(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】タンパク質及びタンパク質含有原料の加水分解のためのイオン性ポリマーの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 1/12 20060101AFI20230314BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20230314BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20230314BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230314BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C07K1/12
C07K1/18
A23L33/18
A61K8/64
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546120
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021052597
(87)【国際公開番号】W WO2021156331
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520089598
【氏名又は名称】エンビオン テクノロジーズ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】シアンケヴィッチ スヴィアトラナ
(72)【発明者】
【氏名】サヴォグリディス ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイソン ポール
(72)【発明者】
【氏名】バンシュ ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB09
4B018LE06
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF10
4C083AD411
4C083CC01
4C083FF01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045EA01
4H045EA07
4H045EA15
4H045FA15
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、タンパク質及びタンパク質含有原料を加水分解してタンパク質加水分解物を生成することにおける、アニオンとカチオンを含有するポリマー骨格とからなるイオン性ポリマー(IP)の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及び/又はタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する方法であって、
a)タンパク質及び/又はタンパク質含有原料を提供する工程と、
b)任意選択で、前記タンパク質含有原料中のタンパク質含有量を決定する工程と、
c)任意選択で、前記タンパク質含有原料を前処理する工程と、
d)任意選択で、前記タンパク質含有原料からタンパク質を単離して、タンパク質濃縮物を形成する工程と、
e)前記タンパク質、前記タンパク質濃縮物及び/又は前記タンパク質含有原料を触媒と接触させて、反応混合物を形成する工程であって、前記触媒は、イオン性ポリマー若しくはイオン性ポリマーの組み合わせ、イオン性ポリマーネットワーク、固体担持イオン性ポリマー、及び/又はイオン性ポリマーを組み込むポリマー膜である工程と、
f)前記反応混合物中の前記タンパク質、前記タンパク質濃縮物及び/又は前記タンパク質含有原料を分解して液相及び固相を生成する工程であって、前記液相は前記タンパク質加水分解物を含み、前記固相は残留物質を含む工程と、
g)前記液相の少なくとも一部分を前記固相から単離する工程と、
h)単離された前記液相から前記タンパク質加水分解物を回収する工程と
を含み、
前記イオン性ポリマー(IP)は、式Iのモノマーからなるか、
【化1】
又は、式Iの第1のモノマー
【化2】
と、
【化3】
からなる群から選択される少なくとも1つの第2のモノマーとからなり、
前記式中、
n及びmは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択され、
z及びwは、独立に、0、1、2、3から選択され、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化4】
を含む群から選択されるカチオンであり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アリル、CH
3-(CH
2)p-O-(CH
2)q-CH
3、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルコキシアルキル、ベンジル、-SO
3H、-(CH
2)q-SO
3Hを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、
p及びqは、独立に、0、1、2、3、4、5、6から選択され、
Lは任意選択のリンカーであり、存在する場合、Lの各出現は、独立に、H、置換又は非置換のC
1~C
20アルキレン、C
1~C
20アルケニレン、C
1~C
20アルキニレン及び置換又は非置換のC
5~C
10アリールから選択され、置換基は、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]を含む群から選択され、
Aは任意選択の酸性基であり、存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、
X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、ClO
4
-、BF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NO
2
-、NO
3
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CO
3
2-、CF
3SO
3
-、C
1~C
6カルボキシレート、CN
-、SCN
-、OCN
-、CNO
-、N
3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート、キシレンスルホネートを含む群から選択され、
Raは、C
1~C
24アルキルであり、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、H及びCH
3を含む群から選択されるか、又は存在せず、
Rdは、C
1~C
24アルキルによって置換されていてもよい、C
1~C
24アルキレン又はC
1~C
24アルキルであり、
Re及びRfは、それぞれ独立に、C
1~C
24アルキルであり、
YはN又はOであるが、ただし、YがOである場合、Rcは存在せず、
Rは、C
1~C
24アルキル及びC
5~C
10アリールを含む群から選択されるか、又は存在せず、
前記イオン性ポリマーネットワークは、架橋された1つ以上の前記イオン性ポリマー(IP)を含み、
固体担体は、1つ以上の前記イオン性ポリマー(IP)又は前記イオン性ポリマーネットワークを含む少なくとも1つの表面を有し、
前記ポリマー膜は、1つ以上の前記イオン性ポリマー(IP)又は前記イオン性ポリマーネットワークを組み込む方法。
【請求項2】
前記イオン性ポリマーにおいて、Z
1、Z
2及びZ
3が、それぞれ独立に、
【化5】
を含む群から選択されるカチオンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式VIの第2のモノマーが、
【化6】
である請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法によって得られるタンパク質加水分解物。
【請求項5】
ペプチド及び遊離アミノ酸を含み、前記タンパク質加水分解物は水溶性であり、改善された溶解特性及び2.5%を超える加水分解度を有し、ペプチドは10,000Da未満の分子量を有する、炭水化物に連結されていてもよいオリゴペプチド及びポリペプチドである請求項4に記載のタンパク質加水分解物。
【請求項6】
食品、動物飼料製品及び化粧品の製造における請求項4又は請求項5に記載のタンパク質加水分解物の使用。
【請求項7】
食用材料と、請求項4又は請求項5に記載のタンパク質加水分解物とを含む食品。
【請求項8】
式Iの第1のモノマー
【化7】
と、
【化8】
からなる群から選択される少なくとも1つの第2のモノマーとからなるイオン性ポリマー(IP)であって、
ただし、少なくとも前記式Vの第2のモノマー又は少なくとも前記式VIの第2のモノマーは、前記イオン性ポリマー(IP)に存在し、
前記式中、
n及びmは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択され、
z及びwは、独立に、0、1、2、3から選択され、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化9】
を含む群から選択されるカチオンであり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アリル、CH
3-(CH
2)p-O-(CH
2)q-CH
3、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルコキシアルキル、ベンジル、-SO
3H、-(CH
2)q-SO
3Hを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、
p及びqは、独立に、0、1、2、3、4、5、6から選択され、
Lは任意選択のリンカーであり、存在する場合、Lの各出現は、独立に、H、置換又は非置換のC
1~C
20アルキレン、C
1~C
20アルケニレン、C
1~C
20アルキニレン及び置換又は非置換のC
5~C
10アリールから選択され、置換基は、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]を含む群から選択され、
Aは任意選択の酸性基であり、存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、
X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、ClO
4
-、BF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NO
2
-、NO
3
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CO
3
2-、CF
3SO
3
-、C
1~C
6カルボキシレート、CN
-、SCN
-、OCN
-、CNO
-、N
3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート、キシレンスルホネートを含む群から選択され、
Raは、C
1~C
24アルキルであり、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、H及びCH
3を含む群から選択されるか、又は存在せず、
Rdは、C
1~C
24アルキルによって置換されていてもよい、C
1~C
24アルキレン又はC
1~C
24アルキルであり、
Re及びRfは、それぞれ独立に、C
1~C
24アルキルであり、
YはN又はOであるが、ただし、YがOである場合、Rcは存在せず、
Rは、C
1~C
24アルキル及びC
5~C
10アリールを含む群から選択されるか、又は存在しない
イオン性ポリマー(IP)。
【請求項9】
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化10】
を含む群から選択されるカチオンである請求項8に記載のイオン性ポリマー。
【請求項10】
前記式VIの第2のモノマーが
【化11】
である請求項8又は請求項9に記載のイオン性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質及びタンパク質含有原料を加水分解してタンパク質加水分解物を生成することにおけるアニオンとカチオンを含有するポリマー骨格とからなるイオン性ポリマー(IP)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、身体の器官のすべてを構成し、器官系の適切な機能に必要とされる。すべてのタンパク質はアミノ酸で構成されるが、アミノ酸の組成及び配列の違いは、タンパク質がどのように機能するかを区別する。身体は、アミノ酸を使用して、器官の健康維持における特定の機能のための特定のタンパク質を構築する。しかしながら、身体は、多くの必要なアミノ酸の合成のための新規経路を有さず、それゆえ、これらの必須アミノ酸は、食物タンパク質から得なければならない。身体は、機能するために必要な特定のタンパク質を器官に供給するために、一貫して適切な食物タンパク質を消化し、吸収し、代謝しなければならない。
【0003】
食物タンパク質は、タンパク質のより小さいペプチドサブユニット又はさらにはアミノ酸の混合物を摂取することによって、より容易に消化及び吸収されることが可能である。ペプチド及びアミノ酸は、植物、動物、真菌又は微生物である供給源に由来することが多いタンパク質を加水分解することによって得ることができる。ペプチド及びアミノ酸は、通常、タンパク質の酸性加水分解、アルカリ性加水分解又は酵素による加水分解によって得られる。アルカリ加水分解プロセスは、ほとんどのアミノ酸の完全な破壊をもたらす(ほぼ100%の消失)。酸加水分解プロセスは、低コストという利点を提供する。しかしながら、このプロセスは、トリプトファンの完全な破壊、メチオニンの部分的な喪失、並びにグルタミンのグルタミン酸への変換及びアスパラギンのアスパラギン酸への変換をもたらす。タンパク質の酵素加水分解の主な欠点は、酵素活性を最適化するpH及び温度の範囲がタンパク質フォールディングを最大化する傾向があることである。高い立体障害は、難加水分解タンパク質をもたらし、このことは、溶解度、吸収、効力、感覚特性及び相互作用安定性に悪影響を及ぼす。さらには、タンパク質の酵素加水分解は、比較的高いコスト及び生のタンパク質材料中の酵素阻害剤の存在の可能性を含む。
【0004】
オリゴペプチド、ペプチド及び/又はアミノ酸を含むタンパク質加水分解物を生成するためにタンパク質を加水分解するための工業的プロセスは、主に、最適ではない酵素混合物に依拠し、従って、最適ではないサイズ分布を有するペプチド混合物を生成するために高価な精製工程が必要とされる。
【0005】
それゆえ、様々な供給源からのタンパク質を加水分解して、高い消化性、高い吸収特性及び高い利益を有するタンパク質加水分解物を生成するための単純かつ安全な方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、タンパク質及び/又はタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する方法であって、
a)タンパク質及び/又はタンパク質含有原料を提供する工程と、
b)任意選択で、上記タンパク質含有原料中のタンパク質含有量を決定する工程と、
c)任意選択で、上記タンパク質含有原料を前処理する工程と、
d)任意選択で、上記タンパク質含有原料からタンパク質を単離して、タンパク質濃縮物を形成する工程と、
e)上記タンパク質、タンパク質濃縮物及び/又はタンパク質含有原料を触媒と接触させて、反応混合物を形成する工程であって、この触媒は、イオン性ポリマー若しくはイオン性ポリマーの組み合わせ、イオン性ポリマーネットワーク、固体担持イオン性ポリマー、及び/又はイオン性ポリマーを組み込むポリマー膜である工程と、
f)上記反応混合物中の上記タンパク質、タンパク質濃縮物及び/又はタンパク質含有原料を分解して液相及び固相を生成する工程であって、上記液相はタンパク質加水分解物を含み、上記固相は残留物質を含む工程と、
g)上記液相の少なくとも一部分を上記固相から単離する工程と、
h)単離された液相から上記タンパク質加水分解物を回収する工程と
を含み、
上記イオン性ポリマー(IP)は、式Iのモノマーからなるか、
【化1】
又は、式Iの第1のモノマー
【化2】
と、
【化3】
からなる群から選択される少なくとも1つの第2のモノマーとからなり、
上記式中、
n及びmは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択され、
z及びwは、独立に、0、1、2、3から選択され、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化4】
を含む群から選択されるカチオンであり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アリル、CH
3-(CH
2)p-O-(CH
2)q-CH
3、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルコキシアルキル、ベンジル、-SO
3H、-(CH
2)q-SO
3Hを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、
p及びqは、独立に、0、1、2、3、4、5、6から選択され、
Lは任意選択のリンカーであり、存在する場合、Lの各出現は、独立に、H、置換又は非置換のC
1~C
20アルキレン、C
1~C
20アルケニレン、C
1~C
20アルキニレン及び置換又は非置換のC
5~C
10アリールから選択され、置換基は、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]を含む群から選択され、
Aは任意選択の酸性基であり、存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、
X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、ClO
4
-、BF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NO
2
-、NO
3
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CO
3
2-、CF
3SO
3
-、C
1~C
6カルボキシレート、CN
-、SCN
-、OCN
-、CNO
-、N
3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート(ドキュセート、docusate)、キシレンスルホネートを含む群から選択され、
Raは、C
1~C
24アルキルであり、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、H及びCH
3を含む群から選択されるか、又は存在せず、
Rdは、C
1~C
24アルキルによって置換されていてもよい、C
1~C
24アルキレン又はC
1~C
24アルキルであり、
Re及びRfは、それぞれ独立に、C
1~C
24アルキルであり、
YはN又はOであるが、ただし、YがOである場合、Rcは存在せず、
Rは、C
1~C
24アルキル及びC
5~C
10アリールを含む群から選択されるか、又は存在せず、
上記イオン性ポリマーネットワークは、架橋された1つ以上の上記イオン性ポリマー(IP)を含み、
上記固体担体は、1つ以上の上記イオン性ポリマー(IP)又は上記イオン性ポリマーネットワークを含む少なくとも1つの表面を有し、
上記ポリマー膜は、1つ以上の上記イオン性ポリマー(IP)又は上記イオン性ポリマーネットワークを組み込む
方法を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、本発明のタンパク質及び/又はタンパク質含有原料を加水分解する方法によって得られるタンパク質加水分解物を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、ペプチド及び遊離アミノ酸を含むタンパク質加水分解物であって、このタンパク質加水分解物は水溶性であり、改善された溶解特性及び2.5%を超える加水分解度を有し、ペプチドは、10,000Da未満の分子量を有する、炭水化物に連結されていてもよいオリゴペプチド及びポリペプチドであるタンパク質加水分解物を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、食品、動物飼料製品及び化粧品の製造における本発明のタンパク質加水分解物の使用を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、食用材料と本発明のタンパク質加水分解物とを含む食品を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、式Iの第1のモノマー
【化5】
と、
【化6】
からなる群から選択される少なくとも1つの第2のモノマーとからなるイオン性ポリマー(IP)であって、
ただし、少なくとも上記式Vの第2のモノマー又は少なくとも上記式VIの第2のモノマーは、上記イオン性ポリマー(IP)に存在し、
上記式中、
n及びmは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択され、
z及びwは、独立に、0、1、2、3から選択され、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化7】
を含む群から選択されるカチオンであり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アリル、CH
3-(CH
2)p-O-(CH
2)q-CH
3、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルコキシアルキル、ベンジル、-SO
3H、-(CH
2)q-SO
3Hを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、
p及びqは、独立に、0、1、2、3、4、5、6から選択され、
Lは任意選択のリンカーであり、存在する場合、Lの各出現は、独立に、H、置換又は非置換のC
1~C
20アルキレン、C
1~C
20アルケニレン、C
1~C
20アルキニレン及び置換又は非置換のC
5~C
10アリールから選択され、置換基は、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]を含む群から選択され、
Aは任意選択の酸性基であり、存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、
X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、ClO
4
-、BF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NO
2
-、NO
3
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CO
3
2-、CF
3SO
3
-、C
1~C
6カルボキシレート、CN
-、SCN
-、OCN
-、CNO
-、N
3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート、キシレンスルホネートを含む群から選択され、
Raは、C
1~C
24アルキルであり、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、H及びCH
3を含む群から選択されるか、又は存在せず、
Rdは、C
1~C
24アルキルによって置換されていてもよい、C
1~C
24アルキレン又はC
1~C
24アルキルであり、
Re及びRfは、それぞれ独立に、C
1~C
24アルキルであり、
YはN又はOであるが、ただし、YがOである場合、Rcは存在せず、
Rは、C
1~C
24アルキル及びC
5~C
10アリールを含む群から選択されるか、又は存在しない
イオン性ポリマー(IP)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、加水分解されたグルテン混合物(上)及び生成されたペプチドプロファイル(下)のMS(+)クロマトグラムを示す。
【
図2】
図2は、加水分解されたアルブミン混合物のMS(+)クロマトグラムを示す。
【
図3】
図3は、加水分解された使用済みオオムギ混合物のMS(+)クロマトグラムを示す。
【
図4】
図4は、グルコース、FOS、XOS、及び本発明のタンパク質加水分解物を含む組成物Prembionの存在下でのラクトバチルス(Lactobacillus)X株の増殖を示す。ヒト及び動物の腸の健康に部分的に関与することが報告されているラクトバチルスX株の増殖時間の関数としてのコロニー数。すべての添加剤は1%(全糖基準)レベルで添加した。
【
図5】
図5は、グルコース、FOS、XOS、及び本発明のタンパク質加水分解物を含む組成物Prembionの存在下でのビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)X株の増殖を示す。ヒト及び動物の腸の健康に部分的に関与することが報告されているビフィドバクテリウムX株の増殖時間の関数としてのコロニー数。すべての添加剤は1%(全糖基準)レベルで添加した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中で言及されるすべての公開公報、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体を援用したものとする。本明細書で論じられる公開公報及び出願は、本願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書中の記載には、本発明が、先行発明であるという理由からそのような刊行物に先行する権利がないということを認めるものと解釈されるものは何もない。加えて、それらの材料、方法及び例は、説明のためだけのものであり、限定することは意図されていない。
【0014】
矛盾する場合、定義を含めて本明細書が優先することになる。特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、本発明の理解を容易にするために、以下の定義が与えられる。
【0015】
用語「comprise(…を含む、備える)」は、include(…を含む、備える)の意味で一般に使用され、つまり1つ以上の特徴又は構成要素の存在を許容する。また、本明細書及び請求項で使用される場合、「comprising(…を含む、備える)」という語句は、「consisting of(…からなる)」及び/又は「consisting essentially of(本質的に…からなる)」という語句で記載される類似の実施形態を包含することができる。
【0016】
本明細書及び請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて複数の指示対象を含む。
【0017】
本明細書及び請求項で使用される場合、本明細書において「A及び/又はB」等の語句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」、及び「B」を含むものとする。
【0018】
「アリル」基は、構造式H2C=CH-CH2Rを有する置換基であって、Rは分子の残部である。
【0019】
用語「モノマー」は、重合又は共重合を受け、これによって構成単位を高分子(ポリマー)の必須構造に寄与することができる分子を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「架橋」は、要素、分子基、化合物、又は別のオリゴマー若しくはポリマー等の架橋剤の架橋による2つ以上のモノマー、オリゴマー、又はより長いポリマー鎖の結合を指す。架橋は、ポリマーネットワーク(二次元又は三次元であってもよい)をもたらすことができ、このポリマーネットワークにおいてポリマーサブユニットは、複数の架橋剤で、かつ遊離末端なしで相互接続される。架橋は、熱又は光等の刺激に曝露されると起こってもよい。結果として、いくつかの架橋プロセスは上昇した温度で起こり、いくつかは室温又はより低い温度でも起こりうる。架橋密度が増加するにつれて、材料の特性は熱可塑性から熱硬化性に変化することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」又は「オリゴペプチド」は、ペプチド結合を介して連結される少なくとも2つのアミノ酸の鎖として定義される。用語「ペプチド」及び「オリゴペプチド」は、文脈によっては、交換可能に使用することができる。
【0022】
タンパク質は、ペプチド結合によって互いに連結された30個を超えるアミノ酸残基(ポリペプチド)を含む1つ以上の鎖からなる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「タンパク質加水分解物」(又は「加水分解物」若しくは「加水分解(された)タンパク質」)は、アミノ酸間のタンパク質ペプチド結合の加水分解によって形成される生成物であり、異なる鎖長のアミノ酸及びペプチドの混合物を指す。濃縮加水分解物は、タンパク質加水分解物の画分であり、例えば選択されたペプチドが濃縮されているか、又はペプチド若しくはポリペプチドの一部分が加水分解物から除去されているものである。従って、濃縮加水分解物は、好ましくは、ペプチドの混合物又はペプチド混合物である。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「食品」は、ヒト、非反芻動物、又は反芻動物による摂取に適した任意の食物又は飼料を指す。「食品」は、調製及び包装された食物(例えば、マヨネーズ、サラダドレッシング、パン、若しくはチーズフード)又は動物飼料(例えば、押出及びペレット化動物飼料又は粗混合飼料)であってもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「機能性食品」は、本発明のタンパク質加水分解物等の生物学的に活性なサプリメントが添加された食品を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「栄養補助食品」は、食事の一部として使用される食事補助食品又は栄養補助食品として配合された食品を指す。
【0027】
本発明の一態様は、タンパク質及び/又はタンパク質含有原料(フィードストック)をタンパク質加水分解物に加水分解する方法を提供する。
【0028】
一実施形態では、本発明は、タンパク質及び/又はタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する方法であって、
a)タンパク質及び/又はタンパク質含有原料を提供する工程と、
b)任意選択で、上記タンパク質含有原料中のタンパク質含有量を決定する工程と、
c)任意選択で、上記タンパク質含有原料を前処理する工程と、
d)任意選択で、上記タンパク質含有原料からタンパク質を単離して、タンパク質濃縮物を形成する工程と、
e)上記タンパク質、タンパク質濃縮物及び/又はタンパク質含有原料を触媒と接触させて、反応混合物を形成する工程であって、この触媒は、イオン性ポリマー若しくはイオン性ポリマーの組み合わせ、イオン性ポリマーネットワーク、固体担持イオン性ポリマー、及び/又はイオン性ポリマーを組み込むポリマー膜である工程と、
f)上記反応混合物中の上記タンパク質、タンパク質濃縮物及び/又はタンパク質含有原料を分解して液相及び固相を生成する工程であって、上記液相はタンパク質加水分解物を含み、上記固相は残留物質を含む工程と、
g)上記液相の少なくとも一部分を上記固相から単離する工程と、
h)単離された液相から上記タンパク質加水分解物を回収する工程と
を含む方法を提供する。
【0029】
1つの実施形態では、工程e)上記タンパク質、タンパク質濃縮物及び/又はタンパク質含有原料を触媒と接触させて、反応混合物を形成する工程は、水又は適切な有機溶媒及び有効量の触媒をタンパク質、タンパク質濃縮物及び/又はタンパク質含有原料に添加して反応混合物を形成することからなり、この触媒は、本発明のイオン性ポリマー若しくは本発明のイオン性ポリマーの組み合わせ、本発明のイオン性ポリマーネットワーク、本発明のイオン性ポリマーを組み込んだ膜、及び/又は本発明の固体に担持されたイオン性ポリマーである。分解工程f)は、工程e)の反応混合物を適切な時間加熱し、続いて室温(典型的には20~25℃)に冷却することからなる。いくつかの実施形態では、加熱は50℃~170℃又は100℃~160℃又は110℃~150℃又は140℃~160℃又は100℃~170℃である。いくつかの他の実施形態では、加熱は、最大50℃又は最大100℃、又は最大170℃である。他の実施形態では、適切な時間は、典型的には0.5~3時間である。反応温度及び時間は、タンパク質又はタンパク質含有原料の起源に依存する。
【0030】
本発明のタンパク質及びタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する方法のいくつかの実施形態では、当該方法は、分解工程f)中にN2又はCO2の圧力を加えることをさらに含む。圧力は、20バール(bar)~300バール、好ましくは20~150バールの範囲にあってもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、任意の動物、植物及び微生物のタンパク質を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質含有原料」は、本発明のタンパク質加水分解物を製造する方法において使用することができる生きている又は死んだ生物学的材料を指す。いくつかの実施形態では、タンパク質含有原料は、植物ベースのタンパク質、単細胞タンパク質、インビトロ肉(試験管のなかの肉、細胞肉)、酵母エキス、使用済みの酵母又は酵母スラリー、使用済みオオムギ、昆虫、ダイズ、エンドウマメ、ナタネ、ホエー(乳清)、カゼイン、コムギ、キャノーラ(セイヨウアブラナ)、トウモロコシ、ジャトロファ(ナンヨウアブラギリ属の植物)、パーム(ヤシ)、ピーナッツ、ヒマワリ、ココナッツ、カラシ、綿実、パーム核、オリーブ、ベニバナ、ゴマ、アマニ(亜麻仁)、藻類、甲殻類、魚粉、肉粉及び骨粉、糖蜜、発芽した穀物及びマメ科植物、コラーゲン並びにタンパク質単離物の他の主要な商業的カテゴリーを含む群から選択される。
【0033】
任意選択で、任意の使用の前に、ブラッドフォード(Bradford)タンパク質アッセイ、ケルダール(Kjeldahl)法又はローリー(Lowry)法に従って、タンパク質含有原料中のタンパク質含有量が決定される。
【0034】
本明細書に記載される方法で使用されるタンパク質含有原料の任意選択の前処理は、洗浄、溶媒抽出、溶媒膨潤、粉砕、摩砕(製粉)、蒸気前処理、爆発性蒸気前処理、希酸前処理、熱水前処理、アルカリ前処理、石灰前処理、湿式酸化、湿式爆発(wet explosion)、アンモニア繊維爆砕(ammonia fibre explosion)、有機溶媒前処理、生物学的前処理、アンモニア浸透(ammonia percolation)、超音波、電気穿孔、マイクロ波、超臨界CO2、超臨界H2O、オゾン、及びガンマ線照射からなる群から選択される1つ以上の方法を使用する。任意選択の、タンパク質含有原料の前処理は、例えば、タンパク質含有原料の摩砕を含む。
【0035】
本明細書に記載される方法において使用される、任意選択の、タンパク質含有原料からタンパク質を単離して、タンパク質濃縮物を形成する工程は、塩析、等電点沈殿、有機共溶媒沈殿、タンパク質の2炭素(C2)有機共溶媒沈殿、C4及びC5有機共溶媒沈殿、タンパク質の相分配及び抽出、タンパク質排除及び密集剤(中性ポリマー)及び浸透圧調節物質(オスモライト)、合成及び半合成の高分子電解質による沈殿、金属及びポリフェノールヘテロポリアニオン沈殿、疎水性イオン対合(HIP)エンタングルメントリガンド、マトリクス積層リガンド共沈;二価及び三価金属カチオン沈殿からなる群から選択される1つ以上の選択的沈殿方法を使用する。
【0036】
タンパク質及びタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する本発明の方法で使用されるいくつかのイオン性ポリマーは、アニオンと、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2019/058270A1号パンフレットに開示されるカチオンを含有するポリマー骨格とからなる。具体的には、タンパク質及びタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する本発明の方法で使用されるイオン性ポリマー(IP)は、式Iのモノマーからなるか、
【化8】
又は、式Iの第1のモノマー
【化9】
と、
【化10】
からなる群から選択される少なくとも1つの第2のモノマーとからなり、
上記式中、
n及びmは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択され、好ましくは、n及びmは、独立に、1、2、3から選択され、最も好ましくは、nは2であり、mは1又は2であり、
z及びwは、独立に、0、1、2、3から選択され、好ましくはz及びwは、独立に、0及び1から選択され、最も好ましくはz及びwは0又は1であり、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化11】
を含む群から選択されるカチオンであり、
好ましくは、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化12】
を含む群から選択されるカチオンであり、
最も好ましくは、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化13】
を含む群から選択されるカチオンであり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アリル、CH
3-(CH
2)p-O-(CH
2)q-CH
3、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルコキシアルキル、ベンジル、-SO
3H、-(CH
2)q-SO
3Hを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、好ましくはR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキルを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、最も好ましくはR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合及びHを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、
p及びqは、独立に、0、1、2、3、4、5、6から選択され、
Lは任意選択のリンカーであり、存在する場合、Lの各出現は、独立に、H、置換又は非置換のC
1~C
20アルキレン、C
1~C
20アルケニレン、C
1~C
20アルキニレン及び置換又は非置換のC
5~C
10アリールから選択され、置換基は、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]を含む群から選択され、好ましくはLは存在せず、
Aは任意選択の酸性基であり、存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、好ましくは存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-O-COOH、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、最も好ましくはAは存在しないか、又は存在する場合、Aの出現は、独立に、H、-COOH、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、
X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、ClO
4
-、BF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NO
2
-、NO
3
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CO
3
2-、CF
3SO
3
-、C
1~C
6カルボキシレート、CN
-、SCN
-、OCN
-、CNO
-、N
3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート、キシレンスルホネートを含む群から選択され、好ましくはX
-は、F
-、Cl
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CF
3SO
3
-を含む群から選択され、最も好ましくはX
-は、Cl
-、HSO
4
-、SO
4
2-、CF
3SO
3
-を含む群から選択され、
Raは、C
1~C
24アルキルであり、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、H及びCH
3を含む群から選択されるか、又は存在せず、好ましくはRcは存在せず、
Rdは、C
1~C
24アルキルによって置換されていてもよい、C
1~C
24アルキレン又はC
1~C
24アルキル、好ましくはC
1~C
2アルキレン又はC
1~C
2アルキルであり、
Re及びRfは、それぞれ独立に、C
1~C
24アルキル、好ましくはCH
3であり、
YはN又はOであるが、ただし、YがOである場合、Rcは存在せず、
Rは、C
1~C
24アルキル及びC
5~C
10アリールを含む群から選択されるか、又は存在しない。
【0037】
本発明のイオン性ポリマー(IP)のいくつかの実施形態では、式VIの第2のモノマーは、
【化14】
である。
【0038】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの実施形態では、式Iの(第1の)モノマーは、
【化15】
である。
【0039】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの実施形態では、Z1及びZ2は同じ(同一)である。他の実施形態では、Z1及びZ2は異なる。
【0040】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの実施形態では、Z
1及びZ
2が、
【化16】
である場合、R2及びR5は結合であり、R1、R3及びR4はHであり、nは4ではない。
【0041】
本発明のイオン性ポリマーの他の実施形態では、Z
1及びZ
2が、
【化17】
である場合、R2及びR5は結合であり、nは4であり、R1、R3及びR4のうち少なくとも1つはHではない。
【0042】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの好ましい実施形態では、C1~C6カルボキシレートは、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ヘキサノエート、マレエート、フマレート、オキサレート、ラクテート、ピルベートを含む群から選択される。
【0043】
第1のモノマー及び第2のモノマーを含む本発明のイオン性ポリマー中の異なるモノマー間の比率は、任意の好適な比率であってもよく、加工されるタンパク質含有原料に応じて変動してもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2のモノマーは、1:1の比で存在する。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、以下を含む群から選択される式Iに係るモノマーを提供する。
【化18】
【0045】
さらなる実施形態によれば、本発明は、以下を含む群から選択される式Iに係るモノマーを提供する
【化19】
【0046】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、式IIに係るモノマーを提供する。
【化20】
【0047】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、以下を含む群から選択されるイオン性ポリマーを提供する。
【化21】
【化22】
x及びyは、それぞれ独立に、1~1000、好ましくは1~500又は1~200、より好ましくは1~100又は1~50の範囲内で選択される整数である。
【0048】
他の実施形態によれば、本発明は、以下を含む群から選択されるイオン性ポリマーを提供する。
【化23】
x及びyは、それぞれ独立に1~1000、好ましくは1~500又は1~200、より好ましくは1~100又は1~50の範囲内で選択される整数である。
【0049】
本発明の別の態様は、式Iの第1のモノマー
【化24】
と、
【化25】
からなる群から選択される少なくとも1つの第2のモノマーとからなるイオン性ポリマー(IP)であって、
ただし、少なくとも上記式Vの第2のモノマー又は少なくとも上記式VIの第2のモノマーは、上記イオン性ポリマー(IP)に存在し、
上記式中、
n及びmは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択され、好ましくはn及びmは、独立に、1、2、3から選択され、最も好ましくはnは2であり、mは1又は2であり、
z及びwは、独立に、0、1、2、3から選択され、好ましくはz及びwは、独立に、0及び1から選択され、最も好ましくはz及びwは0又は1であり、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化26】
を含む群から選択されるカチオンであり、
好ましくは、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化27】
を含む群から選択されるカチオンであり、
最も好ましくは、Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、
【化28】
を含む群から選択されるカチオンであり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アリル、CH
3-(CH
2)p-O-(CH
2)q-CH
3、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルコキシアルキル、ベンジル、-SO
3H、-(CH
2)q-SO
3Hを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、好ましくはR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合、H、C
1~C
6アルキルを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、最も好ましくはR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、結合及びHを含む群から選択されるが、ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち2つは、それぞれ、結合であり、
p及びqは、独立に、0、1、2、3、4、5、6から選択され、
Lは任意選択のリンカーであり、存在する場合、Lの各出現は、独立に、H、置換又は非置換のC
1~C
20アルキレン、C
1~C
20アルケニレン、C
1~C
20アルキニレン及び置換又は非置換のC
5~C
10アリールから選択され、置換基は、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]を含む群から選択され、好ましくはLは存在せず、
Aは任意選択の酸性基であり、存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-[P(=O)(OH)
2]、-[P(=O)(OH)]、-O-SO
3H、-O-COOH、-O-[P(=O)(OH)
2]、-O-[P(=O)(OH)]、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、好ましくは存在する場合、Aの各出現は、独立に、H、-SO
3H、-COOH、-O-COOH、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、最も好ましくはAは存在しないか、又は存在する場合、Aの出現は、独立に、H、-COOH、-CH
2-COOHを含む群から選択されるが、ただし、z及びwが0である場合、Aは式IVに存在し、
X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、ClO
4
-、BF
4
-、PF
6
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NO
2
-、NO
3
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CO
3
2-、CF
3SO
3
-、C
1~C
6カルボキシレート、CN
-、SCN
-、OCN
-、CNO
-、N
3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート、キシレンスルホネートを含む群から選択され、好ましくは、X
-は、F
-、Cl
-、HSO
4
-、SO
4
2-、PO
4
3-、HPO
4
2-、CF
3CO
2
-、CF
3CO
3
-、CF
3SO
3
-を含む群から選択され、最も好ましくは、X
-は、Cl
-、HSO
4
-、SO
4
2-、CF
3SO
3
-を含む群から選択され、
Raは、C
1~C
24アルキルであり、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、H及びCH
3を含む群から選択されるか、又は存在せず、好ましくはRcは存在せず、
Rdは、C
1~C
24アルキルによって置換されていてもよい、C
1~C
24アルキレン又はC
1~C
24アルキルであり、好ましくはC
1~C
2アルキレン又はC
1~C
2アルキルであり、
Re及びRfは、それぞれ独立に、C
1~C
24アルキル、好ましくはCH
3であり、
YはN又はOであるが、ただし、YがOである場合、Rcは存在せず、
Rは、C
1~C
24アルキル及びC
5~C
10アリールを含む群から選択されるか、又は存在しない
イオン性ポリマー(IP)を提供する。
【0050】
本発明のイオン性ポリマー(IP)のいくつかの実施形態では、式VIの第2のモノマーは、
【化29】
である。
【0051】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの実施形態では、式Iの第1のモノマーは、
【化30】
である。
【0052】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの実施形態では、Z1及びZ2は同じ(同一)である。他の実施形態では、Z1及びZ2は異なる。
【0053】
本発明のイオン性ポリマーのいくつかの実施形態では、Z
1及びZ
2が、
【化31】
である場合、R2及びR5は結合であり、R1、R3及びR4はHであり、nは4ではない。
【0054】
本発明のイオン性ポリマーの他の実施形態では、Z
1及びZ
2が、
【化32】
である場合、R2及びR5は結合であり、nは4であり、R1、R3及びR4のうち少なくとも1つはHではない。
【0055】
本発明のイオン性ポリマー(IP)は、異なる溶媒(水、アセトニトリル、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、トルエン、THF)中での適切なイオン種の直接重合、非IPの化学修飾等を含むがこれらに限定されないいくつかの方法によって合成することができる(実施例を参照されたい)。重合は、異なるアプローチ、例えば、フリーラジカル重合、リビング/制御ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動、イオン重合及び配位重合を含んでもよい。アニオン性構造は、重合の前又は後に好みに応じて設計することができる。得られたイオン性ポリマー(IP)は、イオン性モノマーの一般的特性と、特定の官能基の存在による固体触媒の有効特性とを併せ持つ。本発明の一実施形態では、塩は、カチオン及びアニオンを用いて調製され、カチオン及びアニオンの両方は、AIBN又は他の開始剤を使用して重合することができるビニル基を含有する。これは、本質的に非常に単純な方法であり、当該イオン性ポリマーは、洗浄及び濾過による過剰のAIBNの除去によって精製される。本発明の特定の実施形態では、1-(1-ビニルイミダゾリウム)エチル-3-ビニルイミダゾリウム][ジクロリド])から構成される塩が調製される。次いで、純粋な化合物としてのこの塩は、ラジカル開始剤AIBNを使用して重合される。このイオン性ポリマーは、洗浄及び濾過による過剰のAIBNの除去によって精製される。ジクロリドアニオンに代わるものとして、重合前にアニオン交換反応を介してジトリフレートアニオンを得ることができる。
【0056】
本発明は、架橋された1種以上の本発明のイオン性ポリマーを含むイオン性ポリマーネットワークも提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明のイオン性ポリマーネットワークは、イタコン酸、クエン酸及び/又は1,4ブタンジオールをさらに含む。
【0058】
他の実施形態では、本発明のイオン性ポリマーネットワークは、1種以上の金属触媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、この金属触媒は金属塩である。好ましい実施形態では、金属塩中のアニオンは、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、NO2
-、NO3
-、HSO4
-、SO4
2-、PO4
3-、HPO4
2-、CF3CO2
-、CF3CO3
-、CO3
2-、CF3SO3
-、C1~C6カルボキシレート、CN-、SCN-、OCN-、CNO-、N3
-、トシレート、メシレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート、ジ-トリフルオロメタンスルホニルアミノ、ドクサート、キシレンスルホネートを含む群から選択され、金属イオンは、Na、Ba、Sr、Ca、Cd、Sn、Pb、Fe、Cu、Zn、Zr、Mn、Co、Ni、Li、Al、Cr、Mg、Mo、Hg、Ag、Au、Pt、Rh、Re、Ti、Pb、Bi、Ga、In、Sn、Ir、La、Hf、Ta、W、Osを含む群から選択される。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態では、C1~C6カルボキシレートは、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ヘキサノエート、マレエート、フマレート、オキサレート、ラクテート、ピルベートを含む群から選択される。
【0060】
1種以上の金属触媒を含む本発明のイオン性ポリマーネットワークは、イオン性ポリマー-金属の組み合わせのより良好な安定性及び再利用性を提供する。
【0061】
1種以上の金属触媒を有する本発明のイオン性ポリマーネットワークの調製は、典型的には、イオン性ポリマーネットワーク及び金属塩を水/有機溶媒中で一晩混合又は還流することからなる。例えば、J.Am.Chem.Soc.、2012、134、11852-11855;Chem.Cat.Chem.、2016、8、2508-2515;J.Org.Chem.、2011、76(24)、10140-10147頁;Inorg.Chem.、2006、45、6396-6403を参照されたい。
【0062】
本発明のイオン性ポリマーは、膜に組み込むか、又は固体担体に付着・結合させることができる。
【0063】
本発明の別の態様は、本発明のイオン性ポリマーから構成される膜を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、1種以上の本発明のイオン性ポリマーを含むポリマー膜を提供する。本発明のイオン性ポリマーの調製に使用される塩に適切なコポリマー(例えばアクリル酸)を添加し、次いで混合物を重合させることによって、ポリマー膜を生成することが可能である。膜形成のためのアプローチは、イオン性モノマーが適切な有機酸/酸誘導体と共重合される場合の単純なイオン性錯化(Taeuber K.ら、Polym.Chem.、2015、6、4855-4858;Taeuber K.ら、ACS Macro Lett.、2015、4(1)、39-42;Zhang S.ら、Chem.Sci.、2015、6、3684-3691を参照されたい)によるテンプレートフリー法に基づく。例として、イオン性モノマーがDMSOに溶解され、60℃で2時間撹拌された。次いで、この透明な溶液がガラスプレート上に注がれ、溶媒がオーブン中80℃で蒸発された。次いで、得られた非多孔質乾燥ポリマーフィルムは、細孔形成及び静電複合体化のために、アンモニア水(0.2重量%)に一晩浸漬された。膜はガラスプレートから容易に取り外され、水で数回洗浄された。
【0064】
本発明の別の態様は、固体担持イオン性ポリマーを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、1つ以上の本発明のイオン性ポリマーを含む少なくとも1つの表面を有する固体担体を提供する。担持されたイオン性ポリマーは、担体としての様々な材料上に固定化することができる:ケイ素又は炭素(ナノチューブ、ワイヤ)源、グラフェン又は酸化グラフェン、ゼオライト、金属/金属合金又は金属/金属合金酸化物。例として、FeOx担体は、高温(500℃)の酸素の存在下でオーブン内で酸化され、その後、その表面は、HClの存在下でエタノールに溶解されたシランの混合物で修飾された。室温で乾燥された後、この担体は、イオン性ポリマー及びAIBNのメタノール溶液を均一に含浸された。室温で乾燥された後、得られた材料は95℃のオーブンに2時間入れられた。この含浸プロセスを繰り返すことによって、所望のポリマー充填量が達成されてもよい。別の例は、本発明のイオン性ポリマーを含むステンレス鋼膜である。イオン性モノマー(0.2~0.5、モル比)、アクリル酸(0.1~0.6、モル比)及びベンゾインエチルエーテル(1重量%、光開始剤として)を含む混合物がメタノールに溶解されて均質な溶液が得られた。次いで、これは、ステンレス鋼膜を濡らすことによって分散され、波長250nmのUV光の照射によって室温で光架橋された。
【0065】
イオン性ポリマーの付着は、UV又はO3、O2、H2又は空気プラズマによる担体の活性化を必要とする表面グラフト化によっても可能である。表面グラフト化は、ポリマー表面上の反応性部位(ラジカル)の生成と、それに続く事前に形成されたポリマーの共有結合、又はより一般的には、これらのラジカル部位からのモノマーの重合を伴う(Alves P.ら、Colloids and Surfaces B:Biointerfaces、第82巻、第2号、2011年2月1日、371-377;Barbey R.ら、Chem.Rev.、2009、109(11)、5437-5527を参照されたい)。重合プロセス中に別のコポリマー又は重合開始剤を使用することもできる(膜形成の場合のように)。
【0066】
本発明のタンパク質及びタンパク質含有原料をタンパク質加水分解物に加水分解する方法のいくつかの実施形態では、有機溶媒は、アルコール(例えばメタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール等)、エーテル(例えばジメトキシエタン、ジグライム、ブチルメチルエーテル等)、ケトン(例えばメチルイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン等)、共晶溶媒(例えばグリセロール - 塩化コリン、オクタン酸 - 塩化テトラブチルアンモニウム、ポリ(エチレングリコール) - 塩化コリン、乳酸 - グリシン)を含む群から選択される。
【0067】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、タンパク質加水分解物を回収することは、濾過、遠心分離又は重力沈降等の当該技術分野で公知の任意の技術によって行うことができる。
【0068】
本明細書に記載される方法において使用される本発明のイオン性ポリマー又はその組み合わせの有効量は、例えば、タンパク質又はタンパク質含有原料の種類、タンパク質含有原料の量、タンパク質含有原料中のタンパク質の含有量、タンパク質含有原料に適用される前処理の種類及び数、並びに反応条件(温度及び時間等)を含むいくつかの因子に依存する可能性がある。本発明のイオン性ポリマーの有効量は、タンパク質又はタンパク質含有原料を本発明のタンパク質加水分解物に分解するのに充分な量を指す。いくつかの実施形態では、本発明のイオン性ポリマーの有効量は、タンパク質含有原料中のタンパク質含有量と比較して、通常、0.05:1w/w~10:1w/w、0.5:1w/w~10:1w/w、1:1w/w~1:5w/w、好ましくは、0.1:1w/w~1:5w/wである。
【0069】
本明細書に記載される方法において使用されるタンパク質含有原料対水の比率は、例えば、タンパク質含有原料の種類及びタンパク質含有原料の量を含むいくつかの因子に依存する可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるタンパク質含有原料と水又は有機溶媒(アルコール、エーテル、ケトン、共晶溶媒等)との比率は、1:100w/v~1:1w/v、好ましくは1:50w/v~1:10w/vの範囲である。
【0070】
本明細書に記載される方法において使用される加熱のための好ましい温度プロファイルは、使用されるタンパク質含有原料出発材料に、及び生成される意図されるタンパク質加水分解物にも依存する。加熱温度は、好ましくは、最大で200℃に、いくつかの実施形態では、最大で170℃又は160℃に保持されるべきである。いくつかの実施形態では、加熱温度は、100℃~200℃、又は100℃~170℃、又は100℃~160℃、又は110℃~150℃、好ましくは120℃~170℃又は120℃~140℃である。好ましくは、小規模用途の場合、加熱は高圧オートクレーブ反応器中で行われ、この反応器は密封後、適切な反応時間及び温度で加熱される。
【0071】
本発明のタンパク質加水分解物の製造方法は、中程度の温度、典型的には170℃未満又は160℃未満又は50℃未満で実施されるが、従来技術の方法は170℃を超える温度を必要とする。加えて、本発明のタンパク質加水分解物の製造方法は、副生物が少なく、これにより目的物の回収が容易になる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法における適切な反応時間は、タンパク質含有原料の種類及び量に応じて、例えば10分~10時間、好ましくは0.5時間~5時間又は1時間~3時間である。
【0073】
本発明のイオン性ポリマー若しくはその組み合わせ、本発明のイオン性ポリマー及び/又は本発明の固体担持イオン性ポリマーを組み込んだ膜、並びにタンパク質及びタンパク質含有原料の加水分解、解体又は分解のためのその使用の重要な利点は、タンパク質含有原料の解体及びタンパク質含有原料からの上述のタンパク質加水分解物の選択的抽出のためのワンポットシステムにおけるその使用である。さらに、本発明のイオン性ポリマーは不溶性であり、従って本発明のタンパク質加水分解物と混合しない。
【0074】
本発明によれば、タンパク質を、改善された消化性、吸収及び利益を有するより魅力的な食品代替物にするために、大きい天然タンパク質は、本明細書に開示されるイオン性ポリマーを用いて、ペプチド及び/又はアミノ酸等のタンパク質加水分解物と呼ばれるより小さいタンパク質断片に加水分解される。
【0075】
本発明の別の態様は、本発明のタンパク質及び/又はタンパク質含有原料を加水分解する方法によって得られるタンパク質加水分解物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって得られるタンパク質加水分解物は、ペプチド及び遊離アミノ酸を含み、このタンパク質加水分解物は水溶性であり、改善された溶解特性及び2.5%を超える加水分解度を有し、ペプチドは、10,000Da未満の分子量を有する、炭水化物に連結されていてもよいオリゴペプチド及びポリペプチドである。
【0076】
本発明の別の態様は、オリゴペプチド及びポリペプチド等のペプチド、並びに遊離アミノ酸を含むタンパク質加水分解物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質加水分解物中に存在するペプチドは、糖ペプチド及び/又は炭水化物に連結されたペプチドである。
【0077】
いくつかの実施形態では、当該タンパク質加水分解物中のオリゴペプチド及び/又はポリペプチドは、10,000Da未満、好ましくは500~8000Daの分子量を有する。
【0078】
上記ペプチドは、典型的には、2~20個以上のアミノ酸を含有する。このペプチドは生物活性であってもよい。本発明のタンパク質加水分解物は水溶性であり、改善された溶解特性及び2.5%を超える加水分解度を有する
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質加水分解物は、ペプチド及び遊離アミノ酸を含み、このタンパク質加水分解物は水溶性であり、改善された溶解特性及び2.5%を超える加水分解度を有し、ペプチドは、10,000Da未満の分子量を有する、炭水化物に連結されていてもよいオリゴペプチド及びポリペプチドである。
【0080】
他の実施形態では、本発明のタンパク質加水分解物は、ペプチド及び遊離アミノ酸からなり、このタンパク質加水分解物は水溶性であり、改善された溶解特性及び2.5%を超える加水分解度を有し、ペプチドは、10,000Da未満の分子量を有する、炭水化物に連結されていてもよいオリゴペプチド及びポリペプチドである。
【0081】
いくつかの実施形態では、当該タンパク質加水分解物は、本発明のタンパク質及び/又はタンパク質含有原料を加水分解する方法によって得られる。
【0082】
本発明のタンパク質加水分解物は、代謝の生理学的モジュレータとして作用することができ、免疫調節剤、抗癌剤、抗高血圧剤、抗酸化剤、抗炎症剤、ミネラル結合剤、アヘン剤、抗脂血剤、抗菌剤/抗細菌剤、抗真菌剤及び抗ウイルス剤、抗凝固剤、熱発生剤、抗骨粗鬆症剤(骨保護剤)、細胞増殖及び修復のモジュレータ、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、これに加えて、回復、脂質代謝、炭水化物代謝、免疫機能、心血管及び骨の健康、神経系及び脳の機能、運動中の筋肉の性能の最適化、消化器満腹及び体重管理に影響を及ぼす無数のシグナル伝達機能に関与する生物学的シグナル伝達メディエータを含む広範囲の生物活性を有することができる。
【0083】
生物活性に加えて、本発明のタンパク質加水分解物は、その組成、配列及び長さに応じて、溶解性、脂質結合、発泡及び乳化の特性を含む様々な物理化学的特性を有する。実際、本発明のタンパク質加水分解物は、ヒト及び動物(例えば、ブタ、子ウシ、ニワトリ、コンパニオンアニマル及び魚類)における腸の形態、機能及び感染性疾患に対する抵抗性を改善し、それによって、それらの健康及び健常性、並びに成長性能及び飼料効率を増強することに対して有益な効果を発揮することができる。これは、動物副産物、醸造所副産物、又は植物飼料等のタンパク質含有原料を高品質タンパク質加水分解物成分に変換し、ヒト栄養補助食品及び動物飼料配合物を提供するための費用効果の高いアプローチを提供する。さらに、本発明のタンパク質加水分解物は、合板接着剤等の用途を含む織物における用途、植物の発根、発芽、成長の促進及び寿命の延長等の用途を含む水産養殖及び農業における用途、化粧品配合物における用途、生物製剤及び吸収性ヒドロゲル製剤における用途、機能性飲食品配合物における用途、腸溶食製剤及び栄養補助食品における用途、乳児用及び小児用の栄養製品配合物における用途、動物飼料配合物における用途、細胞培養増殖培地及び発酵処理における用途、凍結に対する抵抗性及び好ましい食感を改善するためのベーキング成分における用途を有することができる;
【0084】
本発明のタンパク質加水分解物は、医薬品、予防衛生、栄養補助食品、機能性飲食品、小児用栄養、食品添加物、動物飼料、肥料、抗酸化剤、抗菌剤、化粧品、界面活性剤の用途を含む群から選択される様々な用途に使用することができる。
【0085】
好ましくは、本発明のタンパク質加水分解物は、食品、機能性食品、栄養補助食品、動物飼料製品及び/又は化粧品の製造に用いられる。
【0086】
別の実施形態では、本発明は、食品、機能性食品、栄養補助食品、動物飼料製品及び/又は化粧品を製造する方法であって、本発明のタンパク質加水分解物の使用を含む方法を提供する。
【0087】
本発明の別の態様は、本発明のタンパク質加水分解物を含む食品、機能性食品、栄養補助食品、動物飼料製品及び/又は化粧品を提供する。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、当該食品は、食用材料と、本発明のタンパク質加水分解物とを含む。食用材料と組み合わせるための特定のタンパク質加水分解物の選択は、所望の食品に応じて変動することができ、変動することになる。適切な食用材料の選択も、所望の食品に応じて変動することになる。食用材料は、植物由来材料(例えば、野菜ジュース、シリアル製品等)、動物由来材料(例えば、乳製品、卵製品等)、又は植物由来材料若しくは動物由来材料から単離された生体材料(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質等)などであってもよい。
【0089】
本発明の食品は、例えば、温かい又は冷たいシリアル(穀物)、バー、焼いた食品、飲料、ヨーグルト、デザート、スナック、パスタ及び肉(家禽及び海産物を含む)を含んでもよい。
【0090】
本発明のタンパク質加水分解物は、油、脂肪、乳化剤、炭水化物、果実濃縮物、香味料、着色剤、アルコール、二酸化炭素、増粘剤、酸味料、抗酸化剤、ハーブ又はハーブエキス、ビタミン又は生物活性化合物等の健康促進化合物等のあらゆる種類の成分と組み合わせて、市場ニーズに合致する製品を配合することができる。
【0091】
当業者は、本明細書に記載された発明に対し、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更が可能であるということはわかるであろう。本発明は、その趣旨又は本質的特徴から逸脱しないそのようなすべての変形及び変更を含むことが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において参照又は示される工程、特徴、組成物及び化合物のすべてを、個々に又は集合的に、並びに上記工程若しくは特徴の任意の及びすべての組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。それゆえ、本開示は、例示された、限定的ではない全ての態様において考慮されるべきであり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、均等の意味及び範囲内にある全ての変更は、本発明に包含されることが意図される。
【0092】
上述の説明は、以下の実施例を参照してより十分に理解される。しかしながら、そのような実施例は、本発明を実施する方法の例示であり、本発明の適用及び範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0093】
式VIのモノマーの調製
カチオン性DMAEMAQを調製するために、30mmolのDMAEMAを適切な量の溶媒(溶媒は、THF、アセトニトリル、DCM、クロロホルム、ジエチルエーテル等であってもよい)に溶解し、続いて36mmolのRX(式中、Xはハロゲン化物、HSO
4
-又はSO
4
2-であってよく、Rはアルキル又はアリールである)を注意深く添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。その後、沈殿物を濾過し、冷ヘキサンを添加して洗浄した。最後に、得られた生成物を真空下で8時間乾燥させて、対応するDMAEMAQモノマーの結晶性固体を得た。
【化33】
【0094】
ホエーグルテンからのタンパク質加水分解物の調製
65mgのIP1と共に75mlの水に懸濁した5gのホエーグルテンを140℃で1時間撹拌した。反応後、混合物を室温まで冷却し、濾過し、固相を乾燥させ、液相をQTOF-ESI(+)分析に供した。35%の重量転化率を測定した。
得られたデータの解釈から、500~7000ダルトンの質量範囲を有するオリゴペプチド及びポリペプチドの混合物が明らかになった。
図1を参照されたい。
【0095】
ウシアルブミンからのタンパク質加水分解物の調製
4mgのIP1と共に1.5mlの水に懸濁した100mgのウシアルブミンを140℃で1時間撹拌した。反応後、混合物を室温まで冷却し、濾過し、液相をQTOF-ESI(+)分析に供した。
得られたデータの解釈から、500~8000Daの質量範囲を有するオリゴペプチド及びポリペプチドの混合物が明らかになった。
図2を参照されたい。
【0096】
使用済みオオムギからのタンパク質加水分解物の調製
3gのIP1と共に1.5Lの水に懸濁した200gの使用済みオオムギを140℃で1時間撹拌した。反応後、混合物を室温まで冷却し、濾過し、液相をQTOF-ESI(+)分析に供した。
得られたデータの解釈から、炭水化物に連結されたペプチドの存在が明らかになった。
図3を参照されたい。
【0097】
酵母スラリーからのタンパク質加水分解物の調製
0.22gのIP3と共に0.666Lの水に懸濁した67gの酵母スラリー(乾燥ベース)を145℃で1.5時間撹拌した。反応後、混合物を室温まで冷却し、濾過し、液相を噴霧乾燥機を用いて乾燥させた。得られた乾燥生成物を、ケルダール法を用いてタンパク質含有量について分析し、加水分解タンパク質として45重量%を測定した。
【0098】
タンパク質の物理化学的改善の例
オカラは、その高品質タンパク質(15.2~33.4%)、脂肪(8.3~10.9%)、炭水化物及び繊維(30~58%)に起因して高い栄養価を有する。技術的プロセスに起因して、オカラ残渣は、主に不溶性又は難抽出性のタンパク質を含有する。オカラタンパク質単離物は、必須アミノ酸のすべてを含有し、豆乳のタンパク質効率指数(protein efficiency index)よりもさらに高いタンパク質効率指数を有し(2.71対2.11)、豆腐のタンパク質効率指数よりもさらに高いタンパク質効率指数を有するが、水溶性が低い。オカラのタンパク質画分は、胃腸酵素、ペプシン及びパンクレアチン(後者は主にトリプシン、アミロプシン及びステアプシンからなる)による完全な消化に耐えることができることも見出されている。しかしながら、オカラの望ましくない風味は、その研究において「豆」風味と呼ばれ、オカラベースの食品のその応用及び生産にとって大きい課題であった。
このような課題に対処するために、加水分解処理を適用して、可溶性繊維及び可溶性タンパク質含有量を増加させ、従って栄養品質及び加工特性が改善されてもよい。
【0099】
オカラ加水分解物Iの調製:
イオン性ポリマー触媒IP3と共に100mlの水に懸濁した10gのオカラ(乾燥ベース)を120℃で1時間撹拌した。反応後、混合物を室温まで冷却し、濾過し、液相を噴霧乾燥機を用いて乾燥させた。
【0100】
オカラ加水分解物IIの調製:
イオン性ポリマー触媒IP3と共に100mlの水に懸濁した10gのオカラ(乾燥ベース)を130℃で1時間撹拌した。反応後、混合物を室温まで冷却し、濾過し、液相を噴霧乾燥機を用いて乾燥させた。
【0101】
【0102】
特定の細菌増殖に対する有益な効果の例
多量栄養素及び微量栄養素は、細菌叢を調節することができる。タンパク質、炭水化物及び脂肪等の多量栄養素間の全体的なバランスは、腸内細菌叢の組成及び機能的潜在能力に影響を及ぼすことが知られている。使用済みオオムギ加水分解物(本発明のタンパク質加水分解物を含む組成物Prembion)の有効性を、グルコース、市販のXOS及びFOS製品と比較し、ビフィドバクテリウムX細菌株及びラクトバチルスX細菌株の増殖曲線を測定して試験した。これらの細菌の活性は動物及びヒトの腸の健康の改善に関連している。
【0103】
図4及び
図5は、培地に異なる栄養源を補充した場合に、2つの異なる株がインビトロでどのように機能するかを示す。純粋なFOS及びXOSと比較すると、使用済みオオムギに由来し、加水分解タンパク質を含有する複合体生成物は、ビフィドバクテリウム株の優れた優先的増殖(
図5)及びラクトバチルス株の相対的増殖(
図4)を示した。
【国際調査報告】