(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】オボアルブミン及びその天然バリアントの発現
(51)【国際特許分類】
C12N 1/15 20060101AFI20230315BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230315BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230315BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230315BHJP
C07K 14/77 20060101ALN20230315BHJP
C12R 1/685 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12P21/02 C
C12N15/12
C07K14/77
C12R1:685
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542767
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2021050650
(87)【国際公開番号】W WO2021144342
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520384840
【氏名又は名称】ザ プロテイン ブルワリー ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】The Protein Brewery B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アーナウツ, ジョイス ジョゼフィーヌ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】バスケス ヴィタリ, マリア
(72)【発明者】
【氏名】パレニコヴァ, ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】ローレ, ニールス
(72)【発明者】
【氏名】クライネ ハール, マロエ
(72)【発明者】
【氏名】ライングード, ジョス
(72)【発明者】
【氏名】マースデン, ステファン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】デ ラート, ヴィルヘルムス テオドルス アントニウス マリア
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG24
4B064BJ12
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4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA70
4H045EA01
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、真菌細胞における、このようなタンパク質、例えば、オボアルブミンの発現による、ヒトによる摂取のための動物由来のタンパク質の、動物によらない作製に関する。本発明は、オボアルブミンなど、動物由来のタンパク質の作製のために改変された真菌細胞と、これらの細胞が、動物由来のタンパク質の作製のために使用される方法とに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の動物由来食用タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含み、前記ヌクレオチド配列が、コードされる目的のタンパク質の、真菌宿主細胞による発現をもたらすことが可能である、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されている真菌宿主細胞。
【請求項2】
前記調節配列が、高度発現真菌タンパク質のプロモーターであり、好ましくは、前記高度発現真菌タンパク質が、酸安定性αアミラーゼ、α-アミラーゼ、タカアミラーゼ、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、スクラーゼ、アセトアミダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼから選択され、より好ましくは、前記プロモーターが、クロコウジカビ(A.niger)グルコアミラーゼプロモーターである、請求項1に記載の真菌宿主細胞。
【請求項3】
前記目的の動物由来食用タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列が、前記プロモーターが由来する、前記高度発現真菌タンパク質の天然コドン使用に照らしてコドン最適化されており、好ましくは、前記高度発現真菌タンパク質が、クロコウジカビグルコアミラーゼである、請求項1又は請求項2に記載の真菌宿主細胞。
【請求項4】
前記発現カセットが、前記高度発現真菌タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子座に組み込まれ、好ましくは、前記遺伝子座が、増幅遺伝子座であり、より好ましくは、前記遺伝子座が、クロコウジカビglaA遺伝子座である、請求項1~3のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項5】
前記発現カセットが、高度発現分泌真菌タンパク質に由来するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列と、任意選択で、前記目的の動物由来食用タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列に、インフレームで、作動可能に連結されたプロ配列とを含み、好ましくは、前記シグナル配列、及び任意選択のプロ配列が、クロコウジカビグルコアミラーゼプレプロ配列である、請求項1~4のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項6】
前記発現カセットが、N末端からC末端の方向に:目的のタンパク質のN末端へと融合しているクロコウジカビグルコアミラーゼプレプロ配列;任意選択で、成熟クロコウジカビグルコアミラーゼアミノ酸配列のうちの、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%;任意選択で、切断型リンカーポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする、請求項5に記載の真菌宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞が、酵母又は糸状菌であり、好ましくは、糸状菌宿主細胞が、黒斑病菌(Alternaria alternata)、アポフィソミセス・バリアビリス(Apophysomyces variabilis)、アスペルギルス属(Aspergillus)種、アスペルギルス・フミガートゥス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、クラドフィアロフォラ属(Cladophialophora)種、フォンセケア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フサリウム属(Fusarium)種、フサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・ソラニー(Fusarium solani)、リクテイミア属(Lichtheimia)種、リクテイミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera)、リクテイミア・ラモーサ(Lichtheimia ramosa)、ミセリオフトーラ属(Myceliophthora)種、ミセリオフトーラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、クモノスカビ属(Rhizopus)種、クモノスカビ(Rhizopus microsporus)、リゾムコール属(Rhizomucor)種、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、トリコデルマ属(Trichoderma)種、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)、トリコフィトン属(Trichophyton)種、トリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)、及び紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)から選択される種に属し、これらのうち、クロコウジカビ種の株が、最も好ましい、請求項1~6のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項8】
前記宿主細胞が、酵母様形態で増殖する能力を有する糸状菌株であり、好ましくは、前記株が、クロコウジカビ株であるCICC2462、又はCICC2462株の単一コロニー分離株及び/若しくは派生株である、請求項7に記載の真菌宿主細胞。
【請求項9】
目的の動物由来食用タンパク質が、ヘムタンパク質、乳タンパク質、又は卵タンパク質であり、好ましくは、卵白タンパク質であり、最も好ましくは、オボアルブミンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項10】
前記オボアルブミンが、ニワトリ、ペリカン、ウズラ、ハト、ダチョウ、チドリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、ヤケイ、クジャク、ヤマウズラ、キジ、エミュー、レア、及びキーウィからなる群から選択される鳥類に由来するオボアルブミンのアミノ酸配列に対する、少なくとも50%の同一性を伴うアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の真菌宿主細胞。
【請求項11】
目的の動物由来食用タンパク質を作製するためのプロセスであって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞を、前記目的のタンパク質の発現をもたらす条件下で、発酵槽の培地において培養するステップと;
b)任意選択で、前記目的のタンパク質を回収するステップと
を含み、
好ましくは、前記目的のタンパク質が、オボアルブミンである
プロセス。
【請求項12】
ステップa)において、前記真菌宿主細胞が、pH5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、若しくは7.5以上であるか、又はpH9.0、8.5、若しくは8.0以下であるpHで培養される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
ステップa)において、発酵槽における培地への機械力の入力が、2.5、2.0、1.8、1.6、1.4、1.0、0.5、0.2、又は0.1kW/m
3を超えない、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップb)において、前記目的のタンパク質の回収が、少なくとも第1のアニオン交換ステップを含み、ステップa)において得られた培養培地が、pH6~9の範囲のpHにおいて、0.08MのNaClのイオン強度と同等未満のイオン強度で、アニオン交換カラムへとアプライされ、前記目的のタンパク質が、フロースルーに回収され、任意選択で、第1のアニオン交換ステップにおいて得られたフロースルーが、第1のステップと同一の条件下で、第2のアニオン交換ステップにかけられ、前記目的のタンパク質が、第2のアニオン交換ステップに由来するフロースルーに回収され、好ましくは、前記目的のタンパク質が、オボアルブミンである、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
目的の動物由来食用タンパク質を、前記タンパク質が発現されている、真菌宿主細胞の使用済み培養培地から精製するためのプロセスであって、
a)使用済み培養培地が、pH6~9の範囲のpHにおいて、0.08MのNaClのイオン強度と同等未満のイオン強度で、アニオン交換カラムへとアプライされ、前記目的のタンパク質が、フロースルーに回収され、好ましくは、前記目的のタンパク質が、オボアルブミンである、第1のアニオン交換ステップと;
b)任意選択で、ステップa)において得られたフロースルーが、第1のステップと同一の条件下で、アニオン交換にかけられ、前記目的のタンパク質が、フロースルーに回収される、第2のアニオン交換ステップと
を含み、
好ましくは、前記目的のタンパク質が、オボアルブミンである
プロセス。
【請求項16】
目的の動物由来食用タンパク質の作製のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞、又は請求項11~15のいずれか一項に記載のプロセスの使用であって、好ましくは、前記目的のタンパク質が、オボアルブミンである使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子微生物学、食品技術、及び発酵技術の分野に関する。特に、本発明は、真菌細胞における、このようなタンパク質、例えば、オボアルブミンの発現による、ヒトによる摂取のための動物由来のタンパク質の、動物によらない作製に関する。本発明は、オボアルブミンなど、動物由来のタンパク質の作製のために改変された真菌細胞と、これらの細胞が、このようなタンパク質を作製するのに使用される方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
卵白は、多くの食品適用において、結合、起泡、ゲル化を目的として使用される。世界人口は、2050年には、70億人から90億人へと増加し、2100年には、110億へと増加すると予測され、世界の食品生産は、大幅に増加する必要がある。これと同時に、地球規模の温暖化のために、利用可能な農耕用地表及び真水の灌漑水が低減している。卵の生産プロセスは、ニワトリへと施されるダイズ及び穀類の栽培を介して、著明量の水を要求する。このプロセスについての、さらなる検討事項は、肥料を介する窒素の排出、卵産物におけるサルモネラ属(Salmonella)及びリステリア属(Listeria)によるヒト健康への脅威、並びに養鶏場における抗生剤の使用により引き起こされる抗生剤耐性の増大を含むアウトプットである。ヒトの健康は、養鶏場におけるダニを駆除するのに使用され、卵自体に蓄積されうる、フィプロニルなど、大量の殺虫剤の使用により、さらに脅かされる。これらの懸念を念頭に、良好な栄養価及び機能的特性を伴う、植物ベースの食用生成物に対する、とりわけ、完全菜食主義者である摂取者(動物由来生成物を摂取しない)からの要望が増大している。
【0003】
卵白タンパク質を、オボアルブミンと同様に、微生物において発現させ、それらを、滅菌発酵槽において培養するという概念は、機能的成分を、卵白と同様に得るための代替法と考えられうる。卵白タンパク質を、発酵により作製するために、生産は、より土地資源効率的であり、より水資源効率的であり、地球規模の温暖化因子への寄与を軽減することが好ましい。1ヘクター当たりのオボアルブミンの生産量は、1ヘクター当たり平均7トンの鶏餌(1ヘクター当たり10トンのトウモロコシ及び4トンのダイズ)を仮定し、次いで、卵1kg当たり2kgの鶏餌及び卵1個当たり6%の卵白タンパク質(残りは、卵殻、卵黄、及び水である)を仮定することにより計算された。卵白タンパク質におけるオボアルブミンが54%であると仮定すると、動物価値連鎖系によるオボアルブミン総生産量は、1年当たりに得られるオボアルブミン:7×0.06×0.54/2=113kgである。
【0004】
アンモニアを、真菌系における窒素供給源として使用する場合の、糖からのタンパク質の生産量は、重量ベースで、最大20%である。真菌により産生されるタンパク質は、細胞から、培養培地へと分泌され、次いで、目的のタンパク質は、精密濾過、濾過、遠心分離、又はこれらの組合せを介して、細胞を、分泌型タンパク質から分離することにより、発酵槽から採取されうる。次いで、無細胞タンパク質溶液は、必要な場合、限外濾過又は真空蒸発により、所望のタンパク質濃度へと濃縮されうる。その後、タンパク質は、セルラーゼ(トリコデルマ属(Trichoderma))又はアミラーゼ(アスペルギルス属(Aspergillus))など、存在しうる真菌バックグラウンドタンパク質からさらに精製されうる。次いで、タンパク質は、凍結乾燥又は噴霧乾燥など、当技術分野で公知の方法により、粉末へと乾燥させられる。
【0005】
代替法は、水資源効率的で、高収率である、サトウキビ若しくはテンサイ、又はトウモロコシなどの糖科作物を使用しうる。こうして、1年当たり1ヘクター当たり15~20トンを超える糖を採取しうる。20%の糖収率及び1ヘクター当たり17.5トンの糖を仮定すると、理論的には、1ヘクター当たり3500kgのオボアルブミンが採取されうる。これは、前述された、現行の卵生産プロセスの30倍である。
【0006】
真菌は、最大で、100g/Lのタンパク質を産生するが、酵母は、同じ糖入力で、10g/Lを産生するに過ぎないので、酵母を使用すると、動物系に対する改善が、3倍だけであるのに対し、真菌により、本発明者らは、30倍の土地使用低減を達することができると考えられうる。多くの真菌及び酵母が、酵素及び他のタンパク質の作製のために、産業的スケールで利用されている。最もよく利用される酵母は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)である。K.ラクティス(K.lactis)については、報告された、発酵培養液1L当たりの最大タンパク質発現が、約数gである(van Ooyenら、2006)のに対し、メタノール資化酵母(P.pastoris)については、同発現が、約2倍である(Werten M.W.T.ら、2019)。しかし、メチロトローフ酵母(メタノール資化酵母)の加工に基づく生産プロセスは、誘導剤としてのメタノールに依拠するプロモーターの使用のために、防爆発酵設備の設置を要求する。大半の工業用酵素は、アスペルギルス属種、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)、ミセリオフトーラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)などの糸状真菌により作製される。糸状真菌は、酵母のタンパク質分泌能の数倍である、それらの極高タンパク質分泌能で公知である。例えば、Dyadic International Inc.(US)により、工業用タンパク質及び工業用酵素並びに医薬用タンパク質及び医薬用酵素の生産のために開発され、かつて、クリソスポリウム・ラクナウウェンセ(Chrysosporium lucknowense)C1として公知であった、M.テルモフィラ(M.thermophila)について、100g/Lを超える、分泌型タンパク質の生産力価が報告されている(Visser H.ら、2011)。クロコウジカビ(A.niger)及びT.レエセイ(T.reesei)について、生産力価は、質数十g/Lであり、おそらく、タンパク質100g/Lを超える力価に達すると考えられる(Owen Ward、2012)。
【0007】
ニワトリオボアルブミンは、酵母である、出芽酵母(S.cerevisiae)(Mercereau-Puijalon O.ら、1980)、及びメタノール資化酵母(Ito K.ら、2005)において発現されている。Itoらにより報告されたオボアルブミンの全分泌量が、約10mg/Lであったのに対し、出芽酵母では、オボアルブミンは、無細胞抽出物における、タンパク質5~20ng/mgの間の量で見出された。メタノール資化酵母により分泌されたオボアルブミンは、ニワトリオボアルブミンと比較した場合に、モノグリコシル化又はジグリコシル化されていることが見出されたが、N末端のアセチル化及びリン酸化は見出されなかった(Ito K.ら、2005、前出)。ニワトリオボアルブミン分子は、主にモノグリコシル化されており、N末端は、ゼロ、1つ又は2つのセリン残基において、アセチル化及びリン酸化されている(Nisbet A.D.ら、1981)。Clara Foods CO.、San Francisco、CA(US)は、それらの特許出願(米国特許第2018355020 A1号)において、鶏卵に存在するオボアルブミンを含む、いくつかのタンパク質の、メタノール資化酵母におけるクローニング及び過剰発現について記載している。しかし、作製されたオボアルブミンの量については、言及されていない。
【0008】
文献では、異なる鳥類に由来するオボアルブミンの異種発現について報告されている。Krizkovaら(1992)は、ウズラから、cDNAを単離し、出芽酵母において発現させた。タンパク質は、無細胞抽出物において検出された。Yangら(2009)は、ヒメウズラオボアルブミン遺伝子のクローニング、及びメタノール資化酵母における過剰発現について記載したが、報告された収率は、5.45g/Lの分泌オボアルブミンであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、当技術分野では、オボアルブミンなどの卵白タンパク質を含む、食肉タンパク質、乳タンパク質、及び家禽タンパク質など、ヒト摂取のための動物由来タンパク質の微生物によるより効率的な作製が、依然として必要とされている。本発明は、糸状真菌における、このような動物由来のタンパク質の発現のための手段及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、目的の動物由来食用タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含み、ヌクレオチド配列が、コードされる目的のタンパク質の、真菌宿主細胞による発現をもたらすことが可能である、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されている真菌宿主細胞に関する。
【0011】
一実施形態では、調節配列が、高度発現真菌タンパク質のプロモーターであり、好ましくは、高度発現真菌タンパク質が、酸安定性αアミラーゼ、α-アミラーゼ、タカアミラーゼ、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、スクラーゼ、アセトアミダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼから選択され、より好ましくは、プロモーターが、クロコウジカビグルコアミラーゼプロモーターである、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0012】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターが由来する、高度発現真菌タンパク質の天然コドン使用に照らしてコドン最適化されており、好ましくは、高度発現真菌タンパク質が、クロコウジカビグルコアミラーゼである、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0013】
一実施形態では、発現カセットが、高度発現真菌タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子座に組み込まれ、好ましくは、遺伝子座が、増幅遺伝子座であり、より好ましくは、遺伝子座が、クロコウジカビglaA遺伝子座である、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。一部の実施形態では、発現カセットは、遺伝子置換により、遺伝子座に組み込まれ、好ましくは、発現カセットは、真菌ゲノムにおける、高度発現真菌タンパク質をコードする遺伝子の、1つを超えるコピーを置きかえ、より好ましくは、遺伝子座は、クロコウジカビglaA遺伝子座である。
【0014】
一実施形態では、発現カセットが、高度発現分泌真菌タンパク質に由来するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列と、任意選択で、目的の動物由来食用タンパク質をコードするヌクレオチド配列に、インフレームで、作動可能に連結されたプロ配列とを含み、好ましくは、シグナル配列、及び任意選択のプロ配列が、クロコウジカビグルコアミラーゼプレプロ配列である、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0015】
一実施形態では、発現カセットが、N末端からC末端の方向に:目的のタンパク質のN末端へと融合しているクロコウジカビグルコアミラーゼプレプロ配列;任意選択で、成熟クロコウジカビグルコアミラーゼアミノ酸配列のうちの、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%;任意選択で、切断型リンカーポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0016】
一実施形態では、宿主細胞が、酵母又は糸状菌であり、好ましくは、糸状菌宿主細胞が、黒斑病菌(Alternaria alternata)、アポフィソミセス・バリアビリス(Apophysomyces variabilis)、アスペルギルス属種、アスペルギルス・フミガートゥス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、クラドフィアロフォラ属(Cladophialophora)種、フォンセケア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フサリウム属(Fusarium)種、フサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・ソラニー(Fusarium solani)、リクテイミア属(Lichtheimia)種、リクテイミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera)、リクテイミア・ラモーサ(Lichtheimia ramosa)、ミセリオフトーラ属(Myceliophthora)種、ミセリオフトーラ・テルモフィラ、クモノスカビ属(Rhizopus)種、クモノスカビ(Rhizopus microsporus)、リゾムコール属(Rhizomucor)種、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、トリコデルマ属種、トリコデルマ・レエセイ、トリコフィトン属(Trichophyton)種、トリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)、及び紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)から選択される種に属し、これらのうち、クロコウジカビ種の株が、最も好ましい、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0017】
一実施形態では、宿主細胞が、酵母様形態で増殖する能力を有する糸状菌株であり、好ましくは、株が、クロコウジカビ株であるCICC2462、又はCICC2462株の単一コロニー分離株及び/若しくは派生株である、本発明に従う真菌宿主細胞が提供される。
【0018】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質が、ヘムタンパク質、乳タンパク質、又は卵タンパク質であり、好ましくは、卵白タンパク質であり、最も好ましくは、オボアルブミンである、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0019】
一実施形態では、オボアルブミンが、ニワトリ、ペリカン、ウズラ、ハト、ダチョウ、チドリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、ヤケイ、クジャク、ヤマウズラ、キジ、エミュー、レア、及びキーウィからなる群から選択される鳥類に由来するオボアルブミンのアミノ酸配列に対する、少なくとも50%の同一性を伴うアミノ酸配列を含む、本発明に従う真菌宿主細胞真菌宿主細胞が提供される。
【0020】
さらなる態様では、目的の動物由来食用タンパク質を作製するためのプロセスであって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載の真菌宿主細胞を、目的のタンパク質の発現をもたらす条件下で、発酵槽の培地において培養するステップと;
b)任意選択で、目的のタンパク質を回収するステップと
を含み、
好ましくは、目的のタンパク質が、オボアルブミンである
プロセスが提供される。
【0021】
一実施形態では、ステップa)において、真菌宿主細胞が、pH5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、若しくは8.5以上であるpH、及び/又は10、9.5.9.0、8.5、8.0、7.5、若しくは7.0以下であるpHで培養される、本発明に従うプロセスが提供される。
【0022】
一実施形態では、ステップa)において、発酵槽における培地への機械力の入力が、2.5、2.0、1.8、1.6、1.4、1.0、0.5、0.2、又は0.1kW/m3を超えない、本発明に従う真菌宿主細胞プロセスが提供される。
【0023】
一実施形態では、ステップa)において、真菌宿主細胞が、気泡塔が装備された発酵槽において培養され、好ましくは、宿主細胞が、発酵槽における培地への機械力の入力を伴わずに培養される、本発明に従うプロセスが提供される。
【0024】
さらなる態様では、目的の動物由来食用タンパク質の作製のための、本発明に従う真菌宿主細胞、又は本発明に従うプロセスの使用であって、好ましくは、目的のタンパク質が、オボアルブミンである使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】選択された可食鳥類についての、オボアルブミンのアミノ酸配列アライメントを示す図である。ニワトリオボアルブミン配列では、アレルギー誘発性エピトープを、枠囲いにより描示する。1とマークされた枠囲いは、IgEアレルギー誘発性エピトープ(Mine及びRupa、2003)を指し示し;2とマークされた枠囲いは、IEDBデータベース及びSEDBデータベースに由来するエピトープを指し示し;、3とマークされた枠囲いは、好塩基球誘導エピトープ(Honmaら、1996)を指し示す。
【
図2】全ゲノムに基づく、クロコウジカビについてのコドン使用表である。
【
図3A】96ウェル深型ウェルプレート(DWP)又はシェークフラスコ(試料ごとに、どの供給源に由来するのかが言明される)において発酵させられ、選択されたクロコウジカビのオボアルブミン形質転換体についてのSDS-PAGEの例を示す図である。OVA原液は、オボアルブミン標準物質(Invivogen)に対応する。5μlのベンチマーク(BenchMark)(商標)Unstained Protein Ladderwereをゲルにロードして、タンパク質バンドの分子量を決定した。 A)レーンは、クロコウジカビの野生型、以下の異なる発現構築物及びOVA標準物質:1.BZASNI.22a(シェークフラスコ);2.DDDK部位を伴う、GLA502キャリアであるニワトリOVA(CO glaA)(シェークフラスコ);3.ニワトリOVA(CO glaA、DWP);4.ニワトリOVA(全ゲノムCO、DWP);5.ペリカンOVA(全ゲノムCO、DWP);6.ウズラOVA(全ゲノムCO、DWP);7.BZASNI.48(シェークフラスコ);8.ニワトリOVA(CO glaA、DWP);9.ペリカンOVA(CO glaA、DWP);10.OVA標準物質(0.05g/l);11.OVA標準物質(0.1g/l);及び12.OVA標準物質(0.3g/l)を保有する、クロコウジカビのOVA形質転換体を含有する。レーン2~6における試料は、BZASNI.22aバックグラウンドにおいて作製し、レーン8及び9における試料は、BZASNI.48バックグラウンドにおいて作製した。OVAは、オボアルブミンを表し、COは、コドン最適化を表す。
【
図3B】96ウェル深型ウェルプレート(DWP)又はシェークフラスコ(試料ごとに、どの供給源に由来するのかが言明される)において発酵させられ、選択されたクロコウジカビのオボアルブミン形質転換体についてのSDS-PAGEの例を示す図である。OVA原液は、オボアルブミン標準物質(Invivogen)に対応する。5μlのベンチマーク(BenchMark)(商標)Unstained Protein Ladderwereをゲルにロードして、タンパク質バンドの分子量を決定した。 B)レーンは、クロコウジカビの野生型、以下の異なる発現構築物及びOVA標準物質:1.BZASNI.22a(シェークフラスコ);2.DDDK部位を伴う、GLA502キャリアであるニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ);3.ニワトリOVA(CO glaA、DWP);4.BZASNI.48(シェークフラスコ);5.ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ);6.GLA54ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ)形質転換体1;7.GLA54ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ)形質転換体2;8.GLA100ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ)形質転換体1;9.GLA100ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ)形質転換体2;10.GLA502ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ)形質転換体1;11.GLA502ニワトリOVA(CO glaA、シェークフラスコ)形質転換体2;12.OVA標準物質(0.05g/l);13.OVA標準物質(0.1g/l);及び14.OVA標準物質(0.3g/l)を保有する、クロコウジカビのOVA形質転換体を含有する。レーン2及び3における試料は、BZASNI.22aバックグラウンドにおいて作製し、レーン6~11における試料は、BZASNI.48バックグラウンドにおいて作製した。
【
図4】5日目(d5)及び6日目(d6)における、DWP(深型ウェルプレート)培養物の上清において、ニワトリオボアルブミンポリクローナル抗体を、使用するウェスタンブロットにより検出される、クロコウジカビのBZESCO.22形質転換体(レーン25及び26)、及びBZESCO.23形質転換体(バックグラウンドレーン20)における、ニワトリオボアルブミンの過剰発現を示す図である。左パネルは、SDS-PAGEゲルに対応し、右パネルは、左パネルにおいて示される、同一のSDS-PAGEゲルのウェスタンブロットに対応する。各パネルにおける、右端の矢印は、標準物質(単量体)のオボアルブミン(Invivogen)の位置を指し示し、上記で見出された2つの矢印は、互いに、クロコウジカビにおいて過剰発現されたニワトリオボアルブミンを指し示す。
【
図5】クロコウジカビBZASNI.33の上清の発酵試料の濾過物(0.2μm)についてのSDS-PAGEを示す図である。S1~S5は、それぞれ、5Lの発酵槽における発酵の0.5、17.5、32、41、47.5時間後の時点に対応する。矢印は、ニワトリオボアルブミンの分泌を描示する。オボアルブミン標準物質(
図5の左図)は、Invivogenから購入した。
【
図6】シェークフラスコにおけるクロコウジカビBZASNI.60において産生されたニワトリオボアルブミンの精製を示す図である。(A)アニオン交換カラムにおける精製の第1のステップである。(B)第1のステップから得られたフロースルー画分であって、オボアルブミンを含有するフロースルー画分を使用する、アニオン交換カラムにおける、第2ステップの精製である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される技術用語及び学術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。当業者は、本発明の実施において使用されうる、本明細書で記載される方法及び材料と同様の又は同等である、多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、いかなる形であれ、この方法に限定されない。
【0027】
下記では、本発明の目的で、以下の用語が規定される。
【0028】
本文献及びその特許請求の範囲では、「~を含む」という動詞及びその活用形は、この語に後続する項目が含まれ、詳細に言及されない項目が除外されないことを意味するように、非限定的な意味で使用される。加えて、不定冠詞「ある(a)」又は「ある(an)」による、要素への言及は、文脈が、要素のうちの1つが存在し、1つだけが存在することを明確に要求しない限りにおいて、1つを超える要素が存在する可能性を除外しない。不定冠詞「ある(a)」又は「ある(an)」は通例、「少なくとも1つの」を意味する。
【0029】
本明細書で使用される、「及び/又は」という用語は、言明される場合のうちの1つ又は複数が、単独で、又は言明される場合のうちの少なくとも1つ、最大で、言明される場合の全てと組み合わせて生じうることを指し示す。
【0030】
本明細書で、「少なくとも」と共に使用される、特定の値は、この特定の値、又はこれを超える値を意味する。例えば、「少なくとも2」は、「2つ又はこれを超える」、すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、・・・などと同じ意味であると理解される。
【0031】
数値と関連して使用される場合の「約」又は「およそ」(例えば、約10)は、値が、所与の値(10の値)より、値の0.1%大きい値又は小さい値でありうることを意味することが好ましい。
【0032】
本明細書では、「相同性」、「配列同一性」などの用語は、互換的に使用される。本明細書では、配列同一性は、配列を比較することにより決定される、2つ若しくはこれを超えるアミノ酸(ポリペプチド又はタンパク質)配列、又は2つ若しくはこれを超える核酸(ポリヌクレオチド)配列の間の関係として規定される。当技術分野では、「同一性」はまた、このような配列の連なりの間のマッチにより決定される通り、アミノ酸又は核酸配列の間の、配列類縁性程度も意味する。2つのアミノ酸配列の間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存的アミノ酸置換基を、第2のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。「同一性」及び「類似性」は、公知の方法により、たやすく計算されうる。
【0033】
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じて、グローバルアルゴリズム又はローカルアライメントアルゴリズムを使用する、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列のアライメントにより決定されうる。同様の長さの配列が、好ましくは、配列を、全長にわたり、最適にアライメントする、グローバルアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム)を使用してアライメントされるのに対し、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith-Watermanアルゴリズム)を使用してアライメントされる。配列は、少なくともある特定の最小の配列同一性百分率(下記で規定される通り)を共有する場合(例えば、デフォルトパラメータを使用する、GAPプログラム又はBESTFITプログラムにより、最適にアライメントされた場合)、「実質的に同一」又は「本質的に同様」であると称される。GAPは、Needleman及びWunschによるグローバルアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列を、マッチの数を最大化し、ギャップの数を最小化して、それらの全長(entire length(full length))にわたりアライメントする。グローバルアライメントは、2つの配列が、同様の長さを有する場合に、配列同一性を決定するのに使用されると適切である。一般に、GAPのデフォルトパラメータは、ギャップ創出ペナルティー=50(ポリヌクレオチド)/8(タンパク質)、及びギャップ伸長ペナルティー=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)として使用される。ヌクレオチドのために、使用されるデフォルト評定マトリックスは、nwsgapdnaであり、タンパク質のために、デフォルト評定マトリックスは、Blosum62(Henikoff及びHenikoff、1992、PNA、S89、915~919)である。配列同一性百分率のための、配列アライメント及び配列スコアは、上記のGAPについて、同じパラメータを使用するか、又はデフォルトの設定(「needle」及び「water」の両方について、タンパク質アライメント及びDNAアライメントの両方について、デフォルトのギャップ開始ペナルティーは、10.0であり、デフォルトのギャップ伸長ペナルティーは、0.5であり;デフォルトの評定マトリックスは、タンパク質については、Blosum62であり、DNAについては、DNAFullである)を使用する、EmbossWIN version 2.10.0において、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121-3752 USAから市販されている、GCG Wisconsin Package、Version 10.3などのコンピュータプログラムを使用するか、又は「needle」プログラム(Needleman-Wunschグローバルアルゴリズムを使用する)、若しくは「water」プログラム(Smith-Watermanローカルアルゴリズムを使用する)など、オープンソースのソフトウェアを使用して決定されうる。配列が、実質的に異なる全長を有する場合は、Smith-Watermanアルゴリズムを使用するローカルアライメントなどのローカルアライメントが好ましい。
【0034】
代替的に、類似性百分率又は同一性百分率は、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、公開データベースに対して検索することにより決定されうる。こうして、本発明の核酸配列及びタンパク質配列は、例えば、公開データベースに対して、検索を実施して、他のファミリーメンバー又は類縁の配列を同定するための、「クエリー配列」として、さらに使用されうる。このような検索は、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.、215:403~10による、BLASTnプログラム及びBLASTxプログラム(version 2.0)を使用して実施されうる。BLASTによるヌクレオチド検索は、スコア=100、ワード長=12とするNBLASTプログラムにより、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るように実施されうる。BLASTによるタンパク質検索は、スコア=50、ワード長=3とするBLASTxプログラムにより、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るように実施されうる。比較を目的として、ギャップ付きアライメントを得るために、Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.、25(17):3389~3402において記載されている通りに、Gapped BLASTが利用されうる。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを活用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメータが使用されうる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/における、National Center for Biotechnology Informationのホームページを参照されたい。
【0035】
任意選択で、当業者に明らかである通り、アミノ酸類似性の程度の決定において、当業者はまた、いわゆる「保存的」アミノ酸置換も考慮に入れることができる。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換可能性を指す。保存的置換のためのアミノ酸残基のクラスの例は、下記の表に与えられる。
【表1】
【表2】
【表3】
【0036】
本明細書で使用される、「選択的にハイブリダイズすること」、「選択的にハイブリダイズする」という用語、及び同様の用語は、その下で、ヌクレオチド配列が、互いと、少なくとも66%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、なおより好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はより好ましくは、少なくとも99%相同であり、典型的に、なおも互いとハイブリダイズする、ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件について記載することが意図される。すなわち、このようなハイブリダイズする配列は、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、なおより好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を共有しうる。
【0037】
好ましい、このようなハイブリダイゼーション条件についての非限定例は、約45℃、6倍濃度の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーションに続く、約50℃、好ましくは、約55℃、好ましくは、約60℃であり、なおより好ましくは、約65℃、1倍濃度のSSC、0.1%のSDSにおける、1回又は複数回の洗浄である。
【0038】
高度に厳密な条件は、例えば、約68℃、5倍濃度SSC/5倍濃度デンハルト液/1.0%のSDSにおけるハイブリダイゼーション、及び室温、0.2倍濃度SSC/0.1%のSDSにおける洗浄を含む。代替的に、洗浄は、42℃で実施されうる。
【0039】
当業者は、どの条件が、厳密なハイブリダイゼーション条件、及び高度に厳密なハイブリダイゼーション条件に該当するのかが分かるであろう。当技術分野では、このような条件に関する、さらなる指針は、例えば、Sambrookら、1989、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Press、N.Y.;並びにAusubelら(編)、Sambrook及びRussell(2001)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(3版)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、1995;「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons、N.Y.)において、たやすく入手可能である。
【0040】
当然ながら、本発明の核酸の部分と、特異的にハイブリダイズするように使用される、本発明のポリヌクレオチドであれば、ポリ(A)の連なり又はその相補体を含有する核酸分子(例えば、事実上、任意の二本鎖cDNAクローン)とハイブリダイズしないので、ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)トラクトなど)、又はT(又はU)残基の相補的連なりだけとハイブリダイズするポリヌクレオチドであれば、このような本発明のポリヌクレオチドに含まれないであろう。
【0041】
本明細書では、「核酸構築物」又は「核酸ベクター」は、組換えDNA技術の使用から得られる、人工の核酸分子を意味するように理解される。したがって、「核酸構築物」という用語は、天然に存在する核酸分子を含まないが、核酸構築物は、天然に存在する核酸分子(の一部)を含みうる。「発現ベクター」又は「発現構築物」という用語は、このような配列と適合性の宿主細胞又は宿主生物における遺伝子の発現をもたらすことが可能なヌクレオチド配列を指す。これらの発現ベクターは、典型的に、少なくとも、適切な転写調節配列を含み、任意選択で、3’側転写終結シグナルを含む。発現エンハンサーエレメントなど、発現をもたらすのに必要又は有用な、さらなる因子もまた存在しうる。発現ベクターは、適切な宿主細胞へと導入され、宿主細胞のin vitro細胞培養物における、コード配列の発現をもたらすであろう。発現ベクターは、本発明の宿主細胞又は生物における複製に適するであろう。
【0042】
本明細書で使用される、「プロモーター」又は「転写調節配列」という用語は、1つ又は複数のコード配列の転写を制御するように機能し、コード配列の転写開始部位の転写の方向に照らして、上流に配置され、DNA依存性RNAポリメラーゼに対する結合性部位、転写開始部位、並びに転写因子結合性部位、抑制型タンパク質結合性部位、及び活性化型タンパク質結合性部位、並びにプロモーターからの転写の量を調節するように、直接的に、又は間接的に作用することが、当業者に公知である、他の任意のヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されない、他の任意のDNA配列の存在により、構造的に同定される核酸断片を指す。「構成的」プロモーターとは、大半の生理学的条件下及び発生条件下にある、大半の組織において活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターとは、例えば、化学的誘導剤の適用により、生理学的に又は発生的に調節されるプロモーターである。誘導性プロモーターはまた、存在するが、誘導されない場合もある。
【0043】
「選択用マーカー」という用語は、当業者が精通している用語であり、本明細書では、発現されると、選択用マーカーを含有する、1つ又は複数の細胞について選択するのに使用されうる、任意の遺伝子実体について記載するのに使用される。「レポーター」という用語は、マーカーと互換的に使用されうるが、主に、緑色蛍光タンパク質(GFP)など、目視可能なマーカーを指すように使用される。選択用マーカーは、顕性の場合もあり、潜性の場合もあり、双方向の場合もある。
【0044】
本明細書で使用される、「作動可能に連結された」という用語は、機能的な関係における、ポリヌクレオチドエレメントの連結を指す。核酸は、別の核酸配列と、機能的な関係に置かれた場合に、「作動可能に連結」されている。例えば、転写調節配列は、コード配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に作動可能に連結されている。「作動可能に連結された」とは、連結されるDNA配列が、典型的に、連続しており、必要な場合、2つのタンパク質コード領域を、連続的に接続し、リーディングフレームにおいて接続することを意味する。
【0045】
「タンパク質」又は「ポリペプチド」という用語は、互換的に使用され、特異的な作用方式、サイズ、三次元構造、又は由来を指すことなく、アミノ酸鎖からなる分子を指す。
【0046】
「遺伝子」という用語は、細胞において、RNA分子(例えば、mRNA)へと転写される領域(転写領域)を含み、適切な調節領域(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されたDNA断片を意味する。遺伝子は、通例、プロモーター、5’側リーダー配列、コード領域、エクソン、イントロン、並びに、例えば、ポリアデニル化部位及び/又は転写終結部位を含む、3’側非翻訳配列(3’末端)など、いくつかの作動可能に連結された断片を含むであろう。
【0047】
「遺伝子の発現」とは、適切な調節領域、特に、プロモーターに作動可能に連結されたDNA領域が、生物学的に活性である、すなわち、生物学的に活性のタンパク質又はペプチドへの翻訳が可能であるRNAへと転写されるプロセスを指す。
【0048】
所与の(組換え)核酸分子又は(組換え)ポリペプチド分子と、所与の宿主生物又は宿主細胞との関係を指し示すのに使用される場合の、「相同な」という用語は、天然では、核酸分子又はポリペプチド分子が、同じ種、好ましくは、同じ亜種又は株の宿主細胞又は宿主生物により産生されることを意味すると理解される。宿主細胞と相同である場合、ポリペプチドをコードする核酸配列は、典型的に(しかし、必ずしもそうではない)、その天然の環境とは別の(異種)プロモーター配列であり、該当する場合、別の(異種)分泌シグナル配列、及び/又はターミネーター配列に作動可能に連結されるであろう。調節配列、シグナル配列、ターミネーター配列などもまた、宿主細胞と相同でありうることが理解される。この文脈では、「相同」配列エレメントを使用するだけで、遺伝子改変生物(GMO)の「自己クローニング」(本明細書では、自己クローニングは、European Directive 98/81/EC Annex IIにおける規定の通りに規定される)の構築が可能となる。2つの核酸配列の類縁性を指し示すのに使用される場合、「相同な」という用語は、1つの一本鎖核酸配列が、相補性である一本鎖核酸配列とハイブリダイズしうることを意味する。ハイブリダイゼーションの程度は、配列間の同一性の量、並びに本明細書の前出で論じられた、温度及び塩濃度などのハイブリダイゼーション条件を含む、多数の因子に依存しうる。
【0049】
核酸(DNA又はRNA)又はタンパク質に関して使用される場合の、「異種」及び「外因性」という用語は、それが存在する生物、細胞、ゲノム配列又はDNA配列又はRNA配列の一部として天然に存在しないか、或いはそれが天然で見出される細胞又は配列における位置とは異なる、細胞、又はゲノム配列若しくはDNA配列若しくはRNA配列における、1つ若しくは複数の位置において見出される核酸又はタンパク質を指す。異種核酸又は異種タンパク質、及び外因性核酸又は外因性タンパク質は、それが導入される細胞に内因性ではなく、別の細胞から得られるか、又は合成により作製されるか、若しくは組換えにより作製されている。必ずしもそうではないが、一般に、このような核酸は、タンパク質、すなわち、DNAが転写されるか、又は発現される細胞により、通常は、産生されない、外因性タンパク質をコードする。同様に、外因性RNAは、外因性RNAが存在する細胞において、通常は、発現されないタンパク質をコードする。異種核酸/外因性核酸及び異種タンパク質/外因性タンパク質はまた、外来核酸又は外来タンパク質とも称されうる。本明細書では、当業者が、それが発現される細胞に対して外来であると認識する、任意の核酸又はタンパク質が、異種核酸若しくは外因性核酸又は異種タンパク質若しくは外因性タンパク質という用語により包含される。異種及び外因性という用語はまた、核酸配列又はアミノ酸配列の非天然の組合せ、すなわち、組み合わされた配列のうちの少なくとも2つが、互いに対して外来である組合せへも適用される。異種及び外因性という用語はまた、詳細に述べると、他の点では内因性である核酸又はタンパク質の、天然に存在しない修飾形へも適用される。
【0050】
本明細書では、酵素の「特異的活性」とは、全宿主細胞タンパク質1mg当たりの酵素活性の単位で、通例表される、全宿主細胞タンパク質量当たりの、特定の酵素の活性量を意味するように理解される。本発明の文脈では、特定の酵素の特異的活性は、(他の点では同一な)野生型宿主細胞におけるこの酵素の特異的活性と比較して、増大する場合もあり、低下する場合もある。
【0051】
本明細書では、「発酵」又は「発酵過程」という用語は、業界で使用される、その一般的な定義に従い、酸素の存在下又は非存在下において生じる、任意の(大スケールの)微生物過程であって、少なくとも1つの微生物の培養を含み、好ましくは、微生物が、1つ又は複数の有機基質の消費を代償として、有用な生成物をもたらす微生物過程として、広義に規定される。したがって、本明細書では、「発酵」という用語は、それが、微生物が、酸素の非存在下で、炭水化物からエネルギーを抽出する、限定的な微生物過程として規定される、より厳密な学術的定義より、はるかに広義の定義を有する。本明細書では同様に、「発酵生成物」という用語も、酸素の存在下又は非存在下において生じる、(大スケールの)微生物過程でもたらされる、任意の有用な生成物として、広義に規定される。
【0052】
本発明者らは、驚くべきことに、最適化された発酵プロセス及び回収プロセスにおいて使用される、特別にデザインされた真菌宿主細胞において、オボアルブミンを発現させることにより、所望の機能的特性を有する、オボアルブミンなど、鳥類の卵タンパク質を効率的に作製することが可能であることを見出した。
【0053】
真菌宿主細胞
したがって、第1の態様において、本発明は、宿主細胞が、目的のタンパク質を産生することを可能とするように、真菌宿主細胞の遺伝子改変に関する。したがって、本発明の真菌宿主細胞は、好ましくは、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、オボアルブミン)であって、コードされる目的のタンパク質の、真菌宿主細胞による発現をもたらすことが可能である、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0054】
真菌宿主は、本明細書で、真菌クレード(Eumycota)(Alexopoulos,C.J.、1962、「Introductory Mycology」、John Wiley & Sons,Inc.、New York)の全ての種を含む真核微生物として規定される、「真菌」に属する宿主細胞である。したがって、真菌という用語は、糸状真菌及び酵母の両方を含む。本明細書では、「糸状真菌」とは、真菌クレード及び卵菌クレード(Oomycota)(Hawksworthら、「Ainsworth and Bisby’s Dictionary of Fungi」、8版、1995、CAB International、University Press、Cambridge、UK)により規定される)の全ての糸状形態を含む真核微生物と規定される。糸状真菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖から構成される菌糸性細胞壁により特徴づけられる。栄養増殖は、菌糸伸長であり、炭素異化は、偏性好気性である。好ましい糸状菌宿主細胞は、アルテルナリア属(Alternaria)、アポフィソミセス属(Apophysomyces)、アスペルギルス属、クラドスフィアロフォラ属(Cladosphialophora)、フォンセケア属(Fonsecaea)、フサリウム属、リクテイミア属、ミセリオフトーラ属、クモノスカビ属、リゾムコール属、トリコデルマ属、及びトリコフィトン属を含むがこれらに限定されない属から選択される属に属する宿主細胞である。より好ましくは、糸状菌宿主細胞は、黒斑病菌、アポフィソミセス・バリアビリス、アスペルギルス属種、アスペルギルス・フミガートゥス、アスペルギルス・フラブス、ニホンコウジカビ、クロコウジカビ、アワモリコウジカビ、アスペルギルス・ニデュランス、アスペルギルス・テレウス、クラドフィアロフォラ属種、フォンセケア・ペドロソイ、フサリウム属種、フサリウム・オキシスポルム、フサリウム・ソラニー、リクテイミア属種、リクテイミア・コリムビフェラ、リクテイミア・ラモーサ、ミセリオフトーラ属種、ミセリオフトーラ・テルモフィラ、クモノスカビ属種、クモノスカビ、リゾムコール属種、リゾムコール・プシルス、リゾムコール・ミエヘイ、トリコデルマ属種、トリコデルマ・レエセイ、トリコフィトン属種、トリコフィトン・インテルディギターレ、及び紅色白癬菌から選択される種に属する。最も好ましい糸状菌宿主細胞は、クロコウジカビ種の株である。
【0055】
糸状真菌のいくつかの株は、例えば、クロコウジカビ株である、CBS 513.88、CBS124.903、及びCICC2462;ニホンコウジカビである、ATCC 20423、IFO 4177、ATCC 1011、CBS205.89、ATCC 9576、ATCC 14488~C14491、ATCC 11601、及びATCC 12892;P.クリソゲナム(P.chrysogenum)CBS 455.95、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)ATCC 38065、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)P2、タラロミセス・エメルソニイ(Talaromyces emersonii)CBS 124.902、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)ATCC 36225又はATCC 48272、トリコデルマ・レエセイATCC 26921又はATCC 56765又はATCC 26921、ショウユコウジカビATCC 11906、及びクリソスポリウム・ラクナウウェンセATCC 44006、並びにこれらの派生株を含む、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)、Chinese Centrum for Industrial Culture Collection(CICC)、及びAgricultural Research Service Patent Culture Collection、Northern Regional Research Center(NRRL)など、多数の培養物コレクションにおいて、一般にたやすくアクセス可能である。
【0056】
本明細書では、「酵母」は、真核微生物と規定され、主に、単細胞形態で増殖する、真菌クレードの全ての種を含む。酵母は、単細胞葉状体の出芽により増殖する場合もあり、生物の分裂により増殖する場合もある。代替的に、真菌宿主細胞は、カンジダ属(Candida)、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、又はヤロウィア属(Yarrowia)を含む属から選択される属、より好ましくは、クルイベロミセス・ラクティス種、出芽酵母種、ハンヌセラ・ポフィモルファ(Hansenula polymorpha)種、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)種、及びメタノール資化酵母種から選択される種に属する酵母宿主細胞である。
【0057】
したがって、タンパク質又は核酸分子を指す場合の「真菌」という用語は、それらのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が、それぞれ、真菌において天然に存在するタンパク質又は核酸を意味する。
【0058】
特に好ましい一実施形態では、糸状菌宿主細胞は、増殖するか、又は増殖する能力を有し、「酵母様形態」を伴う株の宿主細胞である。本明細書で、糸状菌宿主細胞について使用される「酵母様形態」という用語は、糸状菌が、短い菌糸で、菌糸をほとんど分枝させずに増殖することを指し示す。酵母様形態で増殖するクロコウジカビの参照株は、Chinese Centrum for Industrial Culture Collection(CICC、Building 6、No.24 Yard、Jiuxianqiao Middle Road、Chaoyang District、Beijing、China;www.china-cicc.org)から得られる、CICC2462株である。クロコウジカビCICC2462株は、グルコアミラーゼの産業的産出において使用され、胞子を産生しない、クロコウジカビの形態変異株であり、低粘度の発酵培養液を結果としてもたらす、短い菌糸体、太い菌糸を有し、強力な酵素産生株であり、プロテアーゼ活性が低度であり、耐浸透圧性であり、高密度液中発酵に適する(Zhangら、Microb Cell Fact.、2016、15:68)。
【0059】
本明細書では、酵母様形態で増殖する糸状菌株は、好ましくは、糸状菌株と、参照CICC2462株とが、同一の条件下で増殖させられる場合に、a)糸状菌株の菌糸が、平均で、長さが、参照CICC2462株の菌糸の5、10、20、50、又は100%を超えず;b)糸状菌株の菌糸が、平均で、参照CICC2462株の菌糸の5、10、20、50、又は100%を超えない分枝を示す特徴のうちの少なくとも1つを伴う糸状菌株として規定される。好ましい糸状菌宿主細胞は、クロコウジカビ株であるCICC2462、又はCICC2462株の単一コロニー分離株及び/若しくは派生株である株である。
【0060】
「酵母様形態」で増殖する糸状菌株を、宿主細胞として使用することの利点は、この株が、発酵槽において、通気のために要求する培地への機械力の入力を最小とする条件下で培養され、エネルギー費用の節減をもたらしうることである。加えて、使用する機械力の減少は、せん断力を低減し、これにより、タンパク質及び細胞の破壊を低減し、これは、収率を増大させ、細胞破砕物などによるフィルターの目詰まりを低減することにより、濾過を容易とする。
【0061】
一実施形態では、本発明の真菌宿主細胞は、グルコアミラーゼ(例えば、glaA)、酸安定性アルファ-アミラーゼ(例えば、amyA)又は中性アルファ-アミラーゼ(例えば、amyBI及びamyBII)などのアミラーゼ、シュウ酸ヒドロラーゼ(例えば、oahA)、マイコトキシンの生合成に関与するタンパク質、及びプロテアーゼ、並びにKU70、KU80、hdfA、及びhdfBによりコードされるタンパク質、又はこれらの相同体から選択される、少なくとも1つの酵素又はタンパク質の特異的活性又は量を低減するか、又は消失させる遺伝子改変を含む。好ましくは、宿主において、遺伝子改変は、酵素又はタンパク質の特異的活性又は量を、同一の条件下で培養された場合における、遺伝子改変を欠く、対応する宿主細胞と比較して、90、75、50、20、10、5、2、又は1%を超えない酵素又はタンパク質の特異的活性又は量まで低減する。より好ましくは、遺伝子改変は、宿主細胞における酵素又はタンパク質の特異的活性又は量を、完全に消失させる。
【0062】
宿主細胞における、グルコアミラーゼ(例えば、glaA)、酸安定性アルファ-アミラーゼ(例えば、amyA)、及び中性アルファ-アミラーゼ(例えば、amyBI及びamyBII)のうちの1つ又は複数の発現を低減するか、又は消失させることの利点は、細胞のエネルギー及び資源が、これらの副産物のために利用されずにすむこと、並びに/又は存在する副産物が少量となるので、目的のオボアルブミン生成物の、下流におけるプロセシングが簡略化されることだけでなく、最も重要なことは、オボアルブミンの食品適用の多くにおいて、これらの酵素の、デンプン及びデンプン由来の基質への影響が、好ましくは、回避されることである。
【0063】
宿主細胞における、シュウ酸ヒドロラーゼ(oahA)の発現を低減するか、又は消失させることの利点は、宿主細胞によるシュウ酸の産生が低下するか、又は見られなくなることである。シュウ酸は、食品適用など、多くの適用において、望ましくない副産物である。さらに、宿主細胞によるシュウ酸の産生の低減又は消失は、この酸による、培養培地のpHの所望されない低下を低減する。このような低pHの回避は、緩衝への要求を低下させ、生成物収率を改善し、産生されるオボアルブミンの凝集/沈殿を回避する。
【0064】
このような毒素は、作業従事者、利用者、及び環境に対して、健康上の危険を提示するので、目的の生成物の発酵時における、これらの毒素の形成はとりわけ所望されないが、宿主細胞における、マイコトキシンの生合成に関与するタンパク質の発現を低減するか、又は消失させることの利点はこれを低減又は回避することである。
【0065】
宿主細胞における、プロテアーゼの発現を低減するか、又は消失させることの利点は、目的のオボアルブミン生成物の収率及び品質に対する、宿主細胞プロテアーゼの負の影響を低減することである。宿主細胞における、1つ又は複数のプロテアーゼの発現を低減するか、又は消失させるために好ましい遺伝子改変は、例えば、真核細胞における、プロテアーゼの転写活性化因子であるprtTを含む。プロテアーゼの、いくつかの真菌転写活性化因子については、近年、国際公開第00/20596号、国際公開第01/68864号、国際公開第2006/040312号、及び国際公開第2007/062936号において記載されている。これらの転写活性化因子は、クロコウジカビ、A.フミガートゥス(A.fumigatus)、P.クリソゲナム、及びA.オリゼ(A.oryzae)から単離した。これらのプロテアーゼ遺伝子の転写活性化因子は、プロテアーゼ分解に対して感受性であるポリペプチドを、真菌細胞において作製するための方法を改善するのに使用されうる。宿主細胞が、prtTを欠損する場合、宿主細胞は、prtTによる転写制御下にあるプロテアーゼの産生を低下させるであろう。したがって、本発明に従う宿主細胞が、prtTを欠損すると有利である。本発明の宿主細胞は、pepAなど、主要なプロテアーゼを、さらに欠損する場合がある。
【0066】
宿主細胞において、グルコアミラーゼ(例えば、glaA)、酸安定性アルファ-アミラーゼ(例えば、amyA)又は中性アルファ-アミラーゼ(例えば、amyBI及びamyBII)などのアミラーゼ、シュウ酸ヒドロラーゼ(例えば、oahA)、マイコトキシンの生合成に関与するタンパク質、及びプロテアーゼから選択される、少なくとも1つの酵素又はタンパク質の特異的活性又は量を低減するか、又は消失させる遺伝子改変をもたらすための手段及び方法については、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2011/009700号が参照される。
【0067】
バックグラウンドの(内因性)分泌タンパク質量を低減するために、本発明の宿主細胞において適用されうる、さらなる遺伝子改変は、参照により本明細書に組み込まれる、Zhangら(2016、前出)により記載されるamyRの不活化又は欠失である。
【0068】
発現カセット
一態様では、本発明に従う真菌宿主細胞における、目的のタンパク質の発現のための発現カセットが提供される。好ましくは、発現カセットは、目的の動物由来食用タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、コードヌクレオチド配列は、コードされる目的のタンパク質の、真菌宿主細胞による発現を実行又は制御する、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結される。発現調節配列は、好ましくは、コード配列に作動可能に連結された、少なくとも、転写調節配列又はプロモーターを含む。発現カセットは、好ましくは、翻訳開始配列、分泌シグナル配列、転写終結配列、ポリアデニル化シグナルなどの調節配列をさらに含む。発現エンハンサーエレメントなど、発現をもたらすのに必要又は有用な、さらなる因子もまた存在しうる。一実施形態では、調節配列は、高度発現真菌タンパク質の調節配列である。
【0069】
本発明に従う発現カセットにおけるコード配列に作動可能に連結されるプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又はハイブリッドプロモーターでありうる。使用されうる、好ましい誘導性プロモーターの例は、デンプン誘導性プロモーター、銅誘導性プロモーター、オレイン酸誘導性プロモーターである。
【0070】
好ましいプロモーターは、高度発現真菌タンパク質のプロモーターである。高度発現真菌遺伝子に由来する、好ましいプロモーターは、真菌又は糸状菌酸安定性のαアミラーゼ、α-アミラーゼ、タカアミラーゼ、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、スクラーゼ、アセトアミダーゼ、及びスーパーオキシドディスムターゼをコードする遺伝子から得られるプロモーターを含む。その詳細な例は、A.オリゼのタカアミラーゼ、クロコウジカビの中性アルファ-アミラーゼ、クロコウジカビの酸安定性アルファ-アミラーゼ、クロコウジカビ又はアワモリコウジカビ(A.awamori)のグルコアミラーゼ(glaA)をコードする遺伝子に由来するプロモーターを含む。糸状菌細胞における使用のために、特に、好ましいプロモーターは、クロコウジカビ及びアワモリコウジカビのグルコアミラーゼ(glaA)プロモーター、又はこれらの機能的部分である。好ましい実施形態では、プロモーターだけでなく、また、翻訳開始配列、分泌シグナル配列、転写終結配列、ポリアデニル化シグナルなど、さらなる調節配列も、表示の高度発現真菌タンパク質に由来し、これらのうち、クロコウジカビ及びアワモリコウジカビのグルコアミラーゼ(glaA)の調節配列が最も好ましい。
【0071】
発現カセットは、好ましくは、発現カセットに加えて、選択用マーカー遺伝子、宿主細胞のゲノムの特異的遺伝子座における組込みのターゲティングのための配列、及び/又は自己複製のための配列など、さらなる配列エレメントを含みうる、発現ベクターの一部である。
【0072】
発現ベクターは、組換えDNA手順にかけることが簡便であり、目的のポリヌクレオチドの発現をもたらしうる、任意のベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)でありうる。ベクターの選択は、典型的に、ベクターが導入される宿主細胞との、ベクターの適合性に依存するであろう。ベクターは、直鎖状プラスミドの場合もあり、閉環状プラスミドの場合もある。ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、その複製が、染色体内複製に依存しない、染色体外実体として存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、又は人工染色体でありうる。自己維持型クローニングベクターは、AMA1配列(例えば、Aleksenko及びClutterbuck(1997)、Fungal Genet.Biol.、21:373~397を参照されたい)を含みうる。代替的に、ベクターは、宿主細胞へと導入されると、ゲノムへと組み込まれ、それが組み込まれた染色体(複数可)と共に複製されるベクターでありうる。好ましくは、組込型クローニングベクターは、クローニングベクターの組込みを、この所定の遺伝子座へとターゲティングするための、宿主細胞のゲノムの、所定の標的遺伝子座におけるDNA配列と相同であるDNA断片を含む。ターゲティングされた組込みを促進するために、クローニングベクターは、好ましくは、宿主細胞を形質転換する前に直鎖化される。直鎖化は、好ましくは、クローニングベクターの、少なくとも1つの末端であるが、好ましくは、いずれの末端も、標的遺伝子座と相同な配列により挟まれるように実施される。標的遺伝子座を挟む相同配列の長さは、好ましくは、少なくとも30bp、50bp、0.1kb、0.2kb、0.5kb、1kb、若しくは1.5kbであるか、好ましくは、少なくとも2.0kb、より好ましくは、少なくとも2.5kbであるか、又は、最も好ましくは、少なくとも3.0kbである。
【0073】
発現ベクター/カセットをターゲティングするための、好ましい相同配列は、真菌又は糸状菌の酸安定性αアミラーゼ、α-アミラーゼ、タカアミラーゼ、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、及びスクラーゼをコードする遺伝子から得られる配列など、高度発現真菌遺伝子に由来する配列である。より好ましくは、発現ベクター/カセットをターゲティングするための相同配列は、高度発現真菌遺伝子を含む遺伝子座であって、ニホンコウジカビ(例えば、IF04177株)における、タカアミラーゼ遺伝子など、真菌ゲノムにおいて増幅される遺伝子座、又は、例えば、CBS 513.88株及びCICC2462株において増幅される、クロコウジカビ(米国特許第6432672 B1号及び米国特許第8734782 B2号を参照されたい)のglaA遺伝子座をターゲティングする配列である。好ましい実施形態では、発現カセットは、高度発現真菌タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子座に組み込まれる。好ましくは、前記遺伝子座は、真菌ゲノムにおいて増幅される遺伝子座であり、より好ましくは、遺伝子座は、クロコウジカビglaA遺伝子座である。
【0074】
一実施形態では、発現カセットは、単一クロスオーバーを介する(相同)組換えにより組み込まれる。好ましくは、前記遺伝子座は、真菌ゲノムにおいて増幅される遺伝子座であり、より好ましくは、遺伝子座は、クロコウジカビglaA遺伝子座である。
【0075】
別の実施形態では、発現カセットは、高度発現真菌タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子座における(相同)遺伝子置換(すなわち、二重クロスオーバー)により組み込まれる。好ましくは、前記遺伝子座は、真菌ゲノムにおいて増幅される遺伝子座であり、発現カセットは、真菌宿主細胞のゲノムにおいて、高度発現真菌タンパク質をコードする遺伝子のうちのいくつかのコピー又は各コピーを置きかえ、より好ましくは、遺伝子座は、クロコウジカビglaA遺伝子座である。
【0076】
一実施形態では、真菌宿主細胞は、好ましくは、真菌宿主細胞のゲノムへと組み込まれた発現カセットの複数のコピーを含む。好ましくは、真菌宿主細胞は、好ましくは、真菌宿主細胞のゲノムへと組み込まれた発現カセットの、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、又は30コピーを、より好ましくは、高度発現内因性真菌遺伝子を含む遺伝子座など、所定の位置において含む。
【0077】
ベクターは、好ましくは、形質転換細胞の容易な選択を可能とする、1つ又は複数の選択用マーカーを含有する。共形質転換法を使用する場合、1つのベクターが、選択用マーカーを含有しうるのに対し、別のベクターは、目的のポリヌクレオチド、又は目的の核酸構築物を含有しうるが、ベクターは、宿主細胞の形質転換のために、同時に使用される。選択用マーカーとは、その産物が、殺生物剤耐性又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体に対する原栄養性などをもたらす遺伝子である。糸状菌宿主細胞における使用のための選択用マーカーは、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、bleA(フレオマイシン結合性)、hygB(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、及びtrpC(アントラニル酸シンターゼ)のほか、他の種に由来する同等物を含むがこれらに限定されない群から選択されうる。アスペルギルス属宿主細胞における使用のためには、A.ニデュランス(A.nidulans)又はA.オリゼの、amdS遺伝子(米国特許第5876988号、米国特許第6548285 B1号)及びpyrG遺伝子、並びにストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子が好ましい。より好ましくは、amdS遺伝子が使用され、なおより好ましくは、A.ニデュランス又はクロコウジカビに由来するamdS遺伝子が使用される。最も好ましい選択マーカー遺伝子は、A.ニデュランスのgpdAプロモーターへと融合しているA.ニデュランスのamdSコード配列(欧州特許第0635574 B1号を参照されたい)である。他の糸状真菌に由来するAmdS遺伝子もまた使用されうる(米国特許第6548285 B1号)。
【0078】
当業者には、本発明の発現ベクター及び発現カセットを構築するための手段及び方法が周知である(例えば、Sambrook及びRussell、前出;及びAusubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、Wiley InterScience、NY、1995を参照されたい)。
【0079】
一実施形態では、本発明の発現カセットにおいて、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好ましくは、そのコドン使用を最適化するように、問題の宿主細胞のヌクレオチド配列へと適合させられる。酵素をコードするヌクレオチド配列の、宿主細胞の一般的コドン使用への適合性は、CAI(codon adaptation index)として表される。本明細書では、CAI(codon adaptation index)は、遺伝子のコドン使用の、特定の宿主細胞又は生物における高度発現遺伝子のコドン使用への相対適合性の尺度として規定される。各コドンの相対適合性(w)は、各コドンの使用の、同じアミノ酸について、最も夥多なコドンの使用に対する比である。CAI指数は、これらの相対適合性値の幾何平均として規定される。非同義コドン及び終結コドン(遺伝子コードに依存する)は除外される。CAI値は、0~1の範囲であり、値が高いほど、最も夥多なコドンの比率が大きいことを指し示す(Sharp及びLi、1987、Nucleic Acids Research、15:1281-1295を参照されたい;Jansenら、2003、Nucleic Acids Res.、3J_(8):2242~51もまた参照されたい)。適合させられたヌクレオチド配列は、好ましくは、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9のCAIを有する。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明の発現カセットにおいて、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好ましくは、そのコドン使用を最適化するように、問題の宿主細胞における高度発現タンパク質のコドン使用、好ましくは、問題の宿主細胞に内因性である高度発現タンパク質のコドン使用へと適合させられる。より好ましくは、本発明の発現カセットにおいて、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、そのコドン使用を最適化するように、酸安定性αアミラーゼ、α-アミラーゼ、タカアミラーゼ、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、及びスクラーゼから選択される高度発現タンパク質のコドン使用へと適合させられる。目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、例えば、OPTIMISER(http://genomes.urv.es/OPTIMISER/;Puigbo P.ら、2007、Nucl Acids Res、35、W126~W131)など、オンラインで入手可能なDNA最適化ツール、又はコドン最適化合成遺伝子の市販サービスプロバイダー(例えば、GenScript、USA)を使用することにより、高度発現タンパク質のコドン使用へと適合させられうる。
【0081】
さらに好ましい実施形態では、発現カセットは、プロモーターに作動可能に連結された、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、コード配列は、プロモーターに対して天然であるコード配列に照らしてコドン最適化されており、好ましくは、プロモーターは、高度発現真菌タンパク質のための遺伝子に対して天然であるプロモーターであり、より好ましくは、高度発現真菌タンパク質は、好ましくは、上記に表示の高度発現真菌タンパク質であり、これらのうち、グルコアミラーゼが最も好ましい。
【0082】
なおさらに好ましい実施形態では、発現カセットは、クローニングベクターの組込みを、この所定の遺伝子座へとターゲティングするための、宿主細胞のゲノムの、所定の標的遺伝子座におけるDNA配列と相同であるDNA断片をさらに含み、好ましくは、標的遺伝子座は、発現カセットにおけるプロモーターに対して天然である、高度発現真菌タンパク質の遺伝子座であり、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列のコドン使用は、これに照らして最適化され、好ましくは、高度発現真菌タンパク質は、好ましくは、上記に表示の高度発現真菌タンパク質であり、これらのうち、クロコウジカビグルコアミラーゼが最も好ましい。
【0083】
一実施形態では、発現カセットは、真菌宿主細胞からの、目的のタンパク質の分泌を方向付けるために、目的のタンパク質のコード配列に作動可能に連結される、N末端の分泌シグナル配列を含む。「シグナル配列」とは、目的のタンパク質のアミノ末端に作動可能に連結された場合に、宿主真菌からの、このようなタンパク質の分泌を可能とするアミノ酸配列である。このようなシグナル配列は、通常、目的のタンパク質と会合するシグナル配列(すなわち、天然のシグナル配列)の場合もあり、他の供給源に由来する(すなわち、目的のタンパク質に対して、外来又は異種のシグナル配列の)場合もある。シグナル配列は、シグナル配列及び目的のタンパク質の翻訳を可能とするように、天然のシグナル配列を活用することにより、又は適正なリーディングフレームにおいて、外来シグナル配列をコードするDNA配列を、目的のタンパク質をコードするDNA配列へと接続することにより、異種ポリペプチドに作動可能に連結される。本発明における使用のための、好ましいシグナル配列は、酸安定性αアミラーゼ、α-アミラーゼ、タカアミラーゼ、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及びスクラーゼなど、高度発現分泌真菌タンパク質に由来するシグナルを含み、これらのうち、クロコウジカビグルコアミラーゼが最も好ましい。
【0084】
さらに好ましい実施形態では、発現カセットは、目的のタンパク質を、融合タンパク質の一部としてコードする。好ましくは、発現カセットは、目的のタンパク質が、そのN末端において、高度発現分泌真菌タンパク質のうちの少なくとも一部と融合している融合タンパク質をコードする。より好ましくは、発現カセットは、目的のタンパク質が、そのN末端において、好ましくは、高度発現分泌真菌タンパク質のうちの少なくともシグナル配列を含む高度発現分泌真菌タンパク質のうちの少なくともN末端部分と融合している融合タンパク質をコードする。融合タンパク質はまた、高度発現分泌真菌タンパク質のプロ配列、及び/又は成熟高度発現分泌真菌タンパク質のさらなる部分もさらに含みうる。代替的に、シグナル配列は、プレプロ配列を含有しうる。目的のタンパク質が、分泌型タンパク質である場合、高度発現分泌真菌タンパク質のN末端部分を、目的の成熟分泌型タンパク質のN末端へと融合させうる。代替的に、N末端を、成熟タンパク質の起始部へと(例えば、真菌細胞における、可能なミスプロセシングを回避するように、プロセシングの後で)融合させうる。目的のタンパク質が、分泌型タンパク質ではない場合、高度発現分泌真菌タンパク質のN末端部分は、目的のタンパク質のN末端メチオニンを置きかえうる。
【0085】
発現カセットは、融合タンパク質をコードし、この場合、目的のタンパク質を、グルコアミラーゼのプロ配列、ウシキモシンのプロ配列、スブチリシンのプロ配列、HIVプロテアーゼを含むレトロウイルスプロテアーゼのプロ配列、並びにトリプシン、第Xa因子、コラゲナーゼ、クロストリプシン、スブチリシン、キモシン、酵母KEX2プロテアーゼ、及びアスペルギルス属KEXBにより認識及び切断されるアミノ酸配列をコードするDNA配列などの切断型リンカーポリペプチドを介して、そのN末端融合パートナーへと融合させることがさらに好ましい。特に、好ましい切断型リンカーは、天然のアスペルギルス属KEX2様(KEXB)プロテアーゼにより切断されうる、KEX2プロテアーゼ認識部位(Lys-Arg)である。
【0086】
好ましい実施形態では、発現カセットは、N末端からC末端の方向に:目的のタンパク質へと融合しているクロコウジカビグルコアミラーゼプレプロ配列;任意選択で、成熟クロコウジカビグルコアミラーゼアミノ酸配列のうちの、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%;任意選択で、切断型リンカーポリペプチド及び/又はKEX2(Lys-Arg)切断部位を含む融合タンパク質をコードする。これらの例:プレプロ配列と、目的のタンパク質へと融合させた、KEX2(Lys-Arg)切断部位を含む、8アミノ酸の合成ペプチドとを含む、最初の502アミノ酸、又はプレプロ配列を含む、54若しくは100アミノ酸だけを伴い、目的のタンパク質へと融合させた、KEX2(Lys-Arg)切断部位に前置される、クロコウジカビグルコアミラーゼのさらなる切断体については、本明細書の実施例に記載されている。
目的の動物由来の食用タンパク質
本発明は、通常、動物に由来し、ヒトによる摂取のための食品の調製において一般に使用されるタンパク質の、動物によらない作製に関する。原則として、通常、動物又は動物の一部から得られるか、又はこれらにより産生され、ヒトによる摂取のための食品の調製において使用されうる、任意のタンパク質が、本発明に従い、動物によらない方式で作製されるのに適する。しかし、より詳細に述べると、本発明は、乳製品タンパク質及び家禽タンパク質、より詳細には、乳タンパク質及び卵タンパク質の、動物によらない作製に関する。
【0087】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質は、乳タンパク質、好ましくは、ウシ(cattle(すなわち、ウシ(bovine又はBos taurus))、バッファロー(水牛を含む)、ヤギ、ヒツジ、若しくはラクダのミルク、又はヤク、ウマ、トナカイ、及びロバなど、他のそれほど一般的でない乳動物のミルクにおいて存在するタンパク質である。目的のタンパク質は、カゼインの場合もあり、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、又は免疫グロブリンなどの乳清タンパク質の場合もある。
【0088】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質は、ヘムタンパク質、好ましくは、非ヒト動物、より好ましくは、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、又はヒツジなどの哺乳動物に由来するヘムタンパク質である。好ましい動物由来のヘムタンパク質は、ヘモグロビン及びミオグロビンを含む。本発明に従い作製される、動物由来のヘムタンパク質は、食肉代替品において、赤色ヘム結合鉄タンパク質として適用されうる。
【0089】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質は、卵タンパク質、すなわち、鳥類の卵に存在するタンパク質である。本明細書で使用される、「鳥類」という用語は、家畜化鳥類、及び野生鳥類などの非家畜化鳥類の両方を含む。鳥類は、例えば、家禽(poultry、fowl)、水鳥、狩猟鳥、走鳥類(例えば、飛べない鳥)、ニワトリ(chicken(Gallus gallus domesticus))、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、ダチョウ(ostrich(Struthio camelus))、ソマリアダチョウ(Somali ostrich(Struthio molybdophanes))、ガチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、キジ、エミュー(emu(Dromaius novaehollandiae))、アメリカレア(American rhea(Rhea americana))、ダーウィンレア(Darwin’s rhea(Rhea pennata))、及びキーウィを含む。好ましくは、目的の動物由来食用タンパク質は、卵白タンパク質である。卵白タンパク質は、オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、G162M F167Aオボムコイド、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、α-オボムチン、β-オボムチン、リゾチーム、オボインヒビター、オボグリコプロテイン、フラビンタンパク質、オボマクログロブリン、オボスタチン、シスタチン、アビジン、オボアルブミン関連タンパク質X、及びオボアルブミン関連タンパク質Y(例えば、米国特許第2018号/0355020を参照されたい)からなる群から選択される卵白タンパク質でありうる。特に好ましい卵白タンパク質は、オボアルブミンである。
【0090】
オボアルブミン
本発明に従い、動物によらない方式で作製される、特に好ましい目的の動物由来食用タンパク質は、卵白タンパク質であるオボアルブミンである。
【0091】
一実施形態では、本発明の発現カセットにおいてコードされるオボアルブミンは、ニワトリ、ペリカン、ウズラ、ハト、ダチョウ、チドリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、ヤケイ、クジャク、ヤマウズラ、キジ、エミュー、レア、及びキーウィからなる群から選択される鳥類に由来するオボアルブミンのアミノ酸配列に対する、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%の同一性を伴うアミノ酸配列を含み、これらのうちで、ニワトリ、ハト、ペリカン、及びウズラが、好ましい。
【0092】
一実施形態では、本発明の発現カセットにおいてコードされるオボアルブミンは、配列番号1~6のうちの少なくとも1つに対する、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%の同一性を伴うアミノ酸配列を含む。
【0093】
可食鳥類に由来する、代替的オボアルブミン配列は、それぞれ、シチメンチョウ及びヤマウズラについて、Genbank受託番号:AAC16664.1及びPOI27989.1を含む。カモ、ガチョウ、ホロホロチョウ、キジ、エミュー、及びキーウィのオボアルブミン配列の例は、それぞれ、NCBI参照番号:NP_001298098.1、XP_013056574.1、XP_021241976.1、XP_031445133.1、XP_025956522.1、及びXP_025932497.1の下に見出されうる。一実施形態では、オボアルブミンは、1つを超える種に由来するアミノ酸配列を含みうる。
【0094】
一実施形態では、オボアルブミンのアミノ酸配列は、アレルギー誘発性を低減するか、又は消失させるように修飾される。オボアルブミン、例えば、ニワトリオボアルブミンのアレルギー誘発性は、アレルギー誘発性オボアルブミンの、アレルギー誘発性エピトープにおける、1つ又は複数のアミノ酸を、他の鳥類種に由来する、アレルギー誘発性でない、1つ又は複数のオボアルブミンの配列の対応する位置に存在する、異なるアミノ酸で置きかえることにより低減されうる。アレルギー誘発性の評価を行うのに使用される方法は、後続の抗原投与被験に先立つ、バイオインフォマティクス法を含むがこれらに限定されない。
【0095】
発酵
本発明のさらなる態様は、目的の動物由来食用タンパク質を作製するためのプロセスに関する。プロセスは、好ましくは、a)本発明に従う真菌宿主細胞を、目的のタンパク質の発現をもたらす条件下で、発酵槽の培地において培養するステップと;b)任意選択で、目的のタンパク質を回収するステップとを含む。
【0096】
本発明の真菌細胞の発酵は、攪拌槽型反応槽において実行されうる。真菌の産業的液中発酵の大半による、この選択の理由は、とりわけ、増殖する真菌菌糸体の形態の影響を受ける、液中培養物における、(糸状)真菌バイオマスのレオロジーにある。結果として、一実施形態では、本発明の発酵プロセスは、攪拌槽型反応槽において実行される。好ましい実施形態では、しかし、目的のタンパク質、特に、オボアルブミンの培地における沈殿及び/又は凝集を防止又は低減するために、発酵槽における培地への機械力は、制限される。したがって、一実施形態では、発酵槽における培地への機械力の入力(真菌宿主の培養時における)は、1.4、1.0、0.5、0.2、又は0.1kW/m3を超えない。
【0097】
機械力(の制限)の使用に代えて、又はこれに加えて、本発明のプロセスのために、気泡塔を利用することもできる。一般に、真菌の増殖、特に、糸状真菌の菌糸体の増殖は、高粘性溶液をもたらす場合があり、これは、発酵槽における培地の通気に負の影響を及ぼし、これにより、増殖及び生成物の形成に負の影響を及ぼしうる。酸素及び栄養物の、反応槽内の粘性培地への、良好な移動を得るために、攪拌のための高電力が必要とされるが、これは、特に、オボアルブミンの場合に、作製される、目的のタンパク質の培地において、沈殿及び/又は凝集をもたらしうる。しかし、それらの形態が変更された糸状真菌株、例えば、それらの菌糸体増殖が、「酵母様形態」として記載されうる糸状真菌、例えば、短い菌糸で、菌糸をほとんど分枝させない糸状真菌であれば、気泡塔が装備された反応槽においてもまた発酵させられうるであろう(例えば、バイオリアクターの種類の記載については、van’t Riet及びTramper、1991を参照されたい)。結果として、一実施形態では、発酵は、気泡塔において、好ましくは、発酵槽における培地への機械力の入力(例えば、攪拌のための)を伴わずに実行される。この場合、培養された培地は、培地中を、上方へと移動する気泡(例えば、空気又は酸素)により「攪拌」又は混合される。一実施形態では、発酵は、攪拌槽型反応槽と、気泡塔との組合せで実行される。さらなる実施形態では、気泡塔は、回分方式、流加方式、又は反復流加方式を使用する。一実施形態では、稼働が、10%(単位容量当たりの細胞個数)を超える濃縮細胞容量、さらに、25%、30%、40%を超える濃縮細胞容量、なお又は、場合によって、45%の濃縮細胞容量で実行される、高細胞密度発酵を適用する。一実施形態では、気泡塔は、>0.5vvm(1分間当たりの培養液置換容量)のガス容量、さらに、0.7vvmを超えるガス容量、最も好ましくは、1.0vvmのガス容量で実行される。空気は、発酵槽による良好な混合と、通気とをもたらす。したがって、一実施形態では、気泡は、4~6mmの配管における小孔を通してスパージングされる。
【0098】
当技術分野では、一般に、本発明の真菌宿主細胞の増殖の培地が公知である。好ましい実施形態では、本発明の真菌宿主細胞を培養するための培地は、既知組成培地である(糸状)真菌を増殖させるための、既知組成培地の典型的組成については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第20140342396 A1号において記載されている。発酵槽におけるpHは、アンモニアを、滴定剤として使用して制御することができる。
【0099】
好ましくは、プロセスは、グルコース、スクロース、イソマルトース、及びマルトデキストリンのうちの少なくとも1つを含む炭素供給源を使用する。炭素供給源は、シックジュース(テンサイ加工の中間体)、又は95DEシロップなど、イソマルトース及びマルトデキストリンを含むシロップの形態で送達されうる。グルコースを伴う1つの例は、グルコアミラーゼプロモーターの誘導化合物としてのイソマルトースであるマルトースを含む、30~95DEシロップを含む。
【0100】
一実施形態では、発酵のpHは、3~8pHの間で維持しうるが、4~7pHの間で維持する可能性が最も高い。しかし、発現されるタンパク質の種類に応じて、この範囲は、さらに微調整することができる。例えば、クロコウジカビを使用する、相同な酵素の作製に最適のpHは、3.5~5.5pHである。異種発現動物タンパク質の場合、より高いpH範囲が好ましい。例えば、pI値を、約4.8~5とするオボアルブミンには、5~7pHのpHが好ましい。さらに、発酵時におけるpHをモニタリングすることにより、プロテアーゼの誘導スペクトルを変更することができる。結果として、一実施形態では、真菌宿主細胞は、pH5.0、5.5、6.0、6.5、又は7以上であるpHで培養される。
【0101】
加工
一実施形態では、目的のタンパク質は、発現カセットにおける、分泌シグナル配列の存在により、真菌宿主細胞から、発酵培地へと分泌される、分泌型タンパク質として作製される。このように分泌された、目的のタンパク質は、発酵培養液から、異なる方式で回収されうる。したがって、一実施形態では、方法は、任意選択で、卵白の回収である、ステップb)を含む。一実施形態では、回収は、発酵時における回収である。一実施形態では、回収は、発酵後における回収である。一実施形態では、回収は、発酵時における回収及び発酵後における回収の両方である。目的のタンパク質の回収は、好ましくは、少なくとも、(溶解させられた)目的のタンパク質を含む培地からの、真菌バイオマスの分離を含む。微生物性バイオマスを分離する可能性のうちの1つは、遠心分離による分離である。なおより好ましくは、発酵させられた培養液は、発酵の終了時におけるタンパク質の放出の準備ができている場合があり、これに、バイオマスの遠心分離による、放出されたタンパク質の、直接的な分離が後続しうる。したがって、一実施形態では、回収は、遠心分離による回収である。遠心分離による分離の後で、上清は、通例、分泌型タンパク質の大半を含有する。結果として、さらなる実施形態では、上清は、さらなる加工を要求しうる。一実施形態では、上清は、0.2μmのフィルターを使用して精密濾過されうる。当業者には、残存する真菌バイオマス断片を除去する、このような実施が公知であろう。加えて、上清は、限外濾過液から、低分子量成分をさらに分離するように、分子量カットオフ値を、典型的に、10kDa又は20kDaの可変値とする膜を通して限外濾過されうる。一実施形態では、このようなさらなる加工は、上清の濃縮もまた行われる、限外濾過を含む。しかし、タンパク質の性質に応じて、疎水性タンパク質は、通例、バイオマスに付着する傾向を有する。このような例は、例えば、酵母であるクルイベロミセス・ラクティス、及び糸状菌であるクロコウジカビにおけるリパーゼの発現について記載する、米国特許第8703463 B2号において見出されうる。この例では、溶液のpHを変化させることにより、タンパク質を、バイオマスから放出させた。
【0102】
一般に、採取されたバイオマスから、分泌型タンパク質を放出させるために、いくつかの手法について調べることができる。一実施形態では、採取されたバイオマスは、再懸濁させることができる。一実施形態では、被験溶液における再懸濁は、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4(バイオマス:溶液)の比における再懸濁である。一実施形態では、採取されたバイオマスを、設定された温度で、ある特定の時間にわたりインキュベートする。任意選択で、溶液は、攪拌されうる。当業者には、採取されたバイオマスから、タンパク質を遊離させるために利用可能な代替法が公知である。1つの方法が利用される場合もあり、方法の組合せが利用される場合もあることが公知であろう。一実施形態では、タンパク質を、バイオマスから遊離させるために、方法は、溶液のpHを増大させるか、又は低下させて、露出されたタンパク質表面の電荷を変更する結果として、タンパク質の可溶性を変化させるステップを含む。一実施形態では、溶解は、タンパク質が、正味のゼロ電荷を有する場合のpHである、タンパク質の等電点(pI)から、少なくとも1pH単位分だけ増大させられる。
【0103】
例えば、pI値を伴うタンパク質には、6~10pHである、約550mMのリン酸カリウム緩衝液を使用することができる。一実施形態では、タンパク質を、バイオマスから遊離させるために、方法は、異なる塩濃度を使用して、タンパク質の、バイオマスとの相互作用に影響を及ぼすステップを含む。例えば、0.1~1Mの範囲のNaCl、又は50mMのリン酸カリウム緩衝液を、異なる濃度、例えば、0.2~2Mの硫酸アンモニウムと共に使用することができる。一実施形態では、タンパク質を、バイオマスから遊離させるために、方法は、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween20の使用を含む。
【0104】
任意選択で、発現されたタンパク質を含有する発酵培養液の精密濾過及び限外濾過の後、次のステップは、精製を伴いうる。代替的に、精密濾過及び限外濾過は、要求されない場合がある。精製法の選択は、タンパク質の安定性、純度、及び収率に影響を及ぼしうるが、異なる方法と関連する費用、持続可能性、及び廃水流量も異なる。精製時に最も重要な基準のうちの1つは、凝集又は変性に起因するタンパク質損失の低減である。当業者は、以下の方法が、典型的に、タンパク質の精製に適用されることを認識するであろう。一実施形態では、精製は、硫酸アンモニウム沈殿法;水二相系(ABS)法;及びクロマトグラフィー法のうちの1つ又は複数である。さらなる実施形態では、精製は、アニオン交換クロマトグラフィー;カチオン交換クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー;及びサイズ除外クロマトグラフィーのうちの1つ又は複数から選択されるクロマトグラフィーである。
【0105】
硫酸アンモニウム沈殿法とは、タンパク質の塩析としてもまた公知の、高塩濃度の存在下におけるタンパク質の可溶性に基づく精製法である。塩イオンは、分子間の相互作用を可能とする結果として、タンパク質の凝集及び沈殿をもたらしうる、タンパク質分子における電荷を遮蔽する。これが生じる塩濃度は、タンパク質間で異なる、天然タンパク質の特性に依存する。一実施形態では、タンパク質溶液を、適切な塩を使用して、タンパク質重量対総重量比による1%(w/w%)~90w/w%の範囲にあるある特定の百分率になるように飽和させる。一実施形態では、タンパク質溶液を、ある特定の温度、選択された飽和百分率において攪拌する。一実施形態では、タンパク質溶液を、ある特定の持続時間にわたり、0~10℃とする。一実施形態では、沈殿させられたタンパク質は、遠心分離を介して回収することができる。このような方法は、卵白からのオボアルブミンの精製に適用されている。一実施形態では、精製プロセスは、硫酸アンモニウム沈殿を使用するステップを含む。好ましい実施形態では、硫酸アンモニウム沈殿は、オボアルブミンを、卵白から精製するのに使用される。例えば、一実施形態では、オボアルブミンは、60飽和%~70飽和%など、50飽和%~90飽和%の間の範囲における硫酸アンモニウム沈殿を含む方法において、卵白から沈殿させられる。前記方法は、発酵ステップ、又は発酵終了時の精製ステップにおいて適用されうる。
【0106】
水二相系(ABS)は、タンパク質精製に使用される場合、ポリエチレングリコール(PEG)相及び塩相を含みうる。この方法は、工業用大スケールにおいて、容易に適用可能である利点を有し、クロマトグラフィーなど、他のタンパク質精製法と比較した場合に、低費用である。さらに、PEGが再生可能である結果として、廃水流量の減少をもたらしうる。精製の原理は、目的のタンパク質の、PEG又は塩との相互作用に基づく。(Asenjo,J.A及びAndrews,B.A.(2011);Rito-Palomares,M.(2004))。この系は、卵白からのオボアルブミンの精製に使用されている。ABSを、卵白の精製に使用する、このような方法、及び適切な代替法は、当業者に公知であろう(Wen,C.ら(2019);Meihu,M.ら(2013))。
【0107】
タンパク質精製ステップにおいて適用される、異なる種類のクロマトグラフィー法は、タンパク質の、樹脂との相互作用に関するそれらの性質において異なる。イオン交換クロマトグラフィー(アニオン又はカチオン)は、タンパク質の電荷(それぞれ、負又は正の)を使用して、タンパク質を、溶液において異なる形で帯電した不純物(DNA、他のタンパク質、ウイルスなど)から分離する。アニオン交換クロマトグラフィーでは、アニオン交換剤は、正に帯電している。アニオン交換剤は、例えば、ジエチルアミノメチル(DEAE)基から構成される、弱いアニオン交換剤の場合もあり、例えば、四級アンモニウム(Q)基から構成される、強いアニオン交換剤の場合もある。強いアニオン交換剤が、全pH範囲にわたり安定であるのに対し、弱いアニオン交換剤は、pH限界を有する。目的のタンパク質が、アニオン交換剤に結合するためには、正味の負帯電タンパク質を得るように、使用される緩衝液(リン酸カリウム、トリス-HClなど)のpHが、目的のタンパク質の等電点を上回る、少なくとも1つのpH値を取るものとする。その後、タンパク質は、モル濃度が増大する適切な塩(塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムなど)を使用して、又は緩衝液のpHを低下させることにより、アニオン交換剤との、それらの相互作用の強度に基づき、カラムから溶離される(Haq,A.ら(1999);Medve,J.ら(1998);Kopacieqicz,W.ら(1983);Rossomando,E.F.(1990);Gooding,K.M.及びSchmuck,M.N.(1985))。カチオン交換クロマトグラフィーの原理は、正に帯電した樹脂ではなく、負に帯電した樹脂を使用することを除き、アニオン交換クロマトグラフィーと同様である。カチオン交換剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMセルロース)基から構成される、弱いカチオン交換剤の場合もあり、例えば、スルホプロピル(SP)基から構成される、強いカチオン交換剤の場合もある。結合性タンパク質が、カチオン交換剤に結合するためには、正帯電タンパク質を得るように、緩衝液のpHが、タンパク質の等電点を下回る、少なくとも1つのpH値を取るものとする。タンパク質のローディング及び溶離は、アニオン交換クロマトグラフィーについて記載された、ローディング及び溶離と同様である。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、疎水性を、タンパク質と、樹脂との相互作用のベースとして探索する。タンパク質の結合は、タンパク質の疎水性パッチの露出を刺激する、高塩濃度(通例、硫酸アンモニウム)下で生じ、溶離は、低塩濃度下で行われる(Soni,B.ら(2008);Shaltiel,S.(1974);McCue,J.T.(2009);Queiroz,J.A.ら(2001);Gooding,D.L.ら(1986);Watanabe,E.ら(1994);Narhi,L.Lo.ら(1989))。当業者には、卵白を精製するためにクロマトグラフィー法を使用する、このような方法、及び適切な代替法が公知であろう(Awade,A.C.ら(1994);Guerin-Dubiard,C.ら(2005);Croguennec,T.ら(2000);Gen,F.ら(2012))。目的のタンパク質の精製に、サイズ除外クロマトグラフィーを使用する場合、タンパク質は、流体力学的体積に基づき分離される。タンパク質は、小孔サイズが異なるビーズを充填されたカラムを通って流過する。小型のタンパク質は、小孔を、大型のタンパク質より容易に充填する結果として、大型のタンパク質について、溶離時間の短縮をもたらし、小型のタンパク質について、溶離時間の延長をもたらす。カラムにおける多孔性ビーズは、アガロースビーズの場合もあり、デキストランビーズの場合もあり、ポリアクリルアミドビーズの場合もある。タンパク質は、通例、低塩濃度(例えば、塩化ナトリウム)を含有する、適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)を伴う定組成で溶離される(Mori,S.及びBarth,H.G.(2013);Andre,A.S.A.H.-K.及びSchwarm,K.S.(2016);Luo,J.ら(2013))。
【0108】
一態様では、本発明は、目的の動物由来食用タンパク質を精製するためのプロセスに関する。目的の動物由来食用タンパク質は、オボアルブミンなど、本明細書で規定されるタンパク質でありうる。一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質は、培養培地から精製される。一実施形態では、培養培地は、目的の動物由来食用タンパク質の作製時に、微生物宿主(細胞)が培養された培養培地である。したがって、培養培地は、タンパク質が発現された、微生物宿主(細胞)の使用済み培養培地でありうる。一実施形態では、微生物宿主細胞は、アスペルギルス属又はクロコウジカビである宿主細胞など、本明細書で規定される、真菌宿主細胞である。一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質は、微生物宿主細胞から、培養培地へと分泌される。この実施形態では、好ましくは、タンパク質が産生された、微生物宿主細胞のバイオマスは、好ましくは、目的の動物由来食用タンパク質が、タンパク質が産生された培養培地から精製される、精製のための任意の後続のステップの前に、使用済み培養培地から除去される。
【0109】
一実施形態では、本発明は、目的の動物由来食用タンパク質を、本明細書で規定される、目的のタンパク質を作製するためのプロセスにおいて得られた使用済み培養培地から精製するためのプロセスに関する。
【0110】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質を精製するためのプロセスは、少なくとも第1のアニオン交換ステップを含む。
【0111】
イオン交換樹脂は、公知の方法に従い調製されうる。典型的に、樹脂が、その対イオンに結合することを可能とする、ポリペプチドと、1つ又は複数の不純物とを含む試料又は組成物を樹脂へとロードする前に、平衡化緩衝液を、イオン交換樹脂に通すことができる。平衡化緩衝液が、ローディング緩衝液と同じであれば好都合であるが、これが要求されるわけでない。
【0112】
一実施形態では、目的の動物由来食用タンパク質を精製するためのプロセスは、目的のタンパク質を含む水溶液を用意するステップと、試料を、少なくとも第1のアニオン交換クロマトグラフィーステップ、例えば、本明細書で記載されるアニオン交換クロマトグラフィーにかけるステップとを含む。アニオン交換樹脂のために、マトリックスへと、共有結合的に接合される帯電基は、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)、四級アミノエチル(QAE)、及び/又は四級アンモニウム(Q)でありうる。一部の実施形態では、利用されるアニオン交換樹脂は、Q Sepharoseカラムである。アニオン交換クロマトグラフィーは、例えば、キュー・セファロース(Q SEPHAROSE)(商標)Fast Flow、キュー・セファロース(商標)High Performance、キュー・セファロース(商標)XL、カプト(CAPTO)(商標)Q、DEAE、トーヨーパール・ギガキャップ(TOYOPEARL GIGACAP)(商標) Q、フラクトゲル(FRACTOGEL)(商標)(商標)AE(トリメチルアミノエチル、四級アンモニア樹脂)、エシュモノ(ESHMUNO)(商標)Q、ヌビア(NUVIA)(商標) Q、又はウノスフェア(UNOSPHERE)(商標)Qを使用して実施されうる。四級アミン樹脂又は「Q樹脂」(例えば、カプト(商標)Q、キュー・セファロース(商標)、キューエーイー・セファデックス(QAE SEPHADEX)(商標));ジエチルアミノエタン(DEAE)樹脂(例えば、ディーイーエーイー・トリスアクリル(DEAE-TRISACRYL)(商標)、ディーイーエーイー・セファロース(DEAE SEPHAROSE)(商標)、ベンゾイル化ナフトイル化DEAE、ジエチルアミノエチルセファセル(SEPHACEL)(商標));アンバージェット(AMBERJET)(商標)樹脂;アンバーリスト(AMBERLYST)(商標)樹脂;アンバーライト(AMBERLITE)(商標)樹脂(例えば、アンバーライト(商標)IRA-67、アンバーライト(商標)強塩基性、アンバーライト(商標)弱塩基性)、コレスチルアミン樹脂、プロパック(ProPac)(商標)を含むがこれらに限定されない、本発明の範囲内にある、他のアニオン交換剤も使用されうる。樹脂(例えば、プロパック(商標)SAX-10、プロパック(商標)WAX-10、プロパック(商標)WCX-10);ティーエスケーゲル(TSK-GEL)(商標)樹脂(例えば、TSKgel DEAE-NPR;TSKgel DEAE-5PW);及びアクレイム(ACCLAIM)(商標)樹脂である。
【0113】
一実施形態では、アニオン交換クロマトグラフィーは、ハイトラップ・カプトQ(HiTrap Capto Q)(商標)AEC(Cytiva)を使用して実施される。
【0114】
こうして、第1のアニオン交換ステップにおいて、目的の動物由来食用タンパク質を含む培地は、アニオン交換樹脂と接触させられる。一実施形態では、アニオン交換樹脂は、クロマトグラフィーカラムに含有され、目的のタンパク質を含む培地は、カラムへとロード又はアプライされる。
【0115】
一実施形態では、目的のタンパク質を含む培地は、100、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、又は1mM NaCl以下である、イオン強度又は塩濃度で、アニオン交換樹脂と接触させられる。
【0116】
一実施形態では、目的のタンパク質を含む培地は、約6~約9、例えば、約7~約8.5、約7.5~約8.3、例えば、約8のpHで、アニオン交換樹脂と接触させられる。ローディング緩衝液、洗浄緩衝液、及び溶離緩衝液は、1つ又は複数の緩衝剤を含みうる。例えば、緩衝剤は、トリス、HEPES、MOPS、PIPES、SSC、MES、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、又はこれらの組合せでありうる。緩衝剤の濃度は、約1mM~約250mMの間、例えば、約10mM~約100mMの間、約15mM~約50mMの間、約20mM~約30mMの間、例えば、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約25mM、約30mM、約40mM、又は約50mMである。
【0117】
こうして、一実施形態では、目的のタンパク質を含む培地は、透析又は透析濾過など、それ自体当技術分野で公知の手段による、アニオン交換樹脂との接触のために、上述のイオン強度及びpHへと調整される。
【0118】
一実施形態では、目的のタンパク質を含む培地はまた、例えば、上記で記載された通りに、精密濾過(バイオマスを除去するための)及び限外濾過(目的のタンパク質を濃縮するための)のうちの少なくとも1つなど、アニオン交換樹脂と接触させられる前に、他の前処理にもかけられうる。
【0119】
一部の実施形態では、目的のタンパク質を含む培地を、アニオン交換にかけるステップは、約23℃又はこれ未満、約18℃又はこれ未満、又は約16℃又はこれ未満、例えば、約23℃、約20℃、約18℃、又は約16℃の温度で実施される。
【0120】
一実施形態では、目的のタンパク質は、第1のアニオン交換ステップから、非結合画分、すなわち、イオン交換樹脂に結合していない画分にいて回収される。こうして、クロマトグラフィーカラムにおいて、第1のアニオン交換ステップが実施されると、目的のタンパク質は、フロースルーにおいて回収されうる。任意選択で、フロースルーは、100、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2、又は1mM NaCl以下のイオン強度又は塩濃度で、1回又は複数回の洗浄及び/又は溶離と組み合わされる場合があり、好ましくは、約6~約9、例えば、約7~約8.5、約7.5~約8.3、例えば、約8のpHで組み合わされうる。
【0121】
一実施形態では、第1のアニオン交換ステップから得られた、目的のタンパク質は、第1のアニオン交換ステップと、実質的に同一の条件下で実施される、第2のアニオン交換ステップにかけられうる。
【0122】
一実施形態では、1つ又は2つのアニオン交換ステップから得られた、目的のタンパク質は、当業者に一般に公知の手段及び方法を使用する脱塩及び凍結乾燥のうちの少なくとも1つにかけられうる。
【0123】
本発明のこの態様に従う、使用済み培地からアニオン交換により精製される、目的の動物由来食用タンパク質は、任意の本明細書で記載される、目的の動物由来食用タンパク質でありうる。好ましくは、精製される、目的のタンパク質は、オボアルブミン、より好ましくは、ニワトリ、ペリカン、ウズラ、ハト、ダチョウ、チドリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、ヤケイ、クジャク、ヤマウズラ、キジ、エミュー、レア、及びキーウィからなる群から選択される鳥類に由来するオボアルブミンであり、これらのうちで、ニワトリ、ハト、ペリカン、及びウズラが最も好ましい。
【0124】
卵白
発現されたオボアルブミン、卵白(albumen又はegg white)と称されうる、オボアルブミンなど、微生物により産生された動物タンパク質は、食品適用と同様にそれらを使用することが可能であるために、好ましくは、対応する動物由来のタンパク質の機能的特性と同等な機能的特性を呈する。一実施形態では、発現されたオボアルブミンは、組成物の一部である。したがって、発現されたオボアルブミンを、卵白(albumen又はegg white)組成物と称する場合がある。代替的に、当業者は、発現されたオボアルブミンを、真菌由来の、発現されたオボアルブミン、真菌由来の卵白(albumen又はegg white)と称する場合がある。
【0125】
焼成、ゲル化などの複合適用における、微生物により産生された、本発明の動物タンパク質の挙動を予測するために、実験室規模の実験が適用されることで、食品適用試験の、妥当なサイズへのスケールダウンが容易となり、測定及び標準物質との比較の実施を可能となる。結果として、本発明のタンパク質が特徴づけられうる。本明細書で使用される、「卵白」という用語は、1つ又は複数の卵白タンパク質又は卵白関連タンパク質について記載し、このようなタンパク質は、tenp、クラステリン、CH21、VMO-1、ビテロゲニン、透明帯プロテインC、BC型オボトランスフェリン、オボインヒビター前駆体、オボムコイド前駆体、クラステリン前駆体、Hep21タンパク質前駆体、オボグリコプロテイン前駆体、細胞外脂肪酸結合性タンパク質、細胞外脂肪酸結合性タンパク質前駆体、プロスタグランジンD2シンターゼ前駆体(脳)、マーカータンパク質、ビテロゲニン1、ビテロゲニン2、ビテロゲニン2前駆体、ビテロゲニン3、リボフラビン結合性タンパク質、ヘモペキシン、血清アルブミン前駆体、アポリポタンパク質D、オボセクレトグロブリン、Hep21、グルタチオンペルオキシダーゼ3、リポカリン型プロスタグランジンD2シンターゼ/軟骨形成関連リポカリン、アポビテレニン1、DKK(dickkopf)関連タンパク質3、ガリナシン11(VMO-11、トリβ-ディフェンシン11)、血清アルブミン(a-リベチン)、ガリン、分泌トリプシンインヒビター、リンパ球抗原86、アクチン、Igp鎖C領域、スルフヒドリルオキシダーゼ1、ヒストンH4、アンジオポエチン様タンパク質3、ユビキチン、オボカリクシン32、ポリマー性免疫グロブリン受容体、ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼB、アミノペプチダーゼEy、プレイオトロフィン、ミドカイン、レニン/プロレニン受容体、TIMP-2、TIMP-3、ヒストンH2Bバリアント、IgX鎖、FAMC3タンパク質、a-エノラーゼ、60S酸性リボソームタンパク質PI、シトタクチン/テネイシン、CEPU-1、セレノプロテイン、伸長因子1-a1、精巣上体分泌タンパク質、El、14-3-3タンパク質(ゼータ)、オルファクトメジン様タンパク質3、グルタチオンS-トランスフェラーゼ2、P-2-マイクログロブリン、RGD-CAP、アポリポタンパク質B、ゴルジ体タンパク質1、コルヒチン、プロテアソーム7型サブユニット、アポリポタンパク質A-I、真核開始因子4A-II、ASPIC/軟骨酸性タンパク質1、トリオースリン酸イソメラーゼ、プロテアソームa型サブユニット、IgX鎖C領域、PLOD1(procollagen-lysine 2-oxoglutarate 5-dioxygenase 1)、ADPリボシル化因子5、カルモジュリン、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼイソメラーゼ、アネキシンI、伸長因子2、ペルオキシレドキシン1、HSP70、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA3、カルレチクリン、40Sリボソームタンパク質SA/ラミニン受容体1、a-アクチニン4、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド、ビタミンD結合性タンパク質、セマフォリン3C、エンドプラスミン、カタラーゼ、肝a-アミラーゼ、一過性ER ATPアーゼ、カドヘリン1、アンジオテンシン転換酵素、骨形成タンパク質1、グアニンヌクレオチド結合性タンパク質サブユニット12様1、ヒスチジンアンモニアリアーゼ、アネキシンA2、1-カテニン、RAB-GDP解離インヒビター、ラミンA、オボクレイジン116、アミノペプチダーゼ、HSP90-a、低酸素症上方調節タンパク質1、熱ショックタンパク質(HSP90)コグネイト1、ATPクエン酸シンターゼ、及びミオシン9を含むがこれらに限定されないことが理解されるであろう。
【0126】
オボアルブミン、卵白(albumen又はegg white)と称されうる、目的のタンパク質のゲル化特性を決定するのに、貯蔵弾性率、損失弾性率、ゲル強度、破断応力、変形、ヤング係数などのゲル流体力学特徴を得るために、振動式レオメーター(例えば、MCR series、Anton Paar)又は引張試験機が使用される場合がある。典型的に、タンパク質のゲル化特性についての精緻な情報を得ようとするなら、当業者は、タンパク質濃度及び塩濃度を変動させて調製されるゲル(Kato,A.ら(2013);Hua,Y.ら(2005);Rawdkuen,S.ら(2009))を、オボアルブミンゲル(Egelandsdal,B.(1980);Shitamori,S.ら(1984);Matsudomi,N.ら(1991);Hatta,H.ら(1986);Shigeru,H.及びShuryo,N.(1985);Creusot,N.ら(2011))などに適合させることになる。このような例では、タンパク質の濃度は、好ましくは、5%~15%の間など、3%~20%の間の範囲でありうる。塩(例えば、塩化ナトリウム)は、20~100mMの間など、0~200mMの間の範囲でありうる。溶液のpHは、5~8の間、又は6.5~7.5の間など、3~9の間の範囲でありうる。溶液は、15~120分間、好ましくは、60~90分間など、45~120分間の範囲の時間にわたり加熱されうる。一例では、溶液は、70~90℃の間など、60~100℃の間にわたり加熱されうる。この後、ゲルを、室温へと冷却すると、レオロジー測定にかける準備ができている。
【0127】
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、100g~1500g、500g~1500g、又は700g~1500gの範囲内のゲル強度を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、卵白のゲル強度を超えるゲル強度を有しうる。
【0128】
タンパク質の、別の重要な品質は、その可溶性である。一実施形態では、タンパク質の可溶化は、異なるwt%(重量%)のタンパク質を、pHを変動させる緩衝液と混合することにより決定される。さらなる実施形態では、タンパク質溶液は、ある特定の時間にわたり攪拌され、次いで、遠心分離される。上清におけるタンパク質の量は、タンパク質の可溶性の測定のための、ブラッドフォード法、デュマ法、280nmにおける吸光度法、ビウレット法などなど、適切なタンパク質決定法を使用して測定されうる。
【0129】
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、6~10の範囲内のpHを有しうる。
【0130】
別の重要な食用タンパク質の適用は、起泡である。目的のタンパク質の起泡特性を決定するために、タンパク質溶液を調製し、適切な方法により、例えば、ホモジナイゼーション又はブレンディングにより、ある特定の長さの時間にわたり攪拌することができる。測定用シリンダーを使用して、30秒後における全泡量を観察し、泡量を規定する。全泡量を、1~24時間の範囲の時間にわたり記録し、泡量が減少する割合(容量%)により、泡安定性を規定する。泡安定性は、この場合には、泡のうちの半分が消失するのに必要とされる半減時間を指す、半減期として表されうる。
【0131】
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白タンパク質組成物は、少なくとも30mmの泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白タンパク質組成物は、卵白の泡高を超える泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白タンパク質組成物は、泡立ての30分間後において、最大で10mm又は最大で5mmの泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白タンパク質組成物は、泡立ての30分間後において、卵白の泡高に満たない泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白タンパク質組成物は、40g~100gなど、30g~100gの範囲内の泡強度を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白タンパク質組成物は、卵白の泡強度を超える泡高を有しうる。
【0132】
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、卵白の泡高を超える泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、泡立ての30分間後において、最大で10mm又は最大で5mmの泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、泡立ての30分間後において、卵白の泡高に満たない泡高を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、40g~100gなど、30g~100gの範囲内の泡強度を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、卵白の泡強度を超える泡高を有しうる。
【0133】
タンパク質の、さらに重要な機能特性は、その乳化特性である。この特性を測定するために、ある特定のpHを伴うタンパク質溶液を、適切な油と混合することができる。この溶液は、適切な方法により、例えば、ホモジナイゼーション又はブレンディングにより、ある時間にわたり攪拌される。当技術分野では、乳化特性を決定するための代替法が公知である。1つのこのような方法は、乳化相、水相、及び油相の容量に基づく。さらなる方法は、分光光度計を使用して測定されうる、エマルジョンの濁度に基づく。
【0134】
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物は、6~10の範囲内のpHを有しうる。
【0135】
卵白組成物
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、発現されるオボアルブミンは、組成物の一部でありうる。発現されるオボアルブミンはまた、本明細書で記載される通り、卵白として公知でもありうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、方法は、食品添加剤を、卵白組成物としてもまた公知の、オボアルブミン組成物へと添加するステップをさらに含みうる。一態様では、本開示は、発現されたオボアルブミン、又はその組成物の一部としてのオボアルブミンを含む加工済み可食生成物を提示する。結果として、本開示は、本明細書で記載される卵白を含む、加工済み可食生成物を提示する。一態様では、本開示は、発現されたオボアルブミンと、1つ若しくは複数の卵白タンパク質又はこれらの断片とを含む加工済み可食生成物を提示する。したがって、本開示は、本明細書で記載される、発現されたオボアルブミンと、1つ若しくは複数の卵白関連タンパク質又はこれらの断片とを含む加工済み可食生成物を提示する。一部の実施形態では、1つ又は複数の卵白タンパク質は、オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、G162M F167Aオボムコイド、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、リゾチーム、オボインヒビター、オボグリコプロテイン、フラビンタンパク質、オボマクログロブリン、オボスタチン、シスタチン、アビジン、オボアルブミン関連タンパク質X、オボアルブミン関連タンパク質Y、及びこれらの任意の組合せからなる群に由来する組合せなど、オボトランスフェリン、オボムコイド、G162M F167Aオボムコイド、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、a-オボムチン、(3-オボムチン、リゾチーム、オボインヒビター、オボグリコプロテイン、フラビンタンパク質、オボマクログロブリン、オボスタチン、シスタチン、アビジン、オボアルブミン関連タンパク質X、オボアルブミン関連タンパク質Y、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、加工済み可食生成物は、オボアルブミンと、2つ若しくはこれを超えるか、3つ若しくはこれを超えるか、4つ若しくはこれを超えるか、5つ若しくはこれを超えるか、又は6つ若しくはこれを超える卵白タンパク質又はこれらの断片とを含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、加工済み可食生成物は、1つ若しくは複数であるか、2つ若しくはこれを超えるか、3つ若しくはこれを超えるか、5つ若しくはこれを超えるか、10若しくはこれを超えるか、又は20若しくはこれを超える卵白タンパク質を欠く場合がある。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、加工済み可食生成物は、食用生成物、飲用生成物、栄養補助食品、食品添加剤、医薬生成物、衛生生成物、並びに食用生成物及び飲用生成物からなる群に由来する組合せなど、これらの任意の組合せからなる群から選択されうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、水をさらに含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、最大で、95%の百分率の水を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、80%~95%の範囲内の百分率の水を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、乾燥重量で、少なくとも90%タンパク質を含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、食品添加剤をさらに含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、食品添加剤は、甘味剤、塩、炭水化物、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、コレステロールを欠く場合がある。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、乾燥重量で5%未満の脂肪を含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、脂肪、飽和脂肪、又はトランス脂肪を欠く場合がある。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、オボアルブミン組成物又は可食生成物は、グルコースを欠く場合がある。
【0136】
前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、方法は、オボアルブミン組成物を、脱糖するか、安定化させるか、又はこれからグルコースを除去するステップをさらに含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、方法は、オボアルブミン組成物を、低温殺菌するか、又は超高温殺菌するステップをさらに含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、方法は、オボアルブミン組成物を乾燥させるステップをさらに含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、方法は、オボアルブミン組成物又はその一部を、酵素、化学物質、又は機械により消化することをさらに含みうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物は、少なくとも1、2、3、又は6カ月間の保管寿命を有しうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物又は可食生成物は、卵白と比べて、アレルギー誘発性が低減されている場合がある。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物又は可食生成物は、液体でありうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物又は可食生成物は、固体又は粉末でありうる。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物又は可食生成物は、凍結されている場合がある。前述の実施形態のうちのいずれか一つでは、卵白組成物又は可食生成物は、一部又は全ての天然クロコウジカビタンパク質を含みうる。代替的に、卵白組成物又は可食生成物は、全ての天然クロコウジカビタンパク質から精製されている場合がある。
【0137】
本明細書で飲用される、全ての特許及び参考文献は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0138】
本発明は、以下の実施例により、さらに記載されるが、これらは、本発明の範囲を限定するものとしてはみなされないものとする。
【実施例】
【0139】
一般的分子生物学法
そうでないことが指し示されない限りにおいて、使用される方法は、標準的な生化学法である。適切な一般的方法についての教科書の例は、Sambrookら、「Current Protocols in Molecular Biology」(1989);及びAusubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」(1995)、John Wiley & Sons,Incを含む。
【0140】
株
クロコウジカビ株であるBZASNI.22aは、CICC2462の急速増殖型単一コロニー分離株である。BZASNI.22aは、rDNAのITSシーケンシング、及びゲノムのリシーケンシング(BaseClear、Netherlands)により特徴づけた。クロコウジカビ株であるBZASNI.33は、GLAキャリアOVA発現カセット(BZESCO.23においてクローニングされる)を伴う、クロコウジカビBZASNI.22aの高コピー形質転換体である。
【0141】
BZASNI.48は、BZASNI.22aの単一コロニー分離株である。BZASNI.60は、GLAプレプロペプチドOVA発現カセットを伴う、クロコウジカビBZASNI.48の高コピー形質転換体である。
【0142】
クローニングを目的として、Biokeから入手した、New England Biolabs製のNEB 10-ベータコンピテント大腸菌(Escherichia coli(E.coli))細胞、及びNEB 5-アルファコンピテント大腸菌細胞を使用した。
【0143】
代替的株は、クロコウジカビCBS513.88株(野生型)、NRRL3株(野生型)及びクロコウジカビCICC2462株を含む。
【0144】
プラスミド及びオリゴヌクレオチドプライマー
実施例において使用されるプラスミドを、表1に列挙する。実施例において使用されるプライマーを、表2に列挙する。
【表4】
【表5】
【0145】
キット
アガロースゲルからの、PCR断片の精製及びDNA断片の抽出のために、ウィザード(Wizard)(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)を使用した。精製されたPCR産物を、ゼロブラント(Zero Blunt)(商標)トポ(TOPO)(商標)PCRクローニングキット(Thermo Fisher Scientific)による、ピーシーアール(PCR)(商標)ブラントII-トポ(Blunt II-TOPO)(登録商標)ベクターにライゲーションした。増幅されたプラスミドは、Qiaprep spin miniprepキット(Qiagen)により単離した。Golden Gate反応は、NEB Golden Gate Assemblyキット(New England Biolabs)により実行した。Gibson Cloning Reactionsは、NEB Gibson Assembly Cloningキット(New England Biolabs)により実行した。
【0146】
酵素
DNA操作のための酵素(例えば、消化酵素である、Golden Gate反応酵素)は、New England Biolabsから入手可能であり、製造元のプロトコールに従い使用した。
【0147】
培地
オボアルブミン発現カセットの構築において使用される培地:適切な抗生剤(ネオマイシン50μg/ml、又はクロラムフェニコール25μg/ml)を伴う、液体LB培地(10g/lのトリプトン、5g/lの酵母抽出物、5g/lのNaCl)、及び固体LB培地(15g/lの寒天の添加)である。
【0148】
クロコウジカビの形質転換体の形質転換及び選択のために使用される培地:適切な選択培地(15mMの塩化セシウムと組み合わせた、抗生剤であるヒグロマイシン400μg/ml、又は10mMのアセトアミド)を伴う、下層寒天培地(187.36g/LのD-サッカロース;0.5g/kgのKCl;4g/kgのKH2PO4;1.1g/kgのNa2HPO4;1.5g/kgのクエン酸;2g/kgのMgSO4・7水和物;0.01g/kgのFeSO4・7水和物;0.1g/kgのCaCl2・2水和物;0.0125g/kgのZnSO4・7水和物;0.012g/kgのMnCl2・4水和物;0.0016g/kgのCuSO4・5水和物;0.0009g/kgのKI、9g/Lのアガロースを伴い、初期pHを6とする)、適切な選択培地(15mMの塩化セシウムと組み合わせた、抗生剤であるヒグロマイシン500μg/ml、又は10mMのアセトアミド)を伴う、上層寒天培地(0.5g/kgのKCl;4g/kgのKH2PO4;1.1g/kgのNa2HPO4;1.5g/kgのクエン酸;2g/kgのMgSO4・7水和物;0.01g/kgのFeSO4・7水和物;0.1g/kgのCaCl2・2水和物;0.0125g/kgのZnSO4・7水和物;0.012g/kgのMnCl:2・4水和物;0.0016g/kgのCuSO4・5水和物;0.0009g/kgのKI、11g/LのD-グルコース、9g/Lの寒天を伴い、初期pHを6とする)、及び適切な選択培地(15mMの塩化セシウムと組み合わせた、抗生剤であるヒグロマイシン500μg/ml、又は10mMのアセトアミド)を伴う最小培地(0.5g/kgのKCl;4g/kgのKH2PO4;1.1g/kgのNa2HPO4;1.5g/kgのクエン酸;2g/kgのMgSO4・7水和物;0.01g/kgのFeSO4・7水和物;0.1g/kgのCaCl2・2水和物;0.0125g/kgのZnSO4・7水和物;0.012g/kgのMnCl:2・4水和物;0.0016g/kgのCuSO4・5水和物;0.0009g/kgのKI、11g/LのD-グルコース、9g/Lの寒天を伴い、初期pHを6とする)である。ヒグロマイシンを、形質転換体の選択のために使用する場合、形質転換プレート及び最小プレートは、0.54g/LのNH4Cl窒素供給源を含有していた。胞子形成寒天(0.54g/LのNH4Cl、0.5g/kgのKCl;4g/kgのKH2PO4;1.1g/kgのNa2HPO4;1.5g/kgのクエン酸;2g/kgのMgSO4・7水和物;0.01g/kgのFeSO4・7水和物;0.1g/kgのCaCl2・2水和物;0.0125g/kgのZnSO4・7水和物;0.012g/kgのMnCl:2・4水和物;0.0016g/kgのCuSO4・5水和物;0.0009g/kgのKI、11g/LのD-グルコース、14g/Lの寒天、及び44.73g/LのKClを伴い、初期pHを6とする)を使用して、クロコウジカビ形質転換体を精製した。
【0149】
深型ウェルプレートにおけるオボアルブミン形質転換体スクリーニングのために使用される培地:PDA(20g/Lのデキストロース、15g/Lの寒天、及び4g/Lのバレイショデンプン)である。産出培地(PM)(0.5g/kgのKCl;4g/kgのKH2PO4;1.1g/kgのNa2HPO4;1.5g/kgのクエン酸;2g/kgのMgSO4・7水和物;0.01g/kgのFeSO4・7水和物;0.1g/kgのCaCl2・2水和物;0.0125g/kgのZnSO4・7水和物;0.012g/kgのMnCl:2・4水和物;0.0016g/kgのCuSO4・5水和物;0.0009g/kgのKI、88g/LのD-グルコース、70g/Lのクエン酸、12.5g/LのL-グルタミン、11g/Lのクエン酸三アンモニウムを伴い、初期pHを5.25とする)とする。
【0150】
シェークフラスコにおけるオボアルブミン形質転換体スクリーニングために使用される培地:PDA.PM.GYE培地(20g/Lの酵母抽出物、22g/LのD-グルコースを伴い、初期pHを5とする)である。KM3.0(5g/Lの尿素、50g/LのD-グルコース、2g/LのKH2PO4、0.55g/LのNa2HPO4、1g/LのMgSO4・7水和物、0.000125ZnSO4・7水和物、0.0001g/LのFeSO4・7水和物、0.006g/LのMnCl:2・4水和物、0.05g/LのCaCl2・2水和物、0.3g/lKCl、1.5g/Lのクエン酸を伴い、初期pHを5とする)とする。
【0151】
5Lスケールの発酵槽において使用される発酵培地:オボアルブミンを作製するために、米国特許出願公開第2014/0342396 A1号において記載されている通りに、5.5g/Lの(NH4)2SO4を使用し、マルトデキストリン(10%)と共に、グルコース(90%)をフィードし、12.5%のアンモニウム溶液、0.23g/Lの消泡剤であるBT03(van Meeuwen、Netherlands)を使用して、pHを制御するように滴定しながら、既知組成発酵培地を使用した。
【0152】
クロコウジカビの発酵
深型ウェルプレート(DWP)における発酵のための培地については、上記で記載されている。接種及び発酵は、以下の方式で実行した。200μlのグリセロール原液を、PDAプレートに入れ、3mlのPMを添加し、まず、プレートを振盪して、菌糸体を拡散させ、次いで、32℃で、3日間にわたりインキュベートした。菌糸体をほぐすように、T字型スパチュラによりスクラッチした、増殖させた真菌菌糸体の上に、5mlのPM培地を添加することにより、プレートのPDA+PM培地全体を採取した。全菌糸体を、滅菌トレーに回収して、より均質の接種物とした。0.5mlの、均質化された菌糸体を、DWPへと移した。DWPを、インキュベーターにおいて、34℃、350rpmで、6日間にわたりインキュベートした(Infors minitron;ストローク:2.5cm)。上清を、SDS-PAGEを使用する解析のために使用した。
【0153】
シェークフラスコ(KM3.0)における発酵のための培地については、上記で記載されている。接種及び発酵は、以下の方式で実行した。200μlのグリセロール原液を、PDAプレートに入れ、3mlのPMを添加し、まず、プレートを振盪して、菌糸体を拡散させ、次いで、32℃で、3日間にわたりインキュベートした。菌糸体をほぐすように、T字型スパチュラによりスクラッチした、プレートのPDA+PM培地全体を採取し、菌糸体を、ステリストッパー(Steristoppers)を伴う、300mlのバッフル付きシェークフラスコに、35mlのGYE培地と共に接種し、次いで、インキュベーター(Infors multitron;ストローク:2.5cm)において、32℃、220rpmで、2日間にわたりインキュベートした。1mlのGYE培養物を、ステリストッパーを伴う、100mlのバッフルなしシェークフラスコに、22mlのKM3.0培地と共に接種し、次いで、22mlのKM3.0培地において、32℃、120rpmで、6日間にわたりインキュベートした。上清を、SDS-PAGEを使用する解析のために使用した。
【0154】
5Lの発酵槽における培地は、上記で記載された通りに調製した。グルコースを、>10g/Lに制御するように、グルコースをフィードした。発酵槽を混合するように、攪拌を行い、最適のタンパク質量をもたらすのに十分な酸素を供給した。pHを、pH6.5に設定し、発酵槽を、32℃に保持した。pHを、pH5~7の間に制御し、温度を、31~33℃の間に制御した。
【0155】
クロコウジカビ形質転換体の精製
初代形質転換体を、ヒグロマイシン又はアセトアミドを伴う最小培地に再画線接種し、増殖性(陽性)形質転換体を、オボアルブミン遺伝子、及びヒグロマイシン耐性又はアセトアミダーゼ耐性のコード遺伝子の存在についてのコロニーPCRにより解析した。コロニーPCRの後における陽性形質転換体を、胞子形成のために、胞子形成用寒天へと移した。単一の胞子形成性コロニーを選択し、ヒグロマイシン又はアセトアミドを伴う最小培地に画線接種した。オボアルブミン遺伝子、及びヒグロマイシン耐性又はアセトアミダーゼ耐性のコード遺伝子の存在を確認するために、単一コロニーのゲノムDNAを単離した。
クロコウジカビ形質転換体についてのSDS-PAGE解析及びウェスタンブロット解析
SDS-PAGEは、小スケールの発酵の後で実行した。試料調製物は、7.8μlの上清、3μlのニューページ(NuPAGE)(登録商標)ドデシル硫酸リチウム(LDS)試料緩衝液(4倍濃度)、及び1.2μlのニューページ(登録商標)還元剤(10倍濃度)であり、これを、95℃で、10分間にわたり変性させた。10μlの試料を、ボルト(Bolt)(商標)8% Bis-Tris Plus SDS-PAGEにロードし、5μlのベンチマーク(商標)Unstained Protein Ladderを添加した。20倍濃度ニューページ(登録商標)SDS用MOPSランニングバッファー、200mlの1倍濃度ニューページ(登録商標)ランニングバッファーにより、1リットルの1倍濃度ニューページ(登録商標)ランニングバッファーを調製し、0.5mlのニューページ(登録商標)抗酸化剤を、システムの内側チャンバーに添加し、1倍濃度ニューページ(登録商標)ランニングバッファーの残りを、外側チャンバーに添加した。製造元のプロトコールに従い、SDS-PAGEを行った。SDS-PAGEの染色は、製造元のプロトコールに従い、SimplyBlue Safestainにより実行した。SDS-PAGEプロトコールで使用された、全ての化学物質は、Invitrogen/Thermo Fisher Scientific製である。
【0156】
上清96深型ウェルプレート(小スケール発酵)において増殖させた、5日齢(d5)及び6日齢(d6)の培養物を、SDS-PAGEにおいて解析し(
図4の左パネル)、ニトロセルロース膜にブロッティングし(
図4の右パネル)、ニワトリオボアルブミンポリクローナル抗体(ウサギ/IgGオボアルブミンポリクローナル抗体;型番:ThermoFisher PA1196、及びヤギ抗ウサギIgG HRPコンジュゲート;型番:Sigma AB1225)により検出した。
【0157】
NCBIデータベースからのオボアルブミン配列の選択、及びそれらのコンピュータによる解析
異なる鳥類種から、代替的オボアルブミンを得るために、ニワトリオボアルブミンタンパク質配列(GenBank受託番号:AAB59956.1)を使用して、NCBIデータベースを、Blast(Altschul.,S.F.ら(1997)、「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402)にかけた。複数の配列を見出し、これらから、以下の基準:
i)選択された鳥類の卵についてのヒト使用歴(Wikipediaにおける検索に基づく情報);
ii)鶏卵アレルギー誘発性エピトープ(Mine Y.及びRupa P.(2003)、Clin Exp Immunol、103、446~453);アレルゲンデータベース:IEDB:http://www.iedb.org/home_v3.phpandSEDB-http://sedb.bicpu.edu.in/home.php)の非存在;及び
iii)鳥類の系統発生的距離(Jarvis E.D.ら(2014)、「Whole-genome analyses resolve early branches in the tree of life of modern birds」、Science、346(6215)、1320~1331)
に従い、5つの代替的ニワトリオボアルブミンを選び出した。
【0158】
これらの基準を満たすオボアルブミン配列の選択は、ダチョウ(Struthio camelus australis);ペリカン(Pelecanus crispus);ハト(Columba livia);ウズラ(Coturnix coturnix);及びチドリ(Charadrius vociferus)(
図1及び配列番号2~6を参照されたい)に由来する配列の選択であるが、この選択に限定されない。
【0159】
全ゲノムベースのコドン使用を伴う、オボアルブミン発現カセットの構築
選択されたオボアルブミンを、クロコウジカビにおいて過剰発現させるために、本発明者らは、以下の方式で、発現カセットを構築した:
i)タンパク質配列(配列番号1~6)を、対応するDNAコード配列のin vitro合成のためのインプットとして使用した。クロコウジカビにおける発現のためのコドン最適化は、クロコウジカビCBS513.88(
図2;https://www.kazusa.or.jp/codon/を参照されたい)の完全コドン使用に基づき、遺伝子合成は、GenScript(US)により行った。対応するDNAコード配列は、配列表において、配列番号7~12の下に言及される。各配列の起始部及び終端部に、BsaI酵素の制限部位を付加して、Golden Gate反応を容易とし、pUC57-kan(配列番号13)もクローニングした。
【0160】
ii)グルコアミラーゼ(GenBank:AAP04499.1)の分泌シグナル配列(配列番号14)からなるプレプロペプチドを、細胞外におけるオボアルブミンの分泌を駆動するのに使用した。配列を、合成により作製し、対応するオボアルブミンアミノ酸配列の、第2のアミノ酸(天然のニワトリオボアルブミンに基づく)へと直接融合させた。
【0161】
iii)代替的オボアルブミン発現カセットでは、オボアルブミンコード配列を、その最初の502アミノ酸をコードする、切断型グルコアミラーゼ遺伝子配列へと融合させた。このグルコアミラーゼ配列は、N末端に、その分泌シグナルプレプロ配列を含む。グルコアミラーゼの502アミノ酸と、成熟オボアルブミン配列の起始部との間に、KEX2(Lys-Arg)切断部位を含む、8アミノ酸の合成ペプチド(配列番号15及び16)を挿入した。同様の切断型グルコアミラーゼタンパク質配列が、クロコウジカビの分泌経路を介する相同なキャリアとして使用されたが、これは、異種タンパク質の産出を著明に増大させることが報告された(Jeenes,D.J.ら(1993)、「A truncated glucoamylase gene fusion for heterologous protein secretion from Aspergillus niger」、FEMS Microbiology Letters、107、267~272)。
【0162】
グルコアミラーゼ遺伝子の調節配列(GenBank:An03g06550)を、目的の遺伝子の高発現を駆動し、効率的な転写物の終結を確認するために使用した。glaAプロモーター及びglaAターミネーターを、それぞれ、プライマー406及び408(配列番号17及び18)、並びにプライマー409及び410(配列番号19及び20)により、宿主であるクロコウジカビBZASNI.22a株からPCR増幅し、ウィザード(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)により精製した。これらの精製PCR産物を、ゼロブラント(商標)トポ(商標)PCRクローニングキット(Thermo Fisher Scientific)による、ピーシーアール(商標)ブラントII-トポ(登録商標)ベクターにライゲーションし、これにより、NEB 10-ベータコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全てについては、表1を参照されたい。
【0163】
NEB Golden Gate Assemblyキット(New England Biolabs;配列番号22のプラスミドpGGAを伴う)を使用して、1000bpのglaAプロモーター、プレプロペプチド又はキャリアタンパク質、オボアルブミンコード配列、及び600bpのglaAターミネーターからなる発現カセットをアセンブルし、これにより、NEB 10-ベータコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全てについては、表1を参照されたい。GLAタンパク質融合体の構築は、上記で言及された通りに実行した。
【0164】
遺伝子特異的コドン使用を伴う、オボアルブミン発現カセットの構築
クロコウジカビにおいて、異種タンパク質を発現させるための、コドン使用最適化のための別の手法について調べるために、本発明者らは、高度に発現されたクロコウジカビ遺伝子であるglaAを選択し、コドン使用の最適化を、そのコドン優先性に基づかせた。本発明者らは、以下の方式で、発現カセットを構築した:
ニワトリオボアルブミン(Genbank受託番号:MF321659.1)のcDNAを、クロコウジカビにおいて、オボアルブミンを発現させるための、コドン使用最適化のためのインプットとして使用した。オンラインで入手可能な解析ツールである、Sequence Manipulation Suite(http://www.bioinformatics.org/sms2/codon_usage.html)(表3Aを参照されたい)を使用して、クロコウジカビグルコアミラーゼ(glaA)cDNA(NCBI参照番号:XM_001390493.2)のコドン使用を解析した。その後、オンラインで入手可能なDNA最適化ツールである、OPTIMISER(http://genomes.urv.es/OPTIMISER/;Puigbo P.ら、2007、Nucl Acids Res、35、W126~W131)を使用し、クロコウジカビCBS513.88のglaA cDNAのコドン使用表(表3A)を、インプットとして使用して、ニワトリオボアルブミンcDNAを、コドン最適化した。全cDNA配列を通した、同等な変化の分布を考慮に入れ、結果として得られたニワトリオボアルブミンcDNAを、glaA cDNAのコドン使用表(表3B、配列番号32を参照されたい)との、最も緊密なマッチとするように、手作業により、さらに適正化した。遺伝子合成は、GenScript(US)により行った。細胞外において、タンパク質の分泌を方向付けるように、オボアルブミンタンパク質配列のメチオニンを、クロコウジカビのグルコアミラーゼ(GLA)プレプロ配列(配列番号14)で置きかえた(オボアルブミンは、切断されず、成熟タンパク質の一部として残存する、内部シグナル配列(残基21~47)を含むことに留意されたい)。対応するDNAコード配列は、配列表において、配列番号30の下に言及される。Genscriptにより、ニワトリオボアルブミンコード配列を、デスティネーションプラスミドであるpUC57(配列番号31)において合成し、これを、BZESCO.21(配列番号32)と名付けた。
【0165】
代替的に、オボアルブミンコード配列を、クロコウジカビの分泌経路を通して、キャリアの役割を果たす、切断型グルコアミラーゼ遺伝子配列(配列番号33)へと融合させた。分泌されたオボアルブミンを、GLAキャリアから放出するために、エンテロキナーゼ切断部位(DDDDK)を、キャリアタンパク質と、天然オボアルブミンの起始部との間に付加した。エンテロキナーゼ切断部位を付加された、切断型グルコアミラーゼ遺伝子を、プライマー276及び286(配列番号34及び35)により、クロコウジカビBZASNI.22aのゲノムDNAからPCR増幅した。
【0166】
両方のオボアルブミン構築物(GLAキャリア融合体を伴うオボアルブミン構築物、及びこれを伴わないオボアルブミン構築物)の構築は、インフュージョンPCR(In-Fusion PCR)を使用して行った。GLAキャリア融合体を伴わない構築物のために、glaAのプロモーターは、プライマー276及び277(配列番号34及び36)により、ターミネーターは、プライマー280及び281(配列番号37及び38)により、いずれも、クロコウジカビBZASNI.22aのゲノムDNAからPCR増幅した。ニワトリオボアルブミンORFは、プラスミドであるBZESCO.21(配列番号32)を、鋳型として使用して、プライマー278及び279(配列番号39及び40)によりPCR増幅した。GLAキャリア-オボアルブミン融合構築物のために、glaAのプロモーターと、GLAキャリアタンパク質に対応する、切断型glaA遺伝子とは、プライマー276及び286(配列番号34及び35)により、ターミネーター(それぞれ、配列番号37及び38に対応する、プライマー280及び281)も併せて、いずれも、クロコウジカビBZASNI.22aのゲノムDNAからPCR増幅した。ニワトリオボアルブミンORFは、プライマー287及び279(配列番号41及び40)により、BZESCO.21(配列番号32)からPCR増幅した。それぞれ、カセットの5’末端及び3’末端においてアライメントするプライマーによる重複伸長PCRを使用して、上記で記載された発現カセットの部分をアセンブルした。得られた産物を、制限-ライゲーションにより、pUC57-Brickベクター(配列番号42)へとクローニングした。GLAキャリア融合体を伴わない完全構築物を、BZESCO.22(配列番号43)と名付け、GLAキャリア融合構築物を、BZESCO.23(配列番号44)と名付けた。ニワトリオボアルブミン発現カセット(GLAキャリア融合体を伴うニワトリオボアルブミン発現カセット、及びこれを伴わないニワトリオボアルブミン発現カセット)を、プライマー276及び281(配列番号34及び38)によりPCR増幅し、プライマー404及び405(配列番号46及び47)により、pCNS43(配列番号45)からPCR増幅された、ヒグロマイシン選択マーカーを含有するDNA断片と共に、クロコウジカビ株であるBZASNI.22aを形質転換した。
【0167】
クロコウジカビの高発現遺伝子であるglaAのコドン使用最適化に基づき選択された、他のオボアルブミンコード遺伝子を過剰発現させるために、本発明者らは、以下の方式で、発現カセットを構築した:i)ダチョウ、ペリカン、ハト、ウズラ、及びチドリオボアルブミンのタンパク質配列(配列番号2~6)を、クロコウジカビCBS513.88のglaA cDNAのコドン使用表(表3A)を使用する、GenScript(US)による遺伝子合成、及びそれらの自家遺伝子合成、コドン最適化アルゴリズムのためのインプットとして使用した。細胞外において、タンパク質の分泌を方向付けるように、オボアルブミンタンパク質配列の+1位におけるメチオニンを、クロコウジカビのグルコアミラーゼ(GLA)プレプロペプチド配列(配列番号14)で置きかえた(オボアルブミンは、切断されず、成熟タンパク質の一部として残存する、内部シグナル配列(残基21~47)を含むことに留意されたい)。対応するDNAコード配列は、配列表において、配列番号65~69の下に言及される。配列を、pUC57-kan(配列番号13)において、GenScriptにより送達し、5’末端及び3’末端において、BsaI酵素の制限部位を付加することにより、さらに修飾して、Golden Gate反応を容易とした。glaAプロモーター及びglaAターミネーターを、それぞれ、プライマー406及び408(配列番号17及び18)、並びにプライマー409及び410(配列番号19及び20)により、宿主であるクロコウジカビBZASNI.22a株からPCR増幅し、ウィザード(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)により精製した。これらの精製PCR産物を、ゼロブラント(商標)トポ(商標)PCRクローニングキット(Thermo Fisher Scientific)による、ピーシーアール(商標)ブラントII-トポ(登録商標)ベクターにライゲーションし、これにより、NEB 10-ベータコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全てについては、表1を参照されたい。
【0168】
NEB Golden Gate Assemblyキット(New England Biolabs;配列番号22のプラスミドpGGAを伴う)を使用して、1000bpのglaAプロモーター、オボアルブミンコード配列を伴うグルコアミラーゼプレプロペプチド、及び600bpのglaAターミネーターからなる発現カセットをアセンブルし、これにより、NEB 10-ベータコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全て(配列番号70~74)については、表1を参照されたい。
【0169】
クロコウジカビゲノムターゲティング単一クロスオーバー組込み構築物のために、glaA遺伝子座の下流における1500bpの領域を使用した(3’’glaAとマークされる)。この3’’glaA部分を、宿主であるクロコウジカビBZASNI.22aから、プライマー728及び729(配列番号75及び76)によりPCR増幅した。異なる発現カセット(glaAプロモーター-コドン最適化オボアルブミン遺伝子-glaAターミネーター)を、Golden Gate構築物(配列番号70~74)、及びBZESCO.22(配列番号43)から、プライマー733及び734(配列番号77及び78)によりPCR増幅した。プラスミド骨格部分を、プラスミドであるpUC19(配列番号79)から、プライマー431及び432(配列番号80及び81)によりPCR増幅した。全てのPCR産物を、ウィザード(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)により精製した。NEB Gibson Assemblyクローニングキット(New England Biolabs)を使用して、1500bpの3’’glaA部分、異なる発現カセット、及びプラスミド骨格からなる組込み構築物をアセンブルし、これにより、NEB 5-アルファコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全て(配列番号82~87)については、表1を参照されたい。
【表6】
【0170】
遺伝子特異的コドン使用を伴う、代替的GLAキャリア融合体オボアルブミン発現カセットの構築
選択されたオボアルブミンを、クロコウジカビにおいて過剰発現させるために、本発明者らは、クロコウジカビに由来する、異なるサイズの切断型グルコアミラーゼを伴う、代替的オボアルブミン発現カセットを構築した。切断型キャリア配列の選択は、グルコアミラーゼの三次構造に基づき、発現されたオボアルブミンの、下流におけるプロセシングを容易とするように、切断型タンパク質のpI及び分子量を考慮に入れた。最適化されたオボアルブミンコード配列を、それぞれ、GLAの最初の54、100、及び502アミノ酸をコードする、3つの異なる切断型グルコアミラーゼ遺伝子配列へと融合させた。これらのグルコアミラーゼ配列の全ては、それらの固有の分泌シグナルプレプロペプチド配列を、N末端において含んだ。
【0171】
最初の54アミノ酸(GLA54、配列番号88及び89)からなる、グルコアミラーゼ配列は、グルコアミラーゼタンパク質のプレプロペプチド配列、最初のアルファヘリックスへと翻訳され、KEX2(Lys-Arg)切断部位の付加で終わる。最初の100アミノ酸(GLA100、配列番号90及び91)からなる、グルコアミラーゼ配列は、グルコアミラーゼタンパク質のプレプロペプチド配列、及び最初の3つのアルファヘリックスへと翻訳され、KEX2(Lys-Arg)切断部位の付加で終わる。最初の502アミノ酸(配列番号130及び16)からなる、グルコアミラーゼ配列は、プレプロペプチド配列、及びデンプン結合性ドメインを伴わない、グルコアミラーゼタンパク質へと翻訳される。グルコアミラーゼの502アミノ酸と、成熟オボアルブミン配列の起始部との間に、KEX2(Lys-Arg)切断部位を含む、8アミノ酸の合成ペプチドを挿入した。3つの異なる切断型グルコアミラーゼバリアントの対応するDNAコード配列は、デスティネーションプラスミドであるpUC57-kan(配列番号13)において、GenScript(US)により合成した。各配列の5’末端及び3’末端に、BsaI酵素の制限部位を付加して、Golden Gate反応を容易とした。
【0172】
同様の切断型グルコアミラーゼタンパク質配列が、クロコウジカビの分泌経路を介する相同なキャリアとして使用されたが、これは、異種タンパク質の産出を著明に増大させることが報告された(Jeenes,D.J.ら、1993、前出)。グルコアミラーゼ遺伝子の調節配列(GenBank:An03g06550)を、目的の遺伝子の高発現を駆動し、効率的な転写の終結を確認するために使用した。
【0173】
発現カセットの構築のために、glaAプロモーター及びglaAターミネーターを、それぞれ、プライマー406及び408(配列番号17及び18)、並びにプライマー409及び410(配列番号19及び20)により、宿主であるクロコウジカビBZASNI.22a株からPCR増幅し、ウィザード(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)により精製した。これらの精製PCR産物を、ゼロブラント(商標)トポ(商標)PCRクローニングキット(Thermo Fisher Scientific)による、ピーシーアール(商標)ブラントII-トポ(登録商標)ベクターにライゲーションし、これにより、NEB 10-ベータコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全てについては、表1を参照されたい。
【0174】
オボアルブミンコード配列を、ダチョウOVA(配列番号92及び93)については、プライマー715及び422により、配列番号65を伴う、GenScript(US)合成DNAコード配列から、チドリOVA(配列番号94及び95)については、プライマー716及び424により、配列番号69を伴う、GenScript(US)合成DNAコード配列から、ペリカンOVA(配列番号96及び97)については、プライマー717及び426により、配列番号66を伴う、GenScript(US)合成DNAコード配列から、ハトOVA(配列番号98及び99)については、プライマー718及び728により、配列番号67を伴う、GenScript(US)合成DNAコード配列から、ウズラOVA(配列番号100及び101)については、プライマー719及び430により、配列番号68を伴う、GenScript(US)合成DNAコード配列からPCR増幅した。PCR増幅された全てのオボアルブミン遺伝子を、ウィザード(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)により精製した。NEB Golden Gate Assemblyキット(New England Biolabs;配列番号22のプラスミドpGGAを伴う)を使用して、1000bpのglaAプロモーター、3つの異なるグルコアミラーゼバリアント、コドン最適化されたオボアルブミンコード配列、及び600bpのglaAターミネーターからなる発現カセットをアセンブルし、これにより、NEB 10-ベータコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全て(配列番号102~116)については、表1を参照されたい。
【0175】
ニワトリオボアルブミン(配列番号30)を伴うGLAキャリア融合構築物の構築のために、既に構築されたプラスミドを、PCR鋳型として使用して、i)3つの異なるグルコアミラーゼバリアントを伴う、glaAプロモーター;並びにii)コドン最適化ニワトリオボアルブミン、glaAターミネーター、プラスミド骨格、及び単一クロスオーバー組込み部分(3’’glaA)をPCR増幅した。表4には、GLAキャリア発現カセットのうちの、どの部分が、どの鋳型構築物から、プライマーの組合せによりPCR増幅されたのかが記載される。
【表7】
【0176】
全てのPCR産物を、ウィザード(登録商標)SV Gel and PCR clean-upシステム(Promega)により精製し、NEB Gibson Assemblyクローニングキット(New England Biolabs)を使用してアセンブルし、これらにより、NEB 5-アルファコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。陽性の大腸菌形質転換体に由来するプラスミドを、制限酵素解析及びDNAシーケンシングにより、インサートの、適正な配列及び配向性について点検した。構築されたプラスミドの全て(配列番号125~127)については、表1を参照されたい。
【0177】
過剰発現カセットによる形質転換、及びクロコウジカビ形質転換体の選択
クロコウジカビの形質転換は、Balanceら(Ballance D.J.ら(1983)、「Transformation of Aspergillus nidulans by the orotidine-5’-phosphate decarボックスylase gene of Neurospora crassa」、Biochem.Biophys.Res.Comm.、112、284~289)によるプロトコールに基づいた。形質転換のために、5’側glaAプロモーター(フォワードプライマー406、配列番号17)のDNA配列、及び3’側glaAターミネーター(リバースプライマー410、配列番号20)のDNA配列においてアライメントするプライマーを使用して、オボアルブミンコード遺伝子及びglaA調節配列、並びに多様なGLAベースのキャリア配列を含有する、発現カセットの全体をPCR増幅した。このDNA断片と、プライマー404及び405(配列番号46及び47)により、pCNS43(表1を参照されたい)からPCR増幅された、ヒグロマイシン選択マーカーとにより共形質転換を行い、形質転換体を、抗生剤であるヒグロマイシンを補充された最小培地を含有するプレートにおいて選択した。初代形質転換体を、ヒグロマイシンを伴う最小培地に再画線接種し、増殖性(陽性)形質転換体を、オボアルブミン遺伝子及びヒグロマイシンの存在についてのコロニーPCR(配列番号48~61のプライマー組合せについては、表5を参照されたい)により解析した。単一胞子精製手順を介して、陽性コロニーを精製し、小スケール発酵のための接種物を調製するのに使用した。
【0178】
形質転換はまた、選択マーカーとしてのA.ニデュランスアセトアミダーゼ遺伝子をコードするDNA断片によっても実行されうる。対応するDNA断片は、pBZ0026(配列番号62)から、プライマー411及び415(配列番号63及び64)によりPCR増幅することができる。形質転換体を、唯一の窒素供給源としてのアセトアミドを補充された最小培地を含有するプレートにおいて選択した。glaA遺伝子に基づく、オボアルブミンのコドン最適化を伴う、単一のクロスオーバー組込み構築物、及びニワトリオボアルブミンを伴う、異なるGLA融合構築物を、アセトアミド選択マーカーとライゲーションし、形質転換のために、プライマー787及び789(配列番号128及び129)によりPCR増幅した。初代形質転換体を、オボアルブミンコード遺伝子の存在について、コロニーPCRにより解析し、ヒグロマイシン-オボアルブミン共形質転換体について、上記で記載した通りに、さらなる解析を進めた。
【表8】
【0179】
深型ウェルプレートにおける小スケールの発酵
発酵は、グルコース摂取に至るまで(のべ約6日間にわたり)実行し、異なる発酵日に、培養物の上清を採取した。上清は、SDS-PAGEにおいて解析した(
図3A及び3Bを参照されたい)。発現させたニワトリオボアルブミンが、その通りのものであることを確認するために、SDS-PAGEブロットを、ニトロセルロース膜へと転写し、市販のニワトリオボアルブミンポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロットにより検出した(
図4を参照されたい)。このブロットから(及び市販のニワトリオボアルブミンの移動度との比較にもまた基づき)、SDS-PAGEゲルにおいて、ニワトリオボアルブミンと同様の移動度を示すSDS-PAGEタンパク質バンドは、選択された鳥類オボアルブミンの過剰発現を表していることが仮定された。最も有望な形質転換体について、大スケール(5L)発酵を実施した。
【0180】
多様なオボアルブミンを過剰発現する形質転換体についてのSDS-PAGE解析に基づき、ニワトリオボアルブミンの、glaAによるコドン最適化について、ニワトリオボアルブミン又は他のオボアルブミンの、全クロコウジカビゲノムベースのコドン最適化と比較して、最高度の発現が得られた。さらに、ニワトリオボアルブミンの過剰発現は、ペリカンに由来するオボアルブミンと同様に、小スケールで発酵させた場合に、2つの異なる分子量タンパク質バンドとして現れた(
図4)。他方、ウズラオボアルブミンは、市販のオボアルブミンのサイズで泳動する、単一のバンドとして現れた(
図3A)。ダチョウオボアルブミン及びハトオボアルブミンの発現は、社外の試験サービスにより提供される、LC-MS/MSによるタンパク質識別法を使用して検証した(データは示さない)。SDS-PAGE解析に基づくと、全ての異なるGLAキャリア融合構築物は、ニワトリオボアルブミンの産出をもたらす(
図3B)。
【0181】
シェークフラスコにおける小スケール発酵
発酵は、グルコース摂取に至るまで(のべ約6日間にわたり)実行し、異なる発酵日に、培養物の上清を採取した。インキュベーター(Infors Multitron;ストローク:2.5cm)の1分間当たりの回転数(rpm)が、シェークフラスコにおけるオボアルブミンの産出に、極めて重要であった。120rpmでは、産出は、極めて良好であったが、220rpmでは、オボアルブミンの産出は、見られなかった。上清は、SDS-PAGEにおいて解析した(
図3A及び3Bを参照されたい)。電源の入力は、Wolf Klockner及びJochen Buchs、Trends in Biotechnology、2012年6月、30巻、6号により記載される方法に従い計算することができる。
【0182】
5Lの発酵槽における発酵
最良のニワトリオボアルブミン産出形質転換体の1つである、クロコウジカビBZASNI.33を、5Lの発酵槽において増殖させた。
図5は、精密濾過された上清についてのSDS-PAGE解析の結果を示す。40時間後以降は、ニワトリオボアルブミンの産出を検出することができた。深型ウェルプレート又はシェークフラスコにおいて産出されたニワトリオボアルブミン(
図3及び4)と比較して、5Lの発酵培養液では、ニワトリオボアルブミンは、単一バンドとして現れた。
【0183】
卵白(albumen)及び卵白培養液(albumen)の攪拌
ニワトリ卵白(卵白)(54%のオボアルブミンを伴う)の特性を、攪拌型発酵槽において評価した。標準構成におけるSartorius製のCplus発酵槽において、600rpmを超えても、固体卵白(卵白)は観察されなかったが、900rpm以上では、固体卵白(卵白)が現れた。600rpmでは、電源入力は、1.4kW/m
3である。鶏卵固体は、32℃、Sartorius製のCplus発酵槽における攪拌の22時間後に現れる。
【表9】
【0184】
オボアルブミンの精製
アニオン交換クロマトグラフィーを、オボアルブミンの精製のための例として使用した。リン酸カリウム緩衝液又はトリス-HCl緩衝液など、タンパク質(複数可)に結合し、これを溶離させるための緩衝液は、20~50mMの範囲のモル濃度を有した。緩衝液のpHは、6~9において変動した。オボアルブミンが溶離したときの塩(NaClなど)濃度は、0.0~0.3Mの間の範囲である。
【0185】
代替的に、サイズ除外クロマトグラフィーを使用して、サイズが実質的に異なるタンパク質を分離した。緩衝液(リン酸カリウム緩衝液又はトリス-HCl緩衝液など)のモル濃度は、10~50mMの間の範囲である。緩衝液のpHは、6~9の間の範囲である。塩(NaClなど)のモル濃度は、0.1~0.3Mの間の範囲である。定組成溶離の流量は、10~200cm/時間の範囲である。
【0186】
例として述べると、アニオン交換クロマトグラフィーを使用する、クロコウジカビ(BZASNI.60)の精密濾過物から過剰発現されたニワトリオボアルブミンの精製を、
図6Aに示す。オボアルブミンは、以下のプロトコールを使用して精製した。精密濾過物を、出発溶離剤である、25mMのリン酸カリウム緩衝液、pH8に対して透析濾過した。試料を、アニオン交換カラム(HiTrap Capto Q AEC Column、5mL、Cytiva)にロードした。ロードされた試料のフロースルーを回収した。次に、タンパク質を、25mMのリン酸カリウム緩衝液、pH8中に、0.08MのNaClで溶離させた。全ての他のタンパク質は、25mMのリン酸カリウム緩衝液、pH8中に、0.3MのNaClで溶離させた。0.08MのNaClで溶離されたオボアルブミンは、約90~98%の純度で、オボアルブミンを含有する。フロースルーは、約70~90%の純度で、オボアルブミンを含有する。オボアルブミンをさらに精製するために、この試料を、第2のアニオン交換クロマトグラフィー(AEC)精製のための出発試料として使用することができる。第2のAEC精製は、第1のAEC精製のフロースルーである、出発試料を除き、第1のAEC精製と同一である。これについての例を、
図6Bに示す。この精製の回収率は、85%であった。
【0187】
被験生成物
a)起泡性
10~150mg/mLの範囲のタンパク質含量を使用する。被験溶液のpHは、典型的に、2~11の範囲とする。攪拌時間は、適切な方法(例えば、ホモジナイゼーション、ブレンディング)を使用して、1~20分間の範囲とし、この後、泡を、適切な測定用シリンダーへとへと移す。測定用シリンダーを使用して、30秒後における全泡量を観察し、泡量を規定する。全泡量を、1~24時間の範囲の時間経過にわたり観察し、泡量が減少する割合により、泡安定性を規定する。
【0188】
b)可溶性
1~10gの範囲のタンパク質含量を、10~1000mLの範囲の量の緩衝液へと添加する。緩衝液のpHは、2~12、より好ましくは、3~7の範囲である。タンパク質溶液を、30~120分間の範囲の時間にわたり攪拌する。この後、溶液を、2000~20000×gの速度で、10~60分間の時間にわたり遠心分離する。この後、上清のタンパク質含量を測定する。
【0189】
c)乳化
1~100mg/mLの範囲のタンパク質含量を、2~10の範囲のpHで、溶液中に懸濁させる。この後、溶液を、適切な油と混合する。タンパク質溶液の、最終混合物中wt%は、50wt%~100wt%の範囲である。油の、最終混合物中wt%は、0wt%~50wt%の範囲である。混合物を、1~10分間の範囲の時間にわたり攪拌する。測定用シリンダーを使用して、乳化相、水相、及び油相の全容量を観察する。相間の比は、乳化能を規定する。乳化相、水相、及び油相の全容量を、1~100時間の範囲の時間にわたり記録する。容量が変化する速度は、乳化安定性を規定する。
【0190】
代替的に、目的のタンパク質の乳化特性は、エマルジョンの濁度に基づく。記載された通りに、エマルジョンを調製した後で、試料を採取し、適切な溶液(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)中に、10~500倍の範囲の希釈率で希釈する。希釈液の濁度を、適切な吸光度(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムについて:500nm)で測定する。次いで、吸光度、分光光度計の光路、油相の容量、エマルジョンが形成される前におけるタンパク質の濃度を使用して、乳化活性指数を計算する。乳化安定性も同様に、0~24時間の範囲の時点でエマルジョン試料を採取し、この後、上記で記載された通りに、濁度を測定することにより決定されうる。時間経過にわたる乳化活性指数は、乳化安定性を指し示す。次に、エマルジョンを、60~100℃の温度範囲で、10~60分間の時間範囲にわたり加熱する。エマルジョンを冷却した後で、試料を採取し、前出で記載された通りに、その濁度を測定する。これらの試料の乳化活性指数を計算した後で、これらの値を、乳化安定性を計算するのに使用しうる。
【0191】
d)ゲル化
30~200mg/mLの範囲のタンパク質含量を使用する。塩(例えば、塩化ナトリウム)モル濃度は、0~200mMの間の範囲である。溶液のpHは、3~9の間の範囲である。溶液を、45~120分間の温度範囲で、60~100℃の時間範囲にわたり加熱する。この後、ゲルを、室温へと冷却すると、レオロジー測定にかける準備ができている。
【0192】
被験生成物:アレルギー誘発性
IgE抗体を含有する、感作者又はアレルギー者の血清は、in vitroアレルギー誘発性研究を実施し、タンパク質のアレルギー誘発性を検討するのに使用される。
【0193】
ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)及び免疫ブロット法を使用して、タンパク質が、アレルゲン特異的IgE抗体に結合する能力を探索する。また、Gal d 2(ニワトリオボアルブミンの主要なアレルゲン)に対するアレルギー者に由来するIgE抗体を、免疫ブロット法アッセイにおいて使用して、Gal d 2エピトープも特徴づける。タンパク質がIgE抗体に結合する能力は、結合が、炎症性メディエーターの放出を引き起こすことを常に意味するわけではなく、したがって、アレルギー性反応を引き起こすことを常に意味するわけではない。
【0194】
タンパク質が、炎症性メディエーターの放出を誘導する能力は、通例、好塩基球活性化試験(BAT)により探索する。アレルギー性個体に由来するBAT好塩基球を、アレルゲンへと曝露し、アレルゲンへの曝露時におけるヒスタミンの産生を観察する。
【0195】
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