(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】組織を回復および再生させるための生物学的充填剤
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20230313BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545858
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021015277
(87)【国際公開番号】W WO2021154845
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519278619
【氏名又は名称】ジェニフィス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ボイティク-ハービン,シェリー エル
(72)【発明者】
【氏名】プルス,セオドア ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AB18
4C081AB19
4C081BA12
4C081BA14
4C081BB08
4C081BB09
4C081CD121
4C081CE02
4C081CF21
4C081CF24
4C081DA15
(57)【要約】
形状保持マトリックスを形成するように構成された自己集合するバイオポリマーを用いて組織の空隙および欠陥を充填するための組成物および方法を記載する。本明細書において記載されるように、本発明者らは、インサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンと中和(自己集合)緩衝剤を含む流動性組織充填剤を開発した。液体コラーゲンと中和緩衝剤とを混合した後、中和されたコラーゲン溶液を使用して、アクセスするには深くおよび/または困難で不規則な形状の組織の空隙を含む、組織の空隙(例えば、外科的創傷)または欠陥を充填することができる。適用の際、適用された溶液は、分子自己集合を介して急速に(体温において約1分で)原線維を形成する。得られた組織充填マトリックスは、組織形状および組織稠度を経時的に回復させ、維持し、細胞化、血管新生化、および新規の組織形成によって特徴付けられる組織埋込応答を引き起こし、典型的には創傷治癒で観察される炎症応答または典型的には従来の組織埋込応答で観察される異物反応を引き起こすことはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、
自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと;
自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することと
を含む方法。
【請求項2】
自己集合するバイオポリマーがインサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
インサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンがコラーゲン分子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
コラーゲン分子の少なくとも一部が、1つまたは複数の分子間架橋によって共有結合されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
患者が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
導入することが滅菌条件下で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
自己集合するバイオポリマーがインサイチュ重合性コラーゲンを含み、形状保持マトリックスがコラーゲン原線維マトリックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
自己集合するバイオポリマーが液体I型コラーゲンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
自己集合するバイオポリマーが、ブタ真皮由来のI型オリゴマーコラーゲンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、該溶液が、緩衝液を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
自己集合するバイオポリマーが、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
自己集合するバイオポリマーが、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含む溶液を含み、該溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、500mJ/cm
2の紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
導入することが、シリンジを介して組織の空隙または欠陥中に自己集合するバイオポリマーを注射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
組織の空隙または欠陥が乳腺腫瘍摘出術手順によって生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
組織の空隙または欠陥が乳房切除術手順によって生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
組織の空隙または欠陥を充填することが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
組織の空隙または欠陥を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
組織の空隙または欠陥を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
組織の空隙または欠陥を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
組織の空隙または欠陥を充填することに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、組織の空隙または欠陥が、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じ、
オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;
オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することと
を含み;
オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【請求項30】
オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
酸が0.01N塩酸を含み、オリゴマーコラーゲン溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、組織の空隙または欠陥が、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じ、
オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;
オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することと
を含み;
オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含み;
オリゴマーコラーゲン溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLであり;
オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、方法。
【請求項33】
オリゴマーコラーゲン溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されているか、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されているか、紫外線を照射されているか、またはこれらの組合せが行われている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
組織の空隙または欠陥が創傷を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
組織の空隙または欠陥が乳房腫瘍の除去に起因する、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
自己集合するバイオポリマーが組織充填剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
組織の空隙または欠陥を充填することが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
組織の空隙または欠陥を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
組織の空隙または欠陥を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
組織の空隙または欠陥を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
組織の空隙または欠陥を充填することに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
創傷を充填するための方法であって、
オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を創傷中に導入することと;
オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することと
を含み;
オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【請求項45】
凍結乾燥したタイプのオリゴマーコラーゲンが凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
創傷が外科的創傷を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
外科的創傷が腫瘍の除去に起因する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
外科的創傷が乳房腫瘍の除去に起因する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
オリゴマーコラーゲン溶液が組織充填剤を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
創傷を充填することが、欠陥萎縮および瘢痕組織形成をもたらさない、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
創傷を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
創傷を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
創傷を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
創傷を充填することに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
患者の組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させるための方法であって、
自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと;
自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することと
を含む方法。
【請求項56】
組織の空隙または欠陥が創傷を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、脂肪組織とともに骨格筋の生成をもたらす、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
骨格筋組織を回復および再生させることに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、請求項55に記載の方法。
【請求項64】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させるための方法であって、
オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;
オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することと
を含み;
オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【請求項65】
組織の空隙または欠陥が創傷を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、脂肪組織とともに骨格筋の生成をもたらす、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
骨格筋組織を回復および再生させることに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入し、自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することによって調製されるコラーゲンマトリックスであって、自己集合するバイオポリマーのpHが約5.5から約8.5の範囲であり、自己集合するバイオポリマーの自己集合時間が約0.2分から約1.5分の範囲であり、コラーゲンマトリックスのせん断貯蔵係数(G’)が約2.0kPaから約4.0kPaの範囲であり、コラーゲンマトリックスのせん断損失係数(G”)が約0.1kPaから約0.7kPaの範囲であり、コラーゲンマトリックスの圧縮係数が約5.0kPaから約10.0kPaの範囲である、コラーゲンマトリックス。
【請求項74】
自己集合するバイオポリマーのpHが約7.25±約0.25であり、自己集合するバイオポリマーの自己集合時間が約0.8分±約0.3分であり、コラーゲンマトリックスのせん断貯蔵係数(G’)が約3.1kPa±約0.4kPaであり、コラーゲンマトリックスのせん断損失係数(G”)が約0.4kPa±約0.1kPaであり、コラーゲンマトリックスの圧縮係数が約7.7kPa±約1.9kPaである、請求項73に記載のコラーゲンマトリックス。
【請求項75】
組織の空隙または欠陥において組織を回復および再生させるためのキットであって、インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキット。
【請求項76】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が液体I型コラーゲンを含む、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、ブタ真皮由来のI型オリゴマーコラーゲンを含む、請求項75に記載のキット。
【請求項78】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項79】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項80】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項81】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物対緩衝液の比が約9:1である、請求項75に記載のキット。
【請求項82】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の該溶液のコラーゲンの濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、請求項75に記載のキット。
【請求項83】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の該溶液は、超遠心分離法を使用して清澄化されている、請求項75に記載のキット。
【請求項84】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、請求項75に記載のキット。
【請求項85】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、請求項75に記載のキット。
【請求項86】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の該溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、500mJ/cm
2の紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、請求項75に記載のキット。
【請求項87】
組織の空隙または欠陥にインサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液との混合物をデリバリーするために構成されたシリンジを更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項88】
緩衝液が、約0.03mMから約0.2mMのMgCl
2を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項89】
緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl
2を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項90】
緩衝液が、約0.02mM未満のMgCl
2を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項91】
緩衝液がMgCl
2を含まない、請求項75に記載のキット。
【請求項92】
緩衝液が、約0.003Mから約0.03MのKH
2PO
4を更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項93】
緩衝液が、約0.01Mから約0.1MのNa
2HPO
4を更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項94】
緩衝液が、約0.001Mから約0.04MのKClを更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項95】
緩衝液が、約0.2Mから約3.0MのNaClを更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項96】
緩衝液が、約0.02Nから約0.2NのNaOHを更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項97】
緩衝液が、約0.2重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項98】
緩衝液が約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、請求項75に記載のキット。
【請求項99】
緩衝液がグルコースを含まない、請求項75に記載のキット。
【請求項100】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、請求項75に記載のキット。
【請求項101】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、請求項75に記載のキット。
【請求項102】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを含む中和されたコラーゲン充填剤中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、請求項75に記載のキット。
【請求項103】
コラーゲン溶液が約0.005N塩酸から約0.1N塩酸を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項104】
緩衝液が、インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを混合することを含む単一の混合工程において、インサイチュ重合性コラーゲン組成物を重合させるように構成されている、請求項75に記載のキット。
【請求項105】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物および緩衝液が個別の容器中に存在する、請求項75に記載のキット。
【請求項106】
個別の容器が滅菌バイアルを含む、請求項105に記載のキット。
【請求項107】
個別の容器が、デュアルバレルシリンジの個別のコンパートメントを含む、請求項106に記載のキット。
【請求項108】
デュアルバレルシリンジが混合エレメントを含む、請求項107に記載のキット。
【請求項109】
デュアルバレルシリンジが滅菌されている、請求項107に記載のキット。
【請求項110】
キットの構成要素を使用するための取扱説明書を更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項111】
組織の空隙または欠陥に局所デリバリーするために構成された少なくとも1つの治療剤を更に含む、請求項75に記載のキット。
【請求項112】
少なくとも1つの治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、抗生剤、鎮痛剤、またはこれらの組合せを含む、請求項111に記載のキット。
【請求項113】
組織の空隙または欠陥が創傷を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項114】
組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項115】
組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、請求項75に記載のキット。
【請求項116】
組織の空隙または欠陥が乳房腫瘍の除去に起因する、請求項75に記載のキット。
【請求項117】
乳房温存外科手術後の組織を再生するためのものである、請求項75に記載のキット。
【請求項118】
組織の空隙または欠陥においてマトリックスを調製するためのものである、請求項75に記載のキット。
【請求項119】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが紫外線照射を使用して滅菌されている、請求項78に記載のキット。
【請求項120】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物の重合から得られたコラーゲンマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、請求項119に記載のキット。
【請求項121】
重合特性がせん断貯蔵係数である、請求項119に記載のキット。
【請求項122】
照射線量が、約5mJ/cm
2から約800mJ/cm
2の範囲である、請求項119に記載のキット。
【請求項123】
照射線量が、約30mJ/cm
2から約300mJ/cm
2の範囲である、請求項119に記載のキット。
【請求項124】
滅菌がウイルスを不活性化させている、請求項119に記載のキット。
【請求項125】
インサイチュ重合性コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、UVC照射を使用して滅菌されている、請求項119に記載のキット。
【請求項126】
コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、請求項119に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年1月27日に出願された米国特許仮出願第62/966,398号、および2020年4月27日に出願された米国特許仮出願第63/015,946号の利点を請求する。その両方の内容全体が参照により本明細書に組み込まれるものとし、ただし、開示または定義に本明細書といずれかの矛盾がある場合には、本明細書における開示または定義が優先されるとみなされるものとする。
【0002】
本教示は、全般的に、組織充填剤を用いて組織の空隙および欠陥を処置して組織を回復および再生させるための方法、ならびに組成物ひいてはキットに関する。
【背景技術】
【0003】
乳がんは、女性において最も一般的に診断されるがんであり、世界中では毎年2百万件を超える新規症例が、米国だけでも年間およそ330,000件が認められている。これらの症例の60~70%(世界的には約130万件)は、初期段階の乳がんのための標準治療の典型である乳房温存外科手術(BCS;あるいは乳腺腫瘍摘出術として公知である)を用いて処置されていることが推測される。従来のBCSは、美容的に判別された小さな切開によって、健常組織の腫瘍およびがんを含まないマージン(陰性マージン)の除去を伴う。補助照射を伴うBCSは、同等の生存率が得られ、同時に患者の乳房を温存し、外科手術時間、回復時間、および合併症を減少させるため、適格な患者に関しては全乳房切除術(すなわち、乳房全体の除去)よりも好まれる。乳がんの生存率は比較的高い(約90%)ため、長期転帰およびサバイバーシップはこの疾患の処置に関して特に重要である。特にBCSに関して、1回の外科手術においてがん組織を完全に除去し(陰性マージンの取得)、乳房の形状、外観および稠度を保存すること(すなわち、満足のいく乳房美容術)が、十分な転帰と患者のクオリティーオブライフとを達成するために最も重要である。
【0004】
BCSの主要な課題のうちの1つは、十分な組織を切除して全てのがんを除去し、同時に許容される美容的転帰を維持することである。BCSに関する標準的な実施ガイドラインは、腫瘍を切除した後に、「可能な限り美容上良好に層における切除(外科的)の欠陥を閉鎖すること」を伴う。次いで、複雑な外科的創傷の治癒が続き、後に残された組織の空隙が漿液および/または血液で満たされて、最初に漿液腫または血腫が形成され、続いて瘢痕が形成され、萎縮する。外科医にとって、特に、乳房の腫瘍サイズ、形状、および位置における患者の有意なばらつき、ならびに補助照射療法の影響によって悪化する組織修復プロセスの予測不可能な性質を考慮すると、BCSの美容的転帰を予測することは不可能ではないにしても極めて困難なことである。このため、比較的高いレベルでBCS関連の乳房変形が残り、およそ3分の1の女性が不十分な美容術(例えば、くぼみ、ゆがみ、および乳房間の非対称)を経験している。そのような転帰は、乳がんサバイバーのクオリティーオブライフ全体を低下させ、瘢痕形成および萎縮による乳房の疼痛および不快感、抑うつ、不安感、および不安症の感覚を増加させ、自尊心、身体イメージ、および親密性に悪影響を与えることが最終的に示されている。更に、二次的外科手術手順(例えば、後に残された腫瘍の再切除、およびくぼみ/変形を修復するための修正/再構築の手順)の必要性はBCSに関して依然として高いままであり、20~40%の範囲と推定される。これには、陽性マージンに起因する再切除、ならびに乳房変形を修復するための修正および再構築の手順が含まれる。全体としては、これらの不良転帰および合併症に起因する最初のBCS後の再手術によって、追加の手順ごとに平均で16,000ドル以上の医療費が増加することが推測される。これらの課題および懸念に基づくと、BCSは、全ての女性、特に乳房サイズと比較して大きな(直径>5cm;腫瘍:乳房容量が1.5%パーセントを超える)腫瘍を有するものまたは乳房の四分円の下の範囲内のものに対する選択肢とすることはできない場合がある。したがって、乳房外科医は、BCSの腫瘍学的および美容的転帰を更に最適化し、この保守的な治療法をより多くの患者に、望ましい転帰とともに自信をもって拡大適用することを可能にするための新規の治療選択肢を必要としている。
【0005】
現在のところ、外科医が、例えば乳房を予測どおりに組織を回復、再構築、または再生させることを可能にする追加の組織製品は存在しない。更に、外科医がこの課題のための解決策を積極的に探していることは明らかである。特に、多くの外科医は、BioZorbと称される比較的新しい3次元らせん形状の腫瘍床生物吸収性マーカーを使用することを試みてきており、これは、標的とされる術後補助照射療法のために外科的空洞または乳腺腫瘍摘出術の欠陥をマークすることを主に意図する。乳房外科医は、この埋め込み型デバイスを、マーカーの役割を果たすだけではなく、組織の空隙を満たし、美容的結果を改善するであろうという希望とともに適用してきた。しかし、特にそれは硬くて触診可能な埋込体をもたらし、最大2.8年間持続し、患者の疼痛および不快感を増加させるため、外科医と患者の両者がBioZorbに一様に満足してはいない。更に、外科医は、それが他の放射線マーカーと比較して高価であり、転帰を有意に改善しないことを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、2つの実験的外科的再構築の選択肢、すなわち自家脂質(fat)移植(リポフィリングまたは脂質移植としても知られる)およびオンコプラスティックサージャリーが存在し、これらはBCSの美容的転帰を改善し、BCS適格患者集団を潜在的に拡大することを目的としている。脂質移植は、身体の1つの領域から脂肪吸引を介して脂質(脂肪(adipose)組織)を採取し、最小限に処理された脂質組織を別の領域(例えば、組織の空隙)中に再注射することを伴う。もともとは、脂質移植は、遅らせた乳房再構築手順のために使用されていたが、最近になって、BCS直後に使用するために調査されている。このアプローチに伴う問題としては、顕著な容量損失(25%から80%の範囲)につながる急速な再吸収、脂質壊死、油嚢胞形成、微小石灰化、および腫瘍学的安全性に関する疑問(すなわち、がんの再発)がある。一方、オンコプラスティックサージャリーを外科腫瘍学および形成外科手術の技術と組み合わせて、乳腺腫瘍摘出術時に乳房再構築が行われる。オンコプラスティック手順は、容量置き換え(残りの健常乳房組織の再配置)と容量補充(さまざまな自家組織フラップを用いた再構築)の両方の技術を含む。両方の外科的再構築手順が患者自身の組織を使用することの利点を示し、ある程度の成功を収めているが、これには専門分野別のトレーニング、頻繁な複数の外科医の関与、および長時間の外科手術手順が必要とされ、したがって、その利用可能性が制限され、費用が増加する。現在のところ、必要とされる専門分野別のトレーニングと、美容術を改善するために腫瘍学的安全性および有効性を犠牲にしてしまう懸念が残ることとに起因して、これらの技術はまだ広範に採用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術によれば、組織稠度を有する線維状コラーゲンマトリックスに移行するより前に、いずれのタイプの組織の空隙または欠陥-これらに限定されないが、外科的創傷に起因する組織の空隙(例えば、これらに限定されないが、BCSから生じた外科的創傷を含む)、身体的欠陥(例えば、瘢痕、くぼみ、先天性欠損など)、損傷、疾患の進行、および/または同類のものを含む-にも液体として適用してもよい回復性および再生性組織充填剤が記載されている。
【0008】
本明細書において記載されるように、発明者らは、インサイチュ(in-situ)重合性オリゴマーコラーゲンおよび中和(自己集合)緩衝剤を含む流動性組織充填剤を開発した。液体コラーゲンと中和緩衝剤とを混合した後、中和されたコラーゲン溶液を使用して、アクセスするには深くおよび/または困難で不規則な形状の組織の空隙を含む、組織の空隙(例えば、外科的創傷)または欠陥を充填することができる。適用の際、適用された溶液は、分子自己集合を介して急速に(体温において約1分で)原線維を形成する。得られた組織充填マトリックスは、組織形状および組織稠度を経時的に回復させ、維持し、細胞化、血管新生化、および新規の組織形成によって特徴付けられる組織埋込応答を引き起こし、典型的には創傷治癒で観察される炎症応答、または典型的には従来の組織埋込応答で観察される異物反応を引き起こすことはない。
【0009】
いくつかの実施形態において、本教示による組織充填剤は、以下の利点のうちの1つまたは複数を提供する場合がある:(1)瘢痕組織形成が少ない(すなわち、従来の非充填手順と比較して)かまたはない;(2)欠陥萎縮が少ない(すなわち、従来の非充填手順と比較して)かまたはない;(3)炎症性メディエーターまたは炎症応答が少ない(すなわち、従来の非充填手順と比較して)かまたはない;(4)組織稠度が天然組織のものと類似している(例えば、圧縮係数または圧縮係数の範囲が天然組織のものと類似している);(5)脂肪組織、乳腺組織などを含む乳房組織の回復および生成;(6)骨格筋の回復および生成;(7)組織埋込応答が、再切除、超音波検査、またはX線撮影を含む所定の臨床的手順に干渉しない;および/または(8)組織埋込応答が少ない(すなわち、従来の手順と比較して)または補助照射による悪影響を受けない(例えば、いずれかがイメージングに干渉する場合がある、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域が少ないかまたはない)。
【0010】
いくつかの実施形態において、本教示による組織の空隙または欠陥を充填するための方法は、(a)自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと、(b)自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、本教示による乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じる組織の空隙または欠陥を充填するための方法は、(a)オリゴマーコラーゲン溶液と中和溶液とを含む混合物を組織の空隙または欠陥中に導入することと;(b)オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含む。オリゴマーコラーゲン溶液は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含んでいてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じる組織の空隙または欠陥を充填するための方法は、(a)オリゴマーコラーゲン溶液と中和溶液とを含む混合物を組織の空隙または欠陥中に導入することと;(b)オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーコラーゲン溶液は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、オリゴマーコラーゲン溶液の濃度は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである。いくつかの実施形態において、オリゴマーコラーゲン溶液対中和溶液の比は約9:1である。
【0013】
他の実施形態において、上述の方法のいずれかに従って調製されたコラーゲンマトリックスが提供される。更なる実施形態において、コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキットが提供される。更なる実施形態において、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲン、塩酸溶液、および緩衝液を含むキットが提供される。更なる実施形態において、コラーゲンマトリックスに許容可能な1つまたは複数の治療剤-これらに限定されないが、化学療法剤、抗炎症剤、抗生剤、鎮痛剤、および/または同類のもの、ならびにこれらの組合せを含む-が提供され、その結果、1つまたは複数の治療剤は、組織の空隙または欠陥の部位におけるマトリックス内にデリバリーされるように構成されている。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の治療剤は、組織の空隙または欠陥の部位におけるマトリックス内に局所デリバリーされるように構成されている。
【0014】
本教示の追加の特徴および利点は、以下の列挙される各項のいずれかにおいて示す実施形態によって記載される場合がある。本明細書において記載される実施形態のいずれも、実施形態が互いに矛盾しない範囲で本明細書において記載されるその他の実施形態に関連させて使用してもよいことを理解されたい。したがって、以下の列挙される各項のいずれの適用可能な組合せも検討される。
【0015】
1.患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと;自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することとを含む方法。
【0016】
2.自己集合するバイオポリマーがインサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンを含む、第1項に記載の方法。
【0017】
3.インサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンがコラーゲン分子を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
4.コラーゲン分子の少なくとも一部が、1つまたは複数の分子間架橋によって共有結合されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
5.患者が哺乳動物である、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
6.患者がヒトである、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
7.導入することが滅菌条件下で達成される、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
8.自己集合するバイオポリマーがインサイチュ重合性コラーゲンを含み、形状保持マトリックスがコラーゲン原線維マトリックスを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
9.自己集合するバイオポリマーが液体I型コラーゲンを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
10.自己集合するバイオポリマーが、ブタ真皮由来のI型オリゴマーコラーゲンを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
11.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
12.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
13.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、緩衝液を更に含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
14.自己集合するバイオポリマーが、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
15.自己集合するバイオポリマーが、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
16.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含む溶液を含み、溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
17.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
18.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
19.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
20.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、500mJ/cm2の紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0035】
21.導入することが、シリンジを介して組織の空隙または欠陥中に自己集合するバイオポリマーを注射することを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
22.組織の空隙または欠陥が乳腺腫瘍摘出術手順によって生じる、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
23.組織の空隙または欠陥が乳房切除術手順によって生じる、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
24.組織の空隙または欠陥を充填することが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
25.組織の空隙または欠陥を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
26.組織の空隙または欠陥を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
27.組織の空隙または欠陥を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
28.組織の空隙または欠陥を充填することに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
29.患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、組織の空隙または欠陥が、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じ、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【0044】
30.オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、第29項に記載の方法。
【0045】
31.酸が0.01N塩酸を含み、オリゴマーコラーゲン溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、第29項または第30項に記載の方法。
【0046】
32.患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、組織の空隙または欠陥が、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じ、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含み;オリゴマーコラーゲン溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLであり;オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、方法。
【0047】
33.オリゴマーコラーゲン溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されているか、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されているか、紫外線を照射されているか、またはこれらの組合せが行われている、第32項に記載の方法。
【0048】
34.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第32~33項のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
35.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第32~34項のいずれか一項に記載の方法。
【0050】
36.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第32~35項のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
37.組織の空隙または欠陥が乳房腫瘍の除去に起因する、第32~36項のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
38.自己集合するバイオポリマーが組織充填剤を含む、第32~37項のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
39.組織の空隙または欠陥を充填することが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、第32~38項のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
40.組織の空隙または欠陥を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第32~39項のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
41.組織の空隙または欠陥を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第32~40項のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
42.組織の空隙または欠陥を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、第32~41項のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
43.組織の空隙または欠陥を充填することに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第32~42項のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
44.創傷を充填するための方法であって、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を創傷中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み、;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【0059】
45.凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンを含む、第44項に記載の方法。
【0060】
46.創傷が外科的創傷を含む、第44項または第45項に記載の方法。
【0061】
47.外科的創傷が腫瘍の除去に起因する、第44~46項のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
48.外科的創傷が乳房腫瘍の除去に起因する、第44~47項のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
49.オリゴマーコラーゲン溶液が組織充填剤を含む、第44~48項のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
50.創傷を充填することが、欠陥萎縮および瘢痕組織形成をもたらさない、第44~49項のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
51.創傷を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第44~50項のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
52.創傷を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第44~51項のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
53.創傷を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、第44~52項のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
54.創傷を充填することに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第44~53項のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
55.患者の組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させるための方法であって、自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと;自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することとを含む方法。
【0070】
56.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第55項に記載の方法。
【0071】
57.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第55項または第56項に記載の方法。
【0072】
58.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第55~57項のいずれか一項に記載の方法。
【0073】
59.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、第55~58項のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
60.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第55~59項のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
61.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第55~60項のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
62.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、脂肪組織とともに骨格筋の生成をもたらす、第55~61項のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
63.骨格筋組織を回復および再生させることに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第55~62項のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
64.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させるための方法であって、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【0079】
65.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第64項に記載の方法。
【0080】
66.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第64項または第65項に記載の方法。
【0081】
67.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第64~66項のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
68.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、第64~67項のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
69.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第64~68項のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
70.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第64~69項のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
71.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、脂肪組織とともに骨格筋の生成をもたらす、第64~70項のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
72.骨格筋組織を回復および再生させることに対する組織埋込応答が、照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第64~71項のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
73.組織の空隙または欠陥においてマトリックスを調製するための方法であって、単一の混合工程を使用してコラーゲン重合させることを含み、単一の混合工程が、コラーゲン組成物と緩衝液とを混合して、コラーゲン溶液を形成することを含み、コラーゲン溶液中のコラーゲンを重合させてマトリックスを形成する、方法。
【0088】
74.コラーゲン溶液を、約25℃を超える温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第73項に記載の方法。
【0089】
75.コラーゲン溶液を約37℃の温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第73項または第74項に記載の方法。
【0090】
76.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーを含む、第73~75項のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
77.コラーゲンがコラーゲン分子を含む、第73~76項のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
78.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーからなる、第73~77項のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
79.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子からなる、第73~78項のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
80.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子から実質的になる、第73~79項のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
81.コラーゲンがテロコラーゲン(telocollagen)を更に含む、第73~80項のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
82.コラーゲンがアテロコラーゲンを更に含む、第73~81項のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
83.コラーゲンオリゴマーを含むコラーゲンが、コラーゲンオリゴマーを含む組織から、コラーゲンオリゴマーを産生する細胞から、またはコラーゲンを化学的に架橋してコラーゲンオリゴマーを得ることによって得られる、第73~82項のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
84.コラーゲンがブタ皮膚組織に由来する、第73~83項のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
85.コラーゲン組成物が酸を更に含む、第73~84項のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
86.酸が、塩酸、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択される、第73~85項のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
87.酸が塩酸である、第73~86項のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
88.塩酸が、約0.005Nから約0.1Nの塩酸である、第73~87項のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
89.塩酸が約0.01N塩酸である、第73~88項のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
90.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、第73~89項のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
91.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、第73~90項のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
92.コラーゲン溶液と緩衝液との混合物中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、第73~91項のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
93.コラーゲン組成物が滅菌される、第73~92項のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
94.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、またはコラーゲンマトリックスが、クロロホルムへの曝露、ウイルスろ過、滅菌ろ過、ガンマ線照射、紫外線照射、電子ビーム、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法によって滅菌される、第73~93項のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
95.コラーゲン組成物がろ過によって滅菌される、第73~94項のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
96.緩衝液が、約0.03mMから約0.2mMのMgCl2を含む、第73~95項のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
97.緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2を含む、第73~96項のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
98.緩衝液が約0.02mM未満のMgCl2を含む、第73~97項のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
99.緩衝液がMgCl2を含まない、第73~98項のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
100.緩衝液が、約0.3mMから約3mMのKH2PO4を更に含む、第73~99項のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
101.緩衝液が、約1mMから約10MのNa2HPO4を更に含む、第73~100項のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
102.緩衝液が、約0.1mMから約4mMのKClを更に含む、第73~101項のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
103.緩衝液が、約0.02Mから約0.3MのNaClを更に含む、第73~102項のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
104.緩衝液が、約0.002Nから約0.02NのNaOHを更に含む、第73~103項のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
105.緩衝液が、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、第73~104項のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
106.緩衝液が、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、第73~105項のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
107.緩衝液がグルコースを含まない、第73~106項のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
108.細胞をコラーゲン溶液に添加することを更に含む、第73~107項のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
109.マトリックスがコラーゲン原線維を含む、第73~108項のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
110.コラーゲンが溶解性コラーゲンである、第73~109項のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
111.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはマトリックスが、UVC照射を使用して滅菌される、第73~110項のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
112.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはマトリックスが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌される、第73~111項のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
113.コラーゲン溶液の重合から得られたマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、第73~112項のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
114.重合特性がせん断貯蔵係数である、第73~113項のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
115.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第73~114項のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
116.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第73~115項のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
117.滅菌がウイルスを不活性化させる、第73~116項のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
118.組織欠陥または空隙部位においてマトリックスを調製するための方法であって、コラーゲン組成物と緩衝液とを混合してコラーゲン溶液を形成することによってコラーゲンを重合させることと、コラーゲン溶液中のコラーゲンを重合させてマトリックスを形成することとを含み、緩衝液がマグネシウムイオンまたはマンガンイオンを含まない、前記方法。
【0133】
119.コラーゲン溶液を、約25℃を超える温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第118項に記載の方法。
【0134】
120.コラーゲン溶液を約37℃の温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第118項または第119項に記載の方法。
【0135】
121.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーを含む、第118~120項のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
122.コラーゲンがコラーゲン分子を含む、第118~121項のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
123.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーからなる、第118~122項のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
124.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子からなる、第118~123項のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
125.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子から実質的になる、第118~124項のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
126.コラーゲンがテロコラーゲンを更に含む、第118~125項のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
127.コラーゲンがアテロコラーゲンを更に含む、第118~126項のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
128.コラーゲンオリゴマーを含むコラーゲンが、コラーゲンオリゴマーを含む組織から、コラーゲンオリゴマーを産生する細胞から、またはコラーゲンを化学的に架橋してコラーゲンオリゴマーを得ることによって得られる、第118~127項のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
129.コラーゲンがブタ皮膚組織に由来する、第118~128項のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
130.コラーゲン組成物が酸を更に含む、第118~129項のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
131.酸が、塩酸、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択される、第118~130項のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
132.酸が塩酸である、第118~131項のいずれか一項に記載の方法。
【0147】
133.塩酸が、約0.005Nから約0.1Nの塩酸である、第118~132項のいずれか一項に記載の方法。
【0148】
134.塩酸が約0.01N塩酸である、第118~133項のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
135.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、第118~134項のいずれか一項に記載の方法。
【0150】
136.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、第118~135項のいずれか一項に記載の方法。
【0151】
137.コラーゲン溶液と緩衝液との混合物中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、第118~136項のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
138.コラーゲン組成物が滅菌される、第118~137項のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
139.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、またはコラーゲンマトリックスが、クロロホルムへの曝露、ウイルスろ過、滅菌ろ過、ガンマ線照射、紫外線照射、電子ビーム、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法によって滅菌される、第118~138項のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
140.コラーゲン組成物がろ過によって滅菌される、第118~139項のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
141.緩衝液が、約0.03mMから約0.2mMのMgCl2を含む、第118~140項のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
142.緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2を含む、第141項に記載の方法。
【0157】
143.緩衝液が、約0.02mM未満のMgCl2を含む、第118~142項のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
144.緩衝液がMgCl2を含まない、第118~143項のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
145.緩衝液が、約0.3mMから約3mMのKH2PO4を更に含む、第118~144項のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
146.緩衝液が、約1mMから約10MのNa2HPO4を更に含む、第118~145項のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
147.緩衝液が、約0.1mMから約4mMのKClを更に含む、第118~146項のいずれか一項に記載の方法。
【0162】
148.緩衝液が、約0.02Mから約0.3MのNaClを更に含む、第118~147項のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
149.緩衝液が、約0.002Nから約0.02NのNaOHを更に含む、第118~148項のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
150.緩衝液が、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、第118~149項のいずれか一項に記載の方法。
【0165】
151.緩衝液が、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、第118~150項のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
152.緩衝液がグルコースを含まない、第118~151項のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
153.細胞をコラーゲン溶液に添加することを更に含む、第118~152項のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
154.マトリックスがコラーゲン原線維を含む、第118~153項のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
155.コラーゲンが溶解性コラーゲンである、第118~154項のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
156.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはコラーゲンマトリックスが、紫外線照射を使用して滅菌される、第118~155項のいずれか一項に記載の方法。
【0171】
157.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはマトリックスが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌される、第118~156項のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
158.コラーゲン溶液の重合から得られたマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、第118~157項のいずれか一項に記載の方法。
【0173】
159.重合特性がせん断貯蔵係数である、第118~158項のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
160.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第118~159項のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
161.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第118~160項のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
162.滅菌がウイルスを不活性化させる、第118~161項のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
163.第1~162項のいずれか一項に記載の方法に従って調製されたコラーゲンマトリックス。
【0178】
164.医療用移植片である、第163項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0179】
165.医療用移植片が、組織移植材料、注射可能な移植材料、創傷ドレッシング材、止血ドレッシング材、治療用細胞用のデリバリー媒体、および治療剤用のデリバリー媒体からなる群から選択される使用を有する、第163項または第164項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0180】
166.調査目的で使用される、第163~165項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0181】
167.薬物毒性試験または薬物開発のために使用される、第163~166項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0182】
168.紫外線照射を使用して滅菌されている、第163~167項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0183】
169.照射されていないコラーゲンマトリックスと比較して重合特性を維持している、第163~168項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0184】
170.重合特性がせん断貯蔵係数である、第163~169項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0185】
171.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第163~170項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0186】
172.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第163~171項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0187】
173.滅菌がウイルスを不活性化させている、第163~172項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0188】
174.UVC照射を使用して滅菌されている、第163~173項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0189】
175.UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、第163~174項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0190】
176.自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入し、自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することによって調製されるコラーゲンマトリックスであって、自己集合するバイオポリマーのpHが約5.5から約8.5の範囲であり、自己集合するバイオポリマーの自己集合時間が約0.2分から約1.5分の範囲であり、コラーゲンマトリックスのせん断貯蔵係数(G’)が約2.0kPaから約4.0kPaの範囲であり、コラーゲンマトリックスのせん断損失係数(G”)が約0.1kPaから約0.7kPaの範囲であり、コラーゲンマトリックスの圧縮係数が約5.0kPaから約10.0kPaの範囲である、コラーゲンマトリックス。
【0191】
177.自己集合するバイオポリマーのpHが約7.25±約0.25であり、自己集合するバイオポリマーの自己集合時間が約0.8分±約0.3分であり、コラーゲンマトリックスのせん断貯蔵係数(G’)が約3.1kPa±約0.4kPaであり、コラーゲンマトリックスのせん断損失係数(G”)が約0.4kPa±約0.1kPaであり、コラーゲンマトリックスの圧縮係数が約7.7kPa±約1.9kPaである、第176項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0192】
178.医療用移植片である、第176項または第177項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0193】
179.医療用移植片が、組織移植材料、注射可能な移植材料、創傷ドレッシング材、止血ドレッシング材、治療用細胞用のデリバリー媒体、および治療剤用のデリバリー媒体からなる群から選択される使用を有する、第176~178項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0194】
180.調査目的で使用される、第176~179項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0195】
181.薬物毒性試験または薬物開発のために使用される、第176~180項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0196】
182.紫外線照射を使用して滅菌されている、第176~181項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0197】
183.照射されていないコラーゲンマトリックスと比較して重合特性を維持している、第176~182項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0198】
184.重合特性がせん断貯蔵係数である、第176~183項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0199】
185.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第176~184項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0200】
186.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第176~185項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0201】
187.滅菌がウイルスを不活性化させている、第176~186項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0202】
188.UVC照射を使用して滅菌されている、第176~187項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0203】
189.UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、第176~188項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0204】
190.組織の空隙または欠陥において組織を回復および再生させるためのキットであって、インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキット。
【0205】
191.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が液体I型コラーゲンを含む、第190項に記載のキット。
【0206】
192.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、ブタ真皮由来のI型オリゴマーコラーゲンを含む、第190項または第191項に記載のキット。
【0207】
193.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、第190~192項のいずれか一項に記載のキット。
【0208】
194.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、第190~193項のいずれか一項に記載のキット。
【0209】
195.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含む、第190~194項のいずれか一項に記載のキット。
【0210】
196.インサイチュ重合性コラーゲン組成物対緩衝液の比が約9:1である、第190~195項のいずれか一項に記載のキット。
【0211】
197.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液のコラーゲンの濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、第190~196項のいずれか一項に記載のキット。
【0212】
198.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されている、第190~197項のいずれか一項に記載のキット。
【0213】
199.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、第190~198項のいずれか一項に記載のキット。
【0214】
200.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、第190~199項のいずれか一項に記載のキット。
【0215】
201.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、500mJ/cm2の紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、第190~200項のいずれか一項に記載のキット。
【0216】
202.組織の空隙または欠陥にインサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液との混合物をデリバリーするために構成されたシリンジを更に含む、第190~201項のいずれか一項に記載のキット。
【0217】
203.緩衝液が、約0.03mMから約0.2mMのMgCl2を含む、第190~202項のいずれか一項に記載のキット。
【0218】
204.緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2を含む、第190~203項のいずれか一項に記載のキット。
【0219】
205.緩衝液が約0.02mM未満のMgCl2を含む、第190~204項のいずれか一項に記載のキット。
【0220】
206.緩衝液がMgCl2を含まない、第190~205項のいずれか一項に記載のキット。
【0221】
207.緩衝液が、約0.003Mから約0.03MのKH2PO4を更に含む、第190~206項のいずれか一項に記載のキット。
【0222】
208.緩衝液が、約0.01Mから約0.1MのNa2HPO4を更に含む、第190~207項のいずれか一項に記載のキット。
【0223】
209.緩衝液が、約0.001Mから約0.04MのKClを更に含む、第190~208項のいずれか一項に記載のキット。
【0224】
210.緩衝液が、約0.2Mから約3.0MのNaClを更に含む、第190~209項のいずれか一項に記載のキット。
【0225】
211.緩衝液が、約0.02Nから約0.2NのNaOHを更に含む、第190~210項のいずれか一項に記載のキット。
【0226】
212.緩衝液が、約0.2重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、第190~211項のいずれか一項に記載のキット。
【0227】
213.緩衝液が約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、第190~212項のいずれか一項に記載のキット。
【0228】
214.緩衝液がグルコースを含まない、第190~213項のいずれか一項に記載のキット
【0229】
215.インサイチュ重合性コラーゲン組成物中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、第190~214項のいずれか一項に記載のキット。
【0230】
216.インサイチュ重合性コラーゲン組成物中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、第190~215項のいずれか一項に記載のキット。
【0231】
217.インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを含む中和されたコラーゲン充填剤中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、第190~216項のいずれか一項に記載のキット。
【0232】
218.コラーゲン溶液が、約0.005N塩酸から約0.1N塩酸を含む、第190~217項のいずれか一項に記載のキット。
【0233】
219.緩衝液が、インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを混合することを含む単一の混合工程において、インサイチュ重合性コラーゲン組成物を重合させるように構成されている、第190~218項のいずれか一項に記載のキット。
【0234】
220.インサイチュ重合性コラーゲン組成物および緩衝液が個別の容器中に存在する、第190~219項のいずれか一項に記載のキット。
【0235】
221.個別の容器が滅菌バイアルを含む、第190~220項のいずれか一項に記載のキット。
【0236】
222.個別の容器が、デュアルバレルシリンジの個別のコンパートメントを含む、第190~221項のいずれか一項に記載のキット。
【0237】
223.デュアルバレルシリンジが混合エレメントを含む、第190~222項のいずれか一項に記載のキット。
【0238】
224.デュアルバレルシリンジが滅菌されている、第190~223項のいずれか一項に記載のキット。
【0239】
225.キットの構成要素を使用するための取扱説明書を更に含む、第190~224項のいずれか一項に記載のキット。
【0240】
226.組織の空隙または欠陥に局所デリバリーするために構成された少なくとも1つの治療剤を更に含む、第190~225項のいずれか一項に記載のキット。
【0241】
227.少なくとも1つの治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、抗生剤、鎮痛剤、またはこれらの組合せを含む、第190~226項のいずれか一項に記載のキット。
【0242】
228.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第190~227項のいずれか一項に記載のキット。
【0243】
229.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第190~228項のいずれか一項に記載のキット。
【0244】
230.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第190~229項のいずれか一項に記載のキット。
【0245】
231.組織の空隙または欠陥が乳房腫瘍の除去に起因する、第190~230項のいずれか一項に記載のキット。
【0246】
232.乳房温存外科手術後の組織を再生するためのものである、第190~231項のいずれか一項に記載のキット。
【0247】
233.組織の空隙または欠陥においてマトリックスを調製するためのものである、第190~232項のいずれか一項に記載のキット。
【0248】
234.インサイチュ重合性コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、紫外線照射を使用して滅菌されている、第190~233項のいずれか一項に記載のキット。
【0249】
235.インサイチュ重合性コラーゲン組成物の重合から得られたコラーゲンマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、第190~234項のいずれか一項に記載のキット。
【0250】
236.重合特性がせん断貯蔵係数である、第190~235項のいずれか一項に記載のキット。
【0251】
237.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第190~236項のいずれか一項に記載のキット。
【0252】
238.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第190~237項のいずれか一項に記載のキット。
【0253】
239.滅菌がウイルスを不活性化させている、第190~238項のいずれか一項に記載のキット。
【0254】
240.インサイチュ重合性コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、UVC照射を使用して滅菌されている、第190~239項のいずれか一項に記載のキット。
【0255】
241.コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、第190~240項のいずれか一項に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【
図1】
図1は、軟組織様特性を有し、インサイチュで粘弾性マトリックスを形成する液体組織充填剤の概要を示す。
図1Aは、滅菌I型オリゴマーコラーゲン溶液を含むシリンジ、適切な中和(自己集合)緩衝剤のシリンジ、ルアーロックアダプター、およびアプリケーターチップを含むキットを示す。
図1Bは、2つの試薬を混合し、続いて、体温(37℃)で維持されたプラスチック金型中に注射することを示し、液体は、安定な形状保持線維状コラーゲンマトリックスに移行する。
図1Cは、I型オリゴマーコラーゲンの純度および特徴バンドパターンを記録した4~20%および6%SDS-PAGEゲルを示し、レーン1は分子量標準に対応し、レーン2はI型オリゴマーコラーゲンに対応する。
図1Dは、組織充填剤によって形成されたマトリックスの組織充填剤重合動態および性能仕様(平均±SD;N=4、n=6~8)を要約した表を示す。
【
図2】
図2は、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術手順の概要を示す。
図2Aは、総乳房組織容量のおよそ4分の1を表す外科的に切除された乳房組織容量を要約した表を示す[長期的研究と放射線研究の両方からまとめられたデータ(平均±SD)(1週:コラーゲン充填剤:n=12、非充填=6;4週:コラーゲン充填剤:n=18、非充填:n=9;16週:コラーゲン充填剤:n=18、非充填:n=9)]。
図2Bは、組織充填剤を適用する前の外科的空隙を示す。
図2Cは、組織充填剤を適用した後の外科的空隙を示す。
図2Dは、組織充填剤の適用を示す。
図2Eは、切除されたブタ乳房組織を示す。
図2Fは、包帯法を含む外科手術直後の手術部位を示す。
図2Gは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術と照射から16週後の手術部位を示す。
【
図3】
図3は、組織充填剤が、典型的な炎症応答または異物反応を引き起こすことなくどの程度持続し、乳房組織形成をサポートする組織埋込応答を誘発するかの概要を示す。
図3Aは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術後のさまざまな時点におけるコラーゲン組織充填および非充填(陰性対照)処置空隙に関する乳房外科医によって割り当てられた乳房の均一性/稠度スコア(平均±SD;コラーゲン組織充填剤:n=12;非充填:n=6)のグラフを示す。外科手術を受けていない乳房全ては0とスコア化した。
図3Bは、正常乳房組織と比較した、コラーゲン組織充填剤を用いて処置した後のまたは非充填の術後空隙の横断面を示す。矢印は、術後空隙の境界に印をつけるために配置された外科用クリップを表す。
【
図4】
図4は、組織充填剤が、炎症応答または異物反応を引き起こすことなくどの程度乳房組織形成をサポートするかの概要を示す。
図4Aは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術後1週、4週、および16週におけるコラーゲン充填空隙の組織学的横断面(H&E)を示す。低倍率画像は、空隙内の組織充填剤と周囲の宿主組織とのその境界とを示す(大きな矢印は外科用クリップ位置を示す)。高倍率画像は、組織充填剤の中央領域と、組織充填剤-宿主組織の境界とを特徴付けている。マトリックス埋込体内の細胞浸潤、血管新生化、および乳房組織形成は経時的に生じ、典型的には未処置の組織の空隙の治癒で認められる炎症応答(すなわち、好中球およびマクロファージの浸潤)、または典型的には組織埋込応答で観察される異物反応(すなわち、マクロファージの活性化、巨細胞の形成、食作用、および線維性被膜形成)のエビデンスが認められない。16週までに、組織充填剤は完全に細胞化され、血管化され(小さな矢印は血管を示す)、乳腺(RG)および脂肪組織(RF)形成のエビデンスが認められる。Onc:細胞浸潤を伴わない組織充填マトリックス;Oc:細胞浸潤を伴う組織充填マトリックス。
図4Bは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術後1週、4週、および16週における未処置の(非充填)術後空隙の横断面(H&E)を示す。低倍率画像は、空隙および周囲の宿主組織を示す。高倍率画像は、空隙の中央領域と、空隙/宿主組織の境界とを特徴付けている。血腫(H)は1週において通常のものであり、漸進的な欠陥萎縮および治癒応答が続き、瘢痕組織形成(S)が生じた。
【
図5】
図5は、組織充填剤がX線撮影または超音波検査手順にどの程度干渉しないかの概要を示す。
図5Aは、1週、4週、および16週の時点における正常乳房組織と比較した、コラーゲン組織充填剤で処置されたかまたは非充填の術後空隙の代表的な超音波画像を示し、
図5Bは、それらの代表的なX線写真を示す。X線写真内で明白なX線不透過マーカークリップは、術後空隙の境界を示し、非充填の空隙と比較して、組織充填剤で処置された空隙に関して創傷萎縮の減少のエビデンスを示す。
【
図6】
図6は、放射線が組織充填剤および関連する組織埋込応答への影響をどの程度でほぼもしくは全く与えないかの概要を示す。
図6Aは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術および放射線後のさまざまな時点におけるコラーゲン組織充填および非充填(陰性対照)処置空隙に関する乳房外科医によって割り当てられた乳房の均一性/稠度スコア(平均±SD;コラーゲン:n=6;非充填:n=3)のグラフを示す。外科手術を受けていない乳房は全て0とスコア化した。
図6Bは、非外科手術正常乳房組織と比較した、組織充填剤で処置されたかまたは充填せずに照射された後の術後空隙の横断面を示す。矢印は、術後空隙の境界に印をつけるために配置された外科用クリップを表す。
図6Cは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術および補助照射後の4週および16週におけるコラーゲン充填空隙の組織学的横断面(H&E)を示す。低倍率画像は、空隙内の組織充填剤と周囲の宿主組織とのその境界とを示す。高倍率画像は、組織充填剤の中央領域と、組織充填剤-宿主組織の境界とを特徴付けている。マトリックス埋込体内の細胞浸潤、血管新生化、および乳房組織形成は、照射を受けていない動物の部位よりも低速度ではあるが、経時的に生じる。16週までに、組織充填剤は完全に細胞化され、血管化され(小さな矢印は血管を示す)、脂肪組織(RF)形成のエビデンスが認められる。Onc:細胞浸潤を伴わない組織充填マトリックス;Oc:細胞浸潤を伴う組織充填マトリックス。
図6Dは、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術および放射線後の4週および16週における未処置の(非充填)術後空隙の横断面(H&E)を示す。低倍率画像は、空隙および周囲の宿主組織を示し、4週において瘢痕組織(S)および抱合関連の肉芽腫(G)が明白である(大きな矢印は外科用クリップ位置を示す)。高倍率画像は、炎症性反応の中央領域と、空隙内に形成された瘢痕組織である瘢痕-宿主組織の境界とを特徴付けている。
【
図7】
図7は、組織充填剤が、補助照射後でさえどの程度乳房組織の診断画像の読影を損なわないかの概要を示す。
図7Aは、4週および16週の時点における正常乳房と比較した、組織充填剤で処置されたかまたは充填せずに照射された術後空隙の代表的な超音波画像を示し、
図7Bは、それらの代表的なX線写真を示す。X線写真内で明白なX線不透過マーカークリップは、術後空隙の境界を示し、非充填の空隙と比較して、組織充填剤で処置された空隙に関して創傷萎縮の減少を示す。
【
図8】
図8は、ブタの模擬実験の乳腺腫瘍摘出術モデルにおいて観察された治癒応答のタイムラインおよびプロセスを示す。
図8Aは、非充填で観察された典型的な修復治癒応答と関連する相およびプロセスを比較および対比した概略図を示す。
図8Bは、コラーゲン組織充填剤で観察された回復性および再生性治癒応答と関連する相およびプロセスを比較および対比した概略図を示す。
【
図9】
図9は、多組織タイプ組成の正常乳房組織およびその上の皮膚ならびに照射の影響を示す。照射を受けていないブタ、ならびに乳腺腫瘍摘出術および放射線後4週および16週のブタからの正常乳房組織および関連する皮膚の横断面(H&E)を示す。乳房組織は、コラーゲン結合組織(C)、乳腺小葉(M)、乳管(D)、および脂肪(脂質)組織(F)からなる。皮膚は、多細胞表皮層(E)および下層のコラーゲン真皮(C)を含む。
【
図10】
図10は、ブタ乳房の術後評価のために使用した半定量的スコアリングを示す。乳房および手術部位を、紅斑および焼痂のエビデンスを含む肉眼的外観ならびに浮腫に基づいて評価した。触診は、乳房の均一性および稠度を評価するために使用した。
【
図11】
図11は、コラーゲン組織充填剤が、どの程度乳腺形成をサポートするかの概要を示し、同時に腺壊死は、充填処置されていない空隙において明白である。対応するH&E(
図11Aおよび11C)および汎サイトケラチン染色(
図11Bおよび11D)の横断面は、コラーゲン組織充填剤で処置(
図11Aおよび11B)または非充填(
図11Cおよび11D)後16週の術後空隙を示し、選択された領域はそれぞれ、コラーゲン組織充填剤および形成された瘢痕組織の周辺を表す。汎サイトケラチンは、コラーゲン組織充填および非充填群内の乳房小葉および管内壁を覆う上皮細胞を強調している。非充填群はまた、壊死腺のエビデンスを示す(黒および白色矢印)。免疫蛍光画像は汎サイトケラチン(緑色)を示し、核はDAPI(青色)を用いて対比染色されている。
【
図12】
図12は、ブタの首背面内の骨格筋および脂肪組織の欠陥を生成する概要を示す。欠陥は、空隙の外形に適合する液体コラーゲンで充填した。適用後およそ1分以内に、液体コラーゲンがインサイチュで重合し、組織の形態および連続性を回復させるコラーゲンマトリックスを形成した。
【
図13】
図13は、埋め込み後11週のコラーゲンマトリックス内に新たに形成された骨格筋および脂肪(脂質)組織の概要を示し、典型的には未処置の組織の空隙の治癒で認められる炎症応答(すなわち、好中球およびマクロファージの浸潤)、または典型的には組織埋込応答で観察される異物反応(すなわち、マクロファージの活性化、巨細胞の形成、食作用、および線維性被膜形成)のエビデンスは認められない。C:コラーゲン組織充填マトリックス;F:脂質;M:骨格筋;矢印:関連する微小血管系。
【
図14】
図14は、コラーゲン組織充填剤キットの代表的な構成要素の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0257】
本教示によれば、組織稠度を有する線維状コラーゲンマトリックスに移行するより前に、いずれのタイプの組織の空隙または欠陥-これらに限定されないが、外科的創傷に起因する組織の空隙(例えば、これらに限定されないが、BCSから生じた外科的創傷を含む)、身体的欠陥(例えば、瘢痕、くぼみ、先天性欠損など)、損傷、疾患の進行、および/または同類のものを含む-にも液体として適用してもよい回復性および再生性組織充填剤が記載されている。ブタの模擬実験のBCSモデルを使用して、本教示によるコラーゲン充填剤は、急速な細胞化、血管新生化、ならびに脂肪組織および乳腺および乳管を含む漸進的な乳房組織の新生によって特徴付けられる再生治癒応答を誘発することを示している。従来の生体材料とは対照的に、異物応答または炎症介在性の「活発な」生分解は本教示によるコラーゲン充填剤に関しては観察されなかった。更に、本教示によるコラーゲン充填剤はまた、臨床的解釈に重要な特徴である、模擬実験の外科的再切除、X線撮影、または超音波検査手順を損なうことはなかった。更に、術後放射線の適用の際、本教示によるコラーゲン充填剤に関する組織応答は非照射条件下のものとほぼ類似していた(しかし、予想どおり、治癒はやや遅かった)。本教示によるインサイチュマトリックス形成コラーゲンは、適用が容易であり、患者固有の欠陥に適合し、炎症の非存在下で複雑な組織を生成する。したがって、本教示によるコラーゲン充填剤は、BCS、ならびに他の軟組織回復および再構築の要求のための最初の再生性組織充填剤として顕著でトランスレーショナルな可能性を有する。
【0258】
いくつかの実施形態において、本教示による再生性組織充填剤は、以下の利点のうちの1つまたは複数を提供する場合がある:(1)瘢痕組織形成が少ない(すなわち、従来の非充填手順と比較して)かまたはない;(2)欠陥萎縮が少ない(すなわち、従来の非充填手順と比較して)かまたはない;(3)炎症性メディエーターまたは炎症応答が少ない(すなわち、従来の非充填手順と比較して)かまたはない;(4)組織稠度が天然組織のものと類似している(例えば、圧縮係数または圧縮係数の範囲が天然組織のものと類似している);(5)脂肪組織、乳腺組織などを含む乳房組織の回復および生成;(6)骨格筋の回復および生成;(7)組織埋込応答が、再切除、超音波検査、またはX線撮影を含む所定の臨床的手順に干渉しない;および/または(8)組織埋込応答が少ない(すなわち、従来の手順と比較して)または補助照射による悪影響を受けない(例えば、これらのいずれかがイメージングに干渉する場合がある、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域がない)。
【0259】
本教示によれば、本発明者らは、(i)傷害を受けた組織および組織の空隙を予測どおりに回復させ、再生させ、(ii)容易に適用され、(iii)サイズおよび外形が大きく異なる患者固有の欠陥に適合し、(iv)所定の臨床的プロセスおよび手順に干渉しないかまたはそれらを損なわないことになる組織充填剤を試みている。いくつかの実施形態において、組織充填剤は、滅菌条件下で組織の空隙または欠陥中に導入される。いくつかの実施形態において、組織の空隙または欠陥への組織充填剤の導入は、注射を介して(例えば、1つまたは複数の単一のバレルシリンジ、デュアルバレルシリンジ、および/または同類のもの、ならびにこれらの組合せを使用して)達成してもよい。他の実施形態において、組織充填剤は、最初に外部金型(例えば、外科的設定において)に適用して成形パートを形成してもよく、次いで、金型から取り出し、患者に埋め込んでもよい。調節可能なインサイチュ形成生体材料を含む再生医療アプローチは、これらの設計上の考慮の多くに取り組むための可能性を有する。特に、コラーゲンの高度に精製された分子形態であり、希酸中に容易に溶解するI型オリゴマーコラーゲン(オリゴマー)は、これらの設計上の考慮の多くに取り組むための可能性を伴う調節可能なインサイチュ形成生体材料を表す。従来の単量体コラーゲン調製物、すなわちテロコラーゲンおよびアテロコラーゲンとは異なり、オリゴマーは、完全なカルボキシ-およびアミノ-末端テロペプチドを伴い、自然に発生した分子間架橋によって一緒に保持されている、完全長三重らせんコラーゲン分子(すなわち、トロポコラーゲン)の小さな凝集体を表す。カルボキシ-およびアミノ-末端テロペプチド領域および関連する分子間架橋を含むこれらの重要な分子の特徴の保存は、望ましいがまれな特性を有するこの天然ポリマーおよびそれを形成するコラーゲン材料を提供する。より具体的には、オリゴマーは、線維状コラーゲンタンパク質に固有のその原線維形成(自己集合)能力を保持している。オリゴマーを生理学的条件(例えば、pHおよびイオン強度)に中和する際、この液体形態は、容易に注射して複雑な輪郭および外形を完全に充填することができる。体温において、液体は、線維状コラーゲンマトリックスに急速に移行し、組織の細胞外マトリックス(ECM)構成成分において認められるコラーゲンマトリックスの構造的および生物学的シグナル伝達特性を再現する。インビボ(in vivo)埋め込みの際、これらのマトリックスは持続し、遅い代謝回転およびリモデリングを示し、タンパク質分解に対して抵抗性を示し、活発な生分解または異物応答は示さない。この天然ポリマーは、外形、構造(ランダムなまたは整列した原線維、連続的な原線維密度勾配)、および機械的完全性を含む、広範に調節可能な物理的性質を備えた材料の生成をサポートし、個別化再生医療に可能なプラットフォームとなる。インサイチュ形成コラーゲンマトリックスは、乳房温存外科手術および他の軟組織回復の要求のための再生性組織充填剤としての有望性を示す。
【0260】
いくつかの実施形態において、組織稠度を有する線維状コラーゲンマトリックスに移行するより前に液体として創傷-これらに限定されないが、BCS中の欠陥または輪郭を含む-に適用してもよい再生性組織充填剤が提供される。ブタ模擬実験のBCSモデルを使用して以下で更に記載されるように、コラーゲン充填剤は、急速な細胞化、血管新生化、ならびに脂肪組織および乳腺および乳管を含む漸進的な乳房組織の新生によって特徴付けられる再生治癒応答を誘発することを示した。従来の生体材料とは異なり、異物応答または炎症介在性の「活発な」生分解は観察されなかった。コラーゲン充填剤はまた、臨床的解釈に重要な特徴である、模擬実験の外科的再切除、X線撮影、または超音波検査手順を損なうことはなかった。BCS後放射線が適用された場合、コラーゲン充填およびそれに関連する組織応答は非照射条件とほぼ類似していた。しかし、予想どおり、治癒速度はやや遅かった。このインサイチュマトリックス形成コラーゲンは、適用が容易であり、患者固有の欠陥/輪郭に適合し、炎症の非存在下で複雑な組織を再生する。それは、BCS、ならびに他の軟組織および骨格筋組織の回復および再構築の要求のための最初の再生性組織充填剤として顕著でトランスレーショナルな可能性を有する。
【0261】
本明細書において記載されるコラーゲン充填剤は、軟組織の増加(例えば、美容的手順)、皮膚創傷の管理(例えば、潰瘍)、および組織容積増加(bulking)(例えば、尿失禁)のために使用されているかまたは以前に使用されてきた、流動性を有し、注射可能な従来のコラーゲン製品とは根本的に異なる。Zyderm(登録商標)、Zyplast(登録商標)、Integra Flowable(登録商標)、およびContigen(登録商標)を含むそのような製品は、再構成され、酵素処置されたコラーゲン(アテロコラーゲン)、またはウシ、ブタ、もしくはヒト組織源由来の顆粒化された組織微粒子から作製される。これらの材料を注射可能にするために、不溶性線維状コラーゲンまたは組織微粒子は生理学的生理食塩水溶液中に懸濁して、分散体または懸濁剤を生成する。これらの埋め込み型コラーゲンの全ては一時的であり、急速な生分解を示し(再吸収;1~6ヶ月)、マクロファージ/巨細胞による食作用および分泌されたマトリックスメタロプロテイナーゼによるタンパク質分解を含む炎症介在性プロセスを介して活発に分解される。分解を遅延させ、持続性を改善するために、これらの製品の多くは、グルタルアルデヒドまたは他の外因性架橋プロセスを用いて処置される。
【0262】
対照的に、オリゴマーコラーゲンは、細胞および他の免疫原性組織の構成要素を含まないように抽出し、精製される場合がある、天然組織のコラーゲン線維(例えば、ブタ真皮)内で認められる分子サブドメインを表す。このサブドメインを構成するI型コラーゲンタンパク質および架橋化学的性質は、種にわたって高度に保存されており、身体内のこの主要な構造要素の重要性が記録されている。生理学的条件は、原線維形成を誘発し、オリゴマー分子が互い違いの配列に集合し、原線維の相互接続されたネットワークまたはマトリックスをもたらす。発表された研究は、形成されたマトリックスが、規則的なD-バンド形成パターンを伴い、生体信号に容易に関与する原線維を含む、細胞外マトリックス内で自然に認められるものとほぼ類似していることを示している。オリゴマーに存在するが重合性単量体コラーゲンにおいては認められない天然架橋の化学的性質は、急速なマトリックス形成反応、ならびに改善された機械的完全性、遅い代謝回転、およびオリゴマーマトリックスによって示されるタンパク質分解に対する抵抗性に対する主な一因である。まとめると、これらの際立った特徴は、従来の生分解性コラーゲン材料と比較した場合、オリゴマーマトリックスによって示されるまれな作用機序および再生組織応答の一因となる。
【0263】
病的な、傷害を受けた、または機能不全の組織を回復および再生させるための能力は、医薬品における大きな課題のうちの1つであった。実際、研究者らは、より望ましい治癒転帰(すなわち、再生)または生体材料/デバイス埋込応答を達成することを目標に生体材料および/または抗炎症剤を同定することに取り組んできた。乳房に関しては、この課題は、分泌(すなわち、乳汁産生)腺および管、支持的コラーゲン結合組織、および容量充填脂肪組織を含む異なる機能を伴う多組織タイプから構成されるために特に困難である。現在のところ、軟組織および乳房再構築に関する組織工学および再生医療の戦略は依然として初期段階のままであり、これまで大型動物モデルにおいてわずかな戦略が評価されたのみである。アプローチの大部分は、脂肪生成および血管新生を促進するためのリポフィリング、患者由来細胞集団、および成長因子が組み込まれた生物学的または合成的な足場からの工学脂肪組織に焦点を当ててきた。従来の合成足場アプローチの主な欠点は、材料が細胞にシグナルを送ることができず、異物応答をもたらし、細胞化および血管新生化が遅くなることである。
【0264】
いくつかの実施形態において、組織充填剤は、精製された原線維形成液体I型コラーゲン、例えばブタ真皮由来のものを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、このインサイチュ形成コラーゲンデバイスは、希(0.01N)塩酸中のコラーゲン溶液(10mL)を含む滅菌ガラスバイアル、登録商標を有する中和(自己集合)試薬(2mL)を含む滅菌ガラスバイアル、2つの滅菌10mlシリンジ、滅菌ルアーロックコネクター、および滅菌アプリケーターチップを含む使い捨てキットとして供給してもよい。一方のシリンジで液体コラーゲン9mLおよびもう一方で中和緩衝剤1mLを吸い上げた後、ユーザーは、ルアーロックコネクターを用いて2つのシリンジを接続し、2つの試薬を混合する。混合後、中和されたコラーゲン溶液は、注射して、アクセスするには深く困難であり、不規則な形状のものを含む、組織の空隙または欠陥に充填してもよい。適用の際、分子自己集合を介して急速に(体温において約1分で)原線維が形成される。得られた組織充填マトリックスは、組織形状および軟組織稠度を経時的に回復させ、維持し、細胞化、血管新生化、および新規の組織形成によって特徴付けられる組織埋込応答を引き起こし、典型的には創傷治癒で観察される炎症応答、または典型的には従来の組織埋込応答で観察される異物反応を引き起こすことはない。
【0265】
特別に製剤化されたコラーゲンの液体フォーマットは、患者固有の欠陥外形および輪郭に容易に充填され、適合し、最小限の侵襲性手順に適する。部位に適用すると、コラーゲン溶液が重合(分子自己集合反応)して、物理的に安定な線維状コラーゲンマトリックスを形成し、その容量が持続され、維持される。マトリックスは、細胞に重要な生化学的および生体力学的シグナル伝達を提供し、細胞化、血管新生化、および組織形成をサポートし、部位に適切であり、炎症応答または異物反応は存在しない。これは、異なる機能、例えば乳房において認められるものを伴う複雑な組織組成を含む。材料は、照射、X線撮影、超音波検査、および外科的再切除を含む多数の標準的な臨床的手順に適合する。
【0266】
この説明全体および添付の特許請求の範囲にわたって、以下の定義が理解されるべきである:
【0267】
「オリゴマーコラーゲン」という句は、架橋されたコラーゲン分子を含むコラーゲンを指す。コラーゲン分子は、3つの個別のポリペプチド鎖から構成され、非らせんテロペプチド末端が隣接するその三重らせん四次構造を集合的にもたらす。本明細書において使用される場合、「オリゴマーコラーゲン」という句は、その少なくとも1つの部分が分子間架橋を通して共有結合しているコラーゲン分子を指すとして理解されるべきである。オリゴマーコラーゲンは、例えば、本明細書において記載されるように重合していてもよい。重合性オリゴマーコラーゲンは、重合可能なオリゴマーコラーゲンである。オリゴマーコラーゲンにおいて認めることができる架橋されたコラーゲン分子の1つの例は、トロポコラーゲンである。
【0268】
「滅菌された」という用語は、これらに限定されないが、感染病原体を含む混入物を除去することを指す。例えば、混入物(例えば、細菌、ウイルス)は、不活性化によって、数もしくは量の減少によって、または感染しているかしていないかにかかわらず混入病原体の活性の阻害によって除去してもよい。
【0269】
「精製された」という用語は、これらに限定されないが、細胞混入物、ヌクレオチド混入物、および内毒素を含む混入物の除去を指す。
【0270】
「異物反応」という句は、身体内では通常認められないであろう任意の材料によって引き起こされた局所的な炎症応答を指す。この反応は、マクロファージ活性化、巨細胞形成および線維性被膜の形成および/もしくは分解、または外来性材料の食作用によって顕著な、タンパク質吸着および炎症プロセスによって特徴付けられる場合がある。
【0271】
「組織埋込応答」という句は、特に患者の身体内への材料の埋め込みから生じる「異物反応」の一部を指す。
【0272】
「患者」という用語は、組織の空隙または欠陥に関して処置されることになる任意の動物を指し、これらに限定されないが、脊椎動物を含む。本明細書において使用される場合、「患者」という用語は、これらに限定されるものではないが、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、および魚類を含む。いくつかの実施形態において、患者は、哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ブタなど)を指す。例示の実施形態において、患者はヒトである。
【0273】
「空隙」および「欠陥」という用語は、全ての様式の組織の異常を指し、これらに限定されないが、創傷、外科的創傷(例えば、これらに限定されないが、BCSから生じた外科的創傷を含む)、身体的欠陥(例えば、瘢痕、くぼみ、先天性欠損など)、損傷、疾患の進行(筋萎縮など)、および/または同類のもの、ならびにこれらの組合せを含む。本明細書において使用される場合、「組織」という用語は、硬組織(例えば、骨格骨)と軟組織の両方を含む。したがって、「組織の異常」という句は、硬組織と軟組織の両方における全ての様式の異常を包含する。
【0274】
「回復する」および「再生する」という用語は、組織に関連して使用される場合、組織の空隙または欠陥によってすでに特徴付けられている患者の領域における組織の存在の再確立、およびこの同じ領域における組織の再成長をそれぞれ指す。いくつかの実施形態において、回復されるおよび/または再生される組織は、置き換えられる元の組織の外観、構造、および機能のうちの1つまたは複数を反映させていてもよい。
【0275】
「萎縮」という用語は、組織に関連して使用される場合、組織領域の減少によって特徴付けられる瘢痕化のタイプを指し、これは、典型的には、身体内の治癒応答に起因する。
【0276】
「マトリックス」という用語は、その上、周囲、および内部で組織が発生、発達、および/または成長することができるプラットフォームを提供するように構成されたコラーゲン原線維足場様構造を指す。
【0277】
いくつかの実施形態において、本教示による組織の空隙または欠陥を充填するための方法は、(a)自己集合するバイオポリマーを組織欠陥または空隙中に導入することと、(b)自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することとを含む。
【0278】
いくつかの実施形態において、本教示による乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じる組織の空隙または欠陥を充填するための方法は、(a)オリゴマーコラーゲン溶液と中和溶液とを含む混合物を外科的創傷部位中に導入することと;(b)オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含む。オリゴマーコラーゲン溶液は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含んでいてもよい。
【0279】
いくつかの実施形態において、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じる組織の空隙または欠陥を充填するための方法は、(a)オリゴマーコラーゲン溶液と中和溶液とを含む混合物を外科的創傷部位中に導入することと;(b)オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーコラーゲン溶液は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、オリゴマーコラーゲン溶液の濃度は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである。いくつかの実施形態において、オリゴマーコラーゲン溶液対中和溶液の比は約9:1である。
【0280】
他の実施形態において、上述の方法のいずれかに従って調製されたコラーゲンマトリックスが提供される。更なる実施形態において、コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキットが提供される。更なる実施形態において、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲン、塩酸溶液、および緩衝液を含むキットが提供される。
【0281】
いくつかの追加の実施形態は、以下の列挙される各項によって記載される。これらの実施形態のいずれの適用可能な組合せも検討され、本出願のこの詳細な説明の項において記載される実施形態とこれらの実施形態のいずれの適用可能な組合せも検討される。
【0282】
1.患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと;自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することとを含む、方法。
【0283】
2.自己集合するバイオポリマーがインサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンを含む、第1項に記載の方法。
【0284】
3.インサイチュ重合性オリゴマーコラーゲンがコラーゲン分子を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0285】
4.コラーゲン分子の少なくとも一部が、1つまたは複数の分子間架橋によって共有結合されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0286】
5.患者が哺乳動物である、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0287】
6.患者がヒトである、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0288】
7.導入することが滅菌条件下で達成される、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0289】
8.自己集合するバイオポリマーがインサイチュ重合性コラーゲンを含み、形状保持マトリックスがコラーゲン原線維マトリックスを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0290】
9.自己集合するバイオポリマーが液体I型コラーゲンを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0291】
10.自己集合するバイオポリマーが、ブタ真皮由来のI型オリゴマーコラーゲンを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0292】
11.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0293】
12.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0294】
13.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、緩衝液を更に含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0295】
14.自己集合するバイオポリマーが、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0296】
15.自己集合するバイオポリマーが、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含み、オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0297】
16.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含む溶液を含み、溶液の濃度は、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0298】
17.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0299】
18.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0300】
19.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0301】
20.自己集合するバイオポリマーが、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、500mJ/cm2の紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0302】
21.導入することが、シリンジを介して組織の空隙または欠陥中に自己集合するバイオポリマーを注射することを含む、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0303】
22.組織の空隙または欠陥が乳腺腫瘍摘出術手順によって生じる、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0304】
23.組織の空隙または欠陥が乳房切除術手順によって生じる、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0305】
24.組織の空隙または欠陥を充填することが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0306】
25.組織の空隙または欠陥を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0307】
26.組織の空隙または欠陥を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0308】
27.組織の空隙または欠陥を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0309】
28.組織の空隙または欠陥を充填することに対する組織埋込応答が照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、先行する項のいずれか一項に記載の方法。
【0310】
29.患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、組織の空隙または欠陥が、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じ、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【0311】
30.オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、第29項に記載の方法。
【0312】
31.酸が0.01N塩酸を含み、オリゴマーコラーゲン溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、第29項または第30項に記載の方法。
【0313】
32.患者における組織の空隙または欠陥を充填するための方法であって、組織の空隙または欠陥が、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術手順によって生じ、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含み;オリゴマーコラーゲン溶液の濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLであり;オリゴマーコラーゲン溶液対緩衝液の比が約9:1である、方法。
【0314】
33.オリゴマーコラーゲン溶液が超遠心分離法を使用して清澄化されているか、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されているか、紫外線を照射されているか、またはこれらの組合せが行われている、第32項に記載の方法。
【0315】
34.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第32~33項のいずれか一項に記載の方法。
【0316】
35.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第32~34項のいずれか一項に記載の方法。
【0317】
36.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第32~35項のいずれか一項に記載の方法。
【0318】
37.組織の空隙または欠陥が乳房腫瘍の除去に起因する、第32~36項のいずれか一項に記載の方法。
【0319】
38.自己集合するバイオポリマーが組織充填剤を含む、第32~37項のいずれか一項に記載の方法。
【0320】
39.組織の空隙または欠陥を充填することが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、第32~38項のいずれか一項に記載の方法。
【0321】
40.組織の空隙または欠陥を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第32~39項のいずれか一項に記載の方法。
【0322】
41.組織の空隙または欠陥を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第32~40項のいずれか一項に記載の方法。
【0323】
42.組織の空隙または欠陥を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、第32~41項のいずれか一項に記載の方法。
【0324】
43.組織の空隙または欠陥を充填することに対する組織埋込応答が照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第32~42項のいずれか一項に記載の方法。
【0325】
44.創傷を充填するための方法であって、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を創傷中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【0326】
45.凍結乾燥したタイプのオリゴマーコラーゲンが凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンを含む、第44項に記載の方法。
【0327】
46.創傷が外科的創傷を含む、第44項または第45項に記載の方法。
【0328】
47.外科的創傷が腫瘍の除去に起因する、第44~46項のいずれか一項に記載の方法。
【0329】
48.外科的創傷が乳房腫瘍の除去に起因する、第44~47項のいずれか一項に記載の方法。
【0330】
49.オリゴマーコラーゲン溶液が組織充填剤を含む、第44~48項のいずれか一項に記載の方法。
【0331】
50.創傷を充填することが、欠陥萎縮および瘢痕組織形成をもたらさない、第44~49項のいずれか一項に記載の方法。
【0332】
51.創傷を充填することが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第44~50項のいずれか一項に記載の方法。
【0333】
52.創傷を充填することが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第44~51項のいずれか一項に記載の方法。
【0334】
53.創傷を充填することが、脂肪組織、乳腺組織、またはこれらの組合せを含む乳房組織の生成をもたらす、第44~52項のいずれか一項に記載の方法。
【0335】
54.創傷を充填することに対する組織埋込応答が照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第44~53項のいずれか一項に記載の方法。
【0336】
55.患者の組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させるための方法であって、自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入することと;自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することとを含む、方法。
【0337】
56.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第55項に記載の方法。
【0338】
57.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第55項または第56項に記載の方法。
【0339】
58.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第55~57項のいずれか一項に記載の方法。
【0340】
59.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、第55~58項のいずれか一項に記載の方法。
【0341】
60.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第55~59項のいずれか一項に記載の方法。
【0342】
61.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第55~60項のいずれか一項に記載の方法。
【0343】
62.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、脂肪組織とともに骨格筋の生成をもたらす、第55~61項のいずれか一項に記載の方法。
【0344】
63.骨格筋組織を回復および再生させることに対する組織埋込応答が照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第55~62項のいずれか一項に記載の方法。
【0345】
64.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させるための方法であって、オリゴマーコラーゲン溶液と緩衝液とを含む混合物を、組織の空隙または欠陥中に導入することと;オリゴマーコラーゲン溶液を重合させて、コラーゲン-原線維マトリックスを形成することとを含み;オリゴマーコラーゲン溶液が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む、方法。
【0346】
65.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第64項に記載の方法。
【0347】
66.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第64項または第65項に記載の方法。
【0348】
67.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第64~66項のいずれか一項に記載の方法。
【0349】
68.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、欠陥萎縮または瘢痕組織形成をもたらさない、第64~67項のいずれか一項に記載の方法。
【0350】
69.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、炎症性メディエーター、炎症応答、または異物反応をもたらさない、第64~68項のいずれか一項に記載の方法。
【0351】
70.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、天然組織のものと実質的に同一の圧縮係数または圧縮係数の範囲をもたらす、第64~69項のいずれか一項に記載の方法。
【0352】
71.組織の空隙または欠陥において骨格筋組織を回復および再生させることが、脂肪組織とともに骨格筋の生成をもたらす、第64~70項のいずれか一項に記載の方法。
【0353】
72.骨格筋組織を回復および再生させることに対する組織埋込応答が照射による悪影響を受けず、その結果、脂質嚢胞、微小石灰化、病巣塊、および/または不透明度が高い領域のうちの1つまたは複数が観察されない、第64~71項のいずれか一項に記載の方法。
【0354】
73.組織の空隙または欠陥においてマトリックスを調製するための方法であって、単一の混合工程を使用してコラーゲン重合させることを含み、単一の混合工程が、コラーゲン組成物と緩衝液とを混合して、コラーゲン溶液を形成することを含み、コラーゲン溶液中のコラーゲンを重合させてマトリックスを形成する、方法。
【0355】
74.コラーゲン溶液を、約25℃を超える温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第73項に記載の方法。
【0356】
75.コラーゲン溶液を約37℃の温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第73項または第74項に記載の方法。
【0357】
76.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーを含む、第73~75項のいずれか一項に記載の方法。
【0358】
77.コラーゲンがコラーゲン分子を含む、第73~76項のいずれか一項に記載の方法。
【0359】
78.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーからなる、第73~77項のいずれか一項に記載の方法。
【0360】
79.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子からなる、第73~78項のいずれか一項に記載の方法。
【0361】
80.コラーゲンが、分子間架橋コラーゲン分子から実質的になる、第73~79項のいずれか一項に記載の方法。
【0362】
81.コラーゲンがテロコラーゲンを更に含む、第73~80項のいずれか一項に記載の方法。
【0363】
82.コラーゲンがアテロコラーゲンを更に含む、第73~81項のいずれか一項に記載の方法。
【0364】
83.コラーゲンオリゴマーを含むコラーゲンが、コラーゲンオリゴマーを含む組織から、コラーゲンオリゴマーを産生する細胞から、またはコラーゲンを化学的に架橋してコラーゲンオリゴマーを得ることによって得られる、第73~82項のいずれか一項に記載の方法。
【0365】
84.コラーゲンがブタ皮膚組織に由来する、第73~83項のいずれか一項に記載の方法。
【0366】
85.コラーゲン組成物が酸を更に含む、第73~84項のいずれか一項に記載の方法。
【0367】
86.酸が、塩酸、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択される、第73~85項のいずれか一項に記載の方法。
【0368】
87.酸が塩酸である、第73~86項のいずれか一項に記載の方法。
【0369】
88.塩酸が、約0.005Nから約0.1Nの塩酸である、第73~87項のいずれか一項に記載の方法。
【0370】
89.塩酸が約0.01N塩酸である、第73~88項のいずれか一項に記載の方法。
【0371】
90.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、第73~89項のいずれか一項に記載の方法。
【0372】
91.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、第73~90項のいずれか一項に記載の方法。
【0373】
92.コラーゲン溶液と緩衝液との混合物中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、第73~91項のいずれか一項に記載の方法。
【0374】
93.コラーゲン組成物が滅菌される、第73~92項のいずれか一項に記載の方法。
【0375】
94.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、またはコラーゲンマトリックスが、クロロホルムへの曝露、ウイルスろ過、滅菌ろ過、ガンマ線照射、紫外線照射、電子ビーム、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法によって滅菌される、第73~93項のいずれか一項に記載の方法。
【0376】
95.コラーゲン組成物がろ過によって滅菌される、第73~94項のいずれか一項に記載の方法。
【0377】
96.緩衝液が約0.03mMから約0.2mMのMgCl2を含む、第73~95項のいずれか一項に記載の方法。
【0378】
97.緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2を含む、第73~96項のいずれか一項に記載の方法。
【0379】
98.緩衝液が、約0.02mM未満のMgCl2を含む、第73~97項のいずれか一項に記載の方法。
【0380】
99.緩衝液がMgCl2を含まない、第73~98項のいずれか一項に記載の方法。
【0381】
100.緩衝液が、約0.3mMから約3mMのKH2PO4を更に含む、第73~99項のいずれか一項に記載の方法。
【0382】
101.緩衝液が、約1mMから約10MのNa2HPO4を更に含む、第73~100項のいずれか一項に記載の方法。
【0383】
102.緩衝液が、約0.1mMから約4mMのKClを更に含む、第73~101項のいずれか一項に記載の方法。
【0384】
103.緩衝液が、約0.02Mから約0.3MのNaClを更に含む、第73~102項のいずれか一項に記載の方法。
【0385】
104.緩衝液が、約0.002Nから約0.02NのNaOHを更に含む、第73~103項のいずれか一項に記載の方法。
【0386】
105.緩衝液が、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、第73~104項のいずれか一項に記載の方法。
【0387】
106.緩衝液が、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、第73~105項のいずれか一項に記載の方法。
【0388】
107.緩衝液がグルコースを含まない、第73~106項のいずれか一項に記載の方法。
【0389】
108.細胞をコラーゲン溶液に添加することを更に含む、第73~107項のいずれか一項に記載の方法。
【0390】
109.マトリックスがコラーゲン原線維を含む、第73~108項のいずれか一項に記載の方法。
【0391】
110.コラーゲンが溶解性コラーゲンである、第73~109項のいずれか一項に記載の方法。
【0392】
111.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはマトリックスが、UVC照射を使用して滅菌される、第73~110項のいずれか一項に記載の方法。
【0393】
112.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはマトリックスが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌される、第73~111項のいずれか一項に記載の方法。
【0394】
113.コラーゲン溶液の重合から得られたマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、第73~112項のいずれか一項に記載の方法。
【0395】
114.重合特性がせん断貯蔵係数である、第73~113項のいずれか一項に記載の方法。
【0396】
115.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第73~114項のいずれか一項に記載の方法。
【0397】
116.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第73~115項のいずれか一項に記載の方法。
【0398】
117.滅菌がウイルスを不活性化させる、第73~116項のいずれか一項に記載の方法。
【0399】
118.組織欠陥または空隙部位においてマトリックスを調製するための方法であって、コラーゲン組成物と緩衝液とを混合してコラーゲン溶液を形成することによってコラーゲンを重合させることと、コラーゲン溶液中のコラーゲンを重合させてマトリックスを形成することとを含み、緩衝液がマグネシウムイオンまたはマンガンイオンを含まない、前記方法。
【0400】
119.コラーゲン溶液を、約25℃を超える温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第118項に記載の方法。
【0401】
120.コラーゲン溶液を約37℃の温度でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進することを更に含む、第118項または第119項に記載の方法。
【0402】
121.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーを含む、第118~120項のいずれか一項に記載の方法。
【0403】
122.コラーゲンがコラーゲン分子を含む、第118~121項のいずれか一項に記載の方法。
【0404】
123.コラーゲンがコラーゲンオリゴマーからなる、第118~122項のいずれか一項に記載の方法。
【0405】
124.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子からなる、第118~123項のいずれか一項に記載の方法。
【0406】
125.コラーゲンが分子間架橋コラーゲン分子から実質的になる、第118~124項のいずれか一項に記載の方法。
【0407】
126.コラーゲンがテロコラーゲンを更に含む、第118~125項のいずれか一項に記載の方法。
【0408】
127.コラーゲンがアテロコラーゲンを更に含む、第118~126項のいずれか一項に記載の方法。
【0409】
128.コラーゲンオリゴマーを含むコラーゲンが、コラーゲンオリゴマーを含む組織から、コラーゲンオリゴマーを産生する細胞から、またはコラーゲンを化学的に架橋してコラーゲンオリゴマーを得ることによって得られる、第118~127項のいずれか一項に記載の方法。
【0410】
129.コラーゲンがブタ皮膚組織に由来する、第118~128項のいずれか一項に記載の方法。
【0411】
130.コラーゲン組成物が酸を更に含む、第118~129項のいずれか一項に記載の方法。
【0412】
131.酸が、塩酸、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択される、第118~130項のいずれか一項に記載の方法。
【0413】
132.酸が塩酸である、第118~131項のいずれか一項に記載の方法。
【0414】
133.塩酸が、約0.005Nから約0.1Nの塩酸である、第118~132項のいずれか一項に記載の方法。
【0415】
134.塩酸が約0.01N塩酸である、第118~133項のいずれか一項に記載の方法。
【0416】
135.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、第118~134項のいずれか一項に記載の方法。
【0417】
136.コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、第118~135項のいずれか一項に記載の方法。
【0418】
137.コラーゲン溶液と緩衝液との混合物中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、第118~136項のいずれか一項に記載の方法。
【0419】
138.コラーゲン組成物が滅菌される、第118~137項のいずれか一項に記載の方法。
【0420】
139.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、またはコラーゲンマトリックスが、クロロホルムへの曝露、ウイルスろ過、滅菌ろ過、ガンマ線照射、紫外線照射、電子ビーム、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法によって滅菌される、第118~138項のいずれか一項に記載の方法。
【0421】
140.コラーゲン組成物がろ過によって滅菌される、第118~139項のいずれか一項に記載の方法。
【0422】
141.緩衝液が約0.03mMから約0.2mMのMgCl2を含む、第118~140項のいずれか一項に記載の方法。
【0423】
142.緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2を含む、第141項に記載の方法。
【0424】
143.緩衝液が、約0.02mM未満のMgCl2を含む、第118~142項のいずれか一項に記載の方法。
【0425】
144.緩衝液がMgCl2を含まない、第118~143項のいずれか一項に記載の方法。
【0426】
145.緩衝液が、約0.3mMから約3mMのKH2PO4を更に含む、第118~144項のいずれか一項に記載の方法。
【0427】
146.緩衝液が、約1mMから約10MのNa2HPO4を更に含む、第118~145項のいずれか一項に記載の方法。
【0428】
147.緩衝液が、約0.1mMから約4mMのKClを更に含む、第118~146項のいずれか一項に記載の方法。
【0429】
148.緩衝液が、約0.02Mから約0.3MのNaClを更に含む、第118~147項のいずれか一項に記載の方法。
【0430】
149.緩衝液が、約0.002Nから約0.02NのNaOHを更に含む、第118~148項のいずれか一項に記載の方法。
【0431】
150.緩衝液が、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、第118~149項のいずれか一項に記載の方法。
【0432】
151.緩衝液が、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、第118~150項のいずれか一項に記載の方法。
【0433】
152.緩衝液がグルコースを含まない、第118~151項のいずれか一項に記載の方法。
【0434】
153.細胞をコラーゲン溶液に添加することを更に含む、第118~152項のいずれか一項に記載の方法。
【0435】
154.マトリックスがコラーゲン原線維を含む、第118~153項のいずれか一項に記載の方法。
【0436】
155.コラーゲンが溶解性コラーゲンである、第118~154項のいずれか一項に記載の方法。
【0437】
156.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはコラーゲンマトリックスが、紫外線照射を使用して滅菌される、第118~155項のいずれか一項に記載の方法。
【0438】
157.コラーゲン組成物、コラーゲン溶液、および/またはマトリックスが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌される、第118~156項のいずれか一項に記載の方法。
【0439】
158.コラーゲン溶液の重合から得られたマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、第118~157項のいずれか一項に記載の方法。
【0440】
159.重合特性がせん断貯蔵係数である、第118~158項のいずれか一項に記載の方法。
【0441】
160.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第118~159項のいずれか一項に記載の方法。
【0442】
161.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第118~160項のいずれか一項に記載の方法。
【0443】
162.滅菌がウイルスを不活性化させる、第118~161項のいずれか一項に記載の方法。
【0444】
163.第1~162項のいずれか一項に記載の方法に従って調製されたコラーゲンマトリックス。
【0445】
164.医療用移植片である、第163項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0446】
165.医療用移植片が、組織移植材料、注射可能な移植材料、創傷ドレッシング材、止血ドレッシング材、治療用細胞用のデリバリー媒体、および治療剤用のデリバリー媒体からなる群から選択される使用を有する、第163項または第164項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0447】
166.調査目的で使用される、第163~165項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0448】
167.薬物毒性試験または薬物開発のために使用される、第163~166項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0449】
168.紫外線照射を使用して滅菌されている、第163~167項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0450】
169.照射されていないコラーゲンマトリックスと比較して重合特性を維持している、第163~168項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0451】
170.重合特性がせん断貯蔵係数である、第163~169項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0452】
171.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第163~170項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0453】
172.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第163~171項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0454】
173.滅菌がウイルスを不活性化させている、第163~172項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0455】
174.UVC照射を使用して滅菌されている、第163~173項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0456】
175.UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、第163~174項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0457】
176.自己集合するバイオポリマーを組織の空隙または欠陥中に導入し、自己集合するバイオポリマーを重合させて、形状保持マトリックスを形成することによって調製されるコラーゲンマトリックスであって、自己集合するバイオポリマーのpHが約5.5から約8.5の範囲であり、自己集合するバイオポリマーの自己集合時間が約0.2分から約1.5分の範囲であり、コラーゲンマトリックスのせん断貯蔵係数(G’)が約2.0kPaから約4.0kPaの範囲であり、コラーゲンマトリックスのせん断損失係数(G”)が約0.1kPaから約0.7kPaの範囲であり、コラーゲンマトリックスの圧縮係数が約5.0kPaから約10.0kPaの範囲である、コラーゲンマトリックス。
【0458】
177.自己集合するバイオポリマーのpHが約7.25±約0.25であり、自己集合するバイオポリマーの自己集合時間が約0.8分±約0.3分であり、コラーゲンマトリックスのせん断貯蔵係数(G’)が約3.1kPa±約0.4kPaであり、コラーゲンマトリックスのせん断損失係数(G”)が約0.4kPa±約0.1kPaであり、コラーゲンマトリックスの圧縮係数が約7.7kPa±約1.9kPaである、第176項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0459】
178.医療用移植片である、第176項または第177項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0460】
179.医療用移植片が、組織移植材料、注射可能な移植材料、創傷ドレッシング材、止血ドレッシング材、治療用細胞用のデリバリー媒体、および治療剤用のデリバリー媒体からなる群から選択される使用を有する、第176~178項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0461】
180.調査目的で使用される、第176~179項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0462】
181.薬物毒性試験または薬物開発のために使用される、第176~180項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0463】
182.紫外線照射を使用して滅菌されている、第176~181項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0464】
183.照射されていないコラーゲンマトリックスと比較して重合特性を維持している、第176~182項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0465】
184.重合特性がせん断貯蔵係数である、第176~183項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0466】
185.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第176~184項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0467】
186.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第176~185項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0468】
187.滅菌がウイルスを不活性化させている、第176~186項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0469】
188.UVC照射を使用して滅菌されている、第176~187項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0470】
189.UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、第176~188項のいずれか一項に記載のコラーゲンマトリックス。
【0471】
190.組織の空隙または欠陥において組織を回復および再生させるためのキットであって、インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキット。
【0472】
191.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が液体I型コラーゲンを含む、第190項に記載のキット。
【0473】
192.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、ブタ真皮由来のI型オリゴマーコラーゲンを含む、第190項または第191項に記載のキット。
【0474】
193.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、第190~192項のいずれか一項に記載のキット。
【0475】
194.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと酸とを含む溶液を含む、第190~193項のいずれか一項に記載のキット。
【0476】
195.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含む、第190~194項のいずれか一項に記載のキット。
【0477】
196.インサイチュ重合性コラーゲン組成物対緩衝液の比が約9:1である、第190~195項のいずれか一項に記載のキット。
【0478】
197.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと0.01N塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液のコラーゲンの濃度が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンの乾燥重量に基づいて約8mg/mLである、第190~196項のいずれか一項に記載のキット。
【0479】
198.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化されている、第190~197項のいずれか一項に記載のキット。
【0480】
199.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、第190~198項のいずれか一項に記載のキット。
【0481】
200.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、第190~199項のいずれか一項に記載のキット。
【0482】
201.インサイチュ重合性コラーゲン組成物が、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンと塩酸とを含む溶液を含み、インサイチュ重合性コラーゲン組成物の溶液が、超遠心分離法を使用して清澄化され、500mJ/cm2の紫外線を照射され、次いで、滅菌メンブランフィルターに通してろ過されている、第190~200項のいずれか一項に記載のキット。
【0483】
202.組織の空隙または欠陥にインサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液との混合物をデリバリーするために構成されたシリンジを更に含む、第190~201項のいずれか一項に記載のキット。
【0484】
203.緩衝液が、約0.03mMから約0.2mMのMgCl2を含む、第190~202項のいずれか一項に記載のキット。
【0485】
204.緩衝液が、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2を含む、第190~203項のいずれか一項に記載のキット。
【0486】
205.緩衝液が約0.02mM未満のMgCl2を含む、第190~204項のいずれか一項に記載のキット。
【0487】
206.緩衝液がMgCl2を含まない、第190~205項のいずれか一項に記載のキット。
【0488】
207.緩衝液が、約0.003Mから約0.03MのKH2PO4を更に含む、第190~206項のいずれか一項に記載のキット。
【0489】
208.緩衝液が、約0.01Mから約0.1MのNa2HPO4を更に含む、第190~207項のいずれか一項に記載のキット。
【0490】
209.緩衝液が、約0.001Mから約0.04MのKClを更に含む、第190~208項のいずれか一項に記載のキット。
【0491】
210.緩衝液が、約0.2Mから約3.0MのNaClを更に含む、第190~209項のいずれか一項に記載のキット。
【0492】
211.緩衝液が、約0.02Nから約0.2NのNaOHを更に含む、第190~210項のいずれか一項に記載のキット。
【0493】
212.緩衝液が、約0.2重量パーセントから約5重量パーセントのグルコースを更に含む、第190~211項のいずれか一項に記載のキット。
【0494】
213.緩衝液が、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含む、第190~212項のいずれか一項に記載のキット。
【0495】
214.緩衝液がグルコースを含まない、第190~213項のいずれか一項に記載のキット
【0496】
215.インサイチュ重合性コラーゲン組成物中のコラーゲンの濃度が、約0.1mg/mlから約40mg/mlである、第190~214項のいずれか一項に記載のキット。
【0497】
216.インサイチュ重合性コラーゲン組成物中のコラーゲンの濃度が、約7mg/mLから約8mg/mLである、第190~215項のいずれか一項に記載のキット。
【0498】
217.インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを含む中和されたコラーゲン充填剤中のコラーゲンの濃度が、約6.3から約7.2mg/mLである、第190~216項のいずれか一項に記載のキット。
【0499】
218.コラーゲン溶液が、約0.005N塩酸から約0.1N塩酸を含む、第190~217項のいずれか一項に記載のキット。
【0500】
219.緩衝液が、インサイチュ重合性コラーゲン組成物と緩衝液とを混合することを含む単一の混合工程において、インサイチュ重合性コラーゲン組成物を重合させるように構成されている、第190~218項のいずれか一項に記載のキット。
【0501】
220.インサイチュ重合性コラーゲン組成物および緩衝液が個別の容器中に存在する、第190~219項のいずれか一項に記載のキット。
【0502】
221.個別の容器が滅菌バイアルを含む、第190~220項のいずれか一項に記載のキット。
【0503】
222.個別の容器が、デュアルバレルシリンジの個別のコンパートメントを含む、第190~221項のいずれか一項に記載のキット。
【0504】
223.デュアルバレルシリンジが混合エレメントを含む、第190~222項のいずれか一項に記載のキット。
【0505】
224.デュアルバレルシリンジが滅菌されている、第190~223項のいずれか一項に記載のキット。
【0506】
225.キットの構成要素を使用するための取扱説明書を更に含む、第190~224項のいずれか一項に記載のキット。
【0507】
226.組織の空隙または欠陥に局所デリバリーするために構成された少なくとも1つの治療剤を更に含む、第190~225項のいずれか一項に記載のキット。
【0508】
227.少なくとも1つの治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、抗生剤、鎮痛剤、またはこれらの組合せを含む、第190~226項のいずれか一項に記載のキット。
【0509】
228.組織の空隙または欠陥が創傷を含む、第190~227項のいずれか一項に記載のキット。
【0510】
229.組織の空隙または欠陥が外科的創傷を含む、第190~228項のいずれか一項に記載のキット。
【0511】
230.組織の空隙または欠陥が腫瘍の除去に起因する、第190~229項のいずれか一項に記載のキット。
【0512】
231.組織の空隙または欠陥が乳房腫瘍の除去に起因する、第190~230項のいずれか一項に記載のキット。
【0513】
232.乳房温存外科手術後の組織を再生するためのものである、第190~231項のいずれか一項に記載のキット。
【0514】
233.組織の空隙または欠陥においてマトリックスを調製するためのものである、第190~232項のいずれか一項に記載のキット。
【0515】
234.インサイチュ重合性コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが紫外線照射を使用して滅菌されている、第190~233項のいずれか一項に記載のキット。
【0516】
235.インサイチュ重合性コラーゲン組成物の重合から得られたコラーゲンマトリックスがそれぞれ、照射されていないコラーゲン組成物または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持している、第190~234項のいずれか一項に記載のキット。
【0517】
236.重合特性がせん断貯蔵係数である、第190~235項のいずれか一項に記載のキット。
【0518】
237.照射線量が、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2の範囲である、第190~236項のいずれか一項に記載のキット。
【0519】
238.照射線量が、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲である、第190~237項のいずれか一項に記載のキット。
【0520】
239.滅菌がウイルスを不活性化させている、第190~238項のいずれか一項に記載のキット。
【0521】
240.インサイチュ重合性コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンがUVC照射を使用して滅菌されている、第190~239項のいずれか一項に記載のキット。
【0522】
241.コラーゲン組成物または凍結乾燥したオリゴマーコラーゲンが、UVC照射と滅菌ろ過とを使用して滅菌されている、第190~240項のいずれか一項に記載のキット。
【0523】
本教示による使用のためのブタ真皮由来の精製された原線維形成液体I型コラーゲンは、2019年7月31日に出願された出願人の同時係属中の米国特許出願第16/482,465号、および国際公開第2018/144496A1号に記載されている。両文書の内容全体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0524】
本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのコラーゲンの調製物に関しては、コラーゲンを調製するための当技術分野において公知のいずれの方法も使用してもよい。例示の実施形態において、コラーゲンは、Bailey JL, Critser PJ, Whittington C, Kuske JL, Yoder MC, Voytik-Harbin SL; Collagen oligomers modulate physical and biological properties of three-dimensional self-assembled matrices, Biopolymers (2011) 95(2):77-93、Kreger ST, Bell BJ, Bailey J, Stites E, Kuske J, Waisner B, Voytik-Harbin SL; Polymerization and matrix physical properties as important design considerations for soluble collagen formulations, Biopolymers (2010) 93(8):690-707、米国特許出願公開第20080268052号または米国特許出願公開第20120027732号において記載される方法によって調製してもよく、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0525】
さまざまな例示の実施形態において、本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのコラーゲンは、コラーゲンの少なくとも一部が重合性オリゴマーコラーゲンを含むという条件で、当技術分野において公知のコラーゲンの任意の好適な原料から得てもよい。例示的なコラーゲン源としては、一般的に、粘膜下層組織(米国特許第4,902,508号、同第5,281,422号、および同第5,275,826号)、心膜組織、膀胱粘膜下層組織、胃粘膜下層組織、肝臓基底膜組織、胎盤組織、卵巣組織、動物尾部組織、皮膚組織[例えば、Gallop, et al., Preparation and Properties of Soluble Collagens, Meth. Enzymol. 6: 635-641 (1963)、参照により本明細書に組み込まれるものとする]、および細胞外マトリックス含有組織がある。さまざまな実施形態において、本明細書において記載される方法および組成物において使用するためのコラーゲンのタイプは、任意の好適なタイプのコラーゲンであってもよく、これらに限定されないが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、もしくはIV型コラーゲン、またはこれらの組合せを含む。
【0526】
いくつかの実施形態において、コラーゲンオリゴマーが豊富な組織(例えば、ブタ皮膚組織)も、本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのコラーゲンを得るために使用してもよく、またはコラーゲンは、コラーゲンオリゴマーを産生する細胞(例えば、コラーゲンオリゴマーを発現するための組換え技術によって改変された細胞)から、もしくはコラーゲンを化学的に架橋してコラーゲンオリゴマーを得ることによって(例えば、当技術分野において公知の架橋剤を使用して)得てもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法および組成物において使用するためのコラーゲンは、オリゴマーを含んでいても、オリゴマーからなっていてもよい。いくつかの実施形態において、コラーゲンは、オリゴマー、およびコラーゲンの他の形態、例えば、単量体、テロコラーゲン、および/またはアテロコラーゲンを含んでいてもよい。
【0527】
別の実施形態において、コラーゲンは、溶解性コラーゲンまたは可溶化コラーゲンであってもよい。コラーゲンが溶解性コラーゲンまたは可溶化コラーゲンである実施形態において、コラーゲンは不溶性コラーゲンを実質的に含まないが、一部の不溶性コラーゲンを含む場合がある。別の実施形態において、コラーゲンは溶解性コラーゲンまたは可溶化コラーゲンからなる。
【0528】
さまざまな例示の実施形態において、コラーゲン、コラーゲン組成物、コラーゲンマトリックス、コラーゲン溶液、凍結乾燥したコラーゲン、および/または緩衝液(本明細書において中和緩衝剤または自己集合試薬とも称する)は、これらに限定されないが、プロピレン酸化物またはエチレンオキシド処置、ガスプラズマ滅菌、ガンマ線照射(例えば、0.1~10Mrad)、紫外線照射(例えば、UVC照射)、電子ビーム、ウイルスろ過、滅菌ろ過(例えば、0.22μmフィルターを用いて)、クロロホルム曝露、および/または過酢酸滅菌、ならびにこれらの組合せを含む当技術分野において公知の滅菌技術を使用して滅菌してもよい。この実施形態において、滅菌手順は、滅菌された、コラーゲンの構造、コラーゲンの重合特性、またはコラーゲンの生物学的特性に悪影響を与えるべきではない。さまざまな実施形態において、コラーゲンは、凍結乾燥前後に滅菌してもよい(凍結乾燥手順は以下に記載される)。
【0529】
紫外線照射(例えば、UVC照射)を含む実施形態において、コラーゲン重合から得られたコラーゲンマトリックスはそれぞれ、照射されていないコラーゲン、照射されていないコラーゲン組成物、照射されていないコラーゲンマトリックス、照射されていないコラーゲン溶液、または照射されていない凍結乾燥したコラーゲンと比較して重合特性を維持することができる。そのような実施形態において、重合特性は、せん断貯蔵係数、弾性係数(ヤング係数)、引張係数、圧縮係数、原線維構造、タンパク質分解、細胞シグナル伝達、およびこれらの組合せから選択されてもよい。さまざまな実施形態において、紫外線照射(例えば、UVC照射)量は、約5mJ/cm2から約800mJ/cm2、約5mJ/cm2から約700mJ/cm2、約5mJ/cm2から約600mJ/cm2、約5mJ/cm2から約500mJ/cm2、約5mJ/cm2から約400mJ/cm2、約5mJ/cm2から約300mJ/cm2、5mJ/cm2から約200mJ/cm2、5mJ/cm2から約100mJ/cm2、5mJ/cm2から約50mJ/cm2、約30mJ/cm2から約800mJ/cm2、約30mJ/cm2から約700mJ/cm2、約30mJ/cm2から約600mJ/cm2、約30mJ/cm2から約500mJ/cm2、約30mJ/cm2から約400mJ/cm2、約30mJ/cm2から約300mJ/cm2、約30mJ/cm2から約200mJ/cm2、約30mJ/cm2から約100mJ/cm2、約30mJ/cm2から約50mJ/cm2、約200mJ/cm2から約800mJ/cm2、約300mJ/cm2から約800mJ/cm2、約400mJ/cm2から約800mJ/cm2、約500mJ/cm2から約800mJ/cm2、約600mJ/cm2から約800mJ/cm2、約50mJ/cm2から約300mJ/cm2、約100mJ/cm2から約300mJ/cm2、または約200mJ/cm2から約300mJ/cm2の範囲であってもよい。本明細書において記載される紫外線照射の実施形態(例えば、UVC照射)の全てにおいて、滅菌はウイルスを不活性化させる。この実施形態において、「ウイルスを不活性化させる」とは、感染しているかしていないかにかかわらず全てのウイルスを不活性化させること、感染性ウイルスの数を減少させること、または感染しているかしていないかにかかわらずウイルスの活性を阻害することを意味する。
【0530】
1つの態様において、本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのコラーゲンは、コラーゲンの精製に関する技術分野において公知の方法によって精製してもよい。本明細書において使用される場合、「精製された」とは、これらに限定されないが、細胞混入物、ヌクレオチド混入物、および内毒素を含む混入物を除去されることを意味する。さまざまな実施形態において、コラーゲンは、混入物を除去し、その結果、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%の純度になるように精製してもよい。他の実施形態において、コラーゲンは単離してもよい。本明細書において使用される場合、「単離された」とは、これらに限定されないが、細胞混入物、ヌクレオチド混入物、および内毒素を含む混入物を実質的に含まないことを意味する。
【0531】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのコラーゲンは、凍結乾燥し、次いで再構成してコラーゲン組成物を形成して、本明細書において記載される緩衝液と混合してもよい。そのような実施形態において、凍結乾燥したコラーゲンの再構築は、コラーゲンを重合するための混合工程ではない。本明細書において使用される場合、「凍結乾燥」という用語は、例えば、真空下でのフリーズドライによって水が、タンパク質、化合物、または組成物から除去されることを意味する。当業者に公知のいずれの凍結乾燥法も使用してもよい。いくつかの実施形態において、コラーゲンは、酸、例えば、酢酸、塩酸、ギ酸、乳酸、クエン酸、硫酸、またはリン酸中で凍結乾燥してもよい。他の実施形態において、コラーゲンは水中で凍結乾燥してもよい。更なる実施形態において、凍結保護剤もしくは凍結乾燥保護剤、またはこれらの組合せを凍結乾燥中に使用してもよい。
【0532】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥したコラーゲンは、再構成して、本明細書において記載されるコラーゲン組成物から形成して、緩衝液と混合してコラーゲンを重合させてもよい。いくつかの実施形態において、コラーゲンは、酸性溶液中または水中で再構成してもよい。いくつかの実施形態において、酸性溶液は、酢酸、塩酸、ギ酸、乳酸、クエン酸、硫酸、またはリン酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、再構築のための酸性溶液は、約0.005Nから約0.1N、約0.005Nから約0.08N、約0.005Nから約0.06N、約0.005Nから約0.04N、約0.005Nから約0.02N、約0.005Nから約0.01N、または約0.01Nの酸の濃度を有していてもよい。いくつかの実施形態において、酸は塩酸であってもよく、塩酸は、約0.005Nから約0.1Nの塩酸であってもよい。他の実施形態において、酸は塩酸であってもよく、塩酸は、約0.01N塩酸であってもよい。
【0533】
いくつかの実施形態において、コラーゲン組成物中またはコラーゲン溶液中のコラーゲン濃度は、約0.1mg/mlから約40mg/ml、約0.1mg/mlから約5mg/ml、または約0.5mg/mlから約4mg/mlであってもよい。他の実施形態において、コラーゲン組成物中またはコラーゲン溶液中のコラーゲン濃度は、約0.05から約5.0mg/ml、約1.0mg/mlから約3.0mg/ml、約0.05mg/mlから約10mg/ml、約0.05から約20mg/ml、約0.05から約30mg/ml、約0.05から約40mg/ml、約0.05から約50mg/ml、約0.05から約60mg/ml、約0.05から約80mg/ml、約5mg/mlから10mg/ml、約5mg/mlから20mg/ml、約5mg/mlから約40mg/ml、約5mg/mlから60mg/ml、約5mg/mlから約100mg/ml、約20mg/mlから約40mg/ml、約20mg/mlから60mg/ml、または約20mg/mlから約100mg/mlであってもよい。
【0534】
いくつかの実施形態において、コラーゲン組成物は、緩衝液と単一の工程において混合されてコラーゲンを重合する。他の実施形態において、コラーゲン組成物は、マグネシウムまたはマンガンイオン非存在下で緩衝液と混合されて、コラーゲンを重合する。いくつかの実施形態において、コラーゲン組成物は緩衝液と混合されて、コラーゲン溶液が形成され、コラーゲン溶液は、約25℃を超える温度でインキュベートされて、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合が促進される。他の実施形態において、コラーゲン溶液は、約37℃でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進してもよい。いくつかの実施形態において、コラーゲン溶液は、約25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、38℃、39℃、または40℃でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進してもよい。他の実施形態において、コラーゲン溶液は、約25℃から約40℃でインキュベートして、コラーゲン溶液中のコラーゲンの重合を促進してもよい。他の実施形態において、重合は、20℃を超える温度か、または約20℃から約40℃の範囲から選択される温度で行ってもよい。そのような実施形態において、コラーゲンは、重合させて、身体において認められるものと類似している原線維を形成してもよい。
【0535】
いくつかの実施形態において、コラーゲン組成物と混合されてコラーゲン溶液を形成することになる緩衝液は、約0.03mMから約0.2mMのMgCl2、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2、約0.02mM未満のMgCl2を含んでいても、MgCl2を含んでいなくてもよい。他の実施形態において、コラーゲン組成物と混合されてコラーゲン溶液を形成することになる緩衝液は、約0.3mMから約3mMのKH2PO4、約1mMから約10MのNa2HPO4、約0.1mMから約4mMのKCl、約0.02Mから約0.3MのNaCl、および約0.002Nから約0.02NのNaOHを含んでいてもよい。他の実施形態において、コラーゲン組成物と混合されてコラーゲン溶液を形成することになる緩衝液は、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのグルコース、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含んでいても、グルコースを含んでいなくてもよい。
【0536】
いくつかの実施形態において、緩衝液は、10倍、5倍、2倍、または任意の好適な出発濃度から希釈して、先行する項における構成成分濃度のいずれかを有する1倍の緩衝液を作製してもよい。いくつかの実施形態において、本教示によるキットは、希釈して1倍の緩衝液を作製するために、10倍、5倍、もしくは2倍の濃度、または任意の好適な出発濃度を有する緩衝液を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、10倍の緩衝液は以下の濃度で以下の成分を含んでいてもよい:
1.37M NaCl
0.027M KCl
0.081M Na2HPO4
0.015M KH2PO4
0.1N NaOH
適宜55.5mMグルコース
【0537】
他の実施形態において、1倍の緩衝液は、以下の濃度で以下の成分を含んでいてもよい:
0.137M NaCl
0.0027M KCl
0.0081M Na2HPO4
0.0015M KH2PO4
0.01N NaOH
適宜5.55mMグルコース
【0538】
これらの実施形態において、NaOHは緩衝液中に存在する。コラーゲンを重合させるための従来の公知の方法では、NaOHは、コラーゲンを重合するための方法において追加の混合工程として個別に添加されていた。いくつかの実施形態において、塩化カルシウムは、約0.4mMから約2.0mMの濃度で緩衝液中に存在していてもよい。
【0539】
いくつかの実施形態において、緩衝液中の緩衝剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Tris-HCl)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン-n,n’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、[n-(2-アセトアミド)]-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N’-[2-エタンスルホン酸](HEPES)、および1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(Bis Trisプロパン)からなる群から選択してもよい。いくつかの実施形態において、緩衝剤はPBSである。
【0540】
いくつかの実施形態において、コラーゲンを重合させるためのコラーゲン溶液のpHは、約5.0から約11、約6.0から約9.0、約6.5から約8.5の範囲から選択され、いくつかの実施形態において、pHは約7.3から約7.4である。
【0541】
いくつかの実施形態において、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン、または細胞増殖を促進する糖タンパク質、例えばラミニンおよびフィブロネクチン、ヒアルロン酸、または成長因子、例えば表皮成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、または線維芽細胞成長因子、ならびにグルココルチコイド、例えばデキサメタゾンを含む栄養素は、コラーゲン重合が完了する前後にまたはコラーゲン重合中に、コラーゲン溶液に添加してもよい。他の実施形態において、細胞は、コラーゲン溶液にコラーゲン重合が完了する前後にまたはコラーゲン重合中に、添加してもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、中胚葉由来細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性原始細胞(例えば、骨髄原始細胞、人工多能性幹細胞を含む幹細胞)、脂肪細胞、骨形成細胞、および多能性幹細胞からの特定の細胞誘導体からなる群から選択してもよい。
【0542】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法のいずれかに従って調製されたコラーゲンマトリックスが提供される。いくつかの実施形態において、コラーゲンマトリックスは、医療用移植片であってもよい。いくつかの実施形態において、医療用移植片は、組織移植材料、注射可能な移植材料、創傷ドレッシング材、止血ドレッシング材、治療用細胞用のデリバリー媒体、および治療剤用のデリバリー媒体からなる群から選択される使用を有する。他の実施形態において、本明細書において記載される方法は、組織または臓器を印刷するためのバイオインク製剤を作製するために使用してもよい。他の実施形態において、コラーゲンマトリックスは、調査目的、例えば、薬物毒性試験または薬物開発のために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法によって調製されるマトリックスは、埋め込み部位における内因性組織の再成長(例えば、リモデリング)のための基質としての役割を果たす場合があり、マトリックスは、埋め込みまたは注射の部位において置き換えられる傷害を受けたかまたは病的な組織の特性を有していてもよい。
【0543】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるマトリックスは、約0.1%から約100%、約0.5%から約100%、約0.5%から約26%、約1%から約100%、約1%から約26%、約1%から約7%、約1%から約15%、約7%から約26%、約20%から約30%、約20%から約50%、約20%から約70%、約20%から約100%、約30%から約50%、約30%から約70%、または約30%から約100%の原線維面積分率(マトリックスの断面表面中の原線維によって占められる合計面積のパーセント面積として定義される)または原線維容量分率(3次元において原線維によって占められる合計面積のパーセント面積)、および/または約0.5kPaから約40kPa、約30kPaから100kPa、約30kPaから約1000kPa、約30kPaから約10000kPa、約30kPaから約70000kPa、約100kPaから1000kPa、約100kPaから約10000kPa、または約100kPaから約70000kPaの係数(例えば、従来の機械的試験プロトコールを使用して得られた応力-ひずみ曲線の直線領域の傾きによって定義される弾性または直鎖状係数;すなわち、剛性)、圧縮係数、またはせん断貯蔵係数を有する原線維を含んでいてもよい。
【0544】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥したコラーゲン、塩酸溶液、および緩衝液を含むキットが提供される。他の実施形態において、コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキットが提供される。これらのキット実施形態において、緩衝液は、約0.03mMから約0.2mMのMgCl2、約0.002mMから約0.02mMのMgCl2、約0.02mM未満のMgCl2を含んでいても、MgCl2を含んでいなくてもよい。さまざまな実施形態において、緩衝液は、約0.003Mから約0.03MのKH2PO4、約0.01Mから約0.1MのNa2HPO4、約0.001Mから約0.04MのKCl、約0.2Mから約3.0MのNaCl、および約0.02Nから約0.2NのNaOHを更に含む。他の実施形態において、緩衝液は、約0.2重量パーセントから約5重量パーセントのグルコース、約0.5重量パーセント以下のグルコースを含んでいても、グルコースを含んでいなくてもよい。
【0545】
塩酸溶液を含むキットのいくつかの実施形態において、塩酸溶液は、約0.005N塩酸から約0.1N塩酸を含んでいてもよい。凍結乾燥したコラーゲン、塩酸溶液、および緩衝液を含むキットの実施形態において、凍結乾燥したコラーゲン、塩酸溶液、および緩衝液は、個別の容器中で提供されていてもよい。コラーゲン組成物と緩衝液とを含むキットの実施形態において、コラーゲン組成物中のコラーゲンは、約0.1mg/mlから約40mg/mlまたは約0.1mg/mlから約10mg/mlの濃度であってもよい。いくつかの実施形態において、コラーゲン組成物は、約7mg/mLから約8mg/mLの間の濃度を有する。いくつかの実施形態において、コラーゲン溶液と緩衝液との混合物中のコラーゲンの濃度は、約6.3から約7.2mg/mLである。いくつかの実施形態において、中和の際、製剤化によって、以下の特徴のうちの1つまたは複数を伴う重合性コラーゲンが得られる:最終コラーゲン濃度:6.3~7.2mg/mL;重合時間:0.5~1.1分;せん断貯蔵係数:2.7~3.5kPa;せん断損失係数:0.3~0.5kPa;および/または圧縮係数:5.8~9.6kPa。そのような実施形態において、コラーゲン組成物および緩衝液は、個別の容器中、例えば、滅菌バイアル、または混合エレメントを含むデュアルシリンジの個別のコンパートメントで提供されていてもよい。本明細書において記載されるキットの実施形態のいずれかにおいて、キットは、キットの構成要素を使用するための取扱説明書を更に含んでいてもよい。本明細書において記載されるキットの実施形態のいずれかにおいて、緩衝液は、緩衝液と塩酸溶液中で再構成された凍結乾燥したコラーゲンとをまたはコラーゲン組成物とを混合することを含む単一の混合工程を使用してコラーゲンを重合させることが可能であり得る。
【0546】
いくつかの実施形態において、キットは、コラーゲンが凍結乾燥形態で提供され、本明細書において記載される緩衝液、および凍結乾燥したコラーゲンを再構成するための酸、例えば、酢酸、または例えば、塩酸、ギ酸、乳酸、クエン酸、硫酸、もしくはリン酸を含む別の希酸の溶液を更に含む。
【0547】
以下の例は、具体的な実施形態を更に詳細に例示する。これらの例は例示の目的でのみ提供される、本発明を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0548】
[実施例1]
【0549】
方法および材料
単一の、登録商標を有し、製造工程が異なる2つのコラーゲン組織充填剤製剤がGeniPhysによって調製され、評価されたが;性能における違いは観察されなかったため、結果は、組み合わされ、単一の製剤として提示された。両製剤に関しては、凍結乾燥したI型オリゴマーコラーゲンを0.01N塩酸中に溶解して、推測で8mg/mlの溶液(凍結乾燥材料の乾燥重量に基づいて)を得た。可溶化後、溶液を、超遠心分離法(142,400×g)を使用して清澄化した。次いで、製剤1を、滅菌0.2μmメンブランフィルター(SterliTech、Kent、WA)に通してろ過し、以下に記載する品質管理試験を行った。製剤2に、波長254nm平行ビームを使用して500mJ/cm2の紫外(UV)放射線を照射してから、同じタイプのメンブランフィルターに通してろ過し、品質管理試験を行った。登録商標を有する中和溶液を、GeniPhysの標準的な手順に従って調製し、0.2μmフィルターに通してろ過滅菌した。外科手術において使用するキットを調製するために、シリンジに、製剤1、製剤2、および中和溶液を滅菌的に充填した。使用したオリゴマーコラーゲン溶液対中和溶液の容量比は9:1であった。
【0550】
コラーゲン製剤の材料特性を定義し、分子純度、自己集合動態、および粘弾性機械的特性の評価に基づいて品質管理を行った。自己集合動態および粘弾性特性を、4つの独立したコラーゲンプロトタイプバッチ(N=4)に関して6から8回(n=6~8)繰り返して測定した。コラーゲン純度を評価するために、4~20%および6%ゲル(Invitrogen)を使用したドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)をコラーゲン試料および分子量標準に対して行い(Novex SeeBlue Plus2、Invitrogen、Carlsbad、CA)、確立された方法に従ってクマシーブルー(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を用いて染色した。コラーゲン濃度を、シリウスレッド(Direct Red80、Sigma-Aldrich)アッセイを使用して判定した。時間依存式振動せん断流体測定を行って、自己集合動態およびせん断貯蔵(G’)および損失(G”)係数を判定した。簡潔には、中和されたオリゴマーコラーゲン試料を、40mm平行プレート外形および溶媒トラップを用いてAR2000レオメータ(TA instruments、New Castle、DE)で試験した。サンプルをロードするより前および試験の最初の2分間は、ペルチェプレートを4℃で維持した。振動せん断測定を、この最初の2分に関しては1%のひずみで行い、温度が37℃に上昇した後10分間継続させた。振動せん断試験後、サンプルに、20μm/sのひずみ速度で一軸圧縮試験を行った。マトリックス形成の動態を定義するために、経時的なせん断貯蔵係数のプロットを作製し、コラーゲンがその最大剛性(G’)に達した時間を重合時間として定義した。この点を使用して、マトリックスG’およびG”値も定義した。圧縮係数を得るために、応力-ひずみ曲線を一軸圧縮データから作製し、傾きを、軟組織(例えば、ヒト乳房)に関する文献に報告されている低応力/ひずみ係数に対応する指定の低ひずみ領域(20~40%のひずみ)において計算した。プロトタイプコラーゲンの4つの独立したバッチを、1バッチあたり6から8回繰り返して試験した(N=4バッチ;1バッチあたりn=6~8で繰り返す)。
[実施例2]
【0551】
ブタ模擬実験の乳腺腫瘍摘出術モデル
ミニチュアブタの乳腺を通常使用して、乳腺腫瘍摘出術および乳房切除術を含む乳房外科手術手順後の機能的および美容的転帰を改善するための新たな戦略を試験する。模擬実験の乳腺腫瘍摘出術を、Purdue Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールを使用して、45~65kgの間の体重の雌ユカタンミニブタに対して行った。合計8匹のブタを2つの研究において使用し、6匹は縦断研究のために、2匹は放射線研究のために使用した。両研究に関しては、乳房を実験群および対照群に無作為に割り当て、非充填および外科手術なしはそれぞれ、陰性および陽性対照とした。長期的研究に関する術後評価を、1、4、および16週の時点(1時点あたり動物2匹)において行って、コラーゲン充填剤群に関しては12回繰り返し(各コラーゲン充填剤製剤に関してn=12;n=6)、非充填および外科手術なし群に関しては6回繰り返して(n=6)それぞれ達成した。放射線研究に関しては、術後評価を外科手術してから4および16週後に行い、コラーゲン充填剤群に関しては6回繰り返し(n=6)、非充填群に関しては3回繰り返し(n=3)、外科手術なし群に関しては1回繰り返した(n=1)。乳腺の最も尾部に近い対を非照射外科手術なしの対照とした。照射された動物からの転帰を、長期的研究から照射を受けていない動物と比較した。各時点における術後評価としては:乳房/手術部位の肉眼的外観および均一性/稠度の半定量的スコアリング、超音波検査、X線撮影、肉眼的外植片評価および病理組織学的分析がある。半定量的スコアリングと病理組織学的分析の両方を盲検様式で行った。
【0552】
動物に麻酔をかけ、挿管し、背臥位で置いた。各模擬実験の乳腺腫瘍摘出術に関しては、3cmの皮膚切開を、外科用メスを使用して行い、切開を横方向に向け、各乳房の乳輪乳頭部に対してすぐ外側に行った。およそ乳房組織の4分の1を、電気焼灼器を使用して切除し、その容量を標準的な容量置き換え法を使用して測定した。切除された正常乳房組織の一部に、機械的特性を特性評価するために一軸圧縮試験を行った(ひずみ速度:1mm/分、圧縮係数は、20~40%のひずみの直線領域において判定した)。チタンマーカークリップ(Ethicon Small LigaClips、West CMR、Clearwater、FL)を動物の一部に入れて、コラーゲンおよび充填処置されていない外科的位置のマージンの同定を容易にした。コラーゲン充填剤処置された位置に関しては、中和された液体コラーゲンを使用して術後空隙を充填した。陰性対照部位は充填を行わなかった(未処置)。外科手術が行われなかったブタ乳房の一部を陽性対照とした。全ての手術部位を、再吸収性縫合糸を使用して閉じ、非粘着パッド(McKesson、San Francisco、CA)およびTegaderm(3M、St.Paul、MN)ドレッシング材を用いて包帯をした。動物の健康状態を、食欲、態度、動作、および排泄に基づいて毎日モニターした。
[実施例3]
【0553】
補助的乳腺腫瘍摘出術後照射
放射線療法が、コラーゲン組織充填剤に対する組織応答にどのように影響を与えるかという問題に取り組むために、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術が行われ処置された後の2匹の動物を、放射線を用いて処置した。ブタ乳房を処置群に再び無作為に割り当て、非充填処置のものおよび外科手術を行われなかった乳房をそれぞれ陰性および陽性対照とした。外科手術から2週間後、120リーフのマルチリーフコリメータを備えた6MV Varian EX臨床用線形加速器(Varian、Palo Alto、California)を使用して頭側の乳腺の5対に対して20Gyの総線量をCTベースの3D-CRT技術を使用して5日連続の分画でデリバリーした。乳腺の尾部に近い対を非照射対照として除外した。
[実施例4]
【0554】
外科手術後の手順および評価
設計した時点において、動物に麻酔をかけ、各乳房を、
図10において示すように紅斑/焼痂形成および浮腫形成を含む肉眼的乳房/手術部位の外観ならびに乳房の均一性/稠度スコアリングに関して半定量的スコアリングシステムを使用して評価した。更に、各乳腺の超音波イメージングを、Mindray M7超音波機器(Mindray North America、Mahwah、NJ)および線形4~7MHzトランスデューサーを用いて行った。安楽死後、乳房切除術を各乳房に対して行い、全ての手術部位、任意の埋込体、および周囲の組織を維持した。各乳房を10%緩衝ホルマリンに入れ、Genesis VxVue取得ソフトウェア(Genesis Digital Imaging、Los Angeles、CA)を使用してインストールされたGenesis Vet DRプレートを備えたInno Vet Select Radiographユニット(Summit、Niles、IL)を使用してX線撮影してから、病理組織学的分析に関する処理を行った。
[実施例5]
【0555】
組織病理
ホルマリン固定外植組織を二等分し、画像化してからパラフィン包埋し、切断した。断片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて染色した。上皮細胞を検出するために、断片を、1:100の希釈で汎サイトケラチン(ab9377、Abcam、Cambridge、MA)で染色し、次いで6μg/mLの二次DyLight488ヤギ抗ウサギ(DI-1488、Vector Labs、Burlingame、CA)を用いて処置した。核を、DAPI(4’、6-ジアミジノ-2’-フェニルインドール、二塩酸塩;EN62248、Pierce Biotechnology、Rockford、IL)を用いて対比染色した。画像を、Aperio VERSA 8ホールスライドスキャナー(Leica Biosystems、Buffalo Grove、IL)を使用して得た。
[実施例6]
【0556】
液体コラーゲンは外形に適合し、軟組織と類似している特性を有する安定なフィブリルマトリックスに移行する
BCSによって作製された傷害を受けたかまたは欠陥を有する組織、例えば組織の空隙のための回復性および再生性充填剤としての役割を果たすように特に設計されたコラーゲン組織充填剤製剤を評価した。コラーゲン組織充填剤製剤を、分子純度、コラーゲン含有量、重合(自己集合)時間、および振動せん断および一軸圧縮ロードを行った場合の粘弾性特性を含む、その材料の組成的および機械的特性に基づいて定義した。組織充填剤の生体適合性および有効性を評価するために、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術手順を、ブタの乳房(乳腺)に対してフェローシップの訓練を受けた乳房外科医によって行った。次いで、プロトタイプ製剤を使用して、乳房空隙の一部を充填し、外科的転帰を、BCSに関する標準治療を表す未処置の欠陥(非充填;陰性対照)と比較した。乳房外科手術が行われなかった正常な乳房を陽性対照とした。組織応答スケジュールを定義し、組織充填剤の作用機序(組織埋込応答)の見識を得るために、長期的研究を1、4、および16週の時点で行った。1週の時点において、少数の部位を使用して、材料が、外科的再切除手順を損なうかまたはそれに干渉するかどうかを判定した。次いで、第2の研究を、組織充填剤およびそれに関連する組織応答が、局所的ながん再発を阻止するための術後治療法として使用されることが多い照射によってどのように影響を受けたかを評価するために行った。転帰の測定には、全ての乳房および手術部位の視診および触診と、紅斑、焼痂、浮腫、および乳房均一性/稠度の半定量的評価とが含まれる。更に、乳房全体を、超音波検査およびX線撮影を使用して画像化した。最後に、安楽死後、乳房外植片を収集して、肉眼的および組織学的分析を行った。これらのデータを組み合わせたことによって、乳房温存外科手術中に組織充填剤を使用した後の治癒転帰の改善に関する裏付けが提供される。
【0557】
コラーゲン組織充填剤製剤は、GeniPhys(Zionsville、Indiana)からキットとして得た。
図1Aで示すように、キットは、希酸(0.01N塩酸)中に滅菌I型オリゴマーコラーゲンを含むシリンジ、滅菌中和溶液(緩衝剤)を含むシリンジ、滅菌ルアーロックアダプター、および滅菌アプリケーターチップからなっていた。これらのキットのオリゴマーコラーゲン構成成分を製造し、重合性コラーゲンに関してASTM F3089-14のガイドラインに従って閉鎖群種のブタの皮から品質管理を行った。使用直前に、2つのシリンジを、ルアーロックアダプターを用いて連結させ(
図1B)、コラーゲンおよび中和試薬を9:1の比で混合し、コラーゲン溶液を生理学的pHおよびイオン強度にした。混合後、粘性液体は、形状に適合する場合、さまざまな外形中に注射してから物理的に安定な線維状コラーゲンマトリックスに移行することができる(
図1B)。コラーゲン純度を実証するために、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)は、4~20%および6%ゲルを使用して行った。ゲルによってオリゴマーコラーゲンの特徴を示すバンドパターンが明らかになり、非コラーゲンタンパク質または他のタイプのコラーゲンの混入は検出されなかった(
図1C)。中和されたコラーゲン組織充填剤溶液の重合時間および組織充填剤によって形成されたマトリックスの粘弾性特性を含む他の機能的性能パラメータを測定し、概要は
図1Dに提供された。特に、中和前のオリゴマーコラーゲンの濃度は、およそ7.7mg/mLであった。中和の際、マトリックス形成反応は、37℃でレオメトリー的に測定した場合、平均でわずか1分弱かかった。振動せん断および一軸圧縮において分析した場合、形成されたマトリックスは固体様挙動を示し、せん断貯蔵(G’)および損失(G”)係数はそれぞれ3.16±0.16kPaおよび0.40±0.02kPaであり、圧縮係数は7.67±0.42kPaであった。オリゴマーコラーゲンを使用して、組成的および機械的特性(すなわち、弾性係数および強度値)の調節可能な組合せを有する広範なさまざまなポリマー材料を生成することができるが、ここで開発され試験された特異的組織充填剤製剤は、軟組織と類似している粘弾性機械的特性を示すように材料特性の特定の組合せを用いて設計された。
[実施例7]
【0558】
コラーゲン組織充填マトリックスは容量を維持し、血管新生化および乳房組織形成を誘発し、典型的には治癒中に観察される炎症応答または典型的には組織埋込応答で観察される異物反応を引き起こさない。
軟組織欠陥の外観、構造、および機能の回復を改善するための組織充填剤の有効性を評価するために、健常ユカタンミニブタの正常の乳房に対して模擬実験の乳腺腫瘍摘出術手順を伴う長期的研究を行った(
図2)。雌ミニブタは、そのサイズおよびヒトとの解剖学的および生理学的類似性に基づいてそのようなトランスレーショナル研究のための好ましい大型動物モデルを表す。更に、ブタは、12個の乳腺(乳房)を一般的に有し、各乳房は、実験群または対照群としての役割を果たすことができるために、研究に必要とされる動物の総数は減少する。外科手術前に、ブタ乳房を処置群に無作為に割り当て、非充填および外科手術を受けていない乳房をそれぞれ陰性および陽性対照とした。全ての外科手術手順および乳房の評価は、フェローシップの訓練を受けた乳房外科医によって行われた。乳房組織容量のおよそ4分の1が切除され(
図2E)、それらは、個々の乳房サイズに応じて組織の2から5.5mLの範囲(平均約3mL)であった(
図2A)。組織充填剤処置された乳房に関しては、複雑な外形に適合した場合、液体コラーゲンを混合し、組織の空隙中にただちに注射してから、これらの環境下、5分未満で線維状コラーゲンマトリックスに移行させた(
図2B~D)。乳房外科医は、各欠陥を充填する場合に自身の裁量を使用し、適用されたコラーゲン容量は、欠陥サイズおよび外形によって異なっていた。術後空隙は、除去された組織と少なくとも同じ容量のコラーゲンで充填され、大部分は1~2mLを超えるコラーゲン容量が与えられた。陰性対照部位は未処置のまま(非充填)であり、これは標準的なケアであるBCS手順と一致していた。全ての切開を、再吸収性縫合糸を使用して閉じ、包帯をした(
図2F)。全ての動物は、体重(±5kg)を維持し、手術部位は閉鎖されたままであり、手順上の合併症は研究期間全体にわたって発生することはなかった(
図2G)。
【0559】
男女間で観察されるものと一致して、ブタ乳房は、個々の動物内と個々の動物間の両方で容量、稠度、および組成が異なることが認められた。微視的レベルにおいて(
図9)、乳腺は、複数の葉からなり、葉は、房として組織化された小さな分泌小葉と管(チャネル)システムとから構成され、最終的には乳首を介して皮膚に抜けている。小葉および管は、線維状I型コラーゲンから主に構成される小葉内間質によって支えられていた。更に、コラーゲン結合組織は葉間で認められ(小葉間間質)、乳房を支え、その形状を決定する。脂肪組織は、最初に乳房サイズを決定し、腺と線維状結合組織との間の空間を埋める。一軸圧縮において評価した場合、頭側に位置する(頭部に向かって)乳房は比較的堅く、平均圧縮係数は19.0±12.9kPaであった。尾部へ進むと(尾部へ向かって)、乳房は脂質組成が増加し、軟らかくなり、平均圧縮係数は最も尾部に近い乳房に関しては6.56±2.51kPaであった。
【0560】
コラーゲン充填剤の生体適合性および組織応答を評価するために、1、4、および16週の設計した時点において動物に麻酔をかけた。全ての乳房を視覚的に調査し、触診し、
図10における基準に従って盲検様式で半定量的にスコア化した。コラーゲン処置された乳房および非充填対照乳房は、いずれの時点においても紅斑(発赤)または焼痂(痂皮形成、死滅組織)のエビデンスを示さなかった。軽度浮腫は、外科手術を行った乳房の1週において明白であったが;膨潤の程度はコラーゲン群と非充填群の両方に関しては類似しており、その後すぐに治まった。コラーゲン処置された乳房に関する均一性/稠度スコアは、3つの時点全てにおいて非充填対照と類似しており、1週におけるおよそ1.2から16週で0.25まで減少した(
図3A)。このような所見は、コラーゲン充填剤が、後遺疾患または患者の不快感の原因として臨床的に解釈される場合がある乳房の不一致をもたらさないことを示すために重要である。全ての正常乳房には0のスコアが与えられた。更に、乳房外科医がコラーゲン処置された乳房に対して模擬実験の外科的再切除を行った場合、充填材料は手順を損なうことまたはそれに干渉することはなかった。
【0561】
コラーゲン充填剤の生体適合性および組織応答は、非充填および正常乳房対照と比較しながら、乳房外植片の横断片の肉眼的および組織学的調査に基づいて更に定義した。これらの分析から、コラーゲン充填剤がその容量を維持し(最小限の欠陥萎縮であり)、生体適合性が高いことは明らかであり、典型的には未処置の組織の空隙の治癒で認められる炎症反応、または典型的には組織埋込応答で観察される異物反応の非存在下で組織応答を示した。細胞が組織充填マトリックスに浸潤し、新たな乳房組織が生成された場合、それは周囲の正常組織から肉眼的に識別するのが困難である組織様外観を呈していた(
図3B)。この場合、外科用クリップが元の欠陥マージンのマーカーとして有用であった(
図3B、4)。1週において組織学的分析を行った際、コラーゲン充填剤は組織の空隙内で明白であり、それは、均質な明るいピンク色(好酸球性)の染色材料として出現した(
図4)。充填剤を囲むものの多くは、出血、フィブリン、およびいくつかの白血球のバンドであり、これは組織の外科的操作に起因していた(
図4A)。充填剤-宿主組織の境界において、増殖性線維芽細胞(間葉細胞)の局在的に広範な領域が存在し、マトリックスの縁に浸潤している内径が小さな血管がわずかに認められた。周囲の乳房組織は、外科的部位に近接したリモデリング領域とともに大部分が正常に見えた。これらの領域は、リモデリング上皮細胞の凝集体を含んでおり、このうちの一部は小管であるように見え、同時に他のものはより不規則な形状であり、未発達の小葉を示唆していた(
図4A)。従来の埋め込み型材料の特徴を示す炎症介在性異物反応または活発な生分解のエビデンスはなかったことに注目されたい。4週の時点において、線維芽細胞は、新たに形成された血管系とともにコラーゲン充填マトリックスのより深い部分へ派生し、浸潤細胞は周辺において最も豊富であり、中心に向かって更に減少していた(
図4A)。上皮細胞の多発性(multifocal)凝集体が観察され、これも腺構造の前駆体と一致した(
図4A)。16週までに、マトリックスは完全に細胞化され、成熟し、リモデリングされたコラーゲン線維および束として出現し、一部の部位は、無細胞性好酸球性充填剤材料の小さな識別可能な領域を示していた。内径が小さな血管は、マトリックス全体にわたって散在的に存在し、均一に分布していた(
図4A)。血管化されたコラーゲンマトリックス内では、サイトケラチンに対して陽性染色された新たに形成された小葉および管と、脂肪組織とが特に周辺において存在していた(
図11A,B、4A)。腺の形態はよく発達し、成熟しており、顕著な病状は認められなかった。
【0562】
対照的に、1週において、血腫の形成は、非充填乳房外植片の肉眼的評価と組織学的評価の両方で明白であった(
図3B、4B)。出血、フィブリン血餅、ならびに好中球およびマクロファージを含む白血球は、乳腺腫瘍摘出術部位内で明白であった。出血の領域内で混合されていたものは増殖性線維芽細胞であり、内径が小さな血管がわずかに認められ、修復創傷治癒と関連する血管結合組織性(fibrovascular)瘢痕組織と一致した。活発な炎症を伴う散在性の壊死領域も欠陥領域を囲んでいることが明らかであった。4週までに、これらの組織欠陥は、肉眼的に顕著なクリップ移動と組織学的に星状の萎縮した外観とによって証明されるように萎縮した(
図4B)。血管結合組織性瘢痕組織は欠陥領域内で顕著であり、壊死および炎症の複数の小さな領域が欠陥境界全体にわたっておよびその付近で認められた(
図4B)。腺組織および脂肪組織の活発なリモデリングは、欠陥を囲む組織領域において観察された(
図4B)。16週までに、線維状瘢痕組織は密度が増加し、筋線維芽細胞が密に存在する平行に整列した線維状組織の特異的な向きの渦として出現した。小葉、管、および脂肪組織が欠陥周囲で同定されたが、炎症性メディエーターの存在と、残留した低レベルの拡散されたサイトケラチン染色とによって証明されるように、形態学的特徴がほぼ発達していない複数の壊死腺が瘢痕組織周辺内に認められた(
図4B、11C、11D)。
[実施例8]
【0563】
組織充填マトリックスはソノグラムおよびX線写真の読影を損なわない
マンモグラフィーおよび超音波検査は、がん再発をモニターするためのBCSに対する経過観察の診断手順として通常使用される。コラーゲン充填剤が画像の読影を損なわないことまたはそれに干渉しないことを確実にするために、超音波を全てのブタ乳房に対して行ってから、安楽死させ、乳房切除術後にそれぞれ個々の乳房全体のX線写真を撮影した。16週の研究にわたって得られたソノグラムは、組織充填マトリックスが、乳房組織の照合を不明瞭にまたは阻止することはなく、予想外のエコー発生性の領域を一切生成しないことを示した(
図5A)。1週において、さまざまな程度の不均質なエコーを含む大きく不規則な形状の低エコー領域がコラーゲン処置された乳房内で観察された(
図5A)。そのようなシグナルは、充填剤微細構造が、直径およそ400μmと測定されるコラーゲン原線維の無作為な配向のメッシュワークを表すことを考慮すると驚くものではなかった。これらの領域は、経時的にそれらの容量を維持しているように見えたが、これらは次第に正常組織の外観を呈し、肉眼的外植片内でおよび組織学的に観察された細胞化および血管新生化が確証された(
図5A)。充填処置されていない空隙も、1週において漿液腫および出血と一致する不規則な形状の低エコー領域を示した(
図5A)。4および16週の時点までに、これらの領域はサイズが減少し、萎縮および瘢痕形成と一致する不均質なシグナルを生成した(
図5A)。
【0564】
組織充填マトリックスはX線写真の読影にも干渉しなかったが、むしろ研究期間全体にわたって正常組織と一致する不透明部が示された(
図5B)。更に、X線写真は、コラーゲンマトリックスが、経時的に制限されたクリップ移動を用いて空隙容量を維持したという更なるエビデンスを提供した(
図5B)。未処置(非充填)の術後空隙の大部分も、1週において正常組織と一致するように見えるX線写真を生成し、少数の部位が、空洞部、漿液腫、または血腫と一致する明らかな暗い領域を示した(
図5B)。4および16週の時点において観察された外科用クリップの漸進的な移動は、経時的な欠陥萎縮および瘢痕化の更なるエビデンスを提供した(
図5B)。
[実施例9]
【0565】
照射はコラーゲン充填剤または組織埋込応答に悪影響を与えない
コラーゲン充填剤が放射線療法に適合するかどうかを判定するために、動物のコホートに、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術手順から2週間後に腹部照射を行った。コンピューター断層撮影法(CT)ベースの3次元原体処置(3D-CRT)計画を各動物に関して作成して、Varian EX臨床用線形加速器からの6 MV X線を使用して乳腺の頭側の5対に対して20Gyの総線量を5日連続の分画でデリバリーした。乳腺の尾部に近い対を非照射対照として除外した。照射された動物は、皮膚の色の黒ずみによって証明されたように経時的に皮膚の色素沈着において増加を示し(
図2G)、これは、治療的照射を受けたヒトにおいても同様に予想されることになる。微視的レベルでは、表皮の中等度の過形成または肥厚が明白であり、特に基底表皮内のメラニン沈着が増加した(
図9)。16週では、乳房組織は著しく硬くなり、これもまた放射線療法で観察された一般的な変化であった。更に、管および腺の脂質壊死および異型過形成の兆候が明白であった(
図9)。
【0566】
皮膚の色素沈着における違いを除いて、全ての乳房および手術部位は十分に治癒し、照射を受けていない動物のものと類似しているように見えた。コラーゲン充填剤処置群および非充填群に関する平均乳房均一性/稠度スコアは、各時点において照射動物対非照射動物において多少高く、唯一16週のコラーゲン充填剤処置群は例外であり、スコアは類似していた(
図6A、3A)。肉眼的外植片および組織学的横断面の調査は、組織充填マトリックスに対する照射またはそれに関連する組織応答の明白な有害な影響はないことを明らかにしたが;主観的には、照射された部位の全体的な治癒スケジュールは、多少遅れているように見えた(
図6B、6C)。16週の研究期間にわたって、コラーゲン充填剤は手術部位内で持続され、充填剤-宿主組織の境界から内側に向かって進行する漸進的な細胞化、血管新生化、および乳房組織生成をサポートした。予想どおり、非充填群は、線維状瘢痕組織の萎縮および発達を示した(
図6B、6D)。ソノグラム(
図7A)およびX線写真(
図7B)は、照射動物および非照射動物に関してほぼ類似しており、この場合も、コラーゲン充填剤は照射による悪影響を受けず、いずれの疑わしいイメージング異常も生成されなかったことが確認された。
[実施例10]
【0567】
結果の考察
本研究において、ブタ乳房は、サイズおよび組織組成の点で異なり、稠度の違いをもたらし、それは定性と定量の両方で明らかであった。測定された圧縮係数の範囲(およそ6~19kPa)は、女性において観察される乳房稠度に包含されており、その稠度は乳房組成(例えば、線維腺対脂質)および試験パラメータ(例えば、ひずみ速度、プレコンディショニング)に応じて0.7~66kPaの範囲と報告されている。未処置の乳房欠陥の治癒応答は、BCS後の女性において観察されたものと類似しており、正常乳房組織と構造的におよび機能的に異なる瘢痕組織が得られた。16週の長期的研究は、修復創傷治癒の古典的な重複段階による進行を示し、それが、
図8Aで示すようなうっ血および炎症、増殖、およびリモデリングを含む瘢痕化につながった。クリップ移動および星様瘢痕組織の形態によって証明されたように、欠陥の実質的な萎縮は、最初のフィブリン血餅および一次的なマトリックスによって促進され、これらは正常乳房ECMと比較して機械的に弱かった。経時的な瘢痕形成およびリモデリングのプロセスはおそらくBCSの最も予測不可能で問題のある側面であり、疼痛、乳房の輪郭および稠度におけるゆがみ、ならびに感覚の損失の一因となることが公知であるため、これら全てが、感情的および心理的に女性に悪影響を与える。
【0568】
活発に分解されるよりはむしろ自然に代謝されリモデリングされる持続性線維状コラーゲンマトリックスを用いて欠陥容量を充填すると、免疫メディエーターがほぼ存在しない治癒応答が生じ、転帰は、修復的というよりはむしろより再生的であった(
図8B)。これらの結果に基づいて、コラーゲン充填剤に関して提案された再生治癒応答を
図8Bにおいて図示する。注射可能なインサイチュ形成マトリックスは、充填され、欠陥に適合し、周囲の宿主組織とともに有効に一体化されるため、組織にわたる構造的および機械的連続が再確立されており、これが瘢痕のない治癒および組織形態形成に重要であることは既知である。特に、コラーゲン充填剤の圧縮係数(7.67±0.42kPa)は、ブタとヒトの両方の乳房機械的特性の範囲内に入った。コラーゲン充填剤の高密度微細構造および圧縮特性は、周囲の正常組織ならびに浸潤している細胞によって与えられる萎縮力に有効に抵抗した。更に、マトリックス機械的特性は軟組織と類似していたため、触診可能な乳房不一致に関するものはいずれも生じることはなかった。トランスレーショナルな観点から、これは患者の満足度および快適さ、ならびに触診によって再発がんを検出するための能力を維持することは重要である。
【0569】
組織充填剤によって形成されたコラーゲン原線維は、複数の機能細胞および分子結合ドメインを含むため、マトリックスは、組織ECMによって行われるように生化学的シグナル伝達と機械化学的シグナル伝達の両方において有効に関与する場合がある。従来の埋め込み型材料とは異なり、マトリックスは、炎症性メディエーターよりはむしろ血管形成細胞とともに線維芽細胞様間葉細胞によって最初に存在していた。急速で頑強な新血管新生応答は、オリゴマーが他の微小環境中に埋め込まれ、血管形成の基本的な機序のインビトロ(in vitro)調査のために使用された他のインビボ研究と一致していた。これらの最先端の細胞が、時間とともにマトリックス中心に向かって深く進行するにつれ、組織新生が続き、脂肪組織、ならびに分泌小葉および管を含む乳腺が形成された。興味深いことに、4および16週の時点において特に明らかであった新たに形成された小葉は、マクロファージの浸潤がほぼ認められなかったため、未経産(妊娠前)の乳房において認められるものを想起させた。まとめると、コラーゲン充填で観察された再生組織応答は、乳腺を含む組織の発達および形態形成と関連するプロセスと多くの類似性を有し、間質コラーゲンおよびそれに関連するメカノバイオロジー的連続を維持することの重要性が強調される。
【0570】
この研究の一環として、コラーゲン充填剤は照射療法による悪影響を受けず、画像診断手順の読影を損なうことはなかったことも実証された。本研究において、模擬実験の乳腺腫瘍摘出術から2週後に照射が適用され、これはBCS後の補助照射投与の範囲内であった。急速な細胞代謝回転を有する腫瘍および組織、例えば皮膚の表皮層は、放射線の影響に対して最も感受性があり、損傷の程度は総照射量および放射線がデリバリーされる時間に依存する。照射によって、ヒトにおいて認められる日光皮膚炎または日焼けの応答と類似しており予想される副作用である皮膚の色素沈着過剰、ならびに中等度レベルの脂質壊死および腺および管の過形成が生じた。コラーゲン充填と非充填の両方の処置群に関しては、治癒は、個別の非照射群と同様に進行し;しかし、治癒速度は乳房稠度スコアおよび病理組織学的分析に基づいてやや遅く見えた。照射によって創傷治癒が遅れることは既知であるため、そのような結果は驚くものではなかった。組織病理学X線および超音波分析の組合せに基づいて、コラーゲン充填剤およびそれに関連するシグナル伝達能力は照射による影響をほぼ受けないと判定された。X線写真および超音波検査も、コラーゲン充填剤による疑わしいアーチファクトは生じなかったことを示した。良性に見える脂質嚢胞から悪性度が疑わしい所見、例えば、微小石灰化、病巣塊、および不透明度が高いことが推測される領域の範囲の、これらの画像診断技術を介して検出された乳房組織における広範囲の変化は、脂質移植に伴う主な欠点であった。
【0571】
この研究が初期の原理照明評価を表すことを考慮すると、これらの研究には限定がないわけではない。最初に、乳房サイズはブタとヒトとの間では異なるため、四分円切除術を、ブタ乳房の容量のおよそ25%を除去して行った。欠陥容量は、2~5.5mLの範囲であり、平均欠陥容量は約3mLであった。四分円切除は、女性に行われるとしてもまれであるが、これらの完全な欠陥容量はヒト臨床的手順の範囲内に入っていた。特に、発表されたヒトの臨床報告では、乳房腫瘍の67%および82%がそれぞれ直径(容量)≦1.9cm(≦3.6mL)および≦2.9cm(≦12.8mL)であることを示している。欠陥サイズが材料の性能にどのように影響を与えるかを判定するための追加の研究が必要とされるが、有害な転帰は、観察された作用の材料様式および組織埋込応答に基づいては予測されない。しかし、細胞化および治癒を完了するための時間は、欠陥容量に正比例するであろうことが予測される。第2に、評価された最長の時点は16週であったため、追加の動物およびヒト臨床研究が、長期(すなわち、6ヶ月以上)のコラーゲン充填剤の転帰を定義するのに必要とされる。これらの大型動物研究の第3の制限は、ブタががんになっていないことであった。この大型動物研究において使用されたブタはがんになっていなかったため、腫瘍促進および再発に対するコラーゲン充填剤の効果を完全に評価することはできない。多数の理由のために、コラーゲン充填剤が腫瘍学的安全性に対してリスクをもたらすであろう点は予測されていない。第1に、乳房外科医は、乳房輪郭および稠度をより予測どおりに維持できることになるため、陰性マージンを達成するためにより組織を切除することに関して自信を高める場合がある。更に、本発明者らは、コラーゲン充填剤が炎症性または異物応答を誘発しないことを示しており、炎症と関連するマクロファージ浸潤および他のプロセス(例えば、サイトカイン放出)は腫瘍促進に関与しているため、このことは特に重要である。更に、さまざまながん細胞タイプを用いてインビトロで試験した場合、オリゴマーコラーゲンマトリックスの原線維密度/剛性の高さが、腫瘍細胞の増殖および移動を制限することが認められた。最後に、腫瘍の再発を更に阻止するために、化学療法または他の抗癌剤をマトリックス形成反応に容易に添加して、標的化および局所的デリバリーを達成することができた。これは、投与される薬物の量を劇的に減少させ、全身投与と関連する副作用を最小限にすることになる。
【0572】
最後に、インサイチュで形成され、コラーゲンポリマーから作製される回復性および再生性組織充填剤が記載されており、これは、外科医の要求に取り組み、従来の埋め込み型材料と関連する主要な制限を克服すると思われる。これは持続し、その容量を維持し、乳腺、管、および脂肪組織を含む漸進的な乳房組織生成を誘発する乳房充填剤の最初の報告である。更に、研究結果は再生医療のための重要な意味を有し、炎症を減少させ、コラーゲンの構造的および機械的連続を維持することが治癒バランスを修復(瘢痕形成)から再生に向かって傾けることを示唆する。この研究は、この組織充填剤のトランスレーショナルな潜在力がBCSおよび他の組織回復および再構築の要求に関して更に検証されることになる、将来の前臨床および臨床研究のための段階を設定する。
[実施例11]
【0573】
骨格筋回復および再生
ユカタンミニブタを一般的な麻酔下に置いた。欠陥(およそ2cm×2cm)を、
図12で示すように骨格筋および首背面の脂肪領域内に作製した。組織の空隙を、空隙の外形に適合する液体コラーゲン充填剤で充填した。適用後およそ1分以内に、液体コラーゲンはインサイチュで自己集合(重合)し、線維状コラーゲンマトリックスを形成し、それが組織の連続性および形態を回復させた。次いで、部位を縫合閉鎖した。組織欠陥を生成してから11週後、欠陥部位および周囲の正常組織を採取し、10%緩衝ホルマリン中に入れた。ホルマリン固定外植組織を二等分し、パラフィン中に包埋し、薄片にした。断片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)およびマッソントリクロームを用いて染色した。
図13は、埋め込みしてから11週後にコラーゲンマトリックス内に新たに形成された骨格筋および脂肪(脂質)組織を示す。
図13Cにおいて、コラーゲンマトリックスを示し、Fは脂質を示し、Mは骨格筋を示し、矢印は関連する微小血管系を示す。
[実施例12]
【0574】
組織充填剤キットおよび関連する性能特性
組織充填剤は、ブタ真皮由来のオリゴマーコラーゲンと中和緩衝剤とを含む。いくつかの実施形態において、このインサイチュ形成コラーゲンデバイスは、
図14で示すような以下のものを含む使い捨てキットとして供給してもよい:希(0.01N)塩酸中のコラーゲン溶液(10mL)を含む滅菌ガラスバイアル、中和緩衝剤(自己集合試薬;2mL)を含む滅菌ガラスバイアル、2つの滅菌10mlシリンジ、2つの滅菌無針バイアルアダプター、滅菌ルアーロックコネクター、および滅菌アプリケーターチップ。他の実施形態において、静的混合チップを備えた充填済みデュアルバレルシリンジを提供してもよい。このデュアルバレル製品フォーマットは、投与中にコラーゲン溶液と中和緩衝剤とを混合するのをサポートするために使用してもよい。
【0575】
表1は、マトリックス形成反応を誘発するためにコラーゲン溶液を生理学的pH、イオン強度、およびオスモル濃度にする際の、中和緩衝剤構成要素およびその役割の概要を提供する。
【0576】
表1. 中和緩衝剤(自己アセンブリー試薬)構成要素の概要
【表1】
【0577】
表1において示すように、中和緩衝剤は10倍のリン酸緩衝生理食塩水を表し、コラーゲン溶液と混合した場合、それを、pH、オスモル濃度、およびイオン強度を含む生理学的条件にする。無針バイアルアダプターを使用して9mLのコラーゲン溶液を一方のシリンジで、1mLの中和緩衝剤をもう一方で作成後、ユーザーは、2つのシリンジを、ルアーロックコネクターを用いて接続し、2つの試薬を完全に混合する。混合後、中和されたコラーゲン溶液は、注射して、充填し、アクセスするには困難なおよび/または不規則な形状のものを含む組織の空隙および欠陥に適合させてもよい。適用の際、コラーゲンは、分子自己集合を介してインサイチュマトリックス形成反応を受ける。組織充填剤デバイスは、細胞化および血管新生化に好適な固体の線維状コラーゲンマトリックスを提供することによってその使用目的を達成し(
図15A)、組織回復のための支持的環境を維持する。いくつかの実施形態において、中和緩衝剤構成要素としては、表1で示すようなグルコースがある。他の実施形態において、中和緩衝剤構成要素はグルコースを含まない。
【0578】
表2は、本教示による中和緩衝剤(自己集合試薬)構成要素の技術的特性および性能特性を要約する。
【0579】
表2. 組織フィラーの技術的特性および性能特性
【表2】
【0580】
前述の詳細な説明および添付の図面は、説明および例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図しない。本明細書において示される好ましい本実施形態における多くの変形形態は、当業者であれば明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にとどまるであろう。
【0581】
添付の特許請求の範囲において挙げられる要素および特徴は、同じく本発明の範囲内に入る新規の特許請求の範囲を生成するためのさまざまな方法で組み合わせてもよいことを理解されたい。したがって、以下に添付された従属請求項は、単一の独立請求項または従属請求項のみに従属する一方、代わりに、これらの従属請求項は、-独立かまたは従属かにかかわらず-任意の先行する請求項からの代替物に従属させることができ、そのような新規の組合せは、本明細書の一部を形成するとして理解されるべきであると理解されたい。
【国際調査報告】