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特表2023-511668経時劣化安定性が更に改善された二重層三元触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】経時劣化安定性が更に改善された二重層三元触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/053 20060101AFI20230314BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230314BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230314BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B01J27/053 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
F01N3/28 301Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544383
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021051728
(87)【国際公開番号】W WO2021151876
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】102020101876.2
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨエル・デスプレス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・レッシュ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク-ミヒャエル・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】カロリン・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ニコル・シハテル
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA03
3G091FA01
3G091GA06
3G091GA18
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3G091GB05W
3G091GB06W
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4G169BA01B
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4G169BC13B
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4G169BC40B
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4G169BC42B
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4G169BC51A
4G169BC51B
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4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169CA03
4G169CA09
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4G169EA18
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EC03Y
4G169ED06
4G169EE06
4G169FA06
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、不活性触媒担体上に2つの層を含む触媒であって、セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に加えて、白金族金属として少なくともパラジウムを含む層Aと、セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に加えて、白金族金属として少なくともロジウムを含む、層Aに適用された層Bと、を含む、触媒に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性触媒担体上で互いに重なり合って配置された2つの層を含む触媒であって、
・層Aが、白金族金属として少なくとも白金、及びセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物を含み、
・層Aに適用された層Bが、白金族金属として少なくともロジウム、及びセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物を含み、
層A及びBの両方において、前記酸化ランタン含有量が、前記セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に基づいて1重量%~5重量%であり、前記酸化イットリウム含有量が、前記セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に基づいて8重量%~20重量%であることを特徴とする、触媒。
【請求項2】
層A及び/又は層Bが、互いに独立して、追加して、更なる白金族金属として白金を含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
白金族金属として、層Aがパラジウムのみを含み、層Bがロジウムのみを含む、又は層Bがパラジウム及びロジウムのみを含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
層A及び層Bが、活性酸化アルミニウムを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項以上に記載の触媒。
【請求項5】
層A中及び/又は層B中の前記白金族金属の全部又は一部が、活性酸化アルミニウムを担体とすることを特徴とする、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
層A及び層B中の前記セリウム/ジルコニウム/RE金属混合酸化物中の、酸化セリウムの酸化ジルコニウムに対する重量比が、0.1~1.0であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項以上に記載の触媒。
【請求項7】
層Aが、前記不活性触媒担体上に直接設けられていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項以上に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに重なり合って配置された2つの触媒活性層で構成され、燃焼機関からの排気ガス浄化に好適である、三元触媒に関する。
【0002】
三元触媒は、実質的に化学量論的に運転される燃焼機関からの排気ガス浄化に用いられる。化学量論的運転において、燃焼機関へ供給される空気の量は、燃料の完全燃焼に必要な量に正確に対応している。この場合、空燃比λ(空気比とも呼ばれる)は、正確に1である。λ=1前後で、三元触媒は、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を、無害な成分に同時に変換できる。
【0003】
一般的に、白金族金属が触媒活性材料として用いられ、特に、白金、パラジウム、及びロジウムは、例えば、担体材料としてのγ型酸化アルミニウム上に存在する。加えて、三元触媒は、酸素吸蔵材料、例えば、セリウム/ジルコニウム混合酸化物を含む。後者の場合、セリウム酸化物(酸化セリウム)は、希土類金属酸化物であって、酸素吸蔵に必須の成分を構成する。酸化ジルコニウム及び酸化セリウムと共に、これらの材料が、更なる希土類金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物などの付加的な成分を含んでもよい。酸素吸蔵材料は、白金族金属などの触媒活性材料を適用することによって活性化され、それ故、白金族金属の担体材料としての役割も果たす。
【0004】
三元触媒の成分は、不活性触媒担体上の単一のコーティング層中に存在してもよく、例えば、欧州特許第1541220(B1)号を参照されたい。
【0005】
しかし、多くの場合に用いられるのは二重層触媒であり、この触媒は異なる触媒プロセスの分離を容易にし、それ故、2層中の触媒効果の最適な調整を可能とする。後者の種類の触媒は、例えば、国際公開第95/35152(A1)号、同第2008/000449(A2)号、欧州特許第0885650(A2)号、同第1046423(A2)号、同第1726359(A1)号、及び同第1974809(B1)号に開示されている。
【0006】
欧州特許第1974809(B1)号には、両層中にセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含む二重層三元触媒(複数)が開示されており、上層中のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、それぞれ、下層中よりも高い割合のジルコニウムを有する。
【0007】
欧州特許第1900416(B1)号には、両層中にセリウム、ジルコニウム、及びネオジムの混合酸化物、並びに付加的に、下層中にセリウム/ジルコニウム/イットリウム/ランタン酸化物-アルミニウム酸化物粒子を含む、二重層三元触媒(複数)が記載されている。
【0008】
欧州特許第1726359(A1)号には、両層中にジルコニウム含有量80モル%超のセリウム/ジルコニウム/ランタン/ネオジム混合酸化物を含む二重層三元触媒(複数)が記載されており、上層中のセリウム/ジルコニウム/ランタン/ネオジム混合酸化物は、それぞれ、下層中よりも高い割合のジルコニウムを有してもよい。
【0009】
国際公開第2008/000449(A2)号にはまた、両層中にセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、上層中の混合酸化物が、より高い割合のジルコニウムを有する、二重層三元触媒(複数)が開示されている。セリウム/ジルコニウム混合酸化物は、ある程度までは、セリウム/ジルコニウム/ランタン/ネオジム混合酸化物又はセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に置き換えることもできる。
【0010】
国際公開第2009/012348(A1)号には更に、中間層及び上層のみが酸素吸蔵材料を含む、三層触媒(複数)が記載されている。
【0011】
欧州特許第3045226(A1)号には、経時劣化安定性が改善された二重層三元触媒であって、触媒担体上に直接設けられた層Aが少なくとも1つの白金族金属と共に、1つのセリウム/ジルコニウム/RE金属混合酸化物を含み、層Aに適用されて排気ガス流と直接接触する層Bが、少なくとも1つの白金族金属と共に、セリウム/ジルコニウム/RE金属混合酸化物を含み(ここで、REは、セリウム以外の希土類金属を表す)、層Aのセリウム/ジルコニウム/RE金属混合酸化物中のRE金属酸化物の比率が、層Bのセリウム/ジルコニウム/RE金属混合酸化物中のRE金属酸化物の比率より小さいことを特徴とする、触媒が開示される。
【0012】
燃焼機関からの排出を削減することに対する要求は一貫して高まっており、触媒の更なる継続的開発が求められている。欧州では、耐久性の要件は排出ガス規制ユーロ5で、160,000kmまで上げられた。米国であっても、耐久性の要件は150,000マイルまでである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それ故、触媒の経時劣化安定性は、更に一層重要となっている。経時劣化後の活性について重要な指標は、一方では触媒による汚染物質変換の始動温度であり、他方では、そのダイナミックな変換能力である。汚染物質に対しての始動温度は、その汚染物質が例えば50%超変換されていく、温度を指す。この温度が低いほど、冷間始動後に汚染物質を、より速やかに変換できる。全負荷下では、最高で1050℃の排気ガス温度がモーター出力で直接に生じる場合がある。触媒の温度安定性が良好であるほど、触媒を燃焼機関のより近くに配置できる。これによりまた、冷間始動後の排気ガス浄化が改善される。
【0014】
2017年9月に発効されたユーロ6c規制では、欧州排出規制により、実際の運転条件下での排気ガス測定値が規定されている(実路走行排気RDE)。運転条件によっては、特に一酸化炭素及び窒素酸化物のダイナミック変換に関して、触媒がはるかに厳しい要求を満たさなければならないことを意味する場合もある。
【0015】
この目標は、全ての運転条件下、特に高速であっても化学量論的排気ガスを維持することである。以前の慣習であった排気ガス温度を下げるための燃料混合物の濃縮は、CO排出量を高くし、燃料消費を増加させるため、回避されるべきである。しかしながら、濃縮を回避すると、触媒が高速下でさらされる排気ガス温度は上昇し続ける。これらの更に増加した要求は、触媒によって対処される必要がある。同じくこの理由のため、三元触媒の経時劣化安定性を更に高める必要がある。
【0016】
前述の従来技術による触媒は、始動温度及び経時劣化後のダイナミック変換能力に関して、既に非常に良好な特性を有している。しかし、法的要件が厳しくなるため、更により良好な触媒の検討が必要になっている。
【0017】
これを理由として、本発明は、更に増加した温度安定性により、従来技術の触媒と比べて更に一層低い始動温度を有する、及び経時劣化後のダイナミック変換能力が改善された、触媒を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚くべきことに、経時劣化要件が増加するに伴って、この問題は、希土類元素、及びまた任意選択で、酸素吸蔵材料の成分として存在する白金族金属が、二重層三元触媒の2つの層上に特定の様式で分布している場合、この問題を解決することができることが見出された。
【0019】
それ故、本発明の主題は、不活性触媒担体上に2つの層を含む触媒であって、層Aは、白金族金属として少なくともパラジウム、並びにセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物を含み、層Aに対して適用される層Bは、白金族金属として少なくともロジウム、並びにセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物を含む、触媒である。層A及び層Bの両方において、酸化ランタン含有量は、セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に基づいて1重量%~5重量%であり、酸化イットリウム含有量は、セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に基づいて8重量%~20重量%である。
【0020】
好ましい実施形態は、層A及び層Bの両方の層中の酸化イットリウム含有量が、セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物に基づいて10重量%~15重量%であることを特徴とする。12重量%~13重量%のイットリウム酸化物含有量が特に好ましい。実施例に示されるように、集中的な経時劣化が生じるのにもかかわらず、より低い始動温度を達成することができ、最終的にダイナミック駆動中の排出量は少なくなる。
【0021】
本発明によれば、層Aは、白金族金属として少なくともパラジウムを含み、層Bは、白金族金属として少なくともロジウムを含む。本発明の実施形態において、層A及び/又は層Bは、互いに独立して、追加して更なる白金族金属として白金を含む。層Aは、好ましくはパラジウム及び白金を含み、層Bは、好ましくはロジウム及び白金又はロジウム及びパラジウム及び白金を含む。本発明の更なる実施形態において、本発明による触媒は白金を含まない。特に好ましくは、層Aはパラジウムのみを含み、層Bはロジウムのみを含む、又は層Bはパラジウム及びロジウムのみを含む。
【0022】
セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物は、層A中及び/又は層B中、白金族金属の担体材料として機能することができる。しかしながら、更に、層A中及び/又は層B中の白金族金属の全部又は一部は、活性酸化アルミニウムを担体とすることもできる。
【0023】
それ故、本発明の好ましい実施形態において、層A及び層Bは、活性酸化アルミニウムを含む。活性酸化アルミニウムが特に酸化ランタンでドーピングすることによって安定化されていることが、特に好ましい。好ましい活性酸化アルミニウムは、0.5~6重量%、特に3~5重量%の酸化ランタン(La)を含む。
【0024】
用語「活性酸化アルミニウム」は、当業者には公知である。この用語は特に、100m/g~200m/gの比表面積を有するγ型酸化アルミニウムを記述する。活性酸化アルミニウムは、文献にしばしば記載されており、市販されている。
【0025】
用語「セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物」は、本発明で意味する範囲内では、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及び酸化イットリウムの物理的混合物を除く。むしろ、「セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物」は、ほぼ均一な、三次元結晶構造であることを特徴とし、理想的には純粋な酸化セリウム、酸化ジルコニウム又は酸化ランタン及び酸化イットリウムの相を含まない。製造プロセスによっては、完全には均一でない生成物が得られることがあるが、一般的に全く不都合なく用いることができる。
【0026】
本発明によれば、セリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物中の、酸化セリウムの酸化ジルコニウムに対する比は、広く変更できる。層A中、比は例えば、0.1~1.0、好ましくは0.2~0.7、更により好ましくは0.3~0.5である。層B中、比は例えば、0.1~1.0、好ましくは0.2~0.7、更により好ましくは0.3~0.5である。本発明のセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物は、特に、その結晶構造中に、酸化アルミニウムを含まない。
【0027】
本発明の複数の実施形態において、一方の層又は両方の層が、酸化バリウム又は硫酸バリウムなどのアルカリ土類金属化合物を含む。好ましい実施形態は、層A中に硫酸バリウムを含む。硫酸バリウム量の分量は特に、不活性触媒担体の体積に対し5g/L~20g/Lである。
【0028】
本発明の更なる実施形態において、一方の層又は両方の層は、追加して、希土類化合物、例えば酸化ランタン、及び/又は、結着剤、例えばアルミニウム化合物、などの添加剤を含む。これらの添加剤は、広範な限度内で変更できる量で、特定の場合においては簡単な方法で当業者が決定できる量で用いられる。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、層Aは、不活性触媒担体上に直接設けられ、すなわち、不活性触媒担体と層Aとの間に追加の層又はアンダーコートはない。本発明の更なる実施形態において、層Bは、排気ガス流と直接接触している、すなわち、層B上に追加の層又はオーバーコートはない。
【0030】
本発明の更なる実施形態において、本発明による触媒は、不活性触媒担体上の層A及び層Bから構成される。このことは、層Aが不活性触媒担体上に直接設けられ、層Bが排気ガス流と直接接触し、かつ、他の層が存在しないことを意味する。
【0031】
セラミック又は金属から作製され、体積Vを有するハニカム体は、燃焼機関の排気ガスの並流路を有しており、触媒に不活性の触媒担体として特に好適である。それらは、いわゆるフロースルー型ハニカム体、又はウォールフロー型フィルタのいずれかであってもよい。特に、ウォールフロー型フィルタの場合、本発明による触媒コーティングは、完全にウォールフロー型フィルタの壁上に、部分的に又は完全に当該壁中に、配置され得る。
【0032】
本発明によれば、流路の壁面(ウォール)領域は、2つの触媒層A及びBでコーティングされている。層Aにより触媒担体をコーティングするため、この層に提供される固形分は水中懸濁され、触媒担体は任意選択で、そのようにして得られた触媒担体のコーティング用懸濁液を用い、壁上及び/又は壁中にコーティングされる。コーティング用懸濁液を用いてこのプロセスを繰り返し、層Bに提供される固形分は水中懸濁される。
【0033】
好ましくは、層A及び層Bの両方が、不活性触媒担体の全長に沿ってコーティングされる。このことは、層Bが層Aを完全に被覆し、結果として層Bのみが排気ガス流と直接接触するようになることを意味する。しかしながら、ゾーン化コーティングの変形も可能であるが、層Aは、層Bによって少なくとも部分的に覆われている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[実施例]
以下の実施例1、及び比較例1において、セル数93/cm及び壁厚0.11mm、並びに直径10.6cm及び長さ11.4cmの寸法のセラミックから作製したフロースルー型ハニカム体を2回コーティングすることによって、二重層触媒を製造した。この目的のために、2つの異なる懸濁液をそれぞれ層A及びBのために生成した。担体を最初に層Aの懸濁液でコーティングし、次いで空気中で550℃で4時間焼成した。その後、層Aでコーティングされた担体を層Bの懸濁液でコーティングし、次いで層Aと同じ条件下で焼成した。
【0035】
実施例1
2つの懸濁液をまず製造することによって、二重層触媒を製造した。層Aの第1の懸濁液の組成(触媒担体の体積に基づく)は、4重量%のLaを含む、安定化させた活性化酸化アルミニウム66g/L、24重量%のCeO、60重量%のZrO、3.5重量%のLaと12.5重量%のYを含むセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物66g/L、16g/LのBaSOと、1.413g/LのPdであった。
【0036】
層Bのための第2の懸濁液の組成(触媒担体の体積に基づく)は、4重量%のLaを含む安定化させた活性化酸化アルミニウム60g/L、24重量%のCeO、60重量%のZrO、3.5重量%のLaと12.5重量%のYを含むセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物47g/Lと、0.177g/LのRhであった。
【0037】
比較例1(欧州特許第3045226(A1)号による)
実施例1と同様にして二重層触媒を製造した。層A用の第1の懸濁液の組成は、4重量%のLaを含む安定化させた活性化酸化アルミニウム66g/L、25重量%のCeO、67.5重量%のZrO、3.5重量%のLaと4重量%のYを含むセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物66g/L、16g/LのBaSOと、1.143g/LのPdであった。
【0038】
層Bのための第2の懸濁液の組成は、4重量%のLaを含む安定化させた活性化酸化アルミニウム60g/L、24重量%のCeO、60重量%のZrO、3.5重量%のLaと12.5重量%のYを含むセリウム/ジルコニウム/ランタン/イットリウム混合酸化物47g/Lと、0.177g/LのRhであった。
【0039】
実施例1及び比較例1を、エンジン(機関)試験ベンチでの経時劣化プロセスにおいて、経時劣化させた。各場合において、2つの同様の触媒を、順々に熱排気ガスに曝露した。この経時劣化プロセスは、触媒投入の前に950℃の排気ガス温度を有するオーバーランカットオフ経時劣化プロセスで構成されている。これにより、第1の触媒(CC1)においては1100℃の最大床温度及び第2の触媒(CC2)においては1040℃の最大床温度が得られた。経時劣化時間を100時間とした。
【0040】
続いて、エンジン試験ベンチを使用して、一定の平均空気比λで始動性能を試験し、及びλの変化時のダイナミック変換を試験した。
【0041】
表1は、それぞれの場合において、問題の成分の50%が変換される温度T50を含む。そのようにして、化学量論的な排気ガス組成(λ=0.999、±3.4%の振幅)による始動性能を決定した。
【0042】
【表1】
【0043】
ダイナミック変換性能を、λが0.99~1.01の範囲で、510℃の一定温度で決定した。この場合のλの振幅は、±3.4%であった。表2に、CO及びNOxの変換曲線の交点での変換率、並びに関連するHCの変換率を記載する。
【0044】
【表2】
【0045】
本発明による実施例1は、始動性能、及び経時劣化後のCO/NOxダイナミック変換において、顕著な改善を示している。
【国際調査報告】