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特表2023-511907シラン末端ウレタンプレポリマーを含む、ポリウレタンベースの熱界面材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】シラン末端ウレタンプレポリマーを含む、ポリウレタンベースの熱界面材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20230315BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230315BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230315BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20230315BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230315BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20230315BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20230315BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/08 038
C08G18/28 090
C08G18/83 070
C08L75/04
C08K3/016
C08K3/20
C08K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544342
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2021013032
(87)【国際公開番号】W WO2021158336
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,276
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】グルンダー、セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】アーディゾーニ、フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヒレスハイム、ニーナ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK051
4J002CK052
4J002DE146
4J002EH037
4J002EH047
4J002FD027
4J002FD136
4J002GN00
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA44
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034MA03
4J034MA12
4J034QB19
4J034RA12
(57)【要約】
本明細書では、熱界面材料(TIM)組成物であって、熱界面材料の総重量が合計で100重量%になるものとして、a)非反応性ポリウレタンプレポリマーと;b)約70~95重量%の三水酸化アルミニウム(ATH)と;c)約0.15~1.5重量%の少なくとも1種のシラン末端ウレタンプレポリマーと;d)約1~20重量%の少なくとも1種の可塑剤とを含む熱界面材料(TIM)組成物が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱界面材料組成物であって、前記熱界面材料の総重量が合計で100重量%になるものとして、
a)非反応性ポリウレタンプレポリマーであって、i)少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のヒドロキシ基含有化合物との反応生成物であり、及びii)残存イソシアネート基を実質的に含まない非反応性ポリウレタンプレポリマーと;
b)約70~95重量%の三水酸化アルミニウムと;
c)約0.15~1.5重量%の少なくとも1種のシラン末端ウレタンプレポリマーと;
d)約1~20重量%の少なくとも1種の可塑剤と
を含む熱界面材料組成物。
【請求項2】
前記非反応性ポリウレタンプレポリマーは、前記組成物の総重量を基準として約1~25重量%のレベルで存在する、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項3】
前記シラン末端ウレタンプレポリマーは、前記組成物の総重量を基準として約0.15~1.2重量%のレベルで存在する、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項4】
前記シラン末端ウレタンプレポリマーは、前記組成物の総重量を基準として約0.2~0.8重量%のレベルで存在する、請求項3に記載の熱界面材料組成物。
【請求項5】
前記シラン末端ウレタンプレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネート官能化シランと1種以上のポリオールとの反応生成物、少なくとも1種のイソシアネート官能化シランと1種以上のヒドロキシル末端プレポリマーとの反応生成物及び少なくとも1種の求核試薬官能化シランと1種以上のイソシアネート末端プレポリマーとの反応生成物から選択される、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項6】
前記シラン末端ウレタンプレポリマーは、約200~5000の範囲の分子量を有する、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項7】
前記シラン末端ウレタンプレポリマーは、約300~3000の範囲の分子量を有する、請求項6に記載の熱界面材料組成物。
【請求項8】
前記シラン末端ウレタンプレポリマーは、約500~2000の範囲の分子量を有する、請求項7に記載の熱界面材料組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の熱界面材料組成物を含む物品。
【請求項10】
1つ以上の電池セルと冷却ユニットとから形成される電池モジュールを更に含み、前記電池モジュールは、前記熱界面材料組成物を介して前記冷却ユニットに接続される、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱界面材料及び電池式自動車におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動様式と比較して、電池式自動車は、軽量、低減されたCO排出量等などの重要な利点を提供する。しかしながら、この技術の最適な利用を確実にするために、依然として多くの技術的問題を克服する必要がある。例えば、業界における1つの現在の取り組みは、より高い密度の電池を開発することにより、電池式自動車の走行距離を伸ばすことである。また、これは、高密度電池のためのより良好な熱管理システムを開発する必要性につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電池式自動車において、電池セル又はモジュールは、熱界面材料(TIM)によって冷却ユニットに熱的に接続される。そのようなTIMは、典型的には、熱伝導性充填材で充填されたポリマー系材料から形成される。2W/m・K以上の熱伝導率を達成するために、窒化ホウ素又はアルミニウム粉末など、100W/m・K以上の熱伝導率の充填材が使用され得る。しかしながら、そのような充填材は、高価であり、且つ研磨性である。より安価であり且つ非研磨性の代替品は、三水酸化アルミニウム(ATH)であり、ATHの高いローディングのポリウレタンベースのTIMであって、高い熱伝導率及び低い粘度を有するTIMを得ることが達成可能であることが実証されている。しかしながら、そのようなTIMが気候条件下で垂直位置に置かれる場合、それは、滑る傾向があることが分かった。したがって、この滑り問題を解決するために依然として改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、熱界面材料組成物であって、熱界面材料の総重量が合計で100重量%になるものとして、a)非反応性ポリウレタンプレポリマーであって、i)少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のヒドロキシ基含有化合物との反応生成物であり、及びii)残存イソシアネート基を実質的に含まない非反応性ポリウレタンプレポリマーと;b)約70~95重量%の三水酸化アルミニウムと;c)約0.15~1.5重量%の少なくとも1種のシラン末端ウレタンプレポリマーと;d)約1~20重量%の少なくとも1種の可塑剤とを含む熱界面材料組成物が提供される。
【0005】
熱界面材料組成物の一実施形態において、非反応性ポリウレタンプレポリマーは、組成物の総重量を基準として約1~25重量%のレベルで存在する。
【0006】
熱界面材料組成物の更なる実施形態において、シラン末端ウレタンプレポリマーは、組成物の総重量を基準として約0.15~1.2重量%のレベルで存在する。
【0007】
熱界面材料組成物のなおも更なる実施形態において、シラン末端ウレタンプレポリマーは、組成物の総重量を基準として約0.2~0.8重量%のレベルで存在する。
【0008】
熱界面材料組成物のなおも更なる実施形態において、シラン末端ウレタンプレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネート官能化シランと1種以上のポリオールとの反応生成物、少なくとも1種のイソシアネート官能化シランと1種以上のヒドロキシル末端プレポリマーとの反応生成物及び少なくとも1種の求核試薬官能化シランと1種以上のイソシアネート末端プレポリマーとの反応生成物から選択される。
【0009】
熱界面材料組成物のなおも更なる実施形態において、シラン末端ウレタンプレポリマーは、約200~5000の範囲の分子量を有する。
【0010】
熱界面材料組成物のなおも更なる実施形態において、シラン末端ウレタンプレポリマーは、約300~3000の範囲の分子量を有する。
【0011】
熱界面材料組成物のなおも更なる実施形態において、シラン末端ウレタンプレポリマーは、約500~2000の範囲の分子量を有する。
【0012】
本明細書では、上記で提供された熱界面材料組成物を含む物品が更に提供される。
【0013】
物品の一実施形態において、物品は、1つ以上の電池セルと冷却ユニットとから形成される電池モジュールを更に含み、電池モジュールは、熱界面材料組成物を介して冷却ユニットに接続される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、熱界面材料(TIM)組成物であって、熱界面材料の総重量が合計で100重量%になるものとして、a)非反応性ポリウレタンプレポリマーと;b)約70~95重量%の三水酸化アルミニウム(ATH)と;c)約0.15~1.5重量%の少なくとも1種のシラン末端ウレタンプレポリマーと;d)約1~20重量%の少なくとも1種の可塑剤とを含む熱界面材料(TIM)組成物が開示される。
【0015】
本開示に従って、本明細書で使用される非反応性ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物との反応生成物である。加えて、本明細書で使用される非反応性ポリウレタンプレポリマーは、残存イソシアネート基を実質的に含まず、すなわち、プレポリマー中に約0.8重量%未満又は約0.4重量%未満の残存イソシアネート基が存在する。
【0016】
本開示に従って、本明細書で使用されるポリイソシアネートは、多官能性イソシアネート(例えば、ジイソシアネート及びトリイソシアネート)であり、脂肪族、脂環式又は芳香族のポリイソシアネートであり得る。本明細書で使用される例示的な多官能性イソシアネートとしては、限定なしに、エチレンジイソシアネート;ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI);イソホロンジイソシアネート(IPDI);4,4’-、2,2’-及び2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI);ノルボルネンジイソシアネート;1,3-及び1,4-(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン(そのシス-又はトランス-異性体を含む);テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート(TMXDI);1,12-ドデカンジイソシアネート;2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,2’-、2,4’-及び4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI);カルボジイミド変性MDI;2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート(TDI);1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート;1,5-ナフチレンジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート;ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート等が挙げられる。一実施形態において、本明細書で使用されるポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである。更なる実施形において、本明細書で使用されるポリイソシアネートは、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;1,3-(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン;1,4-(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン;又はそれらの2つ以上の混合物から選択される。なおも更なる実施形態において、本明細書で使用されるポリイソシアネートは、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートである。
【0017】
ポリイソシアネートは、約10~60%のパーセントNCO量を有し得る。特定の実施形態において、本明細書で使用されるポリイソシアネートは、少なくとも約2、又は少なくとも約2.2、又は少なくとも約2.4;及び約4以下、又は約3.5以下、又は約3以下の平均イソシアネート官能価を有し得る。更なる実施形態において、ポリイソシアネートの当量は、少なくとも約100、又は少なくとも約110、又は少なくとも約120であり得;及び約300以下、又は約250以下、又は約200以下であり得る。
【0018】
本明細書で使用されるヒドロキシル基含有化合物は、モノール、ジオール、トリオール又はポリオールなどの1つ以上のヒドロキシル基を含有し得る。例示的なヒドロキシル基含有化合物としては、限定なしに、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アルコール等が挙げられる。一実施形態において、ヒドロキシル基含有化合物は、1つ以上の末端ヒドロキシル基を含有するポリエーテル、すなわちポリエーテルポリオールである。本明細書で使用される例示的なポリエーテルポリオールとしては、限定なしに、i)アルコキシル化アルコール(アルコキシル化剤は、エチレンオキシド、プロピレオキシド若しくはブチレンオキシドであり、開始アルコールは、メタノール、エタノール、ブタノール若しくはより長い脂肪族アルコールである)などのモノール又は脂肪酸ベースのアルコール;ii)1,4-ブタンジオールなどのジオール;iii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリブチレンオキシドをベースとするポリエーテルポリオール等が挙げられる。本明細書で使用されるヒドロキシル基含有化合物は、約1~7、又は約1~5、又は約1~3、又は約1~2の官能価及び約90~5000、又は約90~3000、又は約90~2000の分子量を有し得る。
【0019】
ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有化合物と一緒に、追加の添加剤も、非反応性ポリウレタンプレポリマーを調製するときに添加され得る。これらとしては、触媒、鎖延長剤、架橋剤、充填材、水分捕捉剤、着色剤等が挙げられる。特に、多数の脂肪族及び芳香族アミン(例えば、ジアミノビシクロオクタン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO等))、有機金属化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジブチルスズジアセテート)、カルボン酸及びフェノール類のアルカリ金属塩(ヘキサン酸、オクタン酸、ナフテン酸、リノレン酸のカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、塩)が触媒として使用され得る。
【0020】
加えて、残存イソシアネート基を実質的に含まない非反応性ポリウレタンプレポリマーを得るために、化学量論量又過剰の化学量論量のヒドロキシル基含有化合物が反応に使用される必要があり、すなわち、ヒドロキシル基含有化合物中の-OH基対ポリイソシアネート中の-NCO基の比率は、1以上である。非反応性ポリウレタンプレポリマーの調製は、少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物と、触媒などの他の添加剤とを一緒に混合すること;反応混合物を約20~80℃で約10~60分間にわたり、窒素雰囲気下又は真空下で撹拌すること;反応生成物を室温まで冷却すること;及び反応生成物を密封容器中に入れ、保管することを含む。
【0021】
本明細書で使用される非反応性ポリウレタンプレポリマーは、約2,000~50,000g/mol、又は約3,000~30,000g/mol、又は約4,000~15,000g/molの範囲の分子量を有し得る。
【0022】
本開示に従って、非反応性ポリウレタンプレポリマーは、組成物の総重量を基準として約1~25重量%、又は約2~20重量%、又は約5~15重量%のレベルでTIM組成物中に含まれ得る。
【0023】
本明細書で使用されるATHは、一峰性ATH粉末又は多峰性粒度分布(例えば二峰性、三峰性等)を有するATH粉末であり得る。一峰性ATH粉末が使用される場合、平均粒子サイズは、約5~100μmの範囲であり得る。また、多峰性ATH粉末が使用される場合、最も小さい粒子の平均粒子サイズは、約10μm未満であり得る一方、最も大きい粒子の平均粒子サイズは、約50μm超であり得る。加えて、本明細書で使用されるATH粉末は、シラン、チタン酸塩、カルボン酸塩等でも表面処理され得る。
【0024】
本開示に従って、ATH粉末は、約70~95重量%、又は約75~90重量%、又は約80~85重量%のレベルで組成物中に含まれ得る。
【0025】
シラン末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基のいくらか又は全てがオルガノシランでエンドキャップされているウレタンプレポリマーである。シラン末端ウレタンプレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネート官能化シランを1種以上のポリオールと反応させるか、又は少なくとも1種のイソシアネート官能化シランを1種以上のヒドロキシル末端プレポリマーと反応させるか、又は少なくとも1種の求核試薬官能化シラン(例えば、アミノシラン、メルカプトシラン等)を1種以上のイソシアネート末端プレポリマーと反応させることによって調製され得る。プレポリマーは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミン又はポリアミド、ポリビニルエステル、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリオレフィン、ポリシロキサン及びポリシロキサン-尿素/ウレタンコポリマーからなる群から選択することができる。本明細書で使用されるシラン末端ウレタンプレポリマーは、約200~5000、又は約300~3000、又は約500~2000の範囲の分子量を有し得る。
【0026】
好適なシラン末端ウレタンプレポリマーは、欧州特許第1924621号明細書並びに米国特許第3,933,756号明細書;同第5,756,751号明細書;同第6,288,198号明細書;同第6,545,087号明細書;同第6,703,453号明細書;同第6,809,170号明細書;同第6,833,423号明細書;同第6,844,413号明細書;同第,887,964号明細書;同第6,998,459号明細書;同第7,115,696号明細書;同第7,465,778号明細書;同第7,060,750号明細書;及び同第7,309,753号明細書に開示されているもののいずれでもあり得、これらの特許は、参照により本明細書に援用される。好適なシラン末端ウレタンプレポリマーは、市販されてもいる。例えば、それらは、商品名DesmosealTMでCovestroから、又は商品名MS PolymerTMでカネカから、又は商品名SPUR+*でMomentiveから入手され得る。
【0027】
本開示に従って、少なくとも1種のシラン末端ウレタンプレポリマーは、組成物の総重量を基準として約0.15~1.5重量%、又は約0.15~1.2重量%、又は約0.2~0.8重量%のレベルでTIM組成物中に含まれ得る。
【0028】
本明細書で開示されるTIM組成物は、組成物の総重量を基準として約1~20重量%、又は約2~15重量%、又は約3~10重量%の少なくとも1種の可塑剤を更に含む。可塑剤は、当技術分野において周知であり、最終組成物の相溶性及び所望の特性(例えば、粘度)などのパラメーターに従って好適な可塑剤を選択することは、当業者の能力内にある。
【0029】
一般に、好適な可塑剤としては、アジピン酸、アゼライン酸、安息香酸、クエン線、ダイマー酸、フマル酸、イソ酪酸、イソフタル酸、ラウリン酸、リノール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メリシン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リン酸、フタル酸、リシノール酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸等、及びそれらの混合物のような酸及び無水物のエステル誘導体が挙げられる。エポキシ化油、グリセロール誘導体、パラフィン誘導体、スルホン酸誘導体等、及びそれらと前記誘導体との混合物も好適である。そのような可塑剤の具体的な例としては、ジエチルヘキシルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、アジピン酸ポリエステル、ジカプリルアジペート、ジメチルアゼレート、ジエチレングリコールジベンゾエート及びジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、メチル(又はエチル又はブチル)フタリルエチルグリコレート、トリエチルシトレート、ジブチルフマレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、メチルラウレート、メチルリノレエート、ジ-n-ブチルマレエート、トリカプリルトリメリテート、ヘプチルノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、イソプロピルミリステート、ブチルオレエート、メチルパルミテート、トリクレジルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ヘプチルノニルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート、o-フタル酸のn-ブチルベンジルエステルなどのブチルベンジルフタレート、イソデシルベンジルフタレート、アルキル(C7/C9)ベンジルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、7-(2,6,6,8-テトラメチル-4-オキサ-3-オキソ-ノニル)ベンジルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ブチルリシノレエート、ジメチルセバケート、メチルステアレート、ジエチルスクシネート、1,2-ベンゼンジカルボン酸のブチルフェニルメチルエステル、エポキシ化アマニ油、グリセロールトリアセテート、約40%~約70%のClを有するクロロパラフィン、o,p-トルエンスルホンアミド、N-エチルp-トルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシルp-トルエンスルホンアミド、スルホンアミド-ホルムアルデヒド樹脂及びそれらの混合物が挙げられる。当業者に公知の他の好適な可塑剤としては、単独で又は他の可塑剤との混合物として、ヒマシ油、芳香族石油縮合物、部分水素化テルフェニル、ジメチコンコポリオールエステルなどのシリコーン可塑剤、ジメチコノールエステル、シリコーンカルボキシレート、ガーベットエステル等が挙げられる。
【0030】
加えて、最大で約10重量%、又は約1~10重量%、又は約2~7重量%、又は約2~5重量%の沈澱炭酸カルシウムがTIM組成物に添加され得る。いかなる特定の理論にも制約されることなく、任意選択の沈澱炭酸カルシウムの添加は、ATHの沈降防止を改善し得ると考えられる。
【0031】
更に、本明細書に開示されるTIM組成物は、触媒、安定剤、接着促進剤、充填材、着色剤等などの他の好適な添加剤を任意選択で更に含み得る。そのような任意選択の添加剤は、TIM組成物の総重量を基準として最大で約10重量%、又は最大で約8重量%、又は最大で約5重量%のレベルで存在し得る。
【0032】
実施例によって以下で実証されるように、垂直に置かれた場合、シラン末端ウレタンプレポリマーなしのTIMは、気候条件への暴露後に滑る傾向があるが、0.1重量%超のシラン末端ウレタンプレポリマーのTIM組成物への添加は、滑り問題を解決する。更に、可塑剤なしでは、TIMは、余りにも粘性があり、役立たなかったことを示す。
【0033】
本明細書では、冷却ユニット又はプレートが上記のTIM組成物を介して電池モジュール(1つ以上の電池セルから形成される)に結合され、それにより、熱がそれらの間で伝導され得る、電池パックシステムが更に開示される。一実施形態において、電池パックシステムは、電池式自動車で使用されるものである。
【実施例
【0034】
材料
・HDI - 商品名DesmodurTMHでCovestroから入手したヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI);
・モノール - Dow,Inc.から入手したC12~C14脂肪アルコール開始完全プロポキシル化(プロピレンオキシドで)モノール(MW 935g/mol、OH価:60.4、当量:927);
・ポリオール - Dow Inc.から入手したポリプロピレンオキシドポリオール(官能価:2、MW:1000g/mol);
・触媒 - 商品名DABCOTMT-12でEvonikから入手したジブチルスズジラウレート(DBTDL);
・STP - 商品名DesmosealTMS XP 2636でCovestroから入手した脂肪族シラン末端ウレタンプレポリマー;
・可塑剤 - トリメチロールプロパントリオレエート;
・ATH - 10μm未満の小さい粒子の平均粒子サイズ及び50μm超の大きい粒子の平均粒子サイズの二峰分布の三水酸化アルミニウム;
・ポリエステルポリオール-1 - 商品名DynacolTM7381でEvonikから入手した65℃の融点のポリエステルポリオール;
・ポリエステルポリオール-2 - Perstorp製の45℃の融点のポリエステルポリオール;
・ポリエステルウレタンプレポリマー - ジイソノニルフタレートの存在下での4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートとポリエステルポリオール(ポリエステルポリオール-1)との反応生成物;
・シラン-ビニルトリメトキシシラン。
【0035】
非反応性ポリウレタンプレポリマー
非反応性ポリウレタンプレポリマーPre-1及びPre-2は、次のとおり調製した:反応器中において、触媒を除いて、表1に列挙されるような全ての成分を混合し;反応器を60℃に加熱し;触媒を混合物に添加し;混合物を窒素雰囲気下において80℃で45分間、次いで真空下において10分間撹拌し;無色の反応生成物を室温に冷却し;及び生成物を容器に移す。Pre-1及びPre-2の質量加重分子量(Mw)及び多分散指数(PDI)は、Malvern Panalytical製のViscotek GPCmaxを用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例CE1~CE5及び実施例E1~E7
サンプル調製
比較例CE1~CE5及び実施例E1~E7のそれぞれにおいて、表2に列挙されるような全ての成分(最初に液体成分、次いで固体成分)をプラネタリーミキサー又は二重非対称遠心分離機に添加し、真空下で約30分間混合し、結果として生じたTIM(ペースト形態の)を保管のためのカートリッジ、ペール又はドラムに移した。
【0038】
熱伝導率
各サンプルにおいて得られたTIMペーストについての熱伝導率は、ZFW Stuttgart製のTIMテスターを用いてASTM 5470に従って測定した。測定は、厚さ1.8~1.2mmでSpaltplusモードにおいて行い、絶対熱伝導率λ(W/m・K)を記録した。
【0039】
圧入力
各サンプルにおけるTIMペーストについての圧入力は、張力計(Zwick)を用いて測定した。各サンプルからのTIMペーストを金属表面上に置いた。直径40mmのアルミニウムピストンをサンプルペーストの最上部上に置き、サンプルペーストを5mm(初期厚さ)まで圧縮した。次いで、サンプルペーストを1mm/sの速度で0.3mmの厚さまで更に圧縮し、力のたわみ曲線を記録した。0.5mmの厚さにおける力(N)を圧入力として記録した。
【0040】
粘度
粘度は、23℃においてプレート-プレート配置(25mm直径平行プレート)のレオメーターで回転レオロジーによって測定した。せん断速度を0.001から20 1/sまで駆動し、10 1/sでの粘度を報告した。初期粘度は、TIMの塗布の直後に測定した一方、7日気候変化後の粘度は、TIMを気候変化条件に7日間曝した後のTIMの粘度であり、ここで、各サイクルは、完了するのに12時間を要し、-40℃(非制御湿度)での4時間、温度を80℃に調整するための4時間及び80重量%の相対湿度での80℃で4時間からなった。
【0041】
滑り試験
滑り試験中、各サンプルにおけるTIMを2つの基材(電着スチール基材及びガラス基材)間に置いた一方、圧縮されたTIMの厚さを、スペーサーを用いて約3mmに制御した。次いで、サンドイッチサンプルを気候室中で気候変化条件に20°の角度で4週間曝した。その後、サンプルを滑り及び亀裂形成について観察した。
【0042】
E1~E7によって本明細書で実証されるように、0.25重量%以上のSTPの添加により、TIMは、目に見える亀裂を全く示さず、且つ1mm未満の滑りを示す。加えて、CE4によって示されるように、可塑剤の不在は、TIM組成物が余りにも高くて役立たない粘度を有する原因となった。
【0043】
【表2】
【国際調査報告】