(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】特に画像処理用途のダイヤモンド走査素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01Q 70/10 20100101AFI20230314BHJP
G01Q 70/14 20100101ALI20230314BHJP
G01Q 70/16 20100101ALI20230314BHJP
【FI】
G01Q70/10
G01Q70/14
G01Q70/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545991
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021051477
(87)【国際公開番号】W WO2021151796
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518375937
【氏名又は名称】ウニベルシテート バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シールズ, ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ヘドリッヒ, ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】マレティンスキー, パトリック
(57)【要約】
本発明は、支持体と、該支持体から延びたピラーを備えたダイヤモンド走査素子、特に画像処理用途のダイヤモンド走査素子に関し、ピラーは長手方向軸を備え、ピラーは、好ましくは一定に増加する曲率を有するテーパ状の側部を有する先端部から構成され、先端部が、欠陥であるセンサ素子をさらに備え、先端部が10%未満の勾配で軸に向かって延びる平坦な端部ファセットを備えている。本発明はまた、ダイヤモンド走査素子の製造方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(5)と、該支持体から延びたピラー(8)を備えたダイヤモンド走査素子(1)、特に画像処理用途のダイヤモンド走査素子(1)であって、
前記ピラー(8)は長手方向軸(X)を備え、ピラー(8)は、好ましくは一定に増加する曲率を有するテーパ状の側部(3)を有する先端部(2)から構成され、
前記先端部(2)が欠陥であるセンサ素子をさらに備え、前記先端部(2)が10%未満の勾配で軸(X)に向かって延びる平坦な端部ファセット(4)を備えている、ダイヤモンド走査素子。
【請求項2】
テーパ状の端部ファセット(4)は、100nm-300nmの直径を有する、請求項1に記載のダイヤモンド走査素子。
【請求項3】
前記欠陥は、ピラーの軸に垂直及び平行に夫々配向した1つまたは複数の双極子、特にS偏光双極子を備える、請求項1又は2に記載のダイヤモンド走査素子。
【請求項4】
テーパ状の端部ファセット(4)は、ピラー(8)の長さの少なくとも1%の直径を有する、請求項1乃至3の何れかに記載のダイヤモンド走査素子。
【請求項5】
前記先端部(2)、好ましくは平坦な端部ファセット(4)は、前記センサ素子を構成し、該センサ素子は欠陥(6)、好ましくは窒素空孔である、請求項1乃至4の何れかに記載のダイヤモンド走査素子。
【請求項6】
前記欠陥(6)は、先端部(2)の中心にあることが好ましく、平坦な端部ファセットの表面からの欠陥の深さが40nm以下、好ましくは25nm以下である、請求項5に記載のダイヤモンド走査素子。
【請求項7】
前記先端部(2)のテーパ状の側部(3)の曲率部は、放物線断面の形状を有している、請求項1乃至6の何れかに記載のダイヤモンド走査素子。
【請求項8】
支持体と該支持体から延びたピラーを備えたダイヤモンド走査素子の製造方法であって、
A. 適切なダイヤモンド材料を提供する工程(100)と、
B. レジストを蒸着する工程(200)と、
C. エッチングマスクを形成する工程(300)と、
D. エッチングを行う工程(400)とを備え、
エッチング工程(400)中に、主にダイヤモンドを攻撃する第1の化合物(401)を使用して、ダイヤモンドのテーパ状の円錐ピラーを形成し、マスク材を主に攻撃する第2の化合物(402)を第1の化合物(401)に添加して、
工程Dのエッチング工程(400)は2つの段階を備え、
エッチングの第1の段階(450)にて、前記第1の化合物は、ダイヤモンドのテーパ状の円錐形のピラーを形成するために使用され、好ましくは、この部分のテーパ角が12度未満であり、好ましくは同時に、マスクは縁部で侵食されて台形の断面を形成し、
エッチングの第2の段階(460)にて、エッチング化合物はマスク材料をエッチングする前記第2の化合物(402)を加えることによって修正されて、得られるダイヤモンド側壁の角度が変化され、
第1の化合物(401)はO
2であり、第2の化合物(402)はCF
4であり、
複数のCF
4:O
2比を順次使用して、湾曲面形状を得る、方法。
【請求項9】
工程Dにおいて、CF
4は、連続した工程で流速を上げながら、工程Dのエッチングの第2の段階(460)の全時間にわたって誘導され、CF
4濃度に比例してエッチングマスクを侵食した、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
湾曲面形状を形成するために複数のCF
4:O
2比が適用されるときに、プラズマ出力、好ましくはRFバイアス出力は、工程Dにおけるエッチングの期間に亘って一定である又は一定に保たれる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
工程A(100)は、欠陥、好ましくは窒素空孔を、最も好ましくはピラーの先端部で、最も好ましくはピラーの先端部の中心で生成する工程を含む、請求項8乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記レジストは無機高分子層であり、好ましくは、流動性のある酸化物材料で形成され、工程C(300)におけるエッチングマスクの形成は、電子ビームリソグラフィーによって付与される、請求項8乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
工程D(400)にて、ダイヤモンド走査素子の形成中のマスク材及び/又はダイヤモンド材のエッチング量は、エッチング工程中に調整される第1の化合物と第2の化合物(401、402)の間の比率により制御される、請求項8乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
工程D(400)にて、ダイヤモンドは誘導結合プラズマに曝露され、これにより、反応性イオンエッチング工程においてダイヤモンドがエッチングされ、反応性イオンは、前記第1の化合物及び第2の化合物から形成される、請求項8乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
エッチング工程(400)は、マスクの側壁の傾斜が5度未満、好ましくは2度未満の偏差で45度の角度に傾くように制御される、請求項8乃至14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
第1の化合物と第2の化合物(401、402)の比率を制御することで、エッチング工程中に先端部の形成のためにダイヤモンド材料にエッチングされる角度の範囲を10度から50度、好ましくは12度から50度の間で変化させる、請求項8乃至15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
エッチングの第1の段階(450)は、O
2とCF
4の短い工程を含み、デバイスの壁から再スパッタリングされた材料をきれいに除去する、請求項8乃至16の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド走査素子(本明細書ではダイヤモンド走査プローブとも称する)、特に画像処理用途のダイヤモンド走査素子、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の材料システム、例えばスピントロニクスで注目されている材料は、高感度かつ高空間分解能の画像処理技術に対するニーズを生み出している。この分野の中でも、ダイヤモンドの窒素空孔(NV)中心は、特に走査型プローブベースの量子センサに組み込まれた場合、高い磁場感度と数十ナノメートルスケールの空間分解能を持つことから、注目を集めている。
【0003】
この2つの特性により、スキルミオン、反強磁性ドメイン、単一ニューロン活動電位、2次元材料におけるマグネティズムなどのナノスケール系の測定が可能になった。このような幅広い応用は、常温から極低温まで、さまざまなシステムと動作温度で実装可能なNV中心の汎用性を浮き彫りにしている。このようなNVベースのナノスケールセンサの必須要件は以下の通りである。
【0004】
第1に、NV中心がダイヤモンド表面に近接していることで、NVと試料の分離を最小限に抑え、空間分解能を最適化し、その一方でナノスケールの試料体積から検出される磁気信号を増強することである。第2に、最高の感度を得るために、検出される光子のフラックスを高くすることである。ダイヤモンドホストの高い屈折率(n=2.4)は、2番目の要件に対する挑戦であると同時に、収集効率を最大化するためのフォトニック構造を設計するための自然な道筋を提供するものである。
【0005】
収集効率の最適化を図るべく、ダイヤモンドのフォトニック技術によって、固体浸漬レンズ、周囲ナノ構造、誘電体アンテナ、放物面反射鏡、導波路構造など、多くのアプローチが行われてきた。しかし、画像処理用途では、これらのアプローチは、NV中心の注入深さが大きい、あるいは、従来の走査プローブの場合、最適化されていない構造であるため、収集効率が低いという問題があった。本発明のダイヤモンドプローブは、上記の全ての用途に使用することができる。
【0006】
この分野の最先端技術は、これまで、同様の電子ビームリソグラフィーマスクと酸素によるエッチングで作成されたテーパ状の側壁を有するダイヤモンド走査プローブが中心であった(A. Jenkins, M. Pelliccione, G. Yu, X. Ma, X. Li, K. L. Wang,及びA. C. Bleszynski Jayich,薄膜スキルミオンホストにおけるドメインウォールの構造とダイナミクスの単一スピン・センシング,Phys. Rev. Mat. 3, 8(2019)参照)及びO2/アルゴン化学(Y. Dovzhenko, F. Casola, S. Schlotter, T. X. Zhou, F. Buttner, R. L. Wal- sworth, G. S. D. Beach, and A. Yacoby,窒素空孔中心スピンテクスチャ再構成による室温スキームの磁力線ねじれ,Nature Comm. 9, 1 (2018))参照)。
場合によっては、残留物を除去するためにCF4が導入されるが、曲面を作るためではない。
【0007】
更に、アルミニウムなどの代替マスクとO2/CF4ドライエッチングを組み合わせて、直線またはテーパ状の壁を持つダイヤモンドナノピラーアレイを作成することができる(I. Gross, W. Akhtar, A. Hra-bec, J. Sampaio, L. J. Martinez, S. Chouaieb, B. J. Shields, P. Maletinsky, A. Thia- ville, S. Rohart, and V. Jacques, 超薄膜磁性膜におけるスキルミオンモルフォロジー, Phys. Rev. Mat. 2, 2 (2018))参照)。
【0008】
前記出願に関連する更なる先行技術は以下である。
Q. Jiang, 単一光子源用途用の窒素空孔埋め込み型ダイヤモンドナノ構造体の大量製造, Chinese Physics B, 25, 11 (2016).
Q. Jiang, 単一光子特性の高度化用の集束イオンビームを用いた3次元ダイヤモンド構造のオーバーレイパターニング, Journal of Applied Physics, 116, 044308 (2014).
Momenzadeh, S.A, 浅い窒素空孔中心を利用したナノマグネトメトリのための強固な明るいプラットフォームとしてのナノ加工ダイヤモンド導波路, Nano Letters, 15, 1 (2015).
S. Ali Momenzadeh etAI: 浅い窒素空孔中心を利用したナノマグネトメトリのための強固な明るいプラットフォームとしてのナノ加工ダイヤモンド導波路, Nano Letters, vol. 15, no. 1, 8. December 2014 (2014-12-08), 165-169頁,
XP055716238, US ISSN: 1530-6984, D0l:10.1021/nl503326tS. Ali Momenzadeh et AI.: 浅い窒素空孔中心を利用したナノマグネトメトリのための強固な明るいプラットフォームとしてのナノ加工ダイヤモンド導波路, 29 August 2014 (2014-08-29), XP055716551, DOI: 10. 1021/nl 503326t
これはインターネットから読みだされる。
URL:httDs://Dubs.acs.ora/doi/suDDl/10.1021/nl503326t/suDDl file/nl503326t si 001. a df
【0009】
前記2つの文献には、ダイヤモンド材料の提供、レジストの蒸着、エッチングマスクの形成及びエッチング工程が開示されている。マスクはFOX材で作られている。エッチング工程では、ダイヤモンド表面のエッチングにO2プラズマを使用し、酸素エッチング工程の間に、O2/CF4混合物が表面に塗布される。この工程では、プラズマ出力とRFバイアス出力を調整することで、プラズマパラメータが調整された。
【0010】
この短時間のO2/CF4処理は、クリーニング処理として、小さなFOXの再スパッタリング粒子をダイヤモンド表面から除去するためになされたと推定される。
Wan, N.H. ダイヤモンド放物面反射鏡の窒素空孔中心からの光の効率的な取り出しNano Letters, 18, 5 (2018).
米国特許公開公報2018/0246143号及び国際公開2018/169997号も最先端技術として引用されるべきである。
【0011】
また、Momenzadeh et alによって開示された国際公開2018/169997号では、プラズマパラメータはプラズマ出力とRFバイアス出力の調整によって調整される。
プラズマ出力を変化させると、ダイヤモンドとマスクの両方のエッチング速度に影響を与えるが、平坦な端部ファセットに向かってテーパ角度が増加するテーパ形状の表面構造を制御して形成することは、前述の文書では開示されていない。
【0012】
国際公開2018/169997号と同様に、Momenzadehは異なるデバイスにおける異なるテーパ角度を開示しているが、1つのデバイスにおけるテーパ角度の連続増加を示していない。さらに、Momenzadehらのシミュレーションで考慮されているテーパ角の範囲は33度までで、最適な角度は20度であることが判明している。また、Momenzadehらは、直径を400nmとすることを開示している。
【0013】
国際公開2018/169997号と同様に、Momenzadehによって開示された製造方法は、エッチング処理中のプラズマ処理の出力変動が、マスク構造だけでなくダイヤモンド構造も攻撃するため、ピラーの側面部分をさらに修正することはできない。一方または他方の材料のエッチングを独立に制御することはできない.
Qianqing et alは2つのテーパ角度を公開しているが、それぞれ独立に制御できない。
【0014】
当該技術分野のさらなる関連文書として、米国特許公開公報2012/292590号がある。この文献には、ダイヤモンドの特定の結晶方位に沿ってエッチングすることによってテーパ角が35度まで達成されることが開示されている。その文献にはテーパ角度が40度までという記載が1つあるが、それ以上ではない。D4の方法では、ある離散的な角度しかできない。更にこの文献では、この文献において付与される直径は200nmから1μmの間である。更にこの文献では。請求項1において、特定の双極子配向を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の目的
本発明の1つの目的は、収集効率が高い走査素子を提供して、欠陥の深さを最小限に抑えることである。
本発明の第2の目的は、エッチング工程中に構成の制御が達成される走査素子の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の開示
その目的は、請求項1の特徴を有するダイヤモンド走査素子と、請求項7の特徴を有するダイヤモンド走査素子とによって達成される。
【0017】
本発明のダイヤモンド走査素子は、画像処理用途に好適に用いることができる。ダイヤモンド走査素子は、支持体と、前記支持体から延びるピラーとからなる。前記支持体は、ダイヤモンドスラブであり得る。前記ピラーはテーパ状であり、前記テーパ状のダイヤモンドピラーは、その基部が前記ダイヤモンドスラブに一体的に取り付けられていることが好ましい。
【0018】
ピラーは、長手方向軸を備え、ピラーはさらに先端部を備え、該先端部は好ましくは一定に増加する曲率を有するテーパ状の側面部を有するのが好ましい。曲率は、放物線状断面の形態を有するのが好ましい。曲率を構成するテーパ角の範囲は、12度から50度の範囲であるのが好ましい。
【0019】
先端部には、少なくとも軸線(X)方向に延び、勾配が10%未満の平坦な端部ファセットがさらに設けられ、これはテーパ状の端部ファセットとも呼ばれる。平坦な端部は平面であってもよく、その場合、勾配は0%である。勾配は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下であるべきである。
【0020】
100%の勾配は、90°の角度を規定し、それはピラーの長手方向軸に平行な面となる。10%未満の勾配では、平坦なファセットは、好ましくは9度未満の角度だけ軸に垂直な平面から傾斜している。
【0021】
端部における平坦なファセットは、先端部と被測定試料との距離を最小にするために必須であり、好ましくは本発明の文脈ではセンサ素子と考えられる先端部の欠陥と被測定試料との距離を最小にするために必須である。
ダイヤモンド走査素子は、本発明の文脈では、センサとして考えられる。
【0022】
この曲率は、先端に向かってテーパ角が増加することに言及し、広い波長帯域で高い収集効率を得るために必須であるが、先端半径が大きくなると走査型プローブとしての性能が低下するため、先端半径を大きくしすぎないことが重要である。
更なる実施形態は従属形式の請求項の主題事項である。
【0023】
テーパ状の端部ファセットは、少なくとも30nm、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは100nmから300nmの好ましい直径を有することができる。
テーパ状の端部ファセットは、前記ピラーの長さの少なくとも1%である直径を有する。ピラーの長さは、10.0μm未満であり、3.0μmから6.0μmとするのが好ましい。
【0024】
先端部、好ましくは平坦な端部ファセットは、本発明による欠陥、より好ましくは窒素空孔である前記センサ素子を構成する。前記欠陥は、先端の中心、特に平坦な端部ファセットの中心に位置させることができる。本発明の好ましい実施形態において、欠陥は、ピラーの軸に対して夫々垂直および平行に配向された1つまたは複数の双極子、特にs偏光双極子及びp偏光双極子を提供する。
【0025】
本発明の好ましい利点の1つは、放射の抑制に寄与することである。従って、双極子源は、ピラーの長手軸に対して垂直に配向されているのが好ましく、双極子が放射の大幅な抑制なしにピラーの平坦な端部(波長分離よりもはるかに小さい)の非常に近くに配置することができる。
【0026】
これは、ダイヤモンドの外側にあるナノスケールの物体を感知する場合に特に有利である。軸に平行に配向した双極子の場合、双極子がダイヤモンドの表面に近づくと、双極子の放射の抑制が劇的に増加する。そのため、本発明のデバイスでは、双極子の平行成分は収集した光子に寄与しないので、双極子は軸に実質的に直交しているべきである。
【0027】
米国特許公開公報2012/292590号の
図4aは、端部が平らなほぼ放物線状のデバイスを記載しているが、エミッタをどの程度平坦な端部に近づけるべきかの詳述はない。
【0028】
直交する双極子配向の第2の利点は、デバイスからの放射がほぼガウス型の強度プロファイルになることで、光を集めて検出器に導くために一般的に用いられる光ファイバーのモードとよく一致することである。平行な双極子配向は、ドーナツ状で半径方向に偏光した放射パターンに帰結し、光ファイバーモードとの重なりが非常に悪い。そのため、米国特許公開公報2012/292590号にて特許請求されたような軸に平行または傾斜した向きの双極子を使用することは非常に問題である。
【0029】
平坦な端部ファセットの表面からの欠陥の深さは、40nm以下、好ましくは25nm以下とすることができる。
好ましい実施形態において、ピラーは導波路を構成しているか、導波路として構成され得る。ダイヤモンド走査素子は、さらに好ましくは、ピラーの基部に開口部を含んでもよい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、後側への垂直入射、またはほぼ垂直入射で反射が起こるため、反射が最小になる。
或いは又はこれに加えて、スラブの後側は、屈折率が2.4未満、好ましくは1.5近くの材料のフィルムで被覆され、反射を最小限に抑える反射防止膜として機能することができる。
【0031】
光の発散は、ダイヤモンド-空気界面の全反射角未満であるのが好ましい。前記全反射角は、約24.5度であるのが好ましい。
欠陥としてNV中心がある場合、ピラーの基部の最小開口部は少なくとも0.8μmになる可能性がある。
【0032】
ダイヤモンドピラーの先端部では、テーパ状の割合が着実に増加する。広い波長帯域の光を効率よく集光するためには、先端部のテーパ角度は45度に近い、又は45度以上であるべきである。
テーパは半径ゼロまで続くのではなく、先端部の半径は有限であり、好ましくは約50nmより大きくてもよい。この文脈で最も好ましいのは、先端部の直径が約50nmより大きいことである。
【0033】
前記の如く、特にNV中心として提供される欠陥は,ピラーの先端部,パラボロイドの焦点位置,先端部の平坦なファセットの面のすぐ内側に配置される。また、欠陥は焦点位置から任意の方向にずれて誤って配置されることもある。この場合、デバイスはまだ動作するが、効率は悪くなる。
この欠陥は、平坦なファセットに近接させた試料によって生成される外場に対して感度を有することが好ましい。
【0034】
本発明は、さらに、支持体と、前記支持体から延びるピラーとを備えるダイヤモンド走査素子の製造方法であり、方法は以下の工程を有する。
A. 適切なダイヤモンド材料を提供する工程と、
B. レジストを蒸着する工程と、
C. エッチングマスクを形成する工程と、
D. エッチングを行う工程である。
エッチング工程中に、主にダイヤモンドを攻撃する第1の化合物を使用し、ダイヤモンドのテーパ状の円錐ピラーを形成し、エッチング工程中に、第1の化合物に第2の化合物を添加することによってマスクは侵食される。
【0035】
その結果、エッチング化合物を調整することで、マスクとダイヤモンドの相対的なエッチング速度を可変にすることができる。このため、曲面や角度をつける他の方法とは区別され、放物線状さえも超えて壁の形状をより自由に制御することができる。
この方法は、通気性ダイヤモンド走査素子の製造に好ましく用いることができることが指摘されている。しかし、本製造方法では、他の構成も実現可能である。従って、本発明の方法は、進歩性のあるダイヤモンド走査素子の製造にのみ限定されるものではない。
【0036】
進歩性のある方法では、50度までの角度の範囲を達成することができ、これは、最先端技術において前記方法の工程を含む既知の方法よりもはるかに大きい。
第1の化合物はO2であり、第2の化合物はCF4であることが好ましい。
【0037】
本発明によれば、ダイヤモンド走査素子形成時のマスク材及び/又はダイヤモンド材のエッチング量は、エッチング工程中に添加及び/又は調整される第1の化合物と第2の化合物の比率により制御することができる。前記比率は、各化合物の投与量を制御するための制御ユニットによって制御及び適合させることができる。
【0038】
最先端技術の開示によるプラズマ出力の変化は、CF4の濃度の変化とは根本的に異なる、何故ならプラズマ出力の変化がダイヤモンドとマスクのエッチング速度の両方に影響するのに対し、CF4の濃度の変化は主にマスクのエッチング速度のみに影響するため(ダイヤモンドのエッチング速度には軽微な影響がある)、ダイヤモンドとマスクのエッチング速度をそれぞれ独立に制御することが可能になるからである。
【0039】
進歩性のある方法の好ましい実施形態は、従属形式の請求項の主題事項である。
好ましい実施形態の工程Aは、欠陥、好ましくは窒素空孔を、最も好ましくはピラーの先端部で、最も好ましくはピラーの先端部の中心で発生させる工程を含む。
レジストは、好ましくは、流動性のある酸化物材料、最も好ましくはダウコーニング社製のFox-16(商標)によって形成された無機高分子層とすることができる。
工程Cのエッチングマスクの形成は、電子ビームリソグラフィーを用いて行われる。
【0040】
工程Dにおいて、ダイヤモンドは、好ましくは誘導結合プラズマに曝露され、これにより、反応性イオンエッチング工程においてダイヤモンドがエッチングされ、反応性イオンは、前記第1の化合物及び第2の化合物から形成される。
エッチング工程は、マスクの側壁の傾斜が5度未満、好ましくは2度未満の偏差で45度の角度に適合されるように制御することができる。
【0041】
第1の化合物と第2の化合物の比率を制御することで、先端部の形成のためにダイヤモンド材料にエッチングされる角度の範囲を10度から50度、好ましくは12度から50度の間で変化させることができる。
【0042】
エッチング工程の第1の段階では、主にダイヤモンドを攻撃するエッチング化合物、好ましくはO2が使用され、ダイヤモンドのテーパ付けられた円錐状のピラーが形成される。この断面のテーパ角は12度以下である。同時にマスクの縁部が侵食され、台形の断面が形成される。マスクの側壁は約45度の角度で傾斜している(角度は正確に45度である必要はなく、実質的に垂直方向から傾斜しているべきである)。
【0043】
エッチングの第2の段階では、マスク材料をエッチングする薬剤、好ましくはCF4を添加することにより、エッチング化学剤を修正する。O2に対するCF4の濃度を変えることで、得られるダイヤモンドの側壁の角度が変化する。
複数のCF4:O2比率が本発明に従って順次使用されて、曲面形状を得る。この工程で達成した角度の範囲は、12度から50度の間である。
【0044】
曲面形状を形成するために複数のCF4:O2比率が適用される場合、プラズマ出力と、好ましくはRFバイアス出力も一定に保つことができる。このように、CF4:O2比率を時間的に制御することで、電力変動などの二次的効果の影響を受けずに、より精度の高いエッチング工程の制御が可能となる。
【0045】
特に、ダイヤモンドのエッチング速度は、マスクエッチングとは独立して制御することができるため、より優れた制御が達成される。プラズマ出力を変化させると、エッチング工程は、マスクエッチングとダイヤモンドエッチングの両方に影響を与えることができる。
異なるCF4:O2比率でのエッチング処理は、少なくとも5分より長くてもよく、より好ましくは少なくとも10分であり、ここで、SccmCF4とSccmO2との間の比率は1:30と1:3との間で変化してもよい。
【0046】
CF4とO2のSccm比が1:10より低い場合、適用時間は2分以上となる可能性がある。
O2に対するCF4のSccm比が1.4:10より大きい場合、適用時間は1分未満になる可能性がある。
本発明のダイヤモンド走査素子の構成では、1つのデバイスで複数、好ましくは少なくとも2つの異なるテーパ角の制御が必要となる場合がある。
上記の如く、異なるCF4:O2比率を適用することで、ダイヤモンドとマスクのエッチング速度を独立して制御することができる。
【0047】
本発明のダイヤモンド走査素子は、1つのデバイス内で夫々単一の素子でテーパ角度の増加系列を構成することができる。
本発明の方法は、10度から50度の範囲内で角度の連続的な調整を可能にする。
本出願で指定された端部ファセットの直径は、理想的には100nm-300nmの間である。理想的な走査条件のために、小径を達成することで、試料との接触に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
以下、本発明のダイヤモンド走査素子及び製造方法の進歩性のある実施形態に関するいくつかの有利な実施形態について、図面とともにさらに詳細に説明する。異なる実施形態の特定の部分は、本発明の他の実施形態においても実現可能な別個の特徴として理解されることができる。実施形態によって説明される特徴の組み合わせは、本発明に対する限定として理解されないものとする。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、ダイヤモンド走査プローブとも呼ばれる、進歩性のあるダイヤモンド走査素子の例を示し、該ダイヤモンド走査素子は少なくとも1つの窒素空孔(NV)中心が埋め込まれた先端が切断された放物線面形状を持ち、ナノスケールの磁場画像処理に適している。前記プローブは、通常は同様の構成のプローブが配列されたものの1つである。
放物線状の先端形状により、飽和計数率の中央値は2.1MHzとなり、これまでの走査型プローブで最高の計数率を記録した。同時に、この構造は高いブロードバンド性を維持し、指向性のある放射を発生させる。
【0050】
さらに、先端の切断によってダイヤモンド表面が放物線の焦点の方向に移動するため、NV-試料の間隔を小さくすることができ、理想的な走査条件を実現することができる。
前記先端の切断は、先端部の放物線形状の先端平坦化であるのが好ましい。前記先端部のおけるプローブの平坦化は、平面であるのが好ましい。この形状は、走査型磁場画像処理のための原子間力顕微鏡プローブに組み込まれた、ダイヤモンド放物面反射鏡とピラースラブ形状の組み合わせの概念に適応している。
【0051】
本発明のプローブ先端部の形状は、一般的な円筒形やテーパ状のピラー構造ではなく、焦点にNVを有するダイヤモンド放物線となっている。先端が切断された放物面は、または平坦な端部ファセットとも呼ばれる好ましくは平らな端面で構成され、NVの深さ、ひいては試料までの距離を最小にすることができる。
【0052】
前記先端部の放物線状の側面は、仮想の放物線面を規定してもよく、前記平坦な端面は、前記放物線面の法線に垂直な平担面を規定するのが好ましい。
先端部の形状は、放物面における全内部反射をもたらし、放射を一方向の出力モードに視準を合わせ、結果としてNV放射の導波性を向上させることができる。
【0053】
さらに、有限差分時間領域ソルバー(Lumerical)を用いて、円柱形導波管を比較対象として円筒形構成のシミュレーションが実行された。
円筒形、放物線状ともにファセット径は200nmで、これはダイヤモンドに強く閉じ込められる光学モードをサポートする凡そ最小限の直径である。双極子がピラー軸に対して垂直(S偏光)に配向していることを考慮し、我々の対物レンズ(Ina)の0.8開口数コーン内の結合された出力Inaと放射の指向性の2つの主要指標に基づいてデバイス性能を評価した。なお、Inaは放物線状反射板の集光効率ηに関係するが、放物線状面の近接場効果や保持スラブの後側からの反射によるパーセル効果も含まれており、双極子の放射減衰率を修正する。全ての出力は、均一なバルクダイヤモンド中の双極子によって放射される出力lbdに正規化されている。
【0054】
その結果、円筒形のデバイスのs偏光双極子ではIna/lbd=0.18(630nmから800nmのNV放射帯の平均値)、放物線状のデバイスの同じ双極子ではIna/lbd=0.68という値が得られることがわかった。保持スラブや出口開口による干渉を考慮しても、ほぼ4倍の導波性放射の増加は、放物線状の構成の強さを示している。この干渉から放物線状の構成の寄与を分離するために、導波管部分をシミュレーション空間の完全吸収壁で終端する2回目のシミュレーションが実行された。導波管出力Iwgが測定され、放物線状の構成はNV放射帯域に亘って一貫して高い集光出力を示すことが実証された。
図1の実際に作られたデバイスがシミュレーションに用いられた場合、理想的な放物線状のピラーが観察され、非常によく似た結果となった。
【0055】
さらに、全構造のシミュレーションを行い、各デバイスの遠距離場放射パターンを決定した。放射強度を極角の関数としてプロットすると、放物線状デバイスの大きな開口部によって、0.25という小さな開口数(NA)内に遠距離場放射が集中することが確認された。一方、円柱状のピラーでは、その波長スケールの開口部によって大きな回折が発生し、NA=0.65と大きくなっている。
【0056】
p偏光双極子の場合(
図1(b)青線)、近距離場ダイヤモンド-空気界面と導波モードとの重なりが悪いため、全ての場合で外部結合出力が7倍以上抑制されていることは注目すべきである。これらのことから、NV軸をピラー軸に合わせた場合、s偏光双極子が最適であることが明らかになった。
【0057】
放物線状のダイヤモンド先端部の開発には、まず12keVで2×1011cm-2の14Nが埋め込まれ、試料の法線に7°傾いている高純度のタイプIlaダイヤモンド(Element Six,[N]<5ppb (100) surface)を用いた。ダイヤモンドは次にアニーリング処理された。アニーリング工程のより詳細な情報は以下の文献に見いだされる。
Y.Chu, et al. ,埋め込まれた窒素空孔中心におけるコヒーレントな光学遷移,Nano Lett., 14, 4(2014)
【0058】
アニーリング処理により、NV深度は20nmと推定される。直径約1μmのディスクが使用され、厚さ約300nmの流動性酸化物レジスト(FOX-16、ダウコーニング社)をエッチングマスクとして電子ビームリソグラフィーでパターニングした。
次の製造工程は、2回のドライエッチング段階で構成されている。導波路部分の製造に使用される第1のドライエッチング段階は、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE、センテック社)で、主にO2エッチング化学物を用い、O2とCF4の短い工程でデバイスの壁から再スパッタリングされた材料をきれいに除去する。
【0059】
この2つのエッチング工程を合計9回繰り返すことで、6μm程度のピラーを形成することができる。この段階の最後で、マスクは台形の断面を有し、基部の直径は900μmとなる。
第2のドライエッチング段階では,連続した工程で流速を上げながらエッチングの全時間にわたってCF
4が誘導され,CF
4濃度に比例してFOXマスクを侵食させた。これは、台形の断面とともに、FOXマスクとダイヤモンドの相対的なエッチング速度を制御することで、壁の角度を調整することができる。典型的な最終デバイスは
図1に示すように、約200nmの平坦な端部ファセットを持つ放物線状の先端部分と、長いテーパ状の導波路部分から構成されている。上記の如く、最終的なデバイスの形状のシミュレーションでは、放物線状に近い性能特性を示している。ピラーは予めエッチングされた20×40μm
2のダイヤモンドスラブ上に作られ、これにより、確立された手順に従って力のフィードバックを行うべく、走査型プローブをクォーツ音叉に簡単に取り付けることができることに注目すべきである。
【0060】
前記の確立された手順は以下の文献から導き出される。
P. Appel, E. Neu, M. Ganzhorn, A. Barfuss,M. Batzer, M. Gratz, A. Tscho pe, and P. Mal-etinsky.ナノスケールマグネトーム用の全てのダイヤモンド走査プローブの製造-try, Rev. Sci. Instrum. 87, 6(2016).
製造の様々の工程が
図2に示される。製造はダイヤモンドの曲面をドライエッチングする方法として記載される。
【0061】
方法は以下に記載される。
工程)A 適切なダイヤモンドを用意する100。
洗浄又は他の準備などの表面の準備がこの工程に含まれてもよい。また、表面における欠陥の準備も工程Aに含めてもよい。NV欠陥の場合、ダイヤモンドの表面から制御された深さまで窒素を注入し、アニーリング処理をすることでNV中心が形成される。
【0062】
工程)B 電子ビームレジストの蒸着200
好ましい電子ビームレジストとして、流動性のある酸化物マスクが使用され得る。このような酸化物マスクの好ましい材料は、無機高分子層であってもよい。材料として最も好ましいのは、2019年に納入された合成物にて、ダウコーニング社からのFOx-16である。
【0063】
工程)C エッチングマスクの形成300
レジストを現像してエッチングマスクを形成するような電子ビームリソグラフィーによる処理によって、エッチングマスクが前記無機高分子層から形成される。
【0064】
工程)D エッチング400
ダイヤモンドは誘導結合プラズマに晒されて、これによりダイヤモンドが反応性イオンエッチング工程でエッチングされる。
エッチング工程の第1の段階では、主にダイヤモンドを攻撃するエッチング化学剤、好ましくはO2401が使用されて、ダイヤモンドのテーパ付けられた円錐状のピラーを形成する。この部分のテーパ角度は、12度未満であるのが好ましい。
同時に、マスクは縁部が侵食されて台形の断面を形成する。
【0065】
マスクの側壁は約45度の角度で傾斜している。角度は正確に45度である必要はないが、垂直方向から実質的に傾斜している必要があることは注意すべきである。
エッチングの第2の段階にて、エッチング化合物は、マスク材をエッチングする薬剤、好ましくはCF4402を添加することにより修正される。O2に対するCF4の濃度を変えることで、得られるダイヤモンドの側壁の角度を変えることができる。
【0066】
複数のCF4:O2比率を順次使用することで、曲面形状を得ることができる。
この工程で達成される角度の範囲は、10度から50度、好ましくは12度から50度である。前記比率は、エッチング工程において導入されるCF4及び/又はO2の量を制御することができる制御ユニット403によって制御され得る。
マスクとダイヤモンドの相対的なエッチング速度は、エッチング化合物を調整することで可変に制御される。これは、曲面または角度のある面用の他の方法、つまり「グレースケール」リソグラフィーまたは固定条件下でのマスク侵食とは異なる。従って、本発明の方法は、放物線形状を超えて、壁の形状をより良く制御することを可能にする。
【0067】
上記のように、エッチングは、酸素プラズマ中のマスクの反応性イオンエッチングとして実行され、マスクが均一な厚さの部分から縁部の点に向かってテーパ状となるように、マスクの縁部にて傾斜した断面を形成することができる。
マスクの前記反応性イオンエッチングは、酸素とCF4プラズマの組み合わせで提供することができる。酸素プラズマは主にダイヤモンドを攻撃し、CF4プラズマは主にFOx-16マスクを攻撃する。従って、CF4に対する酸素の相対濃度を変化させることにより、ダイヤモンドの壁の角度を制御することができる。そのような技術を用いて、10度から50度の間の角度を達成することが可能である。
【0068】
エッチング法は、特にナノ光学デバイスの場合、曲面のエッチングを可能にする。
この技術は、平坦な端部ファセットを備えた放物線状のダイヤモンド走査プローブの製造に使用できる。垂直から10度から50度の角度で側壁をエッチングすることが可能であり、エッチング中にガスの濃度を変化させることにより、曲面を得ることができる。前記ガスの濃度を変えることにより、マスクの侵食を制御することができる。
【0069】
電子ビームリソグラフィマスクと酸素エッチングの組み合わせにより、様々なナノピラー形状が実現されているが、エッチングの角度を制御するためにマスクの侵食を使用する必要はない。
【0070】
曲面を生成するための主な代替技術は、レジストが蒸着された後にレジストを「リフロー」することによってグレースケールマスク(つまり、厚さが変化する)を作成することである。リフローでは、レジストが流体になり、表面に気泡が形成されるまで、レジストを注意深く加熱する。次に、通常、均一なエッチング条件での単一のエッチング工程でレジストがエッチングされ、その結果、気泡の湾曲が基板に伝達される。
我々の検索では、大きなアレイ内のダイヤモンドピラーの角度がハードマスク(私たちが使用しているものなど)の侵食に関連している他のリソースが1つだけ見つかり、2つの手法:1つは同様のマスクを使用し、もう1つはリフトオフ手順とCrマスクを使用し、どちらもCHF3/O2エッチング化学剤を使用する。ここで、彼らは、マスクの侵食によって角度が現れることを提案しているが、柱の期間と直径に対する角度の依存性のみを研究している。
【0071】
上記で説明した技術は、任意の形状に拡張できるが、円形対称の形状にさらに焦点を当てることができる。この技術は、単一のマスクのエッチングを必要とするという点で、比較的簡単に実施することができる。
平坦な端部ファセットの生成には、様々な技術が使用され得る。製造されたダイヤモンド走査型プローブは、既存の市販の走査型プローブと比較して、フォトニック性能が向上している。
【0072】
この方法で作製した走査型プローブは、ダイヤモンドの曲率による改善された感度により、従来のプローブと比較して約5倍から10倍の速度でデータを収集することができる。
平坦面を備えた前述の放物線状の先端部の有効性は、面外磁化強磁性体、具体的には、Taの5nm層で覆われたCoFeBの厚さ1nm、幅0.73μmのストライプの測定を実行することによって走査磁気測定によって示される。
単一の走査型プローブが自作の共焦点走査装置に取り付けられ、スピン状態を分割するためにNV軸に沿った小さな外部磁場が用いられている。ライン走査はストライプ全体で実行され、20nmごとにODMRスペクトルが記録された。下部ODMR共振の周波数位置が記録されているため、非接触のゼロ磁場分割と比較することにより、NV軸に沿った磁場が抽出されている。
【0073】
測定信号のフィットに基づいて、(1.0±0.2)mAのサンプル磁化とNVとCoFeBストライプ間の(45±5)nmの分離を抽出することができる。CoFeBはTaの5nm層で覆われているため、NVとTa表面の間の効果的な分離は(40±5)nmになる。これにより、優れた空間感度が得られる。
【0074】
結論として、単一のNV中心を含む放物線状のダイヤモンド走査プローブは、ナノスケールの磁場画像処理への使用を実証した。放物線状の構成は、表面近くのNVから光子を高速で検出するため、感知用途に最適である。このデバイスは、スラブの背面に反射防止コーティングを施し、(111)配向のダイヤモンドを使用してNV光学遷移双極子との最適なモードオーバーラップを実現し、あらかじめ選択されたNVへの決定的な配置によってより良い横方向のNV配置を実現することによってさらに改善することが可能である。この構成は汎用性があり、磁場や電場、温度の走査型プローブの感知や、ダイヤモンド表面に付着した分子や物質のNMRセンシングなど、関心のある多くのシステムに適用することができる。
【0075】
図1による本発明のダイヤモンド走査素子1の構成は、先端部2として形成された端部部分を備えたピラー8を含むように要約することができる。この先端部2の側面部分は、好ましくは、先端が切断された放物線状および平坦な、特に平坦な端部ファセット4の形態である。端部ファセットの平坦な形状は、単に好ましい実施形態であることに留意されたい。平坦とは、端面の勾配が側面部分よりもはるかに小さいことを意味する。勾配は、ピラー8の長手方向軸に垂直な平面に対して10%未満、好ましくは8%未満、より好ましくは5%未満であるべきである。
【0076】
先端部2は、支持体5としてのダイヤモンドスラブにその基部を一体に取り付けたテーパ状のダイヤモンドピラーとして形成されるのが好ましい。
ダイヤモンドピラーの先端部では、先細りの割合が徐々に大きくなり、ダイヤモンドピラーの形状は放物線状の側面3に近似している。形状が放物線状である必要は厳密にはないが、先端に向かって先細りの割合を大きくすべきである。広帯域の波長から効率的に光を集めるデバイスを得るためには、先端部のテーパ角度を45度に近づけるか、45度以上にすべきである。
【0077】
テーパは半径0まで続かないが、先端部の半径は有限であり、約50nmより大きい。即ち、ピラーの先端は平坦なファセットである。
欠陥6(NV中心)は,ピラーの先端,放物線の焦点位置,先端部の平坦なファセットの面のすぐ内側に配置されている。この欠陥は誤って配置され、焦点位置から任意の方向にずれて配置されても、デバイスは機能するが、効率は悪くなる。
【0078】
この欠陥は、平坦なファセットに近づける試料によって発生する磁場や電場などの外場に対して感度がある。
ピラーは欠陥から放射される光の導波路7を構成し、ピラーの基部5は欠陥から放射される光が通過する開口部10を構成している。ダイヤモンドスラブの後側9はこの光を反射するので、光の発散角はダイヤモンド-空気界面の全内部反射角以下であればよく、好ましくは24.3度から24.7度、より好ましくは約24.5度である。NV中心では、最小開口部は0.9μmから1.1μmが好ましく、より好ましくは1μm程度であることを意味する。
【0079】
端部に平坦なファセットを設けることで、センサであるNV欠陥と測定されるべき試料の距離が最小になる。さらに、先端に向かってテーパ角度を大きくすることで、広い波長帯域で高い収集効率を実現している。ただし、先端部の直径や半径はあまり大きくしない、何故ならば先端部の半径が大きくなると走査型プローブとしての性能が低下するからである。
【符号の説明】
【0080】
1 ダイヤモンド走査素子
2 先端部
3 側部
4 端部ファセット
5 支持体
6 欠陥
7 導波路
8 ピラー
9 後側
10 開口部
50 端部ファセットの直径
X 長手方向軸
100 工程A
200 工程B
300 工程C
400 工程D
450 エッチングの第1の段階
460 エッチングの第2の段階
401 O2
402 CF4
403 制御ユニット
【国際調査報告】