロエルゴタミン(DHE)またはその塩を含む少なくとも1有効用量の液体医薬組成物を密封可能に含有する。バイアルは、デバイスに取り付けることができるように構成され得る。デバイスは、バイアルを受け入れるように相互に構成され得る。使用者がバイアルをデバイスに取り付けると、デバイスは、手動作動、推進剤駆動、定量鼻腔内投与デバイスになり、液体医薬組成物の用量の鼻腔内投与後に、(a)少なくとも750pg/mlの平均ピーク血漿DHE濃度(Cmax)、(b)45分未満のDHEのCmaxまでの平均時間(Tmax)、および(c)少なくとも2000pg*hr/mlのDHEの平均血漿AUC0-infの提供が可能である。
【0291】
典型的実施形態において、バイアルをデバイスに取り付けると、デバイスは、上述の4.5の項に記載するように、手動作動、推進剤駆動、定量鼻腔内投与デバイスとなる。いくつかの実施形態において、バイアルをデバイスに取り付けると、デバイスは、上述の4.5の項に特に記載するように、手動作動、推進剤駆動、定量鼻腔内投与デバイスとなる。いくつかの実施形態において、推進剤含有キャニスタは、デバイス内に密封され、ユーザーがアクセスすることができない加圧キャニスタである。
【0292】
様々な実施形態において、バイアルは、密封されたガラス製バイアルである。いくつかの実施形態において、バイアルは、3.5mLの黄褐色密封ガラス製バイアルである。
【0293】
典型的実施形態において、バイアル内に密封可能に含有される液体医薬組成物は、上述の5.3.2の項に記載の液体医薬組成物である。いくつかの実施形態において、バイアルは、以下の組成を有する液体医薬組成物を含む:黄褐色ガラス製バイアル中の無色から淡黄色の透明な溶液であり、
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、USP・・・・・・・・・・・・・4.0mg
カフェイン、無水、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.0mg
デキストロース、無水、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・50.0mg
二酸化炭素、USP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・qs
精製水、USP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・qs1.0mL
を含む。
【0294】
バイアルは、単一の分割されていない用量または複数の分割用量中に、DHEまたはその塩の少なくとも1回の総用量がデバイスによって送達される十分な量で、液体医薬組成物を含む。特定の実施形態において、バイアルは、単一の分割されていない用量または複数の分割用量中に、DHEまたはその塩の最大で1回の総用量がデバイスによって送達されるのに十分な量で、液体医薬組成物を含む。
【0295】
典型的実施形態において、キット内のバイアルと一緒にパッケージされるデバイス内の推進剤キャニスタは、デバイスの任意のプライミングに続いて、少なくとも1回の総用量のDHEまたはその塩の送達が、単一の分割されていない用量または複数の分割用量で、デバイスによって送達されるのに十分な量の加圧推進剤を含有する。特定の実施形態において、推進剤キャニスタは、デバイスの任意のプライミングに続いて、最大で1回の総用量のDHEまたはその塩の送達が、単一の分割されていない用量または複数の分割用量でデバイスによって送達されるのに十分な量で加圧推進剤を含む。
【0296】
6.実施例
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、例示の目的でのみ提供され、限定することは意図されていない。
【0297】
6.1.実施例1:用量送達の再現性
表2は、上述の5.5.3の項に記載するインラインデバイスの一実施形態に関する実験データを提供する。表2で使用される場合、「用量」は、1回のデバイス作動で送達される体積を指す。
【0298】
【表2】
【0299】
6.2.実施例2:第I相臨床試験
健康な成人対象において、(i)Precision Olfactory Delivery(POD(登録商標))Device(Impel NeuroPharma、シアトル)を用いた薬剤-デバイスの組合せによる、INP104の単回分割用量の鼻腔内投与後、(ii)Migranal(登録商標)Nasal Spray(Valeant Pharmaceuticals)の鼻腔内投与後、およびD.H.E.45(登録商標)(Valeant Pharmaceuticals)の静脈注射後のジヒドロエルゴタミン(DHE)メシル酸塩のバイオアベイラビリティを比較するために、第I相臨床試験を実施した。
【0300】
6.2.1治験デザイン
本試験は、3期間、3方法(three-way)、無作為化、非盲検、単回投与、クロスオーバー、比較バイオアベイラビリティ試験であった。処置割り付けは、以下に示す6群の3剤、3期均衡クロスオーバー試験に無作為化され、処置の間に7日間のウォッシュアウトを伴った。
【0301】
【表3】
【0302】
38例の対象(ほぼ同数の男女)が登録され、本研究において無作為化された。合計36例(94.7%)の対象が少なくとも1用量のINP104(治験薬)を投与され、安全性集団に含まれた。全体では、対象29例が3回の予定用量のDHE(Migranal、INP104、およびDHE45)の全てを受けた。このうち、対象27例は、3回の用量の各々についてすべてのPKパラメータを計算するのに十分なデータを有し、主要PK集団に含まれた。
【0303】
INP104は、I123 POD(商標)Device(Inpel NeuroPharma、シアトル)を使用して自己投与した。DHEメシル酸塩の用量を分割し、各鼻孔に1回のスプレーで、DHEメシル酸塩の合計目標用量1.45mgを送達した。
【0304】
I123 POD Deviceは、図12~14に示すように、薬剤製剤を鼻腔に送達することを目的とした手持ち式の、手動作動、推進剤駆動、定量投与デバイスである。I123 POD Deviceを介した鼻腔への薬物送達は、ヒドロフルオロアルカン-134a(HFA)推進剤によって駆動される。I123 POD Deviceは鼻腔内送達デバイスとして機能する。I123 POD Device中のHFA推進剤は、薬物を肺に送達することを目的としておらず、送達時までDHE製剤に接触しない。
【0305】
INP104薬物成分であるDHE DPは、DHEメシル酸塩4mg/mLで満たされた3.5mLの黄褐色ガラス製バイアルである。製剤は、Migranal(登録商標)Nasal Sprayデバイス中のものと同じであり、黄褐色ガラス製バイアル中の無色から淡黄色の透明な溶液であり、
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、USP・・・・・・・・・・・・・4.0mg
カフェイン、無水、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.0mg
デキストロース、無水、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・50.0mg
二酸化炭素、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・qs
精製水、USP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・qs1.0mL
を含む。
【0306】
DHE DPバイアルは、I123 POD Deviceに取り付ける。I123 POD Deviceは、175μL/作動ポンプ~205μL/作動ポンプ(境界を含む)の公称出力を有することができる。いくつかの実施形態において、I123 POD Deviceは、約175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、または205μL/作動ポンプである公称出力を有する。
【0307】
使用者がデバイスを手動で1回作動させると、定量ポンプが作動して投与チャンバにDHE製剤を充填し、その後ほぼ瞬時に推進剤キャニスタが作動してスプレーとしてノズルから製剤を放出し、使用者の鼻腔に送達する。デバイスは、単回の分割用量の薬物送達(鼻孔あたり1スプレー)が成功した後に廃棄するように設計される。I123 POD Deviceを作動させると、定量吸入器からのHFA曝露と同様に、約63μLのHFA-134a推進剤が放出される。
【0308】
D.H.E.45(登録商標)(Valeant Pharmaceuticals(現Bausch)、NDA005929)は、1分間かけて、静脈内に、1mLの容量で投与した。
【0309】
Migranal(登録商標)Nasal Spray(2mg)(Valeant Pharmaceuticals(現Bausch)、NDA20148)は、両鼻孔に同じ用量で自己投与した。製品ラベルに従い、最初に各鼻孔に1回のスプレー(0.5mg)を投与し、続いて15分後に各鼻孔に追加のスプレー(0.5mg)を投与した。
【0310】
6.2.2薬物動態評価
サンプリングおよび処理
PK分析用の血液サンプルは、臨床試験実施施設の標準的な操作手順(SOP)に従って、投薬前15分以内、投薬後5、10、20、30、40および50分、並びに1、1.25、1.5、1.75、2、3、4、8、12、24、36および48時間において得た。Migranal(登録商標)Nosal Spray投与の場合、PKサンプリングのタイムレコーダーは、Migranal(登録商標)Nosal Sprayの第1の用量の投与後に開始された。
【0311】
6.2.2.薬物動態解析
個々のDHEおよび8’-OH-DHE血漿中濃度データを各個人に対し列挙し、記述統計(サンプルサイズ[N]、算術平均、標準偏差[SD]、中央値、最小値、最大値、および幾何平均)と共に名目上のサンプリング時点および投与方法によりまとめた。各投与方法に対する個別および平均のDHEおよび8’-OH-DHE血漿濃度-時間プロファイルもまたグラフ化した。
【0312】
薬物動態パラメータは、非コンパートメントアプローチを用いて、個々の血漿DHEおよび8’-OH-DHE濃度から算出した。適切にバリデーションされたPKソフトウェア(例えば、Phoenix WinNonlin v6.3)を使用した。決定されたパラメータおよびその定義は、以下の表4に示される。
【0313】
【表4】
【0314】
薬物動態解析のための統計的方法
PKパラメータは記述統計(算術平均、SD、変動係数[CV]、サンプルサイズ[N]の最小値、最大値、中央値および幾何平均)を用いて、投与方法によりまとめた。AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxについて幾何平均を計算した。
【0315】
濃度対時間プロファイルで終末対数線形相を示さなかったか、またはこの相の間にパラメータ推定のための十分なデータを含まなかった例では、必要に応じて、kel、t1/2、AUC0-inf、CL/F、Vz/Fの値は報告されなかった。
【0316】
統計解析
比較バイオアベイラビリティ評価は、(i)CmaxおよびAUC(AUC0-t、AUC0-inf)について、Migranal Nasal Spray後のDHEに対するINP104後のDHEの幾何平均比の下位の90%信頼区間が80%以上であること、および(ii)CmaxおよびAUC(AUC0-t、AUC0-inf)について、D.H.E.45 Injection(IV)に対するINP104後のDHEの上位の90%信頼区間が125%以下であることを実証するために、すなわち、曝露がMigranal Nasal SprayとD.H.E.45 Injection(IV)との間でそれぞれ観察される80%以上125%以下の範囲であることを実証するために行われた。
【0317】
各コンパレーター(Migranal Nasal SprayおよびD.H.E.45 Injection(IV))について、以下の分析方法を独立して実施した。ln変換DHEおよび8’OH-DHE AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxについて、群、群内にネストされた対象、期間および処置に対する影響を伴う分散分析(ANOVA)を行った。各ANOVAには、最小二乗平均(LSM)の計算、投与方法のLSM間の差、およびこの差に関連する標準誤差を含めた。
【0318】
3つの治療すべてを完了し、各投与方法に対する主要なPKパラメータ(AUC0-t、AUC0-infおよびCmax)を生成するのに十分なPKサンプル収集を有した対象のみがANOVA分析に含まれた。
【0319】
幾何平均の比率は、ln変換したAUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの分析から、処置のLSM間の差のべき乗を用いて計算した。これらの比率は、参照(コンパレーター)治療に対する比率、すなわち、INP104[試験]/コンパレーター[参照]として表した。生物学的同等性に関する2つの片側検定と一致して、AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの幾何平均の比率について90%信頼区間が得られた。
【0320】
6.2.3.結果:DHEおよび8’OH-DHE薬物動態
血漿DHE濃度の時間経過を図10Aおよび図10Bにプロットし、初期要約統計を以下の表5Aおよび5Bに示す。
【0321】
安全性集団
血漿ジヒドロエルゴタミンPKパラメータは、安全性集団内のすべての対象(すなわち、何らかのDHE製品の少なくとも1用量を受けたすべての対象)について導出された。安全性集団のジヒドロエルゴタミン血漿PKパラメータの要約を表5Aに示す。
【0322】
INP104およびMigranalの1301pg/mLおよび299.6pg/mLのそれぞれと比較して、D.H.E.45の投与後、平均Cmaxは14190pg/mLであった。ジヒドロエルゴタミン血漿濃度のピーク到達は、D.H.E.45投与後で、Tmaxの中央値が0.083時間(投与後5分、最初のサンプリング時点)で最速あり、続いてINP104が0.5時間、Migranalが0.783時間であった。中央t1/2は、D.H.E.45(13.717時間)、INP104(11.109時間)、およびMigranal(10.732時間)で同様であった。平均AUC0-lastは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalでそれぞれ7091h*pg/mL、5930h*pg/mL、および1834h*pg/mLであった。平均AUC0-2hは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalでそれぞれ3022h*pg/mL、1603h*pg/mL、および387.5h*pg/mLであった。平均kelは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalで同様であった(それぞれ、0.05184 1/h、0.06173 1/h、および0.07411 1/h)。平均CLは、予想通り、D.H.E.45が117.9L/hで最も低かったが、CL/Fは、INP104が267.0L/hで約2倍高く、Migranalが1293L/hで約11倍高かった。同様に、平均Vz(またはVz/F)は、D.H.E.45が2432Lで最も低く、続いて、INP104が4314L、およびMigranalが16860Lであった。
【0323】
これらの違いは、実際の全身クリアランスおよび分布における真の違いではなく、CL/FおよびVz/F値の相対的な増加をもたらす低下したバイオアベイラビリティを伴う、経鼻投与とIV投与との間のバイオアベイラビリティの違いに大きく起因する可能性が高い。D.H.E.45投与後の平均Cmaxは、経鼻IPsよりも大きく、より早く発生し、INP104投与後の平均Cmaxは、Migranal投与後に観察された平均Cmaxよりも4倍高かった。
【0324】
【表5】
【0325】
【表6】
【0326】
略語:BA=バイオアベイラビリティ;CV=変動係数;SD=標準偏差。注:Phoenix WinNonLin v6.3を使用して決定された薬物動態パラメータ。
1mgのD.H.E.45(第2期)後の対象100~025の薬物動態パラメータは、ピーク濃度段階中の不十分なサンプリングのために導出されなかった(5分および10分のサンプルが、20分のサンプルと同じ時計時刻に収集された)。
1mgのD.H.E.45について、BAは1.00であると仮定した。したがって、CL/F=CLおよびVz/F=Vzである。
【0327】
PK集団
血漿ジヒドロエルゴタミンPKパラメータは、PK集団内のすべての対象(すなわち、3つのDHE製品(Migranal、D.H.E.45およびINP104)を全て投与され、データが非コンパートメント分析を用いたパラメータ推定に十分である十分な数の血液サンプルを提供したすべての対象)についても導出された。PK集団の血漿ジヒドロエルゴタミンPKパラメータを表5Bにまとめた。
【0328】
D.H.E.45の投与後、平均Cmaxは、INP104およびMigranalの1281pg/mLおよび328.5pg/mLのそれぞれと比較して、14620pg/mLであった。ジヒドロエルゴタミン血漿濃度のピーク到達は、D.H.E.45投与後に、0.083時間の中央Tmaxで最速であり、続いてのINP104で0.5時間、Migranalで0.667時間であった。中央t1/2は、D.H.E.45(13.827時間)、INP104(11.842時間)、およびMigranal(10.732時間)で同様であった。被験製品および参照製品の各々について、血漿PKサンプリングは、ジヒドロエルゴタミンの終末相消失半減期を、3回を超えてカバーした。平均AUC0-lastは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalでそれぞれ6967h*pg/mL、5807h*pg/mL、および1999h*pg/mLであった。平均AUC0-2hは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalでそれぞれ3019h*pg/mL、1595h*pg/mL、および428.7h*pg/mLであった。平均AUC0-infは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalでそれぞれ7381h*pg/mL、6153h*pg/mL、および2208h*pg/mLであった。平均して、各製品の平均AUC0-lastをAUC0-infと比較したとき、AUCの90%以上がサンプリング期間中に捕えられた。INP104について、外挿AUCパーセントは、3例の対象で10%超であり、これらの3例の対象のうち1例は、外挿AUCパーセントは20%超であった。D.H.E.45およびMigranalでは、10%超の外挿AUCパーセントが、ゼロおよび15例の対象でそれぞれ発生した。Migranalについては、これらの15例の対象のうち4例が20%超の外挿AUCパーセントであった。平均kelは、D.H.E.45、INP104、およびMigranalで同様であった(それぞれ、0.05086L/h、0.06088L/h、および0.07187L/h)。平均CLは、D.H.E.45について119.3L/hで最も低かった。INP104は279.5L/hで約2倍高く、Migranalは1208L/hで約10倍高かった。同様に、平均Vzは、D.H.E.45について2505Lで最も低く、続いて、INP104において4546L、およびMigranalにおいて16370Lであった。
【0329】
PK集団において、PKパラメータは、各処置における安全性集団と概ね類似していた。しかし、PK集団から一部の対象が除外されたため、PK集団におけるINP104およびD.H.E.45のAUC0-lastおよびAUC0-infにおいてわずかな減少があったが、PK集団におけるこれらのパラメータおよびMigranalのCmaxにおいてわずかな増加があった。
【0330】
【表7】
【0331】
【表8】
【0332】
略語:BA=バイオアベイラビリティ;CV=変動係数;PK=薬物動態;SD=標準偏差。注:Phoenix WinNonLin v6.3を使用して決定された薬物動態パラメータ。
1mgのD.H.E.45(第2期)後の対象100~025の薬物動態パラメータは、ピーク濃度段階中の不十分なサンプリングのために導出されなかった(5分および10分のサンプルが、20分のサンプルと同じ時計時刻に収集された)。
1mgのD.H.E.45について、BAは1.00であると仮定した。したがって、CL/F=CLおよびVz/F=Vzである。
【0333】
Migranal(登録商標)Nosal Sprayと比較すると、INP104は、Migranal(登録商標)の1,784pg*hr/mlと比較して、5,407pg*hr/mlのAUC0-infで、ほぼ3倍の平均全身薬物曝露をもたらす。INP104はまた、Migranal(登録商標)の248.3pg/mlと比較して、1,093pg/mlのCmaxで、4倍近い平均最大血漿濃度をもたらす。最大DHE血漿濃度は、INP104でより早く達成され、Migranal(登録商標)の55分に対して、平均Tmaxは34分であった。より高い全身薬物曝露およびより高い最大血漿濃度は、低用量のDHEメシル酸塩の同一の製剤(INP104 1.45mg対Migranal(登録商標)2.0mg)で達成され、Migranal(登録商標)で必要とされるような、分割サブ用量の投与の間に15分間の待機を必要としなかった。
【0334】
加えて、DHEの全身送達は、Migranal(登録商標)よりもINP104と一致しており、AUC0-infパラメータおよびCmaxパラメータの両方について、対象間でより低い変動が観察された(変動係数については、上記の表5Aおよび表5Bを参照されたい)。
【0335】
1mgのDHEメシル酸塩の急性静脈投与は、INP104によって鼻腔内投与された1.45mgのDHEメシル酸塩よりも10倍以上高いCmaxをもたらしたが、静脈投与で達成される高いCmaxは、有害事象(「AE」)、具体的には吐き気と相関することが知られており、IVのDHEメシル酸塩(D.H.E.45)は、最も一般的に、制吐剤と共に投与される。投与後20~30分以内に、INP104鼻腔内投与によって達成されたDHE血漿濃度は、静脈投与によって達成された濃度と本質的に区別できなかった。したがって、10倍を超えるCmaxにもかかわらず、1mgのDHEメシル酸塩の急性静脈投与は、INP104鼻腔内送達と比較して、AUC0-infとして測定される、2倍未満の全身薬物送達をもたらした。
【0336】
DHEの8’OH-DHE代謝産物は活性があり、片頭痛に対するDHEの長期持続効果に寄与することが知られている。血漿8’-OH-DHE濃度の時間経過を図11Aおよび図11Bにプロットする。8’OH-DHEの血漿濃度の初期要約統計は、以下の表6に提供される。
【0337】
【表9】
【0338】
【表10】
【0339】
略語:BA=バイオアベイラビリティ;CV=変動係数;SD=標準偏差。注:Phoenix WinNonLin v6.3を使用して決定された薬物動態パラメータ。
1mgのD.H.E.45(第2期)後の対象100~025の薬物動態パラメータは、ピーク濃度フェーズ中の不十分なサンプリングのために導出されなかった(5分および10分のサンプルが、20分のサンプルと同じ時計時刻に収集された)。
1mgのD.H.E.45について、BAは1.00であると仮定した。したがって、CL/F=CLおよびVz/F=Vzである。
【0340】
これらのデータは、INP104による1.45mgのDHEの鼻腔内投与が、1.0mgのDHEを急性静脈投与した際のDHEの活性代謝産物に相当する全身曝露をもたらすことを示す。加えて、代謝産物は、INP104の鼻腔内投与後に対象24例に検出されたのに対して、Migranal(登録商標)鼻腔内送達後にわずか8人の対象で検出された。
【0341】
6.3.実施例3:第III相臨床試験
第III相臨床試験を実施し、頻発する片頭痛を有する患者における送達デバイス(INP104)による24週間または52週間の鼻腔内ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩(DHE)の長期間欠投与の安全性および治療効果を試験した(NCT03557333、「STOP-301」)。
【0342】
6.3.1.治験デザイン
試験は、介入、非盲検、単群割付、安全性、忍容性、および探索的有効性試験であった。
【0343】
この試験は、図15に概説されるように、4週間のスクリーニング期間、全ての対象についての24週間の処置期間、24週目に到達した対象のサブセットについての28週間の延長(合計52週間まで)、および2週間の処置後追跡期間を含んだ。主な目的は、呼吸器系を介するINP104の間欠使用の安全性および忍容性を入手することであった。
【0344】
約300~340例の患者を登録することが計画され、平均2回以上の片頭痛および/または頭痛を有する少なくとも150例の患者を、28日ごとにINP104で24週間にわたって治療することを目標とした。52週間のエンドポイントまで継続する好適な患者を24週間で再同意させ、52週間の治療を完了した少なくとも60例の患者を得るために、約80例の患者が52週間の治療期間まで継続した。治験イベントの表形式表示は、以下の表7に示される。
【0345】
【表11】
【0346】
【表12】
【0347】
略称:ECG=心電図;FSH=卵胞刺激ホルモン;FU=追跡(Follow Up);MIDAS=片頭痛障害評価(Migraine Disability Assesment);UPSIT=ペンシルベニア大学嗅覚識別試験(University of Pennsylvania Smell Identification Test)
【0348】
この試験は、頻発する片頭痛の患者(現在、月に最低2回の片頭痛を患っている)であるが、国際頭痛分類第3版β(ICHD3b)基準により慢性頭痛と診断されなかった患者を対象とした外来臨床試験であった。スクリーニング期間中、対象は、対象の通常の急性治療で治療された少なくとも2回の片頭痛発作について、片頭痛日記を記入することを要求された。来院2で適格であった場合、彼らは登録され、INP104(1週間に最大3用量)の支給を受け、認識可能な片頭痛を感じたときにIN104を使用するように指示された。彼らは、通常の片頭痛に対して、24時間以内に2用量以下、7日間に3用量以下、4週間に12用量以下で使用するように指示された。
【0349】
28日のスクリーニング期間中、対象は、図16に示されるように、片頭痛緩和のための最良の通常治療(Best Usual Care、BSC)で治療された。典型的なBSCとしては、これらに限定されないが、トリプタン、アセトアミノフェン、NSAID、オピオイド、併用鎮痛薬、およびバルビツール酸による治療が挙げられる。
【0350】
治験評価には、臨床的尺度、検査所見、および安全性報告の評価が含まれた。治療の安全性を評価するための具体的な評価には、鼻内視鏡検査、ペンシルベニア大学嗅覚識別試験、並びに有害事象の頻度および種類が含まれた。臨床的評価には、病歴の収集、併用薬の使用、身長および体重、身体検査、12誘導心電図、並びにバイタルサインが含まれた。臨床検査の評価には、血液学、血液生化学検査、尿検査、血清学、および妊娠の可能性がある女性の妊娠検査が含まれた。
【0351】
6.3.2.主要選択基準
対象は、スクリーニング時に18歳から65歳の成人男性および女性でなければならない。対象は、(国際頭痛分類第3版β基準による)前兆のある、または前兆のない片頭痛の診断が記録され、過去6ヶ月間に少なくとも2回/月の発作を有していなければならない。対象は、28日間のスクリーニング期間中に(被験者の通常治療で治療された)少なくとも2回の片頭痛発作を有していなければならない。基準を満たすことができなかった対象を再スクリーニングすることはできなかった。参加者は、全般的な健康状態が良好で、著しい病歴(片頭痛を除く)がなく、スクリーニングまたはベースライン通院時の身体検査で臨床的に著しい異常がないことが求められた。
【0352】
6.3.3.主要除外基準
対象は、国際頭痛分類第3版β基準に従って、三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛、片側頭痛症候群、並びに結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作を含む)、片頭痛前兆に頭痛を伴わないもの、片麻痺性片頭痛、または脳幹性前兆を伴う片頭痛(以前は脳底片頭痛と称された)、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または他の慢性頭痛症候群を有してはいけなかった。
【0353】
対象は、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎表面抗原、またはC型肝炎抗体の陽性試験を受けてはいけなかった。
【0354】
対象は、プリンツメタル異型狭心症を含む冠動脈血管攣縮と一致する虚血性心疾患または臨床症状または所見を有してはいけなかった。対象は、冠動脈疾患の重大な危険因子もしくは糖尿病の病歴もしくは喫煙、既知の末梢動脈疾患、レイノー現象、敗血症もしくは血管手術(試験開始前の3ヶ月以内)、または重度の肝機能もしくは腎機能障害を有してはいけなかった。高血圧の既往がある対象は、高血圧が安定しており、現在の治療法で6ヶ月を超えて良好に管理されている場合、冠動脈疾患の他の危険因子が存在しない限り、登録することができる。
【0355】
対象は、顕著な鼻閉、どちらかの鼻孔の物理的閉塞、著しい鼻中隔湾曲、鼻中隔穿孔、またはスコア1以上の内視鏡検査上の任意の既存の鼻粘膜異常(粘膜浮腫を許容するスコア1を除く)を有してはいけなかった。
【0356】
対象は、以前に、麦角アルカロイドまたは薬剤製品中の成分のいずれかに対する過敏症を示してはいけなかった。
【0357】
対象は、片頭痛の治療のための静脈DHEに応答しなかったことがあってはいけなかった。
【0358】
対象は、スクリーニング前2か月間またはスクリーニング期間中に、1ヶ月あたり12日を超えてトリプタンまたは麦角系の薬を使用していてはいけなかった。
【0359】
6.3.4.治験薬投与
INP104は、I123 POD(商標)Device(Inpel NeuroPharma、シアトル)を使用して自己投与した。DHEメシル酸塩の用量を分割し、各鼻孔に1回のスプレーで、DHEメシル酸塩の合計目標用量1.45mgを送達した。対象は、24時間以内にINP104を2回以下、7日間に3回以下、4週間に12回以下で使用するように指示された。
【0360】
INP104薬物成分であるDHE DPは、DHEメシル酸塩4mg/mLで満たされた3.5mLの黄褐色ガラス製バイアルである。製剤は、Migranal(登録商標)Nasal Sprayデバイス中のものと同じであり、黄褐色ガラス製バイアル中の無色から淡黄色の透明な溶液であり、
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、USP・・・・・・・・・・・・・4.0mg
カフェイン、無水、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.0mg
デキストロース、無水、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・50.0mg
二酸化炭素、USP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・qs
精製水、USP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・qs1.0mL
を含む。
【0361】
DHE DPバイアルは、I123 POD Deviceに取り付ける。I123 POD Deviceは、175μL/作動ポンプ~205μL/作動ポンプ(境界を含む)の公称出力を有する。
【0362】
使用者がデバイスを手動で1回作動させると、定量ポンプが作動して投与チャンバにDHE製剤を充填し、その後ほぼ瞬時に推進剤キャニスタが作動してスプレーとしてノズルから製剤を噴出し、使用者の鼻腔に送達される。デバイスは、単回の分割用量の薬物送達(鼻孔あたり1スプレー)が成功した後に廃棄するように設計される。I123 POD Deviceを作動させると、定量吸入器からのHFA曝露と同様に、約63μLのHFA-134a推進剤が放出される。
【0363】
6.3.5.アウトカム指標
対象は、(i)重篤および非重篤な治療出現有害事象を有する対象の数、(ii)鼻内視鏡検査によって検出される鼻粘膜の変化、並びに(iii)嗅覚機能の変化の評価を含む、主要評価項目について評価された。副次的評価項目には、INP104投与後2時間での頭痛からの解放の割合におけるベースラインからの変化、INP104投与後2時間での最も厄介な症状におけるベースラインからの変化、INP104投与後の頭痛の頻度および重症度の(他の時点にわたる)ベースラインからの変化、INP104投与後の他の時点での最も厄介な症状のベースラインからの変化、INP104投与後の吐き気、音恐怖症、および光恐怖症の頻度および重症度、および変化、eDiaryによる片頭痛の頻度および重症度(頭痛、吐き気、音恐怖症、および光恐怖症によって測定される)の変化、INP104投与後48時間以内の疼痛再発の発生、片頭痛障害評価および頭痛影響テストアンケートのベースラインからの変化、併用片頭痛薬の使用の変化の評価が含まれ、追加の安全性および忍容性は、バイタルサインのベースラインからの変化、身体検査におけるベースラインからの変化、12誘導電気心電図(ECG)におけるベースラインからの変化、臨床的評価、例えば、血液学、臨床化学および尿検査におけるベースラインからの変化によって評価された。探索的評価項目には、片頭痛に対するヘルスケア利用のベースラインからの変化が含まれていた。
【0364】
6.3.6.統計解析
統計解析は本質的に記述的であった。いずれかの量の治験薬を受けたすべての対象(安全性集団)を解析に含めた。
【0365】
有害事象の報告、鼻内視鏡検査、検査所見、バイタルサイン評価、および心電図パラメータに基づいて、安全性および忍容性を分析した。継続的安全性データは、記述統計(算術平均、標準偏差、中央値、最小値、および最大値)でまとめた。カテゴリー別の安全性データは、頻度数およびパーセンテージでまとめた。探索的有効性解析は、時間の経過とともに以下を要約することに焦点を当てた:片頭痛の症状が片頭痛日記に捉えられる頻度および重症度、片頭痛障害評価および頭痛影響テストのアンケートスコア、並びに併用片頭痛薬の使用。
【0366】
6.3.7.結果
頭痛の要約
24週間の完全安全性集団に含まれた患者354例は、INP104で治療された4605回の頭痛を発現し、そのうち4515回の頭痛は片頭痛発作と見なされた(表8)。24週間の主要安全性集団では、患者185例がINP104で治療された3582回の頭痛を発現し、そのうち3530回の頭痛は片頭痛発作と見なされた。
【0367】
各ベースライン後4週間の間隔で、報告された頭痛の80%超および85%以上は、それぞれ、24週間の完全および主要安全性集団における片頭痛発作であった。各4週間間隔での片頭痛発作に対するINP104治療は、主に片頭痛発作が始まってから2時間未満で行われた(片頭痛の70%超)。24週間の完全および主要安全性集団において、報告された頭痛全体の数と、各ベースライン後の4週間の間隔で発生した片頭痛発作の数は、特に最初の12週間において、標準治療の急性薬で治療された全ての頭痛のベースライン測定値と比較して、実質的に減少した。
【0368】
52週間の主要安全性集団では、患者73例がINP104で治療された2642回の頭痛を発現し、そのうち2617回の頭痛は片頭痛発作と見なされた。52週間の主要安全性集団では、患者55例がINP104で治療された2205回の頭痛を発現し、そのうち2189回の頭痛は片頭痛発作と見なされた。
【0369】
【表13】
【0370】
【表14】
【0371】
【表15】
【0372】
IP=治験薬(INP104)
注:ベースラインは、0日目の試験への患者の登録前28日以内に記録されたデータを平均化することによって、各患者について定義した。0日目の試験への患者の登録前にパラメータの測定値が収集されなかった場合、ベースラインは欠落していると設定された。
a.パーセンテージは、4週間隔の間の頭痛の総数に基づいていた。
b.4週間間隔の間で電子日記にいかなる欠落データもない患者の数。
【0373】
INP104の投与2時間後における片頭痛の解消
最良の通常治療の最後の投与の2時間後における、およびINP104の最初の投与の2時間後における疼痛が解消した臨床試験患者の割合を、図17A(「STOP-301 FSS予備データ」)にプロットし、ラスミジタン、リメゲパント、ウブロゲパント、およびMAP004-DHEについての文献で報告された結果と比較する。対象は、図16に示されるように、トリプタン類、アセトアミノフェン、NSAID、バルビツール酸、オピオイド、併用鎮痛薬、および他のものを含む最良の通常治療を受けた。結果は、INP104による処置が、2時間時に疼痛解消を有する対象の38%に卓越した利益をもたらすことを示しており、これは、各患者の最良の通常治療の最後の投与よりも優れており、文献に報告されている他の治療、すなわち、経口吸入によるDHEの投与(MAP004-DHE)、またはラスミジタン、リメゲパント、もしくはウブロゲパントの投与の以前の報告よりも優れている。ラスミジタンおよびウブロゲパントと比較したINP104の疼痛解消および良好な治療結果の利点は、長期にわたって持続した(図17B)。
【0374】
24週間の治療期間において、INP104投与の2時間後に疼痛が解消した片頭痛発作の平均割合は、最良の通常治療の急性薬物治療後の同等のベースライン測定値と比較して、各ベースライン後4週間間隔で高かった(ベースラインは、24週間の完全および主要安全性集団においてそれぞれ30.59%および26.19%を意味する;図22)。2時間において疼痛が解消したベースラインの通常治療からの平均増加は、24週間の完全安全性集団において2.6%から10.25%、24週間の主要安全性集団において4.96%から11.55%の範囲であった。
【0375】
52週間の処置期間(完全および主要安全性集団)の結果は、24週間の処置期間(完全および主要安全性集団;図23)の結果と一致した。
【0376】
最も厄介な症状(MBS)
最も厄介な症状のベースラインからの変化も測定した。INP104投与の第1の用量または最良の通常治療の最後の投与の2時間後に最も迷惑な症状が解消した患者の割合を図18(「STOP-301予備データ」)にプロットし、ラスミジタン、リメゲパント、およびウブロゲパントについての文献で報告された結果と比較する。INP104の第1の用量は、2時間で最も厄介な症状の緩和を有する対象の53%に卓越した利益を示し、一方で、より低い割合の対象が、最良の通常治療の最後の投与を受けたときに緩和を有した。これらのデータは、ラスミジタンおよびウブロゲパントについての文献で報告されているデータと比較される。
【0377】
INP104の第1の用量での処置後に疼痛緩和を有する患者の割合(%対象)を、図19Aにおいて、DHEの鼻腔内投与後15分から120分まで経時的にプロットする。分析では、中等度もしくは重度の疼痛から軽度もしくは無痛、または軽度の疼痛から無痛までの改善を有する対象を、疼痛緩和を有する対象としてカウントした。疼痛緩和を有する対象は、INP104の最初の投与を受けた後、15分における16.8%から2時間における68.2%に経時的に徐々に増加した。図19Bは、ラスミジタン、リメゲパント、ウブロゲパント、MAP0004、およびMigranal(登録商標)に関する文献における報告を表にしたものである。
【0378】
120分間にわたって、INP104のこれらの治療効果は、図19AおよびBに提供されるように、他の片頭痛治療方法についての結果報告よりも良好であった。例えば、対象の16.8%が、INP104での治療後15分において疼痛緩和を有したのに対し、対象の9%および対象の8%が、MAP0004およびリメゲパントでのそれぞれの治療後15分において、疼痛緩和を有した。INP104による処置後120分において、対象の68.2%が疼痛緩和を有した一方で、対象の47%~61%が、ラスミジタン(200mg)、リメゲパント(75%)、ウブロゲパント(100mg)、MAP0004、またはMigranalによる治療後120分において疼痛緩和を有した(図19B)。INP104の疼痛緩和効果は一貫しており、再現性があった。INP104で処置した全ての片頭痛において、患者の約30%が2時間において軽度の疼痛から無痛に至り、INP104で処置した片頭痛の75%において、患者の約60%が2時間において軽度から無痛に至った。
【0379】
24週間の処置期間において、INP104投与の2時間後にMBSがない片頭痛発作の平均割合は、最良の通常治療の急性薬物治療後に相当するベースライン測定値と比較して、各ベースライン後4週間隔で高かった(ベースラインは、24週間の完全安全性集団および主要安全性集団における47.85%および43.91%をそれぞれ意味する;図24)。ベースライン時およびその後の時点でデータを有する患者のベースライン測定値(すなわち、患者の標準治療)からの平均増加は、24週間の完全安全性集団では3.07%~9.71%、24週間の主要安全性集団では4.42%~11.10%の範囲であり、1~4週の間での24週間の完全安全性集団でのベースラインからの1つの最小平均減少(-0.63%)は例外であった。
【0380】
52週間の処置期間(完全および主要安全性集団)の結果は、24週間の処置期間(完全および主要安全性集団;図25)の結果と一致した。
【0381】
疼痛再発の発生率
INP104による処置の24時間後の疼痛の再発
INP104投与24時間後および48時間後までに疼痛が再発した片頭痛発作の割合を測定した。疼痛の再発は、INP104投与後2時間において疼痛がなく、その後INP104投与の24時間後および/もしくは48時間後より前、または24時間後および/もしくは48時間後において痛みが存在した片頭痛、または24時間もしくは48時間の時点より前の新しい頭痛の発症と定義された。
【0382】
ベースラインおよび各ベースライン後の時点に含まれる患者は、各特定の4週間隔で非INP104(ベースライン)またはINP104(ベースライン後)投与の2時間後に痛みがない少なくとも1回の片頭痛を有する患者であった。
【0383】
24週間の処置期間において、IP投与の24時間後の疼痛再発を伴う片頭痛発作の平均割合は、最良の通常治療の急性薬物治療後の相当するベースライン測定と比較して、各ベースライン後4週間隔で低かった(図26)。
【0384】
52週間の処置期間(完全および主要安全性集団)の結果は、24週間の処置期間の結果と一致した。
【0385】
INP104による処置の48時間後の疼痛の再発
24週間の完全および主要安全性集団において、INP104による処置の48時間後に疼痛再発を伴う片頭痛の平均割合は、最良の通常治療の急性薬物治療後の相当するベースライン測定と比較して、各ベースライン後の4週間隔で低かった(表9)。
【0386】
【表16】
【0387】
CI=信頼区間、IP=治験薬、SD=標準偏差。
注:48時間時点での片頭痛の再発は、片頭痛薬投与後2時間時点で疼痛がなく、その後、投薬後24時間もしくは48時間時点で疼痛解消がない片頭痛、またはIP投与後48時間の前の新たな頭痛の発症と定義された。
a.各患者について、ベースライン時の割合は、0日目の試験への患者の登録前28日以内の全てのIP処置されていない片頭痛の平均であった。各ベースライン後4週間間隔における割合は、同じ間隔中のすべてのIP処置された片頭痛の平均であった。
b.ベースラインの要約からの変化については、ベースラインおよびベースライン後の両方で見逃し値のない患者のみが含まれた。
c.nは、投薬の2時間後に疼痛のない状態を達成し、特定の4週間隔にデータを有した患者の数である。
d.ワルド95% Cl
【0388】
片頭痛発作頻度
さらに、図20に示されるように、反復投与スケジュールでのINP104投与は予防効果を示し、時間の経過とともに片頭痛の頻度を有意に低下させた。片頭痛の頻度の低下は、6か月(または24週間)の処置期間を通して持続した。24週間の処置期間を終えた患者147例は、図20に示されるように、片頭痛の頻度において約44%の低下を示した。これらの患者は、スクリーニング期間中に平均して月に約4.5回の片頭痛発作を有していたが、INP104による処置後には月に約2.5回のみの片頭痛発作を有していた。24週間の処置期間を完了したが、24週間の処置期間中に12回未満の片頭痛を有し、したがって処置期間中に12回未満のINP104処置を受けた患者45例のサブグループは、片頭痛の頻度において約76%の低下を示した。この患者のサブグループは、スクリーニング期間中に平均して月に約3.7回の片頭痛発作を有していたが、約9~12週間のINP104による処置後には月に約1回のみの片頭痛発作を有していた。
【0389】
MIDASスコアの変化
スコア範囲に関するMIDASカテゴリーグレード(I、II、III、IVa、および IVb)を表10に示す。スコアが高いほど、頭痛に関連する障害が大きいことを示す。
【0390】
【表17】
【0391】
ベースラインでは、各重症度グレードにおける患者の割合に基づいて、24週間の完全および主要安全性集団における患者354例のうち102例(28.8%)および患者185例のうち54例(29.2%)がそれぞれグレードIII(中等度障害)であり、98例(27.7%)および55例(29.7%)がそれぞれグレードIVa(表14.2.2.1a)であった。各24週間の安全性集団の平均MIDAS合計スコアは、各来院時のベースラインから減少し(表11)、24週間の完全安全性集団では-5.5から-7.4、24週間の主要安全性集団では-5.3から-7.3の範囲でベースラインからの平均変化があった。3回のベースライン後の各来院の平均スコアは、各24週間の安全性集団でグレードIIIであるか、またはそれに近かった。患者は、各ベースライン後の来院で、24週間の最大安全性集団(範囲:31.0%~34.4%)および24週間の主要安全性集団(範囲:33.5%~37.2%)において最も頻繁にグレードIIIに分類された。
【0392】
52週間の処置期間(最大および主要安全性集団)の結果は、24週間の処置期間(最大および主要安全性集団)の結果と一致した。
【0393】
【表18】
【0394】
【表19】
【0395】
CI=信頼区間、Max=最大、MIDAS=片頭痛障害評価、Min=最小、SD=標準偏差。
注:MIDAS合計スコアは、以下の等級に分類された:I(0-5)支障がほとんどない、またはまったくない;II(6-10)軽度の支障;III(11-20)中等度の支障;IVa(21-40)重度の支障-サブグループa;IVb(41-270)重度の支障-サブグループb。
ベースラインは、0日目の試験への患者の登録日以前の最後の非欠落評価として定義された。治療終了時の来院は、24週間の治療期間における最後の非欠落評価であった。カテゴリー別の要約については、割合は、各来院時のn値に基づいていた。
a.ベースラインの要約からの変化については、ベースラインおよびベースライン後の両方で見逃し値のない患者のみが含まれた。
b.ワルド95% CI
c.ベースライン後は、来院日/来院前に評価された最初の治験薬を開始した患者のデータのみを含んでいた。
【0396】
HIT-6スコアの変化
スコア範囲に関連する生活影響カテゴリー(ほとんどまたはまったくない、ある程度ある、かなりある、および重度にある)は、表12に示される。スコアが高いほど、頭痛に関連する障害が大きいことを示す。
【0397】
【表20】
【0398】
24週間の最大および主要安全性集団では、ベースライン平均HIT-6合計スコアは、それぞれ63.8および64.2であり(表13)、患者の大部分(80%超)は、重度の生活への影響を示すベースラインスコアを有していた(それぞれ、患者354例のうち296例[83.6%]、および患者185例のうち158例[85.4%])。12週目、24週目、および治療終了時の来院では、平均HIT-6合計スコアは、各来院時でベースラインから小さな(1未満)減少を示し、ほとんどの患者(70%超)の頭痛関連障害は重度のままであった。
【0399】
52週間の処置期間(最大および主要安全性集団)の結果は、24週間の処置期間(最大および主要安全性集団)の結果と一致した。
【0400】
【表21】
【0401】
【表22】
【0402】
CI=信頼区間、HIT-6=頭痛インパクト試験-6、Max=最大、Min=最小、SD=標準偏差。
注:HIT-6スコアは、以下のグレードに分類された:ほとんどまたはまったくない(49未満)、ある程度ある(50~55)、相当ある(56~59)、および重度にある(60以上)。
ベースラインは、0日目の試験への患者の登録日以前の最後の非欠落評価として定義された。治療終了時の来院は、24週間の治療期間における最後の非欠落評価であった。カテゴリー別の要約については、割合は、各来院時のn値に基づいていた。
a.ベースラインの要約からの変化については、ベースラインおよびベースライン後の両方で見逃し値のない患者のみが含まれた。
b.ワルド95% CI
c.ベースライン後は、来院日/来院前に評価された最初の治験薬を開始した患者のデータのみを含んでいた。
【0403】
有効性の結論
24週間の最大安全性集団では、患者354例がINP104で治療された合計4605回の頭痛を発現し、そのうち4515回が片頭痛発作であったが、24週間の主要安全性集団では、患者185例がINP104で治療された合計3582回の頭痛を発現し、そのうち3530回が片頭痛発作であった。
【0404】
52週間の最大安全性集団では、患者73例がINP104で治療された2642回の頭痛を発現し、そのうち2617回が片頭痛発作と見なされ、52週間の主要安全性集団では、患者55例がINP104で治療された2205回の頭痛を発現し、そのうち2189回が片頭痛発作と見なされた。
【0405】
24週間の処置期間の各ベースライン後4週間隔の間に経験した片頭痛発作の数は、最良の標準治療の急性薬物治療で治療された全頭痛のベースライン測定値と比較して減少し、INP104処置の最初の12週間にかなりの減少を伴っていた。
【0406】
24週間の処置期間におけるINP104投与の2時間後に痛みがない片頭痛発作の平均割合は、標準治療の急性薬物治療後の相当するベースライン測定値と比較して、ベースライン後の各4週間隔で高く、経時的に概ね一貫したベースライン後効果が認められた。
【0407】
24週間の処置期間におけるINP104投与後の2時間に痛みがない片頭痛発作の平均割合は、最良の通常治療の急性薬物治療後の相当するベースライン測定値と比較して、ベースライン後の各4週間隔で高く、経時的に概ね一貫したベースライン後効果が認められた。
【0408】
各24週間の安全性集団における平均MIDAS合計スコアは、各来院時のベースラインから減少し、ベースライン後の各来院時の平均スコアはグレードIII(中等度の障害)であるか、またはそれに近かった。
【0409】
全体として、52週間の処置期間(最大および主要安全性集団)の有効性の結果は、24週間の処置期間(最大および主要安全性集団)の結果と一致した。
【0410】
その他の評価
INP104の使いやすさ/有効性に対する患者の印象
24週間の最大および主要安全性集団の患者の大部分(90%超)がアンケートに回答した。24週間の最大および主要安全性集団において、ほとんどの患者はINP104が使いやすいことに強く同意(それぞれ50.0%および53.8%)または同意した(それぞれ33.6%および35.3%)。図21に示すように、INP104は、片頭痛への対処において患者の要求を満たした。INP104で治療した患者の高い割合は中立的であり、INP104は使いやすく、片頭痛が戻ってくることを防ぎ、これまでの薬剤よりも速く働き、片頭痛を一貫して治療し、彼または彼女が正常な状態により早く戻ることを可能にし、持ち運びおよび使用が容易であることに同意または強く同意した。
【0411】
INP104を患者のこれまでの処方薬の使用と比較した質問では、患者の反応は、各質問について中立、同意、および強い同意のカテゴリーにわたって混ざっており、製品がより早く働いたかどうか、片頭痛が戻ってくることをより長時間防いだかどうか、正常な活動への復帰をより早く可能にしたか、または各片頭痛をより一貫して緩和したかどうかの比較に関して、20%から30%の範囲であった。24週間の最大および主要安全性集団に含まれた患者は、もしINP104が市販された場合、INP104の処方を医師に要求することに強く同意(それぞれ27.4%および33.5%)、または同意(それぞれ31.4%および34.7%)した。他の経鼻片頭痛薬と比較して、INP104デバイスに関する不快感およびINP104に関する不快感は、いずれか1つの同意カテゴリー(すなわち、強く同意または同意)で20%未満であり、これは、患者の35%超がこれまで経鼻片頭痛薬を使用していなかったためと考えられる。
【0412】
ヘルスケアの利用
過去12か月以内の片頭痛発作に関連するベースラインのヘルスケア利用をスクリーニング時に電子症例報告書(eCRF)に収集し、eDiaryの入力に基づいてベースライン後に決定した。ベースラインデータの収集は患者の想起によるものであり、患者記録のレビューではなかった。ベースライン後の結果は、頭痛または片頭痛発作の文脈での使用に基づいていた。例えば、患者は、予定外の、頭痛または片頭痛発作によるクリニック/診療所への任意の受診をeDiaryに記録したが、そのような受診はeCRFの予定外の試験来院として治験参加施設では記録されなかった。ベースラインおよびベースライン後のヘルスケア利用率および、関連する曝露量で調整したイベント率(EAER値)を表14に要約し、ここで割合は各関連する時点におけるイベントの総数に基づく。急性片頭痛/予防片頭痛のための新規処方または変更された処方、および片頭痛の予防処置は、ベースライン時にのみ収集されたことに注意されたい。
【0413】
24週間の最大安全性集団では、合計162件のベースラインヘルスケア利用イベントが報告され、新規または変更された予防片頭痛のための処方(41件[25.3%])および救急外来受診(35件[21.6%];表14)のベースライン発生率が最も高かった(全イベントの20%超)。ベースライン後、33件のイベントが報告され、報告された唯一のイベントは救急外来受診(5件[15.2%])および予定外のクリニック/診療所の訪問(28件[84.8%])であった。しかし、片頭痛の重篤なTEAEの状態は救急外来受診および入院を必要としたが、eDiaryエントリによると、救急外来受診としてのみ記録された。救急外来受診のEAERは、ベースライン後でベースライン時よりも低かった(2.6対9.9)が、予定外のクリニック/診療所受診では高かった(14.6対8.8)。同様の結果は、24週間の主要安全性集団について報告された。
【0414】
【表23】
【0415】
EAER=曝露量で調整したイベント発生率(expoure-adjusted event rate)。
注:EAERは、100人年の暴露あたりに予想される特定のイベントの数であった。これは、各同定された分析集団に含まれる患者の総曝露時間(年数)で割ったイベントの数の100倍と定義された。各特定のイベントが複数回発生した患者は複数回カウントした。年間の総曝露時間は、各同定された分析集団に含まれるすべての患者の日数による曝露時間の合計を365.25で割ることによって計算した。
割合は、特に明記しない限り、関連する時点のイベントの総数に基づいていた。
a.ベースラインは、スクリーニング時に過去12か月間のヘルスケア利用データとして定義された。各患者のベースライン曝露時間は12か月であった。
b.ベースライン後は、0日目の患者の試験への登録から試験終了までに収集されたヘルスケア利用データとして定義された。患者のベースライン後の曝露時間は、試験における患者の時間であった。
【0416】
安全性
INP104は安全であり、対象により十分に許容されることが示された。INP104関連の安全性および有害事象は報告されなかった。鼻内視鏡検査または嗅覚機能評価から懸念される所見はなかった。INP104の安全性および忍容性は、以下の表15に要約されている。
【0417】
【表24】
【0418】
7.参照による援用
本明細書で引用されるありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0419】
8.均等物
本発明を具体的な実施形態を参照して開示してきたが、当業者によって、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態および変形が考案されてもよいことは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのかかる実施形態および均等な変形を含むと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】