(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(54)【発明の名称】拡縮可能なモジュール式アンテナ配列
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/00 20060101AFI20230314BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20230314BHJP
H01P 5/12 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01Q21/00
H01P5/08 Z
H01P5/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546579
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2021050433
(87)【国際公開番号】W WO2021151648
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515096169
【氏名又は名称】ギャップウェーブス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ、ベンネルグレーン
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス、グスタブソン
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB05
5J021CA02
5J021FA32
5J021HA04
5J021JA08
(57)【要約】
積層された層状構造を有したアンテナ配列(100)。アンテナ配列は、1つ以上の放射要素(111)を含む放射層(110)と、放射層(110)に対して対向した分配層と、を含む。分配層は、1つ以上の放射要素(111)に対して無線周波数信号を分配するように構成されている。分配層は、少なくとも1つの分配層給電部と、分配層と放射層(110)との中間に少なくとも1つの第1導波路を形成するように構成された第1電磁バンドギャップ構造すなわち第1EBG構造を含む。第1EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁放射が、少なくとも1つの第1導波路から、少なくとも1つの分配層給電部と、1つ以上の放射要素(111)と、を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されている。分配層は、複数の分配モジュール(121)と、位置決め構造(122)と、を含み、位置決め構造(122)は、分配モジュール(121)を所定位置に固定するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された層状構造を有したアンテナ配列(100)であって、
1つ以上の放射要素(111)を含む放射層(110)と、
前記放射層(110)に対して対向した分配層(120)と、を含み、
前記分配層(120)は、前記1つ以上の放射要素(111)に対して無線周波数信号を分配するように構成されており、前記分配層(120)は、少なくとも1つの分配層給電部(323)と、前記分配層(120)と前記放射層(110)との中間に少なくとも1つの第1導波路を形成するように構成された第1電磁バンドギャップ構造(324)すなわち第1EBG構造(324)と、を含み、前記第1EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁放射が、前記少なくとも1つの第1導波路から、前記少なくとも1つの分配層給電部(323)と、前記1つ以上の放射要素(111)と、を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されており、
前記分配層は、複数の分配モジュール(121)と、位置決め構造(122)と、を含み、前記位置決め構造(122)は、前記分配モジュール(121)を所定位置に固定するように構成されている、アンテナ配列(100)。
【請求項2】
前記位置決め構造(122)は、フレームを含む、請求項1に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項3】
前記1つ以上の放射要素の、少なくとも1つは、開口を含む、請求項1または2に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項4】
前記第1EBG構造(324)は、突出要素(321)からなる繰り返し構造を含み、前記分配層(120)は、少なくとも1つの導波路リッジ(322)をさらに含み、これにより、前記分配層(120)と前記放射層(110)との中間に少なくとも1つの第1ギャップ導波路を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項5】
前記分配層(120)に対して対向した支持層(130)をさらに含み、前記支持層(130)は、前記位置決め構造(122)および/または前記複数の分配モジュール(121)を支持するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項6】
前記支持層(130)は、プリント回路基板層(131)すなわちPCB層(131)と、シールド層(132)と、を含み、前記PCB層は、少なくとも1つのPCB層給電部(133)を含み、前記PCB層は、前記分配層(120)に対して対向しており、前記シールド層(132)は、前記PCB層に対して対向している、請求項5に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項7】
前記シールド層(132)は、前記シールド層(132)と前記PCB層(131)との中間に少なくとも1つの第2導波路を形成するように構成された第2EBG構造(431)を含み、前記第2EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁放射が、前記少なくとも1つの第2導波路から、前記少なくとも1つのPCB層給電部(133)を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されている、請求項6に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項8】
前記第2EBG構造(431)は、突出要素(432、434)からなる繰り返し構造を含み、前記PCB層は、接地平面と、少なくとも1つの平面伝送線路と、を含み、これにより、前記シールド層(132)と前記PCB層(131)との中間に少なくとも1つの第2ギャップ導波路を形成している、請求項7に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項9】
前記放射層(110)は、複数の放射モジュールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項10】
前記PCB層(131)は、複数のPCBモジュールを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項11】
前記シールド層(132)は、複数のシールドモジュールを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)を含む、電気通信トランシーバまたはレーダトランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ配列に関し、特に、アンテナアレイに関する。アンテナ配列は、例えば、電気通信トランシーバおよびレーダトランシーバでの使用に好適である。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークは、セルラーアクセスネットワークで使用される無線基地局、例えばコアネットワークへのバックホールなどに使用されるマイクロ波無線リンクトランシーバ、および、軌道上の衛星と通信する衛星トランシーバ、などの無線周波数トランシーバを含む。レーダトランシーバは、また、無線周波数(RF)信号を送受信することのために、すなわち電磁信号を送受信することのために、無線周波数トランシーバでもある。
【0003】
例えば、高指向性、ビームステアリング、および/または複数のビーム、に関して、アレイが、放射パターンの成形を高度に制御し得ることにより、トランシーバの放射配列は、多くの場合、アンテナアレイを含む。アンテナアレイは、波長がトランシーバの動作周波数に対応する場合に、通常は1波長未満の離間間隔で配置された複数の放射要素を含む。一般に、アレイ内の放射要素の数が多いほど、放射パターンの制御は、より良好となる。アンテナアレイでは、物理的なスペースが制限されていることが多いため、分配ネットワークまたは給電ネットワークが、設計上でのおよび製造上での、大きな課題となっている。分配ネットワークは、複数の放射要素に対して、1つ以上の無線周波数信号を分配する。
【0004】
電磁バンドギャップ構造すなわちEBG構造に基づく分配ネットワークは、一般に、コンパクトな設計と、低損失と、低漏洩と、寛容な製造交差および組立公差と、を提示する。しかしながら、放射要素の数および動作周波数の、一方または両方が増加するにつれて、EBG構造に関する製造公差が、困難となり始める。この問題は、100個を超える放射要素を含み得るミリ波周波数のアンテナアレイで、特に深刻である。
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、とりわけ、製造公差に対する敏感さを改良することによって高い製造歩留まりを提供するのと同時に、アンテナ配列の効率的かつ便利な組立を可能としつつ、例えば損失の点で高性能を提供する、新たなアンテナ配列を提供することである。
【0006】
この目的は、少なくとも部分的には、積層された層状構造を有したアンテナ配列によって得られる。アンテナ配列は、1つ以上の放射要素を含む放射層と、放射層に対して対向した分配層と、を含む。分配層は、1つ以上の放射要素に対して無線周波数信号を分配するように構成されている。分配層は、少なくとも1つの分配層給電部と、分配層と放射層との中間に少なくとも1つの第1導波路を形成するように構成された第1電磁バンドギャップ構造すなわち第1EBG構造と、を含む。第1EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁的伝搬(すなわち、電磁放射)が、少なくとも1つの第1導波路から、少なくとも1つの分配層給電部と、1つ以上の放射要素と、を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されている。分配層は、複数の分配モジュールと、位置決め構造と、を含む。位置決め構造は、分配モジュールを所定位置に固定するように構成されている。
【0007】
EBG構造は、コンパクトな設計と、低損失と、隣接した導波路どうしの間での低漏洩と、寛容な製造公差および組立公差と、を可能とする。さらに、放射層と分配層との間で、電気的コンタクトが不要である。電気的コンタクトを確認する必要がないため、高精度な組立が不要であることが利点である。しかしながら、放射要素の数および動作周波数の、一方または両方が増加するにつれて、EBG構造に関する製造公差が、困難となり始める。この問題は、100個を超える放射要素を含み得るミリ波周波数のアンテナアレイで、特に深刻である。より具体的には、周波数が増加するにつれて、EBG素子のサイズが小さくなり、放射要素の数が増加するにつれて、EBG素子の数が多くなる。よって、このような分配層を大量生産する時には、歩留まりが悪くなり得る。EBG素子の数が多いほど、また、EBG素子のサイズが小さいほど、歩留まりが悪くなることが多い。歩留まりが悪いという問題点は、分配層が複数の分配モジュールを含むことにより、少なくとも部分的に克服され得る。
【0008】
態様によれば、位置決め構造は、フレームを含む。
【0009】
このようにして、分配モジュールを、フレームによって、確実に所定位置に保持することができる。
【0010】
態様によれば、フレームは、複数のフレームモジュールを含む。
【0011】
有利には、複数のフレームモジュールは、アンテナ配列の組立を容易とする。
【0012】
態様によれば、1つ以上の放射要素の、少なくとも1つは、開口を含む。
【0013】
放射層の開口は、例えば、放射層を貫通して延びるスロット開口であってもよい。開口を含む放射要素は、低損失で製造が容易な放射層を可能とする。
【0014】
態様によれば、第1EBG構造は、突出要素からなる繰り返し構造を含み、分配層は、少なくとも1つの導波路リッジをさらに含む。これにより、少なくとも1つの第1ギャップ導波路が、分配層と放射層との中間に形成される。
【0015】
これは、製造が容易であり、第1導波路内における低損失を提供するとともに、少なくとも1つの第1導波路から、少なくとも1つの分配層給電部と、1つ以上の放射要素と、を通過する方向以外の方向に伝搬する動作周波数帯域内の電磁的伝搬(すなわち、電磁放射)を、大きく減衰させる、EBG構造を可能とする。
【0016】
態様によれば、アンテナ配列は、分配層に対して対向した支持層をさらに含む。支持層は、位置決め構造および/または複数の分配モジュールを支持するように構成されている。このようにして、放射層および分配層は、確実に一緒に固定されてもよい。
【0017】
態様によれば、支持層は、プリント回路基板層すなわちPCB層と、シールド層と、を含む。PCB層は、少なくとも1つのPCB層給電部を含む。PCB層は、分配層に対して対向しており、シールド層は、PCB層に対して対向している。
【0018】
分配層内におけるEBG構造の使用は、PCB層131上のPCB層給電部133から、分配給電部323を介して、少なくとも1つの第1導波路への、移行における高効率での結合を可能とし、これにより、低損失が得られる。
【0019】
態様によれば、シールド層は、シールド層とPCB層との中間に少なくとも1つの第2導波路を形成するように構成された第2EBG構造を含む。第2EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁的伝搬(すなわち、電磁放射)が、少なくとも1つの第2導波路から、少なくとも1つのPCB層給電部を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されている。
【0020】
第2EBG構造は、低損失かつ低漏洩なコンパクトな設計を可能とする、すなわち、例えば隣接した導波路どうしの間における、または隣接したRFICsどうしの間における、望ましくない電磁波伝搬が小さな、コンパクトな設計を可能とする。さらに、第2EBG構造は、アンテナ配列の外部からの電磁放射から、PCB層を遮蔽する。
【0021】
態様によれば、第2EBG構造は、突出要素からなる繰り返し構造を含む。PCB層は、接地平面と、少なくとも1つの平面伝送線路と、を含む。これにより、シールド層とPCB層との中間には、少なくとも1つの第2ギャップ導波路が形成される。
【0022】
突出要素からなる繰り返し構造を含むEBG構造の利点は、上述した通りである。
【0023】
態様によれば、放射層は、複数の放射モジュールを含む。
【0024】
このようにして、放射層の製造歩留まりを、向上させ得る。放射モジュールは、任意選択的に、分配モジュールにサイズを一致させることができ、これは、アンテナ配列の組立を容易とし得る。
【0025】
態様によれば、PCB層は、複数のPCBモジュールを含む。
【0026】
態様によれば、シールド層は、複数のシールドモジュールを含む。
【0027】
このようにして、すべてのモジュールを、分配モジュールに対してサイズを一致させることができる。これは、歩留まりを向上させ得るとともに、アンテナ配列の組立を容易とし得る。
【0028】
態様によれば、アンテナ配列を含む、電気通信トランシーバまたはレーダトランシーバである。
【0029】
一般に、特許請求の範囲において使用されるすべての用語は、本明細書において明示的に別段の定義がない限り、技術分野における通常的な意味に従って解釈されるものとする。「1つの(a)/1つの(an)/その(the)、要素、装置、構成要素、手段、ステップ、等」へのすべての言及は、明示的に別段の記載がない限り、その要素、装置、構成要素、手段、ステップ、等の少なくとも1つの実例を指すものとして、オープンに解釈されるものとする。本発明の更なる特徴、および本発明による利点は、添付の特許請求の範囲を、および以下の説明を、検討することにより、明らかとなるであろう。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の異なる特徴どうしを組み合わせて、以下に説明する実施形態以外の実施形態を作成し得ることは、理解されよう。
【0030】
以下においては、本開示につき、添付図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1Aは、例示的なアンテナ配列に関する分解図である。
【
図1B】
図1Bは、例示的なアンテナ配列に関する分解側面図を概略的に示している。
【
図2】
図2は、組み立てられた例示的なアンテナ配列を示している。
【
図3A】
図3Aは、組み立てられた例示的なアンテナ配列の内部に位置した分配層を示している。
【
図3B】
図3Bは、組み立てられた例示的なアンテナ配列の内部に位置した分配層に関する平面図を示している。
【
図5A】
図5Aは、例示的なアンテナ配列に関する平面図を示している。
【
図5B】
図5Bは、例示的なアンテナ配列に関する断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下においては、本開示の態様につき、添付図面を参照して、より完全に説明する。しかしながら、本明細書で開示する異なるデバイスおよび方法は、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書で記載した態様に限定されるものとして解釈されるべきではない。図面中における同様の符号は、全体を通して同様の構成要素を指す。
【0033】
本明細書で使用する用語は、本開示の態様を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものでない。本明細書で使用した際には、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈が明らかに別段のことを示していない限り、複数形も含むことを意図している。
【0034】
本明細書では、様々なタイプのアンテナ配列を開示する。
図1Aおよび
図1Bは、積層された層状構造を有したアンテナ配列を示している。積層された層状構造は、層と称される複数の平面要素を含む構造である。各平面要素は、2つの側面または2つの面を有しており、厚さと関連付けられる。厚さは、面の寸法と比較して、はるかに小さい、すなわち、層は、平坦なまたはほぼ平坦な要素である。いくつかの態様によれば、層は、矩形または正方形である。しかしながら、円形または楕円形のディスク形状を含めて、より一般的な形状も、また、適用可能である。積層された層状構造は、複数の層が互いの上に配置されているという意味で、積層されている。言い換えれば、層状構造は、サンドイッチ構造として見ることができる。
【0035】
図1Aのアンテナ配列は、複数の放射要素111を有した放射層110を含む。
図1における例示的なアンテナ配列では、放射要素は、スロットアンテナである。スロットアンテナは、開口の一例である。一般に、分配層120(
図1Bに示す)が、複数の放射要素内の、1つ以上の放射要素に対して、1つ以上の無線周波数信号を、分配する。
【0036】
分配層120は、コンパクトな設計と、低損失と、低漏洩と、寛容な製造公差および組立公差を提示する電磁バンドギャップ構造すなわちEBG構造に基づくことができる。しかしながら、放射要素の数および動作周波数の、一方または両方が増加するにつれて、EBG構造に関する製造公差が、困難となり始める。この問題は、100個を超える放射要素を含み得るミリ波周波数のアンテナアレイで、特に深刻である。
【0037】
アンテナ配列におけるEBG構造は、2つの層の中間に少なくとも1つの導波路を形成するように構成されている。EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁的伝搬(すなわち、電磁放射)が、少なくとも1つの導波路を通過しない限りは、層に沿って伝搬しないようにも、構成されている。よって、EBG構造は、隣接した導波路どうしの間にわたって望ましくない電磁的伝搬を阻止するように構成されてもよい。少なくとも1つの導波路は、動作帯域内の電磁信号を、1つ以上の給電部に対して、および/または、1つ以上の放射要素に対して、結合する。EBG構造は、減衰による伝搬を防止する。本明細書では、減衰とは、無線周波数信号などの電磁放射の振幅またはパワーを著しく減少させることとして解釈される。減衰は、好ましくは完全なものであり、その場合、減衰と阻止とは、同等であるけれども、そのような完全な減衰が常に達成可能ではないことは、理解されよう。
【0038】
EBG構造は、磁気導体として機能する表面を形成する。磁気的伝導性表面が電気的伝導性表面に対して対向していて、それら2つの表面が中心周波数の1/4よりも小さな距離で配置されている場合には、すべての平行平板モードが動作周波数帯域では遮断されることのために、理想的なケースでは、その動作周波数帯域内の電磁波は、中間面に沿って伝搬することができない。中心周波数は、動作周波数帯域の中央にある。現実的なシナリオでは、動作周波数帯域内の電磁波は、中間面に沿って長さごとに減衰する。
【0039】
多数のEBG構造が存在する。EBG構造のEBG素子は、
図7A~
図7Dに関連してより詳細に後述するように、1次元、2次元、または3次元における、周期的なパターンで、または準周期的なパターンで、配置される。本明細書では、準周期的なパターンとは、局所的には周期的であるものの、長距離秩序を示さないパターンを意味するとして、解釈される。準周期的なパターンは、1次元、2次元、または3次元で、実現され得る。一例として、準周期的パターンは、EBG素子間隔の10倍未満の長さスケールでは周期的であり得るけれども、EBG素子間隔の100倍を超える長さスケールでは周期的ではない。
【0040】
EBG構造は、少なくとも2つのタイプのEBG素子を含んでもよく、その場合、第1タイプのEBG素子は、導電性材料を含み、第2タイプのEBG素子は、電気絶縁性材料を含む。第1タイプのEBG素子は、銅またはアルミニウムなどの金属から形成されてもよい、あるいは、金または銅などの導電性材料製薄膜によってコーティングされた、PTFEまたはFR-4などの、非導電性材料から形成されてもよい。第1タイプのEBG素子は、また、カーボンナノ構造または導電性ポリマーなどの、金属と同等の電気伝導度を有した材料から形成されてもよい。一例として、第1タイプのEBG素子の電気伝導度は、103シーメンス/メートル(S/m)を超えるものとすることができる。好ましくは、第1タイプのEBG素子の電気伝導度は、105S/mを超える。言い換えれば、第1タイプのEBG素子の電気伝導度は、第1タイプのEBG素子内において電磁放射が電流を誘導し得るよう充分に大きなものであり、第2タイプのEBG素子の電気伝導度は、第2タイプのEBG素子内において電流を誘導し得ないよう充分に小さなものである。第2タイプのEBG素子は、任意選択的に、非導電性ポリマー、真空、または空気、であってもよい。そのようなタイプの非導電性EBG素子の例は、また、FR-4PCB材料、PTFE、プラスチック、ゴム、およびシリコン、を含む。
【0041】
図7A~
図7Dを参照すると、第1タイプのEBG素子および第2タイプのEBG素子は、並進対称(
図7Aにおける701)、回転対称(
図7Bにおける702)、または映進対称(
図7Cにおける対称線703を参照されたい)、あるいは、周期的な、準周期的な、または不規則な、パターン(
図7Dを参照されたい)、のいずれかによって特徴づけられるパターンで配列されてもよい。
【0042】
第2タイプのEBG素子の物理的特性は、また、EBG構造を超えての電磁波伝搬の減衰を得るために必要な寸法を、決定する。したがって、第2タイプの材料が空気とは異なるように選択されている場合には、第1タイプのEBG素子に関する必要な寸法が、変化する。その結果、第1タイプの素子および第2タイプの素子に関する材料選択を変更することによって、小型化されたサイズのアンテナアレイを、得ることができる。有利には、小型化されたサイズのアンテナアレイは、そのような選択から得られてもよい。
【0043】
第1タイプのEBG素子は、いくらかの間隔を空けて周期的なパターンで配列されてもよい。第1タイプのEBG素子どうしの間に位置した空間は、第2タイプの素子を構成している。言い換えれば、第1タイプのEBG素子は、第2タイプのEBG素子と交互に配置されている。第1タイプのEBG素子と第2タイプのEBG素子との交互配置は、1次元で、2次元で、または3次元で、達成することができる。
【0044】
第1タイプのEBG素子または第2タイプのEBG素子の、一方または両方のサイズは、周波数帯域内の電磁放射の、空気中における波長よりも小さい。一例として、中心周波数を、周波数帯域内の中央の周波数として定義すると、EBG素子のサイズは、中心周波数における電磁放射の、空気中における波長の、1/5~1/50である。ここで、EBG素子サイズとは、電磁波が減衰する方向における、例えば、磁気導体として機能する表面に沿った方向における、EBG素子のサイズとして解釈される。一例として、断面が円形の鉛直方向ロッドを含み、電磁放射が水平方向平面内を伝搬するEBG素子の場合には、EBG素子のサイズは、ロッドがなす断面の、長さまたは直径に対応する。
【0045】
図6A、
図6B、および
図6Cは、第1タイプのEBG素子および第2タイプのEBG素子が、EBG構造内においてどのように配置され得るかに関する例を示している。
図6Aに示すタイプのEBG構造601は、導電性基板620上に、導電性突起610を含む。突起610は、任意選択的に、誘電体材料内に封入されたものであってもよい。
図6Aの例では、導電性突起は、第1タイプのEBG素子を構成しており、突起どうしの間の空間は、任意選択的には非導電性材料によって充填されるものであって、第2タイプのEBG素子を構成している。突起610が異なる形状で形成され得ることは、理解されよう。
図6Aは、突起が正方形断面を有している例を示しているけれども、突起は、また、円形、楕円形、矩形、またはより一般的な形状の、断面形状を有して形成されてもよい。
【0046】
また、例えば導電性基板上に円柱状ロッドが設けられ、そのロッドの頂面上に、平坦な導電性の円を有しているようにして、突起をマッシュルーム形状とすることもでき、その場合、円は、ロッドの断面よりも大きい断面を有しているものの、EBG構造内の円どうしの間に、第2タイプのEBG素子のための空間を残すよう、充分に小さなものとされる。このようなマッシュルーム形状の突起は、PCB内に形成されてもよく、その場合、ロッドは、貫通穴を含み、この貫通穴は、導電性材料によって充填されても充填されなくてもよい。
【0047】
突起は、導電性基板から離間する方向に、長さを有している。一般に、第2タイプのEBG素子が空気である場合には、突起の長さは、中心周波数において空気中における波長の1/4に対応する。その場合、突起の頂部に沿った表面は、中心周波数において完全な磁気導体に近いものである。突起の長さが単一周波数で1/4波長であったとしても、このタイプのEBG構造では、EBG構造が導電性表面に対して対向している時には、電磁波が減衰し得る周波数帯域がなおも存在する。非限定的な例では、中心周波数は、15GHzであり、EBG構造と導電性表面との中間を伝搬する10GHz~20GHzという周波数帯域内の電磁波が、減衰する。
【0048】
別の例として、
図6Bに示すタイプのEBG構造602は、内部に空洞630が導入された、導電性材料640からなる単一スラブから構成されている。空洞は、空気によって充填されてもよい、あるいは、非導電性材料によって充填されてもよい。空洞が様々な形状で形成され得ることは、理解されよう。
図6Bは、楕円形断面の穴が形成された例を示しているけれども、穴は、円形、矩形、またはより一般的な断面形状で、形成されてもよい。
図6Bの例では、スラブ640が、第1タイプのEBG素子を構成しており、穴630が、第2タイプのEBG素子を構成している。一般に、長さ(導電性基板から遠ざかる方向における長さ)は、中心周波数における波長の1/4に対応している。
【0049】
図6Cは、例示的な第3タイプのEBG構造603を概略的に示しており、このEBG構造603は、任意選択的にロッドまたはスラブとされる拡張された導電性EBG素子650から構成されており、これらEBG素子650は、ある層内のロッドが直前の層のロッドに対して斜めに配置されている態様で、複数の層へと積層されている。
図6Cの例では、ロッドが、第1タイプのEBG素子を構成しており、それらの間の空間が、第2タイプのEBG素子を構成している。
図6Cの例は、第1タイプのEBG素子と第2タイプのEBG素子との交互配置が3次元的に達成されたEBG構造を示している。
【0050】
上述したように、EBG構造に関する製造公差は、分配層がEBG構造に基づいている積層アンテナ配列の場合、放射要素の数および動作周波数の、一方または両方が増加するにつれて、困難となる。より具体的には、周波数が増加するにつれて、EBG素子のサイズが小さくなり、放射要素の数が増加するにつれて、EBG素子の数が多くなる。一例として、動作周波数が30GHzである場合に、16個×16個の放射要素を有したアンテナアレイ(すなわち、合計で256個の放射要素)のための分配層を製造する時には、EBG構造内における1つ以上のEBG素子の製造欠陥が、無視できない確率で発生する。よって、このような分配層を大量生産する場合には、歩留まりが悪くなり得る。EBG素子の数が多いほど、また、EBG素子のサイズが小さいほど、歩留まりが悪くなることが多い。
【0051】
歩留まりが悪いという問題点は、分配層に複数の分配モジュールを設けることにより、少なくとも部分的に克服し得る。
図1Aの例では、16個×16個の放射要素を有したアンテナアレイのための分配層120は、4つの分配モジュール121を含む。4つのモジュールのそれぞれは、放射要素からなる部分集合内の、1つ以上の放射要素111に対して、1つ以上の無線周波数信号を分配するように構成されている。
図1の例では、放射要素は、開口を含み、複数の開口からなる部分集合は、8個×8個の開口を含む。例えば、歩留まりが放射要素の数に対して指数関数的に減少する場合には、それぞれが8個×8個の放射要素のための、4つの分配モジュール121を製造することは、16個×16個の放射要素のための、単一の分配層を製造することと比較して、より良好な歩留まりを提供する。
【0052】
言い換えれば、本明細書では、積層された層状構造を有したアンテナ配列100を開示する。アンテナ配列は、1つ以上の放射要素111を含む放射層110と、放射層110に対して対向した分配層120と、を含む。分配層120は、1つ以上の放射要素111に対して無線周波数信号を分配するように構成されている。分配層120は、少なくとも1つの分配層給電部323と、分配層120と放射層110との中間に少なくとも1つの第1導波路を形成するように構成された、第1電磁バンドギャップ構造324すなわち第1EBG構造324と、を含む。第1EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁的伝搬(すなわち、電磁放射)が、少なくとも1つの第1導波路から、少なくとも1つの分配層給電部323と、1つ以上の放射要素111と、を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されている。分配層は、複数の分配モジュール121と、位置決め構造122と、を含み、位置決め構造122は、分配モジュール121を所定位置に固定するように構成されている。分配層120は、放射層100に対して直接的に接触して配置される、あるいは、放射層110から距離をおいて配置され、この場合、その距離は、アンテナ配列100の動作中心周波数における波長の1/4より小さい。
【0053】
分配層内でのEBG構造の使用は、導波路の損失が少ないことだけでなく、隣接した導波路内での無線周波数信号どうしの間の干渉が少ないことを提供する。この結果、分配層内でのEBG構造の使用および配置に基づき、より大きな信号対雑音比を維持することができ、有利である。別の利点は、導波路を構成する2つの層どうしの間で、電気的コンタクトが不要であることである。電気的コンタクトを確認する必要がないため、高精度な組立が不要であることが利点である。
【0054】
位置決め構造122は、任意選択的に、フレームを含む。このようにして、分配モジュール121は、フレームによって、確実に所定位置に保持されてもよい。フレームは、位置合わせタップ、固定手段、または同種のもの、によって、分配層を所定位置に保持してもよい。固定手段は、例えば、ボルト、ネジ、リベット、熱ステーキング、接着剤、または同種のもの、とすることができる。また、フレームは、位置合わせタップ、固定手段、または同種のもの、を使用することなく、分配モジュールを所定位置に保持することができる。任意選択的に、放射層も、また、フレームによって所定位置に保持される。これに代えて、またはこれと組み合わせて、分配モジュール121および放射層110は、一緒に取り付けられる。よって、放射層は、位置決め構造122を構成してもよい。
【0055】
アンテナ配列100の例示的な実施形態では、フレーム122は、複数のフレームモジュールを含む。
図1Aの例では、フレームは、2つのフレームモジュールを含む。有利には、複数のフレームモジュールは、アンテナ配列の組立を容易とする。
【0056】
フレーム122は、アンテナ配列100の外周縁まわりにおいて、分配モジュールと係合するように構成されている。フレームは、好ましくは、所定位置において複数のモジュールに対して緊密に適合している。このようにして、モジュールどうしは、最小の遊びで固定される。これは、最終的な遊びがとりわけ損失および信号忠実度の点でアンテナ配列の性能を低下させてしまうことのために、利点である。
【0057】
図1Aの例示的な実施形態では、分配モジュール121は、フレーム122によって、共通の平面内に固定されるように構成されている。このようにして、すべての分配モジュールは、放射層110に対して緊密に、あるいは、放射層から等距離のところに、配置される。好ましくは、分配モジュールは、同じ形状とされている、すなわち、すべての分配モジュールは、アンテナ配列100内において交換可能とされている。これは、ただ1つのタイプの分配モジュールしか必要とされないことのために、製造の観点から、有利である。分配モジュールは、アンテナ配列の合計サイズを拡縮し得る形状であってもよい。異なる拡縮の例は、2個×2個の分配モジュールのアレイを配置することである、あるいは、1個×3個の分配モジュールのアレイを配置することである。
【0058】
分配モジュール121は、好ましくは、アンテナ配列内の所定位置に配置された時には、互いの間に隙間を形成しない、あるいは、互いの間に最小の隙間しか形成しない。このようにして、分配層内における接合型EBG構造を形成することができる。これに代えて、フレーム122は、分配モジュールどうしの間の隙間を埋めるようにして配置される。分配モジュールどうしの間に隙間がないことにより、分配層を通して、動作周波数帯域内の無線周波数信号だけを通過させることができる、少なくとも1つの第1導波路を通して、および少なくとも1つの分配層給電部323を通して、動作周波数帯域内の無線周波数信号だけを通過させることができる。
【0059】
矩形の分配モジュールの例示的な寸法は、5mmという厚さ、ならびに、50mmおよび50mmという側辺、である。しかしながら、分配モジュールは、必ずしも矩形である必要はなく、他の形状も可能であり、例えば、ディスク形状または六角形状のモジュールを形成するための円形セクタも可能である。また、分配層モジュールは、ジグソーパズルの形状を有することもできる。
【0060】
分配モジュールは、鋳造された、成形された、および/または、機械加工された、銅または真鍮などの金属を含んでもよい。金属は、高い電気伝導性を有したコーティングを含んでもよい、例えば、銀または銅によってコーティングされたアルミニウムを含んでもよい、あるいは、銀または銅によってコーティングされた亜鉛を含んでもよい。また、各分配モジュールは、例えばプラスチックを含む足場構造上において金属化することができる。
【0061】
開示するアンテナ配列100における、1つ以上の放射要素111の、少なくとも1つは、開口を含んでもよい。放射層110の開口は、例えば、放射層を貫通して延びるスロット開口であってもよい。スロット開口は、好ましくは矩形であるけれども、正方形、円形、またはより一般的な形状、などの他の形状も可能である。スロット開口は、好ましくは、放射層110のサイズと比較して小さいものとされ、放射層上において平行線状に構成されるけれども、他の構成も可能である。すべての放射要素がスロットを含む場合には、放射層110は、例えば、(例えば銅製の)金属シートを含んでもよい。放射要素の別の例は、ボウタイアンテナである。第3の例として、放射要素は、パッチアンテナであってもよい。有利なことに、ボウタイアンテナもパッチアンテナも、製造が容易である。すべての放射要素がパッチアンテナを含む場合には、放射層110は、例えば、接地平面を有したPCBを含んでもよく、その場合、接地平面は、分配層に対して対向している。他のタイプの放射要素も可能であることは、理解されよう。
【0062】
図2は、組み立てられた例示的なアンテナ配列100の詳細を示している。各分配モジュール121は、任意選択的に、1つ以上の位置合わせ部材211を含む。1つ以上の位置合わせ部材は、他のモジュールに対して、および放射要素111に対して、モジュールを位置合わせするように構成されている。分配モジュール121上の1つ以上の位置合わせ部材は、1つ以上の対応する位置合わせ部材と係合するように構成されている。位置合わせ部材と対応する位置合わせ部材とは、例えば、ピンおよび穴であってもよい。1つ以上の対応する位置合わせ部材は、隣接した分配モジュール上に配置されてもよく、放射層110上に配置されてもよく、フレーム122上に配置されてもよく、および/または、分配層120に対して対向して配置された任意選択的な支持層130上に配置されてもよい。態様によれば、位置合わせ部材の1つ以上は、エッジ位置合わせ部材211’である。1つ以上のエッジ位置合わせ部材は、各分配モジュール121が単一の適正な向きでのみ放射層110に対して組み立てられ得るように構成されている。言い換えれば、1つ以上のエッジ位置合わせ部材は、分配モジュールを(分配層に沿って延びる平面内において)回転に関して非対称なものとする。これは、アンテナ配列100の組立において有利である。位置合わせ部材が位置決め構造の一部を構成してもよいことに、留意されたい。
【0063】
図3Aおよび
図3Bは、組み立てられた例示的なアンテナ配列100における分配層120の詳細を示している。第1EBG構造324は、任意選択的に、突出要素321からなる繰り返し構造を含む。分配層120は、任意選択的に、少なくとも1つの導波路リッジ322を含み、これにより、分配層120と放射層110との中間に少なくとも1つの第1ギャップ導波路を形成している。突起を含むEBG構造に関する詳細については、
図6Aに関連して上述した通りである。
図3にさらに図示されているものは、導波路リッジ322に対して隣接して配置された分配給電部323である。この例示的なアンテナ配列では、リッジ結合移行部分324は、分配給電部323と導波路リッジ322との中間に配置されている。
【0064】
図1Bに示すように、アンテナ配列100は、任意選択的に、分配層120に対して対向した支持層130を含む。支持層130は、位置決め構造122および/または複数の分配モジュール121を支持するように構成されている。このようにして、放射層および分配層は、確実に一緒に固定されてもよい。
図2および
図3を参照すると、放射層は、1つ以上のボルト212(または同種のもの)によって、フレームに対して、および/または分配層に対して、取り付けられてもよい。これに代えて、またはこれと組み合わせて、1つ以上のボルトは、それぞれの穴を通して、フレームおよび/または分配層を貫通してもよく、1つ以上のボルトは、支持層に対して取り付けられる。
図1および
図2の例では、複数の分配モジュールどうしの中間には、ボルトが存在し、これにより、放射要素からなる部分集合どうしの間の間隔を、放射要素からなる部分集合内における放射要素どうしの間の間隔よりも大きなものとしている。放射要素からなる部分集合どうしの間の間隔は、放射パターンにおけるサイドローブレベルに対して、無視できる程度の影響しか有していなくてもよい。4つの分配モジュール121のそれぞれは、放射要素からなる各部分集合内における1つ以上の放射要素111に対して、1つ以上の無線周波数信号を分配するように構成されている。
図1の例では、放射要素からなる部分集合は、8個×8個の放射要素を含む。必ずしもそうではないけれども、好ましくは、アンテナ配列は、ボルトが層および複数の分配モジュールを確実に一緒に適合させ得ることのために、複数の分配モジュールどうしの中間にボルトを含む。
【0065】
図1Aに示すように、支持層130は、任意選択的に、プリント回路基板層131すなわちPCB層131と、シールド層132と、を含む。PCB層は、少なくとも1つのPCB層給電部133を含む。
図1AにおけるPCB層は、分配層120に対して対向しており、シールド層132は、PCB層に対して対向している。
【0066】
分配層内におけるEBG構造の使用は、PCB層131上のPCB層給電部133から、分配給電部323を介して、少なくとも1つの第1導波路への、移行における高効率での結合を可能とし、これにより、低損失が得られる。
【0067】
PCB層131は、任意選択的に、PCB層の一方または両方の面上に配置された少なくとも1つのRF集積回路(IC)を含む。少なくとも1つのPCB層給電部133は、1つ以上のRF ICから、PCBの反対側の面へと、さらに分配層内へと、無線周波数信号を伝達するように構成されてもよい。一例によれば、少なくとも1つのPCB層給電部133は、分配層120の対応する開口に対して接続された貫通穴であり、この場合、貫通穴は、少なくとも1つのマイクロストリップラインによって供給される。これに代えて、あるいはこれと組み合わせて、少なくとも1つのPCB層給電部133は、PCBの、分配層に対して対向した面上の、少なくとも1つのRF ICから、分配層内へと、無線周波数信号を伝達するように構成されてもよい。態様によれば、少なくとも1つのPCB層給電部133は、アンテナ配列100から離間して、例えばモデムへと、無線周波数信号を伝達するように構成される。
【0068】
図4は、例示的なシールド層132に関する詳細を示している。シールド層132は、任意選択的に、シールド層132とPCB層131との中間に少なくとも1つの第2導波路を形成するように構成された第2EBG構造431を含む。第2EBG構造は、また、動作周波数帯域内の電磁的伝搬(すなわち、電磁放射)が、少なくとも1つの第2導波路から、少なくとも1つのPCB層給電部133を通過する方向以外の方向に伝搬することを阻止するように、構成されている。第2EBG構造は、低損失かつ低漏洩なコンパクトな設計を可能とする、すなわち、例えば隣接した導波路どうしの間における、または隣接したRFICsどうしの間における、望ましくない電磁波伝搬が小さな、コンパクトな設計を可能とする。さらに、第2EBG構造は、アンテナ配列の外部からの電磁放射から、PCB層を遮蔽する。
【0069】
第2EBG構造431は、任意選択的に、突出要素432、434からなる繰り返し構造を含み、PCB層は、任意選択的に、接地平面と、少なくとも1つの平面伝送線路と、を含み、これにより、シールド層132とPCB層131との中間に少なくとも1つの第2ギャップ導波路を形成している。少なくとも1つの第2ギャップ導波路は、例えば、反転マイクロストリップギャップ導波路であってもよい。
図4における例示的なシールド層は、2つのタイプの突出要素432、434を含んでもよい。幅の狭いトールピン432は、
図6Aに関連して上述した突出ピンの例である。幅の広いショートピン434は、シールド層とPCB層との間で、RFICsに対して適合されていることを除いては、ピン432と同様である。ピン434は、熱伝達の目的で、RFICsに対して接触してもよい。
図4は、また、ネジ取付ピン433を示している。
【0070】
態様によれば、分配層120は、第3EBG構造を含み、この第3EBG構造は、第1EBG構造324とは反対側の面上に配置される、すなわち、第3EBG構造は、支持層130に対して対向している。このようにして、分配層120と支持層130との中間にギャップ導波路を形成してもよい。これらのギャップ導波路は、PCB層131上のRFICsとPCB層給電部133との間における電磁信号の結合のために使用されてもよい。第3EBG構造は、低損失かつ低漏洩なコンパクトな設計を可能とする、すなわち、例えば隣接した導波路どうしの間における、または隣接したRFICsどうしの間における、望ましくない電磁波伝搬が小さな、コンパクトな設計を可能とする。さらに、第3EBG構造は、アンテナ配列の外部からの電磁放射から、PCB層を遮蔽する。第3EBG構造は、
図4の第2EBG構造におけるピンと同様に、異なる複数のピンを含んでもよい。
【0071】
放射層110は、任意選択的に、複数の放射モジュールを含む。このようにして、放射層の製造歩留まりを向上させ得る。放射モジュールは、任意選択的に、分配モジュールに対してサイズを一致させることができ、これにより、アンテナ配列の組立を容易とし得る。例えば、16個×16個のアンテナアレイでは、8個×8個の放射要素に対して無線信号を分配するように構成された分配モジュールは、8個×8個の放射要素を含む放射モジュールに対して、一致させることができる。放射モジュールは、分配層に対して、および/または任意選択的なシールド層に対して、ボルトまたは同種のものによって、取り付けられてもよい。これに代えて、またはこれと組み合わせて、フレーム122は、分配モジュールと放射モジュールの両方を所定位置に固定するように構成することができる。
【0072】
任意選択的に、PCB層131は、複数のPCBモジュールを含む、および/または、シールド層132は、複数のシールドモジュールを含む。このようにして、すべてのモジュールは、分配モジュールに対してサイズを一致させることができる。これにより、アンテナ配列の組立を容易とし得る。例えば、16個×16個のアンテナアレイでは、8個×8個の放射要素に対して無線信号を分配するように構成された分配モジュールは、8個×8個の放射要素を含む放射モジュールに対して、一致させることができるとともに、一致したサイズで、PCBモジュールに対しておよびシールドモジュールに対して、一致させることができる。すべてのモジュールは、ボルトまたは同種のものによって、一緒に取り付けられてもよい。これに代えて、またはこれと組み合わせて、フレーム122は、すべてのモジュールを所定位置に固定するように構成することができる。
【0073】
図5Aは、例示的なアンテナ配列に関する平面図を示している。
図5Bは、
図5Aにおける線A~Bに関する断面図を示している。
【0074】
態様によれば、電気通信トランシーバまたはレーダトランシーバは、アンテナ配列100を含む。
【国際調査報告】