(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】溶媒を用いない多孔質ポリマー構造の生産
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20230314BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/50 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20230314BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20230314BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20230314BHJP
B01D 39/08 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C08J9/26 CER
C08J9/26 CEZ
B01D69/00
B01D71/16
B01D71/28
B01D71/30
B01D71/48
B01D71/50
B01D71/52
B01D71/54
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/68
B01D71/70
B01D39/16 C
B01D39/16 A
B01D39/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546554
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2021052013
(87)【国際公開番号】W WO2021152029
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322008494
【氏名又は名称】ノバメム・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】NOVAMEM AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケレンベルガー,クリストフ・リューディ
(72)【発明者】
【氏名】ロップフェ,ミハエル
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4F074
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA44
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA04
4D006MA22
4D006MA24
4D006MA31
4D006MC18
4D006MC22X
4D006MC23X
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4D006NA23
4D006NA54
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4D006PB55
4D019AA01
4D019AA03
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4D019BB03
4D019BB08
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4D019CA03
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4F074CC22X
4F074DA03
4F074DA13
4F074DA43
(57)【要約】
多孔質ポリマー構造、特に膜を製造するための方法であって、1つ以上のポリマーと1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子との混合物を提供するステップと、ブレンドを一次成形するステップと、1つ以上の塩粒子を除去するステップと、を含み、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部が、1つ以上の固体酸であり、それによって、ポリマー対粒子の比が、重量で3:1~1:10の範囲である、方法。そのような多孔質ポリマー構造、本明細書に記載の多孔質ポリマー構造、そのような構造を含有する成形物品、ならびにそのような多孔質ポリマー構造、成形物品、および混合物の使用を得るのに好適な混合物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~5000nm、好ましくは2~1000nm、最も好ましくは5~400nmの細孔径を有する多孔質ポリマー構造、特に膜を製造する方法であって、
a)混合物を提供するステップであって、
・1~90重量%、好ましくは5~65重量%、最も好ましくは10~45重量%の1つ以上のポリマーおよび/または前記ポリマーのオリゴマー前駆体、
・1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの一次粒径を有する0,5~95重量%、好ましくは20~90重量%、最も好ましくは40~85重量%の1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、
・0~70重量%、好ましくは0~40重量%の1つ以上の充填剤、
・0~40重量%の1つ以上の添加剤、好ましくは添加剤なし、を含み、
前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%が、1つ以上の固体酸であり、ポリマー:粒子の比が、重量で3:1~1:10、好ましくは2:1~1:9の範囲である、ステップと、
b)任意選択で、前記混合物の水分含有量を適合させるステップと、
c)任意選択で、前記混合物を均質化するステップと、
d)前記混合物を一次成形するステップと、
e)任意選択で、基材を前記混合物でコーティングするステップと、
f)任意選択で、得られた材料を乾燥および/または冷却ステップに供するステップと、
g)任意選択で、このようにして得られた材料をさらなる再成形および/またはさらなる加工に供するステップと、
h)任意選択で、このようにして得られた材料を重合または架橋ステップに供するステップと、
i)前記1つ以上の塩粒子を非有機溶媒で除去するステップ、好ましくは、非有機溶媒に前記塩粒子を溶解することによって前記1つ以上の塩粒子を除去するステップと、
j)任意選択で、得られた多孔質ポリマー構造を前記基材から除去するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(j)が、ステップ(f)~(i)のいずれかの前に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)における前記一次成形することが、好ましくは一定の断面を有する多孔質ポリマー構造を形成するために、ダイを通して前記混合物を押し出すことによって実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(d)における前記一次成形することが、好ましくは不均一な断面を有する部分を形成するために、前記混合物を鋳造することによって実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)~(j)のうちの1つ以上が、連続的に実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記コーティングステップ(e)が、噴霧、ロールツーロールプロセスからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
a)前記ナノ粒子および/またはマイクロ粒子が、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、およびリン酸塩、好ましくは炭酸塩および酸化物、最も好ましくはCaCO
3、BaCO
3、SrCO
3、Na
2CO
3、K
2CO
3、NaCl、ZnO、およびCaOからなる群から選択され、かつ/または
b)前記ナノ粒子および/もしくはマイクロ粒子が、1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの粒径を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記固体酸が、
i)カルボン酸、特にシュウ酸、酒石酸、クエン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、およびエチレンジアミン四酢酸からなる群から選択される少なくとも1つのカルボン酸、ならびに/または
ii)スルホン酸、特にスルファミン酸および2-アミノエタンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1つのカルボン酸、ならびに/または
iii)ホスホン酸、ならびに/または
iv)ピロリン酸、ならびに/または
v)アミノ酸、特にシステインおよびメチオニンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸、ならびに/または
vi)ルイス酸、特にAlCl
3およびFeCl
3からなる群から選択される少なくとも1つのルイス酸、
ならびに前記ルイス酸の誘導体、からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、
i)ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ハロゲン化ポリオレフィン、セルロースアセテート、および液晶ポリマー、ならびに/または
ii)架橋することができるポリマー、からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
a)前記支持材料が、ポリマー、ゴム、金属、セラミック、およびガラスから作製されるか、もしくはこれらを本質的に備え、かつ/または
b)前記支持材料が、フィルム、織布、もしくは不織布織物であり、かつ/または
c)前記支持材料が、二次元もしくは三次元形状を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
追加のステップ
k)一次成形混合物の内側バルク材料を露出させるステップを含み、
ステップ(k)が、ステップ(d)の後、かつステップ(e)~(i)のいずれかの前に実行され、または
ステップ(k)が、ステップ(d)~(h)のいずれかの後で、かつステップ(i)の前に実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
多孔質ポリマー構造を製造するための、特に請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するための混合物であって、
・1~90重量%、好ましくは5~65重量%、最も好ましくは10~45重量%の1つ以上のポリマーと、
・1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの一次粒径を有する0,5~95重量%、好ましくは20~90重量%、最も好ましくは40~85重量%の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子と、
・0~70重量%、好ましくは0~40重量%の充填剤と、
・0~40重量%の添加剤、好ましくは添加剤なし、を含み、
前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%が、1つ以上の固体酸であり、
それによって、ポリマー:ナノ粒子の比が、重量で3:1~1:10、好ましくは2:1~1:9の範囲であることを特徴とする、混合物。
【請求項13】
請求項12に記載の混合物を製造するための部分のキットであって、第1の部分が、1つ以上のタイプの塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を備え、前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%が、1つ以上の固体酸であり、第2の部分が、1つ以上のポリマーを備え、好ましくは第1の部分が、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、添加剤、充填剤を備え、第2の部分が、ポリマー、添加剤、充填剤を備える、部分のキット。
【請求項14】
請求項1~11に記載の方法によって得られる多孔質ポリマー構造、特に膜。
【請求項15】
請求項14に記載の多孔質ポリマー構造であって、それが、
・一定の断面を有する多孔質ポリマー構造の場合、1000μm、好ましくは50nm~400μmの最大壁厚、または
・不均一な断面を有する多孔質ポリマー構造の場合、4000μm、好ましくは800μm~3100μmの最大壁厚、
および/または
・10体積%~95体積%、好ましくは20体積%~90体積%の多孔度、および/または
・1nm~5μm、好ましくは2nm~1μm、最も好ましくは5nm~400nmの細孔径、を特色とすることを特徴とする、多孔質ポリマー構造。
【請求項16】
請求項14または15に記載の多孔質ポリマー構造を備える成形物品、特に請求項13または14に記載の多孔質ポリマー構造を備える成形物品であって、
a)プリーツ付きまたはプリーツなしのフィルタ、または
b)織布もしくは不織布織物、または
c)成型部品、からなる群から選択される、成形物品。
【請求項17】
多孔質ポリマー構造を製造する方法、特に請求項1~11のいずれかに記載の多孔質ポリマー構造を製造する方法における、請求項12に記載の混合物または請求項13に記載の部分のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、多孔質ポリマー構造を製造する方法に関し、第2の態様において、そのような構造を製造するのに好適な混合物に関し、第3の態様において、前記混合物を製造するためのキットに関し、第4の態様において、新規な多孔質ポリマー構造およびそのような構造を備える成形物品に関し、第5の態様において、そのような混合物、構造、および成形物品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質ポリマー膜は、種々の分離プロセス、例えば流体濾過で使用される。そのような多孔質ポリマー膜を製造するための方法は、(i)流体スループット、すなわち高い流体スループットを可能にするために高い多孔度を達成する方法、(ii)保持、すなわち高い流体スループットを維持しながら濾過流体中の粒子状物質の分離をもたらす方法、および(iii)プロセス、すなわち大規模かつ費用効率の高い物質でそのような多孔質ポリマー膜を製造する方法、などの種々の目的を満たさなければならない。後者に関しては、環境および持続可能性の考慮がますます重要になっている。
【0003】
今日、ほとんどの膜は、相分離プロセスまたはテンプレートベースのプロセスによって得られる。例えば、米国特許第4,247,498号は、熱可塑性ポリマーを適切な適合性液体で加熱して、均質な溶液を形成することと、得られた溶液を冷却して、液液相分離を開始することと、続いて前記冷却を継続してポリマーを凝固させ、かつ液体を除去して、微孔性材料を形成することと、を含む均質な三次元セル状構造を有する微孔性ポリマー生成物の調製を開示している。ポリマー、溶媒、および塩テンプレートを含むテンプレートベースの膜製造アプローチもまた、例えば米国特許第5,514,378号、米国特許第8,944,257号、国際公開第2012/097967号、欧州特許第2,178,873号、および欧州特許第2,665,767号における開示から当技術分野で既に知られている。
【0004】
米国特許第第3,062,760号は、モノマーを唯一の原料として、またはその対応するポリマー用の溶媒として使用する多孔質ポリマー構造を調製するためのプロセスが知られている。細孔形成剤は、モノマーまたはモノマー-ポリマー混合物中に分散される。重合は、形成可能な塊を形成するために開始され、これは、後続のステップにおいて明確な形状に形成された後にさらに重合される。最後に、水溶液を使用して細孔形成剤を溶解させる。
【0005】
しかしながら、前述の先行技術は、前記膜を製作するために溶媒、モノマー、共溶媒および/または貧溶媒系を使用するため、環境に優しくない。前記溶媒のリサイクルは、困難であり得、詳細な知識を必要とする。さらに、今日のポリマー膜製造は、そのプロセス(すなわち、転相プロセスの凝固浴)に直接関連するか、または膜後処理のために相当量の水を必要とする。溶媒ベースの膜製造プロセスは、先行するプロセスステップからの残留有機溶媒が、前記水相に完全にまたは部分的に溶解するにつれて、その加工水流を汚染するので、これはさらなる廃棄物の原因となる。
【0006】
有機溶媒を使用しない多孔質ポリマー膜の調製のための方法は、国際公開第02/34819号から知られており、ポリマーおよび粒状無機成分を熱混合して、フィルム形態に成型し、続いてフィルム型を酸性またはアルカリ性溶液に浸漬して溶解させ、したがって粒状無機成分を除去する。前記方法は、フィルムまたは繊維上に直接層状にした、防水性およびガス透過性を有するポリマー膜の調製を意図している。
【0007】
欧州特許第0477689号は、濾過での使用に好適な多孔質ポリスルホン媒体を調製するためのプロセスを開示している。ポリスルホンを粒子状固体または粒子状固体および水溶性の第2のポリマーとブレンドし、そのブレンドを所望の形状に形成し、ポリスルホンが不溶性である溶媒に浸漬して、可溶性ポリマーおよび粒子状固体をフィルタから浸出させ、それによって細孔を残す。
【0008】
しかしながら、上述のプロセスは、テンプレート除去に使用される溶媒の拡散制限のために膜厚が増加するにつれてテンプレート溶解がますます困難になるので、高い多孔度を有する比較的厚い多孔質ポリマー構造の製造には好適ではない。ポリマーが細孔形成テンプレートとして使用される場合、完全な溶解を達成することは特に困難であり、または時間がかかる。テンプレートの除去は、そのような押出物の表面またはその付近の細孔が、較正に起因するスキン形成、すなわちかなり閉じた細孔構造に起因して溶媒にとって容易にアクセスできないという事実によってさらに妨げられる。較正は、典型的には、押出材料を所望の製品寸法に固定するために押出機の下流のユニットによって実行される。結果として、得られる多孔質ポリマー膜は、スループットの低下を特色とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、先行技術のこれらおよび他の欠点を克服すること、特に、いかなる有機溶媒の使用にも基づかず、かつ信頼性があり、費用対効果が高く、迅速であり、業界における既存の製造プロセスに適合性である、多孔質ポリマー構造を製造する改善された方法を提供することである。さらなる目的は、液体および/または空気精製のための通気性織物材料またはフィルタなどの高度な用途に好適な多孔質ポリマー構造、特に膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、多孔質ポリマー構造を製造する方法、前記構造を製造するための混合物、前記混合物を提供するためのキット、多孔質ポリマー膜、成形物品、および独立請求項に従う多孔質ポリマー構造を製造する方法における混合物またはキットの使用によって達成される。好ましい実施形態は、本明細書および従属請求項に開示されている。
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。本明細書で提供/開示されるような様々な実施形態、選好、および範囲は、任意に組み合わせ得ることが理解される。本明細書で特定されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれることがさらに理解される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、1~5000nm、好ましくは2~1000nm、最も好ましくは5~400nmの細孔径を有する多孔質ポリマー構造、特に膜を製造する方法は、(a)1~90重量%の1つ以上のポリマーおよび/またはポリマーのオリゴマー前駆体、0,5~95重量%の1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、0~70重量%の1つ以上の充填剤、ならびに0~40重量%の1つ以上の添加剤を含む混合物を提供するステップであって、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%が、1つ以上の固体酸であり、ポリマー対粒子比が、重量で3:1~1:10の範囲である、ステップと、(b)任意選択で、前記混合物の水分含有量を適合させるステップと、(c)任意選択で、前記混合物を均質化して、ブレンドを形成するステップと、(d)前記ブレンドを一次成形するステップと、(e)任意選択で、基材を前記ブレンドでコーティングするステップと、(f)任意選択で、得られた材料を乾燥および/または冷却ステップに供するステップと、(g)任意選択で、このようにして得られた材料をさらなる再成形および/または加工に供するステップと、(h)任意選択で、このようにして得られた材料を重合または架橋ステップに供するステップと、(i)前記1つ以上の塩粒子を非有機溶媒で除去するステップ、好ましくは、非有機溶媒に前記塩粒子を溶解することによって前記1つ以上の塩粒子を除去するステップと、(j)任意選択で、得られた多孔質ポリマー構造を前記基材から除去するステップと、を含む。
【0013】
驚くべきことに、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部を1つ以上の固体酸で置き換えることによって、テンプレートの除去を有意に加速できることが分かった。これにより、得られる膜の良好なスループットおよび保持特性を維持しながら、所与の生産速度でより厚い多孔質ポリマー構造を生産することが可能になる。当然、本発明によれば、使用されるナノ粒子および/またはマイクロ粒子の量全体が1つ以上の固体酸で置き換えられることが考えられる。また、粒子状塩の使用は、一方では構造中に好適な細孔を提供し、他方では改善された製造速度を提供する改善されたプロセスを提供することは驚くべきことであった。当業者は、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子が溶融ポリマーによって個々にコーティングされ、したがってテンプレート溶解から保護されると予想するため、これは予想外である。
【0014】
先行技術は、ポリマー、有機溶媒ならびに/または塩ナノ粒子および/もしくはマイクロ粒子の組み合わせを出発材料として使用するが、本発明は、いかなる有機溶媒も使用せずに、ポリマーならびに塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子のみ、すなわち1つ以上の固体酸を含むものを出発材料として使用する。これは、溶媒駆動プロセスの環境負荷が増大しており、特に非常に懸念される物質(SVHC)に該当する溶媒(例えば、とりわけ、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン)に対するそれらの使用がますます制限されるため、有利であると考えられる。
【0015】
有機溶媒による水の汚染は、本明細書に記載の製造プロセスにおける有機溶媒の欠如に起因する要因ではないので、記載のプロセスは、プロセス水の使用に関して有利であると考えられるとも思われる。
【0016】
以下に記載される製造方法は、実質的に無制限のサイズの多孔質材料を提供する。製造ステップ(a)~(j)は、材料(使用される設備を除く)のサイズに関して制限を与えないため、長さ、幅、および厚さに関して大きなシート材料が得られる。例えば、本発明はまた、多孔質ポリマー構造が100cm2を超える、好ましくは400cm2を超える面積を有する、本明細書に開示される方法を提供する。
【0017】
また、前記製造プロセスは、個々のステップが既に知られており、業界で使用されているため、有利であると考えられる。さらに、本明細書に記載のプロセスは、連続プロセスで実施され得、これは、生産プロセス全体の速度ならびに効率および生産コストに有益な効果を有する。
【0018】
特に明記しない限り、以下の定義が本明細書に適用される。
本明細書に記載の材料の「多孔度」は、全材料の細孔の体積百分率(体積%)である。多孔度は、見かけの材料密度の測定、BET分析、または顕微鏡画像から、多孔度測定によって決定することができる。異なる方法によって得られた値の間に不一致がある場合、ISO 15901-2によるポロシメトリーによって得られた値が適用される。本明細書に記載の本発明に関して、細孔構造は、本質的に開孔構造である。
【0019】
本明細書に記載の材料の「透過性」は、材料の相互接続された細孔を通る流体(すなわち、液体媒体または気体媒体)のフラックスとして定義される。透過性は、適用された圧力で所定の時間に多孔質構造の所定の領域を通過する液体または気体の体積を測定することによって決定することができる。このフラックスの典型的な尺度は、1平方センチメートル当たりのミリリットル、1バールおよび1分間当たりのミリリットル(ml/cm2*バール*分)である。
【0020】
本明細書で使用される「ナノ粒子およびマイクロ粒子」という用語は、結晶性、半結晶性、または非晶質材料を含む。そのような粒子は、サブミクロンサイズ範囲~ミクロン範囲の直径を有する。一次粒径は、好ましくは1~50000nmである。一次粒径を決定するための好適な方法は、Limbachら(Environmental Science&Technology,2005.39(23):p.9370-9376)によって見ることができる。塩ナノ粒子およびマイクロ粒子は、高温気相プロセス(火炎合成、レーザプロセス、およびプラズマプロセスなど)、ならびに液相化学的方法(沈殿およびゾル-ゲルプロセスなど)を含む調製方法の範囲から得られ得る。
【0021】
本明細書で使用される「固体酸」という用語は、ポリマーおよび粒子を含む混合物の一次成形に使用される温度で固体であり、蒸留水に添加した場合にpHの低下を引き起こす化合物を指す。本発明に従って使用することができる固体酸は、水の非存在下で、1つ以上のポリマーおよび1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を含む混合物の一次成形中の条件下で本質的に反応しない。特に、使用される固体酸は、50℃を超える、好ましくは110℃を超える、最も好ましくは170℃を超える融点を有する。
【0022】
本明細書で使用される「一次成形」(ドイツ語の「Urformen」)という用語は、凝集力を作り出すことによって形状のない材料から固体を製造することを指す(DIN 8580)。形状のない材料は、粉末、繊維、チップ、顆粒、溶液、融液などのような形状が定義されていない任意の出発材料である。ポリマーの一次成形は、製品の形態およびそのさらなる加工、すなわち、成形、切断、カッティング、接合によってさらに加工される一次成形によって製造された製品、および完成した構成要素または最終製品の形態および寸法を本質的に有する一次成形によって生産された製品に関して、2つのグループに分けられ得る。後者の場合、そのような製品の形状は、本質的に製品の目的に対応する。
【0023】
本明細書に記載の材料の「比表面積」は、ポリマー質量の量当たりの全空気-ポリマー界面面積である。この表面積は、BET法(Janssenら、Journal of Applied Polymer Science 52,1913,1994による)を使用して、ガス分子、例えば窒素分子の物理的吸着によって決定され得る。測定の基本原理は、表面積の大きい材料は、その表面上により多くの分子の窒素を吸着できるということである(分子単層を想定)。
【0024】
本明細書に記載の「洗浄溶媒」は、前記非有機溶媒への溶解によってポリマーマトリックスから塩粒子を除去するために使用される非有機溶媒(例えば水)である。洗浄溶媒は、本明細書に記載の製造プロセスで使用されるポリマーを溶解しないことを特徴とする。さらに、洗浄溶媒は、本明細書に記載の方法で使用されることが好ましいが、必ずしも液体凝集状態で使用される必要はない。
【0025】
本発明の第1の態様は、以下でさらに詳細に説明され、それによって、プロセスステップが最初に説明され、好適な材料が後で説明される。
【0026】
ステップ(a):塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、ポリマーおよび/またはそのオリゴマー前駆体、ならびに任意選択で、添加剤および/または充填剤の混合物が最初に提供される。ポリマー含有量は、1~90重量%、好ましくは5~65重量%、最も好ましくは10~45重量%である。塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の含有量は、0,5~95重量%、好ましくは20~90重量%、最も好ましくは40~85重量%である。充填剤の含有量は、0~70重量%、好ましくは0~40重量%であり、添加剤の含有量は、0~40重量%である。好ましくは、添加剤は、混合物に添加されない。これらの出発材料を粉末形態で組み合わせることが特に好適であることが分かった。このようにして、混合物の構成成分を激しく撹拌することによって完全な混合を達成することができる。1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%は、1つ以上の固体酸である。ポリマー:粒子の比(重量%)は、3:1~1:10、好ましくは2:1~1:9の範囲である。そのような比較的多量の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、製造された多孔質ポリマー構造内に適正な細孔形成を確実にする。理論に束縛されるものではないが、より少ない量では相互接続ネックを提供しないと思われる。
【0027】
ステップ(b):混合物の含水量は、任意選択で、異なるポリマーの異なる吸湿挙動を説明するように適合される。本明細書で使用される「適合させる」という用語は、混合物の水分含有量が測定され、目標値に調整されることを意味する。
【0028】
ステップ(c):任意選択で、同じ混合物をさらに均質化して均質なブレンドを得る。このプロセスステップは、後続のステップ(d)の一部とすることができる。均質化は、高温、すなわち混合物のガラス転移温度より高い温度で、ならびに/またはポリマーの分解およびブレンド特性の劣化をそれぞれ回避するための不活性条件下で実行することができる。混合物の均質化は、塩粒子がポリマーマトリックス全体に均一に分布し、その結果、構造中の細孔も均一に分布するという利点をもたらす。
【0029】
ステップ(d):ステップ(c)のブレンドは、一次成形されており、すなわち、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の混合物を含むブレンド、すなわち、1つ以上の固体酸を含むブレンド、ならびに形状のない状態のポリマーには、初期形態が与えられる。均質化ステップ(c)および一次成形ステップ(d)は、それぞれ1つの複合ステップで一致するかまたは起こり得ることが理解される。
【0030】
ステップ(e):任意選択で、ブレンドは、とりわけ押出、浸漬コーティング、または鋳造などの当分野で知られた好適なコーティング方法によって基材上に塗布することができる。これにより、ポリマーマトリックス(すなわち、ポリマーと塩との二連続構造化ネットワーク)中に塩粒子のパーコレーティングネットワークを含む、すなわち1つ以上の固体酸を含む基材支持コーティングが得られる。基材のコーティングは、前記基材が支持材料として作用し、形成される多孔質ポリマー構造の予備的または最終的な形状を決定し得るという利点を有する。
【0031】
ステップ(f):その後、コーティングされた材料は、乾燥または冷却ステップに供され得る。このようにして、物理的固化材料または熱可塑性材料の寸法安定性を達成することができる。
【0032】
ステップ(g):また、ステップ(e)から得られた材料は、さらなる再成形およびまたは加工ステップに供され得る。これらのステップは、材料の厚さを適合させること、および/または前記材料をさらなる複合材に接合することを意図している。好適な方法は、当分野で知られており、積層法、プリーツ法、またはポストカレンダー加工が含まれる。
【0033】
ステップ(h):ステップ(e)のコーティングされた材料は、重合および/または架橋ステップに供され得る。このステップは、任意選択であり、適切な出発材料、特に、任意選択で開始剤の存在下で重合され得るオリゴマーおよび/またはモノマーが使用される場合(重合)、またはポリマーが、任意選択で、架橋剤の存在下で架橋され得る基を含む場合に適用され得る(架橋ステップ)。
【0034】
ステップ(i):そのような複合材中の連続塩相、すなわち1つ以上の固体酸を含む塩相は、溶解し、基材上に多孔質ポリマー構造をもたらす。特に、水または酸性水溶液などの水性溶媒が好適である。洗浄溶媒の選定は、特に、使用される塩のタイプに依存する。ステップ(i)における洗浄溶媒は、ポリマーを溶解することなく塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の溶解を確実にするように選択される。
【0035】
ステップ(j):基材は、任意選択で、自立多孔質ポリマー構造を得るために、例えば剥離によって多孔質材料から除去されてもよく、または別の基材に転写されてもよい。この除去ステップは、洗浄ステップ(i)の後または洗浄ステップ(i)の前に(以下にさらに概説するように)起こり得る。ステップ(j)は、それ自体知られたプロセスを使用して実行され得る。除去ステップ(j)は、基材を除去して未支持の多孔質材料を得るか、または多孔質材料を別の支持材料に転写してコーティングされた物品を得ることを目的とする。
【0036】
代替的な実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法を提供し、前記ステップ(j)は、
図1において右側に示すように、任意のステップ(f)~(i)の前に実行される。
【0037】
例えば、本発明はまた、(a)本明細書に記載されるように、1つ以上の固体の混合物、すなわち1つ以上の固体酸を含む混合物を提供するステップと、(b)任意選択で、前記混合物の水分含有量を適合させるステップと、(c)任意選択で、前記混合物を均質化して、ブレンドを形成するステップと、(d)前記ブレンドを一次成形するステップと、(e)任意選択で、基材を前記ブレンドでコーティングするステップと、(f)任意選択で、得られた材料を乾燥および/または冷却ステップに供するステップと、(g)任意選択で、このようにして得られた材料をさらなる再成形および/または加工に供するステップと、(h)任意選択で、このようにして得られた材料を重合または架橋ステップに供するステップと、(j)得られた材料を前記基材から除去するステップと、(i)溶解ステップによって前記1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を除去し、それによって多孔質ポリマー構造を得るステップと、を含む多孔質ポリマー構造を製造する方法に関する。
【0038】
好適な塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の製造は、当分野で知られている。広義には、任意の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、本発明の混合物に使用され得る。好適な塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、広範囲の知られた塩、特に金属塩、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0039】
好ましくは、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、酸化物、炭酸塩(炭酸水素塩を含む)、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、およびリン酸塩、好ましくは炭酸塩または酸化物からなる群から選択される。例には、CaCO3、BaCO3、SrCO3、Na2CO3、K2CO3、NaCl、ZnO、CaOが含まれる。
【0040】
好ましくは、1つ以上の固体酸は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、アミノ酸、ルイス酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0041】
カルボン酸またはカルボン酸の誘導体のクラスに属し、本明細書に記載の本発明において特に好ましく使用することができる固体酸の例は、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、および/またはエチレンジアミン四酢酸である。
【0042】
スルホン酸またはスルホン酸の誘導体のクラスに属し、本明細書に記載の本発明において特に好ましく使用することができる固体酸の例は、スルファミン酸および/または2-アミノエタンスルホン酸である。
【0043】
アミノ酸のクラスに属し、本明細書に記載の本発明において特に好ましく使用することができる固体酸の例は、システインおよび/またはメチオニンである。
【0044】
ルイス酸のクラスに属し、本明細書に記載の本発明において特に好ましく使用することができる固体酸の例は、ホウ酸、AlCl3、および/またはFeCl3である。
【0045】
本明細書に記載の本発明において特に好ましく使用することができる固体酸のさらなる例は、酸コーティングされたナノ粒子および/またはマイクロ粒子である。
【0046】
好ましくは、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%は、1つ以上の固体酸で置き換えられる。特に好ましくは、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%は、1つ以上の固体酸で置き換えられる。
【0047】
好ましくは、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの粒径を有する。
【0048】
塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子(サイズおよび量)の好適な選択によって、ならびにプロセスパラメータ(コーティング厚さ、乾燥時間など)の選択によって、多孔度および細孔径分布は、広範囲にわたって変動し得る。
【0049】
好ましくは、塩は、ステップ(a)の前に別個のプロセスで調製される。したがって、本発明はまた、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子がその場で調製されない、本明細書に記載の方法に関する。
【0050】
予め製造された塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を使用することが有利であるが、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子のその場形成は、あまり好ましくないことが分かった。
【0051】
好ましくは、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、炭酸塩(炭酸水素塩を含む)および酸化物からなる群から選択され、製造方法は、連続的に実行される。驚くべきことに、そのような塩を出発材料として使用する場合、多孔質ポリマー構造の連続製造プロセスを実現できることが分かった。これは、水溶液中、特に酸性溶液中での前記塩の特に迅速な溶解および完全な除去に起因し得る。
【0052】
さらなる実施形態では、洗浄ステップ(i)が繰り返される。
このようにして、必要に応じて、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の完全な除去を達成することができる。したがって、ステップ(i)はまた、複数回の洗浄および乾燥を含む。多段階プロトコルを使用する場合、同じまたは異なる洗浄溶媒のいずれか、例えば最初に希釈した酸水溶液、続いて水を使用してもよい。
【0053】
好適なポリマーには、上記の洗浄溶媒に可溶性ではなく、非晶質ポリマー、半結晶性ポリマー、架橋性ポリマー、重合性オリゴマー、およびそれらの組み合わせなどの広範囲の知られたポリマーから選択され得るポリマーが含まれる。
【0054】
したがって、好適なポリマーには、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリアリレート、ポリウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリマー、セルロースアセテート、およびポリエーテルケトン、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が含まれる。本発明は、コポリマー、ポリマーの混合物(「ポリマーブレンド」)、ならびにそれらの化学修飾ポリマー、例えばスルホン化、アミノ化、およびヒドロキシル化によって修飾されたポリマーの使用も含む。
【0055】
好ましくは、本明細書に記載の方法で使用されるポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ハロゲン化ポリオレフィン、酢酸セルロース、および液晶ポリマーからなる群から選択される。
【0056】
任意選択で、前記ポリマーは、重合することができるオリゴマーまたは架橋することができるポリマーからなる群から選択される。
【0057】
オリゴマーの使用は、特に基材が複雑な形状を特色とする場合、または基材の完全な被覆が望まれる場合により低い粘度を与え、基材のコーティングを容易にすることができる。架橋は、それぞれ基材から除去後のコーティングおよび/または自立多孔質ポリマー構造の耐久性を高めることができる。
【0058】
好適な添加剤は、広範囲の知られた添加剤およびそれらの混合物から選択され得、当分野で知られている。特に、添加剤は、界面活性剤、重合開始剤、安定剤、架橋剤、湿潤剤からなる群から選択され得る。
【0059】
好適な充填剤は、広範囲の知られた添加剤およびそれらの混合物から選択され得、当分野で知られている。特に、充填剤は、引張強度、靭性、耐熱性、色、透明度、および他の特性に影響を及ぼすために、ガラス、繊維、または鉱物からなる群から選択され得る。塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子とは対照的に、充填剤は、溶解ステップ(i)によって除去されず、多孔質ポリマー構造内に留まる。
【0060】
ポリマー樹脂に充填剤を添加することにより、特定の特性(例えば、機械的特性)を改善することができ、コストを削減することができる。そのような改善は、引張強度、靭性、導電性、または耐熱性の増加からなり得るが、これらに限定されない。
【0061】
好適な基材は、広範囲の知られた基材から選択され得る。基材は、製造プロセスに適合性である任意の支持体であり得る。コーティングが製造中に基材に付着し、製造後に除去することができるとさらに有益である。
【0062】
好ましくは、支持材料は、ポリマー(好ましくは半結晶性または結晶性)、ゴム、金属、セラミック、およびガラスからなる群から選択される。あるいは、支持材料は、フィルム、織布、または不織布織物からなる群から選択される。いずれの場合も、支持材料は、二次元または三次元形状を有することができ、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。
【0063】
好ましい実施形態では、ステップ(d)における一次成形は、好ましくは一定の断面を有する連続構造を形成するために、ダイを通して前記混合物を押し出すことによって実行される。このようにして、とりわけ、平膜、シート、単管、多穴管、またはハニカム構造を得ることができる。
【0064】
「シート材料」または「多孔質箔」という用語は、材料が、材料の厚さよりも少なくとも1桁大きい(好ましくは2桁大きい)長さおよび幅を有することを示す。そのようなフィルムおよびシートは、本発明による多孔質ポリマー材料のみからなる。
【0065】
代替的な実施形態では、ステップ(d)における一次成形は、好ましくはフィルムおよびシート以外の形状を有する部分を形成するために、前記混合物を鋳造することによって実行される。特に、そのような部分は、異なる特性および/または不均一な断面を有する複数の材料を含むことができる。好適な鋳造方法は、射出成形などの当分野で知られている。
【0066】
「不均一な断面」という用語は、部分の断面プロファイルが前記断面を横切る方向に変動すること、および/または多孔質ポリマー構造自体の断面厚さが前記断面を横切る方向に変動することを示す。
【0067】
好ましくは、ステップ(a)~(j)のうちの1つ以上、好ましくはすべてのステップ(a)~(j)が連続的に実行される。
【0068】
本明細書で使用される「連続的に実行される」という用語は、中断することなく材料を製造、生産、または加工するために使用されるフロー生産方法を指し、すなわち、加工されている材料は、連続的に動いており、化学反応を受けるか、または機械的もしくは熱処理に供される。連続加工は、バッチ生産と対比される。
【0069】
好ましくは、コーティングステップ(e)は、噴霧、ロールツーロールプロセスからなる群から選択される。
【0070】
本明細書に開示される方法の少なくともいくつかのステップを連続プロセスに適合させることにより、多孔質ポリマー構造の製造を迅速かつ費用効果が高いように設計することができる。
【0071】
一次成形混合物の表面は、実質的に閉じた構造を特色とする、すなわち、多孔質ポリマー構造の内部をその外部に接続する細孔のサイズは、バルク材料に見られる細孔サイズと比較して著しく小さいことが分かった。表面のこの閉じた細孔構造は、一次成形中の混合物の較正によるものであり、かつ/または一次成形材料を輸送するために使用され、多孔質ポリマー構造と前記較正もしくは輸送ユニットとの間の界面に付随して形成されるローラなどの物体との混合物の接触によるものである。
【0072】
好ましくは、本明細書に開示される方法は、一次成形混合物の内部バルク材料を露出させる追加のステップ(k)を含む。この実施形態では、ステップ(k)は、ステップ(d)の後、かつステップ(e)~(i)のいずれかの前に実行される。あるいは、ステップ(k)は、ステップ(d)~(h)のいずれかの後、かつステップ(i)の前に実行される。
【0073】
この内部多孔質構造の露出は、例えば、互いに対して移動する2つの冷却ローラへの付着によって押出シートを2等分に分割することによって達成することができる。後でより詳細に説明するように、シート内部のまだ温かい、したがって成形可能な材料は、結果的に引き裂かれて開く。このようにして得られた多孔質ポリマー構造は、一方の面が他方の面よりも開いた構造を有する、すなわち膜が一方の面にかなり閉じた細孔構造を有し、反対側の面に特に開いた細孔構造を有する非対称の長手方向断面を有するという事実を特徴とする。
【0074】
本発明は、第2の態様において、本明細書に開示される方法に従って多孔質ポリマー構造を製造するのに有用な中間体、すなわち混合物に関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明するものとする。
【0075】
好適な混合物は、知られた技術を使用して上記の出発材料から調製され得る。
好ましい実施形態では、多孔質ポリマー構造を製造するための混合物、特に本明細書に記載の方法で使用するための混合物は、1~90重量%、好ましくは5~65重量%、最も好ましくは10~45重量%のポリマー、1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの一次粒径を有する0.5~95重量%、好ましくは20~90重量%、最も好ましくは40~85重量%の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、0~70重量%、好ましくは0~40重量%の充填剤、ならびに0~40重量%の本明細書で定義される添加剤を含み、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%は、1つ以上の固体酸であり、それによって、ポリマー対ナノ粒子比は、3:1~1:10(重量%)、好ましくは2:1~1:9(重量%)の範囲である。
【0076】
好ましくは、ポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ハロゲン化ポリオレフィン、セルロースアセテート、および液晶ポリマーからなる群から選択される。
【0077】
好ましくは、混合物は、添加剤を含まない。
本発明の第3の態様によれば、本発明は、本明細書に記載の混合物を製造するためのキットに関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明するものとする。
【0078】
特定の実施形態では、ポリマーは、混合物の他の部分と反応することができることが分かった。それにもかかわらず、そのような混合物は、本発明の方法に好適である。したがって、本発明は、本明細書に記載の混合物および部分のキットの両方に関し、前記部分のキットは、少なくとも2つの部分を含み、第1の部分は、1つ以上のタイプの塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を含み、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%は、1つ以上の固体酸であり、第2の部分は、1つ以上のポリマーを含む。
【0079】
好ましくは、本明細書に開示される本発明による部分のキットは、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を含む第1の部分を含み、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部、好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の1~100重量%、より好ましくは1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の40~85重量%は、本明細書に記載の1つ以上の固体酸、添加剤、および充填剤であり、第2の部分は、本明細書に記載のポリマー、添加剤、および充填剤を含む。
【0080】
本発明は、第4の態様において、新規な多孔質ポリマー構造、特に膜、およびそのような多孔質ポリマー構造を含む成形物品に関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明するものとする。
【0081】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示される方法によって得られる多孔質ポリマー構造、特に膜に関する。
【0082】
好ましい実施形態では、本発明による多孔質ポリマー構造は、一定の断面を有する構造の場合、1000μm、好ましくは50nm~400μmの最大壁厚、もしくは不均一な断面を有する部分の場合、4000μm、好ましくは800μm~3100μmの最大壁厚、ならびに/または10体積%~95体積%、好ましくは20体積%~90体積%の多孔度、ならびに/または1nm~5μm、好ましくは2nm~1μm、最も好ましくは5nm~400nmの細孔径を特色とする。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明の多孔質ポリマー構造は、10~95%、好ましくは20~90%を超える多孔度、1nm~5μm、好ましくは2nm~1μm、最も好ましくは5nm~400nmの細孔径を有する。
【0084】
さらなる実施形態では、本発明は、細菌、ウイルス、細胞を含む生物学的材料に対して不透過性であり、かつ/または塩ナノ粒子および/もしくはマイクロ粒子を含む無機材料に対して不透過性である、本明細書に記載の多孔質ポリマー構造に関する。
【0085】
さらなる実施形態では、本発明は、液体(水を含む)、気体(空気を含む)、ならびに溶解材料(金属イオンおよびタンパク質を含む)を透過させる本明細書に記載の多孔質ポリマー構造に関する。典型的には、本発明の多孔質ポリマー構造のカットオフは、5~400nmの範囲である。典型的には、本発明の多孔質ポリマー構造の流れは、1バールで0,01~200ml/分/cm2、好ましくは1バールで0,1~10ml/分/cm2の範囲である。
【0086】
上記で概説したように、多種多様なポリマーを本発明の多孔質ポリマー構造に使用することができる。現在知られた多孔質ポリマー構造は、好適な材料および/またはその細孔の特徴を考慮して制限されるので、これは有利であると考えられる。好適なポリマーは、有機溶媒に可溶性のポリマーの群から選択され得、ポリエステル;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリエーテル;ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンスルホン(PPSU);ポリカーボネート(PC);ポリメタクリレート(PMMA)などのポリアクリレート;ポリスチレン(PS);ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリシロキサン;ポリイミド(PI);ポリアミド(PA);ポリエチレン(PE);ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのハロゲン化ポリオレフィン;酢酸セルロース(CA)、および液晶ポリマーが含まれる。
【0087】
上記で概説したように、本発明の材料は、多孔質であり、その細孔のサイズ、タイプ、および量によって特徴付けられる。細孔のサイズおよびタイプおよび量は、出発材料、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子とポリマーとの比、ならびに製造プロセスによって影響され得る。
【0088】
本発明の多孔質ポリマー構造の細孔のサイズ(塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の直径によって定義される)は、ナノスケールまたはマイクロスケールの範囲において、典型的には1~5000nm、好ましくは2~1000nm、より好ましくは5~400nmである。細孔のサイズは、顕微鏡法によって決定され得る。さらに、細孔径分布は、使用される出発材料に基づいて正確に調整され得る。
【0089】
0.01μm~5μmの粒径を有する粒子の細孔径は、0.5μmのサイズを有する試験粒子を例として示す以下の測定プロトコルに従って、蛍光標識されたポリスチレンまたはシリカミクロスフェアから読み出された蛍光によって決定される。
【0090】
(i)チャレンジ溶液の調製:
ThermoFisher(FluoSpheres(商標)、0.5μm、赤色蛍光(580/605)、F8812)またはMicromod Partikeltechnologie GmbH(製品コード:42-00-502sicastar(登録商標)-greenF)から入手可能な蛍光粒子を、脱イオン水中0.01%の体積のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)で希釈して、1:1000の最終粒子濃度を得る。
【0091】
(ii)ビーズ保持試験
分析される多孔質ポリマー構造の試料は、試料をフィルタハウジング中で支持するための織布または不織布支持構造(例えば、Novatexx 2413、Freudenberg)を備えるフィルタハウジング(有効フィルタ面積6~20cm2)に取り付けられる。支持体は、膜上への機械的応力が最小限に抑えられ、したがって膜が圧力下で伸張しないようなものでなければならない。このようにして得られた試験セルに、規定量のチャレンジ溶液を注ぐ。チャレンジ溶液は、膜の固有のバブルポイントが克服されるように、かつチャレンジ溶液の体積全体が試料を通過するまで、1~6バールの空気圧で試料を通過させる。透過液を捨て、手順(ii)を繰り返す。今回、透過液は、分析のために清浄なプラスチック計量皿に収集される。
【0092】
(iii)分析
脱イオン水、チャレンジ溶液、および透過液(各々250μL)をウェルプレート(例えば96ウェルプレート)にピペットで入れる。以下のプロトコルを使用して、プレートリーダー(例えばTecan)を用いて蛍光読み出しを実行する:
●10秒の軌道振盪に続いて、
●蓋なしでの赤色蛍光粒子の上部読み出し値、Ex./Em.540(25)/620(20)nm、「フル」信号、25フラッシュ、20μsの積分時間、1000μmの境界で読み出された塗りつぶされた3×3の正方形を有するウェルから計算されたゲイン、
●蓋なしでの緑色蛍光粒子の上部読み出し値、Ex./Em.465(20)/510(20)nm、「フル」信号、25フラッシュ、20μsの積分時間、1000μmの境界で読み出された塗りつぶされた3×3の正方形を有するウェルから計算されたゲイン。
【0093】
水の読み出し値は、ブランクシグナルを表し、チャレンジ溶液の読み出し値は、フルシグナルを表し、透過液の読み出し値は、サンプルシグナルを表す。
【0094】
次いで、保持率Rを以下のようにウェルから計算する:
【0095】
【0096】
Rが90%より大きい場合、チャレンジ粒子は、濾過され、多孔質ポリマー構造は、チャレンジ粒径より小さい細孔径を有すると言われる(この例では、それは0.5μmである)。
【0097】
(iv)希釈の適応
ブランクの蛍光読み出し値がフルの蛍光読み出し値の10%以上である場合、ブランクがフルの10%未満になるまで希釈を減らすものとする。
【0098】
1nm~100nmの粒径を有する粒子の細孔径は、分子量カットオフ(詳細については、G.Tkacik,S.Michaels,Nature Biotechnology.9:941-946,1991を参照)を決定するために実施されたデキストラン拒絶試験によって決定される:1000kDaの高分子の少なくとも90%を排除することができる膜は、1000kDAのMWCOを有するように分類することができる。異なるデキストラン標準(5kDa、25kDa、80kDa、150kDa、270kDa、410kDa、670kDa、1400kDa)(Fluka、CH)の0.1重量%の混合物を0.1M硝酸ナトリウム(NaNO3と表記)緩衝溶液中で調製した。個々の標準を等量で混合した。混合物を、高真空ポンプ(Edwards Vacuum Ltd)を使用して膜を通して濾過した(順流)。透過液と混合物とを、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して比較した。
【0099】
したがって、例えば、1400kDaのデキストラン標準分子に対して95%の最小阻止を示す膜のMWCOは、1400kDaとして分類することができる。
【0100】
細孔径を決定するための本明細書に記載の2つの方法が異なる結果をもたらす場合、蛍光読み出しによって得られた結果は、決定的である。
【0101】
多孔度、すなわち、構造全体の体積に対する細孔の体積は、広い範囲で変動することができる。本発明の材料は、10~95体積%、好ましくは20~90体積%の範囲の多孔度を示す。多孔度は、多孔度測定によって決定され得る。
【0102】
材料の細孔は、材料が透過性、部分的に透過性または不透過性であるように配置され得る。材料の本質的にすべての細孔が行き止まりを有する場合、材料は、不透過性である。反対に、材料の本質的にすべての細孔が開放端を有する場合、材料は、透過性であると考えられる。その結果、細孔の一部に行き止まりがある場合、材料は、部分的に透過性であると考えられる。
【0103】
有利な実施形態では、本発明は、前記細孔の少なくとも90%が相互接続されている多孔質ポリマー構造を提供する。
【0104】
多種多様な物品は、本発明の多孔質ポリマー構造を装備していてもよく、または本発明の多孔質ポリマー構造を用いて直接生産されてもよい。
【0105】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の多孔質ポリマー構造を含む成形物品に関する。
【0106】
さらなる実施形態では、成形物品は、支持体およびコーティング、好ましくは上部コーティングを備え、前記コーティングは、本明細書で定義される多孔質材料からなる。
【0107】
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得ることが可能または得られる物品に関する。
【0108】
好ましくは、前記成形物品は、プリーツ付きもしくはプリーツなしのフィルタ、織布もしくは不織布織物(前記多孔質ポリマー構造は、前記織物上に積層されている)、または再びフィルタユニットを形成することができる成型部品からなる群から選択される。
【0109】
特に、最終要素への直接成型は、前記プロセスがさらなるプロセスステップ(例えば、その成形物品への多孔質ポリマー構造の取り付けまたは接着がない)の低減を可能にするので、発明的であると考えられる。これもまた、プロセスの全体的な効率にとって有益である。さらに、後取り付けまたは接着ステップを回避することはまた、部品が不良に接合されるリスクを低減する。したがって、本発明は、部品の信頼性を高める可能性がある。
【0110】
本発明は、成形物品(基材およびコーティングを含有する)を溶解ステップ(i)に供するステップと、任意選択で、このようにして得られた成形物品から前記支持体を除去するステップ(ステップj)と、を含む本明細書に記載の多孔質ポリマー構造を製造する方法をさらに提供する。溶解ステップ(i)は、上に概説したように、前記物品からすべてのまたは本質的にすべての塩粒子を除去することを目的とする。除去ステップ(j)は、上で概説したように、基材を除去して、支持されていない多孔質材料を得ること、または多孔質材料を別の支持材料に転写して、コーティングされた物品を得ることを目的とする。
【0111】
本発明は、第5の態様において、本明細書に記載の中間体、多孔質ポリマー構造、および成形物品の使用または使用方法に関する。
【0112】
一実施形態では、本発明は、本発明の多孔質ポリマー構造を製造する方法における、本明細書に記載の混合物または本明細書に記載の部分のキットの使用に関する。
【0113】
代替的な実施形態では、本発明は、フィルタ(例えば、プリーツ付きまたはプリーツなし)装置における、または織布もしくは不織布の一部としての、本明細書に記載の多孔質ポリマー構造の使用に関する。本発明の多孔質ポリマー構造は、フィルタ材料および織物材料を含む多くの用途において有用であることが判明している。
【0114】
本発明の多孔質ポリマー構造は、自己支持性である(「自立」)。したがって、それらは、支持体上の同様の厚さおよび多孔度の知られた多孔質ポリマー構造と区別する。しかしながら、本発明の材料は、適切な支持体をコーティングするのに好適である。特定の支持体から独立してそのような多孔質ポリマー構造を製造する可能性は、それを非常に多用途にする。
【0115】
さらに別の代替的な実施形態では、本発明の多孔質ポリマー構造は、知られた精密濾過、限外濾過、および/またはナノ濾過方法で使用される。精密濾過は、細菌などの100~1000nmの粒子を分離するために使用される。限外濾過は、ウイルス、タンパク質、およびコロイドなどの10nm~100nmの粒子を分離するために使用される。ナノ濾過は、塩、農薬、糖などの1~10nmの粒子を分離するために使用される。
【0116】
一般に、本発明の成形物品は、本明細書で定義される多孔質ポリマー構造の有益な特性を保持し、したがって、そのような多孔質ポリマー構造に適用可能なすべての使用に好適である。これには特に、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過(例えば、滅菌濾過もしくはウイルス濾過、またはタンパク質などの生物学的分子の濃縮)などの本明細書に開示される使用が含まれる。
【0117】
さらなる実施形態では、本発明は、フィルタおよび/または織物材料における、本明細書で定義される物品の使用に関する。
【0118】
本発明の以下のさらなる実施形態が考えられる:
I.1~5000nm、好ましくは2~1000nm、最も好ましくは5~400nmの細孔径を有する多孔質ポリマー構造、特に膜を製造する方法であって、
a)混合物を提供するステップであって、
・1~90重量%、好ましくは5~65重量%、最も好ましくは10~45重量%の1つ以上のポリマーおよび/または前記ポリマーのオリゴマー前駆体、
・1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの一次粒径を有する0,5~95重量%、好ましくは20~90重量%、最も好ましくは40~85重量%の1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、
・0~70重量%、好ましくは0~40重量%の1つ以上の充填剤、
・0~40重量%の1つ以上の添加剤、好ましくは添加剤なし、を含み、
ポリマー:粒子の比が、重量で3:1~1:10、好ましくは2:1~1:9の範囲である、ステップと、
b)任意選択で、前記混合物の水分含有量を適合させるステップと、
c)任意選択で、前記混合物を均質化するステップと、
d)前記混合物を一次成形するステップと、
e)任意選択で、基材を前記混合物でコーティングするステップと、
f)任意選択で、得られた材料を乾燥および/または冷却ステップに供するステップと、
g)任意選択で、このようにして得られた材料をさらなる再成形および/またはさらなる加工に供するステップと、
h)任意選択で、このようにして得られた材料を重合または架橋ステップに供するステップと、
i)前記1つ以上の塩粒子を非有機溶媒で除去するステップ、好ましくは、非有機溶媒に前記塩粒子を溶解することによって前記1つ以上の塩粒子を除去するステップと、
j)任意選択で、得られた多孔質ポリマー構造を前記基材から除去するステップと、を含む、方法。
【0119】
II.前記ステップ(j)が、ステップ(f)~(i)のいずれかの前に実行される、実施形態Iに記載の方法。
【0120】
III.ステップ(d)における前記一次成形することが、好ましくは一定の断面を有する多孔質ポリマー構造を形成するために、ダイを通して前記混合物を押し出すことによって実行される、実施形態IまたはIIに記載の方法。
【0121】
IV.ステップ(d)における前記一次成形することが、好ましくは不均一な断面を有する部分を形成するために、前記混合物を鋳造することによって実行される、実施形態IまたはIIに記載の方法。
【0122】
V.ステップ(a)~(j)のうちの1つ以上が、連続的に実行される、先行する実施形態I~IVのいずれかに記載の方法。
【0123】
VI.前記コーティングステップ(e)が、噴霧、ロールツーロールプロセスからなる群から選択される、先行する実施形態I~Vのいずれかに記載の方法。
【0124】
VII.a)前記ナノ粒子および/またはマイクロ粒子が、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、およびリン酸塩、好ましくは炭酸塩および酸化物、最も好ましくはCaCO3、BaCO3、SrCO3、Na2CO3、K2CO3、NaCl、ZnO、およびCaOからなる群から選択され、かつ/または
b)前記ナノ粒子および/もしくはマイクロ粒子が、1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの粒径を有する、先行する実施形態I~VIのいずれかに記載の方法。
【0125】
VIII.前記ポリマーが、
i)ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ハロゲン化ポリオレフィン、セルロースアセテート、および液晶ポリマー、ならびに/または
ii)架橋することができるポリマー、からなる群から選択される、先行する実施形態I~VIIのいずれかに記載の方法。
【0126】
IX.a)前記支持材料が、ポリマー、ゴム、金属、セラミック、およびガラスから作製されるか、もしくはこれらを本質的に備え、かつ/または
b)前記支持材料が、フィルム、織布、もしくは不織布織物であり、かつ/または
c)前記支持材料が、二次元もしくは三次元形状を有する、先行する実施形態I~VIIIのいずれかに記載の方法。
【0127】
X.多孔質ポリマー構造を製造するための、特に実施形態I~IXのいずれか1つに記載の方法を実行するための混合物であって、
・1~90重量%、好ましくは5~65重量%、最も好ましくは10~45重量%の1つ以上のポリマーと、
・1~50000nm、好ましくは5~20000nm、最も好ましくは10~10000nmの一次粒径を有する0,5~95重量%、好ましくは20~90重量%、最も好ましくは40~85重量%の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子と、
・0~70重量%、好ましくは0~40重量%の充填剤と、
・0~40重量%の添加剤、好ましくは添加剤なし、を含み、それによって、ポリマー:ナノ粒子の比が、重量で3:1~1:10、好ましくは2:1~1:9の範囲であることを特徴とする、混合物。
【0128】
XI.実施形態Xに記載の混合物を製造するための部分のキットであって、第1の部分が、1つ以上のタイプの塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を備え、第2の部分が、1つ以上のポリマーを備え、好ましくは、第1の部分が、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、添加剤、充填剤を備え、第2の部分が、ポリマー、添加剤、充填剤を備える、部分のキット。
【0129】
XII.実施形態I~IXのいずれか1つに記載の方法によって得られる、多孔質ポリマー構造、特に膜。
【0130】
XIII.実施形態XIIに記載の多孔質ポリマー構造であって、それが、
・一定の断面を有する多孔質ポリマー構造の場合、1000μm、好ましくは50nm~400μmの最大壁厚、または
・不均一な断面を有する多孔質ポリマー構造の場合、4000μm、好ましくは800μm~3100μmの最大壁厚、
および/または
・10体積%~95体積%、好ましくは20体積%~90体積%の多孔度、および/または
・1nm~5μm、好ましくは2nm~1μm、最も好ましくは5nm~400nmの細孔径、を特色とすることを特徴とする、多孔質ポリマー構造。
【0131】
XIV.実施形態XIIまたはXIIIに記載の多孔質ポリマー構造を備える成形物品、特に実施形態XIIまたはXIIIに記載の多孔質ポリマー構造を備える成形物品であって、
a)プリーツ付きもしくはプリーツなしのフィルタ、または
b)織布もしくは不織布織物、または
c)成型部品からなる群から選択される、成形物品。
【0132】
XV.多孔質ポリマー構造を製造する方法、特に実施形態I~IXのいずれかに記載の多孔質ポリマー構造を製造する方法における、実施形態Xに記載の混合物または実施形態XIに記載の部分のキットの使用。
【0133】
本発明を図によってより詳細にさらに説明する。特に明記しない限り、同じまたは同様の要素を指すために類似の参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1】本発明による多孔質ポリマー構造を製造する方法の概略図である。
【
図2】異なるダイを使用することによって得られる多孔質ポリマー構造の変動性の概略図である。
【
図3】本発明によらないポリ(プロピレン)膜のSEM画像である。
【
図4】本発明によるポリ(エチレン)膜のSEM画像である。
【
図5a】一次成形混合物の内部バルク材料を露出させるステップを含む、本明細書に開示される方法の概略図である。
【
図5b】
図5aに記載の方法によって得られたポリ(プロピレン)膜のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0135】
本発明の多孔質ポリマー膜1を製造する方法の一実施形態を
図1における左列に示す。第1のステップ(a)では、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を含有する混合物2が提供され、1つ以上の塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の少なくとも一部は、1つ以上の固体酸であり、ポリマーである。次のステップ(b)では、混合物2の水分含有量を任意選択的に適合させ、構成成分をステップ(c)で完全に混合して、ステップ(d)および(e)で基材3をコーティングするために使用される均一なブレンドを得る。このようにして得られたポリマーおよび塩4の二連続構造化ネットワークは、任意選択で乾燥および/または冷却ステップ(f)に供され、ステップ(g)でさらに再成形および/または加工され得る。任意選択で、コーティング4は、重合または架橋ステップ(h)に供され得る。最後に、ステップ(i)において、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子を洗浄溶媒によってコーティング4から除去して、基材支持多孔質材料5を得る。次いで、ステップ(j)で多孔質ポリマーフィルム5を支持材料3から除去して、膜1を得る。
【0136】
図1における右列は、多孔質ポリマー膜1を製造する本発明の方法の代替的な実施形態を示し、ステップ(j)、すなわち、基材3からの塩/ポリマー複合フィルム4の分離は、ステップ(f)~(i)の前に実行される。したがって、ポリマーおよび塩5の支持されていない「自立」二連続構造化ネットワークが最初に得られ、多孔質膜1を得るためのステップ(i)における塩粒子の溶解がその後に実行される。
【0137】
図2は、異なる一次成形技術を使用する場合の、ポリマー、塩ナノ粒子および/またはマイクロ粒子、ならびに少なくとも1つの固体酸を含む混合物2の一次成形ステップ(d)の変動性を示す。ダイプロセス(d1)および(d2)を使用して、それぞれフラットフィルムまたはチューブなどの一定の断面を有する連続構造を生産することができる。部分が不透過性領域6を含むこと、および/または部分が2つ以上の材料から構成されること、および/または部分が不均一な断面を特色とすることが望ましい場合がある。この状況は、
図2(d3)において、示されている例示的な中空直方体の縁部6が前記直方体の側面とは異なって表されているという事実によって考慮される。そのような構造は、例えば、2K射出成形によって得ることができる。
図2は、プロセスステップ(i)において押出部品または成型部品を溶解して、異なる特性を有する複数の材料を含むフラットフィルム、チューブ、または部品の形態の前記本発明の多孔質膜1を得ることによって、多孔質構造1が形成されることをさらに示す。
【0138】
本発明をさらに説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図して提供されていない。
【0139】
I.出発材料の調製
塩ナノ粒子の調製は、国際公開第2005/087660号に記載されている。炭酸カルシウム(CaCO3として示される)、炭酸バリウム(BaCO3として示される)、炭酸ストロンチウム(SrCO3として示される)、炭酸カリウム(K2CO3として示される)、および炭酸ナトリウム(Na2CO3として示される)ナノ粒子の合成を以下に簡単に記載し、国際公開第2005/087660号に記載されているようなFSP機器が使用される。
【0140】
a)CaCO3ナノ粒子の調製:
2-エチルヘキサン酸中Ca-2-エチルヘキサノエート(Molekula)をテトラヒドロフラン(THF)で希釈して、3.9重量%の最終カルシウム含有量にした。この前駆体を、(9ml/分、HNP Mikrosysteme、マイクロ環状ギアポンプmzr-2900)噴霧ノズルに供給し、酸素(9l/分、PanGas Tech.)によって分散し、予混合メタン-酸素火炎(CH4、1.2l/分、O2、2.2l/分)によって点火する。オフガスを、真空ポンプ(Busch S.A.、スイス)によってガラス繊維フィルタ(Whatman Ltd.、米国)を通して濾過する。得られた粉末をガラス繊維フィルタ上に収集し、スパチュラによって除去する。
【0141】
b)BaCO3ナノ粒子の調製:
2-エチルヘキサン酸中Ba-2-エチルヘキサノエート(AlfaAesar)をテトラヒドロフラン(THF)で希釈して、4.6重量%の最終バリウム含有量にした。前駆体を、(5ml/分、HNP Mikrosysteme、マイクロ環状ギアポンプmzr-2900)噴霧ノズルに供給し、酸素(5l/分、PanGas Tech.)によって分散し、予混合メタン-酸素火炎(CH4、1.2l/分、O2、2.2l/分)によって点火する。オフガスを、真空ポンプ(Busch S.A.、スイス)によってガラス繊維フィルタ(Whatman Ltd.、米国)を通して濾過する。得られた粉末をガラス繊維フィルタ上に収集し、スパチュラによって除去する。
【0142】
c)SrCO3ナノ粒子の調製:2-エチルヘキサン酸(Strem Chemicals)中Sr-2-エチルヘキサノエートをテトラヒドロフラン(THF)で希釈して、4.7重量%の最終ストロンチウム含有量にした。前駆体を、(5ml/分、HNP Mikrosysteme、マイクロ環状ギアポンプmzr-2900)噴霧ノズルに供給し、酸素(5l/分、PanGas Tech.)によって分散し、予混合メタン-酸素火炎(CH4、1.2l/分、O2、2.2l/分)によって点火する。オフガスを、真空ポンプ(Busch S.A.、スイス)によってガラス繊維フィルタ(Whatman Ltd.、米国)を通して濾過する。得られた粉末をガラス繊維フィルタ上に収集し、スパチュラによって除去する。
【0143】
d)K2CO3ナノ粒子の調製:20重量%のK-2-エチルヘキサノエート(AlfaAesar)を2-エチルヘキサン酸に溶解し、テトラヒドロフラン(THF)でさらに希釈して、3.5重量%の最終カリウム含有量にした。前駆体を、(5ml/分、HNP Mikrosysteme、マイクロ環状ギアポンプmzr-2900)噴霧ノズルに供給し、酸素(5l/分、PanGas Tech.)によって分散し、予混合メタン-酸素火炎(CH4、1.2l/分、O2、2.2l/分)によって点火する。オフガスを、真空ポンプ(Busch S.A.、スイス)によってガラス繊維フィルタ(Whatman Ltd.、米国)を通して濾過する。得られた粉末をガラス繊維フィルタ上に収集し、スパチュラによって除去する。
【0144】
e)Na2CO3ナノ粒子の調製:
20重量%のNa-2-エチルヘキサノエート(Aldrich Fine Chemicals)を2-エチルヘキサン酸に溶解し、テトラヒドロフラン(THF)でさらに希釈して、2.4重量%の最終ナトリウム含有量にした。前駆体を、(5ml/分、HNP Mikrosysteme、マイクロ環状ギアポンプmzr-2900)噴霧ノズルに供給し、酸素(5l/分、PanGas Tech.)によって分散し、予混合メタン-酸素火炎(CH4、1.2l/分、O2、2.2l/分)によって点火する。オフガスを、真空ポンプ(Busch S.A.、スイス)によってガラス繊維フィルタ(Whatman Ltd.、米国)を通して濾過する。得られた粉末をガラス繊維フィルタ上に収集し、スパチュラによって除去する。
【0145】
II.ポリマー膜の調製
a)ポリ(プロピレン)膜(本発明によらない)の調製:
30重量%のポリ(プロピレン)樹脂(Aldrich Chemestry、米国)を、ポリマーが完全に溶融するまでセラミックビーカー中で加熱した。ペースト状の糖蜜が形成されるまで、撹拌しながら70重量%のZnO粒子(Hongwu、中国)を添加した。前記糖蜜を、金属ローラを使用して熱間金属板上にキャストして薄フィルムを得た。前記フィルムを5分間放冷した。最後に、塩粒子を1M塩酸(HClと表記)に10分間溶解して、多孔質構造を明らかにする。
【0146】
多孔質構造の形成は、走査型電子顕微鏡(Nanosem450、FEI)によって確認されている。
図3に見られるように、ZnO粒子を塩酸に溶解すると、膜の上側(
図3、左上)および基材に面する下側(
図3、右上)の両方に目に見える多孔度が生じた。見かけの穴径は、使用したZnO粒子のサイズ(50nm~100nm)によるものであり、完全に分散していない粒子、すなわち凝集体は、多孔質材料中により大きな細孔の形成をもたらした。
図3において下の行に示す膜断面は、ポリ(プロピレン)マトリックス中の残留ZnO粒子(左側)および溶解ステップを繰り返した後の相互接続された細孔(右側)を示す。
【0147】
b)本発明によるポリ(エチレン)膜の調製:
33重量%のポリエチレン樹脂(CleanHDPE、Polytechs)を押出機(HAAKE MiniLab)中で180℃、60rpmでサイクルした。押出機中で閉ループモードで作動させながら、33重量%のCaCO3粒子(Solvay、米国)をポリマーに徐々に添加した。押出機中で閉ループモードで作動させながら、33重量%のスルファミン酸を複合体に徐々に添加した。最終複合体を押し出し、プレスして平坦なフィルムを形成した。このフィルムを5分間放冷した。最後に、塩粒子を1M塩酸(HClと表記)に10分間溶解して、多孔質構造を明らかにした。
【0148】
多孔質構造の形成は、走査型電子顕微鏡(Nanosem450、FEI)によって確認されている。
図4に見られるように、CaCO
3粒子を塩酸に溶解すると、膜の上側(
図4、左上)および基材に面する下側(
図4、右上)の両方に目に見える多孔度が生じた。見かけの穴径は、使用したCaCO
3粒子のサイズ(500~1000nm)とよく相関する。
図4において下の行に示す膜断面は、繰り返し洗浄することなく得られた相互接続孔のネットワークを示す。
【0149】
図5aは、一次成形混合物の内部バルク材料を露出させるステップ(k)を含む、本明細書に開示される方法の概略図を示す。この実施形態では、押出7および較正8によるポリマーおよび粒子を含む混合物の一次成形(d)は、比較的閉じた細孔およびその中心に少なくとも部分的に溶融したポリマーを特徴とする固体の上面および下面を有するサンドイッチ状シート9をもたらす。そのような膜はまた、その長手方向断面に関して対称であると考えることもできる。矢印11によって示されるように、反対の回転方向を有する2つのチルドローラ10を押出機7の下流に設置して、押出シート9を2つの部分12に分割し、チルドローラ10の温度は、押出機の出口における最後のゾーンの温度の最大半分に設定する。冷却ローラ10により、材料はそれらの表面に付着し、押出シート9のまだ温かい「液体」中心を開く。冷却し、1M塩酸で塩粒子を除去した後、このようにして得られた2つの膜12は各々、
図5bに示すそれぞれの側の走査型電子顕微鏡画像によって確認されるように、それぞれのローラ側Bではむしろ閉じており、かつ反対側Aではむしろ開いている細孔構造を有する非対称の長手方向断面を有する。膜12の長手方向断面の非対称性は、水性溶媒が特に開孔A側から材料に容易に浸透し、かつ多孔質ポリマー構造を生産することができるという点で、塩粒子の完全な除去を非常に容易にし加速する。
【国際調査報告】