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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】クリーニング器具
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/36 20060101AFI20230315BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20230315BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20230315BHJP
   A46B 13/00 20060101ALI20230315BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20230315BHJP
   A46B 11/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61C17/36
A61B1/24
A61B1/06 611
A61B1/06 612
A46B13/00
A46B15/00 K
A46B11/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543777
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 GB2020052922
(87)【国際公開番号】W WO2021148764
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】2000804.1
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ベネッティ
(72)【発明者】
【氏名】ニキータ シュミット
【テーマコード(参考)】
3B202
4C161
【Fターム(参考)】
3B202AA03
3B202AA07
3B202AB05
3B202AB08
3B202BA01
3B202BD01
3B202CA04
3B202CA08
3B202FA15
3B202FB01
3B202GA02
3B202GA04
4C161AA08
4C161NN01
4C161QQ06
4C161QQ09
4C161RR02
4C161RR03
(57)【要約】
歯科治療器具は、パルス光信号を口腔に向けて送信し、口腔から戻された光から口腔の画像を撮像する。コントローラが撮像された画像に応じて、ユーザの口腔の治療を作動させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療器具であって、
ハンドルと、
ユーザの口腔を照明するための照明手段と、前記照明された口腔から光を受け取るための窓とを備え、前記窓から受け取った光を、前記照明された口腔の画像を撮像するための撮像手段に伝達する、光学システムと、
前記撮像された画像に含まれる1つ以上の特徴に応じて、前記口腔に治療を提供するための歯科治療システムと、
前記ハンドルに対して前記照明手段および前記窓を移動させるための移動手段と、
を含み、
前記移動手段が、第1の周波数F1で前記ハンドルに対して前記照明手段および前記窓を移動させるように構成されており、前記照明手段が、第2の周波数F2で前記口腔を照明して、毎秒複数の照明事象を生成するように構成されている、歯科治療器具。
【請求項2】
前記照明手段が複数のLEDを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記窓が前記照明手段に隣接して配置されている、請求項1または請求項2に記載の器具。
【請求項4】
ヘッドと、前記ヘッドと前記ハンドルとの間に延在するステムとを含み、前記移動手段が、前記ステムおよび前記ヘッドを前記ハンドルに対して移動させるように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記照明手段および前記窓が前記器具のヘッド上に配置されている、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記器具のヘッドが複数の毛を含む、請求項4または請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記歯科治療システムが、作動流体を口腔に向けて送出するためのノズルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の器具。
【請求項8】
前記ノズルが前記器具のヘッド上に配置されている、請求項4に従属する場合の請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記撮像手段がローリングシャッターカメラを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
前記カメラは、複数の画素列を含むセンサを含み、前記画素列が順次に露光され、各画素列が同じ数の照明事象に露光される、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
F1=F2である、請求項1~10のいずれか一項に記載の器具。
【請求項12】
前記第2の周波数F2が0<|F1-nF2|<Nとなるように選択され、ここで、Nは前記撮像手段によって1秒あたりに撮像される画像の数であり、nは|F1-nF2|が最小値を有するように選択された正の整数である、請求項1~10のいずれか一項に記載の器具。
【請求項13】
周囲光強度を測定するためのセンサと、前記測定された周囲光強度に応じて各照明事象の強度および持続時間のうち少なくとも一方を変化させるように構成されたコントローラとを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の器具。
【請求項14】
前記移動手段は、前記ハンドルの長手方向軸に垂直に配置された経路に沿って、前記照明手段および前記窓を前記ハンドルに対して移動させるように配置されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の器具。
【請求項15】
前記移動手段は、湾曲経路に沿って、好ましくは弧状経路に沿って、前記照明手段および前記窓を前記ハンドルに対して往復動させるように配置されている、請求項14に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療器具に関する。治療器具は、好ましくは手持ち式治療器具であり、好ましくは表面治療器具である。本発明の好ましい実施形態では、器具は歯科治療器具である。好ましい実施形態では、器具は、流体をユーザの口腔に供給するための流体供給システムを具備する電動歯ブラシである。この流体は、歯磨き粉、または改善された隣接歯間クリーニングのための流体であってもよい。あるいは、器具は、毛または歯を磨くための他の要素を含んでいなくてもよく、専用の口腔治療器具の形態をなしていてもよい。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシは、一般に、ハンドルに連結されたツールを備えている。このツールは、ステムと、歯を磨くための毛を支持するブラシヘッドとを備えている。ブラシヘッドは、ステムに連結されている静止部分と、例えば、往復運動、振り子運動、振動、回動運動、または回転運動のうちの1つを伴って静止部分に対して移動可能である少なくとも1つの可動部分とを備えることで、その上に取り付けられた毛にブラシ運動を付与する。ステムは、ハンドル内の伝達ユニットと結合している駆動シャフトを収納している。伝達ユニットは、ハンドル内に収納されているバッテリによって駆動されるモータに連結されている。駆動シャフトおよび伝達ユニットは、モータの回転運動または振動運動を、ブラシヘッドの静止部分に対するブラシヘッドの可動部分の所望の運動に変換する。
【0003】
隣接歯間クリーニングのための作動流体の噴流を発生させるための流体供給システムを電動歯ブラシに組み込むことが知られている。例えば、特許文献1は、ハンドル、ブラシヘッド、およびブラシヘッドとハンドルとの間に延在するステムを有する歯ブラシについて記載している。ブラシヘッドは、作動流体がユーザの口腔に供給されるノズルと、ノズルに対して移動してユーザの歯を磨くためのブラシユニットとを含む。ノズルは、器具をユーザの歯に沿って移動させるとき、ハンドルに対して移動可能である。歯ブラシは、2つの異なるモードのうちの選択された一方において作動可能である。第1のモードでは、ユーザはボタンを押下して、ノズルから作動流体を供給するように作動させる。第2のモードでは、コントローラにより、センサから受信した信号に応じて、ノズルに作動流体を自動的に供給するように作動させる。センサは、歯ブラシのハンドルに位置している。ステム内に配置された枢動アームが、ノズルと、センサに隣接して配置されている磁石とを連結しており、ノズルがハンドルに対して移動するとき、例えば、ユーザの歯の間の隙間の中にまたはその外に移動するとき、センサに対して移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/185154号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、
ハンドルと、
ユーザの口腔を照明するための照明手段と、照明された口腔の画像を撮像するための撮像手段とを含む光学システムと、
口腔に治療を提供するための歯科治療システムと、
ハンドルに対して照明手段を移動させるための移動手段と、
を含み、
移動手段が、第1の周波数F1でハンドルに対して照明手段を移動させるように構成されており、照明手段が、第2の周波数F2で口腔を照明して、毎秒複数の照明事象を生成するように構成されている、歯科治療器具を提供する。
【0006】
特許文献1に記載されている器具とは異なり、ユーザの口腔の治療は、口腔の撮像された画像に含まれる1つ以上の特徴に応じて作動される。例えば、撮像された画像は、口腔内のプラークの領域、口腔の隣接する歯間の隣接歯間領域、または歯を歯茎から分離する歯茎ラインを含み得る。歯科治療システムは、好ましくは、例えば、そのメモリに格納されたニューラルネットワークモデルを使用して、口腔の治療が必要か否かを撮像された画像から決定するコントローラを含む。口腔の治療は、コントローラによって作動させることができ、例えば、必要に応じて、隣接歯間領域にある物質を除去するための隣接歯間領域への流体の送出、ユーザの歯からのプラークの除去、または歯茎ラインの洗浄を含み得る。
【0007】
口腔の治療中、光学システムの照明手段はハンドルに対して動かされる。照明手段は、ハンドルに対して任意の所望の形状の経路に沿って移動することができる。好ましい実施形態では、移動手段は、好ましくは湾曲経路に沿って、より好ましくは弧状経路に沿って、ハンドルに対して照明手段を往復動させるように構成される。移動手段は、好ましくは、ハンドルの長手方向軸に実質的に垂直に配置された経路に沿って、ハンドルに対して照明手段を移動させるように配置される。好ましい実施形態では、照明手段は、ハンドルの長手方向軸の周りを10~30度の範囲の角度で、好ましくは、200~300Hzの範囲の周波数F1で、往復で走査される。好ましい実施形態では、照明手段の振動の周波数F1は、250Hzである。
【0008】
照明手段は、好ましくは、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む。照明手段は、好ましくは、可視光を放出するように選択され、より好ましくは白色光を放出するように選択され、好ましくは、3,000~7,000Kの範囲の色温度を有する。
【0009】
光学システムは、口腔から光を受け取るための窓を備え、その窓から光が撮像手段に運ばれる。光学システムの窓は、好ましくは、照明手段と共に移動するように配置する。窓は、好ましくは、LEDに隣接して配置する。LEDは、窓の周りに配置することができる。窓は、ガラスまたはプラスチック材料から形成された平坦な透明パネルの形態であってもよく、または光学システムのレンズを提供するように湾曲した透明部材の形態であってもよい。
【0010】
撮像手段は、ハンドルに対して照明手段と共に移動するように配置することができる。例えば、器具は、ヘッドとハンドルとの間を延在するステムを含むことができ、撮像手段は、ハンドルに対して照明手段および窓と共に移動するように、器具のステムまたはヘッドのいずれかに配置することができる。あるいは、撮像手段をハンドルに配置し、光を窓から器具のステムを介して撮像手段に伝達する。
【0011】
撮像手段は、好ましくは、毎秒、数Nの画像またはフレームを撮像するように構成する。例えば、撮像手段は、30~40ミリ秒の範囲のフレームあたりの露光時間で、毎秒20~30の画像またはフレームを撮像するように構成することができる。口腔が連続的に照射される場合、撮像中に200~300Hzの範囲の周波数でハンドルに対して照明手段を動かすと、結果的にぼやけた画像が生成される。そのような画像は、コントローラが撮像された画像内のプラークまたは隣接歯間の隙間等の特徴を識別できる精度に悪影響を与える可能性があり、従って、器具による口腔の治療の精度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
周波数F2で光学キャビティの照明をパルス化することにより、照明手段によって口腔を連続的に照射する状況と比較して、撮像された画像の鮮明さを改善することができ、口腔の治療の精度の改善に繋がり得ることを見出した。
【0013】
照明手段は、振動サイクル毎に1回作動させることができる。言い換えれば、照明手段は、周波数F2で光学キャビティを照明するように構成することができ、ここで、F2=F1である。一実施形態では、照明手段は、光学キャビティを250Hzの周波数F2で照明すると、毎秒、口腔の250のパルス照明、または「照明事象」が存在することになる。照明手段は、好ましくは、前述の基準位置で作動させる。
【0014】
各照明事象の強度または持続時間は、周囲光の強度に応じて変更することができる。例えば、器具は、周囲光の強度を測定するためのセンサを含むことができ、コントローラは、例えば、口腔の照明の強度が比較的一定となるように、測定された周囲光の強度に応じて、各照明事象の強度および持続時間のうち少なくとも一方を変化させるように構成することができる。
【0015】
移動手段は、好ましくは、照明手段を少なくとも1つの基準位置に近づけたり遠ざけたりするように配置する。例えば、照明手段が湾曲経路に沿って往復で掃引する動きで移動する場合、基準位置はその経路の中心に配置され得る。代替的または付加的に、参照位置は、その経路の中心と端部との間の中間に位置してもよい。
【0016】
撮像手段は、グローバルシャッターカメラの形態であってもよく、カメラが毎秒40フレームの撮像レートで動作している場合、カメラのセンサの全ての画素が、画像を撮像するのにかかる時間の間、例えば、25ミリ秒間、同時にかつ同じ期間露光される。しかしながら、好ましい実施形態では、撮像手段は、ローリングシャッターカメラの形態であり、カメラのセンサが漸進的に露光されて画像を撮像する。周知のように、センサは、多数の画素の行および列に分割される。撮像中、画素の各行(または各列)は同じ期間露光され、各行内の全ての画素が同じ期間露光される。このタイプのカメラでは、ピクセルの行の露光は順次行われ、露光が開始および終了する瞬間は、行毎に僅かに異なる。
【0017】
バンディング効果は、画素の濃い行および薄い行のグループを交互に配置することによって形成される。周波数F2がカメラのフレームレートの整数倍である場合、一連の画像の取得中にバンドが同じ位置に留まることを見出した。口腔の撮像された画像におけるバンディング効果の形成を抑制するために、各画素列は、好ましくは、同じ数の照明事象に露光されるようにする。各画素列が露光される開始時間は、好ましくは、各画素列がバンディングを抑制するために同じ数の照明事象に露光されるように選択する。
【0018】
第2の態様では、本発明は、
ハンドルと、
ユーザの口腔を照明するための照明手段と、照明された口腔の画像を撮像するための撮像手段とを備える光学システムと、
口腔に治療を提供するための歯科治療システムと、
ハンドルに対して照明手段を動かすための移動手段と、
を含み、
移動手段は、第1の周波数F1でハンドルに対して照明手段を移動するように構成されており、照明手段は、第2の周波数F2で口腔を照明して、毎秒複数の照明事象を生成するように構成されており、撮像手段は、複数の画素列を含むセンサを有するローリングシャッターカメラを含み、画素列が順次露光され、各画素列が同じ数の照明事象に露光される、歯科治療器具を提供する。
【0019】
ユーザが器具のハンドルを口腔に対して固定位置に保持する場合、カメラによって撮像される画像は、光学キャビティの照明の周波数F2がハンドルに対する照明手段の動きの周波数F1と同じである場合、時間とともに静止しているように見える。カメラと光学システムによって画像化される歯との間の距離によっては、カメラの比較的狭い視野をもたらす可能性があり、これは、口腔内の器具の位置によっては、口腔の一部の治療可能な特徴を撮像するのを妨げ得る。
【0020】
口腔の照明を照明手段の動きと同期させる代わりに、器具は、光学キャビティの照明の周波数F2が、ハンドルに対する照明手段の動きの周波数F1とは異なるように構成されてもよい。照明手段の動きから光学キャビティの照明を非同期化することによって、ユーザが器具のハンドルを口腔に対して固定位置に保持している場合でさえ、カメラによって撮像された画像をハンドルに対して、従って、口腔に対してスローモーションで動くように見せることができる。これにより、カメラの有効視野が拡大し、カメラによって撮像された画像から口腔内のあらゆる治療可能な特徴を検出する可能性が高まる。
【0021】
周波数F2は、0<|F1-nF2|<Nとなるように選択することが好ましく、ここで、Nは、撮像手段によって1秒あたりに撮像される画像の数であり、nは、|F1-nF2|が最小値となるように選択される正の整数である。例えば、Fl=250HzおよびN=25フレーム/秒の場合、n=1では、F2は、225~275Hzの値から選択することができる。
【0022】
第3の態様では、本発明は、
ハンドルと、
ユーザの口腔を照明するための照明手段と、照明された口腔の画像を撮像するための撮像手段とを備える光学システムと、
口腔に治療を提供するための歯科治療システムと、
ハンドルに対して照明手段を動かすための移動手段と、
を含み、
移動手段は、第1の周波数F1でハンドルに対して照明手段を移動するように構成されており、照明手段は、0<|F1-nF2|<Nとなるように選択された第2の周波数F2で口腔を照明するように構成されており、ここで、Nは撮像手段によって1秒あたりに撮像される画像の数であり、nは|F1-nF2|が最小値を有するように選択された正の整数である、歯科治療器具を提供する。
【0023】
器具は、ユーザの口腔状態を治療するための器具の形態であり得る。例えば、器具は、ユーザの歯の隙間の間をクリーニングするための専用の隣接歯間クリーニング器具の形態であり得る。治療システムは、作動流体をユーザの口腔に供給するための流体供給システムを含むことができる。光学システムによって撮像された画像に応じて、治療システムは、作動流体の口腔への供給を作動させて、ユーザの歯間の隙間にある物質を取り除く。ハンドルに対する照明手段の動きは、作動流体を隙間に供給するのに最適な位置に流体供給システムが配置される前に、そのような隙間を検出することを可能にする。これにより、例えば、一旦、隙間が検出されると、流体供給システムが最適な位置に配置されたときに、作動流体を隙間に供給する準備ができているように、流体リザーバからポンプの流体チャンバに流体を引き込むことによって、流体供給システムを治療システムのコントローラにより「プライミング」することができる。これは、例えば、器具の電源を切る前にそれ以上の隙間が検出されなかった場合に、液体供給システムがプライム位置に留まる結果に繋がり得る、作動流体がポンプの流体チャンバから排出された直後に流体供給システムがプライミングされる構成と比較して、流体供給システムがプライミング位置に保持される時間の長さを最小化することができる。
【0024】
この場合、作動流体を口腔に供給するためのノズルに対して照明手段を移動させるように移動手段を配置することができる。ノズルは、好ましくは、ノズルの先端に位置する流体出口を通過するノズル軸に沿って延在している。ノズル軸は、ハンドルの長手方向軸にほぼ直交して整列させることができる。移動手段は、ノズルに対する照明手段の動きを駆動するための駆動機構を備えることができる。駆動機構は、好ましくは、照明手段に接続された伝達ユニットと、伝達ユニットを駆動して、照明手段をノズルに対して移動させるための駆動ユニットとを備える。駆動ユニットは、好ましくはハンドル内に配置され、好ましくはモータを含む。伝達ユニットは、モータと照明手段との間に延在する駆動シャフトを備えることができる。駆動シャフトは、ハンドルと照明手段との間に延在するステム内に収容することができる。ステムは、ハンドルに取り外し可能に接続されたクリーニングツールの一部を形成してもよい。照明手段がノズルに対して移動するように、ノズルをステムに取り付けることができる。
【0025】
あるいは、器具は、作動流体を隣接歯間の隙間に送出することによって、隣接歯間クリーニングを改善するという追加の機能を有する歯ブラシの形態であってもよい。器具が歯ブラシの形態である場合、クリーニングツールまたはステムは、好ましくは、複数の毛を含む。毛は、好ましくはノズルの周りに配置され、ノズルの周りに円周方向に配置することができる。複数の毛をクリーニングツールの静止部分に取り付けることができ、その部分はハンドルに対して非可動である。代替的または付加的に、複数の毛をクリーニングツールの可動部分に取り付けてもよく、その部分は、ハンドルに対して可動である。
【0026】
好ましい実施形態では、器具は、毛支持部と、毛支持部に取り付けられた複数の毛とを備えるブラシユニットを含み、毛支持部は、ハンドルに対して移動可能である。毛支持部は、器具のヘッド上に配置することが好ましい。器具は、ハンドルに対する毛支持部の動きを駆動するための駆動機構を備える。駆動機構は、好ましくは、毛支持部に連結された伝達ユニットと、伝達ユニットを駆動して毛支持部をハンドルに対して移動させるための駆動ユニットとを備える。駆動ユニットは、ハンドル内に配置することが好ましい。
【0027】
駆動機構は、好ましくは、ハンドルに対する照明手段の動きを駆動するように構成されている。従って、照明手段は、好ましくは、ハンドルに対して毛支持部と共に移動するように配置する。照明手段は、毛支持部と同じ移動パターンで、または毛支持部とは異なる移動パターンで、ハンドルに対して移動するように配置することができる。例えば、照明手段、窓、および毛支持部は、ハンドルに対する掃引運動で往復動するように配置することができる。照明手段および窓は、毛支持部から離間させることができ、または照明手段および窓のうちの少なくとも一方を毛支持部に取り付けることができる。例えば、駆動機構は、ブラシユニット、照明手段、および窓をハンドルに対して同時に動かすように、ステムをハンドルに対して動かすように構成してもよい。
【0028】
ノズルは、好ましくは、ハンドルに対して照明手段と共に移動するように配置する。例えば、照明手段およびノズルは、駆動機構がハンドルに対して同時に、毛支持部、ノズル、照明手段および窓を動かすように、毛支持部上にまたは毛支持部に隣接して取り付けることができる。
【0029】
照明手段および窓は、好ましくは、信号が伝達される口腔の領域が、後に治療システムによって治療される領域とほぼ同じになるように、ノズルに近接して配置する。照明手段およびノズルは、クリーニングツール上に並べて配置することができる。
【0030】
コントローラは、器具のハンドルに配置することが好ましい。信号は、光学システムとコントローラとの間でワイヤレスに送信することができるが、信号は、器具内に配置された物理的伝達経路に沿って光学システムとコントローラとの間で送信されることが好ましい。好ましくは、送信経路は、駆動機構の一部に沿って延在する。これにより、器具の構成要素の数を最小限に抑えることができる。
【0031】
上記のように、駆動機構は、好ましくはハンドル内に配置され、好ましくは、毛支持部に連結された伝達ユニットと、伝達ユニットを駆動して毛支持部をハンドルに対して移動させるための駆動ユニットとを備える。伝達ユニットは、好ましくは、モータによってハンドルに対して移動されるシャフトの形態とする。シャフトの振動周波数は、好ましくは、200~300Hzの範囲である。モータは、好ましくは、モータの励起時にシャフトがハンドルに対して回転または振動するように、シャフトの周りに延在させる。クリーニングツールのステムはシャフト上に取り付ける。
【0032】
送信経路は、好ましくは伝達ユニットに沿って、より好ましくはシャフトの外面に沿って延在する。例えば、信号をコントローラに搬送する導電性トラックをシャフトの外面に形成することができる。トラックは、好ましくは、ハンドル接点に接続され、ハンドル接点は、クリーニングツールをハンドルに取り付けたときにクリーニングツール接点に係合する。ハンドル接点は、好ましくは、シャフトの端部の周りに延在する環状の接点である。クリーニングツールは、好ましくは、クリーニングツールをハンドルに連結させるためにシャフトの端部を受け入れる凹部を含む。クリーニングツール接点は、好ましくは、凹部内に配置され、好ましくは、凹部の内周面から内側に突出し、クリーニングツールをハンドルに取り付けたときにハンドル接点に係合する。配線、トラックまたはその他の導電性部材がクリーニングツール接点と検出手段との間に延在することで、検出手段からクリーニングツール接点に信号を搬送する。
【0033】
伝達機構の一部分に沿って延びることに加えて、送信経路はまた、好ましくは、駆動ユニットの一部分に沿って延びる。駆動ユニットは、好ましくは、シャフトに係合する手段を含み、この係合手段は、好ましくは、信号をコントローラに向かって搬送するように
構成される。駆動ユニットは、好ましくは、シャフトを平衡位置から遠ざけるように移動させ、更に好ましくは、回転させるように構成され、クリーニングツールをハンドルに対して係合手段の力に逆らうように移動させる。係合手段は、駆動ユニットの駆動力が除去されたときにシャフトを平衡位置に向かって押し戻すように構成される。係合手段は、バネ部材を含むことができ、好ましい実施形態では、捩りバネを含む。配線、トラック、またはその他の導電性部材が、バネ部材とコントローラとの間に延び、信号をバネ部材からコントローラに搬送する。
【0034】
上記のように、歯科治療システムは、好ましくは、作動流体をユーザの口腔に供給するための流体供給システムを含む。流体供給システムは、好ましくは、流体リザーバおよびポンプを含み、コントローラは、ポンプを作動させて流体リザーバから作動流体を引き出し、作動流体をノズルに向けて送出するように配置されている。コントローラは、好ましくは、ポンプを作動させて作動流体の噴流をノズルに向けて送出するように構成されている。流体供給システムによって生成される作動流体の各噴流の体積は、好ましくは1ml未満、より好ましくは0.5ml未満である。好ましい実施形態では、流体供給システムによって生成される作動流体の噴流の体積は、0.05~0.4mlの範囲である。流体供給システムは、好ましくは、3~10バールの範囲の静圧で作動流体の噴流をノズルに供給するように構成される。
【0035】
伝達ユニットは、好ましくは、流体供給システムの一部を規定する。シャフトは、好ましくは、流体供給システムの一部を規定するボアを含む。
【0036】
器具は、好ましくは、ユーザが治療処理の開始前に器具の作動モードを選択することを可能にするユーザインタフェースを備える。ユーザインタフェースは、器具のハンドル上に配置することができ、好ましくは、少なくとも1つのユーザが操作可能なスイッチまたはボタンを含む。ユーザインタフェースは、選択された作動モードに関する情報を表示するためのハンドル上に配置されたディスプレイを備えることができる。あるいは、器具は、かかる情報を表示するためのディスプレイを有する遠隔装置にワイヤレスで接続されてもよい。遠隔装置は、専用ディスプレイまたは個人用装置の形態をなすのがよい。遠隔装置は、ユーザが器具の作動モードを選択可能にする接触感知式ディスプレイ等のユーザインタフェースも含むことができる。
【0037】
本発明の第1の態様に関連して上記で説明した特徴は、本発明の第2または第3の態様に等しく適用可能であり、逆もまた同様である。
【0038】
次に、本発明の好ましい特徴を、単なる例示として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1(a)は、歯科用クリーニング器具の正面からの斜視図である。図1(b)は、図1(a)の器具の背面からの斜視図である。
図2図2(a)は、図1(a)の器具のブラシユニットの側面図である。図2(b)は、センサおよびブラシユニットのノズルを表示するために一部の毛を省略した、ブラシユニットの斜視図である。図2(c)は、図2(a)の線A-Aに沿った断面図である。
図3】器具の流体供給システムの概略図である。
図4図4(a)は、流体リザーバおよびハンドルの一部を取り外した、図1(a)の器具の一部の正面図である。図4(b)は、図4(a)の器具の一部の側面図である。図4(c)は、図4(a)の器具の一部を上から見た斜視図である。
図5図4(a)の線B-Bに沿った断面図である。
図6図5の一部の拡大図である。
図7図5の線C-Cに沿った断面図である。
図8図8(a)は、ハンドルに対して異なる角度位置にあるときの器具の光学システムのカメラの視野を示す図である。図8(b)は、正弦波としてのカメラの角度移動を示す図である。図8(c)は、正弦波のゼロクロスでの光学システムのLEDのパルスの同期を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1(a)および図1(b)は、歯科用クリーニング器具10の一実施形態の外観を示す。この実施形態では、器具は、隣接歯間クリーニングを改善するために作動流体を分配するための一体的なアセンブリを有する電動歯ブラシの形態である、手持ち式器具の形態である。
【0041】
器具10は、ハンドル12およびクリーニングツール14を備える。ハンドル12は、好ましくはプラスチック材料から形成される外部本体16を備える。本体16は、一般に円筒形である。ハンドル12は、ユーザインタフェースを備える。ユーザインタフェースは、ハンドル12の本体16を把持している手の親指によって押下可能なように、本体16に形成された開口部内に配置された、ユーザが操作可能なボタン18を備える。任意に、ハンドル12は、器具の使用中にユーザに見えるように配置されたディスプレイを含むことができる。器具10は、以下でより詳細に説明するように、ユーザがボタン18および/または遠隔ディスプレイを使用して、器具10の作動モードまたはパラメータを選択することができるように、個人用装置または携帯電話のディスプレイ等の遠隔ディスプレイに接続可能であってもよい。
【0042】
クリーニングツール14は、ステム20およびヘッド22を備える。ステム20は、細長い形状であり、器具10のユーザ操作性を容易にするために、ヘッド22をハンドル12から離間させるのに役立つ。この実施形態では、クリーニングツール14のヘッド22は、毛支持部26と、毛支持部26に取り付けられた複数の毛28のセットとを含む、ブラシユニット24を備える。この実施形態では、ブラシユニット24は、ステム20に強固に接続されている。しかしながら、他の実施形態では、クリーニングツール14は、ブラシユニット24を備えていなくてもよく、それにより、器具は、例えば、ユーザの歯の隙間の間をクリーニングするための、またはユーザの歯にクリーニングまたはホワイトニング媒体を供給するための専用の歯科用治療器具の形態をなしてもよい。他の実施形態では、ブラシユニット24は交換可能であることができる。
【0043】
器具10は、口腔に治療を提供するための歯科治療システムを含む。この実施形態では、歯科治療システムは、作動流体の噴流を口腔に供給して、隣接歯間の隙間にある物質を取り除くように構成されている。しかしながら、歯科治療システムは、ホワイトニング液を供給するように、またはユーザの歯からプラークを除去するように構成されてもよい。歯科治療システムはまた、歯肉炎等の歯肉の炎症または感染症を治療するために、歯肉ラインに作動流体の噴流を供給するように構成されてもよい。図2(a)~図2(c)も参照すると、クリーニングツール14はまた、作動流体を貯蔵するための流体リザーバ30と、器具10の使用中に作動流体をユーザの口腔に供給するためのノズル32とを備える。作動流体は、好ましくは液体作動流体であり、この実施形態では水である。流体リザーバ32は、ハンドル12の端部の周りに延在するようにハンドル12に取り付けられている。ノズル32は、クリーニングツール14のヘッド22に取り付けられている。ブラシユニット24を含むこの実施形態では、毛28は、少なくとも部分的にノズル32の周りに配置されている。ノズル32は、図2(c)に示されるように、ハンドル12の長手方向軸Zにほぼ垂直であるノズル軸Aに沿って延在している。
【0044】
ノズル32は、流体リザーバ30から作動流体を受け取り、器具10の使用中に作動流体の噴流をユーザの口腔に供給するための流体供給システム34の一部を形成する。作動流体の各噴流は、好ましくは、1ml未満、より好ましくは0.5ml未満である容積を有する。流体供給システム34は、図3に概略的に示されている。概観すると、ノズル32の先端は、流体出口36を備えており、そこを通じて作動流体の噴流がユーザの口腔に供給される。流体供給システム34は、流体リザーバ30から作動流体を受け取るための流体入口36を備える。この実施形態では、作動流体は、液体作動流体であり、好ましくは水である。流体入口36は、ハンドル12上、好ましくはハンドル12の本体16の端部上に配置され、流体リザーバ30がハンドル12に接続されるときに流体リザーバ30の流体ポートに接続するように配置されている。以下に説明するように、クリーニングツール14は、ハンドル12から取り外し可能であり、一旦クリーニングツール14がハンドル12から取り外されると、補充のために流体リザーバ30をハンドル12から引き離すことができる。
【0045】
流体供給システム34は、作動流体を流体リザーバ30から流体入口36を通して引き込み、作動流体の噴流をノズル32に供給するためのポンプアセンブリを備える。ポンプアセンブリは、ハンドル12の本体16内に配置されており、容積式ポンプ38と、ポンプ38を駆動するための駆動部とを含む。駆動部は、好ましくは、ポンプ用モータ40を含む。ポンプ用モータ40に電力を供給するためのバッテリ42も、ハンドル12内に配置されている。バッテリ42は、好ましくは、再充電可能なバッテリである。
【0046】
第1の導管44は、流体供給システム34の流体入口36をポンプ38の流体入口46に接続する。第1の一方向弁48は、流体入口36とポンプ38との間に配置され、水がポンプ38から流体リザーバ30に戻るのを阻止する。第2の導管50は、ポンプ38の流体出口52をノズル32に接続する。第2の一方向弁54は、ポンプ38とノズル32との間に配置され、水がポンプ38に戻るのを阻止する。制御回路56は、ポンプ用モータ40の作動を制御し、ポンプ用モータ40および制御回路56は、ポンプ38を駆動するための駆動部を提供する。バッテリ42は、制御回路56に電力を供給する。制御回路56は、ポンプ用モータ40に電力を供給するモータコントローラを含む。
【0047】
制御回路56は、ユーザがユーザインタフェースのボタン18を押下したときに発生させた信号を受信する。制御回路56は、ディスプレイまたは個人用装置等の遠隔装置に信号を送信してもよく、遠隔装置から信号を受信してもよい。この実施形態では、制御回路56はまた、光学システムに信号を送信し、光学システムから信号を受信する。図2(b)および図2(c)を参照すると、光学システムの少なくとも一部は、器具10のヘッド22に、好ましくはブラシユニット24の毛支持部26に取り付けられている。この実施形態では、ノズル32はまた、ブラシユニット24の毛支持部26に取り付けられている。光学システムは、口腔を照明するための複数のLED65と、口腔から光を受け取るための窓66とを備える。受け取った光は、照らされた口腔の画像を撮像するためにカメラ67に運ばれる。窓66は、ノズル32に隣接して配置されるようにヘッド22上に配置される。この実施形態では、窓66は、ノズル32の下に配置され、LED65は、窓66の周りに配置される。窓66とカメラ67との間の光路の長さを最小にするように、カメラ67を器具10のヘッド22に配置してもよい。あるいは、カメラ67は、ハンドル12に配置してもよく、光は、窓66とカメラ67との間に配置された画像化光学系を介して窓66からカメラ67に運ばれる。カメラ67によって生成された画像は、制御回路56に送信される。画像の1つ以上の特徴に応じて、制御回路56がポンプアセンブリを作動させて、作動流体の1つ以上の噴流を口腔に供給する。例えば、カメラ67によって生成された画像は、プラークまたは隣接歯間の隙間、または歯肉ラインの存在を示すことができ、それに応じて、制御回路により口腔を治療するために歯科治療システムを作動させることができる。
【0048】
クリーニングツール14は、ハンドル12に取り外し可能に接続されている。図4(a)~図6も参照すると、ハンドル12は、好ましくは差込み部68の形態を有する雄コネクタを含み、雄コネクタは、好ましくはクリーニングツール14のステム20の凹型コネクタ70の形態を有する相補的な雌コネクタに受け入れられる。差込み部68は、ハンドル12の端部から外方に突出し、好ましくは、ハンドル12の長手方向軸Zに平行に、より好ましくは、ハンドル12の長手方向軸Zと同一直線上に突出する。
【0049】
器具10は、ステム20、かくして毛支持部26をハンドル12に対して移動させる駆動機構を備える。図4(a)~図7を参照すると、駆動機構は、伝達ユニットと、ステム20をハンドル12に対して移動させるように伝達ユニットを駆動する駆動ユニットとを備える。駆動ユニットは、ハンドル12の本体16内に配置された駆動モータ72を備える。制御回路56は、電力を駆動モータ72に供給するモータコントローラを含む。ボタン18はまた、駆動モータ72を作動させたり非作動にしたりするのに使用され、例えば、ボタン18を所定の期間内に所定の回数押下することによって、クリーニングセッションを開始させ、続いて停止させる。あるいは、駆動モータ72を作動させたり非作動にしたりする別個のボタン(図示せず)が設けられてもよい。
【0050】
伝達ユニットは、シャフト74を備え、シャフト74は、ハンドル12に対して振動するように駆動ユニットによって駆動される。差込み部68は、シャフト74に接続され、好ましくは、シャフト74と一体である。駆動ユニットは、好ましくは、シャフト74を振動させるように構成され、それにより、シャフト74は、ハンドル12の長手方向軸Zの周りに、好ましくは200~300Hzの範囲の第1の周波数F1で振動する。この実施形態では、周波数F1は、250Hzである。駆動モータ72は、シャフト74を長手方向軸の周りに、中心位置から角度αだけ遠ざけて回転させるように構成されている。角度αは、好ましくは、5~15度の範囲内にあり、この実施形態では、5度である。駆動ユニットは更に、バネ部材76を含み、バネ部材76は、シャフト74をその中心位置に戻すように駆動シャフト74に係合する。バネ部材76は、駆動シャフト74の両側に配置された一対の捩りバネ78、80を含み、捩りバネ78、80は各々、駆動シャフト74に係合する第1の端部と、支持リング82に取り付けられた第2の端部とを含み、支持リング82は、ハンドル12に連結され、そうでなければ、ハンドル12に対して固定位置に保持される。
【0051】
図8(a)~図8(c)を参照すると、ハンドル12に対するシャフト74のこの移動により、毛支持部26、かくして、毛支持部26に取り付けられたノズル32および光学システムの部分を、それぞれの湾曲した経路に沿って前後に移動させる。図8(a)を参照すると、この実施形態では、毛支持部26は、図8(a)にRで示される第1の角度位置と、図8(a)にLで示される第2の角度位置との間で、ハンドル12の長手方向軸Zの周りを移動させられ、各々、図8(a)にMで示される中心基準位置から角度方向に角度αだけ間隔を空けている。ハンドル12に対する毛支持部26の動きは、図8(b)に示される正弦波Sとして表すことができ、ここで、毛支持部26は、時間t=0、t2、t4、t6等の場合には位置Mにあり、t=tl、t5等の場合には位置Rにあり、t=t3、t7等の場合には位置Lにある。
【0052】
器具10の使用中、駆動信号が制御回路56からLED65に送信され、光学システムによる口腔の照明を作動させる。引き続いて口腔からの反射によって窓66に戻される光を示す光信号が、窓66からカメラ67に伝達される。カメラ67は、受信した光信号から口腔の画像を生成し、生成された画像を制御回路56に送信し、それに応じて、制御回路56がノズル32からの作動流体の供給を作動させる。
【0053】
制御回路56は、ハンドル12の本体16に配置される一方、光学システムの少なくともLED65は、クリーニングツール14の毛支持部26上に配置される。この実施形態では、制御回路56と光学システムとの間に伝達される電気信号の伝達経路は、駆動ユニットに沿って延在している。図6および図7を参照すると、各捩りバネ78、80の第2の端部は、支持リング82上に形成されたそれぞれの回路接点84、86に接続されている。電線(図示せず)が、各回路接点84、86から制御回路56に延在している。捩りバネ78、80の各々の第1の端部は、シャフト74に形成された各シャフト接点88、90に連結される。第1の絶縁スリーブ92が、シャフト74とシャフト接点88、90との間に配置され、シャフト接点88、90をシャフト74から電気的に絶縁する。シャフト接点88、90の各々は、第1の絶縁スリーブ92に沿って延びる導電性トラック98、100によって、それぞれのハンドル接点94、96に連結される。ハンドル接点94、96の各々は、差込み部68上に配置される。第2の絶縁スリーブ102が、導電性トラック98、100の上に配置され、それにより、ハンドル12の種々の異なる電気接点だけが、伝達経路に沿って露出される。クリーニングツール14の凹部コネクタ70は、クリーニングツール14をハンドル12に取付けたときにハンドル接点94、96に係合する1対のクリーニングツール接点を含む(一方を図6において104で示す)。クリーニングツール接点104の各々は、凹部コネクタ70の内周面から内方に突出し、接点104は、電線によってLED65およびカメラ67に連結しており、この場合、カメラ67はブラシヘッド26に配置されている。
【0054】
ポンプ38をノズル32に接続する第2の導管50は、ハンドル12内に配置されたハンドル導管部分と、クリーニングツール14内に配置されたクリーニングツール導管部分とを含む。ハンドル導管部分は、ポンプ38の流体出口52から、差込み部68の端部に配置されたハンドル流体出口106まで延びる。ハンドル導管部分は、シャフト74のボアによって定められる出口部分108を含む。クリーニングツール導管部分は、ステム22のボア110の中をノズル32まで延びる導管(図示せず)を含む。
【0055】
器具10を作動させるために、ユーザが、ボタン18を押下げることによって、器具10のスイッチをオンにすると、制御回路56は、ボタン18の作動を検出する。器具10を使用して治療処理を開始する前、ユーザは、ボタン18、遠隔ディスプレイ、またはボタン18と遠隔ディスプレイとの組合せを使用して、器具10の作動モードを選択することができる。この実施形態では、器具10は、第1の作動モードと第2の作動モードとを有する。
【0056】
第1の作動モードでは、駆動機構は、毛支持部26をハンドル12に対して移動させる。このモードでは、制御回路56は、LED65を作動させて口腔を照らさないので、光学システムによって撮像された画像に基づいてユーザの口腔に作動流体を自動送出することはない。この第1の作動モードの間、ユーザは、ボタン18を所定期間よりも短い間押下げることによって、ノズル32からの作動流体の単一の噴流の送出を行わせることができる。かかる所定期間は、好ましくは、0.5~2秒の範囲であり、この実施形態では、1秒である。ボタン18のこの押下げに応答して、制御回路56は、ポンプ38を作動させ、一定容積の水をポンプ38の流体チャンバからノズル32に押出し、一定容積の水を流体リザーバ30から引くことによって流体チャンバを補充する。
【0057】
第2の動作モードでは、第1の動作モードの機能性に加えて、制御回路56は、LED65を作動させて、光信号を毛支持部26から遠ざかるように、かくして、ユーザの口腔に向けて送信する。口腔から戻ってくる光信号は、窓66によって受信され、カメラ67に伝達される。カメラ67は、カメラのセンサの全ての画素が同時に、かつ同じ期間、例えば30~40ミリ秒にわたり露光されて、画像を撮像するグローバルシャッターカメラの形態であり得る。従って、カメラ67は、毎秒約25~30の画像を撮像することができる。しかしながら、この実施形態では、カメラ67は、ローリングシャッターカメラの形態であり、カメラ67のセンサは、画像を撮像するために漸進的に露光される。センサは、多数の画素の行および列に分割される。撮像中、各画素の行(または列)は同じ期間露光され、各行内の全ての画素は同じ期間露光される。カメラ67が毎秒25枚の画像またはフレームを撮像するこの実施形態では、各画素の列の照明は、画素列が約40ミリ秒の期間にわたって順次露光されるようにずらされる。
【0058】
結果的に、単一の画像の形成中に、毛支持部26、ひいてはLED65および窓66のいくつかの振動が生じる。LED65が撮像中に連続的に照射された場合、これは、口腔のぼやけた画像の生成をもたらす結果となり得、そこから、制御回路56が、治療を必要とする口腔の特徴を識別することは困難であろう。
【0059】
これを考慮して、制御回路56は、LED65を作動させて、第2の周波数F2で口腔を照明して、毎秒複数の照明事象を生成するように構成されている。第1の実施例では、周波数F2はF1と同じであり、この実施形態では250Hzである。図8(c)のトレースPによって示されるように、LED65は、毛支持部26が位置Mにあるとき、従って、時間t=t2、t6等であるときに起動される。結果的に、周囲光レベルを考慮しても、光学システムによって捕捉される光の大部分は、毛支持部26、ひいてはLED65および窓66がハンドル12に対して単一の位置にあるときに生成される。撮像中の口腔に対するハンドル12の僅かな動きを考慮しても、これは、光学システムによって撮像される口腔の比較的静止した画像の効果を有する。カメラ67によって撮像された画像は、制御回路56に送信され、制御回路56は、例えば、撮像された画像をそのメモリに格納された画像と比較することによって、撮像された画像から口腔の治療が必要か否かを決定する。例えば、制御回路56は、作動流体の噴流を隣接歯間の隙間に送出するようにノズル32が配置されていることが撮像された画像から決定されたときに、口腔の治療を作動させることができる。治療が必要な場合、制御回路56は、第1の作動モード中にユーザによってボタン18が押下されるときと同じ方法で、流体治療システム34による口腔の治療を作動させるように構成されている。毛支持部26が位置Mにあるときに口腔の画像が撮像される故、制御回路56は、隙間からのゴミまたは他の物質の除去を最適化するように、好ましくは、毛支持部26が位置Mにあるとき、即ち、口腔の画像が光学システムによって撮像されたときと同じ位置にあるとき、ノズル32からの作動流体の噴流の送出が起こるよう、口腔の治療を作動させるように配置される。
【0060】
第2の実施例では、制御回路56は、LED65を作動させて、第2の周波数F2で口腔を照明するように構成されており、この第2の周波数F2は、毛支持部26がハンドル12に対して移動し、好ましくは、式0<|F1-nF2|<Nによって与えられ、ここで、Nはカメラ67によって1秒あたりに撮像される画像の数であり、nは|F1-nF2|が最小値となるように選択された正の整数である、第1の周波数F1とは異なる。例えば、Fl=250HzおよびN=25フレーム/秒の場合、n=1では、F2は225~275Hzの値から選択することができる。LED65の動きから光学キャビティの照明を非同期化することによって、ユーザが器具10のハンドル12を口腔に対して固定位置に把持している場合でさえ、カメラ67によって撮像された画像をハンドル12に対して、従って口腔に対して、スローモーションで動くように見せることができる。これにより、カメラ67の有効視野を広げることができ、従って、口腔内の治療可能な特徴がカメラ67によって撮像された画像から検出される可能性を増加させることができる。
【0061】
上記の各実施例では、センサの画素列の露光中に、口腔が第2の周波数F2で照射されて、毎秒複数の「照明事象」を生成し、これは、上記の特定の実施例では、毎秒225~275の範囲の照明事象であり得る。これは、毎秒25フレームを撮像するように配置されたカメラ67のセンサの画素列が、口腔から受け取った光に曝されている間、各画素列が複数の照明事象に曝されることを意味する。隣接する画素列が露光される照明事象の数における変動が、撮像された画像にわたるバンドの形成をもたらす可能性がある故、カメラ67は、各画素列が同じ数の照明事象に露光されるように配置することが好ましい。これは、全ての画素列が同じ数の照明事象に露光されるように、各画素列の露光の開始時間を選択することによって、または各画素列の露光期間の持続時間を選択することによって達成することができる。
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】