(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】パワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230315BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20230315BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L23/48 G
H01L25/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535074
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2021126304
(87)【国際公開番号】W WO2022142640
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011580372.8
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522227794
【氏名又は名称】ジョンハイ グループ カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マオ、シャンヤ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジンギャ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャンチェン
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770DA03
5H770PA21
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA12
5H770QA16
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
パワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造であって、本構造は、放熱器、銅張セラミック基板、ウエハ、プラスチックケース、正バスバー、負バスバー、およびポッティングコンパウンドを含み、銅張セラミック基板は、放熱器に溶接され、ウエハは、銅張セラミック基板に溶接され、プラスチックケースは、放熱器に固定され、正バスバーおよび負バスバーは、プラスチックケース内にポッティングコンパウンドによってパッケージされ、正バスバーおよび負バスバーは、超音波ボンディングによって銅張セラミック基板に固定され、かつ、パワーモジュールの電気回路を形成し、ポッティングコンパウンドによるポッティングによって、ウエハおよび正バスバー、負バスバーの間の電気的ギャップを保証し、正バスバーと負バスバーとの積層部分は、プラスチックケース内にあり、かつ、プラスチックケース内からプラスチックケースの表面を超えて延伸して上下に間隔をおいて積層配置される。本構造は、浮遊インダクタンスに起因するサージ電圧を効果的に低減し、パワーモジュールが破壊される危険を回避し、パワーモジュールの耐振性能を向上させ、パワーモジュールのスイッチング特性およびモータ駆動制御の信頼性を確保する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱器、銅張セラミック基板、ウエハ、プラスチックケース、正バスバー、負バスバー、およびポッティングコンパウンドを含み、前記銅張セラミック基板は、放熱器に溶接され、前記ウエハは、前記銅張セラミック基板に溶接され、前記プラスチックケースは、前記放熱器に固定され、前記正バスバーおよび前記負バスバーは、前記ポッティングコンパウンドによって前記プラスチックケース内にパッケージされ、前記正バスバーおよび前記負バスバーは、超音波ボンディングによって前記銅張セラミック基板に固定され、かつ、パワーモジュールの電気回路を形成し、前記ポッティングコンパウンドによるポッティングによって、前記ウエハおよび前記正バスバー、前記負バスバーの間の電気的ギャップを保証するパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造であって、前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分は、前記プラスチックケース内にあり、かつ、プラスチックケース内から前記プラスチックケースの表面を超えて延伸することを特徴とする、パワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造。
【請求項2】
前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分の、前記プラスチックケース内からプラスチックケースの表面を超えて延伸した長さは、0以上であることを特徴とする、請求項1に記載のパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造。
【請求項3】
前記正バスバーと前記負バスバーは、平行に積層配置されて前記銅張セラミック基板まで延伸し、前記正バスバーが上、前記負バスバーが下にあるか、または前記負バスバーが上、前記正バスバーが下にあるように積層配置され、前記正バスバーと前記負バスバーとの間の間隔は、3mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造。
【請求項4】
前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分の幅と長さとの差は、0以上であることを特徴とする、請求項3に記載のパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造。
【請求項5】
前記ポッティングコンパウンドのポッティング面は、少なくとも、積層配置された下層の正バスバーまたは下層の負バスバーよりも高いことを特徴とする、請求項3に記載のパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造。
【請求項6】
前記ポッティングコンパウンドは、シリカゲルまたはエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項3に記載のパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月28日に中国特許庁に提出された、出願番号が202011580372.8であって、発明の名称が「パワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照により本出願に組み込む。
【0002】
本出願は、モータ制御の技術分野に関し、特にパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造に関する。
【背景技術】
【0003】
三相交流モータの駆動システムにおいて、通常、高周波キャリアを採用してパワー半導体デバイスに対して高速の開閉管駆動を行い、モータ駆動主回路の浮遊インダクタンスの大きさに比例したサージ電圧がパワー半導体デバイスに負荷されることになり、サージ電圧が大きすぎる場合、パワー半導体デバイスが破壊されて損害してしまう可能性がある。このように、回路の浮遊インダクタンスを最大限に減少することは、パワー半導体デバイスの正常動作が確保されるように、サージ電圧を低下させることができる。特に新エネルギー自動車のモータコントローラの分野について、新エネルギー自動車でのSiC、GaNパワーモジュールの適用傾向はますます明らかになり、開閉管の駆動周波数の要求がますます高くなるため、如何にパワーモジュールバスバーの浮遊インダクタンスを低下させるかは、1つの重要な研究課題である。
【0004】
通常、サージ電圧
【数1】
は式(1)のように算出される。
【数2】
ここで、
【数3】
の場合、以下のようになる。
【数4】
式において:
【数5】
は浮遊インダクタンスであり、
【数6】
は磁束であり、
【数7】
は電流であり、
【数8】
は磁気誘導強度であり、
【数9】
は主回路の接続端子のバスバー長さであり、
【数10】
は主回路の接続端子のバスバー幅であり、
【数11】
は積層バスバーの間隔であり、
【数12】
は真空透磁率である。
【0005】
図1および
図2に示すように、一般的には、三相交流モータの駆動主回路の構造は、放熱器4、銅張セラミック基板5、ウエハ6、プラスチックケース3、正バスバー1、負バスバー2、およびポッティングコンパウンド7を含み、銅張セラミック基板5は放熱器4に溶接され、若干のウエハ6は銅張セラミック基板5に溶接され、プラスチックケース3は、放熱器4に固定され、正バスバー1および負バスバー2は、超音波ボンディングによって銅張セラミック基板5に固定され、パワーモジュール6の電気回路を形成し、さらに、ポッティングコンパウンド7により、ウエハおよびバスバーの間の電気的ギャップを保証し、ここで、ウエハは、Si、SiC、GaNなどのパワートランジスタチップであってもよい。当該主回路構造において、正負バスバーは、プラスチックケース3に射出されて上下に配置され、
図2に示すL2領域は、正バスバー1と負バスバー2との積層配置領域であり、L1領域は、プラスチックケース3が正負バスバーを絶縁的に包む領域であり、L3領域は、正負バスバーが位置ずれする非積層領域である。プラスチックケース3は、正バスバー1および負バスバー2を包む必要があり、かつ、正バスバー1および負バスバー2は、ずれて配置されるとともにプラスチックケース3から延伸して銅張セラミック基板5の異なる極性の銅層に接続されるため、L3領域は一般的に非積層領域であり、L3領域の電流ループは、大地と形成された電流ループとみなすことができ、この場合、電流が流れるループ面積Sが大きくなり、つまり、式2におけるa×hが大きくなり、式2により分かるように、浮遊インダクタンスLが増加し、浮遊インダクタンスがパワーモジュールのスイッチング特性に重大な影響を与え、モータ駆動制御の信頼性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実用新案が解決しようとする技術的課題は、従来の三相交流モータの駆動主回路の構造の欠陥を克服し、浮遊インダクタンスに起因するサージ電圧を効果的に低減し、パワーモジュールが破壊される危険を回避し、パワーモジュールの耐振性能を向上させ、パワーモジュールのスイッチング特性およびモータ駆動制御の信頼性を確保するパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本実用新案に係るパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造は、放熱器、銅張セラミック基板、ウエハ、プラスチックケース、正バスバー、負バスバー、およびポッティングコンパウンドを含み、前記銅張セラミック基板は、放熱器に溶接され、前記ウエハは、前記銅張セラミック基板に溶接され、前記プラスチックケースは、前記放熱器に固定され、前記正バスバーおよび前記負バスバーは、ポッティングコンパウンドによって前記プラスチックケース内にパッケージされ、前記正バスバーおよび前記負バスバーは、超音波ボンディングによって銅張セラミック基板に固定され、かつ、パワーモジュールの電気回路を形成し、前記ポッティングコンパウンドによるポッティングにより、前記ウエハおよび前記正バスバー、前記負バスバーの間の電気的ギャップを保証し、前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分は、前記プラスチックケース内にあり、かつ、プラスチックケース内から前記プラスチックケースの表面を超えて延伸する。
【0008】
さらに、前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分の、前記プラスチックケース内からプラスチックケースの表面を超えて延伸した長さは、≧0である。
【0009】
さらに、前記正バスバーと前記負バスバーは、平行に積層配置されて前記銅張セラミック基板まで延伸し、正バスバーが上、負バスバーが下にあるか、または負バスバーが上、正バスバーが下にあるように積層配置され、前記正バスバーと前記負バスバーとの間の間隔は、≦3mmである。
【0010】
さらに、前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分の幅と長さとの差は、≧0である。
【0011】
さらに、前記ポッティングコンパウンドのポッティング面は少なくとも、積層配置された下層の正バスバーまたは下層の負バスバーよりも高い。
【0012】
さらに、前記ポッティングコンパウンドは、シリカゲルまたはエポキシ樹脂である。
【0013】
本実用新案に係るパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造は、上記技術案を採用し、即ち、本構造は、放熱器、銅張セラミック基板、ウエハ、プラスチックケース、正バスバー、負バスバー、およびポッティングコンパウンドを含み、前記銅張セラミック基板は、放熱器に溶接され、前記ウエハは、前記銅張セラミック基板に溶接され、前記プラスチックケースは、前記放熱器に固定され、前記正バスバーおよび前記負バスバーは、ポッティングコンパウンドによって前記プラスチックケース内にパッケージされ、前記正バスバーおよび前記負バスバーは、超音波ボンディングによって銅張セラミック基板に固定され、かつ、パワーモジュールの電気回路を形成し、前記ポッティングコンパウンドによるポッティングにより、前記ウエハおよび前記正バスバー、前記負バスバーの間の電気的ギャップを保証し、前記正バスバーと前記負バスバーとの積層部分は、前記プラスチックケース内にあり、かつ、プラスチックケース内から前記プラスチックケースの表面を超えて延伸する。そのため、本構造は、従来の三相交流モータの駆動主回路の構造の欠陥を克服し、浮遊インダクタンスに起因するサージ電圧を効果的に低減し、パワーモジュールが破壊される危険を回避し、パワーモジュールの耐振性能を向上させ、パワーモジュールのスイッチング特性およびモータ駆動制御の信頼性を確保する。
【0014】
以下、図面および実施形態を結合して本実用新案をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】三相交流モータの駆動主回路の構造概略図である。
【
図3】本実用新案に係るパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造の概略図である。
【
図4】正負バスバーが積層配置される、負バスバーが上にある構造概略図である。
【
図7】本構造における、正負バスバーが積層配置される、正バスバーが上にある概略図である。
【
図8】本構造における、正負バスバーが積層配置される、負バスバーが上にある概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3に示すように、本実用新案のパワーモジュール用の低浮遊インダクタンスバスバー構造は、放熱器4、銅張セラミック基板5、ウエハ6、プラスチックケース3、正バスバー1、負バスバー2、およびポッティングコンパウンド7を含み、前記銅張セラミック基板5は、放熱器4に溶接され、前記ウエハ6は、前記銅張セラミック基板5に溶接され、前記プラスチックケース3は、前記放熱器4に固定され、前記正バスバー1および負バスバー2は、ポッティングコンパウンド7によって前記プラスチックケース3内にパッケージされ、前記正バスバー1および前記負バスバー2は、超音波ボンディングによって銅張セラミック基板5に固定され、かつ、パワーモジュールの電気回路を形成し、前記ポッティングコンパウンド7によるポッティングコンパウンドにより、前記ウエハ6および正負バスバー1、2の間の電気的ギャップを保証し、前記正バスバー1と前記負バスバー2との積層部分は、前記プラスチックケース3内にあり、かつ、プラスチックケース3内から前記プラスチックケース3の表面を超えて延伸する。
【0017】
好ましくは、
図3、
図4および
図5、
図6に示すように、前記正バスバー1と前記負バスバー2との積層部分の、前記プラスチックケース3内からプラスチックケースの表面を超えて延伸した長さは、≧0であり、即ち、図におけるL4は、ゼロ以上である。
【0018】
好ましくは、
図3、
図4および
図7、
図8に示すように、前記正バスバー1と前記負バスバー2は、平行に積層配置されて前記銅張セラミック基板5まで延伸し、正バスバー1が上、負バスバー2が下にあるか、または負バスバー2が上、正バスバー1が下にあるように積層配置され、前記正バスバー1と前記負バスバー2との間の間隔は、≦3mmである。
【0019】
好ましくは、前記正バスバー1と前記負バスバー2との積層部分の幅と長さとの差は、≧0である。積層部分の幅および長さは同じサイズであることが好ましい。
【0020】
好ましくは、前記ポッティングコンパウンド7のポッティング面は少なくとも、積層配置された下層の正バスバー1または下層の負バスバー2よりも高い。
【0021】
好ましくは、前記ポッティングコンパウンド7は、シリカゲルまたはエポキシ樹脂である。
【0022】
本構造は、パワーモジュールの内部のバスバー端子の浮遊インダクタンスが大きすぎるという問題を効果的に解決し、正バスバーおよび負バスバーは、L2領域において積層配置され、プラスチックケースを通ってパワーモジュールの内部に延伸し、同時に、正負バスバーおよびパワーモジュールの間の電気的ギャップを保証するために、ポッティングコンパウンドを採用して絶縁ポッティングを行い、正負バスバーの非積層領域が大幅に減少され、このように、電流が流れるループ面積Sが減少し、即ち、式2におけるa×hが減少し、式2により分かるように、浮遊インダクタンスLはそれに応じて減少し、サージ電圧を効果的に低減させ、パワーモジュールが破壊される危険が回避され、パワーモジュールのスイッチング特性が確保され、モータ駆動制御の信頼性を向上させる。
【国際調査報告】