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特表2023-511645冗長ポンプシステム及びこのポンプシステムによる圧送方法
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  • 特表-冗長ポンプシステム及びこのポンプシステムによる圧送方法 図1
  • 特表-冗長ポンプシステム及びこのポンプシステムによる圧送方法 図2
  • 特表-冗長ポンプシステム及びこのポンプシステムによる圧送方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】冗長ポンプシステム及びこのポンプシステムによる圧送方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 25/02 20060101AFI20230314BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20230314BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20230314BHJP
   F04B 37/16 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F04C25/02 A
F04C23/00 D
F04C25/02 K
F04C29/12 E
F04B37/16 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530882
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019083664
(87)【国際公開番号】W WO2021110257
(87)【国際公開日】2021-06-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500119813
【氏名又は名称】アテリエ ビスク ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Atelier Busch SA
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレルス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェホン
(72)【発明者】
【氏名】ラルシェ,ジャン-エリック
【テーマコード(参考)】
3H076
3H129
【Fターム(参考)】
3H076AA16
3H076AA38
3H076AA39
3H076BB28
3H076BB43
3H076BB45
3H076CC41
3H076CC82
3H076CC97
3H129AA02
3H129AA03
3H129AA06
3H129AA10
3H129AB06
3H129AB12
3H129BB34
3H129BB47
3H129BB60
3H129CC12
3H129CC22
3H129CC35
3H129CC36
3H129CC87
(57)【要約】
本発明は、冗長真空ポンプシステム300及びこのシステムを用いる圧送方法に関する。本システムは、主ルーツポンプ302と、第1のポンプサブシステム310と、第2のポンプサブシステム320とを備える。第1のポンプサブシステム310及び第2のポンプサブシステム320は、主ルーツポンプ302によって排気されるガスを並列して圧送するように配置される。第1のポンプサブシステム310は、第1の副ルーツポンプ311と、第1の容積型ポンプ312と、主ルーツポンプ302のガス放出出口302bと第1の副ルーツポンプ311のガス吸引入口311aとの間に位置する第1の弁313とを備える。第2のポンプサブシステム320は、第2の副ルーツポンプ311と、第2の容積型ポンプ312と、主ルーツポンプ302のガス放出出口302bと第2の副ルーツポンプ321のガス吸引入口321aとの間に位置する第2の弁323とを備える。本発明によれば、第1のポンプサブシステム310及び第2のポンプサブシステム320は、同じ流量で圧送するように構成され、主ルーツポンプ302は、一次ポンプサブシステム310の圧送流量と二次ポンプサブシステム320の圧送流量とを足したものに等しい流量Fで圧送することが可能であるように構成される。
【選択図】図3




【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長真空ポンプシステム(300)であって、
プロセスチャンバー(301)に接続可能なガス吸引入口(302a)と、第1のポンプサブシステム(310)及び第2のポンプサブシステム(320)に接続されるガス放出出口(302b)とを有する主ルーツポンプ(302)を備え、
前記第1のポンプサブシステム(310)及び前記第2のポンプサブシステム(320)は、前記主ルーツポンプ(302)によって排気されるガスを並列して圧送するように配置され、
前記第1のポンプサブシステム(310)は、第1の副ルーツポンプ(311)と、第1の容積型ポンプ(312)と、前記主ルーツポンプ(302)の前記ガス放出出口(302b)と前記第1の副ルーツポンプ(311)のガス吸引入口(311a)との間に位置する第1の弁(313)とを備え、
前記第2のポンプサブシステム(320)は、第2の副ルーツポンプ(311)と、第2の容積型ポンプ(312)と、前記主ルーツポンプ(302)の前記ガス放出出口(302b)と前記第2の副ルーツポンプ(321)のガス吸引入口(321a)との間に位置する第2の弁(323)とを備え、
前記第1のポンプサブシステム(310)及び前記第2のポンプサブシステム(320)は、同じ流量で圧送するように構成され、
前記主ルーツポンプ(302)は、前記一次ポンプサブシステム(310)の圧送流量と前記二次ポンプサブシステム(320)の圧送流量とを足したものに等しい流量Fで圧送することが可能であるように構成されることを特徴とする、冗長真空ポンプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、ドライスクリューポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、ドライクローポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、スクロールポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、ダイアフラムポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項6】
前述の請求項のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記主ルーツポンプ(302)に並列して配置される第3の弁(304)を備えるバイパスダクト(303)を備える、冗長真空ポンプシステム。
【請求項7】
前述の請求項のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び前記第2の容積型ポンプ(322)は、排気処理設備、有利にはスクラバーに接続される、冗長真空ポンプシステム。
【請求項8】
前述の請求項のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記主ルーツポンプ(302)の前記圧送流量は、5000L/分~100000L/分、有利には10000L/分~70000L/分、好ましくは25000L/分~55000L/分である、冗長真空ポンプシステム。
【請求項9】
前述の請求項のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記主ルーツポンプ(302)、前記第1の副ルーツポンプ(311)、前記第2の副ルーツポンプ(321)、前記第1の容積型ポンプ(312)、又は前記第2の容積型ポンプ(322)のうちのいずれかの故障を検出する故障検出手段を備える、冗長真空ポンプシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記故障検出手段は、故障が検出された場合に、前記第1の弁(313)、前記第2の弁(323)、及び/又は前記第3の弁(304)を作動させることを可能にするように構成される、冗長真空ポンプシステム。
【請求項11】
前述の請求項のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)による圧送方法であって、前記主ルーツポンプ(302)は、前記第1のポンプサブシステム(310)の前記流量と前記第2のポンプサブシステム(320)の前記流量との前記合計に等しい公称流量において常に駆動されることを特徴とする、圧送方法。
【請求項12】
前記ポンプシステム(300)は、第3の弁(304)を備えるバイパスダクト(303)を備え、前記第3の弁(304)は、前記故障検出手段によって前記主ルーツポンプ(320)の故障が検出された場合、開放位置に切り替わる、請求項11に記載の圧送方法。
【請求項13】
前記故障検出手段は、前記第1の副ルーツポンプ(311)又は前記第1の容積型ポンプ(312)の故障が検出された場合、前記第1の弁(313)を閉鎖する、請求項10又は11に記載の圧送方法。
【請求項14】
前記故障検出手段は、前記第2の副ルーツポンプ(311)又は前記第2の容積型ポンプ(312)の故障が検出された場合、前記第2の弁(313)を閉鎖する、請求項10又は11に記載の圧送方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空技術の分野に関する。より正確には、本発明は、少なくとも1つの主ルーツポンプと、並列に配置される2つのポンプサブシステムとを備える冗長ポンプシステムに関する。本発明は、このポンプシステムによる圧送方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプシステムは、多くの産業分野において、例えば、食品及び医薬品産業における凍結乾燥、蒸留、包装、及び結晶化プロセス等、また特に半導体産業において欠かせない装置である。
【0003】
半導体産業において常によりよい品質の製造プロセスに達するためには、良好に制御された雰囲気下で製造プロセスを実行することが不可欠である。真空ポンプを用いると、プロセスチャンバーを真空化し、多くのプロセスに必要とされる清浄な低圧環境をもたらすとともに、不使用のプロセスガス及び副産物を除去することが可能である。半導体デバイスの製造プロセスは、多くの場合、複数の層を連続的に成膜及びパターニングすることを伴う。これらのプロセス工程のうちの多くは、空気中に存在する気体分子による干渉及びコンタミネーションを防ぐために、プロセスチャンバー内に真空条件を必要とする。半導体デバイスの製造におけるいくつかのプロセス工程は、通常、プロセスチャンバー、例えば真空オーブン内で行われ、プロセスチャンバー内において、ウェハーが、例えば化学気相成長又は化学気相エッチングによって処理される。これらのプロセスの全ては、主として水蒸気によるコンタミネーションを防ぐための低いバックグラウンド圧力と、プロセスチャンバー内にプロセスガスを供給する能力とを必要とする。このプロセスガスは、通常高い正確な流量を伴ってプロセスチャンバー内に供給しなければならない。したがって、半導体プロセスチャンバー内の真空化と、プロセスガスの所定の圧力の維持とを行うポンプシステムは、プロセスチャンバーを真空化して、通常、少なくとも10-2mbarの低い末端圧力にし、数万リットル毎分の範囲の高流量を扱うことが可能である必要がある。このために、真空ブースターとも呼ばれるルーツポンプと、ドライ補助ポンプとが組み合わされることが通常である。ルーツポンプは、高流量を扱うことを可能にし、補助ポンプは、高い圧縮比に起因して、十分低い末端圧力に達することを可能にする。
【0004】
現在、半導体産業では、数百又は数千ものウェハーが、単一のプロセスチャンバー内で同時に処理される。したがって、製造プロセス中のポンプシステムの故障は、ウェハーの損害につながり、結果として非常に重大な経済損失につながるおそれがある。ポンプシステムの故障がそのような結果をもたらすことを防ぐため、冗長ポンプシステムを設けることが知られており、通例である。冗長システムの目的は、プロセスチャンバー内のプロセス条件を維持するポンプが故障したときに、第2のポンプに引き継ぐことで、プロセス条件における重大すぎる変化と、最終的にはウェハーの損害とを防ぐことができることを確実にすることである。
【0005】
特に半導体産業の分野におけるいくつかの冗長ポンプシステムが、従来技術から既知である。図1に概略的に示されている第1の既知の冗長ポンプシステムにおいて、2つのポンプサブシステムが並列に配置されている。2つのサブシステムのそれぞれは、ルーツポンプと、ブースターポンプに対する補助ポンプとしての容積型ポンプとを備える。各ポンプサブシステムには、ルーツポンプとプロセスチャンバーとを接続するダクトにおいて弁が位置している。ポンプサブシステムは、サブシステムのそれぞれが単独でプロセスチャンバーを所望の流量で真空化することができるように構成される。これは、通常動作中、2つのサブシステムが常に稼働しているが、1つの弁のみが開放していることを意味する。弁が開放しているポンプサブシステムが故障した場合、この弁は閉鎖し、第2のサブシステムに引き継ぐことを可能にするために他方のポンプサブシステムの弁が開放する。
【0006】
しかしながら、この種の冗長システムは、いくつかの欠点を有する。故障が起きたとき、プロセスチャンバーの深刻な圧力ハンチング及びコンタミネーションが観察される。これは、通常、プロセスチャンバー内に存在するウェハーの重大な損害、及び重大な経済損失につながる。
【0007】
図2に示されている、半導体産業において用いられる第2の既知の冗長ポンプシステムは、プロセスチャンバーに接続されるルーツポンプと、並列に配置される2つの容積型ポンプとを備える。これらの2つの容積型ポンプは、ルーツポンプから2つの弁によって分離されている。通常動作中、双方の弁のうちの一方のみが開放し、容積型ポンプのうちの一方のみがルーツポンプに対する補助ポンプとして作用する。この補助ポンプが故障した場合、対応する弁が閉鎖し、他方の弁が開放することで、第2の容積型ポンプがルーツポンプに対する補助ポンプとして作用することが可能になる。
【0008】
この第2の既知の冗長ポンプシステムは、容積型ポンプが故障したときのコンタミネーションに関して、上述の第1の既知の冗長ポンプシステムよりも僅かに良好な性能を有する。しかしながら、システムのルーツポンプが故障した場合、プロセスチャンバー内のウェハーに非常に深刻な損害が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目標は、新規の冗長ポンプシステム及び対応する圧送方法を提案し、これにより、システムのポンプのうちの1つが故障してもプロセスチャンバー内の圧力条件を一定に維持することができるようにすることである。したがって、本発明の目的は、新規の冗長ポンプシステム及び対応する圧送方法を提案し、これにより、既知のシステムの上述の欠点を完全に克服する又は少なくとも大幅に低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、これらの目的は、特に2つの独立請求項の要素を通して達成される。さらに、従属請求項及び明細書から更なる有利な実施形態が得られる。
【0011】
特に、本発明の目的は、第1の態様において、冗長真空ポンプシステムであって、プロセスチャンバーに接続可能なガス吸引入口と、第1のポンプサブシステム及び第2のポンプサブシステムに接続されるガス放出出口とを有する主ルーツポンプを備え、第1のポンプサブシステム及び第2のポンプサブシステムは、主ルーツポンプによって排気されるガスを並列して圧送するように配置され、第1のポンプサブシステムは、第1の副ルーツポンプと、第1の容積型ポンプと、主ルーツポンプのガス放出出口と第1の副ルーツポンプのガス吸引入口との間に位置する第1の弁とを備え、第2のポンプサブシステムは、第2の副ルーツポンプと、第2の容積型ポンプと、主ルーツポンプのガス放出出口と第2の副ルーツポンプのガス吸引入口との間に位置する第2の弁とを備え、第1のポンプサブシステム及び第2のポンプサブシステムは、同じ流量で圧送するように構成され、主ルーツポンプは、一次ポンプサブシステムの圧送流量と二次ポンプサブシステムの圧送流量とを足したものに等しい流量Fで圧送することが可能であるように構成される、冗長真空ポンプシステムによって達成される。
【0012】
そのような冗長真空ポンプシステムにより、システムのポンプのうちの1つが故障した場合でも、プロセスチャンバー内の圧力レベルを一定に維持することができることを確実にすることが可能である。特に、故障時のプロセスチャンバーの圧力ハンチング又はコンタミネーションを回避することが可能である。主ルーツポンプは、2つのポンプサブシステムの合計流量に等しい圧送流量で駆動可能であるように構成されるため、サブシステムのうちの一方が故障した場合、主ルーツポンプは、プロセスチャンバーから排気されるガスを、依然として稼働しているサブシステムの圧送条件が変化しないように十分に圧縮することができる。主ルーツポンプが故障した場合、ガス流はサブシステム単独で圧送することができる。したがって、本発明に係る冗長ポンプシステムにより、従来技術から既知のシステムの欠点を克服することが可能になる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態において、第1の容積型ポンプ及び/又は第2の容積型ポンプは、ドライスクリューポンプ、ドライクローポンプ、スクロールポンプ、及びダイアフラムポンプからなる群から選択される。
【0014】
本発明の更に好ましい実施の形態において、冗長真空ポンプシステムは、主ルーツポンプに並列して配置される第3の弁を備えるバイパスダクトを備える。バイパスダクト及び第3の弁により、主ルーツポンプが故障によって圧送の障害となる場合でも、プロセスチャンバーから排気されるガス流を排気することが可能である。
【0015】
本発明の別の好ましい実施の形態において、第1の容積型ポンプ及び第2の容積型ポンプは、排気処理設備、有利にはスクラバーに接続される。これにより、プロセスチャンバーから排気されるプロセスガス及びプロセス副産物をリサイクルすることが可能である。
【0016】
本発明の更に別の好ましい実施の形態において、主ルーツポンプの圧送流量は、5000L/分~100000L/分、有利には10000L/分~70000L/分、好ましくは25000L/分~55000L/分である。これにより、本発明の冗長真空ポンプシステムは、特に半導体産業における既存の製造ラインに実装することができる。
【0017】
本発明の更に好ましい実施の形態において、冗長真空ポンプシステムは、主ルーツポンプ、第1の副ルーツポンプ、第2の副ルーツポンプ、第1の容積型ポンプ、又は第2の容積型ポンプのうちのいずれかの故障を検出する故障検出手段を備える。これらの故障検出手段により、故障があれば迅速に検出し、その結果、必要であれば弁を切り替えることが可能である。
【0018】
本発明の更に好ましい実施の形態において、故障検出手段は、故障が検出された場合に、第1の弁、第2の弁、及び/又は第3の弁を作動させることを可能にするように構成される。これは、故障が検出された場合、正しい弁が故障検出手段によって自動的に作動することができることから特に有利である。
【0019】
第2の態様において、本発明の目的は、本発明に係る冗長真空ポンプシステムによる圧送方法であって、主ルーツポンプは、第1のポンプサブシステムの流量と第2のポンプサブシステムの流量との合計に等しい公称流量において常に駆動される、圧送方法によって達成される。この圧送方法により、冗長真空ポンプシステムのポンプのうちのいずれかが故障した場合でも、プロセスチャンバー内の圧力レベルを一定に維持するとともに、ウェハーの損害を回避することができることが確実になる。
【0020】
本発明の第2の態様の第1の好ましい実施の形態において、ポンプシステムは、第3の弁を備えるバイパスダクトを備え、第3の弁は、故障検出手段によって主ルーツポンプの故障が検出された場合、開放位置に切り替わる。これにより、冗長真空ポンプシステムの主ルーツポンプが故障した場合、プロセスチャンバーから排気する必要があるガス流を、バイパスダクトを通して排気することができる。
【0021】
本発明の第2の態様の別の好ましい実施の形態において、故障検出手段は、第1の副ルーツポンプ又は第1の容積型ポンプの故障が検出された場合、第1の弁を閉鎖する。これにより、第1のポンプサブシステムのポンプのうちのいずれかが故障した場合、第1の弁を自動的に閉鎖することが可能である。
【0022】
本発明の第2の態様の更に別の好ましい実施の形態において、故障検出手段は、第2の副ルーツポンプ又は第2の容積型ポンプの故障が検出された場合、第2の弁を閉鎖する。これにより、第2のポンプサブシステムのポンプのうちのいずれかが故障した場合、第2の弁を自動的に閉鎖することが可能である。
【0023】
本発明の特定の実施形態及び利点が添付図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術から既知の第1の冗長ポンプシステムの概略図である。
図2】従来技術から既知の第2の冗長ポンプシステムの概略図である。
図3】本発明に係る冗長ポンプシステムの好ましい一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、従来技術から既知の第1の冗長ポンプシステム100を概略的に示している。既知の冗長ポンプシステム100は、プロセスチャンバー101からの圧送のために並列に配置される2つのポンプサブシステム110及び120を備える。上述したように、冗長ポンプシステムは、特に半導体産業における或る特定の製造プロセス中に、チャンバー101内の圧力レベルが常に維持されることを絶対的に確実にしなければならない状況で設けられる。
【0026】
ポンプシステム100は、所定の末端圧力に達することを可能にするだけでなく、大量のガス流Fを扱うことも可能にするように構成しなければならない。これは、特に、化学気相エッチングプロセス又は化学気相成長を伴う場合に重要である。これらのプロセスは、一定流量のプロセスガスをチャンバー101内に供給することが必要であり、これらのガス及びプロセスの残滓は、ポンプシステム100によって外部に圧送する必要がある。十分低い末端圧力に達するとともに、大量のガス流を圧送することを可能にするために、半導体産業において通常用いられる既知のポンプシステムは、容積型ポンプ、有利にはドライスクリューポンプと、ブースターポンプとしても知られるルーツポンプとの組合せを採用している。高い圧縮比を有するドライスクリューポンプにより、低い末端圧力に達することができる一方で、ルーツポンプにより、非常に大量のガス流を効率的に扱うことができる。
【0027】
したがって、再び図1を参照すると、2つのポンプサブシステム110、120のそれぞれは、ルーツポンプ111、121及びドライスクリューポンプ112、122を備える。上述したように、2つのサブシステムは、並列に配置され、2つの弁113、123によってプロセスチャンバー101に接続される。ポンプシステム100は、通常動作中、弁113は開放し、弁123は閉鎖しているという意味で、冗長である。したがって、プロセスチャンバー101から外部に圧送されるガス流Fは、通常動作中、サブシステム110単独で圧送される。このサブシステムのいずれかのポンプが故障した場合にのみ、弁113が閉鎖して、弁123が開放し、チャンバー101がサブシステム120単独で真空化されるようになっている。
【0028】
しかしながら、図1のシステム100のような冗長ポンプシステムは、多くの欠点を有する。まず、冗長ポンプシステムは、システムをサブシステム110からサブシステム120に切り替えなければならない場合、深刻な圧力ハンチングを被る。この圧力ハンチングは、プロセスチャンバー101内のコンタミネーションにつながるが、これは、多くの用途において許容できない。さらに、サブシステム110の故障を検出した後の或る特定の時間、プロセスチャンバー101内の圧力は上昇し、最終的には、チャンバー101内に保持されたウェハーの損害につながる。最後に、通常動作中、サブシステム120のポンプ121及び122が常に稼働していることから、ルーツポンプ121の入口と弁123との間の圧力が、サブシステム120の末端圧力に保たれる。これは、弁123がサブシステム110の故障検出に反応して急に開放した場合、プロセスチャンバー内の圧力が影響を受けることを意味する。そのような圧力変化は、プロセスチャンバー内の高品質なプロセス条件を保証することを不可能にする。
【0029】
図2は、従来技術から既知の第2の冗長ポンプシステム200を概略的に示している。システム200は、2つのポンプサブシステム210、220が、それぞれ、ドライスクリューポンプ等の容積型ポンプ212、222のみを備えるという点で、システム100とは異なる。重要なガス流Fを扱うために、システム200は、双方のサブシステム210及び220に「共通」のルーツポンプ202を備える。通常動作中、弁213は開放し、弁223は閉鎖する。したがって、ガス流F全体は、ルーツポンプ202及びドライスクリューポンプ212のみによって圧送される。ドライスクリューポンプ212が故障した場合、弁213が閉鎖して、弁223が開放し、ガス流Fをルーツポンプ202とドライスクリューポンプ222との組合せによって排気することができるようになっている。
【0030】
冗長システム100と比較して、冗長システム200は、ドライスクリューポンプ212が故障した場合に、プロセスチャンバー201内を一定圧力に維持する能力に関して向上した性能を有するが、ルーツポンプ202が故障すると、プロセスチャンバー201内の圧力に、許容できない一定の上昇がもたらされるという大きな欠点を有する。
【0031】
図3は、本発明の好ましい一実施形態に係る冗長ポンプシステム300を概略的に示している。ポンプシステム300は、プロセスチャンバー301に接続可能な主ルーツポンプ302と、2つのポンプサブシステム310及び320とを備え、2つのポンプサブシステム310及び320のそれぞれは、副ルーツポンプ311、321と、ドライスクリューポンプ等の容積型ポンプ312、322とをそれぞれ備える。通常動作中、弁313及び弁323は、常に開放しており、プロセスチャンバー301から排気されるガス流Fの半分がサブシステム310によって圧送され、もう半分がサブシステム320によって圧送される。本発明の適切な実施に不可欠なのは、主ルーツポンプ302が、サブシステム310及び320の合計圧送速度と同じ圧送速度で駆動可能であることである。換言すれば、通常動作中、主ルーツポンプ302は、圧送力に関与せず、入口302aにおける圧力P1が出口302bにおける圧力P2と同じ、すなわち、通常動作における主ルーツポンプ302の圧縮比が1に等しい。これは、圧送速度を調節することができる主ルーツポンプを有するか、又は、最大圧送速度がサブシステム310及び320の圧送速度に等しい主ルーツポンプを有することによって達成することができる。
【0032】
本発明を超える構想は、具体的な実施例によってよりよく説明される。この例では、プロセスチャンバーから排気するのに必要とされるガス流量Fが20000L/分に等しいと仮定する。上述したように、本発明の冗長ポンプシステム300は、主ルーツポンプ302をFに等しい圧送速度で駆動することができるように、また、各サブシステム310及び320が、F/2、この例では10000L/分に等しい圧送速度を有するように構成される。主ルーツポンプ302に入る流量と、主ルーツポンプ302から出る流量とが等しいことから、通常動作中の主ルーツポンプ302の圧縮比Knormalは1に等しい。
【0033】
これは、通常動作中、圧送速度及び末端圧力に関するポンプシステム300の性能が、主ルーツポンプ302が存在しないか、オフにされているか、又は(真空化の障害とならない程度に)故障している場合と同じであることを意味する。通常動作中、システム300全体の末端圧力は、サブシステム310、320のそれぞれの末端圧力を、流量ゼロでの出口圧力における圧縮比であるKで割ることによって得られる。通常、サブシステム310、320は、0.1mbar程度の末端圧力を有する。主ルーツポンプは、この圧力範囲において、50程度の圧縮比Kを有する。結果として、システム300全体の末端圧力は、2×10-4mbar程度である。
【0034】
ここで、サブシステム320が故障した場合、弁323は閉鎖し、主ルーツポンプ302とサブシステム310との組合せによって、流れF全体に対処する必要がある。サブシステム310の流量は固定であり、F/2に等しいため、主ルーツポンプ302は、プロセスチャンバーから排気されるガスを2倍に圧縮しなければならない。これは、サブシステム320の故障に起因して、主ルーツポンプ302を越える流量がFからF/2に降下するやいなや、自動的に行われる。当然ながら、サブシステムの入口311aにおける圧力P3は、通常動作中よりも2倍高くなるが、ここでは、主ルーツポンプ302が、プロセスチャンバー301から排気されるガスを2倍に圧縮することによって、圧送力に関与していることから、末端圧力及び圧送速度は、サブシステム320の故障による影響を受けず、この場合でもプロセスチャンバー内の圧力を一定に維持することができる。
【0035】
さらに、上述したように、主ルーツポンプ302が故障した場合、2つのサブシステム310及び320が正常に稼働している限り、システム300の性能は全く影響を受けない。主ルーツポンプ302とサブシステム310又は320のうちの一方とが同時に故障する可能性は非常に低いため、本発明に係る冗長ポンプシステム300は、従来技術から既知の冗長システムの欠点を回避することが可能である。
【0036】
さらに、ポンプシステム300内に、弁304を備えるバイパスダクト303を追加で設けることが可能である。追加のバイパスダクト303により、主ルーツポンプ302が故障によって圧送の抵抗となる場合でも、2つのサブシステム310,320によってプロセスチャンバー301を真空化し、チャンバー301内を一定圧力に維持することが可能である。そのような場合、流れFは、バイパスダクト304を通るように転換され、2つのサブシステム310及び320に向けられる。
【0037】
さらに、容積型ポンプ312,322の両方のガス放出出口を少なくとも1つの排気処理設備、有利にはスクラバーに接続することが有利である。
【0038】
最後に、上述の記載は、1つの関連する非限定的な実施形態を概説したものであることを指摘すべきである。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示の非限定的な実施形態に対する変更を行うことができることが明らかであろう。したがって、記載の非限定的な実施形態は、より際立った特徴及び用途のうちのいくつかを単に説明したものとみなすべきである。他の有益な結果は、非限定的な実施形態を異なる方法で適用することによって、又は当業者には既知の方法で変更することによって実現することができる。




図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長真空ポンプシステム(300)であって、
プロセスチャンバー(301)に接続可能なガス吸引入口(302a)と、第1のポンプサブシステム(310)及び第2のポンプサブシステム(320)に接続されるガス放出出口(302b)とを有する主ルーツポンプ(302)を備え、
前記第1のポンプサブシステム(310)及び前記第2のポンプサブシステム(320)は、前記主ルーツポンプ(302)によって排気されるガスを並列して圧送するように配置され、
前記第1のポンプサブシステム(310)は、第1の副ルーツポンプ(311)と、第1の容積型ポンプ(312)と、前記主ルーツポンプ(302)の前記ガス放出出口(302b)と前記第1の副ルーツポンプ(311)のガス吸引入口(311a)との間に位置する第1の弁(313)とを備え、
前記第2のポンプサブシステム(320)は、第2の副ルーツポンプ(321)と、第2の容積型ポンプ(322)と、前記主ルーツポンプ(302)の前記ガス放出出口(302b)と前記第2の副ルーツポンプ(321)のガス吸引入口(321a)との間に位置する第2の弁(323)とを備え、
前記第1のポンプサブシステム(310)及び前記第2のポンプサブシステム(320)は、同じ流量で圧送するように構成され、
前記主ルーツポンプ(302)は、前記第1のポンプサブシステム(310)の圧送流量と前記第2のポンプサブシステム(320)の圧送流量とを足したものに等しい流量Fで圧送することが可能であるように構成されることを特徴とする、冗長真空ポンプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、ドライスクリューポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、ドライクローポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、スクロールポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び/又は前記第2の容積型ポンプ(322)は、ダイアフラムポンプである、冗長真空ポンプシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記主ルーツポンプ(302)に並列して配置される第3の弁(304)を備えるバイパスダクト(303)を備える、冗長真空ポンプシステム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記第1の容積型ポンプ(312)及び前記第2の容積型ポンプ(322)は、排気処理設備、又はスクラバーに接続される、冗長真空ポンプシステム。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記主ルーツポンプ(302)圧送流量は、5000L/分~100000L/分、又は10000L/分~70000L/分、又は25000L/分~55000L/分である、冗長真空ポンプシステム。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記主ルーツポンプ(302)、前記第1の副ルーツポンプ(311)、前記第2の副ルーツポンプ(321)、前記第1の容積型ポンプ(312)、又は前記第2の容積型ポンプ(322)のうちのいずれかの故障を検出する故障検出手段を備える、冗長真空ポンプシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の冗長真空ポンプシステム(300)であって、前記故障検出手段は、故障が検出された場合に、前記第1の弁(313)、前記第2の弁(323)、及び/又は前記第3の弁(304)を作動させることを可能にするように構成される、冗長真空ポンプシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の冗長真空ポンプシステム(300)による圧送方法であって、前記主ルーツポンプ(302)は、前記第1のポンプサブシステム(310)の圧送流量と前記第2のポンプサブシステム(320)の圧送流量との合計に等しい公称流量において常に駆動されることを特徴とする、圧送方法。
【請求項12】
前記ポンプシステム(300)は、第3の弁(304)を備えるバイパスダクト(303)を備え、前記第3の弁(304)は、前記故障検出手段によって前記主ルーツポンプ(320)の故障が検出された場合、開放位置に切り替わる、請求項11に記載の圧送方法。
【請求項13】
前記故障検出手段は、前記第1の副ルーツポンプ(311)又は前記第1の容積型ポンプ(312)の故障が検出された場合、前記第1の弁(313)を閉鎖する、請求項11又は12に記載の圧送方法。
【請求項14】
前記故障検出手段は、前記第2の副ルーツポンプ(321)又は前記第2の容積型ポンプ(322)の故障が検出された場合、前記第2の弁(323)を閉鎖する、請求項11又は12に記載の圧送方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
特に、本発明の目的は、第1の態様において、冗長真空ポンプシステムであって、プロセスチャンバーに接続可能なガス吸引入口と、第1のポンプサブシステム及び第2のポンプサブシステムに接続されるガス放出出口とを有する主ルーツポンプを備え、第1のポンプサブシステム及び第2のポンプサブシステムは、主ルーツポンプによって排気されるガスを並列して圧送するように配置され、第1のポンプサブシステムは、第1の副ルーツポンプと、第1の容積型ポンプと、主ルーツポンプのガス放出出口と第1の副ルーツポンプのガス吸引入口との間に位置する第1の弁とを備え、第2のポンプサブシステムは、第2の副ルーツポンプと、第2の容積型ポンプと、主ルーツポンプのガス放出出口と第2の副ルーツポンプのガス吸引入口との間に位置する第2の弁とを備え、第1のポンプサブシステム及び第2のポンプサブシステムは、同じ流量で圧送するように構成され、主ルーツポンプは、第1のポンプサブシステムの圧送流量と第2のポンプサブシステムの圧送流量とを足したものに等しい流量Fで圧送することが可能であるように構成される、冗長真空ポンプシステムによって達成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
さらに、ポンプシステム300内に、弁304を備えるバイパスダクト303を追加で設けることが可能である。追加のバイパスダクト303により、主ルーツポンプ302が故障によって圧送の抵抗となる場合でも、2つのサブシステム310,320によってプロセスチャンバー301を真空化し、チャンバー301内を一定圧力に維持することが可能である。そのような場合、流れFは、バイパスダクト303を通るように転換され、2つのサブシステム310及び320に向けられる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】