(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】改善された加熱器装置を有するディスペンサ
(51)【国際特許分類】
A61L 9/03 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
A61L9/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543163
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2021012909
(87)【国際公開番号】W WO2021146128
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500106743
【氏名又は名称】エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【氏名又は名称】田端 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】リチャード、 ジェシ
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ、 ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ダイチャー、 デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】オージエ、 ハロルド
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA07
4C180AA13
4C180AA16
4C180AA18
4C180AA19
4C180AA20
4C180CA03
4C180GG03
4C180GG19
(57)【要約】
揮発性物質ディスペンサ用の加熱器装置は、開口部を画定するシリンダと、シリンダに内蔵された抵抗器とを含む。ディスペンサは、揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングをさらに含む。ハウジングは、加熱器装置を支持するように構成された第1空洞を含む。また、ディスペンサは、リフィルがハウジング内に受容されると、開口部が内部に芯を受容し、加熱器装置と芯との間に半径方向の間隙が形成されるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性物質ディスペンサ用の加熱器装置であって、
開口部を画定するシリンダと、
前記シリンダに内蔵された抵抗器と、
を含み、
前記ディスペンサは、揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングを含み、前記ハウジングは、前記加熱器装置を支持するように構成された第1空洞を含み、
前記ディスペンサは、前記リフィルが前記ハウジング内に受容されると、前記開口部が内部に前記芯を受容し、前記加熱器装置と前記芯との間に半径方向の間隙が形成されるように構成される、加熱器装置。
【請求項2】
前記シリンダは、セラミックアルミニウム複合材で製造される、請求項1に記載の加熱器装置。
【請求項3】
前記加熱器装置は、前記シリンダを支持するように構成された加熱器シャーシをさらに含む、請求項2に記載の加熱器装置。
【請求項4】
前記シリンダは、前記加熱器装置の50%未満を占める、請求項3に記載の加熱器装置。
【請求項5】
前記シリンダは、前記加熱器装置の38%未満を占める、請求項3に記載の加熱器装置。
【請求項6】
前記加熱器シャーシは、ナイロンで製造される、請求項3に記載の加熱器装置。
【請求項7】
前記加熱器シャーシは、通路を画定し、前記加熱器シャーシの通路は、前記シリンダの前記開口部と同軸になるように構成される、請求項3に記載の加熱器装置。
【請求項8】
前記ディスペンサは、前記リフィルが前記ハウジング内に受容されると、前記芯が前記加熱器シャーシの前記通路を介して前記シリンダの前記開口部内に延び、前記芯の遠位端が前記シリンダの内縁部の下に着座するように構成される、請求項7に記載の加熱器装置。
【請求項9】
前記半径方向の間隙は、前記シリンダの内表面と前記芯の外面との間に形成され、前記半径方向の間隙は、0.1mmから1mmの間である、請求項8に記載の加熱器装置。
【請求項10】
前記加熱器装置は、前記芯の遠位端と実質的に軸方向に整列するように構成される、請求項1に記載の加熱器装置。
【請求項11】
前記シリンダは、周縁部、内縁部、及びそれらの間に延びる主表面を有する環状本体を含み、前記内縁部が前記開口部を画定し、前記内縁部及び前記周縁部が異なる平面に配置される、請求項1に記載の加熱器装置。
【請求項12】
前記主表面は、前記周縁部から前記内縁部まで延び、前記主表面は、前記周縁部に隣接して平面であり、前記内縁部に隣接して湾曲する、請求項11に記載の加熱器装置。
【請求項13】
前記主表面は、前記周縁部から前記内縁部までの半径方向距離の50%を超えて平面である、請求項11に記載の加熱器装置。
【請求項14】
前記シリンダの前記内縁部によって画定される前記開口部の内径は、前記芯の外径より小さい、請求項11に記載の加熱器装置。
【請求項15】
上部カバーをさらに含み、前記上部カバーは、第1表面、それとは反対側の第2表面、外縁部、及び中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含み、前記外縁部及び前記内縁部は、軸方向に整列され、異なる平面に配置され、前記環状壁は、トラフまで前記内縁部に対向する第1軸方向に湾曲する前記外縁部から半径方向内側に延びて、前記内縁部と合うまで前記第1軸方向から反対側にある第2軸方向に徐々に湾曲する、請求項1に記載の加熱器装置。
【請求項16】
前記上部カバーは、前記中央孔の周りに配置された複数の孔をさらに含む、請求項15に記載の加熱器装置。
【請求項17】
前記外縁部に近接する複数の孔は、前記内縁部に近接する複数の孔より小さい、請求項16に記載の加熱器装置。
【請求項18】
前記複数の孔のそれぞれは、面取り縁部を含む、請求項16に記載の加熱器装置。
【請求項19】
前記面取り縁部は、前記環状壁の前記第2表面に近接するように配置される、請求項18に記載の加熱器装置。
【請求項20】
前記第2表面は、前記トラフと前記内縁部との間に画定される集束出口を画定し、前記第2表面は、前記トラフから前記内縁部に向かって徐々に湾曲する、請求項15に記載の加熱器装置。
【請求項21】
揮発性物質ディスペンサであって、
揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングであって、加熱器装置を支持する第1空洞を含む前記ハウジングを含み、
前記加熱器装置は、シリンダ、加熱器シャーシ、及び前記シリンダに内蔵された抵抗器を含み、前記シリンダは、開口部を画定し、前記加熱器シャーシは、前記シリンダの前記開口部と軸方向に整列するように構成された通路を画定し、
前記ディスペンサは、前記リフィルが前記ハウジング内に受容されると、前記シリンダの前記開口部が前記芯と軸方向に整列し、半径方向の間隙が前記加熱器装置と前記芯との間に形成されるように構成される、揮発性物質ディスペンサ。
【請求項22】
上部カバーをさらに含み、前記上部カバーは、第1表面、それとは反対側の第2表面、外縁部、及び中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含み、前記中央孔は、軸方向を画定し、前記外縁部及び前記内縁部は、同心で異なる平面に配置され、前記環状壁は、トラフまで前記内縁部に対向する第1軸方向に湾曲する前記外縁部から半径方向内側に延びて、前記内縁部と合うまで前記第1軸方向から反対側にある第2方向に徐々に湾曲する、請求項21に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項23】
前記ディスペンサは、前記リフィルが前記ハウジング内に受容されると、前記芯が前記加熱器シャーシの前記通路を介して前記シリンダの前記開口部内に延び、前記芯の遠位端が前記シリンダの前記内縁部の下に着座するように構成される、請求項22に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項24】
上部カバーをさらに含み、前記上部カバーは、第1表面、それとは反対側の第2表面、外縁部、及び中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含み、前記中央孔は、軸方向を画定し、前記外縁部及び前記内縁部は、同心で異なる平面に配置され、前記環状壁の一部は、前記内縁部に向かって軸方向に半径方向内側に延びる、請求項21に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項25】
前記環状壁は、前記内縁部に向かって軸方向に湾曲する前記外縁部から半径方向内側に延びる、請求項24に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項26】
前記シリンダによって画定される前記開口部の直径は、前記芯の外径よりも小さい、請求項21に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項27】
揮発性物質ディスペンサであって、
揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングであって、前記揮発性物質を蒸気プルームに揮発させるように構成された加熱器装置を有するハウジングを含み、前記揮発性物質ディスペンサは、第1表面、第2表面、外縁部、及びそれを介して揮発性物質を放出するための中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含む上部カバーをさらに含み、前記内縁部は、前記外縁部に比べて高くされ、前記加熱器装置は、シリンダ内に保持される抵抗器及びこれを通過する通路を画定する加熱器シャーシを含み、前記シリンダは、主表面及び開口部を画定する煙突を含み、前記煙突は、前記シリンダの主表面に比べて高くされ、前記主表面に近接する第1端部から前記主表面から遠い第2端部まで徐々に制限され、前記シリンダは、前記加熱器シャーシに結合され、前記加熱器装置の体積の40%未満を占め、前記ディスペンサは、前記リフィルが前記ハウジング内に受容されると、前記芯が前記上部カバーの中央孔、前記シリンダの前記開口部、及び前記加熱器シャーシの前記通路と軸方向に整列し、前記芯が前記加熱器シャーシの前記通路を介して前記シリンダの前記開口部内に延び、前記芯の遠位端が前記シリンダの前記第2端負荷に着座するように構成される、揮発性物質ディスペンサ。
【請求項28】
揮発性物質ディスペンサであって、
揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されるハウジングであって、加熱器装置を支持する第1空洞を含むハウジングと、
前記ハウジングに結合されるように構成されて蒸気プルームが前記ハウジングを抜け出る中央孔を画定する上部カバーと、
を含み、
前記上部カバーは、第1表面、それとは反対側の第2表面、外縁部、及び中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含み、
前記中央孔は、軸方向を画定し、前記外縁部と前記内縁部は、同心で異なる平面に配置され、
前記第2表面は、トラフまで第1軸方向に湾曲する前記外縁部から半径方向内側に延び、前記内縁部と合うまで前記第1軸方向と反対の第2方向に徐々に湾曲し、
前記ディスペンサは、前記上部カバーが前記ハウジングに結合されたときに、前記第2表面が前記第1空洞に向かうように構成される、揮発性物質ディスペンサ。
【請求項29】
前記内縁部及び前記外縁部は、1mmから5mmの間で軸方向に離隔して、平面上に配置される、請求項28に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項30】
前記環状壁の前記第1表面は凹状である、請求項28に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項31】
前記環状壁の前記第2表面は凸状である、請求項28に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項32】
前記上部カバーは、前記中央孔周りに配置された複数の孔をさらに含む、請求項28に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項33】
前記外縁部に近接する前記複数の孔は、前記内縁部に近接する前記複数の孔よりも小さい、請求項32に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項34】
前記複数の孔のうちの少なくとも1つは、面取り縁部を含む、請求項32に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項35】
前記面取り縁部は、前記環状壁の前記第2表面に近接するように配置される、請求項34に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項36】
前記複数の孔の各々は、面取り縁部を含む、請求項34に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項37】
前記第2表面は、前記トラフと前記内縁部との間に画定される集束出口を画定し、前記第2表面は、前記トラフから前記内縁部に向かって徐々に湾曲する、請求項28に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【請求項38】
前記中央孔の直径は、前記トラフによって画定される直径の50%から80%の間である、請求項28に記載の揮発性物質ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月15日に出願された米国特許出願第16/743,939号に対する優先権を主張し、その全体の内容は、任意の及び全ての目的のために参照として本明細書に含まれる。
【0002】
本開示は、一般に組成物を分配するためのシステムに関し、より詳細には、改善された加熱器装置を使用するディスペンサに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な揮発性物質ディスペンサは、従来技術で知られており、一般に内部にリフィルが挿入されたハウジングを含む。リフィルは、一般に揮発性物質を保持するための容器を含む。一部のディスペンサでは、揮発性物質が受動的に放出される。他のディスペンサでは、揮発性物質の分配を容易にするために、拡散要素が使用される。拡散要素の例は、正温度係数(PTC)加熱器、圧電素子、ファン、エアゾール作動装置などの加熱器を含む。揮発性物質が放出される方式に関係なく、揮発性物質がリフィルから消耗すると、ユーザがリフィルを除去して新しいリフィルと交換する。
【0004】
プラグイン香油ディスペンサとも呼ばれる揮発性物質ディスペンサの1つのタイプには、ハウジング及びハウジング内に配置された加熱器が含まれる。プラグイン香油ディスペンサで使用するためのリフィルは、一般に、その内部に揮発性物質がある容器と、揮発性物質と接触してリフィルの外に延びる芯とを含む。リフィルをディスペンサに挿入すると、芯を通って移動する揮発性物質が加熱器によって揮発するように、芯の少なくとも一部が加熱器に隣接するように配置される。揮発性物質ディスペンサは、通常、ハウジングから外向きに延びる電気プロングを有するプラグアセンブリを含む。電気プロングは、標準の電源コンセントに挿入された後、揮発性物質ディスペンサに電気エネルギーを供給する。そのようなディスペンサの1つは、共同譲渡された米国特許第9,669,126号に開示されており、これは、その全体が参考として本明細書に含まれる。プラグイン香油ディスペンサは、揮発性物質の蒸発及び分配を助けるために、ファンを使用することもできる。
【0005】
しかし、既存のディスペンサでは、性能上の問題が発生する。例えば、既存のディスペンサに共通する問題の1つは、結露の蓄積である。即ち、ディスペンサが能動的又は受動的に揮発性物質を放出するに従って、ハウジング内のガスは高い相対湿度を有する可能性がある。従って、その内表面に結露が形成される可能性が高い。結露の形成を最小限に抑えるために、既存のディスペンサでは様々な換気システムが使用されたが、これらの方法では、完全な解決策は提供されない。また、既存換気システムは、プルーム拡散(plume dispersion)を妨害又は抑制する可能性がある。即ち、特定の従来技術のベント構成を使用すると、ディスペンスシステムによって放出されるプルームが悪影響を受ける可能性があり、その結果、ディスペンスシステムによる材料の分配が最適にはなされない可能性がある。さらに、別の問題は、加熱器効率が悪いことである。より具体的には、既存のディスペンサは、揮発性物質の揮発を助けるために電力を熱エネルギーに効率的に変換しない。従って、結露の可能性を最小限に抑えるために、向上した性能及び他の特徴を提供する加熱器装置を含むディスペンサが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、揮発性物質ディスペンサ用の加熱器装置は、開口部を画定するシリンダと、シリンダに内蔵された抵抗器とを含む。ディスペンサは、揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングを含み、ハウジングは、加熱器装置を支持するように構成された第1空洞を含む。また、ディスペンサは、リフィルがハウジング内に受容されると、開口部が内部に芯を受容し、加熱器装置と芯との間に半径方向の間隙が形成されるように構成される。
【0007】
他の実施形態によれば、揮発性物質ディスペンサは、揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングを含み、ハウジングは、加熱器装置を支持する第1空洞を含む。加熱器装置には、シリンダ、加熱器シャーシ、及びシリンダに内蔵された抵抗器が含まれる。シリンダは、開口部を画定し、加熱器シャーシは、シリンダの開口部と軸方向に整列するように構成された通路を画定する。ディスペンサは、リフィルがハウジング内に受容されると、シリンダの開口部が芯と軸方向に整列し、加熱器装置と芯との間に半径方向の間隙が形成されるように構成される。
【0008】
また他の実施形態によれば、揮発性物質ディスペンサは、揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されたハウジングを含む。ハウジングは、揮発性物質を蒸気プルーム(vapor plume)に揮発させるように構成された加熱器装置を有する。揮発性物質ディスペンサは、第1表面、第2表面、外縁部、及びそれを介して揮発性物質を放出するための中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含む上部カバーをさらに含む。内縁部は、外縁部に比べて高くされる。加熱器装置は、シリンダ内に保持される抵抗器及びこれを通過する通路を画定する加熱器シャーシを含む。また、シリンダは、主表面及び開口部を画定する煙突(chimney)を含み、煙突は、シリンダの主表面に比べて高くしてもよく、主表面に近接する第1端部から主表面から遠い第2端部まで徐々に制限されてもよい。シリンダは、加熱器シャーシに結合され、加熱器装置の体積の40%未満を占める。また、ディスペンサは、リフィルがハウジング内に受容されると、芯が上部カバーの中央孔、シリンダの開口部、及び加熱器シャーシの通路と軸方向に整列し、芯が加熱器シャーシの通路を介してシリンダの開口部内に延び、芯の遠位端がシリンダの第2端負荷に着座するように構成される。
【0009】
また他の実施形態によれば、揮発性物質ディスペンサは、ハウジングと、上部カバーとを含む。ハウジングは、揮発性物質及び芯を含むリフィルを受容するように構成されて加熱器装置を支持する第1空洞を含む。上部カバーは、ハウジングに結合されるように構成されて蒸気プルームがハウジングを抜け出る中央孔を画定する。また、上部カバーは、第1表面、それとは反対側の第2表面、外縁部、及び中央孔を画定する内縁部を有する環状壁を含み、中央孔は、軸方向を画定する。外縁部と内縁部は、同心で異なる平面に配置される。第2表面は、トラフ(trough)まで第1軸方向に湾曲する外縁部から半径方向内側に延び、内縁部と合うまで第1軸方向と反対の第2方向に徐々に湾曲する。また、ディスペンサは、上部カバーがハウジングに結合されたときに、第2表面が第1空洞に向かうように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態によるディスペンサ及びリフィルを含むディスペンスシステムの正面等角図である。
【
図2】
図1のディスペンサの前方等角分解図である。
【
図4】上部ケーシング及び下部ケーシングを含む、
図1のディスペンサの背面等角分解図である。
【
図6】
図4の上部ケーシングの他の正面等角図である。
【
図10】
図1のディスペンスシステムの左側面図である。
【
図11】
図1のディスペンスシステムの上面図である。
【
図13】本開示の実施形態による加熱器装置の正面等角図である。
【
図18】本開示の一実施形態による加熱器装置の概略図である。
【
図19】本開示の他の実施形態による加熱器装置の概略図である。
【
図20】本開示のまた他の実施形態による加熱器装置の概略図である。
【
図21】本開示のまた他の実施形態による加熱器装置の概略図である。
【
図22】本開示の他の実施形態による加熱器装置の概略図である。
【
図23】
図13の加熱器装置を含む、
図1のディスペンスシステムの部分等角図である。
【
図24】本開示の一実施形態による上部カバーの正面等角図である。
【
図27】本開示の他の実施形態による上部カバーの概略図である。
【
図28】本開示のまた他の実施形態による上部カバーの概略図である。
【
図29】本開示のまた他の実施形態による上部カバーの概略図である。
【
図30】本開示の一実施形態による加熱器装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、向上したプルームを提供し、ディスペンサ内部における結露の形成を回避する、非常に効率的な揮発性物質ディスペンサ用の加熱器装置に関する。本開示の実施形態による加熱器装置は、一般に揮発性物質を分配するために、より少ない電力を必要とする。例えば、本開示の実施形態によるディスペンサは、好ましくは2.0ワット(「W」)以下を必要とする一方、従来のディスペンサは、時に2.0W以上を必要とする。また、本開示の実施形態によるディスペンサは、一般に、既存のディスペンサよりも優れていることが見いだされた。より具体的には、同等の電力入力で動作する場合、本開示の実施形態によるディスペンサは、既存のディスペンサよりもさらに多くの揮発性物質を放出することができる。さらに、本開示の実施形態によるディスペンサは、プルーム出力の向上を実現し(即ち、プルームが視覚的にさらに強く、さらに一貫的である)、内部の結露の形成を低減する。本開示は、様々な異なる形態で具体化され得るが、本開示は、単に本開示の原理の例示としてのみ見なされるべきであり、本開示を例示の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0012】
本明細書に記載のディスペンサは、電力が供給されるコンセントに挿入されるように構成されたプラグイン装置として使用され得る。あるいは、本明細書に開示される態様は、電池によって電力が供給されるスタンドアロン装置又はハンドヘルド装置であるディスペンサなどの代替的なディスペンサで使用されてもよい。
図1~
図29は、本開示によるディスペンスシステム100の1つの特定の実施形態を示す。
図1を参照すると、ディスペンスシステム100は、揮発性物質リフィル108を受容するための内部空洞106を有するハウジング104、及び加熱器装置110を一般に含むディスペンサ102を備える(例えば、
図13を参照)。揮発性物質リフィル108は、構造及び機能において、2018年7月25日に出願された米国特許公開第2019/0091365号に開示されているリフィルと類似することができ、その開示は、参照としてその全体が組み込まれる。ディスペンサ102は、上部カバー112、視覚的インジケータ114、及び制御ダイヤル116をさらに含む。
図2の分解図によって示されるように、上部カバー112、制御ダイヤル116、視覚的インジケータ114、及びハウジング104のそれぞれは、共に組み立てられるように構成される。組み立てられるとき、ディスペンサ102は、縦軸120を画定する。ハウジング104、上部カバー112、視覚的インジケータ114、及び制御ダイヤル116は、本開示と同じ譲受人によって同日に提出され、参照としてその全体が本明細書に組み込まれる「時刻表示システムを備えたディスペンサ」と題する米国特許出願に開示されているハウジング、上部カバー、視覚的インジケータ、及び制御ダイヤルと構造及び機能が類似し得る。
【0013】
図3を参照すると、リフィル108は、その中に揮発性物質を有する容器126を含み(図示せず)、容器126は、ディスペンサ102のハウジング104によって保持されるように構成される(例えば、
図1を参照)。容器126は、容器126内に芯130を保持するための保持機構128と、揮発性物質が内部に配置された本体132とを含む。本体132は、基部134と、上端部138に向かって上向きに延びる側壁136とを含む。一例として、側壁136は、一般に円筒形又は長方形であり得るが、他の側壁構成も可能である。上端部138はまた、ネック部140と一体型であり得る。ネック部140は、その外面に配置されたねじ部142と、上端部148を介して配置されたリフィル開口部146とを含み、リフィル開口部146は、揮発性物質へのアクセスを可能にする。保持機構128は、ネック部140内に配置され、芯130を保護するために芯130の少なくとも一部の周りに延びる外被(sheath)150をさらに含む。本実施形態では、芯130の上部、自由端152は、外被150の遠位端部154の上に延びる。
【0014】
図1に戻ると、特定のディスペンサ及び容器が詳細に説明されているが、本明細書に開示された加熱器装置は、任意のタイプのリフィル及び/又は容器と組合せて使用され得ることが企図される。例えば、有用なリフィルは、米国特許第7,032,831号に記載されている容器、及び米国特許公開第2011/0139885号に記載されている容器に限定されず、これらは、いずれも本開示と同じ譲受人によって所有されており、その全体が参照として本明細書に含まれる。また、本明細書に開示される加熱器装置は、2016年10月7日に出願された米国特許出願第2018/010357号に記載されているファン装置のような他のディスペンサ装置と組み合わせて使用され得ることが企図され、これもまた本開示と同じ譲受人が所有し、その全体が参照として本明細書に含まれる。
【0015】
容器126に配置された揮発性物質は、環境に分配されるように適合された任意のタイプの揮発性物質であり得る。例えば、容器126は、洗浄剤、殺虫剤、防虫剤、昆虫誘引剤、消毒剤、かび又は白かび防止剤、芳香剤、消毒剤、空気清浄機、アロマセラピーの香り、防腐剤、消毒剤、ポジティブな香りの揮発性物質、芳香剤、脱臭剤など、及びこれらの組み合わせを含み得る。添加剤、例えば、芳香剤、防腐剤、殺菌剤、かび又は白かび防止剤など、及びそれらの組み合わせなどが揮発性物質に含まれ得る。例えば、流体は、家庭用、商業用、及び施設用の空気及びカーペット殺菌剤であるOUST(登録商標)、又はウィスコンシン州ラシーンのSCジョンソン社(S.C.Johnson & Son,Inc.)によって販売されている家庭用脱臭剤であるGLADE(登録商標)を含んでもよい。揮発性物質は、容器から分配することができる当業者に周知の任意の流体を追加的又は代替的に含む。従って、容器126は、任意の数の異なる流体製剤を分配するように適合される。
【0016】
ここで
図4を参照すると、ハウジング104は、内部空洞106を画定する、 一般に互いに取り付けるように構成された上部ケーシング158及び下部ケーシング160を含む。上部ケーシング158及び下部ケーシング160は、薄壁材料を含み、熱成形又は射出成形などの当技術分野で周知の方法を使用して形成され得る。特に
図5を参照すると、上部ケーシング158は、第1上端部166に配置された円形受容孔164を画定する上部管状壁162を含む。上部管状壁162は、円形受容孔164からその第2上端部172に配置された下縁部170まで延びる上部空洞168をさらに画定する。第1ラッチ174及び第2ラッチ176は、下縁部170から実質的に垂直に延び、上部管状壁162の部分と実質的に同一平面上にある。
【0017】
図7及び
図8を参照すると、下部ケーシング160は、それを通るチャネル182を画定する円筒形中央部180を含む。2つの延長ガイドポスト184は、下部ケーシング160の第1下端部186から上方に延び、一般に、縦軸120に平行である。延長ガイドポスト184は、チャネル182の第1チャネル端部188の反対側の第1下端部186から延び、その中に加熱器装置110(例えば、
図12を参照)を固定するために提供され、これは、以下にてより詳細に説明される。
【0018】
図4に戻ると、上部ケーシング158及び下部ケーシング160は、互いに取り付けられるように構成される。より具体的には、上部ケーシング158は、下部ケーシング160の延長ガイドポスト184を受容するように構成され、上部ケーシング158の第1ラッチ174及び第2ラッチ176は、各々下部ケーシング160の第1ラッチ受容構造192及び第2ラッチ受容構造194に固定されるように構成される。また、
図9に最もよく見られるように、上部ケーシング158の第1半円筒形延長部198及び下部ケーシング160の第2半円筒形延長部200は、円筒形延長部202を作成するように接続され、これは、その中にプラグアセンブリ206を受容して保持するように構成された円筒形の受容チャンバ204を画定する。プラグアセンブリ206は、ハウジング104の上部ケーシング158及び下部ケーシング160によって画定される円筒形の受容チャンバ204から延び得る。プラグアセンブリ206は、従来のコンセントへの挿入に適した2つの電気プロング208を含み得る。プラグアセンブリ206が米国の一般的なプラグアセンブリであると示されているが、任意の他の国で使用するように構成されたプラグアセンブリが使用されてもよい。また、プラグアセンブリ206は、当技術分野で周知の任意の特徴を含んでもよく、例えば、プラグアセンブリ206は、その開示全体が参考として含まれた2011年9月22日付で出願された米国特許第8,821,171号、及び2011年10月28日付で出願された米国特許第8,858,236号に開示されているプラグアセンブリと同様に、部分的に又は完全に回転可能になり得る。
【0019】
図10及び
図11は、各々ディスペンスシステム100の側面図及び上面図を提供する。
図12は、
図11の12-12線に沿った、ディスペンスシステム100の断面図を示す。特に
図12を参照すると、下部ケーシング160のチャネル182は、リフィル108の芯130を受容するように構成される。即ち、リフィル108は、芯130を、縦軸120によって画定される方向に沿って下部ケーシング160のチャネル182を介してハウジング104の内部空洞106に向かって上方に挿入することによってハウジング104に挿入され、軸は、好ましくはディスペンサ102が使用されているときに実質的に垂直である。さらに、加熱器装置110は、下部ケーシング160によって支持されるように内部空洞106内に配置される。
【0020】
図13~
図17を参照すると、加熱器装置110は、一般に、加熱要素を使用して芯130に熱を提供し、これは、最終的に揮発性物質(例えば、芳香油)を蒸気又はガスに変えるように作動する。特に、
図14に最もよく見られるように、加熱器装置110は、シリンダ216内にポッティング(potted)、埋め込み(embedded)、又は他の方法で配置される抵抗器214を含む加熱要素212を使用する。シリンダ216は、上端部220及び下端部222を有する加熱器シャーシ218によって支持されるように構成される。より具体的には、加熱器装置110が組み立てられると、シリンダ216は、加熱器シャーシ218の上端部220に接するように構成される。加熱器シャーシ218は、好ましくは、例えば、高温ナイロンなどの優れた耐放射線性を有する材料で製造される。好ましくは、シリンダ216は、例えば、高い金属含有量(例えば、アルミニウム)を有するセラミック金属複合材などの熱伝導性の高い材料で製造される。多量の金属を有するセラミック金属複合材を統合すると、シリンダ216を横切る熱伝達が向上する。追加的又は代替的に、シリンダ216及び/又はシリンダ216内に配置された任意のポッティングは、他のタイプの熱伝導性材料を含み得る。また、いくつかの実施形態では、シリンダ216は、その上にスパッタコーティング又はスプレーコーティングによって蒸着される抵抗性金属酸化物コーティングを含んでもよく、その上にコーティングを含まなくてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、シリンダ216は、加熱器装置110に対する所望の抵抗値を生成するために、正確な抵抗値を有する金属酸化物コーティングでコーティングされてもよい。
【0021】
1つ以上のコネクタ224は、抵抗器214と一体であるか、又はその端部に接続される。
図15に最もよく見られるように、1つ以上のコネクタ224は、抵抗器214から延びて端子228で終端する。コネクタ224又は端子228は、電源、回路基板、及び/又はディスペンスシステム100の他の電気部品に接続されてもよい。図示の実施形態では、コネクタ224は、加熱要素212(本実施形態では抵抗器214)から電源230(例えば、
図9に示されるプラグアセンブリ206)まで延びる。
【0022】
図14に戻ると、シリンダ216は、一般に周縁部234、開口部238を画定する第1内縁部236、及びそれらの間に延びる主表面240を有する環状本体232を含む。
図16の17-17線に沿った加熱器装置110の断面図である
図17に最もよく見られるように、周縁部234及び第1内縁部236は、異なる平面上に配置されている。即ち、第1内縁部236は、周縁部234及び主表面240に対して高さHだけ高くなっている。好ましくは、高さHは、約1ミリメートル(「mm」)から10mmの間である。いくつかの実施形態では、高さHは、5mm未満であり得る。いくつかの実施形態では、高さHは、3mm未満であり得る。
【0023】
さらに
図17を参照すると、主表面240は、周縁部234から第1内縁部236及び加熱器煙突242に向かって半径方向内側に延び、これは、主表面240から第1内縁部236に離れるように湾曲する。従って、加熱器煙突242及び第1内縁部236は、シリンダ216の主表面240及び周縁部234に比べて高くなる。また、加熱器煙突242は、主表面240に近接する第1端部244から主表面240の遠位にある第2端部246まで徐々に制限する。主表面240は、加熱器煙突242の第1端部244に到達するまで、周縁部234から実質的に平面に延びる。加熱器煙突242は、第1内縁部236及び第2端部246に到達するまで、徐々に湾曲する。従って、主表面240は、周縁部234から延びて、周縁部234と第1内縁部236との間の半径方向距離の少なくとも50%において平面である。いくつかの実施形態では、主表面240は、周縁部234と第1内縁部236との間の半径方向距離の60%以上を超えて平面に延びてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、主表面240は、周縁部234と第1内縁部236との間の半径方向距離の50%未満において平面に延びてもよい。
【0024】
図14に戻ると、加熱器シャーシ218は、以下でより詳細に説明するように、内部に芯130(例えば、
図12を参照)を受容するように構成された通路248を画定する。また、加熱器シャーシ218は、通路248と軸方向に整列した軸120に実質的に平行に延びるラッチ250を使用してシリンダ216に結合するように構成される。ラッチ250は、シリンダ216のラッチ受容部252に接するように構成される。従って、組み立てられると、シリンダ216の開口部238と加熱器シャーシ218の通路248とは、実質的に軸方向に整列するように構成される。図示の実施形態では、シリンダ216は、一般に、シリンダ216と加熱器シャーシ218の両方で構成された加熱器装置110の40%未満を占める。いくつかの実施形態では、シリンダ216は、加熱器装置110の50%、38%、又は30%未満を占め得る。加熱器装置110の幾何学的構造及び材料組成は、有限要素解析(FEA)を使用して決定され、加熱器装置110全体の熱伝達を向上又は最適化し得る。即ち、シリンダ216及び加熱器シャーシ218の特定幾何学的構造は、加熱器性能を向上させるためにFEAを使用して決定され得る。
【0025】
再び
図17を参照すると、開口部238及び通路248は、好ましくは、それを通る一定の直径を有さない。より具体的には、開口部238は、第1内縁部236によって画定される第1直径d
1と、シリンダ216の第2内縁部254によって画定される第2直径d
2とを含み、第1直径d
1は、好ましくは第2直径d
2より小さい。同様に、加熱器シャーシ218の通路248は、その下端部222に隣接する直径d
3を含む。加熱器シャーシ218の上端部220に隣接する通路248は、シリンダ216の第2内縁部254によって画定される直径d
2と実質的に同等の直径を有する。あるいは、いくつかの実施形態では、加熱器シャーシ218の上端部220は、直径d
2より大きい又は小さい直径を有し得る。しかし、好ましくは、直径d
3は、直径d
2及び直径d
1の両方よりも大きい。
【0026】
加熱器装置110の通路248及び開口部238の例示的な概略図を示す
図18~
図22に最もよく見られるように、加熱器装置110の構成要素(即ち、加熱器シャーシ218及びシリンダ216)は、制限チャネル256を形成するように構成される。即ち、通路248と開口部238は、軸方向に整列するとき、通路248の下端部222から開口部238の第1内縁部236まで徐々に集束する。別の言い方をすれば、加熱器装置110の制限チャネル256は、直径d
3から直径d
1に制限、テーパ、又は集束する。従って、直径d
3は、直径d
1よりも大きくなる。制限チャネル256は、様々な異なる方式で制限し得る。例えば、
図18を参照すると、制限チャネル256は、複数のテーパ状の段を使用して繰り返し制限してもよい。より具体的には、制限チャネル256は、「a」mmの距離に対して一定の直径d
3を有する下端部222から延びてもよい。次に、制限チャネル256は、軸120に沿って測定された「b」mmに対して角度αで集束してもよい。そこから、チャネル256は、「d」mmに対して角度βで再び限定されるまで「c」mmに対して均一の直径d
4で延びてもよい。チャネル256は、加熱器煙突242に到達するまで、「e」mmに対して実質的に一定の直径d
5で再び連続してもよく、「H」mm(即ち、直径d
1を有する第1内縁部236に到達するまで)に対して角度γで限定される。あるいは、
図19を参照すると、チャネル256は、下端部222から第1内縁部236まで角度δで実質的に均一にテーパ状になり、煙突242で終了する。
図20及び
図21は、加熱器装置110の制限チャネル256の2つの代替的構成を示す。
図20及び
図21は、煙突で終了しないことを除き、それぞれ
図18及び
図19と実質的に同様である(例えば、
図18及び
図19の煙突242を参照)。即ち、主表面240は、周縁部234から第1内縁部236まで実質的に平面である。また、上述した実施形態のいずれにおいても、直線形のテーパ状の部分を湾曲したテーパ状の部分に置換えることができ、その一例を
図22に示す。
【0027】
図12に戻ると、リフィル108がディスペンサ102に取り付けられると、芯130は、加熱器シャーシ218の通路248を介してシリンダ216の開口部238内に延びるように構成される。一般に、間隙G
1は、芯130の上部自由端152の外周からそれに隣接したシリンダ216の内周又は内壁258まで実質的に垂直に測定された距離によって画定される。あるいは、間隙G
1は、芯130の上部自由端152の外周からそれに隣接するシリンダ216の内周又は内壁258まで半径方向外向きに延びる領域によって画定され得る。また、代替的に、間隙G
1は、芯130の遠位部260に沿って測定された開口部238を画定するシリンダ216の内周又は内壁258まで芯130の外周の間の容積で画定され得る。場合によっては、芯130の遠位部260は、開口部238によって受容され、シリンダ216に隣接するか、又はこれによって囲まれる芯130の一部として画定される。即ち、芯130の遠位部260は、シリンダ216によって放射状に囲まれる芯130の任意の部分である。あるいは、場合によっては、芯130の遠位部260は、外被150の遠位端部154を越えて芯130の部分として画定され得る。即ち、遠位部260は、外被150によって囲まれていない、又は放射状に囲まれていない芯130の任意の部分である。
【0028】
さらに
図12を参照すると、間隙G
1は、加熱器装置110を通る十分な空気流を可能にするため十分に大きい必要があるが、芯130への十分な熱伝達を提供するため十分に小さい必要もある。間隙G
1は約0.1mmから2.5mmの間であり得る。好ましくは、間隙G
1は、1mm未満である。いくつかの実施形態では、間隙G
1は、0.5mm未満である。例示的な実施形態では、間隙は、芯130と加熱器装置110又はシリンダ216が重なる領域において、軸120を中心に半径方向に、及びその軸120に沿って長手方向に実質的に一定である。他の実施形態では、間隙は、不均一であってもよく、上記の値は、最大、最小、又は平均の半径方向のクリアランス量を示してもよい。例えば、間隙G
1が平均断面積として画定される場合、G
1は、芯130の遠位部260の長さに沿って取られた芯130の遠位部260の外周と開口部238を画定する内壁258との間で測定された平均断面積であってもよく、軸120に対して実質的に垂直である。この場合、例えば、G
1は約10mm
2から約40mm
2の間であり得る。好ましくは、この場合、G
1は30mm
2未満である。別の例として、間隙G
1が芯130の遠位部260の外周と芯130の遠位部260に沿ったシリンダ216の内壁258との間で測定された平均体積として画定される場合、G
1は、場合によっては約50mm
3から250mm
3であり得る。また、G
1は、場合によっては約100mm
3から200mm
3であり得る。この場合、G
1は、好ましくは約100mm
3未満である。
【0029】
図17に戻ると、加熱器シャーシ218の通路248は、芯130を容易に装着できるサイズになっている。より具体的には、直径d
3は、遠位部260又は芯130の上部自由端152の直径Dより大きい。さらに、開口部238は、芯130の外周よりも小さい(即ち、直径d
1は、芯の直径Dよりも小さい)。その結果、芯130は、加熱器シャーシ218の通路248を介してシリンダ216の第1内縁部236の真下まで、シリンダ216の開口部238内に延び得る。
【0030】
従って、芯130の上部自由端152を越える開口部238の部分は、ベンチュリ効果を生成するように集束される。即ち、開口部238の断面積は、加熱器シャーシ218の下端部222から第1内縁部236に向かって集束するため、そこの空気流は、自然に速度を増加し得る。加熱器装置110からの熱は、伝導及び放射によって空気の間隙G1を介して芯130に向かって内側に移動し、芯130周りに閉じ込められ、これにより、間隙G1内、従って芯130内の全体的な温度が上昇し、芯130の周囲に熱の分布が生じ、芯130内の揮発性物質の揮発がさらに増加する。一態様では、熱は、芯の円周の周りに実質的に均一に分布され得る。さらに、又は代替的に、熱は、芯130及び/又は加熱器装置110に沿って実質的に長手方向に均一に分布し得る。また他の実施形態では、加熱器装置110は、例えば、加熱器を芯に近づけるか、又は遠ざけることによって、異なる長手方向又は半径方向の場所に多少の熱伝導性材料のハウジング104を形成するか、異なる場所に1つ以上のさらなる加熱器を追加するか、異なる場所で芯130に近く又は遠くなるようにハウジング104の幾何学的形状を変更することによって、芯130の異なる長手方向又は半径方向の部分で、より多くの又はより少ない量の熱を加えることができる。
【0031】
図24~
図26は、上部カバー112の様々な図を示す。特に
図24を参照すると、上部カバー112は、第1表面266、第2表面268(例えば、
図26を参照)、及びその外縁部272から延びる環状リム270を有する環状壁264を含む。環状リム270は、制御ダイヤル116の受容部分276によって受容及び固定されるように構成された複数のラッチ274を含む(例えば、
図23を参照)。図示の実施形態では、上部カバー112は、3つのラッチ274を含むが、代替の実施形態は、より多くの又はより少ないラッチを含んでもよい。
【0032】
さらに
図24~
図26を参照すると、上部カバー112の環状壁264は、外縁部272から内側に配置された内縁部278を含む。
図26に示すように、外縁部272及び内縁部278は、内縁部278が上部カバー112の最上部を画定するように、異なる平面上に向けられる。図示の実施形態では、内縁部278及び外縁部272は、高さ「h」だけ離隔されている。場合によっては、高さ「h」は、1mmから10mmの間であり得る。いくつかの実施形態では、高さ「h」は、5mm未満であり得る。いくつかの実施形態では、高さ「h」は、3mm未満であり得る。また、第2表面268は、外縁部272から内縁部278に向かって凸状に延びる。より具体的には、環状壁264は、第2表面268が凸状になるように、トラフ280に向かって第1方向に下向きに延びる。トラフ280から、第2表面268は、それが内縁部278と合うまで第2方向に凸状に湾曲する。従って、内縁部278は、中央孔282を画定し、第2表面268は、それを介して揮発性物質を放出するために、中央孔282の周りに集束する構造を画定する。
【0033】
しかし、代替の実施形態による上部カバー112は、異なる方式で外縁部272から中央孔282及び内縁部278に向かってテーパ状になり得ることを理解されたい。例えば、
図27を参照すると、トラフ280(例えば、
図26を参照)は、上部カバー112が外縁部272から内縁部278に一方向に徐々に湾曲するようにしてもよい。図示の実施形態では、第2表面268は凸状であるが、他の実施形態では、第2表面268は凹状であってもよい。
【0034】
また、
図28を参照すると、環状壁264は、外縁部272又はトラフ280から内縁部278に対して角度付けすることができる。即ち、環状壁264は、一般に、トラフ280から内縁部278まで、及び外縁部272からトラフ280まで直線であり、中央孔282を通した揮発性物質の放出のための漏斗状構造を画定する。また、
図29を参照すると、環状壁264は、外縁部272から内縁部278まで延びるときに、複数の方向に湾曲し得る。より具体的には、第2表面268は、中央孔282を介して揮発性物質を指向させるために、滑らかな曲面を画定する凸状部268a及び凹状部268bを含み得る。好ましくは、凸状部268aは、内縁部278に隣接し、凹状部268bは、外縁部272に隣接する。
【0035】
図26に戻ると、本実施形態では、上部カバー112の第1表面266は、第2表面268に反対側に突出し、一般に、第2表面268と同じ形状に沿った線をたどり得る。即ち、第1表面266は、内縁部278からトラフ280まで対向する軸120に沿って第1方向に湾曲しながら、外縁部272から内縁部278に向かって延び得る。トラフ280から、第1表面266は、それが内縁部278に合うまで第1方向と対向する軸120に沿って第2方向に徐々に湾曲し得る。従って、第1表面266は、凹状である。
【0036】
上述した加熱器装置110と同様に(例えば、
図17を参照)、さらに
図26を参照すると、集束構成を使用することは、蒸気を集中してディスペンサの外にガイドするのに役立つ。即ち、第2表面268が中央孔282によって画定される直径w
1から直径w
2まで徐々に湾曲するため、上部カバー112は、一般にディスペンサから出る蒸気の流れにベンチュリ効果を提供するための集束出口を画定する。図示の実施形態では、直径w
1は、トラフ280によって画定される直径である。好ましくは、直径w
2は、直径w
1の50%から80%の間である。場合によっては、直径w
2は、直径w
1の60%から70%の間である。さらに、好ましくは、第2表面268は一般に滑らかである。従って、第2表面268は、一般に外縁部272から内縁部278までの連続的な曲線である。その結果、ベンチュリ効果が確立され、最終的には、それを通る蒸気の流れの速度が増加し、周囲の領域への蒸気の放出が促進される。
【0037】
次に
図25を参照すると、環状壁264は、中央孔282の周りに配置された複数の孔284をさらに形成する。図示の実施形態では、複数の孔284は、それらが中央孔282からより遠くに配置されるにつれて、サイズが減少する。即ち、外縁部272に近接する複数の孔284は、内縁部278に近接する複数の孔284よりも小さい。複数の孔284は、それを介して揮発性物質を放出するための通気能力及び代案経路を提供するために統合され、これにより、結露の重要な原因となるハウジング内での蒸気の再循環を防止することができる。図示の実施形態は複数の孔を含んでいるが、本開示の追加の実施形態は、様々な設計及び構成において、孔が、より多く、より少ない、又は全くない上部カバーを含んでもよい。さらに、複数の孔284は、面取り、フィレット、又は直線の縁部を含み得る。より具体的には、図示の実施形態では、複数の孔284は、ハウジング(即ち、プルーム)からの乱れた蒸気の流れを最小限に抑えるために、面取り縁部286を含む。好ましくは、複数の孔284は、第2表面268に隣接した面取り縁部286を含む。
【0038】
また、本開示の実施形態によるディスペンサは、向上した空気流制御を経験する。例えば、
図12を参照すると、加熱器装置110、芯130、及びハウジング104の間の関係は、面取り縁部286を有する複数の孔284の存在に加えて、内部空洞106内で空気再循環の減少をもたらし、最終的にハウジング104内での結露の形成の可能性を低減する。さらに、最小限の再循環により、揮発性物質の周囲への放出を強化することができ、顕著に強く一貫したプルームを生成し得る。
【0039】
さらに
図12を参照すると、加熱器装置110は、芯130を受容し、そのため、抵抗器214の局部的な加熱を芯130の複数の側面を取り囲む放射熱源に変換するように構成される。より具体的には、芯130は、加熱器シャーシ218の通路248を介してシリンダ216の開口部238に延び得る。一般に、加熱器装置110、及び特に抵抗器214は、芯130の上部の自由端152の近くに配置され、これにより、芯130によって容器126から引き出された流体の蒸発が促進される。一実施形態では、
図12に見られるように、加熱器装置110は、物質が芯130から分配した後でも、揮発した物質を続けて加熱し続けるために、芯130の上部自由端152の上へ長手方向に延びる。従って、揮発した物質が加熱器装置110を出るとき、内部空洞106内で加熱され続け、これは、実際に揮発した物質のエネルギーを増加させ、従って、ディスペンサ102の外側の揮発した物質の速度を増加させることができる。この構成はまた、加熱器が上部カバー112の中央孔282のより近くに配置されることを可能にし、内部空洞106を介して移動する間、揮発した物質を再び高温で保持し、それにより物質の結露を低減して揮発した物質を環境に放出する。
【0040】
本開示による加熱器装置110は、芯130の加熱を向上させる。特に、加熱器装置110は、従来のディスペンサに比べて、芯130の均一かつ一貫した加熱をもたらす。このような改善は、上述した設計上の選択の結果であり、特に、その中に高い金属含有量(例えば、アルミニウム)を有するセラミック金属複合材を使用した結果である。抵抗器214を高い導電性材料に内蔵することにより、抵抗器214からの熱は、シリンダ216の全体に容易に分布して、実質的に均一な温度プロファイルを生成し、これは、ディスペンサ102の全体的な性能にプラスの影響を与える。例えば、本実施形態によれば、シリンダ216の主表面240は、20℃未満の温度勾配(又は温度差)を経験する。いくつかの実施形態では、シリンダ216の主表面240は、15℃未満の温度勾配(又は温度差)を経験する。この温度勾配は、20℃~40℃の温度勾配を経験し得る既存のディスペンサに比べて大きく減少する。このようなサイズの温度勾配は、ディスペンサから出る蒸気の流れを妨げる可能性がある。より具体的には、ディスペンサによって分配されるプルームは、加熱器装置の暖かい側に向かって引っ張られるか、又は引き寄せられる可能性があり、これは、内部空洞内の空気の再循環及び後の結露の形成を誘発する可能性がある。
【0041】
再び
図17を参照すると、加熱器装置110の性能は、様々な熱源を使用して達成され得ることを理解すべきである。即ち、単一抵抗器214を有する加熱要素212は、本開示の態様と組み合わせて加熱器の性能を向上させることができる唯一の熱源ではない。例えば、次に
図30を参照すると、本開示の実施形態による加熱器装置300は、一般に抵抗器(例えば、
図14及び
図17に示される抵抗器214など)、内蔵されたワイヤ、又は当技術分野で周知の任意の他の熱源であってもよく、少なくとも1つの熱源302を含む。しかし、本開示の実施形態は、1つより多い熱源を使用してもよい。例えば、加熱器装置300は、1つ以上の追加の熱源304と組み合わせた熱源302を含んでもよい。より具体的には、加熱器装置300の熱源302は、抵抗器であってもよく、熱源304は、追加の抵抗器であってもよい。これらの抵抗器は、例えば、円周方向、縦方向、横方向など、様々な方法で加熱器装置300全体に分配してもよい。
【0042】
別の例として、加熱器装置300の熱源302は、内蔵されたワイヤであってもよく、熱源304は、抵抗器及び/又は内蔵されたワイヤの組み合わせであってもよい。この場合も、熱源302,304は、加熱器装置300全体にわたり、円周方向、縦方向、横方向などに配置してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、加熱器装置300の熱源302,304は、プリント回路基板に装着された個別の抵抗器であってもよい。従って、本開示の実施形態による加熱器装置は、当技術分野で周知の任意の熱源又は熱源の組み合わせを含み得る。
【0043】
加熱器装置110の性能を既存のディスペンサの拡散要素と比較するために試験が行われた。3つの装置がテストされた。第1装置(「装置1」)は、
図1~
図26に関して本明細書に記載された装置に類似しており、
図12~
図17に関連して図示及び説明されたような加熱器装置110を含み、さらに
図23~
図26に関連して図示及び説明されたような上部カバー112がさらに含まれる。第2装置(「装置2」)は、現在、Glade(登録商標)Plug-Ins(登録商標)という名前でSCジョンソン社(S.C.Johnson & Son,Inc.)から販売されている、Belongiaらの米国特許公開第2012/0275772号に詳細に説明されている装置である。第3装置(「装置3」)は、市場で知られ、販売されている他のプラグインディスペンサである。
【0044】
3つの装置は全て同じレベルの一貫した方式で充填されたリフィルで試験された。試験施設は、華氏70度(±2度F)の温度で保持される環境的に統制された部屋であった。各装置は、それぞれの意図された作動電力で作動した。試験結果を下記の表1に示した。
【0045】
【0046】
上の表1を参照すると、装置1は、装置2及び装置3で必要とされるよりも、揮発性物質を放出するために少ない電力入力を必要とした。また、装置1は、揮発性物質の放出の実質的な増加を示し、その結果、揮発性物質の17.8グラム(「g」)を放出するために必要な期間が短縮された。言い換えると、装置1は、
図1~
図26と関連して本明細書で説明されるディスペンスシステム100に非常に類似している。従って、上述した加熱器装置110は、加熱器性能の向上をもたらす。
【0047】
試験の分析フェーズでは、試験が完了して適切なデータが収集された後、次の式を使用して各装置に対する装置の効率係数を算出した。
【0048】
[数1]
装置の効率係数=1時間当りの全体的な平均減量/電力
【0049】
両方の装置は異なる電力で動作するように設計されているため、装置の効率係数は、2つの装置の全体的な性能を比較するために使用される。算出された装置の効率係数は、上の表1に示されている。要約すると、装置1は、装置2及び装置3より単位ワット当たりの発散率が大幅に高くなっている。実際に、装置1の装置効率係数は、装置2の装置効率係数の2倍以上であり、装置3の装置効率係数のほぼ2倍である。
【0050】
別の言い方をすれば、装置1を作動するために必要な電力量は、装置2と装置3が同じかそれ以上の発散速度を達成するために必要な電力の一部である。
【0051】
その結果、装置1は、エネルギーの節約と効率性の向上を経験する。この向上した性能は、上記で論じた設計の選択、特に、例えば、加熱器装置110に対する材料の選択、加熱器装置110の幾何学的構造、上部カバー112の幾何学的構造、及び加熱器装置110に対する芯130の配列又は近接性の結果である。図示の実施形態では、本明細書に開示された加熱器の効率係数は、約25以上である。
【0052】
他の例示的な実施形態では、本明細書に開示された1つ以上の加熱器の効率係数は、約40以上、約45以上、又は約50以上である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に対する数多くの変形は、上述した説明を考慮して当業者に明らかであろう。従って、この説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、当業者が本発明を作成及び使用することを可能にすることを目的として提示されている。添付された特許請求の範囲内にある全ての変更に対する独占的権利は留保される。
【国際調査報告】