IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワシントン・ユニバーシティの特許一覧

<>
  • 特表-可変剛性カテーテルおよびその方法 図1
  • 特表-可変剛性カテーテルおよびその方法 図2
  • 特表-可変剛性カテーテルおよびその方法 図3A
  • 特表-可変剛性カテーテルおよびその方法 図3B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】可変剛性カテーテルおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230315BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61M25/00 610
A61M25/00 624
A61M25/092 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544843
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021014895
(87)【国際公開番号】W WO2021151070
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/965,525
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ルーサート,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ジェニン,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ザイード,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】オズバン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ハートクィスト,チェイス
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,ハル
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン,ビナイ
(72)【発明者】
【氏名】ハーフェズ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA28
4C267BB07
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB40
4C267BB52
4C267BB70
4C267CC08
4C267GG02
4C267GG24
4C267HH30
(57)【要約】
本開示は、可変剛性カテーテルを提供する。カテーテルは、内腔を形成する内層と、前記内層を取り囲む中間層と、前記中間層を取り囲む外層とを含み得る。前記中間層は、環状内腔と、前記環状内腔内に複数のストリングとを含んでもよく、前記複数のストリングは、前記内層に接続してもよい。真空を適用して前記中間層の前記環状内腔を排気すると、前記内層と前記外層の間の摩擦抵抗が変化し、それによってカテーテルの曲げ剛性が変化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔を形成する内層と、
環状内腔を形成し前記内層を取り囲む中間層であって、前記環状内腔は真空源に流体接続される、中間層と、
前記中間層を取り囲む外層と、を含み、
真空を適用して前記中間層の前記環状内腔を排気すると、前記内層と前記外層の間の摩擦抵抗または粘着力が変化し、それによってカテーテルの曲げ剛性が変化する、可変剛性カテーテル。
【請求項2】
前記中間層は、真空が適用されていないときは低い曲げ剛性またはせん断抵抗を有し、真空が適用されているときは高い曲げ剛性またはせん断抵抗を有する、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項3】
前記カテーテルの前記低い曲げ剛性またはせん断抵抗は、真空源に接続する前記環状内腔の連続的な完全マイクロ流体開通性に依るものあり、
前記カテーテルの前記高い曲げ剛性またはせん断抵抗は、前記真空源が適用されるときに生じる摩擦または粘着力に依るものである、請求項2に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項4】
前記中間層の前記環状内腔の排気が、前記中間層の曲げ剛性または粘着力を変化させる、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項5】
前記中間層の前記環状内腔の排気は、前記内層と前記中間層と前記外層とが単層であるかのように屈曲することを可能にする摩擦抵抗または粘着力の増加をもたらし、それによって前記内層と前記中間層と前記外層との曲げ剛性を、それらの曲げ剛性の合計を超えて増加させる、請求項4に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項6】
前記中間層上における前記内層および前記外層の接触面の間に可変の摩擦抵抗または粘着力が存在する、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項7】
前記カテーテルは、前記カテーテルの近位端と遠位端との間で、前記カテーテルの長さに沿って可変剛性を有する、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項8】
前記カテーテルは、前記カテーテルの長さの、1つまたは2つ以上の部分に沿って可変剛性を有している、請求項7に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項9】
前記カテーテルの前記可変剛性を有する部分の位置は、特定の外科処置に最適化されている、請求項8に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項10】
前記可変剛性は、前記カテーテルの長さの、1つまたは2つ以上の部分の非対称な側面に沿っている、請求項7に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項11】
複数のストリングが前記環状内腔内にある、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項12】
前記複数のストリングは、前記内層の長さに沿って、らせん構成または直線構成である、請求項11に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項13】
前記内層は、相対的に柔軟ではなく、前記外層は、相対的に柔軟である、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項14】
前記内層は、その外面にブレードをさらに含む、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項15】
前記外層を取り囲むケーシングをさらに含む、請求項1に記載の可変剛性カテーテル。
【請求項16】
患者の橈骨動脈を通して請求項1に記載の可変剛性カテーテルを挿入すること、および
前記可変剛性カテーテルを前記患者の血管系を通してナビゲートすること、ここで、前記可変剛性カテーテルは低い曲げ剛性を有する、
を含む、経橈骨介入を提供する方法。
【請求項17】
環状内腔に真空源を流体接続すること、
内層と外層とを一緒に圧縮して高い曲げ剛性を生成するために、前記環状内腔に真空を適用すること、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記可変剛性カテーテルの内腔を通して医療デバイスを挿入することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記医療デバイスは、神経血管、身体血管、または肺血管の医療デバイスである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
可変剛性カテーテルは、橈骨に挿入されたときに、血管系におけるヘルニアおよび座屈を低減するように動作可能である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、35USCセクション119(e)に基づき、2020年1月24日に出願された米国特許出願第62/965,525号基づく優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
[技術分野]
本開示は、一時的に剛性を変更できるカテーテル(一時的可変剛性カテーテル:temporally variable stiffness catheter)およびその使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
過去数十年にわたって、内臓末梢動脈(visceral peripheral arterial)、神経血管動脈(neurovascular arterial)、および静脈分枝への挿管(cannulations)の進歩は、利用可能な血管内デバイスの進化とともに発展してきた。現在でも、非常に曲がりくねって角ばった血管系では困難である。このため、互いに前進させて段階的に硬くするための複数のカテーテルおよびシースと、遠位の標的血管にデバイスを進入させるための軸システムとを使用する必要性がある。現在、主にカテーテル挿入が困難な末梢血管系の分岐血管には、これに限定されないが、腹腔動脈、腎動脈、上腸間膜動脈/静脈、脾動脈/静脈、胃十二指腸動脈/静脈、肝動脈/静脈、蛇行大腿動脈/静脈、遠位脛骨動脈/静脈、および大腿深動脈/静脈の分枝がある。同様に、神経血管樹(neurovascular tree)へのカテーテル挿入は、内外頸動脈とその頭蓋内枝、および椎骨動脈へのアクセスという点で非常に困難な場合がある。
【0004】
現在、外科医は、手術中のナビゲーション(操作または誘導:navigation)とサポートを提供するために、カテーテルの同軸システムを使用している。柔軟な中間ガイドカテーテルは、血管系をナビゲート(操作または誘導:navigate)するためにガイドワイヤーを取り囲むように導入される。ガイドカテーテルを所定位置に置いたら、その外側に沿って、より大きく硬いシースを同軸的に押し出して、システムが医療デバイスを脳または末梢の血管樹(brain or peripheral vascular tree)に送るためのサポートを提供する。シースがガイドカテーテルを覆うように同軸的に移動する際に、硬いシースが柔軟なガイドカテーテルをその経路から押し退けてしまい、ヘルニア(herniation)が発生する。介入(intervention)中のサポートとしてシースを使用しない場合も、ヘルニアが発生し得る--医療デバイスがガイドカテーテルを通過する際に、医療デバイスはガイドカテーテルに対して、上行大動脈弓または下行大動脈弓内でヘルニアを起こすだろう。現在のカテーテルの別の問題は座屈(buckling)である。座屈は、医療デバイスによってカテーテルがねじれたり、通過するには急すぎる曲がりが生じたりするときに起こる。
【0005】
このように、橈骨、尺骨、大腿骨、膝窩、頸動脈、頸静脈、および足のアクセスから血管系をナビゲートするのに十分な柔軟性と、カテーテルを通過する医療デバイスのサポートを提供するのに十分な剛性を有する可変剛性カテーテル(a variable stiffness catheter)の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、可変剛性カテーテルを提供する。可変剛性カテーテルは、内腔(inner lumen)を形成する内層と、環状内腔(annular lumen)を形成し前記内層を取り囲む中間層であって、前記環状内腔は真空源に流体接続(または、流体流通的に接続:fluidly connected)される、中間層と、前記中間層を取り囲む外層とを含み得る。真空を適用して前記中間層の前記環状内腔を排気すると、前記内層と前記外層の間の摩擦抵抗または粘着力(または付着力:adhesion)が変化し、それによってカテーテルの曲げ剛性が変化する。前記中間層は、真空が適用されていないときは低い曲げ剛性またはせん断抵抗を有し、真空が適用されているときは高い曲げ剛性またはせん断抵抗を有し、前記カテーテルは、前記カテーテルの近位端と遠位端との間で、前記カテーテルの長さに沿って可変の剛性(可変剛性)を有する。いくつかの態様において、前記中間層の前記環状内腔の排気(または真空化)は、前記中間層の曲げ剛性または粘着力を変化させる。前記中間層の前記環状内腔の排気は、前記内層と前記中間層と前記外層とが単層であるかのように屈曲(または撓む:flex)することを可能にする摩擦抵抗または粘着力の増加をもたらし、それによって前記内層と前記中間層と前記外層との曲げ剛性を、それらの曲げ剛性の合計を超えて増加させる。前記中間層上における前記内層および前記外層の接触面の間に、可変の摩擦抵抗または粘着力が存在してもよい。低い曲げ剛性またはせん断抵抗は、真空源に接続する前記環状内腔の連続的な完全マイクロ流体開通性(continuous full microfluidic patency)に依るものであってもよく、カテーテルの高いせん断剛性(shear rigidity)は、真空源が適用/作動されるときに生じる摩擦または粘着力に依るものであってもよい。前記カテーテルは、前記カテーテルの長さの一部で可変剛性を有してもよい。前記カテーテルは、前記カテーテルの近位端と遠位端との間で、前記カテーテルの長さに沿って可変剛性を有してもよい。前記カテーテルは、前記カテーテルの長さの、1つまたは2つ以上の部分に沿って可変剛性を有してもよい。前記カテーテルの可変剛性を有する部分の位置は、脳卒中の治療、生理学的モニタリング、血栓除去術、アテローム切除術、ステント留置術、バルーン治療、塞栓術、アブレーション、デバイスの移植、診断評価、PE、動脈/静脈血栓、動脈瘤治療、損傷した動脈および静脈の治療、脳卒中治療による神経障害(または、脳卒中を治療するための神経疾患:neurologic disorders to treat stroke)、パーキンソン病、出血の制御、および/または透析アクセス治療などの特定の外科処置に最適化することができる。前記中間層は、前記環状内腔内に複数のストリング(または紐:strings)を含んでもよい。前記複数のストリングは、前記内層の長さに沿って、らせん構成(a spiral formation)または直線構成(linear formation)であってもよい。前記複数のストリングは、非対称に配置、分布、または配向されてもよい。前記カテーテルは、前記カテーテルの前記近位端から前記遠位端まで可変剛性を有してもよい。さらに、可変剛性の態様は、カテーテルの一部(例えば、カテーテルの側面、または片側)で非対称であってもよく、操作時に優先的に曲げたりまっすぐにしたりすることができる。前記カテーテルは、前記カテーテルの長さの、1つまたは2つ以上の部分に沿って非対称またはらせん状である可変剛性を有してもよい。構造化は、規定された領域にわたってカテーテルの固定、湾曲、またはねじれを増大させるような、カテーテルの屈曲を誘発するようなものであってもよい。カテーテルの固定、湾曲、またはねじれは、中間層の真空を解放することによって作動させることができる。
【0007】
別の態様では、可変剛性カテーテルは、内腔を形成する内層と、内層を取り囲む中間層であって、環状内腔と前記環状内腔内の複数のストリングとを有する中間層と、前記中間層を取り囲む外層とを含み得る。可変剛性カテーテルは、低剛性構成(a low stiffness configuration)と、前記中間層への真空の作動時に高剛性構成(a high stiffness configuration)と、を有するように動作可能であってもよい。前記カテーテルは、前記カテーテルの一部で可変剛性を有してもよい。前記カテーテルの可変剛性を有する部分の位置は、脳卒中の治療、生理学的モニタリング、血栓除去術、アテローム切除術、ステント留置術、バルーン治療、塞栓術、アブレーション、デバイスの移植、診断評価、PE、動脈/静脈血栓、動脈瘤治療、損傷した動脈および静脈の治療、脳卒中治療による神経障害、パーキンソン病、出血の制御、および/または透析アクセス治療などの特定の外科処置に最適化することができる。前記内層は、相対的に柔軟ではなく(relatively non-compliant)、前記外層は、相対的に柔軟(relatively compliant)であってもよい。前記複数のストリングは、前記内層の長さに沿って、らせん構造または直線構造である。複数のストリングは、非対称に配置、分布、または配向されてもよい。いくつかの態様では、前記内層は、その外面にブレード(細帯:braid)をさらに含んでもよい。追加の態様では、前記外層はコーティングを含んでもよい。さらなる態様では、可変剛性カテーテルは、前記中間層の環状内腔に流体接続された真空源をさらに含んでもよい。可変剛性カテーテルは、真空源が作動していないときは低剛性構成にあり、真空源が作動しているときは高剛性構成にある。前記内層と前記複数のストリングと前記外層とは、高剛性構成においては、一緒に圧縮されてもよい。前記内腔は、神経血管、身体血管、または肺血管の医療デバイスを受容するように動作可能である。可変剛性カテーテルは、橈骨に(または半径方向に:radially)挿入されたときに、血管系におけるヘルニアおよび座屈を低減するように動作可能であってもよい。
【0008】
本開示はまた、経橈骨介入(transradial interventions)を提供する方法も提供する。この方法は、可変剛性カテーテルを、患者の橈骨動脈、尺骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、頸動脈、または足動脈(pedal artery)を通して挿入すること、および可変剛性カテーテルが低い曲げ剛性またはせん断抵抗を有するときに可変剛性カテーテルを患者の血管系を通してナビゲートすることを含んでもよい。この方法は、可変剛性カテーテルの環状内腔に真空源を流体接続すること、内層と複数のストリングと外層とを一緒に圧縮して高い曲げ剛性またはせん断抵抗を生成するために、環状内腔に真空を適用することをさらに含んでもよい。いくつかの態様では、方法は、可変剛性カテーテルの内腔を通して医療デバイスを挿入することをさらに含んでもよい。医療デバイスは、神経血管、身体血管、または肺血管の医療デバイスであってもよい。可変剛性カテーテルの内層は、相対的に柔軟ではなく、可変剛性カテーテルの外層は、相対的に柔軟であってもよい。可変剛性カテーテルは、内層がその外面にブレードをさらに含んでもよく、および/または外層を取り囲むケーシングをさらに含んでもよい。いくつかの態様では、可変剛性カテーテルは、橈骨に(または半径方向に:radially)挿入されたときに、血管系におけるヘルニアおよび座屈を低減するように動作可能であってもよい。
【0009】
追加の実施形態および特徴は、以下の説明で部分的に示され、明細書の検討により当業者に明らかになるか、または開示された主題の実践によって知ることができるだろう。本開示の本質および利点のさらなる理解は、本開示の一部を形成する明細書の残りの部分および図面を参照することによって実現され得る。
【0010】
説明は、以下の図およびデータグラフを参照してより完全に理解されるものであり、それらは本開示の様々な実施形態として提示されており、本開示の範囲の完全な記載であると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一例として、可変剛性カテーテルを示す。
図2図2は、一例として、可変剛性カテーテルの断面図の一部を示す。
図3A図3Aは、一例として、可変剛性カテーテルの低剛性構成における断面図を示す。
図3B図3Bは、一例として、可変剛性カテーテルの高剛性構成における断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、以下に説明する図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによって理解され得る。図示を明確にする目的のために、様々な図面における特定の要素は縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。本明細書には、デバイスのいくつかの変形例が提示される。異なる変形例の様々な構成要素、部品、および特徴は、共に組み合わせても、および/または互いに入れ替えてもよく、すべての変形例および特定の変形例が図面に示されていないとしても、これらすべてが本願の範囲内であると理解されたい。当業者であれば、別段の記載がない限り、ある変形例の特徴、要素、および/または機能を、適宜、別の変形例に組み込み得ることを本開示から理解するように、本明細書においては、様々な変形例の間での特徴、要素、および/または機能の混合及びマッチングが明示的に企図されていると理解されたい。
【0013】
本開示を通して適用されるいくつかの定義をここで提示する。本明細書で使用される場合、「約」は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、整数、分数、パーセンテージなどを含む数値を指す。「約」という用語は、一般的に数値の範囲を指し、例えば、記載された値の±0.5~1%、±1~5%、または±5~10%であり、記載された値と同等であるとみなされ、例えば同じ機能または結果を有する。
【0014】
「含む(comprising)」という用語は、「含むが、必ずしもそれに限定されない」ことを意味し、具体的には、そのように記述された組み合わせ、群(グループ)、一連(シリーズ)などの、オープンエンドな包含または構成要素を示す。本明細書で使用される「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、包括的および/またはオープンエンドであり、追加の、記載されていない要素または方法プロセスを排除しない。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」よりも制限的であるが、「からなる(consisting of)」よりは限定的ではない。具体的には、「本質的に~からなる」という用語は、構成要素を、特定の材料または工程(ステップ)と、クレームされた発明の本質的な特徴に実質的に影響を与えないものと、に限定する。
【0015】
血管内カテーテルは、患者内の標的部位までナビゲートする必要があり、標的部位に到達したら、カテーテル(またはカテーテルシステム)は、ステント、バルーン、血栓除去デバイス、嚢内動脈瘤閉塞デバイス、コイル、血行動態モニタリングデバイス(hemodynamic monitoring devices)などの医療デバイスを十分にサポートする必要がある。柔軟なカテーテルシステム(または、コンプライアントカテーテルシステム)を使用して介入を行う場合、カテーテルは、適切なサポートを提供できない可能性が高い。したがって、介入を実行するためには、硬くて支持力のあるカテーテルが必要であり、特に、神経血管外科医、血管外科医、心臓専門医、介入(インターベンション)放射線科医、およびその他の介入(インターベンション)専門医によって行われる繊細で正確な手術では、それらは重要である。しかしながら、カテーテルの剛性、つまり安定性を高めると、動脈および静脈の血管系をうまくナビゲートする能力が低下する。
【0016】
柔軟なカテーテルに十分な外力が作用すると、ねじれ、座屈、またはヘルニアなどによって変形し得る。硬いカテーテルは、その内腔を通って医療デバイスを前進させるための安定したプラットフォームを提供するが、剛性が高くなるため操縦が難しくなる。
【0017】
本明細書に開示されるのは、一時的に変更可能な剛性を有するカテーテルである。可変剛性カテーテルは低剛性構成と高剛性構成を有し、血管系におけるヘルニアおよび座屈を防止するだけでなく、医療デバイスを前進させるための構造も提供する。真空作動を使用することで、カテーテルの慣性特性を変更し、その曲げ剛性またはせん断抵抗の変化を最大化して、低剛性構成(たとえば、柔軟な状態または非作動状態)と、高剛性構成(例えば、硬い状態または作動状態)との間で可変な剛性を、オンデマンド(要求に応じて:on demand)で提供することができる。可変剛性は、血管系をナビゲートするのに十分な柔軟性/可撓性と、カテーテルを通過する医療デバイスを支持するのに十分な剛性とによって、カテーテルを橈骨アクセスで使用できる。様々な実施形態において、カテーテルは、経橈骨での神経血管、身体血管、または肺血管への介入において使用されてもよい。たとえば、カテーテルは、血管系をナビゲートして脳に到達するために、低剛性構成で開始してもよい。その後、外科医がインデフレーター(indeflator)、または標準的な手術室にある他の負圧デバイスまたは真空デバイスを使用してカテーテルを作動させて、医療デバイスをサポートするため所望の硬さ変化に到達させることができる。カテーテルは、血管内用途、神経血管用途、および非神経血管用途に使用することができる。いくつかの非限定的な例では、カテーテルは、脳血管、肺動脈、末梢血管用途に使用されてもよく、または直径1mm~25mmの範囲の他の動脈および静脈構造に使用されてもよい。
【0018】
ある実施形態では、図1に見られるように、可変剛性カテーテル100は、サポートされた内層102と、柔軟な外層108と、内層と外層との間の環状内腔107に配置された「ストリング」105の中間層106を含むことができる。いくつかの例では、カテーテルは、外層108を取り囲むコーティング110をさらに含んでもよい。カテーテル100は、低剛性構成と、中間層に対する真空の作動に基づいて変更され得る高剛性構成とを有してもよい。
【0019】
例えば、可変剛性カテーテル100は、内腔を形成する内層102と、内層102を取り囲む中間層106と、中間層106を取り囲む外層108とを含む。中間層102は、環状内腔を形成することができる。中間層106の環状内腔は、真空源に流体接続されてもよく、真空が作動していないときは、中間層は低い曲げ剛性またはせん断抵抗を有し、真空が作動しているときは、高い曲げ剛性またはせん断抵抗を有する。中間層上における内層および外層の接触面の間に可変の摩擦抵抗または粘着力が存在してもよい。したがって、真空を適用して中間層の環状内腔を排気すると、内層と外層の間の摩擦抵抗または粘着力が変化し、それによってカテーテルの曲げ剛性が変化する。中間層は、真空が適用されていないときは低い曲げ剛性またはせん断抵抗を有し、真空が適用されているときは高い曲げ剛性またはせん断抵抗を有する。低い曲げ剛性またはせん断抵抗は、カテーテル内の真空源に接続する領域の連続的な完全マイクロ流体開通性に依るものであってもよく、高い曲げ剛性またはせん断抵抗は、真空源が適用または作動されるときに生じる摩擦または粘着に依るものであってもよい。これらの態様により、カテーテルは、カテーテルの近位端と遠位端との間で、カテーテルの長さに沿って可変剛性を有することが可能になり得る。いくつかの例では、カテーテルは、その近位端と遠位端との間の部分またはセグメントに沿って可変剛性を有してもよく、他の例では、カテーテルは、その近位端から遠位端までの全長に沿って可変剛性を有してもよい。
【0020】
内層102は、直径約1.5mm~約2mmの内腔を形成することにより、カテーテルの初期構造を提供することができる。少なくとも1つの例では、内腔は約1.78mmの直径を有してもよい。追加の例では、内層102は、直径が約0.70mm~約0.72mmの内腔を形成してもよい。内腔は、これに限定されないが、塞栓剤、コイル、バルーン、ステント、薬剤、カテーテル、神経調節デバイス、圧力モニタリング、および/またはカテーテルアブレーションデバイスを含む神経血管医療デバイスを受容するように動作可能であってもよい。カテーテルおよび/または神経血管デバイスは、脳卒中の治療、生理学的モニタリング、血栓除去術、アテローム切除術、ステント留置術、バルーン治療、塞栓術、アブレーション、デバイスの移植、診断評価、PE、動脈/静脈血栓、動脈瘤治療、損傷した動脈および静脈の治療、脳卒中治療による神経障害、パーキンソン病、出血の制御、および/または透析アクセス治療に使用されてもよい。
【0021】
内層102は、摩擦を低減し、ストリング105を中間層106から支持することができる。いくつかの例では、内層102は、柔軟ではなく、または相対的に柔軟ではなくてもよい。内層は、これに限定されないが、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(登録商標))、PTFE、PU、および他のプラスチックポリマーを含む材料から作製されてもよい。いくつかの例では、内層102は薄く、環状内腔107に真空が適用されたときに変形しない。しかし、以下に説明するように、特定の実施形態では、内層は折り畳み可能(collapsible)であってもよい。したがって、内層102はまた、これに限定されないが、ラテックス、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(登録商標))、および/またはシリコーンを含む材料から作製されてもよい。内層102は、約0.02mm~約0.05mmの厚さであってもよい。少なくとも一例では、内層102は約0.036mmの厚さである。内層102は、例えば、内層106の外径上に設けたブレード104でサポートしてもよい。ブレード104は、座屈に対して内層102をサポートする薄い層であってもよい。いくつかの例では、ブレード104は、図1に見られるように、内層102のサポートを補助するように、交差パターンで配置されてもよい。ブレード104は、約0.01mm~約0.04mmの厚さであってもよい。少なくとも一例では、ブレード104は約0.025mmの厚さである。いくつかの例では、ブレード104はニチノールから作製されてもよい。
【0022】
中間層106は、内層102を取り囲む細いチューブまたはストリング105の配列(またはアレイ:array)を有する環状内腔107を含んでもよい。ストリング105は、カテーテルが作動状態にあるときに、カテーテル100に剛性を付加し、そしてカテーテル100の厚さを最大にすることができる。ストリング105は、環状内腔107の長さに沿って長手方向に延在してもよく、内層102の近位端および遠位端に取り付けてもよい。いくつかの例では、ストリング105は、環状内腔107の長さに沿って、らせん構成であってもよい。少なくとも1つの例では、ストリング105は、ストリング105の単一シートで内層102を包むように、直線構造で並べて配置してもよい。他の例では、ストリング105は、非対称に配置、分布、または配向されてもよい。中間層106は、ストリングの直径に応じて、約40本~約170本のストリングを含むことができる。様々な例では、ストリングの最大数は、47本以下、71本以下、80本以下、88本以下、150本以下、または163本以下であってもよい。少なくとも1つの例では、中間層106は、約60本のストリングを含んでもよい。各ストリング105の間の距離は、約0mm~約0.02mmの範囲であってもよい。いくつかの例では、ストリング105は、ニチノールワイヤまたは合成糸(または合成スレッド:synthetic threads)であってもよい。糸(スレッド)の非限定的な例には、金属糸、モノフィラメント糸、および繊維が含まれる。ストリング105は、 半径が約0.05mm~約0.2mmであってもよい。様々な例において、ストリング105は、半径が約0.056mm、0.083mm、0.108mm、または0.167であってもよい。少なくとも1つの例では、ストリング105は半径が約0.0825mmである。ストリング105の密度および直径は、カテーテル100の剛性に影響を与え得る。
【0023】
外層108は、中間層106と内層102を取り囲む、柔軟または相対的に柔軟な層であってもよい。カテーテル100のいくつかの例では、外層108は、中間層に適用される真空/吸引に耐えることができるように、薄く、引き裂き抵抗性を有する。カテーテル100を作動すると、環状内腔107内の空気が排気され、外層108が折り畳まれて(または、崩壊して:collapses down)、内層102とストリング105を、ひとつの統一体として圧縮する。あるいは、折り畳み可能な層は、カテーテルの(外層とは反対側の)内層を含んでもよい。したがって、一実施形態では、カテーテル100が作動すると、環状内腔107内の空気が排出され、内層102が外側に折り畳まれて(または外向きに潰れて:collapses outward)、ストリング105と外層108を、ひとつの統一体として圧縮する。この別の実施形態では、外層108は、柔軟ではない構造を形成する。作動状態は、元の状態よりも数学的に(または数字的に:mathematically)硬くなっている。外層108(および上述の内層102)を形成するために使用される材料は、層が折り畳み可能であることを意図しているかどうかに依存する。いくつかの例では、外層108は、これに限定されないが、ラテックス、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(登録商標))、および/またはシリコーンを含む材料から作製されてもよい。代わりに、外層が柔軟ではない場合は、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(登録商標))、PTFE、PU、および他のプラスチックポリマーを含む材料から作製されてもよい。いくつかの例では、外層108は薄く、環状内腔107に真空が適用されたときに変形しない。様々な実施形態では、外層108は不透明である。外層108は、約0.01mm~約0.03mmの厚さである。少なくとも一例では、外層108は約0.0175mmの厚さである。いくつかの例では、外層108は、コーティング110によってさらに取り囲まれてもよい。コーティングは、親水性コーティングであってもよい。コーティング110は、約0.01mm~約0.03mmの厚さであってもよい。少なくとも1つの例では、コーティング110は約0.0175mmの厚さを有する。
【0024】
図2は、カテーテル100の一例の、層の断面図を示す。カテーテル100は、約1.5mm~約7mmの範囲の内径を有してよい。様々な例において、カテーテル100は、約1.778mm、2.235mm、5.333mm、5.667mm、6.0mm、6.333mm、または6.667mmの内径を有する。少なくとも1つの例では、カテーテル100は約1.778mmの内径を有する。あるいは、カテーテル100は、約0.70mmから0.72mmの範囲の内径を有してもよい。カテーテル100は、作動状態において約1.6mm~約8mmの範囲の外径を有してもよい。様々な例において、カテーテル100は、約2.0mm、2.667mm、6.0mm、6.667mm、または7.333mmの外径を有する。少なくとも1つの例では、カテーテル100は約2.1mmの外径を有する。カテーテル100は、5フレンチ~26フレンチの範囲のサイズを有する。様々な例において、カテーテル100は、約5フレンチ、6フレンチ、7フレンチ、8フレンチ、9フレンチ、10フレンチ、11フレンチ、12フレンチ、13フレンチ、14フレンチ、15フレンチ、16フレンチ、17フレンチ、18フレンチ、19フレンチ、20フレンチ、21フレンチ、22フレンチ、23フレンチ、24フレンチ、25フレンチ、または26フレンチのサイズを有してもよい。例えば、カテーテル100は、6フレンチまたは20フレンチのサイズを有してもよい。カテーテル100の層が圧縮されると、カテーテル100は、約0.1mm~約0.2mmの厚さになってもよい。少なくとも1つの例では、カテーテル100は、約0.127mm~0.161mmの厚さである。カテーテル100の厚さは、図2に見られるように、内層102、ブレード104、ストリング105、外層108、および/またはコーティング110の厚さを含んでもよい。
【0025】
カテーテルは、その近位端に、真空源を接続するためのコネクタを含んでもよい。真空源は、中間層の環状内腔に流体接続され得る。いくつかの例では、真空源はインデフレーターまたはシリンジであってもよい。カテーテルは、内腔の切開(または解離:dissection)を防止するために、外傷のない(atraumatic)遠位端を含んでいてもよい。
【0026】
中間層の環状内腔107の排気は、中間層の曲げ剛性またはせん断抵抗を変化させる。これにより、カテーテル100は、2つの異なる剛性構成、すなわち低剛性構成(真空を適用/作動させない)と、高剛性構成(真空を適用/作動させる)とを取ることが可能になり得る。図3Aは、低剛性または低曲げ剛性構成におけるカテーテルの例示的な断面を示す。低剛性または低曲げ剛性構成では、内層と外層との間に画定された環状内腔107はほぼ大気圧に維持され、内層と外層の隣接する表面および複数のストリングが、互いに自由にスライドできるようにされており、これら3つの要素のそれぞれが、カテーテルの構造的な剛性に関して本質的に独立して機能する。図3Bは、高剛性または高曲げ剛性構成におけるカテーテルの例示的な断面を示す。高剛性または高曲げ剛性構成では、環状内腔は負圧(真空)に排気され、環状内腔の折り畳みと、それに伴う内層および外層の隣接面とストリングの密着とを引き起こす。高剛性または高曲げ剛性の構成では、内層と外層およびストリングは、本質的に、大幅に向上された剛性を有する単一の複合構造として機能する。例えば、中間層の環状内腔を排気することで、内層、中間層及び外層があたかも単層であるかのように屈曲することを可能にする摩擦抵抗または粘着性の増加をもたらし、それによって内層、中間層および外層の曲げ剛またはせん断抵抗を、それらの曲げ剛性の合計を超えて増加させる。低剛性構成と高剛性構成との間の移行は、真空源の環状内腔への適用および環状内腔からの除去によって制御される。
【0027】
カテーテルは、低剛性構成のとき、約1.4Nm~約6Nmの曲げ剛性を有してもよい。例えば、カテーテルは、低剛性構成のとき、約1.4Nm~約2Nm、約2Nm~約4Nm、および約4Nm~約6Nmの曲げ剛性を有してもよい。カテーテルは、高剛性構成のとき、約6Nm~約15Nmの曲げ剛性を有してもよい。例えば、カテーテルは、高剛性構成のとき、約6Nm~約8Nm、約8Nm~約10Nm、および約10Nm~約15Nmの曲げ剛性を有してもよい。
【0028】
カテーテル100は、約10cm~約100cm、約10cm~約90cm、約10cm~約80cm、約10cm~約70cm、約10cm~約60cm、約10cm~約50cm、約10cm~約40cm、約10cm~約30cm、または約10cm~約20cmの長さを有してもよい。カテーテル100は、約20cm~約100cm、約20cm~約90cm、約20cm~約80cm、約20cm~約70cm、約20cm~約60cm、約20cm~約50cm、約20cm~約40cm、または約20cm~約30cmの長さを有してもよい。カテーテル100は、約30cm~約100cm、約30cm~約90cm、約30cm~約80cm、約30cm~約70cm、約30cm~約60cm、約30cm~約50cm、または約30cm~約40cmの長さを有してもよい。カテーテル100は、約40cm~約100cm、約40cm~約90cm、約40cm~約80cm、約40cm~約70cm、約40cm~約60cm、または約40cm~約50cmの長さを有してもよい。カテーテル100は、約50cm~約100cm、約50cm~約90cm、約50cm~約80cm、約50cm~約70cm、または約50cm~約60cmの長さを有してもよい。カテーテル100は、約60cm~約100cm、約60cm~約90cm、約60cm~約80cm、または約60cm~約70cmの長さを有してもよい。カテーテル100は、約70cm~約100cm、約70cm~約90cm、または約70cm~約80cmの長さを有してもよい。あるいは、カテーテル100は、約80cm~約100cm、または約80cm~約90cmの長さを有してもよい。あるいは、カテーテル100は、約90cm~約100cmの長さを有してもよい。例えば、カテーテルは、約30、60、または100cmの長さを有してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、その近位端とその遠位端との間で、カテーテルの長さに沿って可変剛性能(variable stiffness capabilities)を有してもよい。例えば、中間層上における内層および外層の接触面の間に可変の摩擦抵抗または粘着力が存在してもよい。例えば、カテーテルの長さの1つの部分またはセグメント、あるいは複数の部分のみが可変剛性能を有し、カテーテルの残りの部分は、カテーテルの用途および/またはサイズに応じて、柔軟または剛性のままであってもよい。いくつかの例では、カテーテルの可変剛性を有する部分またはセグメントの位置は、これに限定されないが、脳卒中の治療、生理学的モニタリング、血栓除去術、アテローム切除術、ステント留置術、バルーン治療、塞栓術、アブレーション、デバイスの移植、診断評価、PE、動脈/静脈血栓、動脈瘤治療、損傷した動脈および静脈の治療、脳卒中治療による神経障害、パーキンソン病、出血の制御、および/または透析アクセス治療などの特定の外科処置に最適化することができる。このセグメントは、遠位カテーテル、中間カテーテルセグメント、またはカテーテルの近位セグメントにあってもよい。剛性作動を備えたカテーテルのセグメントが2つ以上あってもよい。
【0030】
別の実施形態では、カテーテルは可変剛性能を有する近位端を有してもよく、遠位端は柔軟であってもよい。いくつかの例では、カテーテルの最遠位の5~10cmは、可変剛性能を有さずに、柔軟であってもよい。この例では、カテーテルの遠位端は、近位端よりも柔軟であるが、依然としてヘルニアおよび座屈の問題を克服し得る。他の実施形態では、近位端から遠位端までのカテーテルの長さが可変剛性を有してもよい。さらに他の実施形態では、カテーテルの中央の1/3が可変剛性を有してもよい。
【0031】
一実施形態では、カテーテルは、既知の領域または動脈の角度(または角形成:angulation)または蛇行(tortuosity)に合わせて調整した、予め形成された(pre-formed)セグメントを有してもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルは、大動脈弓、大動脈弓の変形、椎骨動脈および頸動脈の起始、右心房、腹部大動脈、腸骨大腿動脈/静脈セグメント、ならびに上肢および下肢動脈の解剖学的構造に適応するように、予め形成されたセグメントを有してもよい。曲げ剛性作動は、カテーテルの予め形成されたセグメントの剛性、またはカテーテルの予め形成されたセグメントの脇(または傍:flanking)のセグメントの剛性に影響を与えるように機能し得る。
【0032】
追加の実施形態では、可変剛性は、カテーテルの長さの、1つまたは2つ以上の部分に沿って非対称またはらせん状であってもよい。例えば、可変剛性は、カテーテルの一部(例えば、カテーテルの側面、または片側)で非対称であってもよく、操作時に優先的に曲げたりまっすぐにしたりすることができる。非対称な可変剛性の構造は、規定された領域にわたってカテーテルの固定、湾曲、またはねじれを増大させるような、カテーテルの屈曲を誘発するように動作可能である。固定、湾曲、またはねじれは、中間層内の真空を解放することによって作動させることができる。カテーテルの側面(または片側)における非対称な可変剛性により、カテーテルがその位置に到達した後、所定の解剖学的構成に対してカテーテルをより効率的にナビゲーションまたは固定が可能になり得る。非対称剛性は、カテーテルの円周の1~99%の範囲であってもよい。少なくとも1つの例では、非対称剛性は、カテーテルの円周の50%を占めてもよい。
【実施例
【0033】
(実施例1)
剛性の変化を定量化するために、カテーテル本体を、付加されるモーメント(回転力)を受ける梁として扱う梁理論(beam theory)を用いた。梁理論を記述するオイラー・ベルヌーイ方程式から、曲げ剛性(EI項)は、(式1)のように、材料の剛性を数学的に記述する。

M=EI/ρ (式1)

ここで、Mはモーメント、Eは弾性係数、Iは梁断面の断面2次モーメント(area moment of inertia)、ρは曲率半径である。
【0034】
カテーテルは、慣性モーメント(moment of inertia)(I)--断面の幾何学的設計--を変化させ、弾性係数(E)--変形に対する抵抗力を表す材料固有の特性--を最適化することによって、曲げ剛性を制御する。カテーテルには、低剛性構成および高剛性構成の慣性モーメントによって特徴付けられる、2つの異なる状態があり得る。低剛性構成は、真空が作動する前であり、内層、中間層、および外層が独立して動作するため、カテーテルの慣性モーメントは低くなる。高剛性構成は、真空が作動しており、3つの層すべてが接着されたかのように1つの層として機能する。この慣性特性の変化を、最も効果的な材料と組み合わせることで、曲げ剛性またはせん断抵抗を最適化して、8倍に変化させることができる。
【0035】
上述の方法および理論を用いて、本明細書に記載の、2つの異なるカテーテルのプロトタイプの曲げ剛性を、9フレンチ(Fr)のアルファプロトタイプと、6フレンチ(Fr)のアルファプロトタイプについて決定した。
【0036】
いくつかの実施形態を説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正、代替構造、および均等物を使用できることが理解されよう。さらに、本発明を不必要に曖昧にすることを避けるために、多くの周知のプロセスおよび要素については説明していない。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0037】
当業者は、現在開示されている実施形態は、限定するものではなく、例示として教示していることを理解するであろう。したがって、上記の説明に含まれる、または添付の図面に示される事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された全ての一般的および特定の特徴、ならびに、言語の問題としてそれらの間に存在すると言えるであろう本願の方法およびシステムの範囲のすべての記述を、対象とすることを意図している。
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】