(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20230314BHJP
C22C 16/00 20060101ALI20230314BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230314BHJP
B22F 10/00 20210101ALI20230314BHJP
B22F 3/15 20060101ALI20230314BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20230314BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230314BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230314BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230314BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20230314BHJP
B22F 5/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61F2/38
C22C16/00
B22F1/00 R
B22F10/00
B22F3/15 M
B22F3/24 C
B22F3/24 F
B22F3/24 J
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
C22C1/04 E
B22F5/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545447
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2021101288
(87)【国際公開番号】W WO2022088705
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011191014.8
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522225594
【氏名又は名称】嘉思特医療器材(天津)股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉
(72)【発明者】
【氏名】曹 雨
(72)【発明者】
【氏名】張 月静
(72)【発明者】
【氏名】楊 友
(72)【発明者】
【氏名】李 莉
【テーマコード(参考)】
4C097
4K018
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC06
4C097DD09
4C097FF05
4C097MM03
4C097MM04
4C097SC07
4K018AA40
4K018BA20
4K018BB04
4K018CA02
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4K018EA11
4K018FA01
4K018FA08
4K018FA27
4K018HA10
4K018KA63
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】 酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆及び製造方法を提供すること。
【解決手段】 酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆及びその製造方法を開示する。ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の中間生成物を得、次に熱間静水圧加圧、極低温冷却及び表面酸化を経て、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を得る。前記大腿骨顆は、大腿顆関節面と、骨結合面2とを備え、骨結合面に領域を分割して骨梁が設けられる。本発明は、プロテーゼと骨界面との間の微動を低下し、骨組織に対するプロテーゼの応力遮蔽効果を低減し、大腿骨顆の骨組織応力を均一にさせ、梁単一コンパートメント大腿骨顆の一次安定性及び長期安定性が向上する。本発明は、オッセオインテグレーション界面の優れた生体適合性、骨の内方成長性及び摩擦界面の超耐摩耗性、低摩耗率を一体的に実現する。本発明の大腿骨顆の骨梁は、優れた耐圧縮性を有し、実体部分の圧縮降伏強度が向上し、可塑性が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガス又はアルゴンガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)前記第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)前記第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)前記第4の中間生成物を表面の機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、大腿顆関節面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)前記第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧ヘリウムガス又はアルゴンガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を得るステップ、
を有する酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の製造方法であって、
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の前記第1の中間生成物、前記第2の中間生成物、前記第3の中間生成物、前記第4の中間生成物、及び前記第5の中間生成物の構造は、前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じであり;
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造は、大腿顆関節面(1)と、骨結合(2)とを備え、前記大腿顆関節面(1)の縦断面が円弧状を呈し、前記骨結合面は大腿骨顆後端の骨統合面(21)と、大腿骨顆遠位端の骨結合面(22)とを備え、前記大腿骨顆後端の骨結合面(21)が垂直面に設けられ、前記大腿骨顆遠位端の骨結合面(22)は円弧状に設けられ、前記大腿顆関節面(1)と共通の球の中心を有し;前記大腿骨顆遠位端の骨結合面(22)の中央に第1の円筒形固定ポスト(4)が設けられ、前記大腿骨顆遠位端の骨結合面の前部に第2の円筒形固定ポスト(5)が設けられ、前記第2の円筒形固定ポスト(5)の直径は前記第1の円筒形固定ポスト(4)の直径よりも小さく;前記骨結合面(2)の縁に側壁(3)が設けられ、前記第1の円筒形固定ポスト(4)及び前記第2の円筒形固定ポスト(5)を除く側壁内方の他の部分に領域を分割して骨梁(6)が設けられ、骨梁領域分割線(7)は前記骨結合面(2)の前後方向の中央に位置し;前記骨梁領域分割線(7)の前後に第1種の骨梁(8)及び第2種の骨梁(9)がそれぞれ設けられ、前記第1種の骨梁の気孔径及び気孔率は、前記第2種の骨梁の気孔径及び気孔率よりも小さい
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記第1種の骨梁(8)の気孔径は、0.40mm~0.60mmで、気孔率が60%~75%であり;前記第2種の骨梁(9)の気孔径は、0.61mm~0.80mmで、気孔率が76%~90%であり;第1種の骨梁及び第2種の骨梁は、1mm~2mmの範囲の同じ厚さを有する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45μm~150μmである
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ2)、前記ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法で製造された
ことを特徴とする酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工関節の技術分野に関し、特に、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、膝関節の片側の病変のあるコンパートメントの表面置換に使用され、手術の傷口が小さく、骨を削る量も少なく、膝関節靭帯構造が保たれる特徴を有するため、単顆置換術後の回復が早く、膝関節の自然な動き及び固有受容感覚が保たれる。
【0003】
生物学的なユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、骨組織とプロテーゼの界面の効果的な嵌め合いを実現し、骨セメント固定によってもたらされる欠陥を防ぐことができる。現在、生物学的なユニコンパートメント膝関節プロテーゼの多くは、ダブルコーティング技術(チタン多孔体+HAコーティング)で、コーティングの剥離、コーティング塗布厚さが不均一などの問題がある。また、人工関節置換術が失敗する主な原因は、プロテーゼと骨の間の大きな剛性の違いによって生じる応力遮蔽は、プロテーゼの周りの骨リモデリングを引き起こし、プロテーゼの緩みにつながる。従来の生物学的なユニコンパートメント膝関節プロテーゼのマトリックス部分は、やはり実体構造で、弾性率が骨組織よりもはるかに大きいため、プロテーゼと骨界面の間の応力遮蔽力を大幅に高めることで、骨芽細胞の形成を減らし、最終的にプロテーゼの緩みにつながる。
【0004】
また、生物学的な単一コンパートメント大腿骨顆プロテーゼの後顆骨切り面が位置する力学的な環境は、剪断力であり、骨密度が比較的低いため、臨床中では、固定ポストから後顆までの骨組織領域での骨吸収は一般的で、プロテーゼの長期的な緩みを引き起こしやすい可能性がある。3Dプリントの均質な骨梁ユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、ある程度で応力遮蔽効果を低減し、プロテーゼの長期生存率を向上させることができる。ただし、異なる領域での骨組織の力学的特性の差異及び異なる領域でのプロテーゼの力学的な環境の差異により、均質な骨梁プロテーゼ固定の不均一性を引き起こし、プロテーゼの長期的な安定性に一定の影響を及ぼし、失敗のリスクを高める。
【0005】
ジルコニウム・ニオブ合金は、優れた耐食性、機械的性質、及び優れた生体適合性を備え、医療機器の分野で徐々に応用されている。ジルコニウム・ニオブ合金は、N、C、Oなどの元素と反応して、表面に硬い酸化物層を形成でき、優れた耐摩耗性及び低い摩耗率を備えているため、柔軟な材料の摩耗を低減でき、すなわち関節表面・界面の耐摩耗性に優れている。かつ酸化物層は、金属イオンの放出を減らすことができ、優れた生体適合性を持ち、すなわちオッセオインテグレーション界面との生体適合性に優れている。摩耗率の低い関節面と骨の内方成長の特性に優れたオッセオインテグレーション界面(骨梁)との有機的な組み合わせるにより、プロテーゼは両方の界面の利点を同時に実現させることができる。しかしながら従来技術は、この最適化な設計を同時に実現することができない。
【0006】
アディティブマニュファクチャリングテクノロジーとしての3Dプリント技術は、製造プロセスに向けた製品設計コンセプトを打ち破り、パフォーマンスに向けた製品設計コンセプトを実現し、すなわち、複雑な部品の一体成形の難しさを解決するだけでなく、機械加工による原材料及びエネルギーの無駄を減少する。しかし3Dプリント製品の実体部分は、微細構造の不均一性、内部欠陥、機械的性質の低下などの問題が発生しやすく、骨梁部分の構造内の粉末は十分に溶融結合できず、機械的性質にも劣る。
【0007】
従来技術の欠陥に着目し、当業者は、機械的性質に優れ、2つの界面の利点を同時に実現する酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の開発に取り組むことで、単一コンパートメント大腿骨顆の固定の信頼性及びプロテーゼの一次安定性及び長期安定性を向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、従来技術における上述の問題点の克服を意図しており、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の技術的手段は、次の通りである。
【0011】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガス又はアルゴンガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)第4の中間生成物を表面の機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、大腿顆関節面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、及び
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧ヘリウムガス又はアルゴンガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を得るステップ
を有する酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の製造方法であって、
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、及び第5の中間生成物の構造は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じである。
【0012】
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造は、大腿顆関節面1と、骨結合面2とを備え、大腿顆関節面1の縦断面が円弧状を呈し、骨結合面は大腿骨顆後端の骨統合面21と、大腿骨顆遠位端の骨結合面22とを備え、大腿骨顆後端の骨結合面が垂直面に設けられ、大腿骨顆遠位端の骨結合面は円弧状に設けられ、大腿顆関節面と共通の球の中心を有し;大腿骨顆遠位端の骨結合面の中央に第1の円筒形固定ポスト4が設けられ、大腿骨顆遠位端の骨結合面の前部に第2の円筒形固定ポスト5が設けられ、第2の円筒形固定ポスト5の直径は第1の円筒形固定ポスト4の直径よりも小さく;骨結合面2の縁に側壁3が設けられ、第1の円筒形固定ポスト及び第2の円筒形固定ポストを除く側壁内方の他の部分に領域を分割して骨梁6が設けられ、骨梁領域分割線7は骨結合面の前後方向の中央に位置し、骨梁領域分割線の前後に第1種の骨梁8及び第2種の骨梁9がそれぞれ設けられ、第1種の骨梁8の気孔径及び気孔率は、第2種の骨梁の気孔径及び気孔率よりも小さい。
【0013】
第1種の骨梁の気孔径は、0.40mm~0.60mmで、気孔率が60%~75%であり;
第2種の骨梁の気孔径は、0.61mm~0.80mmで、気孔率が76%~90%であり;
第1種の骨梁及び第2種の骨梁は、1mm~2mmの範囲の同じ厚さを有する。
【0014】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmである。
【0015】
ステップ2)、ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる。
【0016】
上記方法で製造された酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆は、プロテーゼと骨界面との間の微動を低下し、骨組織に対するプロテーゼの応力遮蔽効果を低減し、大腿骨顆の骨組織応力を均一にさせ、梁単一コンパートメント大腿骨顆の一次安定性及び長期安定性が向上する。本発明は、3Dプリントで一体成形し、従来の機械加工では複雑な構造を作製できないという難題を解決し、かつ骨梁と実体との結合強度が高く、脱落し難くなり、プロテーゼの寿命を延ばす。本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の骨梁は、優れた耐圧縮性を有し、実体部分の圧縮降伏強度が向上し、可塑性が向上する。本発明は、オッセオインテグレーション界面の優れた生体適合性、骨の内方成長性及び摩擦界面の超耐摩耗性、低摩耗率を一体的に実現する。本発明の前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の酸化物層とマトリックスとの間に酸素リッチ層があり、酸素リッチ層が遷移層の機能を有し、酸化物層とマトリックスとの間の付着力を高め、酸化物層の脱落を防ぎ、かつ酸化物層の硬度が高い。本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆は、アーチファクトが低く、核磁気共鳴への干渉がほぼなく、核磁気共鳴画像検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の概略構成図である。
【
図2】本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の上面図である。
【
図3】比較例1の均質な骨梁の単一コンパートメント大腿骨顆の有限要素モデルと大腿骨顆骨組織の有限要素モデルとの間の界面の微動クラウドマップである。
【
図4】実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の有限要素モデルと大腿骨顆骨組織の有限要素モデルとの間の界面の微動クラウドマップである。
【
図5】比較例1の均質な骨梁の単一コンパートメント大腿骨顆の有限要素モデルの接触圧力クラウドマップである。
【
図6】実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の有限要素モデルの接触圧力クラウドマップである。
【
図7】比較例1の均質な骨梁の単一コンパートメント大腿骨顆の有限要素モデルの等価応力クラウドマップである。
【
図8】実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の有限要素モデルの等価応力クラウドマップである。
【
図9】比較例2に係る実体部分の金属組織学的微細構造画像である(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
【
図10】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分の金属組織学的微細構造画像(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
【
図12】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分SEM画像である。
【
図13】実施例1の酸化物層及びマトリックスの横断面SEM画像である。
【
図14】実施例1の酸化物層表面のXRD曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下には、具体的実施例を参照しつつ本発明をさらに説明する。
【0020】
(実施例1)
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆(
図1~
図2)の製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃に上げ、180MPaにて一定温度で3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-120℃に上げ、一定温度で5時間保持し、次に温度を-40℃に上げ、一定温度で5時間保持し、さらに温度を4℃に上げ、一定温度で3時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、大腿顆関節面の表面粗さRa=0.012μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、5℃/分で500℃に加熱し、0.4℃/分で温度を400℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を得るステップ、
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、及び第5の中間生成物の構造は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じである。
【0021】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:85.6%、Nb:12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0022】
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造は、大腿顆関節面1と、骨結合面2とを備え、前記大腿顆関節面1の縦断面が円弧状を呈し、前記骨結合面は大腿骨顆後端の骨統合面21と、大腿骨顆遠位端の骨結合面22とを備え、大腿骨顆後端の骨結合面21が垂直面に設けられ、大腿骨顆遠位端の骨結合面22は円弧状に設けられ、大腿顆関節面1と共通の球の中心を有し;前記大腿骨顆遠位端の骨結合面22の中央に第1の円筒形固定ポスト4が設けられ、大腿骨顆遠位端の骨結合面の前部に第2の円筒形固定ポスト5が設けられ、第2の円筒形固定ポスト5の直径は第1の円筒形固定ポスト4の直径よりも小さく;骨結合面2の縁に側壁3が設けられ、第1の円筒形固定ポスト4及び第2の円筒形固定ポスト5を除く側壁3内方の他の部分に領域を分割して骨梁6が設けられ、骨梁領域分割線7は骨結合面2の前後方向の中央に位置し、骨梁領域分割線7の前後に第1種の骨梁8及び第2種の骨梁9がそれぞれ設けられ、第1種の骨梁8の気孔径及び気孔率は、第2種の骨梁9の気孔径及び気孔率よりも小さい。
【0023】
第1種の骨梁8の気孔径は、0.50mmで、気孔率が70%であり;
第2種の骨梁9の気孔径は、0.70mmで、気孔率が80%であり;
第1種の骨梁8及び第2種の骨梁9の厚さは、1.5mmである。
【0024】
(実施例2)
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1325℃に上げ、160MPaにて一定温度で2時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整ステップは、温度を-100℃に上げ、一定温度で4時間保持し、次に温度を-30℃に上げ、一定温度で4時間保持し、さらに温度を6℃に上げ、一定温度で2時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、大腿顆関節面の表面粗さRa=0.035μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量10質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、15℃/分で600℃に加熱し、0.7℃/分で温度を450℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を得るステップ、
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、及び第5の中間生成物の構造は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じである。
【0025】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:93.4%、Nb:5.1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0026】
本実施例の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造は、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じである。
【0027】
実施例1との相違点としては、
第1種の骨梁8の気孔径は、0.40mmで、気孔率が60%であり;
第2種の骨梁9の気孔径は、0.61mmで、気孔率が76%であり;
第1種の骨梁8及び第2種の骨梁9の厚さは、1mmである。
【0028】
(実施例3)
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、アルゴンガスの保護雰囲気下にて、温度を1400℃に上げ、140MPaにて一定温度で1時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-80℃に上げ、一定温度で3時間保持し、次に温度を-20℃に上げ、一定温度で3時間保持し、さらに温度を8℃に上げ、一定温度で1時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、大腿顆関節面の表面粗さRa=0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量15質量%の常圧アルゴンガスを導入し、20℃/分で700℃に加熱し、0.9℃/分で温度を495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆を得るステップ、
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、及び第5の中間生成物の構造は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じである。
【0029】
前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:96.5%、Nb:1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0030】
本実施例の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造は、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の構造と同じである。
【0031】
実施例1との相違点としては、
第1種の骨梁8の気孔径は、0.60mmで、気孔率が75%であり;
第2種の骨梁9の気孔径は、0.80mmで、気孔率が90%であり;
第1種の骨梁8及び第2種の骨梁9の厚さは、2mmである。
【0032】
(比較例1)
均質な骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の製造方法及び構造と実施例1との相違点としては、
第1種の骨梁及び第1種の骨梁は、同種の骨梁であり、気孔径は0.50mm、気孔率は70%、骨梁の厚さは2mmである。
【0033】
(比較例2)
ジルコニウム・ニオブ合金粉末(実施例1と同じ)を原料として、3Dプリントによる一体成形及び機械加工トリミングを経て、実施例1と同じ構造の単一コンパートメント大腿骨顆を得た。
【0034】
≪実験的検証≫
プロテーゼと骨界面の信頼できる生物学的固定は、主にプロテーゼ固定の一次安定性に依存する。プロテーゼと骨界面の間の過度の相対的な運動は、オッセオインテグレーション過程を阻害する。研究によると、プロテーゼと骨界面の微動が50~150μmを超えると、骨界面に大量の線維性組織が形成され、プロテーゼの固定強度が低下し、最終的にはプロテーゼの緩みにつながる。比較例1と実施例1の有限要素モデル、及び大腿骨顆遠位の海綿骨領域分割の簡易モデルを有限要素解析にかけ、
図3~
図4に示す微動クラウドマップを得た。比較例1の均質な骨梁単一コンパートメント大腿骨顆と比較して、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆有限要素モデルと大腿骨顆骨組織有限要素モデル界面との間の微動の最大値は23.9μmで、47%減少し、大腿骨顆有限要素モデルの後端界面での微動の最大値が9.44μmで、26%減少し、本発明は小さな微動を得ることができ、優れた一次安定性を有することを示している。
【0035】
比較例1と実施例1の有限要素モデル、及び大腿骨顆遠位の海綿骨領域分割の簡易モデルを有限要素解析にかけ、接触圧力クラウドマップ(
図5~
図6)及び等価応力クラウドマップ(
図7~
図8)を得た。比較例1の均質な骨梁大腿骨顆と比較して、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の接触圧力はより均一であり、本発明の骨の内方成長特性が均一であることを示している。等価応力の最大値は、2.23MPaで、37%減少し、本発明は応力遮蔽効果を低減させることができ、優れた骨の内方成長特性を持つことを示している。結果では、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆は、優れた均一な骨の内方成長特性を持ち、プロテーゼが長期植え込まれた後、骨粗鬆症によるプロテーゼの緩みを避け、長期安定性を得ることができることを示し;
有限要素解析の結果は、実施例2、3の微動クラウドマップ、接触圧力クラウドマップ、等価応力クラウドマップが実施例1と似ていることを証明した。
【0036】
倒立顕微鏡(Axio Vert.A1、ドイツのカールツァイス社製)で比較例2の実体部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分に対し、金属組織学的微細構造を観察し、結果を
図9~
図10に示す。比較例2の金属組織写真では、微細なαマルテンサイトが観察され、組織が比較的微細で、応力集中が発生しやすく、可塑性に劣る。実施例1の金属組織は、バスケット構造と結晶粒微細化を伴うα相を示している。結果は、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆のマトリックス部分(酸化物層を除く)が優れた強度及び可塑性を有することを示している。
【0037】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で比較例2の骨梁部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分を観察や解析した結果を
図11~
図12に示す。比較例2と比較して、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の骨梁構造中のジルコニウム・ニオブ合金粉末は、さらに溶融結合されることで、骨梁の総合特性が向上されたことを示している。
【0038】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股▲ふん▼有限公司製)で前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm3)及び比較例2の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm3)に対して圧縮試験を行い、実施例1及び比較例2の実体圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表1に示す。実施例1の圧縮降伏強度は、546.72MPaで、比較例2(P<0.05)よりも優れ、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の実体部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0039】
【0040】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股▲ふん▼有限公司製)で気孔径0.50mm、気孔率70%の比較例2の骨梁圧縮試験片及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない気孔径0.50mm、気孔率70%の実施例1の骨梁圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm3)に対して圧縮試験を行い、比較例2及び実施例1の骨梁圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表2に示す。実施例1の骨梁降伏強度は、19.21MPaで、比較例2(P<0.05)よりも明らかに高く、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の骨梁部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0041】
【0042】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆のジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化物層の横断面を観察した(
図13)。実施例2、実施例3の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆のジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化層の横断面も観察し、酸化物層の厚さは、それぞれ10.3μm、17.2μm及び20.6μmで、酸化物層とジルコニウム・ニオブ合金マトリックスとの間に酸素リッチ層があり、ジルコニウム・ニオブ合金マトリックスと酸化物層との間の結合力を向上する。
【0043】
XRD(D8DISCOVER,ドイツのBruker社製)で実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の酸化物層を解析(
図14)し、酸化物層は単斜晶の二酸化ジルコニウム及び正方晶の二酸化ジルコニウムを含んでいた。
【0044】
微小硬度計(MHVS-1000 PLUS、中国の上海奧龍星迪検測設備有限公司製)で実施例1~3の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆に対して微小硬さ試験を行い、試験荷重は0.05kgで、試験片の荷重時間が20秒で、各試験片から8点取った。実施例1~3で測定された平均硬さ値は1948.6Hv、1923.7Hv、及び1967.2Hvであり、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の酸化物層の硬度が高いことを示している。
【0045】
実験により、実施例2、3で製造された酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆の骨梁部分のジルコニウム・ニオブ合金粉末溶融結合程度、耐圧縮性、実体部分の耐圧縮性、金属組織、酸化物層の結晶構造、厚さ及び硬さは、実施例1で製造された酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント大腿骨顆と似ていることを証明した。
【国際調査報告】