(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(54)【発明の名称】近赤外ポルフィリン化合物とその調製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 491/22 20060101AFI20230313BHJP
C07D 498/22 20060101ALI20230313BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230313BHJP
A61K 31/424 20060101ALI20230313BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C07D491/22 CSP
C07D498/22
A61P35/00
A61K31/424
A61K49/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545891
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2020138669
(87)【国際公開番号】W WO2022133816
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張儁竜
(72)【発明者】
【氏名】寧瑩瑩
(72)【発明者】
【氏名】楊字舒
(72)【発明者】
【氏名】王炳武
【テーマコード(参考)】
4C050
4C072
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA02
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC04
4C050DD01
4C050EE04
4C050FF05
4C050GG02
4C050GG04
4C050HH01
4C072AA02
4C072AA06
4C072BB04
4C072BB07
4C072CC04
4C072CC13
4C072EE03
4C072FF16
4C072GG06
4C072GG07
4C072GG08
4C072HH02
4C072UU01
4C085HH11
4C085KA27
4C085KB56
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明はポルフィリン化合物とその調製方法、及びその使用、ならびにポルフィリン化合物を有効成分とする医薬組成物を提供する。このポルフィリン化合物は、新規の構造および調節可能な構造を有し、生体適合性の修飾と機能的な変更を達成するために複数の部位で誘導体化および修飾することができる。このポルフィリン化合物の吸収波長は近赤外領域にあり、より深い組織浸透の深さを達成することができ、良好な光線力学療法活性を持っている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を含むポルフィリン化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグであって、
【化1】
ただし、P
1、P
2及びP
3は5員環残基であり、その両端の炭素原子は16員環のN原子に結合して環を形成しており、
Ar
1及びAr
2は、置換または非置換のフェニル基、アリール基、又は複素環アリール基であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、ポルフィリン化合物の骨格のベンゼン環上の置換基であり、それぞれは独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、水酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C
1-8アルキル基置換アミノ基、置換または非置換のC
1-12アルキル基、置換または非置換のC
1-8アルコキシ基、置換チオ基、C
1-8アルキルリン酸基、C
1-8アルキルカルボキシル基、C
1-8アルキルスルホン酸基、C
3-6アルケニルアルキル基、C
2-6アルケニル基、C
2-6アルキニルアルキル基、C
2-6アルキニル基、C
2-6アルケニルオキシ基、C
2-6アルキニルオキシ基、及びC
1-5アルカノイル基から選択されるいずれか1つである。
【請求項2】
P
1及びP
3がポルフィリン16員環上のN原子に結合して環を形成した後の
【化2】
は、置換または非置換のピロール基環を形成しており、
更には、
【化3】
は、それぞれ独立して、
【化4】
から選択されるいずれか1つであり、
P
2がポルフィリン16員環上のN原子に結合して環を形成した
【化5】
は、
【化6】
から選択されるいずれか1つである、
ただし、R’は、水素、トリメチルアミノエチルから選択され、
R
N1、R
N2、R
N3は、それぞれ独立して、水素、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、ハロゲン置換C
1-4アルキル基、C
1-4アルキル基置換アミノ基、又はC
1-4アルキルチオ基から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポルフィリン化合物。
【請求項3】
前記Ar
1及びAr
2は、1つまたは複数の置換基を含む置換フェニル基であり、置換基の位置は、次のいずれかから選択される1つである、
【化7】
ただし、Ar
1及びAr
2の置換基R’’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、水酸基、スルフヒドリル基、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン置換C
1-6アルキル基、C
1-6アルキル基置換アミノ基、置換チオ基、リン酸基、C
1-6アルキルリン酸基、カルボキシル基、C
1-6アルキルカルボキシル基、スルホン酸基、C
1-6アルキルスルホン酸基から選択されるいずれか1つ又は2つ以上である、
前記R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素、F、Cl、Br、ニトロ基、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、グルコシルスルフヒドリル基、マンノシルチオ基、フルクトシルチオ、ガラクトシルチオ基、リボシルチオ基、キシロシルチオ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基、C
1-3アルキル基、C
1-3アルコキシ基、ハロゲン置換C
1-3アルキル基、C
1-3アルキルリン酸基、C
1-3アルキルカルボキシル基、C
1-3アルキルスルホン酸基から選択される1つ又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のポルフィリン化合物。
【請求項4】
前記ポルフィリン化合物は、以下の化合物から選択されるいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のポルフィリン化合物。
【化8】
【化9】
【請求項5】
不活性雰囲気条件下で、ポルフィンラクトンが第1の有機溶媒中で、80~200℃で無機塩基または有機塩基と反応し、第1の生成物が得られること、
必要に応じて、第1の生成物が第2の有機溶媒中で酸化、還元または水溶性修飾反応にかけられ、第2の生成物が得られること、が含まれる
前記第1の生成物がポルフィリン化合物であり、
前記第2の生成物もポルフィリン化合物であるポルフィリン化合物の調製方法。
【請求項6】
前記第1の有機溶媒は、デカヒドロナフタレン、ジメチルスルホキシド、トルエン、オルトジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、水、n-ヘキシルアルコール、メタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、エタノールからなる群より選択される1つ以上であり、
前記不活性雰囲気は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気又はヘリウム雰囲気から選択される非酸化性雰囲気であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記酸化、還元あるいは水溶性修飾反応には、ラクトン化、求核攻撃、イオン化反応が含まれ、
前記第2の有機溶媒は、水、メタノール、クロロホルム、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、オルトジクロロベンゼン、n-ヘキシルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド及びトルエンからなる群より選択されるいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載のポルフィリン化合物又は請求項5~7のいずれかに記載の方法により調製されたポルフィリン化合物を有効成分とし、さらに、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は注射又は皮膚外用によって投与され、
医薬組成物の単位剤形において、有効成分の投与量は、0.01mg~20gである前記医薬組成物。
【請求項9】
光線力学療法における請求項1~4のいずれかに記載のポルフィリン化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグ、ならびにポルフィリン化合物を有効成分とする医薬組成物の使用、
好ましくは、皮下腫瘍を治療するための医薬品の製造における使用である、
前記皮下腫瘍には、黒色腫、肉腫、線維腫、神経線維腫、脂肪瘤、アテローム、線維腫、神経鞘瘤、血管腫、平滑筋腫及びリンパ管腫が含まれる、
ポルフィリン化合物の投与量は、0.01~500mg/kg体重/日、あるいは患者1人あたり1日0.1~20gである前記使用。
【請求項10】
深赤色-近赤外領域での、蛍光標識、赤外線または蛍光イメージングにおける請求項1~4のいずれかに記載のポルフィリン化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又は前駆体物質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線力学療法及び生物学的画像化の分野に関し、特に、光線力学療法と深紅-近赤外光イメージング機能を備える大環状有機分子ポルフィリン化合物とその調製方法、及び生物学的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
光線力学療法は非侵襲的治療法の1つであり、現在すでにがん治療、眼疾患治療及び皮膚疾患治療に応用されている。光線力学療法の原理は、毒性のない光増感剤を体内に注入、光増感剤が血液循環を介して病変に到達した後に、病変に選択的に集められ、光増感剤の励起波長に一致する光源を選択して、病変の位置を照射して光増感剤を励起し、それによって活性酸素種を放出し、病変組織の血管を直接殺して破壊し、免疫ストレスを引き起こして病変細胞を殺すことによって、治療の目的を達成するものである。
【0003】
光線力学療法では、治療薬(光増感剤)の赤外波長が薬剤の光毒性と組織浸透の深さに大きく影響し、それによって光線力学療法の臨床効果に影響を与える。治療薬の赤外波長が長いほど、薬剤の組織浸透の深が深くなり、より薬剤の光毒性の発揮に有利である。
【0004】
現在、臨床で使用されている光線力学療法薬剤のほとんどは、注射により投与されており、標的化することで患者の部位にに焦点を合わせている。薬物凝集の過程では、体循環が進行するにつれて、薬物代謝の失効、患者部位での凝集の低濃度、および患者全身の皮膚の光線過敏性の増加などの問題が生じる可能性がある。
【0005】
したがって、光増感剤として強い光毒性と長赤外波長を持つ化合物の開発は、光線力学療法にとって非常に有意義である。特に、当該化合物をin vitroで投与できる場合、現在の臨床光線力学療法の副作用を大幅に軽減することができる。
【0006】
本発明者らは、上記の問題に基づき、先行技術に基づいて深さる研究を行って、光毒性の深紅-近赤外ポルフィリン化合物とその調製方法、及びその使用を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決するために、本発明で提供されるポルフィリン化合物は、ポルフィリン化合物の構造を調整することによって得られるものであり、このポルフィリン化合物は、新規の構造および調節可能な構造を有し、生体適合性の修飾と機能的な変更を達成するために複数の部位誘導体化および修飾でき、その赤外線波長が長く、光毒性が強く、より深い組織浸透の深さを有し、さらに優れた光線力学療法活性、蛍光標識および深紅-近赤外イメージング機能を備えていることが見出され、そのにより本発明が完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の態様を提供することである。
【0009】
第1の態様において、本発明は、ポルフィリン化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグを提供する。前記ポルフィリンは、以下の構造を含む:
【0010】
【0011】
ただし、P1、P2及びP3は5員環残基であり、その両端の炭素原子は16員環のN原子に結合して環を形成する、
Ar1及びAr2は、置換または非置換のフェニル基、アリール基、又は複素環アリール基である、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、ポルフィリン化合物の骨格のベンゼン環上の置換基であり、それぞれは独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、水酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C1-8アルキル基置換アミノ基、置換または非置換のC1-12アルキル基、置換または非置換のC1-8アルコキシ基、置換チオ基、C1-8アルキルリン酸基、C1-8アルキルカルボキシル基、C1-8アルキルスルホン酸基、C3-6アルケニルアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニルアルキル基、C2-6アルキニル基、C2-6アルケニルオキシ基、C2-6アルキニルオキシ基、及びC1-5アルカノイル基から選択されるいずれか1つである。
【0012】
第2の態様において、本発明は、以下の工程を含むことを特徴とする上記のポルフィリン化合物の調製方法を提供する。
【0013】
不活性雰囲気条件下で、ポルフィンラクトンが第1の有機溶媒中で、80~200℃で無機塩基または有機塩基と反応し、第1の生成物が得られること、前記第1の生成物がポルフィリン化合物である。
【0014】
必要に応じて、第1の生成物が第2の有機溶媒中で酸化、還元または水溶性修飾反応にかけられ、第2の生成物が得られること、前記第2の生成物もポルフィリン化合物である。
【0015】
第3の態様において、本発明は、上記のポルフィリン化合物を有効成分とする医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、さらに薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0016】
前記医薬組成物は注射又は皮膚外用によって投与され、
医薬組成物の単位剤形において、有効成分の投与量は、0.01mg~20gである。
【0017】
第4の態様において、本発明は、光線力学療法における上記のポルフィリン化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグ、ならびにポルフィリン化合物を有効成分とする医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
好ましくは、皮下腫瘍を治療するための医薬品の製造における使用である。
【0019】
前記皮下腫瘍には、黒色腫、肉腫、線維腫、神経線維腫、脂肪瘤、アテローム、線維腫、神経鞘瘤、血管腫、平滑筋腫及びリンパ管腫が含まれる。
【0020】
第5の態様において、本発明は、深赤色-近赤外領域での、蛍光標識、赤外線または蛍光イメージングにおける上記のポルフィリン化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又は前駆体物質の使用を提供する。
【0021】
本発明で提供されるポルフィリン化合物とその調製方法、及びその使用は、以下の有益な効果を有する。
【0022】
(1)本発明で提供されるポルフィリン化合物の吸収波長は近赤外領域にあり、より深い組織浸透の深さを達成することができ、良好な光線力学療法活性を持っている。すでに報告されていた光線力学療法剤と比較して、マルチセルラインおよびin vivoでの光線力学療法実験を通じて、より優れた光線力学療法効果を有する。
【0023】
(2)本発明で提供されるポルフィリン化合物は、新規の構造および調節可能な構造を有し、異なる用途要件に適応するように、生体適合性の修飾と機能的な変更を達成するために複数の部位で誘導体化および修飾することができる。
【0024】
(3)本発明で提供されるポルフィリン化合物の吸収及び発光波長は、可視近赤外領域をカバーでき、近赤外光で励起でき、蛍光マーキング、特に赤外または蛍光イメージングに応用できる。
【0025】
(4)本発明で提供されるポルフィリン化合物は、高い光毒性、良好な生体適合性、および高い安全性を有し、皮下腫瘍を治療するために注射および皮膚外用によって投与されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1~4で得られた化合物の吸収及び発光スペクトルを示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実験例2における動物実験の結果を示す図である。左の図は腫瘍のサイズの変化図であり、右の図は体重の変化図である。
【
図3】
図3は、本発明の実験例4におけるin vivo蛍光イメージング実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明について詳細に説明し、本発明の特徴および利点はこれらの例示的な説明によりますます明確になるべきである。
【0028】
ここでいう「例示的」という用語は、「例、実施形態、または例示としての役割を果たす」の意味である。本明細書で「例示的」として記載される任意の実施例は、他の実施例よりも優れているまたはより好適であると解釈される必要はない。実施例の様々な態様が図面に示されているが、特に断りのない限り、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
本発明は、ポルフィリン化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグを提供する。前記ポルフィリンは、以下の構造を含む:
【0031】
【0032】
ただし、P1、P2及びP3は5員環残基であり、その両端の炭素原子は16員環のN原子に結合して環を形成する。
【0033】
Ar1及びAr2は、置換または非置換のフェニル基、アリール基、又は複素環アリール基である。
【0034】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、ポルフィリン化合物の骨格のベンゼン環上の置換基であり、それぞれは独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、水酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C1-8アルキル基置換アミノ基、置換または非置換のC1-12アルキル基、置換または非置換のC1-8アルコキシ基、置換チオ基、C1-8アルキルリン酸基、C1-8アルキルカルボキシル基、C1-8アルキルスルホン酸基、C3-6アルケニルアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニルアルキル基、C2-6アルキニル基、C2-6アルケニルオキシ基、C2-6アルキニルオキシ基、及びC1-5アルカノイル基から選択されるいずれか1つである。
【0035】
本発明において、特に断りのない限り、前記ハロゲンは、F、Cl、Br及びIから選択される1つ又は複数である。
【0036】
前記アルキル基は、直鎖、分岐又は環状の飽和炭化水素基が含まれ、好ましくは、前記アルキル基は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどのC1-6アルキルである。
【0037】
C1-8は、単一の炭化水素鎖の炭素原子数が1~8であることを表す。同様に、C3-6は、単一の炭化水素鎖の炭素原子数が3~6であることを表す。
【0038】
前記アルキル基置換アミノ基は、前述のアルキル基で置換されたアミノ基であり、好ましくは、例えばメチルアミン基、エチルアミン基、ジメチルアミン基、ジエチルアミン基などのC1~C6アルキル基置換アミノ基である。
【0039】
前記アルコキシ基は、アルキルオキシエーテル基であり、好ましくは、例えばメトキシ基、プロポキシ基などのC1~C4アルコキシ基である。
【0040】
前記置換チオ基は、C1-8アルキル、グルコシル、マンノース、フラクトース、ガラクトース、リボース、キシロースのいずれか1つの基で置換されたスルフヒドリル基であり、より好ましくは、C1~C4アルキル、グルコシル、フラクトース、ガラクトース、リボース、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基などで置換される。
【0041】
前記アルキルリン酸基は、アルキルで置換されたリン酸基であり、好ましくは、例えばメチルリン酸基、エチルリン酸基、プロピルリン酸基などのC1~C4アルキル基置換リン酸基である。
【0042】
同様に、前記アルキルスルホン酸基は、アルキルで置換されたスルホン酸基であり、好ましくは、例えばメタンスルホン酸基、エタンスルホン酸基、プロパンスルホン酸基などのC1~C4アルキル基置換スルホン酸基である。
【0043】
前記アルキルカルボキシル基は、例えばアセトキシル基などのアルキルで置換されたカルボキシル基である。
【0044】
アルケニル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキニル基であり、アルケニルアルキル基とは、前記アルケニル基を含むアルキルであり、アルケニルオキシ基は、前記アルケニル基を含むオキシエーテル基である。
【0045】
アルキニル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキニル基であり、アルキニルアルキル基は、前記アルキニル基を含むアルキルであり、アルキニルオキシ基は、前記アルキニル基を含むオキシエーテル基である。
【0046】
アルカノイル基は、前記アルキルを含むアシル基である。
【0047】
前記アリール基は、フェニル基を含む芳香環であり、一般的にはベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンであり、好ましくはベンゼン、ナフタレンである。
【0048】
前記複素環アリール基は、ヘテロ原子を含む単環芳香族環又は多環芳香族環であり、好ましくは5~10員環である。前記多環芳香族基は、二重一芳芳香族環、ベンゾ単環芳香族環あるいは縮合芳香環基であってもよい。例えば、アリール基は、フラニル基、ピリジル基、チエニル基、イミダゾール基、ピロール基、ピリダジル基、ピラジニル基、ベンゾピロール基、ベンゾフラニル基、ベンゾイソキノリル基、又はピラジノピリダジニル基などであってもよい。
【0049】
好ましくは、P1及びP3がポルフィリン16員環上のN原子に結合して環を形成した後の
【0050】
【0051】
は、置換または非置換のピロール基環を形成する。前記ピロール基環上の置換基1つまたは複数であってもよく、ハロゲン、水酸基、スルフヒドリル基、アミノ基、カルボキシル基、及びニトロ基から選択される1つ又は複数である。
【0052】
更には、
【0053】
【0054】
は、それぞれ独立して、
【0055】
【0056】
から選択されるいずれか1つである。
【0057】
いくつかの好ましい態様において、P1及びP3がポルフィリン16員環上のN原子に結合して環を形成した後非置換のピロール基環を形成する。
【0058】
好ましくは、P2がポルフィリン16員環上のN原子に結合して環を形成した
【0059】
【0060】
は、
【0061】
【0062】
から選択される1つ又は複数である。
【0063】
ただし、R’は、水素、トリメチルアミノエチルから選択される。
【0064】
RN1、RN2、RN3は、それぞれ独立して、水素、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、ハロゲン置換C1-4アルキル基、C1-4アルキル基置換アミノ基、又はC1-4アルキルチオ基から選択されるいずれか1つである。
【0065】
更には、前記
【0066】
【0067】
は、
【0068】
【0069】
から選択されるいずれか1つである。
【0070】
好ましくは、前記
【0071】
【0072】
は、
【0073】
【0074】
から選択されるいずれか1つである。
【0075】
いくつかの好ましい態様において、前記
【0076】
【0077】
は、
【0078】
【0079】
である。
【0080】
好ましくは、前記Ar1及びAr2は、1つまたは複数の置換基を含む置換フェニル基であり、置換基の位置は、以下の
【0081】
【0082】
から選択されるいずれか1つである。
【0083】
ただし、Ar1及びAr2の置換基R’’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、水酸基、スルフヒドリル基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン置換C1-6アルキル基、C1-6アルキル基置換アミノ基、置換チオ基、リン酸基、C1-6アルキルリン酸基、カルボキシル基、C1-6アルキルカルボキシル基、スルホン酸基、C1-6アルキルスルホン酸基から選択されるいずれか1つ又は2つ以上である。
【0084】
更には、Ar1及びAr2の置換基R’’は、水素、F、Cl、Br、ニトロ基、水酸基、スルフヒドリル基、メチル基、グルコシル基置換チオ基、フルクトシル基置換チオ基、ガラクトシル基置換チオ基、リボース置換チオ基、アミノ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基から選択される1つ又は複数である。
【0085】
いくつかの好ましい態様において、前記Ar1及びAr2の置換基R’’は、F、Cl及びBr、水素、グルコシル基置換チオ基、トリメチルアミノ基、スルホン酸基から選択される1つ又は複数である。
【0086】
いくつかの好ましい態様において、前記Ar1及び/又はAr2は、
【0087】
【0088】
である。
【0089】
いくつかの好ましい態様において、前記Ar1及び/又はAr2は、
【0090】
【0091】
である。
【0092】
いくつかの好ましい態様において、前記Ar1及び/又はAr2は、
【0093】
【0094】
である。
【0095】
いくつかの好ましい態様において、前記Ar1及び/又はAr2は、
【0096】
【0097】
である。
【0098】
いくつかの好ましい態様において、前記Ar1及び/又はAr2は、
【0099】
【0100】
である。
【0101】
いくつかの態様において、前記Ar1及び/又はAr2は、
【0102】
【0103】
である。
【0104】
好ましくは、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立して、水素、F、Cl、Br、ニトロ基、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、グルコシルスルフヒドリル基、マンノシルチオ基、フルクトシルチオ、ガラクトシルチオ基、リボシルチオ基、キシロシルチオ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、ハロゲン置換C1-3アルキル基、C1-3アルキルリン酸基、C1-3アルキルカルボキシル基、C1-3アルキルスルホン酸基から選択される1つ又はそれらの組み合わせである。
【0105】
更には、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立して、水素、F、Cl、Br、ニトロ基、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、グルコシルチオ基、ガラクトシルチオ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基から選択される1つ又はそれらの組み合わせである。
【0106】
いくつかの態様において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立して、F、スルホン酸基、トリメチルアミノ基、及びグルコシルスルフヒドリル基から選択される1つ又は複数の組み合わせである。
【0107】
本発明で提供されるポルフィリン化合物は、以下の化合物から選択されるいずれか1つ又は2つ以上である。
【0108】
【0109】
【0110】
本発明は、以下のことを含む上記のポルフィリン化合物の調製方法を提供する。
【0111】
不活性雰囲気条件下で、ポルフィンラクトンが第1の有機溶媒中で、80~200℃で無機塩基または有機塩基と反応し、第1の生成物が得られること、前記第1の生成物がポルフィリン化合物である。反応のステップは以下の通りである。
【0112】
【0113】
必要に応じて、第1の生成物が第2の有機溶媒中で酸化、還元または水溶性修飾反応にかけられ、第2の生成物が得られ、
前記第2の生成物もポルフィリン化合物である。
【0114】
前記酸化、還元あるいは水溶性修飾反応には、ラクトン化、求核攻撃、イオン化反応などが含まれる。
【0115】
ただし、前記第1の有機溶媒は、デカヒドロナフタレン、ジメチルスルホキシド、トルエン、オルトジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、水、n-ヘキシルアルコール、メタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、エタノールからなる群より選択されるいずれか1つ又は2つ以上である。好ましくはテトラヒドロフラン、水、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択されるいずれか1つ又は2つ以上である。
【0116】
前記不活性雰囲気は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、又はヘリウム雰囲気から選択される非酸化性雰囲気であり、好ましくは窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気である。
【0117】
前記無機塩基または有機塩基には、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピリジル基、トリメチルアミン、メタノールナトリウム、エタノールカリウム及びt-ブトキシドカリウムから選択されるいずれか1つまたは複数が含まれる。
【0118】
前記第2の有機溶媒は、水、メタノール、クロロホルム、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、オルトジクロロベンゼン、n-ヘキシルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド及びトルエンからなる群より選択されるいずれか1つ又は2つ以上である。好ましくは水、メタノール、テトラヒドロフラン、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド及びクロロホルムからなる群より選択されるいずれか1つ又は2つ以上である。
【0119】
本発明で提供されるポルフィリン化合物は、様々ながん細胞株に対して高い光毒性を有し、細胞およびin vivoレベルで高い光毒性を示している。一部の化合物の半数致死濃度は1μM未満に達しえる。ポルフィリン化合物は、臨床診断および治療における光線力学療法薬剤としての使用が期待されていることを示している。
【0120】
本発明はまた、有効成分として上記のポルフィリン化合物又は前記調製方法により得られたポルフィリン化合物、ならびに薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。前記ポルフィリン化合物薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグもまた、医薬組成物の有効成分として使用することもできる。
【0121】
医薬組成物の投与形態に応じて、前記医薬組成物は、有効成分の投与量が事前に決定されている様々な形態で調製することができる。
【0122】
前記医薬組成物が胃腸管を介して投与される場合は、錠剤、カプセル剤、経口溶液剤、経口エマルジョンおよび顆粒剤などの一般的な剤形を使用することができる。
【0123】
本発明で提供される医薬組成物は、注射(静脈内注射、動脈注射、筋肉内注射および脊髄腔注射を含む)によって投与し、有効成分の標的放出または送達装置を介して患者の部位に投与することができる。医薬組成物注射溶液、注射エマルジョン、徐放性注射剤、注射懸濁液などの一般的な剤形であり得る。
【0124】
本発明で提供される医薬組成物はまた、患者の患部皮膚に塗ることによって投与する皮膚外用を採用できる。溶液剤、エマルジョン、クリーム剤、懸濁液、および貼付剤などの一般的な剤形であり得る。
【0125】
本発明で提供されるポルフィリン化合物の光毒性および光線力学療法に適した特徴を考慮して、注射または局所皮膚投与によって投与されることが好ましい。
【0126】
医薬組成物の適用形態によれば、前記組成物中の賦形剤は、投与経路または投与形態に適合し、人体に毒性作用を及ぼさない不活性成分でなければならない。
【0127】
前記賦形剤は、固体または半固体、液体または気体の形態であってもよい。固体又は半固体の賦形剤は、例えば、塩化ナトリウム、グルコース、ミツロウ、鯨ロウ、水酸化ナトリウム、ワセリン、ポロキサマー、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、シクロデキストリン、キチン、レシチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポピドン、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、タルク及びp-ヒドロキシ安息香酸メチルなどが挙げられる。液体の賦形剤は、例えば、エチレングリコール、水、流動パラフィン、シリコーン、ジメチコン、エタノール、ピーナツ油、リン酸、トリエチルアミン、大豆油、シロップ及びグリセリンなどが挙げられる。気体の賦形剤は、例えば、二酸化炭素及び窒素などが挙げられる。
【0128】
本発明で提供される医薬組成物は、注射の形態の滅菌溶液又は分散系、又は使用前に注射用の滅菌水で調製する滅菌粉末であってもよい。有効成分を、溶媒、等張性調整剤、界面活性剤、抗酸化剤などの賦形剤と混合することによって調製される。
【0129】
本発明で提供される医薬組成物は、皮膚外用の溶液剤、乳剤、クリーム剤又は懸濁剤などであり得る。有効成分を、例えば乳化剤、油性溶媒、水性溶媒などの賦形剤と混合することによって調製される。
【0130】
前記医薬組成物調製および保存中安定している必要がある。好ましくは、単位剤形中の有効成分の投与量は、0.01mg~20gである。
【0131】
本発明で提供されるポルフィリン化合物は、高い光毒性、良好な生体適合性および高い安全性を有し、皮下腫瘍を治療するための光線力学療法薬剤として使用することができる。
【0132】
本発明はまた、皮下腫瘍を治療するための薬物の調製における前記ポルフィリン化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又はプロドラッグ、ならびにポルフィリン化合物を有効成分とする医薬組成物の使用を提供する。
【0133】
前記皮下腫瘍には、黒色腫、肉腫、線維腫、神経線維腫、脂肪瘤、アテローム、線維腫、神経鞘瘤、血管腫、平滑筋腫及びリンパ管腫が含まれる。
【0134】
根据患者の年齢、体重、健康状態、食事、投与経路、併用投与、治療時間などに応じて、具体的な投与投与量は患者ごとに異なる場合がある。一般に、上記の疾患の治療において、薬物ポルフィリン化合物の投与量は、0.01~500mg/kg体重/日であり、又は患者1人あたり1日0.1~20gである。
【0135】
前記ポルフィリン化合物は、生体適合性が高く、安全性が高いことが好ましい。ポルフィリン化合物を注射したり、皮膚に塗付したりすることで、皮下腫瘍の増殖を効果的に抑えることができる。
【0136】
本発明で提供されるポルフィリン化合物は、明らかな深紅-近赤外発光効果を有し、その吸収および発光波長が可視近赤外領域をカバーすることができる。深紅-近赤外光で励起でき、組織浸透の深さが深いため、深赤近赤外領域(600~1000nm)で蛍光標識、赤外または蛍光イメージングに応用できる。好ましくは、前記深紅-近赤外線には、650-900nmの波長のスペクトル領域が含まれる。
【0137】
本発明はまた、深赤色-近赤外領域での、蛍光標識、赤外線または蛍光イメージングにおけるポルフィリン化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、複合体又は前駆体物質の使用を提供する。
【0138】
本発明で提供されるポルフィリン化合物は、新規の構造および調節可能な構造を有し、異なる用途要件に適応するように、生体適合性の修飾と機能的な変更を達成するために複数の部位で誘導体化および修飾することができる。
【0139】
前記ポルフィリン化合物は、優れた光線力学療法と赤外線/蛍光イメージング効果があり、潜在的なin vivoでの光線力学療法および赤外線/蛍光イメージング剤である。
【実施例】
【0140】
〔実施例1〕
分子1の合成:
【0141】
【0142】
5,10,15,20-テトラキスペンタフルオロフェニルポルフィンラクトンと炭酸カリウムをテトラヒドロフランと脱イオン水の体積比が7:1の混合溶液で混合し、窒素雰囲気下で、200℃で反応を行い、それによって分子1が得られた。
【0143】
特性データ:
1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 9.54 (d, 2H), 8.67 (d, 2H), 8.35 (s, 2H), -0.44 (s, 2H). 19F NMR (471 MHz,CDCl3) δ -137.08 (dd, 4F), -138.5 (dd, 2F), -151.21 (t, 2F), -156.64 (t, 2F), -160.51 (dd, 2F), -160.10 (dt, 4F), -162.13 (t, 2F). HR-MS (ESI+) m/z [M+H]+: Calcd for C42H9F18N4O2
+943.0431; found: 943.0446. UV/Vis (CH2Cl2, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 407 (4.69), 440 (4.92), 510 (3.46), 551(3.67), 594 (4.13), 640 (3.86), 696 (4.38).。
【0144】
〔実施例2〕
分子2の合成:
【0145】
【0146】
分子1と三塩化ルテニウム、2,2-ビピリジンを1,2-ジクロロエタンで混合し、過硫酸水素カリウム(Oxone)及び水酸化ナトリウムの水溶液を滴下し、窒素雰囲気下で、80℃で反応を行い、それによって分子2が得られた。
【0147】
特性データ:
1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 9.62 (d, 1H), 9.39 (d, 1H), 8.69 (d, 1H), 8.53 (d, 1H), -0.63 (s, 1H), -0.90 (s, 1H). 19F NMR (471 MHz,CDCl3) δ -58.48 (dd, 1F), -59.43 (dd, 2F), -59.62 (dd, 1F), -61.24 (dd, 2F), -72.47 (t, 1F), -73.61 (t, 1F), -75.90 (t, 1F), -77.54 (t, 1F), -82.00 (dd, 1F), -82.85 (m, 3F), -83.68 (t, 1F), -83.86 (m, 3F). HR-MS (ESI+) m/z [M]: Calcd for C41H6F18N4O4960.0102; found: 960.0105. UV/Vis (CH2Cl2, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 410 (4.91), 430 (4.89), 551 (3.82), 594 (4.34), 673 (3.84), 736 (4.56).。
【0148】
〔実施例3〕
分子3の合成:
【0149】
【0150】
分子2とローソン試薬をトルエンで混合し、窒素雰囲気下で、100℃で反応を行い、それによって分子3が得られた。
【0151】
特性データ:
1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 9.56 (d, 2H), 9.33 (d, 2H), 8.65 (d, 1H), 8.53 (d, 1H), -0.11 (s, 1H), -0.28 (s, 1H). 19F NMR (471 MHz,CDCl3) δ -136.47 (dd, 1F), -136.99 (dd, 2F), -137.61 (dd, 1F), -139.00 (dd, 2F), -49.97 (t, 1F), -152.13 (t, 1F), -153.57 (t, 1F), -155.14 (t, 1F), -160.31 (m, 3F), -160.89 (t, 1F), -161.24 (t, 1F), -161.40 (m, 2F). HR-MS (ESI+) m/z [M+H]+: Calcd for C41H7F18N4O3S+976.9951; found: 976.9950. UV/Vis (CH2Cl2, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 462 (4.65), 491 (5.02), 575 (3.95), 620 (3.65), 698 (3.61), 776 (4.28).。
【0152】
〔実施例4〕
分子4の合成:
【0153】
【0154】
分子2と水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)をテトラヒドロフランで混合し、窒素雰囲気下で、室温(20~40℃)で反応を行い、それによって分子4が得られた。
【0155】
特性データ:
1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 9.49 (d, 1H), 9.20 (d, 1H), 8.54 (d, 1H), 8.40 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.64 (s, 1H). 19F NMR (471 MHz,CDCl3) δ-135.28 (dd, 1F), -136.51 (dd, 1F), -137.34 --138.15 (m, 3F), -139.73 (dd, 1F), -151.72 (q, 1F), -154.75 (t, 1F), -156.65 (t, 1F), -160.29 (dd, 1F), -160.60 - -161.54 (m, 5F), -162.13 (t, 1F), -162.77 (t, 1F). HR-MS (ESI+) m/z [M+H]+: Calcd for C41H9F18N4O4
+963.0336; found: 963.0334. UV/Vis (CH2Cl2, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 365 (4.98), 394 (4.91), 541 (4.18), 581 (4.67), 714 (3.89), 790 (4.75).。
【0156】
〔実施例5〕
分子5の合成:
【0157】
【0158】
分子1と四酸化オスミウムをクロロホルムで混合し、窒素雰囲気下で、室温で反応を行い、それによって分子5が得られた。
【0159】
特性データ:
1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 9.34 (s, 1H), 8.58 (s, 2H), 8.22 (d, 1H), 7.88 (t, 1H), 7.39 (t, 2H), -1.26 (s, 1H), -0.99 (s, 1H). 19F NMR (471 MHz,CDCl3) δ -157.20 (t, 2F), -161.12 (q, 2F), -162.17 (t, 2F), -163.07 (t, 3F), -163.95 (t, 2F). HR-MS (ESI+) m/z [M+H]+: Calcd for C41H9F18N4O4
+963.0336; found: 963.0334. UV/Vis (CH2Cl2, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 378 (4.95), 390 (4.88), 543 (4.14), 590 (4.62), 710 (3.89), 779 (4.73).。
【0160】
〔実施例6〕
分子6の合成:
【0161】
【0162】
分子1とジメチルアミン塩酸塩をN,N-ジメチルホルムアミドで混合し、窒素雰囲気下で、100℃で反応を行い、中間生成物が得られた。中間生成物とトリフルオロメタンスルホン酸メチルをトリメチルホスフェートで混合し、窒素雰囲気下で、65℃で反応を行い、分子6が得られた。
【0163】
特性データ:
1H NMR (400 MHz, D2O) δ 9.65 (d, 2H), 9.12 (d, 2H), 8.68 (d, 2H), 4.22 (d, 6H). 19F NMR (471 MHz, D2O) δ -135.62 (t, 2F), -136.62 (t, 2F), -137.4 (m, 10F), -139.78 (dd, 2F). HR-MS (ESI+) m/z [M+H]+: Calcd for C54H44F14N8O2
4+275.5835; found: 275.5835. UV/Vis (H2O, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 407 (4.71), 440 (4.92), 510 (3.48), 551(3.66), 594 (4.15), 640 (3.85), 696 (4.39).。
【0164】
〔実施例7〕
分子7の合成:
【0165】
【0166】
分子2とジメチルアミン塩酸塩をN,N-ジメチルホルムアミドで混合し、窒素雰囲気下で、100℃で反応を行い、中間生成物が得られた。中間生成物とトリフルオロメタンスルホン酸メチルをトリメチルホスフェートで混合し、窒素雰囲気下で、65℃で反応を行い、分子7が得られた。
【0167】
特性データ:
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 9.76 (d, 1H), 9.46 (d, 1H), 9.15 (d, 1H), 8.85 (d, 1H), 4.21 (s, 36H). 19F NMR (471 MHz, CD3OD) δ-135.25 (t, 1F), -136.11 (q, 2F), -136.88 (t, 1F), -137.59 (q, 2F), -138.03 (m, 2F), -138.31 (d, 2F), -139.32 (d, 2F), -140.63 (m, 1F), -141.50 (dd, 1F). HR-MS (ESI+) m/z [M+4OTf]2+: Calcd for C55H42F20N8O10S2
2+709.1073; found: 709.1052. UV/Vis (H2O, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 410 (4.90), 430 (4.88), 551 (3.84), 594 (4.32), 673 (3.83), 736 (4.55).。
【0168】
〔実施例8〕
分子8の合成:
【0169】
【0170】
分子4と1-ブロモエタノールを塩化メチレンで反応し、三フッ化ホウ素エーテルを触媒とし、室温で反応を行った。スピン乾燥した後、アセトニトリル中のトリメチルアミンと還流し、分子8が得られた。
【0171】
特性データ:
HR-MS (ESI+) m/z [M]+: Calcd for C46H20F18N5O4
+1048.1222; found: 1048.1220. UV/Vis (CH2Cl2, 25 °C): λmax(nm) (log ε): 365 (4.97), 394 (4.93), 541 (4.20), 581 (4.65), 714 (3.90), 790 (4.75).。
【0172】
〔実験例〕
(実験例1)
細胞の光毒性:
実験で使用した細胞には、HeLaヒト子宮頸がん細胞、HepG2ヒト肝がん細胞、A375ヒト悪性黒色腫細胞、MCF7ヒト乳がん細胞、HCT 116ヒト大腸がん細胞が含まれる。細胞培養は、10%不活化ウシ胎児血清と1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したDMEM完全培地で行った。培養温度は、37℃であり、培養雰囲気は、5%二酸化炭素である。
【0173】
継代培養したHeLa細胞をトリプシンで処理した後、適切な濃度で培地に分散させた。分散したHeLa細胞をポリ-D-リジン修修飾済みの平底96ウェルプレートにウェルあたりの培地が200μLとなるように接種し、細胞数が約104個であり、ブランクコントロール用に無細胞培地の1組を保留した。暗所で24時間細胞を培養した後、培地を除去し、100μLの新鮮な培地と100μLの実施例6で調製した分子6の前処理した培地溶液を加え、サンプルを0.1-5μMの勾配濃度に希釈した。暗所で24時間培養し続けた後、培地を除去し、各ウェルをpH=7.4のPBSで3回洗浄した。100μLのPBSバッファーを各ウェルに加え、同じ光強度(約6.5 mW/cm2)のブロモタングステンランプ白色光(400~700nm)より30分間照射した。各ウェルのPBSを除去し、200μLの新鮮な培地と交換し、培養を24時間続けた。終了後、培地を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。その後培地で10%CCK-8試薬(Cell Counting Kit-8)を調製し、各ウェルに100μLを加え、2時間インキュベートした。このプロセスでは、CCK-8試薬中の2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホン酸ベンゼン)-2H-テトラゾール一ナトリウム塩(WST-8)は、電子カップリング試薬の作用で生細胞により黄色のホルマザン生成物に還元されることによって、450nmでの溶液の吸光度が変化し、且つその変化は生細胞の数に比例した。マイクロプレートリーダーを使用して、450nmでの各ウェルの吸光度の変化を測定し、以下に従って各インキュベーション濃度での細胞生存率を計算した:
CV = (As -Ab)/(Ac - Ab)×100%
CVは細胞の生存率を示し、As、Ac及びAbは、それぞれインキュベートした化合物の細胞の吸光度、ブランク細胞の吸光度、およびブランクコントロールの吸光度を示す。
【0174】
以下のように、各インキュベーション濃度での細胞生存率に基づいて、さまざまな細胞株における分子6の半数致死濃度IC50を計算した:
【0175】
【0176】
以上から、光条件下では、分子6は一重項酸素の量子収率が高く、光線力学療法に使用すると、細胞レベルでの光毒性が高くなることが分かった。
【0177】
(実験例2)
光線力学療法の動物実験
in vivo実験では、BALB/Cヌードマウスを使用した。マウスは、雌性4-5週齢、体重16-25グラムを使用した。各マウスに100ul(5×106)のA375ヒト悪性黒色腫細胞を右肩甲骨の皮下に接種し、2週間後に実験を行った。
【0178】
ヌードマウスは番号でランダムにグループ化され、実験は対照群と皮膚適用群に分けられ、各群に6匹の動物がいた。対照群には光(タングステンランプ、400-700nm, 6.5 mW/cm2)のみを照射し、投与治療は行わなかった。皮膚塗付群では、ヌードマウスの体重に応じて10mg・kg -1を投与し、1mM濃度の分子6水溶液20ulを皮膚に塗付した。投与後、動物を暗所で24時間飼育し、腫瘍部位に光を当てて、各マウスが3日間連続30分間照らした。治療後、遮光は行わず、飼育ケージに入れて飼育し、ヌードマウスの各群の皮膚光毒性などの副作用を観察した。曝露後、腫瘍の体積と体重をノギスで2日ごとに測定した。2週間の治療後、しこりを摘出し、秤量した。
【0179】
実験の結果は、
図2に示すように、対照群(ブランク対照)と皮膚塗付群(分子6)の腫瘍サイズと体重変化を示している。結果から、分子6は、皮膚への塗付の投与形態により、皮下腫瘍の成長を効果的に阻害でき、マウスの体重が有意に減少しなかったことを示したが、非投与対照群のマウスは急速な腫瘍成長および有意な体重減少を示した。
【0180】
(実験例3)
分子1~4の赤外吸収スペクトルと赤外発光スペクトルをスキャンすると、結果を
図1に示すように、図から分かるように、ポルフィリン化合物の周辺構造の複数の部位を修飾と誘導することにより、化合物の吸収スペクトルが可視光領域と近赤外領域をカバーできることがわかった。深紅-近赤外領域(650-900nm)の化合物の吸収帯が大幅に向上した。化合物を光励起することにより、検出された化合物の蛍光スペクトルもこの領域にある。そして、化合物の異なる修飾構造により、発光波長を1000nmに赤方偏移させることができる。これは、赤外線イメージングまたはin vivo蛍光イメージングで深部組織浸透の深さを達成するために不可欠なことである。
【0181】
(実験例4)
in vivo実験におけるすべての動物実験は、中国の動物実験規則に厳密に準拠して実施され、実験に4週齢のヌードマウスを使用した。
【0182】
in vivo蛍光イメージングに使用されるイメージング機器は、IVIS Spectrum蛍光イメージングシステムである。この装置は、高感度の生物発光と蛍光イメージングを実現でき、430~850nmの全帯域をカバーする28個の高効率フィルターを備えている。
【0183】
実験中、最初に、100uLの10uM分子8水溶液(1%DMSOを含む)をマウスの尾静脈に注射した。次に、マウスをイメージング機器に設置し、2L/minの酸素と2%イソフルランの混合ガス雰囲気に設置して麻酔をかけた。励起には745nmの励起波長を使用した。画像取得波長は840nmで、露光時間は自動である。
【0184】
インビトロ臓器画像分析では、化合物を尾静脈に注射して4時間後にマウスを安楽死させて解剖した。必要な臓器を取り出し、イメージャでイメージングを実行した。他の条件は、in vivo実験と一致している。
【0185】
実験の結果は、
図3に示すように、化合物はマウスに入った後に肝臓に入った。30分後、肝臓は生きた状態で画像化でき、そして、バックグラウンド干渉は低く、周囲の組織の信号は弱かった。解剖学実験の結果は生体顕微鏡法の結果と一致しており、化合物はすべて肝臓に局在している。これは、化合物の深紅-近赤外発光特性が生体内蛍光イメージングのバックグラウンド干渉を効果的に低減し、生体の非解剖学的状態でも特定の臓器の高解像度蛍光イメージングを実現できることを示している。
【0186】
本発明は、特定の実施形態および例示的な例を参照して上記で詳細に説明されてきたが、これらの説明は、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の技術的解決策および実施形態に対して様々な同等の置換、修正または改善を行うことができ、これらがすべて本発明の範囲内にあることを理解している。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従う。
【国際調査報告】