(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20230314BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546387
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2020014709
(87)【国際公開番号】W WO2021157814
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0012593
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136049
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522007532
【氏名又は名称】ユン、キョン-テ
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユン、キョンテ
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB02
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
2H006BB10
2H006BC04
2H006BC05
2H006BC07
(57)【要約】
本発明は、コンタクトレンズ及びその製造方法に関し、本発明によるコンタクトレンズは、アクリル系単量体を含有する樹脂組成物及びボスウェリア抽出物を含んでもよく、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物が含有されることにより、使用者の目にコンタクトレンズが着用されたとき、菌の付着を防ぐことができ、抗菌剤として作用して細菌の感染を防止することができ、優れた安定性及び抗菌性を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系単量体を含有する樹脂組成物及びボスウェリア抽出物を含むコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記ボスウェリア抽出物は、下記化学式で表されるボスウェリア酸のうち少なくとも一つを含む請求項1に記載のコンタクトレンズ。
[化学式1] [化学式2]
[化学式3] [化学式4]
[化学式5] [化学式6]
[化学式7] [化学式8]
【請求項3】
前記アクリル系単量体は、アクリル酸;メタクリル酸;アクリルアミド;C
1-C
15の飽和若しくは不飽和のアルキルアクリレートまたはメタクリレート;ヒドロキシ基が1乃至3個置換されたC
1-C
15のヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート;及びN,N-ジ(C
1-C
15の飽和若しくは不飽和のアルキル)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、N-ビニルピロリドン(NVP)及びN-メチルピロリドン(NMP)のうち少なくとも一つの親水性単量体をさらに含む請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、シリコン化合物を含む請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、2-(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリレート、トリス(3-メタクリルオキシプロピル)シラン、3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、及び4-メタクリルオキシブチル末端化ポリジメチルシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物を含む請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備するステップと、
前記樹脂組成物にボスウェリア抽出物を混合するステップと、
前記混合物を成形型に注入して成形するステップと、を含むコンタクトレンズの製造方法。
【請求項8】
アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備するステップと、
前記混合物を成形型に注入して予備成形するステップと、
前記予備成形されたコンタクトレンズにボスウェリア抽出物をコートするステップと、を含むコンタクトレンズの製造方法。
【請求項9】
前記ボスウェリア抽出物は、下記化学式で表されるボスウェリア酸のうち少なくとも一つを含む請求項7または8に記載のコンタクトレンズの製造方法。
[化学式1][化学式2]
[化学式3][化学式4]
[化学式5][化学式6]
[化学式7][化学式8]
【請求項10】
前記ボスウェリア抽出物をコートするステップは、精製水80乃至90重量部、親水性ポリマー0.1乃至2重量部、ポリエチレングリコール類1乃至5重量部、ボスウェリア抽出物0.01乃至5重量部、及びpH調節剤1乃至5重量部を含むボスウェリアコーティング液で行われる請求項8に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のうちいずれか一項に記載の方法で製造されるコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ及びその製造方法に係り、具体的には、優れた着心地及び安定性を有するコンタクトレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズ(Contact lens)は、目の角膜表面に直接接触させて使用する薄いレンズであって、ハード(hard)コンタクトレンズとソフト(soft)コンタクトレンズに大別される。近年、酸素透過性の高いシリコン材質(ハードレンズ)と柔軟性の良いハイドロゲル材質(ソフトレンズ)の長所を結合したシリコンハイドロゲルレンズが最も多く生産されている。
【0003】
また、コンタクトレンズは、機能によって、視力校正用、治療用、美容用コンタクトレンズ等に分類される。
【0004】
コンタクトレンズは、眼球に直接接触するので、透明性と表面湿潤性を維持しなければならず、大気から酸素が適切に供給されなければならず、角膜から二酸化炭素の放出が円滑に行われなければならない。また、コンタクトレンズは、涙の円滑な流れだけでなく、眼瞼と眼球表面との過度な摩擦を避けるなどの臨床学的な側面も考慮して設計されなければならない。
【0005】
すなわち、コンタクトレンズは、機械的強度(tensile strength)、生物的適合性(biocompatibility)、無毒性(non toxicity)、光学的透明性(optical transparent)、屈折率(refractive index)、表面親水性(surface wet ability)、角膜に適した含水量(water content)、膨潤率(welling rate)、酸素透過性(oxygen permeability)等の条件を満たさなければならない。
【0006】
また、コンタクトレンズは、めがねとは異なり、眼球に直接接触するので、衛生的な管理と着用にあたって注意が必要である。コンタクトレンズを長時間着用すれば、涙の構成成分がコンタクトレンズの表面に付着して、着心地が落ち、視力が妨げられ、コンタクトレンズが変色するか、細菌感染の原因になり得る。また、タンパク質の沈着と粒子状物質等の外部環境による汚染により、各種の微生物の付着と増殖が促進されることがある。
【0007】
目は、多くの神経細胞と多様な形態の繊維状物質で構成されており、どの体組織よりも菌に露出しやすい組織の一つである。また、目は、高い湿度と適切な温度環境からなっており、空気中のほこりと微生物の接近が容易である。このため、細菌の感染は、眼科疾患につながり、速くて多発的な症状を引き起こす。
【0008】
目と関連した細菌としては、真菌、緑膿菌、ブドウ状球菌等が代表的である。日常生活の中で、ほこり、各種の衣服等に棲息する真菌による真菌性角膜潰瘍(fungal corneal ulcer)、汚染したコンタクトレンズ保管容器により発生する緑膿菌性角膜潰瘍(pseudomonas corneal ulcer)、ブドウ状球菌による急性カタル性結膜炎(acute catarrhal con-junctivitis)、慢性細菌性結膜炎(chronic bacterial conjunctivitis)等がある。
【0009】
このような問題点を解決するために、現在、抗菌物質を用いた研究が盛んに行われている。
【0010】
大韓民国登録特許第10-0878053号は、眼内に発生する細菌を制御するために、天然抗菌剤であるナリンギンを含むコンタクトレンズを開示している。
【0011】
大韓民国登録特許第10-1953474号は、分子刷込高分子方式によって天然抗菌剤を認識する高分子空間を含む高分子マトリックスと、天然抗菌剤としてグリチルリチン酸(Glycyrrhizic acid)とを含むコンタクトレンズを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、優れた着心地及び安定性を有するコンタクトレンズ及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、アクリル系単量体を含有する樹脂組成物及びボスウェリア抽出物を含むコンタクトレンズを提供する。
【0014】
前記ボスウェリア抽出物は、下記化学式で表されるボスウェリア酸のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記アクリル系単量体は、アクリル酸;メタクリル酸;アクリルアミド;C1-C15の飽和若しくは不飽和のアルキルアクリレートまたはメタクリレート;ヒドロキシ基が1乃至3個置換されたC1-C15のヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート;及びN,N-ジ(C1-C15の飽和若しくは不飽和のアルキル)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、N-ビニルピロリドン(NVP)及びN-メチルピロリドン(NMP)のうち少なくとも一つの親水性単量体をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、シリコン化合物を含んでもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、2-(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリレート、トリス(3-メタクリルオキシプロピル)シラン、3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、及び4-メタクリルオキシブチル末端化ポリジメチルシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物を含んでもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態は、アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備するステップと、前記樹脂組成物にボスウェリア抽出物を混合するステップと、前記混合物を成形型に注入して成形するステップと、を含むコンタクトレンズの製造方法を提供する。
【0024】
本発明のまた他の実施形態は、アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備するステップと、前記混合物を成形型に注入して予備成形するステップと、前記予備成形されたコンタクトレンズにボスウェリア抽出物をコートするステップと、を含むコンタクトレンズの製造方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記コンタクトレンズの製造方法において、前記ボスウェリア抽出物は、下記化学式で表されるボスウェリア酸のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記ボスウェリア抽出物をコートするステップは、精製水80乃至90重量部、親水性ポリマー0.1乃至2重量部、ポリエチレングリコール類1乃至5重量部、ボスウェリア抽出物0.01乃至5重量部、及びpH調節剤1乃至5重量部を含むボスウェリアコーティング液で行われてもよい。
【0031】
本発明のまた他の実施形態は、前記の方法で製造されるコンタクトレンズを提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物を含み、優れた着心地と安定性を有することができる。
【0033】
また、本発明の一実施形態により製造されたコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物が含有されることにより、使用者の目にコンタクトレンズが着用されたとき、菌の付着を防ぐことができる。また、ボスウェリア抽出物は、コンタクトレンズから徐々に放出され、抗菌剤として作用して細菌の感染を防止することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物がコートされることにより、コンタクトレンズの表面スリップ性を改善することができる。これにより、眼瞼と角膜の損傷を減らし、眼瞼と角膜表面の保護コーティングの役割を果たして、眼球の安らぎを増加させ、安定化した涙層を形成することができる。
【0035】
また、コンタクトレンズに付着するタンパク質沈殿物を減少させ、コンタクトレンズの含水量と酸素透過性の低下を防止し、接触角を減少させ、コンタクトレンズの着用時に引き起こされる不便さを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実現例及び実施例をについて詳述する。
【0037】
しかしながら、本発明は、様々な相違した形態で実現されてもよく、ここで説明する実現例及び実施例に限定されない。
【0038】
この明細書の全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているというのは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0039】
この明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。この明細書の全体において用いられる程度の用語の「約」、「実質的に」等は、言及された意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値又はその数値に近接した意味として用いられ、本発明の理解を助けるために、正確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を、良心的でない侵害者が不当に利用することを防止するために用いられる。また、この明細書の全体において用いられる「~するステップ」または「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味しない。
【0040】
本発明は、アクリル系単量体を含有する樹脂組成物及びボスウェリア抽出物を含むコンタクトレンズ及びその製造方法に関する。
【0041】
この明細書における「コンタクトレンズ」は、着用者の眼上にまたは眼内に位置することができる構造を意味する。コンタクトレンズは、使用者の視野を補正、改善または変化させることができるが、美容目的等のその他の目的にも使われてもよい。コンタクトレンズは、本発明が属する分野における公知された物質を含んでもよく、ソフトレンズ、ハードレンズ、または混合レンズであってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物を含み、優れた着心地と安定性を有することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、ボスウェリア抽出物は、ボスウェリア(Boswellia)属に属する植物の抽出物を称するものであって、前記ボスウェリア抽出物には、活性成分としてボスウェリア酸(boswellic acid)が含まれてもよい。
【0044】
これに制限されないが、ボスウェリア属の植物は、例えば、ボスウェリア・セラータ(Boswellia serata)、ボスウェリア・フレレアーナ(Boswellia frereana)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carterii)等があり、具体的に、ボスウェリア属植物は、ボスウェリア・セラータ(Boswellia serata)であってもよい。
【0045】
ボスウェリアは、テルペン、ボスウェリア酸、インセンソールアセテート等のような炎症に作用する成分が豊かに含有されており、これらは、抗酸化剤として作用して、炎症の治療に優れた効果があると知られている。特に、ボスウェリア酸は、アラキドン酸からロイコトリエンを生成させる酵素である5-リポキシゲナーゼに対する活性抑制効果があり、非特異的な抗酸化効果があるので、ウルソール酸等のような典型的なエラスターゼ活性抑制剤よりもさらに優れた効果を有すると知られている。
【0046】
具体的に、ボスウェリア抽出物には、骨関節炎において炎症誘発因子の活性が減少することを示す研究がある(韓国食品栄養科学会誌43(5),20145,631-640(10pages)Journal of the Korean Society of Food Science and Nutrition 43(5),20145,631-640(10pages))。
【0047】
また、ボスウェリア抽出物をIBD(炎症性腸疾患)患者に6週間投与した結果、患者の82%が完治されたという研究結果がある(イギリス薬学ジャーナル(フランチェスカ ボレッリ(Francesca Borrelli)研究チームの論文))。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、ボスウェリア抽出物を得る方法は、特に制限されない。
【0049】
これに制限されないが、例えば、抽出工程を用いて得られてもよい。例えば、水、炭素数1-4の無水または含水の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、低級アルコールと水の混合溶媒、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、1,3-ブチレングリコール、酢酸ブチル等の抽出溶媒を用いて、ボスウェリアから得られる。具体的に、抽出溶媒は、水またはエタノールを使用してもよい。
【0050】
前記ボスウェリア抽出物を得る過程において、抽出は、当業界で通常用いられるいずれの抽出機を用いて実施されてもよく、例えば、冷却コンデンサーが設けられた抽出機が用いられてもよく、これは、抽出時、有効成分が蒸発することを防止するのにも適している。また、抽出物の乾燥は、当業界に知られた様々な方法によって実施されてもよく、例えば、回転減圧蒸発器(rotatory vacuum evaporator)を用いて実施されてもよい。
【0051】
また、本発明の一実施形態によれば、ボスウェリア抽出物は、通常の精製過程を経てもよい。これに制限されないが、例えば、一定の分子量カットオフ値を有する限外ろ過膜を用いた分離、様々なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために製作されたもの)による分離等、追加で実施された様々な精製方法によって得られた活性分画を使用してもよい。
【0052】
また、本発明の一実施形態によれば、ボスウェリア抽出物は、減圧蒸留及び凍結乾燥または噴霧乾燥等のような追加的な工程によって粉末状態で製造されたものを使用してもよい。
【0053】
前記ボスウェリア抽出物は、下記化学式で表されるボスウェリア酸(Boswellic acid)を含んでもよい。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
前記化学式1の名称は、β-ボスウェリア酸(β-Boswellic acid)、化学式2は、3-О-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリア酸(3-О-Acetyl-11-keto-β-boswellic acid)、化学式3は、α-ボスウェリア酸(α-Boswellic acid)、化学式4は、11-ケト-β-ボスウェリア酸(11-Keto-β-boswellic acid)、化学式5は、3-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリア酸(3-Acetyl-11-keto-β-boswellic acid)、化学式6は、3-O-アセチル-β-ボスウェリア酸(3-O-Acetyl-β-boswellic acid)、化学式7は、3-O-アセチル9,11-ジヒドロβ-ボスウェリア酸(3-O-Acetyl 9,11-dehydro β-boswellic acid)、化学式8は、3-O-アセチル-α-ボスウェリア酸(3-O-Acetyl-α-boswellic acid)である。
【0059】
その他、コンタクトレンズを構成する成分については、下記のコンタクトレンズの製造方法において説明する。
【0060】
以下、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズの製造方法について、具体的に説明する。後述するコンタクトレンズの製造方法は、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズを特定する一つの方法として理解されてもよい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、ボスウェリア抽出物は、コンタクトレンズを形成する樹脂組成物と一緒に混合及び重合されるか、成形されたコンタクトレンズにコートする方式で適用され得る。以下、それぞれの製造方法について、順次に説明する。
【0062】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズの製造方法は、アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備するステップと、前記樹脂組成物にボスウェリア抽出物を混合するステップと、前記混合物を成形型に注入して成形するステップと、を含んでもよい。
【0063】
まず、アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備してもよい。
【0064】
前記アクリル系単量体は、これに制限されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、C1-C15の飽和若しくは不飽和のアルキルアクリレートまたはメタクリレート、ヒドロキシ基が1乃至3個置換されたC1-C15のヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート、N,N-ジ(C1-C15の飽和若しくは不飽和のアルキル)アクリルアミド等を使用してもよく、これらを1種以上混合して使用してもよい。
【0065】
具体的に、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)、アクリルアミド、ラウリルメタクリレート(LMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールモノメタクリレート(GMMA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)等を使用してもよい。
【0066】
前記アクリル系単量体間の含量は、特に制限されないが、前記ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、90乃至98重量部を使用してもよく、その他の単量体は、それぞれ0.1乃至10重量部の範囲で使用されてもよい。
【0067】
前記ヒドロキシエチルメタクリレート(Hydroxyethyl methacrylate、HEMA)は、ソフトコンタクトレンズに最も多く使われるハイドロゲルである。
【0068】
ハイドロゲルは、水溶性高分子が物理的または化学的な結合により3次元の架橋を形成している網状構造であって、水相環境で溶解されずに相当量の水を含有することができる。また、加工が容易であるので、様々な形態で変形することができ、高い含水量(water content)及び細胞外基質(extracellular matrix)との物理化学的な類似性によって高い生物的適合性を有する。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、ボスウェリック抽出物を認識することができる高分子空間を作るために、2つ以上の機能性モノマーを使用してもよい。
【0070】
これは、分子刷込高分子方式であり、その主要な属性は、非共有結合で重合反応によって生成した高分子空間とボスウェリック抽出物の相互作用である。前記高分子空間に認識されたボスウェリア抽出物は、コンタクトレンズから徐々に放出されてもよい。
【0071】
これに制限されないが、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(Hydroxyethyl methacrylate、HEMA)90乃至98重量部、及びメチルメタクリレート(methyl methacrylate、MMA)1乃至3重量部を使用してもよい。
【0072】
また、本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、水分含量を増加させるために、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-メチルピロリドン(NMP)等の親水性単量体をさらに含んでもよい。
【0073】
前記親水性単量体は、前記樹脂組成物100重量部に対して、0.1乃至10重量部、具体的に0.1乃至8重量部、さらに具体的に0.1乃至5重量部を含んでもよい。
【0074】
前記親水性単量体の含量が0.1重量部未満であれば、湿潤性が低下する恐れがあり、10重量部を超過すれば、引っ張り強さが弱くなる恐れがある。
【0075】
また、本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、シリコン化合物をさらに含んでもよい。このような場合、シリコンハイドロゲルレンズを製造することができる。
【0076】
本発明におけるシリコン化合物は、シリコン(Si)原子が含まれた炭化水素化合物であって、前記シリコン(Si)原子は、ヒドロキシ基、炭素数1乃至10のアルコキシ、アミド基、エステル基、シロキシ基等の置換基を有してもよい。
【0077】
これに制限されないが、例えば、2-(トリメチルシリルオキシ)エチルメタクリレート、トリス(3-メタクリルオキシプロピル)シラン、3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、4-メタクリルオキシブチル末端化ポリジメチルシロキサン等を使用してもよい。
【0078】
前記シリコン化合物は、樹脂組成物100重量部に対して、0.1乃至50重量部を含んでもよい。前記シリコン化合物の含量が、50重量部を超過すれば、引っ張り強さ及び湿潤性が低下され得る。
【0079】
また、本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、架橋剤または開始剤を含んでもよい。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールメタクリレート(DEGMA)、ジビニルベンゼン、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)等を使用してもよく、これに制限されなくてもよい。
【0081】
前記架橋剤の含量は、樹脂組成物100重量部に対して、0.1乃至5重量部を含んでもよい。具体的に、前記架橋剤の含量は、0.1乃至3重量部、さらに具体的に0.1乃至1重量部であってもよい。前記架橋剤の含量が1重量部を超過すれば、分子刷込高分子方式に必要な高分子空間がうまく形成されないこともある。また、コンタクトレンズの光学的視野、柔軟性、及び含水量に影響を及ぼし得る。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記開始剤は、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾインメチルエーテル(BME)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、及びジメトキシフェニルアセトフェノン(DMPA)等を使用してもよく、これに制限されなくてもよい。
【0083】
前記開始剤の含量は、樹脂組成物100重量部に対して、0.001乃至5重量部を含んでもよい。具体的に、前記開始剤の含量は、0.01乃至1重量部、さらに具体的に0.01乃至0.5重量部であってもよい。前記開始剤の含量が5重量部を超過すれば、分子刷込高分子方式に必要な高分子空間がうまく形成されないこともある。また、コンタクトレンズの光学的視野、柔軟性、及び含水量に影響を及ぼし得る。
【0084】
次に、前記樹脂組成物にボスウェリア抽出物を混合して混合物を準備してもよい。
【0085】
前記ボスウェリア抽出物の具体的な特性及び製造方法は、上述の通りである。上述のように、本発明の一実施形態によれば、ボスウェリア抽出物としてボスウェリア酸を使用してもよい。
【0086】
前記ボスウェリア抽出物は、前記樹脂組成物100重量部に対して、0.001乃至1重量部を混合することができる。前記ボスウェリア抽出物の含量が0.001未満であれば、コンタクトレンズの着心地及び抗菌性が低下する恐れがあり、1重量部を超過すれば、コンタクトレンズの引っ張り強さ及び酸素透過性が低下する恐れがある。
【0087】
次に、前記混合物を成形型に注入し、成形してコンタクトレンズを得てもよい。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、これに制限されないが、回転鋳造法(spin casting)または注型鋳造法(cast molding)を用いてもよい。
【0089】
前記回転鋳造法は、回転する鋳型に前記レンズの原料である樹脂組成物を注入し、回転速度によって型の表面に広がらせ、紫外線または熱を加えて重合させる方法である。鋳型の形、回転速度、樹脂組成物の物理的性質及び注入量等に応じて形が決定される。
【0090】
前記鋳型鋳造法は、レンズの表面と裏面の形態を有する鋳型にレンズの原料である樹脂組成物を注入し、紫外線または熱を加えて重合させる方法である。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、前記成形工程は、60乃至120℃で、20分乃至5時間の間行われてもよい。具体的に、80乃至100℃で、40分乃至1時間、または100乃至120℃で、20乃至30分間行われてもよい。
【0092】
本発明の他の実施形態によるコンタクトレンズの製造方法は、アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備するステップと、前記樹脂組成物を鋳型に注入して成形するステップと、前記成形されたコンタクトレンズにボスウェリア抽出物をコートするステップと、を含んでもよい。
【0093】
まず、アクリル系単量体を含む樹脂組成物を準備してもよい。
【0094】
前記アクリル系単量体を含む樹脂組成物の構成成分及び含量は、上述の通りである。
【0095】
次に、前記樹脂組成物を成形型に注入し、予備成形してコンタクトレンズを得てもよい。
【0096】
前記成形工程は、上述のように、回転鋳造法(spin casting)または注型鋳造法(cast molding)を用いてもよい。
【0097】
次に、前記予備成形されたコンタクトレンズにボスウェリア抽出物をコートしてもよい。
【0098】
前記ボスウェリア抽出物をコートするステップは、ボスウェリア抽出物でコーティング液を製造し、前記ボスウェリアコーティング液を用いて行われてもよい。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、前記ボスウェリアコーティング液は、精製水80乃至90重量部、親水性ポリマー0.1乃至2重量部、ポリエチレングリコール類1乃至5重量部、ボスウェリア抽出物0.01乃至5重量部、及びpH調節剤1乃至5重量部を含んでもよい。前記成分を混合した後、撹拌して、ボスウェリアコーティング液を製造することができる。これに制限されないが、前記撹拌は、100~500rpmの速度で、10乃至60分間行われてもよい。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、前記ボスウェリア抽出物は、ボスウェリア酸を使用してもよく、前記ボスウェリア酸は、上述した化学式1乃至化学式8で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸ナトリウム、コリンリン酸ポリマー、またはセルロースアセテートを使用してもよく、これに制限されなくてもよい。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティングは、当業界において公知された方法を用いてもよく、これに制限されず、例えば、ディップコーティング工程で行われてもよい。
【0103】
上記のように製造されたコンタクトレンズは、水和及び検収工程を経て、食塩水で充填され、滅菌及び包装工程を通じて製品生産が完了される。
【0104】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物を含み、優れた着心地と安定性を有することができる。
【0105】
また、本発明の一実施形態によって製造されたコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物が含有されることにより、使用者の目にコンタクトレンズが着用されたとき、菌の付着を防ぐことができる。また、ボスウェリア抽出物は、コンタクトレンズから徐々に放出され、抗菌剤として作用して細菌の感染を防止することができる。
【0106】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物がコートされることにより、コンタクトレンズの表面スリップ性を改善することができる。これにより、眼瞼と角膜の損傷を減らし、眼瞼と角膜表面の保護コーティングの役割を果たして、眼球の安らぎを増加させ、安定化した涙層を形成することができる。
【0107】
また、コンタクトレンズに付着するタンパク質沈殿物を減少させ、コンタクトレンズの含水量と酸素透過性の低下を防止し、接触角を減少させ、コンタクトレンズの着用時に引き起こされる不便さを防止することができる。
【0108】
[発明の実施形態]
以下、本発明の一実施形態による実施例を通じて、本発明をさらに具体的に説明するが、このような実施例が本発明の範囲を制限するものではない。
【0109】
[実施例]
実施例1
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)94重量部、メチルメタクリレート(methylmethacrylate、MMA)0.1重量部、N-ビニルピロリドン(N-vinyl pyrrolidone、NVP)5重量部を撹拌し、ボスウェリア抽出物0.01重量部、架橋剤のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)0.1重量部、開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01重量部を40℃で混合した。
【0110】
混合物を鋳型に入れて、100℃のオーブン内で、30分間重合し、熱処理した。コンタクトレンズサンプルを蒸溜水で水和し、食塩水に浸けて保管した。
【0111】
実施例2
前記実施例1と同様に行われるが、ボスウェリア抽出物の代わりにボスウェリア酸(β-ボスウェリア酸)を使用してコンタクトレンズサンプルを製造した。
【0112】
実施例3及び実施例4
前記実施例1及び実施例2と同様に行われるが、樹脂組成物として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)90重量部、N,N-ジメチルアクリルアミド1重量部、4-メタクリルオキシブチル末端化ポリジメチルシロキサン20重量部を使用してコンタクトレンズサンプルを製造した。
【0113】
実施例5
前記実施例1と同様に行われるが、ボスウェリア抽出物を入れずに混合物を製造した。前記混合物を鋳型に入れて、予備成形した後、ボスウェリアコーティング液でコートした。ボスウェリアコーティング液を90℃に昇温した後、予備成形されたコンタクトレンズの上に20分間ディップコーティング(dip coating)した。ディップコーティング後、コンタクトレンズを熱処理し、蒸溜水で水和し、食塩水に浸けて保管した。
【0114】
比較例
前記実施例1と同様に行われるが、ボスウェリア抽出物を入れずに混合物を製造した。混合物を鋳型に入れ、100℃のオーブン内で、30分間重合し、熱処理した。コンタクトレンズサンプルを蒸溜水で水和し、食塩水に浸けて保管した。
【0115】
[評価]
1)可視光線透過率
ISO 18369-3の規格を基準として測定した。前記実施例によるコンタクトレンズは、いずれも可視光線領域において95%以上の透明度を示した。
【0116】
2)含水量
ISO 18369-4の規格試験に基づいて測定した。下記の式で含水量を計算し、それぞれのサンプルに対して3回測定して平均値を使用した。前記実施例によるコンタクトレンズは、いずれも35乃至65%の範囲の含水量を示した。
【0117】
含水量(%)=(水和されたレンズの重さ-乾燥したレンズの重さ)/水和されたレンズの重さ×100
【0118】
3)接触角
ISO 18369の規格を基準として測定し、前記実施例によるコンタクトレンズは、いずれも45°以下の範囲を示した。
【0119】
4)引っ張り強さ
ASTM D955の規格を基準として測定し、前記実施例によるコンタクトレンズは、いずれも≧0.1kgfを示した。
【0120】
5)酸素透過性
ISO 18369-3の標準生理食塩水溶液(PBS)に入れ、常温(20℃±2℃)で、24時間保管後、目の温度と同じ35℃±0.5℃で、最小2時間以上処理後、試験に供した。前記実施例によるコンタクトレンズのうち、ハイドロゲルレンズは、酸素伝達率(Dk/t)が10乃至50を示し、シリコンハイドロゲルレンズは、酸素伝達率(Dk/t)が50乃至120を示した。
【0121】
6)抗菌力
前記実施例によるコンタクトレンズのブドウ状球菌に対する抗菌力を測定した。前記比較例を対照群としたが、対照群の平均コロニー数と比べて、実施例の場合、平均コロニー数は、80%以上に減少し、高い抗菌力を見せた。
【0122】
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更できることが容易に理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物を含み、優れた着心地と安定性を有することができる。
【0124】
また、本発明の一実施形態により製造されたコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物が含有されることにより、使用者の目にコンタクトレンズが着用されたとき、菌の付着を防ぐことができる。
【0125】
本発明の一実施形態によるコンタクトレンズは、ボスウェリア抽出物がコートされることにより、コンタクトレンズの表面スリップ性を改善することができる。
【国際調査報告】