(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】改良された埋込可能プレートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/80 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A61B17/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534285
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2020084957
(87)【国際公開番号】W WO2021111013
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】307020198
【氏名又は名称】ユニバーシタット アントウェルペン
(71)【出願人】
【識別番号】522223095
【氏名又は名称】モア・インスティテュート・フェレニゲング・ゾンデル・ウィンストーメルク
【氏名又は名称原語表記】MORE INSTITUTE VZW
(71)【出願人】
【識別番号】522223109
【氏名又は名称】ドクター・マティアス・ファンヘーズ・ベスローテン・フエンノートシャップ・メット・ベペルクテ・アーンスプラーケレイクヘイト
【氏名又は名称原語表記】DR. MATTHIAS VANHEES BVBA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンヘーズ,マティアス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL21
4C160LL33
4C160LL39
(57)【要約】
本発明は、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートを得るための方法に関し、1)関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップを含み、ゾーンは、本質的に、折損または断裂した骨のすべての断片と、骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部とを含み、本方法はさらに、2)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、3)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、4)埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算するステップと、5)計算されたパラメータ値を考慮に入れて埋込可能プレートを取得するステップとを含み、それにより、ステップ3において、整復は、前記骨断片の位置および向きを前記患者の健康な関節の3D表現に自動的に適合させることによってシミュレーションされる、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートを得るための方法であって、
1)関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップを含み、前記ゾーンは、本質的に、折損または断裂した骨のすべての断片と、前記骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部とを含み、前記方法はさらに、
2)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
3)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
4)埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算するステップと、
5)前記計算されたパラメータ値を考慮に入れて前記埋込可能プレートを取得するステップとを含み、
それにより、ステップ3において、前記整復は、前記骨断片の位置および向きを前記患者の健康な関節の3D表現に自動的に適合させることによってシミュレーションされる、方法。
【請求項2】
前記埋込可能プレートに直接固定される必要があるすべての骨断片は、ステップ2における前記骨断片の識別に基づいて、および/またはステップ3における前記整復のシミュレーションに基づいて識別される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適なパラメータ値は、
-前記埋込可能プレートのためのねじ穴の位置の組、
-前記埋込可能プレートのためのねじ穴の向きの組、および/または
-前記埋込可能プレートのためのねじ穴の直径の組を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記ねじ穴の位置、向きおよび/または直径の組は、前記埋込可能プレートに直接固定される必要がある前記骨断片を固定するように最適化される、請求項2および3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ5は、
5a)前記計算されたパラメータ値に基づいて前記埋込可能プレートを3Dプリントするための命令を構成するステップを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記命令は、
iv)位置決めガイド装置の最適なパラメータ値を計算するさらなるステップと、
v)前記計算されたパラメータ値に基づいて前記位置決めガイド装置を3Dプリントするための命令を構成するさらなるステップとを用いて取得される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ5aで得られた前記命令を用いて前記埋込可能プレートを3Dプリントすることによって、患者の骨折した関節を治癒するための患者別仕様および骨折別仕様の埋込可能プレートを製造するステップを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の前記健康な関節の前記3D表現は、前記骨折した関節に対する対側の関節の医療画像に基づく、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者の前記健康な関節の前記3D表現は、前記骨断片の形状外挿に基づく、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ4は、
a)テンプレートプレートを、前記骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートのためのテンプレートの組から、前記埋込可能プレートのための前記計算された最適なパラメータ値に基づいて選択するステップ、
b)最適なプレート厚または最適なプレート厚プロファイルを計算するステップ、および/もしくは
c)埋込可能プレートのための材料の組から材料を選択するステップ、のいずれかまたは任意の組み合わせを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記骨折した関節は、関節内骨折または骨幹端骨折である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ2において、前記関節骨折の周囲の前記ゾーンにおいて少なくとも所定の限界サイズのサイズを含む本質的にすべての異なる骨断片が識別され、前記限界サイズは、好ましくは最大で3mm、より好ましくは最大で2mm、さらにより好ましくは最大で1mmである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートであって、前記埋込可能プレートは、患者別仕様および骨折別仕様であり、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、埋込可能プレート。
【請求項14】
チタン、ステンレス鋼、または生分解性合成ポリマー等の生分解性材料から一体的に作製される、請求項13に記載の埋込可能プレート。
【請求項15】
ねじ穴の組を含み、各ねじ穴は、前記埋込可能プレートにおける位置、向きおよび直径を含み、それにより、前記ねじ穴の位置、向きおよび/または直径は、前記埋込可能プレートに直接固定される必要がある骨断片を固定するために最適化される、請求項13または14のいずれか1項に記載の埋込可能プレート。
【請求項16】
拡幅端(31)と、三角形軸端部(33)と、前記拡幅端(31)を長手方向に沿って前記三角形軸端部(33)と接続する軸(32)とを備え、前記三角形軸端部は、先端が外側長手方向末端に向いている、請求項13~15のいずれか1項に記載の埋込可能プレート。
【請求項17】
前記三角形軸端部に、前記プレートを前記関節骨折の周りの前記ゾーンにおける骨の健康な部分に取り付けるための3つのねじ穴(34、35、36)を備える、請求項16に記載の埋込可能プレート。
【請求項18】
互いに対して非平行な向きを含む、いくつかの少なくとも2つのねじ穴、好ましくは少なくとも3つのねじ穴を備え、好ましくは、非平行な向きを有する前記ねじ穴は、前記埋込可能プレートの軸部分に位置決めされる、請求項13~17のいずれか1項に記載の埋込可能プレート。
【請求項19】
患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートのための位置決めガイド装置を得るための方法であって、
i)関節骨折の周りのゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップを含み、好ましくは、前記ゾーンは、本質的に、折損または断裂した骨のすべての断片と、前記骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部とを含み、前記方法はさらに、
ii)前記3D表現内で異なる骨断片を識別するステップと、
iii)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
iv)位置決めガイド装置の最適なパラメータ値を計算するステップと、
v)前記計算されたパラメータ値を考慮に入れて前記位置決めガイド装置を取得するステップとを含み、
それにより、ステップiiiにおいて、前記整復は、前記骨断片の位置および向きを前記患者の健康な関節の3D表現に自動的に適合させることによってシミュレーションされる、方法。
【請求項20】
ステップvは、
va)前記計算されたパラメータ値に基づいて前記位置決めガイド装置を3Dプリントするための命令を構成するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項20に従って前記命令を用いて前記位置決めガイド装置を3Dプリントするステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項19~21のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項23】
1つ以上のねじ穴の位置および/または向きの指示を与えられる、請求項22に記載のガイド装置。
【請求項24】
請求項7~11のいずれか1項に記載の埋込可能プレートと、ねじの組を含む固定システムとを含み、好ましくは、前記組の前記ねじは、前記埋込可能プレートのねじ穴の数を考慮して選択される、医療キット。
【請求項25】
前記ねじの組は、1つ以上のコンプレッションスクリューを含む、請求項24に記載の医療用キット。
【請求項26】
請求項22または23に記載のガイド装置を含む、請求項24または25のいずれか1項に記載の医療キット。
【請求項27】
少なくとも1つ、好ましくはすべての前記コンプレッションスクリューは、ワッシャ、傾斜可能なワッシャを含み、および/またはそれを伴い、前記ワッシャは、好ましくは前記コンプレッションスクリューに適合するように選択される、請求項24~25のいずれか1項に記載の医療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節または関節近傍の骨折を治癒するために使用される埋込可能プレートの技術分野に関する。本発明はまた、そのような埋込可能プレートを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
関節に近い骨折は、治療が困難であることが知られている。関節に近い最も一般的な骨折の1つは、橈骨遠位端の手首の骨折である(ベルギーでは32,000症例/年)。今日、固定形状のインプラントが使用されており、限られた数の異なるサイズのプレートを含む組が、外科医が選択するために利用可能である。典型的には、この組は、種々の長さを有する3つの異なる幅のインプラントから成ってもよい。しかしながら、この選択は、基本的には、患者に最も適合する可能性が高いサイズの選択となる。せいぜい、選択されたプレートが患者の体内にぴったりと適合し、骨折した関節に充分な支持を提供することを望むしかない。
【0003】
固定形状のインプラントを用いる場合、いくつかの問題が生じ、それらは軟組織に摩擦を引き起こす傾向があり、充分な固定選択肢を欠いている。複雑な問題の発生は、患者の36%にまでのぼる。
【0004】
-ハードウェア(HW)故障、例えば、インプラントが曲がるか、または更には破損する;
-例えば、わずかに大きすぎるインプラントまたは骨の自然な湾曲にうまく追従しないインプラントとの腱の摩擦により、腱が断裂する;
-変形治癒。
【0005】
結果として、および3次元(3D)プリント技術の最近の進歩により、患者別仕様のインプラントのまたは患者工学インプラントを設計および製造することができる。例えば、文献WO2014047514A1は、インプラント構成要素の固体自由形状製造の品質、スループットおよび効率を改善するための方法ならびにシステムを開示している。ここでは、関節置換の分野が、「患者別仕様」および「患者工学」インプラントシステムの概念を包含するようになったことが説明される。そのようなシステムでは、インプラント、関連ツール、および手技は、外科手技を受ける患者の個々の解剖学的構造を考慮し、それに適応するように設計または別様に変更される。そのようなシステムは、典型的には、インプラント、手術ツールの設計および/または選択、ならびに外科手技自体の計画をガイドするために、手術前に患者から取得された非侵襲的画像データを利用する。これらのより新しいシステムの様々な目的は、(1)インプラントを収容するために除去される骨の解剖学的構造の量を低減すること、(2)天然関節の機能を再現および/もしくは改善するインプラントを設計/選択すること、(3)インプラントの耐久性および機能的寿命を延ばすこと、(4)外科医の外科的手技を単純化すること、(5)患者の回復時間および/もしくは不快感を低減すること、ならびに/または(6)患者の転帰を改善すること、を含むことができる。「患者別仕様」および「患者工学的」インプラントシステムは、特定の患者からの解剖学的情報を用いて作成されるため、そのようなシステムは、概して、患者が「手術候補」と指定され、非侵襲的撮像を受けた後に作成される。しかし、そのようなシステムは、通常は、(従来のシステムのように)複数のサイズで予め製造および保管されないので、患者の診断と実際の手術との間にはかなりの遅延があり得、その大部分は、患者画像データを用いて、「患者別仕様」および/または「患者工学的」インプラント構成要素を設計ならびに製造するために必要な時間量に起因する。したがって、文献WO2014047514A1は、インプラントを効率的に3Dプリントするための方法を開示している。
【0006】
骨折を治癒するためにインプラントを用いる今日の技術は、治癒する骨に焦点を当てているが、骨折した関節を治癒するように具体的に設計されていない傾向がある。そのような骨折は、多くの異なる骨断片の存在により非常に複雑になる傾向がある。実際、骨折した関節の骨および骨断片が正しい位置に置かれ、その位置で固定され得る方法を明確に見ることは困難であることが多い。本発明は、特に骨折した関節のための、患者別仕様および骨折別仕様のインプラントを提供することによって、この問題および他の問題に対処することを目的とする。
【0007】
文献WO 2017/127887 A1は、カスタマイズされたデバイスのデジタルモデルを生成するための方法およびシステムを開示しており、基礎部分の第1のデジタルファイルをインポートするステップと、目標形状の第2のデジタルファイルをインポートするステップと、基礎部分に関連するソース点位置と目標形状に関連する目標点位置とに基づいてねじりの補間関数を決定するステップと、ねじりの補間関数を前記基礎部分の点に適用して、前記カスタマイズされたデバイスのモデルを生成するステップとを含んでいる。これは、ユーザが、整列された骨折骨に基礎形状を手動で位置付けることを提供する。しかしながら、この文献は、関節骨折の治療に特に関連するものではない。この文献の教示は、骨折した関節のすべての骨断片が適切に整列されることを確実にするように、骨折した関節の整復に対処しないようである。
【0008】
文献J.G.G. Dobbe et al., "Patient-tailored plate for bone fixation and accurate 3D positioning in corrective osteotonomy", Medical and Biological engineering & computing, 第51巻、第1-2号、19~27頁は、変形治癒の場合の患者調整されたプレートに言及している。また、この文献は、変形治癒に関する。変形治癒は、誤った位置合わせで治癒した骨である。したがって、開始点は1つの骨である。しかしながら、本発明は特に骨折した関節に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートを得るための方法に関し、以下のステップを含む。
【0010】
1)関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップを含み、ゾーンは、本質的に、折損または断裂した骨のすべての断片と、骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部とを含み、本方法はさらに、
2)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
3)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
4)埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算するステップと、
5)計算されたパラメータ値を考慮に入れて埋込可能プレートを取得するステップとを含み、
それにより、ステップ3において、整復は、前記骨断片の位置および向きを前記患者の健康な関節の3D表現に自動的に適合させることによってシミュレーションされる。
【0011】
好ましい実施形態では、埋込可能プレートに直接固定される必要があるすべての骨断片は、ステップ2における骨断片の識別に基づいて、および/またはステップ3における整復のシミュレーションに基づいて識別される。
【0012】
好ましい実施形態では、最適なパラメータ値は、
-埋込可能プレートのためのねじ穴の位置の組、
-埋込可能プレートのためのねじ穴の向きの組、および/または
-埋込可能プレートのためのねじ穴の直径の組、を含む。
【0013】
好ましい実施形態では、ねじ穴の位置、向きおよび/または直径の組は、埋込可能プレートに直接固定される必要がある骨断片を固定するように最適化される。
【0014】
好ましい実施形態では、ステップ5は、
5a)計算されたパラメータ値に基づいて、好ましくは3Dプリントによって、埋込可能プレートを製造するための命令を構成するステップを含む。
【0015】
これらの命令は、好ましくは、
iv)位置決めガイド装置の最適なパラメータ値を計算するさらなるステップと、
v)好ましくは3Dプリントによって、計算されたパラメータ値に基づいて位置決めガイド装置を製造するための命令を構成するさらなるステップとを用いて得られる。
【0016】
好ましくは、患者の骨折した関節を治癒するための患者別仕様および骨折別仕様の埋込可能プレートは、好ましくは、ステップ5aで得られた命令を用いて、埋込可能プレートを3Dプリントすることによって製造される。
【0017】
好ましい実施形態では、骨折した関節は、関節内骨折または骨幹端骨折である。
好ましい実施形態では、ステップ2において、関節骨折の周囲のゾーンにおいて少なくとも所定の限界サイズであるサイズを含む本質的にすべての異なる骨断片が識別され、前記限界サイズは、好ましくは最大で3mm、より好ましくは最大で2mm、さらにより好ましくは最大で1mmである。
【0018】
本発明はまた、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートに関し、前記埋込可能プレートは、患者別仕様および骨折別仕様であり、本発明による方法によって得ることができる。
【0019】
好ましい実施形態では、埋込可能プレートは、互いに対して非平行な向きを含む、いくつかの少なくとも2つのねじ穴、好ましくは少なくとも3つのねじ穴を備える。なお、3つ以上のねじ穴の場合、各ねじ穴の向きは、他のすべてのねじ穴と非平行であることが好ましい。これは、ねじおよび/またはねじ穴の方向の力によって埋込可能プレートが容易に緩むことができないことを保証するのに特に有利であり、なぜならば、そのような場合、ねじおよび/またはねじ穴について単一の方向がないからである。これは、少なくとも2つのねじ穴、好ましくは少なくとも3つのねじ穴が埋込可能プレートの軸部分に位置決めされる場合に特に好ましく、ここで軸部分とは、プレートのうち、健康な骨または骨折した関節の骨の健康な部分に直接取り付けられることが意図される部分を指す。例えば、骨折した関節が手首であり、手首の尺骨が折損または断裂している場合、2つ、3つまたはそれ以上のねじ穴を、尺骨の健康な部分に取り付けられる埋込可能プレートの軸部分に、位置決めすることができる。
【0020】
本発明はまた、以下のステップを含む、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートのための位置決めガイド装置を得るための方法に関する。
【0021】
i)関節骨折の周りのゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップを含み、好ましくは、ゾーンは、本質的に、折損または断裂した骨のすべての断片と、骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部とを含み、本方法はさらに、
ii)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
iii)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
iv)位置決めガイド装置の最適なパラメータ値を計算するステップと、
v)計算されたパラメータ値を考慮に入れて埋込可能プレートを取得するステップとを含み、
それにより、ステップiiiにおいて、整復は、骨断片の位置および向きを前記患者の健康な関節の3D表現に自動的に適合させることによってシミュレーションされる。
【0022】
好ましい実施形態では、ステップiv)は、埋込可能プレートまたは埋込可能プレートを製造するための命令を提供することと、前記提供された埋込可能プレートまたは埋込可能プレートを製造するための前記指示を考慮に入れて位置決めガイド装置の最適なパラメータ値を計算することとを含む。これは、埋込可能プレートに特定の最良の位置決めガイド装置を製造することを可能にする。好ましくは、本方法は、位置決めガイド装置上の1つ以上のねじ穴の位置および/または向きの指示を提供するステップを含む。
【0023】
これにより、好ましくは、ステップvは、
va)計算されたパラメータ値に基づいて位置決めガイド装置を製造する、好ましくは3Dプリントするための命令を構成するステップを含む。
【0024】
好ましくは、方法は、命令を用いてガイド装置を製造するステップ、好ましくは3Dプリントするステップを含む。
【0025】
本発明はまた、本明細書に記載の方法に従って得られるガイド装置に関する。好ましくは、ガイド装置は、1つ以上のねじ穴の位置および/または向きの指示を与えられる。より好ましくは、これらの指示は、埋込可能プレートの軸部分におけるねじ穴の指示を含み、軸部分は、ここでは、健康な骨または骨折した関節の骨の健康な部分に直接取り付けられることが意図されるプレートの部分を指す。
【0026】
本発明はまた、本発明による埋込可能プレートと、ねじの組を含む固定システムとを含む医療キットにも関し、好ましくは、組のねじは、埋込可能プレートにおけるねじ穴の数を考慮して選択される。
【0027】
本発明はまた、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートの3次元(3D)プリントのための命令を含むコンピュータプログラム製品にも関し、前記命令は、
-関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップと、
-前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
-前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションし、それによって整復は、前記骨断片を前記患者の健康な関節の3D表現に適合させることによってシミュレーションされるステップと、
-埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算するステップと、
-計算されたパラメータ値に基づいて埋込可能プレートを3Dプリントするための命令を構成するステップとを用いて得られる。
【0028】
本発明はまた、本発明による、好ましくは上記のコンピュータプログラム製品を用いて埋込可能プレートを3Dプリントすることによって、患者の骨折した関節を治癒するための患者別仕様および骨折別仕様の埋込可能プレートを製造するための方法、ならびに、このようにして得られた、患者の骨折した関節を治癒するための患者別仕様および骨折別仕様の埋込可能プレートに関する。
【0029】
本方法はまた、本発明による埋込可能プレートを位置決めするための位置決めガイド装置、および本発明によるコンピュータプログラム製品を用いてガイド装置を3Dプリントすることによってそのようなガイド装置を製造する方法に関する。
【0030】
そこで、本発明は、好ましくは人工知能(AI)アルゴリズムおよび3次元(3D)プリント技術を用いて実施される画像処理技術を発明的に組み合わせる。
【0031】
本発明によれば、埋込可能プレートを製造する1つの方法は、本発明による患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートの3次元(3D)プリントのための命令を含むコンピュータプログラム製品を得るステップと、前記コンピュータプログラム製品を用いて埋込可能プレートを製造するステップとを含む。
【0032】
上記の方法は、外科医が手術前に3D画像と対話すること、整復予測を得ること、設計を微調整すること、ねじの方向を事前に製造すること、好ましくはねじの方向を事前にプリントすることによって製造すること、および個人向けにされた手術補助を有することを可能にする。本方法は、自動CT分析、骨折断片認識および整復のための予測モデル、埋込可能プレートの製造における最適な材料/強度比の実現、ならびに多くのさらなる利益の使用を通して実現することができる。
【0033】
好ましい実施形態では、埋込可能プレートは、生分解性合成ポリマーなどの生分解性材料を含み、より好ましくは生分解性材料から一体的に作製される。これは、ハードウェア(HW)除去の省略を可能にし、したがって、外科的プレート除去手技の必要性を排除する。代替的または追加的に、埋込可能プレートは、チタンまたはステンレス鋼などの金属を含み、より好ましくは、その金属から一体的に作製される。
【0034】
好ましい実施形態では、埋込可能プレートは、単一の材料から一体的に作製される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートを、以下により、得ることを可能にする。
【0037】
1)関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップであって、ゾーンは、本質的に、折損または断裂した骨のすべての断片と、骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部とを含むステップと、
2)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
3)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
4)埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算するステップと、
5)計算されたパラメータ値を考慮に入れて埋込可能プレートを取得するステップとにより得られ、
それにより、ステップ3において、整復は、前記骨断片の位置および向きを前記患者の健康な関節の3D表現に自動的に適合させることによってシミュレーションされる。
【0038】
好ましい実施形態では、ステップ5は、
5a)計算されたパラメータ値に基づいて埋込可能プレートを製造するための、好ましくは3Dプリントするための命令を構成するステップを含む。
【0039】
これは、好ましくは3Dプリントによってプレートを製造するための前記命令を含むコンピュータプログラム製品を得ることを可能にする。
【0040】
したがって、本発明は、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートの、好ましくは3次元(3D)プリントによる製造のための命令を含むコンピュータプログラム製品をまず得ることによって、埋込可能プレートの製造を可能にし、前記命令は、以下のステップを用いて得られる。
【0041】
1)関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップと、
2)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
3)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
4)埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算するステップと、
5)計算されたパラメータ値に基づいて、好ましくは3Dプリントによって、埋込可能プレートを製造するための命令を構成するステップとを用い、
それにより、ステップ3において、整復は、前記骨断片を前記患者の健康な関節の3D表現に適合させることによってシミュレーションされる。
【0042】
次いで、埋込可能プレートは、好ましくは3Dプリントによって、命令を含むコンピュータプログラム製品を用いて、好ましくは製造することができる。
【0043】
コンピュータプログラム製品における、製造、好ましくは3Dプリントのための指示は、好ましくは埋込可能プレートの3D表現を含んでもよい。
【0044】
コンピュータプログラム製品における、製造、好ましくは3Dプリントのための命令は、好ましくは、埋込可能プレートの製造、好ましくは3Dプリントに使用される材料に関する材料パラメータの組を含んでもよい。
【0045】
好ましい実施形態では、3Dプリントのための命令は、埋込可能プレートを3Dプリントするために、3Dプリンタまたは3Dプリンタソフトウェアを操作するための直接命令を含む。しかしながら、3Dプリントのための命令は、埋込可能プレートを3Dプリントするために、さらなるユーザまたはコンピュータ製品が3Dプリンタまたは3Dプリンタソフトウェアを操作するための直接命令を構成することを可能にする情報に限定されてもよい。
【0046】
埋込可能プレートを得るための方法のいくつかの実施形態は、
-積層造形とも呼ばれる3Dプリント;
-制御されたロボット曲げ加工;
-機械フライス加工;
-成形、例えば射出成形、のいずれかまたは任意の組み合わせを含む。
【0047】
これにより、製造方法は、使用される必要がある材料の種類などの、所定の仕様に依存し得る。
【0048】
我々は、文献WO 2017/127887 A1は、カスタマイズされたデバイスのデジタルモデルを生成するための多数の可能性を記載しているが、骨折した関節を治癒するためのインプラントの製造を可能にするために辿る明確かつ曖昧でない一連のステップを開示していないことに注目する。骨折した関節は、より多数の骨および骨断片、ならびに関節の正常な機能を可能にするそれらの位置に起因して、他の骨折よりも整復することがより困難である。本発明者らは、良好な整復シミュレーションを保証するために、折損または断裂した骨のすべての必須の断片および骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部を組み込む必要があると洞察する。さらに、この文献は、骨断片のシミュレーションされた整復を考慮に入れて、ねじ穴の位置および向きなどの特定のパラメータを適合させることに言及していない。
【0049】
本発明は、典型的には、粉砕骨折、骨断片の埋伏、および骨量減少を伴う、関節の近傍もしくは関節内における関節内または骨幹端骨折片の自動識別および整復に関する。これは、変形治癒の場合には必要ではないことに留意されたい。埋込可能プレートのための最適なパラメータ値の計算、および例えば、好ましくは3Dプリントによる製造のための指示は、骨幹端骨折症例においても異なり、なぜならば、重要な骨折断片を支持する必要があり、それは骨折症例ごとに異なり得るからである。したがって、最適なねじの位置および方向は、骨折パターンに基づいて決定される必要がある。これは、変形治癒の症例では問題ではなく、なぜならば、骨切り術切断が計画され制御されるからである。したがって、これらの骨幹端骨折における出発点は、複数の骨断片である。変形治癒および骨折骨は、完全に異なる手法を必要とする。
【0050】
ここで、ステップについて概説し、より詳細に論じる。
ステップ1:関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供する
好ましい実施形態において、ステップ1は、
a)骨折の周囲のゾーンの骨構造の医療画像を提供するステップと、
b)前記医療画像に基づいて、関節骨折の周囲の骨構造の3次元(3D)表現を再構築するステップとを含む。
【0051】
これにより、医療画像は、好ましくはX線写真またはX線断層撮影法を用いて、より好ましくはCTスキャンを用いて、得られる。X線に基づく医療画像は、骨構造を画像化するのに非常に適している。
【0052】
好ましい実施形態では、医療画像はDICOM規格で提供される。
ステップbの実行に注目すると、ステップaにおける医療画像は、骨折の周囲のゾーンの少なくとも部分的な3次元再建を可能にするように提供される。
【0053】
骨折部の周りのゾーンは、好ましくは、折損または断裂した骨のすべての断片、および骨折した関節の一部を形成する非骨折骨の少なくとも端部を含む。
【0054】
骨構造の3D表現の再構築は、医療画像の分析を含んでもよい。このステップbを考慮すると、ステップaで提供される医療画像は、そのような3D再構築を可能にすべきである。
【0055】
好ましい実施形態では、骨構造の3D表現を再構築することは、前記骨構造の骨の表面を再建することを含む。
【0056】
ステップ2:前記3D表現内において異なる骨断片を識別する
骨折した関節の周りのゾーンにおける骨構造の3D表現内において異なる骨断片を識別するために、いくつかの異なる技法が存在する。
【0057】
好ましい実施形態では、骨断片は、骨折した関節のCT画像に基づいて骨断片をセグメント化することによって識別される。
【0058】
骨断片のセグメント化のための例示的な技法として、我々は、3Dコンピュータ断層撮影法(CT)を用いて撮像された骨断片をセグメント化するための方法を提示する、Computerized Medical Imaging and Graphics 66にて2018年2月に公開されたWaseem Shadid et alによる"Bone Fragment Segmentation From 3D CT Imagery"を参照する。既存の画像セグメント化策は、多くの場合、類似の外見を有する隣接する軟組織から内部骨梁および海綿質骨組織をセグメント化するときに精度を欠き、多くの場合、別個の断片に関連付けられる領域を合併する。これらの問題は、下流の視覚化および術前計画用途において問題を生じさせ、仮想骨折再建などの高度な画像ベースの分析方法の開発を妨げる。提案されたセグメント化アルゴリズムは、確率論的Watershed変換(PWT)と呼ばれる、Watershed変換の、確率に基づく変形を用いる。PWTは、所与の画素が骨断片のうちの1つからの測定値である尤度をモデル化する、1つが各骨断片に対する確率分布の組を用いる。提案される尤度分布は、CT画像内の骨断片のための競合セグメント化方法における公知の欠点を改善する。骨セグメント化結果の定量的評価が提供され、我々のセグメント化結果をいくつかの主要な競合方法および人間により生成されたセグメント化と比較する。この論文は、概して骨断片に関し、特に骨折した関節の骨断片に関するものではないことに留意されたい。この技術は、それにもかかわらず、本発明の好ましい実施形態において使用されてもよいことは、本発明者の洞察である。
【0059】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの骨断片が識別され、より好ましくは、少なくとも3つの骨断片、例えば3,4,5,6,7,8,9または10の骨断片が識別される。関節の骨折は非常に複雑であり得るので、可能な限り多くの骨断片、好ましくは関節の骨折の周りのゾーンにおけるすべての骨断片を識別することが重要である。
【0060】
ステップ3:前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションする
整復は、骨折の骨断片を再整列させる手順である。骨が骨折すると、断片は、変位または角形成の形で、それらの整列を失う。骨折した骨がいかなる変形も伴わずに治癒するためには、骨断片は、それらの正常な解剖学的位置に再整列されなければならない。整形外科手術は、変位の低減によって、骨折した骨の正常な解剖学的構造を再現しようとする。本発明では、まず、骨折した関節の骨の整復をシミュレーションする。実際の整復の前の整復のシミュレーションは、外科医が手術をより良く準備することを可能にする。さらに、本発明において、シミュレーションは、埋込可能プレートのパラメータを計算することを可能にする。
【0061】
3D骨断片整復の例示的な方法は、"Virtual 3D bone fracture reconstruction via inter-fragmentary surface alignment", Beibei Zhou et al., 2009年発行、IEEE 12th International Conference on Computer Vision Workshops, ICCV Workshopsにおいて提供されている。この論文は、粉砕骨折の仮想再建のためのシステムを提示する。このシステムは、典型的にはCTデータからセグメント化された、表面メッシュとして表される骨断片モデルの集合を入力として受け取る。ユーザは、仮想環境において断片モデルと対話して、骨折を再建する。完全に自動的または完全に対話的である他の手法とは対照的に、このシステムは、対話と自動化との間のバランスを取ることを試みる。2つの重要な骨折再建対話、つまり、(1)断片対間のマッチング表面領域を特定すること、および(2)対単位および大局的断片整列最適化を開始すること、がある。各マッチは、再建において対応すると仮定された2つの断片表面パッチを含む。ユーザによって初期化される各整列最適化は、(1)特定されたマッチおよび(2)フラグメントの現在の位置を入力として取る3D表面位置合わせをトリガする。提案されるシステムは、ユーザ対話を介してドメイン知識を活用し、表面位置合わせにおける最近の進歩を組み込んで、手動方法よりも正確であり、完全な自動方法よりも信頼性が高い断片再建を生成する。
【0062】
しかしながら、本明細書で論じられる先行技術の方法は、関節骨折に特に関連しておらず、さらには、部分的に手動であり部分的に自動化された整復ステップに関する。この方法の1つの主な欠点は、この技術が、良好な整復シミュレーションを得るために外科医の経験および能力に大きく依存することである。そして、たとえ外科医に経験があり、非常に能力があるとしても、良好な整復は困難なままである。したがって、本発明者は、前記骨断片を前記患者の健康な関節の3D表現に適合することによって整復をシミュレーションする場合に、整復シミュレーションの品質を劇的に改善することができ、完全またはほぼ完全に自動化することができることを見出した。
【0063】
これにより、前記患者の健康な関節の3D表現を、いくつかの方法で得ることができる。
【0064】
第1に、既に以前の医療検査から、患者の健康な関節のそのような3D表現を再構築することを可能にする医療画像のそのような3D表現を有することができる。これは、利用可能な場合、好ましい選択肢であり得る。
【0065】
利用可能でない場合、患者の健康な関節の3D表現は、好ましくは、骨折した関節の対側の関節の医療画像に基づくことができる。対側の関節は、98%まで、またはそれ以上、互いの鏡像反転と一致することが見出されている。したがって、本発明において、対側の関節の鏡像反転およびその3D表現を用いることは、大きな利点を提供する:
-対側の関節も過去に骨折していなければ、それは常に利用可能である;
-健康な対側の関節の3D表現は、対側の関節の周りのゾーン内の骨構造の医療画像を取得することによって得ることができる。これらの医療画像は、好ましくは、骨折した関節の周りのゾーンにおける骨構造の医療画像と同じ態様で、および/または同時もしくはほぼ同時に取得される。これは、画像を取得する際の系統的誤差が低減され得るため、より良好な比較を可能にする;
-健康な対側の関節の医療画像を、その3D表現を得るために用いることは、画像処理ステップを伴わずに、またはわずかな画像処理ステップを伴って、直接比較を可能にする。
【0066】
場合によっては、健康な関節または健康な対側の関節の3D表現は入手可能ではない。そのような場合、本発明の好ましい実施形態では、患者の健康な関節の3D表現は、前記骨断片の形状外挿に基づく。形状外挿は、関節の形状が以下から外挿される技術を指す:
-前記骨折した関節の骨断片の無傷の部分の形状およびサイズ。これにより、骨断片は、典型的には、例えば3D表現上または直接医療画像上に明らかに無傷の部分を示すことができ、これから、完全な無傷の骨を、特に完全なサイズおよび/もしくは完全な形状に関して外挿することができる。場合によっては、そのような外挿は、患者の年齢、サイズ、および/もしくは体重等のいくつかの他のパラメータを考慮に入れて行うことができる。骨の異なる部分間に相関が存在し、それはそのような再建を可能にし、ならびに/または、
-縁部付近の骨断片を外挿することによって識別された骨断片。これは、例えば、縁部の位置、縁部もしくはその付近の勾配、および/もしくは骨断片の縁部もしくはその付近の曲率を取得および/もしくは計算し、これらを他の識別された骨断片の同じ量の縁部と比較することによって、行うことができる。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、ステップ3は、下記の組み合わせを介して得られた前記患者の健康な関節の3D表現を再構築することを含む:
-例えば、以前の医療検査中において以前に得られた患者の健康な関節の3D表現;
-骨折した関節に対する対側の関節の医療画像に基づく、患者の健康な関節の3D表現、および/または、
-骨断片の形状外挿に基づく患者の健康な関節の3D表現。
【0068】
ステップ4:埋込可能プレートの最適なパラメータ値を計算する
好ましい実施形態では、ステップ4は、以下のステップのいずれかまたは任意の組み合わせを含む:
c)前記骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートのためのテンプレートの組から、あるテンプレートプレートを選択するステップであって、好ましくは、前記選択されたテンプレートプレートのための最適なパラメータを計算するステップと組み合わされるステップと;
d)最適なプレート厚または最適なプレート厚プロファイルを計算するステップと;
e)埋込可能プレートのための材料の組から、ある材料を選択するステップとを含み;
ステップcにおいて、テンプレートの組のテンプレートは、特定の関節の治癒に特に適しており、例えば、テンプレートの組は、特に手首の骨折を治癒するために提供される。その場合に行うことができる選択は、好ましくは、テンプレートの形状に基づいて選択することを含む。代替的または追加的に、この選択はまた、テンプレートプレートにおけるねじ穴の数、ねじ穴の位置および/またはねじ穴の向きに基づいて行われてもよい。さらに、あるテンプレートプレートが選択される場合、本方法は、好ましくは、本明細書に開示される位置決めガイド装置の製造方法に従って、位置決めガイド装置を製造するステップを含むことが好ましい。
【0069】
パラメータ値は、それらが、関節骨折の周りのゾーンにおいて必須の骨および骨断片の固定を、好ましくは最小限の材料で、特に好ましくは最小限の固定ねじで可能にする場合、最適である。任意選択で、最適値は、事前に課された制限の組を考慮に入れて計算される。そのような制限は、使用される材料の種類に対する制限であってもよく、例えば、好ましくは、埋込可能プレートを3Dプリントするために用いることができる生分解性ポリマーである必要があってもよいが、最小および最大厚み、幅、長さに対する制限の形態下にあってもよい。制限はまた、最適なテンプレートプレートを選択することができるテンプレートプレートの別個の組の形態にあってもよく、それは、その場合、任意選択で例えば、ねじ穴を、選択されたテンプレートにおいて、最適な位置、最適な向き、および/または最適な直径で穿孔することによって、さらに微調整することができる。
【0070】
どのパラメータ値が最適化され得るかは、選択されるテンプレートに依存してもよい。テンプレートを選択するとき、むしろ、特定の条件を課すことができるが、他のパラメータは、各テンプレートに対して指定することもできる範囲内で変動することができる。そのような可変パラメータは、典型的には、ねじ穴の位置、プレートの各部分の長さ、幅、および/または厚み等を指す。好ましい実施形態では、本発明の方法は、前記骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートのためのテンプレートの組からあるテンプレートプレートを選択するステップcを、前記選択されたテンプレートプレートをカスタマイズする追加のステップとともに含む。前記カスタマイズは、計算された最適パラメータ値に、より良好に適合させるために、追加のねじ穴の穿孔、1つ以上のねじ穴の直径の増加、ねじ穴方向の変更、ならびに/またはテンプレートプレートの形状および/もしくはサイズの変更を含んでもよい。
【0071】
これらのパラメータを自動的に最適化するために、例えば、いくつかの可能性が存在する:
-いくつかの最小または最大条件を、例えば、ねじり抵抗、破壊強度、長さ、幅などに関して課すことができる;
-1つ以上の連続的または離散的な加重関数を用いて、例えばプレートの縁に対するねじ穴の位置または下にある骨断片の厚みについて、パラメータの値に利を与えるかまたはペナルティを課すことができる;
-患者の病歴、例えば以前の骨粗鬆症の診断は、より大きなサイズのねじ、したがってより大きなサイズのねじ穴に至る場合がある、
または上記の任意の組み合わせである。次いで、所望の結果に基づいて最適化を自動的に実行することができる。この最適化手順は、例えば、外科医のフィードバックに基づくことができる自己学習アルゴリズムを介して、多数の外科医の過去の専門知識を考慮に入れることができる。これにより、外科医が本発明を用いずにプレートを選択する必要がある場合にそうであるように、単に外科医の個々の専門知識だけが使用されるのではない。
【0072】
埋込可能プレートは、関節骨折の周りのゾーンにおいて本質的にすべての骨断片の固定を可能にする必要があり、したがって、最適化は、好ましくは、プレートが埋め込まれるときに、折損または断裂した骨のすべての断片および骨折した関節の一部を形成する骨折していない骨の少なくとも端部が固定されることを意味する。好ましくは、関節骨折の周囲のゾーンにおいて少なくとも所定の限界サイズのサイズを含む本質的にすべての異なる骨断片が識別され、前記限界サイズは、好ましくは最大で3mm、より好ましくは最大で2mm、さらにより好ましくは最大で1mmである。
【0073】
最適化は、好ましくは予め定義された特定の量に基づいて、パラメータ値に報酬を与える、および/またはペナルティを課すことを含む。最適化プロセスにおいて報酬を受けることができる量は、好ましくは以下の通りである:
-大きい骨および/もしくは重要な骨または骨断片に配置されるねじは、小さい重要でない骨または骨断片におけるねじとは対照的に、報酬を受ける;
-骨断片間の直接接触面積は、骨断片が良好にともに嵌合される、良好な整復シミュレーションを示し得るため、報酬が与えられてもよい;
-シミュレーションされた整復の安定性、例えばパラメータ値がわずかに変化した場合、それがプレートと骨断片との間の平均距離をどれだけ変化させるか。それがあまり変化しない場合、シミュレーションされた整復は、追加的に報酬を与えられることができる。これは、製造プロセス、例えば3Dプリントまたはフライス加工が小さな偏差をもたらすことが知られている場合に、特に好ましい。
【0074】
ペナルティを課される量は、好ましくは以下の通りである:
-プレート、骨および/または骨折した関節の骨断片の間の相対変位。そのような相対変位は、例えば、プレート、骨断片および骨の間における体積ならびに/または骨断片、骨および/もしくはプレートの非接触表面積を考慮に入れることによって定量化され得る。これはまた、骨断片とプレートとの間および/または異なる隣接骨断片間の平均距離によって定量化されてもよい。変位は、この文脈では「移動度」とも呼ばれ得る。これにより、基本的に、微動にペナルティを課すことができる。
【0075】
埋込可能プレート、特に選択されたテンプレートプレートの最適化可能なパラメータは、好ましくは、以下のいずれかまたは任意の組み合わせを含む:
-絶対幅、絶対長さ、絶対厚みなどの絶対サイズ、または絶対幅プロファイル、絶対長さプロファイル、絶対厚みプロファイル;
-相対サイズ、または長さ/幅比などのサイズ比;
-ねじ穴の数;
-1つ以上のねじ穴の位置;
-1つ以上のねじ穴のサイズ;
-1つ以上のねじ穴の向き
-1つ以上のねじの長さおよび厚みなどのタイプならびにサイズ。
【0076】
ステップdにおいて、最適なプレート厚または最適なプレート厚プロファイルは、過度の曲げ、断裂または折損に対して埋込可能プレートに充分な強度を依然として提供しながら厚みを最小限にするために計算することができる。これは、埋込可能プレートのために選択される材料、すなわちステップd)およびe)に依存してもよく、または好ましくは組み合わされてもよいことに留意されたい。最適な厚みまたは厚みプロファイルは、絶対サイズおよび/または相対サイズ、例えば、埋込可能プレートの長さおよび幅等の他のプレートパラメータにも依存してもよいので、ステップdは、好ましくは、ステップcと組み合わせられる。
【0077】
ステップ4は、自動的に、または外科医もしくは他の専門医療スタッフの選択によって、または両方の組み合わせによって行われてもよいことに留意されたい。例えば、外科医は、ねじ穴の数を選択する場合があるが、ねじ穴の位置決めおよびその向きも、例えば軟骨下骨支持を最大化することによって自動的に計算されてもよい。
【0078】
ステップ5:計算されたパラメータ値に基づいて埋込可能プレートを3Dプリントするための命令を構成する
上で論じたように、コンピュータプログラム製品における3Dプリントのための命令は、好ましくは、埋込可能プレートの3D表現を含んでもよい。
【0079】
コンピュータプログラム製品における3Dプリントのための命令は、好ましくは、埋込可能プレートの3Dプリントのために使用される材料に関する材料パラメータの組を含んでもよい。
【0080】
好ましい実施形態では、3Dプリントのための命令は、埋込可能プレートを3Dプリントするために、3Dプリンタまたは3Dプリンタソフトウェアを操作するための直接命令を含む。しかしながら、3Dプリントのための命令は、埋込可能プレートを3Dプリントするために、さらなるユーザまたはコンピュータ製品が3Dプリンタまたは3Dプリンタソフトウェアを操作するための直接命令を構成することを可能にする情報に限定されてもよい。
【0081】
例えば、ウェブwww.wohlersassociates.com; Pham and Dimov, Rapid manufacturing, Springer- Verlag, 2001 (ISBN 1 -85233-360-X); Grenda, Printing the Futureから入手可能である、Wohlers Report 2009, State of the Industry Annual Worldwide Progress Report on Additive Manufacturing, Wohlers Associates, 2009 (ISBN 0-9754429-5-3)に記載されているように、インプラントおよびツールを製造するのに適切な様々な技術が当技術分野で公知である。The 3D Printing and Rapid Prototyping Source Book, Castle Island Co., 2009; Virtual Prototyping & Bio Manufacturing in Medical Applications, Bidanda and Bartolo (Eds.), Springer, December 17, 2007 (ISBN: 10: 0387334297; 13: 978- 0387334295); Bio-Materials and Prototyping Applications in Medicine, Bartolo and Bidanda (Eds.), Springer, December 10, 2007 (ISBN: 10: 0387476822; 13: 978- 0387476827); Liou, Rapid Prototyping and Engineering Applications: A Toolbox for Prototype Development. CRC, September 26, 2007 (ISBN: 10: 0849334098; 13: 978-0849334092); Advanced Manufacturing Technology for Medical Applications: Reverse Engineering, Software Conversion and Rapid Prototyping, Gibson (Ed.), Wiley, January 2006 (ISBN: 10: 0470016884; 13: 978-0470016886); and Branner et al, "Coupled Field Simulation in Additive Layer Manufacturing," 3rd International Conference PMI, 2008 (10 pages).
固体自由形状製造(SFF)は、製品開発および製造に革命をもたらした新興技術の群を含む。これらの技術によって共有される共通の特徴は、コンピュータ生成モデルから、直接、自由形状の複雑な幾何学的構成要素を生成する能力である。SFFプロセスは、一般に、選択された領域における層単位材料付加の概念に依拠する。コンピュータ生成モデルは、複製を作成するための基礎として役立つ。モデルは、数学的にスライスされ、各スライスは、完全な物体を構築するために、選択された材料において再作成される。典型的なSFFマシンは、機械、化学、電気、材料、およびコンピュータエンジニアリング科学の収束を表す、小型化された「製造プラント」に似得る。患者別仕様および/または患者工学的インプラントは、3次元プリント技術(固体自由形状製造または「SFF」としても知られる)を用いて製造され、電子またはコンピュータ化されたデータファイル(例えば、CADファイルまたはSTLファイル)から固体の物理的インプラント構成要素を作成することができる。選択的レーザ焼結(SLS)、EBM(電子ビーム溶融)および選択的レーザ溶融(直接金属レーザ焼結-DMLS-またはLaserCusingとしても知られるSLM)などの3Dプリント技術は、生体適合性がありインプラント構成要素として直接供することができる耐久性のある金属物体の作成を可能にすることができる。
【0082】
外科医は、依然として、結果として生じる埋込可能プレートをチェックする必要があるため、ステップ5は、好ましくは、指示を手動で変更するステップを含む。これは、外科医が自身の個人的な経験を用いることを可能にする。明らかに、外科医は、プレートを埋め込まなければならず、以前のプレートが埋め込まれるという経験を有する人であるので、プレートをプリントする前に特定の変更を行うことを望む場合がある。
【0083】
本発明はまた、患者の骨折した関節を治癒するための埋込可能プレートのための位置決めガイド装置を3Dプリントするためのコンピュータプログラム製品に関する。
【0084】
位置決めガイド装置は、外科医が手術中に埋込可能プレートを正確に位置決めするのに役立つ。関節が骨折し、骨断片がインビボで整復される必要があるとき、外科医にとって、骨断片が正確に適合するガイド装置を有することは有用であり、すなわちガイド装置は1つ以上の骨断片にぴったりと適合するように作られ、したがって外科医はガイド装置を前記1つ以上の骨断片上に容易に位置決めすることができる。骨断片上に適合されると、ガイド装置は、例えば軸ねじなどの固定ねじの位置を示し、それによって外科医が1つ以上の骨断片に穴を正確に事前穿孔することを可能にする。したがって、ガイド装置は、好ましくは、1つ以上のねじ穴の位置および/または向きの指示を与えられてもよい。これは、外科医が骨断片上に穴を事前に穿孔することを可能にし、その結果、骨および/または整復された骨断片の無傷部分への埋込可能プレートのより良好な位置決めならびにより良好な固定をもたらす。
【0085】
位置決めガイド装置を3Dプリントするためのコンピュータプログラム製品は、
i)関節骨折の周囲のゾーンにおいて骨構造の3D表現を提供するステップと、
ii)前記3D表現内において異なる骨断片を識別するステップと、
iii)前記骨断片の完全な関節への整復をシミュレーションするステップと、
iv)位置決めガイド装置の最適なパラメータ値を計算するステップと、
v)計算されたパラメータ値に基づいて位置決めガイド装置を3Dプリントするための命令を構成するステップとによって得ることができ、
それにより、ステップ3において、前記骨断片を前記患者の健康な関節の3D表現にフィッティングすることによって、整復がシミュレーションされる。
【0086】
明らかに、位置決めガイド装置を3Dプリントするためのコンピュータプログラム製品を得るために必要なステップi~iiiは、本発明による埋込可能プレートを3Dプリントするためのコンピュータプログラム製品を得るためのステップ1~3と同じであり、ステップiv~vは、ステップ4~5と非常に類似している。
【0087】
したがって、本発明はまた、位置決めガイド装置を3Dプリントするためのコンピュータプログラム製品と埋込可能プレートを3Dプリントするためのコンピュータプログラム製品とを組み合わせたコンピュータプログラム製品に関し、それにより、ステップ1~5およびiv~vが実行される。
【0088】
好ましい実施形態では、プレート用、ガイド装置用、または両方用のコンピュータプログラム製品は、STLファイルを含む。STLは、「Standard Triangle Language」および「Standard Tessellation Language」とも呼ばれるStereoLithography File Format Family(光造形法ファイルフォーマットファミリー)を指す。STLファイルフォーマットは、オブジェクトの表面を三角形メッシュとして、すなわち三角形ファセットでの3次元表面の表現として記述するための公開文書フォーマットである。
【0089】
先行技術の整復技術は、典型的には、3つの異なる幅および複数の異なる長さのプレートと、異なる位置に多数のねじ穴とを備え、ねじのための最大15°の広範囲の向きを可能にする、埋込可能プレートの組を採用する。形状および異なるサイズは固定される。そのような標準的な形状のプレートの使用は、ハードウェアの故障、変形治癒または腱の断裂のために、患者の約36%に合併症をもたらす。これらのケースのうち、50%では、約1年以内にハードウェアを取り外す必要がある。ある59歳の男性患者は、左手首に橈骨遠位端粉砕骨折を有する。橈骨遠位端骨折は、熟練した外科医によって、プレートのうちの1つおよび固定ねじを用いて固定される。手術の4週間後、変位した断片がX線画像において観察される。この変位は、骨折の安定性のために重要な骨断片に固定ねじを購入しないことに起因した。これは、本発明に従って、患者別仕様の、骨折別仕様の埋込可能プレートを用いることによって防止され得たであろうことは、明らかである。本発明は、プレートを患者の骨構造に特注のサイズにすること、およびねじ穴をプレートにおいて重要な骨断片に対応する位置に最大で5°以内のねじの向きで有することを可能にしたであろう。
【0090】
以下のような、より難しい骨折は、本発明からさらに利益を得ることができる。
-関節内粉砕骨折のような、OTA/AO分類タイプ23B/C。
【0091】
-整復が最も困難で、固定するのが困難である、掌側および背側尺骨端。しばしば、粗推定が行われ、および/または盲目固定(blind fixation)が行われる。
【0092】
上記骨折は、手首骨折であるが、本発明は、典型的には、あらゆる種類の関節骨折、好ましくは、対側の対応物を有する関節の関節骨折に適用することができる。
【0093】
本発明を用いる治療は、以下の線に沿って進んでもよい。
患者は左手首骨折を有する。CTスキャンは、骨折した関節(左手首)および健康な対側の関節(右手首)の両方で行われ、両方の手首のDICOMデータをもたらす。CTスキャンは、骨折した関節のための骨断片の3D表現の再構築、および健康な関節のための骨断片の3D表現の再構築を可能にする。骨断片は、骨折した関節の3D表現のセグメント化によって識別される。セグメント化を
図1に示す。
【0094】
図2は、整復された骨断片を示す。これにより、骨断片は、健康な手首の3D表現の鏡像反転に最もよく似るように再位置決めされ、回転される。このプロセスは、健康な関節の3D表現を基準として用いるフィッティングアルゴリズムを用いて骨断片の位置および向きについての最良適合が見出されるという意味で自動化される。
【0095】
テンプレート埋込可能プレートが選択される。この場合、テンプレートプレートは、細長い軸(10)および拡幅端(11)を有するT字形状のプレートである。選択されたテンプレートのパラメータは以下の通りである(
図3参照):
-軸(10)の長さ(12)
-軸(10)の最大幅(13)
-拡幅端(11)の長さ(14)
-拡幅端(11)の最大幅(15)
-プレート最大厚み
-軸内のねじ穴の数。
図2は、軸に最大5つのねじ穴を有するテンプレートプレートを示すが、本発明の方法は、例えば、2つのねじ穴のみを用いるかまたは保持する必要があることを示してもよい。
【0096】
-拡幅端のねじ穴の数。
図2は、最大8のテンプレートプレートを示すが、現在の方法では、1つのねじ穴のみが使用または保持されることになる。
【0097】
-軸と拡幅端との間の角度(α)
-保持されることになるねじ穴の向き。
【0098】
パラメータが分かると、埋込可能プレートの3次元(3D)プリントのための命令を含むコンピュータプログラム製品を構成することができる。
【0099】
また、橈骨遠位端上へのプレートの位置決めを案内するための位置決めガイド装置(20)を製造することができる。このガイド装置は、
図4の左側に示されており、これは、ガイドが橈骨遠位体上に位置決めされるのを示す。ガイド装置は、橈骨体上へのガイド装置の正しい位置決めを可能にする側方位置決め部分(21、22)と遠位位置決め部分(26)とを備える。これにより、側方位置決め部分(21、22)は骨幹の特定の部分に適合し、遠位位置決め部分(26)は骨折線(25)上の骨の部分に適合し、これは好ましくは明確な凹部または突出部など、容易に識別可能である。正しく位置決めされると、ガイド装置(23、24)のねじ穴は、橈骨体の穿孔穴がどこに位置する必要があるか、および穿孔穴をどのように向き付ける必要があるかを示す。これらの穿孔穴は、埋込可能プレートの軸を橈骨体に固定するために、2つの固定ねじのために使用される(
図4b)。
【0100】
好ましい実施形態では、埋込可能プレートは、広がった遠位端(31)と、近位軸端部(33)と、広がった遠位端(31)を長手方向に沿って近位軸端部(33)と接続する軸(32)とを備える。そのような実施形態による、2つの類似するがわずかに異なる埋込可能プレートが、
図5および
図6に示されている。
【0101】
好ましい実施形態では、埋込可能プレートの近位軸端部は、3つ、好ましくは3つ以下のねじ穴(34、35、36)を備える。3つのねじ穴は、好ましくは三角形の構成に位置する。したがって、近位軸端部(33)は、好ましくは、使用される材料の量を制限しながら、ねじ穴の三角形構成を可能にするために、三角形形状を備えてもよい。これは
図5に示されており、近位軸端部は三角形の形状を有する。好ましい実施形態では、3つのねじ穴は、三角形の先端が埋込可能プレートの外側長手方向末端に向かって向き付けられた三角形構成に配置される。したがって、近位軸端部が三角形形状を含む場合、前記近位軸端部は、三角形の先端が外側長手方向末端にあるように向き付けられる。
【0102】
図6に示す埋込可能プレートは、
図5に示すものと同様である。主な違いは、
図6では三角形形状ではない近位軸端部の形状と、3つのねじ穴の位置にある。したがって、本発明による埋込可能プレートの別の好ましい実施形態では、
図6に示すように、近位軸端部は、3つ、好ましくは3つ以下のねじ穴(44、45、46)を備える。3つのねじ穴は、好ましくは三角形の構成に位置する。これにより、好ましくは、3つのねじ穴は、三角形の先端が軸(32)の方に向けられた状態で三角形構成に配置される。そのような埋込可能プレートは、骨幹上に、より良好かつより安定して固定され得るため、好ましい場合がある。この好ましい実施形態では、近位軸端部(43)は、好ましくは、長手方向(L)に沿って本質的に一定の幅を含む形状を含んでもよい。
【0103】
本発明による埋込可能プレートの特に好ましい実施形態では、ねじ穴は、非平行なねじ方向を含む。ねじ方向は、ねじがねじ穴に挿入されるときにねじが移動する方向に関し、埋込可能プレートを通るねじ穴の方向によって少なくとも部分的に決定することができる。好ましくは、本発明において、ねじ穴、より好ましくはすべてのねじ穴のねじ方向は、7°未満、より好ましくは6°未満、さらにより好ましくは5°未満の角度までに決定される。より大きな角度変動は、実際の手術中に外科医がねじの方向を適合させる可能性をより高くするので、先行技術は、ねじの方向がこれより大きい角度にわたって変動することを可能にすることに留意されたい。しかしながら、ねじ方向の変動が大きくなると、固定が悪化する傾向がある。しかしながら、本発明では、術前計画は、先行技術よりもはるかに良好に行われ、それによって、ねじ方向の変動を小さく保つことを可能にする。外科医は、実際の手術中にねじの方向を変えることを好むか、またはそうするいくらかの可能性を有することを必要としさえする傾向があるので、好ましい実施形態では、ねじ穴のねじ方向、より好ましくはすべてのねじ穴のねじ方向は、1°を超える角度;好ましくは、2°超、例えば3°、4°または5°に決定される。
【0104】
一実施形態では、少なくとも2つのねじ穴は、平行なねじ方向を含んでもよい。
ねじ方向が非平行である実施形態が
図6Bおよび
図6Cに示されており、これらも、異なるねじ方向(51、52、53)に沿ったねじを示している。これにより、ねじ方向(52)および(53)は、
図6Bでは平行に見えるが、異なる視点から6Bと同じプレートを示す
図6Cでは明らかに非平行である。しかしながら、非平行なねじ方向の特徴は、これらの図に図示される実施形態に限定されず、より全般的に、本発明の埋込可能プレートに適用されることができることに留意されたい。非平行なねじ方向は、平行なねじ方向よりも好ましく、なぜならば、それは、ねじの方向における引っ張り力に起因して埋込可能プレートが緩むリスクを制限するからである。
【0105】
図5および
図6に示すプレートテンプレートおよび埋込可能プレートのタイプは、好ましくは、手首の骨折を治癒するために使用される。
【0106】
図示されていないが、拡幅端(31)は、1つまたは2つのねじ穴を含むことが好ましい。拡幅端が2つのねじ穴を含む場合、2つのねじ穴は、好ましくは、対向する横断端の近くに位置し、すなわち、一方のねじ穴は左横断端(40)の近くに位置し、他方のねじ穴は右横断端(42)の近くに位置する。
【0107】
本発明のさらなる態様は、本発明による埋込可能プレートと、固定システムとを含む医療キットに関する。前記固定システムは、好ましくは、ねじの組を含む。これにより、組のねじは、好ましくは、埋込可能プレートのねじ穴の数を考慮して選択される。
【0108】
好ましい実施形態では、ねじの組は、1つ以上のコンプレッションスクリューを含む。コンプレッションスクリューは、骨断片を互いに向かって圧迫することを可能にし、したがって、非コンプレッションスクリューよりも良好な固定を得るために用いることができる。これに関して、コンプレッションスクリューは、好ましくは、ねじ構成要素および逆ねじ構成要素を含み、それによって、逆ねじ構成要素は、ねじ構成要素の挿入端部上または中にねじ込まれ得る。典型的には、ねじ構成要素は、挿入端部が、1つ以上の骨断片を通る穴、例えば穿孔穴の第1の開口部を通る状態で、挿入することができ、逆ねじ構成要素は、1つ以上の骨断片を通る穴、例えば穿孔穴の第2の開口部において、またはそれを介して、ねじ構成要素の挿入端部に取り付けることができる。ねじ構成要素および逆ねじ構成要素は、より大きな力で、しかしながら非コンプレッションスクリューに対して可能であるよりも制御可能な力でも、ともにねじ留めされ得る。先行技術は、典型的には、コンプレッションスクリューを使用せず、なぜならば、
-圧迫の効果を常に良好に制御することができないからである。例えば、コンプレッションスクリューの使用は、2つの骨断片の間の骨折表面に沿って接線方向の力をもたらす場合があり、これは、望ましくない摩擦およびさらにはさらなる骨折をもたらし得る。そのような接線力は、典型的には、ねじ方向が、好ましくは、プレート、骨、および/または1つ以上の骨断片を相互に垂直に固定する最適なねじ方向から過度に逸脱する場合に生じ、
-ねじ構成要素の挿入端がどこに位置することになるかを予測することは必ずしも可能ではない。現在の実践では、ねじは、手術中に、いくらか変化し得るねじ方向において骨または骨断片に挿入される。上述のように、ねじ方向におけるこの変動は、非常に大きく、例えば、典型的には、最大15°であり得る。したがって、ねじの挿入端がどこに位置することになるかは必ずしも明確ではない。したがって、逆ねじ構成要素をねじ構成要素にどのように取り付けるかを計画することも容易ではない。典型的には、骨および骨断片の両側に到達することができるように、別の切開を行う必要があるか、または完全な観血手術を行う必要がある。明らかに、外科医は、可能であればあらゆる不必要な切開または完全な観血手術を回避しようと試みる。
【0109】
したがって、コンプレッションスクリューの使用は、通常、関節骨折手術においては回避される。
【0110】
しかしながら、本発明は、外科手術のより良好な前進計画を可能にし、コンプレッションスクリューのねじ構成要素の挿入端の位置をより良好に制御することを可能にする。したがって、逆ねじ構成要素をねじ構成要素に取り付けることを可能にする第2の切開は、非常に小さく保たれ得る。
【0111】
好ましい実施形態では、コンプレッションスクリューは、ワッシャを含むか、またはワッシャを伴う。ワッシャは、骨断片の表面に作用する力がより良好に広がることを可能にする。好ましくは、ワッシャは傾斜可能なワッシャである。傾斜可能なワッシャは、逆ねじ構成要素が骨または骨断片の表面に対して非垂直である方向でねじ構成要素に取り付けられる必要がある場合でも、ワッシャの表面にわたって均等に力を広げながら、逆ねじ構成要素がねじ構成要素に取り付けられることを可能にする。これを
図7および
図8に示す。
図7は、いくつかの異なる形状の傾斜可能なワッシャ(57、58、59)がねじ構成要素(61)の挿入端(56)で接続されるのを示す。異なる形状、例えば円形(57)、正方形(58)、五角形(59)は、ワッシャに隣接する骨または骨断片の接触面に応じて選択することができる。
図8は、
図7Bの治療された関節骨折の異なる図を示す。埋込可能プレート(60)と、挿入端部(56)がプレートのねじ穴および骨断片の組を通って挿入された1つのねじ構成要素(61)とを見ることができる。埋込可能プレート(60)の反対側の関節の側において、傾斜可能なワッシャ(58)は、図示のように、ねじ構成要素の挿入端部が骨断片の表面から垂直に突出しなくても、逆ねじ構成要素(図示せず)を挿入端部(56)に取り付けることを可能にする。ワッシャ、好ましくは傾斜可能なワッシャは、好ましくは、特にねじが本発明の方法によって決定されるようにコンプレッションスクリューの意図された向きに向けられる場合、コンプレッションスクリューに適合するように選択されることに留意されたい。本発明は、ねじの最適な向きに関する情報を得ることを可能にし、したがって、サイズおよび向きに関して最良のねじ、逆ねじ、およびワッシャの事前選択を可能にする。
【0112】
ワッシャの使用は、骨折した関節の反対側にカウンタープレートを用いることなく、埋込可能プレートをしっかりと取り付けることを可能にし得る。
【国際調査報告】