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特表2023-511662強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230314BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20230314BHJP
   C22C 38/16 20060101ALI20230314BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20230314BHJP
   B22D 11/06 20060101ALI20230314BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C21D8/12 B
C22C38/16
C21C7/00 C
B22D11/06 330A
H01F1/147 175
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543607
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2021140773
(87)【国際公開番号】W WO2022161048
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110137389.4
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515167311
【氏名又は名称】河北科技大学
【氏名又は名称原語表記】HEBEI UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.26 Yuxiang Street, Shijiazhuang, Hebei 050018, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王波
(72)【発明者】
【氏名】張迪
(72)【発明者】
【氏名】孫会蘭
(72)【発明者】
【氏名】郭志紅
(72)【発明者】
【氏名】朱立光
【テーマコード(参考)】
4E004
4K013
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4E004DB02
4E004NB07
4E004SE03
4E004TA02
4E004TA03
4K013AA04
4K013BA16
4K013CA01
4K013EA18
4K033AA02
4K033BA01
4K033BA02
4K033CA01
4K033CA08
4K033CA09
4K033EA00
4K033EA01
4K033EA03
4K033HA03
4K033HA04
4K033JA01
4K033JA02
4K033JA04
4K033JA05
4K033LA00
4K033MA02
4K033MA03
4K033MA04
4K033NA02
4K033NA03
4K033NA04
5E041AA02
5E041BD10
5E041HB11
5E041NN18
(57)【要約】
本願は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及びその製造方法を提供し、電磁鋼製造分野に属し、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯は、以下の質量百分率の元素:C:0.0045%~0.0060%、Si:4.5%~5.0%、Mn:0.23%~0.32%、S:0.02%~0.03%、Bi:0.03%~0.08%、Als:0.027%~0.035%、Cu:0.02%~0.03%、N:0.008%~0.010%、P<0.005%、残部の鉄を含み、そのうち前記Cu元素、前記S元素、前記N元素は、溶錬時に硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加し、本願は、方向性高ケイ素鋼の原料成分を設計することで、硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物及びBi元素を合金抑制剤として採用し、製造された強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯は、結晶粒が細かく、組織が均一で、高い磁気誘導強度、低鉄損の優れた磁気特性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の質量百分率の元素:C:0.0045%~0.0060%、Si:4.5%~5.0%、Mn:0.23%~0.32%、S:0.02%~0.03%、Bi:0.03%~0.08%、Als:0.027%~0.035%、Cu:0.02%~0.03%、N:0.008%~0.010%、P<0.005%、残部の鉄を含み、そのうち前記Cu元素、前記S元素、前記N元素は、溶錬時に硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加する、
ことを特徴とする強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯。
【請求項2】
以下のステップS1からS3を含む請求項1に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法であって、
S1において、請求項1に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯における各元素の質量百分率に応じて原料を準備し、前記Bi元素及び前記硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の原料を混合して溶錬し、合金原料が完全に溶融した後に合金溶液を得、前記合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流すと同時に、前記硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物を添加し、続いて前記Bi元素を添加することで、ケイ素鉄母合金溶液が調製され、
S2において、前記ケイ素鉄母合金溶液の温度を1100~1200℃に制御し、連続的に流れる高純度窒素ガスの雰囲気において高速単ロールによるメルトスピニングを行い、前記高速単ロールによるメルトスピニング過程におけるロールの線速度を20~30m/sに制御することで、0.20~0.25mm厚さのケイ素鋼薄帯が製造され、
S3において、前記ケイ素鋼薄帯をアウトロールした後に500~600℃まで水冷し、0.14~0.17mmまで温間圧延し、加熱して真空アニールを行い、さらに0.09~0.12mmまで冷間圧延し、加熱して純水素ガス二次アニールを行い、さらに室温まで空冷し、アニール分離層を塗布した後に加熱して浄化ガスアニールを行い、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯が得られる、
請求項1に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項3】
S1において、前記溶錬の温度は1300~1500℃である、
ことを特徴とする請求項2に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項4】
S3において、前記真空アニールの温度は850~1050℃であり、前記真空アニールの時間は2~5minである、
ことを特徴とする請求項2に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項5】
前記真空アニール前に温間圧延が完了したケイ素鋼薄帯を20~25℃/hの昇温速度で真空アニールの温度まで昇温する、
ことを特徴とする請求項4に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項6】
S3において、前記純水素ガス二次アニールの温度は1000~1150℃であり、前記純水素ガス二次アニールの時間は2~5minである、
ことを特徴とする請求項2に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項7】
前記純水素ガス二次アニール前に冷間圧延が完了したケイ素鋼薄帯を20~25℃/hの昇温速度で純水素ガス二次アニールの温度まで昇温する、
ことを特徴とする請求項6に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項8】
S3において、前記浄化ガスアニールの温度は950~1200℃であり、前記浄化ガスアニールの時間は3~5minである、
ことを特徴とする請求項2に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項9】
前記浄化ガスアニール前に前記アニール分離層を塗布したケイ素鋼薄帯を35~40℃/hの昇温速度で浄化ガスアニールの温度まで昇温する、
ことを特徴とする請求項8に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項10】
S3において、前記アニール分離層の成分は、リン酸二水素アルミニウム、スチレンアクリルエマルジョン、グリセリン及びシランカップリング剤の混合物であり、
前記混合物における各成分の質量百分含有量は、リン酸二水素アルミニウム:10~15%、スチレンアクリルエマルジョン:20~40%、グリセリン:25~35%、シランカップリング剤:10~30%である、
ことを特徴とする請求項2に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項11】
S3において、具体的には、
前記ケイ素鋼薄帯をアウトロールした後に500~600℃まで水冷し、第1の薄帯を得、前記第1の薄帯を0.14~0.17mmまで温間圧延し、第2の薄帯を得、前記第2の薄帯を加熱して真空アニールを行い、第3の薄帯を得、さらに前記第3の薄帯を0.09~0.12mmまで冷間圧延し、第4の薄帯を得、前記第4の薄帯を加熱して純水素ガス二次アニールを行い、第5の薄帯を得、さらに前記第5の薄帯を室温まで空冷し、第6の薄帯を得、前記第6の薄帯にアニール分離層を塗布し、第7の薄帯を得、前記第7の薄帯を加熱して浄化ガスアニールを行い、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を得ることができるステップを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年02月01日に提出された、中国特許出願番号が「CN202110137389.4」の優先権を主張する。先行出願の開示内容は全体の引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、電磁鋼製造分野に属し、より具体的には、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
方向性ケイ素鋼は、重要な軟磁性材料であり、変圧器鉄心の重要な製造原料であり、電力業界の発展に不可欠な材料の1つでもある。高ケイ素鋼の低鉄損及び低磁歪係数特性は、高速高周波モータ、オーディオ、高周波トランス、チョークコイル及び高周波での磁気シールドなどの高周波機器において、顕著な優位性を示す。また、一般的な冷間圧延方向性ケイ素鋼の代わりに高ケイ素鋼を採用し、電子と電気素子の動作周波数と感度を向上させることができるだけでなく、また電気機器の重量と体積を大幅に軽減することができ、電気機器が作業時に静かで騒音がなく、エネルギー消費を節約し、効率化、省エネルギー化、軽量化及び静かで騒音がないことの間の矛盾を効果的に解決する。
【0004】
薄帯連続鋳造法は、液状合金を用いて薄帯材を直接生産することができ、極めて潜在力を有する短フロー金属薄帯材の製造プロセスであり、鋳込過程において鋳込ロールを結晶器とし、合金液が鋳込ロールと直接接触し、製造された方向性ケイ素鋼の凝固組織及びテクスチャーは、伝統的な連続鋳造片と顕著に異なり、製造された方向性ケイ素鋼は、亜急速凝固の特性を有し、第2相粒子の粗化過程を十分に抑制することができ、方向性ケイ素鋼鋳造片の高温加熱の弊害を根本的に解決し、方向性ケイ素鋼の製造に必要な抑制剤の微細、均一、分散分布に有利な条件を提供し、当該技術は、既に低炭素鋼、高速度鋼などのプロセスの生産に応用されることに成功するが、方向性高ケイ素鋼の生産において、凝固組織の制御、抑制剤の析出、冷間加工塑性などの面においてより高く要求され、これらの問題は克服しにくいため、従来技術における方向性高ケイ素鋼は依然として純粋度が低く、安定性が悪く、磁気誘導強度が低く及び鉄損が高いという欠陥が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術において、強磁性方向性高ケイ素鋼に存在する純粋度が低く、安定性が悪く、磁気特性が悪いという技術的問題に対し、本願は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の実施例は、以下の技術的解決手段を採用する。
【0007】
第1の態様において、本願の実施例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を提供し、以下の質量百分率の元素:
C:0.0045%~0.0060%、Si:4.5%~5.0%、Mn:0.23%~0.32%、S:0.02%~0.03%、Bi:0.03%~0.08%、Als:0.027%~0.035%、Cu:0.02%~0.03%、N:0.008%~0.010%、P<0.005%、残部の鉄を含み、そのうち前記Cu元素、前記S元素、前記N元素は、溶錬時に硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加する。
【0008】
理解されるように、前記Alsとは、酸可溶性アルミニウムであり、硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加することとは、製造過程において合金原料に硫黄元素、窒素元素、銅元素で構成される配位化合物を添加することである。強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯は、上記質量百分率の元素で得られた方向性高ケイ素鋼帯が厚さの小さい極薄帯であり、良好な強磁性を有することが理解される。
【0009】
理解されるように、各元素の質量百分率は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。
【0010】
第2の態様において、本願の実施例は、上記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法をさらに提供し、具体的には、
S1において、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯における各元素の質量百分率に応じて原料を準備し、前記Bi元素及び前記硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の原料を混合して溶錬し、合金原料が完全に溶融した後に合金溶液を得、前記合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流すと同時に、前記硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物を添加し、続いて前記Bi元素を添加し、ケイ素鉄母合金溶液になり、そのうち前記Bi元素は、Bi粉末の方式で前記合金溶液に添加することができるステップと、
S2において、前記ケイ素鉄母合金溶液の温度を1100~1200℃に制御し、連続的に流れる高純度窒素ガスにおいて高速単ロールによるメルトスピニング(single-roller melt-spinning)を行い、前記高速単ロールによるメルトスピニング過程におけるロールの線速度を20~30m/sに制御し、0.20~0.25mm厚さのケイ素鋼薄帯を製造するステップと、
S3において、前記ケイ素鋼薄帯をアウトロールした後に500~600℃まで水冷し、0.14~0.17mmまで温間圧延し、加熱して真空アニールを行い、さらに0.09~0.12mmまで冷間圧延し、加熱して純水素ガス二次アニールを行い、さらに室温まで空冷し、アニール分離層を塗布した後に加熱して浄化ガスアニールを行い、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を得るステップと、を含む。
【0011】
理解されるように、高速単ロールによるメルトスピニング過程においてメルトスピニング装置を用いて行い、ロールの線速度を制御し、メルトスピニング過程の高速操作を保証し、且つ、当該過程において、深過冷却急速凝固の効果を実現することができ、深過冷却とは、核生成を抑制することで、ケイ素鉄母合金溶液が大きい過冷却度において依然として液状を維持することである。S1において合金原料が完全に溶融した後に合金溶液を得、ここでの合金原料とは、Bi元素、硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の他の原料である。S1において合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流し、S2においても高純度窒素ガスの雰囲気にある。S3において、まずケイ素鋼薄帯をメルトスピニング装置から取り出し、続いてアウトロールした後のケイ素鋼薄帯に対して水冷処理、温間圧延処理、加熱且つ真空アニール処理、冷間圧延処理、加熱且つ純水素ガス二次アニール処理、空冷処理、塗布処理、加熱且つ浄化ガスアニール処理を順次行い、そのうち、浄化ガスアニールにおいて、S3ステップにおいて浄化ガスアニール前に行われる二次アニールは水素ガス雰囲気で行われるため、アニール過程において少量の水素元素が鋼帯に混在し、鋼の品質に影響を与え、そのため二次アニール後に鋼帯に介在する水素ガス及び他のガスを浄化する必要があり、アニール分離層は鋼帯表面を保護し、鋼帯から溢れたガスが鋼帯表面とさらに反応することを回避し、それにより鋼帯の表面の品質を保証するためである。鋼帯構造にドープされた少量のガスを浄化するために行われるアニールステップは、即ち浄化ガスアニールであり、当該浄化ガスアニールステップは、通常、真空又は負圧環境で行われ、本分野の通常プロセスに属する。空冷とは、大気中で冷却することである。
【0012】
理解されるように、S2、S3において、数値は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。
【0013】
可能な実現形態において、S1において、合金原料の溶錬は、溶錬炉において行われ、高温アーク溶錬炉を選択することができる。
【0014】
可能な実現形態において、S1において、前記混合溶錬の温度は1300~1500℃である。当該範囲の溶錬温度であれば、合金原料を十分に溶融し、均一に混合することができ、メルトスピニング過程において構造と性質が均一なケイ素鋼薄帯を形成する。理解されるように、溶錬温度は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実現形態において、さらに他の溶錬温度を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0015】
可能な実現形態において、S3において、前記真空アニールの温度は850~1050℃であり、前記真空アニールの時間は2~5minである。当該範囲の真空アニール温度及びアニール時間は、ケイ素鋼薄帯内の余分なC元素、Si元素の酸化物をケイ素鋼薄帯表面に析出させて酸化物層を形成し、冷間圧延過程において除去され、ケイ素鋼薄帯の加工性と靭性をさらに高める。理解されるように、上記アニール温度及びアニール時間は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実施形態において、さらに他のアニール温度及びアニール時間を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0016】
可能な実現形態において、前記真空アニール前に温間圧延が完了した前記ケイ素鋼薄帯を20~25℃/hの昇温速度でアニール温度まで昇温する。ここで、アニール温度とは、真空アニールのアニール温度である。当該範囲の昇温速度は、ケイ素鋼薄帯層間の温度勾配を低減し、ケイ素鋼薄帯表面C、Siの酸化物の生成に寄与し、表面酸化物層の均一性を向上させ、真空アニール過程におけるテクスチャー及び組織の形成にも最適な動力学条件を提供する。理解されるように、上記昇温速度は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実現形態において、さらに他の昇温速度を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0017】
可能な実現形態において、S3において、前記純水素ガス二次アニールの温度は1000~1150℃であり、前記純水素ガス二次アニールの時間は2~5minである。当該範囲の純水素ガス二次アニール温度及びアニール時間は、ケイ素鋼薄帯におけるGoss結晶粒が十分に他の結晶粒を飲み込み、異常成長が発生し、完全な二次再結晶テクスチャーを形成し、二次アニール後のケイ素鋼薄帯の磁気特性を向上させることを保証することができる。理解されるように、上記アニール温度及びアニール時間は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実施形態において、さらに他のアニール温度及びアニール時間を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0018】
可能な実現形態において、前記純水素ガス二次アニール前に冷間圧延が完了した前記ケイ素鋼薄帯を20~25℃/hの昇温速度でアニール温度まで昇温する。ここで、アニール温度とは、純水素ガス二次アニールのアニール温度である。当該範囲の昇温速度は、ケイ素鋼薄帯層間の温度勾配を低減し、組織におけるGoss結晶粒が他の結晶粒を飲み込むことに適切な条件を提供し、ケイ素鋼薄帯内の組織の均一性を向上させ、ケイ素鋼薄帯の磁気特性を向上させる。理解されるように、上記昇温速度は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実現形態において、さらに他の昇温速度を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0019】
可能な実現形態において、S3において、前記浄化ガスアニールの温度は950~1200℃であり、前記浄化ガスアニールの時間は3~5minである。理解されるように、上記アニール温度及びアニール時間は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実施形態において、さらに他のアニール温度及びアニール時間を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0020】
可能な実現形態において、前記浄化ガスアニール前に前記アニール分離層を塗布した前記ケイ素鋼薄帯を35~40℃/hの昇温速度でアニール温度まで昇温する。ここで、アニール温度とは、浄化ガスアニールのアニール温度である。理解されるように、上記昇温速度は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実現形態において、さらに他の昇温速度を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0021】
可能な実現形態において、S3において、前記アニール分離層の成分は、リン酸二水素アルミニウム、スチレンアクリルエマルジョン、グリセリン及びシランカップリング剤の混合物であり、前記混合物における各成分の質量百分含有量は、リン酸二水素アルミニウム:10~15%、スチレンアクリルエマルジョン:20~40%、グリセリン:25~35%、シランカップリング剤:10~30%である。なお、上記質量百分含有量において初期値を略記し、実際には、リン酸二水素アルミニウム:10%~15%、スチレンアクリルエマルジョン:20%~40%、グリセリン:25%~35%、シランカップリング剤:10%~30%である。当該アニール分離層に用いられる混合物は、ケイ素鋼薄帯表面の耐酸化性及びケイ素鋼薄帯のパンチ性能を最大限に向上させ、後続製品の製造過程における各層の間の接着を防止し、品質を向上させることができる。理解されるように、上記質量百分率は、上記範囲区間の任意の値であってもよい。当然ながら、他の可能な実現形態において、さらに他の成分及び質量百分率を採用することができ、これに限定されるものではない。
【0022】
可能な実現形態において、S3において、具体的に以下のステップを含み、前記ケイ素鋼薄帯をアウトロールした後に500~600℃まで水冷し、第1の薄帯を得、前記第1の薄帯を0.14~0.17mmまで温間圧延し、第2の薄帯を得、前記第2の薄帯を加熱して真空アニールを行い、第3の薄帯を得、さらに前記第3の薄帯を0.09~0.12mmまで冷間圧延し、第4の薄帯を得、前記第4の薄帯を加熱して純水素ガス二次アニールを行い、第5の薄帯を得、さらに前記第5の薄帯を室温まで空冷し、第6の薄帯を得、前記第6の薄帯にアニール分離層を塗布し、第7の薄帯を得、前記第7の薄帯を加熱して浄化ガスアニールを行い、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
従来技術に対し、本願は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の原料成分を設計することで、硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物及びBi元素を合金抑制剤として採用し、そのうち硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物は、合金にCu元素、S元素及びN元素を導入するとともに、高い元素吸収率を保証し、また合金中の他の金属と反応してCuS、AlN、MnSなどの物質を生成することができ、当該類の物質は、鋳込の初期の固液凝固過程に析出することができ、粒界に分布されたBi元素とともに初回再結晶した結晶粒の成長を抑制することができ、それによりGoss結晶粒の2次結晶の発生を促進し、製造された強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯は、結晶粒が細かく、テクスチャーが均一で、高い磁気誘導強度、低鉄損の優れた磁気特性を有する。
【0024】
従来技術に比べ、本願にて提供される強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法は、合金の溶錬及びメルトスピニング過程においていずれも高純度窒素ガスを流し、高温窒化作用でAlN抑制剤の生成を促進し、テクスチャーの生成及び合金組織の均一性を向上させることができるだけでなく、さらに合金表面の酸化を阻止することができ、それとともに硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物及びビスマス元素を添加し、銅元素及びビスマス元素の収率を保証する。高純度窒素ガスは、メルトスピニング過程において冷却ガスとしてケイ素鋼薄帯の自由面を急速に降温し、結晶粒の形成を加速することができ、また、3回の異なる再結晶アニール過程を経て、表面アニール分離層の塗布を結合し、ケイ素鋼薄帯の構造をさらに安定化させ、ケイ素鋼薄帯の磁気特性、純粋度、表面耐酸化性及びパンチ性能を向上させる。
【0025】
本願にて提供される強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法は、連続鋳造、圧延、高温アニール、表面改質などの一体化プロセス経路により、さらに深過冷却急速凝固の優位性を発揮し、生産した強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯は、純粋度が高く、安定性がよく、優れた磁気特性の特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願が解決しようとする技術的問題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例を結合し、本願をさらに詳細に説明する。理解すべきものとして、ここで説明した具体的な実施例は、本願を解釈するためのみに用いられ、本願を限定するものではない。
【0027】
[実施例1]
本実施例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を提供し、以下の質量百分率の元素:C:0.0045%、Si:4.5%、Mn:0.23%、S:0.02%、Bi:0.03%、Als:0.027%、Cu:0.02%、N:0.008%、P:0.004%、残部のFeを含み、そのうちCu元素、S元素、N元素は、溶錬時に硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加し、具体的にはN,N-ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸銅を選択することができる。
【0028】
本実施例は、さらに強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、具体的には、
S1において、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯における各元素の質量百分率に応じて合金原料を準備し、Bi元素及び硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の原料を混合し、高温アーク溶錬炉に置き、1300℃まで加熱して溶錬し、合金原料が完全に溶融した後に合金溶液を得、合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流すと同時に、N,N-ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸銅を添加し、続いてBi元素を添加し、ケイ素鉄母合金溶液を得、全体の溶錬過程は30minを続け、そのうちBi元素はBi粉末の方式で合金溶液に添加することができるステップと、
S2において、ケイ素鉄母合金溶液の温度を1100℃に制御し、連続的に流れる高純度窒素ガスの雰囲気において高速極冷単ロールによるメルトスピニングを行い、高速極冷単ロールによるメルトスピニング過程におけるロールの線速度を20m/sに制御し、0.25mm厚さのケイ素鋼薄帯を製造するステップと、
S3において、まずケイ素鋼薄帯をメルトスピニング装置のロールから取り出し、続いてアウトロールした後のケイ素鋼薄帯を500℃まで水冷し、0.17mmまで温間圧延し、20℃/hの加熱速度で850℃まで加熱した後に真空アニールを2min行い、さらに0.12mmの厚さまで冷間圧延し、続いて20℃/hの加熱速度で1000℃まで加熱した後に純水素ガス二次アニールを2min行い、さらに室温まで空冷し、アニール分離層を塗布した後に、35℃/hの加熱速度で950℃まで加熱し、続いて浄化ガスアニールを行い、浄化ガスアニール3min後に強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を得、アニール分離層の成分は質量百分率が10%のリン酸二水素アルミニウム、40%のスチレンアクリルエマルジョン、35%のグリセリン及び15%のシランカップリング剤で構成される混合物であるステップと、を含む。
【0029】
[実施例2]
本実施例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を提供し、以下の質量百分率の元素:C:0.0060%、Si:5.0%、Mn:0.32%、S:0.03%、Bi:0.08%、Als:0.035%、Cu:0.03%、N:0.0010%、P:0.002%、残部のFeを含み、そのうちCu元素、S元素、N元素は、溶錬時に硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加し、具体的にはビス(1-窒素複素環基)ジチオカルバミン酸銅(II)を選択することができる。
【0030】
本実施例は、さらに強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、具体的には、
S1において、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯における各元素の質量百分率に応じて合金原料を準備し、Bi元素及び硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の原料を混合し、高温アーク溶錬炉に置き、1500℃まで加熱して溶錬し、合金原料が溶融した後に合金溶液を得、合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流すと同時に、ビス(1-窒素複素環基)ジチオカルバミン酸銅(II)を添加し、続いてBi元素を添加し、ケイ素鉄母合金溶液を得、全体の溶錬過程は120minを続け、そのうちBi元素はBi粉末の方式で合金溶液に添加することができるステップと、
S2において、ケイ素鉄母合金溶液の温度を1200℃に制御し、連続的に流れる高純度窒素ガスの雰囲気において高速極冷単ロールによるメルトスピニングを行い、高速極冷単ロールによるメルトスピニング過程におけるロールの線速度を30m/sに制御し、0.20mm厚さのケイ素鋼薄帯を製造するステップと、
S3において、まずケイ素鋼薄帯をメルトスピニング装置のロールから取り出し、続いてアウトロールした後のケイ素鋼薄帯を600℃まで水冷し、0.14mmまで温間圧延し、20℃/hの加熱速度で1050℃まで加熱した後に真空アニールを5min行い、さらに0.09mmの厚さまで冷間圧延し、続いて25℃/hの加熱速度で1150℃まで加熱した後に純水素ガス二次アニールを5min行い、さらに室温まで空冷し、アニール分離層を塗布した後に、40℃/hの速度で1200℃まで加熱し、続いて浄化ガスアニールを行い、浄化ガスアニール5min後に強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を得、アニール分離層の成分は質量百分率が15%のリン酸二水素アルミニウム、30%のスチレンアクリルエマルジョン、25%のグリセリン及び30%のシランカップリング剤で構成される混合物であるステップと、を含む。
【0031】
[実施例3]
本実施例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を提供し、以下の質量百分率の元素:C:0.0050%、Si:4.5%、Mn:0.28%、S:0.02%、Bi:0.05%、Als:0.030%、Cu:0.02%、N:0.008%、P:0.004%、残部のFeを含み、そのうちCu元素、S元素、N元素は、溶錬時に硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物の方式で強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加し、具体的には{Cu(NH}SOを選択することができる。
【0032】
本実施例は、さらに強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、具体的には、
S1において、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯における各元素の質量百分率に応じて合金原料を準備し、Bi元素及び硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の原料を混合し、高温アーク溶錬炉に置き、1400℃まで加熱して溶錬し、合金原料が十分に溶融した後に合金溶液を得、合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流すと同時に、{Cu(NH}SOを添加し、続いてBi元素を添加し、ケイ素鉄母合金溶液を得、全体の溶錬過程は60minを続け、そのうちBi元素はBi粉末の方式で合金溶液に添加することができるステップと、
S2において、ケイ素鉄母合金溶液の温度を1150℃に制御し、連続的に流れる高純度窒素ガスの雰囲気において高速極冷単ロールによるメルトスピニングを行い、高速極冷単ロールによるメルトスピニング過程におけるロールの線速度を25m/sに制御し、0.22mm厚さのケイ素鋼薄帯を製造するステップと、
S3において、まずケイ素鋼薄帯をメルトスピニング装置のロールから取り出し、続いてアウトロールした後のケイ素鋼薄帯を500℃まで水冷し、0.15mmの厚さまで温間圧延し、20℃/hの加熱速度で950℃まで加熱した後に真空アニールを2min行い、さらに0.10mmの厚さまで冷間圧延し、続いて25℃/hの加熱速度で1080℃まで加熱した後に純水素ガス二次アニールを2min行い、さらに室温まで空冷し、アニール分離層を塗布した後に、35℃/hの加熱速度で1080℃まで加熱し、続いて浄化ガスアニールを行い、浄化ガスアニール3min後に強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯を得、アニール分離層の成分は質量百分率が15%のリン酸二水素アルミニウム、20%のスチレンアクリルエマルジョン、35%のグリセリン及び30%のシランカップリング剤で構成される混合物であるステップと、を含む。
【0033】
[対照例1]
本対照例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及び強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯におけるCu元素、S元素、N元素を溶錬時に一般的な合金原料の方式で強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯に添加する以外、他の成分及び製造プロセスは、実施例3と同じである。
【0034】
[対照例2]
本対照例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及び強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯がBi元素を含まない以外、他の成分及び製造プロセスは、実施例3と同じである。
【0035】
[対照例3]
本対照例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及び強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法において、真空アニール温度が1100℃であり、純水素ガス二次アニール温度が1200℃であり、浄化ガスアニール温度が1250℃である以外、他の成分及び製造プロセスは、実施例3と同じである。
【0036】
[対照例4]
本対照例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及び強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法において、真空アニール前のケイ素鋼薄帯の加熱速度が35℃/hであり、純水素ガス二次アニール前のケイ素鋼薄帯の加熱速度が35℃/hである以外、他の成分及び製造プロセスは、実施例3と同じである。
【0037】
[対照例5]
本対照例は、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯及び強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法を提供し、強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法において、S3において塗布されたアニール分離層の成分が酸化マグネシウムである以外、他の成分及び製造プロセスは、実施例3と同じである。
【0038】
検出例において、実施例及び対照例で得られた高ケイ素鋼極薄帯の磁気誘導強度及び鉄損をそれぞれ検出し、試験結果は表1に示すとおりである。
【0039】
【0040】
表1における検出データから分かるように、本願の実施例で得られた強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の結晶粒が細かく、組織が均一であり、磁気誘導性能B800>1.90Tであり、鉄損P1.7/50値が0.90W/kgよりも小さく、P1.0/400値が8.5W/kgよりも小さく、優れた磁気誘導性能を有する。
【0041】
以上の記載は、本願の好適な実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神と原則内で行われたいかなる修正、均等置換及び改良などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の質量百分率の元素:C:0.0045%~0.0060%、Si:4.5%~5.0%、Mn:0.23%~0.32%、S:0.02%~0.03%、Bi:0.03%~0.08%、Als:0.027%~0.035%、Cu:0.02%~0.03%、N:0.008%~0.010%、P<0.005%、残部の鉄を含強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法であって、
以下のステップS1からS3を含み、
S1において、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯における各元素の質量百分率に応じて原料を準備し、そのうち、Cu元素、S元素及びN元素は、硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物として準備され、前記Bi元素及び前記硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物以外の原料を混合して溶錬し、合金原料が完全に溶融した後に合金溶液を得、前記合金溶液の表面に高純度窒素ガスを流すと同時に、前記硫黄窒素及び銅を含有する多核配位化合物を添加し、続いて前記Bi元素を添加することで、ケイ素鉄母合金溶液が調製され、
S2において、前記ケイ素鉄母合金溶液の温度を1100~1200℃に制御し、連続的に流れる高純度窒素ガスの雰囲気において高速単ロールによるメルトスピニングを行い、前記高速単ロールによるメルトスピニング過程におけるロールの線速度を20~30m/sに制御することで、0.20~0.25mm厚さのケイ素鋼薄帯が製造され、
S3において、前記ケイ素鋼薄帯をアウトロールした後に500~600℃まで水冷し、0.14~0.17mmまで温間圧延し、850~1050℃に加熱して真空アニールを2~5min行い、さらに0.09~0.12mmまで冷間圧延し、1000~1150℃に加熱して純水素ガス二次アニールを2~5min行い、さらに室温まで空冷し、アニール分離層を塗布した後に950~1200℃に加熱して浄化ガスアニールを3~5min行い、前記強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯が得られる、
強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項2】
S1において、前記溶錬の温度は1300~1500℃である、
ことを特徴とする請求項に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項3】
前記真空アニール前に温間圧延が完了したケイ素鋼薄帯を20~25℃/hの昇温速度で真空アニールの温度まで昇温する、
ことを特徴とする請求項に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項4】
前記純水素ガス二次アニール前に冷間圧延が完了したケイ素鋼薄帯を20~25℃/hの昇温速度で純水素ガス二次アニールの温度まで昇温する、
ことを特徴とする請求項に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項5】
前記浄化ガスアニール前に前記アニール分離層を塗布したケイ素鋼薄帯を35~40℃/hの昇温速度で浄化ガスアニールの温度まで昇温する、
ことを特徴とする請求項に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【請求項6】
S3において、前記アニール分離層の成分は、リン酸二水素アルミニウム、スチレンアクリルエマルジョン、グリセリン及びシランカップリング剤の混合物であり、
前記混合物における各成分の質量百分含有量は、リン酸二水素アルミニウム:10~15%、スチレンアクリルエマルジョン:20~40%、グリセリン:25~35%、シランカップリング剤:10~30%である、
ことを特徴とする請求項に記載の強磁性方向性高ケイ素鋼極薄帯の製造方法。
【国際調査報告】