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特表2023-511964有効成分としてのロチゴチンと少なくとも1種の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含む経皮治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】有効成分としてのロチゴチンと少なくとも1種の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含む経皮治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/381 20060101AFI20230315BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230315BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61K31/381
A61K47/34
A61K47/06
A61K47/32
A61K9/70 401
A61K47/04
A61P25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545040
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021051500
(87)【国際公開番号】W WO2021148634
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】20153621.6
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522293629
【氏名又は名称】リュイエ ファーマ スウィツァーランド アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LUYE PHARMA SWITZERLAND AG
【住所又は居所原語表記】Baeumleingasse 22,4051 Basel Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ベンダ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】コリング,ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】シュラード,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウアー,ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD24
4C076DD34A
4C076EE16
4C076EE27A
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA02
(57)【要約】
本発明は、有効成分としてのロチゴチンの投与用の経皮治療システム(TTS)であって、ロチゴチンを含むマトリックス層を含み、該マトリックス層が、該マトリックス層に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤と、パラフィンとをさらに含むことを特徴とする経皮治療システム、およびその調製方法に関する。本発明の経皮治療システムは、特にパーキンソン病の治療に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮治療システムであって、
a)裏打ち層(1)、
b)薬剤を含むマトリックス層(2)、および
c)使用前に除去される剥離ライナー(4)
を含み、
前記薬剤がロチゴチンであること、および
前記マトリックス層(2)が、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と、前記マトリックス層(2)の総重量に対して少なくとも0.1重量%のパラフィンとを含むこと
を特徴とする経皮治療システム。
【請求項2】
前記マトリックス層(2)中の前記パラフィンの含有量が、該マトリックス層(2)の総重量に対して、0.2~20.0重量%、好ましくは0.5~10.0重量%、より好ましくは1.0~4.0重量%である、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
前記マトリックス層(2)の単位面積あたりの重量が、40~70g/m2であり、好ましくは50~60g/m2である、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
前記マトリックス層(2)と使用前に除去される前記剥離ライナー(4)との間に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を備えること、および該感圧粘着剤層(3)が、該感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と、前記感圧粘着剤層(3)の総重量に対して少なくとも0.1重量%、好ましくは0.2~20.0重量%、より好ましくは1.0~5.0重量%のパラフィンとを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の単位面積あたりの重量が、20~40g/m2であり、好ましくは25~35g/m2である、請求項4に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
前記マトリックス層(2)中の前記非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量が、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して75重量%を超える量、好ましくは90重量%を超える量である、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)中の前記非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量が、該感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して75重量%を超える量、好ましくは90重量%を超える量である、請求項4~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
前記マトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)とが、感圧粘着剤として非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
前記非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤が、シラノール含有量が低減されたシリコーン系粘着剤である、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
前記マトリックス層(2)中のロチゴチンの大部分が、固体分散体の分散相中に非晶質形態で存在し、該分散相にポリビニルピロリドンが含まれている、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
前記ロチゴチンの含有量が、該ロチゴチンと前記ポリビニルピロリドンの重量比として表した場合に、9:6.4の比率以下であり、好ましくは9:6.5の比率以下であり、より好ましくは9:7の比率以下である、請求項10に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
前記ロチゴチンと前記ポリビニルピロリドンの重量比が、9:7~9:10である、請求項11に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
前記マトリックス層(2)中の前記有効成分の含有量が、該マトリックス層(2)の総重量に対して6~20重量%の範囲であり、好ましくは6.5~11.5重量%の範囲である、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
前記マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる前記1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤が、2種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含み、好ましくは、該2種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のうちの1種以上が中程度のタックを有し、別の1種以上が高いタックを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
前記マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる前記1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤が、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみからなる、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項16】
前記マトリックス層(2)が、1種以上の酸化防止剤および/またはメタ重亜硫酸ナトリウムを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項17】
パーキンソン病の治療に使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の経皮治療システムを単層製剤として調製する方法であって、
a)適切な溶媒に、マトリックス層(2)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように混合することによって、均質な塗工液を調製する工程;
b)前記均質な塗工液を、裏打ち層(1)または好ましくは剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する工程;および
c)得られたマトリックス層(2)上に、これ以外の層すなわち剥離ライナー(4)または好ましくは裏打ち層(1)を積層し、適切な大きさに打ち抜いて、経皮治療システムを得る工程
を含む方法。
【請求項19】
請求項4~18のいずれか1項に記載の経皮治療システムを調製する方法であって、
a)前記経皮治療システムの第1の前駆体を調製する工程として、
a1)適切な溶媒に、マトリックス層(2)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように混合することによって、第1の均質な塗工液を調製する工程;
a2)第1の均質な塗工液を、裏打ち層(1)または好ましくは仮止め用剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する工程;および
a3)得られたマトリックス層(2)上に、これ以外の層すなわち仮止め用剥離ライナー(4)または好ましくは裏打ち層(1)を積層する工程
を含み、
b)前記経皮治療システムの第2の前駆体を調製する工程として、
b1)適切な溶媒に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように混合することによって、均質な塗工液を調製する工程;および
b2)前記均質な塗工液を剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する工程
を含み、
c)a)の第1の前駆体から前記仮止め用剥離ライナー(4)を除去する工程;
第1の前駆体と第2の前駆体を積層して、前記裏打ち層(1)と、有効成分を含む前記マトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)と、前記剥離ライナー(4)とをこの順序で含む積層体を得る工程;および
前記積層体を適切な大きさに打ち抜いて、経皮治療システムを得る工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含む、有効成分としてのロチゴチンの投与用の経皮治療システム(TTS)、および該経皮治療システムの調製方法に関する。本発明の経皮治療システムは、特にパーキンソン病の治療に適している。
【背景技術】
【0002】
ロチゴチンは、以下の構造式で示される(-)-5,6,7,8-テトラヒドロ-6-[プロピル-[2-(2-チエニル)エチル]-アミノ]-1-ナフタレノールという化合物の国際一般名である。
【化1】
【0003】
ロチゴチンは、現在、多形体Iと多形体IIの2つの結晶形態が存在することが知られている(WO2009/068520)。多形体Iと多形体IIは、粉末X線回折のディフラクトグラム、ラマンスペクトル、融点などの物理化学的パラメーターによって識別することができる。WO2009/068520に記載されているように、多形体IIは、多形体Iよりも熱力学的に安定であり、加工特性にも優れているとされている。
【0004】
ロチゴチンは、ドーパミン受容体アゴニストとして知られており、パーキンソン病の治療において成功を収めている。ロチゴチンの薬学的有効性や、ロチゴチンの使用が好ましい疾患は、例えば、WO2002/089777、WO2005/092331、WO2005/009424、WO2003/092677およびWO2005/063237に記載されている。
【0005】
ロチゴチンは、その半減期が短く、初回通過効果が高いことから、経口投与には問題が多い。したがって、数多くの刊行物において、ロチゴチンの経皮投与が提案されており、経皮投与用のロチゴチンとして、ニュープロ(登録商標)という名称の薬剤が上市されている。
【0006】
ロチゴチン投与用の経皮治療システムは、既に早い段階でWO94/07468において報告されている。この特許文献で報告されている経皮治療システムでは、2相のマトリックス中にロチゴチンの塩酸塩が含まれており、この2相のマトリックスの大部分は、薬剤の親水性塩を吸着させるための水和ケイ酸塩が分散された連続相としての疎水性ポリマー材料で形成されている。しかし、この特許文献に記載の経皮治療システムは、調製が困難であるとともに、この経皮治療システムから有効成分を皮膚に透過させるには様々な問題が伴う。このような理由から、WO94/07468に記載のこの経皮治療システムは上市されていない。
【0007】
改良された経皮治療システムが数多くの刊行物で報告されている。例えば、WO99/49852では、アクリル酸またはシリコーンを用いた非水性ポリマーからなる粘着系を用いたマトリックスを有する経皮治療システムが開示されており、このマトリックスには、無機ケイ酸塩粒子が実質的に含まれていない。このマトリックスシステムの最も単純な実施形態として、単一相のマトリックス系が示されている。このマトリックスは、アクリル酸系粘着剤またはシリコーン系粘着剤から実質的に構成されている。シリコーン系粘着剤からなるマトリックスの場合、このマトリックスは、例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、またはエチレン-酢酸ビニルコポリマーをさらに含むことができる。
【0008】
WO2004/012730、WO2004/012719およびWO2004/058247では、ロチゴチン投与用の経皮治療システムが開示されており、この経皮治療システムは、有効成分が充填された自己粘着性マトリックスを備え、この有効成分は、多数のマイクロリザーバーまたは非晶質粒子として含まれている。この自己粘着性マトリックスは、シリコーン系粘着剤を用いた自己粘着性マトリックスである。
【0009】
シリコーンマトリックスを用いたロチゴチン投与用の経皮治療システムは、WO02/089778でも開示されている。この特許文献では、この経皮治療システムの表面積が10~40cm2であること、および有効成分として0.1~3.15mg/cm2のロチゴチンを含むことが必須であるとされている。
【0010】
有効成分としてロチゴチンを含む経皮治療システムの製剤化に関して重要な一態様として、経皮治療システムに含まれる有効成分の結晶化を回避する必要があることが挙げられる。有効成分の結晶化は様々な問題を引き起こす恐れがあり、例えば、投与速度が影響を受けたり、粘着性マトリックスの粘着性に悪影響を及ぼしたりすることがある。残念ながら、先行技術では、ロチゴチンによく見られる問題として、有効成分の結晶化が挙げられている。現在、上市されている唯一の経皮治療システムであるUCB社の「ニュープロ」という製剤では、ロチゴチンがポリマーマトリックスに埋め込まれている。しかし、この初めて上市された製剤の安定性は証明されておらず、実際に、製剤中で結晶が形成されたことから、製品回収の対象となった。
【0011】
これを踏まえて、WO2012/072650では、非粘着性マトリックスに有効成分を導入することと、この非粘着性マトリックス上に粘着剤層を設けることが提案されている。この粘着剤層は、自己粘着性であることが好ましく、「感圧粘着剤」からなることが好ましく、耐アミン性シリコーン系粘着剤であることが好ましい。
【0012】
また、WO2012/084969でも、ロチゴチン投与用の経皮治療システムであって、ポリスチレン、ポリイソブチレンまたはこれらの混合物からなる粘着性マトリックスに、有効成分であるロチゴチンと、少なくとも1種の架橋ポリビニルピロリドンまたはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーとを含むことを特徴とする経皮治療システムが提案されている。
【0013】
WO2011/076879には、ポリビニルピロリドンとロチゴチンを特定の重量比で使用する必要があることが述べられている。この特定の重量比とすることによって、予想外にも、ロチゴチンの非晶質形態を安定化させることができ、経皮治療システムの自己粘着性マトリックスなどの固体分散体中において、ロチゴチンの再結晶化を防ぐことができることが述べられている。したがって、このWO2011/076879では、固体分散体の分散剤中に含まれる非晶質形態のロチゴチンの安定化にポリビニルピロリドンを使用することが提案されており、この分散剤は、少なくとも1種のシリコーン系感圧粘着剤を含むことが好ましく、ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比は、約9:3.5~約9:6であることが記載されている。
【0014】
さらに、WO2011/057714には、ポリマーフィルムに含まれる薬剤の結晶化を防ぐ方法が記載されている。このWO2011/057714に記載されているポリマーフィルムは、経皮治療システムなどの調製に適しており、好ましいとされる2種の薬剤のうちの1つとして、ロチゴチンが記載されている。このポリマーフィルムの調製工程では、マトリックスを構成するポリマーまたはポリマー混合物と少なくとも1種の薬剤とを含む溶媒含有塗工液を塗布し、該塗工液中の薬剤の融解温度よりも少なくとも10℃高くてもよい温度で該塗工液を乾燥させる必要がある。
【0015】
経皮治療システムの製剤化に関して重要な別の一態様として、感圧粘着剤の選択が挙げられる。感圧粘着剤を選択する際には様々な因子を考慮に入れる必要があり、特に、最適な粘着力、引き剥がし力およびタック、有効成分の持続放出、ならびに保存安定性が達成され、かつ粘着剤の残留物と皮層への刺激を最小限に抑える必要がある。さらに、感圧粘着剤は、有効成分と反応しないものでなければならない。
【0016】
「粘着性」(または「粘着力」)は、経皮治療システムを貼付した試験表面から経皮治療システムを引き剥がすのに必要な力を指し、すなわち、表面からの引き剥がしに耐える特性を指す。「引き剥がし力」は、剥離ライナー(4)から経皮治療システムを引き剥がすのに必要な力を指す。「タック」は、固体の表面に粘着する特性を指し、すなわち、短時間接触と非常に軽い圧着力により固体の表面に粘着する特性を指す。
【0017】
先行技術において、有効成分としてロチゴチンを含む経皮治療システムに使用される感圧粘着剤として様々なものが提案されている。具体的には、シリコーン系粘着剤だけでなく、例えば、ポリアクリル酸系ポリマー粘着剤、ポリイソブチレン系ポリマー粘着剤、およびポリスチレン系ポリマー粘着剤が提案されている。
【0018】
例えば、WO2012/084969では、ロチゴチン投与用の経皮治療システムにおいて、例えば、ポリイソブチレンおよびポリスチレンならびにこれらの混合物が使用されている。ポリイソブチレンは、通常、様々な医薬品有効成分よりも溶液物性が劣り、低分子量ポリイソブチレン混合物の形態でしか十分なタックを発揮することができず、いわゆるコールドフローが大きいという欠点がある。一方、スチレンは、通常、大量の可塑剤や粘着付与剤を必要とする。
【0019】
一方、シリコーン系感圧粘着剤は、柔軟性が高く、表面張力が低く、広い温度範囲にわたり特性がほとんど変化しないという特徴を持つ。また、シリコーン系粘着剤は、通気性と透湿性が高く、皮膚にやさしく、外部からの様々な影響に対する耐久性(水分、紫外線、酸性条件またはアルカリ条件下での安定性)を備えている。
【0020】
経皮治療システム用のシリコーン系感圧粘着剤は、一般に、「非耐アミン性」シリコーン系粘着剤と「耐アミン性」シリコーン系粘着剤の2種類に分類することができる。「非耐アミン性」シリコーン系粘着剤は、遊離シラノール基を含んでいる。この遊離シラノール基は、ロチゴチンなどの有効成分に含まれるアミン基とわずかに相互作用し、その結果、有効成分の分解産物が生じることがある。さらに、この反応によって、経皮治療システムの粘着剤層の特性が大きく損なわれてしまうことがあり、例えば、保存中にタックが低下し、かつ/または完全に乾燥したりすることがある(例えば、米国再発行特許第35,474号明細書および米国特許公開第4,591,622号明細書を参照されたい)。
【0021】
このような理由から、有効成分としてロチゴチンを含み、シリコーン系粘着剤を用いた経皮治療システムに関する先行技術では、通常、耐アミン性シリコーン系粘着剤のみが使用されており、非耐アミン性シリコーン系粘着剤は使用されていない。「耐アミン性」シリコーン系粘着剤では、例えば、トリメチルシリル(TMS)基などの保護基によってシラノール基が保護されている。
【0022】
したがって、例えば、現在市販されている唯一の経皮治療システムであるニュープロでは、耐アミン性シリコーン系粘着剤のみが使用されている。ニュープロは、固体分散体の形態の二相系のマトリックス層で構成された単層薄膜であり、この二相系は、ポリマー中に溶解した有効成分からなる内相と、分散剤としての耐アミン性シリコーン系粘着剤からなる外相とで構成されている。
【0023】
同様に、WO99/49852でも、ロチゴチンの基本的な特性から、ロチゴチンを含むシリコーン系粘着剤において耐アミン性粘着剤が使用されている。この特許文献で述べられているように、耐アミン性シリコーン系粘着剤は、遊離シラノール官能基(すなわちシラノール基)を含まないことを特徴とする。
【0024】
WO02/089778に開示されているシリコーンベースの経皮治療システムは、主要な構成成分として少なくとも1種の耐アミン性シリコーン化合物を含む必要がある。このシリコーン化合物は、通常、感圧粘着剤またはその混合物であり、経皮治療システムのその他の構成成分が埋め込まれるマトリックスを形成している。
【0025】
WO2004/012730(ならびにWO2004/012719およびWO2011/076879)によれば、この特許文献に開示されている経皮治療システムでの使用に特に好ましい感圧粘着剤は、水酸基が例えばトリメチルシリル(TMS)基で保護された可溶性のポリ縮合ポリジメチルシロキサン(PDMS)/樹脂ネットワークを形成する感圧粘着剤である。
【0026】
WO2004/058247の好ましい一実施形態では、マトリックスポリマーは、シリコーンであり、耐アミン性シリコーンまたはその混合物であることが好ましい。この特許文献でも、前述したのと同じ理由で、耐アミン性シリコーンまたはその混合物がマトリックスポリマーに使用されている。さらに、WO2011/057714によれば、特に好ましいものとして、耐アミン性ポリシロキサンが挙げられている。
【0027】
一方、例えば、市販のニュープロで使用されているような耐アミン性シリコーン系粘着剤は、特に粘着力とタックが不足することが多い。
【0028】
したがって、有効成分としてロチゴチンを含む様々な経皮治療システムが知られているが、十分な粘着力およびタックと優れた保存安定性(すなわち保存中に有効成分が結晶化しない特性)を有し、有効成分としてロチゴチンを投与するための経皮治療システムが求められている。また、このような経皮治療システムは、有効成分を皮膚に十分に透過させることができ、可能な限り簡単な方法で製造でき、少なくとも1日のうちの所望の投与持続時間で有効成分を投与できるものでなければならない。さらに、コスト面や、国の医薬品規制当局の要件(例えば乱用を予防するための要件)を考慮に入れて、使用後の経皮治療システムに残存する有効成分の量は高すぎないことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明では、前記課題を解決するため、請求項で定義される経皮治療システムを提案する。
【0030】
本発明者らは、驚くべきことに、有効成分としてロチゴチンを含む経皮治療システム(TTS)のマトリックス層に少量のパラフィンを添加することによって、顕著な量の遊離シラノール基を含むシリコーン系粘着剤(すなわち非耐アミン性シリコーン系粘着剤)を使用した場合でも、耐アミン性シリコーン系粘着剤を使用した経皮治療システムと比べて特性が向上し、特に粘着力とタックが有意に増加し、保存安定性が向上することを見出した。
【0031】
さらに、本発明者らは、有効成分としてのロチゴチンと、マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤とを含む経皮治療システムにおいて、マトリックス層中の固体分散体の分散相におけるロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比が9:6.4であると、特に、ロチゴチンの含有量が、ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比として表した場合に9:7の比率以下であると、有効成分が結晶化しないことを見出した。一方、ポリビニルピロリドンに対するロチゴチンの重量比がこれよりも大きくなると、例えば、ロチゴチンの含有量が、ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比で表した場合に9:5の比率以上になると、25℃以上の温度で長期間保存した場合に結晶が形成される恐れがある。したがって、本発明によれば、ポリビニルピロリドンに対するロチゴチンの重量比を、このように大きくすることも可能ではあるが、好ましくない。
【0032】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の経皮治療システムでは、経皮治療システムの調製後のロチゴチンの結晶化を防ぐ目的で、塗布操作後の乾燥をロチゴチンの融点よりも少なくとも10℃高い温度で行う必要はないことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0033】
したがって、本発明は、経皮治療システムであって、
裏打ち層(1)、
薬剤を含むマトリックス層(2)、および
使用前に除去される剥離ライナー(4)
を含み、
前記薬剤がロチゴチンであること、および
前記マトリックス層(2)が、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と、前記マトリックス層(2)の総重量に対して少なくとも0.1重量%のパラフィンとを含むことを特徴とする経皮治療システムを提供する。
【0034】
また、本発明は、ロチゴチンの経皮投与が適用される疾患、特にパーキンソン病を治療するための、経皮治療システムの使用に関する。さらに、本発明は、本発明の経皮治療システムを調製する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】(A)裏打ち層(1)と、マトリックス層(2)と、剥離ライナー(4)とを有する単層製剤の形態の経皮治療システムを示す。(B)裏打ち層(1)と、マトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)と、剥離ライナー(4)とを有する二層製剤の形態の経皮治療システムを示す。
図2】40℃/75%rh(相対湿度)で0~3ヶ月間保存した場合の様々な単層製剤および二層製剤の引き剥がし力を示す。
図3】40℃/75%rh(相対湿度)で0~3ヶ月間保存した場合の様々な単層製剤および二層製剤の粘着力を示す。
図4】(A)ポリマー系粘着剤としての、シラノール含有量が低減されたシリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4501(中程度のタック)とBIO-PSA SRS7-4601(高いタック)の最適な比率を、引き剥がし力、粘着力およびタックを考慮に入れて決定したことを示す。(B)ポリマー系粘着剤としての、シラノール含有量が低減されていないシリコーン系粘着剤であるBIO-PSA 7-4501(中程度のタック)とBIO-PSA 7-4601(高いタック)の最適な比率を、引き剥がし力、粘着力およびタックを考慮に入れて決定したことを示す。
図5】40℃/75%rh(相対湿度)で0~3ヶ月間保存した場合の様々な単層製剤および二層製剤のタックを示す。
図6】A)一定量のロチゴチンと様々に量を変えたPVP K90とを含む単層製剤の24時間のロチゴチンの累積透過量を示す。B)ロチゴチンとPVP K90の含有量と一定とし、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング(登録商標))の混合比率を様々に変えた単層製剤の24時間のロチゴチンの累積透過量を示す。
図7】(A)シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤と2重量%のパラフィンを含む単層製剤の24時間のロチゴチンの累積透過量を示す。(B)シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤と1~2重量%のパラフィンを含む単層製剤の24時間のロチゴチンの累積透過量を示す。
図8】A)二層製剤の24時間のロチゴチンの累積透過量を示す。B)単層製剤の6時間のロチゴチンの累積放出量を示す。
図9】インビトロでの溶出試験(インビトロでの有効成分の放出)における二層製剤の6時間のロチゴチンの累積放出量を示す。この溶出試験では、有効成分を含むマトリックス層(2)の塗工液を攪拌してから約50g/m2の厚さに塗布してマトリックス層(2)を調製するか、攪拌に加えてさらに均質化を行ってから約50g/m2の厚さに塗布してマトリックス層(2)を調製した。618_617ROTTDS:二層製剤;589ROTTDS:単層製剤;「攪拌」:攪拌のみ;「均質化」:攪拌と均質化。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の経皮治療システムは、最も単純な設計では、裏打ち層(1)と、この裏打ち層(1)上に配置された有効成分を含むマトリックス層(2)と、このマトリックス層(2)上に配置された使用前に除去される剥離ライナー(4)とを含む(図1(A)参照)。本発明の経皮治療システムのそれぞれの層の間、すなわち、裏打ち層(1)とマトリックス層(2)の間、および/またはマトリックス層(2)と剥離ライナー(4)の間には、1つ以上の別の層が配置されていてもよい。例えば、本発明の好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)と剥離ライナー(4)の間に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)が配置されていてもよい。
【0037】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)は、有効成分としてロチゴチンを含む感圧粘着剤層であり、本発明によれば、この感圧粘着剤層は、マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と、マトリックス層(2)の総重量に対して少なくとも0.1重量%のパラフィンとを含むことが必須である。
【0038】
本発明者らは、驚くべきことに、マトリックス層(2)に少量のパラフィンを添加することによって、粘着力とタックを有意に増加させ、かつ保存安定性を向上させることができることを見出した。特に、マトリックス層(2)において、非耐アミン性シリコーン系粘着剤と有効成分としてのロチゴチンを同時に使用した場合であっても、耐アミン性シリコーン系粘着剤とロチゴチンを使用した他の経皮治療システムと比べて、粘着力とタックを増加させることができることを見出した。
【0039】
本明細書において、「総重量」および「総量」という用語は、別段の記載がない限り、いずれも乾燥重量を指し、すなわち、すぐに使用できる形態の経皮治療システムに関する説明において、「総重量」または「総量」という用語によって言及される構成成分の重量を指す。
【0040】
本発明において、経皮治療システムの「感圧粘着剤」と「感圧粘着剤」層(例えば、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3))という用語は、いずれもこれらの構成要素を意味し、具体的には、感圧粘着プロモーター/感圧粘着剤としての特性を備えていることから、経皮治療システムまたはその層に添加されるポリマー系粘着剤を意味する。このような感圧粘着剤は当業者に公知である。この感圧粘着剤には、有効成分、パラフィン、結晶化抑制剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、経皮吸収促進剤、その他の添加剤(例えば、可塑剤や酸化防止剤など)は含まれていない。本明細書において、「シリコーン系粘着剤」と「シリコーン系感圧粘着剤」という用語は同じ意味で使用される。
【0041】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)は、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含む。すなわち、マトリックス層(2)は、1種、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含んでいてもよい。
【0042】
「非耐アミン性」シリコーン系粘着剤および「耐アミン性」シリコーン系粘着剤は当業者に知られている。耐アミン性シリコーン系粘着剤は、例えば、米国仮出願特許第35,474号明細書に記載されており、耐アミン性シリコーン系粘着剤の調製方法は、例えば、米国特許第4,591,622号明細書に記載されている。例えば、「非耐アミン性」シリコーン系粘着剤は、「耐アミン性」シリコーン系粘着剤とは異なり、相当量の遊離シラノール基(保護基で保護されていないOH基)を含むシリコーン系感圧粘着剤であり、通常の状況下では、アミンを含む有効成分と相互作用する恐れがある。いわゆるキャッピングや(エンド)ブロッキングなどの不完全な保護、または遊離シラノール基の部分的な除去を行うだけで、シラノール含有量が低減されたシリコーン系粘着剤と呼ばれるシリコーン系粘着剤を得ることができる。シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤およびその調製方法は、当業者に知られており、例えば、米国公開特許第6,337,086号明細書に記載されている。このようなシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、非耐アミン性シリコーン系粘着剤に分類される。
【0043】
本明細書において、「非耐アミン性」シリコーン系粘着剤は、例えば、少なくとも7700ppm以上、好ましくは少なくとも約8000ppm以上、かつ好ましくは13000ppm以下の遊離シラノール基(遊離のOH基またはケイ素が結合したヒドロキシル基)を含むシリコーン系感圧粘着剤を指すことが好ましい。シリコーン系粘着剤中の遊離シラノール基の含有量(または濃度)は、当業者に公知の方法で測定することができ、例えば、核磁気共鳴スペクトル測定法(NMR測定法)および/またはフーリエ変換赤外分光分析法(FTIR分光分析法)を用いて測定することができる(例えば、米国特許公開第6,337,086号を参照されたい)。29Si核磁気共鳴スペクトル測定法(29Si-NMR測定法)では、標準参照試料に対してデータを正規化することによってシラノール基の含有量を測定することができ、FTIR分光分析法では、遊離のシラノール基と保護されたシラノール基の比率が直接得られる。
【0044】
例えば、米国特許公開第6,337,086号に記載されているように、FTIR分光分析法で測定した場合のシラノール基の含有量は、A1/(A2×100)で求められるピーク面積比から計算することができる。ここで、面積A1は、シラノール基に由来するO-H結合の2個の伸縮振動のピークの面積であり、面積A2は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)メチル基の水素の変角振動の倍音成分のピークの面積である。この実施形態において、非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、保護されていないシラノール基と保護されたシラノール基の比率が、例えば、0.45を超えること、好ましくは少なくとも0.46であること、より好ましくは少なくとも0.5以上であることを特徴とする。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態において、非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、該非耐アミン性シリコーン系粘着剤とロチゴチンの混合比率を、例えば20:1~4:1、好ましくは例えば10:1として、適切な溶媒において約50℃で少なくとも2時間、好ましくは2~4時間にわたり有効成分であるロチゴチンと反応させた場合に、相当量のロチゴチン(例えば、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも2.5重量%のロチゴチン)と反応して、ロチゴチンを分解または転換することを特徴とする。適切な溶媒は、当業者に知られており、非耐アミン性シリコーン系粘着剤の種類に応じて選択される。適切な溶媒の例として、ヘプタン、エタノールおよび酢酸エチルが挙げられる。分解または転換されたロチゴチンの割合は、当業者に公知の方法で測定することができる。
【0046】
本発明において、1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤の選択は特に限定されない。非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、先行技術において知られている。
【0047】
本発明の一実施形態において、1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4502、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4502などの中程度のタックを有する非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤;例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4602、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4602などの高いタックを有する非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤;およびこれらの組み合わせを含む群から選択する必要がある。これらの粘着剤は、ジメチコノールトリメチルシロキシシリケートクロスポリマーという化学名でも呼ばれる。本発明の別の一実施形態において、1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、中程度のタックを有し、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤;高いタックを有し、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤;中程度のタックを有し、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤;高いタックを有し、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤;およびこれらの組み合わせを含む群から選択する必要がある。本発明において好ましい非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の例として、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)は、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含む。すなわち、マトリックス層(2)に含まれる非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の総重量割合は、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量の50重量%を超える。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、経皮治療システムのマトリックス層(2)に含まれる非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量は、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して60重量%を超える量であり、70重量%を超える量であることが好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、80重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、93重量%を超える量であることがさらに好ましく、95重量%を超える量であることがさらに好ましく、少なくとも99重量%であることがさらに好ましい。本発明のさらに好ましい一実施形態において、経皮治療システムにおいて、感圧粘着剤として機能するマトリックス層(2)は、非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含み、すなわち、マトリックス層(2)は、その他のポリマー系粘着剤を含んでおらず、非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む。
【0050】
経皮治療システムに含まれる1つまたは複数の感圧粘着剤層(例えば、マトリックス層(2)または最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層(3))が、1種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤しか含んでいない場合、この非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量は、例えば、経皮治療システムに含まれる1つまたは複数の感圧粘着剤層に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量である。経皮治療システムに含まれる1つまたは複数の感圧粘着剤層が、2種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含む場合、この2種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量の合計は、例えば、経皮治療システムに含まれる1つまたは複数の感圧粘着剤層に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量である。いくつかの感圧粘着剤層を有する場合、各層における非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量は、各層に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量でなければならない。
【0051】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)は、該マトリックス層(2)の総重量に対して少なくとも0.1重量%のパラフィン(白油とも呼ばれる)を含む。特に、2種類のパラフィンが知られている。そのうちの一方は、流動パラフィンであり、欧州薬局方において液体パラフィンあるいはparaffinum liquidumとも呼ばれ、米国薬局方では鉱油と呼ばれ、日本薬局方では流動パラフィンと呼ばれ、一般的な学術文献において粘性パラフィンとも呼ばれている。流動パラフィンは、その相対密度が、欧州薬局方(方法2.2.5)に従って測定した場合は0.827~0.890であり、米国薬局方(方法<841>)に従って測定した場合は0.845~0.905であり、日本薬局方に従って測定した場合は0.860~0.890であり、かつその粘度が、欧州薬局方(方法2.2.9)に従って測定した場合は110~230mPasであり、米国薬局方(方法<911>、40±0.1℃で毛細管粘度計により測定)に従って測定した場合は34.5~150.0mm2/sであり、日本薬局方(方法1、 37.8℃)に従って測定した場合は37mm2/s以上の油性液体である。
【0052】
もう1つの種類のパラフィンとして、低粘度パラフィンが知られている。低粘度パラフィンは、欧州薬局方では、軽質流動パラフィンまたはparaffinum perliquidumとも呼ばれ、米国薬局方では軽質鉱油と呼ばれ、日本薬局方では軽質流動パラフィンと呼ばれている。低粘度パラフィンは、その密度が、欧州薬局方(方法2.2.5)に従って測定した場合は0.810~0.875であり、米国薬局方(方法<841>)に従って測定した場合は0.818~0.880であり、日本薬局方に従って測定した場合は0.830~0.870であり、かつその粘度が、欧州薬局方(方法2.2.9)に従って測定した場合は25~80mPasであり、米国薬局方(方法<911>、40±0.1℃で毛細管粘度計により測定)に従って測定した場合は3.0~34.4mm2/sであり、日本薬局方(方法1、37.8℃)に従って測定した場合は37mm2/s未満の油性液体である。
【0053】
流動パラフィンが好ましい。別の一実施形態において、パラフィンは低粘度パラフィンである。
【0054】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)中のパラフィンの含有量は、本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)の総重量に対して、例えば、50重量%以下であってもよく、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)中のパラフィンの含有量は、該マトリックス層(2)の総重量に対して、少なくとも0.2重量%であり、少なくとも0.3重量%であることが好ましく、少なくとも0.5重量%であることがより好ましく、少なくとも0.8重量%であることがより好ましく、少なくとも1.0重量%であることがより好ましい。本発明のさらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)中のパラフィンの含有量は、該マトリックス層(2)の総重量に対して、少なくとも0.1~30.0重量%であり、0.1~20.0重量%であることが好ましく、0.2~20.0重量%であることがより好ましく、0.5~10.0重量%であることがより好ましく、0.8~5.0重量%であることがより好ましく、1.0~5.0重量%であることがより好ましく、1.0~3.0重量%であることがより好ましい。
【0056】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層は自己粘着性であることから、通常、WO2012/072650に記載のマトリックス層などで必要とされるような追加の自己粘着剤層をマトリックス層(2)上に配置する必要はない。しかし、本発明によれば、例えば、粘着力およびタックを向上させる目的で、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を設けてもよい。本発明の好ましい一実施形態では、本発明の経皮治療システムは、マトリックス層(2)と使用前に除去される剥離ライナー(4)の間に、最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層(3)を設けない。この実施形態によれば、マトリックス層(2)は、所望の期間にわたって皮膚に好適に粘着することができる十分な粘着性を有する。
【0057】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、本発明の経皮治療システムは、マトリックス層(2)と使用前に除去される剥離ライナー(4)の間に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を含む(図1B参照)。特に、いくつかの相からなるマトリックス層(2)を含む場合、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を設けることによって、有効成分を含むマトリックス層(2)からこの少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を通過して皮膚へと有効成分が拡散する距離が一定の層厚さになることから、インビトロで有効成分を溶出させる際に、有効成分を含む内相での様々な粒子径の分布をさらに向上させることができる。
【0058】
したがって、さらに好ましい一実施形態において、本発明の経皮治療システムは、マトリックス層(2)と使用前に除去される剥離ライナー(4)の間に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を含み、該感圧粘着剤層(3)が、該感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と、前記感圧粘着剤層(3)の総重量に対して少なくとも0.1重量%、好ましくは0.2~20.0重量%、より好ましくは1.0~5.0重量%のパラフィンとを含むことを特徴とする。すなわち、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)は、1種、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含んでいてもよい。
【0059】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、経皮治療システムの最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量は、該感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して60重量%を超える量であり、70重量%を超える量であることが好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、80重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、93重量%を超える量であることがさらに好ましく、95重量%を超える量であることがさらに好ましく、少なくとも99重量%であることがさらに好ましい。本発明の別の一実施形態において、経皮治療システムの最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)は、感圧粘着剤として非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含み、すなわち、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)は、その他のポリマー系粘着剤を含んでおらず、非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含んでいる。
【0060】
さらに好ましい一実施形態において、本発明の経皮治療システムにおける非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量は、経皮治療システムに含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量であり、60重量%を超える量であることが好ましく、70重量%を超える量であることがより好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、80重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、93重量%を超える量であることがさらに好ましく、95重量%を超える量であることがさらに好ましく、少なくとも99重量%であることがさらに好ましい(経皮治療システムは、1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含んでいてもよく、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤の混合物を含んでいてもよい)。別の一実施形態において、経皮治療システムは、感圧粘着剤として非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含み、すなわち、経皮治療システムは、その他のポリマー系粘着剤を含んでおらず、非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む。
【0061】
さらに好ましい一実施形態において、経皮治療システムは、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を含み、該感圧粘着剤層(3)中の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量、またはマトリックス層(2)と前記感圧粘着剤層(3)に含まれる非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤の含有量は、該感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して、またはマトリックス層(2)と前記感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤を合わせた総重量に対して、60重量%を超える量であり、70重量%を超える量であることがより好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、80重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、93重量%を超える量であることがさらに好ましく、95重量%を超える量であることがさらに好ましく、少なくとも99重量%であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の経皮治療システムのマトリックス層(2)の単位面積あたりの重量は特に限定されない。本発明の実施形態全般において、マトリックス層(2)の単位面積あたりの重量は30~70g/m2であり、30~60g/m2であることが好ましい。例えば、マトリックス層(2)や、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)などの、本発明の経皮治療システムを構成する層に関して述べる「単位面積あたりの重量」は、乾燥させた層の単位面積あたりの重量を指し、すなわち、経皮治療システムの調製工程において、乾燥させて溶媒を除去した後の各層の単位面積あたりの重量を指す。
【0063】
経皮治療システムがマトリックス層(2)以外に感圧粘着剤層を備えていない好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)の単位面積あたりの重量は、40~70g/m2であり、45~65g/m2であることが好ましく、約50~60g/m2であることがより好ましく、50~60g/m2であることがより好ましい。経皮治療システムがマトリックス層(2)以外に感圧粘着剤層を備えていないさらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)の単位面積あたりの重量は、約50g/m2または約60g/m2である。
【0064】
本明細書において、数値または数値範囲の前で使用される「約」という用語は、この用語によって示される数値または数値範囲が、これらの数値または数値範囲の±10%の範囲内または±5%の範囲内のあらゆる数値を含むことを意味し、いくつかの実施形態では、これらの数値または数値範囲の±1%の範囲内のあらゆる数値を含むことを意味する。
【0065】
経皮治療システムが、マトリックス層(2)に加えて、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を含む本発明の一実施形態において、マトリックス層(2)の単位面積あたりの重量は、30~70g/m2であり、40~70g/m2であることがより好ましく、45~65g/m2であることがより好ましく、約50~60g/m2であることがより好ましく、50~60g/m2であることがより好ましく、例えば約50g/m2または約60g/m2であり;最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の単位面積あたりの重量は、15~40g/m2であり、20~40g/m2であることが好ましく、20~35g/m2であることがより好ましく、25~35g/m2であることがより好ましく、約30g/m2であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の経皮治療システムにおいて、マトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して、またはマトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量と最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の総重量(設けられている場合)のそれぞれに対して、50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含む。
【0067】
好ましい一実施形態において、マトリックス層(1)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む。すなわち、この実施形態において、マトリックス層(2)に、1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみが含まれているか、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみが含まれているか、マトリックス層(2)と最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の両方に、1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみが含まれている。さらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる感圧粘着剤は、1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみからなる。
【0068】
さらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、2種以上、3種以上、4種またはそれ以上の種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含み、好ましくは、これらの非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のうちの少なくとも1種(すなわち1種以上)が中程度のタックを有し、別の少なくとも1種(すなわち1種以上)が高いタックを有する。さらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む。さらに好ましい別の一実施形態において、マトリックス層(2)は、1種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含み、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、2種類の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む。
【0069】
さらに好ましい別の一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種もしくは少なくともそれ以上の種類の、または2種、3種、4種もしくはそれ以上の種類の、分子量が異なる非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含む。
【0070】
本発明の経皮治療システムの好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、中程度のタックを有する少なくとも1種の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501)と、高いタックを有する少なくとも1種の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601)との混合物を含む。本発明の経皮治療システムのさらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、中程度のタックを有する非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501)と、高いタックを有する非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601)との混合物からなる。
【0071】
本発明の前記実施形態の好ましい一変形例において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、中程度のタックを有する非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501)と、高いタックを有する非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601)との混合物からなり、このマトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、その他の感圧粘着剤を含んでいない。
【0072】
マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤が、中程度のタックを有する少なくとも1種の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と、高いタックを有する少なくとも1種の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤との混合物を含むか、このような混合物からなる本発明の好ましい一実施形態において、中程度のタックを有する非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量は、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれるシリコーン系粘着剤の総重量に対して、0.0~55.0重量%であることが好ましく、0.0~45.0重量%であることがより好ましく、約0.0~35.0重量%であることがより好ましく、0.0~25.0重量%であることがより好ましく、かつ高いタックを有する非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量が、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれるシリコーン系粘着剤の総重量に対して、45.0~100.0重量%であることが好ましく、55.0~100.0重量%であることがより好ましく、65.0~100.0重量%であることがより好ましく、75.0~100.0重量%であることがより好ましい。経皮治療システムにマトリックス層(2)と最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)が設けられている場合、中程度のタックを有する非耐アミン性シリコーン系粘着剤と高いタックを有する非耐アミン性シリコーン系粘着剤の重量比は、これらの層において同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
本発明における非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、シラノール含有量が低減されていないシリコーン系粘着剤(すなわち、シラノール基が保護基で保護されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤)であってもよく、シラノール含有量が低減されたシリコーン系粘着剤(すなわち、一部のシラノール基のみが保護基で保護された非耐アミン性シリコーン系粘着剤)であってもよい。そのようなシラノール含有量が低減されていないシリコーン系粘着剤や、シラノールが部分的に低減されたシリコーン系粘着剤は、先行技術において知られている。非耐アミン性シリコーン系粘着剤として、例えば、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4502、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4602などの、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤が好ましく、あるいは、例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501やダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601などの、シラノール含有量がそれほど低減されていないことから、シラノールが部分的に低減されていても非耐アミン性シリコーン系粘着剤に分類されるシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤が好ましい。特に、非耐アミン性シリコーン系粘着剤としては、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501、およびダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601が好ましく、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501およびダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601がより好ましい。
【0074】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤の代わりに、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を使用すると、経皮治療システムの粘着力が増加する場合があることを見出した。本発明において、「シラノール含有量が低減された」とは、いわゆる非耐アミン性シリコーン系粘着剤において、シラノール基の一部が保護基で保護されていることを意味し、すなわち、本発明において、シラノール含有量が低減されたこのようなシリコーン系粘着剤は、シラノール基の一部が保護基で保護されていても、非耐アミン性シリコーン系粘着剤に分類される。シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、先行技術において知られており、例えば、米国特許公開第6,337,086号明細書に記載されている。シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤の例として、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4502およびダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4602が挙げられる。シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤として、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501およびダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601が好ましい。本発明の好ましい一実施形態によれば、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤中のシラノール含有量(ppm)は、約8000ppm~13000ppmであることが好ましく、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤中のシラノール含有量は、13000ppmを超えることが好ましく、これらの非耐アミン性シリコーン系粘着剤中のシラノール含有量は、例えば米国特許公開第6,337,086号で述べられているように、例えば、29Si-NMR測定法および/またはFTIR分光分析法により測定することができる。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、シラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含み、その含有量は、マトリックス層(2)に含まれる非耐アミン性シリコーン系粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量であることが好ましく、60重量%を超える量であることがより好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、95重量%を超える量であることがより好ましく、少なくとも99重量%であることがより好ましい。
【0076】
経皮治療システムが、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を含む本発明の好ましい一実施形態において、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、シラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含み、その含有量は、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる非耐アミン性シリコーン系粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量であることが好ましく、60重量%を超える量であることがより好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、95重量%を超える量であることがより好ましく、少なくとも99重量%であることがより好ましい。
【0077】
例えば、マトリックス層(2)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含んでいてもよく、その含有量は、マトリックス層(2)に含まれる非耐アミン性シリコーン系粘着剤の総重量に対して前述の重量割合であることが好ましい。同様に、例えば、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤も、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含んでいてもよく、その含有量は、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる非耐アミン性シリコーン系粘着剤の総重量に対して前述の重量割合であることが好ましい。
【0078】
本発明者らによる実験の結果によれば、高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601)を使用することによって、フルオロシリコーンでコーティングされた箔からなる剥離ライナー(4)(例えば、Scotchpak 9709(3M社))を使用した場合であっても、保存期間中に引き剥がし力が有意に増加する場合があることが分かった。驚くべきことに、本発明者らは、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501)と、高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601)との混合物を使用することによって、保存期間中の引き剥がし力の増加を有意に低下させることができることを見出した。
【0079】
したがって、マトリックス層(2)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤が、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含むか、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤のみからなる本発明の一実施形態において、マトリックス層(2)は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501)と、高いタックを有するシラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601)との混合物を含むことが好ましい。
【0080】
経皮治療システムが、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)を含み、かつ最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤が、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含むか、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤のみからなる本発明の別の一実施形態において、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501)と、高いタックを有するシラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601)との混合物を含むことが好ましい。
【0081】
マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤が、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と高いタックを有するシラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤との混合物を含むか、このような混合物からなる本発明の好ましい一実施形態において、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量は、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれるシリコーン系粘着剤の総重量に対して、10.0~40.0重量%であることが好ましく、15.0~35.0重量%であることがより好ましく、約17.5~30.0重量%であることがより好ましく、17.5~30.0重量%であることがより好ましく、高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤の含有量は、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれるシリコーン系粘着剤の総重量に対して、60.0~90.0重量%であることが好ましく、65.0~85.0重量%であることがより好ましく、約70.0~82.5重量%であることがより好ましく、70.0~82.5重量%であることがより好ましい。経皮治療システムにマトリックス層(2)と最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)が設けられている場合、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤と高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤の重量比は、これらの層において同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含む経皮治療システムの前記実施形態の好ましい一変形例において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみからなる。この実施形態のさらに好ましい一変形例において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、感圧粘着剤として、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含む。
【0083】
シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含む経皮治療システムの前記実施形態のさらに好ましい別の一変形例において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501)と、高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601)との混合物のみからなる。
【0084】
本発明の二層製剤の好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501)のみからなり、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501)と、高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤(例えば、ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4601)との混合物のみからなる。本発明の二層製剤のさらに好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみからなり、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる感圧粘着剤は、中程度のタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤と高いタックを有するシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤との混合物のみからなる。
【0085】
シラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含む前記実施形態の好ましい一変形例において、シラノール含有量が低減された1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤の代わりに、シラノール含有量が低減されていない1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤が使用される。すなわち、例えば、本発明の好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、シラノール含有量が低減されていない1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を含み、その含有量は、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる非耐アミン性シリコーン系粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量であることが好ましく、60重量%を超える量であることがより好ましく、75重量%を超える量であることがより好ましく、85重量%を超える量であることがより好ましく、90重量%を超える量であることがより好ましく、95重量%を超える量であることがより好ましく、少なくとも99重量%であることがより好ましい。別の態様として、例えば、前記実施形態の好ましい一変形例において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみからなる。
【0086】
例えば、前記マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)に含まれる1種以上の非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤は、2種、3種、4種またはそれ以上の種類の、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤をさらに含んでいてもよく、その含有量は、マトリックス層(2)または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)に含まれる非耐アミン性シリコーン系粘着剤の総重量に対して前述の重量割合であることが好ましい。シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤は当業者に知られている。シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤として、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4601、ダウコーニングのBIO-PSA 7-4502、およびダウコーニングのBIO-PSA 7-4602が好ましい。
【0087】
前記実施形態はいずれも、経皮治療システムのマトリックス層(2)および/もしくは最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)ならびに/または経皮治療システムの全体が、感圧粘着剤として、シリコーン系粘着剤のみを含むように好適に設計してもよい。さらに、前記実施形態はいずれも、経皮治療システムのマトリックス層(2)および/もしくは最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)ならびに/または経皮治療システムの全体が、シリコーン系感圧粘着剤として、非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含むように好適に設計してもよく、すなわち、マトリックス層(2)および/もしくは最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)ならびに/または経皮治療システムの全体が、耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤を含まず、非耐アミン性シリコーン系感圧粘着剤のみを含むように好適に設計してもよい。
【0088】
本発明の経皮治療システムの貼付期間は1日であることが好ましく、すなわち、本発明の経皮治療システムは、1日経過後に皮膚から取り除くことが好ましい。本発明の経皮治療システムは、通常、長期療法(数ヶ月、さらには数年)に使用されることから、1日経過後に経皮治療システムを取り除いた後、新たな本発明による経皮治療システムを皮膚に貼付する。
【0089】
しかし、本発明の経皮治療システムは、1日よりも長い期間使用してもよく、例えば、2日間や3日間にわたり使用してもよい。この場合、2日後または3日後に、本発明の経皮治療システムを、別の新たな経皮治療システムと取り替える。
【0090】
粘着性マトリックス層は、使用時にヒト皮膚とは反対側になる面に裏打ち層(1)を備えているが、より好ましい一実施形態では、この裏打ち層(1)は有効成分を遮断し、すなわち、有効成分を透過しない。また、裏打ち層は、光の大部分を透過しないことが特に好ましい。一実施形態において、このような裏打ち層は、ポリエステル、ポリオレフィン(特にポリエチレン)またはポリウレタンで構成することができる。種類の異なる複数のポリマーを積層した裏打ち層を有利に使用することもできる。裏打ち層は、水蒸気に対して高い不透過性を有することが好ましい。
【0091】
裏打ち層の素材として、ポリエステルが好ましく、例えば、内層がポリエステルで構成され、中間層がアルミニウムのバリア層であり、外層が着色されたポリエチレンで構成された複合箔の形態であることが好ましい。裏打ち層として、例えば、Scotchpak 1109もしくはScotchpak 9738の商品名で3M社から販売されているポリエステル製の箔、またはホスタファン(登録商標)MN 19、ホスタファンMN 19 MedもしくはホスタファンMN 15 Medの商品名で三菱ポリエステルフィルム社から販売されているポリエステル製の箔が特に好ましい。単層製剤用としては、例えば、Scotchpak 9738が特に好ましく、二層製剤用としては、例えば、ホスタファンMN 19 Medが特に好ましい。
【0092】
その他の好適な素材としては、セロファン、酢酸セルロース、エチルセルロース、可塑剤を含む酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-メタクリレートコポリマー、コーティングされていてもよい紙類、ポリエチレンテレフタレート箔などの布帛、アルミニウム箔、ポリマー-金属複合材料が挙げられる。
【0093】
本発明の経皮治療システムの裏打ち層(1)の厚さは特に限定されない。好ましい一実施形態において、裏打ち層(1)はポリエステル箔を含み、その厚さは、35μm未満であることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、10~25μmであることがより好ましく、15~23μmであることが特に好ましい。別の一実施形態において、裏打ち層(1)はポリエステル箔からなり、その厚さは、70μm未満であることが好ましく、15~65μmであることがより好ましく、25~60μmであることがより好ましく、30~60μmであることが特に好ましく、49~60μmであることが特に好ましく、31~37μmであることがさらに特に好ましい。
【0094】
本発明の貼付剤の裏打ち層(1)には、特に、少量のマトリックス材料が漏れた場合に貼付剤が包装に張り付くのを防止するカバー層を設けることができる。カバー層は、裏打ち層上に緩く配置され、静電力によって保持されていることが好ましい。このようなカバー層は先行技術において公知であり、例えば、欧州特許公開第1 097 090号に記載されている(この文献はこの事項に関して全体が援用される)。カバー層は、少なくとも裏打ち層に配置される面が非粘着性であり、例えばフッ素やフルオロシリコーンなどでコーティングされている。
【0095】
本発明の経皮治療システムは、使用前に除去される剥離ライナー(4)をさらに含む。剥離ライナー(4)はマトリックス層(2)上に配置され、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)が設けられている場合は、この少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)上に配置される(例えば、図1(A)および図1(B)をそれぞれ参照されたい)。この態様において、使用前に除去される剥離ライナー(4)は、経皮治療システムの最外層に配置されて、この剥離ライナー(4)の片面が経皮治療システムの外面を構成することが好ましい。最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層(3)が設けられていない場合、使用前に除去される剥離ライナー(4)は、マトリックス層(2)と直接接触し、この剥離ライナー(4)の反対側の面が、経皮治療システムの外面を構成することが好ましい。最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層(3)が設けられている場合、この追加の感圧粘着剤層(3)は、マトリックス層(2)と使用前に除去される剥離ライナー(4)の間に配置され、マトリックス層(2)および/または剥離ライナー(4)と直接接触していることが好ましい。最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層(3)が2つ以上設けられている場合、そのうちのいくつかが、マトリックス層(2)と使用前に除去される剥離ライナー(4)の間に位置し、マトリックス層(2)から最も遠い位置にある感圧粘着剤層(3)が剥離ライナー(4)と直接接触していることが好ましい。
【0096】
使用前に除去される剥離ライナー(4)は、金属でコーティングされていてもよいポリマー材料で構成されていることが好ましい。剥離ライナーとしての使用に好ましいポリマー材料としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこのようなポリマーで表面がコーティングされていてもよい紙類が挙げられる。剥離ライナー(4)は、片面または両面がフルオロシリコーンでコーティングされていることが好ましい。フルオロシリコーンでコーティングされた市販のポリエステル箔が特に好ましく、例えば、フルオロシリコーンでコーティングされた製品であるScotchpak 9709(3M社)などが挙げられる。好ましい一実施形態において、経皮治療システムは、フルオロシリコーンでコーティングされた箔、好ましくはフルオロシリコーンでコーティングされたポリエステル箔からなる使用前に除去される剥離ライナー(4)をさらに含む。
【0097】
好ましい一実施形態において、本発明の経皮治療システムは、裏打ち層(1)と、該裏打ち層上に配置されたマトリックス層(2)と、該マトリックス層上に配置された使用前に除去される剥離ライナー(4)とからなる。
【0098】
さらに好ましい一実施形態において、本発明の経皮治療システムは、裏打ち層(1)と;該裏打ち層上に配置されたマトリックス層(2)と;該マトリックス層と使用前に除去される剥離ライナー(4)の間に配置された最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)と;該少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層上に配置された使用前に除去される剥離ライナー(4)とからなる。
【0099】
本発明によれば、有効成分はマトリックス層(2)に含まれる。有効成分は、ロチゴチンまたはその薬学的に許容される塩であり、ロチゴチンであることが好ましい。本発明では、ロチゴチンの多形体を使用することもでき、ロチゴチンの多形体は特に限定されないが、安定性の理由から、WO2009/068520に記載の多形体IIのロチゴチンが好ましい。多形体IIのロチゴチンの調製およびその特性評価の詳細に関しては、WO2009/068520を参照されたい。
【0100】
有効成分は、マトリックス層(粘着性マトリックス)中に完全に溶解していることが好ましく、すなわち、マトリックス層は、有効成分の固体粒子を含まないことが好ましい。マトリックス層(2)中のロチゴチンの含有量は、該マトリックス層(2)の総重量に対して、5重量%~25重量%の範囲であることが好ましく、6重量%~20重量%の範囲であることがより好ましく、6重量%~15重量%の範囲であることがより好ましく、6.5重量%~11.5重量%の範囲であることがより好ましく、例えば6.875~9重量%、特に約7.5~9重量%であることがより好ましい。
【0101】
本発明によれば、有効成分は、マトリックス層(粘着性マトリックス)に含まれ、マトリックス層に含まれる固体分散体の分散相中に実質的に非晶質形態で含まれることが好ましく、この分散相において、1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤と任意の別のポリマー系粘着剤とにより分散剤が構成されていることが好ましい。好ましい一実施形態において、分散相は、非晶質形態のロチゴチンに加えて、ポリビニルピロリドンを含む。本明細書において、「実質的に」は、50%を超えること、特に90%を超えることを意味し、特に好ましくは、99%を超えることまたは100%であることを意味する。
【0102】
ロチゴチンは、シリコーン系粘着剤にほとんど溶解しないが、例えば、ポリビニルピロリドンなどの結晶化抑制剤には良好に溶解する。したがって、本発明の経皮治療システムの好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)は、非耐アミン性シリコーン系粘着剤に加えて、該マトリックス層に分散されたポリビニルピロリドンをさらに含む。ロチゴチンは、マトリックス層に完全に溶解していることが好ましく、すなわち、シリコーン系粘着剤中のロチゴチンの含有量が、沈殿や結晶化を起こさない程度に少なく、分散されたポリビニルピロリドン中にロチゴチンの大部分が溶解していること(または少なくとも非晶質形態で存在すること)が好ましい。
【0103】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、N-ビニルピロリドンのモノマー単位から構成されるポリマーである。ポリビニルピロリドンは、シリコーン系粘着剤の凝集力を増強させることが知られている。さらに、ポリビニルピロリドンは、有効成分であるロチゴチンの結晶化抑制剤としても機能することができる。ポリビニルピロリドンの(平均重量分子量としての)分子量は、2,000~2,500,000ダルトン(g/mol)であってもよく、700,000~1,500,000ダルトンであることが好ましく、900,000~1,500,000ダルトンであることがより好ましい。様々な品質のPVPが入手可能であり、例えば、BASF AG(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)から、例えば、コリドンの製品名で市販されている。例えば、水溶性PVPであるコリドンとして、K-12 PF(分子量=2,000~3,000ダルトン)、K-17 PF(分子量=7,000~11,000ダルトン)、K-25(分子量=28,000~34,000ダルトン)、K-30(分子量=44,000~54,000ダルトン)、およびK-90(分子量=900,000~1,500,000ダルトン)が挙げられる。好ましい一実施形態において、ポリビニルピロリドンの分子量は、28,000~1,500,000ダルトン(g/mol)である。
【0104】
本発明者らは、驚くべきことに、マトリックス層(2)の感圧粘着剤の総重量に対して50重量%を超える量の1種以上の非耐アミン性シリコーン系粘着剤と、有効成分としてのロチゴチンとをマトリックス層に含む経皮治療システムにおいて、マトリックス層中の固体分散体の分散相に、ロチゴチンとポリビニルピロリドンが9:6.4の重量比で含まれる場合、特にロチゴチンが、ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比として9:7の比率以下で含まれる場合、25℃以上の温度で長期間保存しても結晶化が起こらないことを見出した。一方、ポリビニルピロリドンに対するロチゴチンの重量比が大きくなると、例えば、ロチゴチンの含有量が、ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比として表した場合に9:5の比率以上であると、25℃以上の温度で長期間保存すると結晶化が起こる恐れがある。したがって、本発明によれば、ポリビニルピロリドンに対するロチゴチンの重量比を大きくすることも可能ではあるが、好ましくない。
【0105】
したがって、本発明の経皮治療システムの好ましい一実施形態において、ロチゴチンは、マトリックス層中の固体分散体において、ポリビニルピロリドン(PVP)を含む分散相中に実質的に非晶質形態で含まれ、ロチゴチンの含有量は、ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比として表した場合に、9:6.4の比率以下であり、9:6.5の比率以下であることが好ましく、特に9:7の比率以下であることが好ましい。ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比は、少なくとも9:11であることが好ましく、少なくとも9:10であることがより好ましく、特に少なくとも9:9であることが好ましい。ロチゴチンとポリビニルピロリドンの重量比は、9:7~9:10の範囲であることが好ましい。このような重量比の場合、マトリックス層は、その総重量に対して、例えば、5.14~12.86重量%のロチゴチンと4~10重量%のポリビニルピロリドンを含むことができ、または6.88~9重量%のロチゴチンと5.35~7重量%のポリビニルピロリドンを含むことができる。本発明のさらに好ましい一実施形態では、マトリックス層中の固体分散体において、ポリビニルピロリドン(PVP)を含む分散相に含まれる非晶質形態のロチゴチンの含有量は、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも97.5重量%である。
【0106】
経皮治療システムのマトリックス層において、ロチゴチンと組み合わせて使用するのに適したポリビニルピロリドンは、先行技術において知られている。そのようなポリビニルピロリドンは、例えば、WO2011/076879に記載されている。本発明において好ましいポリビニルピロリドンは、PVP K90(BASF SE)である。ポリビニルピロリドンK-90(PVP K90)が特に好ましい。
【0107】
マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)は、非耐アミン性シリコーン系粘着剤以外の別の種類のポリマー系粘着剤(すなわち感圧粘着剤)を含んでいてもよい。マトリックス層(2)における非耐アミン性シリコーン系粘着剤以外の別の種類のポリマー系粘着剤の重量割合は、該マトリックス層(2)に含まれる感圧粘着剤の総重量に対して50重量%未満であり、40重量%未満であることが好ましく、30重量%未満であることがより好ましく、20重量%未満であることがより好ましく、10重量%未満であることがより好ましく、5重量%未満であることがより好ましい。経皮治療システムに、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)が設けられている場合、この感圧粘着剤層(3)における非耐アミン性シリコーン系粘着剤以外の別の種類のポリマー系粘着剤の重量割合は、この感圧粘着剤層(3)の総重量に対して50重量%未満であり、40重量%未満であることが好ましく、30重量%未満であることがより好ましく、20重量%未満であることがより好ましく、10重量%未満であることがより好ましく、5重量%未満であることがより好ましい。そのような別の種類のポリマー系粘着剤は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、SBSブロックコポリマーまたはポリイソブチレンである。
【0108】
ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸は先行技術において知られており(例えば米国特許公開第2002/0077437号を参照されたい)、経皮治療システムにおいて様々な用途で使用されている。ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸は、通常、それぞれアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体(特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル)のラジカル重合によって調製される。例えば、酢酸ビニルなどのその他の適切な化合物を、追加のモノマーとしてさらに共重合させることもできる。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸は、例えば、多価金属イオンなどを用いて架橋することにより、その特性を変更することができる。架橋されたポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸、または架橋されていないポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸は市販されており、その供給業者として、ヘンケル社(またはNational Starch社)があり、「DURO-TAK」という商品名でポリアクリル酸およびポリメタクリル酸を販売している。
【0109】
ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の例として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルブチル、メタクリル酸2-エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸tert-ブチルアミノエチル、メタクリル酸tert-ブチルアミノエチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチルなどから選択されるモノマーのコポリマーまたはターポリマーが挙げられる。コモノマーとして、アクリルアミド、ジメチルアミド、アクリロニトリルまたは酢酸ビニルを使用してもよい。適切なアクリル系粘着剤のさらに別の例は、例えば、Satasによる文献に記載されている(Acrylic Adhesives, Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology, 2nd edition, pages 396-456 (D. Satas編) van Nostrand Reinhold, New York (1989))。本明細書において、ポリアクリル酸について述べる場合、これに対応するポリメタクリル酸も指す。
【0110】
ポリイソブチレンは先行技術において知られており、市販されている。例えば、BASF社(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)により販売されている製品であるオパノールがある。適切なポリイソブチレンとして、例えば、オパノールB50、オパノールN50、オパノールB80、オパノールN80、オパノールB100、オパノールN100、オパノールB150、オパノールN150、オパノールB200およびオパノールN200;オパノールB10 SFNまたはオパノールB15 SFN;ならびにオパノールB10およびオパノールB15が挙げられる。例えば、オパノールB80、オパノールB100、オパノールB150およびオパノールB200ならびに好ましくはオパノールB80およびオパノールB100から選択されるポリイソブチレンと、オパノールB10 SFNおよびオパノールB15 SFNから選択される第2のポリイソブチレンとの混合物を使用することもできる。
【0111】
別段の明確な記載がない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、本発明の説明において述べるポリマーの分子量は、常に重量平均分子量(Mw)を指す。当業者であれば熟知しているように、重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPCなどにより測定することができる。
【0112】
本発明の経皮治療システムにおいて、有効成分としてのロチゴチンと前述の感圧粘着剤とを含み、任意でポリビニルピロリドンを含んでいてもよいマトリックス層は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0113】
例えば、マトリックス層に経皮吸収促進剤を添加することによって、皮膚を通して有効成分を十分に透過させることができる。適切な経皮吸収促進剤は知られている。適切な経皮吸収促進剤として、例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、グリセリンおよびグリセリン誘導体、n-メチルピロリドン、ならびにテルペンおよびテルペン誘導体(例えば、D-リモネン、α-ピネン、α-テルピネオール、カルボン、カルベオール、リモネン酸化物、ピネン酸化物、1,8-ユーカリプトールなど)が挙げられる。しかし、本発明の経皮治療システムは、このような経皮吸収促進剤を含まないことが好ましい。
【0114】
さらに、マトリックス層(2)に1種以上の可塑剤を添加することができる。適切な可塑剤も先行技術において知られており、例えば、鉱油やポリブテンをベースとする可塑剤を挙げることができる。一実施例において、マトリックス層(2)および/または最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)(設けられている場合)は、1種以上の添加剤を含み、好ましくは可塑剤を含む。
【0115】
本発明の好ましい一実施形態において、マトリックス層(2)は、ロチゴチンの化学的安定性を向上させる1種以上の添加剤をさらに含み、このような添加剤として、例えば、酸化防止剤が挙げられ、具体的には、トコフェロールおよびその誘導体(特にエステル)、ブチルヒドロキシトルオール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸およびその誘導体(特にエステル)、および/またはメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態において、マトリックス層(2)は、トコフェロールと、パルミチン酸アスコルビルと、メタ重亜硫酸ナトリウムとを含み、例えば、マトリックス層(2)の総重量に対して、約0.05~0.125重量%のトコフェロールと、0.0~0.1重量%のパルミチン酸アスコルビルと、0.0~0.0021重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムとを含む。最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)には、酸化防止剤やメタ重亜硫酸ナトリウムを添加しないことが好ましい。
【0116】
本発明の経皮治療システムは、有効成分としてロチゴチンの投与が適用されるあらゆる疾患の治療に使用することができる。しかし、本発明の経皮治療システムは、パーキンソン病の治療に使用することが特に好ましい。
【0117】
本発明の経皮治療システムは、自体公知の方法で調製することができる。例えば、単層製剤の調製では、適切な溶媒に、経皮治療システムのマトリックス層の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように攪拌して、均質な塗工液を得る。次に、この均質な塗工液を、裏打ち層(1)または好ましくは剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する。次に、得られたマトリックス層(2)上に、これ以外の層すなわち剥離ライナー(4)または好ましくは裏打ち層(1)を積層し、適切な大きさに打ち抜いて、経皮治療システムを得る。
【0118】
したがって、好ましい一実施形態によれば、本発明は、さらに、本発明の経皮治療システムの前記実施形態のいずれかによる単層製剤としての経皮治療システムを調製する方法であって、
a)適切な溶媒に、経皮治療システムのマトリックス層(2)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように混合することによって、均質な塗工液を調製する工程;
b)前記均質な塗工液を、裏打ち層(1)または好ましくは剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する工程;および
c)得られたマトリックス層(2)上に、これ以外の層すなわち剥離ライナー(4)または好ましくは裏打ち層(1)を積層し、適切な大きさに打ち抜いて、経皮治療システムを得る工程
を含む方法に関する。
【0119】
二層製剤または多層製剤の調製では、例えば、適切な溶媒に、経皮治療システムの有効成分含有マトリックス層(2)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように攪拌し、第1の均質な塗工液を得る。次に、攪拌と均質化を行ったこの第1の塗工液を、裏打ち層(1)または好ましくは仮止め用剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する。次に、得られたマトリックス層(2)上に、これ以外の層すなわち仮止め用剥離ライナー(4)または好ましくは裏打ち層(1)を積層する(経皮治療システムの第1の前駆体が得られる)。次に、適切な溶媒に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように攪拌し、別の塗工液を得る。次に、この別の塗工液を剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する(経皮治療システムの第2の前駆体が得られる)。最後に、経皮治療システムの第1の前駆体から仮止め用剥離ライナー(4)を剥がして、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)と剥離ライナー(4)からなる前駆体(経皮治療システムの第2の前駆体)に積層して、裏打ち層(1)と、有効成分を含むマトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)と、剥離ライナー(4)とをこの順序で含む積層体、またはこの順序で積層されたこれらの層からなる積層体を得て、この積層体を適切な大きさに打ち抜くことにより経皮治療システムを得る。
【0120】
したがって、第2の好ましい実施形態によれば、本発明は、さらに、経皮治療システムを調製する方法であって、
a)経皮治療システムの第1の前駆体を調製する工程として、
a1)適切な溶媒に、マトリックス層(2)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように混合することによって、第1の均質な塗工液を調製する工程;
a2)第1の均質な塗工液を、裏打ち層(1)または好ましくは仮止め用剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する工程;および
a3)得られたマトリックス層(2)上に、これ以外の層すなわち仮止め用剥離ライナー(4)または好ましくは裏打ち層(1)を積層する工程
を含み、
b)前記経皮治療システムの第2の前駆体を調製する工程として、
b1)適切な溶媒に、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)の構成成分をすべて同時に加え、所望の均質性を有するように混合することによって、別の均質な塗工液を調製する工程;および
b2)前記別の均質な塗工液を剥離ライナー(4)に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する工程
を含み、
c)a)の第1の前駆体から前記仮止め用剥離ライナー(4)を除去する工程;
第1の前駆体と第2の前駆体を積層して、前記裏打ち層(1)と、有効成分を含む前記マトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない前記少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)と、前記剥離ライナー(4)とをこの順序で含む積層体、またはこの順序で積層されたこれらの層からなる積層体を得る工程;および
前記積層体を適切な大きさに打ち抜いて、経皮治療システムを得る工程
を含む方法に関する。
【0121】
前述の経皮治療システムの調製方法では、自体公知の方法により中間の製造工程を実施することによって、追加の層をさらに挿入することができる。例えば、有効成分の放出を制御するための膜を、最初は有効成分が含まれていない少なくとも1つの追加の感圧粘着剤層(3)とマトリックス層の間に挿入することができる。別の方法として、例えば、最初は有効成分が含まれていない少なくとも2つの追加の感圧粘着剤層(3)を含む経皮治療システムを調製してもよい。この経皮治療システムは、例えば、本発明の経皮治療システムの調製方法の第2の好ましい実施形態に従って調製された二層製剤の形態の経皮治療システムから剥離ライナー(4)を除去し、この二層製剤に、例えば、(本発明の経皮治療システムの調製方法の第2の好ましい実施形態の)工程b)に従って調製された第2の前駆体をさらに積層して、裏打ち層(1)と、有効成分を含むマトリックス層(2)と、最初は有効成分が含まれていない第1および第2の追加の感圧粘着剤層(3)と、剥離ライナー(4)とをこの順序で含む積層体を得た後、この積層体を適切な大きさに打ち抜いて、経皮治療システムを得ることによって調製することができる。このようにして、追加の層を経皮治療システムに挿入することができる。
【実施例
【0122】
以下の実施例によって本発明を説明する。「%」は、常に「重量%」を意味する。
【0123】
実施例1a:単層製剤(616ROTTSを一例とした試験製剤の調製)
【表1】
【0124】
1%(w/w%)メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液を調製した。次に、25%(w/w %)PVP K90のエタノール溶液を調製した。適切なガラス容器にPVP溶液を入れ、これに対応する量のメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を加え、約15分間攪拌した。パルミチン酸アスコルビルとトコフェロールを加え攪拌した。次に、得られた混合物を水浴中で加熱し攪拌しながら、有効成分としてのロチゴチンを徐々に加え、ロチゴチンが完全に溶解するまで約60℃で攪拌した。混合物が冷えてから、複数の種類のシリコーン系粘着剤を連続して加え、短時間攪拌した。次に、溶媒としてのヘプタンを加えて全体量を調整し、攪拌した。最後に、パラフィンを加えた。得られた塗工液を、すべての成分が均質に分散されたことが目視で確認できるまで攪拌した。次に、適切な分散器(Ultra-Turrax)を用いて、例えば、約10000rpmで約3分間塗工液を均質化した。このようにして均質化した塗工液を、フッ素でコーティングされた箔(例えば、ScotchpakTM 9709/1022/9744)に塗布して薄膜を形成させ、例えば85℃で10分間加熱して溶媒をほぼ完全に除去した。乾燥させたマトリックスの単位面積あたりの重量は約60g/m2であった。このマトリックスに、剥離ライナー(例えば、19μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる剥離ライナー、またはポリエチレンとアルミニウムとポリエステルからなる剥離ライナー)を積層した。
【0125】
実施例1b:単層製剤(IMPD 631ROTTDSを一例とした試験製剤の調製)
【表2】
【0126】
1%(w/w%)メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液を調製した。次に、25%(w/w %)PVP K90のエタノール溶液を調製した。適切なガラス容器にPVP溶液を入れ、これに対応する量のメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を加え、約30分間攪拌した。パルミチン酸アスコルビルとトコフェロールを加え攪拌した。次に、得られた混合物を水浴中で加熱し攪拌しながら、有効成分としてのロチゴチンを徐々に加え、ロチゴチンが完全に溶解するまで約60℃で攪拌した。混合物が冷えてから、複数の種類のシリコーン系粘着剤を連続して加え、短時間攪拌した。次に、溶媒としてのヘプタンを加えて全体量を調整し、攪拌した。最後に、パラフィンを加えた。得られた塗工液を、すべての成分が均質に分散されたことが目視で確認できるまで攪拌した。次に、適切な分散器(Ultra-Turrax)を用いて、例えば、約10000rpmで約3分間塗工液を均質化した。このようにして均質化した塗工液を、フッ素でコーティングされた箔(例えば、ScotchpakTM 9709)に塗布して薄膜を形成させ、約45℃、約60℃、約80℃または約99℃の4つの区画を備えた全長約52cmのトンネル乾燥機で約0.16m/分の速度で加熱して溶媒をほぼ完全に除去した。乾燥させたマトリックスの単位面積あたりの重量は約50g/m2であった。このマトリックスに、剥離ライナー(例えば、19μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる剥離ライナー)を積層した。
【0127】
実施例2a:二層製剤(618_617ROTTDSを一例とした試験製剤の調製)
【表3】
【0128】
まず、マトリックス層(2)を調製した。マトリックス層(2)を調製するため、1%(w/w%)メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液と、25%(w/w %)PVP K90のエタノール溶液を調製した。適切なガラス容器にPVP溶液を入れ、これに対応する量のメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を加え、少なくとも約15分間攪拌した。パルミチン酸アスコルビルとトコフェロールを加え攪拌した。次に、得られた混合物を水浴中で加熱し攪拌しながら、有効成分としてのロチゴチンを徐々に加え、ロチゴチンが完全に溶解するまで約60℃で攪拌した。混合物が冷えてから、複数の種類のシリコーン系粘着剤を連続して加え、短時間攪拌した。次に、溶媒としてのヘプタンを加えて全体量を調整し、攪拌した。得られた塗工液を、すべての成分が均質に分散されたことが目視で確認できるまで攪拌した。次に、フッ素でコーティングされた箔(例えば、ScotchpakTM 9709/1022/9744)に塗工液を塗布して薄膜を形成させ、例えば85℃で10分間加熱して溶媒をほぼ完全に除去した。乾燥させたマトリックスの単位面積あたりの重量は約50g/m2であった。このマトリックスに、剥離ライナー(例えば、19μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる剥離ライナー)を積層した。
【0129】
次に、最初は有効成分が含まれていない粘着剤層(3)を調製するため、適切なガラス容器に複数の種類のシリコーン系粘着剤を加え、短時間攪拌した。次に、パラフィンと、全体量を調整するための溶媒としてのヘプタンを順に加えて攪拌した。得られた塗工液を、すべての成分が均質に分散されたことが目視で確認できるまで攪拌した。次に、フッ素でコーティングされた箔(例えば、ScotchpakTM 9709/1022/9744)に塗工液を塗布して薄膜を形成させ、例えば85℃で10分間加熱して溶媒をほぼ完全に除去した。乾燥させた粘着剤層(3)のマトリックスの単位体積あたりの重量は25~30g/m3であった。最初は有効成分が含まれていない粘着剤層(3)の剥離ライナーを剥がして該粘着剤層(3)のマトリックスを露出させ、むき出しになった該粘着剤層(3)のマトリックスに前記マトリックス層を積層した。
【0130】
実施例2b:二層製剤(629_628ROTTDSを一例とした試験製剤の調製)
【表4】
【0131】
まず、マトリックス層(2)を調製した。マトリックス層(2)を調製するため、1%(w/w%)メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液と、25%(w/w %)PVP K90のエタノール溶液を調製した。適切なガラス容器にPVP溶液を入れ、これに対応する量のメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を加え、約30分間攪拌した。パルミチン酸アスコルビルとトコフェロールを加え攪拌した。次に、得られた混合物を水浴中で加熱し攪拌しながら、有効成分としてのロチゴチンを徐々に加え、ロチゴチンが完全に溶解するまで約60℃で攪拌した。混合物が冷えてから、複数の種類のシリコーン系粘着剤を連続して加え、短時間攪拌した。次に、溶媒としてのヘプタンを加えて全体量を調整し、攪拌した。得られた塗工液を、すべての成分が均質に分散されたことが目視で確認できるまで攪拌した。次に、フッ素でコーティングされた箔(例えば、ScotchpakTM 9709)に塗工液を塗布して薄膜を形成させ、約45℃、約60℃、約80℃または約99℃の4つの区画を備えた全長約52cmのトンネル乾燥機で約0.16m/分の速度で加熱して溶媒をほぼ完全に除去した。乾燥させたマトリックスの単位面積あたりの重量は約50g/m2であった。このマトリックスに、剥離ライナー(例えば、19μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる剥離ライナー)を積層した。
【0132】
次に、最初は有効成分が含まれていない粘着剤層(3)を調製するため、適切なガラス容器に複数の種類のシリコーン系粘着剤を加え、短時間攪拌した。次に、パラフィンと、全体量を調整するための溶媒としてのヘプタンを順に加えて攪拌した。得られた塗工液を、すべての成分が均質に分散されたことが目視で確認できるまで攪拌した。次に、フッ素でコーティングされた箔(例えば、ScotchpakTM 9709)に塗工液を塗布して薄膜を形成させ、例えば85℃で5分間加熱して溶媒をほぼ完全に除去した。乾燥させた粘着剤層(3)のマトリックスの単位面積あたりの重量は25~30g/m2であった。最初は有効成分が含まれていない粘着剤層(3)の剥離ライナーを剥がして該粘着剤層(3)のマトリックスを露出させ、むき出しになった該粘着剤層(3)のマトリックスに前記マトリックス層を積層した。

WpUA [g/m2]: 単位面積あたりの重量
PVP K90: ポリビニルピロリドンK-90 (BASF SE)
rh: 相対湿度
RSD: 相対標準偏差
RS: マトリックス層
HS: 最初は有効成分が含まれていない粘着剤層
mon: 月数
RT: 室温
【0133】
このようにして調製した経皮治療システムは、例えば、概して以下の組成を有する。
【0134】
有効成分を含むマトリックス層を備えた単層製剤であって、前記マトリックス層が、該マトリックス層の総重量に対して特定の重量比および重量割合で含まれるロチゴチンとPVP K90;0~3重量%の流動パラフィン;1種または2種の、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤またはシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤(ダウコーニング)の様々な組み合わせ;ならびに少なくとも1種の酸化防止剤(例えば、0.05~0.1重量%のトコフェロール、0.02~0.1重量%のパルミチン酸アスコルビルおよび0.0006~0.0021重量%のメタ重亜硫酸ナトリウム)を含み、前記マトリックスの単位面積あたりの重量が約50~60g/m2であることを特徴とする単層製剤。
【0135】
有効成分を含むマトリックス層と、最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層(3)とを備えた二層製剤であって、前記マトリックス層が、該マトリックス層の総重量に対して特定の重量比および重量割合で含まれるロチゴチンとPVP K90;シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤(BIO-PSA 7-4501)またはシラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤(BIO-PSA SRS7-4501)(ダウコーニング);ならびに少なくとも1種の酸化防止剤(例えば、0.05~0.1重量%のトコフェロールおよび/または0.02~0.1重量%のパルミチン酸アスコルビルならびに0.0006~0.0021重量%のメタ重亜硫酸ナトリウム)を含み、前記マトリックスの単位面積あたりの重量が約2550g/m2であること;ならびに前記感圧粘着剤層(3)が、1種または2種の、シラノールを含まない非耐アミン性シリコーン系粘着剤(ダウコーニング)の様々な組み合わせ、および0~3重量%の流動パラフィンを含むことを特徴とする二層製剤。
【0136】
以下の特定の単層製剤と二層製剤を調製した。
【0137】
A)複数の種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を様々な混合比率で含むパラフィン非含有単層製剤
マトリックス層に、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601を様々な混合比率で含むか、BIO-PSA 7-4501とBIO-PSA 7-4601を様々な混合比率で含み、パラフィンを含まない様々な単層製剤を調製した。これらの単層製剤では、裏打ち層としてのScotchpak 1109(3M社)またはホスタファンMN 19(三菱ポリエステルフィルム社)と、剥離ライナーとしてのScotchpak 1022、Scotchpak 9744またはScotchpak 9709(3M社)を様々に組み合わせて使用した。調製した経皮治療システムを様々な期間にわたり25℃または40℃で保存し、引き剥がし力、粘着力およびタックを調べた。さらに、いくつかの製剤については、加熱分離法により作製したヒト表皮(heat separated epidermis(HSE))を用いてインビトロでの透過性を測定した。
【0138】
引き剥がし力は、所定の角度と所定の速度で剥離ライナーから試料を引き剥がすのに必要な力として測定することができる。引き剥がし力を測定するため、所定の大きさ(例えば10cm2)の経皮送達システムを打ち抜き、23±1℃および相対湿度50±5%の条件で放置する。経皮送達システムと同じ幅のガイド用の細長いライナーを経皮送達システムに貼り付ける。次に、このガイド用の剥離ライナーを下にして、両面テープで経皮送達システムを治具に固定し、これを引張試験機(例えば、Stable Micro Systems社のテクスチャーアナライザーplus)にセットし、経皮送達システムを90°の角度で引き剥がす。概して、通常23±1℃および相対湿度50±5%の条件において300±30mm/分の速度で測定を行う。引き剥がし力は、引き剥がされた長さの粘着力の平均値を試料片の幅25mmで標準化した値[N/25mm]とする。
【0139】
粘着力は、所定の角度と所定の速度で適切な治具から試料を剥がすのに必要な力として測定することができる。粘着力を測定するため、所定の大きさ(例えば10cm2)の経皮送達システムを打ち抜き、23±1℃および相対湿度50±5%の条件で放置する。経皮送達システムと同じ幅のガイド用の細長いライナー(例えば両面テープ)を貼り付ける。この剥離ライナーの片面を剥がして、経皮送達システムを(例えば鋼鉄製の)試験板に貼り付け、2枚のガラス板の間に挟んで、例えば、2kgの重量で1分間圧着する。引張試験機(例えば、Stable Micro Systems社のテクスチャーアナライザーplus)に試験板を水平に取り付け、ガイド用ライナーをクランプし、経皮送達システムを90°の角度で引き剥がす。概して、通常23±1℃および相対湿度50±5%の条件において、300±30mm/分の所定の速度で測定を行う。粘着力は、引き剥がされた長さの粘着力の平均値を試料片の幅25mmで標準化した値[N/25mm]とする。
【0140】
タックは、経皮送達システムの粘着剤層からステンレス鋼製の試験片を完全に分離するのに必要な最大の力として測定することができる。タックを測定するため、貼付剤または積層体を、23±1℃および相対湿度50±5%の条件で放置した後、剥離ライナーを剥がして、むき出しになった粘着性のマトリックスを多孔質支持板に固定する。この多孔質支持板を引張試験機(例えば、Stable Micro Systems社のテクスチャーアナライザーplus)にセットする。通常、23±1℃および相対湿度50±5%の条件において、ステンレス鋼製の試験片を試料(マトリックス)の上面に押しつけ、通常2秒間の所定の接触時間が経過した後に試験片を引き剥がす。一連の測定操作は、最初の試料から剥離ライナーを剥がした後、30分以内に完了させる必要がある。試験片と粘着剤層(マトリックス)の間の粘着を分離するのに必要とされる最大の力(タック;[N])を求める。
【0141】
【表5】
【0142】
B)複数の種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を様々な混合比率で含むパラフィン含有単層製剤
マトリックス層に、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)を様々な混合比率で含むか、BIO-PSA 7-4501とBIO-PSA 7-4601(ダウコーニング)を様々な混合比率で含み、該マトリックス層にさらにパラフィンを添加した様々な単層製剤を、前記A)と同様の方法で調製した。これらの単層製剤では、裏打ち層としてのScotchpak 1109(3M社)またはホスタファンMN 19(三菱ポリエステルフィルム社)と、剥離ライナーとしてのScotchpak 9744またはScotchpak 9709(3M社)とを様々に組み合わせて使用した。調製した経皮治療システムを様々な期間にわたり25℃または40℃で保存し、引き剥がし力、粘着力およびタックを調べた。さらに、いくつかの製剤については、加熱分離法により作製したヒト表皮を用いてインビトロでの透過性を測定した。
【0143】
【表6】
【0144】
C)複数の種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤を様々な混合比率で含む、パラフィン含有二層製剤またはパラフィン非含有二層製剤
マトリックス層に、BIO-PSA SRS7-4501またはBIO-PSA 7-4501(ダウコーニング)とロチゴチンを様々な量で含む様々な二層製剤を調製した。この二層製剤は、裏打ち層に接触している面とは反対側のマトリックス層の面に、最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層をさらに含んでいた。最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層は、様々な量のBIO-PSA SRS7-4501および/もしくはBIO-PSA SRS7-4601またはBIO-PSA 7-4501(ダウコーニング)を使用し、かつ少量のパラフィンを添加するか、パラフィンを添加せずに調製した。
【0145】
これらの二層製剤では、良好な粘着力とタックが達成され、コールドフローができるだけ小さくなり、かつ十分に高い凝集力が得られるように、中程度のタックを有するシリコーン系粘着剤と高いタックを有するシリコーン系粘着剤の含有比率を選択する必要があった。
【0146】
また、これらの二層製剤では、裏打ち層としてのScotchpak 1109(3M社)またはホスタファンMN 19(三菱ポリエステルフィルム社)と、剥離ライナーとしてのScotchpak 9744、Scotchpak 1022、Scotchpak 9709(3M社)、Primeliner 100μm 78BTおよびPrimeliner 75μm 78HL(Loparex International B.V.)とを様々に組み合わせて使用した。調製した経皮治療システムを様々な期間にわたり25℃または40℃で保存し、引き剥がし力、粘着力およびタックを調べた。さらに、いくつかの製剤については、加熱分離法により作製したヒト表皮を用いてインビトロでの透過性を測定した。
【0147】
これらの二層製剤において、最初は有効成分が含まれていない追加の感圧粘着剤層が、引き剥がし力、粘着力、タックおよびインビトロでの透過性に与える効果を調べた。
【0148】
【表7】
【0149】
D)非耐アミン性シリコーン系粘着剤と様々な濃度のポリビニルピロリドンを含む単層製剤
マトリックス層の総重量に対して様々な量のPVP K90と9重量%で量を固定したロチゴチンを含み、マトリックス層に、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)を1:1の混合比率で含む様々な単層製剤を調製した。
【0150】
裏打ち層としてScotchpak 1109(3M社)を使用し、剥離ライナーとしてScotchpak 9744を使用した。得られた経皮治療システムを、様々な期間にわたり25℃または40℃で保存し、その外観を調べた。さらに、いくつかの製剤については、加熱分離法により作製したヒト表皮(HSE)を用いてインビトロでの透過性を測定した。この実施例は、PVP K90の量を様々に変えたときの、ロチゴチンの再結晶化およびインビトロでの透過性に対する効果を調べることを目的とした。
【0151】
【表8】
【0152】
実施例2(引き剥がし力、粘着力およびタック)
本実施例は、非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)の混合比率、またはBIO-PSA 7-4501とBIO-PSA 7-4601(ダウコーニング)の混合比率が、引き剥がし力、粘着力およびタックに与える効果を調査し、その結果を元に、マトリックス層に最適な混合比率を設定することを目的とした。別の目的として、引き剥がし力、粘着力およびタックに対するパラフィンの効果も調べた。
【0153】
A)引き剥がし力
表5および図2から明らかなように、遊離シラノール基を主に含む1種以上のシリコーン系粘着剤(非耐アミン性シリコーン系粘着剤)をマトリックス層に含み、フルオロポリマーでコーティングされた剥離ライナー(例えば、Scotchpak 1022やScotchpak 9744(3M社))を使用して保存したロチゴチン含有単層製剤の形態の経皮治療システムでは、引き剥がし力が大幅に増加した。遊離シラノール基を含むシリコーン系粘着剤と、同じ剥離ライナーを使用したロチゴチン非含有プラセボ製剤では、引き剥がし力の増加は観察されなかった。
【0154】
遊離シラノール基を含む1種以上のシリコーン系粘着剤とロチゴチンを使用した同じ処方または類似の処方の製剤に、例えば、Scotchpak 9709(3M社)などのフルオロシリコーンでコーティングされた剥離ライナーを使用した場合、引き剥がし力の増加は有意に少なかった(図2および表5参照)。
【0155】
【表9】
【0156】
驚くべきことに、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)の混合物を含むロチゴチン製剤は、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4601のみ(ダウコーニング)を含むロチゴチン製剤と比べて、引き剥がし力の増加が少なかった。さらに、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA 7-4501とBIO-PSA 7-4601(ダウコーニング)の混合物を含むロチゴチン製剤も、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA 7-4601のみ(ダウコーニング)を含むロチゴチン製剤と比べて、引き剥がし力の増加が少ないことが示された。
【0157】
B)粘着力
さらに、様々な種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤またはその混合物とロチゴチンを含む様々な経皮治療システム製剤を0~3ヶ月間保存し、その粘着力をプラセボ製剤および市販のニュープロ経皮治療システムと比較した。
【0158】
表6および図3から明らかなように、シラノール含有量が低減されていない1種以上のシリコーン系粘着剤(BIO-PSA 7-4501および/またはBIO-PSA 7-4601;ダウコーニング)(シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤)とロチゴチンを含む経皮治療システム製剤の粘着力は比較的小さかった。この比較的小さな粘着力は、40℃/75%相対湿度の条件で1ヶ月間または3ヶ月間保存すると、さらに顕著に低下し、1ヶ月間保存後に市販のニュープロよりも粘着力が小さくなった。プラセボ製剤では、非耐アミン性シリコーン系粘着剤を使用しても、粘着力の低下は見られなかった。
【0159】
驚くべきことに、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤は、シラノール含有量が低減されていないシリコーン系粘着剤よりも遊離シラノール基が少ないことから、表面との相互作用が少ないにもかかわらず、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤(ダウコーニングのBIO-PSA SRS7-4501および/またはBIO-PSA SRS7-4601)とロチゴチンを含む製剤は、粘着力が有意に高く、さらに粘着力の低下も少なかったことから、40℃/75%相対湿度の条件で0~3ヶ月間保存した後でも、粘着力の絶対値が市販のニュープロよりも依然として高かった。
【0160】
さらに、シリコーン系粘着剤として、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601を、これらを合わせた割合に対して約17.5~30.0重量%:約82.5~70.0重量%の比率で含む製剤は、BIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)のみを使用した製剤(図3参照)と比較して高い粘着力を有するが、それに伴う引き剥がし力の増加は認められなかった(図4および表6参照)。
【0161】
驚くべきことに、約1~3重量%という少量のパラフィンを製剤に添加することによって、有意に高い粘着力が得られ、1~3ヶ月間の保存中にわずかな低下しか見られなかった(図3および表6参照)。
【0162】
したがって、本発明の製剤にパラフィンを添加することによって、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤の使用が可能になるという効果も得られることが示された。シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤を用いた際の粘着力は、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を使用した場合ほどには強くないものの、市販のニュープロよりも優れており、この理由から好ましい。
【0163】
【表10】
【0164】
C)タック
さらに、様々な種類の非耐アミン性シリコーン系粘着剤またはその混合物とロチゴチンを含む様々な経皮治療システム製剤を0~3ヶ月間保存し、そのタックをプラセボ製剤および市販のニュープロと比較した。
【0165】
表7および図5から明らかなように、シラノール含有量が低減されていないことから、遊離のシラノール基を含む1種以上のシリコーン系粘着剤(ダウコーニングのBIO-PSA 7-4501および/またはBIO-PSA 7-4601)(シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤)とロチゴチンを含む経皮治療システム製剤のタックは、市販のニュープロよりも低かった。
【0166】
驚くべきことに、シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤を使用した場合のタックは有意に高く、40℃/75%相対湿度の条件で1ヶ月間保存した後でもわずかしか低下せず、3ヶ月後でも安定していた。さらに、少量のパラフィンを添加することによって、市販のニュープロよりもタックが高くなり、驚くべきことに、少量のパラフィン(約2重量%)を使用した場合、保存中のタックの低下はそれほど大きくなかった。
【0167】
【表11】
【0168】
実施例3(保存中の再結晶化)
本実施例は、PVP K90の量を様々に変えたときの、ロチゴチンの再結晶化および透過性に対する効果を調べることを目的とした。マトリックス層に、非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)の混合物とロチゴチンとPVP K90とを使用し、ロチゴチンとPVP K90の重量比を9:3.2~9:5とした場合に、25℃または40℃で保存すると結晶化が観察された。
【0169】
驚くべきことに、マトリックス層に、非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601(ダウコーニング)からなる同じ混合物とロチゴチンとPVP K90とを使用し、ロチゴチンの含有量を、ロチゴチンとPVP K90の重量比として9:7の比率以下とした場合、同じ温度で保存しても結晶化を防ぐことができた。
【0170】
【表12】
【0171】
実施例4(インビトロでの透過性および溶出性)
インビトロにおける溶出実験の説明
剥離ライナーを設けていない特定の大きさ(例えば10cm2)の試験製剤を、欧州薬局方2.9.4(方法3)または米国薬局方<724>装置6(アダプター付きシリンダー)に従った回転式シリンダーに貼り付けて有効成分を放出させた。各試験製剤の溶出液として、900mLの50mMリン酸緩衝液(pH 4.5)を使用した。溶出温度は32℃とし、シリンダーの回転速度は50rpmとした。試料の採取は、試験対象の製剤に応じて行い、単層製剤では、例えば、0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間および3時間に試料を採取し、二層製剤では、例えば、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間および6時間に試料を採取した。採取した試料溶液は、以下に概要を述べるRP-HPLCで直接分析した。
【0172】
固定相:C18(例えば、50×3mm、粒子径5μm、オーブン温度35℃)。
移動相:流速0.6mL/分において70mMリン酸緩衝液(pH5.0)/メタノール=55%/45%(v/v)。
注入量:20μL。
検出波長:223nm。
ロチゴチンの保持時間:約3~6分間。
測定時間:8分間(イソクラチック)。
外部標準溶液を分析し、一点検量線を作製して評価を行った。試料溶液中の平均濃度に基づいて累積放出濃度[%]を計算した。
【0173】
インビトロにおけるロチゴチンの皮膚透過性試験の説明
インビトロにおける皮膚透過性に関する調査は、経済協力開発機構(OECD)(2004)の試験に関するガイドライン428「Skin absorption: In vitro Method & Series on testing and assessment」のNo.28「Guidance document for the conduct of skin absorption studies」に従って、NovoCell Schonbach社の皮膚透過性試験装置を用いて行った。測定中、測定セルは32±1℃に設定した。測定セルは、ドナーチャンバーとアクセプターチャンバーからなり、ドナーチャンバーとアクセプターチャンバーの間に、加熱分離法により作製されたヒト皮膚が挟まれている。このヒト皮膚の有効透過面積は1.05cm2であり、セルロース膜で支持されている。有効成分が放出される側の表面をアクセプターチャンバー側に向けて、試験対象の貼付剤(約1.2cm2の大きさ)のマトリックスを角質層に貼り付けた。測定セルの容量は15mLであり、pH5.5のリン酸生理緩衝液を充填した。所定の時間(例えば、1時間、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間および24時間)にアクセプターチャンバーから試料を採取し、ロチゴチンの濃度をRP-HPLC分析で測定した。試料を採取する際、採取した試料と同じ量の新鮮な緩衝液をアクセプターチャンバーに直ちに加えた。アクセプターチャンバーに組み込んだ磁気攪拌装置を用いて、温度とロチゴチンの濃度が均一になるようにした。
【0174】
インビトロでの溶出実験と同様にして(前記参照)、RP-HPLC分析を実施し、試料の濃度を計算した。次に、各時点における累積透過量を計算し、時間に対してプロットしてグラフを作成し、定常状態での透過流束を計算した[μg/cm2/h]。
【0175】
A)単層製剤:ロチゴチンとPVP K90の比率およびパラフィンの添加が透過性に及ぼす効果
加熱分離法により作製したヒト表皮(HSE)に試験製剤を貼付することによって皮膚透過性を調べた。この実験では、ロチゴチンとPVP K90の重量比を様々に変えるとともに、粘着力とタックを増加させる成分としてパラフィンを添加した場合とパラフィンを添加しなかった場合を試験した。
【0176】
ポリアクリル酸系粘着剤、ポリアクリル酸とシリコーン系粘着剤の混合物、ポリイソブチレン/ポリブチレン、スチレンブタジエン、またはスチレン-イソプレンと樹脂の混合物を用いて作製した前述の単層製剤と、最初は有効成分が含まれていない感圧粘着剤層と前述の粘着剤のいずれかを用いて作製した二層製剤は、加熱分離法により作製したヒト表皮(HSE)に貼付した場合、ニュープロよりも有効成分の透過性が有意に低かった。
【0177】
ロチゴチンの含有量を9%に固定し、ロチゴチンとPVPの比率を様々に変えた際のインビトロでの透過性に対する効果を、加熱分離法により作製したヒト表皮に試験用単層製剤を貼付することによって調べた。
【0178】
図6A)から分かるように、使用したロチゴチンとPVP K90の比率において、PVP K90の含有量を6.4~9.0%とした場合、インビトロでの透過性には効果は認められなかった。さらに、試験した単層製剤の透過性はいずれも同程度であり、ニュープロよりもわずかに高いか、わずかに効果的な透過性が示された。
【0179】
ロチゴチンの含有量(9重量%)とPVP K90の含有量(7重量%)を固定し、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601の混合比率を様々に変えた際のインビトロでの透過性に対する効果を、加熱分離法により作製したヒト表皮に試験用単層製剤を貼付することによって調べた。
【0180】
図6B)から分かるように、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601の混合比率を1:1、1:1.5、1:2または1:3とした試験用単層製剤を、加熱分離法により作製したヒト表皮に貼付して試験したところ、インビトロでの透過性には効果は認められなかった。さらに、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601の混合比率を1:1~1:3とした単層製剤の透過性はいずれも同程度であり、ニュープロよりもわずかに高いか、わずかに効果的な透過性が示された。
【0181】
さらに、少量のパラフィンを添加したときの、インビトロでの透過性に対する効果を、加熱分離法により作製したヒト表皮に試験用単層製剤を貼付することによって調べた。
【0182】
シラノール含有量が低減された非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA SRS7-4501と2重量%のパラフィンとを使用した単層製剤の場合、インビトロでの透過性が向上する効果が認められ、ニュープロよりもわずかに高いか、わずかに効果的な透過性が示された(図7A)。
【0183】
シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるBIO-PSA 7-4501および/またはBIO-PSA 7-4601を使用した単層製剤の場合でも、1~2重量%のパラフィンを添加することによって、インビトロでの透過性が向上する効果が認められた。ニュープロよりもわずかに高いか、わずかに効果的な透過性が示された。さらに、パラフィンを添加して改良した製剤は、シラノール含有量が低減されていない非耐アミン性シリコーン系粘着剤を用いたパラフィン非含有製剤よりも高い透過性を示した(図7B)。
【0184】
B)二層製剤:有効成分が含まれていない様々な感圧粘着剤層の透過性に対する効果
様々な粘着剤系を用いて調製した、最初は有効成分が含まれていない様々な感圧粘着剤層と、シリコーン系粘着剤を用いた有効成分含有マトリックス層とを組み合わせた際(二層製剤)のインビトロでの透過性に対する効果を、加熱分離法により作製したヒト表皮に製剤を貼付してニュープロと比較することにより調べた。
【0185】
最初は有効成分が含まれていない感圧粘着剤層は、ポリアクリル酸系粘着剤、ポリイソブチレン/ポリブチレン、またはスチレン-イソブタジエンと樹脂の混合物と、パラフィとを用いて調製し、約30g/m2の厚さに塗布した。この感圧粘着剤層を用いた二層製剤は、非耐アミン性シリコーン系粘着剤であるSRS7-4601からなる有効成分を含まない感圧粘着剤層を用いた二層製剤よりも透過性が明らかに劣っていた(図8A参照)。いずれの製剤でも、15重量%のロチゴチンと、8.5重量%のPVP K90と、76.5重量%のBIO-PSA SRS7-4501粘着剤とを用いて約30g/m2の厚さに塗布して作製した同じ組成のマトリックス層を使用した。一方、最初は有効成分が含まれていない感圧粘着剤層とマトリックス層に非耐アミン性シリコーン系粘着剤を用いた二層製剤では、ニュープロよりも高いか、向上した透過性が示された。
【0186】
C)インビトロでの溶出
図8B)に示すように、BIO-PSA SRS7-4501とBIO-PSA SRS7-4601の混合比率を1:1または1:3としても、538ROTTDSと539ROTTDSはほぼ同一の放出挙動を示したことから、インビトロでの放出に対する効果は認められなかった。一方、これらの製剤は、9重量%のロチゴチンと7重量%のPVP K90を含んでいたが、恐らくはPVP K90の含有量が高かったことから、インビトロでの初期の放出がニュープロよりもわずかに速かった。
【0187】
図9は、二層製剤の6時間のロチゴチンの累積放出量を示す。二層製剤からのインビトロでの溶出試験では、有効成分を含むマトリックス層(2)の塗工液を攪拌してから約50g/m2の厚さに塗布してマトリックス層(2)を調製するか、攪拌に加えてさらに均質化を行ってから約50g/m2の厚さに塗布してマトリックス層(2)を調製した。次に、これらの有効成分含有マトリックス層(2)を、最初は有効成分が含まれていない同じ組成の粘着剤層(3)に積層した。さらに比較を行うため、単層製剤を同じ方法で処理し、最初は有効成分が含まれていない粘着剤層(3)を積層せずに使用した。緩やかに攪拌すると、さらに均質化を行った場合と比べて粒子径が大きくなり、粒子径分布が広くなった。攪拌のみを行っても、攪拌と均質化を行っても、放出の経過に変化は認められなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】