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特表2023-511691目の位置決めシステムを含む磁気治療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】目の位置決めシステムを含む磁気治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/02 20060101AFI20230314BHJP
   A61F 9/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61N2/02
A61F9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545343
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 IL2021050035
(87)【国際公開番号】W WO2021152574
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】16/773,323
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522295302
【氏名又は名称】エピテック エムエージー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ロネン,イツィク
(72)【発明者】
【氏名】カルメリ,トメル
(72)【発明者】
【氏名】ギヴォン,ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】シャリフ,エイタン
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA06
4C106BB21
4C106CC03
4C106DD20
4C106FF08
4C106FF12
(57)【要約】
被験者の目を治療するための磁気治療装置において目の位置決めシステムが提供され、磁気治療装置は、磁場および電場を発生させるための磁気コイルを含む。目の位置決めシステムは、近位端および遠位端を有するハウジングを含み、磁気コイルはハウジング内に近位端に近接して配置される。位置決め部材が少なくとも一部、ハウジングの近位端に取り付けられ、位置決め部材は基部およびその上に連結されたアイカップを含み、アイカップは、被験者の眼窩部を受け入れるように構成される。少なくとも1つのセンサーがハウジングに接続されて磁気コイルと電気的に通信し、少なくとも1つのセンサーが位置決め部材を検出するとき、磁気コイルは治療のために作動可能である。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁刺激を目の眼窩周囲部分に適用するためのシステムであって、
電磁場を電磁場発生器に対して定義された所定の部分内に提供するように配置された電磁場発生器と、
被験者の前記目を前記所定の部分に対して位置付けるための目の位置決め組立体であって、
前記被験者の前記目を位置付けるため、および前記目の眼窩部を受け入れるための目の位置決め装置、ならびに
前記電磁場発生器と前記目の位置決め装置内に位置付けられた目の所望の相互の所定の3次元空間的配向の存在を検出するため、および前記電磁場発生器と前記目の位置決め装置内の前記目の前記所定の3次元空間的配向が存在する場合に限り前記電磁場発生器の動作を許可するために有用な、目の位置合わせの作動表示を提供するための少なくとも1つのセンサー
を含む、目の位置決め組立体と
を備える、システム。
【請求項2】
前記電磁場発生器は、磁場および電場を発生させるための磁気コイルを含み、前記システムは、
近位端および遠位端を有するハウジングであって、前記磁気コイルが前記ハウジング内に前記近位端に近接して配置される、ハウジングと、
前記ハウジングの前記近位端に少なくとも一部取り付けられた目の位置インジケータであって、前記目の位置決め装置がその上に取り付けられている基部を含む、目の位置インジケータと
も備え、
前記少なくとも1つのセンサーは前記目の位置インジケータを検出し、前記作動表示は、前記磁気コイルが治療のために作動可能にされ得ることを示す、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記目の位置インジケータは、前記ハウジングの近位端上に受け入れられるように配置されたカバーを更に含み、前記基部は前記カバーに取り外し可能に取り付けられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記目の位置インジケータは、それから延出しているばね腕を含み、前記ばね腕は、前記ハウジング内で受け入れられて前記位置決め部材を前記ハウジングの前記近位端から離れて偏向させるように配置される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサーは光学センサーを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記目の位置インジケータは、それから延出している検出腕を含み、前記検出腕は、前記目の位置インジケータが前記ハウジングの前記近位端に隣接している場合に前記光学センサーによって検出されるように配置される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサーは圧力センサーを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサーは、前記目の位置インジケータが前記ハウジングの前記近位端に隣接している場合を検出するために前記ハウジングの前記近位端に配置された近接センサーを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記目の位置インジケータが前記磁気コイルの作動のために位置付けられているときを示すために前記センサーによって操作される少なくとも1つのインジケータを更に含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサーは、前記磁気コイルが作動されている間、前記目の位置インジケータの検出のために前記目の位置インジケータを監視する、請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのセンサーと電気的に通信している閾値検出器を更に含み、前記閾値検出器が前記少なくとも1つのセンサーの出力が所定の閾値を上回っていると判断する場合、前記出力表示は前記磁気コイルが作動可能であることを示す、請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
被験者の目を治療するための磁気治療装置と共に使用するための目の位置決めシステムであって、前記磁気治療装置は、磁場および電場を発生させるための磁気コイルを含み、前記目の位置決めシステムは、
近位端および遠位端を有するハウジングであって、前記磁気コイルが前記ハウジング内で前記近位端に近接して配置される、ハウジングと、
前記ハウジングの前記近位端に少なくとも一部取り付けられた位置決め部材であって、前記位置決め部材は、基部およびその上に連結されたアイカップを含み、前記アイカップは、前記基部から上方へ延出する壁を含み、前記被験者の眼窩部を受け入れるように構成されていて、前記アイカップの中心は前記磁気コイルの中心軸からオフセットされる、位置決め部材と
を備える、目の位置決めシステム。
【請求項13】
前記アイカップの前記中心と前記磁気コイルの前記中心軸との間の距離は、略3mmである、請求項12に記載の目の位置決めシステム。
【請求項14】
前記壁は通気口を含む、請求項12に記載の目の位置決めシステム。
【請求項15】
前記壁は、高さが異なる内側壁部および外側壁部を含む、請求項12に記載の目の位置決めシステム。
【請求項16】
位置決め部材は、前記被験者の左目または右目の1つとの使用のために特別に設計される、請求項12に記載の目の位置決めシステム。
【請求項17】
前記位置決め部材は、それから延出しているばね腕を含み、前記ばね腕は、前記ハウジング内で受け入れられて前記位置決め部材を前記ハウジングの前記近位端から離れて偏向させるように配置される、請求項12に記載の目の位置決めシステム。
【請求項18】
被験者の目を治療するための磁気治療装置であって、
近位端および遠位端を有するハウジングと、
前記ハウジング内にその前記近位端に近接して配置された磁気コイルと、
前記ハウジングの近位端に少なくとも一部取り付けられた位置決め部材であって、前記位置決め部材は基部およびその上に連結されたアイカップを含み、前記アイカップは、前記被験者の目の眼窩部を受け入れるように構成されて、前記アイカップの中心は前記磁気コイルの中心からオフセットされる、位置決め部材と、
前記磁気コイルが治療のために作動され得ることを示すために前記位置決め部材を検出する少なくとも1つのセンサーと
を備える、磁気治療装置。
【請求項19】
前記位置決め部材は、それから延出しているばね腕を含み、前記ばね腕は、前記ハウジング内で受け入れられて前記位置決め部材を前記ハウジングの前記近位端から離れて偏向させるように配置される、請求項18に記載の磁気治療装置。
【請求項20】
前記位置決め部材が前記磁気コイルの作動に適した位置にある場合を示すために前記少なくとも1つのセンサーの出力に応答する少なくとも1つのインジケータを更に備える、請求項18に記載の磁気治療装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つのセンサーの出力に応答する閾値検出器を更に備え、前記閾値検出器が、前記少なくとも1つのセンサーの出力が所定の閾値を上回っていると判断する場合、前記磁気コイルは作動可能にされる、請求項18に記載の磁気治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、被験者の目を治療するための磁気治療装置と共に使用するための目の位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁場の効能は様々な医学的処置で採用されている。上皮組織表面は外部の有害な要因に対する機械的なバリアを構成するので、重要な処置標的は上皮組織である。例えば、目では、角膜上皮は、有害物質、ならびに水およびイオンなどの分極した物質が前眼房に入るのを阻止し、角膜バリアにおける機能障害は、痛み、慢性症状、損傷、または視力喪失さえ引き起こす。
【0003】
磁場の使用は、ドライアイ疾患(乾性角膜炎)、角膜炎、角膜上皮機能障害、糖尿病に付随した角膜のバリア機能低下、加齢による角膜透過性の増大に付随した状態、角膜表面の軽度の病変、コンタクトレンズ装着に伴う状態、角膜の自己修復能力の低下、汚染環境からの有害物の目への侵入、侵入防止システムの弱まり、および角膜に関連した炎症、などの眼疾患の治療に効果的であり得る。
【0004】
眼疾患を磁場で治療するための既存のシステムは、治療を行うために被験者が適切に位置付けられることを確実にできないなどの、欠点を有する。加えて、眼窩部の解剖構造における被験者間のばらつきは、磁場発生器に対して治療すべき目の不適切な位置決めとなり得る。治療の有効性は、電磁場の位置決めによって決まるので、これらの差異は治療における不一致を引き起こし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つ以上の実施形態では、被験者の目を治療するための磁気治療装置と共に使用するための目の位置決めシステムが提供され、磁気治療装置は、磁場および電場を発生させるための磁気コイルを含む。目の位置決めシステムは、近位端および遠位端を有するハウジングを含み、磁気コイルはハウジング内に近位端に近接して配置される。位置決め部材が少なくとも一部、ハウジングの近位端に取り付けられ、位置決め部材は基部およびその上に連結されたアイカップを含み、アイカップは、被験者の眼窩部を受け入れるように構成される。少なくとも1つのセンサーが、ハウジングに接続されて磁気コイルと電気的に通信し、少なくとも1つのセンサーが位置決め部材を検出するとき、磁気コイルは治療のために作動可能である。
【0006】
1つ以上の実施形態では、被験者の目を治療するための磁気治療装置と共に使用するための目の位置決めシステムが提供され、磁気治療装置は、磁場および電場を発生させるための磁気コイルを含む。目の位置決めシステムは、近位端および遠位端を有するハウジングを含み、磁気コイルはハウジング内に近位端に近接して配置される。位置決め部材が少なくとも一部、ハウジングの近位端に取り付けられて、位置決め部材は基部およびその上に連結されたアイカップを含む。アイカップは、被験者の眼窩部を受け入れるように構成されて、アイカップの中心は基部の中心からオフセットされる。
【0007】
1つ以上の実施形態では、被験者の目を治療するための磁気治療装置は、近位端および遠位端を有するハウジングを含み、磁気コイルがハウジング内に近位端に近接して配置される。位置決め部材が少なくとも一部、ハウジングの近位端に取り付けられて、位置決め部材は基部およびその上に連結されたアイカップを含む。アイカップは、被験者の眼窩部を受け入れるように構成されて、アイカップの中心は基部の中心からオフセットされる。少なくとも1つのセンサーがハウジングに接続されて磁気コイルと電気的に通信し、少なくとも1つのセンサーが位置決め部材を検出するとき、磁気コイルは治療のために作動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】磁気治療装置内の円形磁気コイルの場合における電場の、被験者の目に対する、および眼窩部を神経支配する様々な神経に対する、一般的な位置の略図である。
図2】磁気治療装置内の円形磁気コイルの例に関して被験者の目の望ましい位置の略図である。
図3】アイピースが磁気コイルと同軸上に位置合わせされるとき、磁気コイルの中心に関する被験者の目の中心のオフセットを例示する写真である。
図4】アイピースが磁気コイルと同軸上に位置合わせされるとき、磁気コイルの中心に関する被験者の目の中心のオフセットの実験データを示すチャートである。
図5】1つ以上の実施形態に従った磁気治療装置と共に使用するための目の位置決めシステムの位置決め部材の斜視図である。
図6】コイル中心およびアイカップ中心がその上に重ねられている図5の位置決め部材の前面図である。
図7図5の位置決め部材の縦断面図である。
図8図5の位置決め部材の横断面図である。
図9】1つ以上の実施形態に従った磁気治療装置上に取り付けられた位置決め部材の図である。
図10】磁気コイルがその中に配置されたハウジングの斜視図である。
図11】ハウジングのためのカバーの斜視図である。
図12】磁気治療装置での治療の前に、位置決め部材がハウジングから外側へ偏向された目の位置決めシステムの横断面図である。
図13】位置決め部材がハウジングと係合している目の位置決めシステムの横断面図であり、光学センサーによる検出で磁気コイルの作動を可能にする。
図14】位置決め部材がハウジングと係合している目の位置決めシステムの横断面図であり、圧力センサーまたは近接センサーによる検出で磁気コイルの作動を可能にする。
図15】目の位置決めシステムのインジケータ特徴を例示する横断面図である。
図16】目の位置決めシステムの様々な機械的および電気的構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
要求に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書で開示されるが、開示される実施形態は、様々に代替形態で具現化され得る本発明の例示にすぎないことが理解されるべきである。図は必ずしも原寸に比例しておらず、いくつかの特徴は特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小限にされ得る。従って、本明細書で開示される特定の構造および機能詳細は制限として解釈されるべきでなく、本発明を様々に採用するために当業者に教示するための代表的な基礎にすぎない。
【0010】
本明細書で開示される実施形態は、非侵襲的な非接触式の磁気治療装置で治療するために被験者の目を適切な位置に配置するための目の位置決めシステムに関する。かかる装置を使用すると、眼組織などの、患っている組織が、磁気コイルなどの、磁場発生器によって生成された磁気バルスで治療され得る。通電されると、磁気コイルは磁場を生じて、この時間変化する(time-changing)磁場および電場エネルギーが治療される組織に伝達される。1つの非限定的例では、磁気治療装置は、ドライアイ疾患の場合における角膜上皮などの、眼の上皮組織を治療するために使用できる。追加の例では、磁気治療装置は、他の眼疾患、神経障害、病理学的増殖に付随した状態、および上皮組織と関連した病状を治療し得る。
【0011】
眼組織の治療の過程で、磁気治療装置は、目の近くの末梢神経組織の電磁刺激のために使用され得る。図1は、被験者の目に関して、および眼窩部を神経支配する様々な神経に関して、磁気コイルによって発生された電場の概略図である。治療中、目の周囲の孔(眼窩上、眼窩下、涙腺、顔面神経の遠心性枝、輪状およびリョラン筋の神経支配など)を通っている求心性神経および遠心性神経を刺激することは有益である。好都合に、磁気的に励起された電場は、接触する必要なく、これらの神経を同時に刺激することができる。
【0012】
開示される目の位置決めシステムは、眼組織の効果的な治療のために、磁場発生器に対する被験者の目の正確で最適かつ反復可能な位置決めおよび位置合わせを確実にする。図2は、磁気治療装置内の磁気コイルに対する被験者の目の望ましい位置の略図である。アイピースは、被験者の目を磁気コイルに対して適切に位置付けることができるように、被験者の眼窩部を嵌入するために使用され得る。1つの非限定的な実施形態では、磁気コイルの中心を、被験者の目の中心でもあるはずの、被験者の目の外側眼角と内側眼角との間、上眼瞼と下眼瞼が合う目の両端の間の中間点と同軸上に位置合わせすることは望ましくあり得る。しかし、アイピースが磁気コイルと同軸上に位置合わせされる場合、外側眼角と内側眼角との間の中間点は、図3に示されるように、磁気コイルの中心からオフセットされる。図のように、アイピースおよび磁気コイルの中心が重ね合わされた垂直軸と水平軸の交点に配置されて、目の外側眼角と内側眼角との間の中間点はコイル中心からオフセットされた点によって示される。1つ以上の実施形態では、このオフセットは一般に、水平軸に沿って生じ得る。
【0013】
図4は、磁気コイルの中心に対する被験者の目の中心(外側眼角と内側眼角との間の中間点)のオフセットの実験データを示すチャートである。図3におけるように、垂直(y)および水平(x)軸が示されていて、アイピースおよび磁気コイルの中心は軸の交点に配置される。チャートは、アイピースの外周を表す楕円形の実線、およびアイピースと磁気コイルの共通の中心点からの距離をミリメートルで表す格子線も示す。このチャートは、15人の被験者に対する眼角間の中間点とアイピース/コイル中心のオフセットを示しており、平均オフセットは略3mmに計算される。かかるオフセットは磁気治療の精度および有効性を低下させる。
【0014】
それに応じて、1つの非限定的な実施形態では、本明細書で開示される目の位置決めシステムは、磁気治療装置での治療のために被験者の目の位置を磁気コイルの中心に対して最適にするように設計され得る。図5は、1つ以上の実施形態に従った磁気治療装置と共に使用するための目の位置決めシステムの位置決め部材10の前面図である。位置決め部材10は、概ね平面の基部12を含み、一例ではシリコンから構築され得る。基部12は本明細書では、概ね三角形状として示されているが、これは例示に過ぎず、他の形状および構成が完全に企図されることが理解される。アイカップ14などの、アイピースは、基部12の外側16に連結されて、被検者の眼窩部を嵌入するように構成される。アイカップ14は、基部12と一体的に形成され得るか、基部12に何らかの方法で取り付けられ得るか、または基部12に取り外し可能に取り付けられ得る。アイカップ14は、ゴーグルの一般形状を有し得、図のように概ね楕円形状であり得るが、この構成に制限されることはない。アイカップ14は以下でさらに説明されるようなサイズの範囲を有し得、1つの非限定的な実施形態では、幅は略25mm~50mmの範囲であり得、長さは略45mm~65mmの範囲であり得る。
【0015】
図6を参照すると、アイカップ14は、アイカップ14の中心18が基部12の中心20から、水平方向、垂直方向のいずれか、または両方にオフセットされるように、基部12上に配置される。本明細書で示される非限定的な実施形態では、アイカップ中心18は、概ね水平方向に、例えば、水平軸Aに沿って、基部中心20(およびコイル中心24)からオフセットされる。基部12の中心20は、水平軸Aに沿った基部12の中間点、垂直軸Bに沿った基部12の中間点、または水平軸および垂直軸A、Bの交点として決定され得る。
【0016】
図6は、位置決め部材10を、その上に重ね合わせた磁気コイル22の外周、コイル中心24、およびアイカップ中心18と共に示す。図のように、磁気コイル22の中心24が基部12の中心20と位置合わせされる場合、アイカップ14の中心18は磁気コイル22の中心24からオフセットされる。アイカップ中心18と基部中心20との間、またはアイカップ中心18とコイル中心24との間の距離は、略3mmであり得るが、この距離に制限されない。アイカップ中心18と基部中心20/コイル中心24のこのオフセットは、被検者の眼角間の中間点(目の中心)が磁気コイル22の中心24と同軸上に位置合わせされるのを可能にし得、それは、治療のためにより最適な位置であり得る。
【0017】
図5ならびに図7および図8の断面図に示されるように、アイカップ14は、基部12から上方へ延出する壁26および壁26上に形成されて壁26の上側外周を取り囲む眼窩接触部27を含み得る。一実施形態では、アイカップ14は、治療される被検者の眼窩部の解剖構造に従うのが可能なシリコン材料などであるが、それに限定されない、圧縮可能または変形可能な材料で構成され得る。眼窩接触部27はそれ故に、治療中に被験者に対して快適さをもたらし、他方、壁26は、治療中に被験者によってアイカップ14に圧力がかけられる場合に支持を提供する。1つの非限定的な実施形態では、眼窩接触部27は略2mmの厚さを有し得る。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、位置決め部材10は、被検者の解剖構造に対して様々な方法で最適に設計され得る。例えば、アイカップ14は、被検者の目および周囲の眼窩部の実際の寸法に従って構築され得、従って、各被験者に対して個別化されたアイカップ14を作製する。別の選択肢では、様々なサイズの一連のアイカップ14が準備され得、各被験者は、被検者の解剖構造に最も良好に一致する特定のサイズに適合される。更なる実施形態では、アイカップ14は被検者の各目に対して、例えば、1つの左アイカップおよび1つの右アイカップが、特別に作製されるか、または適合され得る。個別化寸法は、アイカップの長さおよび幅、ならびにアイカップ14の中心18の基部12の中心20に対するオフセットを含み得るが、それらに制限されない。
【0019】
図7を参照すると、基部12は、治療中に被験者の眼球を収容し得るアイカップ14内に凹部28を含み得る。壁26は、被検者の眼窩部が嵌入される場合に空気がアイカップ14に流入して、アイカップ14から流れ出るのを可能にするために少なくとも1つの通気口29を含み得、このようにして真空を形成するのを防ぐ。図8は、1つ以上の実施形態に従ったアイカップ14周囲の壁26の可変の高さを例示する位置決め部材10の断面図を示す。より詳細には、壁26は内側壁部30および高さが異なる外側壁部31を有し得る。図示されている位置決め部材10は、例えば、被検者の左目に固有であり得、外側壁部31よりも低い高さの内側壁部30を有し得る。図示されている左目の位置決め部材10に関して、内側壁部30は基部12の右側にあり、外側壁部31は基部12の左側にある。この構成は、被検者の左眼窩部に対して最適化された人間工学的インタフェースを提供し、この場合、短い内側壁部30が被検者の鼻に隣接する。右目の使用に関して、位置決め部材10は同様に、外側壁部31よりも低い高さの内側壁部30が備わっている可能性があるが、この場合、内側壁部30は基部12の左側にあり、外側壁部31は基部12の右側にあるであろう。
【0020】
図9は、例示的な磁気治療装置34のハウジング32上に取り付けられた位置決め部材10の図である。ハウジング32は、位置決め部材10が取り付けられる近位端36、および調整機構40に連結され得る遠位端38を有する。ハウジング32は、被検者の眼窩部が位置決め部材10に嵌入して、磁気コイル22(図10)に対して正確で、最適かつ反復可能な目の位置を達成するのを可能にするために、固定または調整可能な位置で構成され得る。図示される磁気治療装置34は卓上装置として構成されているが、磁気治療装置34は代替として、ハンドヘルド形式で具現化され得る。さらに、本明細書では1つの位置決め部材10だけが示されているが、目の位置決めシステム(図12図15に最も良く示されている)および磁気治療装置34は、被検者の両目を同時に治療するように構築できることが理解される。
【0021】
図10は、位置決め部材10が取り除かれたハウジング32の斜視図であり、磁気コイル22を例示している。磁気治療装置34では、磁気コイル22はハウジング32内部に近位端36に近接して取り付けられる。磁気コイル22は磁場を発生させて磁気パルスを治療される眼組織へ向かわせる。1つ以上の実施形態では、円形または環状の磁気コイル22が利用され得るが、他の形状が完全に企図される。磁気コイル22は、約40mmの平均巻径を有し得るが、この寸法は制限することを意図していない。かかる設計は、角膜または網膜などの眼組織の高強度電場への暴露を防ぐ。位置決め部材10は、目または眼窩部を磁気コイル22に対して正しく位置付けるように患者を導く。
【0022】
被検者の目を磁気コイル22に対して適切に位置付けることに加えて、被検者の目が治療のために適切な位置にある場合に限り磁気コイル22が作動されることを確実にすることも望ましい。そのため、本明細書で開示される目の位置決めシステムは、被検者の目のコイル中心24との適切な位置合わせを確実にするだけでなく、少なくとも1つのセンサーを採用して、位置決め部材10が磁気コイル22および/またはハウジング32に対して最適な位置にある場合にだけ磁気コイル22が作動されることを確実にする。様々なセンサータイプ、例えば、機械的、電子的、光学的またはそれらの組合せが、以下でさらに説明されるように企図されて、各センサーに対する構成要素の説明は、説明される他のタイプのセンサーに等しく適用可能であり得る。図12図15では、目の位置決めシステムは一般に参照番号50によって指定されて、位置決め部材10、ハウジング32、および以下で説明される少なくとも1つのセンサーを含む。1つの非限定的な実施形態では、ハウジング32は、目の位置決めシステム50および磁気治療装置34によって共有され得るか、または代替として、システム50および装置34は別々に収容できる。
【0023】
図10図13を参照すると、少なくとも1つのセンサーは、ハウジング32に連結されているか、またはハウジング32内部に配置されている光学センサー42を含み得る。カバー44がハウジング32の近位端36に提供され、カバー44はプラスチック材料で構築され得る。位置決め部材10の基部12は、カバー44を受け入れるように配置されたリップ45(図7)を含んで、基部12のカバー44への取り付けを容易にし得る。このようにして、基部12は、カバー44上に容易に受け入れられて、カバー44から取り外すことができる。代替実施形態では、基部12およびカバー44は、永久的に取り付けられるか、または統合されて一体成形部品にできる。いずれの実施形態でも、位置決め部材10はカバー44を含むと考えられ得ることが理解される。
【0024】
図11に最も良く示されているように、カバー44の内側46は、カバー44の第1の端部48に隣接したばね腕47およびカバー44の第2の端部54に隣接した検出腕52を含み得る。ばね腕47はハウジング32内で受け入れられてカバー44の第1の端部48をハウジング32に取り付け得る。図12に示されるように、位置決め部材10に力が印加されていない静止位置で、ばね腕47は、位置決め部材10をハウジング32の近位端36から離れて偏向させるように動作する。この図では、検出腕52は、光学センサー42に近接しておらず、従って磁気コイル22は作動可能ではない。
【0025】
検出腕52は、位置決め部材10(カバー44を含む)がハウジング32と隣接しているか、または係合している場合、光学センサーに隣接して受け入れられるようなサイズにされる。光学センサー42が検出腕52を検出するとき、位置決め部材10は、磁気コイル22およびハウジング32に関して適切で最適な位置にある。これらの条件が満足されると、磁気コイル22は、磁気治療装置34による治療を可能にするために励起できる。1つ以上の実施形態では、閾値検出器56(図16)が光学センサー42と電気的に通信してセンサー出力を所定の閾値と比較し得る。センサー出力が閾値を上回っている場合、磁気コイル22は、磁気治療装置34が作動できるように電力を受信可能である。言うまでもなく、光学センサー42をトリガーする他の手段も企図される。
【0026】
1つ以上の実施形態では、光学センサー42は、磁気コイル22が作動されている間、検出腕52の存在を継続的にチェックし得、そのため光学センサー42が検出腕52をもう検出しない場合、磁気コイル22への電力を停止するために信号を送信し、従って治療を停止する。その結果、光学センサー42は、磁気コイル22が作動可能になる前に、位置決め部材10、およびそれ故に、被検者の目が、治療のために適切で最適な位置にあることを確実にし、光学センサー42は、位置決め部材10および被検者の目が治療の間中ずっと適切で最適な位置に引き続きあることを確実にし続ける。
【0027】
図10および図11に示されるように、カバー44はさらに、1つ以上の位置決めタブ58をカバー44の第1の端部48およびカバー44の第2の端部54に含み得る。対応するチャネル60がハウジング32の近位端36に提供されて、位置決めタブ58を受け入れて位置決め部材10をハウジング32と係合するように導き、検出腕52を光学センサー42による検出のために近くに導き得る。被験者が自分の眼窩部をアイカップ14上に位置付けてアイカップ14および位置決め部材10をハウジング32近位端36に向かって前方に押すことにより、位置決め部材10は、磁気コイル22およびハウジング32に関して適所に移動され得る。
【0028】
図14を参照すると、少なくとも1つのセンサーは代替として、ハウジング32の近位端36に配置された1つ以上の圧力センサー62を含み得る。圧力センサーの場合、圧力センサー62が位置決め部材10(カバー44を含む)からの接触によって印加された力を検出するとき、位置決め部材10は、磁気コイル22およびハウジング32に関して適切で最適な位置にある。磁気コイル22はその結果、磁気治療装置34による治療を可能にするために作動できる。前述のとおり、閾値検出器56は、センサー出力を所定の閾値と比較し得る。センサー出力が閾値を上回っている場合、磁気コイル22は、磁気治療装置34が作動できるように電力の受信が可能である。圧力センサー62は、磁気コイル22が作動されている間、位置決め部材10によって印加される力を継続的にチェックし得、そのため圧力センサー62が十分な力をもう検出しない場合、磁気コイル22への電力を停止するために信号を送信し、このようにして治療を停止する。圧力センサー62は位置決め部材10の任意の部分によって印加される力によってトリガーでき、本明細書で説明される実施形態に限定されないことが理解される。
【0029】
代替として、図14の1つ以上のセンサーは、近接センサー64にでき得る。近接センサー64がハウジング32と接触しているか、または隣接している位置決め部材10(カバー44を含む)の存在を検出するとき、位置決め部材10は、磁気コイル22およびハウジング32に関して適切で最適な位置にある。磁気コイル22は次いで、磁気治療装置34による治療を可能にするために作動可能である。閾値検出器56は、センサー出力を所定の閾値と比較し得、センサー出力が閾値を上回っている場合、磁気コイル22は、磁気治療装置34が作動できるように電力の受信が可能である。近接センサー64は、磁気コイル22が作動されている間、位置決め部材10の存在を継続的にチェックし得、そのため近接センサー64が基部12をもう検出しない場合、磁気コイル22への電力を停止するために信号を送信し、このようにして治療を停止する。近接センサー64は代替として、センサー64をトリガーして治療のために磁気コイル22を作動させるために、位置決め部材10の別の部分を検出するように構成され得る。
【0030】
前述のとおり、位置決め部材10は、効果的な治療のための目の最適位置は、アイカップ14が磁気コイル22をセンサー42、62、64によって作動させる位置にある時であるように設計される。従って、被験者が自分の目をアイカップ14に対して位置付けるが、位置決め部材10がセンサー42、62、64によって最適な位置にあると検出されない場合、磁気コイル22は作動可能ではない。目の位置決めシステム50は、被検者の目が最適な位置にある場合に限り磁気コイル22が作動されることを確実にし、従って、効果的な治療を確実にする。本文脈では、効果的な治療は、電場の最高値を目または眼窩部の望ましい位置で獲得することに関連し得る。
【0031】
図15は、目の位置決めシステム50の考えられるインジケータ特徴を例示する横断面図である。1つ以上の実施形態では、目の位置決めシステム50は、磁気コイル22が作動可能になるように位置決め部材10が適切な位置にある場合を示すインジケータを備えることができる。かかるインジケータは、LED 66などであるが、それに限定されない、視覚的インジケータを含み得る。追加として、または代替として、スピーカー68などの、可聴インジケータが採用され得る。インジケータ66、68は、それらの作動を制御するマイクロコントローラユニット70と電気的に通信し得る。
【0032】
図16は、目の位置決めシステム50の機械的および電気的構成要素を示すブロック図である。上で開示された様々な実施形態に関連して説明されるように、センサー42、62、64(例えば、光学、圧力、近接など)は、位置決め部材10を検出する。センサー42、62、64は、センサー信号を所定の閾値と比較する閾値検出器56と電気的に通信する。閾値検出器56は、所定の閾値が満足されるかどうかに基づき、磁気コイル22の作動を選択的に制御するマイクロコントローラユニット70と電気的に通信する。マイクロコントローラユニット70は、電力供給72を制御して、磁気コイル22に対して電力を供給または停止でき、磁気コイル22の治療パラメータも直接制御し得る。
【0033】
本明細書で開示される目の位置決めシステム50は、磁気治療装置34による目の治療の有効性を改善するための方法で使用され得、本方法は、各治療に対して同じ部分を標的にするために、磁気治療装置34の磁気コイル22に関連して被検者の目および周囲の組織の最適な治療位置を決定するステップ、被験者の目を最適な治療位置に位置付けるのを可能にする方法で、被検者の解剖構造に従うアイカップ14を被検者に嵌めるステップ、および被験者の目を最適な治療位置に位置付けることによって磁気コイル22を作動させるステップを含み得る。
【0034】
本明細書で開示される目の位置決めシステム50は、磁気治療装置34による眼疾患の治療のための方法でも使用され得、本方法は、磁気治療プロトコルを決定するステップ、そのプロトコルを磁気治療装置34にプログラムするステップ、磁気治療装置の磁気コイル22に関連して被験者の目の最適な治療位置決めを決定するステップ、被験者の目を最適な治療位置に位置付けるのを可能にする方法で、被検者の解剖構造に従うアイカップ14を被検者に嵌めるステップ、および被験者の目を最適な治療位置に位置付けることによって磁気コイル22を作動させるステップを含み得る。
【0035】
本明細書で開示される目の位置決めシステムは、非侵襲的な非接触式の磁気治療中に、治療の間中ずっと被験者の快適さを維持しながら、被験者の目の最適な位置決めを維持する。かかる治療において目を正確に位置付けることは、治療の有効性を改善し、目の位置決めシステムにおいて磁場の活性化は、被験者の目の正確で最適な位置決めによって決まる。したがって、治療は、被験者の目が最適な位置にある場合にだけ施され、磁場の活性化は被験者によって開始されて、医療専門家による追加介入を必要としない。
【0036】
例示的な実施形態が前述されているが、これらの実施形態は本発明の全ての考えられる形態を記述することは意図していない。むしろ、本明細書で使用される語は、制限ではなく記述の語であり、様々な変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解される。さらに、様々な実施形態の特徴は、本発明の更なる実施形態を形成するために組み合わされ得る。
図1
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図3
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図5
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図7
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図10
図11
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図15
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【国際調査報告】