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特表2023-511612腎臓疾患の治療のためのテトラヒドロシクロペンタ[B]インドール化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】腎臓疾患の治療のためのテトラヒドロシクロペンタ[B]インドール化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20230313BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230313BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P13/12
A61K31/403
A61P21/00
A61P5/24
A61K45/00
A61K33/30
A61K33/24
A61K31/198
A61K31/59
A61K31/4985
A61K31/592
A61K31/593
A61K9/48
A61K9/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545439
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021051778
(87)【国際公開番号】W WO2021151905
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/966,382
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521234593
【氏名又は名称】エイルゲン ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルス、アントニオ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】フロスト、フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC17
4C084AA19
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC101
4C084ZC102
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC12
4C086BC17
4C086CB09
4C086DA14
4C086DA15
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086HA03
4C086HA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZC10
4C086ZC51
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206JA57
4C206JA58
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA57
4C206NA05
4C206ZA81
4C206ZA94
(57)【要約】
少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物を投与することによって、腎疾患を有する対象において、腎疾患を治療する、又は筋消耗、低筋力、又は低身体機能のうちの少なくとも一つを治療する方法が開示されている。また、少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物を投与することによって、腎疾患を有する対象において、腎代替療法又は腎不全によって誘発された二次性性腺機能低下症の結果としての症状を治療する方法が開示される。本明細書に開示される治療方法はまた、テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物と第二の組成物との併用投与を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎疾患に関連する症状又は状態を、その治療を必要とする対象において治療する方法であって、治療効果量の少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含み、前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物は、式Iを有し、
【化1】
式中、C*原子が、R、S又はR/S構成であってもよく、
は、シアノ、-CH=NOCH、-OCHF、又は-OCFを表し、
は、-COR2a又は-SO2R2bを表し、
2aは、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
2bは、(C~C)アルキル、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
Ra及びRbはそれぞれ独立してH又は(C~C)アルキルであり、
は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾロイイソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基を表し、各々は、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、-CF、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCHCOHからなる群から独立して選択される1又は2の置換基で任意に置換される、方法。
【請求項2】
筋肉消耗、低筋力、低テストステロン、又は低身体機能の少なくとも一つから選択される症状又は状態を有する請求項1に記載の対象を治療する方法であって、治療効果量の少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物が、式Iを有し:
【化2】
式中、C*原子が、R、S又はR/S構成であってもよく、
は、シアノ、-CH=NOCH、-OCHF、又は-OCFを表し、
は、-COR2a又は-SO2R2bを表し、
2aは、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
2bは、(C~C)アルキル、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
Ra及びRbはそれぞれ独立してH又は(C~C)アルキルであり、
は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾロイイソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基を表し、各々は、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、-CF、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCHCOHからなる群から独立して選択される1又は2の置換基で任意に置換される、方法。
【請求項3】
前記対象が、ステージ3、4、又は5の慢性腎臓病を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
腎疾患を有する対象において、腎代替療法又は腎不全によって誘発される、二次性性腺機能低下症の結果としての症状を治療する方法であって、治療効果量の少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含み、前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物が、式Iを有し、
【化3】
式中、C*原子が、R、S又はR/S構成であってもよく、
は、シアノ、-CH=NOCH、-OCHF、又は-OCFを表し、
は、-COR2a又は-SO2R2bを表し、
2aは、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
2bは、(C~C)アルキル、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
Ra及びRbはそれぞれ独立してH又は(C~C)アルキルであり、
は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾロイイソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基を表し、各々は、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、-CF、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCHCOHからなる群から独立して選択される1又は2の置換基で任意に置換される、方法。
【請求項5】
前記症状が、骨量、骨強度、筋肉量、又は筋力の喪失である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
がCN、-CH=NOCH、又は-OCFである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
が、-COR2a又は-SO2R2bであり、式中、R2aは、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、シクロプロピル、又は-N(CHであり、R2bは、(C~C)アルキル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
が-COR2a又は-SO2bであり、R2aが、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピル、又は-N(CHであり、R2bが、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
が-COR2aであり、R2aがエチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピル、又は-N(CHから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
が-SO2bであり、R2bがメチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
が-COR2aであり、R2aがエチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピル、又は-N(CHから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
が-COR2aであり、前記「C*」炭素中心がS構成にある、又はRが-SO2bであり、前記「C*」炭素中心がR構成にある、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
が、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基であり、各々が、メチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCHCHCOHからなる群から独立して選択される一種以上の置換基で任意に置換される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
が、6-フルオロ-ピリジン-2-イル、ピリジン-2-イル、3-ヒドロキシ-ピリジン-2-イル、6-ジフルオロメチル-ピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-3-イル、2-カルボキシメチルアミノ-ピリジン-3-イル、ピリミジン-4-イル、ピリミンジン-2-イル、2-クロロ-ピリミジン-4-イル、チアゾール-4-イル、2-メチル-チアゾール-4-イル、2-クロロ-チアゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、チアゾール-5-イル、チアゾール-5-イル、4-アミノ-チアゾール-5-イル、ピラジン-2-イル、5-メチル-ピラジン-2-イル、3-クロロ-ピラジン-2-イル、ピリダジン-3-イル、5-ブロモ-イソチアゾール-3-イル、イソチアゾール-3-イル、4,5-ジクロロ-イソチアゾール-3-イル、又は[1,2,5]チアジアゾール-3-イルを表す、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
がピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-3-イル、チアゾール-5-イル、又は4-アミノ-チアゾール-5-イルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物が、カルバミン酸、N-[(2S)-7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-4-(2-ピリジニルメチル)シクロペンタ[b]インドール-2-イル]-、1-メチルエチルエステルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物が、式IIの構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【化4】
【請求項18】
末期腎疾患を有する対象において、末期腎疾患を治療する、又は筋消耗、低筋力、又は低身体機能のうちの少なくとも一つを治療する方法であって、治療効果量の式IIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含み、前記化合物が式IIを有する、方法。
【化5】
【請求項19】
末期腎疾患を有する対象において、腎代替療法又は腎不全によって誘発される、二次性性腺機能低下症の結果としての症状を治療する方法であって、治療効果量の式IIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含み、前記化合物が式IIを有する、方法。
【化6】
【請求項20】
式IIの前記化合物が、(2S)構成にある、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が慢性腎臓病(CKD)を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、ステージ5のCKDを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が末期腎疾患(ESRD)を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が腎不全を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が透析を受けている、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記腎代替療法が透析である、請求項4または19に記載の方法。
【請求項27】
前記透析が血液透析又は腹膜透析である、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が男性である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が低テストステロンを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、300ナノグラム/デシリットル(ng/dL)未満のテストステロンレベルを有する、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が女性である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が閉経後である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が50歳以上である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が50歳~80歳である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に治療効果量の第二の化合物を投与することをさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第二の化合物が、前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物に同時に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第二の化合物が、末期腎疾患(ESRD)の患者に典型的に提供される薬剤を含む、請求項35~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第二の化合物が、腎機能を改善するビタミン及びミネラルを含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第二の化合物が、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、又はビタミンB12を含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第二の化合物がセレン又は亜鉛を含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第二の化合物が、抗酸化アミノ酸を含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第二の化合物がL-システイン又はグルタチオンを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第二の化合物が、持続放出カルシフェジオール(ERC)を含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記持続放出カルシフェジオール(ERC)が(3β,5Z,7E)-9,10-セココレスタ-5,7,10(19)-トリエン-3,25-ジオール一水和物を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記持続放出カルシフェジオール(ERC)が以下の構造を含み:
【化7】
制御放出賦形剤とさらに組み合わされる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第二の化合物が、性機能薬剤を含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第二の化合物がタダラフィルを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記第二の化合物が、ビタミンDプロホルモンを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ビタミンDプロホルモンが、25(OH)D3又は25(OH)D2である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第二の化合物がカルシトリオール又はビタミンD類似体である、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
一方の化合物又は両方の化合物が、約0.5mg~約50mgの量で、又はビタミンDプロホルモンの場合には、1日当たり約1~1000μgの量で存在する、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
第一の化合物が、約0.5mg~約50mgで存在する、及び/又は前記第二の化合物が、約1~約1000μgの量で存在する、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
第一の化合物が、約5mgで存在する、及び/又は第二の化合物が、約30μgの量で存在する、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
一方の化合物又は両方の化合物が、約5mgの量で存在する、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
一方の化合物又は両方の化合物が、1日1回投与される、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与が、透析治療後に行われる、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
一方の化合物又は両方の化合物が、単一剤形である、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
各化合物が、単一剤形であり、同時投与される、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
両方の化合物が、単一剤形であり、単一剤形で投与される、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記単一剤形が、調節放出用量である、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記調節放出用量が、第二の化合物の持続放出コア及び前記テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物の即時放出コーティングを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
一方の化合物又は両方の化合物が、経口投与される、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
一方の化合物又は両方の化合物が、ゼラチンカプセルで投与される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記治療が筋肉の消耗を改善する、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記治療が、身体強度又は身体機能のいずれか一つを改善する、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記治療が、サルコペニア又は虚弱のいずれか一つを減少させる、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記投与が、除脂肪体重(LBM)での治療開始前のベースラインと比較して、変化をもたらす、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
LBMの前記変化が、12週間又は16週間の治療後に起こる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記変化がLBMの増加である、請求項67~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
LBMの前記増加が少なくとも1kgである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記投与が、身体機能、筋仕事率、又は筋力のいずれか一つにおける治療開始前のベースラインと比較して、変化をもたらす、請求項1~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記投与が、体力、身体機能、脂肪量、骨ミネラル含量、骨含量、骨バイオマーカー、疲労、QOLパラメータ、性的機能、安全性、又は薬物動態のいずれか一つにおいて、治療開始前のベースラインと比較して、変化をもたらす、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記QOLパラメータが、エネルギーレベル、気分、又は性的機能のいずれか一つを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記変化が、16週間の投与の後に測定される、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
式I又は式IIの化合物及び持続放出剤形のカルシフェジオール、及び固定単位併用経口剤形における許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項76】
前記固定単位併用経口剤形がカプセル又は錠剤である、請求項75に記載の医薬組成物。
【請求項77】
式IIの前記化合物が、カルバミン酸、N-[(2S)-7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-4-(2-ピリジニルメチル)シクロペンタ[b]インドール-2-イル]-、1-メチルエチルエステルである、請求項75又は76のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物を投与することによって、腎疾患を有する対象において、腎疾患を治療する、又は筋消耗、低筋力、又は低身体機能のうちの少なくとも一つを治療する方法が開示されている。また、少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物を投与することによって、腎疾患を有する対象において、腎代替療法又は腎不全によって誘発された二次性性腺機能低下症の結果としての症状を治療する方法が開示される。本明細書に開示される治療方法はまた、テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物の第二の組成物との併用投与も含む。
【背景技術】
【0002】
米国だけでも約75万人が末期腎疾患(ESRD)の治療を受けており、約500,000人が透析依存性である(National Kidney Foundation,NIH,CDC,2019年10月に入手)。ESRDの有病率は、男性と女性でわずかに高い(CDC、2019)。糖尿病と肥満の発現率の増加、及び人種分布の変化により、ESRD患者数は2030年には約1,250,000人まで増加すると推定される(McCullough,Keith P.,et al."Projecting ESRD incidence and prevalence in the United States through 2030."Journal of the American Society of Nephrology 30.1(2019):127-135)。現在世界中で推定されるESRDは200万人で、年間5~7%の割合で増加し(Centers for Disease Control and Prevention,"Chronic Kidney Disease in the United States,2019、https://www.cdc.gov/kidneydisease/publications-resources/2019-national-facts.html、10/2019に入手)、この数字は、医療へのアクセスがないため、低経済国において過小評価されている可能性が高い。
【0003】
ESRDの重要な多因子性成分である虚弱は、低ホメオスタット組み込み予備の状態として定義され、年齢を重ねること及び慢性疾患による劇的な突然の健康変化に対する高い脆弱性をもたらす。ESRDは、特に80歳以上の患者の50%超(66.4~78.8%)及び女性において、虚弱の増加と関連している(Abdel-Rahman,Emaad,"Association Between CKD and Frailty and Prevention of Functional Losses."Geriatric Nephrology Curriculum(2009)、Drost,Diederik,et al."High prevalence of frailty in end-stage renal disease."International urology and nephrology 48.8(2016):1357-1362)。血液透析を受けている虚弱な患者は、非虚弱な患者よりも死亡(2.6倍)及び入院(1.4倍)のリスクが高い(McAdams‐DeMarco,Mara A.,et al."Frailty as a novel predictor of mortality and hospitalization in individuals of all ages undergoing hemodialysis."Journal of the American Geriatrics Society 61.6(2013):896-901)。ESRDの虚弱には、筋力低下及び急性又は慢性の筋肉喪失と定義されるサルコペニアが含まれる(Cruz-Jentoft,Alfonso J.,et al."Sarcopenia:revised European consensus on definition and diagnosis."Age and ageing 48.1(2018):16-31、Vellas,Bruno,et al."Implications of ICD-10 for sarcopenia clinical practice and clinical trials:report by the International Conference on Frailty and Sarcopenia Research Task Force."The Journal of frailty & aging 7.1(2018):2-9;Abdel-Rahman 2009 ibid.)。ESRD患者におけるサルコペニアは、最大63%の割合で多くの問題である(Bae,Eun Hui."Is sarcopenia a real risk factor for mortality in patients undergoing hemodialysis?"The Korean journal of internal medicine 34.3(2019):507)。サルコペニアは、身体障害、生死の質の悪さに厳しく相関し(Santilli,Valter,et al."Clinical definition of sarcopenia."Clinical cases in mineral and bone metabolism 11.3(2014):177)、転倒及び骨折の可能性の増加に相関する(Cruz-Jentoft et al.,2019)。サルコペニアの発現は、高齢の集団に専ら存在しているわけではない条件に関連があり得る(Cruz-Jentoft et al.,2019;Santilli et al.,2014)。例えば、非ESRD患者の最大32.8%において、入院/介護施設の居住だけで急性サルコペニアを発症する(Welch,Carly,et al."Acute sarcopenia secondary to hospitalisation-an emerging condition affecting older adults."Aging and disease 9.1(2018):151)。
【0004】
アンドロゲン欠損症は、サルコペニア、虚弱、及び死亡の別の一般的な原因である。アンドロゲンは、筋肥大の誘導を介してヒト骨格筋力に直接影響を与える(Herbst,Karen L.,and Shalender Bhasin."Testosterone action on skeletal muscle."Current Opinion in Clinical Nutrition & Metabolic Care 7.3(2004):271-277)。一般集団の男性の合計6~12%が低テストステロンに罹患し、最大77%のESRD患者が、テストステロンレベルの減少を罹患している(≦420 ng/dL [14 nmol/L])(Snyder,Grace,and Daniel A.Shoskes."Hypogonadism and testosterone replacement therapy in end-stage renal disease(ESRD) and transplant patients."Translational andrology and urology 5.6(2016):885)。一般集団における総テストステロンの2.18標準偏差(SD)の減少は、総死亡率の35%のリスクの増加と関連している(Araujo,Andre B.,et al."Endogenous testosterone and mortality in men:a systematic review and meta-analysis."The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 96.10(2011):3007-3019;Garibotto,Giacomo,Daniela Picciotto,and Daniela Verzola."Testosterone deficiency,frailty and muscle wasting in CKD:a converging paradigm?"(2018):723-726)。最近、低レベルの血清テストステロン(<260-270ng/dL[<9nmol/L])は、血液透析の男性患者における感染関連入院及び総死亡率と関連していることが示されている(Nakashima,Akio,et al."Associations between low serum testosterone and all-cause mortality and infection-related hospitalization in male hemodialysis patients:a prospective cohort study."Kidney international reports 2.6(2017):1160-1168)。最後に、50%低い遊離テストステロン濃度は、ESRD患者の握力と歩行速度の低下、及び12ヵ月時点での筋肉量の低下から推測されるサルコペニアの発症によって測定されタバイ、12ヵ月以内に虚弱になる可能性が高くなることと関連していた(Chiang,Janet M.,et al."Low testosterone is associated with frailty,muscle wasting and physical dysfunction among men receiving hemodialysis:a longitudinal analysis."Nephrology Dialysis Transplantation 34.5(2018):802-810)。
【0005】
腎不全に関連する性腺機能低下症の有病率は上昇しており、早期の心血管疾患及び貧血を含む顕著な罹患率と関連している(Thirumavalavan et al.,Indian J Urol 2015;31(2):89-93)。性腺機能低下症に関連する他の病態には、肥満、骨粗しょう症、HIV、及びCOPDが含まれる。腎不全を有する患者は、高血圧、心血管疾患、肥満などの併存疾患もしばしば存在する。14nmol/Lを超える正常なテストステロン値は、約23%のESRD患者にしか見られない。10nmol/L未満(300ng/dL)の総テストステロンレベルが、低テストステロン、すなわちテストステロン欠損症のカットオフレベルとしてしばしば使用される。テストステロンの不足は通常、10~14nmol/Lの間で定義される。
【0006】
透析中の患者もまた、テストステロンレベルのさらなる低下を患う可能性があり、この患者集団は、腎不全及び透析に関連する罹患率に対して特に脆弱である。ESRD患者に一般的に処方される一部の薬剤は、性ホルモン合成を直接阻害する。これらの薬剤には、アンドロゲン受容体に競合するスピロノラクトン及びシメチジンが含まれる一方で、17-アルファヒドロキシラーゼ及びテストステロン合成を減少させるC17-C20リアーゼ活性も阻害する。グルココルチコイド及び免疫抑制剤も、テストステロン合成を減少させる。二次性性腺機能低下症は、例えば、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、及びLH及びFSHシグナル伝達を阻害するオピエートなどの様々な薬剤によっても誘発されうる。(Schmidt et al.Sexual hormone abnormalities in male patients with renal failure.Nephrol Dial Transplant.2002;17:368-71)。
【0007】
CKD患者は、CKD段階がステージ1からステージ5に進むにつれ、総テストステロンと遊離テストステロンのレベルの低下も示す(Yilmaz et al.,2011)。Yilmaz試験では、ステージ1の患者の17%が、合計テストステロン値と遊離テストステロン値が低い又はより低いレベルを有し、ステージ5の患者の57%が、同様の低い又はより低いレベルを有していた。
【0008】
男性の腎不全患者における性腺機能低下症は、様々なテストステロン補充の選択肢で管理されており、その全てが、このホルモンの投与に関連するリスクを有する。筋肉内注射による最大投与量以上のピークは、心血管疾患を有するESRD患者の重篤なリスクである赤血球増加症につながる可能性がある。ペレットにおけるテストステロンの皮下移植は、ペレットの押出し、軽度の出血、及び感染又は線維症などの他の状態をもたらす可能性がある。
【0009】
テストステロン補充療法自体も、体重増加、浮腫、女性化乳房、及び/又は多血症などの様々な副作用を引き起こす可能性がある。
【0010】
したがって、本発明は、除脂肪筋肉量の改善を含むテストステロン補充療法の肯定的な特性を有する選択的アンドロゲン受容体調節因子(SARM)を提供することによって、特定の脆弱なESRD患者集団において深刻なアンメットメディカルニーズを満たすと同時に、このような療法に関連する否定的な症状、例えば前立腺サイズの増加を回避すると考えられる。
【0011】
要約すると、虚弱とサルコペニアは両方とも、身体機能の低下、筋肉量の減少、筋力の低下を含む共通の要因を共有しており、ESRD患者集団における死亡、入院、及びQOLの低下の重要なマーカーである。
【0012】
腎臓透析患者は、非透析患者と比較して死亡率を増加させるマーカーである筋消耗につながる、タンパク質異化の加速を経験する(Chen,Chun-Ting,et al."Muscle wasteting in heodyophoid phatients:new therapeutical strategies for an old problem."The Scientific World Journal 2013(2013))。最近のエビデンスによると、筋力(すなわち、機能)の評価は、筋肉量よりも転帰及び併存症の予測因子として優れている(Stenvinkel,Peter,et al."Muscle wasting in end-stage renal disease promulgates premature death:established,emerging and potential novel treatment strategies."Nephrology Dialysis Transplantation 31.7(2015):1070-1077)。サルコペニアの診断に関する現在の国際基準には、歩行速度、6分間歩行試験(6-MWT)、及び握力による、除脂肪量及び可動性/能力の測定が含まれる(Rooks,Daniel,and Ronenn Roubenoff."Development of Pharmacotherapies for the Treatment of Sarcopenia."The Journal of Frailty & Aging(2019):1-11)。Belgian Society of Gerontology and Geriatricsは、最近、テストステロンの補充に関する推奨を発表した。低血清テストステロンレベル(<200~300ng/dL)及び臨床的筋力低下を有する65歳以上のサルコペニアを有する男性患者において、筋肉量及び筋力を改善するために、可能なテストステロン介入を推奨している。テストステロン療法のためのヘマトクリット、脂質プロファイル、及び前立腺特異的抗原(PSA)の副作用標的モニタリングは、このガイダンスに含まれる(De Spiegeleer,Anton,et al."Pharmacological interventions to improve muscle mass,muscle strength and physical performance in older people:an umbrella review of systematic reviews and meta-analyses."Drugs & aging 35.8(2018):719-734)。筋肉量と筋力に対するテストステロン補充の最終的な有効性は、慢性腎臓病(CKD)及び透析患者集団においてまだ実証されていない(Snyder and Shoskes,2016)。
【0013】
健康な女性では、最も顕著なテストステロンの減少が21~40歳で見られ、40歳までに50%(約20ng/dL)の減少が認められる(Zumoff,Barnett,et al."Twenty-four-hour mean plasma testosterone concentration declines with age in normal premenopausal women."The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 80.4(1995):1429-1430)。高齢女性における身体的虚弱は、男性よりも2倍多い(Ruan,Qingwei,et al."Sexual dimorphism of frailty and cognitive impairment:Potential underlying mechanisms."Molecular medicine reports 16.3(2017):3023-3033)。Islamとその共同著者による8件の臨床試験(N=500)の最近の統合データ解析では、筋力、体組成及び骨パラメータに対するテストステロンの効果は示されなかった。さらに、その報告のデータは、11件の試験(N=3000~4000)において、プラセボと比較して、テストステロン投与群において、にきび及び毛髪の成長の発生の増加を示した。テストステロン治療による重篤な有害事象又は心臓事象の頻度は高くなかった(Islam,Rakibul M.,et al."Safety and efficacy of testosterone for women:a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trial data."The Lancet Diabetes & Endocrinology 7.10(2019):754-766)。しかしながら、テストステロン補充療法は、CKD及びESRDの進行を遅らせることが示唆されている(Goel et al."Effects of Online Educational Interventions in Hyperkalemia Nephrologist.Spring Clinical Meetings(Abstract),2017)。したがって、選択的アンドロゲン受容体調節因子(SARM)を含む、より多くの組織特異的因子は、女性患者において、ステロイド性アンドロゲンに付随する有害作用を男性化することなく、ESRDに関連する症状を緩和し得る可能性がある。
【0014】
選択的アンドロゲン受容体調節因子(SARM)は、前立腺に対する拮抗効果及び体組成、筋肉及び骨に対する同化効果を有する組織特異的薬剤として作用し、サルコペニアに罹患する虚弱なESRD患者の管理に極めて重要である。SARMが筋肉量と筋力を改善することは、大量のデータで一致している。最後に、SARMSは、テストステロンの副作用の可能性がなく、その特異性に起因して同化的により効果的である(Bhasin,Shalender,et al."Drug insight:testosterone and selective androgen receptor modulators as anabolic therapies for chronic illness and aging."Nature Reviews Endocrinology 2.3(2006):146)。SARMの組織選択性に関する提案のメカニズムには、ステロイド5α-レダクターゼ酵素(SRD5A1及びSRD5A2)の基質としての役目を果たすことができないこと、テストステロンに対して、SARM分子との結合後に、ARによって取得された立体構造の差、及び組織特異的共調節因子の固有のレパートリーの動員が含まれ、結果として組織特異的細胞内シグナル伝達カスケード及び遺伝子転写の活性化をもたらす(Narayanan,Ramesh,et al."Selective androgen receptor modulators in preclinical and clinical development."Nuclear receptor signaling 6.1(2008):nrs-06010)。インビトロで以前に実証されたヒトアンドロゲン受容体(hAR)に対する組織選択性を有する経口SARMが本明細書に開示されている。本明細書に開示されるSARMは、ESRD患者の筋肉消耗及び代謝異常の症状を改善し、潜在的に予防する。
【0015】
式I又は式IIの化合物などのSARMSは、経口的にバイオアベイラビリティがあり、組織選択的であるのに対し、テストステロン及び他の同化ステロイドはまた、経口バイオアベイラビリティが限定的であり、皮膚反応及び血清中テストステロン濃度の変動を潜在的に引き起こす経皮的及び筋肉内製剤でのみ利用可能である。SARMSは、既知の関連リスクなしに、同化薬の有益な効果を示す可能性がある(Mohler ML,Bohl CE,Jones A,et al.Nonsteroidal selective androgen receptor modulators(SARMs):Dissociating the anabolic and androgenic activities of the androgen receptor for therapeutic benefit.J Med Chem 2009,52(12):3597-3617)。
【0016】
米国特許第7,968,587号明細書に開示されている化合物は、アンドロゲン療法で一般的に治療される障害の治療に有用である。これらの障害には、性腺機能低下症、結合量又は密度の減少、骨粗しょう症、骨減少症、筋肉量の減少、筋力及び機能の低下、サルコペニア、加齢性機能低下、少年の思春期遅発、貧血、男性又は女性の性的機能障害、勃起不全、性欲減少、うつ病、及び嗜眠が含まれる。化合物は、アンドロゲン受容体をアゴナイズし、それに選択的に結合する強力なアンドロゲン受容体(AR)リガンド(SARM)として記載される。しかしながら、この特許は、末期腎疾患(ESRD)又は慢性腎臓疾患(CKD)を治療するためのこれらの化合物の使用を開示していない。さらに、この化合物は、低用量では前立腺において強力な拮抗薬であり、非常に高用量では前立腺におけるアゴニスト活性を欠くという開示はない。WO2016040234は、アンドロゲン欠乏療法の随伴症状を治療するために、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル(TT701)の使用を開示している。データは、提供される用量で、TT701を用いた治療を示したラット及びイヌを含む様々な動物から、1~12カ月間にわたって、ラット及びイヌにおいて前立腺サイズが減少し、これは、化合物が経時的に前立腺過形成のアンドロゲンリスクを引き起こさないことを示した。イヌにおけるTT701の6か月及び12か月の治療は、前立腺重量の60%~80%の減少及び萎縮の存在をもたらした。このデータのみ、又は開示される他の安全性又は臨床データは、アンドロゲン欠乏症状の治療を除いて、ヒトにおける任意の適応症の治療に不陽性ではない。そこに示されるデータはまた、任意の時点で、又は健康なボランティアにおいてTT701を試験した任意の用量で、プラセボと比較して、前立腺特異的抗原(PSA)レベルにおいてベースラインからの有意な変化がないことも開示した。本発明は、TT701を含む式Iの化合物、及び任意選択的に、25ヒドロキシビタミンD(D2又はD3)などのビタミンDプロホルモン又はその放出制御製剤、又は他のビタミンD活性ホルモン若しくはその類似体との組み合わせが、治療を必要とする患者におけるESRD及び/又はCKDの徴候及び症状の治療に有用であるという発見に広く関する。用語「患者」は、ヒト及び動物を含む。
【0017】
当技術分野では、ESRDの苦痛の症状を効果的に治療し、体組成の変化を改善することができるSARMの必要性は、サルコペニアを有する虚弱なESRD患者について革新的な臨床的に有益な治療選択肢となる。ESRD率は年々増加しており、この脆弱な集団の身体機能とQOLを改善する適切な支持療法の開発が非常に必要になっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
一実施形態では、本発明は、治療を必要とする対象において、腎疾患に関連する症状又は病態を治療する方法に関し、治療効果量の少なくとも一種のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含み、テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物は、式Iを有し、
【0019】
【化1】
【0020】
式中、C*原子が、R、S又はR/S構成であってもよく、
R1は、シアノ、-CH=NOCH3、-OCHF2、又は-OCF3を表し、
R2は、-COR2a又は-SO2R2bを表し、
R2aは、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルコキシ、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
R2bは、(C1~C4)アルキル、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
Ra及びRbはそれぞれ独立してH又は(C1~C4)アルキルであり、
R3は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾロイイソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基を表し、各々は、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF2、-CF3、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCH2CO2Hからなる群から独立して選択される1又は2の置換基で任意に置換される。一実施形態では、治療される対象は、腎代替療法又は腎疾患を有する対象における腎不全によって誘発されるステージ3、4又は5の慢性腎臓病又は二次性性腺機能低下症を有する。一実施形態では、テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物は、カルバミン酸、N-[(2S)-7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-4-(2-ピリジニルメチル)シクロペンタ[b]インドール-2-イル]-、1-メチルエチルエステルである、又は式IIの構造を有する。
【0021】
【化2】
【0022】
一実施形態では、本発明は、(i)末期腎疾患を有する対象において、末期腎疾患を治療する方法、又は筋消耗、低筋力、又は低身体機能のうちの少なくとも一つを治療する方法、又は(ii)末期腎疾患を有する対象における、腎代替療法または腎不全によって誘発される二次性腺機能低下症の結果としての症状に関し、前述の対象に、治療効果量の式IIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、化合物は、式IIを有する。
【0023】
【化3】
【0024】
一実施形態では、治療される対象は、慢性腎臓病(「CKD」)、ステージ5のCKD、末期腎疾患(「ESRD」)を有し、及び/又は透析を受けている。
【0025】
一実施形態では、本発明は、前述の治療方法に関し、治療効果量の第二の組成物(第二の化合物)を対象に投与することをさらに含む。一実施形態では、投与される第二の化合物は、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、又はビタミンDプロホルモンである。一実施形態では、投与される第二の化合物は、徐放性カルシフェジオール(ERC)である。一実施形態では、ERCは、(3β,5Z,7E)-9,10-セココレスタ-5,7,10(19)-トリエン-3,25-ジオール一水和物である。第一の実施形態は、投与される第二の化合物は、カルシトリオール又はビタミンD類似体である。
【0026】
一実施形態では、本発明は、式I又は式IIの化合物及び持続放出剤形のカルシフェジオール、固定単位配合経口剤形における許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に関する。一実施形態では、式IIは、カルバミン酸、N-[(2S)-7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-4-(2-ピリジニルメチル)シクロペンタ[b]インドール-2-イル]-、1-メチルエチルである。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明の例及び図から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、本発明の趣旨及び範囲にある様々な変更及び修正がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるため、本発明の好ましい実施形態を示しながら、説明のために提供されているにすぎないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】式IIの化合物の毎日の経口投与が、脊椎骨ミネラル含量(BMC)、断面積、及び骨ミネラル密度(BMD)の用量依存性の増加をもたらした結果を示す図である。
図2】遅延ラットORXモデルにおける、肛門挙筋W/BW(mg/g)の一方向分析の結果を示す図である。
図3】ORXラットにおける式II治療の化合物であって、最小の累積SV/前立腺リスクを示した化合物の結果を示す図である。
図4】前立腺重量に対するエナント酸テストステロン(TE)及び式IIの化合物の効果を示す図である。
図5】精嚢重量に対するエナント酸テストステロン(TE)及び式IIの化合物の効果を示す図である。
図6】健康なボランティアにおける式IIの第I相PSA結果の化合物の結果を示す(ug/L)図である。
図7】健康なボランティアにおける、治療及び通院日による、ベースラインからのPSA平均変化を示す図である。試験GPEC(ナノグラム/mL)。
図8】OOPK-88004(TT701)単独又はタダラフィル(5mg及び5mg)との組み合わせを用いた治療後に、勃起不全の症状を有し、タダラフィルが失敗した患者におけるPSAレベル(ng/ml)の変化を示す図である。図8はまた、タダラフィル単独に関するデータを示す。
図9】OOPK-88004(TT701)単独又はタダラフィル(5mg及び5mg)との組み合わせを用いた治療後に、勃起不全の症状を有し、タダラフィルが失敗した患者におけるPSAレベル(ng/ml)の変化を示す図である。
図10】OOPK-88004(TT701)単独投与、又はタダラフィル(5mg単独又は5mg/5mgの組み合わせ)との組み合わせでタダラフィル治療に失敗した、勃起不全の症状を有する患者におけるPSAレベルの変化を示す図であり、PSA水平スケールが拡大されている。この図は、OPK-88004を用いた処置で、約2.0ngmlのPSAレベルの減少を示す。
図11】式IIの化合物が、12週間でTT701を有するヘマトクリットに変化をもたらさないことを示す図である。
図12】ベースラインから12週目までのLBM平均変化を示す図である:GPEC試験。
図13】ベースラインから12週目までの筋仕事率(階段昇り)の平均変化を示す図である:GPEC試験。
図14】ベースラインから12週目までの脂肪量の平均変化を示す図である:GPEC試験。
図15】実施例15に概説した試験デザインを示す図である。
図16】12週間の治療後に、タダラフィルを単独で(5mg及び10mg)投与されているか、又はタダラフィル(5mg)と組み合わせてOPK-88004(TT701)(1mg又は5mg)投与されている患者におけるPSAレベルの変化を示す図である。
図17】14日間の1日1回投与に対するOPK-88004の濃度プロファイルのシミュレーションを示す図である。
図18】GPBC試験とGPEC試験との間のシミュレートされたPK特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、治療有効量の少なくとも一種の式Iの化合物を、その治療を必要とする対象に投与することによって、CKD及びESRDを含む腎臓病を治療する方法を包含する。また、本発明は、式Iの少なくとも一種の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、並びに薬学的に許容可能な賦形剤及びその剤形を含む医薬組成物を投与することによって、腎疾患を治療することを包含する。式Iの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,968,587号明細書、又は参照により本明細書に組み込まれるWO2016/040234A1(PCTUS2015/048801)に記載される方法によって調製されてもよい。
【0030】
発明者らは、式Iの化合物、及び特に式IIの化合物(以下に記載され、LY2452473、TT701、OPK-88004又は(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インコール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル)が、細胞ベースのアッセイにおいてヒトアンドロゲン受容体(hAR)の強力かつ選択的な調節因子であることを発見した。
【0031】
式I及び式IIのSARM化合物は、ESRD患者における筋肉消耗及び代謝異常の症状を改善し、潜在的に予防することができる。インビトロ及び動物データは、式I及び式IIのSARM化合物が、前立腺にテストステロンに対する潜在的な拮抗薬としての役割を果たし、類似の用量で、筋肉及び骨に同化活性をもたらすことを支持する。去勢されたげっ歯類モデルにおいて、式I及び式IIのSARM化合物は、筋肉に対する同化並びに骨量及び生体力学的強度に対する骨同化作用を示した。複数回用量試験では、式IIのSARM化合物に28日間曝露された健康な対象は、LBM及びふくらはぎ領域の臨床的に及び統計的に有意な増加を示した。これは、骨同化増加と一致する骨生化学的バイオマーカーの変化を伴っていた(データは示さず)。EDを有する男性における第II相治験において、式IIのSARM化合物は、12週間の治療後に下肢の筋力及び筋力、LBM及び脂肪量を含む体組成パラメータの改善を示した。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「(C~C)アルキル」は、1~4個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖、一価の飽和脂肪族鎖を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語(C~C)アルコキシは、上述のように直鎖又は分岐アルキル鎖を有する酸素原子を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、別段の記載がない限り、「ハロ」、「ハロゲン化物」、又は「ハロ」という用語は、塩素、臭素、ヨウ素、又はフッ素を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、又はヒツジ若しくは他の哺乳動物などの哺乳動物を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」又は「治療」は、疾患又は状態の根底にある徴候、原因又は症状を軽減及び治療するために、少なくとも一種の薬剤又はその組み合わせを投与することを意味する。この用語には、疾患進行を禁止、遅延、停止、又はその他の方法で妨害する任意の形態が含まれる。治療するのが好ましい哺乳動物はヒトであり、治療される適応は、末期腎疾患(例えば、透析中又は慢性腎臓病ステージ5の患者)を治療するか、又は腎疾患を有する対象において筋消耗、低筋力、又は低身体機能のうちの少なくとも一つを治療することである。好ましい患者集団は、50歳以上の成人である。透析前、又はステージ3若しくは4のCKD又はESRDを有する患者は、式I若しくはIIの化合物、又は25(OH)D3若しくは25(OH)D2などのビタミンDプロホルモンの持続放出製剤、又はカルシトリオール若しくはビタミンD類似体などの他の療法とのこの化合物の組み合わせを用いた治療も受けてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、患者への投与時に、式I若しくは一般式IIの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の量若しくは用量を指し、診断下又は治療下の患者において望ましい効果を提供する。患者の有効量を決定する際に、患者のサイズ、年齢、及び全身の健康、特定の疾患又は障害、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与方法、薬剤の生物学的利用能特性、及びその他の関連する状況を含むが、これらに限定されないいくつかの因子が、担当医によって考慮される。
【0038】
動物試験では、式II(TT701、OPK-88004、又はOPK88004)の化合物が、前立腺アンドロゲン効果に対する同化作用に対する選択性を示したと決定した。肛門挙筋のED50は1~3mg/kgであったのに対し、検討した最大用量である30mg/kgの用量は、精巣摘出ラットの前立腺に変化を誘発しなかった。この結果は、少なくとも10~30倍の選択性を示唆する。
【0039】
式IIの化合物を用いた正常イヌの治療は、6カ月間の治療期間にわたって前立腺サイズに60%の進行性の減少をもたらした。前立腺重量に対する類似の拮抗薬効果は、3、30及び300mg/kgの治療用量で観察され、一方で同化活性の増加は骨格筋及び骨で観察された。これらのデータは、式Iの化合物、及び特に式IIの化合物が、前立腺に対する内因性アンドロゲン関連効果に対する拮抗薬として機能することを支持する。
【0040】
前立腺重量が減少した精巣摘除されたラットを、テストステロン単独又はテストステロン及び式IIの化合物で処置した。テストステロン治療のみでは効果は部分的に逆転したが、前立腺重量も増加した。対照的に、テストステロンと式IIの化合物との組み合わせは、前立腺サイズに対するテストステロン誘発効果を減少させ、式IIの化合物が前立腺にアンドロゲン拮抗薬として作用し得ることを示す。
【0041】
アンドロゲン欠損症を有する患者における臨床試験では、式IIの化合物であるTT701による治療により、内因性テストステロンのレベルが20~30%低下した。アンドロゲン関連の同化作用及び前立腺効果に対するテストステロンレベルのこの減少の正確な効果は知られていないが、テストステロンの塩基レベルに依存し得る。
【0042】
アンドロゲン欠損症を有する患者におけるこれらの同じ臨床試験において、TT701は、除脂肪体重の臨床的及び統計的に有意な増加、及び骨同化増加と一致する骨生化学的バイオマーカーの変化を示した。いずれの用量レベル(最大75mgの用量)でもPSAの増加は観察されなかったが、これは、式IIの化合物がヒトにおいて選択的AR調節因子(一部の組織に対する拮抗効果、前立腺に対する中性又は拮抗効果)として作用することを示し、動物モデルで生成されたデータを支持するものである。
【0043】
アンドロゲン欠損症患者の治療の可能性に関する臨床試験では、TT701は、試験された用量範囲で良好な安全性プロファイルを示した。12週間、5mgの式IIの化合物で処置された患者に観察された大きな変化は、HDLの20%の減少であり、性ホルモン結合グロブリン、LH及びFSHのいくらかの減少であったが、これらの所見の程度は臨床的に意義があるとはみなされなかった。
【0044】
本発明はまた、腎疾患の治療、又は腎疾患に有する対象における筋肉消耗、筋力低下、又は低身体機能のうちの少なくとも一つの治療における、TT701及び式Iの化合物の使用に関する。好ましい患者集団は、ESRDを有する、男性又は女性である。
【0045】
式IIの化合物は、一部の組織に対するアゴニスト効果を有するヒトにおいてSARMとして作用し、一方で前立腺を温存する、又は前立腺に対するアンドロゲン関連効果に拮抗する可能性がある。これらのデータは、式IIの化合物が前立腺サイズを減少させ、骨盤底筋を増加させることを示す。動物及びヒトの安全性データは、式IIの化合物が許容可能な安全性プロファイルを有することを示した。
【0046】
本発明は、治療有効量の式Iの少なくとも一種の化合物を、それを必要とする対象に投与することによって、腎疾患を治療する方法、又は腎臓疾患を有する対象において、筋肉の消耗、筋力低下、又は身体機能の低下のうちの少なくとも一つを治療する方法を含む。
【0047】
本発明は、腎代替療法、透析、又は腎不全によって誘発される二次性性腺機能低下症の結果として、治療有効量の式Iの少なくとも一種の化合物を、それを必要とする対象に投与することによって、腎疾患を有する対象に症状を治療する方法を含む。
【0048】
本明細書に記載される第一の活性成分の化合物は、式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり:
【0049】
【化4】
【0050】
式中、C*原子が、R、S又はR/S構成であってもよく、
【0051】
は、シアノ、-CH=NOCH、-OCHF、又は-OCFを表し、
【0052】
は、-COR2a又は-SO2R2bを表し、
【0053】
2aは、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
【0054】
2bは、(C~C)アルキル、シクロプロピル、又は-NRaRbを表し、
【0055】
Ra及びRbはそれぞれ独立してH又は(C~C)アルキルであり、
【0056】
は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾロイイソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基を表し、各々は、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、-CF、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCHCOHからなる群から独立して選択される1又は2の置換基で任意に置換される。
【0057】
本発明の好ましい化合物には、R及びRが、本明細書に定義される変数のいずれかであり、
【0058】
はCN、-CH=NOCH又は-OCFであり、又は
【0059】
はCN又は-CH=NOCHであり、又は
【0060】
はCN又は
【0061】
は-CH=NOCHである。
【0062】
別の実施形態では、式Iの化合物において、R及びRは、本明細書に定義される変数のいずれかを有し、
【0063】
は、-COR2a又は-SO2R2bであり、式中、R2aは、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、シクロプロピル、又は-N(CHであり、R2bは、(C~C)アルキル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cであり、又は
【0064】
は-COR2a又は-SO2bであり、式中、R2aは、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピル、又は-N(CHであり、R2bは、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cであり、又は
【0065】
は、-COR2aであり、式中、R2aは、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピル、又は-N(CHから選択され、又は
【0066】
は、-COR2aであり、式中、R2aはイソプロピル、エトキシ、イソプロポキシ又はシクロプロピルであり、又は
【0067】
は-COR2aであり、式中、R2aはイソプロポキシであり、又は
【0068】
は-SO2bであり、式中、R2bはメチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cであり、又は
【0069】
は、-SO2bであり、式中、R2bはシクロプロピル又は-N(CHであり、又は
【0070】
は-SO2bであり、式中、R2bは-N(CHである。
【0071】
別の実施形態では、式Iの化合物は、R及びRが本明細書に列挙される値のいずれかを有し、Rが-COR2aであり、「C*」炭素中心がS構成である、又はRが-SO2bであり、「C*」炭素中心がR構成であるものを含む。
【0072】
別の実施形態では、治療に使用される化合物は、式Iの化合物を含み、式中、R及びRは、本明細書に列挙される値のいずれかを有し、Rは、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基であり、各々、任意選択的に、メチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、ヒドロキシル、アミノ及び-NHCHCHCOHからなる群から独立して選択される一種以上の置換基で置換されてもよく、又は
【0073】
は、6-フルオロ-ピリジン-2-イル、ピリジン-2-イル、3-ヒドロキシ-ピリジン-2-イル、6-ジフルオロメチル-ピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-3-イル、2-カルボキシメチルアミノ-ピリジン-3-イル、ピリミジン-4-イル、ピリミンジン-2-イル、2-クロロ-ピリミジン-4-イル、チアゾール-4-イル、2-メチル-チアゾール-4-イル、2-クロロ-チアゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、チアゾール-5-イル、チアゾール-5-イル、4-アミノ-チアゾール-5-イル、ピラジン-2-イル、5-メチル-ピラジン-2-イル、3-クロロ-ピラジン-2-イル、ピリダジン-3-イル、5-ブロモ-イソチアゾール-3-イル、イソチアゾール-3-イル、4,5-ジクロロ-イソチアゾール-3-イル、又は[1,2,5]チアジアゾール-3-イルを表し;又は
【0074】
は、6-フルオロ-ピリジン-2-イル、ピリジン-2-イル、3-ヒドロキシ-ピリジン-2-イル、6-ジフルオロメチル-ピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-2-イル、2-カルボキシメチルアミニ-ピリジン-3-イル、チアゾール-4-イル、2-メチル-チアゾール-4-イル、2-クロロ-チアゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、チアゾール-5-イル、4-アミノ-チアゾール-5-イル、ピラジン-2-イル、5-メチル-ピラジン-2-イル、3-クロロピラジン-2-イル、6-メチル-ピラジン-2-イル、3-アミノ-ピラジン-2-イル又は3-メチル-ピラジン-2-イルを表し、又は
【0075】
は、6-フルオロ-ピリジン-2-イル、ピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-3-イル、チアゾール-5-イル、4-アミノ-チアゾール-5-イルから選択され、又は
【0076】
は、ピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-3-イル、チアゾール-5-イル、4-アミノ-チアゾール-5-イルから選択される。
【0077】
別の実施形態では、腎疾患を有する対象における治療のための化合物は、式Iの化合物を含み、Rが-COR2aである場合、「C*」炭素はS構成にあり、Rが-SO2bである場合、「C*」炭素はR構成にあり、Rは、シアノ又は-CH=NOCHから選択され、Rは、-COR2a又は-SO2bから選択され、式中、R2aは(C~C)アルキル-を表し、(C~C)アルコキシ-、シクロプロピル、又は-N(CHを表し、R2bは(C~C)アルキル、シクロプロピル、-N(CH又は-N(Cを表し、Rは、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択され、各々が独立して、メチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF、ヒドロキシル、アミノ、及び-NHCHCOHからなる群から選択されるヘテロアリール基を表す。
【0078】
一実施形態では、腎疾患を有する対象における治療に使用される化合物は、式(I)aによって表され:
【0079】
【化5】
【0080】
式中、
【0081】
は、シアノ、-CH=NOCH、又は-OCFであり、
【0082】
2aは、-(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ-、シクロプロピル又は-N(CHであり、
【0083】
は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びチアジアゾリルからなる群から選択されるヘテロアリール基を表し、任意でメチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、-CHF2、ヒドロキシル、アミノ、又は-NHCHCOHの少なくとも一つで置換される。
【0084】
処置のための追加の実施形態は、式I(a)の化合物を含み、式中、Rはシアノ又は-CHNOCHであり、R2aは、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピル、又は-N(CHからなる群から選択され、Rは、ピリジン-2-イル、2-アミノ-ピリジン-3-イル、又はチアゾール-5-イル又は4-アミノ-チアゾール-5-イルからなる群から選択される。
【0085】
別の実施形態では、本発明の方法で使用される化合物は、式IIの化合物及びその薬学的に許容可能な塩である:
【0086】
【化6】
【0087】
一部の実施形態では、対象は透析を受けている。透析は、血液透析又は腹膜透析であり得る。一部の実施形態では、患者は、ステージ3又は4のCKDを有する。
【0088】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物の投与のために選択される対象は、少なくとも40歳である。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物の投与のために選択される対象は、少なくとも50歳である。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物の投与のために選択される対象は、50~80歳である。
【0089】
本発明の化合物は、式R-CH-Xの適切なアルキル化剤を用いてテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物をアルキル化することによって作製され、式中、Xは脱離基(ハロゲン)であり、Rは本明細書に列挙されるように定義される。米国特許 第7,968,587号明細書はこの化合物の合成を記載し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
本発明の化合物は、医薬組成物の一部として製剤化されてもよい。したがって、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて、本発明の重要な実施形態である。それらの調製のための医薬組成物及び方法の例は、当該技術分野で周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaro,et al.,eds.,19.sup.th ed.,Mack Publishing(1995))を参照されたい。式(I)の化合物を含む例示的組成物には、限定されるものではないが、1%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.25%ポリソルベート80、及び0.05%の消泡剤1510.TM(Dow Corning)を有する懸濁液中の式(I)の化合物、又は0.01N HCl中、0.5%のメチルセルロース、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム、及び0.1%の消泡剤1510(最終pH約2.5~3)を有する懸濁液中の式(I)の化合物を含む。
【0091】
一実施形態では、本明細書に記載の治療方法は、第二の組成物(「第二の化合物」)を投与することをさらに含む。別の実施形態では、投与される第二の化合物は、腎機能が損なわれた個体の栄養状態を改善する多数のビタミン及びミネラルを含む。本発明の第二の化合物は、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、及びビタミンB12を含む。本発明の第二の化合物は、セレン及び亜鉛を含む。本発明の第二の化合物は、L-システイン及びグルタチオンなどの抗酸化アミノ酸を含む。
【0092】
用語「カロテノイド」は、天然物質のテトラテルペノイドファミリーを意味し、キサントフィルス及びカロテンの両方を含む。キサントフィルは、ルテイン及びゼアキサンチンによって例示される。カロテンには、アルファ-カロテン、ベータ-カロテン、及びリコピンが含まれる。
【0093】
別の実施形態では、投与される第二の化合物は、持続放出カルシフェジオール(ERC)である。一実施形態では、ERCは、活性ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD[1,25D])の経口投与されたプロホルモンである。別の実施形態では、ERCはカルシフェジオール(25-ヒドロキシビタミンD)一水和物として合成的に製造される。別の実施形態では、ERCは、(3β,5Z,7E)-9,10-セココレスタ-5,7,10(19)-トリエン-3,25-ジオール一水和物である。
【0094】
別の実施形態では、投与される第二の化合物は、以下の構造を有する持続放出カルシフェジオール(ERC)である:
【0095】
【化7】
【0096】
別の実施形態では、投与される第二の化合物は、25-ヒドロキシビタミンD、25-ヒドロキシビタミンD、又はそれらの組み合わせを含む。
【0097】
別の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDの構造及び製剤は、米国特許第10,300,078号明細書に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、ERCの製剤は、Cozzolino、Mario、及びMarkus Ketteler."Evaluating extended-release calcifediol as a treatment option for chronic kidney disease-mineral and bone disorder(HLA-MBD)" Expert opinion on pharmacotherapy(2019):1-13に記載されている。
【0098】
一実施形態では、第二の投与化合物は性機能薬剤である。別の実施形態では、第二の投与化合物はホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害剤である。
【0099】
ホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害剤には、限定されないが、シルデナフィル、バルデナフィル、又はタダラフィルが含まれる。後者の有効成分は、勃起不全に対して承認されている。特定の薬剤は、特定の強度のタダラフィル及び式IIの化合物の併用投与を含む、勃起不全の治療のための臨床試験において別個の剤形で同時投与されている。
【0100】
一実施形態では、第二の投与化合物は、典型的には、ESRD患者に提供される薬剤である。これらの患者は、糖尿病などの代謝障害、又は心血管疾患、感染症、サルコペニア、性的機能障害、又は慢性腎臓病若しくは障害に関連する、及び/又は特に透析治療に関連する、任意の他の状態又は疾患を含む状態を有し得る。
【0101】
一実施形態では、第二の化合物は、全体で開示される第一のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドール化合物と同時投与される。別の実施形態では、両方の化合物は同時に投与される。別の実施形態では、第二の化合物は、本出願全体を通して開示される対象に治療有効量で投与される。
【0102】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体に関連して、式Iの一種以上の化合物を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、これらの組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下、又は直腸投与、又は吸入若しくは送気による投与のための、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液若しくは懸濁液、計量エアロゾル若しくは液体スプレー、滴、アンプル、自動注射器若しくは座薬などの単位剤形である。本発明の化合物は、適切な量の薬剤を連続的に送達するよう設計された経皮パッチに組み込まれ得ることも想定される。好ましい剤形は、経口カプセル又は錠剤である。式I若しくはIIの化合物、又は式I若しくはIIの化合物を含む組成物は、経口経路及び非経口経路を含む、化合物を生体利用可能にする任意の経路によって投与することができる。
【0103】
最近の臨床試験は、驚くべきことに、低用量(例えば、5mg)で投与される好ましいSARMであるOPK88004と、より高い強度の10~15mg/日で投与される用量との間に差異があることを示した。
【0104】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物の用量範囲は、約0.5mg~約50mgである。一実施形態では、用量は約1mg~約5mgである。別の方法として、用量はmg/kgとすることができる。このフォーマットでは、典型的な用量は約0.02mg/kg~約0.1mg/kgである。例えば、ほとんどの患者は、50~120kgの成人男性であるため、狭いmg/kgの範囲は、0.02mg/kg(1mg~50kgの患者)から0.1mg/kg(10mg~100kgの患者)でありうる。
【0105】
一実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、約0.5mg~約50mgである。別の実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、1mg~約5mgである。
【0106】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物は、5mg、15mg、又は25mgの用量で1日1回対象に投与される。一実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、5mg、15mg、又は25mgの1日1回投与である。
【0107】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物は、1~5mgの用量で、1日1回、対象に投与される。一実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、1日1回、徐放性剤形における1~500μg(マイクログラム)の25(OH)D3の用量である。制御放出カルシフェジオールはまた、1週間に1回、又は1週間に3回、1週間に4回、又は1週間に2回、又は1日に2回又は毎日の投与スケジュールで、透析患者に300~1000μgの用量で投与されてもよい。
【0108】
別の実施形態では、式I又はIIの化合物は、1日当たり0.0001~5mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態では、式I又はIIの化合物は、1日当たり5~15mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態では、式I又はIIの化合物は、1日当たり15~25mgの範囲の用量で対象に投与される。
【0109】
別の実施形態では、式I又はIIの化合物は、1日当たり0.0001~5mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態では、式I又はIIの化合物は、1日当たり1~5mgの範囲の用量で対象に投与される。
【0110】
一実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、1日当たり0.0001~5mgの範囲の用量である。別の実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、1日当たり(i)5mg~15mg又は(ii)15mg~25mgの範囲の用量である。
【0111】
別の実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、1日当たり1~500μgの範囲の用量である。別の実施形態では、投与される第二の化合物の用量範囲は、1日当たり1~1000μg又は1~1000μg/週の範囲の用量である。
【0112】
別の実施形態では、式IIの化合物は、1日当たり0.0001~5mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態では、式IIの化合物は、1日当たり5~15mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態では、式IIの化合物は、1日当たり15~25mgの範囲の用量で対象に投与される。
【0113】
別の実施形態では、式IIの化合物は、1日当たり0.0001~5mgの範囲の用量で対象に投与される。別の実施形態では、式IIの化合物は、1日当たり1~5mgの範囲の用量で対象に投与される。
【0114】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物は、少なくとも4週間、1日1回投与される。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物は、少なくとも8週間、1日1回投与される。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物は、少なくとも12週間、1日1回投与される。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物は、少なくとも16週間、1日1回投与される。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物は、少なくとも20週間、1日1回投与される。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物は、1日1回、最大6カ月間投与される。別の実施形態では、一般式I又は一般式IIの化合物は、1日1回、最大2年間又はそれ以上にわたって投与される。
【0115】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分(式I又はIIの化合物)は、薬学的に許容可能な担体、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はガム及びその他の医薬希釈剤、例えば、水などの従来の打錠成分と混合され、本発明の化合物の均質な混合物を含有する固体予備処方組成物又はその薬学的に許容可能な塩を形成する。これらの予備処方組成物を均質物として言及する場合、有効成分が組成物全体に均一に分散されて、組成物が錠剤、ピル及びカプセルなどの等しく有効な単位剤形に容易に細分化され得ることを意味する。次に、この固体前製剤組成物は、0.1~約500mgの有効成分を含有する上述のタイプの単位剤形に細分される。典型的な単位剤形は、1~10mg、例えば1、2、又は5mgの活性成分を含有する。組成物の錠剤又はピルは、コーティングされてもよく、又はそうでなければ、長期作用の利点をもたらす用量を提供するように配合されてもよい。例えば、錠剤又はピルは、内側用量及び外側用量成分を含んでもよく、外側用量成分は、内側用量成分の上の封筒の形態である。二つの成分は、腸溶層によって分離されてもよく、これは、胃における崩壊に抵抗し、内側成分が十二指腸内に無傷で通過すること、又は放出が遅延することを可能にする。様々な材料を腸溶層又はコーティングに使用することができ、その材料として、シェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの材料と、いくつかのポリマー酸及びポリマー酸の混合物を含む。
【0116】
本発明の新規組成物が経口投与又は注射で組み込まれ得る液体形態は、水溶液、好適に風味付けされたシロップ、水性又は油性懸濁液、並びに綿実油、ゴマ油、ココナッツ油又はピーナッツ油などの食用油を有する風味エマルジョン、並びにエリキシル及び類似の医薬媒体を含む。水性懸濁液に適した分散剤又は懸濁剤は、トラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン又はゼラチンなどの合成及び天然ゴムを含む。
【0117】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物は、ゼラチンカプセル中で経口投与される。別の実施形態では、経口投与のための各ゼラチンカプセルは、式I又は式IIの化合物、不活性成分、プレゼラチン化デンプン及びジメチコンを含有する。一実施形態では、式I又は式IIの化合物を少なくとも含むゼラチンカプセルは、以下の表2に記載されるデータ点の少なくとも一つ、並びにアッセイ、不特定不純物、総不純物、水活性、溶解からなる群から選択される各データ点の各側面の30%の範囲を有する。
【0118】
【表1】
【0119】
一実施形態では、式I又は式IIの化合物を少なくとも含有するゼラチンカプセルは、アッセイを使用して測定した場合、少なくとも90.0%の効力を有する。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物を少なくとも含有するゼラチンカプセルは、アッセイを使用して測定した場合、110.0%以下の効力を有する。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物を少なくとも含有するゼラチンカプセルは、米国薬局方条約<905>に記載される要件を満たす。別の実施形態では、式I又は式IIの化合物を少なくとも含有するゼラチンカプセルは以下の微生物範囲を有する:TMAC<1000cfu/g、TYMC<100cfu/g;大腸菌の不在/1g。
【0120】
本発明の化合物は、本明細書に記載の化合物及び本明細書に請求される化合物を、注射用担体系と組み合わせて含む、医薬注射用用量の形態で製剤化される場合に有用である。本明細書で使用される場合、注射用及び点滴剤形(すなわち、非経口剤形)は、限定されないが、活性原薬を封入するリン脂質を有するリポソーム注射用又は脂質二重層ベシクルを含む。注射には、非経口使用を目的とした滅菌調製物が含まれる。
【0121】
USPによって定義される、五つの異なる種類の注射が存在する:エマルジョン、脂質、粉末、溶液、及び懸濁液。エマルジョン注入は、非経口的に投与されることを意図した滅菌されたパイロジェンフリーの調製物を含むエマルジョンを含む。溶液注射用の脂質複合体及び粉末は、非経口使用のための溶液を形成するために、再構成を目的とした滅菌調製物である。懸濁注射剤用粉末は、非経口使用のための懸濁剤を形成するために、再構成を目的とした滅菌調製物である。リポソーム懸濁液注射液用に凍結乾燥された粉末は、脂質二重層内に、又は水性空間内に活性薬物質を封入するために使用されるリン脂質を有する脂質二重層小胞などのリポソームの組み込みを可能にする様式で製剤化される非経口使用のための再構成を目的とした滅菌凍結乾燥調製物であり、これにより、製剤は再構成時に形成され得る。溶液注入用に凍結乾燥された粉末は、凍結乾燥(凍結乾燥)によって調製される溶液に意図される剤形であり、このプロセスは、極低温で凍結状態の生成物から水を除去することを含み、それによって、液体のその後の添加は、注射の要件にすべて適合する溶液を生成する。懸濁注射用に凍結乾燥された粉末は、適切な流体媒体中に懸濁された固体を含有する非経口使用を意図する液体調製物であり、滅菌懸濁の要件にあらゆる点で適合し、それによって懸濁を意図する医薬剤は凍結乾燥によって調製される。溶液注入は、適切な溶媒に溶解された一種又は複数の薬物質、又は注入に適した相互に混和可能な溶媒の混合物を含有する液体調製物を含む。溶液濃縮物の注射は、非経口使用のための滅菌調製を含み、適切な溶媒を加えると、注射の要件にあらゆる点で適合する溶液を生成する。懸濁注射は、液体相全体に分散した固体粒子を含有する液体調製物(注射に適する)を含み、それによって粒子は不溶性であり、油相は水相全体に分散され、又はその逆である。懸濁リポソーム注射液は、リポソーム(脂質二重層内又は水性空間のいずれかで活性原薬を封入するために使用されるリン脂質を含有する脂質二重層ベシクル)が形成されるように、水相全体に分散された油相を有する液体調製物(注射に適する)である。懸濁超音波注射は、液体相全体に分散した固体粒子を含有する液体調製物(注射に適する)を含み、それによって粒子は不溶性である。さらに、生成物は、懸濁液を通してガスが気泡状になり、固体粒子によるマイクロスフェアの形成をもたらし得るため、超音波処理されてもよい。
【0122】
非経口担体系は、溶媒及び共溶媒、可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤、増粘剤、乳化剤、キレート剤、緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤、還元剤、抗微生物保存剤、バルク剤、保護剤、等張化剤、及び特殊な添加剤などの一種以上の薬学的に好適な賦形剤を含む。
【0123】
当業者によって理解されるように、生理学的障害は、「慢性」状態、又は「急性」エピソードとして提示されうる。本明細書で使用される場合、「慢性」という用語は、ゆっくりと進行し、長期間継続する状態を意味する。そのため、慢性状態は、慢性状態と診断された場合、治療され、疾患の経過全体を通じて治療が継続する。逆に、用語「急性」は、短期間で悪化した事象又は発作を意味し、その後に寛解期間が続く。したがって、障害の治療は、急性事象及び慢性状態の両方を企図する。急性事象では、化合物は、症状の発症時に投与され、症状が消失すると中止される。上述のように、慢性状態は、疾患の経過全体を通して治療される。
【0124】
当業者であれば、粒径が、薬剤の吸光に影響を与え得る薬剤のインビボでの溶解に影響を与え得ることを理解するであろう。本明細書で使用される場合、「粒径」は、レーザー光散乱、レーザー回折、ミー散乱、沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関スペクトロスコピーなどの従来的な技術によって決定される、薬剤の粒子の直径を指す。薬剤の溶解性が乏しい場合、粒径が小さく又は減少することが溶解を助け、したがって薬剤の吸収を増加させることができる。Amidon et al.,Pharm.Research,12;413-420(1995)。式IのSARMに関する米国特許第7968587号明細書に記載されるように、粒子を、ミリング、粉砕、微粉化、又は当技術分野で公知の他の方法によって、サイズを小さくすることができる。粒径を制御する別の方法は、ナノ懸濁液中で薬剤を調製することを伴う。本発明の特定の実施形態は、式(I)の化合物、又は式(I)の化合物を含む医薬組成物を含み、化合物は、約20μm未満の平均粒径又は約50μm未満のd90の粒径(すなわち、粒子の90%の最大サイズ)を有する。より特定の実施形態は、約10μm未満の平均粒径又は約30μm未満のd90の粒径を有する、式Iの化合物を含む。有効成分は、薬剤の溶解プロファイルに影響を与える粒径を有してもよい。粒径は、本明細書で使用される場合、光散乱又は他の従来的な技術によって決定される活性医薬成分の粒子の直径を意味する。
【0125】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、患者に単回又は複数回投与する場合、診断又は治療において患者に所望の硬化を提供する式(I)の化合物の量又は用量を指す。有効量は、哺乳類の種、サイズ、年齢、健康全般、関与する特定の疾患、疾患の程度又は重症度、個々の患者の反応、投与される特定の化合物、投与様式、投与される調製物の生物学的利用能の特徴、選択される投与レジメン、任意の併用薬剤の使用などのいくつかの要因を考慮することによって当業者の担当医によって容易に決定することができる。有効量の25-ヒドロキシビタミンDなどのプロホルモンは、高カルシウム血症又はその他の毒性を誘発しない又は発症せずに、例えば、ビタミンD不足を治療し、PTHを低下させ、このようなESRD患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療するために十分な約10~1,000μgのかかる活性を有する制御放出剤形の量を指す(例えば、iPTHを約30%低下させながら、血清25(OH)Dレベルを30~60ng/mL以上に上昇させる)。
【実施例
【0126】
実施例1:式IIの化合物のインビトロ薬理学
【0127】
インビトロ試験では、式IIの化合物は、細胞ベースのアッセイにおいて強力なアゴニスト活性を有するhARの強力かつ選択的な調節因子であり、様々なプラットフォームにわたって、他の核ホルモン受容体又は既知の薬剤標的に対して有意な交差反応性がないことが実証された。式IIの化合物は、阻害定数(Ki)が1.95nMであり、細胞ベースの有効濃度中央値(EC50)が1.25nMであり、アゴニスト活性が実証されたhARに対する選択的なリガンドである。他の核ホルモン受容体と比較したhARに対する結合親和性は、>500倍であった(表3を参照)。
【0128】
【表2】
【0129】
実施例2:式IIの化合物の構造、化学的、及び薬理学的特徴
【0130】
式IIの化合物の構造特性:
【0131】
式IIの化合物は、コレステロール由来ステロイド足場とは構造的に異なる非ステロイド性THCI足場に属する。式IIの化合物は、血清ホルモン結合グロブリン(10μMで検出されなかった)との弱い親和性を有し、17-ベータ-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型の酵素クラスによって代謝されない。式II結合ARの化合物のX線結晶構造は、ジヒドロテストステロン結合ARのX線結晶構造に対する活性ポケット内の接触部位のいくつかの重要な差異を示す。
【0132】
実施例3:LnCAP細胞上の式IIの化合物のインビトロ活性
【0133】
式IIの化合物は、インビトロ前立腺LnCAP細胞(アンドロゲン感受性ヒト前立腺腺癌細胞)において弱いアゴニスト活性を有し、合成テストステロンR188よりも少なくとも46倍アゴニスト活性が弱い。式IIの化合物と合成テストステロンR1881との比較は、ヒト前立腺癌細胞のインビトロ使用において、LY化合物がR1881よりもアンドロゲンが少ないことを示した。対照的に、ヒトアンドロゲン受容体(nMのKi)に対する生化学的結合親和性は、わずかしか低減されない。式IIの化合物が、アンドロゲン受容体に結合し、合成のテストステロンR188と比較して遺伝子発現において非常に弱いアゴニスト活性を有する能力は、式IIの化合物の存在が内因性テストステロンのAR活性を妨害又は低減し得ることを示唆している(表4を参照)。
【0134】
【表3】
【0135】
実施例4:異なる動物試験における式IIの化合物の同化作用及びアンドロゲン作用
【0136】
ラット及びイヌの前立腺サイズに対する式IIの化合物の短期及び長期処置の効果を試験した。毒性プログラムの一部として、ラット及びイヌを、試験又は種に応じて、1、3、6、又は12カ月間、式IIの化合物の漸増用量で処置し、前立腺サイズについて、及び組織学的に前立腺萎縮について調べた。データを以下の表5及び6に示す。
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
これらのデータは、異なる用量での式IIの化合物を用いた処置が、ラット及びイヌの両方で前立腺重量を減少させたことを実証する。体重の減少は、ラットと比較してイヌでより顕著であり、イヌでは3か月までに60~75%の減少が観察された。さらに、組織学的検査では、6~12カ月間処置された動物の50~100%で前立腺萎縮が示された。
【0140】
重要なことに、ラット及びイヌの両方において、非常に高い用量の式IIの化合物を用いた前立腺に対するアンドロゲン効果の欠如がある。前立腺の重量及び/又は萎縮の減少は、前立腺に対するアンドロゲン効果に対する式IIの化合物の拮抗特性と一致する。
【0141】
実施例5:ラット骨減少性精巣摘除(ORX)モデルにおける式IIの化合物の同化作用及びアンドロゲン効果
【0142】
動物における内因性テストステロンの非存在下での式IIの化合物の同化及びアンドロゲン効果を調べるために、精巣摘除ラットモデルを使用した。精巣摘除された(ORX)及び偽手術されたWistar雄ラットを使用した(8週齢で精巣摘除され、4週間に消耗させた)。ラットは、12時間明暗サイクルで22℃で維持され、自由に食物(0.95%のCa及び0.67%PのTD 5001、Teklad、Madison、WI)及び水へのアクセスを得た。ラットを無作為化し、体重に基づいて治療群(n=6)に配置した。エナント酸テストステロン(TEを皮下に投与)を除くすべての群に対する投与経路は、経口であった。1日2週間のラットの終了時に、安楽死させ、体重を測定し、組織を採取した。肛門挙筋、前立腺、及び精嚢を各動物から採取した。結果を平均±SEとしてプロットする。
【0143】
結果を図1に図示し、式IIの化合物の毎日の経口投与が、脊椎骨ミネラル含量(BMC)、断面積、及び骨ミネラル密度(BMD)の用量依存性の増加をもたらした。骨同化バイオマーカー、ラットプロコラーゲン1型アミノ末端プロペプチド(P1NP)、及び骨膜アルカリホスファターゼの有意な増加が、2週間及び8週間の治療後に観察された。
【0144】
実施例6:ORXモデルにおける肛門挙筋及び球海綿体筋に対する式IIの化合物の同化作用
【0145】
遅延ORXモデルにおける肛門挙筋及び球海綿体筋に対する式IIの化合物の同化作用を試験した。ORXモデルにおけるアンドロゲン欠損症に続いて、肛門挙筋及び球海綿体筋の重量はサイズが減少した。式IIの化合物によって8週間処置した後、肛門挙筋及び球海綿体筋の重量は、1~3mg/kg/日の用量投与で有意に増加した。これらのデータは、式IIの化合物が、テストステロン欠損症動物において肛門挙筋及び球海綿体筋に対して正の同化作用を有することを標示する。結果を図2に図表に表し、表7に表にする。
【0146】
【表6】
【0147】
式IIの化合物は、アンドロゲン欠乏に関連する筋肉及び骨の喪失の頑強な指標を示した。2週間及び8週間の試験では、式IIの化合物は、骨盤内骨格筋の湿潤重量を増加させ、骨損失を回復させ、皮質部位及び大腿骨頸部の骨強度を改善する能力を示した。
【0148】
実施例7:ORXラットモデルにおける式IIの化合物のアンドロゲン効果
【0149】
図1及び図2は、遅延ORXラットモデルにおける前立腺重量及び精嚢に対する、2週間又は8週間の式IIの化合物の治療効果を示す。精巣摘除されたラットの体重及び精嚢は有意に減少した。式IIの化合物の用量増加による遅延ORXラットの治療は、前立腺又は精管重量に影響を及ぼさなかった。これらのデータは、最大20~30mg/kgの用量が前立腺にアンドロゲン活性を有しないことを明確に示す。
【0150】
式IIの治療の化合物によって誘発された筋肉及び骨に対する同化活性は、前立腺重量及び組織学的検査に対するアンドロゲン関連効果の非存在下で、又は式IIの化合物の「前立腺のわずかな」効果を確認した精嚢重量に対するアンドロゲン関連効果の非存在下で観察された。
【0151】
図3のデータは、ORXラットにおけるTT701治療が、最小限の発生SV/前立腺リスクを示すことを示す。したがって、TT701治療によって誘発された筋肉及び骨に対する同化活性は、前立腺重量及び組織学的検査に対するアンドロゲン関連効果の非存在下で、又は精嚢重量に対する同化活性が観察され、これは、TT701の前立腺のわずかな効果を確認する。
【0152】
実施例8:式IIの化合物のテストステロンに対する効果は、遅延ORXラットモデルにおいて前立腺成長を誘発した
【0153】
図4及び図5は、2週間のみのテストステロン(1mg/k/d)で処置された精巣摘除されたラットの効果を図示し、前立腺重量及び精嚢重量の増加をそれぞれ示した。3、10、及び30mg/kg/dのエナント酸テストステロン(TE)(1mg/kg/d)及び式IIの化合物との組み合わせは、2週間の共処置後にTE単独によって誘発された前立腺及び精管重量と比較して、体重に正規化された前立腺重量及び精管重量の減少を示した。これらのデータは、式IIの化合物が、前立腺に対するテストステロンのアンドロゲン効果に拮抗したことを示した。表8は、TE及び式IIの化合物を用いた処置の前立腺重量に対する効果に関するデータを含む。表9は、T及び式IIの化合物を用いた処置の精嚢 重量に対する効果に関するデータを含む。
【0154】
【表7】
【0155】
【表8】
【0156】
実施例9:式IIの化合物を用いた臨床試験
【0157】
式IIの化合物を用いた6つの臨床試験(表10):5つの第I相臨床試験(GPBA試験、GPBC試験、GPBG試験、GPBF試験、及びGPEA試験)、並びに二つの第II相臨床試験(GPEC試験及びSAR-202)を完了した。合計431名の対象が、これらの完了した臨床試験において式IIの化合物に曝露された。GPEA及びGPEC試験では、式IIの化合物は、タダラフィルと経口的に併用投与した。
【0158】
【表9】
【0159】
実施例10:TT701の安全性評価
【0160】
試験GPBAは、TT701とQTcF延長の間に統計的に有意な陽性関係を示した濃度反応解析を用いてQTシグナルを検出した。250mg以上の用量で観察されたTT701濃度では、平均QTcF延長は10ミリ秒超であった。<250mg用量での臨床的に意義のあるQT延長のリスクは除外することができる。GPEC試験におけるECGデータのレビューでは、TT701に関連する臨床的に意義のある変化の証拠は示されなかった。
【0161】
GPEC試験では、OPK-88004による治療は、HDLコレステロール値及びアポリポタンパク質A1の減少と関連していたが、観察された総コレステロール、トリグリセリド及びLDLコレステロール値の減少は、臨床的に意義があるとはみなされなかった。
【0162】
TT701を用いた臨床試験では、いずれの用量でも、総ビリルビン、GGT、又はアルカリホスファターゼの有意な増加は観察されなかった。第I相試験の対象14名において観察された肝トランスアミナーゼ(ALT又はAST)の一時的な上昇は、治験責任医師によって臨床的に意義があるとはみなされず、AEとして捕捉されたものはなかった。第II相試験では、対象3名に一過性のAST又はALT異常があり、OPK-88004投与を受けた対象2名で≧2×ULN、対象1名で≧3×ULNのレベルであった。治験責任医師は、いずれの上昇も臨床的に意義があるとはみなさず、AEとして捕捉されたものはなかった。肝トランスアミナーゼ値上昇を有するすべての対象は、それぞれの試験を完了した。
【0163】
GPEC試験では、高齢者を対象とした12週間試験で測定された内分泌関連パラメータの評価には、総テストステロン及び遊離テストステロン、SHBG、エストラジオール、卵胞刺激ホルモン(FSH)、並びにLH及び精液分析が含まれた。臨床的に意義のある減少がテストステロンについて観察され、SHBGの減少が伴った。
【0164】
【表10】
【0165】
実施例11:前立腺抗原に対する式IIの化合物の効果
【0166】
試験GPBCにおいて、PSA試験は、式IIの化合物の健康な対象(1mg~75mgの1日用量を28日間)における用量漸増試験における用量増加に応答して、前立腺に対する中立から陰性の効果(PSAの減少)を示した。この研究の結果を図6に示す。
【0167】
GPEC試験では、1mg及び5mgの用量での12週間の式IIの化合物を用いた治療は、PSAの増加と関連しなかった。この研究の結果を図7に示す。また、この研究では、勃起不全の症状を有し、タダラフィル治療で失敗していた健康な高齢男性において、TT701(OPK-88004、5mg)単独、又は5mg若しくは10mgのタダラフィルとの組み合わせ、及びPSAレベルが約2.5ng/mL超の患者において、予想外にベースラインと比較してPSAレベルの有意な減少を示した(図8及び図9を参照のこと)。図10は、OOPK-88004(TT701)単独投与、又はタダラフィル(5mg単独又は5mg/5mgの組み合わせ)との組み合わせでタダラフィル治療に失敗した、勃起不全の症状を有する患者におけるPSAレベルの変化を示し、PSA水平スケールが拡大されている。この図は、OPK-88004を用いた治療で、約2.0PSAでPSAレベルの低下が見られ始めることを示している。図16は、タダラフィル単独(5mg及び10mg)又はOPK-88004(TT701)(1mg又は5mg)を、タダラフィル(5mg)と12週間の治療後に併用投与されている患者におけるPSAレベルの変化を示す。
【0168】
これまで、免疫毒性安全性シグナルは観察されていない。式IIの化合物は小分子であるため、免疫原性は期待されず、免疫原性アッセイは開発されていないと考えられる。アンドロゲン誘導性赤血球増加症及び結果として生じる多赤血球症は、アンドロゲン療法に対する有意な制限であると考えられ、治療の最初の3カ月に発現することが示されている。ヘモグロビン及びヘマトクリットの統計解析は、試験された式II用量の化合物のいずれにおいても、これらのパラメータの増加を示さなかった。図11は、TT701が、試験された用量を用いてヘマトクリットに変化を起こさないことを示す。TT701の臨床試験からのバイタルサインデータの検討は、収縮期血圧、拡張期血圧、又は心拍数に有意な変化をもたらさなかった。GPBC試験の対象は、TT701の投与前後、視力検査、視野評価、眼底検査、並びに眼表面疾患インデックス検査を受けた。これらの評価には臨床的に意義のある変化はなかった。
【0169】
実施例12:式IIの化合物の同化作用
【0170】
利用可能なデータは、式IIの化合物が、脂肪量の減少及びLBMの増加を介してアンドロゲンのアゴニスト効果を有していた可能性を示す。複数回投与試験(GPBC試験)では、28日間式IIの化合物に曝露された健康な対象は、LBM及びふくらはぎの面積の臨床的、統計的に有意な増加を示した(CTによる)。EDを対象とした第II相試験には、下肢の筋力と筋力、LBM、脂肪量に関する探索的尺度も含まれた。この研究では、式IIの化合物を用いた12週間の毎日の治療は、式IIの化合物が、脂肪量の減少及びLBMの増加を介してアンドロゲンのアゴニスト効果を有していた可能性があることを示した。式IIの化合物+5mgのタダラフィルの5mgの併用療法を受けた患者は、10mgのタダラフィルを受けた患者と比較して、脂肪体重の減少及びLBMの増加(改善)があった。階段昇りによって測定される下肢の筋仕事率は、10mgのタダラフィル投与患者と比較して、式IIの化合物+5mgのタダラフィルの化合物を5mgの併用療法を受けている患者で増加した(改善された)。結果を図12、13、及び14に示す。
【0171】
図11は、ベースラインから12週目までの脂肪量の平均変化を示す:GPEC試験。
【0172】
実施例13:透析中のESRD患者における筋肉の消耗、筋力の低下、又は身体機能の低下を治療するための臨床試験
【0173】
患者は、300ng/dL未満のテストステロンレベルの透析中の男性ESRD患者を含む。男性患者も50歳以上である。患者はまた、50歳以上の透析中の閉経後の女性ESRD患者も含む。試験は、各治療群につき、男性患者20名及び女性患者20名で構成される。
【0174】
患者はまた、別個の群において、プラセボと比較して、式IIのSARMの用量(OPK-88004、5mg)も投与される。用量は、透析日に透析後に投与される。患者は血液透析を受ける。
【0175】
治療は16週間続く。1か月間のスクリーニングは16週間の治療前に、追跡の1か月は16週間の治療が終了すると行われる。
【0176】
上述の両方の研究はまた、SARM及び放出制御カルシフェジオール剤形の両方を用いて治療された患者を有する群を含んでもよい。投薬量及び投与頻度は、試験中の特定の患者に依存するが、軟質ゲルカプセル又はハードシェルカプセル中のワックスマトリックス又は他の放出制御製剤などの適切な経口剤形における、300~900μgの25(OH)Dを週に1回~3回投与される可能性が高い。
【0177】
試験の主要評価項目は、除脂肪体重(DXAによる)、又は併用試験では、除脂肪体重の増加とビタミンD不足の治療の組み合わせ、並びに約30%のiPTHの低下である。第二の評価項目は、筋力、身体機能、脂肪量、骨含量/バイオマーカー、QOL(エネルギーレベル、気分、性的機能)、安全性、及び/又は薬物動態を含む。
【0178】
実施例14:BPHに対する下部尿路症状(LUTS)を有する患者における式II(TT701/OPK88004)のSARMを投与し、LBM及びPSAを測定する臨床試験
【0179】
臨床試験は、TT701を投与することによって、BPHに二次的な下部尿路症状(LUTS)を有する114名の男性対象(年齢:64.6歳、ベースラインテストステロン:447.3ng/dL)を治療し、プラセボと比較して、除脂肪体重(LBM)、血清PSA値、及びTT701の安全性の変化を評価した。
【0180】
15mg及び25mgのOPK-88004を用いた治療は、16週間でプラセボと比較して脂肪量の減少をもたらし(15mg:-1.47kg、p=0.0002;25mg:-1.49kg、p=0.0003)、及びLBMの増加(15mg:1.61kg、p=0.001;25mg:1.96kg、p=0.0004)をもたらし、体組成に対するアンドロゲン作動性効果を示した(表12)。合計で74名の対象が試験を完了(プラセボ群28名、15mg群23名、及び25mg群23人)し、40名の対象が早期終了した。主要評価項目である16週でのPSAは、15mgのOPK-88004で変化せず、25mgのOPK-88004群において有意に減少した(p=0.006、mITT)(表13)。
【0181】
【表11】
【0182】
【表12】
【0183】
【表13】
【0184】
実施例16:OPK-88004の異なる投与レジメンの濃度及び薬物動態パラメータ
【0185】
OPK-88004のヒト薬物動態(PK)を、単回投与及び反復投与後に調査した。tmaxに続いて、OPK-88004濃度は、短い分布相及び長い末端相によって特徴付けられる二指数関数的に低下するようである。曝露は、臨床用量範囲で比例しておよその用量を増加させるようである。定常状態は、投与後28日以内に達成された。複数回の投与では、最大2.5倍の蓄積が観察された。OPK-88004の処分及びPKプロファイルは、透析中のESRD患者など、腎機能が著しく損なわれた患者において、重要な安全性及び有効性の利点を示す可能性がある。より制御された曝露のこれらの治療的利益は、LBM及び身体/筋肉の強度保存の改善、身体機能の改善、及び筋肉の消耗防止をもたらしうる。OPK-88004双指数関数PKプロファイルは、透析患者を含む特定の集団における副作用の有益性/リスク比の最適化に重要である。
【0186】
OPK-88004は、BPH及びEDを有する健康な男性において、LBMの有意な改善を示した。健康な女性では、最も顕著なテストステロンの減少が21~40歳で見られ、40歳までに50%(約20ng/dL)の減少が認められる(Zumoff B,Strain GW,Miller LK,Rosner W.Twenty-four-hour mean plasma testosterone concentration declines with age in normal premenopausal women.J Clin Endocrinol Metab 80:1429-1430)。高齢女性における身体的虚弱は、男性よりも2倍多い(Ruan,Qingwei,et al."Sexual dimorphism of frailty and cognitive impairment:Potential underlying mechanisms."Molecular medicine reports 16.3(2017):3023-3033.)。したがって、OPK-88004は、LBMの改善を含めて、女性においてより高い有効性を示し、男性と比較して、より良好な体力/機能及び筋力をもたらす可能性が高い。
【0187】
EDを有する高齢男性における以前の第II相試験では、5mgの用量が、12週間にわたってOPK-88004の除脂肪体重(1.67kg)を改善し(実施例15を参照)、より高い用量の15mg(1.57kg)及び25mg(1.92kg)のOPK-88004と同等の効力を有し、これは、BPHを有する高齢男性において16週間にわたって試験された(実施例14を参照)。5~6週間にわたる5mgなどの低用量での薬物の蓄積をもたらす双指数関数PKプロファイルは、OPK-88004の曝露及びPKプロファイルの増加をもたらし、高用量から生じる安全性問題の非存在下で、低用量でのLBM及び身体機能の増加をもたらす。透析中の患者の筋消耗などの適応症において、その生理学的反応は、CKD及び透析に起因して高度に損なわれており、患者は、これらの低用量でOPK-88004のPK特性から好意的に反応し、利益を得ることが予期される。
【0188】
【表14】
【0189】
OPK-88004は、骨ミネラル含量及び骨密度を増加させ、LBM、体力及び機能を増加させることが示されている。これら二つの所見を組み合わせて考えると、筋消耗、サルコペニア、又は虚弱に悩まされている患者は、OPK-88004による治療から利益を得、転倒及び骨折の発生率の低下を潜在的にもたらすことを示唆する。OPK-88004治療をカルシフェジオール(Rayaldee)などのビタミンD3類似体と組み合わせることで、さらなる著しい骨形成及び身体機能の改善をもたらし、転倒及び骨折の発生率の低下をもたらす可能性がある。
【0190】
この新規の双指数関数的OPK-88004データから、5mgなどのOPK-88004の低用量は、ESRDを有する透析患者において安全である一方、体力及び体機能の改善に必要なLBMを達成することが予想される。OPK-88004の双指数関数的のPK特性は、筋肉の消耗及び体力/機能の改善、並びに虚弱を含む、最適な安全性及び有効性プロファイルを有する、ESRDを有する透析患者における低用量の1日1回投与を可能にするべきである。
【0191】
実施例17:1日1回14日間のOPK-88004のシミュレーション
【0192】
5mg~25mgの1日1回の用量のシミュレーションを図4に示す。異なる陰になった領域は、20%、50%、及び80%の予測間隔であり、実線は典型的な対象予測を表す。破線の赤い縦線は、定常状態が達成された瞬間を表す。
【0193】
図17は、1日1回、14日間の投与に対するOPK-88004の濃度プロファイルのシミュレーションを示す。
【0194】
14日目に集団予測プロファイルを使用して、非コンパートメント法を用いて定常状態の薬物動態パラメータ(Cmax、Cavg、Cmin、及びAUC0-τ)を計算し、以下の表5に提示する。OPK-88004の定常状態は、6日目に達成される。
【0195】
【表15】
【0196】
15mgの薬物動態プロファイルの100回の複製に基づき、五つのシミュレーションされた最大Cmaxは、386.18、386.61、400.37、428.15、及び457.52ng/mLであった。
【0197】
25mgの薬物動態プロファイルの100回の複製に基づき、五つのシミュレートした最大Cmaxは、735.11、737.76、742.86、762.54及び816.27ng/mLであった。
【0198】
実施例18:GPBC試験及びGPEC試験におけるOPK-88004のシミュレーションの比較
【0199】
図18は、前の実施例、GPBC試験及びGPEC試験において言及された二つの試験に対する刺激プロファイルを示す。二つのシミュレーションプロファイルを比較すると、シミュレーションされた形状は異なっていたが、対象の5%、50%、及び95%のCmaxを含む主なPK特性(各試験について赤又は青の3つの別々の線として表される)と変動性は同等であった。
【0200】
シミュレーションは、1日1回28日間(1及び5mg)、及び1及び28日目の完全なPKビジットを想定して実施された。
【0201】
図18では、太字の実線は典型的な対象のPKプロファイルであり、陰になった領域は90%の予測間隔であり、実線は5%、50%、及び95%のパーセンタイルであった。中央値(50%パーセンタイル)は、典型的な対象と良好に一致していた。
【0202】
主なPK特性(Cmax、AUC、消失、及び蓄積の点において)並びに変動性は同等であることが分かった。シミュレーションされた比較は、二つの異なる試験で5mgの用量投与を28日目まで支持する。
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【国際調査報告】