(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】フェイル・オペレーショナルなVTOL航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 27/08 20230101AFI20230314BHJP
B64C 27/58 20060101ALI20230314BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20230314BHJP
B64D 25/00 20060101ALI20230314BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230314BHJP
B64D 9/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C27/58
B64C27/26
B64D25/00
B64D27/24
B64D9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545778
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2021014115
(87)【国際公開番号】W WO2021216148
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521185365
【氏名又は名称】オーバーエアー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Overair,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カレム、アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ドス、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ワイド、ウィリアム マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ティナー、ベンジャミン
(57)【要約】
1つの態様では、本明細書に記載されるのは、少なくとも181.437kg(400ポンド)のペイロードを搬送することができる航空機である。1つの実施形態は、4つのロータ・システムを有し、それらのロータ・システムのそれぞれは、電気モータまたはその他のトルク発生源によって独立して駆動される。ロータ・システムのそれぞれは、可変ピッチ・ロータ・システムのうちの1つが動作不能である場合でも航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように十分な推力を提供する。電子制御システムは、ロータ・システムのうちの少なくとも1つの回転速度およびピッチを制御するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも181.437kg(400ポンド)のペイロードを搬送することができる航空機であって、
本体と、
第1の可変ピッチ・ロータと、第2の可変ピッチ・ロータと、第3の可変ピッチ・ロータと、第4の可変ピッチ・ロータと、を備え、前記ロータのそれぞれが、少なくとも1つのトルク発生源によって独立して駆動され、
前記第1、第2、第3、および第4の可変ピッチ・ロータのそれぞれが、可変速ロータであり、
前記第1の可変ピッチ・ロータ、前記第2の可変ピッチ・ロータ、前記第3の可変ピッチ・ロータ、および前記第4の可変ピッチ・ロータのそれぞれが、前記可変ピッチ・ロータのうちの3つだけが動作可能である場合でも前記航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように十分な推力を提供する、航空機。
【請求項2】
前記本体に対して機械的に結合された第1の翼をさらに備える、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記本体に対して機械的に結合された第2の翼をさらに備える、請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記第1の翼が、前記本体に対して枢動するように構成される、請求項2に記載の航空機。
【請求項5】
前記第1および第2の可変ピッチ・ロータが、重心を含むエンベロープを挟んで互いに反対側にあり、前記第1および第2の可変ピッチ・ロータが、前記航空機が制御された垂直離着陸を実施することができるようにするのに必要とされる全ての推力を協働して提供することができる、請求項1に記載の航空機。
【請求項6】
前記第1の可変ピッチ・ロータを少なくとも80度傾斜させるように構成されたティルト機構をさらに備える、請求項1に記載の航空機。
【請求項7】
前記第1の可変ピッチ・ロータおよび前記第2の可変ピッチ・ロータが、前記本体のポート・サイドにあり、前記第3の可変ピッチ・ロータおよび前記第4の可変ピッチ・ロータが、前記本体のスターボード・サイドにあり、前記第1および第2の可変ピッチ・ロータが、第1の方向に回転するように構成される、請求項1に記載の航空機。
【請求項8】
前記第3および第4の可変ピッチ・ロータが、第2の方向に回転するように構成され、前記第2の方向が、前記第1の方向の反対である、請求項7に記載の航空機。
【請求項9】
前記第1の可変ピッチ・ロータが、ロータの循環制御を提供するように構成される、請求項1に記載の航空機。
【請求項10】
前記第1の可変ピッチ・ロータが、前記航空機にマスト・モーメントを印加するように構成された剛性の羽根およびハブを備える、請求項9に記載の航空機。
【請求項11】
前記第1の可変ピッチ・ロータが、個別羽根制御が行われるロータ羽根を備える、請求項10に記載の航空機。
【請求項12】
前記航空機が、4つ以下の可変ピッチ・ロータを備える、請求項1に記載の航空機。
【請求項13】
前記第1のトルク発生源が、第1の電気モータである、請求項1に記載の航空機。
【請求項14】
前記第1の可変ピッチ・ロータと前記第1の電気モータとを動作可能に結合する減速システムをさらに備える、請求項13に記載の航空機。
【請求項15】
前記第1の可変ピッチ・ロータが、前記減速システムを介して前記第1の電気モータおよび少なくとも第2の電気モータのそれぞれによって駆動される、請求項14に記載の航空機。
【請求項16】
前記第1の可変ピッチ・ロータが、最大ロータRPMレベルの60%未満のRPMレベルで動作するように構成される、請求項1に記載の航空機。
【請求項17】
電子飛行制御システムが、ビークル姿勢データを使用して、前記ロータのうちの3つだけが動作可能である場合でも前記航空機の制御された飛行を要求するように構成される、請求項1に記載の航空機。
【請求項18】
電子飛行制御システムが、ビークル姿勢データを使用して、状態の不連続切換えは使用せずに、前記ロータのうちの3つだけが動作可能である場合でも前記航空機の制御された飛行を要求するように構成される、請求項1に記載の航空機。
【請求項19】
VTOL航空機を動作させる方法であって、
ビークル姿勢についてのコマンドを受信する工程と、
4つの可変ピッチ・ロータのうちの1つに対して推力を要求する工程と、
ビークル・ダイナミクス・センサからビークル・ダイナミクス信号を受信する工程と、
前記受信されたビークル・ダイナミクス信号を用いて、前記可変ピッチ・ロータに対して要求される前記推力が、要求されるビークル姿勢を実現するのに不十分であると決定する工程と、
制御された垂直離着陸を実施するのに十分な推力が生成されるまで、前記それぞれの可変ピッチ・ロータに要求される前記推力を増大させる工程と、
を備える、方法。
【請求項20】
前記可変ピッチ・ロータのうちの3つだけが動作可能である場合でも前記航空機が制御された垂直離着陸を実施するように十分な推力を生成する追加の工程を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも181.437kg(400ポンド)のペイロードを搬送することができる航空機であって、
本体と、
第1および第2の同軸ロータ・スタックであって、実質的に共通の回転軸の周りで回転可能な第1の可変ピッチ・ロータ・システムおよび第2の可変ピッチ・ロータ・システムをそれぞれ有し、前記ロータ・システムのそれぞれが、少なくとも第1のトルク発生源によって独立して駆動される、第1および第2の同軸ロータ・スタックと、
前記第1および第2の同軸ロータ・スタックのそれぞれの少なくとも前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムの回転速度および羽根ピッチを制御するように構成された電子制御システムと、を備え、
前記同軸ロータ・スタックのそれぞれの前記第1および第2の可変ピッチ・ロータ・システムのそれぞれが、前記同軸ロータ・スタックのそれぞれの前記可変ピッチ・ロータ・システムのうちの最大で1つが動作不能である場合でも、前記航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように十分な推力を提供する、航空機。
【請求項22】
前記本体に対して機械的に結合された翼をさらに備える、請求項21に記載の航空機。
【請求項23】
前記翼が、前記本体に対して枢動するように構成される、請求項22に記載の航空機。
【請求項24】
前記翼が、左翼および右翼に分割され、前記左翼および右翼のそれぞれが、実質的に幅方向の軸の周りで独立して枢動するように構成される、請求項23に記載の航空機。
【請求項25】
前記第1の同軸ロータ・スタックを少なくとも80度傾斜させるように構成されたティルト機構をさらに備える、請求項21に記載の航空機。
【請求項26】
前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1および前記第2の可変ピッチ・ロータ・システムが、同じ方向に回転するように構成される、請求項21に記載の航空機。
【請求項27】
前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1および前記第2の可変ピッチ・ロータ・システムが、反対方向に回転するように構成される、請求項21に記載の航空機。
【請求項28】
前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムが、ロータの循環制御を提供するように構成される、請求項21に記載の航空機。
【請求項29】
前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムが、前記航空機にマスト・モーメントを印加するように構成された剛性の羽根およびハブを備える、請求項28に記載の航空機。
【請求項30】
前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムが、個別羽根制御が行われるロータ羽根を備える、請求項28に記載の航空機。
【請求項31】
前記第1のトルク発生源が、燃料消費型のエンジンである、請求項21に記載の航空機。
【請求項32】
前記第1のトルク発生源が、第1の電気モータである、請求項31に記載の航空機。
【請求項33】
前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムと前記第1の電気モータとを動作可能に結合する減速システムをさらに備える、請求項32に記載の航空機。
【請求項34】
前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムが、前記減速システムを介して前記第1の電気モータおよび少なくとも第2の電気モータのそれぞれによって駆動される、請求項33に記載の航空機。
【請求項35】
第1の機械クラッチ・システムをさらに備え、前記第1の機械クラッチ・システムが、前記第1の機械クラッチ・システムが係合解除されたときに、前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムを駆動するように構成された少なくとも前記第1のトルク発生源が、前記第1の同軸ロータ・スタックの前記第2の可変ピッチ・ロータ・システムを駆動するように構成される、請求項31に記載の航空機。
【請求項36】
前記第1および第2の同軸ロータ・スタックのそれぞれの前記第1および第2の可変ピッチ・ロータ・システムが、前記トルク発生源のそれぞれとともに、また電子制御システムとともに、前記同軸ロータ・スタックのそれぞれの前記可変ピッチ・ロータ・システムのうちの最大で1つが動作不能な場合でも、追加の揚力発生源を援用することなく、制御された垂直離着陸を可能にするのに十分にサイジングおよび構成される、請求項31に記載の航空機。
【請求項37】
前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムが、最大ロータ・システムRPMレベルの80%未満のRPMレベルで動作するように構成される、請求項31に記載の航空機。
【請求項38】
前記第1または第2の可変ピッチ・ロータのいずれかが、最大ロータ・システムRPMレベルの60%未満のRPMレベルで動作するように構成される、請求項37に記載の航空機。
【請求項39】
少なくとも181.437kg(400ポンド)のペイロードを搬送することができる航空機であって、
本体と、
第1および第2の同軸ロータ・スタックであって、実質的に共通の回転軸の周りで回転可能な第1の可変ピッチ・ロータ・システムおよび第2の可変ピッチ・ロータ・システムをそれぞれ有し、前記ロータ・システムのそれぞれが、少なくとも1つのトルク発生源によって独立して駆動される、第1および第2の同軸ロータ・スタックと、
前記第1および第2の同軸ロータ・スタックのそれぞれの少なくとも前記第1の可変ピッチ・ロータ・システムの回転速度およびピッチを制御するように構成された電子制御システムと、
前記第1または第2の同軸ロータ・スタックに収容されていない少なくとも第1の補助ロータ・システムと、を備え、
前記同軸ロータ・セットのそれぞれの前記第1および第2の可変ピッチ・ロータ・システムのそれぞれ、および前記第1の補助ロータ・システムが、協働して、前記同軸ロータ・スタックのそれぞれの前記可変ピッチ・ロータ・システムのうちの最大で1つ、または前記補助ロータ・システムのうちの最大で1つのいずれかが動作不能である場合でも、前記航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように十分な推力を提供する、航空機。
【請求項40】
第2の補助ロータをさらに備える、請求項39に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、垂直離着陸(VTOL:vertical takeoff and landing)航空機である。
【背景技術】
【0002】
VTOL航空機は、小さな幾何学的フットプリントで離着陸することができ、そのことによりビークルが乗客およびペイロードを所望の目的地のより近くまで運ぶことができるので航空機の運用の柔軟性が高まり、また通常離着陸(CTOL:conventional takeoff and landing)航空機によって必要とされるのと同じインフラストラクチャ投資または土地面積を必要としないことから、長い間望まれてきた。
【0003】
しかしながら、VTOL航空機は、CTOL航空機と比較していくつかの欠点を有する。第一に、VTOL航空機がホバリングするのはCTOL航空機が滑走路を介して離陸するよりかなり大きな動力を必要とするので、VTOL航空機は、CTOL航空機よりかなり大きな設置動力(設置されたエンジン、駆動モータ、バッテリ、およびドライブトレインの定格出力によって与えられる)を必要とすることになる。増大した設置動力により、航空機の重量およびコストが大きくなり、ビークルの有用性が制限される。バッテリのみの電源など、一部のパワートレインの構成では実現可能な設計が、バッテリおよびモータの出力密度の制限により、現在の部品技術を使用する特定のVTOL構成では可能でないことがある。
【0004】
第二に、VTOL航空機は、通常は、特に離陸時および着陸時に、同じ大きさのCTOL航空機より大きな音を発する。この音響に関する特徴は、公衆の迷惑になり、ビークルの使用に運用上の制限が課されることにつながる可能性があるので、これもやはりVTOL航空機の有用性を低下させる。
【0005】
最後に、VTOLの安全性記録は、航空機産業の他の部分より遅れている。VTOL航空機、および特にヘリコプタは、通常は、そのロータおよびパワートレイン・システムに1つまたは複数の単一障害点を有する。その結果として、ヘリコプタは、良好な、しかし即時の着陸を制御するために高レベルなパイロットスキルが必要とされるオートローテーション着陸によって推進システムの故障から回復することが多いが、このような着陸は、VTOL航空機が着陸場所の柔軟性に関する最大の運用上の利点を提供する人口密度の高い市街地では問題になる。
【0006】
こうした短所に対処するために、電動式の「eVTOL」航空機と呼ばれることが多い新たな種類のVTOL航空機が登場している。本願明細書に援用される特許文献1(カレム(Karem))は、従来技術を調査している。従来技術において、多くのビークルはVTOL飛行において5つ以上のロータを使用し、そのうちの一部は、単一のロータ・システムの故障後も安全な運転を継続することができる。しかしながら、さらに多くのロータを備えるビークルは、必然的に、同じフットプリントに収めるために、より小さなビークル全体のロータ・ディスク面積でより小さな直径のロータを有することになり、したがって、より高い回転面荷重(重量を全ロータ・ディスク面積で割った値)を有することになる。これは、垂直離陸時のノイズの増大および航空機の馬力荷重(推力を必要なパワーで割った値)の低下につながる。馬力荷重が低くなることは、ビークルの有用性を低下させる。馬力荷重が低くなることは、航空機によって消費されるエネルギーを増加させ、パワートレインの所要容量を増大させる。多数のロータも、前進飛行時に多くの揚力ロータが露出されることにつながり、そのことが揚力対抗力比を低下させ、それにより速度および航続距離を低下させることになるか、あるいは多数のティルト式ロータを必要とすることになる。
【0007】
カレムは、2つから4つの飛行に不可欠なロータ・システムを備えるビークルを導入することによって、この馬力荷重およびノイズの問題に対処している。4ロータの実施形態は、
図1に示されている。このようなビークルは、(ロータ直径がより大きくなる可能性があることにより)所与のフットプリント内でより低い回転面荷重を有し、それにより馬力荷重およびノイズに関する利点を得る傾向があるが、これらのビークルは、ロータ・システム内の単一障害点により安全性は低い。カレムのもののようなビークルは、冗長なモータ、バッテリ、またはエンジンによって安全性を高めようとしているが、減速システムおよびロータ制御システムに依然として単一障害点を有することになる。
【0008】
さらなる従来技術では、複数の共回転同軸ロータによってVTOL航空機のホバー馬力荷重およびノイズの欠点に対処しようとしており、実際に、同軸ロータのノイズおよび馬力荷重に関する利点は既知である。
図2に示されるように、特許文献2は、それぞれ2つのロータ・システムを有する2つのロータ・スタックを備える航空機を開示している。各スタックのロータ・システムは、航空機の水準馬力荷重の増大およびノイズの低下のために、互いに対して固定されており、独立して回転することができず、共通軸の周りで駆動される。ただし、同軸スタックのそれぞれにおいて、ロータは互いに独立して回転することはできない。
【0009】
図3に示されるように、特許文献3は、ノイズの低下および馬力荷重の増大のために2つの小型の共回転プロペラからなるスタックを6つ備える航空機を開示している。各同軸スタックの2つのプロペラは、互いに対して相対的に動いて、最適なノイズおよび馬力荷重特性になるように方位角を調節することができる。この設計は、プロペラ間の方位間隔の実時間調整のために独立回転を含むが、ロータ・スタックの2つのロータのうちの一方が動作不能な状態での飛行を可能にするために各ロータ・システムをオーバサイジングすることを企図しているようには見えない。さらに、当業者であれば、
図3の航空機のロータをオーバサイジングすることは考えないであろう。この航空機は1つが故障しても多数のバックアッププロペラを有しているので、ロータの直径が比較的小さく、ロータの数も多いことにより、各ロータの推力容量をオーバサイジングしてもそれほど利点がないからである。
【0010】
図4は、Airspace Experience Technology社のMOBI-ONEを示しており、これは、それぞれ2つのロータからなる4つの共回転同軸スタックに配列された8つの小型ロータを備えるティルト・ウィング型航空機である。同軸スタックは、翼とともに回転する。このビークルは、ピッチ制御のための第9の後方補助ロータを特徴とする。全部で4つの同軸スタックと、第5の補助ロータとにより、1つの同軸スタックが動作不能な状態での継続飛行を可能にするが、ロータ・スタックの数の増加により、必然的にロータをより小さくせざるを得ず、そのことが、いくつかの小型ロータを使用するVTOL航空機に見られるより高い回転面荷重と、その結果の低い馬力荷重とにつながる。
【0011】
図5Aおよび
図5Bは、Embraer社のPULSEコンセプトである、2つのティルト式同軸ロータ・スタックに配列された4つのロータを備えるティルト・ロータ航空機を示している。ここで、同軸設計は、2つのティルト式の単一のロータより低下したノイズおよび増大した馬力荷重を提供するが、その比較的小型のロータは、閉じた翼の内側に収まるようにサイジングされ、そのことが、より大型のティルト式ロータを有する航空機と比べて低い馬力荷重をもたらす。PULSEコンセプトは、ロータのホバー回転速度を約850RPMとして開示しており、これは、ロータはギヤボックスを回避するのに十分な速さで回転しなければならないという従来の知識に従っている。アーバン・エア・モビリティの従来の知識はまた、ノイズを抑制するためには、ロータ先端速度はホバー時に毎秒137.16メートル(450フィート)未満でなければならないということも教示しており、この値であれば、直径約3.048メートル(10フィート)のロータとなる。このロータ・サイズでは、回転面荷重が高くなり(146.47kg/m
2(30lb/ft
2)以上の可能性が高い)、この値では、同軸スタック内の各ロータのうちの1つのみによってビークルによって必要とされる全ての推力を提供するようにサイジングされたパワートレインを備えたビークルというのは見込みがなくなるように本出願人には思われる。したがって、PULSEコンセプトの航空機は、それぞれの側の1つのロータが動作不能になった場合でも安全に着陸することができるかもしれないが、この航空機は、例えば垂直離陸など、通常の飛行計画を継続することはできなくなるとも思われる。
【0012】
図6は、全部で8つのロータとなるように、それぞれ2つのロータからなる4つの同軸スタックを備えるVTOL航空機を示している。各同軸スタックでは、ロータは逆回転して、航空機のトルク制御を可能にしている。しかし、このビークルも、一般的な知識に沿って多数の小型ロータを使用している。この航空機は、各同軸スタックから1つのロータへの動力を切断して、良好に降下することができる可能性はある。
【0013】
図7は、特許文献4(リャソフ(Lyasoff))に記載される8プロペラ航空機を示している。この出願では、8つのプロペラを備える実施形態に注目している。
図8は、Joby社の6ロータVTOLを示している。一般的な知識は、この設計は、航空機の周りに分散された多数のロータを有することによって与えられる信頼性の高さを有すると示唆するであろう。当業者なら、Joby社のロータの数を減らすことは考えないであろう。これは、この多数のロータは、ロータ・システムが故障し、トルクとモーメントのバランスを補償するために反対のロータ・システムも停止される場合の状況に対応するのに150%の推進システムのオーバサイジングしか必要としないからである。Joby社のタイプの航空機を、有意に少ない数の、ただしより大型のロータを有するように修正することも、そのようにすれば多数のロータによって与えられていると推定される追加的な信頼性の向上を排除することになると当業者なら考えるので、一般的な知識に反する。このようなVTOL航空機も、ビークルが安全性を保障するのに十分に高い単一障害点のロータ・システムにおける信頼性を有することに依拠する2つのティルト式ロータまたは同軸ロータ・スタックを備える既存のビークルの一般的な知識に反する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/334251号明細書
【特許文献2】米国特許第8640985号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/135413号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/291862号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術では、1つのロータ・システムが動作不能な状態でVTOL飛行を持続することができる(ただしあまり望ましくない馬力荷重、ノイズ、および場合によっては複雑性特性を有する)構成と、少なくとも1つのロータまたは駆動システムが飛行に不可欠である(ただしより望ましい馬力荷重、ノイズ、および場合によっては複雑性特性を有する傾向がある)構成との間の兼ね合いがある。
【0016】
特に同軸VTOL設計に関しては、従来技術でプロペラの同軸スタックの使用を考える場合でも、そのようなロータの使用は、設計および運用がより容易であり、ギヤボックスまたはそれに類する機械的複雑性を必要としないことが多く、必要に応じて余分のロータを含むことによる冗長性を許容する、より小型のロータを使用するという従来の知識に主として一致する。
【0017】
一般的な知識は、同軸ロータが使用される場合、同軸ロータは、馬力荷重の増大をもたらし、また共回転の場合にはノイズの低減を、または逆回転の場合にはトルクバランスの改善をもたらすと教示している。(例えば同軸ロータ・スタックを2つしか備えない航空機において)他方のロータがない状態での制御された飛行に必要とされる推力の全てを提供するように同軸スタック内の各ロータ・システム(関連する減速システム、エンジン、モータ、およびバッテリを含む)をサイジングすることは、2つ目のロータの失われた推力を補償し、かつロータ後流中の動作不能なロータの追加の非効率性を克服するためにロータ・システムの200%を超えるオーバサイジングをもたらすことになるので、一般的な知識に反する。馬力荷重の増大のために同軸ロータ・システムを用いる設計者は、システムの重量および複雑性が増大するので、同軸ロータ・セットの各ロータ・システムを、独立して駆動されるように、かつ1つのロータが動作不能な状態でそのセットに必要とされる推力の全てを提供することができるようにサイジングすることはない。特定の直径および剛率を有する同軸ロータ・セットは、所与の推力を達成するのに、同じ直径および剛率を有する単一のロータが同じ推力のために使用するよりも少ない総動力を使用する。さらに、同軸セットの各ロータ・システムによって必要とされる動力およびトルクは、ロータ・システムの総動力の約半分である。これは、本明細書のいくつかの実施形態で実装される設計のいくつかのような同軸ロータ・セット設計が、必要とされる動力を低下させるために同軸ロータを使用することの当業者が感じている利点を覆すものである。1つのロータが動作不能な状態でVTOL飛行を可能にするようにロータ・システムをオーバサイジングすることは、単一のロータ・システムよりもはるかに大きな(少なくない)設置動力を必要とする。
【0018】
従来技術が教示していないのは、低い総回転面荷重を有し、ロータ・システムが完全に動作不能な場合でも航空機が制御された状態で安全に離陸および着陸することができるようにサイジングおよび寸法決定された、2つの主要同軸ロータ・スタックにスタックされた、またはその他の方法で実装された、5つ未満のロータを備えるVTOL航空機である。このような手法は、システム冗長性は、ロータ・システムの完全な故障後に制御されたVTOL飛行に対応するために通常は5つ以上の多数のロータを必要とすると教示する、またはシステム冗長性は重量が法外になると教示する一般的な知識とは対照的であり、代わりに、ビークルの設計は、少なくとも1つのロータまたは駆動システムが飛行に不可欠であることを前提とし、それにより、実現可能と仮定しても製造および保守のコストを増加させることになる飛行時間当たりの故障で約10-9という部品レベルの信頼性を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書に提示されるいくつかの実施形態では、VTOL航空機は、各ロータ・システムの冗長性のために設計およびサイジングされた、2つの主要同軸ロータ・スタックに配列された、またはその他の方法で実装された、4つの主要ロータを有する。このような設計では、不可欠なロータ・システムを、2つ以上の独立して駆動されるロータ・システムをそれぞれ有する同軸ロータ・セットで置き換えることがある。他の実施形態では、4つの主要ロータがクアッド構成で配列される非同軸ロータ・システムを利用することもある。
【0020】
同軸の実装に関して、主としてアンチトルク(尾翼ロータなし)、高速のエッジワイズ・アドバンス比、または増大した馬力荷重のために設計される従来技術の同軸ロータとは異なり、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、冗長性および安全性のために設計された同軸ロータ・セットを提供する。具体的には、各同軸ロータ・セットは、セット内の個々のロータ・システムのそれぞれが独立して駆動され、離陸を含む制御されたVTOL飛行のために飛行に不可欠な同軸ロータ・セットに必要とされる全ての推力を提供することができるように設計される。
【0021】
いくつかの同軸の実施形態では、ロータ・システムは、トルク発生源(モータまたはエンジンである可能性が最も高い)によって駆動されるが、この設計は、各トルク発生源がロータのうちの1つしか駆動することができない場合には大きな過剰設置動力を有することがあり、あるいは、このシステムは、各モータまたはエンジンが故障のモードに応じて一方のロータまたは他方のロータを駆動することができるように設計される。減速システム、および各ロータを駆動するモータまたはエンジンも、スタック内の単一のロータがスタック全体に必要とされる推力の全てを提供するのに十分な動力を提供するようにサイジングされる。航空機がバッテリ駆動式である場合には、バッテリ・システムのアーキテクチャは、動作可能なロータを駆動するモータまたはその他のトルク発生デバイスに対して十分なバッテリ電力を提供する。さらに、航空機は、同軸セット内のロータ・システムの1つが動作不能であるときに航空機のヨー・モーメントのバランスをとる方法を有する。いくつかの実施形態では、この方法は、他の同軸ロータ・セットのうちの1つまたは複数のロータ・システムを停止すること、その他の同軸ロータ・セットの速度およびコレクティブを変化させてそれぞれのヨー・モーメント寄与を変化させること、差異のあるロータ・ナセル傾斜角を適用してオフセットするヨー・モーメントを生成すること、あるいはその他の方法を伴うことがある。
【0022】
本明細書に開示される発明性のある概念のいくつかは、高い回転面荷重またはロータ数の増加との通常の兼ね合いなしで人間および貨物の航空輸送に必要とされる安全性レベルの向上を実現し、この手法は、それらのロータおよび関連するドライブトレインを安全に不可欠なものにすることなく、大直径のロータを見込んでいる。
【0023】
本明細書に開示される発明の特定の実施形態は、電動式垂直離着陸(eVTOL)航空機が、2つの同軸ロータ・スタックを用いて少なくとも400ポンド(約181.437kg)を搬送するように設計され、各スタックが、各可変ピッチ・ロータが好ましくは1つまたは複数の電気モータによって、ただし場合によっては燃料消費型のエンジンなど任意の他のトルク発生デバイスによって独立して駆動される状態で、実質的に共通の回転軸の周りで軸方向に整列された2つの可変ピッチ・ロータ・システムで構成される、装置、システム、および方法を提供する可能性がある。1つの実施形態では、各可変ピッチ・ロータ・システムは、可変速剛性(非関節式)ロータであることが好ましい。さらに、これらのロータは、本体に対して傾斜する間も互いに対して軸方向に整列されたままとなるように構成されたティルト・ロータであることが好ましい。これらのロータのうちの1つまたは複数は、ロータ飛行(例えば垂直離陸など)中には有意な量の揚力を提供し、翼飛行中には前方推力(または空気制動)を提供するように傾斜されることが可能である。分かりやすいように、いくつかの実施形態では、同軸スタック内の2つの可変ピッチ・ロータ・システムの間の相対方位角は固定されず、各可変ピッチ・ロータ・システムは、他方の可変ピッチ・ロータ・システムから独立して実質的に共通の回転軸の周りで回転することができる。ロータが傾斜する範囲まで、両可変ピッチ・ロータ・システムは一緒に傾斜するように構成される。可変ピッチ・ロータは第1の羽根を備えることがあり、ロータの根元の半径の30%におけるlbs/in2単位で表した可変速可変ピッチ・ロータ内の第1の羽根のフラップ・スチフネスは、本願明細書に援用される米国特許第6641365号明細書(カレム(Karem))に教示されるロータのように、フィート単位で表したロータ直径の少なくとも200倍から4乗である。いくつかの実施形態では、可変ピッチ・ロータは、最大ロータ・システムRPMレベルの80%未満、さらには60%未満のRPMレベルで動作するように構成される。
【0024】
本明細書に開示される発明のいくつかの実施形態は、特に、概算で2人以上の人間またはそれと等価な量の他のペイロードを搬送するために必要とされるペイロード能力である、少なくとも181.437kg(400ポンド)搬送するように設計された航空機用に企図されている。VTOL航空機は、ある倍率でより大きなサイズに寸法がスケーリングされた航空機は、ロータ面積、翼面積、構造的な翼桁奥行き(強度およびスチフネスを提供する)、およびその他の類するパラメータがその倍率の約2乗しか増加しない一方で、重量はその倍率の約3乗だけ増大するという、2乗3乗のスケーリング則の支配下にある。その結果には、3つの側面がある。第一に、必要な構造強度、スチフネス、および空力弾性マージンは、スケールが大きくなるほど維持することが困難になる。第二に、ホバリングするために必要とされる動力は、航空機の重量が所与のロータ・ディスク面積でも既に超線形的に増大するが、ビークルの全体のサイズが大きくなるにつれてやはり超線形的に増大する。これは、推進冗長性に必要とされる動力マージンがサイズとともに望ましくないほど増大することを意味する。その結果、玩具およびより小型の航空機、特に2人未満の人間に相当するものを搬送するように設計された航空機で利用される設計技術は、動力の必要および設計の複雑性がはるかに高くなるより大型の航空機では、特に機能しなくなりやすい。本明細書に含まれる発明性のある概念は、181.437kg(400lbs)超を搬送することができる航空機の必要に対処することに特によく適している可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】2つから4つの飛行に不可欠なロータ・システムを備えるビークルの従来技術の4ロータの実施形態を示す図。
【
図3】2つの小型の共回転プロペラからなるスタックを6つ備える航空機を示す図。
【
図4】それぞれ2つのロータからなる4つの共回転同軸スタックに配列された8つの小型ロータを備えるティルト・ウィング航空機であるAirspace Experience Technology社のMOBI-ONEを示す図。
【
図5A】Embraer社のPULSEコンセプトである、2つのティルト式同軸ロータ・スタックに配列された4つのロータを備えるティルト・ロータ航空機を示す図。
【
図5B】Embraer社のPULSEコンセプトである、2つのティルト式同軸ロータ・スタックに配列された4つのロータを備えるティルト・ロータ航空機を示す代替の図。
【
図6】全部で8つのロータとなるように、それぞれ2つのロータからなる4つの同軸スタックを備えるVTOL航空機を示す図。
【
図9】本明細書の発明性のある概念によるホバリングしているVTOL航空機の好ましい実施形態の斜視図。
【
図10】遷移状態で示される、
図9の好ましい実施形態の斜視図。
【
図11】巡航位置に示される、
図9の好ましい実施形態の斜視図。
【
図12】2ロータ同軸スタックのための駆動システム900の可能な実施形態を示す図。
【
図13】2ロータ同軸スタックのための駆動システム900の可能な代替の実施形態を示す図。
【
図14】2ロータ同軸スタックのための駆動システム900の別の可能な代替の実施形態を示す図。
【
図15】2ロータ同軸スタックのための駆動システム900の可能な代替の実施形態を示す図。
【
図16】駆動システムの逆転機の1つの可能な実施形態を示す図。
【
図17】第1の翼が航空機の本体に対して枢動するように構成される実施形態を示す図。
【
図18】第1および第2の同軸ロータ・スタックに加えて少なくとも第1の補助ロータ・システムを備える航空機の実施形態を示す図。
【
図19】4つの可変ピッチ・ロータを備えて構成された航空機の実施形態を示す図であって、航空機は遷移状態で示されている図。
【
図20】4つの可変ピッチ・ロータを備えて構成された航空機の実施形態を示す図であって、航空機はホバリング状態で示されている図。
【
図21】4つの可変ピッチ・ロータを備えて構成された航空機の実施形態を示す図であって、航空機は巡航位置に示されている図。
【
図23】4つの可変ピッチ・ロータを備えて構成された航空機の実施形態を示す上面図。
【
図24】使用される可能性がある、可能な減速システム、ナセル、およびモータの構成を示す図(米国特許出願公開第2018/334251号明細書(カレム(Karem))に既に記載されているが、本明細書で請求される航空機の文脈では記載されていない)。
【
図25】4つの可変ピッチ・ロータを備えて構成された航空機の実施形態を示す上面図。
【
図26】電子飛行制御システムおよび関連するシステムの可能な実装を示す図。
【
図27】電子飛行制御システムおよび関連するシステムの別の可能な実装を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図9は、ホバリングしているVTOL航空機の好ましい実施形態の斜視図である。この航空機は、本体1101、内側翼1102、ティルト式ナセル1106、ティルト式外側翼1107、第1の同軸ロータ・スタック1103、および第1の尾翼面1108を有する。外側翼1107は、ティルト式ナセル1106とともに傾斜して、ホバリングモードにおいてロータからの下向き荷重の力を低減する。第1の同軸ロータ・スタック1103は、ロータ・システムのそれぞれが、少なくとも1つのトルク発生源によって独立して駆動される状態で、実質的に共通の回転軸すなわちロータの回転軸の周りで回転可能な、第1の可変ピッチ・ロータ・システム1104および第2の可変ピッチ・ロータ・システム1105を備える。第1および第2の可変ピッチ・ロータは、共回転または逆回転するように構成され得る。
【0027】
本実施形態は、さらに、第2の同軸ロータ・スタック1103を備える。第2の同軸ロータ・スタック1103は、ロータ・システムのそれぞれが、少なくとも1つのトルク発生源によって独立して駆動される状態で、実質的に共通の回転軸すなわちロータの回転軸の周りで回転可能な、第1の可変ピッチ・ロータ・システム1104および第2の可変ピッチ・ロータ・システム1105を備える。
【0028】
第1の可変ピッチ・ロータ・システム1104は、ロータ羽根1109を含む。ロータ羽根は、例えば米国特許第6641365号明細書(カレム(Karem))に記載されるものなど、硬いヒンジレス種のものである。各可変ピッチ・ロータ・システムは、本願明細書に援用される米国特許第10351235号明細書(カレム(Karem))に記載されるロータ・システムのもののようなフェザー軸の周りで羽根を回転させることによって制御される推力および力のモーメントを独立して提供し、電子制御システム1411が、米国特許第6641365号明細書に教示されるように、各可変ピッチ・ロータ・システムの回転速度およびロータ羽根ピッチの両方を同時に制御して、電子飛行制御システムに従ってロータの力およびモーメントのトリムをとり、かつロータが最適な羽根揚力分布が得られる最適な速度で、したがって最適な効率およびトルク発生デバイスによって印加される最小の必要とされるロータ・トルクで動作することを保証する。内側翼1102は、同軸ロータ・スタック1103および外側翼1107から本体1101に対して荷重を伝達する。
【0029】
同軸ロータ・スタックのそれぞれの第1および第2の可変ピッチ・ロータ・システムのそれぞれは、同軸ロータ・スタックのそれぞれの可変ピッチ・ロータ・システムのうちの最大で1つが動作不能である場合でも、航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように十分な推力を提供することができる。これは、後流中の動作不能なロータによる追加のロータの非効率性も含めて、各同軸スタックに必要とされる全推力が、単一のロータによって提供されることが可能であることを必要とする。全所要推力を算出するためには、航空機の最大総重量を考慮し、次いで数値流体力学(CFD)方法を使用して、ロータのウェークに影響を及ぼす可能性がある翼、本体、ナセル、尾翼、および動作不能なロータによる機体下向き荷重を克服するために必要とされる追加の推力を算出する。さらに、1つのロータが動作不能な状態での制御性および操縦性のための追加の推力マージンを追加するが、好ましい実施形態では、このような推力マージンは、15%を超えることもある。次いで、CFD方法を使用して、1つのロータが動作不能な場合の、空気密度および上昇率を含む所望の動作状態における、マージンも含めて必要な推力を達成するために必要とされるロータ入力トルクおよび動力を算出する。さらに、この必要とされるロータ・トルクは、減速システム、トルク発生デバイス、および動力分配システム(トルク発生デバイスが電気モータである実施形態ではバッテリを含む)を含むパワートレインの各要素に合わせてトルクおよび出力定格をサイジングするために使用され、各パワートレイン要素の動力およびトルクの定格は、さらに、パワートレイン・システムの各要素における効率の損失を見込む。
【0030】
同軸ロータ・スタック1103内の第1の可変ピッチ・ロータ・システム1104および第2の可変ピッチ・ロータ・システム1105のそれぞれは、第1および第2の可変ピッチ・ロータ・システムのそれぞれが、1つのロータが動作不能な場合でも同軸ロータ・スタック全体に対して電子飛行制御システムによって要求される推力の全てを提供することができるようにサイジングされることもある。これを実現するために、電子制御システムは、動作可能な可変ピッチ・ロータに対して増大したRPMおよび動力を要求することがある。所要の推力マージンのための増大したRPMおよび動力は、ロータ、ナセル、および隣接する翼面の組合せの物理リグ試験によって妥当性検証された結果を用いてロータをサイジングするときに、動作不能なロータの存在を含む特定のロータの構成について、数値流体力学(CFD)方法によって算出される。飛行中には、要求されるRPM、羽根ピッチ、および動力は、3つ全ての軸についての航空機の直線速度および角速度ならびに加速度の計測されたフィードバックに基づいて電子飛行制御システムによって要求される。トルク発生デバイスおよび減速システム(
図11、
図12、および
図13に示される)は、同様に、1つのロータが動作不能な場合の十分なマージンを備えてサイジングされる。航空機がバッテリ駆動式である場合には、バッテリおよび分配システムは、ロータが動作不能になる各シナリオにおいて動作可能なロータに対して十分な電力を提供するようにサイジングされる。このようなサイジングは、通常は毎分30.48m(100ft)超の十分な垂直上昇率、ならびに所望の飛行エンベロープによって規定される制御動力、横風、およびトリム・ペナルティの追加のマージンでの動作のために望まれる最高の気圧高度での最大総離陸重量で行われる。
【0031】
本体1101は、乗客、手荷物、または貨物などのペイロードを搬送するように設計され、本願明細書に援用される米国特許第10351235号明細書(カレム(Karem))に詳細に記載される構成のような構成の着陸装置を含む様々なシステムを収容している。好ましい実施形態では、同軸ロータ・スタックの中心からのビークルの重心のずれは、剛性の可変ピッチ・ロータ・システムからのマスト・モーメントによって制御され、これは、必然的にロータの循環制御を必要とする。
【0032】
1つの例示的な実施形態では、
図9の航空機は、2721.554kg(6000lb)の最大総離陸重量を有する。この航空機は、1つの操縦席および4つの乗客用座席と、手荷物室とを有する。航空機の本体は、長さが10.0584m(33ft)、最大幅が1.524m(5.0ft)、最大高さが1.6764m(5.5ft)である。航空機の翼幅は、13.716m(45ft)であり、2つの同軸ロータ・スタックの中心間の幅方向の距離は、9.144m(30ft)である。左右の同軸ロータ・スタックの可変ピッチ・ロータ・システムは、64.3818m
2(693ft
2)の重複しないロータ・ディスク面積で6.4008m(21ft)の直径を有し、完全に重複しない面積に基づけば42.4771kg/m
2(8.7lb/ft
2)、完全に重複するディスク面積に基づけば20.9944kg/m
2(4.3lb/ft
2)の回転面荷重を有する。各可変ピッチ・ロータ・システムは、単速度減速システムを介して4つのモータによって駆動され、公称動作状態中のホバリングでは、モータ入力速度は10,000RPMであり、可変ピッチ・ロータ・システムの出力速度は400RPMである。ただし、例えば1つ、2つ、または3つなど、任意数の電気モータが、減速システムを介して各可変ピッチ・ロータ・システムを駆動するように構成される可能性がある。各モータは、好ましくは、90kWの最大連続出力定格と、110kWの最大緊急出力定格とを有するが、ビークルは、通常は、ほとんどの公称動作状態でのホバリングでは、最大連続出力定格の半分未満を使用することになる。ビークルの16個のモータは、それぞれが120kWを出力することができる8個のバッテリによって給電される。
【0033】
1つの可変ピッチ・ロータ・システムが動作不能になった場合には、電子制御システムは、残りの動作可能なロータの速度を533RPMまで増大させ、羽根ピッチを増大させて、公称動作状態での推力と同じ推力を提供しながら、ロータの動作をロータのピーク効率推力係数付近に維持する。重要なことは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態におけるモータのオーバサイジングにより、ビークルが、少なくとも1524m(5000ft)の気圧高度で、地面効果による垂直上昇(少なくとも30.48m/分(100ft/分)の上昇)および制御動力(例えば、都市環境で操縦されるビークルでは少なくとも25%の制御動力マージン)の両方において正の性能マージンを維持することができることである。ロータ・システムが故障している状態では、本明細書に記載されるいくつかの実施形態のビークルは、パイロットが、制御された飛行を維持し、はるかに少ない動力が必要とされる翼飛行に遷移することができるようにし、また、パイロットが、例えば着陸が中止されるシナリオなどにおいて必要とされる場合には、垂直に離陸し、地面効果によって上昇することができるようにする。全てのロータが公称動作しているときにバッテリ・パックが故障した場合にも、同じことが当てはまり、さらにバッテリをオーバサイジングして、バッテリとロータ・ドライブの組み合わさった故障を見込むこともできる。
【0034】
図10および
図11は、
図9に示される航空機と一致する、それぞれ遷移状態および巡航における好ましい実施形態の斜視図である。ティルト式ナセル1106が同軸ロータ・スタック1103を傾斜軸1113の周りで垂直推力ベクトル1111(
図9に示される)を有するホバリング位置から水平推力ベクトル1112(
図11に示される)を有する巡航位置に傾斜させるにつれて、外側翼1107は、内側翼1102と同様の迎え角で垂直位置から水平位置に傾斜する。外側翼は、減少した巡航抗力でビークル全体の翼のアスペクト比を増大させる。好ましい実施形態では、主翼は、少なくとも6、好ましくは8超の全翼アスペクト比を有する。
【0035】
ホバリング時、遷移時、および巡航時に好ましいレベルの安全かつ効率的な飛行を実現するために、本明細書で企図される航空機は、本願明細書にその全体が援用される米国特許第10351235号明細書(カレム(Karem))の空力設計の教示に従って設計されることがある。このような実施形態では、航空機は、80KIAS以下、好ましくは60KIAS以下の低い翼失速速度を有するように設計され、この低い失速速度は、広い遷移コリドーを提供し、それによりビークルが低い対気速度でそのロータをホバリングモードから巡航モードに傾斜させることを可能にする。このような航空機は、本願明細書に援用される米国仮特許出願第62/757680号(カレム(Karem))に教示されるようにスロット翼フラップを使用して、より高速の巡航に効率的な翼面積を提供しながら、ビークルの失速速度を低減することもあるので有利である。いくつかの実施形態では、ビークルは、130KTASの巡航速度で少なくとも9、好ましくは少なくとも13の揚力対抗力比で巡航時に効率的になるように設計される。
【0036】
図12および
図13は、2ロータ同軸回転スタックのための駆動システム900と、共通軸903の周りで回転する前方ロータ・システム901および後方ロータ・システム902とを一体化する2つの実施形態を示す斜視図である。
図12は、2重共通アセンブリを示し、
図13は、背中合わせのモータ-減速システム配列を示している。ロータは、前方または後方ロータのいずれかが使用不能になったときに、使用可能なロータが回転し続ける一方で、そのロータを静止させる能力によって、共回転することができる。前方ロータ・ハブ904および後方ロータ・ハブ905は、減速歯車装置908を介して前方モータ906または後方モータ907によって駆動される。ハブ904および905は、構造ナセル延長部910上に同軸に取り付けられた軸受909上で回転する。フェザー軸受913内に位置する羽根のシャンク912を有する羽根911のコレクティブおよび周期的なピッチは、ハブ904および905内に位置するロータリ・アクチュエータ914によって制御されることがあり、モータ速度および羽根ピッチの両方の電子制御は、制御およびドライバ・モジュール915によって実施される。駆動システムは、タンク916に収容されたオイルによって潤滑および冷却され、独立したスピナ・アセンブリ917および918が、これらのハブ・システムを囲んでいる。
【0037】
図14に示される実施形態など、1つの実施形態では、駆動システム900は、前方モータ906と後方モータ907とが、前方可変ピッチ・ロータ・システムと後方可変ピッチ・ロータ・システムとの間で動力共有を可能にする接続シャフト919によってトルク接続されるように構成されることが可能である。このような実施形態では、駆動システム900は、後方モータ907および前方モータ906が前方ロータ・ハブ904または後方ロータ・ハブ905のいずれか、あるいはロータ・ハブ904およびロータ・ハブ905の両方を駆動することができるように構成される。このような構成では、例えば後方の減速システム908が詰まった場合に、後方ハブが駆動されずに、前方ハブが前方モータおよび後方モータによって駆動されることが可能である。同様に、前方ハブが駆動されることなく、後方ハブが前方モータおよび後方モータによって駆動されることも可能である。
図24では見えないが、方向性クラッチ920aまたは920bなどのクラッチは、前方モータおよび後方モータを第1の方向に駆動させると第1の可変ピッチ・ロータ・システムが駆動され、前方および後方モータを第2の方向に駆動させると第2の可変ピッチ・ロータ・システムが駆動されるように構成されることが可能である。このような実施形態は、モータは、2セットのモータのそれぞれがそれぞれのモータを駆動するのではなく、単一の動作可能なロータ・システムを駆動するために4つのモータが使用されるようにサイジングされることが可能なので、可変ピッチ・ロータ・システムのうちの1つのみを駆動するための設置動力要件が緩和されるので好ましい。
【0038】
図15に示されるように、いくつかの実施形態は、同軸スタック内の両ロータに対してトルク接続されたモータを実装することがある。モータ906および907は、接続シャフト919の区間と区間の間に挿置されることがある。接続シャフト919の各端部とそれぞれの減速システムとの間には、方向性クラッチ920aおよび920bが挿置されることがある。例えば、逆回転の実施形態では、モータ906は、接続シャフト919を第1の方向に駆動するように構成されることがある。前置方向性クラッチ920aは、前置減速システムと、したがって前置ロータと係合して駆動し得る。通常の動作状態中には、同じ前方モータ906に対して接続された後方方向性クラッチ920bは、係合解除されるように構成される。前置ロータが故障した場合には、前方モータ906は、その回転方向を逆転させることがあり、これにより、前置方向性クラッチ920aと係合解除して、後方方向性クラッチ920bと係合することになる。したがって、1つのロータが動作不能になった場合でも、全てのモータが推力を生成するように構成され得る。同様に、後方モータ907は、公称動作状態中には後方ロータを駆動し、後部ロータが動作不能になった場合には前置ロータを駆動するように構成されることがある。方向性クラッチ920aおよび920bは、所望の公称および故障モードの動作特性を提供するように構成され得る。
図15で見えているのは3つのモータだけであるが、6つのモータ(2つの追加の後方モータ907および1つの追加の前方モータ906)があることもあり得ることを理解されたい。他の実施形態では、例えば2つまたは4つなど、任意数の前方モータおよび後方モータを備える可能性がある。モータは、前方ロータ・ハブと後方ロータ・ハブの中間に示されているが、どこに位置付けられてもよい。他の実装では、接続シャフトを動作不能なロータから切り離し、それがシアー・シャフトを含む依然として動作可能なロータを駆動することができるようにする代替の方法を備えることもある。
【0039】
共回転の実施形態は、
図16に示される逆転機1501などの逆転機を備えることもある。前記逆転機は、後方モータ907および前方モータ906が前方ハブ904または後方ロータ・ハブ905のいずれかを駆動することを可能にするように構成される。逆転機1501は、接続されたモータによって駆動されるピニオン・ギヤ1502、逆転機ギヤ1503、およびリング・ギヤ1504を有することがある。電気モータは、リング・ギヤ1504がそれぞれのハブを逆転機が挿置されない場合とは反対方向に駆動するように、ピニオン・ギヤ1502を駆動するように構成されることがある。
【0040】
図17に示される1つの実施形態では、第1の翼2202は、本体2201に対して枢動するように構成される。いくつかの実施形態は、第1の翼2202は、左翼2203および右翼2204を構成することがあり、左翼および右翼はそれぞれ、実質的に幅方向の軸の周りで独立して枢動するように構成される。
【0041】
図18に示される別の実施形態では、航空機は、第1および第2の同軸ロータ・スタックに加えて、本願明細書に援用される米国特許出願公開第2018/334251号明細書(カレム(Karem))に開示される補助ロータなど、少なくとも第1の補助ロータ・システム1115を備える。航空機は、第2の補助ロータ・システム1115を備えることもある。このような実施形態では、同軸ロータ・セットのそれぞれの第1および第2の可変ピッチ・ロータ・システムならびに第1および第2の補助ロータ・システムのそれぞれは、協働して、同軸ロータ・スタックのそれぞれの可変ピッチ・ロータ・システムのうちの最大で1つ、または補助ロータ・システムのうちの最大で1つのいずれかが動作不能である場合でも、航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように十分な推力を提供することがある。1つの実施形態では、第1の補助は、第1の可変ピッチ・ロータ・システムの直径の50%以下の直径を有するロータを有することがある。ただし、いくつかの実施形態では、補助ロータは、50%を超えることもある。さらに、各補助ロータ・システムが、可変ピッチ・ロータを備えることもある。
【0042】
図27は、同軸の実施形態の場合の電子飛行制御システムの制御則の好ましい実施形態を示している。
いくつかの実施形態では、4つの可変ピッチ・ロータ・システムは、ロータが同軸に整列されていないが、同軸の実施形態と同様に、1つのロータが動作不能な状態で航空機が飛行を実施し得るように、可変ピッチ・ロータ・システムが過剰推力マージンを提供するようにサイジングおよび調和された、クアッド構成で配列されることがある。従来技術は、通常は、1つのロータが動作不能な状態で垂直離着陸を維持するためには少なくとも5つのロータが必要とされると教示しているが、4つの可変ピッチ・ロータ・システムを備える航空機は、本明細書の教示に従って設計されていれば、最大で1つの可変ピッチ・ロータ・システムが動作不能な状態でも、制御された垂直離着陸を行うことができる。
【0043】
4つのロータというのは、4つのロータ全てが動作可能ではない状態でもVTOL動作を可能にし得るという理由で好ましいロータ数である可能性があるが、大型のロータを見込んでもいる。全てのロータを用いなくてもVTOL飛行を行うことができるフェイル・オペレーショナルな4ロータ・ティルト・ロータは、予期しない有利な利点を有する可能性がある。
【0044】
図20に示される1つの例示的な実施形態では、航空機は、4つの可変ピッチ・ロータ、すなわち第1の可変ピッチ・ロータ1404、第2の可変ピッチ・ロータ1404、第3の可変ピッチ・ロータ1404、および第4の可変ピッチ・ロータ1404を備えて構成される。この航空機は、本体1401、内側翼1402、ティルト式ナセル1406、ティルト式外側翼1407、電子飛行制御システム1411、および尾翼面1408を有する。各可変ピッチ・ロータは、少なくとも1つのトルク発生源によって駆動されるように構成される。
図23に示されるように、この航空機は、重心1409がほぼ第1の対角線1412と第2の対角線1413の交点に位置するように構成され、ここで、第1および第2の対角線は、第1の対の可変ピッチ・ロータ1404および第2の対の可変ピッチ・ロータ1404の可変ピッチ・ロータの推力1403の中心をそれぞれ結んでいる。重心1409は、第1の対角線1412と第2の対角線1413の交点を取り囲むエンベロープ内に位置していてもよいことを理解されたい。当業者なら、重心1409は、乗客およびペイロードの荷重などに基づいて小さなエンベロープ内で動くことを理解するであろう。したがって、航空機の重心に対するロータの位置は、可変ピッチ・ロータ1404のうちの最大で1つが動作不能になった場合でも航空機が制御された垂直離着陸を行うことができるように設定される。電子制御システム1411は、可変ピッチ・ロータの回転速度および羽根ピッチを制御するように構成されることがある。本体の左側の可変ピッチ・ロータは、共回転することがある。さらに、右側の可変ピッチ・ロータも、共回転することがある。右側の可変ピッチ・ロータは、左側の可変ピッチ・ロータとは逆に回転することがある。航空機は、第2の翼1402を有することがある。好ましくは、上記の少なくとも1つのトルク発生源は、電気モータを備えるが、代替として、燃料消費型のエンジンを備えることもある。
【0045】
1つの特に好ましい実施形態では、
図20の航空機は、2721.554kg(6,000ポンド)の最大総離陸重量を有することがあり、少なくとも181.437kg(400ポンド)搬送するように構成されることがある。この航空機は、1つの操縦席および4つの乗客用座席と、手荷物室とを有する。航空機の本体は、長さが10.668m(35ft)、最大幅が1.524m(5.0ft)、最大高さが1.6764m(5.5ft)である。航空機の翼幅は、14.9352m(49ft)であり、2つの前置可変ピッチ・ロータの中心間の幅方向の距離は、8.8392m(29ft)である。可変ピッチ・ロータは、116.7791m
2(1,257ft
2)のロータ・ディスク面積で6.096m(20ft)の直径を有し、23.2892kg/m
2(4.77lb/ft
2)の回転面荷重を有する。各可変ピッチ・ロータは、単速度減速システムを介して4つのモータによって駆動され、公称動作状態中のホバリングでは、モータ入力速度は10,000RPMであり、可変ピッチ・ロータ・システムの出力速度は360RPMである。ただし、例えば1つ、2つ、または3つなど、任意数の電気モータが、減速システムを介して各可変ピッチ・ロータを駆動するように構成される可能性がある。各モータは、70kWの最大連続出力定格と、90kWの最大緊急出力定格とを有するが、ビークルは、通常は、ほとんどの公称動作状態でのホバリングでは、最大連続出力定格の40%未満を使用することになる。ビークルの16個のモータは、それぞれが少なくとも100kWを出力することができる8個のバッテリによって給電される。
【0046】
このような実施形態では、可変ピッチ・ロータは、どの1つのロータも飛行に不可欠にならないようにサイジングされることがある。飛行時間当たりの故障が10
-9程度のシステム信頼性が望まれる都市環境での飛行のために、
図20に示される実施形態は、同様のサブシステムまたは部品信頼性を必要とすることなく、航空機のレベルで前記安全性レベルが得られるようにすることがある。
【0047】
図21は、
図20に示されるのと同じ実施形態の代替の図を示している。重心1409が示されている。翼区画1402も示されている。
図22は、
図20に示されるのと同じ実施形態の代替の図を示している。この実施形態は、翼飛行モードで示されている。推力ベクトル1405が示されている。
【0048】
図23に示される1つの実施形態では、制御された垂直離着陸は、動作不能な可変ピッチ・ロータから重心1409を含むエンベロープを挟んでほぼ対向する可変ピッチ・ロータに対する動力を低減することによって実現される。例えば、前方左側の可変ピッチ・ロータ1404が故障により動作不能になった場合には、電子飛行制御システム1411は、後方右側の可変ピッチ・ロータ1404に対する動力を低減または切断することがある。あるいは、動作不能なロータによって生み出される不均衡を補正するために、残りの可変ピッチ・ロータのマスト・モーメントが使用されることもある。4つ全ての可変ピッチ・ロータより少ない状態で制御された垂直離着陸を実現するために、マスト・モーメント制御と推力制御の組合せが使用されることも可能である。可変ピッチ・ロータ1404、および接続されたトルク提供源は、1つまたは複数の可変ピッチ・ロータが動作不能な状態で垂直離着陸を実現するのに十分な推力を提供するように構成される。
【0049】
図24に示される構成などの減速システム、ナセル、およびモータの構成が使用される可能性がある。本願明細書に援用される米国特許第10351235号明細書(カレム(Karem))に教示されるドライブトレインおよびナセルの構成が使用されることもある。
図24では、3つのモータ1905が、リング・ギヤ1912を駆動している。このようなシステムは、モータ・レベルのさらなる冗長性の良好性を提供する。
図24に示される構成では、各可変ピッチ・ロータは、3つのモータ1905によって駆動されるが、他の数のモータも考えられる。例えば、ロータ当たり2つのモータ、または4つのモータも考えられる。しかしながら、他のドライブトレインの構成も、本実施形態とともに使用され得る。
【0050】
特に好ましい実施形態は、故障の診断に基づく不連続モードの切換えを必要とせずに故障に応答するように構成された電子飛行制御システム1411を備える。このような実施形態は、航空機の状態の誤診断の危険を解消する。1つの実施形態は、電子飛行制御システム中のサブシステムが実時間判定ではなくアーキテクチャ設計によって故障状態を取り扱うように電子飛行制御システム1411の機能を分割することによって、この目的を達成する。
【0051】
図25および
図26に示される1つの実施形態では、電子飛行制御システム1411は、ビークルがVTOLモードである状態で、第1および第2の可変ピッチ・ロータ1404を第1の可変ピッチ・ロータ対1414としてグループ化することがある。電子飛行制御システム1411は、第3および第4の可変ピッチ・ロータ1404を第2の可変ピッチ・ロータ対1414としてグループ化することがある。1つの好ましい実施形態では、各可変ピッチ・ロータ対を構成する2つの可変ピッチ・ロータは、ほぼ重心1409を挟んで互いに反対側にある。可変ピッチ・ロータ対を備える2つの可変ピッチ・ロータは、重心1409を包含するエンベロープを挟んで互いに反対側にあることがあることを理解されたい。同様に、第3の可変ピッチ・ロータと第4の可変ピッチ・ロータ1404は、重心を含むエンベロープを挟んで互いに反対側にある。
【0052】
図25に示されるように、航空機のロール軸1422およびピッチ軸1416によって水平面が画定される。可変ピッチ・ロータ対のx軸1420は、それぞれの可変ピッチ・ロータ対1414を備える可変ピッチ・ロータの中心の間を、重心1409を包含するエンベロープを通って走る。第1の可変ピッチ・ロータ対の座標フレームは、第1の可変ピッチ・ロータ対を備える可変ピッチ・ロータの中心と交わるx軸1420を有する。第1の可変ピッチ・ロータ対の座標系は、x軸に対して直交し、水平面に対して平行に走る、対応する可変ピッチ・ロータ対のy軸1415をさらに備える。第1の可変ピッチ・ロータの座標系は、可変ピッチ・ロータのx軸およびy軸の両方に対して直交し、高度に対応することもある、第1の可変ピッチ・ロータ対のz軸をさらに備える。第1の可変ピッチ・ロータの座標系は、可変ピッチ・ロータ対のx軸の周りの第1のモーメント軸1419、および可変ピッチ・ロータ対のy軸1415の周りの第2のモーメント軸1423をさらに備える。第2の可変ピッチ・ロータ対の座標フレームは、第2の可変ピッチ・ロータ対1414を備える可変ピッチ・ロータの中心と交わるx軸1420を有する。第2の可変ピッチ・ロータ対の座標系は、x軸1420に対して直交し、水平面に対して平行に走る、対応する可変ピッチ・ロータ対のy軸1415をさらに備える。第2の可変ピッチ・ロータの座標系は、可変ピッチ・ロータのx軸およびy軸の両方に対して直交し、高度に対応することもある、第1の可変ピッチ・ロータ対のz軸をさらに備える。第2の可変ピッチ・ロータの座標系は、可変ピッチ・ロータ対のx軸の周りの第1のモーメント軸1419、および可変ピッチ・ロータ対のy軸1415の周りの第2のモーメント軸1423をさらに備える。
【0053】
第1の可変ピッチ・ロータ対1414は、z軸方向の正味推力、およびそれぞれの可変ピッチ・ロータ対のy軸1415の周りのモーメントを生成することができる。それぞれの可変ピッチ・ロータ対1414による垂直推力は、それぞれの可変ピッチ・ロータ対1414中の各可変ピッチ・ロータ1404による推力の和である。各可変ピッチ・ロータ対のy軸の周りのモーメントは、それぞれの可変ピッチ・ロータ対1414を備える2つのロータの間の推力差にそれぞれの可変ピッチ・ロータの中心間の距離が乗算されて得られる。
【0054】
図26に示されるように、電子飛行制御システム1411は、各可変ピッチ・ロータ対1414について2つのコマンド・チャネル、すなわち当該対の正味推力を要求する可変ピッチ・ロータ対推力信号2305、および第1の可変ピッチ・ロータ対のモーメントを要求する可変ピッチ・ロータ対モーメント信号2304を備えることがある。これらのチャネルのそれぞれの信号値は、別個の制御則によって計算される。可変ピッチ・ロータ対推力制御則2303は、ビークル高度を調整し、可変ピッチ・ロータ対推力信号に対するコマンドを生成し、姿勢制御則2302は、姿勢を調整し、可変ピッチ・ロータ対モーメント信号2304に対するコマンドを生成する。
【0055】
電子飛行制御システム1411は、ビークル・ダイナミクス・センサ1421からビークル・ダイナミクス値を受信することがある。ビークル・ダイナミクス・センサ1421は、GPS、磁力計、IMU、またはその他の既知のセンサのうちの1つまたは複数を備えることがある。電子飛行制御システムは、ビークル・ダイナミクス・センサ1421からの値を用いて、ビークル・ダイナミクス誤差値を計算することがある。ビークル・ダイナミクス誤差値は、第1および第2の可変ピッチ・ロータ対の座標フレームに対応するパラメータに変換される。電子飛行制御システム1411は、所与のパラメータについてのビークル・ダイナミクス誤差値を比例して増大させることがある。システム姿勢入力が生成される。このシステム姿勢入力は、対応するシステム高度入力に対して加算される、または対応するシステム高度入力から減算される。次いで、組み合わされた入力が、ビークル・ダイナミクス制御デバイスに対して送信される。
図26では、これらの信号は、ロータ羽根ピッチアクチュエータおよびモータなど、各ロータと関連付けられたビークル・ダイナミクス制御デバイスに対して送信されるものとして示されているが、これらの信号は、他のビークル・ダイナミクス制御デバイスに対して送信されてもよいことを理解されたい。ビークル・ダイナミクス制御デバイスは、可変ピッチ・ロータのうちの1つに対して結合された電気モータ、可変ピッチ・ロータの羽根ピッチを制御するように構成されたアクチュエータ、制御表面アクチュエータ、ロータ・ティルト・アクチュエータ、またはビークル・ダイナミクスを制御するように構成されたその他の任意のデバイスを含む可能性がある。
【0056】
図25に示される実施形態など、このような好ましい実施形態では、可変ピッチ・ロータ対1414内の1つの可変ピッチ・ロータ1404の故障は、それぞれの可変ピッチ・ロータ対の正味推力およびモーメントを独立して生成する能力を損なうが、可変ピッチ・ロータ対1414内の他方の可変ピッチ・ロータが機能している限り、その可変ピッチ・ロータ対は推力およびモーメントの組合せを生成するその能力を保持する。1つのロータが動作不能になる故障の場合には、故障が発生している可変ピッチ・ロータ対は、ビークル姿勢を調整し続けるが、ビークル高度の調整に寄与することはできない。正常に機能する2つの可変ピッチ・ロータからなる他方の可変ピッチ・ロータ対1414が、高度を調整する責任を負うことになる。
【0057】
電子飛行制御システム1411は、コレクティブに対する推力係数の参照テーブルを備えることがある。電子飛行制御システムは、前記参照テーブルを用いて、感知された飛行状態についての好ましいRPMおよびコレクティブなピッチの設定を決定することがある。参照テーブルを用いて電子飛行制御システム1411を構成することにより、追加の測定値の入力なしで所与の飛行状態について理想的なRPMおよびコレクティブなピッチが使用されることを可能にし、それにより、航空機が、低ノイズおよび高効率など、理想的な飛行特性を呈することができるようにする。
【0058】
制御システムは、ビークルの高度および姿勢を維持する。このような実施形態の1つの利点は、電子飛行制御システムが、航空機に部品の故障が起きたときに、継続した滑らかな制御をもたらすように構成され得ることである。
【0059】
1つのロータが動作不能な状態になった場合には、電子飛行制御システム1411は、動作可能な可変ピッチ・ロータのうちの1つに対する動力を減少させる、または切断することがある。電子飛行制御システム1411は、また、動作可能な可変ピッチ・ロータのマスト・モーメントを変化させて、可変ピッチ・ロータ1404の全てが動作可能ではない状態で航空機が垂直離着陸を行うことができるように力の合流をもたらすこともある。電子飛行制御システム1411は、代替として、少なくとも1つの可変ピッチ・ロータに対する動力を減少させ、かつ動作可能な可変ピッチ・ロータ1404のピッチ・モーメントを変化させて、所望の力の合流をもたらすこともある。
【0060】
同様に、本明細書で企図される1つの実施形態の航空機は、動作不能な可変ピッチ・ロータが対角のコーナにある場合には、可変ピッチ・ロータのうちの2つが動作不能な状態でVTOL飛行を実現するように構成されることがある。例えば、
図23で、前方左側の可変ピッチ・ロータ1404および後方右側の可変ピッチ・ロータ1404が両方とも動作不能になった場合に、前方右側の可変ピッチ・ロータ1404および後方左側の可変ピッチ・ロータ1404のみを用いてVTOL飛行が実現されることも可能である。
【0061】
電子飛行制御システム、または制御およびドライバ・モジュールを対象とする任意の表現は、サーバ、インタフェース、システム、データベース、エージェント、ピア、エンジン、制御装置、あるいは個別または集合的に動作するその他のタイプの計算デバイスなどの計算デバイスの任意の適当な組合せを含むものとして読まれるべきであることに留意されたい。これらの計算デバイスは、有形の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(例えばハード・ドライブ、ソリッド・ステート・ドライブ、RAM、フラッシュ、ROMなど)に記憶されたソフトウェア命令を実行するように構成されたプロセッサを備えることもある。ソフトウェア命令は、開示される装置に関して上述されている役割、責任、またはその他の機能を提供するように計算デバイスを構成することが好ましい。いくつかの実施形態では、様々なサーバ、システム、データベース、またはインタフェースが、場合によってはHTTP、HTTPS、AES、公開鍵/秘密鍵交換、ウェブ・サービスAPI、既知の金融取引プロトコル、またはその他の電子情報交換方法に基づいて、標準化されたプロトコルまたはアルゴリズムを使用してデータを交換することがある。データ交換は、パケット交換網、インターネット、LAN、WAN、VPN、またはその他のタイプのパケット交換網を介して行われることが好ましい。電子飛行制御システムの態様は、アクチュエータが位置している航空機のどこかに位置していてもよいし、あるいは地上の管制センタ内、他の航空機上、さらにはアクチュエータ自体の部品内など、他の任意の場所に位置していてもよい。
【0062】
電子飛行制御システムの態様は、航空機のどこかに位置していてもよいし、あるいは地上の管制センタ内、他の航空機上など、他の任意の場所に位置していてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、電子飛行制御システム、ならびに制御およびドライバ・モジュールは、区別可能なユニット内に実装されてもよいし、1つのユニット内にまとめられていてもよい。
【0063】
本明細書で教示される概念は、ヘリコプタで使用されるか、飛行機で使用されるか、またはティルト・ロータ航空機で使用されるかを問わず、プロペラ、ロータ、またはプロップロータに等しく適用することができることを理解されたい。ロータという用語は、ロータ、プロペラ、ならびにプロップロータ、あるいは推力および/または揚力を生成するように構成されたその他の任意の回転翼を包含するものとして理解されるものとする。さらに、ロータ羽根は、ロータ羽根、プロペラ羽根、ならびにプロップロータ羽根、あるいは推力および/または揚力を生成するように構成されたその他の任意の回転翼に属する任意の羽根を包含するものとして理解されるものとする。例えば、いくつかの実施形態は、ターボプロップに対して独立羽根制御を実施するために使用されることが可能である。このような実装は、様々な飛行状態においてノイズおよび振動を低減させることができる。
【0064】
本明細書ではいくつかの実施形態が説明されているが、それらは、いかなる意味でも限定ではなく例示として理解されるものとする。さらに、様々な実施形態の態様が他の実施形態の態様と組み合わされることもあるものと企図されていることを理解されたい。
【国際調査報告】