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特表2023-511560妊娠中の葉酸受容体自己免疫疾患及び自閉症を減少させるための葉酸受容体タンパク質を除去することによる家畜乳の再定義
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】妊娠中の葉酸受容体自己免疫疾患及び自閉症を減少させるための葉酸受容体タンパク質を除去することによる家畜乳の再定義
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/00 20060101AFI20230313BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20230313BHJP
   A23C 9/14 20060101ALI20230313BHJP
   A23C 9/148 20060101ALI20230313BHJP
   A23C 19/00 20060101ALI20230313BHJP
   A23C 9/12 20060101ALI20230313BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20230313BHJP
   A23G 9/40 20060101ALI20230313BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20230313BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230313BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20230313BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20230313BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230313BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 15/873 20100101ALI20230313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20230313BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20230313BHJP
   C07K 1/36 20060101ALN20230313BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230313BHJP
   C12P 1/00 20060101ALN20230313BHJP
   A01K 67/027 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
A23C9/00
A61P25/00
A61K35/20
A23C9/14
A23C9/148
A23C19/00
A23C9/12
A23G1/32
A23G9/40
A23L23/00
A23L2/00 F
A23L2/70
A23L33/00
C12N5/10
C12N15/113 140Z
C12N15/09 110
C12N15/873 Z
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
C07K1/36 ZNA
C07K14/705
C12P1/00 A
A01K67/027
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544131
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021014720
(87)【国際公開番号】W WO2021150965
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/964,343
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522287651
【氏名又は名称】ミリタウア エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレムスリラット、プレム
(72)【発明者】
【氏名】クアドロス、エドワード、ブイ.
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B018
4B036
4B064
4B065
4B117
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B001AC26
4B001BC99
4B001EC05
4B001EC06
4B014GB01
4B014GB18
4B014GB19
4B014GG11
4B014GP27
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018MD71
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF12
4B036LC06
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4B036LH39
4B036LP24
4B064AG20
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4B064CE10
4B064CE12
4B064DA10
4B065AA90X
4B065AA90Y
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4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
4B117LC04
4B117LE01
4B117LK18
4B117LP07
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4C084AA13
4C084NA06
4C084ZA02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB39
4C087CA03
4C087CA47
4C087NA06
4C087ZA02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA01
4H045EA20
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
神経管欠損妊娠、早産、低妊孕率、及び自閉症スペクトラム障害を含む多数の発達障害の発生率を減少させるために、集団における葉酸受容体自己免疫障害の有病率を減少させるための牛乳の再定義におけるシステム及び方法が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉酸受容体を含まない(FRF)乳を製造する方法であって、サイズ排除クロマトグラフィー、グリコホスファートイノシトール(GPI)捕捉カラムアフィニティークロマトグラフィー、葉酸受容体結合抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィー、FR結合抗体に結合したプロテアーゼを使用した葉酸受容体の特異的消化、FRを除去するための乳製品の分画、又は乳中の葉酸受容体に特異的に結合するリガンドを使用したアフィニティークロマトグラフィーからなる群から選択される方法を使用して、乳製品から葉酸受容体を除去することを含む、方法。
【請求項2】
前記サイズ排除クロマトグラフィーが、少なくとも38kDaの膜を使用して葉酸受容体を乳から濾過することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記葉酸受容体結合抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィーが、葉酸受容体に対する抗体を産生することと、固体マトリックスにおいて葉酸受容体に対する前記抗体を固定することと、乳溶液を前記固体マトリックス及び葉酸受容体に対する抗体と混合し、前記乳溶液から葉酸受容体抗原を選択的に除去することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
FR結合抗体に結合したプロテアーゼを使用した葉酸受容体の前記特異的消化が、プロテアーゼを葉酸受容体抗体に結合させることと、乳溶液中の葉酸受容体を選択的に消化することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
乳中の葉酸受容体に特異的に結合するリガンドを使用した前記アフィニティークロマトグラフィーが、乳溶液中で葉酸受容体に高親和性で結合するために葉酸を使用することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
自閉症の割合を減少させるための葉酸受容体を含まない乳のためのシステムであって、哺乳動物において葉酸受容体を標的とするshRNAを生成することと、前記shRNAのヌクレオフェクションを行うことと、陽性単一クローンを同定することと、葉酸受容体抗原を欠く乳を産生する哺乳動物に核移植を行うことと、を含む、システム。
【請求項7】
ウシの線維芽細胞における葉酸受容体のノックダウン方法であって、shRNAライブラリー中のshRNAを同定し、前記shRNAをセンサーアッセイで検証して、葉酸受容体を強力かつ特異的にサイレンシングするshRNAを見出すことと、線維芽細胞における前記shRNAノックダウンを確認することと、shRNA又はshRNAのコンカテマーを含有するベクターをクローニングすることと、前記ベクターを線維芽細胞に挿入することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記ベクターが、乳房特異的プロモータ-shRNA又は乳房特異的プロモータ-shRNA-shRNA-shRNAである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記shRNAベクターが、乳房特異的遺伝子に特異的に挿入される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記センサーアッセイが、複数のLPE-shRNA、shRNA標的部位を含有するgBlock、GFP系レポーターベクター、ERCニワトリ細胞株、Phoenix-E細胞株、VSV-G、Gag-Polヘルパープラスミド(Eco又はAmphoヘルパープラスミド)の群から選択される複数のヘルパープラスミド、複数のトランスフェクション試薬、複数の細胞培養試薬(DMEM、FBS、トリプシン)、複数の細胞培養プレート、複数の蛍光活性化細胞分取器(FACS)チューブを含む機能的蛍光系レポーターアッセイである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記shRNAライブラリーが、図7に示されるshRNAから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
核移植によってトランスジェニック哺乳動物を生成することと、乳房特異的プロモータ及び遺伝子編集を使用して、葉酸受容体を強力かつ特異的にサイレンシングするshRNAをノックインすることと、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記乳房特異的プロモータが、ウシ線維芽細胞において使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記核移植が、乳房特異的遺伝子内にノックインするためにCRISPR遺伝子編集を使用する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
乳腺における葉酸受容体発現をサイレンシングし、乳中の葉酸受容体抗原を減少させることを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
乳製品であって、バルク乳、チーズを作るために使用されるバルク乳であって、前記乳が低温殺菌されているかどうか、滅菌されているかどうか、又は他の方法で処理されているかどうかにかかわらず、チーズを作る前に微生物集団が低減されたバルク乳、粉乳、乳固形分、カゼイン、カゼイナート、及びカゼイン加水分解物、低温殺菌乳、滅菌乳、精密ろ過乳を含む保存乳、UHT乳、低脂肪乳、改良又は強化乳、アイスクリーム又は他の冷凍乳製品ベースの菓子、ヨーグルト又はクワルクなどの発酵乳製品、全脂肪チーズ、部分的に脱脂された加工チーズ及び無脂肪の加工チーズを含むチーズ、乳清、乳製品の添加によって強化されたスープなどの食品、潜在的にアレルゲン分子が除去された乳、チョコレート製品などの菓子、リン酸及び/又はクエン酸を添加した製品を含む炭酸乳製品、完全に脱脂した、部分的に脱脂した、又は無脂肪乳を複数の追加のサプリメントと共に含むことができる乳児用製剤、液体又は粉末飲料混合物、並びにバターミルク及びバターミルク粉末からなる群から選択される製品を作るために使用される葉酸を含まない乳製品を含む、乳製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉酸受容体(FR)を含まない乳の使用に関する。乳中の葉酸受容体の存在は、葉酸感受性異常、例えば、出生時欠損(例えば、神経管欠損、すなわちNTD)、不妊症、自然流産、男性不妊症、体外受精の失敗、神経障害、神経発達遅延及び精神神経疾患、例えば、脳葉酸欠乏症又は自閉症スペクトラム障害を引き起こす可能性があるヒト葉酸受容体に対する自己抗体の形成を誘導する可能性がある。本発明は、葉酸受容体が抽出によって除去されているか、又は乳腺において葉酸受容体の発現が抑制又は阻害されている操作された動物から生成され、したがって乳への産生及び分泌を防止する乳(人間が消費するための乳を生産するために使用されるウシ、ヤギ、及び他の家畜から)の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、葉酸受容体を含まない(FRF)乳及び乳製品の製造に関する。非ヒト葉酸受容体を含有する非ヒト乳又は乳製品への曝露は、母親から胎児、及び乳児の脳への葉酸(folate)又は葉酸(folic acid)輸送を遮断することができるヒト葉酸受容体/葉酸結合タンパク質(FR/FBP)に対する自己抗体を不正に誘発する可能性がある(Rothenberg et al,2004、Ramaekers et al 2005)。
【0003】
葉酸は、高度に増殖性の胚性細胞によって必要とされる核酸及びアミノ酸の合成のための1炭素代謝に関与するので、正常な胚発生に不可欠である(Lucock,Mal.Genet.Metab.71:121(2000))。母体栄養は、葉酸摂取をNTDの予防に関連付けており(Hibbard and Smithells,Obstet.Gynaecol.Br.Commonwealth 71:529(1964)、Hibbard and Smithells,Lancet l,1254(1965)、Smithall et al.,Arch.Dis.Child 51:944(1976))、妊娠中の葉酸の補充は現在一般的な慣行である。しかし、NTD又は他の出生異常の多くの症例は、臨床的葉酸欠乏症の徴候を示さなかった母親において生じ、研究者は、細胞代謝又は葉酸の取り込みを損なう他の原因を特定することにつながった。多くの遺伝的原因が同定されているが、これらの遺伝子は少数の出生時欠損を占めるにすぎない(van der Put et al.,Exp.Biol.Med.(Maywood),226:243(2001))。
【0004】
以前の特許公報(米国特許第7,846,672号)において、Edward Quadros博士は、葉酸受容体に対する自己抗体による葉酸取り込みの干渉に起因する、不妊症、自然流産、体外受精の失敗又は出生時欠損などの葉酸感受性障害の発見を記載している。更に、彼らは、葉酸受容体に対するこれらの自己抗体を検出するためのアッセイを記載している。
【0005】
その後の研究により、自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児の70%超がFR抗体について陽性であることが明らかになった(Frye et al.,Mol.Psych.18:369-381,(2013))。これらの抗体は、脳への葉酸輸送を遮断することができる。特に、本発明者らは、これらのFR抗体が牛乳(ウシ)由来のFRと強く反応することを示す(Ramaekers et al.2009)。牛乳(ウシ)は、相当量(1~3ug/ml)の葉酸受容体α[FR]を含有し、これは葉酸輸送に関与する葉酸結合タンパク質[FBP]の群に属する。ヒトFRとウシFRは構造的に類似しているので、分子模倣が交差反応性の原因である可能性が高い。
【0006】
多くの報告は、ASDを有する小児が、ASDの影響を受けていない比較群よりも早期に人工乳で育ったか、又は離乳した可能性が高いことを示している。これは、ウシ又は非ヒト哺乳動物乳を早期に導入すると、ASD及び関連する神経障害のリスクを増加させる可能性があることを示唆している。初期発達中に従来の牛乳を摂取することは、自閉症及び他の神経障害に寄与するか又はそれを引き起こすことに関与している。葉酸は胎児及び乳児の発達中に必須の栄養素であるため、これは葉酸代謝の破壊に関連していると考えられる。より多くの食事性葉酸を導入するために、いくつかの「葉酸が強化された」乳製品が導入されているが、それらの利点は証明されていない。
【0007】
Edward Quadros博士により最近発表された研究は、葉酸受容体自己抗体が、自閉症スペクトラム障害と診断された小児、その正常な兄弟姉妹及び親において一般的であるという明確な証拠を提供している(Ramaekers et al.,Mol Psych.18:270-271(2013)、Frye et al.,Mol Psysch.18:369-381,(2013))。FR自己抗体も発現する、ASDを有する小児における高用量フォリン酸治療を使用する介入戦略は、学習障害及び行動改善に有益であることが証明されている(Frye et al.,Mol.Psych.23:247-256,(2018))。更なる多施設臨床試験が進行中である。
【0008】
高用量のフォリン酸は、認知欠損及びFR抗体を有する小児に治療的処置を提供するが、FRに対する自己抗体形成を引き起こす原因を除去しない。FR抗体陽性の小児では、乳除去食は抗体価を低下させる(Ramaekers et al.2009)が、この食事は非常に制限的であり、従うことが困難である。
【0009】
自閉症スペクトラム障害は、コミュニケーション、社会的交流及び行動に影響を及ぼす発達障害である。ASDの症状は、通常、生後2年以降に明らかになり、以下の、他人とのコミュニケーション及び交流が困難であること、興味が制限され、反復的行動をすること、学校、仕事及び他の生活領域で適切に機能する能力を損なう症状を特徴とする。自閉症は、人々が経験する症状の種類及び重症度に大きなばらつきがあるため、「スペクトラム」である。CDCは、米国の59人に1人(約1~2%)がASDの影響を受けると推定している。中国での発生率は完全に記録されているが、100人の小児に推定1人が影響を受ける可能性がある(Wang et al.Int J Biol Sci.2018;14(7):717-725)。世界のほとんどの地域では、55人に1人から200人に1人の間で変化する。
【0010】
ASDの原因は知られていないが、ASDに関連するものとして遺伝的及び環境的要因が示唆されている。
【0011】
食物アレルギーは、約200,000人の小児の研究で4.25%であったのに対し、ASDを有する小児では11.25%と、より多くみられる。自己免疫状態はまた、小児の間でより頻繁に報告されている。新たな「脆弱な腸」仮説は、腸吸収に障害のある一部の子供が、葉酸受容体に対する自己抗体を産生し、これがASDの症状をもたらす可能性があることを記載している。葉酸は、胎児及び新生児の神経発達に必須であり、葉酸代謝の破壊が、ASD患者において近年には特定されている。
【0012】
通常の丈夫な腸を図1Aに示す。タンパク質及び単糖類は小腸で健全に消化され、栄養素を吸収されるようになる。繊維及び未消化タンパク質は細菌によって消費される。血液は腸の管腔と相互作用せず、免疫細胞と抗原性食物分子との間の相互作用を妨げる。
【0013】
脆弱な腸を図1Bに示す。ASDを有する小児は、消化能力の低下を示す。腸内層の炎症及び劣化は、タンパク質及び糖の適切な消化を妨げる。炎症は、血液と腸との直接接触をもたらし、腸内の未消化タンパク質を血流に直接通過させ、又はGALT(腸関連リンパ管)及びMALT(粘膜関連リンパ管)に曝露することを可能にする。これにより、免疫組織内の抗原タンパク質への望ましくない曝露が可能になり、免疫応答が引き起こされる。
【0014】
脆弱な腸は、牛乳中に分泌される葉酸受容体(1~2ug/ml)を含む牛乳タンパク質に対する自己抗体をもたらす可能性がある。ASDを有する小児から単離された抗葉酸受容体抗体は、牛乳中のウシ葉酸受容体と強く交差反応することが示されている。抗体濃度は、小児を乳除去食にすると有意に低下する。乳除去食は、遵守することが難しい。
【0015】
葉酸は、脳発達中の多くのプロセスに必要とされる。葉酸代謝は図2に示されており、ASD患者では異常であることが多い。ASDを有する小児の70%は、葉酸受容体を遮断し、細胞における葉酸取り込みを妨げる自己抗体を有する(Frye,R.E.et al.Cerebral folate receptor autoantibodies in autism spectrum disorder.Mol Psych,2013)。妊娠中のラット及び離乳期の仔ラットにおいて、葉酸受容体抗体に曝露させると、重度の行動障害を引き起こす(Sequiera,J.M.et al.Plos one,2016)。
【0016】
葉酸欠乏症は、葉酸受容体とは無関係に脈絡叢を介して脳に入ることができる葉酸の還元型であるフォリン酸で補正することができる。葉酸欠乏症は、損傷を修復しないが脳葉酸を回復させてASDの症状を治療することができる高用量のフォリン酸を用いて矯正することができる。葉酸欠乏症は、脳の葉酸を回復させることによって矯正することができ、これは、ASD小児において言語及び社会的コミュニケーションの臨床的改善をもたらす。
【0017】
本発明は、葉酸受容体自己免疫障害の原因を解決し、その病理学的結果を防止するように設計される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
哺乳動物供給源から葉酸受容体を含まない(FRF)乳を産生するためのアッセイ及び方法が本明細書で提供される。方法及びシステムは、以下の説明に部分的に記載されており、その説明から部分的に明らかになるか、又は方法、装置、及びシステムの実施によって学ぶことができる。本方法及びシステムの利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成される。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載の方法及びシステムを限定するものではないことを理解されたい。
【0019】
添付の図面において、同様の要素は、本発明のいくつかの好ましい実施形態の中で同様の参照番号によって識別される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】通常の丈夫な腸を示す模式図である。
【0021】
図1B】脆弱な腸を示す模式図である。
【0022】
図2】葉酸代謝を示す模式図である。
【0023】
図3】ウシを生成し、ASDの発生率を低下させるための、葉酸受容体を含まない(FRF)乳についてのシステムを示す模式図である。
【0024】
図4】ウシの線維芽細胞系におけるノックダウン葉酸受容体の模式図である。
【0025】
図5】トランスジェニックウシ系をもたらすための核移植の模式図である。
【0026】
図6】コホート拡大及び乳分析システムを示す模式図である。
【0027】
図7】試験するライブラリー中のshRNAを列挙する表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて読まれる、例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかである。詳細な説明及び図面は、限定ではなく本発明の単なる例示であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【0029】
本明細書において、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、同様の符号は全体を通して同様の要素を反映する。本明細書で提示される説明で使用される用語は、単に本発明の特定の具体的な実施形態の詳細な説明と併せて利用されているため、限定的又は制限的な方法で解釈されることを意図しない。更に、本発明の実施形態は、いくつかの新規な特徴を含むことができ、そのうちの1つだけがその望ましい属性を単独で担うものでも、本明細書に記載の本発明を実施するのに不可欠なものでもない。近位及び遠位という用語は、本明細書に記載の器具の構成要素の特定の端部を示すために本明細書に適用される。近位端は、器具が使用されているときに器具の操作者により近い器具の端部を指す。遠位端は、操作者から遠く、患者及び/又はインプラントの手術領域に向かって延びる構成要素の端部を指す。
【0030】
本発明を説明する文脈における「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語及び同様の指示対象の使用は、本明細書で特に指示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(includes)」、及び/又は「含有している(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことが更に理解されよう。
【0031】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に含まれる各別個の値を個別に参照する簡略的な方法として役立つことを意図しているにすぎず、各別個の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。「約」という単語は、数値に付随する場合、記載された数値から10%以下の偏差を示すと解釈されるべきである。本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語(「例えば(e.g.)」又は「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、特に請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言語も、特許請求されていない要素を本発明の実施に必須であると示すと解釈されるべきではない。
【0032】
「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」、「様々な実施形態」などへの言及は、そのように記載された本発明の実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができるが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含むとは限らないことを示すことができる。更に、「一実施形態では」又は「例示的な実施形態では」という語句の繰り返しの使用は、同じ実施形態を指す場合もあるが、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順を指し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に知られているか、又は当業者によって既知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発される様式、手段、技術及び手順を含むが、これらに限定されない。特に明記しない限り、本明細書に記載の任意の方法又は態様が、そのステップが特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、請求項又は説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであることを具体的に述べていない場合、いかなる点においても順序が推測されることは決して意図されていない。これは、ステップ又は動作フローの配置に関する論理の事項、文法的な構成又は句読点から導かれる平易な意味、又は本明細書に記載されている態様の数又は種類を含む、解釈のための任意の可能な明示的でない根拠に当てはまる。
【0034】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技能の範囲内である免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクス及び組換えDNAの従来の技術を使用する。Sambrook,Fritsch and Maniatis,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd edition(1989)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel,et al.eds.,(1987))、the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995))、Harlow and Lane,eds.(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,ed.(1987))を参照されたい。
【0035】
実施形態は、既存の乳又は乳製品から葉酸受容体を除去するように設計されたアッセイである。葉酸受容体を含まない(「FRF」)乳は、本発明の一部を形成するFRF乳から加工された製品を生成するために更に使用することができ、これは、バルク乳(すなわち、2匹以上の動物からの乳)の供給源に由来し、バルク乳、チーズを作るために使用されるバルク乳であって、乳が低温殺菌されているかどうか、滅菌されているかどうか、又は他の方法で処理されているかどうかにかかわらず、チーズを作る前に微生物集団が低減されたバルク乳、粉乳、乳固形分、カゼイン、カゼイナート、及びカゼイン加水分解物、低温殺菌乳、滅菌乳、精密ろ過乳を含む保存乳、UHT乳、低脂肪乳、改良又は強化乳、アイスクリーム又は他の冷凍乳製品ベースの菓子、ヨーグルト又はクワルクなどの発酵乳製品、全脂肪チーズ、部分的に脱脂された加工チーズ及び無脂肪の加工チーズを含むチーズ、乳清、乳製品の添加によって強化されたスープなどの食品、潜在的にアレルゲン分子が除去された乳、チョコレート製品などの菓子、リン酸及び/又はクエン酸を添加した製品を含む炭酸乳製品、完全に脱脂した、部分的に脱脂した、又は無脂肪乳を複数の追加のサプリメントと共に含むことができる乳児用製剤、液体又は粉末飲料混合物、並びにバターミルク及びバターミルク粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明のこの態様では、任意の乳製品からFRを除去するように設計されたアッセイである。この方法としては、サイズ排除クロマトグラフィー、グリコホスファートイノシトール(GPI)捕捉カラムアフィニティークロマトグラフィー、葉酸受容体結合抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィー、FR結合抗体に結合したプロテアーゼを使用した葉酸受容体の特異的消化、FRを除去するための乳製品の分画、及び乳中の葉酸受容体に特異的に結合するリガンドを使用したアフィニティークロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
サイズ排除クロマトグラフィー又は乳タンパク質の分画:FRタンパク質の38kDaサイズは、38kDaのFRタンパク質を選択的に排除するか又は38kDaのFRタンパク質を含む膜又は複数の膜のいずれかを介した乳の限外濾過を可能にし、したがってFRタンパク質の乳を枯渇させることができる。この同じ原理を適用して、Sephadex100又はSephacryl S-200などのサイズ排除及びサイズ包含カラムを使用してFRの乳を枯渇させることができる。
【0038】
葉酸受容体結合抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィー:ウシ、ヤギ又は他の動物の葉酸受容体のいずれかに対して生成された抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)を、アガロース又はセファロースなどの不活性固体マトリックス上に固定化し、乳と混合して、乳からFR抗原を捕捉し、したがって乳からFR抗原を選択的に除去することができる。LSBio製のウシFOLR1/葉酸受容体αに対するヤギポリクローナル抗体をカラムクロマトグラフィーにコンジュゲートすることができる。
【0039】
本明細書で使用される「葉酸受容体」、「FR」、又は「FOLR1」という用語は、特に明記しない限り、任意の天然のウシ又はヤギFOLR1を指す。「FR」という用語は、「全長」の未処理FR、並びに細胞内での処理から生じるFRの任意の形態を包含する。この用語はまた、FRの天然に存在する変異体、例えばスプライシング変異体、対立遺伝子変異体及びアイソフォームを包含する。本明細書に記載されるFRタンパク質は、様々な供給源、例えばヒト組織型から、又は別の供給源から単離することができるか、又は組換え方法若しくは合成方法によって調製することができる。ウシ、ラット、ヤギ及びヒト由来の葉酸受容体のタンパク質配列及びBlast識別番号を標的とする抗体を以下に示す。
【0040】
ヒト葉酸受容体α-ホモサピエンス、257aa、配列番号1
【0041】
Transcript ID:FOLR1-203 ENST00000393679.5
【数1】
【0042】
ラット葉酸受容体α-ラット(Rattus norvegicus)、255aa、配列番号2
【0043】
Transcript ID:Folr1-202 ENSRNOT00000079675.1
【数2】
【0044】
ヤギ葉酸受容体α-ヤギ(Capra hircus)、251aa、配列番号3
【0045】
Transcript ID:ENSCHIT00000031557.1
【数3】
【0046】
ウシ葉酸受容体α-ウシ(Bos Taurus)、251aa、配列番号4
【0047】
Transcript ID:FOLR1-201 ENSBTAT00000071439.1
【数4】
【0048】
NCBI BLAST
【0049】
ヒト葉酸受容体-ホモサピエンス、タンパク質配列-257aa、配列番号5
【0050】
Accession:AAB05827
【数5】
【0051】
ラットFolr 1タンパク質、部分-ラット(Rattus norvegicus)、タンパク質配列-203aa、配列番号6
【0052】
ACCESSION AAI57812
【数6】
【0053】
ヤギ葉酸受容体1、部分-ヤギ(Capra hircus)、タンパク質配列-63aa、配列番号7
【0054】
ACCESSION AGA95980
【数7】
【0055】
ヤギFRのタンパク質配列を標的とする抗体としては、配列番号8:mpwkltplll flgwmtsvcn artrtdllnv cmdakhhkae pgpedklhnq ctpwkknacc sarvsqelhk dtsslynftw dhcgkmepac qrhfiqdncl yecspnlgpw iqevnqkwrk erflnvplck edcqswwedc rtshtcksnw hrgwdwtsgs nkcpngttcr tfeayfptpa alceglwshs yklsnysrgs grciqmwfdp algnpneeva rfyasaltae awpqgirpls lclalmlslw lhdを標的とする抗体が挙げられる。
【0056】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又はこれらの組み合わせなどの標的を認識して特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片など)、一本鎖Fv(scFv)変異体、少なくとも2つのインタクトな抗体から生成された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ウシ抗体、ヤギ抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗体が所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれるそれらの重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、免疫グロブリンの5つの主要クラスであるIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかであってもよい。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる公知のサブユニット構造及び三次元構成を有する。抗体は、裸であってもよく、又は毒素、放射性同位元素などの他の分子に結合体化されてもよい。
【0057】
「FRに結合する抗体」という用語は、抗体がFRを標的とする際の濾過剤又は結合剤として有用であるように十分な親和性でFRに結合することができる抗体を指す。無関係な非FRタンパク質への抗FR抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)で測定した場合に、FRへの抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、FRに結合する抗体が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
【0058】
「モノクローナル抗体」とは、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体集団を指す。これは、典型的には異なる抗原決定基に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、インタクト及び全長モノクローナル抗体の両方、並びに抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。更に、「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物を含むがこれらに限定されない任意の数の方法で生成されたそのような抗体を指す。
【0059】
FR結合抗体に結合したプロテアーゼを用いた葉酸受容体の特異的消化。トリプシン又はカルボキシペプチダーゼなどのプロテアーゼをFR特異的抗体に結合させ、それを使用してFRタンパク質を選択的に消化し、それによってFRタンパク質の抗原性を低下させることも可能であり得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「プロテアーゼ」及び「プロテイナーゼ」という用語は、他のタンパク質を分解する能力を有する酵素タンパク質を指す。プロテアーゼは、タンパク質を形成するペプチド又はポリペプチド鎖中のアミノ酸を互いに連結するペプチド結合の加水分解によってタンパク質異化を開始する「タンパク質分解」を行う能力を有する。このタンパク質消化酵素としてのプロテアーゼの活性を「タンパク質分解活性」という。タンパク質分解活性を測定するための多くの公知の手順が存在する(例えば、Kalisz,’’Microbial Proteinases,’’In:Fiechter(ed.),Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology,(1988))。例えば、タンパク質分解活性は、市販の基質を加水分解するそれぞれのプロテアーゼの能力を分析する比較アッセイによって確認することができる。プロテアーゼ又はタンパク質分解活性の分析に有用な例示的な基質としては、ジメチルカゼイン(Sigma C-9801)、ウシコラーゲン(Sigma C-9879)、ウシエラスチン(Sigma E-1625)及びウシケラチン(ICN Biomedical 902111)が挙げられるが、これら限定されない。これらの基質を利用する比色アッセイは、当技術分野で公知である(例えば、その両方が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第99/34011号及び米国特許第6,376,450号)。pNAアッセイ(例えば、Del Mar et al.,Anal.Biochem.99:316-320[1979])はまた、勾配溶出中に収集された画分の活性酵素濃度を決定するのにも使用される。このアッセイは、酵素が可溶性合成基質、スクシニル-アラニン-アラニン-プロリン-フェニルアラニン-p-ニトロアニリド(suc-AAPF-pNA)を加水分解する際にp-ニトロアニリンが放出される速度を測定する。加水分解反応による黄色の生成速度は、分光光度計で410nmで測定され、活性酵素濃度に比例する。更に、280ナノメートル(nm)での吸光度測定を使用して、総タンパク質濃度を決定することができる。活性酵素/総タンパク質比により、酵素純度が得られる。
【0061】
乳中の葉酸受容体に特異的に結合するリガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィー。葉酸などのリガンドは、FRに高親和性(Kd約100pM)で結合し、したがって葉酸をアガロース又はセファロースなどの不活性マトリックスに固定化し、アポ受容体を含有する乳と混合することにより、受容体が葉酸に結合することが可能になり、次いで乳から除去することができる。
【0062】
本明細書で使用される「葉酸」は、葉酸、葉酸類似体、又は別の葉酸受容体結合分子を意味する。使用することができる葉酸の類似体としては、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、並びにテトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、並びにそれらのデアザ及びジデアザ類似体などの葉酸受容体結合プテリジンが挙げられる。「デアザ」及び「ジデアザ」類似体という用語は、天然に存在する葉酸構造において1個又は2個の窒素原子で置換された炭素原子を有する、当技術分野で認識されている類似体を指す。例えば、デアザ類似体としては、1-デアザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、10-デアザ類似体が挙げられる。ジデアザ類似体としては、例えば、1,5-ジデアザ、5,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、5,8-ジデアザ類似体が挙げられる。前述の葉酸類似体は、従来、葉酸受容体に結合するそれらの能力を反映して「葉酸」と呼ばれている。他の葉酸受容体結合類似体としては、アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキサート)、N10-メチル葉酸、2-デアミノ-ヒドロキシ葉酸、1-デアザメトプテリン又は3-デアザメトプテリンなどのデアザ類似体、及び3’,5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキサート)が挙げられる。
【0063】
「高親和性」は、約Kd=10-10Mであってもよい。
【0064】
FRF乳の検証:
【0065】
1.機能的FRについての3H葉酸結合アッセイ。
【0066】
乳試料を放射性葉酸と共に30分間インキュベートし、続いてデキストランコーティング炭を使用して遊離葉酸からタンパク質結合葉酸を分離する。この方法は、結合した葉酸のピコグラムを検出するのに十分な感度を有し、乳中の機能的葉酸受容体の尺度を提供する。
【0067】
2.何らかの非機能性FR抗原が乳中に存在する可能性がある。これは、FR抗原の検出のための逐次ELISAベースのアッセイによって測定される。
【0068】
このアッセイのために、ELISAプレートのセットをFR抗体でコーティングする。1セットを既知量のFR抗原とインキュベートして、標準曲線を生成する。別のセットを様々な量のFRF乳と共にインキュベートする。この最初のインキュベーションは、数時間~一晩であってもよい。両方のセットに、3H葉酸で飽和したFR抗原を添加し、20分間インキュベートする。アッセイの原理は、最初のインキュベーションにおける抗原の濃度が増加するにつれて、プレート中の抗体への3H葉酸の結合が少なくなることに基づいている。FRF乳中の抗原も同じ原理に従い、抗原の非機能性断片が依然としてFRF乳中に存在するかどうかを決定することを可能にする。
【0069】
3.FR抗原を検出するための乳のウエスタンブロット。
【0070】
FRF乳の検証:
【0071】
FRを含まない乳の検証は以下の通りである。
【0072】
1.機能的FRについての3H葉酸結合アッセイ。
【0073】
乳試料を放射性葉酸と共に30分間インキュベートし、続いてデキストランコーティング炭を使用して遊離葉酸からタンパク質結合葉酸を分離する。この方法は、結合した葉酸のピコグラムを検出するのに十分な感度を有し、乳中の機能的葉酸受容体の尺度を提供する。
【0074】
2.一部の非機能性FR抗原が乳中に存在してもよい。これは、FR抗原の検出のための逐次ELISAベースのアッセイによって測定される。
【0075】
このアッセイのために、ELISAプレートのセットをFR抗体でコーティングする。1セットを既知量のFR抗原とインキュベートして、標準曲線を生成する。別のセットを様々な量のFRF乳と共にインキュベートする。この最初のインキュベーションは、約数時間~約24時間であってもよい。両方のセットに、3H葉酸で飽和したFR抗原を添加し、約20分間インキュベートする。アッセイの原理は、最初のインキュベーションにおける抗原の濃度が増加するにつれて、プレート中の抗体への3H葉酸の結合が少なくなることに基づいている。FRF乳中の抗原も同じ原理に従い、抗原の非機能性断片が依然としてFRF乳中に存在するかどうかを決定する。
【0076】
3.FR抗原を検出するための乳のウエスタンブロット。
【0077】
FRに対する抗体を用いてウエスタンブロット分析を行う。これらの実験のために、試料を、20mM DTTを含む又は含まない1×SDS-PAGE試料ローディング緩衝液(Invitrogen)中でインキュベートし、10分間煮沸し、4~12%勾配SDS-PAGEゲル上で電気泳動させる。タンパク質をPVDF膜に転写し、ブロットを上記のようにプローブした。Benchmark(商標)染色済みタンパク質ラダー(NOVEX(登録商標))を使用してゲルを泳動する。FRタンパク質を使用するゲルも、FRに対する標準を確実にするために銀染色によって可視化した。
【0078】
他の実施形態では、FRのレベルは、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光測定、免疫沈降、平衡透析、免疫拡散、電気化学発光(ECL)イムノアッセイ、免疫組織化学、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は他のELISAアッセイによって決定される。
【0079】
別の実施形態では、FRF乳を産生するウシ及びヤギを操作する方法である。乳腺におけるウシ葉酸受容体の発現を特異的にサイレンシングするためにRNAiトリガーを導入する遺伝子工学的方法を使用して、これらの遺伝子改変ウシの子孫を搾乳することによってウシFRF乳製品を得ることができる。この実施形態は、ウシ葉酸受容体を標的とする複数のshRNAを同定すること、複数の乳房特異的shRNA発現構築物を生成すること、形質導入法を使用して複数のウシ線維芽細胞に複数の乳房特異的shRNA発現構築物を挿入すること、線維芽細胞の体細胞移入を使用してウシを生成すること、及び牛から産生された乳が葉酸受容体を枯渇していることを確認することを含むRNAi方法を含む。別の実施形態は、ウシ葉酸受容体を標的とする複数のshRNAを同定すること、複数のshRNA発現構築物を生成すること、CRISPRを使用してウシ線維芽細胞の乳房特異的遺伝子に複数のshRNA発現構築物を挿入すること、線維芽細胞の体細胞移入を使用してウシを生成すること、及び牛から産生された乳が葉酸受容体を枯渇していることを確認することを含むRNAi方法である。別の実施形態は、ウシ葉酸受容体を標的とする複数のshRNAを同定すること、複数のshRNA発現構築物を生成すること、ウシ胚へのCRISPR及び前核注入を使用して複数のshRNA発現構築物を挿入してトランスジェニックウシを生成すること、及びトランスジェニックウシから産生された乳が葉酸受容体を枯渇していることを確認することを含むRNAi方法である。ヒト化方法の別の実施形態は、CRISPRを使用してウシ受容体をノックアウトし、ウシ受容体をヒト葉酸受容体と置き換えること、ウシ線維芽細胞を標的とし、次いで、体細胞核移植又は前核注入を使用して複数のCRISPR試薬の複数のウシ胚へ注入すること、及びウシから産生された乳がヒト葉酸受容体を発現し、抗原性ではないことを検証することを含む。
【0080】
別の実施形態では、葉酸受容体に結合した天然葉酸の除去を補償するために、葉酸の形態(これらには、葉酸、DLフォリン酸、L-フォリン酸又はメチル葉酸が挙げられる)でFRF乳を補う方法である。
【0081】
本技術の別の実施形態では、葉酸受容体を欠く家畜は、胚発生から成体期までの子孫の葉酸代謝及び生存率を維持するための適切な介入を伴う葉酸受容体遺伝子の組換え技術及び/又は選択的不活性化の組み合わせによって生成することができる。
【0082】
一実施形態では、家畜を遺伝子操作することによって葉酸受容体を含まない乳を生成するシステム100が図3に示されており、葉酸受容体を標的とするshRNAの生成110、shRNAのヌクレオフェクション120、限定希釈培養130、陽性単一クローンの同定140、及びウシへの核移植の実施150を含む。ヒト化ウシは、ヒト母乳を反映するように生産されており、ヒトが摂取するために一般に受け入れられている。ウシが記載されているが、マウス、サル、ヒト、家畜、スポーツ動物及びペットなどの他の哺乳動物を使用することができる。インビボで得られた又はインビトロで培養された生物学的実体の組織、細胞及びそれらの子孫も包含される。
【0083】
葉酸受容体を標的とするshRNAを、ウシ(Bos taurus)葉酸受容体1(FOLR1)、及びmRNA NCBI参照配列:NM_001206532.1、GenBank Graphics>NM_001206532.1、ウシ(Bos taurus)葉酸受容体1(FOLR1)、mRNA、配列番号9に対してマッピングする。
【数8】
【0084】
一実施形態では、ウシ線維芽細胞系200におけるノックダウン葉酸受容体を図4に示す。最初のステップは、大規模なshRNAライブラリー210内のshRNAを同定し、次いで、センサーアッセイ210を介してshRNAを検証することであり、これは、葉酸受容体を強力かつ特異的にサイレンシングするshRNAを見つけることである。第3のステップは、ウシ線維芽細胞におけるshRNAノックダウンを確認230することである。第4のステップは、shRNAのコンカテマーベクターをクローニング240することである。一実施形態では、構築物は、乳房特異的プロモータ-shRNA-shRNA-shRNAである。最後のステップは、コンカテマーベクター構築物をウシ線維芽細胞に挿入240することである。
【0085】
予測shRNA210の効力を検証するために、機能的蛍光系レポーターアッセイ222を使用することができる。機能的蛍光系レポーターアッセイ222に必要な材料としては、LPE-shRNA、shRNA標的部位を含むgBlock、GFPベースのレポーターベクター、ERCニワトリ細胞株、Phoenix-E細胞株、ヘルパープラスミドであるVSV-G、Gag-Polヘルパープラスミド(Eco又はAmphoヘルパープラスミド)、トランスフェクション試薬、細胞培養試薬(DMEM、FBS、トリプシン)、細胞培養プレート、蛍光活性化細胞分取器(FACS)チューブが挙げられるが、これらに限定されない。試験するライブラリー中のshRNAのリストを図7に示す。
【0086】
一実施形態では、gBlockは、約750bp長までの二本鎖DNA断片(IDTを介して利用可能)であり、機能的蛍光系レポーターアッセイ222は、各予測shRNAについて約21bpのパッセンジャー鎖を決定すること、目的の遺伝子の完全なmRNA配列を見出し、重複する領域全体を選択する重複する標的部位について、予測されるshRNAのパッセンジャー鎖をマークすること、以下のモチーフCTCGAG(Xho1)、GAATTC(EcoR1)、AATAAA及びATTAAA(ポリAシグナル)についてリンカー配列をチェックすること、リンカーの5’末端にXho1制限部位を、3’末端にEcoR1制限部位を付加し、リンカーの両側に少なくとも6個のランダム塩基を付加して、最終的な「gBlock」を得ることを含む。
【0087】
一実施形態では、gBlockクローニングは、約35ngの消化されたgBlock挿入物(約500bp)+約150ngの消化しCIP処理したベクター(約6448bp)を使用してライゲーションをセットアップすることを含む。一実施形態では、安定なレポーター細胞株の生成は、以下を含む。
【0088】
0日目:トランスフェクションのために10cm培養プレート上に70%コンフルエンシーでPlat-GP細胞を播種する。
【0089】
1日目:10ugの配列が確認されたgBlocks+VSVGを用いて、以前に播種したPlat-GP細胞のトランスフェクションを行う(これは、安定な細胞株を「エコナイーブ」に保つためであり、その結果、エコトロピックパッケージングを使用して産生されたウイルスに後で感染させて、単一コピーの組み込みを生成することができる)。
【0090】
2日目:6ウェルプレートに感染のためのERCニワトリ細胞を播種する。
【0091】
3日目:ウイルスを採取し、6ウェルプレート中のERCに、1ug/mLのdoxを用いて1:1の感染で感染させる(dTomatoレポーターを高度に発現させる必要があるので、感染が高いほど良好である)。
【0092】
3日目~5日目:2~3日インキュベートする。
【0093】
6日目:GFP陽性細胞を調べ、10cmプレート上に拡大する。
【0094】
6日目~14日目:3~4日の選択を継続する。細胞を6ウェルから10cm培養プレートに拡大し、neo+dox選択を継続する。この選択プロセスを更に2回繰り返す(細胞の95%がGFP陽性になるまで)。
【0095】
15日目:10cmプレートあたり3バイアルのレポーター細胞株を凍結する。
【0096】
一実施形態では、LPE-shRNAウイルス産生は、以下を含む。
【0097】
0日目:Phoenix-E細胞を10cm培養プレートに播種する。トランスフェクトされるshRNAの数に対して70%のコンフルエントで十分な細胞を有することを計画する。
【0098】
1日目:10ugのLPE-shRNA+Gag-Polヘルパープラスミドを使用してトランスフェクションを行う。適切な対照shRNAが含まれていることを確認する。
【0099】
2日目:shRNA特異的標的部位を有するERCレポーター細胞株を播種する。
【0100】
3日目:ウイルスを採取し、2つのウイルス希釈(1:8及び1:15)で安定なレポーター細胞株に感染させて、単一コピー(5~20%のmKate陽性細胞)で感染を達成する。細胞を2日間インキュベートする。
【0101】
5日目:Guava装置を使用して感染率(%mKate)を決定する。shRNA感染レポーター細胞のインキュベーションを更に4日間継続する。
【0102】
8日目:LSRII装置を使用してFACSを実施する(黄緑色レーザーが必要になる)。LPE-Ren-713対照に対するGFPのノックダウン率を決定する。
【0103】
一実施形態では、dTomato蛍光決定のためのフローサイトメトリーは、以下の、細胞を含有する10cmプレートに1.5mlのトリプシンを添加することによって細胞をトリプシン処理すること、2分後、細胞を増殖培地に再懸濁すること、細胞を15mlのファルコンチューブに移し、3000gで5分間回転させること、上清を取り除くこと、細胞を5mlの冷PBS+2%FBSで洗浄すること、細胞を3000gで5分間回転させること、上清を取り除き、PBS+2%FBSに再懸濁して所望の濃度の細胞にすること、ノズル/器具の目詰まりを防止するために40μmセルストレーナキャップを通して細胞を流すこと、及び選別するまで細胞を氷上に保つことを含む。
【0104】
トランスジェニックウシを生成するための核移植
【0105】
一実施形態では、トランスジェニックウシ系300を生成するための核移植が図5に示されている。トランスジェニックウシ系300を生成するための核移植は、乳房特異的プロモータ310及び遺伝子編集を使用してノックインを行うことを含む。一実施形態では、ウシ線維芽細胞320に乳房特異的プロモータ310を使用することができる。一実施形態では、トランスジェニックウシ系を生成するための核移植330は、CRISPR遺伝子編集を使用して乳房特異的遺伝子内にノックインすることができる。ウシ340を生成するために一実施形態において使用することができる体細胞核移植技術のための方法は、Kwon DJ,Lee YM,Hwang IS,Park CK,Yang BK,Cheong HT.Microtubule distribution in somatic cell nuclear transfer bovine embryos following control of nuclear remodeling type.J Vet Sci.2010;11(2):93-101に開示されている。別の方法は、DNAが前核に挿入され、ランダムに組み込まれる遺伝子導入であってもよい。乳腺において特異的にクローン350における葉酸受容体発現をサイレンシングすることにより、この抗原を乳から低減又は排除することができた。ウシは、高用量のフォリン酸による補充を必要とする可能性がある。
【0106】
shRNA発現を泌乳乳腺に限定するために、インビトロで使用される構成的プロモータを、マウスホエイ酸性タンパク質(WAP)プロモータで置き換えることができる。
【0107】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、PCT出願シリアル番号国際出願US2016/051992に記載されている誘導性CRISPR/Cas9及びRNAi方法100は、同じ生物系(又は生物若しくは動物モデル)において連続的に及び/又は組み合わせて使用される特異的遺伝子編集イベント(CRISPR/Cas9、ジンクフィンガー、TALENなどを介して)とRNA干渉との新規な組み合わせである。
【0108】
ウシにおける葉酸受容体ノックダウン。
【0109】
一実施形態では、ウシの葉酸受容体をノックダウンするために、Jabed A,Wagner S,McCracken J,Wells DN,Laible G.Targeted microRNA expression in dairy cattle directs production of β-lactoglobulin-free,high-casein milk.Proc Natl Acad Sci U S A.2012;109(42):16811-6を使用することができる。核移植(NT)について以前に検証されたドナー細胞株(ウシ胎児線維芽細胞)をshRNAの発現カセットでトランスフェクトした。2つの増殖細胞クローンを核型分類し、正常な染色体数を有する必要があった。2つのトランスジェニック細胞株の導入遺伝子コピー数は、サザンブロット分析から、一方では約30、他方では200を超えると決定された。
【0110】
細胞株312/3及びクローン胚のレシピエントへの移植は、妊娠をもたらすはずである。妊娠のうちの1つを終了させて胎児を回収し、再生細胞を誘導して固有の遺伝子を保存し、将来の選択肢を提供することができる。残りの妊娠のうち、生きたウシの子牛を産んだのは1頭であった。
【0111】
乳を得て、葉酸受容体発現のmiRNA媒介ノックダウンを評価するために、本発明者らはトランスジェニックウシを泌乳にホルモン誘導した。SDS-ゲル電気泳動及びクーマシーブルー染色による乳試料の分析により、shRNAcalfからの乳試料のいずれも検出可能なレベルの葉酸受容体を含まないことが明らかになった。対照的に、葉酸受容体は、初乳並びに天然及び誘導乳試料を含む全てのWT対照において主要な乳タンパク質として容易に検出可能である。トランスジェニックウシ由来の全ての乳試料が検出可能な葉酸受容体を欠いていたので、ウエスタンブロットによる葉酸受容体レベルのより高感度の分析により、非常に効果的なノックダウンを確認することができる。葉酸受容体レベルを更に定量し、葉酸受容体のノックダウンが乳タンパク質組成に及ぼす可能性がある任意の影響を決定するために、乳試料をHPLCによって全ての主要な乳タンパク質について定量することができる。クーマシーブルー染色及びウエスタン結果と一致して、HPLC分析は、トランスジェニックウシ乳試料中の葉酸受容体抗原を検出せず、葉酸受容体の包括的なノックダウンが確認された。葉酸受容体抗原が存在しないことは、他の乳タンパク質のレベルに対して強力な代償作用を有することができる。天然及び誘導WT試料と比較して、全ての他の主要な乳タンパク質は、トランスジェニック子ウシによって産生された乳、特にカゼインにおいて大幅に増加し得る。
【0112】
コホート拡大及び乳分析
【0113】
一般的に言えば、コホート拡大及び乳分析システム400を図6に示す。
【0114】
ウシコホートのサイズを増加させるためのインビボ受精を使用することができる。乳の分析組成試験は、農場近くの実験室で行われる。
【0115】
動物福祉評価:中国農業大学で生成された全てのトランスジェニック動物は、健康で活発な生活を送っている。トランスジェニック動物と非トランスジェニック動物との間の物理的差異は観察されるべきではないが、いくつかの異常が存在し得る(尾部なし)。
【0116】
FRFウシは乳腺でのみRNAを発現し、体内に蓄積しない。RNA動物の生体系及び健康に影響を及ぼすべきではない。動物の系からの分泌を試験する。
【0117】
以前に生成されたウシからのトランスジェニック乳は、若いウシの健康及び耐病性にプラスの効果をもたらした。
【0118】
実験設計:
【0119】
これらの例の目的は、市販の牛乳から出発して、葉酸受容体α(FRα)を欠く乳を製造することである。この目的のために、タンパク質精製技術を使用して、牛乳の基本組成を変更することなく、またいかなる外来化学物質又は物質も最終生成物に添加することなく、牛乳からFRαタンパク質を選択的に除去する。精漿アプローチは、乳からFRαを選択的に除去するためにアフィニティークロマトグラフィーの原理を使用する。
【0120】
この例は、1)牛乳からFRを精製すること、2)ニュージーランド白ウサギを免疫することにより、乳FRαに対するポリクローナル抗血清を生成すること、3)アフィニティークロマトグラフィーにより、FRαに対する特異的抗体を精製すること、4)不活性固体マトリックスに共有結合したFRα抗体を含有するアフィニティーマトリックスを調製すること、5)FRα抗体アフィニティーマトリックスを使用して、A2乳からFRαを捕捉し、それによって生成物にFRαタンパク質を含ませないようにすることによって達成される。
【0121】
例1.牛乳からのFRαの精製
【0122】
共有結合的に固定化された葉酸を有するアフィニティーマトリックスの調製。
【0123】
最初に、5~10個の炭素リンカー/スペーサーアームが葉酸の末端グルタミン酸残基に結合され、その後、このスペーサーアームの末端が活性化セファロース4Bビーズに結合される。マトリックスを広範囲に洗浄し、リガンドの漏出について試験し、次いで、FRαを乳から捕捉及び精製するために使用する。最終的に免疫目的に使用することができる純粋な均質な生成物を得るために、約2~4回の精製が必要な場合がある。精製されたFRαをSDS-Page分析によって試験して、タンパク質の純度を監視する。
【0124】
約10~20mgのタンパク質が、10匹のウサギの免疫のために必要とされる。
【0125】
例2:ニュージーランド白ウサギを免疫することによる、乳FRαに対するポリクローナル抗血清の産生。
【0126】
ウサギの免疫及び抗血清産生は、商業施設で行うことができる。抗血清の全ての試験及びFRα特異的IgGの精製を以下に示す。
【0127】
4匹のウサギを精製FRα抗原で免疫した。3回のブースター免疫後に試験出血を行った。抗血清による3H葉酸結合FR抗原の直接免疫沈降によって、抗体力価を決定する。
【0128】
生乳(低温殺菌されていない)は、1ml当たり平均で約5~10ugのFRαを含有する。抗血清の各mlは、以前に決定されたように、乳から約10ugのFR抗原に定量的に結合して除去することができる。抗体力価に基づいて、約1mlの抗血清は、1mlの乳中のFRαタンパク質の全てを除去することができる。更なる除去が必要な場合、1mlの乳あたり1mlより多い又は少ない抗血清を使用することができる。
【0129】
概念実証は、これらの予備実験で得られる。このために、ウサギ抗血清からの約100~約200mgの総IgGがプロテインAマトリックスに結合する。このプロテインA-IgGウサギ抗血清マトリックスを約10mlの牛乳とインキュベートし、様々な時点で乳を試験して、乳中のFRを全て除去するのに必要な最小時間を決定する。
【0130】
この例は、FRフリーミルクを含まない乳を得るための戦略が成功するかどうかを示す。
【0131】
例3:アフィニティークロマトグラフィーによるFRαに対する特異的抗体の精製
【0132】
この例では、FRαに対する抗体を精製するために、約500~約1000mgの純粋なFRαが必要である。
【0133】
例4:不活性固体マトリックスに共有結合したFRα抗体を含有するアフィニティーマトリックスの調製
【0134】
FRα抗体は、5~10個の炭素リンカーを介して活性化セファロースマトリックスに共有結合する。
【0135】
例5:FRα抗体親和性マトリックスを使用して生乳からFRαを捕捉し、それによって生成物FRαを含まないようにする
【0136】
FRαが枯渇する乳はマトリックスを通過し、これにより乳中のFRが捕捉される。第1の通過でFRの全てが乳から除去されない場合、マトリックスを通る第2の通過又は第3の通過が必要である可能性がある。目標は、最終的な乳製品中のFRαの検出不能なレベルである。
【0137】
抗体産生
【0138】
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495に記載されているものなどのハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法を使用して、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を上記のように免疫して、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を誘発する。リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫後、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコールを使用して適切な骨髄腫細胞株と融合してハイブリドーマ細胞を形成し、次いで未融合リンパ球及び骨髄腫細胞から選択することができる。次いで、免疫沈降、免疫ブロット又はインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(MA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))によって決定されるような、選択された抗原に対して特異的に指向するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準的な方法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)を用いたインビトロ培養、又は動物における腹水腫瘍としてインビボのいずれかで増殖させることができる。次いで、モノクローナル抗体を、上記のポリクローナル抗体について記載したように、培地又は腹水から精製することができる。
【0139】
或いは、モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号に記載されている組換えDNA法を使用して産生することができる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するRT-PCRなどによって成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から単離され、それらの配列は従来の手順を使用して決定される。次いで、重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを、適切な発現ベクターにクローニングし、これを、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞にトランスフェクトすると、モノクローナル抗体が宿主細胞によって産生される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体又はその断片は、記載の所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリーから単離することができる(McCafferty et al.,1990,Nature,348:552-554、Clackson et al.,1991,Nature,352:624-628、及びMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581-597)。
【0140】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA技術を使用していくつかの異なる方法で更に修飾して、代替抗体を産生することができる。いくつかの実施形態では、例えば、マウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインは、1)例えば、キメラ抗体を産生するための抗体のそれらの領域に、又は2)融合抗体を産生するための非免疫グロブリンポリペプチドに置換することができる。いくつかの実施形態では、定常領域を切断又は除去して、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成する。可変領域の部位特異的又は高密度変異誘発を使用して、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0141】
本発明はまた、任意の動物FRを特異的に認識する二重特異性抗体を包含する。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープを特異的に認識し、結合することができる抗体である。異なるエピトープは、例えば、両方の抗体が葉酸受容体1並びに例えば、1)白血球上のエフェクター分子、例えばT細胞受容体(例えば、CD3)若しくはFc受容体(例えば、CD64、CD32又はCD16)又は2)以下に詳細に記載されるような細胞傷害剤を特異的に認識して結合することができるように、同じ分子内(例えば、同じ葉酸受容体1)又は異なる分子上のいずれかであってもよい。
【0142】
例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合することができ、そのうちの少なくとも1つは本発明のポリペプチドに由来する。或いは、免疫グロブリン分子の抗抗原アームは、特定の抗原を発現する細胞に細胞防御機構を集中させるために、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28又はB7)又はIgGのFc受容体などの白血球上のトリガー分子に結合するアームと組み合わせることができる。二重特異性抗体を使用して、特定の抗原を発現する細胞に細胞傷害剤を誘導することもできる。これらの抗体は、抗原結合アームと、EOTUBE、DPTA、DOTA又はTETAなどの細胞傷害剤又は放射性核種キレート剤に結合するアームとを有する。二重特異性抗体を産生するための技術は、当技術分野において一般的である(Millstein et al.,1983,Nature 305:537-539、Brennan et al.,1985,Science 229:81、Suresh et al,1986,Methods in Enzymol.121:120、Traunecker et al.,1991,EMBO J.10:3655-3659、Shalaby et al.,1992,J.Exp.Med.175:217-225、Kostelny et al.,1992,J.Immunol.148:1547-1553、Gruber et al.,1994,J.Immunol.152:5368、及び米国特許第5,731,168号)。3つ以上の結合価を有する抗体も企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991))。したがって、一定の実施形態では、FRに対する抗体は多重特異性である。
【0143】
【0144】
前述の例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、装置及び/又は方法がどのようにして生成及び評価されるかの完全な開示及び説明を当業者に提供するように記載されており、本発明の純粋に例示的なものであることを意図しており、本発明者らが本発明と見なす範囲を限定することを意図していない。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、同様又は類似の結果を依然として得ることができることを理解すべきである。
【0145】
数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされてきたが、いくらかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃又は周囲温度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0146】
参考文献
【0147】

【0148】
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示したのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
本発明を様々な実施形態に関連して説明してきたが、本発明は更なる変更が可能であることが理解されよう。本出願は、一般に本発明の原理に従って、本発明が関係する技術分野内の既知の慣習的な実施の範囲内で、本開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、又は適合を網羅することを意図している。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
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図7-44】
【配列表】
2023511560000001.app
【国際調査報告】