(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】緩衝化医薬製剤を含む加圧定量吸入器
(51)【国際特許分類】
A61K 31/58 20060101AFI20230313BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230313BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230313BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230313BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230313BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20230313BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20230313BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20230313BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20230313BHJP
A61K 31/536 20060101ALI20230313BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230313BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230313BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230313BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230313BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230313BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230313BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230313BHJP
C07J 71/00 20060101ALN20230313BHJP
C07D 215/26 20060101ALN20230313BHJP
C07D 265/36 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K9/08
A61K9/12
A61P11/00
A61K45/00
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/4704
A61K31/27
A61K31/536
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61P43/00 121
C07J71/00
C07D215/26
C07D265/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545798
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2021051669
(87)【国際公開番号】W WO2021151857
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591095465
【氏名又は名称】キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ザンベッリ,エンリコ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB21
4C076BB27
4C076CC15
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4C086MA13
4C086MA17
4C086MA55
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4C206MA05
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4C206MA37
4C206MA75
4C206NA03
4C206ZA59
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、一般的に、フォルモテロールおよびベクロメタゾンプロピオン酸エステルを含むエアゾール製剤であって、該製剤が、呼吸器疾患の処置のための加圧定量吸入器における使用に特に有用な、コーティング缶に含まれる、製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコルチコステロイド、LABA薬およびHFAまたはHFO噴射剤を含む製剤を含む、pMDIデバイスにおける使用のための缶であって、該缶が、少なくともエポキシフェノール樹脂、ペルフルオロ化ポリマー、ペルフルオロアルコキシアルカンポリマー、ペルフルオロアルコキシアルキレンポリマー、ペルフルオロアルキレンポリマー、ポリテトラフルオロエチレンポリマー(テフロン)、フッ素化エチレンプロピレンポリマー(FEP)、ポリエーテルスルホンポリマー(PES)、フッ素化エチレンプロピレンポリエーテルスルホンポリマー(FEP-PES)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、プラズマ、それらの混合物または組合せより選択される化合物を含む、コーティングにより内部コーティングされている、缶。
【請求項2】
コルチコステロイドが、ブデソニド、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フルニソリド、フルチカゾン、シクレソニド、モメタゾン、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコート、デフラザコート、ハロプレドン酢酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、ハロメタゾン、リメキソロン、デプロドンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニドおよびエチプレドノールジクロアセテートからなる群より選択される、請求項1に記載の缶。
【請求項3】
コルチコステロイドが、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルまたはブデソニドである、請求項2に記載の缶。
【請求項4】
LABA薬が、サルブタモール、(R)-サルブタモール、フェノテロール、フォルモテロールフマル酸塩、アルフォルモテロール、カルモテロール、インダカテロール、ミルベテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ビランテロール、オロダテロール、アベジテロール、テルブタリンおよびサルメテロールからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の缶。
【請求項5】
LABA薬が、フォルモテロールフマル酸塩二水和物である、請求項4に記載の缶。
【請求項6】
HFA噴射剤が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227ea)、1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の缶。
【請求項7】
HFO噴射剤が、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)および2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)からなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の缶。
【請求項8】
噴射剤が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)である、請求項6に記載の缶。
【請求項9】
噴射剤が、1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)である、請求項6に記載の缶。
【請求項10】
噴射剤が、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)である、請求項7に記載の缶。
【請求項11】
フッ素化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含むコーティングにより内部コーティングされている、請求項1~10のいずれか一項に記載の缶。
【請求項12】
1つ以上の添加剤、共溶媒または酸をさらに含む製剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の缶。
【請求項13】
共溶媒が、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールである、請求項12に記載の缶。
【請求項14】
脂肪族アルコールが、エタノール、好ましくは無水エタノールである、請求項13に記載の缶。
【請求項15】
塩酸、臭化水素酸、硝酸、フマル酸、リン酸およびクエン酸からなる群より選択される無機酸または有機酸をさらに含む製剤を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の缶。
【請求項16】
酸が、塩酸である、請求項15に記載の缶。
【請求項17】
グリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールまたはそれらのエステル、パルミチン酸アスコルビル、ミリスチン酸イソプロピルからなる群より選択される低揮発性成分をさらに含む製剤を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の缶。
【請求項18】
溶液の形態の製剤を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の缶。
【請求項19】
低密度ポリエチレン、ブチル、例えばクロロブチルまたはブロモブチル、ブタジエン-アクリロニトリル、ネオプレン、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーのポリマー)、TPE(熱可塑性エラストマー)、シクロオレフィンコポリマー(COC)またはそれらの組合せより選択される、ポリマーの少なくとも1つを含む、材料で作られた、少なくとも1つのガスケットを有する、バルブを備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の缶。
【請求項20】
バルブが、COC製のガスケットを、EPDM製の2つのガスケットと共に備える、請求項19に記載の缶。
【請求項21】
バルブが、両方がクロロブチルポリマー製の2つのガスケットを備える、請求項19に記載の缶。
【請求項22】
バルブが、すべてがEPDM製の3つのガスケットを備える、請求項19に記載の缶。
【請求項23】
バルブが、ブチルゴム製のガスケットを、EPDM製の2つのガスケットと共に備える、請求項19に記載の缶。
【請求項24】
噴射剤がHFA152aであり、そして、バルブが、COC製のガスケットを、EPDM製の2つのガスケットと共に備えるか;またはバルブが、両方がクロロブチルポリマー製の2つのガスケットを備える、請求項1~21のいずれか一項に記載の缶。
【請求項25】
噴射剤がHFA134aあり、そして、バルブが、COC製のガスケットを、EPDM製の2つのガスケットと共に備えるか;またはバルブが、すべてがEPDM製の3つのガスケットを備えるか;またはバルブが、両方がクロロブチルポリマー製の2つのガスケットを備える、請求項1~20および22のいずれか一項に記載の缶。
【請求項26】
2.5~5に緩衝化した見かけのpHを有する製剤を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の缶。
【請求項27】
3~4.5に緩衝化した見かけのpHを有する製剤を含む、請求項26に記載の缶。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の缶を含む、PMDIデバイス。
【請求項29】
喘息および/またはCOPDより選択される呼吸器疾患の処置のための、請求項28に記載のpMDIデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、少なくともLABA、コルチコステロイドおよび噴射剤を含むエアゾール製剤であって、該製剤が、コーティング缶に入れられ、呼吸器領域用の加圧定量吸入器での使用に特に特に有用である、製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧定量吸入器(pMDI)は、医薬品を吸入により気道に投与するための周知のデバイスである。pMDIデバイスは、典型的に、医療用を含むキャニスター(または本明細書で「缶」と称する)と、マウスピースを有するアクチュエーターハウジングを備えている。缶は通常、計量バルブアセンブリに圧着されている。活性成分、および添加剤、酸などの追加成分に応じて、最終的なpMDI製剤は溶液または懸濁液の形態であり得る。溶液は、一般的に沈殿物または粒子を実質的に含まないものを指し、懸濁液は、典型的に未溶解物または沈殿物を含む製剤を指す。pMDIデバイスは、医薬品を含む液滴をエアゾールとして気道に排出するために、噴射剤を用い得る。長年にわたり、この点で用いられる好ましい噴射剤は、フロンまたはCFC、例えばCCl3F(フロン11またはCFC-11)、CCl2F2(フロン12またはCFC-12)、およびCClF2-CClF2(フロン114またはCFC-114)と一般的に呼ばれるクロロフルオロカーボン誘導体であった。完全または部分的にハロゲン化クロロフルオロカーボンが、地球の保護オゾン層に影響を与える地球温暖化係数(GWP)の臨界値を有するという国際的な懸念により、多くの国が、その製造と使用を厳しく制限し、最終的に完全に廃止されるべきであるとのモントリオール議定書を締結した。その結果、医薬部門のCFCの代替品としてヒドロフルオロアルカン(HFA)、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227a)が特定され、受け入れられている。それ以来、ヒドロフルオロアルカン噴射剤HFA134aおよびHFA227aは、特にコルチコステロイド、LABAまたは抗ムスカリン薬などの多くの活性成分との有効性および適合性を考慮して、呼吸器分野で広く用いられてきた。
【0003】
しかしながら、当該HFA噴射剤の有効性にもかかわらず、また、すでに市場に出ている多くの医薬品に広く適用されているにもかかわらず、有効なpMDIデバイスを得るための代替クラスの噴射剤および代替手段を有する可能性が常に検討されている。この点での一般的な参考文献として、例えば"Pharmaceutical Inhalation Aerosol Technology", Third Edition 2019, Anthony J. Hickey et Alを参照すると、440ページの表18.3では、潜在的に医療用途に適したいくつかの噴射剤が地球温暖化係数の点で比較されている。
【0004】
これは、例えば、バルブまたは缶などのpMDIデバイスの機械的要素の最適化、または噴射剤を使用しない噴霧デバイス、噴霧乾燥システム、またはより環境に優しい影響を特徴とするデバイスを持つ可能性にも関連している。
【0005】
pMDIデバイスについて論じる際に考慮すべき更なる特徴は、当該デバイスによって噴霧される製剤の見かけのpHおよび含水量である。この点での一般的な参考文献として、例えばWO01/89480およびWO03/074024を参照されたい。
【0006】
フルオロカーボンポリマーは、pMDIの缶の内部表面のコーティングに一般的に用いられ、懸濁液製剤について、粒子の付着または缶壁への沈着を取り除き、すなわち固着を回避し、そして副生成物の形成を回避する。
【0007】
EP0820323は、サルメテロールおよびフルオロカーボン噴射剤含み、所望により1つ以上の他の薬理活性剤と組み合わせて含む、吸入薬物製剤を分注するための1つ以上のフルオロカーボンポリマーで内部表面の一部またはすべてがコーティングされたpMDIであって、缶の内部表面が、サルメテロールの付着または沈着の問題を大幅に軽減するまたは本質的に解消する、pMDIを記載している。
【0008】
WO2015/101576は、FEPコーティング缶に含まれる、フォルモテロール、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルおよびグリコピロニウム臭化物溶液と共に使用するのに特に適したpMDIデバイスを記載している。そこに開示されているように、FEPコーティング缶に含まれる製剤は、主にN-(3-ブロモ)-[2-ヒドロキシ-5-[1-ヒドロキシ-2-[1-(4-メトキシフェニル)プロパン-2-イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドに関して、安定性が向上し、分解生成物の量が減少する。実際、この生成物(DP3として確認)は、酸、特に塩酸の存在下で2つの活性成分がHFAエタノール系に溶解されたときに、フォルモテロールと臭化グリコピロニウムからの臭素イオンとの相互作用によって生じる特定の分解生成物である。
【0009】
EP2706987は、呼吸器疾患の処置に特に適した、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルおよびHFA152を含む、pMDIデバイスで使用するための製剤を記載している。
【0010】
WO2018/051131は、実施例1の表4に、良好な化学的安定性を付与された、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルおよびフォルモテロールフマル酸塩二水和物、1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)を含む噴射剤、およびグリセロールを含む医薬製剤を記載している。実際、WO2018/051131の例示された製剤は、酸が存在しないこと、およびグリセロールが存在することを特徴とする。
【0011】
WO2018/051130は、グリコピロレートの少なくとも1つの医薬的に許容される塩を含む薬物成分と、HFA152aを含む噴霧剤成分を含む医薬製剤であって、該製剤が、酸安定化剤を使用することなく満足のいく安定性を示す、製剤を記載している。
【0012】
US20160324778は、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)およびHFO-1234ze(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)より選択される噴射剤、および1つ以上の活性成分、例えばフォルモテロールおよびベクロメタゾンプロピオン酸エステルを含む加圧医薬組成物で使用するための医薬組成物であって、活性成分が、噴射剤との懸濁液または溶液の形態である医薬組成物を記載している。
【0013】
上述の先行技術は有効な製剤およびデバイスの技術的配置を提供しているが、例えば喘息および/またはCOPDの処置のために呼吸器分野で使用するための適切なpMDIデバイスであって、温室効果温暖化係数(GWP)の低下を企図するだけでなく、特に当該デバイスに含まれる製剤の見かけのpHの調整および維持に関して、良好な安定化システムもまた好都合に提供する、デバイスを見出すことが未だ必要とされている。実際、先行技術は、少なくともコルチコステロイド、LABAおよび噴射剤を含む、pMDIデバイスに適した製剤の見かけのpHを緩衝する適切かつ実用的な方法について言及していないことに留意されたい。見かけのpHは実際、特に溶液の形態であるとき、pMDI製剤の多くの側面、例えば、LABA薬の安定性、貯蔵寿命、MDIからのエアゾール中の薬物の一貫した送達、最終製剤の再現性、および缶内の最適な化学条件の維持に影響を与え得る重要なパラメータである。
【0014】
少なくともコルチコステロイド、LABAおよび適切なHFAまたはHFO噴射剤を含むpMDIデバイスに適した製剤の見かけのpHを、内部コーティングされた缶によって安定化できることを予想外にも見出した。
【0015】
驚くべきことに、内部コーティングされた缶の使用により、緩衝剤の存在を回避して、pMDI製剤の見かけのpHを安定に維持できることが分かった。実際、本発明による内部コーティングされた缶は、本明細書の以下の実験パートに示すとおり、長期間であっても見かけのpHを安定化させることができる。この意味で、本発明のコーティングされた缶は、見かけのpH緩衝系として作用することができる。
【0016】
有利には、本発明の少なくともコルチコステロイド、LABAおよび選択されたHFAまたはHFO噴射剤を含有する当該コーティングされた缶は、適切なバルブシステムに圧着され得て、呼吸器疾患、例えば喘息および/またはCOPDの処置のためのpDMIデバイスで容易に用いられ得て、また、長期間にわたる化学成分の良好な安定性、優れたエアゾール化性能、および低いGWPを保証する。
【発明の概要】
【0017】
一態様において、本発明は、少なくともコルチコステロイド、LABA薬およびHFAまたはHFO噴射剤を含む製剤を含む、pMDIデバイスにおける使用のための缶であって、該缶が、少なくともエポキシフェノール樹脂、ペルフルオロ化ポリマー、ペルフルオロアルコキシアルカンポリマー、ペルフルオロアルコキシアルキレンポリマー、ペルフルオロアルキレンポリマー、ポリテトラフルオロエチレンポリマー(テフロン)、フッ素化エチレンプロピレンポリマー(FEP)、ポリエーテルスルホンポリマー(PES)、フッ素化エチレンプロピレンポリエーテルスルホンポリマー(FEP-PES)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、プラズマ、それらの混合物または組合せより選択される化合物を含む、コーティングにより内部コーティングされている、缶を指す。
【0018】
更なる態様において、本発明は、低密度ポリエチレン、ブチルゴム、例えばクロロブチルまたはブロモブチルゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、ネオプレン、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーのポリマー)、TPE(熱可塑性エラストマー)、シクロオレフィンコポリマー(COC)またはそれらの混合物を含む、エラストマー材料で作られた、少なくともガスケットを有する、計量バルブシステムを備える、上記缶を指す。
【0019】
更なる一態様において、本発明は、少なくともコルチコステロイド、LABA薬およびHFA噴射剤を含む当該製剤が、好ましくは無機酸または有機酸および/または共溶媒も含む溶液である、上記に示したコーティング缶に関する。
【0020】
更なる態様において、本発明は、上記に示したコーティング缶を含む、呼吸器分野における使用、特に喘息および/またはCOPDの処置のためのpMDIデバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
他に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0022】
フォルモテロールまたはその塩またはその塩の溶媒和物と酸との間の「モル比」は、製剤中のフォルモテロールまたはその塩またはその塩の溶媒和物のモル数および製剤中の選択された酸のモル数を考慮して計算される。
【0023】
他に断らない限り、用語「フォルモテロールフマル酸塩」または「FF」は、(R,R)-(±)フォルモテロールフマル酸塩またはその二水和物を指す。
【0024】
他に断らない限り、用語「LABA」または「LABA薬」は、当該技術分野で知られている長時間作用型β2アゴニストをその意味に含む。
【0025】
用語「%w/w」は、製剤の総重量に対する成分の重量パーセントを意味する。
【0026】
用語「%w/v」は、製剤の総容量に対する成分の重量パーセントを意味する。
【0027】
本明細書で定義される「安定な」組成物は、HPLC/UV-VISで測定して所与の時点の残存活性成分の含有量が、少なくとも約90%w/w(時間0での初期含有量に対する含有量の重量パーセントである)、好ましくは少なくとも約95%w/wであること、および分解生成物の全含有量が、時間0での活性成分の初期含有量に対して約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下であることを意味する。
【0028】
本明細書で意図する用語「見かけのpH」に関して、pHの計算は、一般に、例えば水が主成分である場合の水性液体の特徴であることに留意されたい。本発明のHFA系などの比較的非プロトン性の溶媒では、プロトンは水和されておらず、それらの活性係数は水溶液中のものとは異なり得る。電磁場(EMF)に関するネルンストの式(反応に関与するイオンの濃度の関数として電気化学セルの電位を記述する)が適用され、pHメーターのガラス電極システムは、プロトン濃度およびビヒクルの極性に従って可変ミリボルト出力を生成し、pHメーターの読みは、本発明による「見かけのpH」を表す。これに関して、本発明による見かけのpHは、例えば“"Correlation between Apparent pH and Acid or Base Concentration in ASTM Medium" Orest Popovych, Analytical Chemistry 1964, 36,4,878-882; Analytical Standard Test Method (ASTM) D6423 - 19 "Standard Test Method for Determination of pH of Denatured Fuel Ethanol and Ethanol Fuel Blends"に示されているように、当該技術分野で公知の技術によって測定することができる。
【0029】
上記のように、本発明は、pMDIデバイスに適したコーティング缶が、少なくともコルチコステロイド、LABA薬およびHFAまたはHFO噴射剤を含む適切な製剤を含むために使用されるとき、このような製剤の見かけのpHは、本明細書で以下に記載するように、例えば製剤の成分および/またはそれらの量に応じて、約2.5~5、好ましくは約3~4.5の間で好都合に緩衝できることを予想外にも示す。このような緩衝系を有することは、特にフォルモテロール量に関して、長時間にわたる製剤の安定性の増加、良好な貯蔵寿命、最終製剤の再現性、缶内の最適な化学的条件の維持、MDIからのエアゾールでの薬物の一貫した送達などのいくつかの利点をもたらす。
【0030】
特に、内部コーティング缶によって安定した見かけのpHを有することで、より複雑な製剤につながる外部の従来の酸塩基緩衝系の追加を回避できる。反対に、内面がコーティングされていない缶は、以下の比較例で示されるように、pMDI溶液製剤について長時間にわたる見かけのpHを一定に保つ効果を示さない。
【0031】
したがって、一実施態様において、本発明は、本明細書および特許請求の範囲に記載される製剤を含み、該製剤の見かけのpHが、約2.5~5、好ましくは約3~4.5の値で安定化されていることを特徴とする、pMDIデバイスで使用するための缶に関する。言い換えれば、本発明はまた、少なくともコルチコステロイド、LABAおよびHFAまたはHFO噴射剤を含む製剤の見かけのpHを、約2.5~5、好ましくは約3~4.5に緩衝するのに適した、本明細書および特許請求の範囲に記載される缶に関する。
【0032】
pMDI製剤の見かけのpHは、例えば酸の濃度などを参照して、製剤の組成によって影響を受け、適切な値の設定は、適切な量およびタイプのLABAおよび/またはコルチコステロイド薬を選択するか、または本明細書で以下に記載するように、更なる成分を製剤に添加することにより達成され得る。
【0033】
缶については、当該技術分野で知られているコーティング缶を本発明に好適に用い得る。したがって、缶は、金属、例えばアルミニウム、または金属合金、ステンレス鋼または陽極酸化アルミニウム、フッ素パッシベーションアルミニウムなどで作られ得る。あるいは、缶は、プラスチックまたは他の適切な材料で作られ得る。好ましくは、缶は、適切にコーティングされた、所望により陽極酸化されたアルミニウムまたはステンレス鋼で作られ得る。コーティングは、典型的に、缶の内部表面に適用され、それ故に、缶の内部表面と缶に含まれる製剤との間の界面として機能する内層を提供する。それにより、内部表面コーティングは、缶表面への製剤の成分の付着を防ぎ、pH緩衝系も設定する。典型的には、内部コーティングは、例えば市場で入手可能なWACOエナメル評価装置を用いて試験されるように、均一性(uniformity)および均質性(homogeneity)の要件を満たす厚さを有することを特徴とするコーティング層を形成する。内部コーティングは、缶の内部表面の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%を覆う。
【0034】
これに関して、本発明の適切なコーティング缶は、好ましくは、エポキシフェノール樹脂、ペルフルオロ化ポリマー、ペルフルオロアルコキシアルカンポリマー、ペルフルオロアルコキシアルキレンポリマー(PFA)、ペルフルオロアルキレンポリマー、ポリテトラフルオロエチレンポリマー(PTFEまたはテフロン)、フッ素化エチレンプロピレンポリマー(FEP)、ポリエーテルスルホンポリマー(PES)、フッ素化エチレンプロピレンポリエーテルスルホンポリマー(FEP-PES)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、プラズマ、それらの混合物または組合せを含む、不活性有機または無機コーティングで内部表面の一部またはすべてがコーティングされ得る。
【0035】
例として、用語「FEPコーティングされた」は、FEPと、添加剤、接着剤、凝集剤、例えばPES、イソブチルケトンを含む任意の更なる成分とを含むコーティング層を指す。
【0036】
上記で列挙したポリマーは、更なる成分と組み合わせて、または例えば2つ以上のポリマー化合物を一緒に混合することにより得られるポリマー混合物の一部として用い得る。これに関して、本発明による缶の内部コーティングは、前記混合物または組合せも含むことを意図している。一実施態様において、本発明のコーティング缶は、FEPまたはPTFEでコーティングされた缶、またはより好ましくはFEP-PESでコーティングされた缶である。FEP-PESコーティングの場合、PESは、内部表面とFEPポリマーの間の中間層として機能するため、より均一で均質なコーティングが保証される。実際、適切な場合には、缶の内部表面に複数のコーティングを適用して、均質性と安定性が向上した二層または多層コーティングを形成し得ることに留意されたい。
【0037】
本発明の一実施態様において、缶は、FEP-PESポリマーを含む内部表面コーティングを有することを特徴とする、アルミニウム缶である。本発明に適したアルミニウムFEPコーティング缶は、例えば市販されており、現場で使用されているものである。
【0038】
本明細書の以下の実験パートに示すとおり、少なくともベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)、フォルモテロールフマル酸塩二水和物、ならびにHFA134aおよびHFA152aより選択されるHFA噴射剤を含む、溶液形態の製剤が、本発明によるFEPコーティング缶に含まれるとき、当該製剤の見かけのpHは、長期間であっても、選択した値に好都合に維持される。対照的に、コーティングされていないアルミニウム缶(陽極酸化されているかどうかにかかわらず)を比較実験として使用するとき、同じ溶液の見かけのpHは、本明細書の下記表1および2(比較)に示すように、経時的に不安定なプロファイルを示す。
【0039】
一実施態様において、本発明によるコーティング缶に含まれる製剤のコルチコステロイド成分は、ブデソニド、ベクロメタゾン(BDP)、例えばモノまたはジプロピオン酸エステル、フルニソリド、フルチカゾン、例えばプロピオン酸またはフロ酸エステル、シクレソニド、モメタゾン、例えばフロ酸エステル、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコート、デフラザコート、ハロプレドン酢酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、ハロメタゾン、リメキソロン、デプロドンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン(fludrocoritisone)、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニド、エチプレドノールジクロアセテートからなる群より選択され、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)およびブデソニドが特に好ましい。更なる好ましい実施態様において、コルチコステロイド成分は、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)である。
【0040】
本発明によるコーティング缶に含まれる製剤の噴射剤は、ヒドロフルオロアルカン(HFA)およびヒドロフルオロオレフィン(HFO)より選択される。
【0041】
好ましい一実施態様において、本発明によるコーティング缶に含まれる製剤のHFA噴射剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227a)、1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0042】
好ましい更なる実施態様において、HFA噴射剤は、HFA134aおよびHFA152aまたはそれらの混合物より選択される。
【0043】
好ましい一実施態様において、HFA噴射剤は、HFA134aである。
【0044】
同等に好ましい一実施態様において、HFA噴射剤は、HFA152aである。
【0045】
一実施態様において、本発明によるコーティング缶に含まれる製剤のHFO噴射剤は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)および2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)からなる群より選択される。好ましくは、HFO噴射剤は、HFO-1234zeである。
【0046】
好ましくは、噴射剤がHFA134aであるとき、本発明によるコルチコステロイド成分の量は、0.1~0.5%w/w、より好ましくは0.1~0.3%w/w、さらにより好ましくは0.1~0.2%w/wに含まれる。
【0047】
別の実施態様によれば、噴射剤がHFA152aであるとき、本発明によるコルチコステロイド成分の量は、0.1~0.7%w/w、より好ましくは0.1~0.5%w/w、さらにより好ましくは0.2~0.4%w/wに含まれる。
【0048】
本発明によるコーティング缶に含まれる製剤のLABA成分に関して、これは、好ましくは、サルブタモール、(R)-サルブタモール(レバルブテロール)、フェノテロール、フォルモテロールフマル酸塩、アルフォルモテロール、カルモテロール(TA-2005)、インダカテロール、ミルベテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ビランテロール、オロダテロール、アベジテロール、テルブタリン(terbultaline)、サルメテロール、ジアステレオマー混合物、およびその医薬的に許容される塩またはその水和物からなる群より選択される。一実施態様において、LABAは、フォルモテロールフマル酸塩、好ましくはフォルモテロールフマル酸塩二水和物である。好ましくは、噴射剤がHFA134aであるとき、本発明によるLABAの量は、0.005~0.020%w/w、より好ましくは0.010~0.020%w/w、さらにより好ましくは0.010~0.016%w/wに含まれる。別の実施態様において、噴射剤がHFA152aであるとき、本発明によるLABAの量は、0.005~0.030%w/w、より好ましくは0.010~0.027%w/w、さらにより好ましくは0.012~0.022%w/wに含まれる。
【0049】
本発明によるコーティング缶に含まれる製剤は、懸濁液または溶液の形態であり得る。一実施態様において、選択したコルチコステロイドおよびLABA成分は、好ましくは、上記で定義したHFAまたはHFO噴射剤に溶解され、それ故に、溶液を提供する。したがって、特に好ましい一実施態様において、本発明は、少なくともベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フォルモテロールフマル酸塩二水和物、およびHFA134aおよび/またはHFA152aを含む溶液を含有する、pMDIデバイスにおける使用のためのFEPコーティング缶に関する。
【0050】
上記のように、本発明によるコーティング缶に含まれる製剤は、所望により、更なる成分、例えば添加剤、添加物、溶媒、共溶媒、酸、低揮発性成分または更なる活性成分をさらに含む。当該成分の添加は、本発明に従って、例えば製剤の化学物理特性を調整(module)するため、および/または一定に保つことが望まれる適切な見かけのpHを設定するために、適切に調整され得る。これに関して、好ましい一実施態様において、本発明は、コルチコステロイド、LABA薬、HFAまたはHFO噴射剤、および所望により共溶媒および/または酸および/または低揮発性成分を含む製剤を含む、pMDIデバイスにおける使用のためのコーティング缶に関する。
【0051】
好ましくは、当該共溶媒は、製剤中の成分の溶解性を増加させることができる極性化合物である。適切な共溶媒の例は、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど、好ましくはエタノール、より好ましくは無水エタノールである。
【0052】
存在する場合、当該共溶媒は、5%w/w~20%w/w、より好ましくは10%~15%の量で用いられる。
【0053】
一実施態様において、酸は、無機酸または有機酸であり得て、好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硝酸、フマル酸、リン酸およびクエン酸より選択され、塩酸が特に好ましい。さらに好ましい実施態様であれば、酸は、濃縮または希釈された、好ましくは1Mの塩酸である。酸がHCl 1Mであり、噴射剤がHFA134aであるとき、0.010~0.050%w/w、好ましくは0.012~0.025%w/w、さらにより好ましくは0.015~0.025%w/wの量で用いられる。
【0054】
別の実施態様によれば、酸がHCl 1Mであり、噴射剤がHFA152aであるとき、0.014~0.070%w/w、好ましくは0.016~0.035%w/w、さらにより好ましくは0.020~0.035%w/wの量で用いられる。
【0055】
一般に、選択した酸の量は、好ましくは、上記のように約2.5~5、好ましくは3~4.5に含まれる溶液の最終見かけのpHを有するために、選択される。本発明によれば、コーティング缶を用いることにより、選択した見かけのpHは、酸の存在によってpHが設定された場合でも、経時的に安定かつ実質的に不変に維持され、それ故に、無機酸または有機酸の存在下で、少なくともコルチコステロイド、LABA薬および噴射剤を含む、pMDI適用に適した製剤のpHをどのように制御するおよび安定化させるかの課題を解決する。
【0056】
本発明の一実施態様において、LABAと酸との間のモル比は、存在する場合、0.50~1.50、好ましくは0.9~1.1である。実際、この範囲では、最終製剤の安定性が特に好都合な程度まで増加することに留意されたい。
【0057】
存在する場合、低揮発性成分は、25℃にて0.1kPa未満、好ましくは0.05kPa未満の蒸気圧を有し、好ましくはグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールまたはそれらのエステル、パルミチン酸アスコルビル、ミリスチン酸イソプロピルなどからなる群より選択され、ミリスチン酸イソプロピルおよびグリセロールが特に好ましい。
【0058】
一実施態様によれば、本発明の製剤は、製剤の総重量に対して、好ましくは3000ppm未満、より好ましくは2000ppm未満、さらにより好ましくは1500ppm未満の量の水を含有する。
【0059】
本発明により、コルチコステロイド、LABA薬およびHFAまたはHFO噴射剤を含む商業目的のpMDI製剤の見かけのpHをどのように効果的に緩衝するかの問題が、驚くべきことに、緩衝するが、それにもかかわらず、缶に含まれる製剤の安定性および/または有効性を損ない得る、追加の成分または物質なしに解決されることは注目に値する。また、製造の観点から、本発明は、簡単で統合された製造プロセスを用いて、本明細書に記載のコーティング缶を含む、すぐに使用できるpMDIデバイスの製造を可能にする。さらに、HFA152aまたはHFO-1234zeなどのグリーン噴射剤の使用により、本発明は、上記の問題を解決するだけでなく、他のフッ素化噴射剤の長期使用から生じる潜在的な環境問題にも対処することができる。
【0060】
上記で示したように、本発明による使用のためのコーティング缶はまた、更なる技術的特徴、例えば計量バルブシステムにより特徴付けることができる。実際、驚くべきことに、特化した計量バルブの使用は、本発明によるコーティング缶の見かけのpH緩衝作用をさらに増加させ、残留フォルモテロール、製剤の全体的な安定性および有効性に関しても有益であることが見出された。一般に、pMDIデバイスの缶は、活性成分の治療有効用量を送達するための計量バルブに圧着されている。計量バルブアセンブリは、少なくともガスケットシールを含む。好ましくは、バルブは、同じまたは異なる材料製の2または3つのガスケットを含む。これに関して、本発明によれば、バルブは、同じまたは異なる材料製の2または3つのガスケットを備える。したがって、本発明によれば、少なくとも1つのガスケットは、低密度ポリエチレン、ブチル、例えばクロロブチルまたはブロモブチル、ブタジエン-アクリロニトリル、ネオプレン、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーのポリマー)、TPE(熱可塑性エラストマー)、シクロオレフィンコポリマー(COC)またはそれらの組合せより選択されるポリマーの少なくとも1つを含む適切なエラストマー材料で作られている。
【0061】
好ましくは、バルブは、3つのガスケットを備え、さらにより好ましくは、それらのすべてがEPDM製であり、そして本明細書では、B-バルブと称される。
【0062】
同等に好ましい一実施態様において、バルブは、COC製のガスケットを、EPDM製の2つのガスケットと共に備え、そして本明細書では、A-バルブと称される。
【0063】
好ましい更なる実施態様において、バルブは、2つのガスケットを備え、好ましくは、それらの両方がクロロブチルポリマー製であり、そして本明細書では、V-バルブと称される。
【0064】
好ましい更なる一実施態様において、バルブは、ブチルゴム製のガスケットを、EPDM製の2つのガスケットと共に備える。
【0065】
本発明による計量バルブは、典型的には、作動当たり25~150μlの範囲、好ましくは50~100μlの範囲、およびより好ましくは50μlまたは70μlの量を送達することができる。本発明に適したバルブは、市場で、例えば当該分野でよく知られている製造業者から入手可能である。
【0066】
さらに、選択したHFA噴射剤に応じて、バルブの選択が最終的なpMDIデバイスの有効性および信頼性を好都合に向上し得ることを見出した。例えば、HFA152a噴射剤を本発明によるコーティング缶で用いるとき、A-バルブまたはV-バルブは、例えばB-バルブより最終製剤の安定性を改善する。この安定性の改善は、本願実験パートに示すように、製剤が溶液の形態である場合にさらに強化される。実際、B-バルブは、HFA152噴射剤と組み合わせて用いるとき、当該噴射剤の漏出につながる可能性があり、それは製品の望ましくない損失をもたらす可能性があり、経時的にpMDIデバイスの有効性を損なう可能性がある。驚くべきことに、A-バルブまたはV-バルブを本発明によるコーティング缶でHFA152a噴射剤と組み合わせて用いるとき、見かけのpHの緩衝作用が最大化されるだけでなく、製剤の漏出も実質的に回避される。これは、最終的なpMDIデバイスで容易に使用される効果的で好都合なシステムを生じさせる。有利には、HFA134a噴射剤を本発明によるコーティング缶で用いるとき、B-バルブまたはA-バルブまたはV-バルブのいずれかを好都合に用い得る。この汎用性は、本発明による缶を含む最終的なpMDIデバイスの幅広い用途およびカスタマイズの可能性をもたらし、したがって、患者および/または市場の様々なニーズおよび要件を達成する。
【0067】
好ましい実施態様によれば、噴射剤がHFA152aであるとき、バルブは、A-バルブおよびV-バルブより選択され、A-バルブがさらにより好ましい。
【0068】
別の実施態様において、噴射剤がHFA134aであるとき、バルブは、B-バルブ、A-バルブおよびV-バルブより選択され、B-バルブおよびA-バルブがより好ましい。
【0069】
したがって、好ましい一実施態様において、本発明は、少なくともBDP、フォルモテロールフマル酸塩二水和物、HClおよびHFA152a噴射剤を含む製剤を含む、pMDIデバイスにおける使用のためのFEPコーティング缶であって、該FEPコーティング缶が、A-バルブまたはV-バルブより選択されるバルブを有する、FEPコーティング缶に関する。この実施態様によれば、缶は、所望によりエタノール、好ましくは無水エタノールをさらに含む。
【0070】
また更なる実施態様において、本発明は、少なくともBDP、フォルモテロールフマル酸塩二水和物、HClおよびHFA134a噴射剤を含む製剤を含む、pMDIデバイスにおける使用のためのFEPコーティング缶であって、該FEPコーティング缶が、B-バルブ、A-バルブおよびV-バルブより選択されるバルブ、好ましくはV-バルブまたはA-バルブを有する、FEPコーティング缶に関する。この実施態様によれば、缶は、所望によりエタノール、好ましくは無水エタノールをさらに含む。
【0071】
本発明によりpMDIデバイスにおける使用のためのコーティング缶は、当該分野で使用される一般的な方法によって、選択した製剤で満たされ得る。
【0072】
一般的な例として、当該方法は、下記工程:
a)フォルモテロールフマル酸塩、BDPおよびエタノールを含む溶液を調製する工程;
b)FEPコーティング缶を該溶液で満たす工程;
c)フォルモテロールフマル酸塩二水和物と酸との間のモル比が0.50~1.50となる量のHClを添加する工程;
d)1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)噴射剤を添加する工程;
e)Aptarバルブに圧着し、ガス処理する(gassing)工程および
を含み得る。
【0073】
本発明によるコーティング缶を含むpMDIは、例えば喘息および/またはCOPDを処置するための周知の製剤として既に市場に出ているものなどの、一般的に使用されるpMDIデバイスの配置および構成を有し得る。
【0074】
他に断らない限り、上記の実施態様はすべて一緒に組み合わせ得て、本発明の範囲の一部とみなされるべきものであることが意図される。
【0075】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0076】
(実験パート)
以下の実施例1および2では、見かけのpHを、有機媒体中のpHを測定するために一般的に使用される標準的なLiCl電極を用いて測定した。MDI加圧製品であるので、製剤の見かけのpHを測定するために、次の手順を適用した:
1.キャニスターを少なくとも-50℃まで冷却する(キャニスターをドライアイス浴または液体窒素に浸し、内圧を大気圧まで下げる)。
2.バルブを切断してキャニスターを開き、噴射剤を室温で蒸発させる。
3.残りのエタノール溶液(APIを含む)をガラスバイアルに注ぎ、無水エタノールで10mlの容量にして、標準的なLiCl電極で測定するのに十分な容量にする。
4.LiCl電極を使用して、再構成した溶液の見かけのpHを測定する。
【0077】
実施例1
本発明によるアルミニウムFEPコーティング缶を、HFA134aの存在下で、フォルモテロールフマル酸塩二水和物(0.010%w/w)、BDP(0.172%w/w)、HCl 1M(0.024%w/w)およびエタノール(12%w/w)を含む溶液で満たした(溶液1)。
【0078】
同様に、本発明によるアルミニウムFEPコーティング缶を、HFA152aの存在下で、FF(0.011%w/w)、BDP(0.18%w/w)、HCl 1M(0.026%w/w)およびエタノール(12%w/w)を含む溶液で満たした(溶液2)。
【0079】
溶液1または2で満たし、バルブA、BまたはVを備えたアルミニウムFEPコーティング缶を、25℃、60%R.H.(相対湿度)の安定性チャンバーに入れた。溶液1および2の両方の見かけのpH(App pH)、および初期含有量に対するフォルモテロールフマル酸塩二水和物(FF%w/w)の残存率を、それぞれT=0、1、3および6か月後にて測定した。
【0080】
【0081】
実施例2(比較)
コーティングされていないアルミニウム缶を用いて、実施例1と同じ分析を行った。
【0082】
溶液1および2の両方の見かけのpH(App pH)を、種々のバルブを用いて、それぞれT=0、1、3および6か月後にて測定した。
【0083】
【0084】
上記の表1および2から明らかなとおり、示したバルブを備えた本発明によるFEPコーティング缶の使用は、T=0と比較したとき、長期間、例えば6か月後であっても、その中に含まれる溶液のpHの好都合な安定化を保証する。
【0085】
反対に、コーティングされていない缶(比較)を使用すると、室温と見なし得る25℃でわずか1か月保存した後でも、T=0での測定値に対してpHが大幅に上昇し、FF%w/wが低下する可能性がある。
【国際調査報告】