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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】相乗作用性組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230313BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20230313BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20230313BHJP
   A23L 17/30 20160101ALI20230313BHJP
   A61K 35/618 20150101ALI20230313BHJP
   A61K 35/60 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/12
A23L17/40 C
A23L17/30 Z
A61K35/618
A61K35/60
A61P19/02
A61P29/00
A61P43/00 171
A61K31/202
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544676
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 GB2021050074
(87)【国際公開番号】W WO2021148777
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】2000879.3
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】16/748,580
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522292046
【氏名又は名称】リントベルズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ハウイー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バイル,グレン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B042
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE05
4B018MD10
4B018MD17
4B018MD42
4B018ME14
4B042AC04
4B042AD39
4B042AE01
4B042AE08
4B042AG12
4B042AG62
4B042AH01
4B042AH09
4B042AK04
4B042AK09
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB16
4C087BB29
4C087CA06
4C087CA19
4C087MA02
4C087MA16
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZC61
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA96
4C206ZB11
4C206ZC61
(57)【要約】
本発明は、粉末又は油の形態である5%(重量/重量)のホキ卵及び粉末又は油の形態であるモエギイガイを含む少なくとも2つの異なるω-3脂肪酸源を含む新規な組成物に関する。組成物は、サプリメント及び/又は動物若しくはヒトの食品として/において特に有用である。本発明はさらに、炎症又は炎症に付随し得る関節関連障害の改善における使用など、ヒトの及び獣医学的な状態の維持又は治療にも関連し得る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モエギイガイ(GLM)粉末又は油、及び
少なくとも5%(重量/重量)のホキ卵(HR)粉末又は油、
を含む2つの粉末成分又は2つの油成分の組み合わせを含む組成物。
【請求項2】
各々がω-3脂肪酸を含む少なくとも2つの異なる粉末又は油成分のブレンドを含む組成物であって、前記少なくとも2つの異なる粉末又は油成分のうちの第一は、5%(重量/重量)以上のHR粉末又は油を含み、前記少なくとも2つの異なる粉末又は油成分の前記ブレンドは、合わせて、前記組成物中に少なくとも3.3%の全ω-3脂肪酸を提供する、組成物。
【請求項3】
前記少なくとも2つの異なる粉末又は油成分のうちの第二の成分が、GLM油又は粉末である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記HR粉末又は油が、前記全組成物の5%~95%(重量/重量)の範囲内で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記GLM粉末又は油が、7%~13%(重量/重量)の全脂肪含有量を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記GLM粉末又は油が、2.0%~5.0%(重量/重量)の範囲内の全ω-3脂肪酸含有量を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記HR粉末又は油が、14%~40%(重量/重量)の全脂肪含有量を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記HR粉末又は油が、2%~20%(重量/重量)の全ω-3脂肪酸含有量を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品、ニュートラシューティカルズ、又はサプリメント。
【請求項10】
グルコサミン及び/又はヒアルロン酸から選択される1又は複数の添加剤をさらに含む、請求項9に記載の食品又はサプリメント。
【請求項11】
ヒト又は動物の健康状態の、好ましくは関節の健康状態の治療又は維持に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物、食品、又はサプリメント。
【請求項12】
前記治療又は維持が、前記ヒト又は動物における抗炎症経路の支援を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
対象を治療する方法であって、前記方法は、請求項1に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、前記対象は、ヒト又は動物である、方法。
【請求項14】
前記方法が、前記対象において、炎症を治療する又は炎症を低レベルで維持し、前記対象は、動物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記対象の健康状態を維持する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記対象の関節の健康状態を維持する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
請求項2に記載の組成物を含む、食品、ニュートラシューティカルズ、又はサプリメント。
【請求項18】
グルコサミン又はヒアルロン酸から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項17に記載の食品、ニュートラシューティカルズ、又はサプリメント。
【請求項19】
対象を治療する方法であって、前記方法は、請求項2に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、前記対象は、ヒト又は動物である、方法。
【請求項20】
前記方法が、前記対象において、炎症を治療する又は炎症を低レベルで維持し、前記対象は、動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記対象の関節の健康状態を維持する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともホキ卵(HR)粉末又は油を、好ましくはモエギイガイ(green-lipped mussel:GLM)粉末又は油と組み合わせて含む少なくとも2つの成分を含む、2つの異なるブレンドした海洋由来成分の組み合わせを含む新規な組成物に関する。
【0002】
本発明はさらに、ヒト及び獣医学的用途における、詳細にはサプリメント又はニュートラシューティカルズにおけるこの組成物の使用にも拡張され、それによって健康状態の、特に関節の健康状態の栄養的支援を提供する。
【背景技術】
【0003】
ニュートラシューティカルズ、食品、及び健康補助食品は、ヒト及び動物を含む哺乳動物における関節構造の改善又は支援、及び関節可動性の維持のために用いられることが多い。
【0004】
生物学的炎症経路は、例えば関節可動性を含む関節の健康状態と直接リンクしている。可能性として、炎症収束性脂質メディエーターを含む脂質及び生物活性ペプチドも、役割を有し得るが、異なる経路を介して作用し得る。
【0005】
効果は、必須脂肪酸(EFA)から誘導されることが示されている。生物学的炎症経路と関連付けられているいくつかの酵素は、これらのEFAの存在又は非存在によって影響を受けるものと考えられ、また、EFAの種類にも依存する。
【0006】
オメガ(ω)多価不飽和脂肪酸、特にω-3のレベルが非常に高いことは、身体の自然の抗炎症プロセスを支援する可能性が高いと考えられ、したがって、有用であり得る。特に、これらのEFAは、代謝されて抗炎症性エイコサノイドとなる。ω-3の存在は、それらがそのプロセスにおいて優先的に作用を受けることから、既存の抗炎症経路を補強するものであるが、存在しない場合、アラキドン酸などの他のEFAを含む自然の基質は、代謝して、炎症促進物質を生成する。
【0007】
GLM粉末は、サプリメント組成物中にω-3源を提供する目的で用いられ得るが、ω-3脂肪酸の質及び含有量は、必ずしも信頼性が高いものではなく、ヒト又は動物における関節の健康状態を維持することを意図する製品のために必ずしも充分ではない可能性がある。
【0008】
しかし、関節の健康状態の支援に用いるのに有効な組成物を提供することが、食品若しくは栄養補助食品を例とする長期的な維持のための製品としてであっても、又は短期的な食事的ソリューション(dietary solution)としてであっても、依然として望ましい。特に、これらの用途を満たすのに充分である所望される技術的仕様と相関する高仕様のGLM粉末源を提供可能とすることは、ますます興味深いものとなっている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、したがって、上述した商業的用途に有用である新規な組成物を提供することが継続的に求められていることから生じたものである。
本発明は、モエギイガイ(GLM)粉末又は油成分、及び少なくとも5%(重量/重量)のホキ卵(HR)粉末又は油成分を含む、2つの粉末又は油成分の組み合わせを含む組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、各々がω-3脂肪酸を含む少なくとも2つの異なる粉末又は油成分のブレンドを含む組成物にも関し、少なくとも2つの異なる粉末又は油成分のうちの第一は、5%(重量/重量)以上のHR粉末又は油を含み、少なくとも2つの異なる粉末又は油成分のブレンドは、合わせて、組成物中に少なくとも3.3%(重量/重量)の全ω-3脂肪酸を提供する。好ましくは、少なくとも2つの粉末成分のうちの第二は、GLM粉末又は油である。
【0011】
第一に、本出願者は、前述の用途のための組成物を提供する場合、ω-3脂肪酸源の選択が非常に重要であるという観察結果を得た。市販されている任意のいずれの粉末源中のω-3脂肪酸も、大きく変動する。本出願者による予備研究から、一部のGLM粉末の仕様では、希少であり、市場での入手がそれほど容易ではないより高い仕様の製品と比較して、意図する目的のための技術的基準を満たすのに充分なω-3を得られないことが確認された。
【0012】
しかし、GLMは、低い場合であっても、依然として重要な基本的ω-3脂肪酸源であり、本発明者らは、GLMベースの組成物がそれでもソリューションを提供することになる他の方法をさらに研究した。その際、別の特に選択されたω-3脂肪酸源の最小限の量を、より低い仕様のGLM粉末と組み合わせて含めることで、ω-3含有量が許容されるレベルにまで上昇することが分かった。試験を通して、少なくとも5%のHR粉末を、より低い仕様のGLM粉末とブレンドして用いることで、このソリューションが実現されることが明らかとなった。
【0013】
生体外アッセイ試験を通して、ω-3含有物源の特定の選択又は組み合わせを導入することによって、組成物に、予想外な向上されたレベルの阻害活性又は調節活性を観察することができることも、さらに明らかとなった。そのような活性は、炎症応答経路の支援及び最適な関節の健康状態の維持に強く関連している。HR粉末及びGLM粉末のブレンドの抗炎症活性は、好ましくは、本明細書において以下で述べる方法に従って特定される係数が0.05~0.25であるとして測定される。
【0014】
本出願者は、さらに、供給源が同じままである場合、HR成分及び/又はGLM成分を、油の形態で用いて、同等の技術的効果を有する組成物を得ることが可能であることも実証することができたものであり、それによって、課題に対する本発明の基本的構想に基づいたさらなるソリューションが提供される。
【0015】
粉末成分の場合に行ったような類似のアッセイ時、この特定の二油成分の組み合わせの炎症経路に対する効果は、個々の成分部分の合計から予想されるよりも大きい。
したがって、これら2つの成分の組み合わせは、粉末形態であっても又は油形態であっても、本技術分野で開示されているレベルから予測されるよりも、相対的COX2活性によって測定された場合の炎症レベルの阻害又は調節において良好である。言い換えると、本出願者は、成分の組み合わせが粉末形態又は油形態のいずれから選択された場合でも、抗炎症系に対する支援のより良好なレベルを維持するのに有用である相乗効果が存在することを実証した。
【0016】
本出願者が観察した生体外阻害又は調節活性は、ω-3 EFAレベルの組み合わせのみから予想される単なる相加効果よりも遥かに大きいものと考えられる。したがって、本出願者は、最も予想外である相乗効果を、本発明によって実現可能であるものと判断した。すなわち、ほんの僅かなレベル(de minimus level)でHRを特に導入すること、及び/又はさらにこの粉末又は油成分を、より低い仕様のGLM抽出物と共に特に選択することによって、ω-3 EFA含有量だけに基づいて予想されるよりも高いレベルの競合的酵素活性が維持される。実施形態において、本発明は、したがって、請求項に列挙される及び本明細書で記載される成分を有する組成物を含む食品製品、サプリメント、又はニュートラシューティカルズに関する。
【0017】
そのような組成物は、含有量及び/又は活性に関して要求される技術的基準を満たす又は超えており、したがって、関節の健康状態を支援するという目的のためのGLMベースの製品の一貫した及び改善された効果を可能とする。本発明は、本明細書で述べる組成物を含む食品又はサプリメントの提供に有用である。食品又はサプリメントは、サプリメントをより美味しくするために望ましい1又は複数の有用な添加剤をさらに含んでよく、又は他の有益性を提供してもよい。添加剤は、限定されるものではないが、グルコサミン、ヒアルロン酸、及びコンドロイチン硫酸を含む添加剤の1又は複数を含み得る。
【0018】
本発明のいずれかの態様の好ましい実施形態において、HR粉末又は油は、全組成物質量の5%~95%(重量/重量)の範囲内である。実施形態では、HR粉末又は油成分は、14%~40%(重量/重量)の全脂肪含有量を含むが、重要なことには、2%~20%(重量/重量)の全ω-3脂肪酸含有量を含み得る。
【0019】
GLM含有量に関しては、GLM粉末又は油は、7%~13%(重量/重量)の全脂肪含有量を含む。実施形態において、GLM粉末又は油は、2.0%~7.0%(重量/重量)、理想的には2.0%~5.0%(重量/重量)の範囲内の全ω-3脂肪酸含有量を含むことが想定される。
【0020】
本発明の組成物は、ヒトのためのサプリメント又は獣医学用製品として特に有用であり、炎症の予防、炎症の低レベルでの維持、及び/又は炎症の治療のために用いられ得る。組成物自体、及び/又はその組成物を含む食品若しくはサプリメントは、ヒト又は動物の健康状態の、好ましくは関節の健康状態の治療及び/又は維持に使用するためであり得る。さらに、治療及び/又は維持は、ヒト又は動物における抗炎症経路の支援を含む。
【0021】
本発明はさらに、関節の健康状態を維持するための、それを必要とする動物に本明細書で開示される組成物を投与することを含む方法に拡張される。実施形態では、健康状態の維持は、炎症の予防を含む動物の抗炎症経路を支援することを含む。
【0022】
本発明は、対象を治療する方法に拡張され、方法は、本明細書で開示される組成物を対象に投与することを含み、対象は、ヒト又は動物である。実施形態では、方法は、対象において、炎症を治療する又は炎症を低レベルで維持するものであり、対象は、動物である。実施形態では、方法は、対象の健康状態又は関節の健康状態を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、至適基準仕様のGLMに対する用量応答曲線を示すグラフである。
図2図2は、GLM品質を変動させたサンプルの試験を示すグラフである。
図3図3は、ω-3/COX2比のデータを示すグラフである。
図4図4は、GLM、ヘリトリアワビ、ムラサキイガイ、及びHRを比較する、海洋由来サンプルのスクリーニング試験を示すグラフである。
図5図5は、炎症プロセスに対する予測される効果及び実際の効果を示す、特定の%の組み合わせでの効果を示すグラフである。
図6図6は、3つの異なるサンプル粉末のCOX2の濃度依存的阻害又は調節を示すグラフである。
図7図7は、粉末ブレンド%に対して示された抗炎症活性を、H粉末及びX粉末の予想されるトレンドラインと比較して示すグラフである。
図8図8は、全ω-3脂肪酸レベルと比較したx+Hブレンドの抗炎症活性を、H粉末及びX粉末の予想されるトレンドラインと比較して示すグラフである。
図9図9は、油形態のこれら2つの成分の組み合わせが(様々なブレンドパーセントで)、トレンドラインから予想されるよりもCOX2活性調節に有効であることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
EFAを体内に提供するために、GLMが用いられる。それらは、抗炎症系において優先的に作用を受けることによって抗炎症プロセスを支援し、抗炎症性メディエーターをもたらす結果となる。これらのω-3 EFAが存在しない場合、他のEFA、特にアラキドン酸が基質として用いられ、炎症促進性メディエーターをもたらす結果となる。
【0025】
用量応答は、用いたGLMの量に依存して有効であると思われ、すなわち、濃度が上昇すると共に、炎症プロセスの活性(COX2活性)が減少している。図1を参照されたい。
【0026】
本発明者らは、GLMが、同じ濃度で用いられても、決定的なことには、より低いEFA仕様を有する場合、炎症プロセスに対する効果の低下が見られることを見出した。図2を参照されたい。
【0027】
さらに、本発明者らは、ω-3 EFAと炎症プロセスの活性との間の相関を、すなわち、ω-3 EFAの増加と共に炎症プロセスの活性が低下することを見出した。図3を参照されたい。
【0028】
さらに、ある特定の海洋種が、全EFAレベルが同等であるにもかかわらず、炎症プロセスのレベルを低下させるのにより有効であることも見出され、このことは、生物活性が、試験したすべてとの比較で、特定のEFAと関連していることを示唆している。図4を参照されたい。
【0029】
HRは、ある特定のEFAについてはより高いプロファイルを有すると思われ、一部のEFAについてはGLMと同等である1つの脂肪酸源として識別されている。したがって、HRを、低EFA仕様のGLM及び低濃度のフル仕様GLMに対する置換/補給として用いる可能についてさらに調べた。
【0030】
GLM及びHRの炎症プロセスに対する相対的効果に基づいて、低濃度のGLM/HR添加又は低EFAのGLM/HR添加のいくつかの組み合わせを試験した。フル濃度、フル仕様のGLMから予想される効果を維持する目的で、予想される相加効果を、元のGLM及びHRサンプルの炎症性能に基づいて算出した。図5を参照されたい。
【0031】
実際、本発明者らが見出したのは、組み合わせにおける炎症プロセスに対する効果が、個々の成分部分の合計から予想される効果よりも大きいことである。本発明は、抗炎症系に対してより良好な支援レベルを維持するために用いることができる、明確な相乗効果を示す。
【0032】
本明細書において既に述べたように、EFAは、ヒト又は動物の関節に関連する自然の抗炎症プロセスの支援を補助することを意図するいかなる組成物の成分としても重要であると考えられる。
【0033】
特に、ω-3 EFAは、シクロオキシゲナーゼ(COX)及びリポキシゲナーゼ(LOX)の両方の経路によるアラキドン酸酸化の二重の競合因子として作用するものと思われ、したがって、上記の用途に有用である。
【0034】
EFA及びω-3脂肪酸は、特に、モエギイガイ(GLM)又はグリーンシェルマッセル(green shell mussel)(GSM;ペルナ・カナリクルス(Perna canaliculus))に見出すことができる。既に述べたように、GLM粉末の仕様が様々であること、及び単独では、GLMの多くの既存の粉末源が、充分なω-3脂肪酸含有量の仕様を必ずしも提供しなかったことから、代替物又は追加物を探し出す研究を行った。
【0035】
様々な海洋由来の供給源を、望ましいω-3脂肪酸成分源の候補として再検討した。一般に、海洋由来の高ω-3脂肪酸源は、貝類又は魚類臓器からの油である。
これらの様々なタイプの油を、全ω-3脂肪酸含有量を改善するために、GLMを構成する組成物の一部に対する置換候補としてスクリーニングした。ω-3脂肪酸源自体としては良好であるものの、油をGLM粉末とブレンドして、適用可能な製品へ製剤するのに適する均一な粉末を得ることが困難であることが分かった。
【0036】
しかし、1つのそのようなω-3脂肪酸源は、マクルロヌス・ノバエゼランジアエ(Macruronus novaezelandiae)又は白身魚のホキからの乾燥卵粉末であった。ホキ卵(HR)粉末を試験して、GLM粉末に添加した場合にEFAの含有量、特にω-3脂肪酸の含有量を改善するかどうかを判断した。
【0037】
HR粉末の適切性を、HR粉末の添加前、続いて添加後に、GLM粉末中のω-3脂肪酸のレベルを測定して、組み合わせによってω-3レベルが要求される仕様まで上昇したかどうかを調べることによって判断した。要求される仕様は、商業的に所望される治療結果をもたらすことが公知である、相対的に高いω-3脂肪酸仕様を有するGLM粉末によって得られた。
【0038】
粉末の新規なブレンドが所望される抗炎症活性も呈したことを確認するために(低ω-3含有量GLMを含めたにもかかわらず)、生体外酵素活性を試験し、本出願者らが用いた標準的な望ましい仕様の製品と比較した。
【0039】
抗炎症活性を測定する一般的に用いられる生体外プロセス、すなわち、本明細書で既に考察した炎症プロセスに強く関与している経路であることが知られているCOX2酵素の生体外競合のレベルを特定することによるプロセスを用いた。
【0040】
方法
ニュージーランドモエギイガイ(GLM)粉末及びニュージーランドHR粉末を、商業的供給元から入手し、脂質抽出物を、個々の粉末又は粉末のブレンドから、Bligh and Dyer法を用いて得た。この方法は、それに関する以下の公開された参考文献に記載されている(Bligh and Dyer, A rapid method of total lipid extraction and purification. Canadian Journal of Biochemistry and Physiology 1959, 37: 911-917)。脂質抽出物の脂肪酸成分を、AOAC法963.22を用いて測定した。
【0041】
結果
第一のデータセットは、許容される仕様を、したがって使用に対して適切で望ましいω-3脂肪酸の必要量を有することを本出願者が知っている標準参照供給源のGLM品(X)中のω-3脂肪酸の量を測定し、比較することによって生成した。低い仕様であることが分かっているさらなる供給源のGLM粉末(x)も測定した。
【0042】
GLM x粉末単独は、不充分な結果を呈し、参照粉末GLM(X)よりも著しく低いω-3脂肪酸が低いCOX2活性又は調節と共に測定され、したがって、本明細書で既に述べた商業的に望ましい用途で必要とされる要求仕様よりも低かった。
【0043】
新規な組み合わせを試験して、低仕様品xにω-3が豊富であることが知られているある量の異なる粉末を補給した場合に、ω-3脂肪酸レベルがどのような影響を受けるかを特定した。
【0044】
HR粉末(H)を、全ω-3脂肪酸含有量を高める良好な可能性を有すること、及びGLM粉末と容易にブレンド可能であることに基づいて、様々な供給源から既に選択した。
低仕様GLM粉末が、HR粉末の添加によって要求仕様まで上昇され得るかどうかを明らかにするために、理論的に、少なくとも5%(重量/重量)、好ましくは8%(重量/重量)の特定のHR粉末(BN:HR114)を低仕様GLM粉末(x)に添加することで、全ω-3含有量スコア(製品の全脂肪中の脂肪酸%の測定値)が要求仕様を満たすレベルまで上昇するものと判断した。
【0045】
表1に示すように、測定によって、8%(重量/重量)HR粉末(H)を低仕様GLM粉末(x)とのブレンドに含めることによって、ω-3脂肪酸含有量が3.5%(重量/重量)まで上昇し、標準粉末X(BN32132)で示されるレベルに非常に近づくことが特定された。
【0046】
【表1】
【0047】
生物学的活性及びグラフ分析
異なる品質仕様のGLM(ω-3脂肪酸のレベルが異なる)を、異なる比率でHR粉末と組み合わせた。次に、組み合わせ品の全ω-3脂肪酸を測定し、及びこれらの粉末のCOX阻害若しくは調節スコアを、供給源のGLM粉末(x)及びホキ粉末(H)と比較した。
【0048】
次に、上記例の抗炎症活性を測定して、組み合わせの生物学的影響に対する有望な可能性を、供給源からのω-3脂肪酸の新規な組み合わせに基づく予想される活性と比較して特定した。
【0049】
COX2阻害又は調節を、粉末ブレンド組み合わせの脂質抽出物を市販の哺乳動物COX2酵素と共にインキュベートすることによって特定し、酵素活性を、青色であり611nmで容易に測定可能であるプロスタグランジンG2(PGG2)によるN,N,N,N’-テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TMPD)の共酸化として測定した。
【0050】
粉末ブレンド組み合わせのCOX2阻害若しくは調節活性を、COX2酵素の脂質抽出物濃度依存的阻害若しくは調節から、又はCOX2酵素を50%阻害又は調節するのに要する脂質抽出物の濃度(IC50)の逆数に粉末ブレンド組み合わせから抽出された脂質の総重量を乗ずることによって算出される粉末サンプルの抗炎症活性(AI)スコアによって特定した。
【0051】
図から分かるように、8%(重量/重量)HR粉末(H)をブレンドしてx+H(BN32127)粉末とした低仕様GLM粉末(x)によるCOX2の濃度依存的阻害又は調節は、同等のω-3脂肪酸レベル(表1に示したように)を示し、したがって同等であると想定されるGLM粉末X(BN32132)単独よりも著しく大きいと特定された。
【0052】
むしろ驚くべきことには、具体的に図6に示されるように、x+H(BN32127)によるCOX2の濃度依存的阻害又は調節は、さらに、x+Hよりも著しく高いω-3レベル(表1に示したように)を呈した100%HR粉末H(BN:HR114)よりも大きかった。
【0053】
図7から分かるように、さらに、様々な割合のHブレンド%でのx+Hが呈した抗炎症(AI)活性が(菱形データ点)、GLM粉末Xの活性(最も左側の正方形データ点)及びHR粉末H単独の活性(最も右側のデータ点)を示す直線トレンドラインをプロットした場合に予想される(AI)活性からの予想よりも大きいことも明らかとなった。2つの間のこの直線トレンドラインは、これら2つの粉末の単純な相加効果から予想され得る効果を示すものであることから、これら2つが、組み合わせることで、個々の効果の足し算を遥かに超えて向上された効果を有することを示唆している。
【0054】
様々な粉末ブレンド%でのx+Hの抗炎症(AI)活性(菱形データ点)はまた、H及びX単独での全ω-3脂肪酸レベルから予想される(図3に示したように)よりも大きかったことから、この傾向は、さらに図8でも見られた。
【0055】
大正方形のデータ点は、直線トレンドラインの関係を呈し、2つの粉末を組み合わせることによって実現される単純な相加効果から予想される効果を示している。しかし、図から分かるように、ブレンド粉末は、予想されるAI活性を非常に大きく超えており、このことは、この新規な組み合わせが、単純な累積又は相加効果ではなく、高められた効果、したがって相乗効果を提供するものであることを示している。
【0056】
本発明者らは、さらに、これらの成分の油ベースの組み合わせも試験し、様々なHブレンドパーセントで示された抗炎症活性(円形データ点)がやはり、油成分の活性の足し算から予想されるよりも大きいことを明らかにした。このことから、油ベース成分の組み合わせも、個々の成分と比較して高められた生物活性を発生させるのに有効であることが確認された。
【0057】
以下の表2は、油ベース成分試験の結果を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
図9は、100%GLM油(最も左の正方形)及び100%HR油(最も右の正方形)をそれぞれ単独で用いた場合に予想され得る相対的COX2活性をプロットすることによって、これらの結果(表2に示した)の意味するところをグラフの形態で示す。プロットした2つの正方形データ点間の直線トレンドラインは、これら2つの油の単純な相加効果から予想され得る効果を示す。
【0060】
上記の表2にも見出される様々な組み合わせで観察された実際の活性からの結果のプロットから(円形データ点としてプロット)、油成分の組み合わせも、個々の油成分の相加効果を超えた高められた相乗効果を有することが示唆される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】