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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】石膏ボード中の起泡液化剤
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20230314BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20230314BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B28B1/30
C04B28/14
C04B24/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530877
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019000321
(87)【国際公開番号】W WO2021104602
(87)【国際公開日】2021-06-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】カラコウシス,シュテルギオス
(72)【発明者】
【氏名】パラスコフ,ゲオルギー
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター,アントン
【テーマコード(参考)】
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
4G052DB14
4G112PB24
4G112PC03
(57)【要約】
本発明は、石膏ボードを製造するための方法であって、石膏スラリー用の液化剤がガスで起泡して85重量%未満の含水量を有するフォームを提供し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた混合物が二次元基材上に適用される、方法に関する。起泡形態の液化剤を組み込むことにより、石膏/水混合物の所望の流動性を提供するために必要とされる液化剤の量を有意に減少させることが可能になり、それ故に、より少ない液化剤で同様の特性を有する石膏ボードを製造することが可能になる。本発明はさらに、このプロセスを使用して調製された石膏ボード、このプロセスを使用して石膏ボードを製造するための装置、および石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる液化剤の量を最小限に抑えるための対応する液化剤フォームの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボードを製造するための方法であって、前記石膏スラリー用の液化剤がガスで起泡してフォームを提供し、前記液化剤が85重量%未満の含水量を有し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた前記混合物が二次元基材上に適用されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記液化剤が、非起泡液化剤の密度に対して30~80重量%、好ましくは40~65重量%の密度を有するように、前記ガスで起泡する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記起泡液化剤が、水と混合する前にその固体構成成分に、または、それがミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に、具体的には前記二次元基材に適用するための分注デバイスの前の供給ラインを介して添加することによって前記石膏/水混合物に組み込まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記起泡液化剤が前記水に添加されて、前記石膏/水混合物を調製する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記液化剤の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%がフォームとして前記石膏/水混合物に組み込まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらなる石鹸ベースのフォームが前記石膏/水混合物に組み込まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記石鹸ベースのフォームおよび前記起泡液化剤が互いに独立して生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が適用される前記二次元基材が、ボール紙または不織布を含み、前記混合物が、前記二次元基材を形成する同じ材料、または、異なる材料から構成され得るさらなる基材で適用後に任意選択的に覆われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記液化剤が、リグノスルホン酸塩、具体的には、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを有するもの、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液化剤が、前記石膏/水混合物中に、スタッコの重量に基づいて、0.1~2.5重量%、具体的には1~2重量%の割合で含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
促進剤、繊維、好ましくはガラス繊維の形態の繊維、および添加剤のうちの1つ以上を、前記石膏/水混合物に組み込むことをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液化剤がデバイス内で起泡し、前記デバイスが、前記起泡液化剤が前記石膏/水混合物に導入されるデバイスから空間的に分離されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる、石膏/水混合物または石膏ボード。
【請求項14】
石膏ボードを製造するための装置、好ましくは、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、前記装置が、起泡デバイスと、石膏/水混合物を生成するためのミキサーと、前記ミキサー内で調製された前記石膏/水混合物を二次元基材上に分注するための出力デバイスと、を備え、前記起泡デバイスが、前記ミキサーへの水の供給ラインに、形成される前記石膏ボードの固体構成成分の供給ラインに、または前記出力デバイスの前の前記ミキサーからの前記混合された材料の排出デバイスに流体連結されている、前記装置。
【請求項15】
石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる液化剤の量を最小限に抑えるための、85重量%未満の含水量を有する液化剤フォームの使用であって、前記起泡液化剤が、前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物に混合されるか、または前記混合物が形成された後に前記石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである、前記使用。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードを製造するための方法であって、石膏スラリー用の液化剤がガスで起泡してフォームを提供し、この液化剤が85重量%未満の含水量を有し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた混合物が二次元基材上に適用される、前記方法に関する。本発明はさらに、このプロセスを使用して調製された石膏ボード、このプロセスを使用して石膏ボードを製造するための装置、および石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる液化剤の量を最小限に抑えるための対応する液化剤フォームの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏製品、具体的には石膏ボードを製造するための方法はよく知られている。通常は、このような方法は、カルシウム半水和物(「スタッコ」とも称される)、水、および必要に応じて他の添加剤を混合して、流動性混合物を提供し、次いで、それを、多くの場合、紙または不織布でできている基材に注ぎ、乾燥させることを含む。石膏混合物に、基材上に均一に広げることができ、均一で均質な表面を形成することができる必要な流動性を提供するために、多くの場合、液化剤または分散剤が石膏混合物に添加される。このような液化剤は、例えば、ナフタレンスルホン酸塩またはポリカルボン酸塩などの材料であり、後者は、「高可塑剤」としてセメントと一緒により一般的に使用される。
【0003】
石膏塊の流動性を改善することに加えて、液化剤の添加は、石膏ボードが乾燥しているときに、フォームの泡のサイズ分布およびこれらの泡によって生成される空隙にも影響を与えることが見出されている。さらに、液化剤は、石膏スラリーの硬化を遅らせる場合があるため、高い製造速度での石膏製品の製造を難しくする。例えば、より多くの液化剤を添加すると、硬化時間が長くなり得る。材料が製造機械のカッティングナイフを通過する際にウォールボードが十分に硬化していない場合、切断時に製品の形状を保持することができず、切断後のボードの処理によって損傷する可能性がある。したがって、材料の十分な硬化を可能にするために、製造ラインの速度を遅くする必要があり得る。
【0004】
さらに、液化剤はまた、製造プロセスのコスト要因でもある。しかしながら、石膏混合物により多くの水を添加して十分な流動性を提供する必要性があることによって、液化剤を使用する必要がないことによる節約は過剰に補償されるため、液化剤の省略は商業的に実現可能な選択ではない。これにより、製造されたボードを乾燥させるために、労力およびコストが増加することになる。したがって、石膏スラリーに十分な流動性を提供するための液化剤を含む石膏ボードの調製のための組成物を提供する一方で、そこから調製される石膏ボードの所望の物理的特性および乾燥特性をできるだけ高い製造速度で維持するために液化剤の量を低レベルに維持する、一般的目的が存在する。
【0005】
水性フォームおよび分散剤を一緒に使用して、強くて軽量の石膏ボードを得る方法は、US2006/0278128A1に記載されている。この出願では、少量部の分散剤が石鹸および水と混合されて、フォームを生成して、最終ボード製品に空隙を提供する。分散剤の大部分が水と混合され、次いで、スタッコと組み合わせられて、石膏/水スラリーを調製する。石膏ボードを成形する前に、フォームとスラリーが組み合わせられる。US2006/0278128A1の石鹸フォーム中、液化剤および石鹸は、それぞれ、フォームの約3重量%および1重量%を占めている。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の基礎となる調査において、石膏スラリーへの起泡液化剤の導入は、同量の非起泡液化剤で調製されたスラリーと比較して、スラリーのより高い流動性を提供することが今や予想外に発見された。さらに、この効果は、液化剤が少量の水の存在下で起泡したとき、すなわち、例えば、起泡液化剤が、約40~80重量%の含水量を有する液化剤などの技術グレードの液化剤出発材料から起泡した場合、特に顕著になることが観察されている。このような液化剤は、例えばミキサーで起泡したときに、安定したフォームを提供し、その安定したフォームは、石膏ボードの乾燥配合成分に、石膏スラリーを調製するための作製水(make water)への添加剤として、水との混合の前に、またはミキサー後の石膏スラリーの前に、および石膏ボードを成形する前に、石膏/水混合物に都合よく組み込むことができる。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、石膏ボードを製造するための方法であって、石膏スラリー用の液化剤がガスで起泡して85重量%未満の含水量を有するフォームを提供し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた混合物が二次元基材上に適用される、ことを特徴とする、前記方法に関する。
【0008】
本出願の文脈における「石膏/水混合物」という用語は、「石膏/水スラリー」と交換可能に使用される。
【0009】
上記の石膏/水混合物中の硫酸カルシウム半水和物またはスタッコは、焼成石膏としても知られており、石膏ボードの製造のために使用される乾燥材料の少なくとも50%の量で存在する。好ましくは、石膏の量は少なくとも80%である。多くのウォールボード配合物では、乾燥成分材料は、90%を超える、またはさらには95%の硫酸カルシウム半水和物である。焼成の方法は、重要ではなく、アルファまたはベータ-焼成スタッコのいずれかが好適である。硫酸カルシウム無水石膏の使用も企図されるが、それは好ましくは20%未満の少量で使用される。
【0010】
スラリーを作製するために使用される水は、スラリーおよび硬化組成物の両方の特性を最適に制御するために実用的な限り純粋であるべきである。塩および有機化合物は、スラリーの硬化時間を変えることがよく知られており、促進剤から硬化阻害剤まで広範に変化する。いくつかの不純物は、二水和物結晶のインターロッキングマトリックスが形成されるときに構造に不規則性をもたらし、硬化生成物の強度を低下させる。したがって、製品の強度および一貫性は、実用的に限りなく汚染物質を含まない水を使用することによって、強化される。
【0011】
石膏/水混合物中の水の量は、通常は、混合物に十分な流動性を提供するような量である。使用される水の量は、使用される用途、使用される正確な分散剤、使用されるスタッコおよび添加剤の特性によって大きく変化する。ウォールボードに関する水対スタッコの比(「WSR」)は、スタッコの乾燥重量に基づいて、好ましくは約0.1~約0.8である。一般に、約0.2~約0.7のWSRが好ましい。
【0012】
本発明の実施における液化剤に関して、液化剤は、石膏/水混合物への組み込みおよび二次元基材上への混合物の適用を可能にするために、静置時に周囲条件下で安定したフォームを提供することができるべきであることを除いて、関連する制限はない。この目的に好適な液化剤は、例えば、特に、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを有するリグノスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物を含む群から選択される液化剤である。特に好ましい液化剤は、ナフタレンスルホン酸塩である。
【0013】
技術グレードの液化剤が、通常は、本発明の目的には十分である。そのような液化剤は、しばしば水を含有するため、本発明の実施における液化剤は、含水量が85重量%未満であるという条件で、限られた量の水を含むことが許容される。80重量%以下および/または40重量%以上の含水量が好ましく、特に好ましい含水量は、約55~60重量%である。最も好ましくは、液化剤は、商業的に得られる液化剤に含有されるよりも多くの水を含有するべきではない。
【0014】
上記のように、本発明の方法における液化剤の量は、石膏/水混合物の好適な流動性が得られるように調整されるべきであるが、一方で、液化剤の量は、コストおよび石膏ボードの乾燥特性劣化を回避するために最小限に保たれる。これらの要件を満たす好適な量として、スタッコの重量に基づいて、0.05~2.5重量%、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.15~0.5重量%の液化剤の量が言及され得る。
【0015】
ガスによる液化剤の起泡は、ガスの供給を備えた任意の従来の起泡装置を使用して達成することができる。特に好ましい起泡デバイスとしては、高い回転速度で運転することができ、かつ起泡する液化剤に高い剪断力を誘発することができるスティックミキサーが挙げられる。
【0016】
このように製造され、本発明のさらなる方法で使用されるフォームは、好ましくは、非起泡液化剤の密度に対して、30~80%、好ましくは40~65%の液化剤密度を有する。言い換えれば、フォームは、液化剤フォームの70~20体積%、好ましくは60~35体積%を占める量のガスを含む。フォームの製造に好ましいガスは空気であるが、他のガス、例えば、特に、不活性ガス、例えば、窒素も同様に、本発明の実施における起泡液化剤の調製に使用することができる。
【0017】
上に示したように、液化剤フォームの組み込みは、石膏/水混合物の調製の様々な段階で可能である。1つの代替案では、例えば、起泡液化剤を、石膏/水混合物の作製水に、すなわち、石膏と、石膏ボードの可能な他の固体構成成分が添加される水に、添加することが可能である。この代替案には、石膏ボードを調製する標準的なプロセスへの最小限の変更を加えるだけでよいという利点がある。
【0018】
第2の代替案では、起泡液化剤は、水と混合する前に固体構成成分に添加することによって、石膏/水混合物に組み込むことができる。第3の代替案では、起泡液化剤は、ミキサーで形成後に、例えば、特に、石膏/水混合物を二次元基材上に適用するための分注デバイスの前の供給ラインを介して、石膏/水混合物に組み込むことができる。その代わりに、例えば、混合デバイスが、石膏/水混合物の調製に使用される場合、それは、その接線側に石膏/水混合物のための出口を有し、かつそれに取り付けられたスラリー送出管を有し、石膏/水混合物は、(例えば、EP 1637302B1に開示されているように)回転運動によってさらに混合され、起泡液化剤を適切な供給ラインを介してこのスラリー送出管に向けることが可能である。第2および第3の代替案には、流動性の改善がより高いという利点がある(すなわち、同じ量の液化剤が、第1の代替案によるプロセスよりも高い流動性を提供する)。
【0019】
上に示したように、本出願の重要な発見は、石膏/水混合物に起泡液化剤を導入することで、石膏ボードの調製に使用される液化剤の量を可能な限り減らし得るということである。これは、一部の液化剤も非起泡液化剤として石膏/水混合物に導入されることを排除するものではないが、本発明によって提供される利点を減少させる。したがって、本発明の実施において、石膏/水混合物に導入される、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくはすべての液化剤が、フォームとして石膏/水混合物に導入されることが好ましい。「導入される」という用語は、フォームが、形成される石膏/水混合物の配合成分のいずれかと混合されるか、または水および石膏主配合成分から生成された後に石膏/水混合物と混合される、任意の実施形態を包含する。
【0020】
軽量石膏ボードの製造では、石鹸または界面活性剤および水で構成されたフォームを、石膏/水混合物に導入してから、二次元基材上にそれらを適用または「注入」するのが一般的である。したがって、本発明の方法では、二次元基材上への適用または「注ぐ」前に、さらなる石鹸ベースのフォームが石膏/水混合物に組み込まれることが好ましい。
【0021】
このフォームに関して、この石鹸または界面活性剤のフォームは、通常は、水ベースであることに留意されたい。すなわち、これは、水と石鹸または界面活性剤との混合物を起泡させて、水が混合物の大部分を占めるフォームを提供することによって生成される。例えば、そのような混合物中の水対石鹸または界面活性剤の比は、通常は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも9:1、より好ましくは少なくとも15:1である。好適な石鹸/界面活性剤としては、例えば、US5,683,635に記載されているような起泡剤としてのエトキシル化アルコール、硫酸化アルコールのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩が挙げられる。
【0022】
石鹸/界面活性剤ベースのフォームが本発明の方法で石膏/水混合物に組み込まれる場合、石鹸/界面活性剤ベースのフォームおよび液化剤ベースのフォームは、互いに独立して調製されることが好ましく、すなわち、石鹸/界面活性剤および液化剤を水と混合し、それによってフォームを生成するのではなく、液化剤フォームは、石鹸/界面活性剤ベースのフォームとは別個のデバイスで調製することが好ましい。これに関して、石膏ボードに組み込まれる液化剤全体の有意ではない量(すなわち5重量%未満)が石鹸/界面活性剤水混合物と一緒に起泡することが好ましい。
【0023】
石膏/水混合物が適用される二次元基材に関しては、石膏ボードの調製において従来のものである任意の材料を使用することができ、特にそれがより困難なく曲げられることができるように十分に柔軟である。好ましくは、二次元基材は、ボール紙または不織布であるか、またはそれを含む。さらに、本発明の方法では、混合物は、適用後に、二次元基材を形成する同じ材料または異なる材料から構成され得るさらなる基材で覆われることが好ましい。好ましくは、二次元基材およびさらなる基材は、同じ材料、例えば、段ボールからのものであるか、またはそれを含む。得られた石膏ボードでは、石膏含有層が、2つの基材層の間に挟まれ、コア層を形成する。
【0024】
「二次元基材」は、主に2つの空間次元における延在を有する基材であり、材料の長さおよび幅よりも有意に薄い厚さを有する。
【0025】
石膏ボードの物理的特性は、1つ以上の促進剤、繊維、および他の従来の添加剤を添加することによって、変更および調整することができる。
【0026】
好適な促進剤は、例えば、硫酸カルシウム二水和物または硫酸カリウムである。
【0027】
繊維を石膏/水の混合物に組み込んで、得られる石膏ボードの剛性を向上させることができる。この目的に好ましいタイプの繊維はガラス繊維であり、それは混合物に好適に添加することができる。別の好ましいタイプの繊維は紙繊維である。
【0028】
本発明の方法で使用され得る従来の添加剤としては、調節剤、例えば、セメント、石灰、生石灰または酸化カルシウム、水酸化カルシウムとしても知られている消石灰、炭酸ナトリウムとしても知られているソーダ灰、灰汁としても知られている炭酸カリウム、および他の炭酸塩、ケイ酸塩、ホスホン酸塩、およびリン酸塩が挙げられる。
【0029】
本発明の実施において使用され得るさらなる添加剤としては、デンプン(例えば、紙の結合を増加させ、生成物を強化するため)、シロキサンのワックスエマルジョン(例えば、完成した石膏ボードの耐水性を改善するため)、トリメタリン酸塩化合物(生成物の強度を増強し、硬化石膏の垂れ下り抵抗を改善するため)、硬化遅延剤、難燃剤、および殺生物剤(カビ(mold)、カビ(mildew)、または真菌の成長を低下させるため)が挙げられる。
【0030】
好適な殺生物剤の例としては、ホウ酸、ピリチオン塩および銅塩が挙げられ、殺生物剤は、二次元基材または石膏コア層のいずれかに好適に組み込み得る。
【0031】
好適なデンプンの例としては、特に、アルファ化デンプンまたは酸変性デンプンが挙げられる。アルファ化デンプンを含めると、硬化および乾燥させた石膏成形の強度が高まり、水分が増加した条件下での紙の層間剥離のリスクが最小限に抑えられるか、または回避される。
【0032】
また、デキストロースなどの糖を添加して、石膏ボードの端部での紙の結合を改善することができ、またはホウ酸を添加して剛性を高めたりすることもできる。
【0033】
本発明のプロセスにおいて、液化剤は、起泡液化剤が石膏/水混合物に導入されるデバイスから空間的に分離されているデバイス内で起泡することがさらに好ましい。すなわち、液化剤を起泡させるためのデバイスは、石膏/水混合物が調製される同じデバイスの一部ではなく、それとは別個のものである。この場合の起泡液化剤は、適切なラインを介してこのデバイスに移送される。
【0034】
石膏ボードを調製するための従来の方法と同様に、本発明の方法は、石膏/水混合物をエンドレスリボンまたはストリップに成形し、石膏/水混合物を硬化させることを含むさらなるステップを含有し得る。リボンまたはストリップを切断して、所望の寸法の石膏ボードを得ることができる。
【0035】
第2の態様では、本発明は、上記の方法に従って入手可能な石膏/水混合物または石膏ボードに関する。
【0036】
第3の態様では、本発明は、石膏ボードを製造するための装置、好ましくは上記の方法を実施するための装置であって、当該装置が、起泡デバイスと、石膏/水混合物を製造するためのミキサーと、それに流体連結された、ミキサーで調製された石膏/水混合物を二次元基材上に分注するための出力デバイスと、を備え、起泡デバイスが、ミキサーへの水の供給ラインに、形成される石膏ボードの固体構成成分の供給ラインに、または出力デバイスの前のミキサーからの混合材料の排出デバイスに流体連結されている、前記装置に関する。
【0037】
装置の好ましい実施形態では、本装置は、2つの別個の起泡デバイスを備え、これらのデバイスのうちの第1のデバイスは、水と石鹸/界面活性剤との混合物からフォームを調製するように適合されており、第2の発泡デバイスは、液化剤のフォームを調製するように適合されている。この場合、水と石鹸/界面活性剤との混合物からフォームを調製するように適合されている起泡デバイスは、好ましくは、ミキサーと出力デバイスとの間の位置へ、供給ラインを介して、装置に流体連結されている。第2の起泡デバイスはまた、好ましくは、ミキサーと出力デバイスとの間の位置に流体連結されているか、またはミキサー内への固体材料の供給ラインに流体連結されている。
【0038】
本発明の装置におけるミキサーは、好ましくは、その接線側に石膏/水混合物のための出口を有し、それに取り付けられたスラリー送出管を有し、そこに導入された石膏/水混合物に回転運動が付与され、さらに混合されるように構成されており、対応する混合デバイスは、例えば、EP1637302B1に開示されている。ミキサーがそのような構成を有する場合、液化剤を起泡させるように適合されている起泡デバイスが、供給ラインを介して、スラリー送出管に流体接続されていることがさらに好ましい。特に好ましい実施形態では、少なくともこの供給ラインは、少なくとも部分的に、85重量%未満の含水量を有する起泡液化剤で満たされる。
【0039】
第4の態様では、本発明は、石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる液化剤の量を最小限に抑えるための、85重量%未満の含水量を有する液化剤フォームの使用であって、起泡液化剤が、混合物を調製するために使用される構成成分として石膏/水混合物に混合されるか、または混合物が形成された後に石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである、前記使用に関する。
【0040】
上記において、本発明の方法に関連して好ましいと示されている任意の実施形態は、それらが明らかに矛盾しない限り、本発明の製品、装置、および使用の好ましい実施形態でもある。
【0041】
本発明をさらに説明するために、添付の図1および2を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】形成ステーションおよび成形チャネル9、硬化ベルト(setting belt)10、およびローラーコンベヤ11を有する、石膏ボードを調製するための標準的なプロセスの実施形態を例示している。このプロセスでは、プロセス水に混合された可能性のある液化剤を含む石膏ボードのすべての構成成分が、ミキサー1で混合され、排出デバイス3を介して、ボール紙などの基材2に適用される。石鹸/界面活性剤フォームは、別々に添加することができる(図示されていない)。続いて、適用された混合物は、平坦なコアを形成し、基材(例えば、ボール紙)4のさらなる層がその上に適用される。最後に、サンドイッチ構築物5が切断され、さらに乾燥機6に運ばれる。
図2】本発明のプロセスの実施形態を例示している。このプロセスでは、液化剤は、起泡デバイス7でフォームへと前処理され、次いで、ライン8を介して、石膏/水ミキサー1と排出デバイス3との間にある石膏ボード調製デバイスに導入される。あるいは、起泡液化剤は、ミキサー1への水の供給ライン、またはミキサー1への石膏ボードの固形構成成分のための供給ラインに適用することもできる。図1および図2では、石膏、水、促進剤、および任意選択的な添加剤が、ミキサー1で混合される。
【0043】
以下では、本発明を実施例によってさらに例示するが、それは、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0044】
実施例1:
液化剤としてナフタレンスルホン酸塩(密度1.2kg/L)を使用した。液化剤のフォームを、ナフタレンスルホン酸塩を4200U/分で混合することによって製造し、5~30分の安定性を有するフォームを提供した(すなわち、この時点で、最初に使用された液体の最大10%が分離し得る)。このようにして生成したフォームは、約610g/Lの密度を有していた。
【0045】
続いて、起泡ナフタレンスルホン酸塩を、400gのスタッコ、276gの水、1gの促進剤(硫酸カルシウム二水和物)、および2g/1gの液化剤(スタッコに基づいて0.50/0.25重量%)から以下のようにして調製された石膏ボードの調製のために使用した:
【0046】
水、スタッコ、促進剤、および液化剤を、スタッコ/促進剤のプレミックスを水に10秒間入れ、フルスロットルで7秒間混合することによって、キッチンエイドミキサーで混合した。試料1および2では、スタッコ/促進剤プレミックスを導入する前に、起泡液化剤を水に添加した。試料3および4では、起泡液化剤をスタッコ/促進剤プレミックスに添加してから、水に導入した。試料5および6では、試料3および4と比較して半分の量の液化剤(1.0g、0.25重量%)を使用した。比較のために、液化剤を含まないさらなる試料(比較1)を試験した。
【0047】
試料を以下のようにスランプフロー試験に供した。スタッコスラリーを上記のように調製した。フルスロットルで混合した後、13秒以内にスラリーをテストコーン(高さ5cm、幅10cmのリングを有する)に移し、スパチュラで余分なスラリーを除去した。次いで、合計で30秒後、リングを表面から持ち上げ、スランプフローを、混合物の流れが停止した後に表面に広がったスタッコ混合物の最大寸法として測定した。これらの試験の結果を以下の表1に示す:
【表1】
【0048】
上記の表から明らかなように、混合前に起泡液化剤を石膏塊に添加すると、スランプフローに強い影響が認められる(試料3~6)。ただし、液化剤を水に添加したときも、非起泡液化剤を使用して調製した試料と比較して、スランプフローが改善される。
【0049】
実施例2:
スランプフローの影響量を決定するために、非起泡液化剤を使用して2つの試料(試料7および8)および起泡液化剤を使用して2つの試料(試料9および10)を測定した。試験を、400gのスタッコ、276gの水、5.2gの硫酸カルシウム二水和物(促進剤)、0.044gの遅延剤、および1.88gの液化剤の組成物を用いて上記のように実施した。試料9および10の場合、起泡液化剤を乾燥石膏混合物に添加した。試料11の場合、液化剤の量は、約10%減らして1.68gにした。これらの試験の結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0050】
上記から明らかなように、起泡液化剤の有効性は、非起泡液化剤と比較して、約8~9%増加する。さらに、試料11は、起泡液化剤の含有量が約10%減少しても、ほぼ同じスランプフローが得られることを示している。
【0051】
実施例3:
液化剤の改善された有効性が液化剤のより良好な均質化に起因する効果であるかどうかを判定するために、起泡液化剤(試料13)と、水と混合/均質化されたが起泡していない液化剤(試料14)との比較を行った(比較のために、非起泡液化剤を使用する試料12も提供される)。試験試料の組成は、実施例2と同じであった(すなわち、400gのスタッコ上に1.88gの液化剤)。この試験の結果を以下の表3に提供する。
【表3】
【0052】
表3は、液化剤を水と混合/均質化しても、非起泡試料と比較して、スランプフローに有意な影響がないことを示している。対照的に、液化剤が発起泡した場合、スランプフローが有意に増加する。
【0053】
参照標識のリスト:
1 ミキサー
2 基材
3 排出デバイス
4 第2の基材
5 サンドイッチ構築物(石膏ボード)
6 乾燥機
7 起泡デバイス
8 液化剤フォームを供給するためのライン
9 形成ステーションおよび成形チャネル
10 硬化ベルト
11 ローラーコンベヤ


図1
図2
【国際調査報告】