IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 廈門市三安光電科技有限公司の特許一覧

特表2023-511822マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法
<>
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図1
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図2
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図3
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図4
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図5
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図6
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図7
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図8
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図9
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図10
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図11
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
  • 特表-マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法 図
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/06 20100101AFI20230315BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20230315BHJP
   C30B 29/40 20060101ALI20230315BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L33/32
C30B29/40 D
C23C16/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535096
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2020078410
(87)【国際公開番号】W WO2021179116
(87)【国際公開日】2021-09-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518281982
【氏名又は名称】廈門市三安光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN SAN’AN OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】5F., Zonghe Bldg., No.1721, Luling Rd., Siming Dist. Xiamen, Fujian 361009, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 水清
(72)【発明者】
【氏名】杜 偉華
(72)【発明者】
【氏名】頼 昭序
(72)【発明者】
【氏名】▲ドン▼ 和清
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F241
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077BE13
4G077BE15
4G077EF01
4G077HA02
4K030AA11
4K030AA13
4K030BA02
4K030BA08
4K030BA11
4K030BB12
4K030CA05
4K030CA12
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030LA14
5F241AA03
5F241AA21
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA57
5F241CA65
(57)【要約】
【解決手段】
本発明はマイクロLEDのエピタキシャル構造し、それはN型層と発光層とP型層を少なくとも含む。発光層はn個の周期の量子井戸構造を含み、周期ごとの量子井戸構造は井戸層と障壁層を含み、n1個及びn2個の周期の量子井戸構造をそれぞれ第1及び第2の発光セクションと定義し、n1とn2が1以上であり、n1+n2がn以下であり、第1の発光セクションが第2の発光セクションよりもN型層に近く、両発光セクションの障壁層材料の平均バンドギャップは、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも小さく、両発光セクションの井戸層材料の平均バンドギャップは、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも大きい。該エピタキシャル構造によるマイクロLEDは、光電変換効率のピーク値が電流密度の1A/cm2よりも低く光電変換効率が約30%向上することを実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型層と、発光層と、P型層と、を少なくとも含んでいるマイクロLEDのエピタキシャル構造であって、
発光層は、n個の周期の量子井戸構造を含んでおり、
周期ごとの量子井戸構造は、井戸層と、障壁層と、を含んでおり、
n1個の周期の量子井戸構造を第1の発光セクションと定義し、かつn2個の周期の量子井戸構造を第2の発光セクションと定義し、n1とn2とが1以上であり、かつn1+n2がn以下であり、第1の発光セクションが第2の発光セクションよりもN型層に近く、
両発光セクションにおける障壁層の材料の平均バンドギャップは、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも小さいという条件を満たしており、
両発光セクションにおける井戸層の材料の平均バンドギャップは、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも大きいという条件を満たしている、
ことを特徴とする、マイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項2】
前記第1の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造は、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、を少なくとも含んでおり、第2の障壁層が第1の障壁層と第3の障壁層との間に介在しており、第1の発光セクションにおいては、各量子井戸構造における第2の障壁層の材料のバンドギャップが、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項3】
前記第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造は、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、第4の障壁層と、を少なくとも含んでおり、第2の障壁層が第1の障壁層と第3の障壁層との間に介在しており、第4の障壁層が井戸層の後ろに配置されており、第2の発光セクションにおいては、各量子井戸構造における第2の障壁層の材料のバンドギャップが、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きく、かつ第4の障壁層の材料のバンドギャップが、第1の障壁層の材料のバンドギャップ、第2の障壁層の材料のバンドギャップ、及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項4】
前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層と第4の障壁層とのそれぞれの厚さは、10Å~1000Åの範囲内にあり、かつ前記井戸層の厚さは、1Å~100Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項5】
周期ごとの量子井戸構造においては、前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層との総厚さ、及び井戸層の厚さの比率は、5:1~20:1の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項6】
前記第4の障壁層の厚さと井戸層の厚さとの比率は、5:1~20:1の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項7】
周期ごとの量子井戸構造においては、第2の障壁層の厚さが第1の障壁層の厚さ及び第1の障壁層の厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項8】
前記第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造においては、第4の障壁層の厚さが第1の障壁層の厚さ及び第3の障壁層の厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項9】
前記両発光セクションにおいては、第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とが全部または部分的にn型ドーピングされており、第4の障壁層が意図せずにドーピングされた層である、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項10】
前記両発光セクションにおいては、第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とが全部または部分的にn型ドーピングされており、n型ドーピング濃度が1E17/cm~1E19/cmの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項11】
前記第1の発光セクションの周期数は、1~5の範囲内にあり、かつ第2の発光セクションの周期数は、1~5の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項12】
前記井戸層は、AlInGa1-x-yN材料から作成されており、前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層と第4の障壁層とは、ALInGa1-p-qN材料から作成されており、かつ周期ごとの量子井戸構造においては、0≦x<p<1、0≦q<y<1となる、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項13】
両発光セクションにおける障壁層の材料におけるAlの平均組成比は、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも小さいという条件を満たしており、
両発光セクションにおける井戸層の材料におけるInの平均組成比は、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクション以下であるという条件を満たしている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項14】
周期ごとの量子井戸構造においては、第2の障壁層の材料のAlの平均組成比が、第1の障壁層の材料のAlの平均組成比及び第3の障壁層の材料のAlの平均組成比よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項15】
前記第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造においては、第4の障壁層の材料のAlの平均組成比が、第1の障壁層の材料のAlの平均組成比、第2の障壁層の材料のAlの平均組成比、及び第3の障壁層の材料のAlの平均組成比よりも大きい、
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項16】
前記発光セクションは、第3の発光セクションを更に含んでおり、第3の発光セクションは、n3個の周期の量子井戸構造を含んでおり、第3の発光セクションは、第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間に介在しており、前記第3の発光セクションは障壁層のバンドギャップが第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間にあり、前記第3の発光セクションにおける井戸層のバンドギャップは、第1の発光セクションのものと第2の発光セクションのものとの間にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項17】
前記第3の発光セクションは障壁層のAlの平均組成比が第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間にあり、前記第3の発光セクションは井戸層のInの平均組成比が第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間にある、
ことを特徴とする請求項16に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項18】
前記第3の発光セクションは、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、を含んでおり、前記第3の発光セクションにおける第2の障壁層の材料のバンドギャップは、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きい、
ことを特徴とする請求項16に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項19】
前記第3の発光セクションにおいては、第2の障壁層の厚さが、第1の障壁層の厚さ及び第3の障壁層の厚さよりも大きい
ことを特徴とする請求項18に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項20】
前記第3の発光セクションにおける第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とのそれぞれの厚さは、10Å~1000Åの範囲内にあり、かつ前記井戸層の厚さは、1Å~100Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項18に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項21】
前記第3の発光セクションにおける第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層との総厚さ、及び井戸層の厚さの比率は、5:1~20:1の範囲内にある
ことを特徴とする請求項18に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項22】
前記第3の発光セクションにおいて、第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とが全部または部分的にn型ドーピングされており、n型ドーピング濃度が1E17/cm~1E19/cmの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項18に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項23】
前記第3の発光セクションの周期数は、0~5の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項16に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項24】
前記第3の発光セクションにおいて、井戸層は、AlInGa1-x-yN材料から作成されており、前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とは、ALInGa1-p-qN材料から作成されており、かつ0≦x<p<1、0≦q<y<1となる、
ことを特徴とする請求項18に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項25】
前記第3の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造は、第2の障壁層の材料のAlの平均組成比が、第1の障壁層の材料のAlの平均組成比及び第3の障壁層の材料のAlの平均組成比よりも大きい、
ことを特徴とする請求項18に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法であって、
以下のステップ:
(1)基板を用意し、
(2)核生成層と、N型層と、発光層と、を前記基板の上に成長し、
(3)P型層を成長する、
を含むことを特徴とする、マイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項27】
前記第1の発光セクションにおける障壁層の平均成長速度は、第2の発光セクションにおける障壁層の平均成長速度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項26に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項28】
前記第1の発光セクションにおける井戸層の平均成長速度は、第2の発光セクションにおける井戸層の平均成長速度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項26に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項29】
各量子井戸構造においては、第1の障壁層の平均成長速度と第3の障壁層の平均成長速度とが、第2の障壁層の平均成長速度以下である、
ことを特徴とする請求項26に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項30】
障壁層の成長速度は、0.1~10Å/sの範囲内にあり、井戸層の成長速度は、0~1Å/sの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項26に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項31】
障壁層の成長温度は、700~950℃の範囲内にあり、井戸層の成長温度は、700~900℃の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項26に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項32】
再結合発光セクションにおける障壁層と井戸層との成長方式は、連続成長または不連続成長である、
ことを特徴とする請求項26に記載のマイクロLEDのエピタキシャル構造の製造方法。
【請求項33】
請求項1~25のいずれか一項に記載のエピタキシャル構造を含んでいる、
ことを特徴とする、マイクロ発光ダイオード。
【請求項34】
前記マイクロ発光ダイオードの水平サイズは、1μm*1μm~300μm*300μmの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項33に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項35】
請求項33に記載のマイクロ発光ダイオードを含んでいる、
ことを特徴とする、マイクロ発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の光電分野に関し、マイクロLED発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエピタキシャル構造を具えるLEDの光電変換効率は、図9に示されるように、ピーク値が電流密度の5A/cmよりも大きな範囲に分布しており、現在の応用では多くが高電流密度(10A/cmよりも大きなもの)の範囲で作動されている。しかしながら、スマートフォン(或いは、スマートウォッチやスマートバンド)に用いられるマイクロLEDは、非常に小さな電流を使用しており、その電流は、大抵nAレベルにあり、電流密度に換算すると、0.1~1A/cmの範囲内にある。従来のエピタキシャル構造は、電流密度が1A/cm以下にある場合、光電変換効率が不安定な範囲にあり、電流の微小な変化につれて光電変換効率が急に下がることがあり、それで従来のエピタキシャル構造は、低電流で操作されるニーズのある製品に適用されることができない。
【0003】
従って、スマートフォン(或いは、スマートウォッチやスマートバンド)に用いられるマイクロLEDのチップに対しては、光電変換効率のピーク値が低電流密度の範囲にあり、かつ光電変換効率が安定なLEDエピタキシャルチップを開発する必要がある。中国特許出願公開第107833953号明細書には、マイクロLEDの多量子井戸層にかかる成長方法が開示されている。MQW(multi quantum well)構造は、井戸層(InGaN)/ブロッキング層(GaN)/障壁層(H2をGaNに通し)である。障壁層にH2を通すとともに、井戸層及び障壁層の間にブロッキング層を挿入することによってMQWにかかる結晶の品質及び井戸の応力を改善することは、限りがあり、それでマイクロLEDの低電流での特性を更に向上させる技術方案を提出する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存在している問題を解決するために、マイクロLEDのエピタキシャル構造及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様として、本発明は、マイクロLEDのエピタキシャル構造を提出する。前記マイクロLEDのエピタキシャル構造は、N型層と、発光層と、P型層と、を少なくとも含んでいる。発光層は、n個の周期の量子井戸構造を含んでいる。周期ごとの量子井戸構造は、井戸層と、障壁層と、を含んでいる。n1個の周期の量子井戸構造を第1の発光セクションと定義し、かつn2個の周期の量子井戸構造を第2の発光セクションと定義し、n1とn2とが1以上であり、かつn1+n2がn以下であり、第1の発光セクションが第2の発光セクションよりもN型層に近い。両発光セクションにおける障壁層の材料の平均バンドギャップは、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも小さいという条件を満たしており、両発光セクションにおける井戸層の材料の平均バンドギャップは、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも大きいという条件を満たしている。
【0006】
前記第1の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造は、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、を少なくとも含んでおり、第2の障壁層が第1の障壁層と第3の障壁層との間に介在しており、第1の発光セクションにおいては、各量子井戸構造における第2の障壁層の材料のバンドギャップが、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きいことは好ましい。
【0007】
前記第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造は、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、第4の障壁層と、を少なくとも含んでおり、第2の障壁層が第1の障壁層と第3の障壁層との間に介在しており、第4の障壁層が井戸層の後ろに配置されており、第2の発光セクションにおいては、各量子井戸構造における第2の障壁層の材料のバンドギャップが、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きく、かつ第4の障壁層の材料のバンドギャップが、第1の障壁層の材料のバンドギャップ、第2の障壁層の材料のバンドギャップ、及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きいことは好ましい。
【0008】
前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層と第4の障壁層との厚さは、10Å~1000Åの範囲内にあり、かつ前記井戸層の厚さは、1Å~100Åの範囲内にあることは好ましい。周期ごとの量子井戸構造においては、第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層との総厚さ、及び井戸層の厚さの比率は、5:1~20:1の範囲内にあることは更に好ましい。
【0009】
周期ごとの量子井戸構造においては、第2の障壁層の厚さが第1の障壁層の厚さ及び第1の障壁層の厚さよりも大きいことは好ましい。
【0010】
前記第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造においては、第4の障壁層の厚さが第1の障壁層の厚さ及び第3の障壁層の厚さよりも大きいことは好ましい。
【0011】
前記両発光セクションにおいては、第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とが全部または部分的にn型ドーピングされており、第4の障壁層が意図せずにドーピングされた層であることは好ましい。前記n型ドーピング濃度が1E17/cm~1E19/cmの範囲内にあることは更に好ましい。
【0012】
前記第1の発光セクションの周期数は、1~5の範囲内にあり、かつ第2の発光セクションの周期数は、1~5の範囲内にある。前記第1の発光セクション及び第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造の材料成分は、同じであることは好ましい。
【0013】
前記井戸層は、AlInGa1-x-yN材料から作成されており、前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層と第4の障壁層とは、ALInGa1-p-qN材料から作成されており、かつ周期ごとの量子井戸構造においては、0≦x<p<1、0≦q<y<1となることは好ましい。
【0014】
両発光セクションにおける障壁層の材料のAlの平均組成比は、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクションよりも小さいという条件を満たしており、両発光セクションにおける井戸層の材料のInの平均組成比は、第1の発光セクションにおいて第2の発光セクション以下であるという条件を満たしている。周期ごとの量子井戸構造においては、第2の障壁層の材料のAlの平均組成比が、第1の障壁層の材料のAlの平均組成比及び第3の障壁層の材料のAlの平均組成比よりも大きい。前記第2の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造においては、第4の障壁層の材料のAlの平均組成比が、第1の障壁層の材料のAlの平均組成比、第2の障壁層の材料のAlの平均組成比、及び第3の障壁層の材料のAlの平均組成比よりも大きいことは好ましい。
【0015】
本発明の他の実施形態として、前記発光セクションは、第3の発光セクションを更に含んでおり、第3の発光セクションは、n3個の周期の量子井戸構造を含んでおり、第3の発光セクションは、第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間に介在しており、前記第3の発光セクションは障壁層のバンドギャップが第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間にあり、前記第3の発光セクションにおける井戸層のバンドギャップは、第1の発光セクションのものと第2の発光セクションのものとの間にある。
【0016】
前記第3の発光セクションは障壁層のAlの平均組成比が第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間にあり、前記第3の発光セクションは井戸層のInの平均組成比が第1の発光セクションと第2の発光セクションとの間にあることは好ましい。
【0017】
前記第3の発光セクションは、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、を含んでおり、前記第3の発光セクションにおける第2の障壁層の材料のバンドギャップは、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップよりも大きいことは好ましい。
【0018】
前記第3の発光セクションは、第1の障壁層と、第2の障壁層と、第3の障壁層と、井戸層と、を含んでおり、前記第3の発光セクションにおける第2の障壁層の材料にかかるバンドギャップは、第1の障壁層の材料にかかるバンドギャップ及び第3の障壁層の材料にかかるバンドギャップよりも大きいことは好ましい。
【0019】
前記第3の発光セクションにおいては、第2の障壁層の厚さが、第1の障壁層の厚さ及び第3の障壁層の厚さよりも大きいことは好ましい。
【0020】
前記第3の発光セクションにおける第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とのそれぞれの厚さは、10Å~1000Åの範囲内にあり、かつ前記井戸層の厚さは、1Å~100Åの範囲内にある。前記第3の発光セクションにおける第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層との総厚さ、及び井戸層の厚さの比率は、5:1~20:1の範囲内にあることは好ましい。
【0021】
前記第3の発光セクションにおいて、第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とが全部または部分的にn型ドーピングされていることは好ましい。前記n型ドーピング濃度が1E17/cm~1E19/cmの範囲内にあることは更に好ましい。
【0022】
前記第3の発光セクションの周期数は、0~5の範囲内にある。前記第3の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造の材料成分は、同じであることは好ましい。
【0023】
前記第3の発光セクションにおいて、井戸層は、AlInGa1-x-yN材料から作成されており、前記第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層とは、ALInGa1-p-qN材料から作成されており、かつ0≦x<p<1、0≦q<y<1となることは好ましい。
【0024】
前記第3の発光セクションにおける周期ごとの量子井戸構造においては、第2の障壁層の材料のAlの平均組成比が、第1の障壁層の材料のAlの平均組成比及び第3の障壁層の材料のAlの平均組成比よりも大きいことは好ましい。
【0025】
本発明の第2の態様として、本発明は、前記マイクロLEDのエピタキシャル構造を製造する方法を提供する。前記製造方法は、以下のステップを含んでいる。
【0026】
(1)基板を用意する。
【0027】
(2)核生成層と、N型層と、発光層と、を前記基板の上に成長する。
【0028】
(3)P型層を成長する。
【0029】
前記第1の発光セクションにおける障壁層の平均成長速度は、第2の発光セクションにおける障壁層の平均成長速度よりも大きく、かつ前記第1の発光セクションにおける井戸層の平均成長速度は、第2の発光セクションにおける井戸層の平均成長速度よりも大きいことは好ましい。
【0030】
各量子井戸構造においては、第1の障壁層の平均成長速度と第3の障壁層の平均成長速度とが、第2の障壁層の平均成長速度以下であることは好ましい。
【0031】
障壁層の成長速度は、0.1~10Å/sの範囲内にあり、井戸層の成長速度は、0~1Å/sの範囲内にあることは好ましい。
【0032】
障壁層の成長温度は、700~950℃の範囲内にあり、井戸層の成長温度は、700~900℃の範囲内にあることは好ましい。
【0033】
再結合発光セクションにおける障壁層と井戸層との成長方式は、連続成長または不連続成長であることは好ましい。
【0034】
本発明の第3の態様として、本発明は、マイクロ発光ダイオードを提供する。前記マイクロ発光ダイオードは、上記のエピタキシャル構造を含んでいる。
【0035】
前記マイクロ発光ダイオードの水平サイズは、1μm*1μm~300μm*300μmの範囲内にあることは好ましい。
【0036】
本発明は、マイクロ発光装置を更に提供する。前記マイクロ発光装置は、上記のマイクロ発光ダイオードを含んでいる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に提出されたマイクロLEDのエピタキシャル構造及び発光ダイオードは、以下の有益な効果を具えている。
【0038】
(1)発光層が再結合発光セクションを有する構造となるように設計されることによって、発光セクションにおけるキャリアの溢れ出しを効果的に抑えて電子と正孔との波動関数の重なり合いが増加し、同時に発光セクションの材料にかかる応力を効果的に緩和することを保証することができ、ひいては小電流が注入される状態でのキャリアの輸送や再結合挙動を改善することができ、キャリアの放射の再結合効率や光電変換効率を向上させることができる。
【0039】
(2)各発光セクションについては、比較的に薄い井戸層及び比較的に厚い障壁層を成長することによって、井戸層及び障壁層の厚さの比率を比較的に大きくすることで、MQWの成長における欠陥密度を減少してMQWの成長品質を著しく改善することができ、非放射再結合中心を減少して光電変換効率のピーク値が電流密度に対して著しく下がり光電変換効率のピーク値が著しく上がることができる。
【0040】
(3)異なる発光セクションに異なる成長速度を設定することによって、MQWセクションにおける井戸層及び障壁層の格子不整合応力を更に改善して、MQW結晶の品質を向上させることができる。また、LEDのメイン発光層は、主にP型側の発光層に近いので、N型側に近いMQW(第1の発光セクション)を相対的に高速で成長させ、かつP型側に近いMQW(第2の発光セクション)を相対的に低速で成長させることによって、発光層におけるInの高いセクションと底層のGaNとの格子不整合応力を更に低減することができ、それによりMQWにおけるメイン発光セクションの結晶の品質を効果的に向上させることができるとともに、成長時間を比較的に短く維持して製造効率を向上させることができる。
【0041】
(4)周期ごとの量子井戸においては、異なる成長温度範囲内にある障壁層及び井戸層の成長速度を調整することによって、単一の発光セクションの成長周期内の障壁層及び井戸層の格子不整合応力を更に改善して、MQW結晶の品質を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の実施例や従来技術における技術方案をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に用いられる添付図面に対して簡単に説明する。以下の説明における添付図面は、本発明の実施例に過ぎず、本分野における通常の知識を有する者にとって、提供された添付図面から何ら創造的な作業をせずに他の添付図面を得ることができることは明らかであろう。
図1】第1の実施例に係るエピタキシャル構造を示す模式図である。
図2】第1の実施例に係る第1の発光セクションを示す構造模式図である。
図3】第1の実施例に係る第3の発光セクションを示す構造模式図である。
図4】第1の実施例に係る第2の発光セクションを示す構造模式図である。
図5】第1の実施例に係る再結合発光セクションのエネルギーバンドを示す構造模式図である。
図6】第2の実施例に係る第1の発光セクションを示す構造模式図である。
図7】第2の実施例に係る第3の発光セクションを示す構造模式図である。
図8】第2の実施例に係る第2の発光セクションを示す構造模式図である。
図9】従来のエピタキシャル構造を有するマイクロLEDに係るWPE(光電変換効率)-J(電流密度)を示す傾向図である。
図10】第1の実施例に係るエピタキシャル構造を有するマイクロLED及び従来の構造に関連する0.5A/cmの電流密度での明るさ(LOP)-波長(WLD)に係る比較を示す図である。
図11】第1の実施例に係るエピタキシャル構造を有するマイクロLED及び従来の構造のWPE(光電変換効率)-J(電流密度)に関連するテストデータの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を組み合わせて、本発明の発光ダイオードの構成について詳細に説明し、これによって本発明に対してどのように技術手段を応用すれば技術問題を解決し、且つ技術効果を得る実現過程を十分に理解して実施できるようにする。要するに、矛盾しない限り、本発明の各実施例および各実施例における各特徴は互いに組み合わせることができ、本発明に係る請求の範囲は以下の実施例に関する記述及び説明に制限されない。
【0044】
実施例1
図1図5に示されるように、本発明の目的に基づいて、本実施例は、マイクロLEDのエピタキシャル構造及びその製造方法を提出する。該製造方法は、以下のステップを含んでいる。
【0045】
(1)基板1を用意する。該基板1は、サファイア(Al)と、AlNのメッキまたはSiNxのメッキが行われたサファイア(Al)と、Gaと、AlNのメッキまたはSiNxのメッキが行われたGaと、SiCと、GaNと、ZnOと、Siと、Geと、の少なくとも一者を採用することができる。本実施例は、AlNのメッキが行われたサファイア基板を選択することが好ましい。
【0046】
(2)基板1の上に核生成層(図示せず)をエピタキシャル成長する。該核生成層は、AlGaN材料を選択することが好ましい。エピタキシャル成長の方法は、MOCVD(有機金属気相成長法)方法と、MBE(分子線エピタキシ)方法と、CVD(化学気相成長)方法と、HVPE(ハイドライド気相成長法)方法と、PECVD(プラズマ増強化学気相成長)方法と、を採用することができ、ここでMOCVDを選択することが好ましいが、他の実施例ではそれに限定されない。AlNのメッキが行われたサファイア基板を、有機金属気相成長(MOCVD)室内に載置して、まず水素化処理を行なって基板の表面にある不純物を取り除く、そして温度を約500~600℃に下げて、厚さが約20nmである核生成層を成長する。
【0047】
(3)核生成層の上にU-GaN層2及びN-GaN層3を順にエピタキシャル成長する。U-GaN層2は、基板とN-GaN層との間における格子定数の差による格子不整合を減少して該核生成層の上にある半導体層の結晶の性能を強めるためのものであるが、本実施例においてそれに限定されない。U-GaN層2の成長タイプは、三次元タイプ+二次元タイプであり、それは核生成層を基礎にして、まずアイランド状成長を形成して転位の転向や集結が最大限に起こるようにさせ、次に二次元タイプに変えて平坦な表面を形成して厚さが約1~3μmのものを成長することである。そして、N-GaN層3を成長し、該N-GaN層3については、厚さが1~3μmの範囲内にあり、かつドーピング濃度が1E19~2.5E19/cmの範囲内にある。
【0048】
(4)応力緩和層4について、温度を750~950℃に下げて、応力緩和層4を成長する。その材料としてはInGaN及びGaNを選択することが好ましい。該応力緩和層4は、交互成長の超格子構造またはその内の材料の組み合わせによる形式をとり、続いての発光層における高いIn成分の材料と底層のGaN材料との不整合転位を減少して応力を緩和して結晶体の品質を改善することを目的とするものである。
【0049】
(5)第1の発光セクション5:温度を障壁層の温度に変えて、それは800~900℃であり、第1の障壁層5Aを成長する。本実施例では、該第1の障壁層は、SiドーピングのGaN材料であり、厚さが約5~50Åにあり、成長速度が約0.9Å/sであり、かつSiドーピングレベルが約1E17~1E19/cmの範囲内にあることが好ましい。第1の障壁層5Aを成長し終えた後、温度を10~50℃上げて第2の障壁層5Bを成長する。該第2の障壁層5Bは、SiドーピングのAlGaN材料であり、厚さが約30~100Åにあり、成長速度が約1.5Å/sであり、TMAL 2sccmを入れて作成されたものであり、Alの成分が約1~10%であるが、本実施例において1.5%を選択することが好ましく、かつSiドーピングレベルが約1E17~1E19/cmの範囲内にあるものである。第2の障壁層5Bを成長し終えた後、TMALを入れることを停止して、温度を10~50℃下げて第3の障壁層5Cを成長する。該第3の障壁層5Cは、SiドーピングのGaN材料であり、厚さが約5~50Åにあり、成長速度が約0.9Å/sであり、かつSiドーピングレベルが約1E17~1E19/cmの範囲内にあるものである。第3の障壁層5Cを成長し終えた後、SiH4を入れることを停止して、温度を700~800℃まで下げて、井戸層5Dを成長する。該井戸層5Dは、材料がInGaNであり、TMIN 800sccmを入れて作成され、厚さが約5~50Åにあり、成長速度が約0.3Å/sであり、本実施例において厚さが20Åを選択することが好ましく、井戸層のInの平均組成が約18%であるものである。第1の発光セクションの周期数は、1~5の範囲内にあり、かつ周期ごとの量子井戸構造の材料成分は、同じである。本実施例では、第1の発光セクションにおける交互に積層された回数は、2回であることが好ましい。ここで、第2の障壁層の材料のバンドギャップは、第1の障壁層の材料のバンドギャップ及び第3の障壁層の材料のバンドギャップ以上であり、これはキャリアの溢れ出しを効果的に抑えて発光セクションのエネルギーバンドを調節することを目的とする。第1の障壁層と第2の障壁層と第3の障壁層との温度変化や成長速度の変化は、製造効率を上げると共に、異なる成長温度の範囲における障壁層の成長速度を調整することによって、MQWセクションの材料の結晶体の品質を改善させることを目的とする。
【0050】
(6)第3の発光セクション6について、温度を800~900℃に上げて、第3の発光セクション6を成長する。まず第1の障壁層6Aを成長し、本実施例では、該第1の障壁層6Aは、GaN材料を選択し、意図せずにドーピングされた層であり、成長速度が約0.6Å/sであり、かつ厚さが約5~50Åであることは好ましい。第1の障壁層6Aを成長し終えた後、温度を10~50℃上げて第2の障壁層6Bを成長する。該第2の障壁層の材料は、SiドーピングのAlGaN材料であり、成長速度が約0.9Å/sであり、厚さが約30~100Åにあり、TMAL 2.5sccmを入れて作成され、Alの成分が約1~10%であるが、本実施例において2%を選択することが好ましく、かつSiドーピングレベルが約1E17~1E19/cmの範囲内にあるものである。第2の障壁層6Bを成長し終えた後、TMALを入れることを停止して、温度を10~50℃下げて第3の障壁層6Cを成長する。該第3の障壁層6Cは、材料がSiドーピングのGaN材料であり、成長速度が約0.6Å/sであり、厚さが約5~50Åにあり、かつSiドーピングレベルが約1E17~1E19/cmの範囲内にあるものである。第3の障壁層6Cを成長し終えた後、SiH4を入れることを停止して、温度を700~800℃に下げて、井戸層6Dを成長する。該井戸層6Dは、材料がInGaNであり、TMIN 900sccmを入れて作成され、成長速度が約0.2Å/sであり、厚さが約5~50Åにあり、本実施例において厚さが20Åを選択することが好ましく、井戸層にかかるInの平均組成が約19%であるものである。第3の発光セクションの周期数は、0~5の範囲内にあり、かつ周期ごとの量子井戸構造の材料成分は、同じである。本実施例では、第3の発光セクションが交互に積層された回数は、2回であることが好ましい。ここで、第3の発光セクションの障壁層の平均バンドギャップは、第1の発光セクションの平均バンドギャップよりも大きく、かつ第3の発光セクションの井戸層の平均バンドギャップは、第1の発光セクションの平均バンドギャップよりも小さく、これはP型側に近い発光セクションのキャリアの溢れ出しを効果的に抑えることを効果的に保証するとともに、発光セクションの材料にかかる応力を効果的に緩和することも保証することができ、ひいては小電流が注入される状態でのキャリアの輸送や再結合行為を改善することができることを目的とする。第3の発光セクションにおける障壁層の成長速度は、第1の発光セクションの障壁層の成長速度以下であり、かつ第3の発光セクションの井戸層の成長速度は、第1の発光セクションの井戸層の成長速度以下であり、これは、P型側に近い発光セクションが、比較的低い成長速度により更に良好な結晶体の品質を得ることができることを目的とする。
【0051】
(7)第3の発光セクションを成長し終えた後、温度を800~900℃に上げて、第2の発光セクション7を成長する。まず第1の障壁層7Aを成長し、本実施例では、該第1の障壁層7Aは、GaN材料を選択し、意図せずにドーピングされた層であり、成長速度が約0.3Å/sであり、かつ厚さが約5~50Åであることは好ましい。第1の障壁層7Aを成長し終えた後、温度を10~50℃上げて第2の障壁層7Bを成長する。該第2の障壁層材料は、SiドーピングのAlGaN材料であり、成長速度が約0.5Å/sであり、厚さが約30~100Åにあり、TMAL 3sccmを入れて作成され、Alの成分が約1~10%であるが、本実施例において2.5%を選択することが好ましく、かつSiドーピングレベルが約1E17~1E19/cmの範囲内にあるものである。第2の障壁層7Bを成長し終えた後、TMALを入れることを停止して、温度を10~50℃下げて第3の障壁層7Cを成長する。該第3の障壁層7Cは、材料がSiドーピングのGaN材料であり、成長速度が約0.3Å/sであり、厚さが約5~50Åにあるものである。第3の障壁層7Cを成長し終えた後、温度を700~800℃に下げて、井戸層7Dを成長する。該井戸層7Dは、材料がInGaNであり、TMIN 1000sccmを入れて作成され、成長速度が約0.1Å/sであり、厚さが約5~50Åにあり、本実施例において厚さが20Åを選択することが好ましく、井戸層のInの平均組成が約20%であるものである。井戸層を成長し終えた後、温度を800~900℃に上げて、第4の障壁層7Gを成長する。該第4の障壁層7Gは、材料がGaN/AlGaNであり、成長速度が約0.5Å/sであり、厚さが約50~100Åにあり、かつ該該第4の障壁層のAlの平均組成が約5~50%にあるが、本実施例において15%を選択することが好ましい。第2の発光セクションの周期数は、1~5の範囲内にあり、かつ周期ごとの量子井戸構造の材料成分は、同じである。本実施例では、第2の発光セクションが交互に積層された回数は、1回であることが好ましい。図5に示されるように、第2の発光セクションの障壁層の平均バンドギャップは、第3の発光セクションの平均バンドギャップ及び第1の発光セクションの平均バンドギャップよりも大きく、かつ第2の発光セクションの井戸層の平均バンドギャップは、第3の発光セクションの平均バンドギャップ及び第1の発光セクションの平均バンドギャップよりも小さく、第4の障壁層材料のバンドギャップは、第1の障壁層材料のバンドギャップと第2の障壁層材料のバンドギャップと第3の障壁層材料のバンドギャップ以上であり、第4の障壁層材料のバンドギャップを最も高く設計するのは、電子の溢れ出しを効果的に防いで、小電流が注入される状態でのキャリアの輸送や再結合行為を改善するためである。第2の発光セクションの井戸層の成長速度は、第3の発光セクションの井戸層の成長速度及び第1の発光セクションの井戸層の成長速度以下であり、これは、P型側に近い発光セクションが、比較的低い成長速度により更に良好な結晶体の品質を得ることができ、小電流が注入される状態でのキャリアの再結合行為を改善し、ひいては小電流が注入される状態での発光効率を向上させることができることを目的とする。
【0052】
上記をまとめると、該実施例は、MQW発光セクションが再結合構造となるように設計することによって、キャリアの注入効率や再結合効率を向上させて、キャリアの溢れ出しを効果的に抑えて電子と正孔との波動関数の重なり合いが増加し、ひいては小電流が注入される状態でのキャリアの輸送や再結合挙動を改善することができる。MQWの異なるセクションの厚さや成長速度を制御して、MQWと底層との格子不整合やMQWにおける井戸層の格子不整合を減少して応力を減少して、MQWの成長品質を改善して、効率のピーク値が小さい電流密度へ移動させて、低電流での発光効率を向上させることができる。
【0053】
(8)発光層を成長し終えた後、低温のP型層を成長し、これはMQWを続いての高温で破壊されないように保護することに加え、比較的に高い濃度の正孔を提供することを目的とする。
【0054】
(9)そして、温度を上げて高温のPAlGaN及び高温のPGaN層を成長して、表面を充填して平坦にする。
【0055】
(10)該エピタキシャル構造を有するエピタキシャルウェハーを用いて、水平サイズが19μm*31μmであるLEDチップを製造し、チップの状態でテストした。図10に示されるように、データから見られるように、電流密度が0.5A/cmである場合、従来のものと比べて明るさが約30%向上した。パッケージした後、光電変換効率(WPE)の電流密度(J)に伴う変化に関するテストを行なった。図11に示されるように、データから見られるように、光電変換効率のピーク値(peak-WPE)に対応する電流密度(J)が、4.0A/cmから0.7A/cmに下がった。
【0056】
実施例2
本実施例は、代替的な実施形態を提供し、具体的には以下のように提供する。
【0057】
発光セクションについて、以下のように説明する。実施例1と異なっている点は以下の通りである。本実施例は、多重井戸層となるように設計されたものである。第1の発光セクションについて、図6を参照する。第3の障壁層5Cを成長し終えた後、井戸層の温度(700~800℃)に下げる過程で第1の井戸層52Dを成長し始める。該第1の井戸層52Dは、TMIN 1000sccmを入れて作成され、材料がInGaNであり、成長速度が約0.6Å/sであり、かつ厚さが約3~8Åにあるものである。第1の井戸層を成長し終えた後、第2の井戸層52Eを成長する。該第2の井戸層52Eは、材料がInGaNであり、成長速度が約0.3Å/sであり、かつ厚さが約5~15Åである。第2の井戸層を成長し終えた後、障壁層の温度(800~900℃)に上げる過程で第3の井戸層52Fを成長し始める。該第3の井戸層52Fは、材料がInGaNであり、成長速度が約0.6Å/sであり、かつ厚さが約3~8Åである。Inの平均組成は、約20%である。
【0058】
第3の発光セクションについて、図7を参照する。第3の障壁層6Cを成長し終えた後、井戸層の温度(700~800℃)に下げる過程で第1の井戸層62Dを成長し始める。該第1の井戸層62Dは、材料がInGaNであり、TMIN 1000sccmを入れて作成され、成長速度が約0.4Å/sであり、かつ厚さが約3~8Åであるものである。第1の井戸層を成長し終えた後、第2の井戸層62Eを成長する。該第2の井戸層62Eは、材料がInGaNであり、成長速度が約0.2Å/sであり、かつ厚さが約5~15Åである。第2の井戸層を成長し終えた後、障壁層の温度(800~900℃)に上げる過程で第3の井戸層62Fを成長し始める。該第3の井戸層62Fは、材料がInGaNであり、成長速度が約0.4Å/sであり、かつ厚さが約3~8Åであものである。Inの平均組成は約20%である。
【0059】
第2の発光セクションについて、図8を参照する。第3の障壁層7Cを成長し終えた後、井戸層の温度(700~800℃)に下げる過程で第1の井戸層72Dを成長し始める。該第1の井戸層72Dは、材料がInGaNであり、TMIN 1000sccmを入れて作成され、成長速度が約0.2Å/sであり、かつ厚さが約3~8Åであるものである。第1の井戸層72Dを成長し終えた後、第2の井戸層72Eを成長する。該第2の井戸層72Eは、材料がInGaNであり、成長速度が約0.1Å/sであり、かつ厚さが約5~15Åであるものである。第2の井戸層72Eを成長し終えた後、温度を障壁層の温度(800~900℃)に上げる過程で第3の井戸層72Fを成長し始める。該第3の井戸層72Fは、材料がInGaNであり、成長速度が約0.1Å/sであり、かつ厚さが約3~8Åであるものである。Inの平均組成は、約20%である。
【0060】
本実施例は、高いInの平均組成の井戸層及び障壁層の格子不整合応力を更に改善することができるように、多層の井戸層となるように設計されるものである。この設計は、異なる成長温度の範囲における井戸層の成長速度を調整することによって、単一の成長周期内の障壁層及び井戸層の格子不整合応力を更に改善して、MQW結晶の品質を改善して、ひいてはディバイスの低電流にかかる特性を改善させることができる。
【0061】
実施例3
本実施例は、代替的な実施形態を提供し、具体的に以下のように提供する。実施例1と異なっている点は、再結合発光セクションが、第1の発光セクションと第2の発光セクションとの組み合わせ形式となっている点にある。
【0062】
実施例4
本実施例は、代替的な実施形態を提供し、具体的に以下のように提供する。エピタキシャル構造は、基板と、核生成層と、U-GaN層と、N-GaN層と、応力緩和層と、P型層と、を備えている。発光セクションについて、以下のように説明する。実施例1と異なっている点は、第2の発光セクションにおける第4の障壁層の材料がGaN/AlGaN/AlNの組み合わせまたはその重なり合いの組み合わせの構造となっていることにあり、例えば、(GaN/AlGaN/AlN)のN回の重なり合い、(GaN/AlGaN)のN回の重なり合い/AlN、GaN/(AlGaN/AlN)のN回の重なり合いであり、かつ1≦N≦20となっている。Alの平均組成は、約5~50%にある。本実施例にかかる第4の障壁層は、GaN/AlGaN/AlNの組み合わせまたはその重なり合いの組み合わせの構造となるように設計されたものであり、これは、キャリアの溢れ出しをより一層抑えて電子と正孔との波動関数の重なり合いが増加し、ひいては小電流が注入される状態でのキャリアの再結合挙動を改善して、低電流での明るさを向上させることができることを目的とする。
【0063】
上述の具体的な実施方式は本発明の部分的な好ましい実施例に過ぎず、以上の実施例は更にあらゆる組み合わせや変形を行える。本発明の範囲は以上の実施例に限定されるものではなく、本発明に基づくあらゆる変更も、本発明の保護の範囲内にあることを理解されたい。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 U-GaN層
3 N-GaN層
4 応力緩和層
5 第1の発光セクション(第1の障壁層5Aと、第2の障壁層5Bと、第3の障壁層5Cと、井戸層5Dと、を含む)
6 第3の発光セクション(第1の障壁層6Aと、第2の障壁層6Bと、第3の障壁層6Cと、井戸層6Dと、を含む)
7 第2の発光セクション(第1の障壁層7Aと、第2の障壁層7Bと、第3の障壁層7Cと、井戸層7Dと、第2の障壁層7Gと、を含む)
8 P-GaN層
51D/62D/72D 第1の井戸層
52E/62E/72E 第2の井戸層
52F/62F/72F 第3の井戸層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【国際調査報告】