IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エレメント シックス (ユーケイ) リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図1
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図2
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図3
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図4
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図5
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図6
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図7
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図8
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図9
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図10
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図11
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図12
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図13
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図14
  • 特表-多結晶立方晶窒化ホウ素材料 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】多結晶立方晶窒化ホウ素材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/5835 20060101AFI20230314BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20230314BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20230314BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C04B35/5835
C04B35/645
B23B27/14 B
B23B27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545446
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021052018
(87)【国際公開番号】W WO2021152033
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】2001174.8
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】キャン アンティオネット
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオシュエ
(72)【発明者】
【氏名】ブシュリャ ウォロディミル
(72)【発明者】
【氏名】レンリック フィリップ アーンスト
(72)【発明者】
【氏名】ストール ヤン-エリック
(72)【発明者】
【氏名】ストラティチュク デニス
(72)【発明者】
【氏名】ペトルーシャ イゴール
(72)【発明者】
【氏名】トゥルケヴィッチ ウラジミール
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046FF35
3C046FF37
3C046FF42
(57)【要約】
本開示は、窒化物化合物を含有するバインダマトリックス材料を含む多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料に関する。窒化物化合物は、HfN、VN及び/又はNbNから選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料であって、
40~95体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子と、
前記cBN微粒子が分散し、含有量が前記PCBN材料の5体積%~60体積%であるバインダマトリックス材料と、
を含み、
前記バインダマトリックス材料がアルミニウム若しくはその化合物、及び/又はチタン若しくはその化合物を含み、
前記バインダマトリックス材料が酸化物化合物、窒化物化合物及び/又は酸窒化物化合物を更に含み、前記窒化物化合物はHfN、VN、NbNから選択される、
多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料。
【請求項2】
前記酸窒化物化合物が前記PCBN材料の5体積%~35体積%の量で存在する、請求項1に記載のPCBN材料。
【請求項3】
前記酸窒化物化合物が前記PCBN材料の10体積%~25体積%の量で存在する、請求項2に記載のPCBN材料。
【請求項4】
前記酸窒化物化合物がAlONを含む、請求項1、2又は3に記載のPCBN材料。
【請求項5】
前記酸化物化合物がAl23を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項6】
前記Al23が前記PCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する、請求項5に記載のPCBN材料。
【請求項7】
前記HfNが前記PCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項8】
前記バインダマトリックス材料がHfB2及び/又はBNを更に含む、請求項7に記載のPCBN材料。
【請求項9】
前記VNが前記PCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項10】
前記バインダマトリックス材料がAlN及び/又はBNを更に含む、請求項9に記載のPCBN材料。
【請求項11】
前記NbNが前記PCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項12】
前記アルミニウムAl又はその化合物が前記PCBN材料の2~15体積%、好ましくは5~15体積%、より好ましくは5体積%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項13】
50~70体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項14】
60体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のPCBN材料。
【請求項15】
多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を作製する方法であって、
下記前駆体粉末を一緒に粉砕することと、
・立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末
・酸化物含有粉末
・HfN、VN及び/又はNbNから選択される窒化物含有粉末
・アルミニウム含有粉末及び/又はチタン含有粉末
前記粉砕した前駆体粉末を成形してグリーン体を形成することと、
前記グリーン体を1250℃~2200℃の温度、4.0GPa~8.5GPaの圧力で焼結して、請求項1~14のいずれか一項に記載の焼結PCBN材料を形成することと、
を含む方法。
【請求項16】
前記酸化物含有粉末がAl23を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記温度が1250℃~1450℃である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が1350℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記圧力が約6.5GPaである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記温度が1800℃~2100℃である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項21】
前記圧力が約8GPaである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
耐熱超合金(HRSA)を機械加工するための請求項1~14のいずれか一項に記載のPCBN材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼結多結晶立方晶窒化ホウ素材料の分野に関し、該材料を作製する方法に関する。特に本開示は、焼結多結晶立方晶窒化ホウ素材料を使用したインコネル(商標)系超合金の機械加工に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶ダイヤモンド(PCD)及び多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)などの多結晶超硬度材料は、岩石、金属、セラミックス、複合物及び木材含有材料などの硬質材料又は研磨材料を切削する、機械加工する、穿孔する、又は砕く多様なツールに使用され得る。
研磨成形体は切削、旋削、粉砕、摩砕、穿孔及び他の研磨操作で広く用いられ、一般的に第2相マトリックスに分散する超硬度研磨微粒子を含有する。マトリックスは、金属又はセラミックス又はサーメットでよい。超硬度研磨微粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)、炭化ケイ素、又は窒化ケイ素等でよい。これらの微粒子は、一般的に用いられる高圧高温成形体製造プロセス中に互いに結合する場合があり、多結晶塊を形成する。又は、第2相材料のマトリックスにより結合する場合があり、焼結多結晶体を形成する。このような物体は一般的に多結晶ダイヤモンド又は多結晶立方晶窒化ホウ素として知られ、超硬質研磨剤として、それぞれダイヤモンド又はcBNを含有する。
米国特許第4,334,928号明細書は、20~80体積%の立方晶窒化ホウ素から本質的になるツールにおいて使用される焼結成形体を教示しており;残部は周期表のIVa又はVa族遷移金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ化物及びケイ化物、これらの混合物、並びにこれらの固溶体化合物からなる群から選択される少なくとも1つのマトリックス化合物材料のマトリックスである。本発明で概要を述べる方法はいずれも例えばボールミル粉砕、粉砕機等の機械的粉砕/混合技術を使用して所望の材料を組み合わせることを含む。
【0003】
焼結多結晶体は基板上に形成することにより「裏打ち」される場合がある。超硬炭化タングステンは好適な基板を形成するのに使用される場合があり、例えば炭化タングステン微粒子/粒子及びコバルトを混合した後、加熱して固体化することにより、コバルトマトリックスに分散した炭化物微粒子から形成される。PCD又はPCBNなど、超硬質材料層を有する切削要素を形成するため、ニオブ筐体などの耐火金属筐体においてダイヤモンド微粒子又は粒子、或いはCBN粒子を超硬炭化タングステン物体に隣接させて配置し、ダイヤモンド粒子又はCBN粒子間に粒子間結合が起こるように高圧高温に付し、多結晶超硬質ダイヤモンド又は多結晶CBN層を形成する。
超硬質材料層に接着する前に基板を完全に焼結する場合もあり、基板が未焼結(完全に焼結しない)の場合もある。後者の場合、HPHT焼結プロセス中に基板を完全に焼結してよい。基板は粉末状でよく、超硬質材料層を焼結するのに使用する焼結プロセス中に固体化してよい。
或いは、固体の焼結多結晶体は裏打ちされず、基板がなくても自立するように形成される場合がある。
【0004】
図1は焼結PCBN材料を作製する例示的な方法を示す。以下の数字は図1の数字と一致する。
S1.マトリックス前駆体粉末を予め混合する。マトリックス前駆体粉末の例としては、チタン及びアルミニウムの炭化物及び/又は窒化物が挙げられる。マトリックス前駆体粉末の典型的な平均粒子径は1μm~10μmである。
S2.マトリックス前駆体粉末を1000℃超で少なくとも1時間加熱処理して、マトリックス前駆体微粒子間の予反応を開始し、「ケーキ」を形成する。
S3.ケーキを破砕及び篩分けし、所望の粒子径画分を得る。
S4.篩分けしたマトリックス前駆体粉末に、平均粒子径が0.5μm~15μmである立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子を添加する。
S5.結果として生じる混合粉末をボールミル粉砕してマトリックス前駆体粉末を所望の径(典型的に50nm~700nm)まで小さくし、マトリックス前駆体粉末をcBN微粒子と密に混合する。このプロセスは数時間かかる場合があり、炭化タングステンボールなどの粉砕媒体を使用することを含む。
S6.結果として生じる粉砕粉末を真空下又は低圧下60℃超で乾燥させて溶媒を除去し、続いて酸素をこの系にゆっくりと入れることにより調整して、アルミニウムなどの金属表面を不動態化する。
S7.乾燥した粉末を篩分けし、プレコンポジットアセンブリ(pre-composite assembly)を調製する。
S8.プレコンポジットアセンブリを700℃超で加熱処理して任意の吸着水又は気体を除去する。
S9.ガス放出したプレコンポジットアセンブリを焼結に好適なカプセルに組み立てる。
S10.カプセルを少なくとも1250℃、少なくとも4GPaの高圧高温(HPHT)プロセスで焼結して焼結PCBN材料を形成する。
【0005】
欧州では、タングステン(W)及びコバルト(Co)のどちらも重要原材料(CRM)として分類されている。CRMはヨーロッパ経済に経済的、戦略的に重要であるとみなされる原材料である。原則として、供給に伴うリスクが高く、家電製品、環境技術、自動車、航空宇宙、防衛、保健及び鋼など、ヨーロッパ経済における主要部門に著しく重要であり、(実行可能な)代替品を欠いている。タングステン及びコバルトのどちらも、2つの重要な硬質材料である超硬炭化物/WC-Co及びPCD/ダイヤモンド-Coの主要な構成要素である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、ツール操作用の実行可能な代替材料を開発することであり、代替材料は極端な条件下で良好に機能し、WC-Co裏張りを使用する必要がないものである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料であって、
-40~95体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子と、
-cBN微粒子が分散し、含有量がPCBN材料の5体積%~60体積%であるバインダマトリックス材料と、
を含み、
-バインダマトリックス材料がアルミニウム若しくはその化合物、及び/又ははチタン若しくはその化合物を含み、
-バインダマトリックス材料が酸化物化合物、窒化物化合物及び/又は酸窒化物化合物を更に含み、窒化物化合物が以下のHfN、VN及び/又はNbNのいずれか1つ又は複数から選択される、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を提供する。
任意に、酸窒化物化合物はPCBN材料の5体積%~35体積%の量で存在する。
任意に、酸窒化物化合物はPCBN材料の10体積%~25体積%の量で存在する。
任意に、酸窒化物化合物はAlONを含む。
任意に、酸化物化合物はAl23を含む。Al23はPCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在してよい。
任意に、HfNはPCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する。バインダマトリックス材料はHfB2及び/又はBNを更に含んでよい。
任意に、VNはPCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する。バインダマトリックス材料はAlN及び/又はBNを更に含んでよい。
任意に、NbNはPCBN材料の10体積%又は25体積%の量で存在する。
任意に、アルミニウム(Al)又はその化合物は、PCBN材料の2~15体積%、好ましくは5~15体積%、より好ましくは5体積%の量で存在する。
PCBN材料は50~70体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)を含んでよい。任意に、PCBN材料は60体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)を含む。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、
-・立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末
・酸化物含有粉末
・HfN、VN及び/又はNbNから選択される窒化物含有粉末
・アルミニウム含有粉末及び/又はチタン含有粉末
の前駆体粉末を粉砕することと、
-粉砕した前駆体粉末を成形してグリーン体を形成することと;
-1250℃~2200℃の温度、4.0GPa~8.5GPaの圧力でグリーン体を焼結して本発明の第1の態様に従って焼結PCBN材料を形成することと、
を含む、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料の作製方法を提供する。
任意に、酸化物含有粉末はAl23を含む。
任意に、温度は1250℃~1450℃である。
任意に、温度は1350℃である。
任意に、圧力は約6.5GPaである。
任意に、温度は1800℃~2100℃である。
任意に、圧力は約8GPaである。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に従ってPCBN材料の、耐熱超合金を機械加工するための使用を提供する。該耐熱超合金はオーステナイトニッケル-クロム系超合金の一種であるインコネル(商標)を含んでよい。
以下、例を通し、添付図を参照し、非限定的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は焼結PCBN材料を作製する公知の例示的な方法を示すフローチャートである。
図2図2は本発明に従ってPcBN材料を作製するプロセスの一つの実施形態を示すフローチャートである。
図3図3はHfN及びAl23を含有する粉末1を使用して作製し、6.5GPaで焼結した実施例1のX線粉末回析(XRD)パターンである。
図4図4は実施例1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率X2000で示す。
図5図5は実施例1のエネルギー分散型X線分析(EDS)画像である。
図6図6はVN及びAl23を含有する粉末2を使用して作製し、6.5GPa条件下で焼結した実施例2のXRDパターンである。
図7図7は倍率X2000の実施例2のSEM写真である。
図8図8は実施例2のEDS画像である;
図9図9はVNを含有する粉末2を使用して作製し、8.4GPa条件下で焼結した実施例3のXRDパターンである。
図10図10はPCBN材料の例となるくぼみの画像であり、硬度の計算に使用する寸法を示す。
図11図11は異なるバインダケミストリを有するHPHT焼結サンプルの時効後のインコネル(商標)718(HRC44~46)のプロファイルオペレーションにおける性能を示す折れ線グラフである。
図12図12はVN及びAl23バインダケミストリを有するHPHT及びLPLT焼結サンプルの時効後のインコネル(商標)718(HRC44~46)の縦方向加工における性能を示す棒グラフである。
図13図13図12のTiCバインダを有する参考となるPCBN材料の摩耗痕を示す光学画像である。
図14図14図12のHPHT条件で焼結したAl23-VNバインダを有するPCBN材料の摩耗痕を示す光学画像である。
図15図15図12のLPLT条件で焼結したAl23-VNバインダを有するPCBN材料の摩耗痕を示す光学画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2は例示的な工程を示すフローチャートであり、以下の数字は図2の数字と一致する。
S1.前駆体粉末を粉砕して、密な混合物を形成し、所望の粒子径を得る。前駆体粉末は酸化物含有粉末、窒化物含有粉末、アルミニウム粉末、及びcBN粉末を含む。前駆体粉末の混合は、ボールミル粉砕技術を使用して有機溶媒中で実施し、ロータリーエバポレータで乾燥させた。
S2.粉砕した前駆体粉末を乾式プレスして、HPHTカプセルに入れる前に金属封止でグリーン体を形成する。HPHT焼結の場合、焼結後の寸法変化が小さくなるように、具体的に、乾燥後に粉末をソフトモールドに充填した後、冷間静水圧プレスを使用することにより圧縮して粉末を成形し、高いグリーン密度のグリーン体を形成する。
その後、グリーン体を異なる高さに切断して、HPHTカプセルに入れる。
S3.その後、乾式プレスしたグリーン体を高温真空熱処理に付した後、カプセルで焼結する。
これまでに生成した材料を2つの条件下:
-約6.5GPaの圧力、1250℃~1450℃の温度、典型的に1350℃;
-約8GPaの圧力、1800℃~2100℃の温度
で焼結した。
焼結温度はS型熱電対を使用して1800℃までに較正した。
S4.焼結後、結果として生じる焼結品を室温まで冷却する。冷却速度は制御しない。
【実施例
【0012】
表1に、TiC及びTiCNの参考サンプルと共に、本研究に含まれるPcBN組成物の全てを記載する。本セクションにおいて、LPLTは低圧低温を表し、HPHTは高圧高温を表す。
【表1】

表1
以下、実施例1、2及び3をより詳細に説明する。本発明及び参考の表1に挙げる他のサンプルを調製し、特徴づけた後、実施例1、2及び3と類似の方法で試験した。
【0013】
実施例1
S1.上記の通り、表1に示す割合で、Al23及びHfNを含む前駆体粉末をcBN粉末及びAl粉末と混合した。
S2.その後、前駆体粉末を成形して金属封止内でグリーン体を形成した。
S3.グリーン体をカプセル内に設置した後、焼結した。
S4.焼結品であるPCBN材料を室温まで冷却し、その後の特性評価及び適用試験の準備を整えた。
図3のXRDトレースは、焼結品中にHfN、HfB2、Al23及びBNの存在を示している。図4は結果として生じる微細構造を示し、図5のEDS画像はサンプルの選択面積における微細構造の組成の分析を示す。
【0014】
実施例2
S1.上記の通り、表1に示す割合で、Al23及びVNを含む前駆体粉末をcBN粉末と混合した。
S2.その後、前駆体粉末を成形して金属封止内でグリーン体を形成した。
S3.グリーン体をカプセル内に設置した後、LPLT焼結した。
S4.焼結品であるPCBN材料を室温まで冷却し、その後の特性評価及び適用試験の準備を整えた。
図6のXRDトレースは、焼結品中にVN、AlN、Al23及びBNの存在を示している。図7は結果として得られる微細構造を示し、図8のEDS画像はサンプルの選択面積における微細構造の組成の分析を示す。
【0015】
実施例3
S1.上記の通り、表1に示す割合で、Al23及びVNを含む前駆体粉末をcBN粉末と混合した。
S2.その後、前駆体粉末を成形してグリーン体を形成した。
S3.グリーン体を切断し、カプセル内に設置した後、HPHT焼結した。
S4.焼結品であるPCBN材料を室温まで冷却し、その後の特性評価及び適用試験の準備を整えた。
図9のXRDトレースは、焼結品中にVN、AlN、Al23及びBNの存在を示している。サンプルのSEM写真及びEDS画像を撮影したが、ここには包含しない。
【0016】
硬さ
ビッカース硬さ試験を使用して、サンプルを更に特徴づけた。ビッカース硬さ(HV)は、所定の荷重でダイヤモンドのピラミッド形の圧子を導入し、サンプル材料に残ったへこみの対角線の長さ(例、図10を参照のこと)を測定することにより計算する。
表2は異なる条件において、粉末1及び2から焼結したサンプルの硬さを示す。
【表2】

表2
結果は、すべてのサンプルが比較的高い硬度を有するが、更に高圧高温での焼結はわずかにではあるが硬度を高めることを示す。
【0017】
適用試験
その後、異なるバインダケミストリを有するPCBNの変形体を用い、ロックウェル硬さがHRC44~46である時効後のインコネル(商標)718に倣い加工を行う試験を実施した。結果を図11に示す。図11は表面切削速度VC(m/分)と摩耗率(μm/分)を示すグラフである。ほとんどのサンプルについて、摩耗率を異なる3つの切削速度で測定した。これらの表面切削速度は280m/分、350m/分及び420m/分であった。
全般的に参考のTiCバインダを10に、TiCNバインダを12に示す。Al23-VN(HPHT)は参照番号14である。Al23-VN(LPLT)は参照番号16である。Al23-NbN(HPHT)は参照番号18である。Al23-HfN(HPHT)は参照番号20であり、単一のデータ点である。
図11から、表1のすべてのサンプルが参考サンプルより良好に機能することは明らかである。
また、グラフ上の参照番号14及び16のサンプル(つまりAl23-VNバインダケミストリを有する)を参照すると、HPHT条件下での焼結と比較して、LPLT条件下で焼結する場合、摩耗率にわずかな差がある。
Al23-VN(HPHT又はLPLT)は、いずれのサンプルよりも良好に機能する。Al23-NbNは2番目に良好に機能し、Al23-HfNが続く。
図12を参照する。第1の適用試験と類似する第2試験を実施した。第2試験は、ロックウェル硬さがHRC44~46である時効後のインコネル(商標)718の縦方向加工におけるAl23-VNバインダケミストリの性能に焦点を当てた。LPLT及びHPHTどちらも検討した。
図12は表面切削速度VC(m/分)と摩耗率(μm/分)を示す棒グラフである。単一の表面切削速度350m/分を使用した。結果は、LPLT及びHPHT変形体はどちらも参考のTiCバインダケミストリよりも著しく良好に機能することを示した。更に、LPLT及びHPHT変形体間の摩耗率の性能差が極小であることを示した。
図13~15は生じる摩耗痕を示す。LPLT及びHPHTのAl23-VNバインダケミストリに関する摩耗痕はTiC参考サンプルよりも著しく小さい。
要約すると、本発明者は極端なツール用途で使用するのに好適であり、CRMの実行可能な代替物であるいくつかの材料を特定するのに成功している。特に、PCBN材料はインコネル(商標)718を機械加工するのに特に好適であり、超硬炭化物製品より多くの利点がある。
【0018】
定義
本明細書で使用するとき、「PCBN」材料はある種の超硬度材料を指し、cBN粒子が金属又はセラミックスを含むマトリックス内に分散している。PCBNは超硬度材料の一例である。
本明細書で使用するとき、「バインダマトリックス材料」は、多結晶構造内の孔、隙間又は格子間領域を全体的に又は部分的に満たすマトリックス材料を意味することが理解される。
「バインダマトリックス前駆体粉末」という用語は、HPHT又はLPLT焼結プロセスに付されると、マトリックス材料となる粉末を指すのに使用される。
実施形態を参照して本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者は添付の特許請求の範囲で定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形状や細部の様々な変更を行うことができることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】