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特表2023-511682電子グレード三フッ化塩素の精留及び精製システムの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電子グレード三フッ化塩素の精留及び精製システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 7/24 20060101AFI20230314BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20230314BHJP
   F25J 3/02 20060101ALI20230314BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20230314BHJP
   F25J 5/00 20060101ALI20230314BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20230314BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C01B7/24
F25J1/00 D
F25J3/02 A
F25J3/08
F25J5/00
B01J20/02 A
F28D7/16 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545107
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2021126903
(87)【国際公開番号】W WO2022160820
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110127961.9
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522240933
【氏名又は名称】福建徳尓科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN DEER TECHNOLOGY CORP.
【住所又は居所原語表記】No. 6, Gongye Road, Jiaoyang Centralized Industrial Zone, Jiaoyang Town, Shanghang County, Longyan, Fujian 364000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 向如
(72)【発明者】
【氏名】李 嘉磊
(72)【発明者】
【氏名】陳 施華
(72)【発明者】
【氏名】申 黎明
(72)【発明者】
【氏名】于 睿潔
(72)【発明者】
【氏名】呉 強
【テーマコード(参考)】
3L103
4D047
4G066
【Fターム(参考)】
3L103AA35
3L103BB26
3L103DD03
4D047AA07
4D047AB00
4D047BA02
4D047BB03
4D047DA05
4D047DA17
4D047EA00
4G066AA02B
4G066CA32
4G066DA01
(57)【要約】
【要約】本発明は、電子グレード三フッ化塩素の精留装置、精製システム及びその制御方法を提供する。前記電子グレード三フッ化塩素の精留装置は、低沸点カラム及び高沸点カラムを含む第二段階の低温精留装置を含み、前記第二段階の低温精留装置には、フッ化水素と三フッ化塩素との結合分子を離散して、電子グレード三フッ化塩素の要求を満たすための抽出剤が収容されている。カラムプレートの温度制御方法によって、気相-液相(三フッ化塩素-フッ化水素)平衡システムの還流比パラメータの安定性を効果的に改善して、様々な工場でのワイドダイナミックスムーズ運転を実現することができる。また、前記カラムプレートの温度制御方法は、三フッ化塩素と各不純物成分の有効な分離を実現し、ディープ蒸留技術によって電子グレード三フッ化塩素を精製できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素と三フッ化塩素との結合分子を離散するための抽出剤が収容されている第二段階の低温精留装置を備え、前記抽出剤は、フルオロエーテル油であり、前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比は、0.3~0.5:1であり、且つ固定液がYLVAC06/16であることを特徴とする電子グレード三フッ化塩素の精留装置。
【請求項2】
前記第二段階の低温精留装置の中には、低沸点カラムが含まれ、前記低沸点カラムは、下から上へ順に、第1リボイラー、第1低沸点カラムパッキングセクション、第2低沸点カラムパッキングセクション及び第1コンデンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置。
【請求項3】
前記第二段階の低温精留装置の中には、高沸点カラムが含まれ、前記高沸点カラムは、下から上へ順に、第2リボイラー、第1高沸点カラムパッキングセクション、第2高沸点カラムパッキングセクション、第3高沸点カラムパッキングセクション及び第2コンデンサを含むことを特徴とする請求項2に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置。
【請求項4】
各パッキングセクションには、フッ化水素と三フッ化塩素の結合分子を解離するための抽出剤が備わっていることを特徴とする請求項3に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置。
【請求項5】
前記第1リボイラー及び前記第2リボイラーは、水平ダブルチューブ側熱交換器であり、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサにおける熱伝導部品は、ステンレス鋼板を採用し、二枚の前記ステンレス鋼板は、全自動タングステン極アルゴンガス保護の雰囲気で溶融溶接によってプレートとチューブとを形成し、さらに手動アルゴンアーク溶接を経て複数のプレート及びチューブをプレートバンドルに溶接し、プレートバンドルの両側を厚いプレートでクランプして固定し、且つレバーで引き締めることを特徴とする請求項3に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置による電子グレード三フッ化塩素の精留方法であって、
前記第1リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度が10~12℃となり、前記第1コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度が-22.5~24℃となるように制御し、前記第2層カラムプレートの温度がホットエンドとコールドエンドの温度によって制御されるステップ1と、
前記第2リボイラーの上端の温度が11~12℃となり、前記第2コンデンサの下端の温度が-6~-4℃となるように制御し、前記第2層カラムプレートの温度がホットエンドとコールドエンドの温度によって制御されるステップ2と、を備えることを特徴とする電子グレード三フッ化塩素の精留方法。
【請求項7】
順次に接続された第1ハステロイコンデンサ(11)、第1ハステロイ合金加熱タンク(12)、ハステロイ合金耐圧加熱タンク(13)、3段金属吸着剤層(14)、請求項1~5の何れか一項に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置(15)、液化タンク(16)及び圧力安定タンク(17)を備えることを特徴とする電子グレード三フッ化塩素の精製システム。
【請求項8】
前記第1ハステロイコンデンサ(11)は、反応器(10)から発生した三フッ化塩素粗生成物を凝縮させ、温度差で負圧を生じさせることにより、反応器(10)の出口ガスに動力を与え、
前記第1ハステロイコンデンサ(11)は、前記反応器(10)で生成された三フッ化塩素粗生成物を-30℃~-50℃まで凝縮させるために用いられることを特徴とする請求項7に記載の電子グレード三フッ化塩素の精製システム。
【請求項9】
前記3段金属吸着剤層(14)におけるアルカリ金属吸着剤を加熱することにより、前記アルカリ金属吸着剤とフッ化水素分子とを結合させて、より強固な水素結合を形成して分離させ、第一段階の精製を実現し、
前記2段低温精留装置(15)によりフッ化水素と三フッ化塩素との結合分子をさらに離散化し、第二段階の精製を実現することを特徴とする請求項7に記載の電子グレード三フッ化塩素の精製システム。
【請求項10】
請求項9に記載する電子グレード三フッ化塩素の精製システムによる制御方法であって、請求項6に記載する電子グレード三フッ化塩素の精留方法、電子グレード三フッ化塩素の精製システムの温度差動力製御方法及び電子グレード三フッ化塩素の精製システムにおける分離方法を含み、
前記電子グレード三フッ化塩素の精製システムの温度差動力製御方法は、
第1ハステロイコンデンサによって反応器で生成された粗三フッ化塩素生成物を凝縮して、第一段階の温度差を形成し、第一段階の温度差によって前記反応器の出口ガスに動力を供給し、前記第1ハステロイコンデンサは、前記反応器で生成された三フッ化塩素粗生成物を-30℃~50℃まで凝縮させるステップ1と、
第1ハステロイ合金加熱タンクを通じて三フッ化塩素粗生成物を昇温し、タンク内部の液体の気化を促進して第二段階の温度差を形成し、三フッ化塩素を急速に飽和蒸気圧に達して、自己分解を行わないようにし、前記第1ハステロイ合金加熱タンクは、三フッ化塩素粗生成物を15℃~25℃まで昇温するステップ2と、
ハステロイ合金耐圧加熱タンクを通じて三フッ化塩素粗生成物ガスを昇温増圧して、第三段階の温度差を形成し、タンク内部の圧力を増大させ、三フッ化塩素ガスを後続の精留などの精製工程に必要な正圧力に達するステップ3と、
液化タンクの降温凝縮により第四段階の温度差を形成し、精留カラムの出口の三フッ化塩素ガスを液状に凝縮し、且つ収集して貯蔵し、前記ハステロイ合金耐圧加熱タンクの温度は、40℃~50℃であり、前記ハステロイ合金耐圧加熱タンクの圧力は、0.5MPa~0.6MPaであるステップ4と、を備え、
前記電子グレード三フッ化塩素の精製システムにおける分離方法は、
前記3段金属吸着剤層におけるアルカリ金属吸着剤を加熱することにより、前記アルカリ金属吸着剤とフッ化水素分子とを結合させて、より強固な水素結合を形成して分離し、第一段階の精製を実現し、前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFの混合物であり、前記3段金属吸着剤層の加熱温度は、150℃~200℃であるステップ5と、
前記2段低温精留装置によりフッ化水素と三フッ化塩素との結合分子をさらに離散化し、第二段階の精製を実現し、前記2段低温精留装置における抽出剤がフルオロエーテル油であり、前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比が0.4:1であり、かつ固定液がYLVAC06/16であり、固定相が401担体であるステップ6と、を備えることを特徴とする電子グレード三フッ化塩素の精製システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子グレード三フッ化塩素の精留及び精製システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、三フッ化塩素は沸点がフッ化水素に近く、且つ分子とその不純物係の間にマルチポリマーが形成され易いという特殊な性質を持っている。これらの特殊な性質は、三フッ化塩素の分離難度を増加させているため、伝統的な制御方法を用いてフッ化水素不純物の濃度を500ppmv 以下に安定的に制御することができず、電子グレード三フッ化塩素を精製することが困難である。
【0003】
従来技術に関しては、例えば、中国特許出願(出願番号がCN2019112490911であり、公開番号がCN110975315Aである)のように、高純度のプロピレンオキシドの省エネルギー性精留精製システムを開示しており、高沸点カラムの中部には粗いプロピレンオキサイド入口が設置され、高沸点カラムの頂部の蒸気出口には第1圧縮機及び第1熱交換器が順次接続されている。第1熱交換器は、高沸点カラム底部の冷間材料の熱交換パイプに接続される。第1熱交換器の蒸気出口パイプは、順次に第1スロットルバルブ、第1インバータに接続された後に、さらに高沸点カラムの第1還流口及び低沸点カラムの原料入口にそれぞれ接続されている。低沸点カラムの蒸気出口には、第2圧縮機及び第2熱交換器が順次に接続される。第2熱交換器は、低沸点カラムの底部の冷間物料熱交換パイプに接続され、第2熱交換器の蒸気出口は、順次に第2スロットルバルブ及び第2インバータに接続された後に、さらに低沸点カラムの還流口と高沸点カラムの還流口とに接続される。この従来技術は、低沸点カラム、高沸点カラムを設置しているが、この技術提案は電子グレード三フッ化塩素の精留装置を製造するものではなく、高沸点カラム及び低沸点カラムの具体的な構造や抽出剤を採用しているかどうかも詳しく述べておらず、蒸気-液相平衡システムの還流比のパラメータの安定性を改善することができない(この従来技術明細書の背景技術には、以下の欠陥が明確に記載されている。(1)化学的除雑方法を採用する。ヒドラジン水とアルカリ溶媒を添加することによって、精製後の溶媒を回収して再利用することが困難になる。(2)プロセス中に循環するメタノールには、抽出剤の存在により、ホルマールが生成され、触媒精留プロセスのエネルギー消費が巨大であり、回収利用が少なく、浪費問題が深刻である)。
【0004】
中国特許出願(出願番号がCN2012101185631であり、公開番号がCN102659508Aである)は、塩化ビニルの分離精製プロセス方法を開示し、電石法ポリ塩化ビニルプロセスにおける圧縮単位の粗塩化ビニルに由来し、冷却、脱水、脱酸処理を経て精留装置に入って分離を行い、軽質成分、精製塩化ビニル及び重い成分との三本のストリームに分離する。これらの三本のストリームはそれぞれ個別に後処理される。前記精留装置は、仕切られたカラムである。3つのストリームは、分割されたカラムから上から下に引き出される。つまり、軽質成分ストリームは、カラムの上部から引き出され、精製された塩化ビニルモノマーは、カラムの上部と下部の間の一部から引き出される。重い成分の流れは、カラムの下部から引き出される。仕切られたカラムの頂部圧力は0.3 MPa~0.7 MPa(絶対圧力)であり、カラムトップの温度は15℃~45℃であり、仕切られたカラムの底部圧力は0.3MPa~0.8MPa(絶対圧力)であり、カラム底部の温度は30℃~60℃である。
【0005】
また、中国特許出願(出願番号がCN201310445631xであり、公開番号がCN103694079Aである)は、塩化ビニルモノマーの精製方法を開示しており、順次に連接されているトータルコンデンサ、精留熱交換器、油水分離器、塩化ビニル脱水チャンネル、一級塩化ビニルを低沸点カラムに供給するためのポンプ、低カラムの第一段階熱交換器、第一段階低沸点カラム、低カラムの第一段階デフレグメーター、第一段階エキゾーストコンデンサ、第一段階エキゾーストコレクターを含む。第一段階低沸点カラムの底部の出口には、順次に第一段階高沸点カラム、ハイカラムの第一段階コンデンサ、完成品用第一段階コンデンサ及び第一段階塩化ビニル貯蔵タンクが連接されている。第一段階塩化ビニル貯蔵タンクの後には、2級塩化ビニルを低カラムに供給するためのポンプ、低カラムの第二段階熱交換器及び第二段階の低沸点カラムなどが順次に接続されている。
【0006】
中国特許出願や特許であるCN104262082A、CN105481640A、CN109651067A、CN109651110A、CN110240536A、CN211050938U、CN202270376U、CN203355329U、CN209537349U、CN209575807U、CN209940867U、CN209940868U等の先行技術は、これらの分野が本発明に近いものであるが、本分野の技術者は実践研究を経て、上述の従来技術は気相-液相(三フッ化塩素-フッ化水素)平衡システムの還流比パラメータの安定性を確保できず、さらに様々な工場でのワイドダイナミックスムーズ運転を実現できないと考え、さらに電子準位の三フッ化塩素を精製することはできない。
【0007】
さらに、例えば、中国特許出願(出願番号がCN201108752487であり、公開番号がCN105367410Aである)は、塩素酢酸を生産する水素化精製システムを開示し、中国特許出願(出願番号がCN2018114865024であり、公開番号がCN109293529Aである)は、ヘキサクロロベンゼンが10ppmを超えないクロロタロニルを生産する精製装置と方法を開示し、中国特許出願(出願番号がCN201910990199xであり、公開番号がCN110590604Aである)は、イソフタロニトリル連続精留精製装置を開示し、中国特許出願(出願番号がCN2018220464337であり、公告番号がCN209352805Uである)は、ヘキサクロロベンゼンが10ppmを超えないクロロタロニルを生産する精製装置を開示している。上記従来技術はいずれもある化合物に応用される精製装置または方法であるが、上記公開された技術方案はある化合物に対して設計され、採用された技術手段は相対的に複雑であり、当業者は実際の需要に応じてその技術方案を電子グレード三フッ化塩素の精留精製システムとその方法に応用することができない。つまり、上記の従来技術は電子グレード三フッ化塩素を製造する精留精製システム及びその方法に応用することを何ら示唆するものではない。
【0008】
また、中国特許出願(CN101979364A)は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの製造方法を開示し、中国特許出願(CN105111351A)は、特殊なフルオロエーテル界面活性剤の製造方法を開示し、中国特許出願(CN105111352A)は、特殊なフルオロエーテルオリゴマーの製造方法を開示している。上記の従来技術化合物の製造方法は、フルオロエーテル油を用いているが、当業者は上記の内容を参考にして、電子グレード三フッ化塩素の精留装置に応用する技術的示唆を得ることができない。
【0009】
別の例では、従来技術であるCN101914001A、CN102633597A、CN102701941A、CN103739454A、CN107382682A、CN108103585A、CN109096033A、CN109678668A、CN111217676A、CN202610130Uなどは、抽出剤や精留カラムなどの技術手段を用いて化合物を抽出するかまたは化合物を抽出する方法を開示したが、上記の従来技術はいずれも高効率の抽出剤を採用しておらず、高効率の精留装置も採用していない。当業者の実験、分析により、上記の公知の常識はカラムプレート温度制御方法によって気相-液相(三フッ化塩素-フッ化水素)平衡システムの還流比パラメータの安定性を効果的に改善し、さらに様々な工場でのワイドダイナミックスムーズ運転を実現することができず、ディープ精留技術によって三フッ化塩素と各不純物成分との効率的な分離を実現し、電子グレード三フッ化塩素を精製する目的を達成することができないと考えられる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、背景技術における技術的な問題を効果的に解決することができる三フッ化塩素の精留装置、その方法、精製システム及びその制御方法を提供する。
【0011】
本発明の技術提案は、次のようになっている。
【0012】
電子グレード三フッ化塩素の精留装置であって、フッ化水素と三フッ化塩素との結合分子を離散するための抽出剤が収容されている第二段階の低温精留装置を備え、前記抽出剤は、フルオロエーテル油であり、前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比は、0.3~0.5:1であり、且つ固定液がYLVAC06/16である。
【0013】
好ましくは、前記低沸点カラムは、下から上へ順に、第1リボイラー、第1低沸点カラムパッキングセクション、第2低沸点カラムパッキングセクション及び第1コンデンサを含む。
【0014】
好ましくは、前記高沸点カラムは、下から上へ順に、第2リボイラー、第1高沸点カラムパッキングセクション、第2高沸点カラムパッキングセクション、第3高沸点カラムパッキングセクション及び第2コンデンサを含む。
【0015】
好ましくは、各パッキングセクションには、フッ化水素と三フッ化塩素の結合分子を解離するための抽出剤が備わっている。
【0016】
好ましくは、前記抽出剤がフルオロエーテル油であり、かつ前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比が0.3~0.5:1であり、かつ固定液がYLVAC06/16であり、固定相が401担体である。
【0017】
本発明は、電子グレード三フッ化塩素の精留装置の精留方法は、以下のステップをさらに提供する。
ステップ1では、前記第1リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度が10℃~12℃となり、前記第1コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度が-22.5℃~24℃となるように制御し、前記第2層カラムプレートの温度がホットエンドとコールドエンドの温度によって制御される。
ステップ2では、前記第2リボイラーの上端の温度が11℃~12℃となり、前記第2コンデンサの下端の温度が-6℃~-4℃となるように制御し、前記第2層カラムプレートの温度がホットエンドとコールドエンドの温度によって制御される。
【0018】
本発明は、電子グレード三フッ化塩素の精製システムをさらに提供する。
前記電子グレード三フッ化塩素の精製システムは、順次に接続された第1ハステロイコンデンサ(11)、第1ハステロイ合金加熱タンク(12)、ハステロイ合金耐圧加熱タンク(13)、3段金属吸着剤層(14)、請求項1~5の何れか一項に記載の電子グレード三フッ化塩素の精留装置(15)、液化タンク(16)及び圧力安定タンク(17)を備える。
【0019】
好ましくは、前記第1ハステロイコンデンサ(11)は、反応器(10)から発生した三フッ化塩素粗生成物を凝縮させ、温度差で負圧を生じさせることにより、反応器(10)の出口ガスに動力を与え、
前記第1ハステロイコンデンサ(11)は、前記反応器(10)で生成された三フッ化塩素粗生成物を-30℃~-50℃まで凝縮させるために用いられる。
【0020】
好ましくは、前記3段金属吸着剤層(14)におけるアルカリ金属吸着剤を加熱することにより、前記アルカリ金属吸着剤とフッ化水素分子とを結合させて、より強固な水素結合を形成して分離させ、第一段階の精製を実現し、
前記2段低温精留装置(15)によりフッ化水素と三フッ化塩素との結合分子をさらに離散化し、第二段階の精製を実現する。
【0021】
本発明は、電子グレード三フッ化塩素の精製システムをさらに提供する。
前記方法は、前記電子グレード三フッ化塩素の精製システムの温度差動力製御方法であり、前記制御方法は、以下のステップを備える。
ステップ1では、前記第1ハステロイコンデンサによって反応器で生成された粗三フッ化塩素生成物を凝縮して、第一段階の温度差を形成し、第一段階の温度差によって前記反応器の出口ガスに動力を供給し、前記第1ハステロイコンデンサは、前記反応器で生成された三フッ化塩素粗生成物を-30℃~50℃まで凝縮させる。
ステップ2では、第1ハステロイ合金加熱タンクを通じて三フッ化塩素粗生成物を昇温し、タンク内部の液体の気化を促進して第二段階の温度差を形成し、三フッ化塩素を急速に飽和蒸気圧に達して、自己分解を行わないようにし、前記第1ハステロイ合金加熱タンクは、三フッ化塩素粗生成物を15℃~25℃まで昇温する。
ステップ3では、前記ハステロイ合金耐圧加熱タンクを通じて三フッ化塩素粗生成物ガスを昇温増圧して、第三段階の温度差を形成し、タンク内部の圧力を増大させ、三フッ化塩素ガスを後続の精留などの精製工程に必要な正圧力に達する。
ステップ4では、前記液化タンクの降温凝縮により第四段階の温度差を形成し、精留カラムの出口の三フッ化塩素ガスを液状に凝縮し、且つ収集して貯蔵し、前記ハステロイ合金耐圧加熱タンクの温度は、40℃~50℃であり、前記ハステロイ合金耐圧加熱タンクの圧力は、0.5MPa~0.6MPaである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の有益な効果を奏している。
その一、カラムプレート温度製御方法を通じて効果的に気相-液相(三フッ化塩素-フッ化水素)平衡システムの還流比のパラメータの安定性を改善でき、様々な工場でのワイドダイナミックスムーズ運転を実現することができる。その二、前記カラムプレートの温度制御方法は、三フッ化塩素と各不純物成分の有効な分離を実現し、電子グレードの三フッ化塩素を精製できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施形態の技術的態様をより明確に説明するために、以下に実施形態において使用する必要がある図面を簡単に紹介する。以下の図面は本発明のいくつかの実施形態のみを示しているので、範囲の制限と見なすべきではなく、当業者にとっては、創造的な労働を払わずに、これらの図面に基づいて他の関連する図面を得ることもできることを理解すべきである。
【0024】
図1】本発明の実施例による電子グレード三フッ化塩素の精製システムの構成概略図である。
図2】本発明の実施例による電子グレード三フッ化塩素の精製システムにおける温度差動力制御方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施例による電子グレード三フッ化塩素の精製システムにおける分離方法のフローチャートである。
図4】本発明の実施例による電子グレード三フッ化塩素の精製システムにおける精留方法のフローチャートである。
図5】精留カラムの精留過程における各部品の構造模式図である。
図5-1】N層目のカラムプレート構造の模式図である。
図5-2】フィードプレートの構造模式図である。
図5-3】カラムボトムの概略構造図である。
図5-4】コンデンサの概略構造図である。
図5-5】リボイラーの概略構造図である
図5-6】リボイラーの断面図面である。
図6】精留カラムのフィードフォワード補償デカップリングシステムの構造概略図である。ここで、N21(s)とN12(s)は、フィードフォワードデカップリングプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態の目的、技術的態様及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施形態における図面に合わせて、本発明の実施形態における技術的態様を明確かつ完全に説明する。説明された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態に過ぎないことが明らかである。本発明における実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、何れも本発明の保護範囲に属する。従って、以下の図面において提供される本発明の実施形態に対する詳細な説明は、保護を求める範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の選択された実施形態のみを示すものである。本発明における実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0026】
本発明の実施形態の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下に本発明の実施形態における図面と合わせて、本発明の実施形態における技術提案を明確で完全に説明する。明らかに、説明された実施形態は本発明の一部の実施形態にすぎなく、すべての実施形態ではない。従って、添付の図面に基づいて本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明は、本発明の範囲を製限する意図ではなく、選択された実施形態のみを表すものである。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創造的な工夫なしに得られる他のすべての実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0027】
<実施例1>
電子グレード三フッ化塩素の精留装置であって、低沸点カラム及び高沸点カラムを含む第二段階の低温精留装置を含み、前記第二段階の低温精留装置には、フッ化水素と三フッ化塩素との結合分子を離散して、電子グレード三フッ化塩素の要求を満たすための抽出剤が収容されている。前記低沸点カラムは、下から上へ順に、第1リボイラー、第1低沸点カラムパッキングセクション、第2低沸点カラムパッキングセクション及び第1コンデンサを含む。前記高沸点カラムは、下から上へ順に、第2リボイラー、第1高沸点カラムパッキングセクション、第2高沸点カラムパッキングセクション、第3高沸点カラムパッキングセクション及び第2コンデンサを含む。各パッキングセクションには、フッ化水素と三フッ化塩素の結合分子をさらに解離させるための抽出剤が備わっている。
【0028】
前記抽出剤がフルオロエーテル油である。前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比が0.3~0.5:1であり、固定液がYLVAC06/16であり、固定相が401担体である。
【0029】
<実施例2>
本発明は、上記の電子グレード三フッ化塩素の精留装置の精留方法をさらに提供する。当該精留装置は、実施例1における技術的特徴を含む。当該精留方法は、以下の工程を備える。
【0030】
ステップ1では、前記第1リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度が10℃~12℃となり、前記第1コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度が-22.5℃~24℃となるように制御する。
【0031】
ステップ2では、前記第2リボイラーの上端の温度が11℃~12℃となり、前記第2コンデンサの下端の温度が-6℃~-4℃となるように制御する。
【0032】
<実施例3>
図1に示すように、本発明による電子グレード三フッ化塩素の精製システムは、順次に接続された第1ハステロイコンデンサ11、第1ハステロイ合金加熱タンク12、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13、3段金属吸着剤層14、実施例1における電子グレード三フッ化塩素の精留装置、液化タンク16及び圧力安定タンク17を備える。
【0033】
第1ハステロイコンデンサ11の供給端は、その先端に設けられ且つ反応器10に連通している。第1ハステロイコンデンサ11の排出端は、その下端に設けられ且つ第1ハステロイ合金加熱タンク12の供給端に接続されている。第1ハステロイコンデンサ11は、反応器10から発生した三フッ化塩素粗生成物を凝縮させ、温度差により(負圧を生じさせる)反応器10の出口ガスに動力を与えるものである。また、第1ハステロイコンデンサ11は、反応器10で生成された三フッ化塩素粗生成物を-30℃~-50℃に凝縮させるために用いられる。好ましくは、第1ハステロイコンデンサ11は、反応器10で生成された三フッ化塩素粗生成物を-35℃~-40℃に凝縮させる。一実施例において、第1ハステロイコンデンサ11は、反応器10で発生される三フッ化塩素粗生成物を-38℃程度に凝縮する。
【0034】
第1ハステロイ合金加熱タンク12の供給端は、その底部に設けられ、且つ第1ハステロイコンデンサ11の排出端に連通している。第1ハステロイ合金加熱タンク12の排出端は、その頂部に設けられ且つハステロイ合金耐圧加熱タンク13と連通している。第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を昇温し、タンク内部の液体が気化して速やかに飽和蒸気圧に達し、三フッ化塩素が自己分解を行わないようにする。第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を15℃~25℃に昇温する。好ましくは、第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を16℃~20℃に昇温する。一実施例では、第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を18℃まで昇温する。
【0035】
ハステロイ合金耐圧加熱タンク13は、三フッ化塩素ガスを昇温増圧して、タンク内部の圧力を増大させ、三フッ化塩素ガスを後続の精留などの精製工程に必要な正圧力にする。ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の温度は、40℃~50℃である。ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の圧力は、0.5MPa~0.6MPaである。好ましくは、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13は、温度が45℃~48℃であり、圧力が0.55MPa~0.58MPaである。一実施例では、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の温度が46℃であり、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の圧力が0.56MPaである。一定の安全性を保証するためには、上記ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の体積を制御する必要がある。好ましくは、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の体積は、0.5m~1mである。一実施例では、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の体積は0.6mである。
【0036】
3段金属吸着剤層14は、第1アルカリ金属吸着層140、第2アルカリ金属吸着層141及び第3アルカリ金属吸着層142を含み、遊離のフッ化水素を吸着して後続のフッ化水素の精製圧力を低下させるために用いられる。これは、フッ化水素と三フッ化塩素がフッ化水素結合を形成して分離し難く、3段金属吸着剤層14におけるアルカリ金属吸着剤がフッ化水素分子と結合して、より強固な水素結合を形成して分離精製されるためである。前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFの混合物である。好ましくは、前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFが1:2~5という質量比で混合された混合物である。一実施例では、前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFを1:2.4との質量比で混合された混合物である。前記3段金属吸着剤層14の反応温度は、150℃~200℃である。好ましくは、前記3段金属吸着剤層14の反応温度は、160℃~180℃である。一実施例では、前記3段金属吸着剤層14の反応温度は、175℃である。これにより、三フッ化塩素におけるフッ化水素の含有量が0.5v%以下に低下される。前記アルカリ金属吸着剤は、10~200目の異なる粒径の球状粒子として設計されることができ、3段金属吸着剤層14内に乱雑に堆積し、その表面積を増大し、吸着効率を向上させている。
【0037】
各々のアルカリ金属吸着層の高さは、1.8m~2.5mであってもよい。一実施例では、各アルカリ金属吸着層の高さは、約2mである。また、各アルカリ金属吸着層の材料として、ハステロイを用いてもよい。
【0038】
また、水素結合の切断と結合が可逆的な過程であるため、本発明は上記3段金属吸着剤層14の再生方法をさらに提供する。前記3段金属吸着剤層14を350℃~450℃に加熱し、且つ12~96時間保温することにより、アルカリ金属吸着剤を再生させる。好ましくは、前記3段金属吸着剤層14を380℃~420℃に加熱して24~48時間保温する。一実施例では、3段金属吸着剤層14を400℃に加熱し、且つ36時間程度保温する。
【0039】
実施例1における電子グレード三フッ化塩素の精留装置は、低沸点カラム150及び高沸点カラム151を含む二段低温精留装置15を備える。低沸点カラム150は、下から上へ順次に、第1リボイラー1501、第1低沸点カラムパッキングセクション1502、第2低沸点カラムパッキングセクション1503及び第1コンデンサ1504を含む。高沸点カラム151は、下から上へ順次に第2リボイラー1511、第1高沸点カラムパッキングセクション1512、第2高沸点カラムパッキングセクション1513、第3高沸点カラムパッキングセクション1514及び第2コンデンサ1515を含む。各パッキングセクションには、フッ化水素と三フッ化塩素との結合分子をさらに離散するための抽出剤が収容されている。前記抽出剤は、フルオロエーテル油である。前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比は0.3~0.5:1であり、且つ固定液がYLVAC06/16であり、固定相が401担体である。一実施例において、前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比は0.4:1である。より良好な精留効果を得るためには、パッキングセクションの温度を厳しく制御する必要がある。好ましくは、前記第1リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度は10℃~12℃であり、前記第1コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度は-22.5℃~24℃であり、第2リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度は11℃~12℃であり、前記第2コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度は-6℃~4℃である。第1低沸点カラムパッキングセクション1502の高さは、1.8m程度であり、第2低沸点カラムパッキングセクション1503の高さは、1.6m程度である。前記高沸点カラムパッキングセクションの高さは、2.8m程度である。上記の好ましい設計によって、フッ化水素の含有量を500PPmv以下に下げて、電子グレード三フッ化塩素の要求を満たすことができる。
【0040】
液化タンク16は、降温凝縮を利用して、精留カラムの出口の三フッ化塩素ガスを液状に凝縮させ、且つそれを収集して貯蔵する。液化タンク16の温度は、-20℃~30℃である。
【0041】
前記液化タンク16の後端に、前記圧力安定タンク17を増設する。液状三フッ化塩素は、パイプラインを通って圧力安定タンクに流入した後、一定の温度に昇温した後、ガス状三フッ化塩素の圧力が安定したら、充填を開始する。
【0042】
さらに、三フッ化塩素の特殊な性質のため、水などの物質と激しく反応し易い。特に、水と激しく反応して爆発し易いフッ素酸化物を生成する。本発明では、低沸点カラム及び高沸点カラムの冷熱石炭媒体としていずれも窒素ガス(低温窒素ガス及び常温窒素ガス)を採用することで、三フッ化塩素精留の安全問題を効果的に解決することができる。
【0043】
図2に示すように、本発明の実施例は、電子グレード三フッ化塩素の精製システムの温度差動力制御方法をさらに提供する。当該温度差動力制御方法は、以下のステップを備える。
【0044】
ステップ1では、前記第1ハステロイコンデンサ11によって反応器10で生成された粗三フッ化塩素生成物を凝縮して、第一段階の温度差を形成し、第一段階の温度差によって前記反応器10の出口ガスに動力を供給する。第1ハステロイコンデンサ11は、前記反応器10で生成された三フッ化塩素粗生成物を-30℃~50℃まで凝縮させる。好ましくは、前記第1ハステロイコンデンサ11は、反応器10で生成された三フッ化塩素粗生成物を-35℃~40℃に凝縮する。一実施形態では、第1ハステロイコンデンサ11は、反応器10で生成された三フッ化塩素粗生成物を-38℃程度に凝縮する。
【0045】
ステップ2では、第1ハステロイ合金加熱タンク12を通じて三フッ化塩素粗生成物を昇温し、タンク内部の液体の気化を促進して第二段階の温度差を形成し、三フッ化塩素を急速に飽和蒸気圧に達して、自己分解を行わないようにする。第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を15℃~25℃まで昇温する。好ましくは、第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を16℃~20℃に昇温する。一実施例では、第1ハステロイ合金加熱タンク12は、三フッ化塩素粗生成物を-18℃に昇温する。
【0046】
ステップ3では、ハステロイ合金耐圧加熱タンク13を通じて三フッ化塩素粗生成物ガスを昇温増圧して、第三段階の温度差を形成し、タンク内部の圧力を増大させ、三フッ化塩素ガスを後続の精留などの精製工程に必要な正圧力に達する。前記ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の温度は、40℃~50℃である。前記ハステロイ合金耐圧加熱タンク13の圧力は、0.5MPa~0.6MPaである。
【0047】
ステップ4では、前記液化タンク16の降温凝縮により第四段階の温度差を形成し、精留カラムの出口の三フッ化塩素ガスを液状に凝縮して、収集して貯蔵する。前記液化タンク16の温度は、-20℃~25℃である。
【0048】
図3に示すように、本発明の実施例は、電子グレード三フッ化塩素の分離方法をさらに提供する。当該分離方法は、以下のステップを備える。
【0049】
ステップ5では、3段金属吸着剤層14におけるアルカリ金属吸着剤を加熱することにより、前記アルカリ金属吸着剤とフッ化水素分子とを結合させて、より強固な水素結合を形成して分離させ、第一段階の精製を実現する。前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFの混合物である。好ましくは、前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFが1:2~5との質量比で混合された混合物である。一実施例では、前記アルカリ金属吸着剤は、Al+LiFが1:2.4との質量比で混合された混合物である。前記3段金属吸着剤層14の加熱温度は、150℃~200℃である。好ましくは、前記3段金属吸着剤層14の加熱温度は、160℃~180℃である。
【0050】
ステップ6では、前記2段低温精留装置15によりフッ化水素と三フッ化塩素との結合分子をさらに離散化し、第二段階の精製を実現する。ここで、前記2段低温精留装置15は、フルオロエーテル油抽出剤を含む。前記フルオロエーテル油における固定液と固定相との質量比は、0.3~0.5:1(好ましくは、0.4:1)である。固定液は、YLVAC06/16である。固定相は、401担体である。
【0051】
図4に示すように、本発明の実施例は、電子グレード三フッ化塩素の精留温度方法をさらに提供する。当該精留温度方法は、以下のステップを備える。
【0052】
ステップ7では、前記第1リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度が10℃~12℃となり、前記第1コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度が-22.5℃~24℃となるように制御する。前記カラムプレートの温度は、ホットエンドとコールドエンドの温度によって制御されることが可能である。
【0053】
ステップ8では、前記第2リボイラーの上端の第2層カラムプレートの温度が11℃~12℃となり、前記第2コンデンサの下端の第2層カラムプレートの温度が-6~4℃となるように制御する。前記カラムプレートの温度は、ホットエンドとコールドエンドの温度によって制御されることが可能である。
【0054】
<実施例4>
本発明はまた電子グレード三フッ化塩素の精留装置制御システムを開示し、当該精留装置は、実施例1における電子グレード三フッ化塩素の精留装置及び実施例3における電子グレード三フッ化塩素の精製システムの温度差動力制御方法のステップ6における低温精留装置の制御に用いられる。具体的な制御システムは、以下の通りである。
【0055】
電子グレード三フッ化塩素の精留装置制御システムには、第二段階の低温精留装置が含まれる。当該第二段階の低温精留装置は、低沸点カラム及び高沸点カラムを含む。前記第二段階の低温精留装置の中には、フッ化水素と三フッ化塩素との結合分子を離散して、電子グレード三フッ化塩素の要求を満たすための抽出剤が設けられている。前記低沸点カラムは、下から上へ順に第1リボイラー、第1低沸点カラムパッキングセクション、第2低沸点カラムパッキングセクション及び第1コンデンサを含む。前記高沸点カラムは、下から上へ順に、第2リボイラー、第1高沸点カラムパッキングセクション、第2高沸点カラムパッキングセクション、第3高沸点カラムパッキングセクション及び第2コンデンサを含む。
【0056】
本発明で採用される低沸点カラム、高沸点カラムにおける「第1低沸点カラムパッキングセクション1502、第2低沸点カラムパッキングセクション1503」、「第1高沸点カラムパッキングセクション1512、第2高沸点カラムパッキングセクション1513、第3高沸点カラムパッキングセクション1514」は、精留装置のコア部分である。当分野の公知の常識と本発明の技術方案に対する設計要求を考慮して、本発明は、上述の「パッキングセクション」部分の構造をすべて「精製セクションプレート、フィードプレート、セクションボトム」を含むように互いに類似するように設計している。以下、「パッキングセクション」部分の設計原理について詳しく述べ、その動態モデリングに対して詳しく説明することで、精留装置制御システムにおける精留プロセスに対する自己適応制御に基礎を築く。
【0057】
<精製セクションプレートの動的モデルの構築>
第n層精製セクションプレートの構造模式図は、図5-1に示す通りである。精製セクションプレートの流入物料は、上層セクションプレートから流入した液相流量と下層セクションプレートから上昇した蒸気流量である。精製セクションプレートの流出物料は、上層セクションプレートへの気相流量と下層への液相流量である。精製セクションプレートの流入物料と流出物料との差は、セクションプレートでの液体保持量の変化量であり、単位時間内において次式で表現される。
【0058】
<式1>
【0059】
セクションプレートにおける各成分液相に対して材料評価を行い、セクションプレートが気液平衡に達した後に、各成分の液相の変化量は、セクションプレートにおける各成分の流入と流出の差である。
【0060】
<式2>
【0061】
<式3>
【0062】
各成分の液相濃度の変化率を算出し、現時点での液相濃度と組み合わせることで、気液平衡に達した後の各成分の液相濃度を求めることができる。
【0063】
式(4-3)で得られた各成分の液相の濃度を相平衡式に代入して、蒸気流中の各成分の濃度を求める。
【0064】
<式4>
【0065】
モル分率の正規化方程式に代入して、計算結果の検証を行う。
【0066】
<式5>
【0067】
物性データに基づいて各成分の気相と液相とのエンタルピー値を求め、セクションプレートの熱量計算方程式に代入する。すなわち、セクションプレートの液体保持量が取得した熱量は、液体保持量の流入材料がもたらす熱量とカラムプレートの流出材料が持ち去る熱量との差である。
【0068】
<式6>
【0069】
式(4-6)の左式に対して導出操作を行い、展開して整理し、気液がバランスをとった後の気相流量の計算式を得る。
【0070】
<式7>
【0071】
<フィードプレートの動的モデルの構築>
フィードプレートの構造は、図5-2に示す通りである。フィードプレートの流入材料は、上層セクションプレートから流入した液相流量であり、下層セクションプレートから上昇した蒸気流量及びフィードフローである。フィードプレートの流出材料は、上層セクションプレートへ行く気相流量と下層に流れる液相流量である。フィードプレートの流入材料と流出材料との差は、フィードプレートの液体保持量の変化量であり、単位時間内には次の式がある。
【0072】
<式8>
Fは、液相成分のフェーズフガシティーである。
フィードプレートの各成分の液相に対して材料評価を行う。フィードプレートの気液がバランスをとった後に、各成分の液相の変化量は、フィードプレートにおける各成分の流入と流出との差である。
【0073】
<式9>
【0074】
<式10>
上式に対して導出操作を行い、展開して整理し、下式を得る。
【0075】
各成分の液相濃度の変化率を求め、現時点の液相濃度と組み合わせて、気液がバランスをとった後の各成分の液相濃度を求めることができる。
【0076】
式(4-10)で求めた各成分の液相濃度を相平衡方程式に代入し、気相流量における各成分の濃度を求める。
【0077】
<式11>
【0078】
<式12>
モル分率正規化方程式に代入し、計算結果の検証を行う。
【0079】
物性データに基づいて各成分の気相と液相とのエンタルピー値を求め、フィードプレートの熱量計算方程式に代入する。すなわち、フィードプレートの液体保持量によって得られる熱は、フィードプレートの流入材料がもたらす熱量とフィードプレートの流出材料が持ち去る熱量との差である。
【0080】
<式13>
【0081】
式(4-13)の左式に対して導出操作を行い、展開して整理し、気液がバランスをとった後の気相流量の計算式を得る。
【0082】
<式14>
【0083】
<セクションボトムの数学モデルの確立>
セクションボトムの構造は、図5-3に示す通りである。精製セクション内の液相は、上から下へセクションボトムに入った後、一部の液体はリボイラーに入り込み、上昇蒸気に気化し、精製セクション内に還流して、一部がセクションボトムの製品として採取される。セクションボトム及びリボイラーが気相と液相の平衡変化が発生したと見なされるため、セクションボトムも理論プレートと見なすことができ、セクションボトムから回収されたストリームとリボイラーで部分気化後に発生する上昇蒸気は、気液がバランスをとった後の蒸気流及び液体流と見なされる。
【0084】
【0085】
<式15>
【0086】
セクションボトムの各成分の液相に対して材料評価を行うと、セクションボトムの気液がバランスをとった後に、各成分の液相の変化量はセクションプレートにおける各成分の流入と流出の差である。
【0087】
<式16>
【0088】
<式17>
上式に対して導出操作を行い、展開して整理し、次の式を得る。
【0089】
各成分の液相濃度の変化率を求め、現時点の液相濃度と組み合わせると、気液がバランスをとった後の各成分の液相濃度を求めることができる。
【0090】
式(4-17)で求めた各成分の液相濃度を相平衡方程式に代入し、気相流量における各成分の濃度を求める。
【0091】
<式18>
【0092】
<式19>
モル分率正規化方程式に代入し、計算結果の検証を行う。
【0093】
物性データに基づいて各成分の気相と液相とのエンタルピー値を求め、セクションボトムの熱量計算方程式に代入する。つまり、セクションボトムの液体保持量によって得られる熱は、セクションボトムの流入材料によってもたらされる熱とセクションボトムの流出材料によって奪われる熱との差である。
【0094】
<式20>
【0095】
式(4-20)の左式に対して導出操作を行い、展開して整理し、気液がバランスをとった後の気相流量の計算式を得る。
【0096】
<式21>
【0097】
以下、本開示の低沸点カラム及び高沸点カラムに含まれるコンデンサ及びリボイラーの設計について詳細に説明する。
【0098】
コンデンサの中には、冷熱の2種類の媒体が熱交換を行い、熱媒体は炭化水素ガスであり、炭化水素ガスの筒体内壁はコンデンサの頂部まで上昇し、プレートバンドルに入り、プレートバンドルの中で凝縮し、凝縮液は底部のオーバーフロー装置から排出され、凝縮されないガスは気液分離装置を経て、設備の側面の不凝縮蒸気出口から排出される。冷媒は冷却水であり、側面の下部からプレートバンドルに入る。ウェルフローは側面の上部から4回排出され、炭化水素ガスと交錯流を形成し、炭化水素ガスが放出する顕熱と潜熱を持ち去る。炭化水素ガスは、プレートバンドルと筒体の隙間を通ってから、プレートバンドルの頂部に上昇する。上昇した炭化水素ガスを流動空間を与えるため、プレートバンドルと筒体の間に端板を接続具として使用することができない。従って、本発明は、主な重量測定部品としてビーム構造を採用して、前記プレートバンドルの底部に置き、且つ頂部に位置決め装置を設けて、プレートバンドルの揺れを防止する。このように、ガスの流れ過程では、最も狭い場所は弧状板、圧着板と筒体内壁が形成する空間になる。この空間は、ガスの上昇流に影響を与えないように、プレートバンドル中のガスの流動空間の大きさに近い必要がある。プレートバンドル内のガスが流れるためのスペースは、装置の軸方向にプレートとチューブによって形成されるチャンネルである。
【0099】
炭化水素ガスは、プレートバンドル内の冷却水と熱交換を行い、潜熱を放出して液状に凝縮する。凝縮液は、箱体の中で重力作用を受けて、バッフルを通じて非凝縮性ガスと分離した後、オーバーフローパイプに入り、カラムトトレイに還流する。オーバーフローパイプの底部には、液体シール装置が設置され、凝縮液が熱交換器からスムーズに排出できることを保証している。液体の排出は、凝縮設備の正常な運転の鍵である。液体が蓄積すると、プレートバンドルの一部が水没し、熱交換器の有効熱伝達面積が減少する。 一定の高さの液体シールにより、カラム内の炭化水素ガスがオーバーフローパイプに逆流するのを防ぐこともできる。
【0100】
コンデンサの信頼性を保証し、二種類の媒体が接触せず、外部に漏れないことを保証するために、設備は密封しなければならない。このコンデンサの伝熱素子は、ステンレス鋼板を採用し、二枚の前記ステンレス鋼板は全自動タングステン極アルゴンガス保護の雰囲気で溶融溶接によってプレート及びチューブを形成し、さらに手動アルゴンアーク溶接を経て複数のプレート及びチューブをプレートバンドルに溶接し、プレートバンドルの両側を厚いプレートでクランプして固定し、且つレバーで引き締めることで、耐圧能力を強化し、クランプサイズを保証している。
【0101】
<カラムトップ式コンデンサの数学モデルの確立>
カラムトップ式コンデンサの構造は、図5-4に示す通りである。カラムトップ式コンデンサは、進入した気相を液体に凝縮した後に、一部は精製セクションに還流液を提供し、一部の凝縮液は精製セクションプレートの頂部から採取される。本発明のカラムトップ式コンデンサは、シェル・チューブ式熱交換器であり、シェル側は冷却水であり、チューブ側は精製セクションからの上昇蒸気であり、両者の隔壁は熱交換する。熱交換が終わった後、チューブ側における気相がすべて液体に凝縮すると、全コンデンサと呼ばれ、チューブ側における気相が部分的に液体に凝縮すると部分コンデンサと呼ばれる。冷却水の温度が蒸気理論沸点温度より低い場合、すべて凝縮され、逆に部分凝縮と言われる。凝縮後の液は還流タンクに入り、還流弁を通じて再度に精製セクション内に流れる。
【0102】
コンデンサモデルは主に精製セクション内に入る還流量の温度を計算するために用いられ、冷熱流体間の熱交換損失を無視すると、エネルギー保存則から、カラムトップ上昇気相流量が減少する熱量は、冷却水が増加する熱量であることが分かる。すると、以下の熱量計算方程式がある。
【0103】
<式22>
【0104】
<式23>
【0105】
液相混合物のエンタルピー値の計算式に基づいて、上昇蒸気出口のエンタルピー値を計算する。
【0106】
<式24>
【0107】
入口と出口の冷却水のエンタルピー値は、液体の純粋な成分のエンタルピー値の計算式によって計算される。
【0108】
<式25>
【0109】
次に、液体に凝縮された後のカラム上部の蒸気の温度を取得することができる。
【0110】
本開示の凝縮器の構造設計において、バッフルのパラメータ、熱交換管の仕様及び配置、総熱伝達係数、及び管側圧力の変化を含む要因を考慮する必要がある。 以下、上記の要因に選択されたパラメータについて詳しく説明する。
【0111】
熱伝導面積はコンデンサの負荷能力を決定し、設備が凝縮作用を果たすことができるかどうかの鍵である。本発明は、矩形波紋を有するステンレス鋼板を伝熱素子として採用する。一般的に、プレート式熱交換器の熱伝達係数は、伝統的なシェル式熱交換器の2~3倍であり、且つ構造がコンパクトであり、占有空間が小さいので、カラムトップ式コンデンサの要求に合っている。
【0112】
熱負荷Qの計算式は、次の通りである。
【0113】
<式26>
【0114】
【0115】
<式27>
【0116】
総熱伝達係数Kの計算公式は、次の通りである。
【0117】
<式28>
【0118】
<式29>
【0119】
公知のアルゴリズムによって得られた熱側膜と冷側膜の熱伝達係数はそれぞれh=1356.87W/(m.K)である。h=7882.37W/(m.K)を式(2-3)の中に代入して、K=689.602W/(m.K)を得る。熱伝導公式Q=AKΔTから、熱伝導面積A=220.7m、選択面積A=270m及び面積余裕量C=A/A-1=22.3%を得る。
【0120】
本発明のコンデンサにおけるバッフルは、水平円欠損形状を選択して設計する。一般的には、弓形切欠きの高さは、ケーシング内径の10%~40%とし、本発明では25%とした。切り取られた円形ノッチの高さは、h=175mmであるので、h=175mmを選択する。バッフルとケーシングとの内径間の隔壁は、4mmである。バッフルの間隔について、一般的にバッフルの間隔をケーシング内径の0.2~1.0倍とする。バッフルの間隔B=0.8Dであれば、B=560mmである。バッフルの厚さとサポートされていないスパンは、標準に従って6mmにすることができる。間隔は、210mmである。
【0121】
熱交換器のチューブとプレートは、最も一般的な正三角形の配置である。チューブの間隔は通常、チューブの外径の1/4である。 本開示のチューブの外径は、プロセス操作において一般的に使用されるチューブから中心までの距離の配置に従って25mmであると決定され、対応する中心から中心までの距離は32mmである。
【0122】
<リボイラーの数学モデルの確立>
リボイラーの構造は、図5-5及び図5-6に示す通りである。リボイラーは、シェル・チューブ式熱交換器である。気化物を通じて上昇蒸気を発生し、精留過程全体に熱を提供する。そのため、リボイラーは精留過程に重大な影響を与え、リボイラーのモデルはカラムボトムに入る熱の平衡計算に用いられる。リボイラーのシェル側は、高圧及び高温の飽和蒸気を通過させている。チューブ側は、精製セクションからの材料が通過できるようにする。そこで、両者は、隔壁を通じて熱交換する。熱交換が終わった後、飽和蒸気は水に凝縮して排出される。精製セクション材料は、部分的に気化して精製セクション内に入る。リボイラーがカラムの内部に伝わる熱の多さは精留過程、最後の製品の採掘品質に大きな影響を与えるため、飽和蒸気の流量を制御する必要がある。
【0123】
バルブ前後の蒸気圧力P、P、バルブ流通能力Cv及びバルブの開度Aに基づいて、シェル側への飽和蒸気流量を次の式で算出する。
【0124】
<式30>
【0125】
<式31>
ここで、C1、C2及びC3は、アントレイン定数である。
【0126】
熱伝達係数に基づいて、チューブの温度を計算する。
【0127】
<式32>
ここで、Tはパイプ温度であり、Wは熱伝導能力である。
【0128】
<式33>
ここで、Uは熱伝達係数であり、Tbはカラムボトムの温度であり、Tcは液体飽和温度である。
【0129】
リボイラーの設計方法は、以下のステップを備える。
【0130】
ステップ1では、プロセス条件を決定する。プロセス条件は、一般に、沸騰媒体と熱媒体の流量、入口と出口の温度、入口と出口の圧力、臨界圧力、及び構造の熱抵抗を決定する。プロセス条件を通じて、沸騰及び加熱媒体の物理的/化学的特性や腐食性能を知ることができる。
【0131】
ステップ2では、リボイラーの熱負荷を計算する。プロセス条件から、熱負荷を計算する。一般的には、再沸騰媒体と加熱媒体との流量、及び輸出入温度を提供する。この時、再沸騰媒体と冷却媒体との熱負荷の相対誤差が10%未満であるかどうか、加熱媒体が沸騰媒体より大きいかどうかを検証する。上記の条件に合致しなければ、提供されたプロセス条件が正しいかどうかを確認する必要がある。熱伝導計算では、加熱媒体の熱負荷を採用する。
【0132】
ステップ3では、沸騰加熱流体の物性パラメータを決定する。沸騰加熱媒体の輸入輸出温度から、定性温度、対数平均温度差を算出する。ユーザが物性パラメータを与えなければ、沸騰加熱媒体の気化潜熱、密度、比熱容量などの物性パラメータを定性的な温度に従って算出される。
【0133】
ステップ4では、リボイラーの構成パラメータを算出する。具体的には、冷熱流体がチューブ側を流れるか、シェル側を流れるかを決定し、熱交換チューブの直径とチューブ内の流速を選択する。所定のプロセス条件及び工事の実際の経験から、リボイラーの熱強度値を見積もり、基本的な熱伝導方程式を用いて熱交換面積を算出する。事前推定の性質と安全率を考慮すると、事前推定された熱交換面積は、通常、計算値の1.15~1.25倍である。その後、熱交換面積から、リボイラーの標準系列を参照して、その構造パラメータを予め選定する。前記構造パラメータとしては、主に、シェルの直径、熱交換チューブの直径、チューブの長さ、チューブの中心距離、チューブの総数、配置角度、バッフルの形状、円形ノッチの高さ、間隔、チューブ側の数、シェルの形状及びチューブ側とシェル側を接続するパイプの直径を含む。
【0134】
ステップ5では、臨界最大熱強度を計算する。具体的には、プロセス物流条件と構造パラメータから、臨界最大熱強度と実際の熱強度を算出する。実際の熱強度が臨界最大熱強度の70%未満であり、且つ180より小さく、60より大きければ、設計点が核沸騰領域で作動していることを示す。この場合、事前に選択された機器が適切であり、詳細な計算が可能である。そうでなければ、経験熱強度値を調整し、モデルを再選択する。
【0135】
ステップ6では、リボイラーの熱伝導性能を検証する。プロセス物流条件と構造パラメータに基づいて、沸騰熱伝達係数、加熱誘電体膜の熱伝達係数、総熱伝達係数、及び熱交換面積の残量を計算する。計算熱強度と予備推定熱強度の相対誤差が±20%より大きければ、経験熱強度の経験値を調整し直して、モデルを再選択して計算する。また、熱交換面積の残量が20%より小さければ、リボイラーの構造パラメータの再選択する。
【0136】
ステップ7では、圧力バランスと取り付け高さを計算する。具体的には、リボイラーについて圧力バランス及び取り付け高さの算出を行う。設計要求を満たさなければ、設備サイズと輸出入パイプラインの寸法を調整する。ステップ5から、要求に至るまでモデルを再選択して計算する。
【0137】
次に、本発明は、上記の手順に従って、例えばリボイラーの校正計算(熱伝達係数や抵抗、有効平均温度差、熱伝導面積及び取り付け高さを含む)などの重要なステップについて詳述する。
【0138】
<熱伝達係数>
1.シェル側沸騰熱伝達係数
(1)ベアパイプ沸騰熱伝達係数
沸騰熱伝達係数は、核沸騰熱伝達係数と二相対流熱伝達係数の和であるダブルメカニズムモデルにより記述することができる。そのほか、水平熱サイフォンリボイラーのシェル側媒体の気化率が一般的に30%未満であることを考慮すると、次式でシェル側の沸騰熱伝達係数を計算する。
【0139】
<式34>
【0140】
リボイラー設計は、一般的に核沸騰領域で動作するが、水平熱サイフォンリボイラーが完全に核形成された状態にあるときに、核沸騰係数は流体の速度や圧力とは関係ない。核沸騰領域における顕熱伝導熱量の割合が非常に小さいため、核沸騰係数に経験値を追加すればよい。
【0141】
ベアパイプの外側の核沸騰領域のフィルム熱伝達係数は、Mоstinski法によって計算される。
【0142】
<式35>
【0143】
数式は、次の条件を満たす場合に使用できる。
Φ -核沸騰熱伝達係数の補正係数
1、 -シェル側の冷たい流体の入口と出口の温度℃
Ψ -下部加熱管によって生成された蒸気の沸騰熱伝達に対する影響を補正するように構成された蒸気被覆率補正係数
Z - 臨界圧力とコントラスト圧力の関数
A0-単位管長あたりの外部表面積A0=πd0, m2/m;
A -リボイラー加熱管の外表面積m2;
Q-熱負荷W
【0144】
<式36>
【0145】
【0146】
<式37>
【0147】
式中のhを上記の式に代入すると、次のようになる。
【0148】
<式38>
【0149】
<式39>
上式から以下の式を得る。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
>2.5の場合、F=2.5とする。
上式において、
hl -液相全体に基づいて計算された対流熱伝達係数W/(m2・K)
htp -二相対流熱伝達係数W/(m2・K)
【0154】
(2)T字型フィン付きチューブ側及びシェル側の沸騰熱伝達係数
T字型のフィン付きチューブの製造中に調整する必要があるパラメータは、ピッチとフィン間の開口度である。一般的に、一般的に使用されるピッチは1~3mmであり、フィン間の開口度は0.15~0.55mmであり、フィンの高さは0.9~1.2mmである。一般的に使用されるチューブパラメータを表に示す通りである。
【0155】
【0156】
T字型フィン付きチューブの外側の沸騰熱伝達係数は、次の式で計算される。
<式40>
上式において、
C -T字型チューブの構造に関連する定数であり、C=1.47×1012、30T018-2000シリーズに適している。
λl -液相熱伝導率W/(m・℃)
X1、X2、X3、X4 -パラメータ
Prl -液体プラントル数
q - ベアパイプの外表面積に基づく平均熱強度W/m2
σ - 液相表面張力N/m
μi -液相動的粘度Pa・s
μv -気相動的粘度 Pa・s
ρi -気相粘度kg/m3
【0157】
チューブ内の熱媒体として水蒸気を使用する場合は、次の実験式を使用して計算できる。
<式41>
【0158】
上式において、Reiはチューブ内の媒体のレイノルズ数であり、Giは総質量流量kg/(m2・s) であり、Siはチューブ側フローエリアmである。
<圧力バランス及び取り付け高さ>
【0159】
リボイラーを設計する際には、精製セクションとリボイラーの間の高低差及びリボイラーのさまざまな設置寸法を決定して、運転中のリボイラーの正常な循環を確保するために、シェル側圧力バランス計算を実行する必要がある。
【0160】
(1) リボイラーの入口ラインの摩擦損失
<式42>
μ1-入口チューブでの流量m/sである。
d1-入口チューブの内径mである。
L1-カラムボトムからリボイラーの入口ラインまでの等価直径であり、入口ラインの直線管部の長さ、カラムからの液体の収縮、リボイラーに入る液体の膨張、バルブ、エルボーノズルなどのチューブ部材の等価長さmを含む。
f1-入口ラインの摩擦係数である。
【0161】
<式43>
Re1≦1000の場合, f1=67.63Re1 -0.9873
1000<Re1<4000の場合, f1=0.496Re1 -0.2653
Re1≧4000の場合, f1=0.344Re1 -0.2258
式中において、
―入口チューブの質量流量kg/(m2・s)である。
― 入口ラインのフローエリアm2である。
【0162】
(2)リボイラー出口ラインの摩擦損失
<式44>
f2-出口ラインの摩擦係数であり、式~式に従って計算され、Reが式で計算される。
d2-出口ラインの直径mである。
L-リボイラーの出口からカラム入口までの等価直径であり、出口ラインの直線管部の長さ、カラムからの液体の収縮、カラムに入る液体の膨張、バルブ、エルボーノズルなどのチューブ部材の等価長さmを含む。
ρlv-出口チューブ内の気液混合物の平均密度kg/mである。
μlv --出口チューブ内の気液混合物の平均粘度Pa・sである。
【0163】
(2) リボイラーのシェル側の静圧ヘッド
<式45>
Ds-リボイラーのシェルの直径mである。
【0164】
(4)リボイラーの出口ラインの内部での静圧ヘッド
<式46>
、H及びHは、標高差である。
【0165】
(5)リボイラーのシェル側の摩擦圧力の低下
<式47>
NB-バッフルの数である。
de-チューブの等価直径mである。
Gs-シェル側の質量流量であり、水平熱サイフォンリボイラーの流量を総流量の半分に設定し、kg/(m2・s)。
f5-シェル側の摩擦係数
10≦Re<10の場合、f5=98・Re -0.99である。
100≦Reo<1.5×103の場合、
1.5×103≦Reo<1.5×104の場合、f5=0.6179・Reo -0.0774である。
1.5×104≦Reo<106の場合、f5=1.2704・Reo -0.153である。
(6)リボイラーの取り付け高さ
取り付け高さとは、カラムボトムとリボイラーの頂部との間の標高差を言う。圧力平衡原理から、以下の式を得る。
【0166】
<式48>
以上の式について計算し、Hを得る。
【0167】
リボイラーは、横型ダブルチューブ側熱交換器を採用している。熱媒体の入口シールと出口シールの間に仕切りが設定されている。T字型のフィンの端は、熱交換チューブのチューブプレートに溶接されている。熱交換チューブに割れ目が発生した場合、シールフランジを外して熱交換チューブと一緒にチューブプレートを取り出すことができるので、メンテナンスや交換に便利である。従来の管状熱交換器と比較して、従来の管状熱交換器が分割された場合のメンテナンスが難しく、熱交換チューブの両端を塞いで熱交換面積の損失を改善するしか方法がないため、この改善により、熱交換エリアの損失を引き起こさずに壊れた熱交換チューブを交換し、メンテナンス時間を短縮し、生産効率を向上させる。また、シールパーティションは、熱媒体がリボイラーに留まる時間を延長することができ、リボイラー内の材料との十分な熱交換を助長し、効率を改善し、エネルギー消費を低減する。
【0168】
精製セクションでの精留制御プロセスとその制御原理は、以下の通りである。
【0169】
精留の原理及び熱力学的性質から、精製セクションの圧力が一定である場合、温度と成分とは一定の関数関係を呈する。出力部品の特性をオンラインで測定することは困難であるため、現在、整流プロセス中に両端を制御する主な手段は、温度測定によって出力部品の特性を間接的に取得することである。すなわち、精製セクションの頂部還流量を用いて精製セクションの頂部温度を制御し、精製セクションの底部加熱量を用いて精製セクションの底部温度を制御して、製品品質を管理する目的を達成する。
【0170】
本開示における精製セクションの制御構成要素は、以下の部分を含む。
【0171】
スケールアジャスター:型番がDTZ-2100である。このアジャスターは、受信信号と所定の信号の差分に対して比例積分微分演算を行う。アクチュエータは、電流出力で制御され、温度、圧力及び流量などのパラメータを同時に自動的に調整できる。
【0172】
温度伝送器:K型ニッケルクロム-ニッケルシリコン熱電対を温度センサとして選択する。本発明は、KBW-1121を温度伝送器として選択し、温度範囲が広く、高温下での性能が安定であり、熱起電力と温度の関係がほぼ線形であり、酸化及び不活性雰囲気中で連続的に使用するのに適している。短期間の使用時の最高温度制限は1200℃であり、長期使用の最高温度は1000℃である。KBW-1121の入力信号は、小さい距離の場合に、3mV未満にすることはできない。大きい距離の場合に、80mV未満でなければならない。KBW-1121の出力信号は、1~5VDCまたは4~20mA ADCの間である。負荷抵抗の大きさは、0~500Ωである。レンジ範囲が5 mV以上の場合、KBW-1121の精度は±0.5%である。レンジ範囲が3~5mVの場合、KBW-1121の精度は、±1.0%である。KBW-1121の動作環境温度は、5℃~40℃である。動作環境の相対湿度は、10%~75%である。
【0173】
流量伝送器について、流量を検出する必要がある媒体が加熱水蒸気であるため、ディファレンシャルトランスミッタを選択した。
【0174】
電気-ガスバルブポジショナ:ZPD-2000シリーズの電気-ガスバルブポジショナを選択し、主なパフォーマンス指標は以下の通りである。入力信号は、4-20mA、4-12mA、12-20mA、0-10mA、0-5mA、5-10mAという6つの範囲がある。出力圧力は、0.02~0.5MPaである。定格ストロークには、直線ストロークと角ストロークの2種類がある。直線ストロークの範囲は10~100mmである。角ストロークの範囲は、0~50°、0~70°及び0~90°という3種類がある。ガス圧力は、0.14~0.55MPaである。入力信号が4~20mAの間にある場合、入力インピーダンスが300オームである。入力信号が0~10mAである場合、入力インピーダンスは1000オームである。
【0175】
電動調節弁の型番については、QSVP-16Kであり、動作電源が単相220Vであり、制御信号が4~20mAまたは1~5VDCであり、4~20mADCバルブビット信号を出力する。
【0176】
【0177】
<式49>
【0178】
インクリメンタルタイプは、元の出力の実際の値に変数を追加することである。偏差が発生した場合にのみ、出力のインクリメンタル値が生成される。これにより、偏差の累積による悪影響を回避できるだけでなく、手動から自動への切り替えを簡単に実現できるため、システムの安定性が確保される。
【0179】
精製セクションの温度制御システムをさらに研究することを便利にするために、精製セクションの温度システムの制御特徴及び変数のシステムでの主な影響要素に対して、本発明は上述の精製セクションの動態数学モデルのメカニズム関係と熱力学静的方程式に基づいて、温度システムに存在する非線形、流体伝達とエネルギー伝達によるシステムヒステリシス、両端温度の強結合と時間変化特性などの特性に基づいて、精製セクションの温度システムにおける定常動作点を選択し、その工業状態における近似数学モデルを導出し、以下の式に示す。
【0180】
<式50>
【0181】
デュアル入力デュアル出力システム構造の結合特性に従って、フィードフォワード補償デカップリングシステムは、図6に示される構造で設計される。デカップリングを実現するには、不変性の原則に従って次のように取得できる。
【0182】
<式51>
21(s)、N12(s)は、フィードフォワードデカップリングリンクである。
【0183】
<式52>
【0184】
フィードフォワードデカップリングリンクの数学モデルは、上記の式から取得できる。式(4-1)を式(4-3)に代入すると、精製セクションシステムのデカップラーの伝達関数は、それぞれ次のように得られる。
【0185】
<式53>
【0186】
システムの実際の検証を経て、フィードフォワードデカップリング条件下で、具体的な制御パラメータは以下の通りである。
【0187】
システムに次のような摂動を加える。
1) t=400の場合、精製セクションのトップループに対して、+%10の摂動信号を伴う温度摂動を印加して、精製セクションの下部ループに対するデカップリング能力を検出する。
2) t=600の場合、精製セクションの下部ループに対して、+%10の摂動信号を伴う温度摂動を印加して、精製セクションのトップループに対するデカップリング能力を検出する。
【0188】
従来の比例、積分、及び差動コントローラの下でのシステムの動的応答結果と比較することにより、当業者は、「フィードフォワード補償デカップリング後の精製セクションの制御システムは、オーバーシュート量がある程度低下し、供給量の乱れを抑製するための調整時間が短縮されている。400s及び600sにおいてそれぞれ精製セクションの頂部の還流量及び精製セクションの底部の加熱量にステップ摂動を加える。フィードフォワードデカップリング制御の下で、自回路の摂動に対する効果的な抑制を実現できるだけでなく、他の回路に対する影響を効果的に回避することができ、従来の制御結果に比べてデカップリング効果が非常に明らかである。」という結論を出す。
【0189】
本発明は、精留装置をモデリングすることによって、この装置の精確な設計を実現し、精留過程の精確な制御を実現し、気相-液相(三フッ化塩素-フッ化水素)平衡システムの還流比パラメータの安定性を効果的に向上させ、さまざまな作業条件下で幅広い動的平衡運転を実現できる。本発明は、深さ精留技術を通じて三フッ化塩素と各不純物成分の有効な分離を実現し、電子グレード三フッ化塩素を精製することができる。
【0190】
以上、本発明の基本原理、主な特徴及び本発明の利点を示して、説明した。当業者は、本発明は上述の実施形態に制限されず、上述の実施形態と明細書に記載されているのは本発明の原理にすぎず、本発明の精神と範囲を逸脱しない限り、様々な変化と改善があり、これらの変化と改善はすべて本発明の保護範囲内に属する。本発明の保護範囲は、添付の請求項及びその同等物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6
【国際調査報告】